特許拒絶査定不服審判
2015-014411
窒素酸化物排出量を低減する方法
- 審判番号
- 2015-014411
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-544626外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年07月31日
- 審決日
- 2017年02月03日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人浅村特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (C10L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-544626「窒素酸化物排出量を低減する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月23日国際公開、WO2011/075362、平成25年 4月25日国内公表、特表2013-514436〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成22年(2010年)12月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2009年12月18日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成26年10月14日付けで拒絶理由通知が通知され、平成27年3月16日に手続補正書及び意見書が提出され、同年4月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月31日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に、手続補正書が提出され、平成28年7月6日付けで審尋が通知されたものの、応答期間内に回答書の提出はなかったものである。
2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年7月31日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、請求項1の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
ディーゼル燃料組成物の臭気を少なくし、及びディーゼル燃料組成物の燃焼からの窒素酸化物排出量を低減する方法であって、
(i)
(a)10ppm未満の硫黄含量;
(b)50℃より高い引火点;
(c)1.5未満のUV吸光度Atotalであって、
Atotal=Ax+10(Ay)
(式中、Axが272ナノメートルでのUV吸光度であり、
Ayが310ナノメートルでのUV吸光度である)
を含む式により求まる、UV吸光度Atotal;
(d)5パーセント超のナフタレン含量(審決注:「ナフタレン」は、「ナフテン」の誤記と認める。);
(e)-12℃未満の曇り点;
(f)10ppm未満の窒素含量;
(g)改良型燃焼エンジンにおける、300Fより高い5%蒸留温度及び600Fより高い95%蒸留温度;並びに
(h)10重量%未満の芳香族含量
を有する石油由来ディーゼル燃料組成物を提供するステップと;
(ii)前記石油由来ディーゼル燃料組成物を改良型燃焼エンジンに噴射するステップと;並びに
(iii)非火花点火エンジンの燃焼室内で(ii)における石油由来ディーゼル燃料を燃焼するステップとを含み、窒素酸化物排出量が従来のディーゼル燃料を非火花点火エンジンに用いた場合の窒素酸化物排出量より低い、方法。」
3.原査定の概要
原査定の概要は、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
4.引用例に記載の事項
原査定の拒絶理由において引用文献1として引用された本願出願日前の刊行物である特開2006-274062号公報(以下、「引用例」という)には、次の事項が記載されている。
(i)「【請求項1】硫黄分10ppm以下、飽和分量が80容量%以上、オレフィン分0.1容量%以下、2環以上の多環芳香族分が2容量%以下であり、以下の(I)式で示される動粘度指数Aが2.99~4.25、(II)式で示される流動性指数Bが130以下であり、動粘度指数Aと流動性指数Bとの関係が(III)式を満足することを特徴とするディーゼルエンジン用燃料油組成物。
動粘度指数A=0.00743×(10%留出温度:℃)
+0.00519×(90%留出温度:℃)
+0.936×(パラフィン分岐度指数)・・・・・・・・・(I)式
流動性指数B=0.173×(10%留出温度:℃)
+0.267×(90%留出温度:℃)
+0.212×(n-パラフィン量:質量%)
-0.462×(ナフテン類量:容量%)
-41.2×(パラフィン分岐度指数)・・・・・・・・・・(II)式
7.00×Exp(0.013×流動性指数B)≦Exp(動粘度指数A)・ (III)式」
(ii)「【技術分野】
【0001】
本発明はディーゼル自動車用の燃料油組成物に関し、低硫黄、低芳香族分で、低温流動性に優れるディーゼルエンジン用燃料油組成物に関するものである。」
(iii)「【0016】
本発明におけるディーゼルエンジン用燃料油組成物は、現行のディーゼルエンジンに使用可能なパラフィン系燃料を提供することを目的としており、燃料品質としてはJISK2204で定められる軽油規格に適合することを基本とする。JIS規格軽油としては、特1号、1号、2号、3号、特3号全般を示す。動粘度指数A、流動性指数B、動粘度指数Aと流動性指数Bとの関係が請求項の範囲を満たさない場合、いずれのJIS規格軽油にも適合できないが、動粘度指数A、流動性指数B、動粘度指数Aと流動性指数Bとの関係が請求項の範囲を満たすことにより、特1号から特3号までのいずれかの油種に適合させることが可能である。」
(iv)「【0017】
本発明のディーゼルエンジン用燃料油組成物の蒸留性状は、10容量%留出温度が170~260℃、好ましくは180~250℃、90容量%留出温度が240~350℃、好ましくは250~340℃である。10容量%留出温度が、170℃以上であれば、軽油として適切な引火点および動粘度を保つことができ、260℃以下であればWAX析出温度の上昇を防ぎ低温流動性を保つ面で好ましい。90容量%留出温度が240℃以上であれば、動粘度を適切に保つことができ、350℃以下であればWAX析出温度の上昇を防ぎ低温流動性を保つ面で好ましい。」
(v)「【0025】
本発明におけるディーゼルエンジン用燃料油組成物は、ナフテン類を含有しなくても構わない(0容量%を含む)が、好ましくは、0.4容量%以上含有する。ナフテン類含有量が0.4容量%以上であることにより、WAXの主成分であるn-パラフィンが希釈される効果が大きくなるため、低温流動性を保つ面で好ましい。」
(vi)「【0033】
本発明のディーゼルエンジン用燃料油組成物は、必要に応じて従来軽油と混合使用することができる。軽油としてはJIS規格で定められる、特1号、1号、2号、3号、特3号全般が使用可能であり、特に限定されない。ここで使用される軽油は、種々の石油留分から蒸留によりその蒸留性状を調製し、水素化脱硫、芳香族抽出処理等の処理を行なった軽油留分に、灯油等を適宜配合して製造される。その他、灯油留分を混合していない軽油基材や、重油を接触分解、水素化脱硫、水素化分解処理等をした後に分留される軽油留分等でも、その性状がJISK2204で定められる軽油規格を満たすものであれば使用可能であり、特に限定されない。」
(vii)【0034】
また、本発明のディーゼルエンジン用燃料油組成物には必要に応じて、その他各種の添加剤を適宜配合することができる。このような添加剤としては、低温流動性向上剤、潤滑性向上剤、セタン価向上剤、界面活性剤、防腐剤、防錆剤、泡消剤、清浄剤、酸化防止剤、色相改善剤、など公知の燃料添加剤が挙げられる。これらを一種または数種組み合わせて添加することができる。」
(viii)「【0045】
(実施例4)
原油を常圧蒸留することにより得られた沸点範囲150~360℃の軽油留分に、重油の接触分解装置の生成油を分留した沸点範囲160~350℃の分解軽油基材を7容量%混合した後、水素化脱硫により硫黄分を5質量ppm以下にした。さらにその脱硫軽油基材を、白金-パラジウムを担持したシリカ-アルミナ触媒を用い、反応温度250℃、液空間速度(LHSV)1.5h-1、水素圧力5MPaで核水素化処理を行なった生成油を蒸留することにより、沸点範囲220~360℃のパラフィン系ディーゼルエンジン用燃料油組成物を得た。得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物の性状を表1に示す。」
(ix)「【0050】
【表1】
」
5.引用例に記載の発明の認定
(a)上記(ii)で示した【0001】の「低硫黄、低芳香族分で、低温流動性に優れるディーゼルエンジン用燃料油組成物に関するものである。」という記載から、引用例には、「低硫黄、低芳香族分で、低温流動性に優れるディーゼルエンジン用燃料油組成物」が記載されているということができる。
(b)上記(viii)で示した【0045】の「(実施例4)
原油を常圧蒸留することにより得られた・・・軽油留分に、重油の接触分解装置の生成油を分留した・・・分解軽油基材を・・・混合した後、水素化脱硫により硫黄分を5質量ppm以下にした。さらにその脱硫軽油基材を、・・・核水素化処理を行なった生成油を蒸留することにより、・・・パラフィン系ディーゼルエンジン用燃料油組成物を得た。得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物の性状を表1に示す。」という記載とから、引用例には、「原油より得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物」が記載されているということができる。
(c)上記(ix)で示した【0050】【表1】の「実施例4」の「ディーゼルエンジン用燃料油組成物」の性状についての記載から、引用例には、「n-パラフィン含有量が15.80質量%、パラフィン分岐度指数が0.405、イソパラフィンの分岐度指数が0.398、ナフテン類量が29.0容量%、硫黄含有量が1質量ppm未満、窒素含有量が1質量ppm未満、酸素含有量が0質量%、飽和分含有量が92.8容量%、芳香族分含有量が7.2容量%、2環以上の多環芳香族類含有量が0.5容量%、オレフィン分含有量が0.0容量%、蒸留の初留点が217.0℃、蒸留の10容量%留出温度が230.0℃、蒸留の90容量%留出温度が316.0℃、蒸留の終点が360.0℃、15℃密度が0.7965g/cm3、30℃動粘度が3.300mm2/s、目詰まり点が-22℃、流動点が-27.5℃、である」「ディーゼルエンジン用燃料油組成物」が記載されているということができる。
(d)上記(i)ないし(ix)の記載事項及び上記(a)~(c)の検討事項からして、引用例(実施例4)には、
「原油より得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物であって、硫黄含有量が1質量ppm未満、ナフテン類量が29.0容量%、窒素含有量が1質量ppm未満、蒸留の初留点が217.0℃、蒸留の10容量%留出温度が230.0℃、蒸留の90容量%留出温度が316.0℃、蒸留の終点が360.0℃、芳香族分含有量が7.2容量%、目詰まり点が-22℃、流動点が-27.5℃、である低硫黄、低芳香族分で、低温流動性に優れるディーゼルエンジン用燃料油組成物。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
6.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「原油より得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物」、「硫黄含有量」、「ナフテン類量」、「窒素含有量」、「質量ppm」及び「容量%」は、本願発明の「石油由来ディーゼル燃料の組成物」、「硫黄含量」、「ナフテン含量」、「窒素含量」、「ppm」及び「パーセント」に、それぞれに相当する。
(2)引用発明の「蒸留の」「容量%留出温度」は、本願発明の「%蒸留温度」に相当する。
(3)本願発明の「石油由来ディーゼル燃料の組成物」(以下、単に「本願発明の組成物」ということもある。)及び引用発明について、
ア 引用発明の「蒸留の初留点が217.0℃、蒸留の10容量%留出温度が230.0℃、蒸留の90容量%留出温度が316.0℃、蒸留の終点が360.0℃」であることは、蒸留の5容量%留出温度が217.0℃と230.0℃の間にあり、蒸留の95容量%留出温度が316.0℃と360.0℃の間にあることを示すものであるといえる。
そうすると、217.0℃は、華氏に換算すれば、422.6Fと表され、316.0℃は、600.8Fと表されることから、引用発明は、蒸留の5容量%留出温度が422.6Fよりも高く、蒸留の95容量%留出温度が600.8Fよりも高いといえる。
してみると、引用発明の「蒸留の初留点が217.0℃、蒸留の10容量%留出温度が230.0℃、蒸留の90容量%留出温度が316.0℃、蒸留の終点が360.0℃」であることは、本願発明の組成物が「(g)300Fより高い5%蒸留温度及び600Fより高い95%蒸留温度」であることに相当する。
イ 引用発明が「硫黄含有量が1質量ppm未満」であることと、本願発明の組成物が「(a)10ppm未満の硫黄含量」であることとは、「(a)10ppm未満の硫黄含量」である点で一致する。
ウ 引用発明が「ナフテン類量が29.0容量%」であることと、本願発明の組成物が「(d)5パーセント超のナフテン含量」であることとは、「(d)5パーセント超のナフテン含量」である点で一致する。
エ 引用発明の「窒素含有量が1質量ppm未満」であることと、本願発明の組成物が「(f)10ppm未満の窒素含量」であることとは、「(f)10ppm未満の窒素含量」である点で一致する。
(4)以上のとおりであるから、本願発明の組成物と引用発明とは、
「石油由来ディーゼル燃料組成物であって、
(a)10ppm未満の硫黄含量;
(d)5パーセント超のナフテン含量;
(f)10ppm未満の窒素含量;及び
(g)300Fより高い5%蒸留温度及び600Fより高い5%蒸留温度、である石油由来ディーゼル燃料組成物。」という点で一致し、本願発明と引用発明とは、次の相違点1~5で相違する。
(相違点1)
本願発明の組成物の引火点は、「50℃より高い」のに対し、引用発明の組成物の引火点は規定されていない点。
(相違点2)
本願発明の組成物は、「Atotal=Ax+10(Ay)
(式中、Axが272ナノメートルでのUV吸光度であり、
Ayが310ナノメートルでのUV吸光度である)
を含む式により求まる、UV吸光度Atotal」が「1.5未満」であるのに対し、引用発明の組成物のUV吸光度は規定されていない点。
(相違点3)
本願発明の組成物の「曇り点」は「-12℃未満」であるのに対し、引用発明の曇り点の温度は規定されていない点。
(相違点4)
本願発明の組成物の「芳香族含量」は「10重量%未満」であるのに対し、引用発明の芳香族含量は7.2容量%である点。
(相違点5)
本願発明は、ディーゼル燃料組成物を用いた方法に関するものであり、「ディーゼルエンジン用燃料油組成物の臭気を少なくし、及びディーゼル燃料組成物の燃焼からの窒素酸化物排出量を低減する方法であって、
(i)石油由来ディーゼル燃料の組成物を提供するステップと;
(ii)前記石油由来ディーゼル燃料組成物を改良型燃焼エンジンに噴射するステップと;並びに
(iii)非火花点火エンジンの燃焼室内で(ii)における石油由来ディーゼル燃料を燃焼するステップとを含み、窒素酸化物排出量が従来のディーゼル燃料を非火花点火エンジンに用いた場合の窒素酸化物排出量より低い、方法」であるのに対し、引用発明は、「原油より得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物」であって、そのようなステップを備えた方法ではない点。
7.判断
相違点について検討する。
(相違点1)について
引用例には、上記(iii)で示した「燃料品質としてはJISK2204で定められる軽油規格に適合することを基本とする。JIS規格軽油としては、特1号、1号、2号、3号、特3号全般を示す。」(【0016】)及び同(vi)で示した「本発明のディーゼルエンジン用燃料油組成物は、必要に応じて従来軽油と混合使用することができる。軽油としてはJIS規格で定められる、特1号、1号、2号、3号、特3号全般が使用可能であり、特に限定されない。」(【0033】)との記載があり、また、軽油(ディーゼルエンジン用燃料油組成物)に関する「JISK2204(特1号、1号、2号、3号、特3号全般)」は、特1号、1号及び2号では引火点を50℃以上に、3号及び特3号では引火点を45℃以上に規定するものであるところ、特に、上記「軽油としてはJIS規格で定められる、特1号、1号、2号、3号、特3号全般が使用可能であり、特に限定されない。」(【0033】)からして、引用発明の「原油より得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物」は、上記特1号、1号及び2号の規定を満たすものである場合を包含するものであるから、引用発明の引火点は50℃以上であるということができる。
そして、「50℃以上の引火点」及び「50℃超(50℃をほんの僅かに超えた温度以上)の引火点」それぞれの技術的意義に差異があるとは言い難いことから、「引火点は50℃以上」と「引火点は50℃超」とは、同義であるというべきである。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。
(相違点2)及び(相違点4)について
本願明細書の【0035】には、「芳香族含量は、特定の波長、すなわち272及び310nmにおけるUV吸光度によって近似することもできる。芳香族化合物は、一般的に272ナノメートル(nm)及び310ナノメートル(nm)の範囲の紫外(UV)波長の光を吸収する。したがって、Atotalとして示されるUV吸光度の合計は、所定のディーゼル燃料の芳香族含量に関連する。我々は、本発明の無臭ディーゼル燃料組成物を有するには、以下の式
Atotal=A272+10(A310)
[式中、A272は272nmにおけるUV吸光度であり、A310は310nmにおけるUV吸光度である]で示されるAtotalが約1.5未満、好ましくは約1.0未満、最も好ましくは約0.8未満でなければならないことを見いだした。」との記載があり、また、同【0036】には、「本発明の実施形態において、燃料の総芳香族化合物含量は、10%未満、好ましくは7.5%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは2%未満、さらにより好ましくは1%未満、さらに最も好ましくは0.5%未満である。」との記載があり、これらから、本願明細書には、燃料中の全芳香族化合物含量が10%未満であることで、「UV吸光度Atotalは、約1.5未満」となることが記載されているといえる。
一方、平成28年7月6日付けの審尋において、芳香族分含有量が7.2容量%の引用発明について、そのUV吸光度Atotalが1.5未満とならない技術的根拠、及び、芳香族含有量が10重量%未満とならない技術的根拠があれば、それらを示すように請求人に求めたところ、応答期間内に回答がなく、引用発明は、UV吸光度Atotalが1.5未満であって、しかも、全芳香族化合物含量が10%未満であるものと、認めざる得ない。
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。
また、引用発明が、仮に、全芳香族化合物含量が10%未満ではない、又は、UV吸光度Atotalが1.5未満ではない、としても、引用発明は、「低硫黄、低芳香族分で、低温流動性に優れるディーゼルエンジン用燃料油組成物」であるから、芳香族を低減すること等によって、引用発明を芳香族含量を10%未満とし、UV吸光度Atotalを1.5未満とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(相違点3)について
引用発明は、「目詰まり点が-22℃、流動点が-27.5℃」の「原油より得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物」であり、ここで、流動点(℃)、目詰まり点(℃)及び曇り点(℃)の間に、
流動点(-27.5℃)<目詰まり点(-22℃)<曇り点、
という関係があることは技術常識(例えば、拒絶査定において引用文献2として引用された特開2007-270107号公報の【0107】における【表2】参照)であることからして、引用発明は、-22℃よりも高い曇り点を有するものであるということができる。
また、本願発明と引用発明とは、上記「6.対比」における検討、上記「(相違点1)について」及び 「(相違点2)について」における検討からして、「硫黄含量」、「引火点」、「UV吸光度Atotal」、「ナフテン含量」、「窒素含量」、「5%蒸留温度」及び「95%蒸留温度」のそれぞれが同等である、つまり、多くの特性において同等であるので、引用発明の曇り点についても、本願発明の組成物の「曇り点」と同等であるとみるのが妥当である。
そうすると、引用発明は、「曇り点は(-22℃よりも高く)-12℃未満」である蓋然性が高いというべきである。
したがって、相違点4は実質的な相違点ではない。
(相違点5)について
引用発明は、「低硫黄、低芳香族分で、低温流動性に優れるディーゼルエンジン用燃料油組成物」であるから、該組成物を周知の改良型燃焼エンジンに提供すること、すなわち、引用発明を用いて、改良型燃焼エンジンに噴射するステップ、非火花点火エンジンの燃焼室内で該組成物を燃焼するステップとを含み、窒素酸化物排出量が従来のディーゼル燃料を非火花点火エンジンに用いた場合の窒素酸化物排出量より低い、方法とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(まとめ)
よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
8.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2ないし19に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2015-014411