特許異議申立
2022-700328
地盤固結材および地盤改良工法
- 審判番号
- 2022-700328
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-175173
- 登録番号
- 6961270
- 請求日
- 2022年04月20日
- 審決日
- 2025年02月26日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】強化土エンジニヤリング株式会社
- 【権利者代理人】久門 享
- 【権利者代理人】久門 保子
- 【異議申立人】愛知珪曹工業 株式会社
- 【異議申立人代理人】加藤 朝道
- 審判長/審判官
- 審判長 村守 宏文
- 審判官 安藤 倫世
- 審判官 光本 美奈子
- 分類
- P1652.121-YAA(C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第120条の7第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6961270号発明「地盤固結材および地盤改良工法」に関する特許異議の申立てについてされた令和5年10月3日付け異議の決定(同月13日にその謄本は原告に送達された)に対し、知的財産高等裁判所において決定の一部取消しの判決(令和5年(行ケ)第10132号、令和6年10月30日)(以下、「取消判決」という。)がされ、取消判決は確定したので、さらに審理のうえ、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6961270号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、明細書及び訂正後の請求項1、2、4、5、6、7について訂正することを認める。
特許第6961270号の請求項1、2及び4~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許権の設定登録に至る経緯
特許第6961270号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~12に係る発明についての出願は、令和2年10月19日に出願人強化土エンジニヤリング株式会社(以下、「特許権者」という。)により出願され、令和3年10月15日に特許権の設定登録がされ、同年11月5日に特許掲載公報(甲10)が発行されたものである。
2 本件特許異議の申立てに係る手続の経緯
本件特許の請求項1~7に係る特許に対し、令和4年4月20日に特許異議申立人愛知珪曹工業株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける一次決定までの手続きの経緯は、以下のとおりである。
令和4年 7月21日付け:取消理由通知
同年 9月22日 :意見書(特許権者)
令和4年11月22日付け:取消理由通知(決定の予告)(甲14)
令和5年 1月26日付け:意見書・訂正請求書の提出(甲16の1~3)
同年 5月25日 :意見書(申立人)
令和5年10月 3日付け:一次決定
一次決定の結論は、以下のとおりである。
「特許第6961270号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲面のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、〔10~12〕について訂正することを認める。
特許第6961270号の請求項1、2、4~7に係る特許を取り消す。
特許第6961270号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立を却下する。」
一次決定のうち、訂正請求がされた請求項3、8、9及び10~12に係る部分については、一次決定の謄本の送達により、確定した(特許法第120条の7第1号)。
3 取消判決までの経緯
特許権者は、令和5年11月 9日、知的財産高等裁判所に、一次決定のうち、請求項1、2及び4から7までに係る部分(特許取消しの部分)の取消しを求める訴えを提起した(令和5年(行ケ)第10132号)。 同裁判所は、令和6年10月30日、以下のとおりの取消判決を言渡し、この判決はその後確定した。
「1 特許庁が異議2022-700328号事件について令和5年10月3日にした決定のうち、特許第6961270号の請求項1、2及び4から7までに係る特許を取り消すとした部分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。」
4 判決確定後の経緯
その後、本件特許異議の申立ての審理を再開した。
一次決定のうち、請求項3、8、9及び10~12に係る部分については、上記2のとおり、既に確定しているので、以下、本件特許の請求項1、2及び4~7に係る特許に対する本件特許異議の申立てについて、判断することとする。
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和5年1月26日付けでされた訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2及び4~7について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、1次ゲル化と疑塑性を経て固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて地盤に注入することを特徴とする地盤改良工法。」及び「3)2次ゲル化とは、1次ゲル化後疑塑性を呈して、粘性は低下するか、低下しないままか、やや増加するか、低下しても、その粘性はPロート法で1次ゲル化までの粘性以上、並びに粘度計で1次ゲル化までの粘度以上であって、最終的に攪拌しても流動性が回復しない状態となることをいう。1次ゲル化後、2次ゲル化を呈するまでの時間を2次ゲルタイム(GT2)という。」と記載されているのを、
「該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、
該地盤固結材は、浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、疑塑性を経て、静止して後、固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は、先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入し、注入完了後固化することを特徴とする地盤改良工法。」及び「3)2次ゲル化とは、1次ゲル化後疑塑性を呈して、粘性は低下するか、低下しないままか、やや増加するか、低下しても、その粘性はPロート法で1次ゲル化までの粘性以上、並びに粘度計で1次ゲル化までの粘度以上であって、攪拌を停止した後は流動性が回復しない固化した状態となることをいう。1次ゲル化後、2次ゲル化を呈するまでの時間を2次ゲルタイム(GT2)という。」に訂正する。
(2)訂正事項2及び4~7
特許請求の範囲の請求項2の「請求項1記載の地盤改良工法において、」との記載、
請求項4の「請求項1~3の何れかに記載の地盤改良工法において、」との記載、
請求項5の「請求項1~4の何れかに記載の地盤改良工法において、」との記載、
請求項6の「請求項1~5の何れかに記載の地盤改良工法において、」との記載、及び、
請求項7の「請求項1~6の何れかに記載の地盤改良工法において、」との記載を、
「モル比が1.68~2.31の範囲にある水ガラスとブレーン値が4000cm2/g~20000cm2/gの微粒子スラグを有効成分とする地盤固結材を地盤に注入して地盤を固結する地盤改良工法であって、
該地盤固結材は以下の組成、
1.水ガラス
1)水ガラスのモル比:1.68~2.31
2)水ガラスの配合液中のSiO2含有量:2.9~11.7w/v%
3)水ガラス配合量(40L~160L)/400L
2.微粒子スラグと地盤固結材としての懸濁液400L当りの配合量
1)微粒子スラグ:ブレーン値4000~20000cm2/g、平均粒径2μm~10μm
2)配合量(50kg~150kg)/400L
からなり、
該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、
該地盤固結材は、浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、疑塑性を経て、静止して後、固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は、先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入し、注入完了後固化することを特徴とする地盤改良工法、
ただし、上記において、
1)疑塑性とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下する1次ゲル化の後、土粒子間浸透はしないが、攪拌すれば流動性を有する状態を保持するが最終的に攪拌しても流動性が回復しなくなる2次ゲル化までの流動性をいう。
2)1次ゲル化とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下し、Pロート法でPロートにゲルが付着しはじめる状態となることをいう。1次ゲル化に到るまでの時間を1次ゲルタイム(GT1)という。
3)2次ゲル化とは、1次ゲル化後疑塑性を呈して、粘性は低下するか、低下しないままか、やや増加するか、低下しても、その粘性はPロート法で1次ゲル化までの粘性以上、並びに粘度計で1次ゲル化までの粘度以上であって、攪拌を停止した後は流動性が回復しない固化した状態となることをいう。1次ゲル化後、2次ゲル化を呈するまでの時間を2次ゲルタイム(GT2)という。
であって、」に訂正する。
(3)訂正事項11
明細書の段落【0109】に、
「【表12】
[図:0001425698000001.jpg]
」と記載されているのを、
「【表12】
[図:0001425698000002.jpg]
」に訂正する。
本件訂正前の請求項2及び4~7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定された一群の請求項ごとに請求されたものである。
また、明細書の記載を訂正する前記訂正事項11は、訂正後の請求項1、2及び4~7に関係する訂正である。
さらに、特許権者は、本件訂正後の請求項2、4、5、6及び7について、本件訂正が認められる場合には、本件訂正前の一群の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
異議申立ての対象である請求項1、2及び4~7について、独立特許要件は課されない。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1のうち、「浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、1次ゲル化と疑塑性を経て固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて地盤に注入する」を「該地盤固結材は、浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、疑塑性を経て、静止して後、固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は、先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入し、注入完了後固化する」とする訂正事項は、1次ゲル化及び2次ゲル化を呈する主体が「地盤固結材」であることを明確にするとともに、固化する2次ゲル化が「静止して後」に呈されることを限定し、さらに、地盤固結材の地盤への注入が「先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、」「注入完了後固化する」ことを限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」及び同第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、これらの訂正事項は、本件特許の特許請求の範囲の【請求項3】、明細書の【0108】、【0116】及び【0120】の記載に基いて、同内容を別の表現で言い換えたもの、又は構成を限定したものであるから、本件特許の特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項1のうち、「2次ゲル化とは、・・・最終的に攪拌しても流動性が回復しない状態となることをいう。」を「2次ゲル化とは、・・・攪拌を停止した後は流動性が回復しない固化した状態となることをいう。」とする訂正事項は、2次ゲル化の定義について、同内容を別の表現で言い換えたものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、この訂正事項は、本件特許の明細書の【0116】及び【0119】の記載に基いて、同内容を別の表現で言い換えたものであるから、本件特許の特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2及び4~7
訂正事項2は、訂正前の請求項2及び4~7の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項1の記載を引用しないものにするとともに、訂正前の請求項1に対して前記訂正事項1と同様の訂正を行ったものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」、同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」及び同第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、これらの訂正事項は、前記(1)で検討したとおり、本件特許の特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項11
訂正事項11は、訂正前の明細書の【0109】の【表12】中の3箇所の数値を、【表12】が参照する元の表である同【0102】の【表10】の記載に基づいて、正しい数値に修正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものである。
そして、この訂正事項は、明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正事項11は、訂正後の請求項1、2及び4~7に関係する訂正であるから、特許法第126条第4項の規定に適合する。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、4、5、6、7について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1、2及び4~7に係る発明(以下、項番に応じて「本件訂正発明1」等ともいう。)は、前記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2及び4~7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
モル比が1.68~2.31の範囲にある水ガラスとブレーン値が4000cm2/g~20000cm2/gの微粒子スラグを有効成分とする地盤固結材を地盤に注入して地盤を固結する地盤改良工法であって、
該地盤固結材は以下の組成、
1.水ガラス
1)水ガラスのモル比:1.68~2.31
2)水ガラスの配合液中のSiO2含有量:2.9~11.7w/v%
3)水ガラス配合量(40L~160L)/400L
2.微粒子スラグと地盤固結材としての懸濁液400L当りの配合量
1)微粒子スラグ:ブレーン値4000~20000cm2/g、平均粒径2μm~10μm
2)配合量(50kg~150kg)/400Lからなり、
該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、
該地盤固結材は、浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、疑塑性を経て、静止して後、固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は、先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入し、注入完了後固化することを特徴とする地盤改良工法。
ただし、上記において、
1)疑塑性とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下する1次ゲル化の後、土粒子間浸透はしないが、攪拌すれば流動性を有する状態を保持するが最終的に攪拌しても流動性が回復しなくなる2次ゲル化までの流動性をいう。
2)1次ゲル化とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下し、Pロート法でPロートにゲルが付着しはじめる状態となることをいう。1次ゲル化に到るまでの時間を1次ゲルタイム(GT1)という。
3)2次ゲル化とは、1次ゲル化後疑塑性を呈して、粘性は低下するか、低下しないままか、やや増加するか、低下しても、その粘性はPロート法で1次ゲル化までの粘性以上、並びに粘度計で1次ゲル化までの粘度以上であって、攪拌を停止した後は流動性が回復しない固化した状態となることをいう。1次ゲル化後、2次ゲル化を呈するまでの時間を2次ゲルタイム(GT2)という。
【請求項2】
モル比が1.68~2.31の範囲にある水ガラスとブレーン値が4000cm2/g~20000cm2/gの微粒子スラグを有効成分とする地盤固結材を地盤に注入して地盤を固結する地盤改良工法であって、
該地盤固結材は以下の組成、
1.水ガラス
1)水ガラスのモル比:1.68~2.31
2)水ガラスの配合液中のSiO2含有量:2.9~11.7w/v%
3)水ガラス配合量(40L~160L)/400L
2.微粒子スラグと地盤固結材としての懸濁液400L当りの配合量
1)微粒子スラグ:ブレーン値4000~20000cm2/g、平均粒径2μm~10μm
2)配合量(50kg~150kg)/400L
からなり、
該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、
該地盤固結材は、浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、疑塑性を経て、静止して後、固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は、先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入し、注入完了後固化することを特徴とする地盤改良工法、
ただし、上記において、
1)疑塑性とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下する1次ゲル化の後、土粒子間浸透はしないが、攪拌すれば流動性を有する状態を保持するが最終的に攪拌しても流動性が回復しなくなる2次ゲル化までの流動性をいう。
2)1次ゲル化とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下し、Pロート法でPロートにゲルが付着しはじめる状態となることをいう。1次ゲル化に到るまでの時間を1次ゲルタイム(GT1)という。
3)2次ゲル化とは、1次ゲル化後疑塑性を呈して、粘性は低下するか、低下しないままか、やや増加するか、低下しても、その粘性はPロート法で1次ゲル化までの粘性以上、並びに粘度計で1次ゲル化までの粘度以上であって、攪拌を停止した後は流動性が回復しない固化した状態となることをいう。1次ゲル化後、2次ゲル化を呈するまでの時間を2次ゲルタイム(GT2)という。
であって、前記地盤固結材は、以下の1次ゲルタイムと2次ゲルタイムとからなる流動特性と固化特性を呈することを特徴とする地盤改良工法。
流動特性:
1)1次ゲルタイム(GT1):10分以上(20℃)
ただし、1次ゲルタイムとは、配合後、Pロート法でPロートにゲルが付着し始めた時点である前記1次ゲル化に至るまでの時間(流動性低下開始時間)をいう。また、1次ゲルタイムまでの時間を浸透性保持時間(T1)とし、その粘度はPロート法で10秒以下、または、ならびに粘度計で10mPa・s以下を呈するものとする。
2)2次ゲルタイム(GT2):10分以上(20℃)
ただし、2次ゲルタイムとは、1次ゲルタイム後、疑塑性状態を呈して、その粘性はPロート法で1次ゲルタイム以上並びに、または粘度計で1次ゲルタイムまでの粘性以上を呈し、最終的に攪拌しても流動性を回復せず固化に至る、すなわち前記1次ゲル化後、前記2次ゲル化に至るまでの時間をいう。
【請求項4】
モル比が1.68~2.31の範囲にある水ガラスとブレーン値が4000cm2/g~20000cm2/gの微粒子スラグを有効成分とする地盤固結材を地盤に注入して地盤を固結する地盤改良工法であって、
該地盤固結材は以下の組成、
1.水ガラス
1)水ガラスのモル比:1.68~2.31
2)水ガラスの配合液中のSiO2含有量:2.9~11.7w/v%
3)水ガラス配合量(40L~160L)/400L
2.微粒子スラグと地盤固結材としての懸濁液400L当りの配合量
1)微粒子スラグ:ブレーン値4000~20000cm2/g、平均粒径2μm~10μm
2)配合量(50kg~150kg)/400L
からなり、
該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、
該地盤固結材は、浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、疑塑性を経て、静止して後、固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は、先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入し、注入完了後固化することを特徴とする地盤改良工法、
ただし、上記において、
1)疑塑性とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下する1次ゲル化の後、土粒子間浸透はしないが、攪拌すれば流動性を有する状態を保持するが最終的に攪拌しても流動性が回復しなくなる2次ゲル化までの流動性をいう。
2)1次ゲル化とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下し、Pロート法でPロートにゲルが付着しはじめる状態となることをいう。1次ゲル化に到るまでの時間を1次ゲルタイム(GT1)という。
3)2次ゲル化とは、1次ゲル化後疑塑性を呈して、粘性は低下するか、低下しないままか、やや増加するか、低下しても、その粘性はPロート法で1次ゲル化までの粘性以上、並びに粘度計で1次ゲル化までの粘度以上であって、攪拌を停止した後は流動性が回復しない固化した状態となることをいう。1次ゲル化後、2次ゲル化を呈するまでの時間を2次ゲルタイム(GT2)という。
であって、該地盤固結材の注入は所定の注入領域において1ステージ当たりの注入量の注入時間よりも短い1次ゲルタイムの地盤固結材を注入することにより、先行する地盤固結材が疑塑性に至ったゲル化領域を乗り越えて後続する地盤固結材がその領域外に流出して浸透範囲を拡大することを繰り返すことによって所定領域外への逸脱を低減しながら固結領域を拡大することを特徴とすることを特徴とする地盤改良工法。
ここで、1ステージとは、地盤中に設置した注入管から注入されるものとし、該注入管の1つの注入口が受け持つ注入深度における注入対象長をいう。
【請求項5】
モル比が1.68~2.31の範囲にある水ガラスとブレーン値が4000cm2/g~20000cm2/gの微粒子スラグを有効成分とする地盤固結材を地盤に注入して地盤を固結する地盤改良工法であって、
該地盤固結材は以下の組成、
1.水ガラス
1)水ガラスのモル比:1.68~2.31
2)水ガラスの配合液中のSiO2含有量:2.9~11.7w/v%
3)水ガラス配合量(40L~160L)/400L
2.微粒子スラグと地盤固結材としての懸濁液400L当りの配合量
1)微粒子スラグ:ブレーン値4000~20000cm2/g、平均粒径2μm~10μm
2)配合量(50kg~150kg)/400L
からなり、
該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、
該地盤固結材は、浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、疑塑性を経て、静止して後、固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は、先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入し、注入完了後固化することを特徴とする地盤改良工法、
ただし、上記において、
1)疑塑性とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下する1次ゲル化の後、土粒子間浸透はしないが、攪拌すれば流動性を有する状態を保持するが最終的に攪拌しても流動性が回復しなくなる2次ゲル化までの流動性をいう。
2)1次ゲル化とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下し、Pロート法でPロートにゲルが付着しはじめる状態となることをいう。1次ゲル化に到るまでの時間を1次ゲルタイム(GT1)という。
3)2次ゲル化とは、1次ゲル化後疑塑性を呈して、粘性は低下するか、低下しないままか、やや増加するか、低下しても、その粘性はPロート法で1次ゲル化までの粘性以上、並びに粘度計で1次ゲル化までの粘度以上であって、攪拌を停止した後は流動性が回復しない固化した状態となることをいう。1次ゲル化後、2次ゲル化を呈するまでの時間を2次ゲルタイム(GT2)という。
であって、1ステージ当たりの注入量をV、Vを注入するに要する注入時間T、該地盤固結材の1次ゲルタイムをGT1とすると、該地盤固結材の注入はTよりも短い1次ゲルタイムで連続注入して1ステージ当たりの注入量Vを注入するものとし、該地盤固結材の注入は、先行する地盤固結材による疑塑性領域を後続の地盤固結材が乗越えてその外側に浸透することを連続的に繰り返して、1ステージ当たり注入量を注入して完了することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項6】
モル比が1.68~2.31の範囲にある水ガラスとブレーン値が4000cm2/g~20000cm2/gの微粒子スラグを有効成分とする地盤固結材を地盤に注入して地盤を固結する地盤改良工法であって、
該地盤固結材は以下の組成、
1.水ガラス
1)水ガラスのモル比:1.68~2.31
2)水ガラスの配合液中のSiO2含有量:2.9~11.7w/v%
3)水ガラス配合量(40L~160L)/400L
2.微粒子スラグと地盤固結材としての懸濁液400L当りの配合量
1)微粒子スラグ:ブレーン値4000~20000cm2/g、平均粒径2μm~10μm
2)配合量(50kg~150kg)/400L
からなり、
該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、
該地盤固結材は、浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、疑塑性を経て、静止して後、固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は、先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入し、注入完了後固化することを特徴とする地盤改良工法、
ただし、上記において、
1)疑塑性とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下する1次ゲル化の後、土粒子間浸透はしないが、攪拌すれば流動性を有する状態を保持するが最終的に攪拌しても流動性が回復しなくなる2次ゲル化までの流動性をいう。
2)1次ゲル化とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下し、Pロート法でPロートにゲルが付着しはじめる状態となることをいう。1次ゲル化に到るまでの時間を1次ゲルタイム(GT1)という。
3)2次ゲル化とは、1次ゲル化後疑塑性を呈して、粘性は低下するか、低下しないままか、やや増加するか、低下しても、その粘性はPロート法で1次ゲル化までの粘性以上、並びに粘度計で1次ゲル化までの粘度以上であって、攪拌を停止した後は流動性が回復しない固化した状態となることをいう。1次ゲル化後、2次ゲル化を呈するまでの時間を2次ゲルタイム(GT2)という。
であって、前記地盤固結材は(1)水ガラス量、(2)水ガラスのモル比、(3)スラグ配合量、(4)スラグの比表面積によって、ゲルタイム、浸透性、強度、ブリージングのいずれか或いは複数を調整することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項7】
モル比が1.68~2.31の範囲にある水ガラスとブレーン値が4000cm2/g~20000cm2/gの微粒子スラグを有効成分とする地盤固結材を地盤に注入して地盤を固結する地盤改良工法であって、
該地盤固結材は以下の組成、
1.水ガラス
1)水ガラスのモル比:1.68~2.31
2)水ガラスの配合液中のSiO2含有量:2.9~11.7w/v%
3)水ガラス配合量(40L~160L)/400L
2.微粒子スラグと地盤固結材としての懸濁液400L当りの配合量
1)微粒子スラグ:ブレーン値4000~20000cm2/g、平均粒径2μm~10μm
2)配合量(50kg~150kg)/400L
からなり、
該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、
該地盤固結材は、浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、疑塑性を経て、静止して後、固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は、先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入し、注入完了後固化することを特徴とする地盤改良工法、
ただし、上記において、
1)疑塑性とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下する1次ゲル化の後、土粒子間浸透はしないが、攪拌すれば流動性を有する状態を保持するが最終的に攪拌しても流動性が回復しなくなる2次ゲル化までの流動性をいう。
2)1次ゲル化とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下し、Pロート法でPロートにゲルが付着しはじめる状態となることをいう。1次ゲル化に到るまでの時間を1次ゲルタイム(GT1)という。
3)2次ゲル化とは、1次ゲル化後疑塑性を呈して、粘性は低下するか、低下しないままか、やや増加するか、低下しても、その粘性はPロート法で1次ゲル化までの粘性以上、並びに粘度計で1次ゲル化までの粘度以上であって、攪拌を停止した後は流動性が回復しない固化した状態となることをいう。1次ゲル化後、2次ゲル化を呈するまでの時間を2次ゲルタイム(GT2)という。
であって、前記地盤固結材はセメント、石膏、消石灰、ポゾラン、粘土、酸、アルカリ、塩、のいずれかまたは複数種を加えることによってゲル化や強度の調整を行うことを特徴とする地盤改良工法。」
第4 特許異議の申立て及び取消理由通知に記載した取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由の概要及び証拠方法
(1)特許異議の申立ての理由
ア 本件訂正前の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に、甲第2~4号証を組み合わせることにより、あるいはさらに甲第7号証、甲第8号証(甲8の1~3)を参酌することにより、当業者が容易に想到出来たものである。(以下、「取消理由1」という。)
イ 本件訂正前の請求項4~7に係る発明は、甲第1号証に、甲第2~6号証を組み合わせることにより、あるいはさらに甲第7号証、甲第8号証(甲8の1~3)を参酌することにより、当業者が容易に想到出来たものである。(以下、「取消理由2」という。)
(2)証拠方法
甲第1号証:特開平7-166163号公報
甲第2号証:特開昭61-63559号公報
甲第3号証:特開2003-278144号公報
甲第4号証:可塑状グラウト注入工法 三木五三郎・下田一雄著、2001年7月20日第1刷、日刊建設工業新聞社発行、16~17頁
甲第5号証:米倉亮三・島田俊介著、「薬液注入の長期耐久性と恒久グラウト本設注入工法の設計施工-環境保全型液状化対策工と品質管理-」、株式会社近代科学社、2016年10月31日初版第1刷、第106~107頁
甲第6号証:沿岸技術ライブラリーNo.33、「浸透固化処理工法技術マニュアル」(改訂版)、財団法人沿岸技術センター、平成20年10月発行
甲第7号証:JAMES G VAIL,“SOLUBLE SILICATES TheirProperties and Uses”,American Chemical Society Monograph Series,Third Printing 1960,p.79-80
甲第8号証の1:株式会社デイ・シイの試験成績表、平成30年5月度
甲第8号証の2:2020年9月の同社カタログ、混和材(3頁、10頁)
甲第8号証の3:対応する同社HPの公開記事
(以下、「甲第1号証」等を単に「甲1」等と表記する。)
2 取消理由通知に記載した取消理由(以下、「本件取消理由」という。)の概要及び証拠方法
(1)本件取消理由の概要
本件訂正発明1、2及び4~7は、甲1に記載された以下の発明並びに甲5、甲6及び甲9に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(甲7及び甲8の記載を参酌して水ガラスとスラグの比重を算出。)
(2)証拠方法
甲第1号証、甲第5号証~第8号証の3に加え、職権審理により発見した以下の甲第9号証。
甲第9号証:特開2018-193550号公報
第5 本件取消理由についての当審における判断
1 甲号証の記載
以下、下線は合議体による。
(1)甲1
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高強度の固結体を得るとともに、広範囲にわたるゲル化時間、特に比較的長時間のゲル化時間の調整が容易であり、しかもゲル化に至るまで低粘性を保つため浸透性に優れ、このため、特に砂質土等の透水地盤への注入に適した地盤注入用薬液に関する。」
「【0045】
【発明の実施例】以下本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0046】1.使用材料
(1)水ガラス
表1に示すモル比を異にした5種類の水ガラスを使用した。
【0047】
【表1】
[図:0001425698000003.jpg]
【0048】(2)スラグ
SiO2:33.02%、CaO:41.94%、Al2O3:12.83%、MgO:8.61%、Fe2O3:0.37%の成分組成からなる水さいスラグを粉砕し、表2に示す比表面積および平均粒子径を異にした4種類の水さいスラグを使用した。
【0049】
【表2】
[図:0001425698000004.jpg]
」
「【0055】2.水ガラス-スラグ系
表1の水ガラスと表2のスラグからなる系についてその配合とゲル化時間、粘性、一軸圧縮強度を表5に示す。一軸圧縮強度はモールド中に標準砂と配合液を混合しながら填充して得たサンドゲルの供試体の結果を示す。ただし、7日強度はモールド中養生後、49日強度は7日モールド中養生後、水中養生後の強度を示す。表6、表7の強度試験結果も同様である。
【0056】
【表5】
[図:0001425698000005.jpg]
【0057】表5において、実施NO.1~20は全容1000g中に表1の5種類の水ガラスのSiO2濃度がすべて8%となるようにし、それぞれに表2の4種類のスラグを混合した例である。このうち実施NO.1~4はモル比2.96の水ガラスでゲル化時間はあまりに長く、高粘性でありながら強度は弱く上澄液と分離してしまう。また、実施NO.17~20はモル比1.37の水ガラスであり、この場合も同じような傾向であり、特に粘性が高い。
【0058】これに反して本発明範囲内の水ガラスを使用した実施NO.5~16では表2のスラグNO.1を配合した実施NO.5、9、13以外はすべて低粘性で高強度を示している。特に表2のスラグNO.3、4(比表面積が8000cm2/g以上、平均粒子径10μm以下)を配合した実施NO.7、8、11、12、15、16ではその効果が顕著である。
【0059】この結果から使用水ガラスはモル比が約1.5~2.8、使用スラグは平均粒子径が10μm以下で、比表面積が5000cm2/g以上、特に8000cm2/g以上のものが極めて顕著な効果を発揮していることがわかる。」
「【0070】5.浸透試験とアルカリ溶出試験図1の注入装置を用いて本発明にかかる薬液の浸透試験を行った。図1において、1はコンプレッサー、2、3は圧力計である。コンプレッサー1に連結された攪拌器4を備えた水槽5の中に本発明にかかる薬液6を充填する。
【0071】7はアクリルモールドであって、この中に砂8が充填される。
水槽5中に充填された薬液6はコンプレッサー1の作動によってアクリルモールド7中の砂8に導入される。ここで、薬液6は砂8に浸透され、やがて透過された薬液6はメスシリンダー11に採取され、浸透状況が測定される。
9、10は金網である。アクリルモールド7に充填される砂8を表8に示し、かつ浸透試験の測定結果を表9に示す。
【0072】
【表8】
[図:0001425698000006.jpg]
【0073】
【表9】
[図:0001425698000007.jpg]
【0074】表9の記号は次の意味である。
○:モールドから排出してきた注入液は正常にゲル化した。内部の固結体は正常。
△:排出してきた注入液のゲル化は遅れ、内部の固結状況は下部は固いが上部の固結は弱い。
×:排出してきた注入液のゲル化は行われず、内部の固結状況は下部のみ固結して上部は固結していない。
××:均等な供試体が得られない。
(注)一軸圧縮強度は1週間モールド中養生後の強度(Kgf/cm2)である。」
「【0078】以上の検討試験結果より、モル比2.8以上の水ガラスを用いた場合(表9の実験NO.5~8)、スラグが分離するため浸透が不充分である。また、モル比が1.5以下の水ガラスを用いた場合(表9の実験NO.9~12)は粘性が高く、固結体上部における固結が不充分である。本発明の範囲名にある実験NO.1~4は何れも優れた浸透結果が得られた。」
「【0084】
【発明の効果】1.水ガラスとスラグとからなる地盤注入用薬液において、モル比が約1.5~2.8の範囲内にある水ガラスと平均粒子径が約10μm以下で比表面積が約5000cm2/g以上、好ましくは約8000cm2/g以上の微粒子スラグを使用することにより、低粘性を保ちながら比較的長いゲル化時間を要して確実に固結し、長期にわたって高強度の固結体が得られる。
【0085】2.上記1の水ガラス-スラグの系をベースとして、これにセメント、石灰類、中でも平均粒子径が約10μm以下で比表面積が約5000cm2/g以上、さらに好ましくは約8000cm2/g以上のセメント、石灰類を混合して若干粘性は増加するが、ゲル化時間を早めるように調整でき、強度の増強をはかることができる。
【0086】3.上記1の水ガラス-スラグの系をベースとして、これにカルシウム溶出量調整剤を添加することにより、強度は若干低下するが、粘性が低下してゲル化時間が遅延するよう調整でき、浸透性の向上をはかることができる。」
(2)甲5
ア
「
[図:0001425698000008.jpg]
」(第106頁第5~13行)
イ
「
[図:0001425698000009.jpg]
」第107頁図6.1.5及び写真6.1.1
(3)甲6
「
[図:0001425698000010.jpg]
」(第57頁第1~21行)
(4)甲7
甲7は英語であり、申立人による訳と詳細な説明を記載する。
第79頁第3行~第80頁3行及び図3.31
「
[図:0001425698000011.jpg]
[図:0001425698000012.jpg]
[図:0001425698000013.jpg]
」
(申立人による訳)
「
[図:0001425698000014.jpg]
」
(申立人による詳細な説明)
「
[図:0001425698000015.jpg]
」
(5)甲8の1
「
[図:0001425698000016.jpg]
」
(6)甲9
「【0019】
本発明者は、30年以上の促進試験を含む室内長期耐久性テストと野外実証研究と注入地盤の大地震後の追跡調査を通じて耐久性のメカニズムを解明してこれらの互いに関連する要素技術を開発し、耐久地盤改良は耐久性を要求される期間における所定の改良効果の持続性であることに着目して、注入液の組成と濃度と地盤中における浸透固結特性を考慮したゲル化時間の設定等の注入材に関する耐久特性と注入材の浸透固結特性と適用する注入工法における注入孔間隔や大きな注入孔間隔で所定領域に確実に固結するための施工法等、冒頭に述べた注入材、施工法、管理方法等を統合して耐久性に関する定量的評価が可能なようにして注入設計時において注入目的に対応した信頼性のある非アルカリ性シリカ溶液を用いた耐久性地盤改良工法を可能にしたものである。」
「【0029】
1)シリカ溶液を用いたグラウトが上記課題を解決する長期の耐久性を得るためには、シリカゲルの劣化要因であるアルカリを除去したシリカ溶液を用い、さらに所定の注入領域から逸脱することなく広範囲浸透固結性がある浸透ゲル化特性を有し、かつ固結地盤が所定の期間必要な耐久性を持続する組成を必要とする。」
「【0076】
(b)実際の地盤は均質ではないため、透水性の大きな粗い層や透水性の低い層が介在している場合がある。
透水性が大きかったり、不均質な地盤条件や地下水条件が影響する場合、注入液が対象領域から逸脱したり流下したり、注入液が地下水に薄まってゲルタイムが延びたりする場合がある(図16(b))。本発明者の長年の研究の結果、酸性シリカグラウトは注入中にpHが中性方向に移行してゲル化が進行する。酸性シリカ液を用いて不均質でかつ多様な地盤に対して、注入時間(H)よりも土中ゲル化時間(GTS0)を短くしておくことにより、瞬結≦GT0≦10000分)(GT0≧H≧GTS0)とすると地下水による希釈や地盤の不均質性に関わらず半ゲル状になりながら脈状になることなく土粒子間浸透しながら固結領域が拡大していくことが判った。(請求項5、7、8)、(図17(a)(b)(c)(d))
【0077】
これは酸性領域のシリカグラウトを土中ゲル化時間(GTS0)よりも長い注入時間(H)で注入するとpHが増大してゲル化時間が短縮して注入液がゲル化しかかった状態で注入領域内に保持されたままで注入範囲が拡大して所定領域を確実に固結できることが判った(図17)。注入孔間隔を広く取るには、1ステージ当りの注入量が多量になる(表11、表12)。多量の注入を注入対象外へ逸脱することなく所定領域に浸透固結させるためには1ステージ当りの注入時間を短くして、しかも浸透注入しなくてはならない。このため1ステージ長を長くして短時間で土粒子間浸透せしめる方式が柱状浸透注入方式である。(図82、図83、表12)
一方、多点同時注入方式は1ステージ長を短くして1ステージ当たりの注入量を小さくして注入時間を短くする事ができる。(図83(a)、図84(b)、表12)
【0078】
(c)地盤条件が比較的均質な地盤では注入液のpHより中性側にあれば酸性シリカ注入材は所定量の注入が完了した時間でゲル化に至らなくても所定領域に保持されたままゲル化することが判った(GT0>GTS0>H)(表11、表12、図17(e)、図84(a))この場合、球状浸透でも柱状浸透でも図11~14の浸透理論にほぼ基いて浸透固結する。このような浸透固結性は非アルカリ性のシリカグラウトを用い、かつ土との相互反応によって生ずる、非アルカリ性シリカグラウトの流動特性とゲル化特性と施工法、注入孔ピッチ、点注入、柱状注入、多点注入に対応したステージ長、ステージ数、注入速度、注入時間と土中ゲル化時間と配合処方を効果的に組み合わせることにより、地盤中で先行している半ゲル状態のシリカグラウトを後続してくるシリカグラウトが外周部に押しやりながら或いはそれを乗り越えながら固結する現象を用いて所定領域で浸透、ゲル化させることができることが判った。(表12(b)、※2、※3)
※2、※3でGTS0はHより小さいが、図17(b)のように乗り越えながら固化する。
【0079】
図83(a),(b),(c)は図84(d)の粒径分布の地盤で図84(e)のように多様な土層からなる地盤条件下で注入されたにもかかわらず、表12(b)の気中ゲルタイムGT0と土中ゲルタイムGTS0と注入時間Hによる注入によって所定の注入領域外へ逸脱することなく浸透固結することが判った。これはあたかも地上に噴出したマグマの温度が冷えるに従って流動性を失いながら次から次へ続くマグマがそれを乗り越えて広範囲に広がって固化する現象に似ている(図17(b)、(c)、(d))のでマグマアクション法と名付けている。以下表12を説明する。」
「【0114】
【図17】
[図:0001425698000017.jpg]
」
「【図83】
[図:0001425698000018.jpg]
」
2 本件取消理由についての検討
取消判決は、本件取消理由について判示しているから、その判示事項は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、取消判決主文が導き出せるのに必要な事実認定及び法律判断にわたって再度の審理及び決定を拘束する。
以下、取消判決の判示事項を示しつつ、本件取消理由について検討する。
(1)甲1に記載された発明
「 甲1文献の記載事項
ア 甲1文献は、平成7年6月27日公開された発明の名称を「地盤注入用薬液」とする特許出願の公開公報(特開平7-166163号公報)であるところ、甲1文献には、次の記載がある。
イ 本発明は高強度の固結体を得るとともに、広範囲にわたるゲル化時間、特に比較的長時間のゲル化時間の調整が容易であり、しかもゲル化に到る10まで低粘性を保つため浸透性に優れ、このため、特に砂質土等の透水地盤への注入に適した地盤注入用薬液に関する(甲1文献の段落【0001】。以下、甲1文献の段落は「甲1【 】」と表記する。)。発明の実施例において、使用された材料は、水ガラスは、表1に示すモル比を異にした5種類の水ガラスであり、表1によれば、水ガラスNo.3は、SiO2が27.36%、Na2Oが14.05%、モル比が2.01である。また、スラグは、SiO2:33.02%、CaO:41.94%、Al2O3:12.83%、MgO:8.61%、Fe2O3:0.37%の成分組成からなる水砕スラグを粉砕し、表2に示す比表面積および平均粒子径を異にした4種類の水砕スラグであり、表2によれば、スラグNo.4は、比表面積10200cm2/gで、平均粒子径が6.0μmである(甲1【0045】~【0049】)。(表1)(表2)(合議体注:表の摘示は省略)
水ガラス-スラグ系では、表1の水ガラスと表2のスラグからなる系についてその配合とゲル化時間、粘性、一軸圧縮強度を検討すると、全量1000gのうち、表1の水ガラスNo.3が292g、表2のスラグNo.4が125g、水が583gであり、水ガラスからのSiO2が8%であるように配合された表5の実施No.12に示す注入液については、20℃のゲル時間が22分であり、2分後の粘度が6.3CPS、20分後の粘度が35CPSであり、その後固結し、一軸圧縮強度が7日後には15.5kgf/cm2、49日後には30.0kgf/cm2である。そして、表5に示された試験結果から使用水ガラスはモル比が約1.5~2.8、使用スラグは平均粒子径が10μm以下で、比表面積が5000cm2/g以上、特に8000cm2/g以上のものが極めて顕著な効果を発揮していることがわかる(甲1【0055】~【0059】)。さらに、注入装置を用いて引用発明にかかる薬液の浸透試験を行った結果によれば、表1の水ガラスNo.3(モル比2.01)と表2のスラグNo.4を配合した注入液の浸透性及び固結強度が最も優れていることがわかる。また、この検討試験結果からは、モル比2.8以上の水ガラスを用いた場合、スラグが分離するため浸透が不充分である。また、モル比が1.5以下の水ガラスを用いた場合は粘性が高く、固結体上部における固結が不充分である。しかし、甲1文献に記載された発明の範囲内では何れも優れた浸透結果が得られた(甲1【0070】~【0078】)。
したがって、甲1文献の記載から把握可能な技術事項によれば、1.水ガラスとスラグとからなる地盤注入用薬液において、モル比が約1.5~2.8の範囲内にある水ガラスと平均粒子径が約10μm以下で比表面積が約5000cm2/g以上、好ましくは約8000cm2/g以上の微粒子スラグを使用することにより、低粘性を保ちながら比較的長いゲル化時間を要して確実に固結し、長期にわたって高強度の固結体が得られ(甲1【0084】)、2.上記1の水ガラス-スラグの系をベースとして、これにセメント、石灰類、中でも平均粒子径が約10μm以下で比表面積が約5000cm2/g以上、さらに好ましくは約8000cm2/g以上のセメント、石灰類を混合して若干粘性は増加するが、ゲル化時間を早めるように調整することができ、強度の増強をはかることができ(甲1【0085】)、3.上記1の水ガラス-スラグの系をベースとして、これにカルシウム溶出量調整剤を添加することにより、強度は若干低下するが、粘性が低下してゲル化時間が遅延するよう調整することができ、浸透性の向上をはかることができる(甲1【0086】)との効果があることが認められる。」(取消判決26頁4行~28頁8行)
上記記載に加え甲1の実施例の記載から、甲1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「高強度の固結体を得るとともに、比較的長時間のゲル化時間の調整が容易であり、しかもゲル化に至るまで低粘性を保つため浸透性に優れ、このため、特に砂質土等の透水地盤への注入に適した地盤注入用薬液を地盤に注入して地盤を固結する地盤改良工法であって、
地盤注入用薬液は、
モル比が2.01 であり、SiO2が27.36%、Na2O が14.05%である水ガラスと、
比表面積が10,200 cm2/gであり、SiO2:33.02%、CaO:41.94%、Al2O3:12.83%、MgO:8.61%、Fe2O3:0.37%の成分組成からなる水さいスラグを粉砕したスラグからなり、
水ガラスの配合液中のSiO2が8%であり、
水ガラスの配合量が292g/1000gであり、
スラグの平均粒子半径が6.0 μmであり、
スラグの配合量が 125g/1000gであり、
地盤注入用薬液は、20℃におけるゲル化時間が22分であり、2分後の粘度が6.3CPSであり、20 分後の粘度が35CPS であり、その後固結し、一軸圧縮強度が7日後には15.5kgf/cm2となり、49 日後には30.0kgf/cm2となる、地盤改良工法」
引用発明は、一次決定及び取消判決が認定したとおりのものである。
(2)本件訂正発明1について
ア 引用発明との対比
「 本件訂正発明1と引用発明を対比すると、一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)前記・・・のとおりである。すなわち、
モル比が1.68~2.31の範囲にある水ガラスとブレーン値が4000cm2/g~20000cm2/gの微粒子スラグを有効成分とする地盤固結材を地盤に注入して地盤を固結する地盤改良工法であって、該地盤固結材は以下の組成、
1.水ガラス、
1)水ガラスのモル比:1.68~2.31、2)水ガラスの配合液中のSiO2含有量:2.9~11.7w/v%、3)水ガラス配合量(40L~160L)/400L、
2.微粒子スラグと地盤固結材としての懸濁液400L当りの配合量、
1)微粒子スラグ:ブレーン値4000~20000cm2/g、平均粒径2μm~1025μm、2)配合量(50kg~150kg)/400L、からなり、
該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、該地盤固結材は、浸透性を経て、疑塑性を呈し、疑塑性を経て、静止して後、固化するものであり、注入完了後固化する地盤改良工法。
(相違点 下線は当審(合議体注:裁判所)が付したものである。)
本件訂正発明1は、「該地盤固結材は、浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、疑塑性を経て、静止して後、固化する2次ゲル化を呈するものであり、」「該地盤固結材の地盤への注入は、先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入し、注入完了後固化する」地盤改良工法であり、「ただし、上記において1)疑塑性とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下する1次ゲル化の後、土粒子間浸透はしないが、攪拌すれば流動性を有する状態を保持するが最終的に攪拌しても流動性が回復しなくなる2次ゲル化までの流動性をいう。2)1次ゲル化とは、土粒子間浸透する浸透性を有する状態から、急激に流動性が低下し、Pロート法でPロートにゲルが付着しはじめる状態となることをいう。1次ゲル化に到るまでの時間を1次ゲルタイム(GT1)という。3)2次ゲル化とは、1次ゲル化後疑塑性を呈して、粘性は低下するか、低下しないままか、やや増加するか、低下しても、その粘性はPロート法で1次ゲル化までの粘性以上、並びに粘度計で1次ゲル化までの粘度以上であって、攪拌を停止した後は流動性が回復しない固化した状態となることをいう。1次ゲル化後、2次ゲル化を呈するまでの時間を2次ゲルタイム(GT2)という。」として特定されるものであるのに対し、引用発明では、地盤改良工法として、注入液が、浸透性を経て、疑塑性を呈した後、静止し、固化する場合における前記下線を付したような注入条件の特定がされていない点」(取消判決の28頁14行~30頁1行)
イ 各文献の記載事項
「(ア) 甲5文献(米倉亮三・島田俊介「薬液注入の長期耐久性と恒久グラウト本設注入工法の設計施工―環境保全型液状化対策工と品質管理―」平成28年10月31日発行)には、「また土中に土粒子間浸透するにつれ、土との接触部のpHが中性方向に移行するとともにゲル化が進行し(略)、注入液はそれを乗り越えながら固結領域が拡大していく(マグマアクション法)(図6.1.5、写真6.1.1…)。このため地下水はほぼ中性領域を保つ(略)。このような浸透ゲル化特性により、注入対象以外の領域や用水への流入を抑える施工法を用いている。活性シリカコロイドをベースにして小さなシリカを複合した活性複合シリカコロイドは、シリカの配合濃度を調整することにより早い強度発現で低強度から高強度までの地盤強化が可能になり、今後の巨大地震対策や大深度地盤強化に適用可能である(略)。」(106頁、107頁)との記載等があり、「活性シリカコロイドをベースにして小さなシリカを複合した活性複合シリカコロイド」の注入材は、「土粒子間に浸透するにつれ、土との接触部のpHが中性方向に移行するとともにゲル化が進行し」注入表面に中性の薄膜(擬ゲル25膜)ができ(図6.1.5)、「注入液はそれを乗り越えながら固結領域が拡大していく」という「マグマアクション法」の記載がされている。
[図:0001425698000019.jpg]
(イ) 甲6文献(財団法人沿岸技術センター「沿岸技術ライブラリーNo.33浸透固化処理工法技術マニュアル」(改訂版)平成20年10月発行」には、「1)ゲルタイム」、「溶液型活性シリカグラウトのゲルタイムはホモゲルの状態と地盤中に注入された状態とで異なる。注入された酸性の薬液は土中のアルカリ分と反応して、ほぼ中性になると固結が始まる。このため、薬液のゲルタイムは地盤中に注入された状態のものを測定する。」、「この土中ゲルタイムは球状改良体1個の注入時間より短く調整することにより、地盤を均質に改良することができる」(57頁)ことなどが記載されている。
(ウ) 甲9文献は、平成30年12月6日公開された発明の名称を「耐久シリカグラウト並びに耐久シリカグラウトを用いた地盤改良工法」とする特許出願の公開公報(特開2018-193550号公報)である。甲9文献に記載された発明は、耐久地盤改良が、耐久性を要求される期間における所定の改良効果の持続性であることに着目して、「注入材、施工法、管理方法等を統合して耐久性に関する定量的評価が可能なようにして注入設計時において注入目的に対応した信頼性のある非アルカリ性シリカ溶液を用いた耐久性地盤改良工法」を提供するものである(甲9文献の段落【0019】。以下、甲9文献の段落は、「甲9【 】と表示する。)。
「耐久シリカグラウト」(請求項1)は、「シリカゲルの劣化要因であるアルカリを除去したシリカ溶液を用い、さらに所定の注入領域から逸脱することなく広範囲浸透固結性がある浸透ゲル化特性を有し、かつ固結地盤が所定の期間必要な耐久性を持続する組成(甲9【0029】)」として注入目的に応じた耐久性が得られるようにしたものである。
[図:0001425698000020.jpg]
また、「耐久シリカグラウト」(請求項8)は、請求項1の組成を備えることを前提とし、「図のように土中ゲル化時間(GTso)よりも注入時間が長くてもゲル化しかかった先端表面部を乗り越えて、或いはゲル化しかかった注入液を外周方向に押しやりながら浸透固結していく」(甲9【0114】)として、「図17」の「マグマアクション法」により「所定の注入領域外へ逸脱することなく浸透固結する」(甲9【0079】)ことを想定している。
そして、マグマアクション法に関しては、「酸性シリカ液を用いて不均質でかつ多様な地盤に対して、注入時間(H)よりも土中ゲル化時間(GTso)を短くしておくことにより、瞬結≦GTo≦10000分(GTo≧H25≧GTso)とすると地下水による希釈や地盤の不均質性に関わらず半ゲル状になりながら脈状になることなく土粒子間浸透しながら固結領域が拡大(図17)していくことが判った」(甲9【0076】、図17)、「これは酸性領域のシリカグラウトを土中ゲル化時間(GTso)よりも長い注入時間(H)で注入するとpHが増大してゲル化時間が短縮して注入液がゲル化しかかった状態で注入領域内に保持されたままで注入範囲が拡大して所定領域を確実に固結できることが判った(図17)。」(甲9【0077】)、「(c)地盤条件が比較的均質な地盤では注入液のpHより中性側にあれば酸性シリカ注入材は所定量の注入が完了した時間でゲル化に到らなくても所定領域に保持されたままゲル化することが判った(GTo>GTso>H)(表11、表12、図17(e)、図84(a))。この場合、球状浸透でも柱状浸透でも図11~14の浸透理論にほぼ基いて浸透固結する。このような浸透固結性は非アルカリ性のシリカグラウトを用い、かつ土との相互反応によって生ずる、非アルカリ性シリカグラウトの流動特性とゲル化特性と施工法、注入孔ピッチ、点注入、柱状注入、多点注入に対応したステージ長、ステージ数、注入速度、注入時間と土中ゲル化時間と配合処方を効果的に組み合わせることにより、地盤中で先行している半ゲル状態のシリカグラウトを後続してくるシリカグラウトが外周部に押しやりながら或いはそれを乗り越えながら固結する現象を用いて所定領域で浸透、ゲル化させることができることが判った。(表12(b)、※2、※3)」、「※2、※3でGTsoはHより小さいが、図17(b)のように乗り越えながら固化する。」(甲9【0078】)、「これはあたかも地上に噴出したマグマの温度が冷えるに従って流動性を失いながら次から次へ続くマグマがそれを乗り越えて広範囲に広がって固化する現象に似ている(図17…)。」(甲9【0079】)などとされる。
なお、請求項26、27は、「請求項1~16のシリカ系グラウト並びに(略)の何れか一項に用いる注入管理方法」におけるシリカ系グラウト又は薬液注入とは「シリカ注入液、或いはシリカを含有する懸濁型の注入液の注入をいう」などとして、「シリカ溶液の注入のみならずセメントやスラグを主成分とするシリカを含有してゲル化を伴う懸濁型グラウト」(甲9【0210】)を使用することも想定する。これは、「不均質な地盤条件下で或いは地下水の流動性の影響下」(甲9【0084】)又は「逸脱しやすい地盤や空隙の大きい地盤」(甲9【0085】)においても、懸濁型の注入液の使用により「所定の注入領域外へ逸脱することなく浸透固結する」(甲9【0079】)ことが可能であるためと解される。」(取消判決30頁10行~34頁7行)
ウ 検討
「甲1文献には、本件訂正発明1の地盤固結材と同じ組成による固結体を得るための地盤注入用薬液が記載されているものの、地盤改良工法における1次ゲル化時間の定義やその機能効果等の説明、注入の手順・条件等は一切記載されていない。そこで、当該地盤固結材を使用した地盤改良工法における本件訂正発明1の構成に係る当該地盤固結材の注入の条件について、各文献の記載事項等から、本件特許の出願当時、当業者が容易に想到し得たか否かが問題となる。
前記・・・のとおり、本件訂正発明1及び引用発明の地盤改良工法で使用される地盤固結材は、水ガラスと微粒子スラグを有効成分とする懸濁液(懸濁型グラウト)であり、固結の原理は、「低モル比シリカ溶液中のアルカリ分が微粒子スラグの潜在水硬性を刺激して固化するとともに、低モル比シリカ溶液のシリカ分が微粒子スラグのカルシウム分と反応してゲル化するため、土砂中においてスラグによる固結部分の間をシリカのゲルが連結することにより一体化した固結体が形成される」というスラグの水硬性によるものである。他方、甲5文献、甲6文献及び甲9文献に記載されている地盤固結材は、「活性複合シリカコロイド」(甲5)、「溶液型活性シリカグラウト」(甲6)又は「耐久シリカグラウト」(甲9)(溶液型グラウト)であり、その固結の原理は、注入液が「土粒子間浸透するにつれ、土との接触部のpHが中性方向に移行するとともにゲル化が進行」(甲5)する、「注入された酸性の薬液は土中のアルカリ分と反応して、ほぼ中性になると固結が始まる」(甲6)という地盤のpHによるものであり、本件訂正発明1及び引用発明の地盤固結材とは固結の原理を異にする。
また、地盤改良工法の注入の条件について、甲5、甲6及び甲9は、注入材(溶液型グラウト)について、注入された酸性の薬液は土中のアルカリ分と反応して、ほぼ中性になると固結が始まるため、薬液のゲル化時間は地盤中に注入された状態のものを測定し、この土中ゲル化時間(GTso)よりも薬液の注入時間を長く設定することで、後続の注入液が、先行する注入液のゲル化しかかった先端表面部を乗り越えて、又はゲル化しかかった注入液を外周方向に押しやりながら浸透し固結していくというマグマアクション法を説明している。しかし、当該マグマアクション法は、あくまでも酸性の薬液が土中のアルカリ分と反応して固結する場合の注入の条件について述べたものであって、薬液中のスラグの水硬性により固結する本件訂正発明1及び引用発明の地盤固結材の注入の条件として当然に妥当するものということはできない。固結の原理が異なる以上、同じ地盤改良の技術分野であるからといって、同じ注入条件で大径の高強度固結体を形成するという課題を実現することができるとは直ちにいうことはできないからである。甲5、甲6及び甲9中にも、マグマアクション法を、固結の原理を異にする懸濁型グラウトに適用し得ることを示唆するような記載等は見られないから、当業者において、引用発明及びこれらの文献から、本件訂正発明1及び引用発明の懸濁型グラウトの特性(1次ゲル化、疑塑性、2次ゲル化)に応じた注入条件を容易に想到することはできないというべきである。
なお、前記のとおり、甲9文献の請求項26、27「注入管理方法」は、「シリカを含有してゲル化を伴う懸濁型グラウト」(甲9【0210】)を使用することも想定しており、マグマアクション法(甲9【0079】)により浸透固結する、請求項8の「耐久シリカグラウト」をも含む構成となっている。しかしながら、甲9文献は、「懸濁型グラウト」を使用し得る条件として「不均質な地盤条件下で或いは地下水の流動性の影響下」(甲95【0084】)又は「逸脱しやすい地盤や空隙の大きい地盤」(甲9【0085】)などと言及するにとどまり、上記「シリカを含有してゲル化を伴う懸濁型グラウト」が、どのような原理で固化するのか、「1次ゲル化」「疑塑性」「2次ゲル化」の経過により固化するのかの記載は見当たらない。請求項8の構成を含む請求項26、27の「懸濁型グラウト」においても、マグマアクション法との関係性は明らかとはいえず、上記記載をもって、甲9の注入条件等を懸濁型グラウトに適用し得ることを示唆するものと解することはできない。」(取消判決34頁9行~36頁12行)
以上によれば、本件訂正発明1は、引用発明並びに甲5文献、甲6文献及び甲9文献により容易に発明することができたものとはいえない。
(3)本件訂正発明2及び4~7について
本件訂正発明2及び4~7は、本件訂正発明1の発明特定事項にさらに特定事項を付加するものであるから、前記(2)と同様の理由から、引用発明並びに甲5文献、甲6文献及び甲9文献により容易に発明することができたものとはいえない。
以上によれば、本件訂正発明2及び4~7は、引用発明並びに甲5文献、甲6文献及び甲9文献により容易に発明することができたものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1、2及び4~7は、いずれも、引用発明並びに甲5文献、甲6文献及び甲9文献により容易に発明することができたものとはいえない。
よって、本件取消理由によっては、本件特許の請求項1、2及び4~7に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(取消理由1及び2)についての当審における判断
1 取消理由1について
(1)申立人の主張の概要
申立人は、甲1及び下記(2)の甲2~甲4の記載から、甲1~4には下記ア~エの事項が記載がされていると認められるから、本件訂正前の請求項1及び2に係る発明は、甲1に、甲2~4を組み合わせることにより、あるいはさらに甲7、甲8(甲8の1~3)を参酌することにより、当業者が容易に想到出来たものである旨主張する。
ア 甲1には、本件訂正前の請求項1の
「1.水ガラス
1)水ガラスのモル比:1.68~2.31
2)水ガラスの配合液中のSiO2含有量:2.9~11.7w/v%
3)水ガラス配合量 (40L~160L)/400L
2.微粒子スラグと地盤固結材としての懸濁液400L当りの配合量
1)微粒子スラグ:ブレーン値4000~20000cm2/g、平均粒径2μm~10μm
2)配合量 (50kg~150kg)/400L
からなり」が記載されている。
イ 甲2の特許請求の範囲の「可塑状ゲル」は本件明細書の「可塑状グラウト」のことであり、甲2には、本件訂正前の請求項1の「該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、」「浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、」「疑塑性を経て」「固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は」「1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入」「することを特徴とする地盤改良工法」が記載されている。
ウ 甲4には「可塑状グラウト」が記載されており、甲4には、本件訂正前の請求項1の「該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、」「浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、」「疑塑性を経て」「固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は」「1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入」「することを特徴とする地盤改良工法」が記載されている。
エ 甲3の「水ガラスを添加することで、グラウトのゲル化が促進され」、「流動状固結(ゲル化しているがグラウトが自立する強さはなく、物理的に流動状の性質をもっている状態)」、「可塑状固結領域(グラウト自体は流動性はないが、若干加圧すれば容易に流動する)」及び「固結領域(多少の加圧では流動しない)」は、それぞれ、本件訂正発明1の「浸透性を保持する過程」、「その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程」、「その後疑塑性状態を保持する過程」及び「疑塑性が失われて固結状態になる過程」に相当し、甲3には、本件訂正前の請求項1の「該地盤固結材の流動性は、(1)浸透性を保持する過程と、(2)その後急激に浸透性が低下して疑塑性状態になる過程と、(3)その後疑塑性状態を保持する過程と、(4)疑塑性が失われて固結状態になる過程とからなり、」「浸透性を経て、疑塑性を呈する1次ゲル化と、」1次ゲルと「疑塑性を経て」「固化する2次ゲル化を呈するものであり、該地盤固結材の地盤への注入は」「1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入」「することを特徴とする地盤改良工法」が記載されている。
(2) 甲2~4の記載
ア 甲2
「【特許請求の範囲】
(1)スラグと石灰と滑材とを含有する懸濁液に必要に応じて遅延剤を加えた推進工法に用いるグラウト材であつて、減摩材と裏込め材の両方の効果を合せ持つことを特徴とするグラウト材。
(2)特許請求の範囲第(1)項に記載のグラウト材をA液とし、水ガラス溶液をB液とし、AB両液を混合して裏込め材として注入することを特徴とする注入工法。
(3)特許請求の範囲第(2)項に記載の注入工法において、A液及びB液を夫々別個にグラウトホールまで導き、前記グラウトホールの直ぐ手前で合流させて、テールボイド内でゲル化させることを特徴とする注入工法。
(4)特許請求の範囲第(2)項に記載の注入工法において、A液及びB液をグラウトホールの手前で合流させて、グラウトホールに至るまでの間にゲル化させて可塑状ゲルを形成させ、この可塑状ゲルをテールボイドに注入することを特徴とする注入工法。」
イ 甲3
(ア)「【請求項1】 水100重量部に対し石灰30~40重量部の第1の懸濁液と、
水100重量部に対しスラグ25~35重量部および粘土鉱物3~15重量部の第2の懸濁液とを、それぞれ別々の配管を介して、施工部直前まで圧送し、
第1の懸濁液と第2の懸濁液とを混合した後、
混合液を施工部に注入することを特徴とする注入工法。
【請求項2】 第2の懸濁液がさらに0.15~0.5重量部の分散剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の注入工法。
【請求項3】 第1の懸濁液と第2の懸濁液とを混合した後、さらに水ガラスを混合した後、混合液を施工部に注入することを特徴とする請求項1または2に記載の注入工法。」
(イ)「【0004】この裏込め注入工法では、一液型注入材を用いる工法と、二液型注入材を用いる工法とが知られている。二液型注入材を用いる工法では、A液と呼ばれるスラグ系注入材と、B液と呼ばれる水ガラス系注入材とをそれぞれ、別々の配管を介して、注入箇所近傍まで圧送し、注入直前にこれらを混練した後、注入箇所に注入、硬化させる。」
(ウ)「【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、裏込め注入剤の圧送時における配管の閉塞を防止し、作業効率の向上および材料ロスの低減を図ることを目的としている。」
(エ)「【0023】水ガラスを添加することで、グラウトのゲル化が促進され、流動状固結(ゲル化しているがグラウト自体が自立する強さはなく、物理的に流動状の性質を持っている状態)並びに可塑状固結領域(グラウト自体は流動性はないが、若干加圧すれば容易に流動する)を経て、固結領域(多少の加圧では流動しない)に入り、強固なゲルを生成させる。」
ウ 甲4
「2.1 可塑状グラウトの定義
一般にいわれている可塑性、或いは揺変性の状態を示すグラウトを可塑状グラウトという。すなわちこれは、図2.1に示すように、液体と固体の中間領域に属し、グラウト自体の流動性はないが、若干加圧すれば、容易に流動化することができるものである。
また、この可塑状という性質は、従来のどのようなセメント系グラウトでも流動状から固結に至る過程で、必ず可塑状固結領域を通過することになる。」(16頁2~8行)
(3)検討
ア 本件訂正発明1について
甲1には、前記第5 2(1)のとおりの発明が記載されている。
前記(2)アのとおり、甲2には、「スラグと石灰と滑材とを含有する懸濁液に必要に応じて遅延剤を加えた推進工法に用いるグラウト材」であるA液と、水ガラス溶液であるB液を混合して裏込め材として注入することや、これらがグラウトホールに至るまでの間にゲル化させて可塑状ゲルを形成させ、この可塑状ゲルをテールボイドに注入することが記載されている。
甲2は、スラグを含有するグラウト材と水ガラス溶液を含む、裏込め材として用いられ得る注入材を開示するものではあるが、当該注入材に関しても、本件訂正発明1の「1次ゲル化」に対応する記載はなされておらず、当該注入材について「先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入」することを記載ないし示唆するものではない。
前記(2)ウのとおり、甲4には、「液体と固体の中間領域に属し、グラウト自体の流動性はないが、若干加圧すれば、容易に流動化することができるものである」「可塑状グラウト」が記載され、「この可塑状という性質は、従来のどのようなセメント系グラウトでも流動状から固結に至る過程で、必ず可塑状固結領域を通過することになる」との記載はなされているものの、本件訂正発明1の「1次ゲル化」に対応する記載はなされておらず、グラウトの地盤への注入条件についても何ら記載も示唆もされていない。
前記(2)イのとおり、甲3には、石灰とスラグ等とを混合した後、さらに水ガラスを混合して混合液を施工部に注入することが記載され、当該混合液について、水ガラスを添加することでグラウトのゲル化が促進され、流動状固結(ゲル化しているがグラウト自体が自立する強さはなく、物理的に流動状の性質を持っている状態)並びに可塑状固結領域(グラウト自体は流動性はないが、若干加圧すれば容易に流動する)を経て、固結領域(多少の加圧では流動しない)に入り、強固なゲルを生成させることが記載されている。申立人が主張するように、甲3の流動状固結及び可塑状固結は、それぞれ、本件訂正発明1の「疑塑性を呈する1次ゲル化」及び「2次ゲル化」に対応し得るものであると理解できたとしても、甲3は、前記(2)ウ(ウ)及び(エ)のとおり、裏込め材について記載するものであって、甲1のように地盤改良技術に関するものではない。さらに、甲3も「先行する浸透性を保持する地盤固結材(甲3では裏込め材)が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材(甲3では裏込め材)が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入」することを記載ないし示唆するものではない。
このように、甲2~4はいずれも、地盤固結材について「先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入」することを記載ないし示唆するものではないから、甲1に甲2~4を組み合わせることにより、あるいはさらに甲7、甲8(甲8の1~3)を参酌することにより、当業者が本件訂正発明1に係る構成を容易に想到し得たとはいえない。
イ 本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の発明特定事項にさらに特定事項を付加するものであるから、前記アと同様の理由から、甲1に甲2~4を組み合わせることにより、あるいはさらに甲7、甲8(甲8の1~3)を参酌することにより、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(4)小括
以上のとおり、甲1に甲2~4を組み合わせることにより、あるいはさらに甲7、甲8(甲8の1~3)を参酌することにより、当業者が本件訂正発明1及び2に係る構成を容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る発明についての特許を、取消理由1により取り消すことはできない。
2 取消理由2について
(1)取消理由2の概要
取消理由2は、本件訂正前の請求項4~7に係る発明は、甲1に、甲2~6を組み合わせることにより、あるいはさらに甲7、甲8(甲8の1~3)を参酌することにより、当業者が容易に想到出来たというものである。
(2)検討
本件訂正発明4~7は、本件訂正発明1の発明特定事項にさらに特定事項を付加するものである。
甲2~4はいずれも、地盤固結材について「先行する浸透性を保持する地盤固結材が疑塑性に到った領域を後続する浸透性を保持する地盤固結材が乗り越えるか破ることを繰り返して注入領域を拡大して、注入完了後固化する過程を経るものとし、1次ゲル化に到る時間以上の時間をかけて所定量地盤に注入」することを記載ないし示唆するものではないから、甲1に甲2~4を組み合わせることにより、あるいはさらに甲7、甲8(甲8の1~3)を参酌することにより、当業者が本件訂正発明4~7に係る構成を容易に想到し得たとはいえないことは、前記1で検討したとおりである。
また、甲5及び甲6のマグマアクション法を、固結の原理を異にする甲1の懸濁型グラウトに適用して、懸濁型グラウトの特性(1次ゲル化、疑塑性、2次ゲル化)に応じた注入条件を決定することを当業者は容易に想到することはできないから、甲1の記載に基づく引用発明に、甲5及び甲6に記載された事項を組み合わせても、本件訂正発明4~7を当業者が容易に想到し得たとはいえないことは、前記第5 2で検討したとおりである。
以上のとおりであるから、本件訂正発明4~7は、甲1に、甲2~6を組み合わせることにより、あるいはさらに甲7、甲8(甲8の1~3)を参酌することにより、当業者が容易に想到出来たということはできない。
したがって、本件特許の請求項4~7に係る特許を、取消理由2により取り消すことはできない。
3 小括
したがって、取消理由1及び2により、本件訂正発明1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正発明1、2、4から7までに係る特許を取り消すことはできない。
また、他の本件訂正発明1、2、4から7までに係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700328