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特許拒絶査定不服審判

2015-005688

光学的および電磁気学的効果補助層の制御手法

審判番号
2015-005688
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2009-199302外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2015年03月25日
審決日
2016年10月17日
公報発行日
2018年10月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (H01L) / P18 .121-WZ (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2009-199302「光学的および電磁気学的効果補助層の制御手法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月11日出願公開、特開2010-258401〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 本願は、平成21年8月31日(優先権主張平成21年3月30日)の出願であって、平成26年12月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年3月25日に拒絶査定不服審判が請求がされるととも手続補正書が提出された。その後当審において、平成28年3月30日付けで拒絶理由が通知され、同年6月19日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 当審の拒絶理由 当審において平成28年3月30日付けで通知した拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 ・理由1(単一性) (省略) ・理由2(新規性) 本願の請求項1、4~6に係る発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内または外国において頒布された刊行物である、「特開2009-16710号公報」(以下「引用例1」という。)に記載された発明であり、また、本願の優先権主張の日前に日本国内または外国において頒布された刊行物である、「特開平8-8488号公報」(以下「引用例2」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 ・理由3(進歩性) 本願の請求項1、4~6に係る発明は、周知技術を勘案して、本願の優先権主張の日前に日本国内または外国において頒布された刊行物である引用例1に記載された発明に基づいて、本願の優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、また、周知技術を勘案して、本願の優先権主張の日前に日本国内または外国において頒布された刊行物である引用例2に記載された発明に基づいて、本願の優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・理由4(請求項の記載の明確性) (省略) 3 本願発明 本願の請求項1~5に係る発明は、平成28年6月19日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 半導体又は金属の少なくともどちらか一方よりなる微粒子又は島状構造を平面内でランダムに配列させた平面構造が、 母材中に間隔を保って複数積層された構造体であって、 該母材が半導体であることを特徴とする構造体」 4 引用例の記載と引用発明 (1)引用例1の記載 引用例1には、「レーザ発振素子」(発明の名称)に関して、図1~11とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同じ。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、基板上に活性層を形成してなるレーザ発振素子に関する。」 イ 「【背景技術】 【0002】 レーザ発振素子の活性層を構成する量子ドットのサイズ揺らぎと発光の半値幅についての関係は、量子ドットはそのサイズが変化すると、量子閉じ込めエネルギーが変化するため発光する波長(エネルギー)が変化する。そのため、サイズの揺らぎが大きい量子ドット群の発光特性は、幅広い波長(エネルギー)にわたって広がり、その半値幅は広い物となる。量子ドットの半導体レーザ等の応用のためには、なるべくサイズ揺らぎの少ない量子ドットを高密度に作製することが望まれている。 非特許文献1で示されているように従来のGaAs(100)基板を用いたものでは、液滴の密度は最大でも3×1010/cm2であった。この特許文献1及び非特許文献1に示されているように、GaAs(100)基板を用いたものでは、液滴を結晶化する際の砒素分子線強度を低下させると、結晶化後のナノ構造の形状が変化し量子ドットの形成は不可能となる。 これに対し非特許文献1では、量子ドットを作製するために高強度の砒素分子線を液滴に照射して結晶化しているため、量子ドットのサイズの均一性が悪く、半値幅の狭い発光を得ることは不可能であった。」 ウ 「【課題を解決するための手段】 【0005】 発明1のレーザ発振素子は、その活性層は、2×1010/cm2~1×1011/cm2の密度、及び5Kにおける発光の半値幅50meV以下でGaAs(311)A基板上に量子ドットが形成してなることを特徴とする。 発明2は、発明1のレーザ発振素子の製造方法であって、前記量子ドットは、液滴エキタピシー法により所定の密度で形成することを特徴とする。」 エ 「【発明の効果】 【0006】 発明2により、GaAs(311)A基板上に、3×109/cm2~1×1011/cm2の範囲で量子ドットの密度を制御する事に成功した。 また、発明1により、同基板を用いる事により、量子ドットの均一性に関しても、成長条件により広い範囲で制御可能となった。このような量子ドットをもつ半導体の半値幅は23meV~100meV超を実現した。 この結果、極めて安定してナローな波長でのレーザ発振が可能になった。」 オ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0007】 図10に示す形態は、光励起による発振を試みたものである。基板上部から、緑色の光を導入すると、活性層上下のクラッド層及び活性層で電子正孔対が形成される。それらは、エネルギーの一番低いGaAs量子ドットへと注入され、それらが再結合する事により量子ドットが発光する。発光した光は、クラッド層と活性層の屈折率の差により、活性層中に閉じ込められて、成長方向と垂直な方向に作製された共振器中に閉じ込められてレーザ発振する。本実施例では、共振器は劈開した端面により形成した。 図10に示す形態の製造手順は以下の通りである。 GaAs(311)A基板上に、400nmの厚さをもつGaAsバッファー層を成長させて表面を平坦化させたのち、1300nmのAlGaAsクラッド層(高Al組成)を成長させた。その後、活性層となる、AlGaAs層(低Al組成)を220nm成長させ、その中に液滴エピタキシー法(図1)により作製したGaAs量子ドットを2層埋め込んだ。続いて、1300nmの上部のAlGaAsクラッド層(高Al組成)を成長させ、最後に表面を保護するため20nmのGaAsを成長させた。」 カ「【実施例】 【0009】 液滴エピタキシー法は、化合物半導体の量子ドットを作製する手法で、図1を参照して、ガリウム砒素量子ドットの作製を例として説明すると、基板上にガリウムのみを供給してガリウムの液体金属微粒子を作製し、続いて砒素を供給してその液滴をガリウム砒素に結晶化する事により、量子ドットを作製する。 図2に示すように、従来のGaAs(100)基板上では、200℃から350℃の範囲では、液滴の密度は基板温度と式1(GaAs(100)基板上の液滴密度のフィッティング曲線の式)の関係にあり、密度は最大でも2×1010/cm2程度であった。 …(略)… 【0011】 これに対して、GaAs(311)A基板を用いることにより、上記の温度範囲の全域で密度が増加し、最大で1×1011/cm2という、高密度の液滴が形成可能となった。なお、図1の説明で述べたように、この液滴は結晶化する事により、一つの液滴が一つの量子ドットとなることから、この密度はそのまま形成される量子ドットの密度と考えることができる。 【0012】 図3は、液滴を量子ドットへ結晶化する際の砒素分子線強度を変化させた際の結晶化後の構造の形状の顕微鏡像であるが、GaAs(100)基板上では、分子線強度の減少に伴い、形状が変化してしまうため、量子ドットの形成には2×10-4Torrの砒素分子線照射が必要である。それに対して、GaAs(311)A基板上では、砒素分子線強度を減少させても形状は保たれており、弱い砒素分子線照射に於いても量子ドット形成が可能である。 GaAs(100)基板上での、ドット構造は(0012段)に示すように発光の半値幅が広いためレーザ発振を実現することは困難である。一方で、量子ドットとは異なる構造(1e-5及び2e-6 Torr)からはレーザ発振を実現したが、これらの構造の電子状態はドットとは異なり固有状態間のエネルギー差が小さいため、量子ドットレーザに於いて期待される優れた温度特性を実現する事は困難である。 【0013】 GaAs量子ドットをAlGaAs層によりサンドイッチした構造を例にして、図4にその発光特性を示す。 図5には、…(略)… 図6-8は本実施例において、GaAs(311)A基板上でも、砒素分子線強度を変えても量子ドットの形成が可能で、弱い強度の砒素を照射した際に均一性の高い量子ドットが形成されることを示している。それにより、半値幅50meV以下の発光が観察される。 GaAs(311)A基板上に高均一な量子ドットを図6、図7の様に高密度に形成することにより、レーザ発振に寄与できる量子ドットの数が増加し、レーザ発振を実現することができる。それにより、量子ドットレーザに於いて期待される優れた特性を発現することも期待される。実際に図6の量子ドットを用いてレーザ素子の試作を行い、図10に示す構造を作製したところ、図11に示すように室温に於いてレーザ発振を実現した。尚、図8に示す量子ドットは均一性に於いては優れているが、ドット密度が低いため(意図的に低くしている)、レーザ発振の実現は困難である。」 キ 図1は、液滴エピタキシー法の模式図であり、以下のとおりである。 ク 図3は、(100)及び(311)A基板上の液滴を異なる強度の砒素照射により結晶化した後のGaAsナノ構造の形状を示す顕微鏡写真であり、以下のとおりである。 図3から、(311)A基板で、照射した砒素の強度1e-5Torr及び2e-6Torrで、GaAsナノ構造がランダムに配列していることが見てとれる。 ケ 図6は、(311)A基板上に形成した量子ドットの発光特性と顕微鏡像(砒素強度2×10-6torr)であり、図7は、(311)A基板上に形成した量子ドットの発光特性と顕微鏡像(砒素強度1×10-5torr)であり、それぞれ、以下のとおりである。 図6、7から、量子ドットがランダムに配列していることが見てとれる。 コ 図10は、結晶成長により作製した量子ドットレーザ素子の構造を示す模式図であり、以下のとおりである。 図10から、2層のGaAs量子ドットは、それぞれ、20nmのAl0.33Ga0.67As層、100nmのAl0.33Ga0.67As層において、平面内に配列され、Al0.33Ga0.67As層を介して積層されていることが見てとれる。 (2)引用発明1 ア 以上、図3、6、7、10を参酌してまとめると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「GaAs(311)A基板上に、GaAsバッファー層を成長させて表面を平坦化させたのち、AlGaAsクラッド層(高Al組成)を成長させた後、活性層となる、AlGaAs層(低Al組成)を成長させ、その中に液滴エピタキシー法により作製したGaAs量子ドットを2層埋め込み、続いて、上部のAlGaAsクラッド層(高Al組成)を成長させて製造されるレーザ素子であって、 上記液滴エピタキシー法は、化合物半導体の量子ドットを作製する手法で、基板上にガリウムのみを供給してガリウムの液体金属微粒子を作製し、続いて砒素を分子線照射により供給してその液滴をガリウム砒素に結晶化する事により、GaAs量子ドットを作製し、 一つの液滴が一つの量子ドットとなり、 顕微鏡像において、量子ドットがランダムに配列しており、 量子ドットレーザ素子の構造模式図において、GaAs量子ドットは、AlGaAs層(低Al組成)において、平面内に配列され、当該AlGaAs層を介して積層されている、量子ドットレーザ素子。」 (3)引用例2の記載 引用例2には、「半導体多層基板および半導体多層膜の製造方法」(発明の名称)に関して、図1~16とともに、以下の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 …(略)… 【請求項16】平坦面を有する半導体基板と、前記半導体基板に形成され前記半導体基板と極性が異なる量子ドット状の半導体結晶を有する半導体多層基板。 …(略)… 【請求項19】平坦面を有する半導体基板と、前記半導体基板上に形成されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成され前記半導体基板と極性が異なる量子ドット状の半導体結晶からなる活性層と、前記半導体結晶上に形成されたクラッド層を有する半導体レーザ。 【請求項20】平坦面を有する半導体基板上にバッファ層を形成するバッファ層形成工程と、前記バッファ層上に前記半導体基板と極性が異なる量子ドット状の半導体結晶からなる活性層を形成する活性層形成工程と、前記活性層上にクラッド層を形成するクラッド層形成工程とを有する半導体レーザの製造方法。」 イ 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は異なる格子定数または極性を有する複数の半導体結晶を同一基板上に成長する半導体結晶構造およびその製造方法、さらにこの半導体結晶構造を用いた半導体レーザ、発光ダイオード等の発光素子、受光素子、光導波路素子、電子素子およびその製造方法に関するものである。」 ウ 「【0079】(実施例12)以下に、本発明の量子ドットを利用した半導体多結晶膜及び半導体レーザについて説明する。 【0080】図14は本発明第12の実施例における半導体多結晶膜の構造図を示すものである。 【0081】図14において、141は<001>方向の表面を有するSi基板、142は厚み3μmのSi結晶薄膜、143は厚み高さ2nmのGaAsドット、144は100nmのSi結晶薄膜である。 【0082】本実施例では、Si基板141表面にはステップの無い(001)面を持つ。ステップが無いために結晶は結晶平面にランダムに結晶成長し、均一なGaAs結晶の核生成が実現される。また、SiとGaAsとの極性が異なるためにGaAsは3次元成長を生じてドット状の成長が実現される。 【0083】結晶成長はMBEで750度にて行っており、成長温度が比較的高いために基板表面での原子の移動速度が大きくなり、均一なドット143の形成が実現される。また、上記した均一な量子ドット143の形成により、量子井戸を形成した場合に対して50倍のPL発光強度が得られる。一方、結晶成長温度が高いほどドットの数は減少するが一つのドットの大きさは大きくなり、ドットとドットは融合してはならず、かつドットの間は5nm以上離れている必要があるために成長温度は750度と比較的高くする必要があった。 【0084】また、Si結晶薄膜142は基板に存在するステップを抑制するために3μm程度積層される。基板内に転位が存在している場合その影響を受けてGaAsが均一に成長できないという問題がある。本実施例では基板前面に結晶が成長するが、結晶間のスペースが大きいために特に基板のそり等の問題は発生しない。 【0085】(実施例13)図15は本発明第13の実施例における半導体レーザの構造図を示すものである。 【0086】図15において、151は表面にステップの無い(001)n-Siエピ基板、152は厚み10nmのSiバッファ層、153は厚み2nmのエピタキシャル成長したGaAsドット結晶、154は厚み10nmのSi単結晶薄膜、155はGaAs結晶薄膜153とSi単結晶薄膜154より成るペア数10の多重量子ドット層、156はp-Si層、157は絶縁膜、158はp側電極、159はn側電極である。 【0087】本実施例は、第12の実施例に示した量子ドットを半導体レーザに適応したものであり、MBE法を用いてGaAsドットとSi薄膜を成長した。半導体レーザとしての利得を得るためには1層のGaAsドットでは不十分であり、従ってGaAsドット153を10層積層することで半導体レーザを実現する。 【0088】(実施例14)図16は本発明第14の実施例における半導体レーザの製造方法造図を示すものである。 【0089】図16において、表面にステップの無い(001)n-Siエピ基板161、厚み10nmのSiバッファ層162を成長するSi結晶成長工程(a)と、厚み2nmのエピタキシャル成長したGaAsドット結晶163と、厚み10nmのSi単結晶薄膜164を交互に成長してえられるペア数10の多重量子ドット層165とp-Siクラッド層166を成長する活性層成長工程(b)と、絶縁膜167をマスクとしてエッチイングにより幅2μm、長さ300μmのストライプ状に薄膜結晶をエッチングして活性領域を形成するストライプ工程(c)と、膜厚1μmのn-Si単結晶薄膜168を選択成長した後に基板両面に電極169を蒸着する選択成長工程(d)より半導体レーザ構造を得る。 【0090】本実施例は、第13の実施例に示した量子ドット半導体レーザを実現する製造方法であり、MBE法を用いてGaAsドット163とSi薄膜を成長している。GaAsドット163を成長した後、Si結晶164を10nm成長することで平坦面が得られるが、これはGaAsドット163の高さが2nm程度と低いことと、Si結晶がGaAsドット163上に成長しにくいためにGaAsドットが平坦に埋め込まれたためである。」 エ 「【0093】【発明の効果】以上のように本発明は、(1)半導体基板上に微小な凹凸を形成することで、(2)半導体基板の傾斜方向に長細い結晶成長領域を形成することで、格子定数または極性の異なる結晶に対して結晶性良い成長を実現する。 【0094】また、(3)平坦な半導体基板を用いることで均一な量子ドットの形成を実現する。さらに、これらの結晶を半導体発光素子、受光素子、光導波路素子、電子素子に応用することで素子特性の飛躍的向上を実現できる。とくに、化合物半導体よりなるこれらの素子をSi基板状に形成することで、歩留まりの向上、強度の向上、低下価格化、高集積化、高速化が実現できる。」 (4)引用発明2 ア 以上、図15、16を参酌してまとめると、引用例2には、第13の実施例として、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「平坦な面を有する、表面にステップの無い(001)n-Siエピ基板151と、 その上に成長したSiバッファ層152と、 その上にエピタキシャル成長した厚み2nmのGaAsドット結晶153と厚み10nmのSi単結晶薄膜154を交互に成長してえられるペア数10の多重量子ドット層155と、 その上に成長したp-Siクラッド層156と、 絶縁膜157と、p側電極158と、n側電極159とを有する半導体レーザであって、 MBE法を用いてGaAsドット153とSi薄膜が成長され、 GaAsドット153の高さが2nm程度と低いことと、Si結晶がGaAsドット153上に成長しにくいためにGaAsドット153が平坦に埋め込まれたため、GaAsドット153を成長した後、Si結晶154を10nm成長することで平坦面が得られた、半導体レーザ。」 5 対比・判断 (1)本願発明と引用発明1との対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「GaAs量子ドット」、「AlGaAs層(低Al組成)」、及び「量子ドットレーザ素子」は、それぞれ、本願発明の「半導体よりなる微粒子」、「母材」、「構造体」に相当する。 イ 引用発明1では、「GaAs(311)A基板上に、…(略)…、活性層となる、AlGaAs層(低Al組成)を成長させ、その中に液滴エピタキシー法により作製したGaAs量子ドットを2層埋め込み、…(略)…を成長させて製造されるレーザ素子であって」、「量子ドットレーザ素子の構造模式図において、GaAs量子ドットは、AlGaAs層(低Al組成)において、平面内に配列され、当該AlGaAs層を介して積層されている」ものであるから、本願発明と引用発明とは、「半導体よりなる微粒子」を配列させた構造が、「母材中に間隔を保って複数積層された構造体であって、該母材が半導体である」点で一致する。 ウ したがって、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「半導体よりなる微粒子をランダムに配列させた構造が、 母材中に間隔を保って複数積層された構造体であって、 該母材が半導体である構造体」 <相違点1> 微粒子を配列させた構造について、本願発明では、微粒子を「平面内」でランダムに配列させた「平面構造」であるのに対し、引用発明1では、「顕微鏡像において、量子ドットがランダムに配列しており、量子ドットレーザの構造模式図において、GaAs量子ドットは、AlGaAs層(低Al組成)において、平面内に配列され」ているものの、本願発明のような特定はなされていない点。 (2)本願発明と引用発明1との相違点についての当審の判断 以下、上記相違点1について検討する。 ア 一般に、半導体レーザ素子において、レーザ発振を実現するために、活性層の結晶性を良好とすべく、活性層の直下の層の表面を平坦なものとすることは普通に知られた慣用手段であるものと認められる。 イ また、引用発明1では、「GaAsバッファー層を成長させて表面を平坦化させたのち、AlGaAsクラッド層(高Al組成)を成長させた後、活性層となる、AlGaAs層(低Al組成)を成長させ、その中に液滴エピタキシー法により作製したGaAs量子ドットを2層埋め込み」、「製造されるレーザ素子」である。 ウ したがって、上記アで指摘した上記普通に知られた慣用手段、並びに上記イのように、引用発明1は、「GaAsバッファー層」の「表面を平坦化させたのち」、クラッド層、活性層を成長させたものであること、及び引用例1の図1(上記「4(1)」のキを参照。)を勘案すると、引用例1には、GaAs量子ドットの直下のAlGaAs層(低Al組成)の表面が、平坦なものが示唆されているものと認められ、引用発明1は、本願発明の「微粒子を『平面内』でランダムに配列させた『平面構造』」という構成を実質的に備えているといえる。 よって、相違点1は実質的なものではない。 エ 以上のとおりであるから、本願発明の構成はすべて引用例1に示されているものであって、本願発明は引用発明1と同一ということとなり、引用例1に記載された発明である。 オ 次に、仮に相違点1が実質的なものであった場合について、念のため、以下で検討する。 量子ドットを有する構造体において、量子ドットの下地層を平坦な平面をもつものとすることは周知技術であり、例えば、以下の周知例A、引用例2(周知例として提示。上記「4(3)」の摘記事項ウの段落【0079】~【0090】、図14~16等を参照。)に記載されている。 (ア)周知例A:特開平3-116822号公報 a 「(a)基板について 量子井戸箱の形成のための基板(1)としては、平坦な表面を持つ化合物半導体を準備する。」(第2ページ右上欄第2~5行) b 「(b)液相微細球 次いでこの基板(1)には、化合物半導体、たとえばXYの元素成分のうちのXが液相微細球(2)として生成される。 基板(1)は、元素成分Xが触ける温度に保持し、超高真空中において、元素成分Xの分子線を照射することにより液相微細球(2)を生成することができる。基板(1)の化合物半導体ABの表面には、微細な体積、たとえば1000nm3 程度の点状微細球(2)融体が均一に作成される。 (c)結晶成長 この微細球(2)の融体には、化合物半導体XYのもう一方の元素成分Yが固溶される。 上記と同様に基板(1)の化合物半導体ABを加熱した状態で、たとえば超高真空中で元素成分Yの分子線を照射することができる。 液相微細球(2)は、化合物半導体XYとして基板(1)の化合物半導体ABと方位のそろったエピタキシャル結晶成長する。化合物半導体XYのエピタキシャル結晶(3)が形成される。 (d)埋め込み この状態において、化合物半導体、たとえばCDの薄膜をエピタキシャル成長させることにより、化合物半導体XYを埋め込む。 基板(1)の化合物半導体AB、化合物半導体XYの微細エピタキシャル結晶(3)の上に化合物半導体CDの埋め込み層(4)が形成される。電子のとじこめがなされ、量子井戸箱が完成する。」(第2ページ左下欄第1行~右下欄第12行) また、上記アのとおり、一般に、半導体レーザ素子において、レーザ発振を実現するために、活性層の結晶性を良好とすべく、活性層の直下の層の表面を平坦なものとすることは普通に知られた慣用手段であるものと認められる。 カ したがって、引用発明1において、上記慣用手段及び周知技術に基づき、「AlGaAsクラッド層(高Al組成)」の表面、並びにその上の成長させた活性層の1層目及び2層目の「AlGaAs層(低Al組成)」の表面のいずれもを平坦なものとすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。 キ 次に、引用発明1は、「上記液滴エピタキシー法は、化合物半導体の量子ドットを作製する手法で、基板上にガリウムのみを供給してガリウムの液体金属微粒子を作製し、続いて砒素を分子線照射により供給してその液滴をガリウム砒素に結晶化する事により、GaAs量子ドットを作製し、一つの液滴が一つの量子ドットとな」るものである。 そうすると、図1、10も参酌すると、引用発明1において、活性層の1層目及び2層目の「AlGaAs層(低Al組成)」の表面を平坦なものとするならば、GaAs量子ドットを配列させた構造が、「平面内」に配列させた「平面構造」となることは明らかである。 したがって、引用発明1において、上記慣用手段及び周知技術に基づき、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。 ク よって、仮に相違点1が実質的なものであったとしても、本願発明は、引用発明1並びに慣用手段及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ケ 以上のとおりであるから、本願発明の構成はすべて引用例1に示されているものであって、本願発明は引用発明1と同一ということとなり、引用例1に記載された発明である。 よって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 又は、仮に相違点1が実質的なものであったとしても、本願発明は、引用発明1並びに慣用手段及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (3)本願発明と引用発明2との対比 本願発明と引用発明2とを対比する。 ア 引用発明2の「GaAsドット結晶153」、「Si単結晶薄膜154」、及び「半導体レーザ」は、それぞれ本願発明の「半導体よりなる微粒子」、「母材」、「構造体」に相当する。 イ 引用発明2は、「エピタキシャル成長した厚み2nmのGaAsドット結晶153と厚み10nmのSi単結晶薄膜154を交互に成長してえられるペア数10の多重量子ドット層155」を有するものであるから、本願発明と引用発明とは、「半導体よりなる微粒子」を配列させた構造が、「母材中に間隔を保って複数積層された構造体であって、該母材が半導体である」点で一致する。 ウ したがって、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「半導体よりなる微粒子を配列させた構造が、 母材中に間隔を保って複数積層された構造体であって、 該母材が半導体である構造体」 <相違点2> 微粒子を配列させた構造について、本願発明では、「微粒子を平面内でランダムに配列させた平面構造」であるのに対し、引用発明2では、「エピタキシャル成長した厚み2nmのGaAsドット結晶153」について、本願発明のような特定はなされていない点。 (4)本願発明と引用発明2との相違点についての当審の判断 以下、上記相違点2について検討する。 ア 引用発明2は、「MBE法を用いてGaAsドット153とSi薄膜が成長され、GaAsドット153の高さが2nm程度と低いことと、Si結晶がGaAsドット153上に成長しにくいためにGaAsドット153が平坦に埋め込まれたため、GaAsドット153を成長した後、Si結晶154を10nm成長することで平坦面が得られた」、「半導体レーザ」である。 イ また、上記「4(3)」の摘記事項ウの段落【0082】には、「Si基板141表面にはステップの無い(001)面を持つ。ステップが無いために結晶は結晶平面にランダムに結晶成長し、均一なGaAs結晶の核生成が実現される。」、段落【0083】には、「結晶成長はMBEで750度にて行っており、成長温度が比較的高いために基板表面での原子の移動速度が大きくなり、均一なドット143の形成が実現される。…(略)…ドットとドットは融合してはならず、かつドットの間は5nm以上離れている必要がある」と記載されている。 また、引用例2において、量子ドットを利用した半導体レーザについての記載箇所の段落【0079】~【0090】(上記「4(3)」の摘記事項ウを参照。)には、GaAsドットが整列して配列するように特段の制御を行うことは記載されていない。 ウ 上記アのように、引用発明2において、「Si結晶154」は「平坦面が得られた」ものであること、上記イで指摘した事項を勘案すると、引用発明2においても、GaAsドット153の成長の際に、基板表面での原子の移動速度は大きくなり、均一なドット153の形成が実現されるものと認められる。 そうすると、上記ア、イのとおり、引用発明2は、GaAsドット153は、下地のSi結晶が「平坦面が得られた」ものであり、且つMBE法を用いた、その成長の際に、「原子の移動速度は大きく」なるものであり、また、引用例2には、GaAsドットが整列して配列するように特段の制御を行うことは記載されていないから、引用発明2において、「GaAsドット結晶153」が、「GaAsドットを平面内でランダムに配列させた平面構造」をなすことは明らかである。 エ したがって、引用発明2において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。 よって、本願発明は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 7 むすび 以上のとおり、本願発明の構成はすべて引用例1に示されているものであって、本願発明は引用発明1と同一ということとなり、引用例1に記載された発明である。 よって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 又は、本願発明は、引用発明1並びに慣用手段及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項2~5に係る発明について検討するまでもなく、当審で通知した上記拒絶の理由の「理由2」又は「理由3」によって拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2015-005688

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