特許拒絶査定不服審判
2019-006614
熱安定性被覆を含むフレキソ印刷による物品装飾方法
- 審判番号
- 2019-006614
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-536555
- 請求日
- 2019年05月21日
- 審決日
- 2020年04月15日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】セブ ソシエテ アノニム
- 【請求人代理人】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 紀本 孝
- 審判官 松下 聡
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P18 .121-Z (A47J) / P18 .575-Z (A47J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-536555「熱安定性被覆を含むフレキソ印刷による物品装飾方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月11日国際公開、WO2015/082820、平成29年 1月19日国内公表、特表2017-501778〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年12月3日 フランス国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年8月27日 拒絶理由通知
平成30年12月4日 意見書、手続補正書の提出
平成31年3月29日 拒絶査定
令和1年5月21日 審判請求書、手続補正書の提出
令和1年9月9日 上申書
第2 令和1年5月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年5月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲における請求項2の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2の記載は、次のように補正された(下線部は補正箇所である。)
「【請求項2】
調理器具(1)をフレキソ印刷によって装飾する方法であって、
a)2つの反対表面(21、22)を有する支持材(2)を供給するステップと、
b)熱安定性被覆用の粒子状組成物を前記支持材(2)の片側の表面(21)に塗布して、粒子状副層(3)を形成させるステップであって、前記粒子状組成物は、少なくとも1つのフッ化炭素樹脂を単独で含むかまたは熱安定性の接着用樹脂を一緒に含む、ステップと、
c)前記粒子状副層(3)を自然乾燥または強制乾燥させるステップと、
d)前記粒子状副層(3)に装飾(4)をフレキソ印刷するステップであって、前記粒子状副層(3)に第1の着色装飾用組成物を印刷して第1の不連続装飾層(41)を形成させるステップ(d1)を含み、前記第1の着色装飾用組成物は耐熱性に優れた少なくとも1つの顔料を含む、ステップと、
e)被覆された前記支持材(2)を固化熱処理するステップと、
を含み、
無色の仕上げ用組成物を塗布して無色の仕上げ層(5)を形成させるステップは、前記フレキソ印刷するステップ(d)と前記熱処理するステップ(e)との間で行われ、前記無色の仕上げ組成物は、少なくとも1つのフッ化炭素樹脂を含むことを特徴とする方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の平成30年12月4日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2の記載は次のとおりである。
「【請求項2】
物品(1)をフレキソ印刷によって装飾する方法であって、
a)2つの反対表面(21、22)を有する支持材(2)を供給するステップと、
b)熱安定性被覆用の粒子状組成物を前記支持材(2)の片側の表面(21)に塗布して、粒子状副層(3)を形成させるステップであって、前記粒子状組成物は、少なくとも1つのフッ化炭素樹脂を単独で含むかまたは熱安定性の接着用樹脂を一緒に含む、ステップと、
c)前記粒子状副層(3)を自然乾燥または強制乾燥させるステップと、
d)前記粒子状副層(3)に装飾(4)をフレキソ印刷するステップであって、前記粒子状副層(3)に第1の着色装飾用組成物を印刷して第1の不連続装飾層(41)を形成させるステップ(d1)を含み、前記第1の着色装飾用組成物は耐熱性に優れた少なくとも1つの顔料を含む、ステップと、
e)被覆された前記支持材(2)を固化熱処理するステップと、
を含み、
無色の仕上げ用組成物を塗布して無色の仕上げ層(5)を形成させるステップは、前記フレキソ印刷するステップ(d)と前記熱処理するステップ(e)との間で行われ、前記無色の仕上げ組成物は、少なくとも1つのフッ化炭素樹脂を含むことを特徴とする方法。」
2 補正の適否
上記補正は、本件補正前の請求項2を特定するために必要な事項である「物品(1)」を、下位概念の「調理器具(1)」に変更する補正であって、本件補正前の請求項2に記載された発明と、本件補正後の請求項2に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正によって補正された請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用例の記載事項
ア 引用例
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用例である特開平2-180221号公報には、図面とともに以下の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。
(ア)引用例の記載
1a)「2、特許請求の範囲
(1)アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材と、この基材の表面に形成され、かつ弗素樹脂を含むプライマー層と、このプライマー層の表面に設けられ、かつ弗素樹脂を含む絵柄と、この絵柄の上に設けられ、かつ透明な弗素樹脂からなるクリアーコートにより構成した加熱調理器用調理容器。
(2)アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材の表面をブラスチングまたは化学エッチング等で粗面化し、その表面に、必要に応じてセラミック溶射層や化成処理膜などの硬化層を形成し、次に弗素樹脂を含むプライマー層を設け、このプライマー層の表面に弗素樹脂を含む絵柄を設け、さらにこの絵柄の上に透明な弗素樹脂からなるクリアーコートを形成した加熱調理器用調理容器の製造法。
(3)弗素樹脂と顔料を含む印刷インクで薄葉紙に絵柄を印刷して転写紙を構成し、この転写紙からプライマー層に前記絵柄を転写するようにした絵柄の製造法。」(1ページ左欄5行ないし右欄5行)
1b)「産業上の利用分野
本発明はホットプレート,フライパンなどの加熱調理器用調理容器とその製造法および絵柄の製造法に関するものである。」(1ページ右欄7ないし10行)
1c)「作用
本発明の加熱調理器用調理容器は、上記した構成とすることにより、調理時における調理物の離型性、調理容器の耐熱性などの基本特性を損うことなく、多種類の絵付けが簡単にできるため、少量多品種の生産が可能となり、その結果、消費者は好みの絵柄が選択できるようになるものである。
また調理容器の製造法においては、基材の表面を粗面化し、その表面に弗素樹脂を含むプライマー層を設け、次にその表面に弗素樹脂を含む絵柄を設け、さらに、この絵柄の上に透明な弗素樹脂からなるクリアーコートを形成した三層構造としているため、クリアーコートの焼成時にプライマー,絵柄,クリアーコートに含まれる弗素樹脂が相互に熱融着されることになり、その結果、前記三層間が強固に結合された調理容器を効果的に製造できるものである。
さらに調理容器に形成する絵柄の製造法については、弗素樹脂と顔料を含む印刷インクで薄葉紙に絵柄を印刷して構成した転写紙を用いているため、簡単に絵付けができるものである。」(2ページ左下欄1行ないし右下欄1行)
1d)「
」
1e)「実施例
以下、本発明の一実施例を添付図面に基づいて説明する。第1図は本発明の加熱調理器の一実施例におけるホットプレートの調理面の拡大図を示したもので、調理容器はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材1の表面を粗面化した後、必要に応じて硬化層2を設け、その表面に弗素樹脂を含むプライマー層3を設け、さらにその表面に弗素樹脂を含む絵柄4を設け、最後に絵柄4の上に透明な弗素樹脂からなるクリアーコート5を形成したものである。
次に、本発明の加熱調理器用調理容器の製造手順を説明する。まず、調理容器となるアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材1を設計に基づいてダイキャストで形成した後、その基材1の表面を研削材で粗面化し、次いで、セラミックス等の溶射材料をプラズマ溶射装置により前記粗面化した面に吹きつけ、投描効果によってセラミックスの硬化層2を形成する。そしてこの面に弗素樹脂を含むプライマーを塗布して所定の温度で乾燥することにより、プライマー層3を形成する。このプライマー層3は顔料,バインダー,高分子樹脂などの固型分に少なくともPTFE,PFAなどの弗素樹脂が含有されたもので形成している。
次に、プライマー層3に絵柄4を形成する工程について説明する。本発明の加熱調理器用調理容器に形成される絵柄4は、少なくとも弗素樹脂と顔料を含む印刷インクが用いられている。そして絵柄4の形成方法としては、プライマー層3にスクリーン印刷などの方法で直接印刷してもよいし、また転写方式による方法などでも良く、形成方法は問わないが、本発明の実施例では転写方式により行なった。
次に本発明に係る絵柄4の製造方法について説明する。第2図の実施例では、まず、薄葉紙6にデキストリンなどの水溶性のノリ7を塗布して乾燥させた後、その表面に弗素樹脂と顔料を含む印刷インクを用いてスクリーン印刷法により、絵柄4を印刷し、乾燥させて、第2図のような転写紙を作成する。次にこれを水につけて、ノリ7を溶かして薄葉紙6と絵柄4を分離させ、絵柄4のみを前記プライマー層3に転写し、そして絵柄4の上からタンポン等で押さえて、プライマー層3と絵柄4の間にある水分を充分に除去して、24時間自然乾燥させる。
このようにして形成した絵柄4は乾燥工程を経て、次の工程に移行する。最後に絵柄4を含む調理面に、調理時の焦げ付き防止と絵柄4を鮮明に浮きあがらせる目的で透明な弗素樹脂からなるクリアーコート5を形成し、そして乾燥,焼成を行う。この結果、クリアーコート5の焼成時に、プライマー層3,絵柄4,クリアーコート5に含まれる弗素樹脂が相互に融着し、強固に結合された三層構造の被膜を有する加熱調理器用調理容器が得られるものである。」(2ページ右下欄2ないし3ページ右上欄16行)
1f)第1図には、基材1が表裏の面を有することが示されている。
(イ)引用発明
上記(ア)の記載を総合すると、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「加熱調理器用調理容器に絵柄を形成する方法であって、
表裏の面を有する基材1を形成し、
弗素樹脂を含むプライマーを基材1の表面に塗布し、所定の温度で乾燥することでプライマー層3を形成し、プライマー層3は、顔料、バインダー、高分子樹脂などの固形分に、少なくともPTFE、PFAなどの弗素樹脂を含むものであって、
プライマー層3に印刷インクを直接印刷して絵柄4を形成し、印刷インクは少なくとも弗素樹脂と顔料を含むものであり、
さらに、絵柄4を含む面に透明な弗素樹脂からなるクリアーコート5を形成し、
そして乾燥、焼成を行う、方法。」
(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「加熱調理器用調理容器」は、本願補正発明における「調理器具(1)」に相当し、以下同様に、「絵柄を形成する」は「装飾する」に、「表裏の面」は「2つの反対表面(21、22)」に、「基材1」は「支持材(2)」に、「基材1を形成」は「支持材(2)を供給」に、「表面」は「片側の表面(21)」に、「所定の温度で乾燥」は「自然乾燥または強制乾燥」に、「印刷インク」は「第1の着色装飾用組成物」に、「絵柄4」は「第1の不連続装飾層(41)」に、「クリアーコート5」は「無色の仕上げ層(5)」に、「乾燥、焼成」は「固化熱処理」に、それぞれ相当する。
イ 引用発明における「プライマー層3」に含まれる「弗素樹脂」は、PTFE,PFAなどのものであって、本願明細書(段落【0048】)において「フッ化炭素樹脂」の例としてPTFEやPFAが示されているから、本願補正発明における「フッ化炭素樹脂」に相当する。
ウ 本願明細書段落【0008】「『粒子状組成物(またはインク)』という用語は、本発明の目的上、懸濁物中または液体の分散物中に目立たない固体または粒子の形で存在し、少なくとも1つの有機もしくは無機の結合剤、充填剤または顔料を含む組成物を指す」の記載を踏まえると、引用発明における「弗素樹脂を含むプライマー」は、基材の表面に塗布、乾燥することで「顔料、バインダー、高分子樹脂などの固形分に、少なくともPTFE、PFAなどの弗素樹脂を含む」、「プライマー層3」を形成するものであって、結合剤や顔料を含む懸濁物といえるので、本願補正発明における「粒子状組成物」に相当する。
また、引用発明における「プライマー層3」は、本願補正発明における「粒子状複層(3)」に相当する。
エ 引用発明における「弗素樹脂を含むプライマーを基材1の表面に塗布し、所定の温度で乾燥することでプライマー層3を形成」することは、本願補正発明における「粒子状組成物」を「支持材(2)の片側の表面(21)に塗布して」、「形成させ」た「粒子状複層(3)を自然乾燥または強制乾燥させ」たことに相当する。
オ 引用発明における「クリアーコート5を形成」することは、「プライマー層3に印刷インクを印刷して絵柄4を形成」することと、「乾燥、焼成」することとの間で行われるから、本願補正発明における「無色の仕上げ層(5)を形成させるステップ」が、「印刷するステップ」と「固化熱処理するステップ」との間で行われることに相当する。
カ 引用発明における「印刷」と、本願補正発明における「フレキソ印刷」とは、「印刷」という限りにおいて一致する。
キ 引用発明における「印刷インクは少なくとも弗素樹脂と顔料を含む」ことと、本願補正発明における「第1の着色装飾用組成物は耐熱性に優れた少なくとも1つの顔料を含む」こととは、「第1の着色装飾用組成物は少なくとも1つの顔料を含む」という限りにおいて一致する。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「調理器具(1)を印刷によって装飾する方法であって、
a)2つの反対表面(21、22)を有する支持材(2)を供給するステップと、
b)粒子状組成物を前記支持材(2)の片側の表面(21)に塗布して、粒子状副層(3)を形成させるステップと、
c)前記粒子状副層(3)を自然乾燥または強制乾燥させるステップと、
d)前記粒子状副層(3)に装飾(4)を印刷するステップであって、前記粒子状副層(3)に第1の着色装飾用組成物を印刷して第1の不連続装飾層(41)を形成させるステップ(d1)を含み、前記第1の着色装飾用組成物は少なくとも1つの顔料を含む、ステップと、
e)被覆された前記支持材(2)を固化熱処理するステップと、
を含み、
無色の仕上げ層(5)を形成させるステップは、前記印刷するステップ(d)と前記固化熱処理するステップ(e)との間で行われる、方法。」
[相違点1]
「印刷」に関して、本願補正発明においては「フレキソ印刷」であるのに対して、引用発明においては印刷方法について特定されていない点。
[相違点2]
本願補正発明における「粒子状組成物」は、「熱安定性被覆用」であって「少なくとも1つのフッ化炭素樹脂を単独で含むかまたは熱安定性の接着用樹脂を一緒に含む」と特定されているのに対して、引用発明における「プライマー」については、「熱安定性被覆用」であることや「少なくとも1つのフッ化炭素樹脂を単独で含むかまたは熱安定性の接着用樹脂を一緒に含む」ことが特定されていない点。
[相違点3]
本願補正発明における「顔料」は、「耐熱性に優れた」と特定されているのに対して、引用発明における「顔料」は、そのように特定されていない点。
[相違点4]
本願補正発明においては「少なくとも1つのフッ化炭素樹脂を含む」、「無色の仕上げ用組成物を塗布」して「無色の仕上げ層(5)を形成させる」のに対して、引用発明においては「透明な弗素樹脂」が「少なくとも1つのフッ化炭素樹脂を含む」か不明であるとともに、「透明な弗素樹脂からなるクリアーコート5」が「透明な弗素樹脂」を「塗布」して形成したものであるか不明な点。
以下、相違点について検討する。
[相違点1について]
印刷方法として、金属板の表面等にフレキソ印刷を用いて文字や模様などを印刷することにより装飾を行うことは、例えば、
(ア)特開2010-188309号公報(段落【0003】「金属板の表面に模様塗膜を形成したプレコートメタルを製造する方法としては、・・・フレキソ印刷・・等の印刷による方法などが知られている。」)(以下、「周知文献1」という。)
(イ)国際公開第96/09966号(1ページ3ないし9行 "The subject of the present invention ... vessels " 当審訳:「本発明の課題は、ポット、鍋、フライパン、ベーキング皿、ロースター等の加熱調理容器、およびこの方法を実施するためのマシンを装飾するための方法である。従来の技術では、調理用容器を装飾するための、シルクスクリーン印刷またはフレキソ印刷の方法の使用を提供する。」)(以下、「周知文献2」という。)
(ウ)特開平10-264295号公報(段落【0001】「【産業上の利用分野】本発明は、耐熱性,非粘着性が要求される食品調理用器具,加熱調理用器具等として使用される耐熱非粘着意匠鋼板及びその製造方法に関する。」、段落【0010】「そこで、本発明者等は、鋼板表面に対する印刷意匠の発現を再検討し、鋼板印刷には従来採用されていないフレキソ印刷により印刷意匠を発現させる方法に至った。」)(以下、「周知文献3」という。)
によれば周知技術(以下、「周知技術」という。)であって、そのうち上記周知文献2及び周知文献3は、加熱調理容器あるいは加熱調理器具に用いられる鋼板等に装飾を行うための印刷方法に関するものである。
また、引用例における「絵柄4の形成方法としては、プライマー層3にスクリーン印刷などの方法で直接印刷してもよいし、また転写方式による方法などでも良く、形成方法は問わない」(上記第2 2(2)(ア)1e)参照)の記載によれば、絵柄4の形成にあたって種々の印刷方法が採用し得ることについて示唆されている。
そうすると、引用発明における、加熱調理器用調理容器に絵柄を形成するための「印刷」の方法として、上記周知技術であるフレキソ印刷を採用することにより上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。
[相違点2について]
引用発明における「プライマー層3」は、「顔料、バインダー、高分子樹脂などの固形分に、少なくともPTFE,PFAなどの弗素樹脂を含む」ものであるから、プライマー層3を形成するプライマーは、「少なくともPTFE,PFAなどの弗素樹脂」と「バインダー」とを含むことは明らかである。ここで、前者は本願補正発明における「フッ化炭素樹脂」、後者は「接着用樹脂」に相当する。
そして、引用発明は、「加熱調理器用調理容器に絵柄を形成する方法」に関するものであって、基材1やプライマー層3が高温に曝されることは明らかであるから、顔料、バインダー、高分子樹脂などを熱安定性のものとして、プライマーを熱安定性被覆用とし、フッ化炭素樹脂と熱安定性の接着用樹脂とを一緒に含むものとして上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。
[相違点3について]
引用発明は「加熱調理器用調理容器に絵柄を形成する方法」に関するものであって、プライマー層3に印刷される印刷インクが高温に曝されることは明らかであるから、引用発明における「顔料」を耐熱性のものとすることにより上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。
[相違点4について]
引用発明においては、「基材1の表面」に「弗素樹脂を含むプライマー」を「塗布」することから、「透明な弗素樹脂」においても対象物に「塗布」することにより「透明な弗素樹脂からなるクリアーコート5」を形成すること、及び、クリアーコート5の透明な弗素樹脂を、弗素樹脂の代表的なものとして挙げられるPTFE、PFA等の「フッ化炭素樹脂」とすることに困難性はない。
そうすると、引用発明において、「透明な弗素樹脂」を対象物に「塗布」することにより「透明な弗素樹脂からなるクリアーコート5」を形成し、さらに、クリアーコート5の透明な弗素樹脂を「フッ化炭素樹脂」とすることにより上記相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。
そして、本願補正発明による効果は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測される範囲内であって格別顕著なものではない。
(4)審判請求書及び上申書における請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「すなわち装飾のフレキソ印刷の前には固化熱処理(焼成)を行わない方法である、本願請求項1から3に係る発明に想到することは、困難であるといえます。」(審判請求書8ページ3及び4行)、及び上申書において「仮に引用文献1に記載された第1の方法を含む絵柄の製造法(直接法)の発明において「装飾を印刷する方法としてフレキソ印刷を採用」したとすると、当業者は、二重焼成を採用することとなるため、二重焼成を採用しない本願請求項1に係る発明を得ることはできません。」と主張する。
しかし、引用発明においては、所定の温度で乾燥した、すなわち焼成を行っていないプライマー層3に対して印刷インクによる印刷を行って絵柄4を形成するものであって、直接印刷、転写方式など、絵柄の形成方法は問わない旨の記載(上記第2 2(2)ア(ア)1e)の引用例の記載を参照。)がある。
そして、直接印刷の方法としてフレキソ印刷を採用することは周知技術であるから、引用発明にフレキソ印刷に関する周知技術を組み合わせることにより、フレキソ印刷の前に焼成を行わない方法となる。
よって、上記請求人の主張は採用できない。
(5)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
本願発明は、本願の出願日前に頒布された下記引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用例一覧>
1.特開平2-180221号公報(当審における引用例)
2.特開2010-188309号(当審における周知文献1)
3 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1の記載事項は、前記第2 2(2)に記載したとおりである。
また、引用例2は、拒絶査定における「金属表面への印刷方法としてフレキソ印刷は広く認識されたものである。(例えば下記引用文献2を参照)」の説示から、フレキソ印刷が印刷の技術分野において周知技術であることを示す文献として引用されたものである。
4 判断
本願発明は、前記第2 2で検討した本願補正発明において特定された「調理器具(1)」を「物品(1)」と上位概念化したものであって、「物品(1)」は「調理器具(1)」を含むものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含んだものに相当する本願補正発明が、第2 2(3)に記載したとおり引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-006614