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特許拒絶査定不服審判

2022-011622

廃プラスチックと有機系廃棄物の混合熱分解改質固形燃料の製造方法

審判番号
2022-011622
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-215974
請求日
2022年07月26日
審決日
2024年06月05日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】塩川 文雄
  • 【請求人代理人】西平 守秀
  • 【請求人】黒木 健
  • 【請求人代理人】西平 守秀
審判長/審判官
  • 審判長 門前 浩一
  • 審判官 長谷川 真一
  • 審判官 関根 裕
分類
P18 .113-Z (C10L) / P18 .121-Z (C10L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第5項、特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018-215974「廃プラスチックと有機系廃棄物の混合熱分解改質固形燃料の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日出願公開、特開2019- 94487〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年11月16日(優先権主張 平成29年11月17日(以下「優先日」という。))を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年12月 3日付け:拒絶理由通知書(発送は、12月7日) 令和4年 2月20日 :手続補正書の提出 同年 2月21日 :意見書の提出 同年 4月18日付け:拒絶査定(謄本発送は、4月26日、以下「 原査定」という。) 同年 7月26日 :審判請求書、手続補正書の提出、なお、請求 項1については補正されなかった。 第2 本願発明について 原査定時及び審判請求時の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下の記載により特定される発明である。 「【請求項1】 廃プラスチックと有機系廃棄物を熱分解反応装置により熱分解した生成物を成形加工して改質固形燃料を製造する製造方法。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、次の理由1~理由2のとおりである。 理由1 この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。 理由2 この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2014-231037号公報 引用文献2:特開平7-316572号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献の記載 (1)引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 バイオマスとプラスチックを含む廃棄物原料から廃棄物成形物を製造する方法であって、廃棄物原料を乾燥し、破砕した後、破砕後の原料を加熱し加圧力を10MPa以上で加圧成形することを特徴とする廃棄物成形物の製造方法。 【請求項2】 廃棄物原料の加熱温度を120~300℃とする請求項1に記載の廃棄物成形物の製造方法。 【請求項3】 廃棄物原料の加熱温度を180~300℃とする請求項1に記載の廃棄物成形物の製造方法。 【請求項4】 廃棄物原料の加熱温度を230~250℃とする請求項1に記載の廃棄物成形物の製造方法。」 「【0001】 本発明は、廃棄物溶融炉での廃棄物の熱分解燃焼残渣の溶融のための燃料としての廃棄物成形物そしてその製造方法に関する。」 「【0014】 本発明は、以上のように、プラスチックとバイオマスを含む廃棄物を加圧力を10MPa以上で加圧成形することとしたので、加熱を受けて軟化溶融するプラスチックが結合材として機能し、かつ廃棄物原料内での隙間を塞ぐ機能を発揮して、表面から揮発分が気散しにくい性状であって、強度の高い廃棄物成形物を得ることができる。廃棄物を投入し熱分解、燃焼、灰分を溶融するコークス床を有する廃棄物溶融炉のための燃料として使用された際に、溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成し、一方、石炭コークスと、バイオマスとプラスチックを含む廃棄物成形物が燃焼して灰分の溶融熱源となり、燃料として好ましい特性を有するバイオマスとプラスチックを含む廃棄物成形物を得ることができる。また、溶融炉の下部のコークス床まで下降する過程で熱分解、崩壊せずに到達できる廃棄物成形物を得ることができる。」 「【0016】 本実施形態では、廃棄物溶融炉における溶融熱源として用いられることのできる廃棄物成形物、特に、廃棄物を投入して熱分解、燃焼、灰分を溶融するコークス床を有する廃棄物溶融炉において、溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成し、石炭コークスとともに溶融熱源となる、バイオマスとプラスチックを含む成形物を燃焼して溶融熱源とするための好ましい特性を有するバイオマスとプラスチックを含む廃棄物を原料として廃棄物成形物が得られる。 【0017】 次に、かかる廃棄物成形物そしてその製造手順について説明する。 【0018】 バイオマスとプラスチックを含む廃棄物を乾燥後、破砕し、破砕後の原料を成形機へ投入し加熱加圧圧縮して成形し、成形物を成形機から取り出す。かくして、廃棄物成形物を得る。 【0019】 廃棄物にはバイオマスとプラスチック廃棄物が含まれており、すなわち、廃棄物はバイオマスとプラスチックを主成分とする廃棄物原料となる。かかる廃棄物原料を、水分が3~25wt%となるように乾燥し、サイズが20mm以下、より望ましくは5mm以下となるように破砕した後、その破砕した廃棄物原料を加熱圧縮成形機に投入し、成形機内の廃棄物原料が120~300℃、望ましくは180~300℃、より望ましくは230~250℃になるよう加熱しながら、該廃棄物原料に10MPa以上の圧力をかけて成形する。 【0020】 本発明において、廃棄物原料に含まれるプラスチックは、成形物内にて廃棄物原料を結合する結合材(バインダー)として機能する。 【0021】 従来では、親水性のバイオマスと疎水性のプラスチックの界面では強固な結合は得られず、成形物の冷間圧縮強度は20MPa以上にならなかった。これ以上の応力を成形物に加えると、バイオマスとプラスチックの界面を基点とした亀裂が生じ、これが成長・連通して破壊が生じて容易に崩壊してしまうという問題があった。ここで、冷間圧縮強度とは、円筒形のサンプルの上面を軸方向に加圧し、亀裂が生じ圧壊したときの荷重をサンプル断面積で除した値である。 【0022】 しかし、本発明にしたがい、廃棄物原料を上述したような、乾燥状態のもとで破砕し、加熱加圧すると、バイオマスとプラスチックの間に強固な結合を生じさせる。上記破砕に関しては、バイオマスとプラスチックをサイズが20mm以下となるように破砕することにより加圧時に破砕原料(原料粒子)同士が接触する表面積を増大させる。原料におけるフィルム状プラスチックの含有量が少ない場合は、原料は5mm以下のサイズに破砕することが望ましい。乾燥に関しては、原料の水分が3~25wt%になるように乾燥させることが好ましく、その理由は、原料に25wt%以上の水分が含まれていると原料粒子の密着を阻害し、3wt%以下の水分量だとバイオマスの軟化が阻害されるからである。 【0023】 成形時の原料の加熱温度を120℃以上とすることで、プラスチックを軟化させ、かかる状態で10MPa以上の圧力をかけると個々の原料粒子が変形して密着する。加熱温度が120~180℃の範囲では、プラスチックの軟化には十分であっても、バイオマスの軟化には十分でないものの、軟化したプラスチックが原料の粒子間に進入して流動し空隙を埋めるため、成形物の密度は上昇する。 【0024】 120~180℃の加熱温度で成形した後、冷却して得られた成形物は冷間圧縮強度が20MPaに達しないが、密度は1.3g/cm3以上となり、プラスチックを含まないバイオマス単独の成形物(密度1.3g/cm3未満)よりも高密度となる。また、180~300℃の成形温度で製造した成形物の圧縮強度は、40MPa以上となる。 【0025】 加熱温度を180℃以上に上昇させると、バイオマスおよびプラスチックの界面が変性し、結合を生じる。すなわち、バイオマスは脱水反応や熱分解による変性が進むため、表面は疎水性に近づいていく。プラスチックは熱分解や加水分解が進むため、表面に親水性の官能基や反応性の高い不飽和結合が形成される。このバイオマスおよびプラスチックの表面の間で、水素結合、疎水結合、化学反応による結合が生じ、成形物の強度は増大する。 【0026】 加熱温度が300℃以上になると、プラスチックの熱分解が顕著となり、ガス化、油化が進むため成形物の強度が低下するので好ましくない。かかる状況のもとで、バイオマスとプラスチックの結合による強度増加を最大化するためには、加熱温度を230~250℃にすることが望ましい。また、加熱の間10MPa以上の圧力を維持することが必要であり、軟化したプラスチックの原料粒子間への進入とバイオマス粒子の密着とが行われ強固な結合を生じさせる。このように変性させたバイオマスとプラスチックの界面で結合を生じさせた後、冷却と脱圧を行ない、成形物を成形機から取り出す。」 (2)引用文献2の記載 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 可燃ごみを、乾燥処理した上で、成形固化させることによって固形燃料を製造する方法において、乾燥処理を有機塩素化合物が熱分解する温度で行うことにより、可燃ごみの乾燥と脱塩素処理及び殺菌処理とが同時に行われるようにしたことを特徴とする、可燃ごみを原料とする固形燃料の製造方法。 【請求項2】 乾燥処理が、可燃ごみを250℃以上に加熱し且つ30分以上保持させるものであることを特徴とする、請求項1に記載する可燃ごみを原料とする固形燃料の製造方法。 ・・・ 【請求項7】 乾燥処理される可燃ごみが、分別収集された廃プラスチック又は不燃物を選別除去された粗大ごみ中の廃プラスチックを加えたものであることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6に記載する可燃ごみを原料とする固形燃料の製造方法。」 「【0001】 【産業上の利用分野】一般に、分別収集され又は不燃物を選別除去された可燃ごみは、これを焼却した上で埋め立て処理されているのが普通である。しかし、地球環境保全及び資源の有効利用を図る上からは、ごみをリサイクルすることが好ましい。そこで、従来からも、可燃ごみを固形燃料の原料として利用することが提案されており、既に実用化されているが、本発明は、このような可燃ごみから固形燃料を製造する方法に関するものである。」 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、都市ごみ等には食品添加の食塩を代表とする無機塩素化合物や塩化ビニール樹脂を代表とする有機塩素化合物が含まれているため、上記した如くして製造された固形燃料は、これを燃焼させると、燃焼時に有機塩素化合物が熱分解して塩化水素を発生し、悪臭等の公害を引き起こし、且つ燃焼器を腐食させる虞れがあり、大量に使用される産業用燃料としては甚だ問題があった。」 「【0010】 【実施例】以下、本発明の構成を図1に示す実施例に基づいて具体的に説明する。 【0011】ごみDを破砕機1で破砕した上、これに含まれる金属,ガラス等の不燃物d1を磁選機等の選別機2で選別除去する。ごみDとしては、分別収集された可燃性都市ごみが使用されているが、かかる一般廃棄物の他、含有水分の多い製紙スクリーンカスや汚泥等の産業廃棄物も使用することができる。 【0012】次に、このように不燃物d1を除去された可燃ごみDを、これに廃プラスチックPを混入させた上で、乾燥機3で乾燥処理する。なお、廃プラスチックPとしては、産業廃棄物である廃材やプラスチックとして分別収集された都市ごみが使用される。また、廃プラスチックPの混入量は、製造しようとする固形燃料D1において必要とされる燃焼カロリやごみDの性状に応じて適当に設定されるが、ごみ中に含有されるプラスチック量は、後述する如く、少なくとも20%程度までは可能である。 【0013】可燃ごみDの乾燥処理は、乾燥機3に熱風炉4から熱風Gを供給することにより行う。この実施例では、熱風炉4としてごみ等の廃棄物を処理する廃棄物焼却炉を使用し、焼却炉4で発生する燃焼ガスを、これに乾燥機3から排出される排ガスgの一部g1を混合させた上で、乾燥用熱風Gとして乾燥機3に供給させるようにしている。熱風Gは、排ガスg1の混合量を調節することにより、乾燥機3内でごみDをこれが燃焼されることなく十分に乾燥でき、且つごみDに含まれる有機塩素化合物が熱分解できると共に細菌類(細菌,胞子等)が殺菌,消失できるような、所定温度及び酸素濃度に自動制御されるようになっている。具体的には、熱風Gの温度,酸素濃度は350℃以下,14%以下として、ごみDが乾燥機3内で250℃以上に加熱されるようにしておくことが好ましい。この実施例では、温度350℃,酸素濃度14%の熱風Gが乾燥機3に供給されるように排ガスg1の混合量を自動制御して、ごみDが250~300℃に加熱されるようにした。また、この場合において、乾燥機3から排出される排ガスg,g1の温度は約200℃であった。 【0014】而して、ごみDを乾燥機3内で250℃以上に所定時間加熱させることにより、ごみDが十分に乾燥されると共に、ごみDに含まれている有機塩素化合物は熱分解して塩化水素を発生し、ごみD中の有機塩素成分が殆ど揮散除去されることになる。同時に、ごみD中に存在し、固形燃料化した場合に腐敗,カビ発生等の原因となる細菌,胞子等も、高温に晒されることにより確実に殺菌,消失される。このようなごみの乾燥、有機塩素成分の除去(熱分解)及び細菌類の殺菌を十分に行うためには、乾燥機3内におけるごみ乾燥時間(加熱時間)を30分以上としておくことが好ましい。ごみDを250℃以上に30分以上加熱することによって、上記した乾燥,塩素除去,殺菌が効果的に行われることについては実験により確認されている。特に、熱分解による塩素除去効果については、表1に示す如く有機塩素含有量が異なる3種のごみ試料1,2,3について、ごみ加熱温度(品温)を150℃,200℃,250℃,300℃として30分間保持したところ、ごみ試料1,2,3中の塩素含有量を表1に示す通りであり、品温を250℃以上とすることによって、有機塩素成分が大幅に除去(56~96%除去)されることが確認された。また、ごみDに含まれるプラスチックは、乾燥機3内での加熱により軟化,流動して、ごみD中の紙等に付着するため、乾燥機3内に付着,堆積したりするようなことがない。このことも、実験により確認されており、実験ではプラスチックを最大20%まで含有させたが、乾燥機3内への付着,堆積は生じず、脱塩素処理も十分であった。 【0015】 【表1】 [図:0001412603000001.jpg] 【0016】そして、このように乾燥処理した可燃ごみDを、更に選別機5により選別して、残存する小石等の不燃物d2を除去し、更に石灰Cを添加させた上で、成形機6により加圧成形して、所望形状に固化された固形燃料D1を得る。石灰Cは、バインダとして機能させるため及び残留塩化水素を完全に除去させるために、必要に応じて、添加されるものであり、冒頭で述べた従来方法において燃焼時において発生する塩化水素を吸収させるため又は殺菌させるためにする石灰添加量に比して極く僅かである。具体的には、石灰Cの添加量は0.5~1%程度で十分である。すなわち、上記従来方法における石灰添加量の1/5程度で足りる。 【0017】このようにして得られた固形燃料D1は、可燃性都市ごみに廃プラスチックを加えた高カロリ原料からなるものであるから、燃料として極めて有利なものである。しかも、原料が乾燥の段階で脱塩素処理及び殺菌処理されているから、燃料としての燃焼時に塩化水素が発生せず、悪臭等の公害や燃焼装置等の腐食を引き起こす心配もない。さらに、石灰量が極く僅かであるから、燃焼時の灰量も少なく、鉛が溶出する虞れもない。」 「【図1】 [図:0001412603000002.jpg] 」 2 引用発明 (1)引用文献1に記載された発明 引用文献1の請求項1を引用する請求項3には、バイオマスとプラスチックを含む廃棄物原料を乾燥し、破砕した後、破砕後の原料を加熱し加圧力を10MPa以上で加圧成形する廃棄物成形物の製造方法であって、廃棄物原料の加熱温度を180~300℃とする廃棄物成形物の製造方法が記載されている。 また、同段落【0001】には、「本発明は、廃棄物溶融炉での廃棄物の熱分解燃焼残渣の溶融のための燃料としての廃棄物成形物そしてその製造方法に関する。」と記載されている。 さらに、同段落【0018】には、乾燥、破砕後の廃棄物原料は、成形機に投入し、加熱加圧圧縮して成形し、成形物を成形機から取り出して、廃棄物成形物を得る旨記載され、同段落【0019】には、成形機では、加圧成形は、180~300℃等の温度で加熱しながら行われる旨記載されている。 そして、同段落【0025】には、「加熱温度を180℃以上に上昇させると、バイオマスおよびプラスチックの界面が変性し、結合を生じる。すなわち、バイオマスは脱水反応や熱分解による変性が進むため、表面は疎水性に近づいていく。プラスチックは熱分解や加水分解が進むため、表面に親水性の官能基や反応性の高い不飽和結合が形成される。このバイオマスおよびプラスチックの表面の間で、水素結合、疎水結合、化学反応による結合が生じ、成形物の強度は増大する。」と記載されている。 そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明1) 「バイオマスとプラスチックを含む廃棄物原料を乾燥し、破砕した後、破砕後の原料を、成形機に投入して、180~300℃の加熱温度で加熱しながら、加圧力10MPa以上で加圧成形し、成形物を成形機から取り出す、廃棄物溶融炉での廃棄物の熱分解燃焼残渣の溶融のための燃料としての廃棄物成形物の製造方法であって、180℃以上の加熱温度において、バイオマスは脱水反応や熱分解による変性が進むため、表面は疎水性に近づき、プラスチックは熱分解や加水分解が進むため、表面に親水性の官能基や反応性の高い不飽和結合が形成され、バイオマスおよびプラスチックの表面の間で、水素結合、疎水結合、化学反応による結合が生じ、成形物の強度が増大する、廃棄物溶融炉での廃棄物の熱分解燃焼残渣の溶融のための燃料としての廃棄物成形物の製造方法。」 (2)引用文献2に記載された発明 引用文献2の請求項1には、可燃ごみを、乾燥処理した上で、成形固化させることによって固形燃料を製造する方法において、乾燥処理を有機塩素化合物が熱分解する温度で行うことが記載されている。 また、同段落【0012】~【0016】、図1には、上記方法の具体例として、分別収集された可燃性都市ごみである、ごみDを破砕機1で破砕し、これにふくまれる金属、ガラス等の不純物d1を磁選機等の選別機2で選別除去し、これに廃プラスチックPを混入させた上で、乾燥機3で、ごみDを250~300℃に加熱して乾燥処理し、乾燥処理した可燃ごみDを選別機5により、残存する小石等の不燃物d2を除去し、成形機6により加圧成形して、所望形状に固化された固形燃料D1を得る方法が記載されている。 さらに、同段落【0014】には、ごみDを乾燥機3内で250℃以上に所定時間加熱させることにより、ごみDが十分に乾燥される共に、ごみDに含まれている有機塩素化合物は熱分解して塩化水素を発生し、ごみD中の有機塩素成分が殆ど揮散除去されること、ごみDに含まれるプラスチックは、乾燥機3内での加熱により軟化、流動して、ごみD中の紙等に付着するため、乾燥機3内に付着、堆積したりするようなことがないことが記載されている。 加えて、同段落【0003】には、都市ごみ等には、食品添加物の食塩を代表とする無機塩素化合物や塩化ビニール樹脂を代表とする有機塩素化合物が含まれていると記載されている。 そうすると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明2) 「食塩等の無機塩素化合物及び塩化ビニール等の有機、塩素化合物を含み、金属、ガラス等の不純物が除去された分別収集された可燃性都市ごみと、廃プラスチックとを乾燥機で、250~300℃で加熱して、可燃性都市ごみに含まれている有機塩素化合物が熱分解する温度で乾燥処理して、塩化水素を発生させて可燃性都市ごみ中の有機塩素化合物を除去するとともに、廃プラスチックを軟化・流動させて可燃性都市ごみの紙等に付着させ、選別機で小石等の不燃物を除去し、成形機により加圧成形して、固形燃料を得る方法。」 第5 対比・判断 1 引用文献1を主引例とした場合 (1)本願発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「廃棄物原料」に含まれる「プラスチック」、「バイオマス」はそれぞれ、本願発明の「廃プラスチック」、「有機系廃棄物」に相当する。 また、「熱分解反応装置」とは、本願明細書の段落【0014】に記載されるように、加熱により「物質の持つ分子構造」の「改質」を生じさせる機能を有する装置を意味すると解されるところ、引用発明1の「成形機」は、破砕後の原料を「180~300℃の加熱温度で加熱しながら、加圧力10MPa以上で加圧成形」するものであり、その際に、バイオマス及びプラスチックの熱分解を含む化学反応が生じるものであから、当該成形機内では、「物質の持つ分子構造」の「改質」が生じているといえる。すると、引用発明1の「成形機」は「熱分解反応装置」としての機能を有していると認められるから、引用発明1の「成形機」は、本願発明の「熱分解反応装置」に相当する。 さらに、引用発明1の「廃棄物成形物」は、廃棄物溶融炉での廃棄物の熱分解燃焼残渣の溶融のための燃料として使用されるものであり、「加圧成形」の過程では、バイオマス及びプラスチックの少なくとも一部が熱分解、すなわち、改質されたものが成形加工されるものであるから、引用発明1の廃棄物成形物の製造方法は、本願発明の「熱分解した生成物を成形加工して改質固形燃料を製造する製造方法」であるといえる。 そうすると、本願発明と引用発明1との間に差異はない。 また、仮に差違があったとしても、当業者が容易に変更し得る微差である。 (2)審判請求人の主張について 審判請求人は、令和4年7月26日提出の審判請求書において、以下について主張する。 (主張1)「引用文献1の成果物は単に廃棄物原料を乾燥、破砕後加熱し加圧力10MPa以上で加圧成形するとある。要するに加熱する工程は酸素が存在した状態でなければ実行不可能であり、加圧成形にも加圧装置を使用しなければ作業は成立しないことになる。本出願は、熱分解装置内で無酸素状態で装置函体の外側からの加熱で内部の原料を溶解、他の可燃物に含侵コーティングしながら自然圧で移送され、開放した排出口から排出されるものであり、これが、審査官殿が指摘するように本当に同一の発明なのか大いに疑問である。」 (主張2)「引用文献1の発明は、特定の施設の燃焼残差物を処理するためのみを目的としており、余りにも汎用性がな」い。 ア 主張1について 確かに、引用発明1は、加熱の際の酸素濃度については規定されておらず、バイオマスと廃プラスチックの加熱中に加圧成形が行われるものである。 しかしながら、「特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」ものであるところ(特許法第36条第5項)、本願の特許請求の範囲の請求項1には、「熱分解装置内で無酸素状態で装置函体の外側からの加熱で内部の原料を溶解、他の可燃物に含侵コーティングしながら自然圧で移送され、開放した排出口から排出される」ことについては何ら記載されていないため、本願発明を、熱分解反応装置を、無酸素状態で熱分解反応させるものや加熱中に加圧処理を装置内で行わないものに限定して解釈することはできない。 そして、上記(1)で検討したとおり、本願発明と、加熱の際の酸素濃度が規定されず、加熱中に加圧成形が行われるような引用発明1とは、その発明特定事項において差異はないから、上記請求人の主張1は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであって、採用できない。 イ 主張2について 本願発明は、特定の用途に限定されない改質固形燃料を製造する方法であるところ、引用発明1の「廃棄物溶融炉での廃棄物の熱分解燃焼残渣の溶融のための燃料」を作る目的のものも包含しているから、引用発明1が特定の用途の燃料を製造することは、本願発明との相違点とはならない。 よって、上記請求人の主張2は採用できない。 2 引用文献2を主引例とした場合 (1)本願発明と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「廃プラスチック」は、本願発明の「廃プラスチック」に相当し、引用発明2の「食塩等の無機塩素化合物及び塩化ビニール等の有機、塩素化合物を含み、金属、ガラス等の不純物が除去された分別収集された可燃性都市ごみ」は、金属、ガラス等の無機物である不純物が除去された可燃性の廃棄物であるから、本願発明の「有機系廃棄物」といえる。 また、「熱分解反応装置」とは、本願明細書の段落【0014】に記載されるように、加熱により「物質の持つ分子構造」の「改質」を生じさせる機能を有する装置を意味すると解されるところ、引用発明2の「乾燥機」では、少なくとも、可燃性都市ごみに含まれる塩化ビニール等の有機塩素化合物が熱分解され、塩化水素が発生することにより、「有機塩素化合物の持つ分子構造」の「改質」が生じて、塩素の含有量が減じられた化合物が得られていると認められるから、引用発明2の「乾燥機」は、本願発明の「熱分解反応装置」に相当する。 さらに、引用発明2の「固形燃料」は、熱分解反応装置としての機能を有する乾燥機で、熱分解により改質され、塩素分が除去された可燃性都市ごみを含むものを、加圧成形して得られたものであるから、本願発明の「熱分解した生成物を成形加工して」得られた「改質固形燃料」といえる。 そして、引用発明2は、「有機系廃棄物」に相当する「可燃性都市ごみ」と「廃プラスチック」が、熱分解反応装置としての機能を有する乾燥機で加熱され、その加熱処理されたものが、加圧成形されて、固形燃料にされる方法であり、本願発明は、「廃プラスチック」と「有機系廃棄物」が、熱分解反応装置で加熱され、その加熱処理されたものが、加圧成形されて、固形燃料にされる方法であるから、引用発明2と本願発明とは、「廃プラスチックと有機系廃棄物を熱分解反応装置により加熱し、その加熱処理した廃プラスチックと有機系廃棄物とを成形加工して改質固形燃料を製造する製造方法。」という点で共通する。 そうすると、本願発明と引用発明2との一致点及び一応の相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「廃プラスチックと有機系廃棄物を熱分解反応装置により加熱し、その加熱処理した廃プラスチックと有機系廃棄物とを成形加工して改質固形燃料を製造する製造方法であって、 その加熱処理した有機系廃棄物は熱分解された生成物を含む 改質固形燃料を製造する製造方法。」 (一応の相違点) 本願発明は、「廃プラスチック・・・を熱分解反応装置により熱分解した生成物を成形加工」するもの、すなわち、熱分解反応装置で加熱処理された廃プラスチックが、熱分解した生成物を含むものであるのに対して、引用発明2では、熱分解反応装置に相当する乾燥機において、250~300℃で加熱処理された廃プラスチックが、熱分解した生成物を含むのか否かが明示されていない点。 以下、上記一応の相違点について検討する。 引用発明2の廃プラスチックは、乾燥機にて、250~300℃で加熱処理されるものであるところ、引用文献2の段落【0014】には、250℃以上の温度で、有機塩素化合物が熱分解される旨記載されており、同段落【0003】には、有機塩素化合物として、塩化ビニール樹脂が例示されているから、このような加熱条件では、少なくとも、塩化ビニール樹脂を含む廃プラスチックは、熱分解されると認められる。 また、引用文献1の段落【0025】に記載されているように、プラスチックを180℃以上に加熱すると、熱分解や加水分解が進み、表面に親水性の官能基や反応性の高い不飽和結合が形成されるものであるから、有機塩素化合物を含まない廃プラスチックについても、250~300℃で加熱処理された場合、少なくとも、部分的な熱分解反応は生じると解される。 そうすると、引用発明2において、250~300℃で加熱処理された廃プラスチックは、熱分解した生成物を含むものであるから、上記一応の相違点は、実質的な相違点ではないから、本願発明と引用発明2との間に差異はない。 また、仮に差違があったとしても、当業者が容易に変更し得る微差である。 (2)審判請求人の主張について 審判請求人は、令和4年2月21日提出の意見書において、「本願の目的は廃プラスチックを液状化(成分の改質)する温度450℃~490℃まで加熱し、可燃性有機物と混合して、半炭化状態で装置外へ押し出し、自然冷却により固化するシステムとなっていますが、引用文献等2にはこのような記載が有りませんので、本願発明は新規性及び進歩性を満たしています。」と主張する。 しかしながら、「特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」ものであるところ(特許法第36条第5項)、本願の特許請求の範囲の請求項1には、「廃プラスチックを液状化(成分の改質)する温度450℃~490℃まで加熱し、可燃性有機物と混合して、半炭化状態で装置外へ押し出し、自然冷却により固化する」ことについては何ら記載されていないため、本願発明を、「廃プラスチックを液状化(成分の改質)する温度450℃~490℃まで加熱し、可燃性有機物と混合して、半炭化状態で装置外へ押し出し、自然冷却により固化する」ものに限定して解釈することはできない。 そして、上記(1)で検討したとおり、本願発明と、引用発明2とは、その発明特定事項において差異はないから、上記請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであって、採用できない。 第6 むすび 以上によれば、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明であるか、引用文献1及び2に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-011622

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