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特許異議申立

2025-701082

ハイアルミナキャスタブル及び廃棄物処理炉

審判番号
2025-701082
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-061484
登録番号
7680188
請求日
2025年11月18日
審決日
2026年02月17日
公報発行日
2026年03月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】東京窯業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人 共立特許事務所
  • 【異議申立人】立部 修一
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 三崎 仁
分類
P1651.113-Y (C04B) / P1651.121-Y (C04B) / P1651.537-Y (C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
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特許第7680188号発明「ハイアルミナキャスタブル及び廃棄物処理炉」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7680188号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7680188号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年3月30日の出願であって、令和7年5月12日にその特許権の設定登録がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行され、その後、同年11月18日に、請求項1~7に係る特許について、特許異議申立人 立部 修一(以下、「申立人」という。)により、甲第1~8号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年12月19日に、申立人より特許異議申立書の手続補正書が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~7に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、請求項1~7に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 骨材と粉体とバインダとから構成され、バインダとしてのカルシア(CaO)を含まない流し込み施工用のハイアルミナキャスタブルであって、 全体を100mass%としたときに、アルミナが70~90mass%、シリカが9~29.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有し、 前記バインダは非晶質シリカを含有することを特徴とするハイアルミナキャスタブル。 【請求項2】 骨材と粉体とバインダとから構成され、バインダとしてのカルシア(CaO)を含まない流し込み施工用のハイアルミナキャスタブルであって、 全体を100mass%としたときに、アルミナが50~95mass%、シリカが4.5~49.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有することを特徴とするハイアルミナキャスタブル(但し、下記(1)~(4)の何れかを満たす場合を除く (1)前記骨材および前記粉体中にスピネル粒子を15~60質量%含む、ただし、上記においてスピネル粒子とは、MgAl2O4結晶を含む粒子であって、粒子中にMgO成分を5~28質量%含み、かつMgO成分とAl2O3成分の合量が95質量%以上である粒子をいう、 (2)硬化剤として粒径1mm以下のMg又はCaの化合物を外掛けで0.05~1.0質量%、凝集剤として金属硫酸塩又は金属ハロゲン化物塩を外掛けで0.01~1.0質量%添加したもの、 (3)リグニン系分散剤を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記リグニン系分散剤の重量の比が1:0.001~0.02であり、 さらにアルカリ塩類を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記アルカリ塩類の重量の比が1:0.0005~0.02であるもの、 (4)硬化剤として粒径0.10mm以下のマグネシア微粉を外掛けで0.05~1.0質量%、硬化調整剤として縮合リン酸塩を外掛けで0.01~0.2質量%添加したもの)。 【請求項3】 全体を100mass%としたときに、アルミナが70~90mass%である請求項2記載のハイアルミナキャスタブル。 【請求項4】 前記バインダは、非晶質シリカを含有する請求項2~3のいずれか1項に記載のハイアルミナキャスタブル。 【請求項5】 前記骨材と前記粉体の少なくとも一方、及び前記バインダがシリカを含有する場合、前記バインダに含有するシリカの質量は、前記骨材と前記粉体の少なくとも一方に含有するシリカの質量より小さい請求項1~4のいずれか1項に記載のハイアルミナキャスタブル。 【請求項6】 前記カルシアは、前記骨材に含まれる請求項1~5のいずれか1項に記載のハイアルミナキャスタブル。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか1項に記載のハイアルミナキャスタブルを炉壁に用いたことを特徴とする廃棄物処理炉。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第1項所定の規定違反(新規性欠如)について (1) 甲第1号証を主引用例とした場合について 本件発明2及び4~6は、甲第1号証に記載された発明である。 (2) 甲第3号証を主引用例とした場合について 本件発明2、3、5及び6は、甲第3号証に記載された発明である。 2 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について (1) 甲第1号証を主引用例とした場合について 本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明、本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 甲第2号証を主引用例とした場合について 本件発明1~7は、甲第2号証に記載された発明、本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 甲第3号証を主引用例とした場合について 本件発明1~7は、甲第3号証に記載された発明、本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について 本件発明においては、全体を100mass%としたときのカルシア(CaO)含有率を、本件特許の出願当初の「0.5mass%未満」から「0.1mass%以上0.5mass%未満」に変更しているが、これは、本件特許明細書の段落【0014】において好ましいとされている「0.1mass%未満」を除くものであり、本件特許明細書の記載と矛盾する。 一方、特許権者は、本件特許の審査段階において、本件特許明細書の【表1】の記載に基づいてカルシア(CaO)含有率の下限値を0.1mass%とした旨を主張しているが、前記【表1】の記載を根拠とするならば、カルシア(CaO)含有率の上限値(0.5mass%)がサポートされていない。 以上より、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。 4 証拠方法 甲第1号証:特公昭61-52112号公報 甲第2号証:特表平10-513431号公報 甲第3号証:中国特許出願公開第101525245号明細書 甲第4号証:耐火物技術協会 耐火物手帳編修委員会編,「耐火物手帳 改訂12版」,2015年8月31日,耐火物技術協会,p.295-302 甲第5号証:特開2000-312951号公報 甲第6号証:中国特許出願公開第104446533号明細書 甲第7号証:富士化学株式会社,「珪酸ソーダ Na2O・nSiO2・mH2O」のカタログ 甲第8号証:特開2018-111612号公報 また、申立人は、特許異議申立書(24ページ)において、以下の参考情報を提示している。 参考情報1:エスケー鉱産株式会社のウエブサイト,「ボーキサイト」,https://skmineral.co.jp/products/bauxite/,令和7年10月31日出力 参考情報2:インターネット検索で調べて出力した情報,「耐火物用ボーキサイト品質比較(代表メーカー)」,令和7年10月31日出力 第4 特許異議申立理由についての当審の判断 1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について 事案に鑑み、特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)についてまとめて検討する。 (1) 甲各号証に記載された事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア) 甲第1号証には、以下のa~eの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 a 「1 通常の耐火性原料からなる混合物100重量部に対し、結合材として難溶性珪酸ソーダを0.3~5重量部とコロイダルシリカを固形分換算で0.09~3重量部とを添加したことを特徴とする自硬性を有する不定形耐火物。」(特許請求の範囲) b 「本発明は難溶性珪酸ソーダ及びコロイダルシリカ系の結合材を添加することにより自硬性を付与した不定形耐火材に係るものである。 例えば取鍋、タンデイツシユ等の溶融金属容器又は出銑樋等へ不定形耐火物を内張り施工する方法としては、スタンプ施工、スリンガー施工、振動施工又は流込み施工等の施工方法が知られている。」(1ページ1欄12行~19行) c 「次に本発明の自硬性を有する不定形耐火物の具体的な実施のうちより幾つかを例示すると、第1表に示す配合割合の耐火材に、結合材の種々の状態のもとに水と共に添加し各態様のもとにおける硬化特性ならびに物性値を測定しその結果を第2表に示す。 各耐火材の混合物に結合材と水とを添加混練した後型枠にそれぞれ流込んで脱型時間の測定(脱型可能時間は型枠に流込んだ供試体の圧縮強度2kg/cm2となるまでの所要時間である。)を始め、110℃における乾燥亀裂、室温から600℃まで1時間当り100℃で昇温させたときの爆裂試験、嵩比重、気孔率、圧縮強さならびに回転侵蝕試験を行なつたのである。」(2ページ4欄28行~41行) d 「 [図:0001433136000001.jpg] 」(3ページ) e 「 [図:0001433136000002.jpg] [図:0001433136000003.jpg] 」(3~4ページ) (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には、通常の耐火性原料からなる混合物100重量部に対し、結合材として難溶性珪酸ソーダを0.3~5重量部とコロイダルシリカを固形分換算で0.09~3重量部とを添加した、自硬性を有する不定形耐火物が記載されている。 そして、前記(ア)b~eの記載によれば、前記不定形耐火物は、難溶性珪酸ソーダ及びコロイダルシリカ系の結合材を添加することにより自硬性を付与した不定形耐火材に係るものであって、例えば取鍋、タンデイツシユ等の溶融金属容器又は出銑樋等へ流込み施工するものであり、耐火材に、結合材の種々の状態のもとに水とともに添加したものであり、耐火材の混合物に結合材と水とを添加混練した後型枠にそれぞれ流込んで脱型時間の測定(脱型可能時間は型枠に流込んだ供試体の圧縮強度2kg/cm2となるまでの所要時間である。)を始め、110℃における乾燥亀裂、室温から600℃まで1時間当り100℃で昇温させたときの爆裂試験、嵩比重、気孔率、圧縮強さならびに回転侵蝕試験を行なったものであり、このうち供試体No.5の耐火材の組成に注目すると、前記供試体No.5の耐火材は、配合割合が、高アルミナ質シャモット5~1mmが50重量部、高アルミナ質シャモット1~mmが20重量部、ボーキサイト微粉が30重量部であり、結合剤として、難溶性珪酸ソーダが0.6重量部、コロイダルシリカ(固形分30%)が10重量部、コロイダルシリカ固形分が3.00重量部、コロイダルシリカ固形分と難溶性珪酸ソーダとの比が5のものを、加工水分8.5重量部とともに添加したものである。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「通常の耐火性原料からなる混合物100重量部に対し、結合材として難溶性珪酸ソーダを0.3~5重量部とコロイダルシリカを固形分換算で0.09~3重量部とを添加した、自硬性を有する不定形耐火物であって、 前記不定形耐火物は、難溶性珪酸ソーダ及びコロイダルシリカ系の結合材を添加することにより自硬性を付与した不定形耐火材に係るものであり、例えば取鍋、タンデイツシユ等の溶融金属容器又は出銑樋等へ流込み施工するものであり、耐火材に、結合材の種々の状態のもとに水とともに添加したものであり、耐火材の混合物に結合材と水とを添加混練した後型枠にそれぞれ流込んで脱型時間の測定(脱型可能時間は型枠に流込んだ供試体の圧縮強度2kg/cm2となるまでの所要時間である。)を始め、110℃における乾燥亀裂、室温から600℃まで1時間当り100℃で昇温させたときの爆裂試験、嵩比重、気孔率、圧縮強さならびに回転侵蝕試験を行なったものであり、 耐火材は、配合割合が、高アルミナ質シャモット5~1mmが50重量部、高アルミナ質シャモット1~mmが20重量部、ボーキサイト微粉が30重量部であり、 結合剤として、難溶性珪酸ソーダが0.6重量部、コロイダルシリカ(固形分30%)が10重量部、コロイダルシリカ固形分が3.00重量部、コロイダルシリカ固形分と難溶性珪酸ソーダとの比が5のものを、加工水分8.5重量部とともに添加したものである、不定形耐火物。」(以下、「甲1発明」という。) イ 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明 (ア) 甲第2号証には、以下のa~dの記載がある。 a 「【特許請求の範囲】 1.下記のものから本質的になる、耐火性の不定形配合物をつくるため耐火物粒子と混合するのに適した組成物。 活性アルミナ2~10重量部 アルミノケイ酸リン酸塩化合物、アルデヒドとアミンか又は芳香族ヒドロキシ化合物とから得られた樹脂、セルロース、ポリエチレングリコール、及びメトキシポリエチレングリコールのうちの少なくとも一つを含む添加剤物質0.25~1.0重量部 微細アルミナ0~50重量部 微細シリカ0~10重量部 分散剤0~1重量部 アルミン酸カルシウムセメント0~1重量部 ・・・ 9.最高で97.75重量%までのグレード分けした大きさの不活性耐火物粒子と、請求の範囲第1~8項による組成物である残りのものから本質的になる、耐火性不定形配合物。」 b 「【発明の詳細な説明】 キャスタブル耐火物系 本発明は、活性アルミナを含み、そしてアルミン酸カルシウムセメントをほとんどあるいは実質的に含まない耐火性の不定形配合物に関する。 ・・・ 本発明の態様(下記参照)では、活性アルミナはX線回折と27AlNMR により測定して、主としてχアルミナである。 使用時には、キャスタブルブレンドは理想的には良好なキャスタビリティーと生及び乾燥強度を、低温且つ高温(使用温度)での焼成製品の高い強度とともにもたらす。・・・ ・・・ 本発明において、活性アルミナは結合剤として働き、そしてアルミン酸カルシウムセメントの使用を回避することができる。」(4ページ1行~9ページ5行) c 「比較を目的として、無セメントキャスタブル(NCC)配合物と低セメントキャスタブル(LCC)配合物を下記の表2に示した配合表に従って作った。 ・・・ 下記の表1は、アルミン酸カルシウムセメントと活性アルミナの組成を重量百分率で示しており、下記の表3は、表2の配合物の組成を重量百分率で示している。配合物の組成の主要な違いはLCCの高いカルシア含有量であることが理解されよう。 ・・・ 表2に示したNCC配合表の活性アルミナのうちの0.1~1重量%を等しい重量の添加剤、アルミノケイ酸リン酸塩例えばLithopix AS85として知られているものか、あるいはユリアホルムアルデヒド樹脂のいずれかと取り替えて、配合物を調製した。添加剤と活性アルミナを合わせた総量は5重量%に維持した。いくつかの場合においては、マイクロシリカの一部又は全部を等しい重量の、Alcan Chemical Europe により供給されるRA107LS 反応性アルミナと取り替えた。 ・・・ 例1 この例では、無セメントキャスタブル(NCC)を作るための典型的なか焼ボーキサイト配合物を使用した。これは、BS1902のセクション7.3(1982)に従う標準的な耐火性キャスタブルの調製であった。Hobartミキサーを使用した。 表2におけるように、80重量部のか焼ボーキサイト骨材に、10重量部の粉体(微細)アルミナRA7、5重量部の反応性アルミナRA107LS、5重量部の活性アルミナActibond 101、0.1重量部の分散剤Empiphos STPP を加えた。低速で最長4分間乾式混合後、予め定められた量(6.6重量%)の水を加え、混合を高速で更に4分間続けた。229mm×102mm×102mmの鋼製の型を振動テーブルに固定し、混合物を充填し、約50Hzで4分間振動させて、その間に更に混合物を加えて型の最上部と同じ高さにした。 室温(24℃)で24時間硬化後、型を取り外し、試料を室温で一晩風乾した。 このような試料を110℃のオーブンで一定重量になるまで(約3日)乾燥させ、そしてまた炉でもって表4に示した温度に5時間焼成した。試料を、常温圧縮強さ(CCS)と高温曲げ強さとについて、BS 1902 のそれぞれセクション4.3と4.5に従って試験した。 生強度の測定用に160mm×40mm×40mmの試料を同じようにして調製し、その測定は室温で24時間硬化後の試料について行った。この測定のためには、Zwick装置を100mmのスパンと1mm/minのクロスヘッド速度で使用する3点曲げ試験法を利用した。結果を下記の表7に示す。」(9ページ21行~13ページ16行) d 「 [図:0001433136000004.jpg] [図:0001433136000005.jpg] [図:0001433136000006.jpg] 」(14ページ~15ページ) (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第2号証には耐火性不定形配合物が記載されており、前記(ア)bの記載によれば、前記耐火性不定形配合物は、活性アルミナを含み、そしてアルミン酸カルシウムセメントをほとんどあるいは実質的に含まない耐火性の不定形配合物であり、その態様では、活性アルミナはX線回折と27AlNMRにより測定して、主としてχアルミナであり、使用時には、キャスタブルブレンドは理想的には良好なキャスタビリティーと生及び乾燥強度を、低温且つ高温(使用温度)での焼成製品の高い強度とともにもたらすものであり、前記活性アルミナは結合剤として働き、そしてアルミン酸カルシウムセメントの使用を回避することができるものである。 そして、前記(ア)c~dの記載によれば、無セメントキャスタブル(NCC)配合物と低セメントキャスタブル(LCC)配合物を作ったとき、これらの配合物の組成の主要な違いはLCC の高いカルシア含有量であり、前記耐火性不定形配合物として、無セメントキャスタブル(NCC)配合物に注目すると、前記無セメントキャスタブル(NCC)配合物は、表2によれば、か焼ボーキサイト骨材が、3.35~1.29mm:31.6% w/w、1.29~0.5mm:18.9% w/w、0.5~0.29mm:9.1% w/w、0.29~0.17mm:7.2% w/w、0.17~0mm:13.2% w/w、粉体(微細)アルミナ(RA7)が10.0% w/w、微細シリカ(ElkemのMicrosilica 971U)が5.0% w/w、活性アルミナ(Actibond 101)が5.0% w/w含まれるものであり、前記配合物の水及び分散剤の添加量が、分散剤(Lafarge AluminatesのEmpiphos STPP)が0.1% w/w、水が5.2% w/wであり、前記活性アルミナ(Actibond 101)の組成は、表1によれば、Al2O3が93.5wt%、SiO2が0.02wt%、CaOが0.03wt%、Fe2O3が0.02wt%、Na2Oが0.4wt%、MgOが0.007wt%、強熱減量が6wt%であり、表3によれば、無セメントキャスタブル(NCC)配合物のブレンドの組成が、Al2O3が82.7wt%、SiO2が13.0wt%、CaOが0wt%、Fe2O3が1.4wt%、Na2Oが0.02wt%であるものである。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「耐火性不定形配合物であって、 前記耐火性不定形配合物は、活性アルミナを含み、そしてアルミン酸カルシウムセメントをほとんどあるいは実質的に含まない耐火性の不定形配合物であり、 その態様では、活性アルミナはX線回折と27AlNMRにより測定して、主としてχアルミナであり、使用時には、キャスタブルブレンドは理想的には良好なキャスタビリティーと生及び乾燥強度を、低温且つ高温(使用温度)での焼成製品の高い強度とともにもたらすものであり、前記活性アルミナは結合剤として働き、そしてアルミン酸カルシウムセメントの使用を回避することができるものであり、 無セメントキャスタブル(NCC)配合物と低セメントキャスタブル(LCC)配合物を作ったとき、これらの配合物の組成の主要な違いはLCC の高いカルシア含有量であり、 前記耐火性不定形配合物である前記無セメントキャスタブル(NCC)配合物は、か焼ボーキサイト骨材が、3.35~1.29mm:31.6% w/w、1.29~0.5mm:18.9% w/w、0.5~0.29mm:9.1% w/w、0.29~0.17mm:7.2% w/w、0.17~0mm:13.2% w/w、粉体(微細)アルミナ(RA7)が10.0% w/w、微細シリカ(ElkemのMicrosilica 971U)が5.0% w/w、活性アルミナ(Actibond 101)が5.0% w/w含まれるものであり、 前記配合物の水及び分散剤の添加量が、分散剤(Lafarge AluminatesのEmpiphos STPP)が0.1% w/w、水が5.2% w/wであり、 前記活性アルミナ(Actibond 101)の組成は、Al2O3が93.5wt%、SiO2が0.02wt%、CaOが0.03wt%、Fe2O3が0.02wt%、Na2Oが0.4wt%、MgOが0.007wt%、強熱減量が6wt%であり、 前記無セメントキャスタブル(NCC)配合物のブレンドの組成が、Al2O3が82.7wt%、SiO2が13.0wt%、CaOが0wt%、Fe2O3が1.4wt%、Na2Oが0.02wt%である、耐火性不定形配合物。」(以下、「甲2発明」という。) ウ 甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明 (ア) 甲第3号証には、以下のa~dの記載がある。 a 「 [図:0001433136000007.jpg] 」(特許請求の範囲) (当審訳:1.Al2O3-SiO2系に属する、加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルであり、溶融褐色コランダム骨材及び微粉末、シリカ微粉末、活性アルミナ微粉末及び減水剤を含み、Al2O3-SiO2系キャスタブルに高アルミナボーキサイト微粉末と活性酸化マグネシウムを添加し、高アルミナボーキサイト微粉末の化学成分はAl2O3≧84.5%が要求され、粒度≦0.088mmであり、活性酸化マグネシウムの化学成分はMgO≧92.0%が要求され、嵩密度≦0.1g/mlであり、 キャスタブル中の各原料の質量割合は以下のとおりである、加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブル。 溶融褐色コランダム骨材 65~70% 溶融褐色コランダム微粉末 8~10% シリカ微粉末 4~8% 活性アルミナ微粉末 2~4% 高アルミナボーキサイト微粉末 10~18% 活性酸化マグネシウム(外部添加) 0.2~0.5% 減水剤(外部添加) 0.04~0.12%) b 「 [図:0001433136000008.jpg] 」(4ページ1行~最終行) (当審訳:現在、加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルに使用されているバインダーは、主にシリカ微粉末とアルミナ微粉末であり、これに微量の純粋なアルミン酸カルシウムセメントが、質量百分率≦0.5%で添加されており、含有されるCaOは質量百分率で<0.2%である。セメントの主な機能は、水和反応中に発生するカルシウムイオンによって微粉末の表面電位を変化させ、微粉末の凝集を促進し、成形体の強度をある程度向上させることである。これは、加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルの化学組成が依然としてAl2O3-SiO2-CaOの三元系に属し、1512℃で液相となることを意味する。 適切な添加剤の水和反応によって生成されたマグネシウムイオンは、微粉末の表面電位を変化させ、その凝固を促進し、強力なMgO-SiO2-H2O結合をもたらし、これにより、成形、硬化、乾燥後のキャスタブルの強度が確保される。温度が上昇しても、この結合は600~700℃まで鎖状の構造を維持する。このMgO-SiO2-H2O結合は、Al2O3-MgO系に属する、一般的な製鋼鍋用アルミニウム-マグネシウムキャスタブルに広く使用されており、この結合は、焼結又は溶融したマグネシア粒子の水和反応によって実現される。Al2O3-SiO2系のセメントフリーキャスタブルに微量のマグネシアを添加して凝結を促進する技術に関する報告はないが、活性酸化マグネシウムを少量添加することで、その小さな粒子径、大きな比表面積、そして容易な水和性を利用し、最小限の添加量で大量のマグネシウムイオンを生成し、キャスタブルの固化を促進し、常温での性能を向上させることができる。これにより、セメント硬化時のセメントフリーコランダムキャスタブルの化学組成は、Al2O3-SiO2-CaO三元系からAl2O3-SiO2-MgO三元系へと変化し、Al2O3-SiO2-MgO系の液相は1578℃で出現し、これはAl2O3-SiO2-CaO系よりも66℃高いため、キャスタブルの耐火特性が大幅に向上する。 加熱炉で使用されるセメントフリーコランダムキャスタブルの主原料は、溶融褐色コランダムであり、この材料は電気溶融法で製造され、粒子が大きく、反応性が低く、焼結性が悪いという特徴があるが、加熱炉の運転温度は一般的に1200℃~1350℃と比較的低い。実際の使用ではキャスタブルの焼結性が悪く、マトリックスと骨材の結合が不十分になり、結果として高温曲げ強度が低下する。溶融褐色コランダムと比較して、高アルミナボーキサイトは、天然ボーキサイトを焼結して製造されるため、安価で、比較的反応性が高く、キャスタブル中の微粉末と容易に反応する。高アルミナボーキサイト中の少量のムライトは核生成サイトとして作用し、キャスタブル中のアルミナ及びシリカ微粉末からムライトの形成を促進する。したがって、コランダムキャスタブルに少量の高アルミナボーキサイト粉末を添加すると、焼結性能と高温機械的特性が大幅に向上する。キャスタブルマトリックスには、通常、骨材よりもわずかに高級な材料が使用されるが、焼結性能を改善し、高温曲げ強度を高めるために、コランダムキャスタブルに少量のボーキサイト粉末を添加することに関する論文や特許は報告されていない。) c 「 [図:0001433136000009.jpg] 」(6ページ19行~26行) (当審訳:発明を実施するための形態 本発明の主要な特徴は、従来の凝結用カルシウムアルミネートセメントに代えて、活性酸化マグネシウムをセメントフリーコランダムキャスタブルに添加することにより、キャスタブル中の低融点液相の初期生成温度を上昇させることである。同時に、キャスタブルの微粉末部に適量の高アルミナボーキサイト微粉末を導入することで、焼結性を向上させ、キャスタブルマトリックス間の結合を促進する。前記技術の採用により、セメントフリーコランダムキャスタブルの高温曲げ強度及び高温機械的特性が大幅に向上し、キャスタブルの原材料コストをある程度削減することができる。本発明の特徴を十分に説明するために、以下に実施例を示すが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。具体的な実施形態は以下のとおりである。) d 「 [図:0001433136000010.jpg] 」(7ページ9行~17行) (当審訳:実施例4:成分比(質量%)は、溶融褐色コランダム粒子70%、溶融褐色コランダム微粉末8%、高アルミナボーキサイト微粉末10%、シリカ微粉末8%、活性アルミナ微粉末4%、活性酸化マグネシウム(外部添加)0.5%、クエン酸ナトリウム(外部添加)0.12%である。) (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第3号証には、Al2O3-SiO2系に属する、加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルが記載されている。 また、前記(ア)bの記載によれば、現在、加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルに使用されているバインダーは、主にシリカ微粉末とアルミナ微粉末であり、これに微量の純粋なアルミン酸カルシウムセメントが、質量百分率≦0.5%で添加されており、含有されるCaOは質量百分率で<0.2%であり、セメントの主な機能は、水和反応中に発生するカルシウムイオンによって微粉末の表面電位を変化させ、微粉末の凝集を促進し、成形体の強度をある程度向上させることであり、これは、加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルの化学組成が依然としてAl2O3-SiO2-CaOの三元系に属し、1512℃で液相となることを意味するものである。 これに対して、適切な添加剤の水和反応によって生成されたマグネシウムイオンは、微粉末の表面電位を変化させ、その凝固を促進し、強力なMgO-SiO2-H2O結合をもたらし、これにより、成形、硬化、乾燥後のキャスタブルの強度が確保されるものであり、このMgO-SiO2-H2O結合は、Al2O3-MgO系に属する、一般的な製鋼鍋用アルミニウム-マグネシウムキャスタブルに広く使用されており、この結合は、焼結又は溶融したマグネシア粒子の水和反応によって実現されるものであり、活性酸化マグネシウムを少量添加することで、その小さな粒子径、大きな比表面積、そして容易な水和性を利用し、最小限の添加量で大量のマグネシウムイオンを生成し、キャスタブルの固化を促進し、常温での性能を向上させることができるものであり、これにより、セメント硬化時のセメントフリーコランダムキャスタブルの化学組成は、Al2O3-SiO2-CaO三元系からAl2O3-SiO2-MgO三元系へと変化し、Al2O3-SiO2-MgO系の液相は1578℃で出現し、これはAl2O3-SiO2-CaO系よりも66℃高いため、キャスタブルの耐火特性が大幅に向上するものである。 そこで、前記(ア)cの記載によれば、甲第3号証に記載された前記加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルは、従来の凝結用カルシウムアルミネートセメントに代えて、活性酸化マグネシウムをセメントフリーコランダムキャスタブルに添加することにより、キャスタブル中の低融点液相の初期生成温度を上昇させたものであり、同時に、キャスタブルの微粉末部に適量の高アルミナ質ボーキサイト粉末を導入することで、焼結性を向上させ、キャスタブルマトリックス間の結合を促進したものであり、前記技術の採用により、セメントフリーコランダムキャスタブルの高温曲げ強度及び高温機械的特性が大幅に向上し、キャスタブルの原材料コストをある程度削減することができるものであり、前記(ア)bの記載によれば、溶融褐色コランダムと比較して、高アルミナボーキサイトは、天然ボーキサイトを焼結して製造されるため、安価で、比較的反応性が高く、キャスタブル中の微粉末と容易に反応するものである。 そして、前記(ア)dに記載された実施例4に注目すると、前記加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルの成分比(質量%)は、溶融褐色コランダム粒子70%、溶融褐色コランダム微粉末8%、高アルミナボーキサイト微粉末10%、シリカ微粉末8%、活性アルミナ微粉末4%、活性酸化マグネシウム(外部添加)0.5%、クエン酸ナトリウム(外部添加)0.12%であるものである。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第3号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「Al2O3-SiO2系に属する、加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルであって、 現在、加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルに使用されているバインダーは、主にシリカ微粉末とアルミナ微粉末であり、これに微量の純粋なアルミン酸カルシウムセメントが、質量百分率≦0.5%で添加されており、含有されるCaOは質量百分率で<0.2%であり、セメントの主な機能は、水和反応中に発生するカルシウムイオンによって微粉末の表面電位を変化させ、微粉末の凝集を促進し、成形体の強度をある程度向上させることであり、これは、加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルの化学組成が依然としてAl2O3-SiO2-CaOの三元系に属し、1512℃で液相となることを意味するものであり、 これに対して、適切な添加剤の水和反応によって生成されたマグネシウムイオンは、微粉末の表面電位を変化させ、その凝固を促進し、強力なMgO-SiO2-H2O結合をもたらし、これにより、成形、硬化、乾燥後のキャスタブルの強度が確保されるものであり、 このMgO-SiO2-H2O結合は、Al2O3-MgO系に属する、一般的な製鋼鍋用アルミニウム-マグネシウムキャスタブルに広く使用されており、この結合は、焼結又は溶融したマグネシア粒子の水和反応によって実現されるものであり、活性酸化マグネシウムを少量添加することで、その小さな粒子径、大きな比表面積、そして容易な水和性を利用し、最小限の添加量で大量のマグネシウムイオンを生成し、キャスタブルの固化を促進し、常温での性能を向上させることができるものであり、これにより、セメント硬化時のセメントフリーコランダムキャスタブルの化学組成は、Al2O3-SiO2-CaO三元系からAl2O3-SiO2-MgO三元系へと変化し、Al2O3-SiO2-MgO系の液相は1578℃で出現し、これはAl2O3-SiO2-CaO系よりも66℃高いため、キャスタブルの耐火特性が大幅に向上するものであり、 前記加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルは、従来の凝結用カルシウムアルミネートセメントに代えて、活性酸化マグネシウムをセメントフリーコランダムキャスタブルに添加することにより、キャスタブル中の低融点液相の初期生成温度を上昇させたものであり、同時に、キャスタブルの微粉末部に適量の高アルミナ質ボーキサイト粉末を導入することで、焼結性を向上させ、キャスタブルマトリックス間の結合を促進したものであり、前記技術の採用により、セメントフリーコランダムキャスタブルの高温曲げ強度及び高温機械的特性が大幅に向上し、キャスタブルの原材料コストをある程度削減することができるものであり、溶融褐色コランダムと比較して、高アルミナボーキサイトは、天然ボーキサイトを焼結して製造されるため、安価で、比較的反応性が高く、キャスタブル中の微粉末と容易に反応するものであり、 前記加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルの成分比(質量%)は、溶融褐色コランダム粒子70%、溶融褐色コランダム微粉末8%、高アルミナボーキサイト微粉末10%、シリカ微粉末8%、活性アルミナ微粉末4%、活性酸化マグネシウム(外部添加)0.5%、クエン酸ナトリウム(外部添加)0.12%である、加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブル。」(以下、「甲3発明」という。) エ 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001433136000011.jpg] 」(297ページ) なお、そのほかの甲号証及び参考情報の摘記は省略する。 (2) 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)の判断 ア 甲第1号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1について a 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「高アルミナ質シャモット5~1mm」、「高アルミナ質シャモット1~mm」及び「ボーキサイト微粉」は、本件発明1における「骨材と粉体」に相当し、甲1発明における「結合材」は、本件発明1における「バインダ」に相当する。 そして、甲1発明における「不定形耐火物」は、「例えば取鍋、タンデイツシユ等の溶融金属容器又は出銑樋等へ流込み施工する」ものであって、高アルミナ質シャモット5~1mm」を「50重量部」、高アルミナ質シャモット1~mm」を「20重量部」含むものであるから、本件発明1における、「骨材と粉体とバインダとから構成され」た、「流し込み施工用のハイアルミナキャスタブル」に相当する。 また、甲1発明は、「結合材」に「コロイダルシリカ(固形分30%)」を含むものであるが、本件特許明細書の段落【0017】(下記2(2)イ)の記載によれば、本件発明1における「非晶質シリカ」としては、例えば、湿式シリカ(コロイダルシリカ)を挙げることができるのであるから、甲1発明は、本件発明1における「前記バインダは非晶質シリカを含有する」、との発明特定事項を満たす。 b 前記aによれば、本件発明1と甲1発明とは、 「骨材と粉体とバインダとから構成された、流し込み施工用のハイアルミナキャスタブルであって、 前記バインダは非晶質シリカを含有する、ハイアルミナキャスタブル。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「バインダとしてのカルシア(CaO)を含まない」ものであるのに対して、甲1発明は、「結合材」が「カルシア(CaO)を含」むか否かが明らかでない点。 ・相違点2:本件発明1は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「全体を100mass%としたときに、アルミナが70~90mass%、シリカが9~29.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するのに対して、甲1発明は、「通常の耐火性原料からなる混合物100重量部に対し、結合材として難溶性珪酸ソーダを0.3~5重量部とコロイダルシリカを固形分換算で0.09~3重量部とを添加した」ものであって、「耐火材は、配合割合が、高アルミナ質シャモット5~1mmが50重量部、高アルミナ質シャモット1~mmが20重量部、ボーキサイト微粉が30重量部であり、結合材として、難溶性珪酸ソーダが0.6重量部、コロイダルシリカ(固形分30%)が10重量部、コロイダルシリカ固形分が3.00重量部、コロイダルシリカ固形分と難溶性珪酸ソーダとの比が5のものを、加工水分8.5重量部とともに添加したもの」である点。 c 事案に鑑み、始めに、前記bの相違点2が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲1発明における「高アルミナ質シャモット5~1mm」、「高アルミナ質シャモット1~mm」、「ボーキサイト微粉」、「難溶性珪酸ソーダが0.6」及び「コロイダルシリカ(固形分30%)」のそれぞれの「アルミナ」、「シリカ」及び「カルシア」の含有量は明らかでないから、甲1発明が、「全体を100mass%としたときに、アルミナが70~90mass%、シリカが9~29.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するものということはできないので、前記相違点2は実質的な相違点である。 d 次に、前記相違点2の容易想到性について検討すると、甲1発明は、「難溶性珪酸ソーダ及びコロイダルシリカ系の結合材を添加することにより自硬性を付与した不定形耐火材に係る」ものであって、「アルミナ」、「シリカ」及び「カルシア」の含有量に注目したものではないから、甲1発明を、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとする動機付けは存在しない。 また、「ハイアルミナキャスタブル」を、「全体を100mass%としたときに、アルミナが70~90mass%、シリカが9~29.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するものとすることを記載した証拠もないから、甲1発明を、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 e してみれば、前記bの相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件発明2について a 前記(ア)aと同様にして本件発明2と甲1発明とを対比すると、本件発明2と甲1発明とは、「骨材と粉体とバインダとから構成された、流し込み施工用のハイアルミナキャスタブル。」の点で一致する。 また、甲1発明は、「(1)前記骨材および前記粉体中にスピネル粒子を15~60質量%含む、ただし、上記においてスピネル粒子とは、MgAl2O4結晶を含む粒子であって、粒子中にMgO成分を5~28質量%含み、かつMgO成分とAl2O3成分の合量が95質量%以上である粒子をいう」ものとも、「(2)硬化剤として粒径1mm以下のMg又はCaの化合物を外掛けで0.05~1.0質量%、凝集剤として金属硫酸塩又は金属ハロゲン化物塩を外掛けで0.01~1.0質量%添加したもの」とも、「(3)リグニン系分散剤を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記リグニン系分散剤の重量の比が1:0.001~0.02であり、さらにアルカリ塩類を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記アルカリ塩類の重量の比が1:0.0005~0.02であるもの」とも、「(4)硬化剤として粒径0.10mm以下のマグネシア微粉を外掛けで0.05~1.0質量%、硬化調整剤として縮合リン酸塩を外掛けで0.01~0.2質量%添加したもの」ともいえないから、本件発明2の「(但し、下記(1)~(4)の何れかを満たす場合を除く(1)前記骨材および前記粉体中にスピネル粒子を15~60質量%含む、ただし、上記においてスピネル粒子とは、MgAl2O4結晶を含む粒子であって、粒子中にMgO成分を5~28質量%含み、かつMgO成分とAl2O3成分の合量が95質量%以上である粒子をいう、(2)硬化剤として粒径1mm以下のMg又はCaの化合物を外掛けで0.05~1.0質量%、凝集剤として金属硫酸塩又は金属ハロゲン化物塩を外掛けで0.01~1.0質量%添加したもの、(3)リグニン系分散剤を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記リグニン系分散剤の重量の比が1:0.001~0.02であり、さらにアルカリ塩類を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記アルカリ塩類の重量の比が1:0.0005~0.02であるもの、(4)硬化剤として粒径0.10mm以下のマグネシア微粉を外掛けで0.05~1.0質量%、硬化調整剤として縮合リン酸塩を外掛けで0.01~0.2質量%添加したもの)」との発明特定事項を満たす。 b 前記aによれば、本件発明2と甲1発明とは、 「骨材と粉体とバインダとから構成された、流し込み施工用のハイアルミナキャスタブル(但し、下記(1)~(4)の何れかを満たす場合を除く (1)前記骨材および前記粉体中にスピネル粒子を15~60質量%含む、ただし、上記においてスピネル粒子とは、MgAl2O4結晶を含む粒子であって、粒子中にMgO成分を5~28質量%含み、かつMgO成分とAl2O3成分の合量が95質量%以上である粒子をいう、 (2)硬化剤として粒径1mm以下のMg又はCaの化合物を外掛けで0.05~1.0質量%、凝集剤として金属硫酸塩又は金属ハロゲン化物塩を外掛けで0.01~1.0質量%添加したもの、 (3)リグニン系分散剤を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記リグニン系分散剤の重量の比が1:0.001~0.02であり、さらにアルカリ塩類を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記アルカリ塩類の重量の比が1:0.0005~0.02であるもの、 (4)硬化剤として粒径0.10mm以下のマグネシア微粉を外掛けで0.05~1.0質量%、硬化調整剤として縮合リン酸塩を外掛けで0.01~0.2質量%添加したもの)。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1’:本件発明2は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「バインダとしてのカルシア(CaO)を含まない」ものであるのに対して、甲1発明は、「結合材」が「カルシア(CaO)を含」むか否かが明らかでない点。 ・相違点2’:本件発明2は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「全体を100mass%としたときに、アルミナが50~95mass%、シリカが4.5~49.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するのに対して、甲1発明は、「通常の耐火性原料からなる混合物100重量部に対し、結合材として難溶性珪酸ソーダを0.3~5重量部とコロイダルシリカを固形分換算で0.09~3重量部とを添加した」ものであって、「耐火材は、配合割合が、高アルミナ質シャモット5~1mmが50重量部、高アルミナ質シャモット1~mmが20重量部、ボーキサイト微粉が30重量部であり、結合材として、難溶性珪酸ソーダが0.6重量部、コロイダルシリカ(固形分30%)が10重量部、コロイダルシリカ固形分が3.00重量部、コロイダルシリカ固形分と難溶性珪酸ソーダとの比が5のものを、加工水分8.5重量部とともに添加したもの」である点。 c 事案に鑑み、始めに、前記bの相違点2’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、甲1発明が、「全体を100mass%としたときに、アルミナが50~95mass%、シリカが4.5~49.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するものということはできないから、前記相違点2’は実質的な相違点であるので、本件発明2が甲1発明であるはいえない。 d 次に、前記相違点2’の容易想到性について検討すると、前記(ア)dに記載したのと同様の理由により、甲1発明を、前記相違点2’に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 e してみれば、前記bの相違点1’について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 本件発明3~7について 本件発明3~7は、いずれも、本件発明1又は2の発明特定事項を全て有するものであるから、前記(ア)及び(イ)に記載したのと同様の理由により、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (エ) 申立人の主張について a 申立人の主張の概要 甲第1号証を主引用例とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 甲第1号証には、ハイアルミナキャスタブルの組成(化学成分)については明記されていないが、甲第1号証の第1表及び第2表に記載された甲1本発明品5の組成を甲第4~7号証及び技術常識に基づき計算すると、次のとおりとなる。 アルミナ:53.9mass% シリカ :36.2mass% カルシア:0.3mass% ここで、甲1本発明品5は、高アルミナ質シャモットとボーキサイトからなる混合物100mass%に対して、結合材として、難溶性珪酸ソーダ、コロイダルシリカ(固形分30%)を外掛けで添加したものであるが、甲1本発明品5の組成(化学成分)の計算において各耐火原料の化学成分(アルミナ、シリカ及びカルシア)の特定は、以下のとおりとした。 <高アルミナ質シャモット> 甲第4号証の「表III.2.1-6 代表的なシャモットの品質(その2)」に挙げられている「焦宝石」の化学成分を採用した。甲第4号証で挙げられているシャモットのうち、アルミナ含有率が最も高いのが「焦宝石」である。 <ボーキサイト> 甲第4号証の「表III2.1-11 代表的なボーキサイトばん土頁岩の品質」に挙げられている「ボーキサイト(ブラジル)」の化学成分を採用した。 ここで、甲第4号証の「表III.2.1-11 代表的なボーキサイトばん土頁岩の品質」に挙げられているボーキサイト中のCaO(カルシア)の含有率は0.04~0.06mass%となっているが、甲第5号証(段落【0045】)及び甲第6号証(段落[0015])に記載されているように、ボーキサイト中のCaOは甲第4号証に記載のものより多いものが存在することは周知であり、むしろ、市販品としては甲第5号証や甲第6号証に記載されたCaO含有率のレベル(0.2~0.3mass%程度)が 代表的なCaO含有率である。このことは、参考情報1及び参考情報2からも見て取れる。 <難溶性珪酸ソーダ> 甲第7号証で挙げられている5号珪酸ソーダの化学成分を採用した。珪酸ソーダは、SiO2/Na2Oの比率が高い方が難溶性であることは技術常識である。甲第7号証で挙げられている1号~5号珪酸ソーダのうち、SiO2/Na2Oの比率が最も高いのが5号珪酸ソーダである。 <コロイダルシリカ固形分> コロイダルシリカ固形分のシリカ含有率がほぼ100%であることは技術常識である。よって、甲1本発明品5の組成(化学成分)の計算において、コロイダルシリカ固形分のシリカ含有率は100%とした。 そうすると、本件発明1と甲1本発明品5とは、「ハイアルミナキャスタブル」が、本件発明1においては、「全体を100mass%としたときに、アルミナが70~90mass%、シリカが9~29.5mass%」「含有」するのに対して、甲1本発明品5においては、「アルミナが53.9mass%」、「シリカが36.2mass%」である点で相違するが、本件発明1において、「アルミナが70~90mass%」であること、及び「シリカが9~29.5mass%」であることの臨界的な意義は、本件特許明細書には記載がないから、甲1本発明品5において使用する耐火原料の種類や量を適宜変更すること等により、「アルミナが70~90mass%」、「シリカが9~29.5mass%」とすることは、当業者が容易になし得ることである。 また、本件発明2と甲1本発明品5との間には相違点はないから、本件発明2は甲1本発明品5である(特許異議申立書23ページ5行~29ページ5行)。 b 申立人の主張についての判断 以下、前記aの主張について検討すると、前記主張は、総じて、甲第1号証に記載された甲1本発明品5、すなわち、前記(1)ア(イ)で注目した供試体No.5における「高アルミナ質シャモット5~1mm」、「高アルミナ質シャモット1~mm」、「ボーキサイト微粉」、「難溶性珪酸ソーダ」及び「コロイダルシリカ(固形分30%)」の化学組成が、甲第4~7号証及び参考情報1~2に記載されたシャモット、ボーキサイト(ブラジル)、5号珪酸ソーダ及びコロイダルシリカの化学組成と合致することを前提として、これらの化学組成から算出した「アルミナ」、「シリカ」及び「カルシア」の含有量からみれば、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることをいうものといえる。 ところが、甲第1号証には、そもそも、「高アルミナ質シャモット5~1mm」、「高アルミナ質シャモット1~mm」、「ボーキサイト微粉」、「難溶性珪酸ソーダ」及び「コロイダルシリカ(固形分30%)」の化学組成については記載されておらず、これらの材料の入手先等も何ら記載されていないのであるから、これらの材料の化学組成が、甲第4~7号証及び参考情報1~2に記載されたシャモット、ボーキサイト(ブラジル)、5号珪酸ソーダ及びコロイダルシリカの化学組成と合致するということはできないし、このことを裏付ける証拠もない。 してみれば、申立人の前記aの主張は前提において誤っており、甲第1号証の第1表及び第2表に記載された甲1本発明品5の組成が、アルミナ:53.9mass%、シリカ:36.2mass%、カルシア:0.3mass%であるということはできない。 また、甲第4号証の「表III.2.1-5 代表的なシャモットの品質(その1)」及び「表III.2.1-6 代表的なシャモットの品質(その2)」の記載(前記(1)エ)をみれば、代表的なシャモットの組成は、その産地や品名によって異なることが看取され、例えばCaOの含有量は、測定値が記載されているものについてみても、CaOを0.06mass%含有する焼成カオリン(中国)から、0.66mass%含有する大村Cシャモット(長崎県)までばらつくものである。 そして、仮に、甲第1号証に記載された発明において代表的なシャモットを使用したとしても、算出された「カルシア」の含有量が、本件発明1及び2に特定された「0.1mass%以上0.5mass%未満」を満たすとはいえないし、そうすることが容易想到であるということもできないのであり、シャモット以外の材料に含まれる「カルシア」の含有量及びこれらの材料に含まれる「アルミナ」や「シリカ」の含有量について検討しても事情は同じである。 してみれば、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、本件発明2が、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないことに変わりはないから、申立人の前記aの主張は採用できない。 (オ) 小括 したがって、本件発明2及び4~6は、甲第1号証に記載された発明ではないし、本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明、本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第3の1(1)及び同2(1)の特許異議の申立て理由はいずれも理由がない。 イ 甲第2号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1について a 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「か焼ボーキサイト骨材」及び「粉体(微細)アルミナ(RA7)」は、それぞれ、本件発明1における「骨材」及び「粉体」に相当し、甲2発明における「活性アルミナ(Actibond 101)」は「結合剤として働」くものであるから、本件発明1における「バインダ」に相当する。 ここで、甲2発明における「活性アルミナ(Actibond 101)」は、「CaO」を「0.03wt%」含むから、甲2発明は、本件発明1の「バインダとしてのカルシア(CaO)を含まない」、との発明特定事項を満たすとはいえない。 また、甲2発明における「耐火性不定形配合物」は、「Al2O3」を「82.7wt%」含む「無セメントキャスタブル(NCC)配合物」であるから、本件発明1における「流し込み施工用のハイアルミナキャスタブル」に相当し、甲2発明において、「前記無セメントキャスタブル(NCC)配合物のブレンドの組成が、Al2O3が82.7wt%、SiO2が13.0wt%」であることは、「wt%」と「mass%」の違いがあるにせよ、おおむね、本件発明1において、「全体を100mass%としたときに、アルミナが70~90mass%、シリカが9~29.5mass%」「で含有」することを満たす。 b 前記aによれば、本件発明1と甲2発明とは、 「骨材と粉体とバインダとから構成された流し込み施工用のハイアルミナキャスタブルであって、 全体を100mass%としたときに、アルミナが70~90mass%、シリカが9~29.5mass%で含有するハイアルミナキャスタブル。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点3:本件発明1は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「バインダとしてのカルシア(CaO)を含まない」のに対して、甲2発明においては、「活性アルミナ(Actibond 101)」が「CaO」を「0.03wt%」含む点。 ・相違点4:本件発明1は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「全体を100mass%としたときに」、「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するのに対して、甲2発明は、「前記無セメントキャスタブル(NCC)配合物のブレンドの組成」において「CaOが0wt%」である点。 ・相違点5:本件発明1は、「ハイアルミナキャスタブル」の「前記バインダ」が「非晶質シリカを含有する」のに対して、甲2発明は、「活性アルミナ(Actibond 101)」が「非晶質シリカを含有する」ものとはいえない点。 c 事案に鑑み、始めに、前記bの相違点4の容易想到性について検討すると、甲2発明は、「活性アルミナ(Actibond 101)」が「CaO」を「0.03wt%」含むものであるが、「無セメントキャスタブル(NCC)配合物」においては、前記「活性アルミナ(Actibond 101)」は「5.0% w/w」しか含まれないのであるから、前記「CaO」の含有量はごく微量であり、実質的に「0wt%」といえるものである。 そして、甲2発明が、「アルミン酸カルシウムセメントをほとんどあるいは実質的に含まない」ものであって、「無セメントキャスタブル(NCC)配合物と低セメントキャスタブル(LCC)配合物を作ったとき、これらの配合物の組成の主要な違いはLCC の高いカルシア含有量」であり、「高いカルシア含有量」となる「アルミン酸カルシウムセメントの使用を回避する」ものであることからみれば、甲2発明において、実質的に「0wt%」である「CaO」の含有量をあえて増加させることはもとより想定されないから、甲2発明を、「全体を100mass%としたときに」、「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するものとする動機付けは存在しない。 更に、「ハイアルミナキャスタブル」を、「全体を100mass%としたときに」、「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するものとすることを記載した証拠もないから、甲2発明を、前記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 d したがって、前記bのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件発明2について a 前記(ア)aと同様にして本件発明2と甲2発明とを対比すると、本件発明2と甲2発明とは、「骨材と粉体とバインダとから構成された流し込み施工用のハイアルミナキャスタブルであって、全体を100mass%としたときに、アルミナが50~95mass%、シリカが4.5~49.5mass%で含有するハイアルミナキャスタブル。」の点で一致する。 また、甲2発明は、「(1)前記骨材および前記粉体中にスピネル粒子を15~60質量%含む、ただし、上記においてスピネル粒子とは、MgAl2O4結晶を含む粒子であって、粒子中にMgO成分を5~28質量%含み、かつMgO成分とAl2O3成分の合量が95質量%以上である粒子をいう」ものとも、「(2)硬化剤として粒径1mm以下のMg又はCaの化合物を外掛けで0.05~1.0質量%、凝集剤として金属硫酸塩又は金属ハロゲン化物塩を外掛けで0.01~1.0質量%添加したもの」とも、「(3)リグニン系分散剤を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記リグニン系分散剤の重量の比が1:0.001~0.02であり、さらにアルカリ塩類を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記アルカリ塩類の重量の比が1:0.0005~0.02であるもの」とも、「(4)硬化剤として粒径0.10mm以下のマグネシア微粉を外掛けで0.05~1.0質量%、硬化調整剤として縮合リン酸塩を外掛けで0.01~0.2質量%添加したもの」ともいえないから、本件発明2の「(但し、下記(1)~(4)の何れかを満たす場合を除く(1)前記骨材および前記粉体中にスピネル粒子を15~60質量%含む、ただし、上記においてスピネル粒子とは、MgAl2O4結晶を含む粒子であって、粒子中にMgO成分を5~28質量%含み、かつMgO成分とAl2O3成分の合量が95質量%以上である粒子をいう、(2)硬化剤として粒径1mm以下のMg又はCaの化合物を外掛けで0.05~1.0質量%、凝集剤として金属硫酸塩又は金属ハロゲン化物塩を外掛けで0.01~1.0質量%添加したもの、(3)リグニン系分散剤を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記リグニン系分散剤の重量の比が1:0.001~0.02であり、さらにアルカリ塩類を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記アルカリ塩類の重量の比が1:0.0005~0.02であるもの、(4)硬化剤として粒径0.10mm以下のマグネシア微粉を外掛けで0.05~1.0質量%、硬化調整剤として縮合リン酸塩を外掛けで0.01~0.2質量%添加したもの)」との発明特定事項を満たす。 b 前記aによれば、本件発明2と甲2発明とは、 「骨材と粉体とバインダとから構成された流し込み施工用のハイアルミナキャスタブルであって、 全体を100mass%としたときに、アルミナが50~95mass%、シリカが4.5~49.5mass%で含有するハイアルミナキャスタブル(但し、下記(1)~(4)の何れかを満たす場合を除く (1)前記骨材および前記粉体中にスピネル粒子を15~60質量%含む、ただし、上記においてスピネル粒子とは、MgAl2O4結晶を含む粒子であって、粒子中にMgO成分を5~28質量%含み、かつMgO成分とAl2O3成分の合量が95質量%以上である粒子をいう、 (2)硬化剤として粒径1mm以下のMg又はCaの化合物を外掛けで0.05~1.0質量%、凝集剤として金属硫酸塩又は金属ハロゲン化物塩を外掛けで0.01~1.0質量%添加したもの、 (3)リグニン系分散剤を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記リグニン系分散剤の重量の比が1:0.001~0.02であり、さらにアルカリ塩類を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記アルカリ塩類の重量の比が1:0.0005~0.02であるもの、 (4)硬化剤として粒径0.10mm以下のマグネシア微粉を外掛けで0.05~1.0質量%、硬化調整剤として縮合リン酸塩を外掛けで0.01~0.2質量%添加したもの)。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点3’:本件発明2は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「バインダとしてのカルシア(CaO)を含まない」ものであるのに対して、甲2発明は、「活性アルミナ(Actibond 101)」が「CaO」を「0.03wt%」含む点。 ・相違点4’:本件発明2は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「全体を100mass%としたときに」、「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するのに対して、甲2発明は、「前記無セメントキャスタブル(NCC)配合物のブレンドの組成」において「CaOが0wt%」である点。 c 事案に鑑み、始めに、前記bの相違点4’の容易想到性について検討すると、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、甲2発明を、前記相違点4’に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易になし得ることではない。 d してみれば、前記bの相違点3’について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 本件発明3~7について 本件発明3~7は、いずれも、本件発明1又は2の発明特定事項を全て有するものであるから、前記(ア)及び(イ)に記載したのと同様の理由により、甲2発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ) 申立人の主張について a 申立人の主張の概要 甲第2号証を主引用例とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、両者は以下の点で相違する。 (相違点3)前者は、全体を100mass%としたときに、「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満」であるのに対し、後者は、「カルシアが少量」であり、「0.1mass%以上」であるかが不明な点。 (相違点4)前者は、「バインダは非晶質シリカを含有する」のに対し、後者は、「バインダは活性アルミナを含有する」点。 <相違点3について> 本件発明1において、「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満」であること、特にカルシアの下限値を0.1mass%とすることの臨界的な意義は、本件特許明細書には記載がない。 そして、ボーキサイトのカルシア(CaO)含有率は、甲第5号証及び甲第6号証並びに前記参考情報に示したように、市販品としては0.2~0.3mass%程度が代表値である。 そうすると、甲第2号証に記載された発明において、「か焼ボーキサイト」としてカルシア(CaO)含有率が0.2~0.3mass%程度のものを使用して本件特許発明1の範囲のカルシア(CaO)含有率とすることは、当業者が容易になし得ることである。 <相違点4について> 甲第2号証には、「表2に示したNCC 配合表の活性アルミナのうちの0.1~1重量%を等しい重量の添加剤、アルミノケイ酸リン酸塩例えばLithopix AS85として知られているものか、あるいはユリアホルムアルデヒド樹脂のいずれかと取り替えて、配合物を調製した。添加剤と活性アルミナを合わせた総量は5重量%に維持した。」(前記(1)イ(ア)c)との記載があり、添加剤を使用すると生強度が向上した旨の記載もある。そして、甲第2号証に記載された発明において、前記活性アルミナは、ボーキサイト等を結合する結合剤として働くものであるが、非晶質シリカ(シリカゾル)がこのような耐火物の結合剤として作用することは、キャスタブルの技術分野において周知慣用技術である(例えば、甲第8号証の段落0002を参照)。したがって、甲第2号証に記載された発明において前記添加剤として、非晶質シリカを採用することは、当業者が容易になし得ることである。 以上より、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本件発明2と甲第2号証に記載された発明も、前記相違点3と同じ点で相違するが、前記したのと同様の理由により、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書32ページ5行~33ページ23行)。 b 申立人の主張についての判断 以下、前記aの主張について検討すると、本件発明1において、「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満」であること、特にカルシアの下限値を0.1mass%とすることに臨界的な意義がないとしても、甲2発明を、「全体を100mass%としたときに」、「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するものとする動機付けは存在しないし、「ハイアルミナキャスタブル」を、「全体を100mass%としたときに」、「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するものとすることを記載した証拠もないことに変わりはない。 そして、甲2発明を、「全体を100mass%としたときに」、「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するものとする動機付けが存在しないのであるから、仮に、ボーキサイトのカルシア(CaO)含有率が、市販品としては0.2~0.3mass%程度が代表値であるとしても、甲第2号証に記載された発明において、「か焼ボーキサイト」としてカルシア(CaO)含有率が0.2~0.3mass%程度のものを使用することは、当業者が容易になし得ることではない。 そうすると、本件発明1において、「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満」であること、特にカルシアの下限値を0.1mass%とすることの臨界的な意義について本件特許明細書には記載がないとしても、また、ボーキサイトのカルシア(CaO)含有率は、市販品としては0.2~0.3mass%程度が代表値であるとしても、更に、仮に、甲第2号証に記載された発明において前記添加剤として、非晶質シリカを採用することが、当業者が容易になし得ることであるとしても、本件発明1及び2は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第2号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないことに変わりはないから、前記aの主張は採用できない。 (オ) 小括 したがって、本件発明1~7は、甲第2号証に記載された発明、本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第3の2(2)の特許異議の申立て理由は理由がない。 ウ 甲第3号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1について a 本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「溶融褐色コランダム粒子」、「溶融褐色コランダム微粉末」及び「高アルミナボーキサイト微粉末」は、本件発明1における「骨材と粉体」に相当し、甲3発明における「活性酸化マグネシウム」は、「従来の凝結用カルシウムアルミネートセメントに代えて」「セメントフリーコランダムキャスタブルに添加」するものであり、「マグネシウムイオン」により、「微粉末の表面電位を変化させ、その凝固を促進し、強力なMgO-SiO2-H2O結合をもたらし、これにより、成形、硬化、乾燥後のキャスタブルの強度が確保される」ものであるから、本件発明1における「バインダ」に相当する。 また、甲3発明における「加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブル」は、「Al2O3-SiO2系に属する」ものであることからみれば、本件発明1における「流し込み施工用のハイアルミナキャスタブル」に相当する。 b 前記aによれば、本件発明1と甲3発明とは、 「骨材と粉体とバインダとから構成された、流し込み施工用のハイアルミナキャスタブル。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点6:本件発明1は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「バインダとしてのカルシア(CaO)を含まない」ものであるのに対して、甲3発明は、「活性酸化マグネシウム」が「カルシア(CaO)を含」むか否かが明らかでない点。 ・相違点7:本件発明1は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「全体を100mass%としたときに、アルミナが70~90mass%、シリカが9~29.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するのに対して、甲3発明は、「成分比(質量%)」が「溶融褐色コランダム粒子70%、溶融褐色コランダム微粉末8%、高アルミナボーキサイト微粉末10%、シリカ微粉末8%、活性アルミナ微粉末4%、活性酸化マグネシウム(外部添加)0.5%、クエン酸ナトリウム(外部添加)0.12%」である点。 ・相違点8:本件発明1は、「ハイアルミナキャスタブル」における「前記バインダ」が「非晶質シリカを含有する」のに対して、甲3発明は、「活性酸化マグネシウム」が「非晶質シリカを含有する」か否かが明らかでない点。 c 事案に鑑み、始めに、前記bの相違点7が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲3発明における「溶融褐色コランダム粒子」、「溶融褐色コランダム微粉末」、「高アルミナボーキサイト微粉末」、「シリカ微粉末」、「活性アルミナ微粉末」、「活性酸化マグネシウム(外部添加)」及び「クエン酸ナトリウム(外部添加)」のそれぞれの「アルミナ」、「シリカ」及び「カルシア」の含有量は明らかでないから、甲3発明が、「全体を100mass%としたときに、アルミナが70~90mass%、シリカが9~29.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するものということはできないので、前記相違点7は実質的な相違点である。 d 次に、前記相違点7の容易想到性について検討すると、甲3発明は、「従来の凝結用カルシウムアルミネートセメントに代えて、活性酸化マグネシウムをセメントフリーコランダムキャスタブルに添加することにより、キャスタブル中の低融点液相の初期生成温度を上昇させた」ものである。 すなわち、「バインダー」が「主にシリカ微粉末とアルミナ微粉末であり、これに微量の純粋なアルミン酸カルシウムセメント」が「添加」されている「加熱炉用高強度セメントフリーコランダムキャスタブルの化学組成」は、「Al2O3-SiO2-CaOの三元系に属」し、この場合、「1512℃で液相となることを意味する」のであるが、「従来の凝結用カルシウムアルミネートセメントに代えて、活性酸化マグネシウムをセメントフリーコランダムキャスタブルに添加する」と、「適切な添加剤の水和反応によって生成されたマグネシウムイオンは、微粉末の表面電位を変化させ、その凝固を促進し、強力なMgO-SiO2-H2O結合をもたらし、これにより、成形、硬化、乾燥後のキャスタブルの強度が確保される」ものであり、また、「セメント硬化時のセメントフリーコランダムキャスタブルの化学組成」が「Al2O3-SiO2-CaO三元系からAl2O3-SiO2-MgO三元系へと変化」するものであり、これにより、「Al2O3-SiO2-MgO系の液相は1578℃で出現し、これはAl2O3-SiO2-CaO系よりも66℃高いため、キャスタブルの耐火特性が大幅に向上する」ものである。 そうすると、甲3発明は、「従来の凝結用カルシウムアルミネートセメントに代えて、活性酸化マグネシウムをセメントフリーコランダムキャスタブルに添加する」ことにより、「セメント硬化時のセメントフリーコランダムキャスタブルの化学組成」を「Al2O3-SiO2-CaO三元系からAl2O3-SiO2-MgO三元系へと変化」させることで、「キャスタブルの耐火特性が大幅に向上する」ものといえるから、「CaO」を含有しないようにするとともに、「活性酸化マグネシウム」を「添加」することで、「キャスタブルの耐火特性が大幅に向上する」ものといえる。 そして、そのような甲3発明において、あえて、「カルシア」を「0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」させる動機付けは存在しない。 更に、「ハイアルミナキャスタブル」を、「全体を100mass%としたときに、アルミナが70~90mass%、シリカが9~29.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するものとすることを記載した証拠もないから、甲3発明を、前記相違点7に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易になし得ることではない。 e してみれば、前記bのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件発明2について a 前記(ア)aと同様にして本件発明2と甲3発明とを対比すると、本件発明2と甲3発明とは、「骨材と粉体とバインダとから構成された、流し込み施工用のハイアルミナキャスタブル。」の点で一致する。 また、甲3発明は、「(1)前記骨材および前記粉体中にスピネル粒子を15~60質量%含む、ただし、上記においてスピネル粒子とは、MgAl2O4結晶を含む粒子であって、粒子中にMgO成分を5~28質量%含み、かつMgO成分とAl2O3成分の合量が95質量%以上である粒子をいう」ものとも、「(2)硬化剤として粒径1mm以下のMg又はCaの化合物を外掛けで0.05~1.0質量%、凝集剤として金属硫酸塩又は金属ハロゲン化物塩を外掛けで0.01~1.0質量%添加したもの」とも、「(3)リグニン系分散剤を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記リグニン系分散剤の重量の比が1:0.001~0.02であり、さらにアルカリ塩類を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記アルカリ塩類の重量の比が1:0.0005~0.02であるもの」とも、「(4)硬化剤として粒径0.10mm以下のマグネシア微粉を外掛けで0.05~1.0質量%、硬化調整剤として縮合リン酸塩を外掛けで0.01~0.2質量%添加したもの」ともいえないから、本件発明2の「(但し、下記(1)~(4)の何れかを満たす場合を除く(1)前記骨材および前記粉体中にスピネル粒子を15~60質量%含む、ただし、上記においてスピネル粒子とは、MgAl2O4結晶を含む粒子であって、粒子中にMgO成分を5~28質量%含み、かつMgO成分とAl2O3成分の合量が95質量%以上である粒子をいう、(2)硬化剤として粒径1mm以下のMg又はCaの化合物を外掛けで0.05~1.0質量%、凝集剤として金属硫酸塩又は金属ハロゲン化物塩を外掛けで0.01~1.0質量%添加したもの、(3)リグニン系分散剤を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記リグニン系分散剤の重量の比が1:0.001~0.02であり、さらにアルカリ塩類を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記アルカリ塩類の重量の比が1:0.0005~0.02であるもの、(4)硬化剤として粒径0.10mm以下のマグネシア微粉を外掛けで0.05~1.0質量%、硬化調整剤として縮合リン酸塩を外掛けで0.01~0.2質量%添加したもの)」との発明特定事項を満たす。 b 前記aによれば、本件発明3と甲1発明とは、 「骨材と粉体とバインダとから構成された、流し込み施工用のハイアルミナキャスタブル(但し、下記(1)~(4)の何れかを満たす場合を除く (1)前記骨材および前記粉体中にスピネル粒子を15~60質量%含む、ただし、上記においてスピネル粒子とは、MgAl2O4結晶を含む粒子であって、粒子中にMgO成分を5~28質量%含み、かつMgO成分とAl2O3成分の合量が95質量%以上である粒子をいう、 (2)硬化剤として粒径1mm以下のMg又はCaの化合物を外掛けで0.05~1.0質量%、凝集剤として金属硫酸塩又は金属ハロゲン化物塩を外掛けで0.01~1.0質量%添加したもの、 (3)リグニン系分散剤を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記リグニン系分散剤の重量の比が1:0.001~0.02であり、さらにアルカリ塩類を添加され、かつ、前記骨材及び前記粉体を加えた重量と前記アルカリ塩類の重量の比が1:0.0005~0.02であるもの、 (4)硬化剤として粒径0.10mm以下のマグネシア微粉を外掛けで0.05~1.0質量%、硬化調整剤として縮合リン酸塩を外掛けで0.01~0.2質量%添加したもの)。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点6’:本件発明2は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「バインダとしてのカルシア(CaO)を含まない」ものであるのに対して、甲3発明は、「活性酸化マグネシウム」が「カルシア(CaO)を含」むか否かが明らかでない点。 ・相違点7’:本件発明2は、「ハイアルミナキャスタブル」が、「全体を100mass%としたときに、アルミナが50~95mass%、シリカが4.5~49.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するのに対して、甲3発明は、「成分比(質量%)」が「溶融褐色コランダム粒子70%、溶融褐色コランダム微粉末8%、高アルミナボーキサイト微粉末10%、シリカ微粉末8%、活性アルミナ微粉末4%、活性酸化マグネシウム(外部添加)0.5%、クエン酸ナトリウム(外部添加)0.12%」である点。 c 事案に鑑み、始めに、前記bの相違点7’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、甲3発明が、「全体を100mass%としたときに、アルミナが50~95mass%、シリカが4.5~49.5mass%、カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」するものということはできないから、前記相違点7’は実質的な相違点であるので、本件発明2が甲3発明であるということはできない。 d 次に、前記相違点7’の容易想到性について検討すると、前記(ア)dに記載したのと同様の理由により、甲3発明を、前記相違点7’に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易になし得ることではない。 e してみれば、前記bの相違点6’について検討するまでもなく、本件発明2は、甲3発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 本件発明3~7について 本件発明3~7は、いずれも、本件発明1又は2の発明特定事項を全て有するものであるから、前記(ア)及び(イ)に記載したのと同様の理由により、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (エ) 申立人の主張について a 申立人の主張の概要 甲第3号証を主引用例とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 甲第3号証には、ハイアルミナキャスタブルの組成(化学成分)については明記されていないが、甲第3号証の実施例4(甲3実施例4)の組成を甲第4~7号証及び技術常識に基づき計算すると、次のとおりとなる。 アルミナ:87.1mass% シリカ :9.2mass% カルシア:0.1mass% ここで、甲3実施例4は、褐色電融コランダム、高アルミナボーキサイト微粉末、シリカ微粉及び活性アルミナ微粉からなる混合物100mass%に対して、活性酸化マグネシウムとクエン酸ナトリウムを外掛けで添加したものであるが、前記甲3実施例4の組成(化学成分)の計算において各耐火原料の化学成分(アルミナ、シリカ及びカルシア)の特定は、以下のとおりとした。 <褐色電融コランダム> 甲第4号証の「表III.2.1-12 代表的なアルミナの品質」に挙げられている「電融アルミナ(褐色)」の化学成分を採用した。 <高アルミナボーキサイト微粉> 甲第3号証には、高アルミナボーキサイト原料は焼結した天然ボーキサイトによって得る旨の記載がある(前記(1)ウ(ア)b)。そこで、高アルミナボーキサイトの化学成分は、甲第4号証の「表III.2.1-11 代表的なボーキサイトばん土頁岩の品質」に挙げられている「ボーキサイト(ブラジル)」の化学成分を採用した。 <シリカ微粉> 甲第4号証の「表III.2.1-2 代表的なシリカ原料の品質」に挙げられている「四浦珪石」の化学成分を採用した。 <活性アルミナ微粉> 活性アルミナ微粉のアルミナ含有率がほぼ100%であることは技術常識である。よって、甲3実施例4の組成(化学成分)の計算において、活性アルミナ微粉のアルミナ含有率は100%とした。 そうすると、本件発明1と甲3実施例4とは、「ハイアルミナキャスタブル」が、本件発明1においては、「バインダ」が「非晶質シリカを含有する」のに対して、甲3実施例4においては、「バインダ」が「活性酸化マグネシウム微粉を含有する」ものである点で相違するが、キャスタブルの技術分野において、「非晶質シリカ」をバインダとして使用することは、本件特許の出願日当時の周知慣用技術であるから、本件発明1は、甲3実施例4及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本件発明2と甲3実施例4との間には相違点はないから、本件発明2は甲3実施例4である(特許異議申立書35ページ下から6行~38ページ3行。なお、38ページ2行目の「甲1発明」は「甲3発明」の誤記と認める。)。 b 申立人の主張についての判断 以下、前記aの主張について検討すると、前記主張は、総じて、甲第3号証に記載された甲3実施例4、すなわち、前記(1)ウ(イ)で注目した実施例4における「溶融褐色コランダム粒子」、「溶融褐色コランダム微粉末」、「高アルミナボーキサイト微粉末」及び「シリカ微粉末」の化学組成が、甲第4号証に記載された電融アルミナ(褐色)、ボーキサイト(ブラジル)及び四浦珪石の化学組成と合致することと、「活性アルミナ微粉末」のアルミナ含有率がほぼ100%であることを前提として、これらの化学組成から算出した「アルミナ」、「シリカ」及び「カルシア」の含有量からみれば、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2は、甲第3号証に記載された発明であるか、甲第3号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることをいうものといえる。 ところが、甲第3号証には、そもそも、「溶融褐色コランダム粒子」、「溶融褐色コランダム微粉末」、「高アルミナボーキサイト微粉末」、「シリカ微粉末」及び「活性アルミナ微粉末」の化学組成については記載されておらず、これらの材料の入手先等は、高アルミナボーキサイト原料は焼結した天然ボーキサイトによって得る旨の記載があるほかは、何ら記載されていないのであるから、前記「溶融褐色コランダム粒子」、「溶融褐色コランダム微粉末」、「高アルミナボーキサイト微粉末」及び「シリカ微粉末」の化学組成が、甲第4号証に記載された電融アルミナ(褐色)、ボーキサイト(ブラジル)及び四浦珪石の化学組成と合致し、「活性アルミナ微粉末」のアルミナ含有率がほぼ100%であるということはできないし、このことを裏付ける証拠もない。 してみれば、申立人の前記aの主張は前提において誤っており、甲第3号証の実施例4の組成が、アルミナ:87.1mass%、シリカ:9.2mass%、カルシア:0.1mass%であるということはできない。 また、前記ア(エ)bに記載したのと同様の理由により、甲第3号証に記載された発明における材料の組成も、産地や品名により異なり、ばらつくものであるから、仮に、甲第3号証に記載された発明において代表的な材料を使用したとしても、算出された「カルシア」の含有量が、本件発明1及び2に特定された「0.1mass%以上0.5mass%未満」を満たすとはいえないし、そうすることが容易想到であるということもできないのであり、「アルミナ」や「シリカ」の含有量について検討しても事情は同じである。 してみれば、本件発明1が、甲第3号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、本件発明2が、甲第3号証に記載された発明であるとも、甲第3号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないことに変わりはないから、申立人の前記aの主張は採用できない。 (オ) 小括 したがって、本件発明2、3、5及び6は、甲第3号証に記載された発明ではないし、本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明、本件特許の出願日当時の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第3の1(2)及び同2(3)の特許異議の申立て理由はいずれも理由がない。 (3) 小括 よって、前記第3の1及び同2の特許異議の申立て理由はいずれも理由がない。 2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1) サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点により検討する。 (2) 本件特許明細書の記載事項 本件特許明細書には、以下の記載がある。 ア 「【0001】 本発明は、アルミナを主成分とするハイアルミナキャスタブル、及びそれを用いてなる廃棄物処理炉に関する。 【背景技術】 【0002】 キャスタブル(不定形耐火物)は、その施工性,コスト,使用条件に合わせた材料を選択できるという自由度の高さから、溶解炉や焼却炉等の種々の炉の耐火物(耐火材とも称される)に幅広く使用されている。 【0003】 従来、キャスタブルとして、アルミナセメントを多量に含有したセメントキャスタブルが使用されている。セメントキャスタブルは、セメントの主成分のカルシア(CaO)が使用中に反応し、アノーサイト(CaO・Al2O3・2SiO2)等の低融点化合物を生成する。生成したアノーサイトは、セメントキャスタブルへのスラグ等の浸食を生じさせていた。また、炉のセメントキャスタブルは、炉内に存在する酸性成分(例えば、被処理物や、炉内の雰囲気や排気に含まれる酸性成分)と、カルシアとが反応し、組織の脆化や溶損を生じさせていた。従来のセメントキャスタブルでは、カルシアが存在すると、高温域での熱間強度の低下やスラグの浸食性が著しく増大していた。 この問題に対し、アルミナセメントの添加量を少なくした低セメントキャスタブルや、超微粉シリカやアルミナを活用した超低セメントキャスタブルが実用化されている。 【0004】 また近年では、水硬性アルミナやコロイダルシリカを結合材として添加し、全くアルミナセメントを添加しないノンセメントキャスタブルが開発されている。ノンセメントキャスタブルは、溶融金属を貯留する貯留容器の材料への適用や、溶融炉の内張りキャスタブルへの適用が検討されている。 【0005】 一方、キャスタブルが用いられる各溶解炉、特に産業廃棄物焼却炉においては、廃棄物の多様化に伴う影響が顕著となっている。具体的には、廃棄物からの酸性成分やアルカリ成分などの反応性成分とキャスタブルとが反応して、炉が損傷するという問題がある。さらに、廃棄物の材料や処理温度が異なると、反応性成分の反応性(例えば、酸性度やアルカリ度)も異なる。このように、炉の耐火材には、幅広い酸性度(又はアルカリ度)の反応性成分に対応できることが求められている。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、炉の耐火材として使用でき、耐酸性、耐アルカリ性、及び耐食性に優れたキャスタブル及びそれを用いた炉を提供することを課題とする。」 イ 「【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決する本発明のハイアルミナキャスタブルは、骨材と粉体とバインダとから構成され、セメントを含まないハイアルミナキャスタブルであって、全体を100mass%としたときに、アルミナが50~95mass%、シリカが4.5~49.5mass%、カルシアが0.5mass%未満で含有することを特徴とする。 本発明のハイアルミナキャスタブルは、カルシアの含有量が少なく、かつシリカを含有することで、耐酸性及び耐アルカリ性に優れたキャスタブルとなっている。さらに、低融点成分の生成が抑えられ、スラグ等に対する耐食性や耐溶損性にも優れたキャスタブルとなっている。 ・・・ 【0010】 以下、実施の形態を用いて本発明を説明する。 [実施形態] (ハイアルミナキャスタブル) 本形態のハイアルミナキャスタブル(以下、キャスタブル)は、骨材と粉体とバインダとから構成され、セメントを含まないハイアルミナキャスタブルである。そして、全体を100mass%としたときに、アルミナが50~95mass%、シリカが4.5~49.5mass%、カルシアが0.5mass%未満で含有する。 【0011】 本形態のキャスタブルは、従来のキャスタブルと同様に、骨材と粉体とを、バインダで結合したものである。そして、本形態のキャスタブルは、バインダにセメントを含まない。ここで、セメントとは、カルシア(CaO)を主成分とするものであり、本形態のキャスタブルは、バインダとしてのカルシア(CaO)を含まない。 本形態のキャスタブルは、ハイアルミナキャスタブルであり、アルミナを最も多い成分として含有する。アルミナが最も多い成分として含有されることで、耐食性の低い成分の含有割合が低下する。 【0012】 本形態のキャスタブルは、全体を100mass%としたときに、アルミナを50~95mass%で含有する。アルミナがこの割合で含有することで、本形態のキャスタブルは、スラグに対する耐食性、又は耐熱性の低下が抑えられる。アルミナを50mass%以上で含有することで、アルミナが最も多い成分として含有する。アルミナを95mass%以下で含有することで、キャスタブルとしての機能を発揮できる。すなわち、アルミナを過剰に含有すると、相対的に、他の成分(例えば、バインダ)の含有割合が低下する。好ましいアルミナの含有割合は、70~90mass%である。 【0013】 本形態のキャスタブルは、全体を100mass%としたときに、シリカを4.5~49.5mass%で含有する。シリカは、本形態のキャスタブルが高温にさらされたときに、ガラス化して、キャスタブルよりなる耐火材全体の表面、及びキャスタブルを形成する骨材や粉体等の粒子の表面にガラス質の被膜を形成する。ガラス質の被膜は、アルカリ成分の浸透を抑制する。すなわち、シリカは、キャスタブルの耐アルカリ性を高める。シリカの含有割合が少なすぎると、シリカを含有することの効果が発揮されない。具体的には、アルカリ成分の存在下でキャスタブル(耐火物)が高温にさらされた場合、シリカが少なすぎると(ガラス質の被膜が形成されず)、β-アルミナが生成する。β-アルミナは、その生成反応において体積膨張を引き起こす。体積膨張が生じると、キャスタブル(耐火物)に亀裂を生じさせるとともに、進展した亀裂がキャスタブル(耐火物)の崩壊を引き起こす。また、シリカが過剰に含有すると、アルミナの含有割合が相対的に少なくなるため、キャスタブルの耐熱性が低下する。好ましいシリカの含有割合は9~29.5mass%である。 【0014】 本形態のキャスタブルは、全体を100mass%としたときに、カルシアを0.5mass%未満で含有する。カルシアは、キャスタブルの耐酸性を低下する成分である。本形態のキャスタブルは、このカルシアの含有割合を0.5mass%未満と少量とすることで、耐酸性の低下が抑えられる。 また、カルシアは、アノーサイト等の低融点化合物を生成する。このカルシアが少量となることで、この低融点化合物が生成することが抑えられる。この結果、低融点化合物が原因となっている上記した問題の発生が抑えられる。すなわち、本形態のキャスタブルは、高温域での熱間強度の低下やスラグの浸食が抑えられる。 カルシアは、その含有割合が少ないことが好ましい。具体的には、0.3mass%未満が好ましく、0.2mass%未満がより好ましく、0.1mass%未満が更に好ましい。本形態のキャスタブルにおいて、カルシアは、可能な限り含有しないことが好ましい。カルシアを全く含有しないこと(すなわち、カルシアの含有割合が0mass%)が最も好ましい。 【0015】 なお、本形態のキャスタブルにおいて、カルシアを含有する場合、骨材や粉体に含まれたものであることが好ましい。すなわち、バインダとしてカルシアを含有しないことが好ましい。骨材や粉体に含まれたカルシアは、バインダに含有した場合と比較して、反応性に乏しい。つまり、カルシアが骨材や粉体に含まれたキャスタブルは、バインダに含まれたキャスタブルより、耐食性の低下を抑えられている。 ・・・ 【0017】 本形態のキャスタブルは、バインダに非晶質シリカを含有することが好ましい。非晶質シリカとは、結晶構造を持たないシリカを含む物質である。非晶質シリカとしては、例えば、湿式シリカ(コロイダルシリカ)を挙げることができる。バインダに非晶質シリカを含有することで、上記したガラス質の被膜が簡単に形成できる。すなわち、非晶質シリカは、骨材や粉体に含まれるケイ素と比較して、ガラス質の被膜を容易に形成できる。」 ウ 「【実施例】 【0024】 以下、具体的な実施例を用いて本発明を説明する。 【0025】 (実施例及び比較例) 実施例及び比較例として、表1に示した化学組成を有するキャスタブルを骨材、粉体及びバインダとから調製し、試験片(試料1~6)を成形した。具体的には、試料1~6のキャスタブルを調製し、所定量の水を添加してモルタルミキサーで混練し、振動台上で所定の型枠内に流し込み、48時間自然養生後に脱枠し、110℃で24時間乾燥した。以上により、40×40×160(mm)の試験片が製造された。 なお、バインダは、1~10mass%の割合で添加され、試料1,2,3,6のバインダには、コロイダルシリカが含まれている。試料4,5のバインダには、コロイダルシリカが含まれていない。また、骨材及び粉体として、電融アルミナ,焼結アルミナ,ムライト,シリマナイト,アンダルサイト,ボーキサイト,シャモット,バン頁等の材料を用いた。 【0026】 【表1】 [図:0001433136000012.jpg] 【0027】 表1に示した気孔率及びかさ比重は、JIS R 2205に準拠する方法で測定した。圧縮強度は、JIS R 2553に準拠する方法で測定した。 【0028】 (評価) 試料1~6のキャスタブルの評価として、耐アルカリ性試験及び耐酸性試験を行った。 【0029】 (耐アルカリ性試験) 耐アルカリ性試験として、るつぼ浸食試験を行った。るつぼは、70×70×65mmの角柱形状の試験片に、φ30×35mmの穴を開けて形成した。このるつぼの穴に、炭酸ナトリウム(市販品)を20g入れて、1200℃×12時間の加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで放冷(自然冷却)し、外観観察を行う。その後、るつぼの中心で切断し(穴の軸方向断面)、切断面を観察した(耐アルカリ性試験A)。 ・・・ 【0032】 これらの評価試験後の観察結果を図1~3に示した。図1には、試料1~4に対して耐アルカリ性試験Aを行った後の上面、側面及び断面写真を合わせて示す。・・・ 【0033】 図1に示すように、カルシアが0.5mass%未満の試料1~3のキャスタブルは、亀裂が見られなかった。また、試験片の穴の上部に溶融した試薬(炭酸ナトリウム)が見られた。さらに、るつぼが蓋と固着していることが確認され、アルカリ成分の耐火物組織への浸透が抑制されていることが分かる。 対して、カルシアを0.7mass%で含有する試料4のキャスタブルは、組織劣化及び体積膨張による大きな亀裂が発生していることが確認できる。 【0034】 さらに、アルカリ性試験Aを行った試料2及び試料4の試験片の断面において、るつぼの穴の内周面からのNa成分の浸透量(表面からの浸透深さ)を測定した。試料2では、1mm程度のNaの浸透が確認できた。これに対し、試料4では、2~5mmの浸透が確認できた。 この点からも、カルシアが0.5mass%未満の試料1~3のキャスタブルは、カルシアを含有する試料4のキャスタブルより、耐アルカリ性に優れていることが確認できる。 ・・・ 【0038】 (耐酸性試験) 耐酸性試験として、塩酸浸食試験を行った。試料1~6のキャスタブルから、40×40×40(mm)の立方体形状の試験片を切り出し、110℃で24時間乾燥を行って試験片を製造する。この試験片を、20%塩酸水溶液に8日間浸漬した。 浸漬終了後、乾燥して外観観察を行った。また、乾燥後の質量を測定し、酸処理前後の質量の変化率(%)を測定した。試験結果を図4に示す。図4には、耐酸性試験前後の試験片の外観写真を示す。 【0039】 図4に示したように、カルシアが0.5mass%未満の試料1~3のキャスタブルの試験片は、酸溶液での処理後においても亀裂が見られず、組織の脆化が見られなかった。また、質量変化も1%以下とほとんど生じていなかった。 【0040】 対して、カルシアを0.5mass%以上で含有する試料4~5のキャスタブルの試験片は、外表面に組織脆化及び崩壊が確認された。これは、キャスタブル中のカルシアが塩酸と反応し、塩化カルシウムを生成したことによると考えられる。塩化カルシウムを生成すると、結合力が低下する。この結果、組織脆化から崩壊に至ったと考えられる。このことは、試料4~5のキャスタブルにおいて、カルシアの含有量が多いほど、顕著に確認された。 ・・・ 【0042】 以上のように、本発明の実施例に相当する試料1~3のキャスタブルの試験片は、高い耐酸性を発揮していることが確認できた。 【0043】 (まとめ) 上記の耐アルカリ性試験及び耐酸性試験の結果から、本発明の実施例に相当する試料1~3のキャスタブルの試験片は、耐アルカリ性及び耐酸性を有していることが確認できた。」 (3) サポート要件の判断 ア 前記(2)アの記載によれば,本件発明は、アルミナを主成分とするハイアルミナキャスタブル、及びそれを用いてなる廃棄物処理炉に関するものであって(段落【0001】)、従来、アルミナセメントの添加量を少なくした低セメントキャスタブルや、超微粉シリカやアルミナを活用した超低セメントキャスタブルが実用化されているものであり(段落【0003】)、また近年では、水硬性アルミナやコロイダルシリカを結合材として添加し、全くアルミナセメントを添加しないノンセメントキャスタブルが開発されており、ノンセメントキャスタブルは、溶融金属を貯留する貯留容器の材料への適用や、溶融炉の内張りキャスタブルへの適用が検討されているのであるが(段落【0004】)、キャスタブルが用いられる各溶解炉、特に産業廃棄物焼却炉においては、廃棄物の多様化に伴う影響が顕著となっているものであり、具体的には、廃棄物からの酸性成分やアルカリ成分などの反応性成分とキャスタブルとが反応して、炉が損傷するという問題があリ、更に、廃棄物の材料や処理温度が異なると、反応性成分の反応性(例えば、酸性度やアルカリ度)も異なることから、炉の耐火材には、幅広い酸性度(又はアルカリ度)の反応性成分に対応できることが求められているので(段落【0005】)、本件発明は、炉の耐火材として使用でき、耐酸性、耐アルカリ性、及び耐食性に優れたキャスタブル及びそれを用いた炉を提供することを課題とするものである(段落【0006】)。 イ そして、前記(2)イの記載によれば、本件発明に係るハイアルミナキャスタブルは、骨材と粉体とバインダとから構成され、セメントを含まないハイアルミナキャスタブルであって、全体を100mass%としたときに、アルミナが50~95mass%、シリカが4.5~49.5mass%、カルシアが0.5mass%未満で含有することを特徴とするものであり、そのようなハイアルミナキャスタブルは、カルシアの含有量が少なく、かつシリカを含有することで、耐酸性及び耐アルカリ性に優れたキャスタブルとなっており、更に、低融点成分の生成が抑えられ、スラグ等に対する耐食性や耐溶損性にも優れたキャスタブルとなっているものである(段落【0007】)。 すなわち、本件発明に係るハイアルミナキャスタブルは、従来のキャスタブルと同様に、骨材と粉体とをバインダで結合したものであるが、バインダにセメントを含まないものであり、ここで、セメントとは、カルシア(CaO)を主成分とするものであり、本件発明に係るハイアルミナキャスタブルは、バインダとしてのカルシア(CaO)を含まないハイアルミナキャスタブルであって、アルミナを最も多い成分として含有するものであり、アルミナが最も多い成分として含有されることで、耐食性の低い成分の含有割合が低下するものである(段落【0011】)。 具体的には、本件発明に係るハイアルミナキャスタブルは、全体を100mass%としたときに、アルミナを50~95mass%で含有するものであり、アルミナがこの割合で含有することで、スラグに対する耐食性、又は耐熱性の低下が抑えられるものであり、アルミナを50mass%以上で含有することで、アルミナが最も多い成分として含有するものであり、アルミナを95mass%以下で含有することで、キャスタブルとしての機能を発揮できるものであり、ここで、アルミナを過剰に含有すると、相対的に、他の成分(例えば、バインダ)の含有割合が低下することから、好ましいアルミナの含有割合は、70~90mass%であるものである(段落【0012】)。 また、本件発明に係るハイアルミナキャスタブルは、全体を100mass%としたときに、シリカを4.5~49.5mass%で含有するものであり、シリカは、本件発明に係るハイアルミナキャスタブルが高温にさらされたときに、ガラス化して、キャスタブルよりなる耐火材全体の表面、及びキャスタブルを形成する骨材や粉体等の粒子の表面にガラス質の被膜を形成し、ガラス質の被膜は、アルカリ成分の浸透を抑制するものであり、シリカは、キャスタブルの耐アルカリ性を高めるものであり、シリカの含有割合が少なすぎると、シリカを含有することの効果が発揮されないものであり、また、シリカが過剰に含有すると、アルミナの含有割合が相対的に少なくなるため、キャスタブルの耐熱性が低下することから、好ましいシリカの含有割合は9~29.5mass%である(段落【0013】)ものである。 更に、本件発明に係るハイアルミナキャスタブルは、全体を100mass%としたときに、カルシアを0.5mass%未満で含有するものであり、カルシアは、キャスタブルの耐酸性を低下する成分であり、本形態のキャスタブルは、このカルシアの含有割合を0.5mass%未満と少量とすることで、耐酸性の低下が抑えられるものであり、また、カルシアは、アノーサイト等の低融点化合物を生成するものであり、このカルシアが少量となることで、この低融点化合物が生成することが抑えられる結果、低融点化合物が原因となっている上記した問題の発生が抑えられ、高温域での熱間強度の低下やスラグの浸食が抑えられるものであり、カルシアは、その含有割合が少ないことが好ましく、カルシアを全く含有しないこと(すなわち、カルシアの含有割合が0mass%)が最も好ましいものである(段落【0014】)。 ウ また、前記(2)ウの記載によれば、本件特許明細書には、実施例及び比較例として、表1に示した化学組成を有するキャスタブルを骨材、粉体及びバインダとから調製し、試験片(試料1~6)を成形し(段落【0025】)、前記試料1~6のキャスタブルの評価として、耐アルカリ性試験及び耐酸性試験を行ったことが記載されており(段落【0028】)、耐アルカリ性試験Aを行った結果、カルシアが0.5mass%未満の試料1~3のキャスタブルは亀裂が見られなかったのに対して、カルシアを0.7mass%で含有する試料4のキャスタブルは、組織劣化及び体積膨張による大きな亀裂が発生していることが確認でき、カルシアが0.5mass%未満の試料1~3のキャスタブルは、カルシアを0.7mass%で含有する試料4のキャスタブルより、耐アルカリ性に優れていることが確認できるものである(段落【0032】~【0034】)。 更に、耐酸性試験の結果、カルシアが0.5mass%未満の試料1~3のキャスタブルの試験片は、酸溶液での処理後においても亀裂が見られず、組織の脆化が見られなかったものであり、また、質量変化も1%以下とほとんど生じていなかったのに対して、カルシアを0.5mass%以上で含有する試料4~5のキャスタブルの試験片は、外表面に組織脆化及び崩壊が確認され、このことは、試料4~5のキャスタブルにおいて、カルシアの含有量が多いほど、顕著に確認されたことから、カルシアが0.5mass%未満の試料1~3のキャスタブルの試験片は、高い耐酸性を発揮していることが確認できたものであり、これらの耐アルカリ性試験及び耐酸性試験の結果から、カルシアが0.5mass%未満の試料1~3のキャスタブルの試験片は、耐アルカリ性及び耐酸性を有していることが確認できたものである。(段落【0038】~【0043】)。 エ 前記ア~イによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明は、炉の耐火材として使用でき、耐酸性、耐アルカリ性、及び耐食性に優れたキャスタブル及びそれを用いた炉を提供する、という課題(以下、「本件課題」という。)を解決するものであって、全体を100mass%としたときに、アルミナを50~95mass%、好ましくは70~90mass%含有し、シリカを4.5~49.5mass%、好ましくは9~29.5mass%含有し、カルシアを0.5mass%未満で含有するハイアルミナキャスタブルによって、耐酸性、耐アルカリ性、及び耐食性に優れたキャスタブルを提供することができ、本件課題を解決できることを理解することができるのであり、前記ウによれば、このことは、前記実施例及び比較例の記載によっても裏付けられるものである。 そして、全体を100mass%としたときに、アルミナを50~95mass%、好ましくは70~90mass%含有し、シリカを4.5~49.5mass%、好ましくは9~29.5mass%含有し、カルシアを0.5mass%未満で含有するハイアルミナキャスタブルは、本件発明1の発明特定事項を満たすから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の発明特定事項により、本件課題を解決できることを理解することができるのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合する。 また、前記ハイアルミナキャスタブルは、本件発明2の発明特定事項も満たすから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明2の発明特定事項により、本件課題を解決できることを理解することができるのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項2の記載もサポート要件に適合する。 更に、本件発明1又は2の発明特定事項を全て有する本件特許請求の範囲の請求項3~7について検討しても事情は同じであるから、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するというべきである。 (4) 申立人の主張について ア 以下、申立人の前記第3の3の主張について検討すると、本件特許明細書の記載に接した当業者は、全体を100mass%としたときに、アルミナを50~95mass%、好ましくは70~90mass%含有し、シリカを4.5~49.5mass%、好ましくは9~29.5mass%含有し、カルシアを0.5mass%未満で含有するハイアルミナキャスタブルによって、耐酸性、耐アルカリ性、及び耐食性に優れたキャスタブルを提供することができ、本件課題を解決できることを理解することができることは、前記(3)エに記載したとおりである。 そして、本件特許明細書の段落【0014】(前記(2)イ)に、本件発明においては、カルシアを全く含有しないこと(すなわち、カルシアの含有割合が0mass%)が最も好ましいことが記載される一方、本件発明1において、カルシア(CaO)含有量が「0.1mass%以上0.5mass%未満」と特定されて、最も好ましいとされるカルシアを全く含有しない(すなわち、カルシアの含有割合が0mass%の)ものが除外されているとしても、これは、単に、本件発明1において最も好ましいとされるものが除外されているにすぎず、カルシア(CaO)含有量が「0.5mass%未満」であることが特定されることで本件課題を解決できることに変わりはないから、本件発明1の「カルシアが0.1mass%以上0.5mass%未満で含有」する、との発明特定事項は、本件特許明細書の記載と矛盾するものではない。 イ また、前記段落【0014】の記載によれば、カルシアは、キャスタブルの耐酸性を低下する成分であり、その含有割合が少ないことが好ましいものであることと、本件特許明細書の実施例の記載(段落【0038】~【0042】。前記(2)ウ。)によれば、カルシアの含有量が0.4mass%の試料1のキャスタブルは、カルシアの含有量が0.7mass%の試料4のキャスタブルよりも高い耐酸性を発揮していることが確認できたのであるから、当業者は、カルシア(CaO)含有量を「0.5mass%未満」とすることで、それ以上のカルシア(CaO)含有量を有するキャスタブルよりも高い耐酸性を有するキャスタブルとでき、本件課題を解決できることを理解することができる。 してみれば、本件発明1において、本件特許明細書の【表1】の記載に基づいてカルシア(CaO)含有率の下限値を「0.1mass%」としたとしても、前記【表1】と、前記段落【0014】及び【0038】~【0042】の記載も参酌すれば、カルシア(CaO)含有率の上限値である「0.5mass%」がサポートされていないとはいえない。 ウ 更に、本件発明2~7について検討しても事情は同じであるから、申立人の前記第3の3の主張はいずれも採用できない。 (5) 小括 したがって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するから、前記第3の3の特許異議の申立て理由は理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701082

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