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特許無効審判

2014-800036

グラウト注入方法及び装置

審判番号
2014-800036
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2012-116912外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2014年03月07日
審決日
2017年07月05日
公報発行日
2017年11月24日
結論
請求成立(無効)
当事者
審判長/審判官
分類
P1113.121-ZAA(E02D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法123条1項2号特許法169条2項民事訴訟法64条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5137153号「グラウト注入方法及び装置」の特許無効審判事件についてされた平成27年12月17日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において請求項1に係る発明に対する部分の審決取消しの判決(平成28年(行ケ)第10026号、平成28年12月26日)があったので、審決が取り消された部分の請求項に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第5137153号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第5137153号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 1 本件無効審判事件の第一次審決までの経緯 一次審決までの手続の経緯は、以下のとおりである。 平成24年 5月22日:本件出願(特願2012-116912号)) 平成24年11月22日:設定登録(特許第5137153号) 平成26年 3月 7日:本件無効審判請求 平成26年 4月 7日:被請求人より上申書提出 平成26年 4月10日:通知書 平成26年 7月25日:被請求人より審判事件答弁書及び訂正請求書提出 平成26年 8月21日:請求人より審判事件弁駁書 平成26年10月16日:審理事項通知書 平成26年10月16日:参加申請人より参加申請書提出 平成26年11月11日:被請求人より口頭審理陳述要領書提出 平成26年11月12日:請求人より口頭審理陳述要領書提出 平成26年11月14日:参加許否の決定 平成26年11月26日:請求人より上申書提出 平成26年11月26日:口頭審理 平成26年12月 9日:請求人より上申書提出 平成26年12月22日:被請求人より上申書提出 平成27年 5月11日:審決の予告 平成27年12月17日:一次審決 2 一次審決 上記一次審決の結論は、 「訂正請求書に添付された明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。 特許第5137153号の請求項2に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5137153号の請求項1に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。」というものである。 3 審決取消訴訟 請求人は、上記一次審決の取消しを求めて、平成28年2月1日に知的財産高等裁判所に訴えを提起した。 上記訴えは、知的財産高等裁判所において、平成28年(行ケ)第10026号事件として審理され、主文を 「1 特許庁が無効2014-800036号事件について平成27年12月17日にした審決のうち,特許第5137153号の請求項1に係る発明についての審判請求を不成立とした部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。」 とする判決の言渡しが平成28年12月26日にあった。 そして、上記判決は、その後確定したので、「特許第5137153号の請求項1に係る発明についての審判請求」については、再度審理すべきものとなった。 また、一次審決のうち、「特許第5137153号の請求項2に係る発明についての特許を無効とする。」との部分は確定している。 4 差戻し後の手続の経緯 差戻し後の経緯は、以下のとおりである。 なお、上記判決の確定の日から1週間以内に、被請求人から訂正の請求のための指定期間を求める申立てはなかった。 平成29年 3月14日:請求人より証拠説明書提出 平成29年 3月31日:審決の予告 第2 訂正請求について 1 訂正請求の内容 平成26年7月25日付け訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、特許第5137153号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、請求項1に関連して、次の事項を訂正内容とするものである。(なお、下線は訂正箇所である。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「上記分液盤内において分液されてそれぞれ吐出口を通過した上記グラウトを第2注入ホースを介して上記複数の注入孔から地盤中に当該グラウトを注入するまでの第2区分」とあるのを、「上記分液盤内において分液されてそれぞれ同一断面積の吐出口を通過した上記グラウトを第2注入ホースを介して上記複数の注入孔から地盤中に当該グラウトを注入するまでの第2区分」に訂正する。 (2)訂正事項2 願書に添付した明細書の段落【0020】に記載された「上記分液盤内において分液されてそれぞれ吐出口を通過した上記グラウトを第2注入ホースを介して上記複数の注入孔から地盤中に当該グラウトを注入するまでの第2区分」とあるのを、「上記分液盤内において分液されてそれぞれ同一断面積の吐出口を通過した上記グラウトを第2注入ホースを介して上記複数の注入孔から地盤中に当該グラウトを注入するまでの第2区分」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 上記訂正事項1は、請求項1の「吐出口」を、「同一断面積の吐出口」へと訂正するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 上記アから明らかなように、上記訂正事項1は、発明特定事項を下位概念に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 ウ 特許掲載公報の明細書の段落【0010】に「即ち、注入ポンプによりグラウトが第1注入ホースを介して圧送されてくる分液盤に至るまでの第1区分と、上記分液盤内において分液されてそれぞれ同一断面積の吐出口を通過した上記グラウトを第2注入ホースを介して上記1つ又は2つ以上の注入孔を設けた1本又は2本以上の注入管へ圧送し、注入孔から地盤中に当該グラウトを注入するまでの第2区分とに分け、かつグラウトの流量(吐出量)を調整することにより構成される。」と記載されていることからみて、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内の訂正である。 (2)訂正事項2について ア 上記訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0020】に記載した「吐出口」を、「同一断面積の吐出口」に訂正するものである。 よって、当該訂正事項事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 上記(1)イ及びウからみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、かつ願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内の訂正であることは明らかである。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。 第3 本件特許に係る発明 上記第2のとおり、本件訂正が認められることから、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも地盤中に設置された複数の注入孔を介してグラウトを同時に注入するグラウト注入方法において、 注入ポンプによりグラウトが第1注入ホースを介して圧送されてくる分液盤内の吐出口の入口に至るまでの第1区分と、上記分液盤内において分液されてそれぞれ同一断面積の吐出口を通過した上記グラウトを第2注入ホースを介して上記複数の注入孔から地盤中に当該グラウトを注入するまでの第2区分とを形成し、 上記複数の吐出口の総断面積よりも、上記注入孔の総断面積を大きく設定し、 予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、上記第1区分中を流れるグラウトがその測定した地盤抵抗圧力よりも高い強制圧力となるように負荷することにより、上記分液盤における複数の吐出口から当該グラウトを均等に分液し、 上記第2区分を流れるグラウトを上記注入孔を介して地盤抵抗圧力に基づいて注入すること を特徴とするグラウト注入方法。」 第4 当事者の主張 1 請求人の主張及び提出した証拠の概要 (1)無効理由 請求人は、審判請求書、平成26年8月21日付け審判事件弁駁書、同年11月12日付け口頭審理陳述要領書、同年11月26日付け上申書、同年12月9日付け上申書、及び平成29年3月14日付け証拠説明書において、甲第1~29号証を提出し、請求項1に係る発明について以下の無効理由を主張した。 [無効理由] 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、及び、甲第1号証に記載された発明に基づいて、または甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (2) 具体的主張 ア 甲第1号証について 甲第1号証に、本件発明1の「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成が記載されているかどうかについて。 甲第1号証の【0074】【図26】には、薬液を用いた場合の注入試験が記載されているといえる。甲第1号証の【図26】は、実際の注水試験と薬液注入による試験のデータとの傾向性を示すものである。 そして、甲第1号証の【図26】の横軸の「注入速度q(l/分)」は、単位時間における「流量」であり、本件訂正明細書の【0061】【表1】によれば、本件発明1の「注入量」は毎分当たりの流量であるから、甲第1号証の「注入速度」と本件発明1の「流量」(注入量)とは、直接対比することができるものである。 また、甲第1号証の【図26】の縦軸の「注入圧力」は、地盤状況との関係で最適な注入速度を求めるものであって、地盤抵抗圧力によって決まるものであるから、間接的に地盤抵抗圧を測定していることになる。 そうすると、本件発明1においても、測定した地盤抵抗圧力に基づいてグラウト(薬液)の注入圧力を決め、それが不適切であれば、流量を変えて試験注入を行うか、あるいは、事前に求めておいた流量と注入圧力との関係から注入圧力を決定することになるはずであるから、甲第1号証において、注入圧力と注入速度との関係から適切な注入圧力を求めることとは、技術的に異なるものではない。 なお、本件発明1において、第1区分中を流れるグラウトの圧力を調整すれば、あらかじめ定められた「流量」は実現できているから、改めて「地盤抵抗圧力」を測定してその結果に従い更に圧力を調整する必要はなく、「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」というのは無意味な規定になる。すなわち、本件発明1は、実際には、注入速度(単位時間当たりの流量)と注入圧力との関係を求めて、これを調整しているのである。 イ 甲第2号証について 甲第2号証に、本件発明1の「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成が記載されているかどうかについて。 甲第2号証には「流量試験」と記載されており(【0037】)、そうである以上、この試験が透水試験等の一般的な土質試験でないことは明らかであり、また、この流量試験を、水を注入して試験を行うものに限定解釈すべき理由もない。 本工事の現場以外の場所で試験を行うことが例外的であることを考慮すると、甲第2号証の「流量試験」は本工事の現場で行われているものと解釈すべきである。そうすると、甲第2号証には、実際に注入を行う現場で薬液を注入する試験が行われることが記載されている。 ウ 周知技術について 本件発明1の「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成が、従来から周知な技術であるかどうかについて。 (ア) 甲第5号証について 甲5に記載された試験が水注入試験だとしても、甲第5号証には、「試験注入は、本工事と同一の条件で実施することが本来必要であるが、薬液のかわりに水を用いた注入試験における注入圧と注入速度の関係から注入形態を予測する簡便な方法が近年提案されている。」(280頁4~8行目)との記載があり、これは、薬液を用いた注入試験が従来から普通に行われてきたことを意味する。また、甲第5号証の水注入試験が、本工事の現場で直接実施したかどうかが不明だとしても、甲第5号証の薬液注入工法における試験が、一般的に本工事の現場で実施することがないということが記載されているわけではない。注入試験を本工事の現場で実施することが最善であることは自明であり、本工事の現場で実施することは普通のことである。 なお、注入速度の差異によって地盤抵抗圧力が異なってくるとしても、本件発明1は、好ましい流量を実現するための強制圧力を決定するものであるから、甲第5号証に記載された試験と同様に、所定の流量を実現できるように注入速度を変えていっているはずである。 (イ) 甲第4号証及び甲第6号証について 甲第4号証及び甲第6号証に記載の通達及び暫定指針に従って行われる建設工事において、薬液を注入する現場に、直接、薬液を注入して試験を行うことは、当然予測される。 常識的には、このような試験が普通である一方で、薬液の替わりに水を用いた試験を用いることを許容する記載はない。 また、甲第4号証及び甲第6号証には、地盤抵抗圧力の測定を行うとは直接には記載されていないが、地盤抵抗圧力の測定は、試験注入において特殊なものではなく一般的なものである。 そして、[1]甲第4号証には、 「3-2 現場注入試験 薬液注入工事の施工にあたっては、あらかじめ、注入計画地盤またはこれと同等の地盤において設計どおりの薬液の注入が行われるか否かについて、調査を行うものとする。」(2頁下から7行~下から5行目) と現場注入試験が原則であるとの記載があり、 また、[2]甲第6号証には、 「当初設計量(試験注入等により設計量に変更が生じた場合は、変更後の設計量)を目標として注入するものとする。注入にあたっては、注入量-注入圧の状況及び施工時の周辺状況を常時監視して、以下の場合に留意しつつ、適切に注入するものとする。」(5頁下から2行~6頁2行目) と、間接的に地盤抵抗圧力を測定するとの記載がある。 (ウ) 甲第24号証ないし甲第28号証について 本件発明1の「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成が、従来から周知な技術であることを示す、さらなる周知例について。 a 甲第24号証及び甲第25号証 甲第24号証の244頁及び甲25の146頁には、二重管ストレーナ工法における注入速度範囲を毎分8~20lとし、二重管ダブルパッカー工法における注入速度範囲を毎分6~10lとするとの記載があり、これは、本件発明1の注入速度範囲である毎分6lを含んでいる(本件訂正明細書の【0057】)。そして、本施工の薬液注入に先立って、本施工と同じ薬液(グラウト材)を試験注入し、圧力・流量の関係を確認して注入することは、従来から普通に行われている。 b 甲第26号証 甲第26号証の292頁の「表7・6 試験注入」には、シリカゾル系注入材シリカライザーを含む数種の薬液が用いられたことが示されている。 c 甲第27号証 甲第27号証の66頁の図7~9には、薬液としてシリカライザーをマンシェットチューブで注入した注入箇所において、注入前と注入後の浸透圧力と注入速度の関係などが示されている。 d 甲第28号証 甲第28号証の請求項3には、「各注入管路への注入量を地盤の注入抵抗圧に応じてそれぞれ所望の量に調整する」との記載があり、これは、本件発明1において、「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」に相当するものである。 (エ) 容易想到性について 上記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件発明1の「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成は、周知技術である。この「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成それ自体には意味はなく、測定した地盤抵抗圧力に基づいてグラウト(薬液)の注入圧を決めることに意味があるのであって、薬液を注入する際に、地盤抵抗圧力が予想より大きくて薬液が入っていかない場合には、注入圧を高めて薬液の注入を確保し、逆に、地盤抵抗圧力が予想より小さく薬液の入り方が早すぎる場合には、注入圧を低くするというのは、ごく当然の事項である。そして、試験注入に基づいて本施工の注入圧を決定するに当たり、どのパラメータを指標として用いるかは、異なるパラメータ間での単純な換算の問題にすぎず、発明としての創作性を要する事項ではない。その上、「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成の周知技術を、多点注入の技術に組み合わせても、相乗効果は何ら生じず、本件訂正明細書にも、「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成をとったことの目的やその構成をとることについての特有の効果についての記載はない。 エ 小括 以上アないしウから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、または甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、若しくは、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに甲第4ないし6号証に顕れた周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得た発明である。 [証拠方法] 甲第1号証:特許第3663113号公報 甲第2号証:特開2003-27457号公報 甲第3号証:ダブルパッカー工法の注入管の実例としての原工業株式会社 によるYR40スリーブパイプの製作図面の写し 甲第4号証:「薬液注入工法による建設工事の施工に関する 通達及び暫定指針」、 建設省官技発第160号、昭和49年7月10日 国土交通 省九州地方整備局のホームページよりダウンロードした写し 甲第5号証:「地盤工学・実務シリーズ11 地盤改良効果の予測と実際」 社団法人地盤工学会、平成12年2月15日発行、 第279~285、311頁 の写し 甲第6号証:「薬液注入工法による建設工事の施工に関する 通達及び暫定指針」、 通達   建設省技調発第110号の1 平成2年4月24日 建設省技調発第188号の1 平成2年9月18日 暫定指針 建設省官技発第160号 昭和49年7月10日 (国土交通省関東地方整備局のホームページの下記のURL: http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content /000007052.pdf よりダウンロードした写し) 甲第7号証:恒久グラウト注入工法、株式会社山海堂、2000年8月 18日発行、第34、35頁 の写し 甲第8号証:新編 図解グラウト便覧、株式会社ラテイス、昭和57年 4月15日発行、第216、217頁 の写し 甲第9号証:薬液注入工法の設計・施工指針、社団法人日本グラウト協会、 平成元年6月発行、第1~7、32、33、38、39、 56頁 の写し 甲第10号証:耐久グラウト注入工法施工指針、 社団法人日本グラウト協会、 平成24年3月発行、 第1、2、14、27、28頁 の写し 甲第11号証:正しい薬液注入工法-本質のわかる本-、社団法人日本薬液 注入協会、2002年1月31日発行、350~355頁 の写し 甲第12号証:平成26年3月7日付け 審判請求書(請求人) の写し 甲第13号証:平成26年7月25日付け 審判事件答弁書(被請求人) の写し 甲第14号証:平成26年7月25日付け 訂正請求書(被請求人) の写し 甲第15号証:平成26年8月21日付け 審判事件弁駁書(請求人) の写し 甲第16号証:平成26年10月16日付け 審理事項通知書(特許庁) の写し 甲第17号証:平成26年11月11日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人) の写し 甲第18号証:平成26年11月12日付け 口頭審理陳述要領書(請求人) の写し 甲第19号証:平成26年11月26日付け 上申書(請求人) の写し 甲第20号証:平成26年11月26日付け 第1回口頭審理調書(特許庁) の写し 甲第21号証:平成26年12月9日付け 上申書(請求人) の写し 甲第22号証:平成26年12月22日付け 上申書(被請求人) の写し 甲第23号証:特許第5137153号公報 甲第24号証:「正しい薬液注入工法」、社団法人日本薬液注入協会編 2002年1月31日、244~245頁 甲第25号証:米倉亮三・島田俊介・木下吉友、「恒久グラウト注入工法」 2000年8月18日、株式会社山海堂、143~151頁 甲第26号証:島田俊介・佐藤武・多久実、「最先端技術の薬液注入工法」 理工図書平成元年、6月10日、291~293頁 甲第27号証:笹尾禎・須賀武・土谷覚・島田俊介、 「上越新幹線中山トンネル高山工区における 地盤注入工法の開発と適用」 土木学会誌、1980年9月号、61~67頁 甲第28号証:特許第2552553号公報 甲第29号証:平成28年(行ケ)第10026号事件における 平成28年10月12日技術説明会の説明資料 (請求人) の写し なお、上記甲第3号証及び甲第4号証は、弁駁書に添付した参考資料1及び参考資料2を読み替えたものである。(第1回口頭審理調書参照。) また、上記甲第7号証は被請求人提出の乙第1号証と同内容であり、同様に甲第8、9、10及び11号証は、それぞれ乙第2、3、4及び5号証と同内容である。 2 被請求人の主張及び提出した証拠の概要 (1) 被請求人の主張の概要 被請求人は、平成26年7月25日付け審判事件答弁書、同年11月11日付け口頭審理陳述要領書、同年12月22日付け上申書において、乙第1~第5号証を提出し、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めた。 (2) 具体的主張 ア 甲第1号証について 請求人は、甲第1号証には、「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成が記載されていると主張する。 しかしながら、甲1発明は、本工事における適切な注入圧力を求めるために、本工事に先立って、あらかじめ注水試験(透水試験)を行い、流量と圧力を変化させてP-q曲線を求め、限界注入速度や限界注入圧力を推定しているものである。すなわち、限界注入圧力Prfを超えて注入しないと得られない値は、本工事の現場で測定されるはずのないことは明らかであり、また、直接、本工事の現場で薬液を使って注入圧力が求め得るのであれば、注水(透水)試験を行う必要がない。甲第1号証の【図26】が必要となるのは、地盤改良の本工事の現場において注水試験しか行わないため、注水試験から得られた現地地盤における流量と圧力との関係から、実際に薬液を注入する場合の流量と圧力との関係を把握するためである(甲第1号証の【0074】【0080】【0082】参照)。 一方、本件発明1は、地盤改良の本工事の現場において、グラウトを均等に分液するために、設定した流量での実際の地盤抵抗圧力を測定しているものである。 イ 甲第2号証について 請求人は、甲第2号証には、本件発明1の「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成が記載されていると主張する。 しかしながら、甲第2号証には、「流量試験」についての説明は一切なく、「流量試験」が本工事の現場で行われる可能性が排除されていないからといっただけでは、結局、どのような試験が行われるのか不明なままであるにすぎない。むしろ、甲第2号証には、「このような流量制御弁Cを用いることにより、施工前の流量試験に基づいて、あらかじめネジ24を調整して所定の吐出量に設定することができ、また、注入中、注入状況に応じてネジ24をまわし、適宜に吐出量を調整することもできる。」との記載があり(【0037】)、地盤抵抗圧力の違う分枝管において、流量制御弁Cを調整して、所定の吐出量に調整するために行う流量試験にすぎないと推測される。 ウ 周知技術について 請求人は、本件発明1の「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成が、従来から周知な技術であると主張するが、次のとおり、その主張は失当である。 (ア) 甲第5号証について 甲第5号証に請求人主張の記載があるとしても、それは、薬液を用いた注入試験が行われていた可能性を排除できないだけであって、甲第5号証が、実際の実験の例を紹介している文献にすぎないことからみて(279頁の11~13行目参照)、従来、現場においてグラウトを注入してP-q曲線を求めることが、普通に行われていたことを証するものではない。 仮に、注入すべき現場で薬液(グラウト)を注入してP-q曲線を求めることが公知であったとしても、甲第5号証におけるP-q曲線を求めるための試験は、注入速度を徐々に増大させて測定するものである(280頁の下から11~6行目)。「薬液注入の設計・施工指針」社団法人日本グラウト協会平成元年6月(甲第9号証)の39頁1~3行目によれば、このような場合と、本件発明1のように、いきなり一定量のグラウトを注入する場合とでは、測定した地盤抵抗圧力は異なるものであるから、本件発明1のような地盤抵抗圧力の測定方法が周知の事項であることの根拠とはならない。 (イ) 甲第4号証及び甲第6号証について 甲第4号証及び甲第6号証は、建設工事において薬液注入工法を行う場合の注意書き的なものであり、特定の試験結果が記載されているわけではない。また、これらの指針は、健康被害の発生と地下水等の汚染を防止する観点から、設計どおりの薬液の注入が安全に実行可能であるか否を確認すべき旨を定めたものであり(甲第6号証の8頁参照)、本工事を行う地盤において実際に地盤抵抗圧力を測定することが行われていることを証するものではない。かえって、これらの指針では、「注入計画地盤又はこれと同等の地盤において」現場注入試験を行うと規定されており(甲第4号証の2頁、甲第6号証の10頁)、本工事の現場で現場注入試験を行わなければならないとはされていない。 (ウ) 甲第24号証ないし甲第28号証について 甲第24号証及び甲第25号証の請求人指摘の箇所には、薬液の設計注入量を設定する際に参考となる範囲が記載されているにすぎない。 甲第26号証の請求人指摘の箇所には、注入後透水試験の注入量も記載されており、「試験注入」とは、試験的に薬剤を実際に注入して、注入圧力、ポンプ吐出量等を計測したことにすぎない。 甲第27号証の請求人指摘の箇所には、岩盤のクラック(山岳トンネル)等の止水効果確認のための調査として試験注入を行い、薬液であるシリカライザーを注入した際の注入前と注入後の注入速度の関係を記録し、浸透圧力と浸透速度の関係が示されているにすぎない。 甲第28号証の請求人指摘の箇所には、注入抵抗圧に応じて注入管路への注入量を調整することが記載されているものであり、あらかじめ流量を定めてその流量における地盤抵抗圧力を測定することとは、順番が逆である。 (エ) 容易想到性について 上記の(ア)ないし(ウ)のとおり、本件発明1の「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成は、周知技術ではない。この「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成をとったのは、次の技術的理由からである。 すなわち、軟弱地盤の止水や地盤強化を目的としたケミカルグラウト(薬液)の注入には、通常、二連式プランジャーが用いられるが(本件訂正明細書【0052】参照)、構造上、脈動を完全になくすことができず、常に一定の吐出量(流量)を確保することは非常に困難であり、さらに、精密度が高くないために、各吐出口からの吐出量に約5%のバラツキが生じる。また、実際の地盤は均一ではなく、注入圧力以外の注入条件(例えば、注入工法の違い、グラウトの性質の違い等)を含めて、ごくわずかな条件の違いにより、地盤抵抗圧力に差異が生じて各注入管の流量が変化してしまう(【0005】参照)。 そこで、本件発明1では、あらかじめ設計時に決めた流量で注入した際に、実測の各注入管の地盤抵抗圧力にどのようなバラツキ(差異)があっても、全ての地盤抵抗圧力より必ず高い強制圧力を負荷させることを絶対条件とすることによって(【0045】【0047】参照)、[1]複数の注入孔に同時に均等にグラウトを分液することが可能となり、作業効率を向上させることが可能となるという作用効果(【0023】参照)や、[2]1台又は少数の注入ポンプで、地盤抵抗圧力の差異にかかわらず、複数の注入孔に対して低流量(毎分3~6l)の注入ができ、砂質土の間隙にグラウトをきめ細かく浸透させることができ、より注入効果を向上させることが可能となるという作用効果(【0024】参照)を奏するようにしたものである。 エ 小括 以上アないしウから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、または甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、若しくは、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に想到したとはいえない。 [証拠方法] 乙第1号証:恒久グラウト注入工法、株式会社山海堂、2000年8月 18日発行、第34、35頁 の写し 乙第2号証:新編 図解グラウト便覧、株式会社ラテイス、昭和57年 4月15日発行、第216、217頁 の写し 乙第3号証:薬液注入工法の設計・施工指針、社団法人日本グラウト協会、 平成元年6月発行、第1~7、32、33、38、39、 56頁 の写し 乙第4号証:耐久グラウト注入工法施工指針、社団法人日本グラウト協会、 平成24年3月発行、第1、2、14、27、28頁 の写し 乙第5号証:正しい薬液注入工法-本質のわかる本-、社団法人日本薬液 注入協会編、2002年1月31日発行、350~355頁 の写し 第6 当審の判断 以下、本件発明1について判断する(本件発明2については、上記一次審決が確定している。)。 1 甲第1、2、4、5、6、9、10、25、及び26号証の記載事項 (1) 甲第1号証 本件特許の出願前に頒布された甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は審決で付加した。以下同様。) ア 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は液状化防止工事あるいは大規模工事における急速施工のための地盤改良等、大容量土の地盤改良に係り、特に、改良すべき地盤に複数の注入管路を設置し、これら複数の注入管路から注入液を同時に、かつ選択的に、さらには自動的に行なう地盤注入装置および地盤注入工法に関する。」 イ 「【0012】 そこで、本発明の目的は地盤中に設置した複数本の注入管路から、対象とする土層に注入液を注入して該地盤を改良するに際して、最適な設定流量ないしは設定圧力をもって注入液を同時に、かつ自動的に注入し、これにより、広範囲の地盤を急速かつ確実に改良し、上述の公知技術に存する欠点を改良した地盤注入装置およびこの装置を用いた地盤注入工法を提供することにある。」 ウ 「【0015】 【発明の実施の態様】 以下、本発明を添付図面を用いて詳述する。 【0016】 図1は本発明にかかる地盤注入装置の一具体例の説明図である。図2は図1における注入液分配部の他の具体例の説明図である。図3は図1における注入液加圧部の他の具体例の説明図である。図4は環状の分配容器の説明図である。図5はドラム型の分配容器の説明図である。図6は多段型分配容器の正面図であり、図7は図6の側面図である。図8および図9は多段分岐管を用いた具体例である。図10および図11は多方向分岐体を用いた具体例である。図12は図1における注入液分配部の他の具体例の説明図である。図13は図1における注入液分配部のさらに他の具体例の説明図である。図14、図15、図16は本発明にかかる地盤注入装置の他の具体例の説明図である。図17は図1における注入部の注入管路の一具体例であって、地盤中に設置された状態を表した断面図である。図18は袋パッカーを備えた注入管路の一具体例であって、地盤中に設置された状態を表した断面図である。図19は二重管ダブルパッカー注入管路の一具体例である。図20は他の注入管路の他の一具体例であって、(a)は単管、(b)は二重管、(c)は三重管を表した断面図である。図21は二重管ダブルパッカーの注入管路の他の具体例である。図22は注入管路のさらに他の具体例であって、二重管の内管を上方にスライドさせて注入する状態を表した断面図である。図23は注入管路のさらに他の具体例であって、注入管中に複数の注入管路を、これらの吐出口が軸方向の異なる位置に開口するように設けてなる断面図である。図24は水平方向固結層の形成態様を表した一具体例である。図25は図24の固結層の積層固結層の形成態様を表した一具体例である。図26は注入圧力と注入速度との関係を表したグラフである。 【0017】 本発明装置は地盤注入液を地盤中に設置された複数の注入管路を通じて地盤中に注入し、該地盤を固結する装置であって、図1に示されるように、制御部X、注入加圧部Y、注入液分配部Z、注入部Wおよび送液系Aから構成される。操作を手動で行なう場合には制御部Xを必要としない。以下、制御部を用いた例について具体的に詳述する。 【0018】 注入液加圧部Yは図1に示されるように、注入液槽2からの注入液をグラウトポンプ1により加圧し、加圧注入液として送液系Aを介して注入液分配部Zに送液する。グラウトポンプ1は制御部Xの注入監視盤X1からの指示を受け、注入液を所望の圧力に加圧する。なお、図1の加圧部Yは図3に示されるように、グラウトポンプに代えてコンプレッサー3を用いることもできる。すなわち、加圧容器4に注入液5を充填し、ここでコンプレッサー3の作動により注入液槽2からの注入液5を加圧して加圧注入液とする。 【0019】 注入液分配部Zは複数本の分岐管S、S・・・Sを備える。これら分岐管S、S・・・Sはそれぞれ先端に注入管路9、9・・・9と連結する連結部SOを有するものである。この連結部SOは所定の注入管路9、9・・・9を通して所定の注入量を注入し終わった時点、あるいは所定の注入圧に達した時点で、その分岐管Sを他の注入管路9、9・・・9に連結換えすることもできる。上述分岐管S、S・・・Sは図1に示されるように送液系Aを介して加圧部Yと連結された分配容器6からそれぞれ伸長して配置され、先端の連結部SOで注入管路9と連結される。そして、加圧部Yからの加圧注入液は分配容器6を介して各分岐管S、S・・・Sに分配され、注入管路9に送液される。なお、この分配容器6には図示しないが攪拌装置を備えることもできる。また、各分岐管S、S・・・Sは分配容器6を経ずに、直接加圧部Yからの送液系Aと連結することもできる。また、図1において、分岐流量計f1、f2・・・fi、fnの総量を測定することにより送液流量計f0の流量を把握することができ、このため、送液流量計f0は必ずしも必要としない。」 エ 「【0025】 図8、図9、図10は多段分岐体あるいは複数方向分岐体からなる注入液分配部Zの例を示す。管体をそのまま注入液分配部Zとして多数の分岐管を管体に一列に並べた場合、一方から他方への送液で管内の損失水頭により圧力分布が変化するので各分岐管S、S・・・Sへの流量が変化する。このような問題を図8、図9、図10に示すように、多段分岐体あるいは複数方向分岐体からなる注入液分配部Zを用いることによって改良することができる。図8、図9は多段分岐体であって、一つの分岐管から複数の分岐管が枝分かれして多段になっている。Vはしぼりバルブでもよいし、またオリフイスでもよい。このようにすれば損失水頭が均等化されて同一条件で注入液の分配が可能になる。 【0026】 図10は多方向分岐管を多段にした注入液分配部Zである。V1は複数方向分岐管からなる多方向分岐管の最小単位体の例であり、3方流路のバルブであって、左右2方向の流路に同時に分流させるものである。左右2方向の流路はしぼりが可能にしてもよいし、オリフイスを設けてもよい。 【0027】 図11は多方向分岐体の別の例を示す。V11・・・V1nはしぼり弁を有する分岐バルブであって、もちろんストップバルブを兼ねることもできる。このバルブを所定のしぼり度にあらかじめ調整しておけば、例えば、同一のしぼり度にしておけば、60l/分の注入液を加圧送液した場合、V1nのnが5の場合、12l/分づつ分流することになる。V21・・・V2nは多方向分岐管の分流弁(フローデバイダー)を有するバルブであって、下流側の左右の負荷に大小があっても、等量の流量に分流するものを用いる。例えば、一方の流路の負荷が大きくなって流量が小さくなろうとすると、自動的に弁の開度が調整されて、左右の流路に同一の流量が流れるように作動する。このようにして、何段(n段)にも分岐していけば、2nの数の分岐が可能になる。 【0028】 図1~図2および図4~図7において、分岐管S、S・・・Sはそれぞれ、分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vnおよび/またはオリフイスO1、O2・・・Oi、Onを装着し、さらに、必要に応じて分岐流量計f1、f2・・・fi、fn、および/または分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnを装着する。これら分岐管S、S・・・Sは連結部SOを介して後述する複数の注入管路9、9・・・9に通じ、加圧部Yからの加圧注入液を各注入管9、9・・・9に送液する。なお、分岐流量計f1~fnはオリフイスO1~Onの上流側、あるいは分岐バルブV1~Vnの上流側に設けることもできる。また、オリフイスO1~Onは分岐バルブV1~Vnの上流側の分岐管S、S・・・Sに設けてもよく、分配容器6の壁面や、送液系Aの導管7の管壁に直接設けてもよい。また、しぼり機能を有する分岐バルブV1~Vnを用いることにより、オリフイス機能を兼ねることもできる。さらに、分岐バルブV1~Vnにストップバルブの機能をもたせることにより、送液バルブV0は必ずしも必要としなくなる。 【0029】 注入液加圧部Yから注入液分配部Zへの加圧注入液の送液系A、すなわち、導管7には送液流量計f0および/または送液圧力計P0が備えられる。さらに、これら送液流量計fおよび/または送液圧力計Pよりも下流あるいは分岐管Sよりも上流の導管7には送液バルブV0が備えられる。」 オ 「【0036】 なお、上述の分岐流量計f1、f2・・・fi、fnは回転流量計あるいは電磁流量計等であって、パルスで出力された電気信号が制御部Xに入力され、カウントされる。さらに、各分岐管S、S・・・Sにおける流量は送液バルブV0、分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vnの口径、開口度(流路のしぼり)またはオリフイスO1、O2・・・Oi、Onの口径、またはこれらの数や口径を選定したり、変更したり等によって定められる。また、送液流量計および/または送液圧力計や、分岐流量計および/または分岐圧力計からの情報に基づく制御部Xからの注入液加圧部Yへの指示によりインバータ3が制御され、グラウトポンプ1の回転数を調整し、毎分流量f0や注入圧力P0を制御し、分岐管Sの流量を制御する。 【0037】 さらに、図1における注入液分配部Zは図2に示されるように、各分岐管S、S・・・Sから分岐流量計f1、f2・・・fi、fnおよび分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnを取り除いたものであってもよい。なお、図2において、分岐バルブV1~VnがなくてもオリフイスO1~Onだけでも後述のように足りる場合もある。また、分岐バルブV1~Vnをしぼり、開口を調整することによりオリフイスO1~Onと同じ機能をもたすことができる。この場合、オリフイスO1~Onは必要ない。また、分岐バルブの開口度を油圧で調整して遠隔操作することもできる。」 カ 「【0039】 注入部Wは図1に示されるように、地盤8中に設置された複数本の注入管路9、9・・・9からなり、それぞれ注入液分配部Zの各分岐管S、S・・・Sと連結され、注入液加圧部Yからの加圧注入液を分岐管S、S・・・Sを介し、複数の注入管路9、9・・・9を通して地盤8中に注入し、地盤8を固結する。 【0040】 ここで用いられる注入管路9としては、各種注入管路が用いられるが、一例を示せば、図17、18、19、20、21、22、23のとおりである。 【0041】 図17の注入管路9は複数本の細管10、10・・・10を固定板11、11・・・11を通して結束して構成された結束注入管である。固定板11は結束バンドでもよい。各細管10、10・・・10は先端吐出口12、12・・・12がそれぞれ軸方向の異なる位置に開口され、かつこれら吐出口12、12・・・12にはゴムスリーブ13、13・・・13が装着され、注入孔14に注入されたスリーブグラウト15中に埋設するように地盤8中に設置される。吐出口12からの注入液は固化したスリーブグラウト15を破って地盤8中に浸透、注入される。なお、ゴムスリーブ13や、スリーブグラウト15は用いなくてもかまわない。」 キ 「【0051】 以下、本発明にかかる地盤注入工法、すなわち地盤注入液を地盤中に設置された複数の注入管を通して地盤中に注入し、該地盤を固結する地盤注入工法について詳述する。 【0052】 本発明にかかる地盤注入工法は上述の本発明地盤注入装置を用いて行なう。この地盤注入装置としては、例えば図1に示されるように、注入液を加圧する注入液加圧部Yと、この加圧部Yに連結され、それぞれ前記複数の注入管路9、9・・・9に通じる、分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vn、および必要に応じて分岐流量計f1、f2・・・fi、fnと分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnのいずれか一方または両方の装着された複数本の分岐管S、S・・・Sを有し、前記加圧部Yからの加圧注入液を各分岐管S、S・・・Sに分配して各注入管路9、9・・・9に送液する注入液分配部Zと、注入液加圧部Yから注入液分配部Zへの加圧注入液の送液系Aすなわち、導管7に備えられた送液流量計f0および/または送液圧力計P0と、送液流量計f0および/または送液圧力計P0、注入加圧部Y、分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vn、および分岐流量計f1、f2・・・fi、fnと分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnのいずれか一方または両方とそれぞれ信号回路によって接続された、操作盤X2、注入記録盤X3およびデータ入力装置X4を注入監視盤X1に接続して構成される制御部Xを備えた装置が用いられる。 【0053】 なお、分岐バルブV1’nは必ずしも信号回路によって接続されなくてもよい。あらかじめバルブのしぼりを所定の値にセットしておき、所定量注入し終わったら、あるいは所定圧力に達したら、分岐管S、S・・・Sを他の注入管路9、9・・・9に連結換えすることにより注入中のバルブ制御を必要としないからである。 【0054】 上述の地盤注入装置において、図1に示されるように、注入液分配部Zに、さらに、送液系A(導管7)と連結された加圧注入液分配容器6を備えてもよい。この場合、各分岐管S、S・・・Sは図1に示されるように、分配容器6からそれぞれ伸長するように備えられ、加圧部Yからの加圧注入液を分配容器6を介して各分岐管S、S・・・Sに分配する。分配容器6は加圧注入液を各分岐管S、S・・・Sに同一条件下に噴出することができるので効果的である。すなわち、分岐管S、S・・・Sは分配容器6を経ずに、長い導管に直接接続されると、管内に圧力勾配か生じてしまい、このため、加圧注入液は同一条件で噴出されにくく、各分岐管S、S・・・Sへの吐出量にちがいが生じ、これを防ぐために分配容器6を用いることが好ましい。なお、送液圧力計P0は分配容器6に設けることもできる。 【0055】 さらに、複数本の分岐管S、S・・・Sは分岐流量計f1、f2・・・fi、fnおよび/または分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnの上流側にそれぞれオリフイスO1、O2・・・Oi、Onを装着してもよい。 【0056】 制御部Xの操作盤X2、注入記録盤X3およびデータ入力装置X4は制御部Xに内蔵して注入監視盤X1に接続されるか、あるいは制御部Xの外から信号回路によって制御部Xに接続される。 【0057】 上述の地盤注入装置を用い、まず、分岐流量計f1、f2・・・fi、fnおよび/または分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnの所望の設定値、すなわち、地盤状況に合わせた所望の設定値または限界範囲を各分岐管S、S・・・S毎に制御部Xのデータ入力装置X4に記憶させる。 【0058】 次いで、送液流量計f0および/または送液圧力計P0、あるいは、分岐流量計f1、f2・・・fi、fnおよび/または分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnからの注入中のデータを各分岐管S、S・・・S毎に逐次、制御部Xの注入記録盤X3に記録する。 【0059】 分岐流量計f1、f2・・・fi、fnおよび/または分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnのデータが設定値に達したか、あるいは設定値を越え、所定の限界範囲を越えたことを制御部Xの注入監視盤X1が示した場合、制御部Xの操作盤X2により、各分岐管S、S・・・S毎に分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vnおよび/または注入液加圧部Yを作動して送液を調整し、あるいは分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vnを閉じて注入を終了し、残りの分岐管S、S・・・Sについて分岐流量計f1、f2・・・fi、fnおよび/または分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnが設定値に達したり、あるいは設定値を越えた場合、同様の操作を繰り返して注入を行なう。 【0060】 上述操作において、必要に応じて手動の操作を行なってもよい。また、注入が所定量に達して終了した分岐管、あるいは注入圧力が限界値に達して注入を終了した分岐管については、分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vnをリターン管路Rに切り換えることにより、前記終了した分岐管からの加圧注入液を停止することなく注入を終了することができる。すなわち、加圧注入液は停止せずにそのまま流れ続けるのであるから、注入の部分的終了があっても加圧注入液の条件は変化しない。このため、注入加圧部Yを調整しなくても、全分岐管の注入が完了するまで同一条件下で注入が達成される。 【0061】 なお、この場合、図16に示されるように、分岐バルブV1、V2、V3・・・Vi、Vnをリターン管路Rに切り換えずに、分岐管S、S・・・Sの連結部SO、SO・・・SOを第1注入ブロックから他の注入ブロック、すなわち、第2注入ブロックの注入管路に切り換え、注入をそのまま連続することもできる。 【0062】 本発明地盤注入工法では、このようにして地盤8中に設置された複数の注入管路9、9・・・9を通じてほぼ同一深度の注入ステージに注入液を注入して連続した版状の固結層、すなわち、図1の第一改良ブロックを形成し、この注入を繰り返し、例えば、この下層にさらに版状の固結層、すなわち、第二改良ブロックを形成し、積層体とする。 【0063】 本発明において、ほぼ同一深度とは、例えば横方向に注入するトンネル掘削工事等では、水平方向にほぼ同一の注入管長の注入深度も意味する。また、本発明において、第一改良ブロック、第二改良ブロクとは図1に示されるように、垂直方向に設ける場合もあるし、図24のように水平方向に設ける場合もある。 【0064】 この場合、上述したように、送液流量計f0および送液圧力計P0の情報が制御部Xに送られ、その情報に基づき制御部Xが注入液加圧部Yに指示してインバーダ3を調整し、最適の注入速度F0、注入圧力P0になるように制御することができる。すなわち、図1に示されるように、分岐管S、S・・・Sにそれぞれ分岐流量計f1、f2・・・fi、fnや分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnを設け、その情報を制御部Xに伝達し、所定の範囲内の注入速度f0、注入圧力P0で加圧注入液を注入し得ることはもちろん、特に、地盤条件に変化がある場合、あるいは垂直方向の吐出口から同時に注入する場合にも同様に注入が可能である。また、図1のように、水平方向のブロック毎の地盤条件がほとんど同じの場合、分岐圧力計や分岐流量計のない簡素な装置を用いてほぼ同一の土層あるいは深度に対して平面的に間隔をあけて設けた複数の注入管路から同時注入することにより、簡便な注入が可能である。この場合、改良ブロックにおける各注入管路の平均注入速度が制御されるとともに、全注入量も制御され、加圧注入液の所定流量ないし、所定圧力をもって、該注入液を一つの送液部Yから複数の注入管路9、9・・・9に同時に送液し、注入し、広範囲の地盤8を急速かつ簡便に改良することができる。」 ク 「【0072】 そして、図14の装置を用いて地盤注入を施工するに際し、例えば第1ステージにおいて注入に先立ち、注水試験を行って図26に示されるP-q曲線(曲線1)、すなわち、P(注入圧力P)-q(注入速度ないしは流量l/分)曲線を出す。図26は注入圧-流量(毎分注入量)曲線である。図26において、O1点までは注入速度と注入圧力は比例関係にあり、地盤破壊は生ぜず、完全な浸透注入となる。しかし、O1~O2点までは注入速度と注入圧力は比例関係になく、部分的に割裂は生じるが、地盤が破壊して注入液が逸脱する注入圧力の低下はみられない。このO2点の注入圧力を限界注入圧Pr0、限界注水速度(流量)qr0とする。このようにして、地盤が破壊する限界注入圧力Pr0および限界注入流量qr0(注入速度)を知ることができる。 【0073】 また、注水試験と異なり、薬液を注入する場合、注入が進行するにつれて地盤は強化される。図26において、F1点までは直線関係にあり、F1~F2点までの間は直線ではないが破壊には至っていない。したがって、F2点におけるPrfを限界圧力、qrf限界注入流量とする。このようにして、最終的な限界注入圧力および限界注入流量(注入速度)をそれぞれPrfおよびqrfとして設定して設計注入量(積算注入量)の注入をこの限界内で行なうこととする。そして、この設計注入量が注入されたら注入終了とし、もし、設計注入量に達しないうちにこの限界注入圧力に達した場合にはその時点で注入を終了する。 【0074】 ここで、図14において注入管路Tの本数nをn=100として、オリフイス口径=1.0mmとし、送液流量計f0=150l/分とし、注入管路(T1~T100)の第1ステージに位置する吐出口から同時注入したところ、分岐圧力計P11は2kg/cm2(審決注:「2kg/cm2」は「2kgf/cm2」の誤記と認められる。)、分岐流量計f11は1.5l/分、送液圧力計P0=30kgf/cm2を示した。第1ステージにおける注入前の透水試験ではq1r0=5l/分であった。また、q1r0=5kgf/cm2(審決注:「q1r0」は「P1r0」の誤記と認められる。)であった。P1rf=7.5kgf/cm2(P1r0の1.5倍)と設定した。また、注入管路T11における計画注入量はQ11=100lに設定した。注入中のP1の注入圧力は3.0kgf/cm2以内、平均注入速度q1=1.5l/分で100lの注入が完了した。」 ケ 「【0079】 図14において、注入管路Tとして図17に示される複数本の細管10、10・・・10束ねて構成される注入管路9を複数本地盤8中に設置する。また、分配容器6からの分岐管S、S・・・Sの少なくとも一本には分岐圧力計P1’nを設けておく。この注入管路9、9・・・9(図14では注入管路をTとして表現する。)は軸方向に異なる位置の吐出口12、12・・・12が地盤中の土層の異なる第1~第nステージのそれぞれに位置するように地盤8中に設置される。次いで、送液バルブV01~V0nのうち、V01のみを開き、第1の分配容器6から、吐出口12が第1ステージに位置する注入管路9(T1~Tn)の細管10(T11~Tn1)へ注入液を同時に送液し、細管T11~Tn1を通して第1ステージに注入する。 【0080】 各分配容器からの分岐管の数をn=100とし、オリフイスの口径を1.0mmとし、送液圧力計P0の圧力=30kgf/cm2で送液流量計の流量f0=150l/分とすると、吐出口からの平均注入速度は1.5l/分である。事前の透水試験によりP1r0=6kgf/cm2、q1r0=4l/分であり、分岐圧力計に示される初期注入圧力P10が6kgf/cm2以内であれば、地盤を破壊することなく粒子間浸透される 【0081】 注入が進行し、第1ステージにおけるn(=100)の吐出口の全注入量Q1=100l×100=10000lの注入が限界注入圧力P1f(=1.5×P1r0と設定)以内で注入できれば、送液バルブV01を閉じて第1ステージの注入を終了し、送液バルブV02のみを開き、第2ステージの注入に移向する。」 コ 図1、図26は以下のとおり。 【図1】 【図26】 サ 以上のことから、上記クの誤記を考慮すれば、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 「地盤中に設置された複数の注入管路を通じて地盤注入液を同時に地盤中に注入し、該地盤を固結する、制御部X、注入加圧部Y、注入液分配部Z、注入部Wおよび送液系Aから構成される地盤注入装置を用いて行う地盤注入工法であって、 地盤注入装置は、 注入液槽2からの注入液をグラウトポンプ1により加圧し、加圧注入液として送液系Aを介して注入液分配部Zに送液する注入液加圧部Yと、 注入液加圧部Yから注入液分配部Zへの加圧注入液の送液系A、すなわち、送液流量計f0および送液圧力計P0を備えた導管7と、 送液系A(導管7)と連結された加圧注入液分配容器6と、分配容器6から伸長するように備えられ、先端の連結部SOでそれぞれ複数の注入管路9、9・・・9に通じ、分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vn、およびオリフイスO1、O2・・・Oi、Onを装着し、分岐流量計f1、f2・・・fi、fnと分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnが装着される複数本の分岐管S、S・・・Sを備える注入液分配部Zと、 送液流量計f0および送液圧力計P0、注入加圧部Y、分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vn、および分岐流量計f1、f2・・・fi、fnと分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pnとそれぞれ信号回路によって接続された、操作盤X2、注入記録盤X3およびデータ入力装置X4を注入監視盤X1に接続して構成される制御部X、を備え、 注入管路9は複数本の細管10、10・・・10を固定板11、11・・・11を通して結束して構成された結束注入管であって、各細管10、10・・・10は先端吐出口12、12・・・12がそれぞれ軸方向の異なる位置に開口されたものであって、 地盤注入を施工するに際し、第1ステージにおいて注入に先立ち、注水試験を行ってP-q曲線(曲線1)、すなわち、P(注入圧力P)-q(注入速度ないしは流量l/分)曲線を出して、地盤が破壊する限界注入圧力Pr0および限界注入流量qr0(注入速度)を知ることができ、 注入管路Tの本数nをn=100として、オリフイス口径=1.0mmとし、送液流量計f0=150l/分とし、注入管路(T1~T100)の第1ステージに位置する吐出口から同時注入したところ、分岐圧力計P11は2kgf/cm2、分岐流量計f11は1.5l/分、送液圧力計P0=30kgf/cm2を示したものであって、第1ステージにおける注入前の透水試験ではq1r0=5l/分であり、P1r0=5kgf/cm2であり、 限界注入圧力Pr0及び限界注入流量(注入速度)qr0に基づいて、薬液(注入液)を注入する場合の限界注入圧力Prf及び限界注入流量(注入速度)qrfを設定し、各注入管路に送液された注入液の注入圧力P及び流量qが上記限界注入圧力Prf及び限界注入流量(注入速度)qrfの限界内となるようにし、 第1ステージにおける注入前の透水試験でP1r0=5kgf/cm2であったことから、この1.5倍の限界注入圧力Prf=7.5kgf/cm2を、また、注入管路T11における計画注入量を、Q11=100lとそれぞれ設定し、 注入中のP1の注入圧力は3.0kgf/cm2以内、平均注入速度q1=1.5l/分で、限界注入圧力Prf=7.5kgf/cm2に達することなく、注入管路T11における計画注入量Q11=100lの注入を完了する、 地盤注入工法。」 (2) 甲第2号証 本件特許の出願前に頒布された甲第2号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は地盤注入液を地盤中に設置された注入管路を通して地盤中に注入し、該地盤を固結する地盤注入装置および工法に係り、特に注入の際の圧力変化にもかかわらず、所定の吐出量で注入し、さらに、吐出量を注入情況に応じて任意に調整し得る地盤注入装置および工法に係り、詳細には、地盤注入液を注入管路に送液する導管の横断面の絞りを調整して所定の吐出量で注入し得る地盤注入装置および工法に関する。 【0002】 【従来の技術】地盤中に注入液を注入して該地盤を改良する地盤改良技術として、従来、注入すべき地盤に注入管を設置し、これら注入管を一本づつ下方から上方に引き上げ、あるいは上方から下方に押し下げて注入ステージを移向しながら注入する方法が知られている。 【0003】しかし、注入すべき対象地盤は大方、軟弱な沖積層であって、透水性の異なる土層が積層して構成されており、このため、注入ステージを移向させながらそれぞれの土層に最適な注入を達成すること、すなわち、最適な注入圧、注入速度、注入量、注入率等による注入を達成することは極めて煩雑であって、長時間を必要とし、不経済となり、実質的に不可能であった。 【0004】また、近年、地盤注入により液状化防止を行なうことが要求されている。このような液状化防止には大容量土の経済的急速施工が必要である。しかし、従来の注入工法ではこのような急速施工は不可能であった。 【0005】特に、地盤は上述のとおり、透水性の異なる土層が積層して構成されており、このため、各土層間で注入圧が異なって圧力変化を起こし、あるいは注入中に注入圧力の変化を起こし、この地盤内圧力変化のため一定量の吐出量で地盤注入することは非常に困難であった。 【0006】 【発明が解決すべき課題】また、地盤中に設置した複数の注入管路に一つのポンプから同時に注入する場合、各注入管路吐出口の地盤の注入圧力が異なれば、圧力の低い注入管路のみに注入液が吐出され、所定の注入量を複数の注入管路に同時に注入することは不可能であった。 【0007】さらに、一台のポンプから多数のオリフイスまたは噴射口を介して多数の注入管に同時に注入液を送液し、地盤中に注入する方法も提案されている。この方法では個々の注入管について、地盤の抵抗圧の変化の幅が大きい場合、あるいは、それぞれの注入管における地盤抵抗圧が注入過程中に変化する場合、ポンプ圧力が変動してしまい、このため、各注入管に所定の吐出速度で注入することが困難である。また、多数の注入管のうち、いずれかの注入管の注入が終了してのち、残りの注入管からの注入を所定圧力および吐出量を保ちながら注入することもまた困難なため、実用化には至っていないのが実情である。 【0008】例えば、複数の注入管のうち、一部の注入管の注入が完了してこの注入管路のバルブを閉束した場合、送液管内の圧力は急上昇して残りの注入管への注入量が急激に増大してしまい、一定の注入圧力で一定の注入量を維持して注入を継続することが困難になる。また、各注入管毎に注入管からの吐出量を注入情況に応じて変動させることも困難である。 【0009】そこで、本発明の目的は地盤注入の際の注入圧力の変化にもかかわちず、所定の吐出量で注入し得、上述の公知技術に存する欠点を改良した地盤注入装置および工法を提供することにある。 【0010】さらに、本発明の他の目的は複数の注入管路吐出口の浸透抵抗圧力がそれぞれ異なっても、複数の注入管路から同時に、所定の注入速度で注入し得、さらに、複数の注入管路のうち、一部の注入が完了して注入を停止しても、他の残りの注入管路に影響を与えず、所定の圧力および吐出量を保ったまま、最後の一本の注入管路まで容易に注入し得、さらにまた、注入中、各注入管路毎にその吐出量を注入情況に応じて調整し得、上述公知技術に存する欠点を改良した地盤注入装置および工法を提供することにある。 【0011】さらにまた、本発明の他の目的は液状化防止工事あるいは大規模工事における急速施工のための地盤改良等、大容量土の地盤改良に適し、特に、改良すべき地盤に複数の注入管路を設置し、これら複数の注入管路から注入液を同時に、かつ選択的に、さらには自動的に注入し得る地盤注入装置および工法を提供することにある。」 イ 「【0016】 【発明の実施の態様】以下、本発明を添付図面を用いて詳述する。 【0017】図1は本発明装置の一具体例のフローシートである。図2はオリフイス口径φ2.0mmにおける抵抗圧力Pとオリフイスからの流量fとの関係を各液圧について表したグラフである。図3はオリフイス口径φ2.5mmにおける抵抗圧力Pとオリフイスからの流量fとの関係を各液圧について表したグラフである。図4は本発明にかかる注入液加圧部と他の具体例の説明図である。図5は本発明にかかる地盤注入装置の変形例のフローシートである。図6は本発明の絞り部として用いられる流量制御弁の一具体例の断面図である。図7は流量制御弁の他の例の断面図である。図8は本発明に用いられる注入液リターンシステムの具体例の断面図である。図9は本発明にかかる絞り部の他の具体例の断面図である。図10は本発明にかかる絞り部のさらに他の形式の説明図である。図11は図10の絞り部の操作状態を表した部分断面図である。図12は図10の絞り部の変形例の部分断面図である。図13は図10の絞り部のさらに他の変形例の部分断面図である。図14は本発明にかかる地盤注入装置の他の具体例のフローシートである。図15は本発明にかかる地盤注入装置のさらに他の具体例のフローシートである。図16は本発明にかかる地盤注入装置のさらに他の具体例のフローシートである。図17は中央管理部に接続された本発明装置の一具体例のフローシートである。図18は中央管理部を有する図1の装置を具体的に表した説明図である。図19は集中管理装置X1の操作フローチャートである。図20は図18の10本の送液系統分のデータを表した画面である。図21は本発明にかかる一具体例の注入管路を地盤中に埋設した状態の断面図である。図22は本発明にかかる他の具体例の注入管路を地盤中に埋設した状態の断面図である。図23は本発明のさらに他の具体例の注入管路を地盤中に埋設した状態の断面図である。 【0018】図1に示されるように、本発明地盤注入装置Aは地盤注入液5を地盤3中に設置された一本または複数本の注入管路2、2・・・2を通して地盤3中に注入し、該地盤3を固結する装置であって、地盤注入液5を所定の圧力に加圧する注入液加圧部1と、この注入液加圧部1に連通され、前記注入液5を注入管路2に送液する導管6と、この導管6に設けられた絞り部7とから基本的に構成される。なお、絞り部7は導管6の上端部、すなわち、送液系13と導管6の分岐点、あるいは後述の分配装置11から導管6への出口に設けてもよい。 【0019】また、図1に示されるように、地盤注入液5の絞り部7に至る送液系13に注入液リターンシステムRS、すなわち、送液流量計f0および/または送液圧力計P0と、注入液リターン装置RAを設け、所定の注入圧力P0を保つように流量圧力制御装置10によってリターン装置RAを制御し、注入液の一部をリターン管路Rを通して注入液槽4にリターンさせる。すなわち、注入液リターンシステムRSは送液圧力計P0および/または送液流量計f0からの信号情報を流量圧力制御装置10が受け、この信号を注入液リターン装置RAに伝達する。注入液リターン装置RAは送液圧力計P0および/または送液流量計f0からの情報に基づき、送液系13中の注入液を送液系13からリターン管路Rに分流して注入液槽4にリターンさせることにより送液系13の液圧を所望の圧力に保持し、これにより絞り部7を通して導管6から注入管路2に送液される注入液の吐出量を所定の量に保持する。 【0020】図1において、地盤注入液5は絞り部7の上流側の高い圧力部から下流側の低い圧力部に噴射される。この場合、加圧された地盤注入液5の注入圧力P0と注入される地盤3の注入圧力P1nの差圧を充分に大きくとれば、絞り部7より下流側の各導管6、6・・・6の注入圧力にばらつきがあっても、各導管6の吐出量(注入速度)は絞り部7の面積が同じであればほぼ同一量となる。そして、吐出量は注入圧力P0と絞り部7の孔の面積によって定まる。 【0021】しかし、図1において、地盤注入液5は注入の初めから終りまで常に全導管6、6・・・6から正確に同様に注入されるとは限らず、あるいは対象注入個所によっては早く完了して注入を終了する導管6もでてくる。ところが、導管6、6・・・6の一部が注入を終了すると、この注入量が残りの他の導管6、6・・・6に分配されるため、導管6内の圧力が高くなり、残りの導管6、6・・・6からの吐出量が増えてしまう。これを防ぐために、ポンプ14のインバータ(図示せず)を調節して回転数を調整し、圧力を落として流量を調整するか、リターンシステムを作動させる。このようにして、導管6の注入中の数の変動にもかかわらず、送液系13の圧力を所定値に保持し得、各導管6、6・・・6から所定流量の注入を自動的に継続することができる。 【0022】また、図1において、注入開始から完了まで、注入液リターンシステムRSにより注入圧力P0を任意の値に設定して地盤注入液5を自動的にリターンさせ、注入圧力P0と、稼動している導管6、6・・・6の数とに対応した吐出量を任意に得ることもできる。さらに、ポンプ14に図示しないインバータを設けることにより、最も適切な流量範囲(圧力範囲)内で、所定の流量ないしは圧力に調整することもできる。このように、注入液リターンシステムRSにより、あるいはインバータにより、さらにはこれらの併用により地盤注入液を所定圧力に加圧する注入液加圧部1を本発明では、流量圧力制御機能を有する注入液加圧部1と呼ぶ。なお、図1において、送液系13と、導管6との間に分配装置11を設け、導管6、6・・・6を分配装置11から伸長させてもよい。また、12は導管6と注入管路2の連結部である。さらに、導管6には図1に示すように、分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vn、さらには、圧力計(圧力検出器)8、流量計(流量検出器)9を任意に設けることもできる。 【0023】図2および図3は図1の分配装置11中の加圧された地盤注入液5(絞り部7(オリフイス)よりも上流側の液圧=P0)をオリフイス(絞り部7)から噴出する場合、オリフイスの口径を2.0mmおよび2.5mmとし、リターンシステムRSを用いてオリフイスよりも上流側の液圧を所定圧力に保ち、オリフイスよりも下流側の液圧(地盤抵抗圧力)を種々変化させたときのオリフイスからの流量f(l/分)の変化のグラフである。 【0024】図2および図3から、液圧P0が地盤抵抗圧力Pよりも充分に高いときには、流量fは液圧PとオリフイスOの口径によって定まり、また、液圧Pが変動しても流量fはほとんど変動しない。また、液圧P0とPとの差がある範囲内に小さくなると流量fは急速に低下することがわかる。一般に、液圧P0は20~100kgf/cm2とし、P0とPの差は5kgf/cm2以上、好ましくは、10kgf/cm2が望ましい。」 ウ 【0085】図21は本発明にかかる注入管路を地盤中に埋設した状態の断面図であって、注入管路2として複数本の細管32を結束してなる注入管路2を用いた例を示す。各細管32、32・・・32は先端吐出口33がそれぞれ軸方向の異なる位置に開口され、削孔34に装填されたスリーブグラウト35中に埋設するように地盤3中に設置される。吐出口33からの地盤注入液は固化したスリーブグラウト35を破り、地盤壁3aを通って地盤3中に浸透、注入される。なお、このスリーブグラウト35は使用しなくてもかまわない。」 エ 図1、図2、図3は以下のとおり。 【図1】 【図2】 【図3】 オ 以上のことから、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。 「地盤注入液5を地盤3中に設置された一本または複数本の注入管路2、2・・・2を通して地盤3中に注入し、該地盤3を固結する地盤注入装置A及び工法であって、 地盤注入装置Aは、地盤注入液5を所定の圧力に加圧する注入液加圧部1と、この注入液加圧部1に連通され、前記注入液5を注入管路2に送液する導管6と、この導管6に設けられた絞り部7とから構成され、 注入液加圧部1は、地盤注入液5の絞り部7に至る送液系13に設けた注入液リターンシステムRSであって、送液流量計f0および送液圧力計P0と、注入液リターン装置RAを設け、所定の注入圧力P0を保つように流量圧力制御装置10によってリターン装置RAを制御し、注入液の一部をリターン管路Rを通して注入液槽4にリターンさせる注入液リターンシステムRS、及びポンプ14に設けたインバータにより地盤注入液を所定圧力に加圧する流量圧力制御機能を有するものであり、 送液系13と、導管6との間に分配装置11を設け、導管6、6・・・6を分配装置11から伸長させ、導管6と注入管路2とは連結部12で連結され、さらに、導管6には、分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vn、さらには、圧力計(圧力検出器)8、流量計(流量検出器)9を設けており、絞り部7は分配装置11から導管6への出口に設け、注入管路2は複数本の細管32を結束してなり、各細管32、32・・・32は先端吐出口33がそれぞれ軸方向の異なる位置に開口され、 地盤注入液5は絞り部7の上流側の高い圧力部から下流側の低い圧力部に噴射されるが、加圧された地盤注入液5の注入圧力P0と注入される地盤3の注入圧力P1nの差圧を充分に大きくとれば、絞り部7より下流側の各導管6、6・・・6の注入圧力にばらつきがあっても、各導管6の吐出量(注入速度)は絞り部7の面積が同じであればほぼ同一量となり、そして、吐出量は注入圧力P0と絞り部7の孔の面積によって定まるものである、 地盤注入装置A及び工法」 (3) 甲第4号証 本件特許の出願前に頒布された甲第4号証には、以下の事項が記載されている。 「3-2 現場注入試験 薬液注入工事の施工にあたっては、あらかじめ、注入計画地盤またはこれと同等の地盤において設計どおりの薬液の注入が行われるか否かについて、調査を行うものとする。」(2頁) (4) 甲第5号証 本件特許の出願前に頒布された甲第4号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「浸透注入を実現させるには、試験注入を行い、注入形態を確認することが最も確実である。試験注入は、本工事と同一の条件で実施することが本来必要であるが、薬液のかわりに水を用いた注入試験における注入圧と注入速度の関係から注入形態を予測する簡便な方法が近年提案されている。」(280頁) イ 「群注入における注入条件は表-5.8のとおりで、一点注入でのP~q曲線で良好な固結形状が得られた条件下と同一の緩結材、注入速度である。」(284頁) (5) 甲第6号証 本件特許の出願前に頒布された甲第6号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「薬液注入工法に係る条件明示事項等について ・・・ 2.施工計画打ち合わせ時等に請負者から提出する事項 ・・・ (1)工法関係 [1]注入圧 [2]注入速度 ・・・」(7頁) イ 「3-2 現場注入試験 薬液注入工事の施工にあたっては、あらかじめ、注入計画地盤又はこれと同等の地盤において設計どおりの薬液の注入が行われるか否かについて、調査を行うものとする。」(10頁) (なお、○囲み数字1~3は[1]~[3]として表示。以下同様。) (6) 甲第9号証 本件特許の出願前に頒布された甲第9号証には、以下の事項が記載されている。 「[7]現場注入試験 現場注入試験は対象地盤に適合する薬液や注入工法などを設定し、目的とする効果が発揮できるのかどうか調査し、設計に反映させるために行うものであるが、ケースとしては次の2通りがあり、いずれの場合においてもできるだけ本施工に近い条件で実施する必要がある。 ・・・ ケース2 設計したものが現場にマッチするかどうかを確認する。 ・・・ 一般的にはケース2の設計通りの効果が発揮できるかどうかを現位置で小規模に行うことが多い。 この場合は、設計通りの仕様ならびにそれに近い何種類かのケースを考えて下図のパターンで、効果の差を見る例が多い。この場合、設計通りの効果が得られなければ、改めて再検討を行って、再度数パターンでの現場試験が必要となる。 一般には掘削直前の立坑等を利用して行い、注入後の効果確認を経て、さらに掘削視認している。」(33頁) (7) 甲第10号証 本件特許の出願前に頒布された甲第10号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「[8]現場注入試験 現場注入試験は、対象地盤に適合する注入材や注入方式などを設定し、目的とする注入効果が期待できるか否かを確認し、施工に反映させるために行うものである。 【解説】 現場注入試験は、対象となる土層条件に対して、最適な注入材料、施工方法、範囲や注入量など、施工計画の基本資料となるように行う。設計仕様をもとに現場注入試験計画を作成し、現場注入試験を実施する。この結果から協議により施工仕様を決定する。そのため、現場注入試験はできるだけ本施工に近い条件で実施するのが望ましい。 試験方法は、施工計画書の内容が現場に適するかどうかを確認するため、施工仕様は設計どおりまたはそれに近い数種類のパターンを比較して効果の差を見る例が多く、基本的には対象範囲外で行う。 注入速度は限界注入速度試験で確認し、注入率、注入量、注入孔間隔等は現場注入試験後に調査ボーリングを実施し各種試験により確認をおこなう。」(14頁) イ 「3.限界注入速度(qcr)試験法 ・・・ 限界注入速度は、実際使用する薬液を用いて求めることが理想であるが、薬液がゲル化して実験結果の解釈が難しくなること、大量の薬液が注入されるため本工事に影響を及ぼすことが考えられる。このため、本試験では薬液の代わりに水を用いて注入試験を行う。」(27頁) (8) 甲第25号証 本件特許の出願前に頒布された甲第25号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「6.1 注入圧力の管理 ・・・この圧力管理を効果的に行うためには、試験注入を行って現地地盤における注入圧力の初期状態を確認しておく必要がある。」(143頁) イ 「6.2 注入速度の管理 注入速度は、注入材の地盤中での注入形態(浸透注入・割裂注入)を左右する因子の一つであって、注入効果に密接な関係がある。…注入速度が遅すぎると、注入効果がよくても経済効果が伴わなくなったりするので、最適な注入速度を選定することが大切である。 標準的な注入速度として、(社)日本薬液注入協会では表6.1のような値を示しており、通常は6~20l/min で施工することが多い。…限界注入速度の考え方を述べたが、この基本的な考え方は、経済性をも考慮して割裂浸透注入をするという立場をとっている。経験上定めた表6.1の値もこの割裂浸透注入をとっているものと考えるべきであろう。」(145~146頁) (9) 甲第26号証 本件特許の出願前に頒布された甲第26号証には、注入施工(293頁)に先立ち、注入施工と同じ注入材(シリカライザー)を用いて試験注入を行い、流量や注入圧力等の注入条件を確認すること(292頁の表7・6)が記載されている。 2 本件発明1について (1) 対比 まず、本件発明1と甲1発明を対比する。 ア 甲1発明の「地盤」、「吐出口12」、「グラウトポンプ1」、「導管7」、「分配容器6」、「オリフイスO1、O2・・・Oi、On」及び「注入管路9」は、それぞれ本件発明1の「地盤」、「注入口」、「注入ポンプ」、「第1注入ホース」、「分液盤」、「吐出口」及び「第2注入ホース」に相当する。 イ 甲1発明の「注入液」は、「地盤中に注入し、該地盤を固結する」ものであるから、本件発明1の「グラウト」に相当し、また甲1発明の「地盤注入装置を用いて行う地盤注入工法」は、本件発明1の「グラウト注入方法」に相当する。 そうすると、甲1発明の「地盤中に設置された複数の注入管路を通じて地盤注入液を同時に地盤中に注入し、該地盤を固結する」「地盤注入装置を用いて行う地盤注入工法」は、本件発明1の「少なくとも地盤中に設置された複数の注入孔を介してグラウトを同時に注入するグラウト注入方法」に相当する。 ウ 甲1発明の「注入液加圧部Y」、「送液系A」及び「注入液分配部Z」のうち「分岐管S、S・・・S」の「オリフィスO1、O2・・・Oi、On」までの区間が、本件発明1の「注入ポンプによりグラウトが第1注入ホースを介して圧送されてくる分液盤内の吐出口の入口に至るまでの第1区分」に相当する。 また、甲1発明の「注入液分配部Z」の「分岐管S、S・・・S」の「オリフィスO1、O2・・・Oi、On」から、「注入管路9」の「複数本の細管10、10・・・10」の「先端吐出口12、12・・・12」までの区間と、本件発明1の「上記分液盤内において分液されてそれぞれ同一断面積の吐出口を通過した上記グラウトを第2注入ホースを介して上記複数の注入孔から地盤中に当該グラウトを注入するまでの第2区分」とは、「上記分液盤内において分液されてそれぞれ吐出口を通過した上記グラウトを第2注入ホースを介して上記複数の注入孔から地盤中に当該グラウトを注入するまでの第2区分」で共通する。 エ 甲1発明の「注入管路Tの本数nをn=100として、オリフイス口径=1.0mmとし、送液流量計f0=150l/分とし、注入管路(T1~T100)の第1ステージに位置する吐出口から同時注入したところ、分岐圧力計P11は2kgf/cm2、分岐流量計f11は1.5l/分、送液圧力計P0=30kgf/cm2を示したものである」ことにおいて、オリフィスO1、O2・・・Oi、Onよりも上流側の圧力を示す送液圧力計P0の数値が30kgf/cm2であって、同じく下流側の圧力を示す分岐圧力計P11の数値が2kgf/cm2であるので、両圧力計の数値からみて、オリフィスO1、O2・・・Oi、Onの開口面積よりも、注入管路の吐出口の開口面積の方が大きいことが自明である。 オ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致している。 一致点:少なくとも地盤中に設置された複数の注入孔を介してグラウトを同時に注入するグラウト注入方法において、 注入ポンプによりグラウトが第1注入ホースを介して圧送されてくる分液盤内の吐出口の入口に至るまでの第1区分と、上記分液盤内において分液されてそれぞれ吐出口を通過した上記グラウトを第2注入ホースを介して上記複数の注入孔から地盤中に当該グラウトを注入するまでの第2区分とを形成し、 上記複数の吐出口の総断面積よりも、上記注入孔の総断面積を大きく設定した、グラウト注入方法。 また、両発明は、以下の相違点1、2で相違している。 相違点1:吐出口が、本件発明1では、同一断面積であるのに対し、甲1発明では、同一断面積であるかどうか不明な点。 相違点2:本件発明1は、予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、上記第1区分中を流れるグラウトがその測定した地盤抵抗圧力よりも高い強制圧力となるように負荷することにより、上記分液盤における複数の吐出口から当該グラウトを均等に分液し、 上記第2区分を流れるグラウトを上記注入孔を介して地盤抵抗圧力に基づいて注入するのに対し、甲1発明は、その様なものか不明な点。 (2) 判断 上記相違点1、2について検討する。 ア 相違点1 (ア) 甲第1号証の記載事項(上記1(1)ウ)をみると、多方向分岐体の別の例として、ストップバルブを兼ね、さらにしぼり弁を有する分岐バルブV11・・・V1nが記載されており、このバルブを所定のしぼり度にあらかじめ調整しておけば、例えば、同一のしぼり度にしておけば、60l/分の注入液を加圧送液した場合、V1nのnが5の場合、12l/分づつ分流することになる、ことが記載されている。 当該しぼり弁を有する分岐バルブV11・・・V1nがしぼり度を調整する機能を有し、また甲1発明のオリフイスも管路の断面をしぼる機能を有していることは自明である。そして当該しぼり弁を有する分岐バルブV11・・・V1nは、甲1発明が記載された甲第1号証における別実施例であることも考慮すれば、当該しぼり弁を有する分岐バルブV11・・・V1nを同一しぼり度とすることを、甲1発明のオリフィスO1、O2・・・Oi、Onに適用することは、当業者であれば、容易に想起し得ることである。したがって、甲1発明のオリフィスO1、O2・・・Oi、Onのしぼり度を、甲第1号証に記載の同一しぼり度とすること、つまりは、オリフィスO1、O2・・・Oi、Onを同一断面積とすることは、当業者ならば容易になし得た程度のことである。 (イ) また、甲第2号証には、上記1(2)オに記載したとおりの甲2発明が記載されており、甲2発明の「面積が同じであ」る「絞り部7」は、本件発明1の「同一断面積の吐出口」に相当する。そして、甲1発明及び甲2発明は、共に同一技術分野に属しており、グラウトの流量や圧力の調整に関する発明であるので、当該調整に関わる吐出口(甲1発明は「オリフイス」、甲2発明は「絞り部7」。)について、甲1発明のオリフイスを、甲2発明の絞り部7と同様の、同一断面積のものに替えることは、当業者ならば容易になし得た程度のことである。 イ 相違点2 (ア) 相違点2に係る本件発明1の構成について 相違点2に係る本件発明1の構成を再掲すると、次のとおりである(分説は審決による。)。 (a) 予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、 (b1) 上記第1区分中を流れるグラウトがその測定した地盤抵抗圧力よりも高い強制圧力となるように負荷することにより、上記分液盤における複数の吐出口から当該グラウトを均等に分液し、 (b2) 上記第2区分を流れるグラウトを上記注入孔を介して地盤抵抗圧力に基づいて注入すること 本件発明1は、上記のとおり、(a)(b1)(b2)の構成(以下「構成(a)」などという。)を有しているところ、試験注入において、地盤抵抗圧力をどのように測定するかという点と、本施工において、測定された地盤抵抗圧力をどのように用いてグラウト注入を行うかという点は、それぞれ独立の技術的事項であるから、少なくとも、地盤抵抗圧力をどのように測定するかという構成(a)と、本施工において、測定された地盤抵抗圧をどのように用いるかという構成(b1)(b2)とは、その容易想到性を別々に考慮してよいものである。 以下、まず構成(a)である「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定」することについて、検討する。 (イ) 構成(a)について a 甲第1及び2号証について (a)甲第1号証の記載の注水試験について 請求人は、甲第1号証(段落【0074】、【図26】)には、本件発明1の構成(a)の「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成が記載されていると主張している。構成(a)の意義が、本工事の現場において、薬液を用いて地盤抵抗圧力を測定するものであることは、当事者間に争いのあるところではない。 そこで、甲1発明について検討する。 上記1(1)サのとおり、甲1発明は、下記の構成を有している(分説は審決による。以下同じ。)。 (A1) 地盤注入を施工するに際し、第1ステージにおいて注入に先立ち、注水試験を行ってP-q曲線(曲線1)、すなわち、P(注入圧力P)-q(注入速度ないしは流量l/分)曲線を出して、地盤が破壊する限界注入圧力Pr0および限界注入流量qr0(注入速度)を知ることができ、 (B1) 注入管路Tの本数nをn=100として、オリフイス口径=1.0mmとし、送液流量計f0=150l/分とし、注入管路(T1~T100)の第1ステージに位置する吐出口から同時注入したところ、分岐圧力計P11は2kgf/cm2、分岐流量計f11は1.5l/分、送液圧力計P0=30kgf/cm2を示したものであって、第1ステージにおける注入前の透水試験ではq1r0=5l/分であり、P1r0=5kgf/cm2であり、 (A2) 限界注入圧力Pr0及び限界注入流量(注入速度)qr0に基づいて、薬液(注入液)を注入する場合の限界注入圧力Prf及び限界注入流量(注入速度)qrfを設定し、各注入管路に送液された注入液の注入圧力P及び流量qが上記限界注入圧力Prf及び限界注入流量(注入速度)qrfの限界内となるようにし、 (A3) 第1ステージにおける注入前の透水試験でP1r0=5kgf/cm2であったことから、この1.5倍の限界注入圧力Prf=7.5kgf/cm2を、また、注入管路T11における計画注入量を、Q11=100lとそれぞれ設定し、 (B2) 注入中のP1の注入圧力は3.0kgf/cm2以内、平均注入速度q1=1.5l/分で、限界注入圧力Prf=7.5kgf/cm2に達することなく、注入管路T11における計画注入量Q11=100lの注入を完了する 本件発明1の「地盤抵抗圧力」とは、「注入圧力」のことであり(本件訂正明細書段落【0018】)、「流量」とは、単位時間当たりの流量(注入量)を意味するものと認められる。上記甲第1号証記載の注水試験と薬液注入の関係においても、注入圧力Pを設定するために、限界注入圧力Prfを用いている。しかしながら、上記記載によっても、限界注入圧力Prfとは、地盤破壊防止等のための上限値であって、地盤抵抗圧力(注入力圧力)を限界注入圧力Prfの限界内で設定するものにすぎず、本件発明1のように、地盤抵抗圧力(注入圧力)を、あらかじめ流量を決めて測定したものとは認められない。 したがって、甲第1号証に、本件発明1の構成(a)が記載されているとは認められない。 (b) 甲第2号証について 甲第2号証においても施工前の流量試験を行うこと等が記載されているが、流量試験が、実際に注入を行う現場で薬液を注入して行われることが明確に記載されておらず、場合によっては、似た条件のその他の場所で行ったものや、透水試験等の一般的な土質試験を行うもの、さらに水を注入して試験を行うもの等も考えられることから、甲第2号証に本件発明1の構成(a)が記載されているとは認められない。 b 周知技術について (a) 検討 甲第4、5、6、9、10、25、及び26号証には、上記1(3)ないし(9)に摘記したとおりの記載がある。これら各記載のとおり、地盤注入の施工前に地盤抵抗圧力(注入圧力)を測定することは、通常のことであり、その地盤抵抗圧が工事現場のものでなければならないのは当然であるから、その測定は、注入対象範囲内そのものであるかはともかくとして、工事現場と認められる範囲で行われているといえる(本件発明1も、注入対象範囲内そのもので地盤抵抗圧力が測定される場合に限定されるものではない。)。 そして、前記a(a)のとおり、本件発明1の「流量」は、単位時間当たりの注入量(注入速度)のことであるところ、建設省(国土交通省)の通達等である上記甲第6号証に、施工計画時に「注入速度」を定めなければならないと記載されていることや、業界団体の指針である上記甲第10号証にも、施工計画時に注入速度が定まっていることを前提とする記載があることからみて、「流量」(注入速度)は、工事現場の状況等によって変更される余地はあるとしても、注入施工の前にあらかじめ定まっているものと理解できる。そして、「流量」(注入速度)と地盤抵抗圧力とは関連しているから(甲第1号証の【図26】、甲第2号証【図2】【図3】参照))、地盤抵抗圧力を測定することは、所定の「流量」(注入速度)を前提にしたものである。 また、地盤抵抗圧の測定が、薬液を用いて行うことが通常であるか、あるいは、水を用いて行うことが通常であるかが上記各記載からは明確ではないにしても、上記各記載は、薬液を用いて地盤抵抗圧の測定を行うことを排除はしていない。かえって、上記甲第5号証には、「薬液のかわりに水を用いた注入試験における注入圧と注入速度の関係から注入形態を予測する簡便な方法が近年提案されている。」との記載があり、この記載の当然の前提として、従来から、薬液を用いた注入試験が広く行われていたことがうかがわれる。 以上からすると、本件発明1の構成(a)である「予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し、」との構成、すなわち、注入施工に先立ち、同じ注入材(グラウト)を用いて現場試験注入を行い、あらかじ流量を決めて注入圧力(地盤抵抗圧力)を測定することは、本件特許の出願時点において、測定方法の一つとして当業者に広く知られていた周知の事項であったと認められる。 (b) 被請求人の主張について 被請求人は、仮に、注入すべき現場で薬液(グラウト)を注入してP-q曲線を求めるとしても、注入速度を徐々に増大させる場合と本件発明1のように一定量のグラウトを注入する場合とでは、測定した地盤抵抗圧力は異なると主張する(上記第4の2(2)ウ(ア)。)。 しかしながら、注入速度を徐々に増大させた場合の地盤抵抗圧力が測定できるということは、ある特定の注入速度における地盤抵抗圧力の測定ができることが当然の前提になっているから、後者のような測定、すなわち、本件発明1の地盤抵抗圧力の測定が周知技術であるとの認定の妨げとはならない。 そのほかの被告の主張も、上記(a)の記載に照らして、採用することができない。 (c) 小括 したがって、本件発明1の構成(a)の構成は、周知技術であるから、地盤抵抗圧力(注入圧力)を限界注入圧力Prfの限界内で設定する甲1発明において、その注入圧力の決定について、周知技術である相違点2に係る本件発明1の構成(a)の構成を採用することは、当業者が適宜なし得ることである。 (ウ) 構成(b1)(b2)について a 甲1発明において、送液圧力計P0の値(30kgf/cm2)>分岐圧力計P11の値(2kgf/cm2)であるから、甲1発明の「分岐管S、S・・・S」に装着される「分岐圧力計P1、P2・・・Pi、Pn 」のうちの一つである「分岐流量計P11」の圧力値、及び「導管7」に備えられた「送液圧力計P0」の圧力値は、それぞれ本件発明1の「地盤抵抗圧力」及び「地盤抵抗圧力よりも高い強制圧力」に相当している。 そして、上記アで説示したとおり、吐出口を同一断面積とすることは容易になし得ることであって、上記2つの圧力計の値の大小関係を併せると、本件特許明細書の段落【0009】~【0018】に記載された事項と同様の理屈により、複数の吐出口からグラウトを均等に分液できることとなる。 そうすると、甲1発明の「注入管路Tの本数nをn=100として、オリフイス口径=1.0mmとし、送液流量計f0=150l/分とし、注入管路(T1~T100)の第1ステージに位置する吐出口から同時注入したところ、分岐圧力計P11は2kgf/cm2、分岐流量計f11は1.5l/分、送液圧力計P0=30kgf/cm2を示したものであって、第1ステージにおける注入前の透水試験ではq1r0=5l/分であり、P1r0=5kgf/cm2であった」ことは、構成(b1)(b2)である「第1区分は、地盤抵抗圧力よりも高い強制圧力となるように流れるグラウトを負荷することにより、上記分液盤における複数の吐出口から当該グラウトを均等に分液し、上記第2区分は、流れるグラウトを上記注入孔を介して地盤抵抗圧力に基づいて注入する」ことに相当するから、甲1発明は構成(b1)(b2)を備えていることとなる。 b また、甲第2号証に記載された甲2発明をみると、甲2発明の「絞り部7の上流側の高い圧力部」、「絞り部7の」「下流側の低い圧力部」、「吐出量(注入速度)」、「(注入される地盤3の)注入圧力P1n」、「(加圧された地盤注入液5の)注入圧力P0」、「地盤注入液5」、「分配装置11」、「先端吐出口33」及び「絞り部7」は、それぞれ本件発明1の「第1区分」、「第2区分」、「流量」、「地盤抵抗圧力」、「強制圧力」、「グラウト」、「分液盤」、「吐出口」及び「注入孔」に相当する。 また、甲2発明の「加圧された地盤注入液5の注入圧力P0と注入される地盤3の注入圧力P1nの差圧を充分に大きくと」ることは、本件発明1の「地盤抵抗圧力よりも高い強制圧力」に相当し、同じく「各導管6の吐出量(注入速度)は絞り部7の面積が同じであればほぼ同一量とな」ることは、「複数の吐出口から当該グラウトを均等に分液」することに相当する。 そうすると、甲2発明の「送液系13と、導管6との間に分配装置11を設け、導管6、6・・・6を分配装置11から伸長させ、導管6と注入管路2とは連結部12で連結され、さらに、導管6には、分岐バルブV1、V2・・・Vi、Vn、さらには、圧力計(圧力検出器)8、流量計(流量検出器)9を設けており、絞り部7は分配装置11から導管6への出口に設け、注入管路2は複数本の細管32を結束してなり、各細管32、32・・・32は先端吐出口33がそれぞれ軸方向の異なる位置に開口され、 地盤注入液5は絞り部7の上流側の高い圧力部から下流側の低い圧力部に噴射されるが、加圧された地盤注入液5の注入圧力P0と注入される地盤3の注入圧力P1nの差圧を充分に大きくとれば、絞り部7より下流側の各導管6、6・・・6の注入圧力にばらつきがあっても、各導管6の吐出量(注入速度)は絞り部7の面積が同じであればほぼ同一量となり、そして、吐出量は注入圧力P0と絞り部7の孔の面積によって定まるものである」ことは、本件発明1の用語に即して表現すると、「第1区分は、地盤抵抗圧力よりも高い強制圧力となるように流れるグラウトを負荷することにより、上記分液盤における複数の吐出口から当該グラウトを均等に分液し、上記第2区分は、流れるグラウトを上記注入孔を介して地盤抵抗圧力に基づいて注入する」ことに相当する。 甲1発明と甲2発明とは、共に同一技術分野に属しており、グラウトの流量や圧力の調整に関する発明であるので、当該調整に関わる構成について、甲1発明に、甲2発明を適用することにより構成(b1)(b2)とすることは、当業者ならば容易になし得た程度のことである。 (エ) 以上によれば、本件発明1の相違点2に係る構成は、甲1発明及び周知技術に基づいて、あるいは甲1発明及び甲2発明並びに周知技術に基いて、当業者が容易になし得たことである。 ウ まとめ 以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、または甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに周知技術に基いて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび したがって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第64条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2014-800036

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