特許異議申立
2023-701083
活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物
- 審判番号
- 2023-701083
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-199877
- 登録番号
- 7264219
- 請求日
- 2023年10月10日
- 審決日
- 2024年10月08日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】artience株式会社
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【異議申立人】斎藤 明子
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 長谷川 真一
- 分類
- P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D) / P1651.161-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7264219号発明「活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7264219号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第7264219号の請求項1-8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和3年12月9日の出願であって、令和5年4月17日に特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、同年10月10日に斎藤 明子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年12月20日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である令和6年2月20日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったことを、同年2月27日付けで異議申立人に通知し、特許異議申立人は、同年3月22日に意見書を提出し、当審は、同年5月7日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年6月20日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったことを、同年7月16日付けで異議申立人に通知し、特許異議申立人は、同年8月1日に意見書を提出したものである。
なお、本件訂正請求がされたことにより、令和6年2月20日にされた訂正の請求は取り下げたものとみなされる。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1~3からなる。訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤と、光重合禁止剤2種以上とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物」とあるのを「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤2種以上と、光重合禁止剤2種以上とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~8も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり、光重合禁止剤が、・・・」とあるのを「活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり、光重合開始剤が、チオキサントン系化合物を含み、光重合禁止剤が、・・・」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~8も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、「活性エネルギー線硬化型インキ組成物。」とあるのを「活性エネルギー線硬化型インキ組成物(ただし、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オンを含むもの、
構成単位1
【化1】
[図:0001418217000001.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000002.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000003.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、をいずれも除く。)。」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~8も同様に訂正する。)。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明において、光重合開始剤は2種以上を含むことが特定されていないのに対し、当該構成を特定するものである。
したがって、この訂正は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記アに記載したとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項1は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
本件の出願当初明細書段落【0043】には、「上記光重合開始剤は、・・・2種以上を組み合わせて用いてもよい。」ことが記載され、明細書に記載の多くの実施例において2種の光重合開始剤が使用されている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議の申立がされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明において、光重合開始剤の種類は特定されていないのに対し、訂正事項2は「光重合開始剤が、チオキサントン系化合物を含」むことを特定するものである。
この訂正は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記アに記載したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
本件特許明細書段落【0034】には、「本発明において、光重合開始剤は、吸収波長のピークを300nm以上に有する光重合開始剤を用いることが好ましい。」ことが記載され、続く段落【0035】には「吸収波長のピークを300nm以上に有する上記光重合開始剤として、具体例としては、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チオキサントン系化合物が挙げられる。」と記載され、明細書に記載の実施例において、チオキサントン系化合物である「OmniradDETX」が使用されている(段落【0084】~【0087】【表1】、段落【0089】)。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議の申立がされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明において、活性エネルギー線硬化型インキ組成物は特定のインキ組成物を除くものではないのに対し、訂正事項3はかかるインキ組成物から「2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン」を含むもの、「構成単位1(化学式省略)及び、構成単位2(化学式省略)を含む樹脂」を含むもの、並びに「フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂」を含むものを除くことを特定するものである。
この訂正は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記アに記載したとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項3は、甲第9号証に記載された発明の内容となっている特定の事項を除外するものである。
訂正事項3は、「2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン」を含む、との甲第9号証に記載された発明の内容となっている特定の事項、「構成単位1(化学式省略)及び、構成単位2(化学式省略)を含む樹脂」を含む、との甲第1号証に記載された発明の内容となっている特定の事項、及び「フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂」を含む、との甲第2号証に記載された発明の内容となっている特定の事項を除外するものである。
本件明細書の記載に基づき、本件発明が光重合開始剤として「2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン」を含むインキ組成物に特定されるものではないことは当業者において容易に理解されるところであり、当該光重合開始剤を含まない構成により所期の効果を奏する発明であることが、実施例により示されている。同様に、本件明細書の記載に基づき、本件発明が樹脂として「構成単位1(化学式省略)及び、構成単位2(化学式省略)を含む樹脂」、又は「フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂」を含むインキ組成物に特定されるものではないことは当業者において容易に理解されるところであり、当該特定の樹脂を含まない構成により所期の効果を奏する発明であることが、実施例により示されている。
したがって、上記訂正により除外した後の「除くクレーム」は、本件の当初明細書に記載した事項の範囲内であり、この除外によって、訂正前の本件明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせることはなく、新たな技術的事項を導入するものでもない。
よって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議の申立がされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~8について、請求項2~8はそれぞれ請求項1を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項1~3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~8についてされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~8に係る発明は、令和6年6月20日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」等、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤2種以上と、光重合禁止剤2種以上とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物を含み、
活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり、
光重合開始剤が、チオキサントン系化合物を含み、
光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含む、活性エネルギー線硬化型インキ組成物(ただし、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オンを含むもの、
構成単位1
【化1】
[図:0001418217000004.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000005.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000006.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、をいずれも除く。)。
【請求項2】
(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物の含有量が、組成物の全質量を基準として30~70質量%である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項3】
光重合禁止剤が、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩と、t-ブチルヒドロキノンとを含む、請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項4】
光重合禁止剤の含有量の総量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物全量中、0.01~1質量%である、請求項1~3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項5】
樹脂が、ジアリルフタレート樹脂、および、ロジン変性樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1~4いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項6】
光重合開始剤が、吸収波長のピークを300nm以上に有する光重合開始剤を含む、請求項1~5いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項7】
光重合開始剤の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物全量中1~10質量%である、請求項1~6いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項8】
基材上に、請求項1~7いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物を印刷し、活性エネルギー線で硬化してなる、印刷物。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
令和5年12月20日付けで通知した取消理由の概要は次の理由1~3であり、令和6年5月7日付けで通知した取消理由の概要は次の理由1~2である。
理由1(新規性)本件特許の請求項1、2、4~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
記
甲第1号証:特開2018-109161号公報
甲第2号証:特開2019-127591号公報
理由3(拡大先願)請求項1~8に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者、またこの出願時に、この出願の出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
記
甲第9号証:特願2021-49271号(特開2022-117370号公報)
第5 前記第4における理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
1 甲号証について
甲第1号証及び甲第2号証は前記第4の理由1及び理由2のものと同じ。
甲第3号証:特開2018-193453号公報
甲第4号証:「UV・EB硬化技術」(昭和57年10月30日発行)、164~165頁
甲第5号証:「高分子技術レポート」 Vol.1 歯科材料モノマーの重合の基礎(2009年11月5日発行)、2~15頁
甲第6号証:光硬化型樹脂カタログ(東亜合成株式会社;2018年11月)
甲第7号証:製品名「SR355J NS(ジトリメチロールプロパン テトラアクリレート)」安全データシート(SARTOMER;輸入者 アルケマ株式会社;2021年5月31日)
2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下「甲1」という。)
1a「【請求項1】
構成単位1
【化1】
[図:0001418217000007.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1c~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000008.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2cは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000009.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂。
【請求項3】
酸価が0.1~150mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の樹脂。
【請求項4】
重量平均分子量が1,000~200,000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項5】
軟化点が40~150℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項6】
カルボキシル基及びアリール基を有する重合体(A)と
エポキシド(B)又はエポキシド(B)及びカルボン酸無水物(C)とを反応させる工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂及び反応性希釈剤を含む、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項7に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び顔料を含む、活性エネルギー線硬化型印刷インキ。
【請求項10】
請求項9に記載の活性エネルギー線硬化型印刷インキの硬化層を含む、印刷物。」
1b「【0005】
しかし、ジアリルフタレート樹脂は、ジアリルフタレートモノマーを重合させたものであり、重合性二重結合を有する一方、ヒドロキシル基やカルボキシル基等の極性官能基を有しないため、利用態様が限られる。また、樹脂中に残存する未反応のジアリルフタレートモノマーが変異原性の高懸念物質である(上記特許文献1の段落[0009]を参照。)ことから、ジアリルフタレート樹脂に代替し得る樹脂が求められている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、活性エネルギー線硬化型インキのバインダーとした場合に、該インキの硬化性、耐溶剤性が良好であり、その結果ジアリルフタレート樹脂に代替し得る新規な樹脂を提供することとする。
・・・
【0009】
本発明の樹脂は、カルボキシル基、水酸基、場合により重合性炭素-炭素二重結合を有するため、各種変性に供することができる。変性は、カルボン酸や水酸基を含有する化合物とのエステル化反応やエポキシドとの付加反応等が例示される。
【0010】
また、該樹脂は、ジアリルフタレート樹脂と同様に各種反応性希釈剤、特にジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート類との相溶性が良好である。また、該樹脂は、これをバインダー樹脂とする印刷インキの耐溶剤性を向上させる。
【0011】
本発明の樹脂を含む活性エネルギー線硬化型印刷インキは、ジアリルフタレート樹脂を含むインキと同様に硬化性、光沢に優れる。また、本発明の樹脂の耐溶剤性はジアリルフタレート樹脂の耐溶剤性よりも優れる。そのため、活性エネルギー線硬化型オフセット印刷インキとして特に好適である。
・・・
【0106】
(光重合開始剤)
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には更に光重合開始剤を含み得る。光重合開始剤は、2種以上を併用できる。光重合開始剤は、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-シクロへキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、4-メチルベンゾフェノン等が例示される。
【0107】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂及び反応性希釈剤の合計100質量部に対する光重合開始剤の含有量の上限は10、9、8、7、6、5、4、3、2質量部等が例示され、下限は9、8、7、6、5、4、3、2、1質量部等が例示される。上記含有量の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の光重合開始剤の含有量は、本発明の樹脂及び反応性希釈剤の合計100質量部に対して1~10質量部程度が好ましい。
【0108】
(ラジカル重合禁止剤)
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には更にラジカル重合禁止剤を含み得る。ラジカル重合禁止剤は、2種以上を併用できる。ラジカル重合禁止剤は、メトキノン、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン等のキノン系重合禁止剤、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤、アルキル化ジフェニルアミン、フェノチアジン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のアミン系重合禁止剤、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、2,4-ジニトロフェノール、2-メチル-N-ニトロソアニリン等のニトロソアミン系重合禁止剤等が例示される。
1c「【0124】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。但し、上述の好ましい実施形態における説明及び以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供するものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、特に説明がない限り、各実施例及び比較例において、部又は%は質量基準である。
【0125】
<樹脂の合成例>
製造例1
撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に酢酸ブチル100部を加え、滴下漏斗にスチレン60部、98%アクリル酸15部、メタクリル酸ブチル25部を仕込み。2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(ABN-E)10部を重合開始剤として添加し、140℃、1.5時間還流・撹拌下滴下重合を行い、1時間保温した。その後、160℃にし、溶媒を留去して酸価100mgKOH/g、重量平均分子量6,000のスチレン-アクリル樹脂(A-1)(以下、(A-1)という)を得た。続いて、撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に(A-1)100部、無水フタル酸100部、フェニルグリシジルエーテル100部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.3部を添加した後、160℃で4時間撹拌した。その後、-0.08MPaで減圧し、樹脂を得た。
【0126】
製造例2
撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に酢酸ブチル100部を加え、滴下漏斗にスチレン55部、98%アクリル酸10部、アクリル酸2-エチルへキシル20部、アクリロイルモルホリン15部を仕込み。2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(ABN-E)10部を重合開始剤として添加し、140℃、1.5時間還流・撹拌下滴下重合を行い、1時間保温した。その後、160℃にし、溶媒を留去して酸価75mgKOH/g、重量平均分子量5,000のスチレン-アクリル樹脂(A-2)(以下、(A-2)という)を得た。続いて、撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に(A-2)50部、製造例1で得た(A-1)50部、無水フタル酸80部、フェニルグリシジルエーテル80部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.3部を添加した後、160℃で4時間撹拌した。その後、-0.08MPaで減圧し、樹脂を得た。
【0127】
製造例3
撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に製造例1で得た(A-1)100部、無水フタル酸100部、フェニルグリシジルエーテル100部、エポキシ化大豆油(新日本理化(株)製)5部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.3部を添加した後、160℃で4時間撹拌した。その後、-0.08MPaで減圧し、樹脂を得た。
【0128】
製造例4
撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に製造例2で得た(A-2)100部、無水フタル酸50部、フェニルグリシジルエーテル50部、エポキシ化大豆油(新日本理化(株)製)5部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.3部を添加した後、160℃で4時間撹拌した。その後、-0.08MPaで減圧し、樹脂を得た。
【0129】
製造例5
撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に製造例1で得た(A-1)100部、フェニルグリシジルエーテル25部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.3部を添加した後、160℃で4時間撹拌した。その後、-0.08MPaで減圧し、樹脂を得た。
【0130】
製造例1~5で得られた樹脂について、以下の物性を測定した。
【0131】
<酸価>
JIS K5601に準拠する方法で測定した。結果を表1に示す。
【0132】
<重量平均分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、HLC-8320)を用いてポリスチレン検量線により測定した。結果を表1に示す。
【0133】
<軟化点>
JIS K5601に準拠する方法で測定した。結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
[図:0001418217000010.jpg]
【0135】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
実施例1
撹拌装置、冷却管を備えた反応容器に製造例1で得た樹脂40.0部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製 ビームセット730)60.0部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製、以下同様)0.1部及びQ-1301(和光純薬工業(株)製、以下同様)0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0136】
実施例2~5及び比較例1
樹脂の種類、樹脂とジトリメチロールプロパンテトラアクリレートの使用量をそれぞれ表2に変更したこと以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製した。
【0137】
実施例1~5及び比較例1で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物について、以下の物性を測定した。
【0138】
<E型粘度>
JIS Z8803に準拠する方法で測定した。結果を表2に示す。
【0139】
【表2】
[図:0001418217000011.jpg]
ジアリルフタレート樹脂:ダイソーダップA(大阪ソーダ製)
【0140】
<活性エネルギー線硬化型インキの調製>
墨顔料としてカーボンブラックを15.0部、実施例1で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を50.0部、ビームセット730を30部、メトキノンを0.1部、及び光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.0部を仕込み、3本ロールミルで常法により活性エネルギー線硬化型インキを調製した。実施例2~5及び比較例1についても同様に活性エネルギー線硬化型インキを調製した。
【0141】
前記のようにして調製した活性エネルギー線硬化型インキをRIテスター((株)明製作所製)を用いてコート紙に塗布し、紫外線照射機(80W/cm、照射距離25cm、コンベア速度8.0m/分)で紫外線照射し、印刷物を得た。
【0142】
<インキの性能評価>
実施例及び比較例のインキに付いて以下の試験を行った。
【0143】
<インキの硬化速度>
前記、印刷物作製の際に要した照射量を表3に示す。照射量が少なくても硬化しているものが硬化性良好である。
【0144】
<インキの光沢>
前記、印刷物作製により得られた硬化皮膜の光沢値を一体型光沢計HVG-2000(日本電色工業(株)製)で測定した。結果を表3に示す。光沢値が高いほど光沢が良好である。
【0145】
<インキの耐溶剤性>
前記、印刷物作製により得られた硬化皮膜を酢酸エチルを染み込ませた綿棒で40往復擦った後の塗膜表面の状態を目視で確認し、以下の基準に従って耐溶剤性を評価した。結果を表3に示す。
○:ほぼ変化なし
△:擦れ痕が残る
×:インキが消失し、基材が確認できる
【0146】
【表3】
[図:0001418217000012.jpg]
」
(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物である、インキ用樹脂。
【請求項2】
モノアルキルフェノール由来の構成単位を含む、請求項1に記載のインキ用樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインキ用樹脂、及び反応性希釈剤を含む、ワニス組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のワニス組成物及び顔料を含む、インキ。
【請求項5】
請求項4に記載のインキの硬化層を含む、印刷物。」
2b「【0005】
しかし、ジアリルフタレート樹脂は、ジアリルフタレートモノマーを重合させたものであり、重合性二重結合を有する一方、ヒドロキシル基やカルボキシル基等の極性官能基を有しないため、利用態様が限られる。また、樹脂中に残存する未反応のジアリルフタレートモノマーが変異原性の高懸念物質である(上記特許文献1の段落[0009]を参照。)ことから、ジアリルフタレート樹脂に代替し得る樹脂が求められている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ジアリルフタレート樹脂に代替可能な樹脂であり、インキのバインダーとした場合に、インキのミスチング性、流動性が良好とすることができる樹脂を提供することとする。
・・・
【0010】
本発明のインキ用樹脂を用いて製造したインキは、耐ミスチング性、流動性に優れる。また、本発明のインキ用樹脂は、分子内に水酸基、及び場合により重合性炭素-炭素二重結合を有するため、各種変性又は化学反応に供することができる。
・・・
【0085】
<光重合開始剤>
また、上記ワニス組成物には更に光重合開始剤を含み得る。光重合開始剤は、各種公知のものを特に制限なく使用することができ、単独で又は二種以上を使用できる。光重合開始剤は、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-シクロへキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、4-メチルベンゾフェノン等が例示される。
【0086】
ワニス組成物中の光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、上記インキ用樹脂及び反応性希釈剤の合計100質量部に対する光重合開始剤の含有量の上限は10、9、8、7、6、5、4、3、2質量部等が例示され、下限は9、8、7、6、5、4、3、2、1質量部等が例示される。上記含有量の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、ワニス組成物中の光重合開始剤の含有量は、上記インキ用樹脂及び反応性希釈剤の合計100質量部に対して1~10質量部程度が好ましい。
【0087】
<ラジカル重合禁止剤>
また、上記ワニス組成物には更にラジカル重合禁止剤を含み得る。ラジカル重合禁止剤は、各種公知のものを特に制限なく使用することができ、単独で又は二種以上を使用できる。ラジカル重合禁止剤は、メトキノン、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン等のキノン系重合禁止剤;2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール等のモノアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、フェノチアジン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のアミン系重合禁止剤;N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩;2,4-ジニトロフェノール、2-メチル-N-ニトロソアニリン等のニトロソアミン系重合禁止剤等が例示される。」
2c「【0104】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。なお、以下において「部」及び「%」は、特に説明がない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0105】
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、HLC-8320)を用いてポリスチレン検量線により測定した。また酸価及び軟化点は、JIS K5601に準拠する方法により測定し、水酸基価は、JIS K0070に準拠する方法により測定した。
【0106】
(製造例1:フェノール樹脂の製造)
撹拌機、還流冷却管及び温度計を備えた反応容器に、石炭酸(フェノール)40.00部、p-クレゾール30.00部、m-クレゾール30.00部、及び37%ホルマリン65.00部を加え、50℃でシュウ酸・2水和物0.60部を添加した。添加後、98℃まで約1時間かけて昇温し、98℃で4~7時間保温した。160℃へ1.5時間かけて昇温し、160℃到達後、160~180℃で減圧(-0.08MPa)し、残存モノマーを溜去してフェノール樹脂(酸価79.7mgKOH/g、水酸基価494mgKOH/g、軟化点133.0℃、数平均分子量900、重量平均分子量12000)を取り出した。
【0107】
製造例2
撹拌機、還流冷却管及び温度計を備えた反応容器に、石炭酸(フェノール)50.00部、o-クレゾール30.00部、m-クレゾール20.00部、及び37%ホルマリン80.00部を加え、50℃でシュウ酸・2水和物0.50部を添加した。添加後、98℃まで約1時間かけて昇温し、98℃で4~7時間保温した。160℃へ1.5時間かけて昇温し、160℃到達後、160~180℃で減圧(-0.08MPa)し、残存モノマーを溜去してフェノール樹脂(酸価74.3mgKOH/g、水酸基価494mgKOH/g、軟化点130.5℃、数平均分子量1500、重量平均分子量7400)を得た。
【0108】
製造例1、2以外のフェノール樹脂も成分組成を下記表のように変更した以外は、製造例2と同様にして製造した。
【表1】
[図:0001418217000013.jpg]
【0109】
(実施例1:インキ用樹脂の製造)
実施例1-1
製造例1と同様の反応容器に、製造例1のフェノール樹脂100部、及びフェニルグリシジルエーテル150.00部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.50部を添加し、150℃で4時間撹拌した。その後、-0.08MPaで減圧し、インキ用樹脂(酸価0.9mgKOH/g、水酸基価214mgKOH/g、軟化点82.0℃、数平均分子量1800、重量平均分子量16000)を得た。
【0110】
実施例1-2、比較例1-1
実施例1-2、比較例1-1のインキ用樹脂は、成分組成を下記表のように変更した以外は、製造例1と同様にして製造し、それぞれ、実施例1-2では酸価2.0mgKOH/g、水酸基価232mgKOH/g、軟化点83.0℃、数平均分子量2400、重量平均分子量9600のインキ用樹脂を得、比較例1-1では酸価5.6mgKOH/g、水酸基価81.9mgKOH/g、軟化点94.5℃、数平均分子量2500、重量平均分子量20000のインキ用樹脂を得た。なお、表中の数字は質量部を意味する。
【0111】
【表2】
[図:0001418217000014.jpg]
【0112】
(実施例2:インキの製造・評価)
実施例2-1
撹拌装置、冷却管を備えた反応容器に実施例1で得た樹脂46.0部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製)56.00部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製、以下同様)0.1部及びQ-1301(和光純薬工業(株)製、以下同様)0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、ワニス組成物を得た。
続いて墨顔料としてカーボンブラックを15.0部、上記ワニス組成物を50.0部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを30.0部、メトキノンを0.1部、及び光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.0部を仕込み、3本ロールミルで常法によりインキを調製した。
【0113】
実施例2-2及び比較例2-1
実施例2-2及び比較例2-1のインキは、成分組成を下記表のように変更した以外は、実施例2-1と同様にして製造した。なお、表中の数字は質量部を意味する。
【0114】
【表3】
[図:0001418217000015.jpg]
【0115】
上記インキをRIテスター((株)明製作所製)を用いてコート紙に塗布し、紫外線照射機(120W/cm、照射距離25cm、コンベア速度12.5m/分)で紫外線照射し、印刷物を得た。
【0116】
<インキの性能評価>
実施例及び比較例のインキについて以下の試験を行った。結果を下記表に記載する。
【0117】
<耐ミスチング性評価>
インコメーター(東洋精機(株)製)にインキ2.6mlを乗せ、1200rpmで40℃、2分間回転させ、一定位置に固定した13×21cmのOHPフィルムへのインキの飛び散り量(mg)を測定した。インキの飛び散り量は少ない程好ましい。
耐ミスチング性評価の評価基準
20mg未満:○
20mg以上:×
【0118】
<流動性評価>
60°の傾斜をつけたガラス板の上端にインキピペットで量り取ったインキ1.3mlを押し出し、30分後のインキの流れた距離(mm)を測定した。インキの流れた距離は長い程好ましい。
流動性評価の評価基準
280mm以上:○
280mm未満:×
【0119】
【表4】
[図:0001418217000016.jpg]
【0120】
<硬化性評価>
さらに、インキの硬化性について下記の手順で評価を行った。結果を下記表に記載する。
JIS K5701に準じて(株)明製作所製RIテスターの全面ロールにインキ0.4mlを乗せ、コート紙に展色した。その後、展色した紙を紫外線硬化装置に通した。キムワイプで塗布面のかすれや剥がれがなくなるまで繰り返し、そのときの紫外線硬化装置に通した回数(パス回数という)を比較した。照射機の条件は、120W/cm高圧水銀灯、ランプ高さ25cm、コンベア速度12.5m/minとした。
硬化性評価の評価基準
6回以下:○
7回以上:×
【0121】
【表5】
[図:0001418217000017.jpg]
」
(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「【請求項1】
酸価が1.0~10.0mgKOH/gである活性エネルギー線硬化型モノマー(A)、樹脂(B)、及び着色顔料(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化型モノマー(A)が多官能アクリレート(A1)である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項3】
前記多官能アクリレート(A1)が、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート混合物(DPHA)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(EOTMPTA)、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(POTMPTA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)からなる群から選ばれる1つ以上である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
・・・
【請求項9】
請求項1~8の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を用い印刷してなる印刷物。」
3b「【0056】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
尚、樹脂の酸価は、以下の方法で測定した酸価(mgKOH/g)である。
【0057】
試料100mlを三角フラスコ300mlにとり、JIS K 8006の3によって調製したフェノールフタレイン溶液(1w/v%)2~3滴を指示薬として加え、ミクロビュレットを用いてN/10アルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、液のごく薄い赤が30秒以上消えなくなったときを終点とし、次式によって酸価Aを得る。
A=(5.61×V)/(S×G)
ここで、Aは酸価、Sは試料(ml)、Gは測定時の温度における試料の比重、VはN/10アルコール性水酸化カリウム溶液の使用量(ml)を示す。
【0058】
製造例1〔酸価が1.0~10.0である多官能アクリレート(A1)の合成〕
ジペンタエリスリトール100g(0.39モル)当たり、アクリル酸185g(2.57モル)、p-トルエンスルホン酸3.0g(0.017モル)、モノメチルヒドロキノン0.03g(0.00024モル)およびトルエン240gをフラスコに仕込み、空気を吹き込みながら、110℃に加熱撹拌し、生成する水を系外に留去した。約6時間、水を留出させたところで、室温に冷却した。上記反応液を水(100g)で1回洗浄し、これに、モノメチルヒドロキノン0.03gを加え、80℃、10mmHgで、トルエンを減圧蒸留し、DPHA(酸価10mgKOH/g)を得た。
尚、前記水による洗浄回数を下記に変更する事で、酸価の異なるDPHAを作製した。
水洗無しのものは酸価15mgKOH/gである事を確認した。
水洗なし:酸価15mgKOH/g
洗浄1回:酸価10mgKOH/g
洗浄2回:酸価 5mgKOH/g
洗浄3回:酸価 3mgKOH/g
洗浄4回:酸価 1.4mgKOH/g
洗浄5回:酸価 1.2mgKOH/g
洗浄6回:酸価 0.8mgKOH/g
洗浄7回:酸価 0.4mgKOH/g
【0059】
同様にジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(EOTMPTA)、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(POTMPTA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)についても、各々水洗なしの酸価10.0mgKOH/g以上のアクリレートの他に、各々水洗回数を変更し、酸価が0.8mgKOH/g、1.2mgKOH/g、3.0mgKOH/g、10.0mgKOH/gのアクリレートを作製した。
【0060】
製造例2〔ポリオール使用のウレタンアクリレート樹脂(B1)の合成〕
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた四つ口フラスコに、第一工程として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製「ミリオネートMR-400」2核体成分29質量%、3核体以上の成分71質量%)59.4質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン0.1質量部、メトキシハイドロキノン0.02質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を加え、75℃に昇温し、2-ヒドロキシエチルアクリレート37.3質量部を1時間にわたって攪拌下で滴下した。滴下後、75℃で3時間反応させた後、第二工程として、グリセリン3.3質量部を添加し、さらに75℃で反応させ、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで反応を行い、ウレタンアクリレート樹脂(A1)を得た。得られたウレタンアクリレート樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)5438、アクリロイル基濃度3.22mmol/gであった。
【0061】
〔ウレタンアクリレートワニスの作製〕
前記ウレタンアクリレート樹脂(B1)が、固形分60質量%となるようにエチレンオキサイド(平均3モル付加)変性トリメチロールプロパントリアクリレート(MIRAMER M3130、MIWON社製)40質量%に90℃で充分溶解、攪拌させ、ウレタンアクリレートワニスを作製した。
【0062】
〔DAPワニスの作製〕
ジアリルフタレート樹脂(ダイソーダップA、ダイソー社製)固形分39質量%とエチレンオキサイド(平均3モル付加)変性トリメチロールプロパントリアクリレート(MIRAMER M3130、MIWON社製)61質量%を90℃で充分溶解、攪拌させDAPワニスを作製した。
【0063】
〔インキ組成物の製造方法〕
表1~4の組成に従って、実施例1~18、及び比較例1~11のインキを三本ロールミルにて練肉することによって、各種の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を得た。
表1~4の数値は質量%である。
【0064】
〔実施例1〕
実施例1については、酸価15mgKOH/gのDPHA 59質量%、ウレタンアクリレートワニス 10質量%を添加した。
尚、全てのインキ組成物に対し着色成分としてカーボンブラックであるコロンビアンケミカル社製ラーベン1060Ultra 20質量%、粘度及び流動性調整剤として炭酸マグネシウムTT(ナイカイ塩業社製)4質量%、助剤としてポリエチレンワックス1質量%、光重合開始剤としてBASF社製Irgacure907(αアミノアルキルフェノン系開始剤、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、数平均分子量279.4、)3質量%および東京化成社製CHAMARK DEABP(ジエチルアミノベンゾフェノン)2質量%、重合禁止剤として重合禁止剤ベース1(和光純薬工業社製Q1301(N‐ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)1質量%をMIWON社製MIRAMER M300(トリメチロールプロパントリアクリレート)95質量%に溶解させた液状混合物)1質量%を共通に添加した。
【0065】
〔実施例2~18、及び比較例1~11〕
実施例2~18、及び比較例1~11についても、表1~4の配合に従い実施例1と同様の手順にて墨インキを作製した。尚、実施例10については、DAPワニス10質量%を併用した。
【0066】
〔展色物の製造方法〕
この様にして得られた活性エネルギー線硬化型インキ組成物を、簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、インキ0.10mlを使用して、RIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、コートボール紙(王子マテリア社製UFコート、米坪350g/m2)の表面に、200cm2の面積にわたって墨濃度1.8(X-Rite社製SpectroEye濃度計で計測)で均一に塗布されるように展色し、展色物を作製した。なおRIテスターとは、紙やフィルムにインキを展色する試験機であり、インキの転移量や印圧を調整することが可能である。
【0067】
〔UVランプ光源による硬化方法〕
インキ塗布後の展色物に活性エネルギー線である紫外線(UV)照射を行い、インキ皮膜を硬化させた。水冷メタルハライドランプ(出力100W/cm1灯)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(アイグラフィックス社製、コールドミラー付属)を使用し、展色物をコンベア上に載せ、ランプ直下(照射距離11cm)を分速40メートルの速度で通過させることにより、インキ皮膜を硬化させた。
【0068】
〔評価方法1:インキ流動性〕
インキ流動性はスプレッドメーター法(平行板粘度計)によりJIS K5101、5701に則った方法で測定を実施し、水平に置いた2枚の平行板の間に挟まれたインキが、荷重板の自重(115グラム)によって、同心円状に広がる特性を経時的に観察し、60秒後のインキの広がり直径をダイアメーター値(DM[mm])として測定した。本評価項目においてDMが25mm未満となる組成では、印刷機上で壺上がり、インキローラ間の転移不良といった印刷適性面での不良が発現し易くなる。
DMが35mm以上であれば良好とする。
◎:40mm以上
○:35~40mm未満
△:30~35mm未満
×:30mm未満
【0069】
〔評価方法2:展色物の光沢〕
得られた展色物の光沢値を60°光沢計(BYK Garder GmbH製)で測定し、次の4段階で評価した。数値が高い程、光沢が良い事を示す。
光沢値43以上であれば良好とする。
◎:光沢値が50以上
〇:光沢値が43以上50未満
△:光沢値が38以上43未満
×:光沢値が38未満
【0070】
〔評価方法3:印刷適性〕
製造された実施例1~18、比較例1~11の活性エネルギー線硬化型インキについて、オフセット印刷適性および印刷物品質を評価した。紫外線照射装置としてアイグラフィックス社製水冷メタルハライドランプ(出力160W/cm、3灯使用)を搭載したマンローランド社製オフセット印刷機(ローランドR700印刷機、幅40インチ機)を用いて、毎時9000枚の印刷速度にてオフセット印刷を実施した。印刷用紙には王子製紙社製OKトップコートプラス(57.5kg、A判)を使用した。版面に供給される湿し水は、水道水98重量%とエッチ液(FST-700、DIC社製)2重量%を混合した水溶液を用いた。
【0071】
オフセットインキ印刷適性の評価方法としては、まず印刷機の水供給ダイヤルを40(標準水量)にセットし、印刷物濃度が標準プロセス墨濃度1.8(X-Rite社製SpectroEye濃度計で計測)となるようインキ供給キーを操作し、濃度が安定した時点でインキ供給キーを固定した。その後インキ供給キーを固定したままの条件で、水供給ダイヤルを40から55に変更し水供給量を増やした条件で300枚印刷し、300枚後の印刷物の墨濃度を測定した。水供給量を増やした状態においても印刷物の濃度低下が少ないほど、乳化適性に優れ、印刷適性に優れたインキと評価できる。下記の基準に従って活性エネルギー線硬化型インキの印刷適性を評価した。
◎:印刷物の墨濃度が1.7以上であり、オフセット印刷適性は最良である。
〇:印刷物の墨濃度が1.6以上~1.7未満であり、オフセット印刷適性は良好である。
△:印刷物の墨濃度が1.5以上~1.6未満であり、オフセット印刷適性は中位で使用可能なレベルである。
×:印刷物の墨濃度が1.5未満であり、オフセット印刷適性は不良である。
【0072】
【表1】
[図:0001418217000018.jpg]
」
(4)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「光重合性モノマーや光重合性オリゴマーには,重合防止用にMEHQなどの重合禁示剤を100-10000ppm配合しているので,通常の取扱いでは重合は起こりにくい。サンプルは褐色瓶に入れ,直射日光に当たる場所や加熱される場所は避けて貯蔵する。」(第165ページ第1~3行)
(5)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
5a「多くの市販モノマーには、貯蔵中の重合防止のため抑制剤となるp-メトキシフェノールを数ppm加える。禁止と抑制でポリマーを生成することはないが、重合を防ぎモノマーの状態を保つには不可欠である。」(第11ページ第1~3行)
(6)甲第6号証(以下、「甲6」という。)
6a「
[図:0001418217000019.jpg]
[図:0001418217000020.jpg]
[図:0001418217000021.jpg]
」(第3~8ページ)
(7)甲第7号証(以下、「甲7」という。)
7a「
[図:0001418217000022.jpg]
」
3 甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1発明A1
実施例1で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用して得た活性エネルギー線硬化型インキとして「墨顔料としてカーボンブラックを15.0部、
スチレン-アクリル樹脂40.0部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製 ビームセット730)60.0部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製)0.1部及びQ-1301(和光純薬工業(株)製)0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、得た活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を50.0部、
ビームセット730を30部、
メトキノンを0.1部、
及び光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.0部を仕込み、3本ロールミルで常法により調製した、紫外線照射し、硬化する、活性エネルギー線硬化型インキ。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
イ 甲1発明A2
甲1には、実施例2で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用して得た活性エネルギー線硬化型インキとして「墨顔料としてカーボンブラックを15.0部、
スチレン-アクリル樹脂35.0部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製 ビームセット730)65.0部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製)0.1部及びQ-1301(和光純薬工業(株)製)0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、得た活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を50.0部、
ビームセット730を30部、
メトキノンを0.1部、
及び光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.0部を仕込み、3本ロールミルで常法により調製した、紫外線照射し、硬化する、活性エネルギー線硬化型インキ。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
ウ 甲1発明A3
甲1には、実施例3で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用して得た活性エネルギー線硬化型インキとして「墨顔料としてカーボンブラックを15.0部、
スチレン-アクリル樹脂38.5部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製 ビームセット730)61.5部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製)0.1部及びQ-1301(和光純薬工業(株)製)0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、得た活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を50.0部、
ビームセット730を30部、
メトキノンを0.1部、
及び光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.0部を仕込み、3本ロールミルで常法により調製した、紫外線照射し、硬化する、活性エネルギー線硬化型インキ。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
エ 甲1発明A4
甲1には、実施例4で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用して得た活性エネルギー線硬化型インキとして「墨顔料としてカーボンブラックを15.0部、
スチレン-アクリル樹脂43.0部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製 ビームセット730)57.0部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製)0.1部及びQ-1301(和光純薬工業(株)製)0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、得た活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を50.0部、
ビームセット730を30部、
メトキノンを0.1部、
及び光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.0部を仕込み、3本ロールミルで常法により調製した、紫外線照射し、硬化する、活性エネルギー線硬化型インキ。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
オ 甲1発明A5
甲1には、実施例5で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用して得た活性エネルギー線硬化型インキとして「墨顔料としてカーボンブラックを15.0部、
スチレン-アクリル樹脂50.0部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製 ビームセット730)50.0部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製)0.1部及びQ-1301(和光純薬工業(株)製)0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、得た活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を50.0部、
ビームセット730を30部、
メトキノンを0.1部、
及び光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.0部を仕込み、3本ロールミルで常法により調製した、紫外線照射し、硬化する、活性エネルギー線硬化型インキ。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
カ 甲1発明A6
甲1には、比較例1で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用して得た活性エネルギー線硬化型インキとして「墨顔料としてカーボンブラックを15.0部、
ジアリルフタレート樹脂34.5部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製 ビームセット730)65.5部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製)0.1部及びQ-1301(和光純薬工業(株)製)0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、得た活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を50.0部、
ビームセット730を30部、
メトキノンを0.1部、
及び光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.0部を仕込み、3本ロールミルで常法により調製した、紫外線照射し、硬化する、活性エネルギー線硬化型インキ。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
キ 甲1発明B1
甲1には「甲1発明A1の活性エネルギー線硬化型インキをコート紙に塗布し、紫外線照射し、得た印刷物。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
ク 甲1発明B2
甲1には「甲1発明A2の活性エネルギー線硬化型インキをコート紙に塗布し、紫外線照射し、得た印刷物。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
ケ 甲1発明B3
甲1には「甲1発明A3の活性エネルギー線硬化型インキをコート紙に塗布し、紫外線照射し、得た印刷物。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
コ 甲1発明B4
甲1には「甲1発明A4の活性エネルギー線硬化型インキをコート紙に塗布し、紫外線照射し、得た印刷物。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
サ 甲1発明B5
甲1には「甲1発明A5の活性エネルギー線硬化型インキをコート紙に塗布し、紫外線照射し、得た印刷物。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
シ 甲1発明B6
甲1には「甲1発明A6の活性エネルギー線硬化型インキをコート紙に塗布し、紫外線照射し、得た印刷物。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。
(2)甲2に記載された発明
ア 甲2発明1
甲2には実施例2-1のインキとしてとして「墨顔料としてカーボンブラックを15.0部、
石炭酸(フェノール)40.00部、p-クレゾール30.00部、m-クレゾール30.00部から得られたフェノール樹脂100部、及びフェニルグリシジルエーテル150.00部を仕込み、140℃まで昇温し、次いで、トリフェニルホスフィン0.50部を添加し、150℃で4時間撹拌し、-0.08MPaで減圧し、得たインキ用樹脂46.0部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製)56.00部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製、以下同様)0.1部及びQ-1301(和光純薬工業(株)製)0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、得たワニス組成物を50.0部、
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを30.0部、
メトキノンを0.1部、及び
光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.0部を仕込み、3本ロールミルで常法により調製した、紫外線硬化装置に通して硬化するインキ。」の発明が記載されているといえる(摘記2c参照)。
イ 甲2発明2
甲2には「甲2発明1のインキをコート紙に塗布し、紫外線照射し、得た印刷物。」の発明が記載されているといえる(摘記2c参照)。
4 対比・判断
(1)甲1発明A1~甲1発明B6を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲1発明A1~A5との対比
本件特許発明1と甲1発明A1~A5を対比する。
甲1発明A1~A5の「スチレン-アクリル樹脂」は本件特許発明1の「樹脂」に相当する。
甲1発明A1~A5の「ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製 ビームセット730)」及び「ビームセット730」は、本件特許発明1の「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物」及び「(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物」に相当し、甲1発明A1~A6の活性エネルギー線硬化型インキ100g中アクリロイル基の含有量は、甲1発明A1で0.51mol([{60.0×100.0/(40.0+60.0+0.1+0.05)×50/(15.0+50+30+0.1+5.0)+30}×4×100/(15.0+50+30+0.1+5.0)]/466.5)、甲1発明A2で0.53mol([{65.0×100.0/(35.0+65.0+0.1+0.05)×50/(15.0+50+30+0.1+5.0)+30}×4×100/(15.0+50+30+0.1+5.0)]/466.5)、甲1発明A3で0.52mol([{61.5×100.0/(38.5+61.5+0.1+0.05)×50/(15.0+50+30+0.1+5.0)+30}×4×100/(15.0+50+30+0.1+5.0)]/466.5)、甲1発明A4で0.50mol([{57.0×100.0/(43.0+57.0+0.1+0.05)×50/(15.0+50+30+0.1+5.0)+30}×4×100/(15.0+50+30+0.1+5.0)]/466.5)、甲1発明A5で0.47mol([{50.0×100.0/(50.0+50.0+0.1+0.05)×50/(15.0+50+30+0.1+5.0)+30}×4×100/(15.0+50+30+0.1+5.0)]/466.5であるから、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり」を充足する。
甲1発明A1~A5の「重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製)」及び「Q-1301(和光純薬工業(株)製)」は、メトキノンはキノン系化合物であり、Q1301はアルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンであるから(後記第6 2摘記9cの段落0037参照)、本件特許発明1の「光重合禁止剤2種以上」及び「光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上」に相当する。
甲1発明A1~A5の「活性エネルギー線硬化型インキ」は、フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含んでいないから、本件特許発明1の「フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、を」及び「除く」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明A1~A5は、「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤2種以上と、光重合禁止剤2種以上とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物を含み、
活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり、
光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含む、活性エネルギー線硬化型インキ組成物(ただし、フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、を除く。)。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
光重合開始剤が、本件特許発明1では、2種以上であり、チオキサントン系化合物を含むのに対し、甲1発明A1~A5では、1種であり、チオキサントン系化合物を含まない点。
<相違点1-2>
活性エネルギー線硬化型インキ組成物が、本件特許発明1では、ただし、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オンを含むもの、構成単位1
【化1】
[図:0001418217000023.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000024.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000025.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、をいずれも除くと特定されているのに対し、甲1発明A1~A5では、イルガキュア907(2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン)及びスチレン-アクリル樹脂を含む点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点1-2>について検討する。
甲1は、「活性エネルギー線硬化型インキのバインダーとした場合に、該インキの硬化性、耐溶剤性が良好であり、その結果ジアリルフタレート樹脂に代替し得る新規な樹脂を提供すること」を目的(課題)とするところ(摘記1b、【0006】)、甲1には、「本発明の樹脂を含む活性エネルギー線硬化型印刷インキは、ジアリルフタレート樹脂を含むインキと同様に硬化性、光沢に優れる。また、本発明の樹脂の耐溶剤性はジアリルフタレート樹脂の耐溶剤性よりも優れる。」とのがあり(摘記1b、【0011】)、ここで、本発明の樹脂は、構造単位1及び構造単位2を含む樹脂である。
また、甲1の請求項1~10のいずれにおいても、「構造単位1及び構造単位2を含む、樹脂を含むもの」が含有成分として規定され、甲1に記載される全ての実施例が、「構造単位1及び構造単位2を含む、樹脂を含むもの」としてスチレン-アクリル樹脂を必ず含んでいる。
そうすると、甲1は、上記課題を解決するための手段として「構造単位1及び構造単位2を含む、樹脂を含むもの」を配合することを開示していると理解できるのであって、そうであれば、甲1発明A1~A5の活性エネルギー線硬化型インキから「構造単位1及び構造単位2を含む、樹脂を含むもの」であるスチレン-アクリル樹脂を除くことなど動機づけられず、むしろ阻害要因が存在するといえる。
そして、このことは、他の証拠をみても覆らない。
(ウ)甲1発明A6との対比
本件特許発明1と甲1発明A6を対比する。
甲1発明A6の「ジアリルフタレート樹脂」は本件特許発明1の「樹脂」に相当する。
甲1発明A6の「ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製 ビームセット730)」及び「ビームセット730」は、本件特許発明1の「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物」及び「(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物」に相当し、甲1発明A6の活性エネルギー線硬化型インキ100g中アクリロイル基の含有量は、0.53mol([{65.5×100.0/(34.5+65.5+0.1+0.05)×50/(15.0+50+30+0.1+5.0)+30}×4×100/(15.0+50+30+0.1+5.0)]/466.5)であるから、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり」を充足する。
甲1発明6の「重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製)」及び「Q-1301(和光純薬工業(株)製)」は、メトキノンはキノン系化合物であり、Q1301はアルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンであるから(後記第6 2摘記9cの段落0037参照)、本件特許発明1の「光重合禁止剤2種以上」及び「光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上」に相当する。
甲1発明A6の「活性エネルギー線硬化型インキ」は、構成単位1
【化1】
[図:0001418217000026.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000027.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000028.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに、フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含んでいないから、本件特許発明1の「ただし」及び「構成単位1
【化1】
[図:0001418217000029.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000030.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000031.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、をいずれも除く」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明6は、「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤2種以上と、光重合禁止剤2種以上とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物を含み、
活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり、
光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含む、活性エネルギー線硬化型インキ組成物(ただし、構成単位1
【化1】
[図:0001418217000032.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000033.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000034.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、をいずれも除く。)。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-3>
光重合開始剤が、本件特許発明1では、2種以上であり、チオキサントン系化合物を含むのに対し、甲1発明A6では、1種であり、チオキサントン系化合物を含まない点。
<相違点1-4>
活性エネルギー線硬化型インキ組成物が、本件特許発明1では、ただし、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オンを含むものを除くと特定されているのに対し、甲1発明A6では、イルガキュア907(2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン)を含む点。
(エ)相違点についての検討
<相違点1-3>及び<相違点1-4>について
甲1には甲1に記載の活性エネルギー線硬化型インキにおいて光重合開始剤を2種以上併用できることが記載されており(摘記1b参照)、活性エネルギー線硬化型インキに含まれる光重合開始剤として2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン以外の種々のものが列記されているが(摘記1b参照)、光重合開始剤としてチオキサントン系化合物は列記されておらず、甲1発明A6は、甲1において比較例に相当するものであるから、そのような甲1発明A6において光重合開始剤を2種以上として、さらに、チオキサントン系化合物を含むものとすると共に、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン以外の種々のものを含むものととして、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オンを含むものを除くものとする動機付けがあるとはいえない。
また、他の証拠の記載をみても、甲1発明A6において光重合開始剤を2種以上として、さらに、チオキサントン系化合物を含むものとして、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン以外の種々のものを含むものとして、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オンを含むものを除くものとする動機付けとなる記載はない。
(オ)本件特許発明1の効果について
本件特許明細書の実施例の記載からみて、本件特許発明1は、光重合開始剤を2種以上として、さらに、チオキサントン系化合物を含むものとすることにより、高速印刷性及び耐溶剤性が良好であるという効果を奏するものであり、そのようは効果は、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。
(カ)特許異議申立人の主張及び当審の判断について
特許異議申立人は、チオキサントン系化合物を含む2種以上の光重合開始剤を用いる構成としたが、かかる構成は当業者に容易想到であって格別顕著な効果を奏するものではないことが明らかであること、及び、樹脂の選択は単なる設計事項であるか、当業者が適宜なし得ることであり、甲1樹脂を除いた構成によって格別顕著な効果を奏することも何ら示されていないことを主張する。
しかし、前記(オ)で検討したとおり、本件特許発明1により奏される効果は、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえるし、前記(イ)で検討したとおり、甲1発明A1~A5から甲1樹脂を除いた構成にする動機付けがあるとはいえない以上、甲1樹脂を除いた構成によって格別顕著な効果を奏することも何ら示されていないとしても、そのような構成とすることが設計事項であるとはいえない。
(キ)小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点1-1>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲7に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明2~10
本件特許発明2~10は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明A1~A5との<相違点1-2>、あるいは、前記本件特許発明1と甲1発明A6との<相違点1-3>及び<相違点1-4>と同じの相違点を有するものであり、本件特許発明2~10は、甲1に記載された発明及び甲2~甲7に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)甲2発明1及び2を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲2発明1との対比
本件特許発明1と甲2発明1を対比する。
甲2発明1の「ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製)」は本件特許発明1の「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物」及び「(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物」に相当する。
甲2発明1の「重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製、以下同様)」及び「Q-1301(和光純薬工業(株)製)」は、メトキノンはキノン系化合物であり、Q1301はアルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンであるから(後記第6 2摘記9c参照)、本件特許発明1の「光重合禁止剤2種以上」及び「光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上」に相当する。
甲2発明1の「紫外線硬化装置に通して硬化するインキ」は、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化型インキ組成物」に相当し、甲2発明1の「紫外線硬化装置に通して硬化するインキ」は、構成単位1
【化1】
[図:0001418217000035.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000036.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000037.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むものを含んでいないから、本件特許発明1の「ただし」及び「構成単位1
【化1】
[図:0001418217000038.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000039.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000040.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの」、「を」及び「除く」に相当する。
甲2発明1のインキ組成物中100g中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量は0.49mol([{56×100/(46+56+0.1+0.05)×50/(15.0+50.0+30.0+0.1+5.0)+30.0}×4×100/(15.0+50.0+30.0+0.1+5.0)]/466.5)であるから、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり」を充足する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明1は、「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤と、光重合禁止剤2種以上とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物を含み、 活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり、
光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含む、活性エネルギー線硬化型インキ組成物(ただし、
構成単位1
【化1】
[図:0001418217000041.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000042.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000043.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含むを除く。)。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
光重合開始剤が、本件特許発明1では、2種以上であり、チオキサントン系化合物を含むのに対し、甲2発明1では、1種であり、チオキサントン系化合物を含まない点。
<相違点2-2>
活性エネルギー線硬化型インキ組成物が、本件特許発明1では、ただし、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オンを含むもの、並びに、フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、をいずれも除くと特定されているのに対し、甲2発明1では、イルガキュア907(2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン)及びスチレン-アクリル樹脂、及び、石炭酸(フェノール)40.00部、p-クレゾール30.00部、m-クレゾール30.00部から得られたフェノール樹脂100部、及びフェニルグリシジルエーテル150.00部を仕込み、140℃まで昇温し、次いで、トリフェニルホスフィン0.50部を添加し、150℃で4時間撹拌し、-0.08MPaで減圧し、得たインキ用樹脂を含む点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点2-2>について検討する。
甲2は、「ジアリルフタレート樹脂に代替可能な樹脂であり、インキのバインダーとした場合に、インキのミスチング性、流動性が良好とすることができる樹脂を提供すること」を目的(課題)とするところ(摘記2b、【0006】)、甲2には、「本発明のインキ用樹脂を用いて製造したインキは、耐ミスチング性、流動性に優れる。また、本発明のインキ用樹脂は、分子内に水酸基、及び場合により重合性炭素-炭素二重結合を有するため、各種変性又は化学反応に供することができる。」とのがある(摘記2b、【0010】)。
また、甲2の請求項1~5のいずれにおいても、「フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂」が含有成分として規定され、甲2に記載される全ての実施例が、「フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂」としてスチレン-アクリル樹脂を必ず含んでいる。
そうすると、甲2は、上記課題を解決するための手段として「構造単位1及び構造単位2を含む、樹脂を含むもの」を配合することを開示していると理解できるのであって、そうであれば、甲2発明1の活性エネルギー線硬化型インキから構造単位1及び構造単位2を含む、樹脂を含むもの」であるスチレン-アクリル樹脂を除くことなど動機づけられず、むしろ阻害要因が存在するといえる。
そして、このことは、他の証拠をみても覆らない。
(ウ)本件特許発明1の効果について
本件特許発明1の活性エネルギー線硬化型インキ組成物は、保存安定性、硬化性(高速印刷性)、耐溶剤性のいずれも良好であるという効果を奏するものであり、そのような効果は、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。
(エ)特許異議申立人の主張及び当審の判断について
特許異議申立人は、チオキサントン系化合物を含む2種以上の光重合開始剤を用いる構成としたが、かかる構成は当業者に容易想到であって格別顕著な効果を奏するものではないことが明らかであること、及び、樹脂の選択は単なる設計事項であるか、当業者が適宜なし得ることであり、甲2樹脂を除いた構成によって格別顕著な効果を奏することも何ら示されていないことを主張する。
しかし、前記(ウ)で検討したとおり、本件特許発明1により奏される効果は、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえるし、前記(イ)で検討したとおり、甲2発明1から甲2樹脂を除いた構成にする動機付けがあるとはいえない以上、甲2樹脂を除いた構成によって格別顕著な効果を奏することも何ら示されていないとしても、そのような構成とすることが設計事項であるとはいえない。
(オ)小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点2-1>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~甲7に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明2~10
本件特許発明2~10は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲2発明1との<相違点2-2>と同じの相違点を有するものであり、本件特許発明2~10は、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~甲7に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第6 前記第4における理由3(拡大先願)について
1 甲号証について
甲第9号証:特願2021-49271号(特開2022-117370号公報)
2 甲第9号証(以下、「甲9」という。)の手続補正前の記載について
9a「【請求項1】
ロジン変性フェノール樹脂、溶媒及び又は植物油又はその脂肪酸エステル、アクリルエステルモノマーからなる活性エネルギー線硬化性インキ組成物。
【請求項2】
ロジン変性フェノール樹脂を溶媒及び又は植物油又はその脂肪酸エステルで加熱溶解させ樹脂軟化点を50℃~120℃に下げ、重合禁止剤を添加しアクリルエステルモノマーを溶解させてなる請求項1記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物。
【請求項3】
0.1~15重量%のラジカル重合性開始剤を含む請求項1~2いずれか記載の活性エネルギー線硬化性印刷インキ組成物。
【請求項4】
ロジン変性フェノールの軟化点120℃~220℃の固形樹脂を溶媒及び又は植物油又はその脂肪酸エステルで加熱溶解させ樹脂軟化点を50℃~120℃に下げ、重合禁止剤を添加しアクリルエステルモノマーで溶解させてなる請求項1~3いずれか記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物を得る方法。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物を印刷硬化させ得られる印刷物。」
9b「【0023】
次に、ラジカル重合開始剤としては、光開裂型と水素引き抜き型に大別して例示することができる。
前者の例として、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパンー1-オン(イルガキュア907:チバスペシャルティケミカルズ社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、(イルガキュア369:チバスペシャルティケミカルズ社製)、ベンジルメチルケタール(イルガキュア651:チバスペシャルティケミカルズ社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバスペシャルティケミカルズ社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(ダロキュア1173:メルク社製)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(ダロキュア1116:メルク社製)、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、4-(2-アクリロイル-オキシエトキシ)フェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトン、ジエトキシアセトフェノン(ZLI3331:チバスペシャルティケミカルズ社製)、エサキュアーKIP100(ラムベルティ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド(BAPO1:チバスペシャルティケミカルズ社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BAPO2:チバスペシャルティケミカルズ社製)、BTTB(日本油脂(株)製)、CGI1700(チバスペシャルティケミカルズ社製等が例示される。
・・・
【0028】
重合禁止剤としては、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、P-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、、o-イソプロピルフェノール、等が使用される。」
9c「【0033】
次に具体例により本発明を説明する。例中「部」とは重量部を示す。以下具体例により示す。
(樹脂実施例R1)
ロジン変性フェノール樹脂の合成例
(レゾール型フェノール樹脂の合成)攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに石炭酸94部、37%ホルマリン203部、キシレン250部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら加熱攪拌し、50℃で水酸カルシウム2.0部を水10部に分散させて、その分散液を添加し95℃に昇温し、同温度で3.5時間反応させた。その後、冷却し、硫酸で中和、水洗した。レゾールキシレン溶液層と水層を静置分離した。このレゾール型フェノール樹脂をレゾ-ル液(樹脂A1)とする。
(ロジンフェノ-ル樹脂の合成)攪拌機、水分離器付き還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに窒素ガスを吹き込みながら、ロジン70部を仕込み、加熱攪拌し、200℃でレゾール液24部(仕込みは固形分換算)を滴下しながら約2時間かけて仕込み、その間水とキシレンを回収しながら反応させ、仕込み終了後、昇温し250℃でペンタエリスリトール6.0部を仕込み12時間反応させ、酸価が25以下になったので汲み出した。本樹脂の重量平均分子量は2.5万であった。(樹脂R1)
注)*ロジンと反応するレゾ-ル液は固形分の重量部を示す。
*重量平均分子量は東ソー(株)製ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(HLC8020)で検量線用標準サンプルはポリスチレンで測定した。尚、実施例樹脂R2、樹脂4についてはキシレン回収後(PTS/水=1/1の溶解液)を徐々に仕込み以下表1のように合成した。
PTS:P‐トルエンスルフォン酸である。
【0034】
【表1】
[図:0001418217000044.jpg]
【0035】
ワニス製造実施例(樹脂ワニスの作成)
攪拌機、水分離冷却管、温度計付き四つ口フラスコに樹脂(R1)45部、ジエチルフタレート20部を仕込み、窒素気流下で220℃1時間加熱溶解後撹拌後110℃に冷却しt‐BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)0.1部、Q1301を0.1部、DTMPTA(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)34.8部を仕込み30分撹拌後粘度を150~200Pa・s/25℃に調製し、汲み出した(実施例ワニスV1)。以下、同様に表2実施例ワニスV2~V4を作製した。
【0036】
比較例ワニス(CV1)の製造例(活性エネルギー線硬化型ワニス)
攪拌機付き、水分離冷却管付き、温度計付き四つ口フラスコに、ダップトートDT170(東都化成(株)製ジアルルフタレート樹脂)30部、DTMPTA(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)69.8部、t-BHQ0.1部、Q1301、0.1部を仕込み、空気気流下で100℃で30分~1時間で溶解した。コーンプレート型粘度計で粘度測定したところ、152Pa・s/25℃であった。 以下同様に、表2に示した処方で、比較例ワニスCV2を作成した。
【0037】
【表2】
[図:0001418217000045.jpg]
【0038】
実施例硬化性インキ(インキ1)の製造例
紅顔料としてカーミン6B(東洋インキ製造(株)製紅顔料)18部、ワニスV1を49部、DTMPTAを13.9部、DPHAを13.9部4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)を2.5部、イルガキュア907を2.5部、t‐BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)0.1部、Q1301を0.1部を仕込み、三本ロ-ルミルで常法により製造した(実施例インキ1)。
尚、インキはタック値7~8/25℃に調製した。以下表3、に示した処方でインキ2~4、E5を製造した。表3尚、インキE5は電子線硬化性インキの例である。
【0039】
比較例紫外線硬化性インキ(インキC1)
カーミン6Bを18部、ワニスCV1を49部、DTMPTAを27.8部、EABを2.5部、I907を2.5部、t-BHQ0.1部、Q1301を0.1部を仕込み、三本ロールミルで常法により作成した。尚、インキはタック値7~8/25℃に調製した。
【0040】
以下同様に、表3に示した処方で、比較例紫外線硬化性インキを製造した。
【0041】
比較例電子線硬化性インキ(インキCE3)
カーミン6Bを18部、ワニスVCV1を54部、DPHA27.8重量部、t‐BHQ0.1部、Q13010.1部を仕込み、三本ロ-ルミルで常法により作成した。尚、インキはタック値7~8/25℃に調製した。
【0042】
【表3】
[図:0001418217000046.jpg]
【0043】
硬化性インキの性状評価
*水幅:リスロン226(コモリコーポレーション(株)製オフセット印刷機)を用いて三菱製紙(株)製三菱特両アート紙(斤量90Kg/連)に毎時10000枚の印刷速度で印刷を行い、水元ローラーを調整する水ダイヤルを可変する事により、地汚れが発生する水幅下限値、インキが過剰乳化する事により生じるウオーターマーク発生点を水幅上限値とし、幅が広いのを良好とする。水元ローラーの水ダイヤルは0~10まであり、0は水を全く出さないダイヤル、10は過剰に出したダイヤルで、通常は4をノーマルダイヤルとする。最初にノーマルダイヤルの4で印刷し、印刷濃度安定後、徐々に水ダイヤルを下げ地汚れダイヤルを確認後、直ちにノーマルダイヤル4に戻ししその後徐々に水ダイヤルを上げていく。
【0044】
*汚れ回復:上記、水幅試験で地汚れ発生から直ちに水ダイヤルを4にし、地汚れが消えた枚数で少ない枚数を良好とする。
【0045】
*硬化性試験:上記リスロン226で印刷後、紫外線照射については、USHIO(株)製照射装置UVC-2535(120W/cm超高圧メタハラランプ3灯、コンベヤースピード100m/min)を使用し、表3のインキ組成物の上記印刷物を硬化させたところ実施例、比較例のインキ組成物の印刷物は同様に硬化していた。また電子線照射については、表の比較例6、実施例10のインキ組成物の上記印刷物を印刷後取り出し、米国ESI(株)製低エネルギー電子線照射装置(加圧電圧175KV、酸素濃度500ppmの窒素置換した雰囲気)を用い3Mraで照射したところ、比較例、実施例のインキ組成物の印刷物は同様に硬化していた。」
3 甲9に記載された発明
(1)甲9発明A1
甲9には実施例のインキ1として「紅顔料としてカーミン6B(東洋インキ製造(株)製紅顔料)18部、
ロジン変性フェノール樹脂R1を45部、ジエチルフタレート20部、t‐BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)0.1部、Q1301(アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン)0.1部、DTMPTA(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)34.8部から調製したワニスV1を49部、
DTMPTAを13.9部、
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を13.9部、
4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)を2.5部、
イルガキュア907を2.5部、
t‐BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)0.1部、
Q1301を0.1部を仕込み、三本ロ-ルミルで常法により製造した、紫外線照射し、硬化する、硬化性インキ。」の発明が記載されているといえる(摘記9b参照)。
(2)甲9発明A2
甲9には比較例のインキC1として「紅顔料としてカーミン6B(東洋インキ製造(株)製紅顔料)18部、
ダップトートDT170(東都化成(株)製ジアルルフタレート樹脂)を30部、t‐BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)0.1部、Q1301を(アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン)0.1部、DTMPTA(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)69.8部から調製したワニスCV1を49部、
DTMPTAを27.8部、
4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)を2.5部、
イルガキュア907を2.5部、
t‐BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)0.1部、
Q1301を0.1部を仕込み、三本ロ-ルミルで常法により製造した、紫外線照射し、硬化する、硬化性インキ。」の発明が記載されているといえる(摘記9b参照)。
(3)甲9発明B1
甲9には「甲9発明A1の紫外線照射し、硬化する、硬化性インキを、三菱製紙(株)製三菱特両アート紙に印刷し、紫外線照射し、硬化させて得た印刷物。」の発明が記載されているといえる(摘記9c参照)。
(4)甲9発明B2
甲9には「甲9発明A2の紫外線照射し、硬化する、硬化性インキを、三菱製紙(株)製三菱特両アート紙に印刷し、紫外線照射し、硬化させて得た印刷物。」の発明が記載されているといえる(摘記9c参照)。
4 対比・判断
(1)本件特許発明1
ア 甲9発明A1及びA2との対比
本件特許発明1と甲9発明A1及びA2を対比する。
甲9発明A1及びA2の「DTMPTA(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)」及び甲9発明A1の「DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)」は、本件特許発明1の「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物」及び「(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物」に相当し、甲9発明A1及びA2のインキ組成物中100g中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量は、甲9発明A1で0.41mol((34.8×4/466.5)×49/(18+49+13.9+13.9+2.5+2.5+0.1+0.1)+13.9×4/466.5+13.9×6/578.5)であり、甲9発明A2で0.53mol((69.8×4/466.5)×49/(18+49+13.9+13.9+2.5+2.5+0.1+0.1)+13.9×4/466.5+13.9×6/578.5)であるから、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり」を充足する。
甲9発明A1及びA2の「t-BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)」及び「Q1301(アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン)」は、重合禁止剤であるから(摘記9b参照)、本件特許発明1の「光重合禁止剤2種以上」及び「光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上」に相当する。
甲9発明A1及びA2の「4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)」及び「イルガキュア907」は、ラジカル重合開始剤であるから(摘記8b参照)、本件特許発明1の「光重合開始剤2種以上」に相当する。
甲9発明A1及びA2の「紫外線照射し、硬化する、硬化性インキ」は本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化型インキ組成物」に相当する。
甲9発明A1及びA2の「紫外線照射し、硬化する、硬化性インキ」は、構成単位1
【化1】
[図:0001418217000047.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000048.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000049.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むものを含まないから、本件特許発明1の「(ただし」及び「構成単位1
【化1】
[図:0001418217000050.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000051.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000052.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、をいずれも除く。)」を充足する。
そうすると、本件特許発明1と甲9発明A1及びA2は、「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤2種以上と、光重合禁止剤2種以上とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物を含み、
活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり、
光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含む、活性エネルギー線硬化型インキ組成物(ただし、構成単位1
【化1】
[図:0001418217000053.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000054.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000055.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、をいずれも除く。)。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点9-1>
光重合開始剤が、本件特許発明1はチオキサントン系化合物を含むのに対し、甲9発明A1及びA2はチオキサントン系化合物を含まない点。
<相違点9-2>
活性エネルギー線硬化型インキ組成物が、本件特許発明1では、「ただし、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オンを含むものを除く」と特定されているのに対し、甲9発明A1及びA2ではイルガキュア907(2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン)を含む点。
(イ)相違点についての検討
<相違点9-1>及び<相違点9-2>は実質的な相違点である。
そして、<相違点9-1>及び<相違点9-2>は課題解決のための具体化手段における微差、すなわち、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないものとはいえない。
イ 小括
本件特許発明1は、甲9の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。
(2)本件特許発明2~8
本件特許発明2~8は、本件特許発明1を引用してさらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲9発明A1及びA2との<相違点9-1>及び<相違点9-2>と同じ相違点を有するものであり、本件特許発明2~8は、甲9の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人の主張のうちは取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は以下のとおりである。
理由1(進歩性)本件特許の請求項1、2、4~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第3号証:特開2018-193453号公報
甲第4号証:「UV・EB硬化技術」昭和57年10月30日発行)
甲第5号証:「高分子技術レポート」 Vol.1 歯科材料モノマーの重合の基礎(2009年11月5日発行)
甲第6号証:光硬化型樹脂カタログ(東亜合成株式会社;20 18年11月)
甲第7号証:製品名「SR355J NS(ジトリメチロールプロパン テトラアクリレート)」安全データシート(SARTOMER;輸入者 アルケマ株式会社;2021年5月31日)
理由2(拡大先願)請求項1~8に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者、またこの出願時に、この出願の出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
甲第8号証:特開2022-151464号公報
理由3(サポート要件)本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件請求項1~8に係る特許発明1~8においては、「光重合禁止剤2種以上とを含む」こと(上記構成1D)及び「光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含む、」こと(上記1H)を必須の構成とするところ、本件特許明細書には、ニトロソ系化合物(Q-1301)とフェノール系化合物(TBHQ)との組合せ(実施例1~9、17~28,31~32参照)、ニトロソ系化合物(Q-1301)と、フェノール系化合物(MQ、ノンフレックスアルバ)、キノン系化合物(キノパワーNQI、キノパワー20)、又はピペリジン系化合物(フェノチアジン、ポリストップ7300、HO-TEMPO)との組合せ(実施例10~16参照)などが記載されているものの、「ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群」より選択される、あらゆる任意の2種以上の重合禁止剤の組合せにより特許発明1~8の課題を解決し得ることは記載されていない。
したがって、特許発明1~8に係る本件請求項1~8に記載の発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、本件請求項1~8の記載は、いわゆるサポート要件(特許法第36条第6項第1号)に違反する。
第8 前記第7における理由1(進歩性)について
1 甲号証について
前記第7の甲第3号証~甲第7号証
2 甲号証の記載について
甲第3号証~甲第7号証の記載は、前記第5 2(3)~(7)のとおり
3 甲3に記載された発明
甲3には実施例9の活性エネルギー線硬化型インキとして「ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート混合物(DPHA)59質量%、ジアリルフタレート樹脂(ダイソーダップA、ダイソー社製)を含むDAPワニス10質量%、カーボンブラック ラーベン1060Urtla20質量%、炭酸マグネシウムTT4質量%、ポリエチレンワックス1質量%、重合禁止剤(Q1301)1質量%、光重合開始剤(CHEMARK DEABP)2質量%及び光重合開始剤(Irgacure907)3質量%からなり、紫外線照射を行い、硬化する活性エネルギー線硬化型インキ。」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる(摘記3b参照)。
4 対比・判断
(1)本件特許発明1
ア 甲3発明との対比
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明の「ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート混合物(DPHA)」は、本件特許発明1の「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物」及び「(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物」に相当する。
甲3発明の「ジアリルフタレート樹脂(ダイソーダップA、ダイソー社製)を含むDAPワニス」は本件特許発明1の「樹脂」に相当する。
甲3発明の「重合禁止剤(Q1301)」は、Q1301はアルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンであるから(前記第2 2摘記9c参照)、本件特許発明1の「光重合禁止剤」及び「光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上」に相当する。
甲3発明の「光重合開始剤(CHEMARK DEABP)」及び「光重合開始剤(Irgacure907)」は本件特許発明1の「光重合開始剤2種以上」に相当する。
甲3発明の「紫外線照射を行い、硬化する活性エネルギー線硬化型インキ」は、構成単位1
【化1】
[図:0001418217000056.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000057.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000058.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むものを含まないから、本件特許発明1の「(ただし」及び「構成単位1
【化1】
[図:0001418217000059.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000060.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000061.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、をいずれも除く。)」を充足する。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明は、「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤2種以上と、光重合禁止剤とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物を含み、
光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含む、活性エネルギー線硬化型インキ組成物(ただし、
構成単位1
【化1】
[図:0001418217000062.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000063.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000064.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、をいずれも除く。)。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1は光重合禁止剤2種以上含むのに対し、甲3発明は光重合禁止剤2種以上含まない点。
<相違点3-2>
本件特許発明1は、活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであるのに対し、甲3発明は、活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであるか不明である点。
<相違点3-3>
光重合開始剤が、本件特許発明1はチオキサントン系化合物を含むのに対し、甲3発明はチオキサントン系化合物を含まない点。
<相違点3-4>
活性エネルギー線硬化型インキ組成物が、本件特許発明1では、ただし、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オンを含むものを除く特定されているのに対し、甲3発明ではイルガキュア907(2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン)を含む点。
イ 相違点についての検討
<相違点3-1>について
甲1には、甲1に記載のジトリメチロールプロパンテトラアクリレートのような光重合性モノマーを含む活性エネルギー線硬化型インキにおいて、また、甲2には、甲2に記載のジトリメチロールプロパンテトラアクリレートような光重合性モノマーを含む紫外線硬化装置に通して硬化するインキにおいて、重合禁止剤としてQ1301とともにメトキノンを含むことが、記載されている(摘記1b、2b参照)。
しかし、甲3には甲3発明の活性エネルギー線硬化型インキが光重合禁止剤を2種以上含むことは記載も示唆もされていない以上、甲1及び甲2の前記記載をみても、甲3発明の活性エネルギー線硬化型インキにおいて光重合禁止剤を2種以上含むものとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲4~甲7にも甲3発明の活性エネルギー線硬化型インキにおいて光重合禁止剤を2種以上含むものとする動機付けとなる記載はない。
<相違点3-2>について
甲3発明の活性エネルギー線硬化型インキにおけるジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート混合物(DPHA)が2成分の混合割合が不明であるから、その(メタ)アクリロイル基の含有量は不明である以上、甲3発明の活性エネルギー線硬化型インキにおいて、活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであるものとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲1には活性エネルギー線硬化型インキにおいて、甲2には紫外線硬化装置に通して硬化するインキにおいて、活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであるものが、記載されているが(前記(1)ア(ア)及び(2)ア(ア)参照)、前記のとおり、甲3発明の活性エネルギー線硬化型インキにおける(メタ)アクリロイル基の含有量は不明であり、甲3には甲3発明の活性エネルギー線硬化型インキ(メタ)アクリロイル基の含有量に着目する記載がない以上、甲3発明の活性エネルギー線硬化型インキにおいて、活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであるものとする動機付けがあるとはいえない。
そして、甲4~甲7にも甲3発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであるものとする動機付けとなる記載はない。
ウ 本件特許発明1の効果について
本件特許明細書の実施例の記載からみて、活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであることにより、また、光重合開始剤としてチオキサントン系化合物を含むことにより、硬化性(高速印刷性)及び耐溶剤性において優れた効果を奏するものであり、そのような効果は、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。
エ 小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点3-3>及び<相違点3-4>について検討するまでもなく、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲2及び甲4~甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)本件特許発明2~8
本件特許発明2~8
は、本件特許発明1を引用してさらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲3発明との<相違点3-1>及び<相違点3-2>と同じ相違点を有するものであって、<相違点3-1>及び<相違点3-2>については前記(1)イで検討したとおりであるから、本件特許発明2~8は、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲2及び甲4~甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第9 前記第7の理由2(拡大先願)について
1 甲号証について
前記第7の甲第8号証
2 甲第8号証(以下、「甲8」の記載について
8a「【請求項1】
(C0~C4のアルキル)安息香酸、多価アルコール、重合ロジン及びまたはマレイン化(フマル化)ロジンを反応せしめて得られるアルキッド樹脂を重合禁止剤、アクリルエステルモノマーで溶解してなる活性エネルギー線硬化性インキ組成物。
【請求項2】
さらにロジン及び又は多塩基酸を含む請求項1記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物。
【請求項3】
さらにアルキッド樹脂を溶媒及び又は植物油又はその脂肪酸エステルで加熱溶解させ、さらに重合禁止剤、アクリルエステルモノマーで溶解してなる請求項1~2の活性エネルギー線硬化性インキ組成物。
【請求項4】
0.1~15重量%のラジカル重合性開始剤を含む請求項1~3いずれか記載の活性エネルギー線硬化性印刷インキ組成物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物を印刷硬化させ得られる印刷物。」
8b「【0025】
重合禁止剤としては、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、P-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、o-イソプロピルフェノール、等が使用される。
・・・
【0027】
次に、ラジカル重合開始剤としては、光開裂型と水素引き抜き型に大別して例示することができる。前者の例として、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパンー1-オン(イルガキュア907:チバスペシャルティケミカルズ社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、(イルガキュア369:チバスペシャルティケミカルズ社製)、ベンジルメチルケタール(イルガキュア651:チバスペシャルティケミカルズ社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバスペシャルティケミカルズ社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(ダロキュア1173:メルク社製)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(ダロキュア1116:メルク社製)、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、4-(2-アクリロイル-オキシエトキシ)フェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトン、ジエトキシアセトフェノン(ZLI3331:チバスペシャルティケミカルズ社製)、エサキュアーKIP100(ラムベルティ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド(BAPO1:チバスペシャルティケミカルズ社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BAPO2:チバスペシャルティケミカルズ社製)、BTTB(日本油脂(株)製)、CGI1700(チバスペシャルティケミカルズ社製等が例示される。
【0028】
[図:0001418217000065.jpg]
-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、2,4ジ
[図:0001418217000066.jpg]
-ジメチルアミノアセトフェノン等のジアルキルアミノアリールケトン系開始剤、チオキサントン、キサントン系開始剤等が例示される。これらの単独または適宣組み合わせにより用いる事も出来る。これらの開始剤は組成物中に0.1~30重量%の範囲で用いる事が出来るが、好ましくは1~15重量%の範囲で用いる事が出来る。」
8c「【0037】
尚、基材としては北越製紙(株)製マリコート、ポリエチコート紙、アルミコート紙等のコートボール紙、三菱製紙(株)製特菱アート紙、上質紙等の薄紙コート紙、合成紙、プラスチックフィルム、金属板等が使用される。
【実施例】
【0038】
次に具体例により本発明を説明する。例中「部」とは重量部を示す。以下具体例により示す。
(樹脂実施例R1)
重合ロジン、マレイン化ロジン変性樹脂の合成例とワニス化
安息香酸35.2部、TMP(トリメチローリプロン)21.2部、キシレンを攪拌機、水分離器付き還流冷却器温度計付4つ口フラスコに仕込み、窒素ガスを吹き込みながら加熱攪拌しその後200℃~250℃で酸価値が10以下になるまで反応させ次に180℃で重合ロジン43.6部を仕込み昇温250℃で反応させ酸価9.5で減圧脱キシレンをしながら180℃で脱キシレンをし、樹脂R1としてくみ出す。もしくは冷却し110℃でt-BHQ0.3部、Q1301を0.3部、DPHA214部を仕込み溶解後溶解させくみ150~200Pa・s/25℃に調製し、汲み出した(実施例ワニスV1)。出す。
【0039】
以下、同様に表1実施例樹脂R2~R6、ワニスV2~V6を作製した。
【表1】
[図:0001418217000067.jpg]
【0040】
比較例ワニス(CV1)の製造例(活性エネルギー線硬化型ワニス)
攪拌機付き、水分離冷却管付き、温度計付き四つ口フラスコに、ダップトートDT170(東都化成(株)製ジアルルフタレート樹脂)30部、t-BHQ0.1部、Q1301、0.1部、DTMPTA(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)69.8部、を仕込み、空気気流下で100℃で30分~1時間で溶解した。コーンプレート型粘度計で粘度測定したところ、152Pa・s/25℃であった。 以下同様に、表1に示した処方で、比較例ワニスCV2を作成した。
【0041】
実施例硬化性インキ(Ink1)の製造例
紅顔料としてカーミン6B(東洋インキ製造(株)製紅顔料)18部、ワニスV1を49部、t-BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)0.1部、Q1301を0.1部、DTMPTAを13.9部、DPHAを13.9部4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)を2.5部、イルガキュア907を2.5部、を仕込み、三本ロ-ルミルで常法により製造した。インキはタック値7~8/25℃に調製した。(実施例Ink1)以下表2、に示した処方でInk2~5、InkE6を製造した。表2に記載する。尚、InkE6は電子線硬化性インキの例である。
【0042】
【表2】
[図:0001418217000068.jpg]
【0043】
比較例紫外線硬化性インキ(インキC1)
カーミン6Bを18部、ワニスCV1を49部、t-BHQ0.1部、Q1301を0.1部、DTMPTAを27.8部、EABを2.5部、I907を2.5部仕込み、三本ロ-ルミルで常法により作成した。尚、インキはタック値7~8/25℃に調製した。
【0044】
以下同様に、表2に示した処方で、比較例紫外線硬化性インキを製造した。
【0045】
比較例電子線硬化性インキ(CE3)カーミン6Bを18部、ワニスVCV1を54部、t―BHQ0.1部、Q1301を0.1部、DTMPTA27.8重量部を仕込み、三本ロ-ルミルで常法により作成した。尚、インキはタック値7~8/25℃に調製した。
【0046】
硬化性インキの性状評価
*水幅:リスロン226(コモリコーポレーション(株)製オフセット印刷機)を用いて三菱製紙(株)製三菱特両アート紙(斤量90Kg/連)に毎時10000枚の印刷速度で印刷を行い、水元ローラーを調整する水ダイヤルを可変する事により、地汚れが発生する水幅下限値、インキが過剰乳化する事により生じるウオーターマーク発生点を水幅上限値とし、幅が広いのを良好とする。水元ローラーの水ダイヤルは0~10まであり、0は水を全く出さないダイヤル、10は過剰に出したダイヤルで、通常は4をノーマルダイヤルとする。最初にノーマルダイヤルの4で印刷し、印刷濃度安定後、徐々に水ダイヤルを下げ地汚れダイヤルを確認後、直ちにノーマルダイヤル4に戻ししその後徐々に水ダイヤルを上げていく。
【0047】
*汚れ回復:上記、水幅試験で地汚れ発生から直ちに水ダイヤルを4にし、地汚れが消えた枚数で少ない枚数を良好とする。
【0048】
*硬化性試験:上記リスロン226で印刷後、紫外線照射については、USHIO(株)製照射装置UVC-2535(120W/cm超高圧メタハラランプ3灯、コンベヤースピード100m/min)を使用し、表3のインキ組成物の上記印刷物を硬化させたところ実施例、比較例のインキ組成物の印刷物は同様に硬化していた。また電子線照射については、表の比較例CE3、実施例Ink6のインキ組成物の上記印刷物を印刷後取り出し、米国ESI(株)製低エネルギー電子線照射装置(加圧電圧175KV、酸素濃度500ppmの窒素置換した雰囲気)を用い3Mradで照射したところ、比較例、実施例のインキ組成物の印刷物は同様に硬化していた。」
3 甲8に記載された発明
甲8には、比較例インキC2として「紅顔料としてカーミン6B(東洋インキ製造(株)製紅顔料)18部、
ダップトートDT170(東都化成(株)製ジアルルフタレート樹脂)30部、t-BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)0.1部、Q1301(アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン)0.1部、DTMPTA(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)69.8部から得られたワニスCV2を49部、
t-BHQ0.1部、
Q1301を0.1部、
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を27.8部
4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)を2.5部、
イルガキュア907を2.5部、を仕込み、三本ロ-ルミルで常法により製造した、紫外線照射し、硬化する、紫外線硬化型インキ。」の発明(以下、「甲8発明」という。)が記載されているといえる(摘記8c参照)。
4 対比・判断
(1)本件特許発明1
ア 甲8発明との対比
本件特許発明1と甲8発明を対比する。
甲8発明の「ダップトートDT170(東都化成(株)製ジアルルフタレート樹脂)」は本件特許発明1の「樹脂」に相当する。
甲8発明の「DTMPTA(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)」及び「DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)」は、本件特許発明1の「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物」及び「(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物」に相当し、甲8発明の紫外線硬化型インキ中100g中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量は0.47mol((69.8×4/578.5)*49/(49+0.1+0.1+27.8+2.5+2.5)+27.8×6/466.5))であるから、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり」を充足する。
甲8発明の「t-BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)」及び「Q1301(アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン)」は、重合禁止剤であるから(摘記8b参照)、本件特許発明1の「光重合禁止剤2種以上」及び「光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上」に相当する。
甲8発明の「4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)」及び「イルガキュア907」は、ラジカル重合開始剤であるから(摘記8b参照)、本件特許発明1の「光重合開始剤2種以上」に相当する。
甲8発明の「紫外線照射し、硬化する、紫外線硬化型インキ」は、構成単位1
【化1】
[図:0001418217000069.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000070.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000071.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むものを含まないから、本件特許発明1の「(ただし」及び「構成単位1
【化1】
[図:0001418217000072.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000073.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000074.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、をいずれも除く。)」を充足する。
そうすると、本件特許発明1と甲8発明は、「(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、樹脂と、光重合開始剤2種以上と、光重合禁止剤2種以上とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物を含み、
活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型インキ組成物100g中0.40~0.53molであり、
光重合開始剤が、チオキサントン系化合物を含み、
光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含む、活性エネルギー線硬化型インキ組成物(ただし、
構成単位1
【化1】
[図:0001418217000075.jpg]
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[図:0001418217000076.jpg]
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
[図:0001418217000077.jpg]
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を含むもの、並びに
フェノール樹脂及びエポキシドからなる群の反応物であるインキ用樹脂を含むもの、をいずれも除く。)。
」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点8-1>
光重合開始剤が、本件特許発明1はチオキサントン系化合物を含むのに対し、甲8発明A1及びA2はチオキサントン系化合物を含まない点。
<相違点8-2>
活性エネルギー線硬化型インキ組成物が、本件特許発明1では、ただし、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オンを含むものを除く特定されているのに対し、甲8発明ではイルガキュア907(2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン)含む点。
イ 相違点についての検討
<相違点8-1>及び<相違点8-2>は実質的な相違点である。
そして、<相違点81>及び<相違点8-2>は課題解決のための具体化手段における微差、すなわち、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないものとはいえない。
ウ 小括
本件特許発明1は、甲8の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。
(2)本件特許発明2~8
本件特許発明2~8は、本件特許発明1を引用してさらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲8発明との<相違点8-1>及び<相違点8-2>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~8は、甲8の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。
第10 前記第7における理由3(サポート要件)について
1 判断
本件特許発明1の課題は、本件特許明細書【0008】からみて、高速印刷性を有すると共に、溶剤耐性といった塗膜耐性に優れ、更に、高い保存安定性をも有する、活性エネルギー線硬化型インキ組成物およびそれを用いた印刷物を提供することにあると認める。
そして、本件特許発明1において光重合禁止剤について「光重合禁止剤2種以上」及び「光重合禁止剤が、ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含み」、並びに、「光重合開始剤2種以上」及び「光重合開始剤が、チオキサントン系化合物を含み」と特定されており、「ニトロソ系化合物と」及び「フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上とを含み」との記載から、2種の光重合禁止剤のうち1つはニトロソ系化合物であり、他の1種以上がフェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれると解され、ここで、本件特許明細書において、光重合禁止剤として、ニトロソ系化合物(Q-1301)とフェノール系化合物(TBHQ)との組合せ(実施例1~9、17~28,31~32参照)、ニトロソ系化合物(Q-1301)と、フェノール系化合物(MQ、ノンフレックスアルバ)、キノン系化合物(キノパワーNQI、キノパワー20)、又はピペリジン系化合物(フェノチアジン、ポリストップ7300、HO-TEMPO)との組合せ(実施例10~16参照)などが記載され、また、光重合開始剤としてチオキサントン系のものを含むもの(実施例32以外)が記載され、それらが前記課題を解決できることが理解できるから、本件特許発明1において特定される光重合禁止剤の2種の組み合わせ全て及び光重合開始剤としてチオキサントン系のものを含む2種を含むものが前記課題を解決できることが理解できるといえ、3種以上であっても前記課題を解決できるといえる。
したがって、特許発明1~8に係る本件請求項1~8に記載の発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえず、本件請求項1~8の記載は、いわゆるサポート要件(特許法第36条第6項第1号)に違反するとはいえない。
2 特許異議申立人の主張及び当審の判断について
(1)特許異議申立人の主張。
特許異議申立人は、令和6年3月22日提出の意見書において以下のとおり主張する。
ア 「3種以上」の光重合開始剤の組合せによって本件特許発明1~3及び5~8の課題を解決し得るか否かについては不明であるし、「2種」の光重合開始剤の組合せの場合でも、任意の2種の重合開始剤の組合せによっても同様に課題を解決し得るか否かについては不明であり、本件明細書の記載に照らしても理解することはできない。
イ 「ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群」より選択される、「3種以上」の重合禁止剤の組合せによって特許発明1~3及び5~8の課題を解決し得るか否かについては不明である。
ウ あらゆる「2種」の光重合開始剤の組合せを用いた場合においても、「ニトロソ系化合物」と「フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上」との2種以上の重合禁止剤によっても同様に課題を解決し得るか否かについては不明である。
エ 「ニトロソ系化合物と、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群」における「系」が意味するところが不明確であり、それぞれの化合物が「ニトロソ基を有する構造」、「フェノール基を有する構造」、「キノン基を有する構造」、「ピペリジン基を有する構造」を意味するのであれば、明細書に記載された化合物を超えて広範な化合物を含むこととなり、いかなる化合物によれば課題を解決し得るか否かについては全く不明である。
(2)当審の判断
ア 任意の2種の重合開始剤の組合せによっても同様に課題を解決し得るか否かについては不明であるかもしれないが、本件訂正により本件特許発明1は光重合開始剤としてチオキサントン系化合物を含むものとなり、前記1のとおり、チオキサントン系のものを含む2種の光重合開始剤を含むものが前記課題を解決できると理解できるから、3種以上でも前記課題を解決できることは明らかであり、光重合開始剤が3種以上となると、高速印刷性を有さない、溶剤耐性といった塗膜耐性に劣るものとなる、あるいは、保存安定性が低くなるという技術常識もない。
イ 前記1のとおり、「ニトロソ系化合物」と「フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上」との2種以上の重合禁止剤を含むものが前記課題を解決できると理解できるから、3種以上でも前記課題を解決できることは明らかであり、光重合禁止剤が3種以上となると、高速印刷性を有さない、溶剤耐性といった塗膜耐性に劣るものとなる、あるいは、保存安定性が低くなるという技術常識もない。
ウ 本件訂正により本件特許発明1は光重合開始剤としてチオキサントン系化合物を含むものとなり、前記1のとおり、チオキサントン系のものを含む2種の光重合開始剤を含み、「ニトロソ系化合物」と「フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上」との2種以上の重合禁止剤を含むものが前記課題を解決できると理解できる。
エ 前記1のとおり、本件特許明細書実施例10~16の記載から、光重合禁止剤であれば、「ニトロソ基を有する構造」を有するものと、「フェノール基を有する構造」、「キノン基を有する構造」又は「ピペリジン基を有する構造」を有するものとを含むものが、前記課題を解決できるといえる。
以上から、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
第11 むすび
以上のとおりであるから、令和5年12月20日付けの取消理由通知に記載した取消理由、令和6年5月7日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701083