特許拒絶査定不服審判
2015-018750
水溶性バインダーを含む水溶液から得られた薄膜により被覆された電極、その製造方法及び使用
- 審判番号
- 2015-018750
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-000518外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年10月16日
- 審決日
- 2016年11月22日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 518「水溶性バインダーを含む水溶液から得られた薄膜により被覆された電極、その製造方法及び使用」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月16日出願公開、特開2013- 93333〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2003年(平成15年)11月13日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2002年11月13日(CA)カナダ)を国際出願日とする出願である特願2004-550581号の一部を平成25年1月7日に新たな特許出願としたものであって、平成26年10月27日付けの拒絶理由通知に対して、平成27年4月23日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、この査定を不服として同年10月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 本願発明
本願の発明は、平成27年4月23日付けの手続補正書によって補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)である。
[本願発明]
「黒鉛及び/又は炭素により被覆されたLiFePO4である少なくとも1種の活性材料、ゴムであるバインダーを含む水性組成物を電極支持体上に塗布して乾燥させることにより得られた、少なくとも部分的に薄膜で被覆された電極を製造するための方法であって、
炭素及び/又は黒鉛によるLiFePO4の被覆が機械溶融により実施される、上記方法。」
第3 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開平5-225982号公報
2.特開2002-117902号公報
第4 刊行物の記載事項
1.刊行物1
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開平5-225982号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審により付与した。また、「…」は記載の省略を表す。)。
「【0010】本発明で用いられるリチウム含有複合酸化物は、一般的に次のような方法で合成される。すなわち、リチウムと、Co,Ni,Fe,またはMnから選ばれる1種または2種以上の遷移金属の炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物などを出発原料として、これらを化学量論比で混合し、焼成することによって得られる。…」
「【0015】
【作用】本発明の二次電池において、リチウムまたはリチウムを主体とするアルカリ金属を担持しうる有機化合物の焼成体である炭素質物からなる負極体と、セパレータと、リチウム含有複合酸化物を活物質とする正極体とを、この順序で一体的に積層してなる発電要素を具備する非水溶媒二次電池において、該正極体の結着剤にCMCとブタジエン共重合ゴムを用いることにより、正極活物質と結着剤との反応はなくなり、その結果、充放電サイクルを繰り返しても、集電体と正極活物質との導電性を損なうことにより生ずる電池内部抵抗の増加、また結着能力の低下による正極活物質の脱落、及び内部短絡はなくなる。従って、充放電サイクル寿命が向上され、しかも電池性能が安定した非水溶媒二次電池を得ることができる。」
「【0016】
【実施例】…
実施例
市販の炭酸リチウム及び炭酸コバルトを、LiとCoのモル比でLi/Co=1.10になるように秤量し、乳鉢において充分混合した。この混合物をアルミナ製のルツボにいれ、電気炉において、800℃で6時間加熱処理を行った。得られた焼成物は、冷却後再度粉砕し、同様に800℃で6時間加熱処理を行い、その後、蒸留水で充分に洗浄し、未反応のアルカリ成分を洗い流した。この生成物は粉末X線法でLiCoO2と確認された。
【0017】この生成物90重量%、導電材としてアセチレンブラック7重量%、及び結着剤となるCMC1重量%とSBR(ブタジエン共重合ゴム)2重量%を、水中で混練してスラリー状の正極合剤を調整し、この正極合剤を厚さ10μmのアルミニウム基板上に塗布・風乾した後、加圧して一定厚にし、0.16mm厚の正極合剤層を有する板状の正極を製造した。…」
2.刊行物2
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開2002-117902号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付与した。
「【0007】現在、リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、高エネルギー密度、高電圧を有すること等から、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4等が用いられている。しかし、これらの正極活物質は、クラーク数の低い金属元素をその組成中に有しているため、コストが高くつく他、安定供給が難しいという問題がある。また、これらの正極活物質は、毒性も比較的高く、環境に与える影響も大きいことから、これらに代わる新規正極活物質が求められている。
【0008】これに対し、オリビン型構造を有し、一般式LixFe1-yMyPO4(ただし、MはMn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nbの少なくとも1種以上を表し、0.05≦x≦1.2、0≦y≦0.8である。)で表される化合物(以下、単にLixFe1-yMyPO4と称して説明する。)を単独で、又は他の材料と混合させて正極活物質に用いることが提案されている。このLixFe1-yMyPO4を正極活物質に使用した場合には、資源的に豊富で安価な材料である鉄をその組成中に有しているため、上述のLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4等と比較して低コストであり、また、毒性も低いため環境に与える影響も小さく、その実用化が渇望されている。」
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】…
…
【0011】…LixFe1-yMyPO4を正極活物質に使用すると、一定の容積の電池を作製した場合には他の活物質を使用した場合に比べ電気容量が小さくなり、実用的ではない。また、一定の電気容量の電池を作製した場合には他の活物質を使用した場合に比べて外形が大きくなり、やはり実用的ではない。
【0012】そこで、本発明は正極活物質にLixFe1-yMyPO4を使用した場合に、…一定電気容量の電池を作製する場合における小型、薄型化及び一定外形の電池を作製する場合における高電気容量化が達成される非水電解液電池…を提供することを目的とするものである。」
「【0018】非水電解液電池1は、図1に示すように、正極材2と負極材3とが、セパレータ4を介して積層されかつ渦巻き状に複数回巻回された電池素子5が、非水電解液とともに外装ケース6内に封入されている。
【0019】正極材2は、図2に示すように、帯状を呈する正極集電体7の両面に、リチウムを電気的に放出することが可能であり、かつ吸蔵することも可逆的に可能である正極活物質を含有する正極活物質層8が形成されている。正極材2においては、その一端側が、上述したような電池素子5を形成する際の巻回開始端2aとされ、他端側が巻回終止端2bとされる。なお、図2において、(a)は電池素子5を形成した場合において外側に面する外周側を、(b)は内側に面する内周側を図示している。
【0020】正極材2には、その巻回開始端2a近傍に正極リード9が取り付けられている。また、正極材2には、外周側の巻回終止端2b側に正極活物質層8が形成されずに正極集電体7が露出する集電体露呈部2cが設けられている。
【0021】正極集電体7は、例えばアルミニウム箔等からなる。正極活物質層8に含有される正極活物質としては、オリビン型結晶構造を有し、一般式LixFe1-yMyPO4(ただし、MはMn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nbの少なくとも1種以上を表し、0.05≦x≦1.2、0≦y≦0.8である。)で表される化合物を単独で、又は他の材料と混合して使用する。本実施の形態においては、詳細を後述するLiFePO4と炭素材料との複合体を正極活物質として使用する。以下、LixFe1-yMyPO4としてLiFePO4を用い、これと炭素材料とからなる複合体を正極活物質として用いる場合について説明する。
【0022】LiFePO4と炭素材料との複合体(以下、単にLiFePO4炭素複合体と称して説明する。)は、LiFePO4粒子の表面に、当該LiFePO4粒子の粒径に比べて極めて小とされる粒径を有する炭素材料の粒子が多数個、付着してなるものである。炭素材料は導電性を有するので、炭素材料とLiFePO4とから構成されるLiFePO4炭素複合体は、例えばLiFePO4のみを正極活物質とした場合と比較すると電子伝導性に優れている。すなわち、LiFePO4炭素複合体は、LiFePO4粒子の表面に付着してなる炭素粒子により電子伝導性が向上するので、LiFePO4本来の容量が十分に引き出される。したがって、正極活物質としてLiFePO4炭素複合体を用いることにより、高電気容量を有する非水電解液電池1を実現できる。」
「【0048】まず、正極活物質としてLiFePO4と炭素材料との複合体を、以下に示す製造方法に従って合成する。
【0049】この正極活物質を合成するには、LiFePO4の合成原料を混合し、ミリングを施し、焼成し、且つ上記の何れかの時点で炭素材料を添加する。…
…
【0062】ミリング工程では、混合工程で得られた混合物に、粉砕・混合同時に行うミリングを施す。本発明におけるミリングとは、ボールミルを用いた強力な粉砕・混合をいう。また、ボールミルとしては、例えば遊星型ボールミル、シェイカー型ボールミル、メカノフュージョン等を好適に用いることができる。
…
【0086】また、炭素材料を焼成後に添加する場合、焼成により合成された生成物はLiFePO4炭素複合体ではなく、LiFePO4である。そこで、焼成により合成されたLiFePO4に炭素材料を添加した後、再度ミリングを施す。ミリングを再度行うことにより、添加した炭素材料は微細化され、LiFePO4の表面に付着しやすくなる。また、ミリングを再度行うことにより、LiFePO4と炭素材料とが十分に混合されるので、微細化された炭素材料をLiFePO4の表面に均一に付着させることができる。したがって、焼成後に炭素材料を添加した場合においても、ミリングを施す前に炭素材料を添加した場合と同様の生成物、すなわちLiFePO4炭素複合体を得ることが可能であり、また、上述した同様の効果を得ることが可能である。
【0087】上述のようにして得られたLiFePO4炭素複合体を正極活物質として用いた非水電解液電池1は、例えば次のようにして製造される。
【0088】正極材2としては、まず、正極活物質となるLiFePO4炭素複合体と結着剤とを溶媒中に分散させてスラリーの正極合剤を調製する。次に、得られた正極合剤を正極集電体7上に均一に塗布し、乾燥させて正極活物質層8を形成することにより正極材2が作製される。このとき、正極合剤の塗布は、正極集電体7の外周側の巻回終止端2b側に集電体露呈部2cが設けられるように行われる。上記正極合剤の結着剤としては、公知の結着剤を用いることができるほか、上記正極合剤に公知の添加剤等を添加することができる。」
第5 当審の判断
1.刊行物1に記載された発明
刊行物1の【0015】、【0016】の記載(特に、下線部を参照)によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「リチウムまたはリチウムを主体とするアルカリ金属を担持しうる有機化合物の焼成体である炭素質物からなる負極体と、セパレータと、リチウム含有複合酸化物を活物質とする正極体とを、この順序で一体的に積層してなる発電要素を具備する非水溶媒二次電池における、前記正極体を、前記活物質としてLiCoO2、導電材としてアセチレンブラック、及び結着剤となるCMCとSBR(ブタジエン共重合ゴム)を、水中で混練してスラリー状の正極合剤を調整し、この正極合剤をアルミニウム基板上に塗布・風乾した後、加圧して一定厚にして製造する方法。」
2.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における、「正極体」、「活物質」、「結着剤」となる「SBR(ブタジエン共重合ゴム)」、「水中で混練し」た「スラリー状の正極合剤」、「アルミニウム基板」は、それぞれ、本願発明における、「電極」、「少なくとも1種の活性材料」、「ゴムであるバインダー」、「水性組成物」、「電極支持体」に相当する。
引用発明における、「正極体」を、「正極合剤をアルミニウム基板上に塗布・風乾した後、加圧して一定厚にして製造する方法」は、本願発明における、「水性組成物を電極支持体上に塗布して乾燥させることにより得られた、少なくとも部分的に薄膜で被覆された電極を製造するための方法」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
少なくとも1種の活性材料、ゴムであるバインダーを含む水性組成物を電極支持体上に塗布して乾燥させることにより得られた、少なくとも部分的に薄膜で被覆された電極を製造するための方法。
<相違点1>
少なくとも1種の活性材料が、本願発明では、「黒鉛及び/又は炭素により被覆されたLiFePO4である」のに対し、引用発明では、LiCoO2である点。
<相違点2>
本願発明では、「炭素及び/又は黒鉛によるLiFePO4の被覆が機械溶融により実施される」のに対して、引用発明では、そのようなことは実施されない点。
3.相違点についての検討
(1)引用発明では、リチウム含有複合酸化物を活性材料とする電極における、前記リチウム含有複合酸化物がLiCoO2である。
(2)LiCoO2は、リチウムイオン二次電池の正極活性材料として用いられているが、コストが高くつく他、安定供給が難しく、また、毒性も比較的高く環境に与える影響も大きいという問題があることから、これに代わる正極活性材料が求められており、これに対し、オリビン型構造を有する、LiFePO4は資源的に豊富で安価なFeを有しているため、低コストであり、また、毒性も低いため環境に与える影響も小さいので、上記問題を解決し得る正極活性材料としてその実用化が渇望されていることは、刊行物2の【従来の技術】(特に、【0007】、【0008】、【0011】)にも記載されているように、リチウムイオン二次電池の技術動向として当業者に周知の事項である。
(3)したがって、活性材料がLiCoO2である引用発明が上記問題を有していることは当業者ならば理解し得ることである。
(4)そして、刊行物2には、LiCoO2の上記問題を解決し、さらに、LiFePO4を正極活物質(活性材料)に使用した場合に、他の活物質を使用した場合に比べ電気容量が小さくなり実用的ではないとの問題を解決するために、LiFePO4粒子の表面に、当該LiFePO4粒子の粒径に比べて極めて小とされる粒径を有する炭素材料の粒子が多数個付着してなる、LiFePO4炭素複合体(以下、単に、「LiFePO4炭素複合体」という。)(【0021】、【0022】)であって、焼成により合成されたLiFePO4に炭素材料を添加した後、メカノフュージョン(本願における「機械溶融」に相当する。)等を用いたミリングを行うことで得られた、LiFePO4炭素複合体(【0062】、【0086】)を正極活物質として用いることが記載されている。
(5)してみると、引用発明において、上記複数の問題を解決すべく、前記活性材料を、Feを含有したリチウム含有複合酸化物とし得ること(刊行物1の【0010】)を考慮し、当該Feを含有し得るリチウム含有複合酸化物として、刊行物2の記載から導出される、LiFePO4炭素複合体であって、LiFePO4に炭素材料を添加した後、機械溶融を用いたミリングを行うことで得られた、LiFePO4炭素複合体を用いること、すなわち、上記相違点1、2に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
(6)また、このように容易に想到し得た構成が、本願発明の、電極の製造に有機溶媒を使用する場合に必要となる、無水チャンバーや特別な予防策等の使用を避けることが可能となる等の効果を奏することは、当業者であれば当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。
(7)よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.請求人の主張について
(1)請求人の主張
請求人は、平成27年10月16日付けの審判請求書において、以下のa)~c)の主張している。
a)本願発明では、機械溶融によって炭素や黒鉛がLiFePO4を被覆しているが、この点は、刊行物1には何ら記載されていないし、その示唆もない。また、刊行物2には、ミリングなどの方法によってメカノフュージョンしたLiFePO4/炭素複合体が記載されているが、刊行物2には、その内容を刊行物1に係る発明と組み合わせることを示唆するような記載はないから、刊行物1と刊行物2を組み合わせて本願発明を完成させることは当業者といえども簡単なことではない。
b)本願発明のように、機械溶融によれば炭素や黒鉛とLiFePO4との結合を強化できるだけでなく、高温での処理が不要になるというメリットが生じるが、このような点は、刊行物1や刊行物2から当業者が予測できたことではない。
c)CMCとブタジエン共重合ゴムの混合物をバインダーとして用いることを最大の特徴とする刊行物1から、CMCをバインダーとして用いない補正後の本願発明を当業者が簡単に思いつくとは考えられないし、刊行物2にも、バインダーとしてゴムのみを用いることは何ら示唆されていないから、刊行物2を考慮したとしても刊行物1から補正後の本願発明を思いつくことは容易ではない。
(2)当審の判断
ア.しかしながら、請求人の上記a)~c)の主張は、以下の理由により、いずれも採用できない。
イ.すなわち、上記3.(1)~(5)で検討したとおり、刊行物1、刊行物2には、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された技術を組み合わせる動機付けとなる記載があるといえるから、上記a)の主張は、当を得た主張ではない。
ウ.また、刊行物2の【0048】、【0049】、【0062】、【0086】の記載事項によれば、焼成により合成されたLiFePO4に炭素材料を添加した後、メカノフュージョンを用いたミリングを行うことで得られた、LiFePO4炭素複合体は、LiFePO4と炭素材料との結合が強化されているといえるし、その複合体は、炭素前駆体を熱分解して炭素へと変換する処理を行って得られたものではないから、高温での処理が不要であったことは自明の事項であって、上記b)の主張も、当を得た主張ではない。
エ.本願の請求項1には、水性組成物に含まれるバインダーに関して、「ゴムであるバインダーを含む水性組成物」と特定されているだけで、ゴムのみがバインダーとして用いられることは特定されていないから、本願発明は、刊行物1に記載された、CMCとSBR(ブタジエン共重合ゴム)の両方をバインダーとして用いることをも含むものである。
よって、本願発明ではゴムのみがバインダーとして用いられるとの主張は、請求項の記載に基づかないものであり、上記c)の主張も、当を得た主張ではない。
オ.よって、請求人の上記主張は採用しない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとの原査定の拒絶理由は妥当である。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-018750