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特許拒絶査定不服審判

2022-000018

潤滑組成物の酸化安定性を向上させる方法

審判番号
2022-000018
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-517884
請求日
2022年01月04日
審決日
2023年06月22日
公報発行日
2023年12月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
  • 【請求人代理人】山本 修
  • 【請求人代理人】宮前 徹
  • 【請求人代理人】新井 規之
審判長/審判官
  • 審判長 亀ヶ谷 明久
  • 審判官 塩見 篤史
  • 審判官 関根 裕
分類
P18 .121-Z (C10L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-517884「潤滑組成物の酸化安定性を向上させる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月12日国際公開、WO2018/065331、令和 1年11月14日国内公表、特表2019-533045〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)9月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年10月3日(以下「優先日」という。)、米国)を国際出願日とする出願であって、令和2年9月25日に手続補正書が提出され、令和3年5月12日付けの拒絶理由通知に対して、同年8月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年同月25日付けで拒絶査定がなされ(謄本送達は同年9月1日)、これに対して令和4年1月4日に審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1~5に係る発明は、令和3年8月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」ともいう。 「火花点火式内燃機関を潤滑にするために使用される潤滑組成物の酸化安定性を向上させる方法であって、前記火花点火式機関がハイブリッド電気自動車のパワートレイン内に含まれ、前記方法が前記火花点火式機関の燃焼室にガソリン組成物を導入するステップを含み、前記ガソリン組成物が、炭化水素基本燃料であって、前記基本燃料を基準として、10~20体積%のオレフィン、5体積%以下の少なくとも10個の炭素原子を有するオレフィン、および5体積%以下の少なくとも10個の炭素原子を有する芳香族化合物を含有する炭化水素基本燃料を含み、前記炭化水素基本燃料が30~40℃の範囲の初期沸点、45~57℃の範囲のT10、82~104℃の範囲のT50、140~150℃の範囲のT90、および220℃以下の最終沸点を有し、前記ハイブリッド電気自動車がプラグインハイブリッド電気自動車である、方法。」 第3 原査定の拒絶理由の概要 原査定には「この出願については、令和3年5月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶すべきものです。」と記載され、当該理由は請求項1~5に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特表2006-527780号公報 第4 当審の判断 1 引用文献1の記載事項 上記第3の原査定に引用された引用文献1には以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 オレフィンを5~20容量%含有すると共に、炭素原子数10以上のオレフィンが5容量%以下であり、炭素原子数10以上の芳香族が5容量%以下であり、初期沸点が24~45℃の範囲であり、T10が38~60℃の範囲であり、T50が77~110℃の範囲であり、T90が130~190℃の範囲であり、且つ最終沸点が220℃以下である炭化水素ベース燃料を含有するガソリン組成物。」 「【請求項3】 前記炭化水素ベース燃料がオレフィンを12~20容量%含有する請求項1又は2に記載のガソリン組成物。」(同公報に添付の平成19年7月19日発行の「特許法第17条の2の規定による補正の掲載」の【請求項3】) 「【請求項6】 前記ベース燃料の初期沸点が30~40℃の範囲であり、T10が45~57℃の範囲であり、T50が82~104℃の範囲であり、T90が140~150℃の範囲であり、且つ最終沸点が180℃以下である請求項1~5のいずれか1項に記載のガソリン組成物。 ・・・ 【請求項8】 エンジンクランクケース潤滑油の酸化安定性を改良するため、スパーク点火エンジン用の燃料として請求項1~6のいずれか1項に記載のガソリン組成物を使用する方法。 ・・・ 【0013】 本発明のガソリン組成物を燃料とするエンジンにおいて、エンジン潤滑油(クランクケース潤滑油)の安定性向上を達成する際、38~60℃のT10範囲と共に、オレフィン含有量は重要なパラメーターであると考えられる。クランクケース潤滑油が十分に暖まらないうちに、エンジンを頻繁に止めたり、始動させる走行は、潤滑油の酸化に厳しい条件を表わす。高い前端揮発減量(低T10)及び特定のオレフィン含有量は、エンジンのクランクケースに入る有害な燃焼ガスのブローバイを減少させるものと考えられる。 ・・・ 【0022】 前記定義したガソリン組成物は、酸化防止剤、腐蝕防止剤、灰分なしの洗浄剤、霞み防止剤(dehazer)、染料、潤滑性改良剤、合成油又は鉱油担体液のような添加剤を種々含有してよい。好適な添加剤の例は、例えばUSP 5,855,629及びDE-A-19955651に記載されている。 ・・・ 【0026】 本発明は更に、スパーク点火エンジンの燃焼室に前記定義したガソリン組成物を導入することを特徴とするスパーク点火エンジンを動力とする自動車の操作法を提供する。 【0027】 スパーク点火エンジン用の燃料として前記ガソリン組成物を使用すると、エンジン潤滑油(クランクケース潤滑油)の安定性を向上して、オイル交換の頻度を減少させ、エンジンの摩耗、例えばエンジンのベアリングの摩耗、エンジン部品の摩耗(例えばクランクシャフト及びピストンクランクの摩耗)を減少させ、加速性能を向上し、最大動力出力を増大させ、及び/又は燃料の系財政を向上する等、多数の利点のうちの1つが得られる。 ・・・ 【0035】 実施例1 3種の炭化水素ベース燃料ガソリンをテストした。比較例Aは、2002年にオランダで販売されたガソリンに広く使用されたベース燃料である。比較例Bは、芳香族を多くするため、重質プラットホーメート(platformate)(白金触媒上でナフサの改質により製造した製油所流の高沸点フラクション)を添加した比較例Aに相当する。実施例1は、オレフィンを多くするため、軽質接触分解ガソリン(重質炭化水素の接触分解により製造した製油所流の低沸点フラクション)を添加した比較例Aに相当する。これら燃料の硫黄含有量は、硫黄水準の差に起因する可能性のある影響を除くため、必要に応じて、ジメチルスルフィドの添加により50重量ppmのSに調節した。 得られた燃料の特性を第2表に示す。 【0036】 【表2】 [図:0001404007000001.jpg] これら燃料のテスト結果を第3表に示す。 【0037】 【表3】 [図:0001404007000002.jpg] 【0038】 TAN/TBN交差が起こる点は、オイル中に十分な酸化変化が起きている点の指標となると考えられる。 前記結果は、実施例1の燃料を使用すると、クランクケース潤滑油の酸化安定性に極めて有益な効果を与え、潤滑油の寿命を延ばし、エンジンオイルの交換頻度を減らし(サービス間隔を延長する)、更にはエンジンの摩耗を減少させるという良好な指標となる。 錫の水準は、エンジンベアリングの摩耗に最も関連しやすい。鉄の水準は、エンジン部品(カムシャフト及びピストンクランク)の摩耗に関連している。 【0039】 実施例2及び3 4種の炭化水素ベース燃料をテストした。比較例Cは、2002年オランダで販売された燃料に広く使用されたベース燃料である。比較例Dは、芳香族を多くするため、重質プラットホーメートを添加した比較例Cに相当する。実施例1は、比較例Cのベース燃料85容量部当りジイソブチレンを15容量部添加した比較例Cに相当する。ジイソブチレンは、2,4,4-トリメチル-1-ペンテンと2,4,4-トリメチル-2-ペンテンとの、工業的製造法で得られる割合の混合物である。実施例3は、製油所からの(ex-refinery)C5及びC6-オレフィン流を比較例Cのベース燃料85容量部当り15容量部添加した比較例Cに相当する。 得られた燃料の特性を第4表に示す。 【0040】 【表4】 [図:0001404007000003.jpg] これら燃料のテスト結果を第5表に示す。 【0041】 【表5】 [図:0001404007000004.jpg] 【0042】 以上の結果は全体として、実施例2、3の燃料を使用すると、クランクケース潤滑油の酸化安定性に全く予測し得ない利点を与えると共に、実施例1と同様に良好な結果が得られる良好な指標となる。 【0043】 実施例4 比較例Cと同様なベース燃料(比較例E)をジイソブチレン及びエタノールとブレンドして、ジイソブチレン5%v/v及びエタノール5%v/vを含むガソリン組成物(実施例4)を得た。得られたガソリンは、オレフィンを13.02容量%含有していた。このガソリンの初期沸点は40℃、最終沸点は168.5℃で、また本発明のその他のパラメーターに適合していた。この燃料をトヨタAvensis 2.01 VVT-i直接噴射スパーク点火エンジンで比較例A及びエタノールを5%v/v含む同じベース燃料(比較例F)と比べて、テストした。両比較例E、Fともオレフィン含有量(全オレフィン量はそれぞれ3.51%v/v及び3.3%v/v)が本発明のパラメーターの範囲外である。これら燃料の詳細を第6表に示す。 【0044】 【表6】 [図:0001404007000005.jpg] 【0045】 加速テスト(1200-3500rpm、第5ギア、全開スロットル(WOT)、1200-3500rpm、第4ギア、WOT、及び1200-3500rpm、第4ギア75%スロットル)では、実施例4は、比較例E、Fのいずれと比べても常に優れた性能(加速時間)を示した。エンジンに実施例4の燃料を入れた場合、1500rpm及び2500rpmで、比較例E又はFに比べて極めて高い動力を発揮した。」 2 引用文献1に記載された発明 (1)上記1で摘記した引用文献1の請求項1には、「オレフィンを5~20容量%含有すると共に、炭素原子数10以上のオレフィンが5容量%以下であり、炭素原子数10以上の芳香族が5容量%以下であり、初期沸点が24~45℃の範囲であり、T10が38~60℃の範囲であり、T50が77~110℃の範囲であり、T90が130~190℃の範囲であり、且つ最終沸点が220℃以下である炭化水素ベース燃料を含有するガソリン組成物」が記載されており、同請求項1を引用する請求項3には、「前記炭化水素ベース燃料がオレフィンを12~20容量%含有する」ことが記載されており、同請求項3を引用する請求項6には、「前記ベース燃料の初期沸点が30~40℃の範囲であり、T10が45~57℃の範囲であり、T50が82~104℃の範囲であり、T90が140~150℃の範囲であり、且つ最終沸点が180℃以下である」であることが記載されており、同請求項6を引用する請求項8には、「エンジンクランクケース潤滑油の酸化安定性を改良するため、スパーク点火エンジン用の燃料として請求項1~6のいずれか1項に記載のガソリン組成物を使用する方法」が記載されている。してみれば、引用文献1には、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項6を引用する請求項8に記載された発明として、「エンジンクランクケース潤滑油の酸化安定性を改良するため、スパーク点火エンジン用の燃料として、オレフィンを12~20容量%含有すると共に、炭素原子数10以上のオレフィンが5容量%以下であり、炭素原子数10以上の芳香族が5容量%以下であり、初期沸点が30~40℃の範囲であり、T10が45~57℃の範囲であり、T50が82~104℃の範囲であり、T90が140~150℃の範囲であり、且つ最終沸点が180℃以下である炭化水素ベース燃料を含有するガソリン組成物を使用する方法」が記載されているといえる。 (2)また、引用文献1の【0026】には、自動車の操作のために「スパーク点火エンジンの燃焼室に・・・ガソリン組成物を導入」し、「スパーク点火エンジンを動力とする」ことが記載されており、上記(1)の請求項8に記載された発明においても、「スパーク点火エンジン」は、自動車の操作のための動力とするものといえる。 (3)以上のことから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「エンジンクランクケース潤滑油の酸化安定性を改良するために、スパーク点火エンジンの燃料室にガソリン組成物を導入し、自動車の操作のための動力とするスパーク点火エンジン用の燃料として、オレフィンを12~20容量%含有すると共に、炭素原子数10以上のオレフィンが5容量%以下であり、炭素原子数10以上の芳香族が5容量%以下であり、初期沸点が30~40℃の範囲であり、T10が45~57℃の範囲であり、T50が82~104℃の範囲であり、T90が140~150℃の範囲であり、且つ最終沸点が180℃以下である炭化水素ベース燃料を含有するガソリン組成物を使用する方法。」 3 対比 (1)本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「スパーク点火エンジン」、「エンジンクランクケース潤滑油」は本願発明における「火花点火式内燃機関」、「火花点火式内燃機関を潤滑にするために使用される潤滑組成物」に相当する。 また、引用発明における「自動車の操作のための動力とするスパーク点火エンジン」は、スパーク点火エンジンを自動車のパワートレイン内に含めることで自動車の動力となることから、本願発明における「火花点火式機関が自動車のパワートレイン内に含まれ」に相当する。 そして、引用発明における「エンジンクランクケース潤滑油の酸化安定性を改良するために、」「前記ガソリン組成物を使用する方法」は、前記ガソリン組成物を使用してエンジンクランクケース潤滑油の酸化安定性を向上させることから、本願発明における「火花点火式内燃機関を潤滑にするために使用される潤滑組成物の酸化安定性を向上させる方法」に相当する。 (2)してみると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「火花点火式内燃機関を潤滑にするために使用される潤滑組成物の酸化安定性を向上させる方法であって、前記火花点火式機関が自動車のパワートレイン内に含まれ、前記方法が前記火花点火式機関の燃焼室にガソリン組成物を導入するステップを含み、前記ガソリン組成物が、炭化水素基本燃料であって、前記基本燃料を基準として、10~20体積%のオレフィン、5体積%以下の少なくとも10個の炭素原子を有するオレフィン、および5体積%以下の少なくとも10個の炭素原子を有する芳香族化合物を含有する炭化水素基本燃料を含み、前記炭化水素基本燃料が30~40℃の範囲の初期沸点、45~57℃の範囲のT10、82~104℃の範囲のT50、140~150℃の範囲のT90、および220℃以下の最終沸点を有する、方法。」 <相違点> 本願発明は「火花点火式機関がハイブリッド電気自動車のパワートレイン内に含まれ、」「前記ハイブリッド電気自動車がプラグインハイブリッド電気自動車である」のに対し、引用発明はスパーク点火エンジンが使用される自動車の種類について特定されていない点。 4 判断 上記相違点について検討する。ハイブリッド電気自動車およびその一種であるプラグインハイブリッド電気自動車が、内燃機関(エンジン)及び電動モータを駆動源として搭載し、両方の駆動源から得られる動力を利用していることは本願優先日前に周知であり、両方の駆動源から得られた動力を利用するために、両方の駆動源をハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車のパワートレイン内に配置することは技術常識である。してみれば、プラグインハイブリッド電気自動車が内燃機関(エンジン)を必然的に備えている以上、内燃機関(エンジン)に対して用いるものである引用発明の方法が適用される対象をプラグインハイブリッド電気自動車の内燃機関(エンジン)とすることは、当業者が適宜なし得ることであり、そのことを妨げるような、プラグインハイブリッド電気自動車における内燃機関(エンジン)特有の事情による阻害要因や格別の困難性は認められない。 そして、本願発明の効果について、本願明細書の【0030】には、「本明細書に記載されるガソリン組成物をPHEVまたはHEVにおける火花点火式機関の燃料として使用することは、エンジン潤滑油(クランクケース潤滑油)の安定性を向上させることに加えて、いくつかの利点のうちの1つを与え得る。これらの利点としては、オイル交換頻度の低減、エンジン摩耗、例えばエンジンベアリングの摩耗、エンジン部品の摩耗(例えばカムシャフトおよびピストンクランクの摩耗など)の低減、加速性能の向上、より高い最大出力、および/または燃費性能の向上が挙げられる」ことが記載されており、具体的には、実施例1~4および比較例A~Fの実験結果における「TAN/TBNクロスオーバーが起こる時点」、「摩耗金属」、「ヘプタン不溶物」、「加速試験での動力」の評価で有意な改善がみられることが記載されている。そうすると、本願発明の「潤滑油の酸化安定性向上」の効果は、「TAN/TBNクロスオーバーが起こる時点、摩耗金属、ヘプタン不溶物、加速試験での動力で評価される、エンジン潤滑油(クランクケース潤滑油)の安定性の向上、オイル交換頻度の低減、エンジン摩耗の低減、加速性能の向上、より高い最大出力、および/または燃費性能の向上」であるといえる。 これに対して、引用文献1の【0027】には、「スパーク点火エンジン用の燃料として前記ガソリン組成物を使用すると、エンジン潤滑油(クランクケース潤滑油)の安定性を向上して、オイル交換の頻度を減少させ、エンジンの摩耗、例えばエンジンのベアリングの摩耗、エンジン部品の摩耗(例えばクランクシャフト及びピストンクランクの摩耗)を減少させ、加速性能を向上し、最大動力出力を増大させ、及び/又は燃料の系財政を向上する等、多数の利点のうちの1つが得られる」ことが記載されており、【0035】~【0045】の実施例および比較例で示された潤滑油の酸化安定性向上の効果も、本願明細書の実施例および比較例で示された「TAN/TBNクロスオーバーが起こる時点」、「摩耗金属」、「ヘプタン不溶物」、「加速試験での動力」の評価での有意な改善と同様のものである。よって、本願発明の「潤滑油の酸化安定性向上」の効果は、引用文献1の記載から当業者が予測しうる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 審判請求人の主張について (1)審判請求人は、審判請求書において「引用文献1の段落0013に対応するWO2004/113476の第6頁第1~11行には以下の記載がある。・・・本発明のガソリン組成物を燃料とするエンジンにおいて、エンジン潤滑油(クランクケース潤滑油)の安定性向上を達成する際、38~60℃のT10範囲と共に、オレフィン含有量は重要なパラメーターであると考えられる。クランクケース潤滑油が十分に暖まらない短い走行による、エンジンの頻繁な停止及び始動は、潤滑油の酸化に厳しい条件を表わす。高い前端揮発減量(低T10)及び特定のオレフィン含有量は、エンジンのクランクケースに入る有害な燃焼ガスのブローバイを減少させるものと考えられる。」(3.本願発明が特許されるべき理由(2)引用文献に記載の発明)と指摘するとともに、「引用文献1のガソリン組成物が使用される従来の内燃機関自動車では、内燃機関(ガソリンエンジン)が停止するのは自動車が停止したときである。引用文献1における頻繁な内燃機関の停止および始動は、短い走行によって自動車が頻繁に停止および始動することによる(参考文献第6頁第1~11行参照)。それに対して、本願の請求項1に記載のPHEVでは内燃機関の停止および始動は自動車の停止および始動だけでなく、動力を内燃機関から電力に切り替える際にも起こるので、通常の走行においても、短い間隔で内燃機関の停止および始動が頻繁に起こる。したがって、本願の請求項1に記載のPHEVでは短い走行だけでなく通常の走行であっても、走行の途中で内燃機関の停止および始動が起きているので、より頻繁に始動および停止が起こり、潤滑滑組成物は、完全に加熱されない状態や最適な温度に達しない状態に長い時間さらされる。そのため、PHEVの内燃機関で使用される潤滑組成物は、従来の内燃機関自動車で使用される場合に比べて厳しい状態にさらされる。 本発明では、炭化水素基本燃料を、請求項1および5に記載のとおりオレフィンが10~20体積%であり、炭化水素基本燃料が30~40℃の範囲の初期沸点、45~57℃の範囲のT10、82~104℃の範囲のT50、140~150℃の範囲のT90を有するものと特定することにより、PHEVのパワートレイン内に含まれる内燃機関において、火花点火式内燃機関を潤滑にするために使用される潤滑組成物の酸化安定性が、向上するという驚くべき結果を見出した(出願時明細書段落0014)。 上記の通り、従来技術の内燃機関自動車と本願発明のPHEVでは、動作環境が異なるので、引用文献1のガソリン組成物の内燃機関自動車における使用に基づいて、本願発明の特定のガソリン組成物のPHEVにおける驚くべき効果を予測することはできない。」(3.本願発明が特許されるべき理由(3)対比)と主張している。 (2)しかしながら、ハイブリッド電気自動車において、「エンジン始動後、十分暖機する前にエンジンを停止するようなショートトリップが繰り返される場合や、エンジンが頻繁に停止するハイブリッド車両では、エンジンが暖機されにくい」こと(特開2009-228506号公報【0004】参照)、「ハイブリッド車両では・・・車両の走行中には、例えば車速とアクセル開度とによって決定される車両の運転状態に基づいて走行領域が切り換えられること伴い、電動モータの駆動及び停止、並びに、エンジンの駆動及び停止がそれぞれ切り換えられる・・・ハイブリッド車両においては走行領域が切り換えられることから、車両の走行中にエンジンの停止と始動とが頻繁に繰り返されることになる」こと(特開2011-201415号公報【0002】~【0004】参照)、また、ハイブリッド電気自動車の一種であるプラグインハイブリッド電気自動車においても、「たとえばアクセル開度が小さい場合および車速が低い場合などには、第2モータジェネレータ120のみを駆動源としてプラグインハイブリッド車が走行する。この場合、エンジン100が停止される。・・・また、アクセル開度が大きい場合、車速が高い場合、バッテリ150の残存容量・・・が小さい場合などには、エンジン100が駆動される。」こと(特開2012-254763号公報【0014】~【0015】参照)、「同様にPHV(Plug-in-Hybrid:プラグインハイブリッド)車などでも、必要に応じたエンジン回転のon-offにより・・・エンジンが充分に温まらない状態で停止する」こと(特開2014-25041号公報【0002】参照)が知られており、ハイブリッド電気自動車およびその一種であるプラグインハイブリッド自動車において、十分暖機する前にエンジンを停止するようなショートトリップが繰り返される場合と同様に、車両の走行中の場合にも、車速とアクセル開度とによってエンジンの駆動および停止が切り換えられ、エンジンが頻繁に停止しエンジンが暖機されにくいことは、本願優先日前周知の技術的課題である。 してみると、引用発明における「クランクケース潤滑油が十分暖まらないうちに、エンジンを頻繁に止めたり、始動させる走行は、潤滑油の酸化に厳しい条件を表す」(引用文献1【0013】)という課題について、プラグインハイブリッド電気自動車においても同様の課題を有するものであり、仮に引用文献1の【0013】の記載が請求人の主張する「短い走行」に限定されたものであると解したとしても、上記のとおり、プラグインハイブリッド電気自動車においても、短い走行により自動車が停止したときにエンジンが停止する場合と同様に、車両の走行中の場合においてもエンジンが頻繁に停止し暖機されにくいことは本願優先日前に周知であることから、引用発明における火花点火式内燃機関をプラグインハイブリッド電気自動車のパワートレイン内に適用することの阻害要因や格別の困難性は認められない。 (3)そして、本願発明の潤滑油の酸化安定性向上の効果について、上記第4 当審の判断の4 判断での検討のとおりであり、請求人の主張する「特定のガソリン組成物のPHEVにおける驚くべき効果」について、本願明細書には前記検討で示した記載のほかに具体的な内容や実験データも示されていない。よって、本願発明のガソリン組成物をPHEVのエンジンに適用することによる潤滑油の酸化安定性向上の効果は、引用文献1の記載から予測しうる範囲のものである。 (4)したがって、上記(2)、(3)の検討のとおり、請求人の上記(1)の主張は採用できない。 なお、請求人は審判請求書(3.本願発明が特許されるべき理由(3)対比)において、「酸化防止剤」について言及しているが、引用文献1の【0022】には「前記定義したガソリン組成物は、酸化防止剤、・・・のような添加剤を種々含有してよい。好適な添加剤の例は、例えばUSP 5,855,629及びDE-A-19955651に記載されている。」と記載されており、「USP 5,855,629」及び「DE-A-19955651」には酸化防止剤としてヒンダードフェノール等を含有しうることが記載されている旨付言しておく。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項についてさらに検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-000018

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  • 2022-021144拒絶査定不服審判 / 2026-03-19 / 請求不成立固形燃料の製造方法
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  • 2023-007280拒絶査定不服審判 / 2026-03-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)燃料
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