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特許異議申立

2022-700116

樹脂管継手

審判番号
2022-700116
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-073145
登録番号
6916025
請求日
2022年02月10日
審決日
2022年05月25日
公報発行日
2022年07月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】積水化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】西澤 和純
  • 【権利者代理人】山口 洋
  • 【権利者代理人】佐伯 義文
  • 【権利者代理人】森 隆一郎
  • 【権利者代理人】大槻 真紀子
  • 【権利者代理人】川越 雄一郎
  • 【異議申立人】奥村 一正
審判長/審判官
  • 審判長 平城 俊雅
  • 審判官 西村 泰英
  • 審判官 河内 誠
分類
P1651.121-Y (F16L) / P1651.537-Y (F16L) / P1651.536-Y (F16L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第4号、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6916025号発明「樹脂管継手」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6916025号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6916025号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成29年3月31日に出願されたものであって、令和3年7月19日にその特許権の設定登録がされ、令和3年8月11日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について令和4年2月10日に特許異議申立人 奥村 一正(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下「本件特許発明1~4」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 内部に流路を有し両端に開口部が形成された本体部と、前記本体部の前記開口部の周縁を囲む受入部とを備える樹脂管継手において、 前記本体部は、発泡層と、前記発泡層の両面を覆う非発泡層とを備え、 前記発泡層は、第一の塩化ビニル系樹脂と有機系発泡剤と第一の安定剤とを含有する発泡性樹脂組成物を発泡し成形してなり、 前記非発泡層は、第二の塩化ビニル系樹脂と第二の安定剤とを含有する非発泡性樹脂組成物を成形してなり、 前記発泡層及び前記非発泡層は、実質的に鉛を含有せず、 前記第一の安定剤及び前記第二の安定剤が錫系安定剤であり、 前記非発泡層は、透明又は半透明である樹脂管継手。 【請求項2】 内部に流路を有し両端に開口部が形成された本体部と、前記本体部の前記開口部の周縁を囲む受入部とを備える樹脂管継手において、 前記本体部は、発泡層と、前記発泡層の両面を覆う非発泡層とを備え、 前記発泡層は、第一の塩化ビニル系樹脂と無機系発泡剤と第一の安定剤とを含有する発泡性樹脂組成物を発泡し成形してなり、 前記非発泡層は、第二の塩化ビニル系樹脂と第二の安定剤とを含有する非発泡性樹脂組成物を成形してなり、 前記発泡層及び前記非発泡層は、実質的に鉛を含有せず、 前記第一の安定剤がCaZn系安定剤又は錫系安定剤であり、 前記第二の安定剤が錫系安定剤であり、 前記非発泡層は、透明又は半透明である樹脂管継手。 【請求項3】 前記錫系安定剤は、オクチル基を有するアルキル錫の有機酸塩である、請求項1又は2に記載の樹脂管継手。 【請求項4】 前記第一の塩化ビニル系樹脂の平均重合度が600~700であり、 前記第二の塩化ビニル系樹脂の平均重合度が600~700である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂管継手。」 第3 特許異議申立ての概要 異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第17号証(以下「甲1」等という。)を提出し、概略次の特許異議の申立ての理由を主張している。 甲1:特開2011-106594号公報 甲2:特開平3-146534号公報 甲3:特開2002-12691号公報 甲4:特開2004-188813号公報 甲5:特開2015-17145号公報 甲6:最新 樹脂発泡成形 技術-添加剤配合・成形条件最適化・トラブル対策-,株式会社 技術情報協会,2006年7月31日,第1版第1刷,p.246及び252-253 甲7:特開2004-277654号公報 甲8:特開2008-1840号公報 甲9:塩化ビニル材料便覧,株式会社 工業調査会,1966年7月25日,p.212-215及び248-249 甲10:ポリ塩化ビニル その化学と工業II,株式会社 朝倉書店,昭和41年2月5日,初版,p.142-143 甲11:特開2002-210893号公報 甲12:特開2001-50442号公報 甲13:特開2000-44750号公報 甲14:特開平8-300536号公報 甲15:特開平9-222185号公報 甲16:特開平9-262893号公報 甲17:特開平1-95137号公報 <理由1(特許法第29条第2項)> 本件特許発明1~4は、甲第1号証~甲第17号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 <理由2(同法第36条第6項第1号)> 本件特許発明1~4は、その特許請求の範囲の記載が明細書の発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えるものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 <理由3(同法第36条第4項第1号)> 本件特許発明1~4は、その発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 事案に鑑み、理由2、理由3についてまず検討する。 1.理由2について 本件特許発明は、「ドレンパイプ等の接続に用いられる樹脂管継手」(【0001】)を対象とする発明であり、「本体部の内部に発泡樹脂からなる断熱層を備え、この断熱層を囲繞する本体部の内外壁と接続部とが、射出成形により一体成形された構成の断熱層付き管継手」(【0003】)を前提としつつ、「耐薬品性に優れる塩化ビニル系樹脂の樹脂管継手のニーズ」及び「他の配管材と樹脂管継手とを接続するときに、継手内部の管の挿入状態を視認できるようにするため、樹脂管継手の接続部(受入部)を透明又は半透明にするニーズ」(【0005】)を背景とし、「単に塩化ビニル系樹脂で樹脂管継手を製造すると、非発泡層を透明にすることができない」こと、及び、「塩化ビニル系樹脂で樹脂管継手を製造すると、発泡層と非発泡層との界面が黒く変色する外観不良を生じる問題」(【0005】)を解決しようとする課題とし、「本発明は、断熱性及び耐薬品性に優れ、かつ、外観の良好な樹脂管継手を目的とする」(【0005】)発明である。 当該目的に対し、本件の発明の詳細な説明では、課題を解決するための手段として、次の記載がある。(下線は強調のため当審で付加した。) 「【課題を解決するための手段】 【0006】 塩化ビニル系樹脂で樹脂管継手を製造する場合、塩化ビニル系樹脂の加工時の熱劣化を抑制するために一般に鉛系安定剤が用いられる。鉛系安定剤を用いた場合、非発泡層を透明にすることができない。 鋭意検討を重ねた結果、本発明者等は、非発泡性樹脂組成物に錫系安定剤を用いると、非発泡層を透明にできることを見出した。 一方、発泡層は透明又は半透明にするニーズがないため、鉛系安定剤が用いられる。 しかし、非発泡性樹脂組成物に錫系安定剤を用い、発泡性樹脂組成物に鉛系安定剤を用いて樹脂管継手を成形すると、発泡層と非発泡層との界面が黒く変色することが分かった。 本発明者等の知見によれば、錫系安定剤に含まれる硫黄成分と、鉛系安定剤に含まれる鉛とが反応することによって、発泡層と非発泡層との界面が黒く変色する硫化汚染と呼ばれる現象が起こっていると考えられる。 そこで、本発明者等は、発泡性樹脂組成物に錫系安定剤を用いると、硫化汚染を防止し、非発泡層が透明又は半透明で、外観の良好な樹脂管継手を得られることを見出した。」 「【0018】 <発泡性樹脂組成物> 本実施形態の発泡性樹脂組成物は、第一の塩化ビニル系樹脂と発泡剤と第一の安定剤とを含有する。 ・・・ 【0022】 第一の安定剤としては、第一の塩化ビニル系樹脂の安定剤として公知の鉛系安定剤を除く化合物を用いることができる。 発泡性樹脂組成物中に鉛や亜鉛を含む安定剤が含まれると、アゾジカルボンアミド等の窒素原子を含む有機系発泡剤の分解が活性化され、発泡開始温度が低下する。その結果、発泡残渣が早期に発生し、この発泡残渣によってヤケ(変色した異物)と呼ばれる製品不良が生じやすくなり、好ましくない。 また、鉛系安定剤は、発泡性樹脂組成物中の硫黄成分と反応して、発泡層と非発泡層との界面が黒く変色する硫化汚染の原因となり、樹脂管継手の非発泡層の透明性を担保できなくなるため、好ましくない。 このような観点から、本発明の樹脂管継手の発泡層及び非発泡層は、実質的に鉛を含有しないことが求められる。」 「【0026】 <非発泡層> 本実施形態の非発泡層は、非発泡性樹脂組成物を成形してなる。本発明の樹脂管継手は、非発泡層を有することにより、樹脂管継手の強度を高めることができる。非発泡層は、透明又は半透明である。樹脂管継手の外観を良好にする観点から、非発泡層は、実質的に鉛を含有しない。 非発泡層は、透明又は半透明であるため、樹脂管継手の受入部は、非発泡層で形成されていることが好ましい。樹脂管継手の受入部が透明又は半透明であると、他の配管材を樹脂管継手の受入部に挿入するときに、挿入の状態を視認することができる。このため、他の配管材と樹脂管継手との接続不良を防止することができる。」 「【0028】 非発泡性樹脂組成物中の第二の安定剤としては、上述した第一の安定剤と同様の安定剤を用いることができる。第二の安定剤は、第一の安定剤と同じであってもよく、異なっていてもよい。樹脂管継手の非発泡層の透明性を担保する観点から、第二の安定剤は、錫系安定剤であることが好ましく、メルカプト系の錫化合物であることがより好ましい。」 「【0042】 表1に示すように、発泡層、非発泡層ともに錫系安定剤を用いた実施例1、2は判定結果が「◎」で、樹脂管継手の透明性が担保されていることが分かった。第一の安定剤をCaZn系安定剤に変更した実施例3、4も、判定結果が「◎」又は「○」であった。 一方、第一の安定剤を鉛系安定剤に変更した比較例1~2、第二の安定剤を鉛系安定剤に変更した比較例3~4は、判定結果が「×」~「△」で、樹脂管継手の透明性が担保されていないことがわかった。」 以上の記載から、「本体部の内部に発泡樹脂からなる断熱層を備え、この断熱層を囲繞する本体部の内外壁と接続部とが、射出成形により一体成形された構成の断熱層付き管継手」を前提とした本件発明が解決しようとする課題を解決するために必要となる解決手段としては、本発明の樹脂管継手の発泡層及び非発泡層は、実質的に鉛を含有しないことであり、そのため、発泡層の第一の塩化ビニル系樹脂の安定剤として公知の鉛系安定剤を除く化合物を用いること、発泡性樹脂組成物に錫系安定剤を用いると、硫化汚染を防止し、非発泡層が透明又は半透明で、外観の良好な樹脂管継手を得られること、実施例で確認できた発泡層に用いることができる鉛を含まない安定剤として、錫系安定剤の他CaZnも可能であること、が認識できる。 そして、発泡性樹脂に用いられる発泡剤や錫系安定剤については様々な種類のものが知られており(本件の発明の詳細な説明の【0020】、【0023】)、実施例に記載された発泡剤であるADCA又は重曹と、錫系安定剤である「STX-801」またはCaZn系安定剤である「LHR-503」以外のものを用いても、同様の効果を奏することは、当業者であれば十分に理解できるものである。 よって、本件の発明の詳細な説明において、すべての発泡剤と錫系安定剤の組み合わせが実施例として記載されていなくとも、当業者は発明の課題を解決できると認識できるものである。 そうすると、本件の請求項1及び2に係る発明は、発明の詳細な説明において、当業者が発明の課題を解決できると認識できるように記載された範囲を超えるものではない。 また、本件の請求項3及び4に係る発明は、請求項1または2に係る発明を直接的又は間接的に引用し、かつ、その発明特定事項を他の事項に置き換えたものではないので、同様に発明の詳細な説明において、当業者が発明の課題を解決できると認識できるように記載された範囲を超えるものではない。 よって、当該理由2は成り立たない。 2.理由3について 上記1.にて本件特許発明1~4の記載は適切であるとされたことを受けて、当該発明を実施するための発明の詳細な説明及び図面の記載について検討する。 本件の発明の詳細な説明には、発泡剤について【0020】に用いることができる発泡剤の種類が記載され、本件発明1にある「有機系発泡剤」及び本件発明2にある「無機系発泡剤」の各々に使用できる材料の候補が開示されている。 また、本件特許発明1ないし3に関し、第一、第二の安定剤に関する記載として、【0023】~【0024】、【0028】に開示がなされ、本件特許発明4に関し、第一、第二の塩化ビニル系樹脂の平均重合度に関する記載として、【0019】、【0027】に開示がなされている。 加えて、発明の詳細な説明には実施例として【0036】~【0042】にて具体的な材料を例示した開示がなされ、実施例1~4に用いられた具体的な材料は、いずれも本件特許の請求項1~4の特定事項を充足する材料を用い、管継手を製造するための製造条件も含めた記載が確認できる。 してみると、本件特許発明1~4を当業者が実施する上で過不足ない開示が発明の詳細な説明になされているというべきであり、発明の実施をする上で特段の困難性は認められない。 よって、当該理由3は成り立たない。 3.理由1について (1)各甲号証の記載事項等 ア 甲1の記載事項、甲1発明 甲1には、「管継手」に関して、以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。 「【0020】 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。 本実施の形態の管継手は、継手本体(10)が、軸方向両端に開口した主管部(11)と、この主管部(11)の軸直交方向の一方に開口した分岐管部(12)と、を備え、前記主管部(11)の両端に同軸に第1受口(21)および第2受口(22)が設けられ、前記分岐管部(12)の先端に第3受口(23)を備えたチーズ状の管継手であって、前記継手本体(10)および各受口(21,22,23)が、透明あるいは半透明の光透過性を有した非発泡樹脂により形成され、前記継手本体(10)の肉厚内部には、発泡性樹脂により形成された断熱層(10a)が設けられ、金型キャビティにおける前記主管部(11)の軸方向中央であって、前記分岐管部(12)が設けられているのとは反対側の前記主管部(11)の軸直交方向位置を前記樹脂の射出位置(SO)とし、この射出位置(SO)から前記第1受口(21)および第2受口(22)までの主管部流動比と、前記射出位置(SO)から前記第3受口(23)までの分岐管部流動比と、の割合である主管部流動比/分岐管部流動比の値が、0.9~1.1の範囲内に設定されていることを特徴とする管継手である。 【実施例1】 【0021】 以下に、図1および図2に基づいて、この発明の実施の形態の実施例1の管継手Aについて説明する。 実施例1の管継手Aは、いわゆるチーズと称されるタイプの管継手であって、継手本体10と、第1受口21、第2受口22、第3受口23と、を備えている。 【0022】 継手本体10は、図1において左右方向に軸方向(矢印Ya方向)を向けた略円筒状の主管部11と、この主管部11の軸方向中央から、軸直交方向に延在された略円筒状の分岐管部12とを備えている。 【0023】 さらに、継手本体10は、図2に示すように、断熱層10aを一般層10bで挟んだ断面構造に形成されている。一般層10bは、透明あるいは半透明の光透過性を有した非発泡性樹脂により形成されている。一方、断熱層10aは、発泡性樹脂により形成されている。 なお、非発泡性樹脂としては、特許文献2に記載されているのと同様に、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル-EPDM(エチレン-プロピレンゴム)-スチレン)樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂などを用いることができる。 また、発泡性樹脂としても、特許文献2に記載されているのと同様に、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂などに発泡剤としてアゾジカルボンアミド(大塚化学社製AZ-HM)を混合させたものを用いることができる。 【0024】 各受口21,22,23は、前述の一般層10bのみで形成されており、その外側から内側を見通すことができる。なお、断熱層10aは、発砲により生じた気泡が存在することで、遮光性を有し、その外側から内側を見通すことはできない。よって、継手本体10は、遮光性を有している。 ここで、図2の断面図に示されている第3受口23について説明すると、第3受口23は、分岐管部12の先端に設けられており、分岐管部12よりも大径の円筒形状に形成されているとともに、接続管Pを挿入して接続した際に、その先端面を突き当てるストッパ突当面23aが、矢印Ybで示す分岐管軸方向に直交する方向に形成されている。 【0025】 図1に戻り、第1受口21および第2受口22は、主管部11の主管部軸方向両端に設けられており、第3受口23と同様の内径の円筒形状に形成されているとともに、図示は省略するが第3受口23と同様のストッパ突当面を備えている。」 【図1】 [図:0001386176000001.jpg] 【図2】 [図:0001386176000002.jpg] 「【0029】 次に、実施例1の管継手Aの作用を説明する。 管継手Aの成形時には、成形型のキャビティに向けて、管継手Aの射出位置SOから樹脂材料を射出する。 この場合、特許文献2に記載されているように、まず、金型キャビティ容量よりも少ないあらかじめ設定された量の非発泡性樹脂を射出した後、あらかじめ設定された発泡性樹脂を射出し、さらに加圧する。 【0030】 ここで、実施例1の管継手Aでは、射出位置SOから第1受口21および第2受口22までの主管部流動比R1,R2と、第3受口23までの分岐管部流動比R3とが、等しくなるように、主管軸方向寸法L1,L2、主管軸直交方向寸法L3および肉厚tを設定している。 このため、発泡性樹脂は、各受口21,22,23に向けて、略均等に供給される。したがって、発泡性樹脂を、継手本体10の全体に行き渡らせながら、各受口21,22,23に進入させないようにすることができ、これにより、継手本体10のみに、その全体に亘って断熱層10aが肉厚内に形成される。なお、断熱層10aは、図2に示すように、第3受口23の外径寸法が、分岐管部12よりも大きくなった位置まで達する一方、ストッパ突当面23aまでは達しないように調節されている。また、図示は省略するが、第1受口21および第2受口22にあっても、断熱層10aは、各受口21,22において主管部11よりも外径寸法が大きくなった位置まで達する一方、ストッパ突当面23aまでは達しないように調節されている。 なお、このように継手本体10の肉厚内のみに、その全体に亘って断熱層10aを設けるにあたり、非発泡性樹脂および発泡性樹脂材料の量や発砲性樹脂の発泡度や加圧量を最適に設定することは必要である。 【0031】 また、このようにして形成された実施例1の管継手Aにあっては、一般層10bが、透明あるいは半透明の光透過性を有した樹脂で形成されているため、断熱層10aが適正に設けられていない不良品(断熱層10aが各受口21,22,23まではみ出したりした場合など)の有無を、目で見て確認することができる。 【0032】 次に、管継手Aの使用時について説明する。 管継手Aは、断熱層10aを有していることから、図外の空調装置のドレン排水の配管に用いるのに適している。このようなドレン排水の配管には、管継手Aに接続する接続管Pにも断熱層を肉厚内に有した管を用いる。 【0033】 この接続管Pの接続を行う場合、管継手Aの各受口21,22,23および接続管Pに接着剤を塗布した後、接続管Pを、ストッパ突当面23aに突き当たるまで各受口21,22,23に挿入して接続する。 このとき、各受口21,22,23は、透明あるいは半透明の光透過性を有した樹脂により形成されているため、有色接着剤を用いれば、各受口21,22,23の内周全周に亘って塗布されているか否かを確認することができ、接着忘れの不注意ミスを防止可能となり、接着剤の塗布不足によるシール性不良の発生をも防止することができる。 【0034】 また、管継手Aは、継手本体10の全体に亘って断熱層10aを備えている。したがって、断熱層10aを有した直管などの接続管Pを各受口21,22,23に接続した場合には、ドレン排水を排水する排水経路は、接続管と継手本体10とで連続的に断熱層で覆われる。よって、管継手Aおよび接続管Pの外周が結露をするのを、これらの外周を断熱材で覆うことなく防止することができ、断熱材で覆う場合と比較して、配管作業の手間を省くことができる。なお、断熱層10aと接続管Pとの間は、一般層10bの肉厚が厚くなっていることで、断熱性が保証されている。 ちなみに、管継手Aにおいて継手本体10の一部に断熱層10aが設けられない場合には、その部分の外周に結露が生じるおそれがあるが、このような不具合の発生を防止できる。 【0035】 以上説明したように、本実施例1では、管継手Aを、透明あるいは半透明の光透過性を有した樹脂で形成して、各受口21,22,23における接続管Pの挿入状態を視認可能としながら、各受口21,22,23を除く継手本体10の全域に断熱層10aを設けることができる新規な管継手Aを提供することができる。」 上記記載事項及び認定事項を総合すると、甲1には、下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 (甲1発明) 「軸方向両端に開口した主管部11と分岐管部12とからなる継手本体10と、主管部11の両端に同軸に設けられた第1受口21、第2受口22と、分岐管部12の先端に設けられた第3受口23とからなる、チーズ状の樹脂管継手であって、 前記継手本体10は、透明あるいは半透明の光透過性を有した非発泡樹脂により形成された一般層10bと、発泡性樹脂により形成された断熱層10aとが、断熱層10aの内外を一般層10bが挟むように設けられ、 各受口21,22,23は、前記一般層10bのみで形成されており、その外側から内側を見通すことができ、 前記断熱層10aは、発泡により生じた気泡が存在することで、遮光性を有し、その外側から内側を見通すことはできず、継手本体10は、遮光性を有している 樹脂管継手。」 イ 甲2の記載事項 甲2には、「発泡用硬質塩化ビニル系樹脂組成物並びに硬質塩化ビニル系樹脂発泡成形体及びその製造方法」に関して、以下の記載がある。 「[産業上の利用分野] 本発明は、発泡用硬質塩化ビニル系樹脂組成物並びに硬質塩化ビニル系樹脂発泡成形体およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、難燃、軽量で、パイプ等との接着等の二次加工ができて、圧縮強度が高く且つ耐衝撃性の高い、例えば、曲りパイプ、継手、排水マス、地下鉄、空港などの椅子等の工業用品、センターピラー、ホーンバット等の自動車内装品、スイッチボックス、ハウシウング、OAケーブル保護用カバー、電話回線用ケーブルカバー等の電機製品等の分野に好適に用いることのできる発泡用硬質塩化ビニル系樹脂組成物並びに硬質塩化ビニル系樹脂発泡成形体およびその製造方法に関するものである。」(1ページ右欄7行~2ページ左上欄1行) 「[課題を解決するための手段] 本発明は前記目的を達成するために、次のような構成とした。 即ち、第1の発明の構成は、重合度が300~700である塩化ビニル系樹脂 100重量部、並びに前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、可塑剤を0~20重量部、耐衝撃剤を5~30重量部及び発泡剤として重炭酸塩とそれ以外の発泡剤とを0.5~3.5重量部(その内、重炭酸塩以外の発泡剤は0~0.5重量部)の割合で含有することを特徴とする発泡用硬質塩化ビニル系樹脂組成物であり、 第2の発明の構成は、第1の発明の発泡用硬質塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形してなるとともに、比重が1.2以下であることを特徴とする硬質塩化ビニル系樹脂発泡成形体であり、」(3ページ左下欄11行~右下欄4行) 「本発明の組成物には、通常、安定剤が用いられる。用いられる安定剤としては、例えば、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜りん酸鉛、ケイ酸鉛、塩基性炭酸鉛、ハイドロタルサイト等の無機塩類、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム等の鉛、カドミウム、バリウム、カルシウム、アルミニム系金属石鹸類、ラウレート系、マレート系、メルカプト系、サルファイド系等の有機スズ類等が挙げられ、これらの安定剤は、一種もしくは二種以上を併用しても差し支えない。該安定剤の添加量は、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1~10重量部である。該配合量が1重量部未満になると熱安定性が不足して、剪断発熱及び発泡剤のラジカル分解と相まって、製品に黒状、フラッシュ等が発生し、ひどい場合には、塩化ビニル系樹脂が分解してしまうこともあり、射出時に分解ガスが発生して作業環境を多大に汚染することがある。安定剤の添加量が10重量部を越えると、熱安定性は改良され、射出成形時の分解等の発生は防止されるが、添加量に相応する効果はなく経済上も問題である。安定剤は、製品の要求物性、形状にあわせて、適宜選択される。即ち、当業界で公知の安定剤を適宜使用することで好適に成形できる。」(5ページ右下欄4行~6ページ左上欄7行) 「本発明の組成物に用いられる発泡剤としては、例えば、重炭酸塩等の無機塩類、アゾジカルボンアミド等のアゾ系、p、p′-オキシ-ビス-(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のスルホヒドラジド系、N、N’-ジニトロソ-(ジメチルテレフタルアミド)等のニトロソ系が挙げられる。」(6ページ右上欄下から2行~左下欄5行) 「(実施例1~4.比較例1~2) 塩化ビニル単独重合樹脂:重合度650の樹脂(以下、P650と言う)、重合度700の樹脂(以下、P700と言う)、重合度800の樹脂(以下、P800と言う)、重合度350の樹脂(以下、P350と言う)、重合度450の樹脂(以下、P450と言う)〉、重合度500の樹脂(以下、P500と言う)を各25kg及びその100重量部に対して錫系安定剤として三共有機合成(株)製のBM(N)、BK-1100L、日東化成(株)製のTVS#1400、耐衝撃剤として日本合成ゴム(株)製の部分架橋されたアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂である68K-1F、可塑剤としてDOP、滑剤として理研ビタミン(株)製のEW-100,OPL-06、SL-900を第一表に記載の通り配合して、オリンピア化工機(株)製の 100L高速ミキサー(H-100型)に投入して120℃まで昇温後60℃まで冷却して粉末コンパウンドを取り出した。該コンパウンドを三菱重工業(株)製の異方向50mm二軸押出機(KMD-50K型)でC1: 130℃、C2: 140℃、 C3: 150℃、AD:140℃、D:140℃、スクリーンメッシュ:60Me×1枚、80Me’×1枚、回転数: 25rpmの条件でペレタイズした。また、前記のペレットにDOPを0.5重量部添加して表面を濡らして、発泡剤として重炭酸ソーダを1重量部、アゾジカーボンアミドを0.3重量部加えてタンブラーで混合した。 かくして製造したペレットはHettinga Equipment Inc.製のTCM成形機(TCM5kg成形機)を使用して第一表の条件で排水マス用金型に射出成形した。それらの結果を第一表に記載した。」(10ページ右上欄下から7行~右下欄5行) 上記記載事項及び認定事項を総合すると、甲2には、下記の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されている。 (甲2技術) 「継手に用いられる発泡用硬質塩化ビニル系樹脂組成物であって、該組成物には、無機塩類や、鉛/カドミウム/バリウム/カルシウム/アルミニウムのいずれかの系の金属石鹸類や、有機スズ類の、いずれか一種もしくは二種以上の併用がなされる安定剤が用いられること。また、これらの安定剤の添加量は塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1~10重量部にとどまること。 さらに、該硬質塩化ビニル系樹脂組成物は、発泡剤として重炭酸塩等の無機塩類か、無機塩類以外としてはアゾジカルボンアミド等のアゾ系発泡剤、スルホヒドラジド系発泡剤、ニトロソ系発泡剤等が用いられること。」 ウ 甲3の記載事項 甲3には、「発泡塩化ビニル樹脂管状体の押出成形方法」に関して、以下の記載がある。 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】近来、資源循環のために樹脂管状体の原料においても、リサイクルが要請されている。そこで、本発明者は、上記発泡性塩化ビニル樹脂組成物の塩化ビニル樹脂に、リサイクル塩化ビニル樹脂を使用して発泡塩化ビニル樹脂管状体を押出成形することを試みたが、発泡が不安定であり、問題があることを認識した。その理由は、アゾジカルボンアミド、スルホニルヒドラジド等の有機系熱分解型発泡剤の分解速度(ガス発生量)が、リサイクル塩化ビニル樹脂に含まれている金属石ケン、特に、安定剤によって影響を受ける(鉛系安定剤の場合は、分解速度が速く、錫系安定剤、特にメルカプト錫系安定剤の場合は、分解速度が遅い)と共にリサイクル塩化ビニル樹脂の溶融粘度特性が、樹脂の重合度、熱安定剤の種類・添加量、滑剤の種類・添加量、充填剤の種類・添加量等により左右される結果、経時的に樹脂組成物のガス発生量と溶融粘度特性が変動するためである。」 「【0013】上記無機系熱分解型発泡剤には、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等を使用できる。上記発泡性塩化ビニル樹脂組成物の発泡倍率は、熱分解型発泡剤の分解ガス量(分解速度)の外、樹脂の溶融粘度特性によっても律せられる。而して、加工助剤として使用される上記メタクリル酸エステル系樹脂の添加量を調整して組成物の溶融粘度特性を安定化することも有効であり、メタクリル酸エステル系樹脂の添加量を、塩化ビニル樹脂量100重量部に対し2~20重量部とすることが好ましい。この樹脂の溶融粘度特性の安定化は、トルクレオメータの定常トルクを一定にすることにほかならず、2重量未満では、溶融粘度が低すぎて気泡が大きくなり過ぎ、20重量部を越えると、樹脂が硬くなり過ぎ、発泡させ難くなる。上記無機系熱分解型発泡剤の添加量は、樹脂100重量部に対し0.1~2.0重量部とされ、非常に少量であるから、均一分散による一様発泡を図るために、リサイクル塩化ビニル樹脂には、可及的に細かく粉砕したものを使用することが有効であり、2mm以下(2mm×2mmメッシュ通過)の粉砕粒を用いることが好ましい。」 上記記載事項を総合すると、甲3には、下記の技術(以下「甲3技術」という。)が記載されている。 (甲3技術) 「発泡性塩化ビニル樹脂組成物に用いる発泡剤に有機系熱分解型発泡剤を選んだ場合、安定剤の影響を大きく受け経時的なガス発生量と溶融粘度特性が変動してしまうため、発泡剤としては重炭酸ナトリウムなどの無機系熱分解型発泡剤を選ぶことが有効である。」 エ 甲4の記載事項 甲4には、「三層パイプ」に関して、以下の記載がある。 「【0011】 中間層12は、合成樹脂発泡体あるいは樹脂スクラップや廃材を粉砕して得た再生原料で形成されるものであって、まず、合成樹脂発泡体としては、例えば、有機系発泡剤や無機系発泡剤を含む塩化ビニル樹脂を使用することができる。具体的には、重合度が約1000(950~1050)の硬質塩化ビニル系樹脂に、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾジカルボン酸バリウム、ベンゼンスルホニルヒドラジド、N,N’-ジニトロソペンタメチレン等の有機系発泡剤及び重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤のいずれか一方又は双方を添加したものを使用することができる。」 「【0013】 前記再生原料には、樹脂スクラップや廃材を粉砕して得たものであって、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる樹脂成形品、例えばペットボトル、家電製品の筐体や管継手等の建材製品の廃材、射出成形の際に発生したゲート等の不要部材やスクラップを粉砕して得たものである。この再生原料には、必要に応じて未使用の樹脂原料を混合したものを使用することができ、ゴム系の改質剤やスズ安定剤、熱安定剤、滑剤、加工助剤、顔料、可塑剤、充填剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等の各種の添加剤を添加することができる。」 上記記載事項を総合すると、甲4には、下記の技術(以下「甲4技術」という。)が記載されている。 (甲4技術) 「配管に使用するパイプとして外層、中間層、内層の三層構成とした三層パイプに関して、中間層には有機系発泡剤や無機系発泡剤を含む塩化ビニル樹脂が使用できること。塩化ビニル樹脂としては重合度が約1000であり、発泡剤としては有機系或いは無機系のいずれか一方、又は双方を添加したものを使用することができること。 樹脂発泡体は、合成でも再生原料から得たものであってもよく、特に再生原料の場合、必要に応じて改質剤やスズ安定剤、熱安定剤、滑剤などの各種添加剤を添加することができること。」 オ 甲5の記載事項、甲5発明 甲5には、「安定化された塩化ビニル系樹脂組成物」に関して、以下の記載がある。 「【0014】 本発明の成形品は、透明であることが好ましい。 【0015】 本発明の成形品は、フィルム、シート、建材、波板、パイプ及び継ぎ手に好適に用いられるものである。」 「【0031】 本発明の組成物には、さらに、通常用いられる金属系安定剤を添加することができる。かかる金属系安定剤としては、例えば、鉛系安定剤、有機錫安定剤、有機酸金属塩およびこれらの複合安定剤などが挙げられるが、低毒性が重視される用途に用いる場合は、重金属を含まない安定剤が好ましく用いられる。」 「【0039】 本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じてその他の添加剤を配合することができる。その他の添加剤としては、例えば、ゼオライト化合物、ハイドロタルサイト化合物、β-ジケトン化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物、上記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤以外のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物、難燃剤、無機金属化合物、充填剤、発泡剤等を添加することができる。」 「【0062】 上記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、n,n’-トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラゾントリアジン等の分解型有機発泡剤、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム等の分解型無機発泡剤を挙げることができる。 ・・・ 【0064】 また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、加工方法に限定されることなく使用することができる。加工方法としては、例えば、カレンダー加工、押出成形、射出成形、磨砕、焼結、紡糸、さらに押出吹込成形、プラスチゾル加工等の二次加工もおこなうことができる。またフォームロール加工、溶融圧延法、溶融流延法、加圧成型加工、ペースト加工、粉体成型加工、発泡成形加工等を挙げることができる。 【0065】 本発明の樹脂組成物は、フィルム、シート、壁材、内装材、窓枠、波板、雨樋、羽目材(サイディング材)、デッキ材などの建材、パイプ、継ぎ手として好適に使用することができ、特に、透明材料は、本発明の効果が顕著に現れるので好ましい。」 「【0071】 (製造例1) 下記表1中に示す樹脂組成物を、190℃、30rpmの条件で3分間ロールによる予備混練をした後、190℃で5分間プレスして厚さ1mmのシートを作製した。 【0072】 【表1】 [図:0001386176000003.jpg] 」 「【0083】 これらに対し、実施例2-1~2-9より、可塑剤が配合されていないもしくは可塑剤の配合量が少量であっても、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、斑点黒化現象は確認されず外観が良好な成形品が得られることを確認できた。 以上より、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、可塑剤を配合しない硬質系塩化ビニル系樹脂組成物、又は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、可塑剤を10質量部以下で配合した半硬質系塩化ビニル樹脂組成物に対し、優れた耐熱性と良好な外観の成形品を製造することができるものであり、耐熱性と審美性が重視される、塩化ビニル系樹脂の透明材料用途に好適であり、特に、フィルム、シート、建材、波板、窓枠、パイプ、継手、に有用な発明であり、窓枠材料などに好ましく用いることができる。」 上記記載事項を総合すると、甲5には、下記の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されている。 (甲5発明) 「塩化ビニル系樹脂成形品の耐熱性および少量の可塑剤使用に伴う斑点黒化や製造時の初期着色がない外観の良好性を図るべく、塩化ビニル樹脂100質量部と亜鉛化合物-ハイドロタルサイト類安定剤(株式会社ADEKA製品名RX-405)3.5質量部と滑剤0.5質量部とフェノール系酸化防止剤0.1質量部の配合で可塑剤を含有せずに混練し190℃でシート状にプレス成形したものを材料とし、 継手に有用とされる硬質系塩化ビニル系樹脂組成物。」 カ 甲6の記載事項 甲6には、「最新 樹脂発泡成形技術」と題し、その一部として「第3節 ポリ塩化ビニルにおける発泡成形技術とトラブル対策」の見出しの中に、以下の記載がある。 「1.4 熱安定剤 多くの熱安定剤は硬質PVC発泡体の成形において二つの働きをする。熱安定化及びADCのような化学発泡剤に対する分解促進による分解温度の低下である。有機錫,混合金属,及び鉛安定剤などがPVC発泡成形によく用いられるが,安定剤の種類により上記両作用の程度は異なる。ステアリン酸亜鉛やステアリン酸鉛などは化学発泡剤の分解促進作用が強く,熱安定化効果が優れており低毒性の有機錫安定剤は分解促進作用が比較的弱い。」(252ページ1~6行) [図:0001386176000004.jpg] 「図5に錫配合PVCの自由発泡押出シートの密度及び表面状態に及ぼす加工助剤添加量の影響を示す7)。加工助剤添加量の増加とともに密度は低下し,表面状態も良好となり,良好は発泡シートが得られることが分かる。」(原文ママ。252ページ下から5行~3行) 上記記載事項を総合すると、甲6には、下記の技術(以下「甲6技術」という。)が記載されている。 (甲6技術) 「発泡硬質ポリ塩化ビニルの成形には、安定剤と熱安定剤とが使われるが、安定剤の種類により熱安定剤の熱安定化の作用と、分解促進による分解温度の低下作用とは影響を受ける。安定化剤としてステアリン酸亜鉛やステアリン酸鉛を使うと化学発泡剤の分解促進作用が強く、また熱安定化効果も優れているが、熱安定化剤に有機錫安定剤を用いると分解促進作用が比較的弱い。 安定剤の種類としては、有機錫、混合金属、鉛安定剤などがPVC発泡成形によく用いられる。」 キ 甲7の記載事項 甲7には、「耐候性塩化ビニル系樹脂組成物およびその成形品」に関して、以下の記載がある。 「【0019】 塩化ビニル系樹脂組成物に配合する安定剤として、塩化ビニル系樹脂に粒子分散する鉛系安定剤を用いると、その分散粒子が紫外線や雨水等で浸食、脱離するので、充分な耐候性が得られない。それに対し、塩化ビニル系樹脂組成物に配合する安定剤として、塩化ビニル系樹脂に分子分散する錫系安定剤を用いると、優れた耐候性を発現できる。錫系安定剤の中では、マレート系、カルボキシレート系が有効である。メルカプト系は耐候性が劣り、リサイクルした場合が鉛安定剤使用品との混合で硫化汚染が生じる可能性がある。よって錫系安定剤は、これらの特徴を勘案し、マレート系、カルボキシレート系から選ばれる1種以上を組み合わせて使用できる。錫系安定剤としては、例えば、マレート系としては、ジメチル錫マレートポリマー、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレートポリマー等のジアルキル錫マレートポリマー;ジメチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジオクチル錫ジブチルマレート、ジメチル錫ジオクチルマレート、ジブチル錫ジオクチルマレート、ジオクチル錫ジオクチルマレート、ジメチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジオクチル錫ジベンジルマレート等のジアルキル錫マレートエステル塩等が挙げられ、カルボキシレート系としては、ジメチル錫ステアレート、ジブチル錫ステアレート、ジオクチル錫ステアレート、ジメチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレート、ジオクチル錫ラウレート等のジアルキル錫脂肪酸塩;モノブチル錫ステアレート、モノオクチル錫ステアレート、モノブチル錫ラウレート、モノオクチル錫ラウレート等のモノアルキル錫脂肪酸塩等が挙げられる。」 上記記載事項を総合すると、甲7には、下記の技術(以下「甲7技術」という。)が記載されている。 (甲7技術) 「塩化ビニル系樹脂組成物に配合する安定剤として、塩化ビニル系樹脂に分子分散する錫系安定剤を用いると、優れた耐候性を発現できること。」 ク 甲8の記載事項 甲8には、「透明塩化ビニル系樹脂組成物および成形体」に関して、以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、透明な硬質塩化ビニル系樹脂組成物およびその成形体に関する。 詳しくは、鉛やトリブチル錫化合物などのPRTR(Pollutant Release and Transfer Register:環境汚染物質排出・移動登録)対象物質を含むことなく、優れた透明性、成形加工性、耐衝撃性を併せ持ち、その他の各種特性にも優れた塩化ビニル系樹脂組成物およびその成形体に関する。 ・・・ 【0003】 塩化ビニル系樹脂用の(熱)安定剤としては、従来から、無機系、有機系、金属石鹸など多種類の安定剤が開発されている。この多様な安定剤のなかで、性能(成形品の透明性を高められる等)およびコスト面で優れている鉛系安定剤が、以前からよく使用されており、代表的な熱安定剤として知られている。 しかし、近年、環境問題への関心が高まり、重金属の安全性、特に鉛の毒性が問題になってきており、低・無毒性のポリ塩化ビニル(PVC)用熱安定剤の必要性が高まってきている。 この鉛系安定剤の代わりに、環境にもやさしく、透明性を高めることのできる安定剤として、ブチル錫以外の錫系安定剤や金属石鹸系複合安定剤がクローズアップされている。」 「【0013】 本発明は、以上の知見の下でなし得たもので、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、安定剤を0.5~5重量部、滑剤を0.1~5重量部含む透明塩化ビニル系樹脂組成物であって、安定剤が、金属石鹸系安定剤であり、滑剤が、酸価(酸価:試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数)0.01~70mgKOH/g、密度920~980kg/m3、分子量900~8000の変性ポリエチレン、および/または、分子量2000~20000のポリプロピレンであることを特徴とする透明塩化ビニル系樹脂組成物を要旨とする。 また、本発明は、さらに衝撃改良剤として、塩素含有量30~50重量%、屈折率1.50~1.55の塩素化ポリエチレンを1~10重量部含んでいてもよく、この場合、滑剤は、分子量2000~20000のポリプロピレンのみであってもよい。 そして、安定剤として、さらにメチル錫化合物、オクチル錫化合物の少なくとも1種を、金属石鹸系安定剤との合量中、0.1~50重量%となるように含んでもよい。」 上記記載事項を総合すると、甲8には、下記の技術(以下「甲8技術」という。)が記載されている。 (甲8技術) 「ポリ塩化ビニル(PVC)用熱安定剤として、従来は鉛系安定剤がよく使用されていたが、近年では環境にやさしく,透明性を高めることのできる安定剤としてブチル錫以外の錫系安定剤や金属石鹸系複合安定剤がクローズアップされていること。安定剤の例として、金属石鹸系安定剤とメチル錫化合物またはオクチル錫化合物との合量があること。」 ケ 甲9の記載事項 甲9には、塩化ビニル材料のうち、安定剤に関して、以下の記載がある。 [図:0001386176000005.jpg] [図:0001386176000006.jpg] [図:0001386176000007.jpg] 上記記載事項を総合すると、甲9には、下記の技術(以下「甲9技術」という。)が記載されている。 (甲9技術) 「塩化ビニルに用いる有機錫系安定剤数種の概要。 商品名Stann BL,BU,BHの特徴は、軟質に使用して透明性良好、用途としては、金属石鹸と併用して軟質成形品に使用、特に硬質成形品にはBUが透明性にすぐれる。 商品名Stann 405Aの特長は、透明性良好、用途は、軟質、硬質透明成形品。 商品名Stann SB-430及びStann SB-430Aの特長は、透明性、加工性良好、用途は、軟質、硬質透明成形品。 商品名Stann BM(N),Stann 100R-1,Stann RB-40,Stann RC-71,Stann RC-90C,Stann RC-125,Stann RC-130の用途は、硬質透明成形品。 商品名Stann SNT-900,Stann SNT-910,Stann SNT-920の特長は、透明性はSNT-910、SNT-920が優れ,刺激臭はSNT-900が最も少ない。 商品名T-12J,T-12PJ,T-12RNJの特長は、特に良好な初期滑性を有する透明用熱光安定剤。 商品名L-2BJ、L-2Jの用途は硬質、半硬質押出透明フィルム、シート。 商品名T-900TJ,T-900KCJ,T-18Jの用途は、硬質透明製品。 商品名T-50LTJ,T-70LTJの用途は、硬質透明製品。」 コ 甲10の記載事項 甲10には、ポリ塩化ビニルの「8.最近のポリ塩化ビニルの安定剤」の見出しの1つとして「8.3 有機金属化合物」の小見出し内に、以下の記載がある。 「8.3.1 有機スズ化合物 この種の安定剤の用途はきわめて広い.理由は耐熱,耐光性がすぐれており,硬軟質を問わず透明性のよい製品をつくり得るからである.・・・」 上記記載事項を総合すると、甲10には、下記の技術(以下「甲10技術」という。)が記載されている。 (甲10技術) 「ポリ塩化ビニルの安定剤として、硬軟質を問わず透明性のよい製品を作り得る有機スズ化合物が広く用いられること。」 サ 甲11の記載事項 甲11には、「難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体」に関して、以下の記載がある。 「【0026】上記の基層1や表面層2,2に配合される錫系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト系、ジブチル錫マレート系やジブチル錫ラウレート系の安定剤が好適であり、これらの安定剤は、基層1や表面層2,2の樹脂分100重量部に対して1~8重量部、好ましくは2~6重量部の割合で配合される。透明な成形体を得るためには錫系安定剤を配合することが必須であり、錫系安定剤に代えて鉛系安定剤を配合しても透明な成形体を得ることはできない。」 上記記載事項を総合すると、甲11には、下記の技術(以下「甲11技術」という。)が記載されている。 (甲11技術) 「難燃性の透明な塩化ビニル樹脂成形体に配合される安定剤としては錫系安定剤が必須であり、鉛系安定剤に代えると透明な成形体を得ることはできない。」 シ 甲12の記載事項 甲12には、「塩化ビニル系樹脂組成物を用いたフレキシブルコンジット」に関して、以下の記載がある。 「【0005】 【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明に用いられる塩化ビニル系樹脂組成物を構成する塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体、50重量%以上の塩化ビニル単量体と、これと共重合可能なビニル系単量体との共重合体、またはこれら以外の重合体に塩化ビニルをグラフトさせたグラフト共重合体などが例示されるが、これらの内では塩化ビニル単独重合体が好ましい。これらの塩化ビニル系樹脂は、通常、平均重合度が300~8000のものが用いられるが、成形性と機械的物性のバランスから平均重合度が800~3000のものが好ましい。」 「【0013】本発明に用いられる上記塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて、塩化ビニル系樹脂に一般に使用される、安定剤、滑剤、改質剤、充填剤、着色剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で添加配合することができる。安定剤としては、例えば、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、鉛白、鉛のラウレートまたはステアレート等の鉛系安定剤;ブチル錫マレート、オクチル錫マレート、ジ-n-アルキル錫メルカプチド、ジ-n-アルキル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ラウリルメルカプチド、ジ-オクチル錫S,S’-ビス-(イソオクチル-メルカプトアセテート)、ジブチル錫ビス-イソオクチルチオグリコレート、ジ-(n-オクチル)錫マレートポリマー、ジブチル錫メルカプトプロピオナート等の錫系安定剤;カルシウム、カドミウム、バリウムまたは亜鉛のラウレートまたはステアレート等の有機金属塩系安定剤および金属石けん系安定剤;アンチモンメルカプトカルボン酸塩またはエステル塩のようなアンチモン系安定剤;ホスフェート系安定剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ化油安定剤、BHT、硫黄、メチレン基等で二量体化したビスフェノール等のヒンダートフェノール、サリチル酸エステル、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤が挙げられ、これらは1種単独または2種以上の組み合せで使用される。」 上記記載事項を総合すると、甲12には、下記の技術(以下「甲12技術」という。)が記載されている。 (甲12技術) 「塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて、塩化ビニル系樹脂に一般に使用される、安定剤、滑剤、改質剤、充填剤、着色剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で添加配合することができる。安定剤としては、鉛系安定剤や、錫系安定剤や、有機金属塩系安定剤および金属石けん系安定剤や、アンチモン系安定剤や、ホスフェート系安定剤や、エポキシ化油安定剤及び紫外線吸収剤があること。本発明の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は800~3000のものが、成形性と機械的物性のバランスから好ましいこと。」 ス 甲13の記載事項 甲13には、「塩化ビニル系樹脂組成物」に関して、以下の記載がある。 「【0013】上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、小さくなると得られる成形体の機械物性が低下し、大きくなると成形性が低下するので、400~1400が好ましく、600~1000がより好ましい。 ・・・ 【0015】本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には成形性、熱安定性を向上させるため、透明性を損なわない範囲で、必要に応じて、例えば、熱安定剤、ポリメチルメタクリレート系の加工助剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、染料等が用いられてもよい。 【0016】上記熱安定剤としては、例えば、ジメチル錫-S,S’-ビス(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジ-n-オクチル錫-S,S’-ビス(イソオクチルメルカプトアセテート)等のメルカプト錫系安定剤;ジオクチル錫マレート系ポリマー等のマレート錫系安定剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛等の有機金属塩系安定剤等が挙げられる。」 「【0020】(実施例1)平均重合度800の塩化ビニル樹脂100重量部、ホウ酸0.05重量部、ジ-n-オクチル錫-S,S’-ビス(イソオクチルメルカプトアセテート)1.5重量部、ワックス(ヘキストジャパン社製;商品名WAX-OP)0.5重量部、エステルワックス(理研ビタミン社製;商品名リケマールEW-250)0.5重量部、及び加工助財(三菱レーヨン社製;商品名メタブレンP-551)1重量部をヘンシェルミキサーに供給し、110℃になるまで昇温しながら均一に混合し、塩化ビニル系樹脂組成物を得た。」 上記記載事項を総合すると、甲13には、下記の技術(以下「甲13技術」という。)が記載されている。 (甲13技術) 「塩化ビニル樹脂組成物に用いる熱安定剤として、メルカプト錫系安定剤やマレート錫系安定剤や有機金属塩系安定剤が、成形性、熱安定性を向上させるため使用できること。塩化ビニル系樹脂の平均重合度は400~1400が好ましいこと。」 セ 甲14の記載事項 甲14には、「繊維強化熱可塑性樹脂中空長尺発泡体およびその製造方法」に関して、以下の記載がある。 「【0064】発泡性熱可塑性樹脂組成物31は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部、錫系熱安定剤2.5重量部、滑剤0.5重量部、アクリル加工助剤8重量部、CaCO3 5重量部、ジオクチルフタレート2重量部、重炭酸ナトリウム3.5重量部の配合とした。また、樹脂押出機210は、スクリュー径40mmの単軸押出機(L/D=30、圧縮比2.5)とし、上記した発泡性熱可塑性樹脂組成物31を樹脂温度195°Cにて樹脂押出金型203を介して押出すと同時に発泡を開始させた。」 上記記載事項を総合すると、甲14には、下記の技術(以下「甲14技術」という。)が記載されている。 (甲14技術) 「発泡性熱可塑性樹脂組成物31の材料として、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部、錫系熱安定剤2.5重量部、滑剤0.5重量部、アクリル加工助剤8重量部、CaCO3 5重量部、ジオクチルフタレート2重量部、重炭酸ナトリウム3.5重量部の配合を用いたこと。」 ソ 甲15の記載事項 甲15には、「複合パイプ及びその製造方法」に関して、以下の記載がある。 「【請求項1】 塩化ビニル系樹脂からなるパイプ本体の外周面に、塩化ビニル系樹脂発泡体からなる被覆層が設けられた複合パイプであって、該被覆層が、発泡された内層部とその外周に形成された実質的に非発泡の表層部とからなり、且つ内層部と表層部とが一体的に形成されてなることを特徴とする複合パイプ。」 「【0050】一方で、塩化ビニル樹脂(平均重合度=600)100重量部に対して、錫系安定剤2重量部、熱分解型無機発泡剤2重量部、エステル系内滑剤2重量部、ポリエチンワックス系外滑剤2重量部、顔料1重量部を配合してなる発泡性塩化ビニル系樹脂組成物からなる被覆層成形材料を調製し、併せて、第2押出機35のシリンダー温度を140~180℃に設定した。」 上記記載事項を総合すると、甲15には、下記の技術(以下「甲15技術」という。)が記載されている。 (甲15技術) 「発泡性塩化ビニル系樹脂組成物の配合として、平均重合度600の塩化ビニル樹脂と錫系安定剤と熱分解型無機発泡剤とを含むとしたこと。」 タ 甲16の記載事項 甲16には、「複合パイプの製造方法」に関して、以下の記載がある。 「【請求項1】2機の押出成形機を使用して、外層と内層とが積層された2層構造の複合パイプを製造する際に、第1の押出成形機により熱可塑性樹脂を連続的にパイプ状に押出成形後冷却して内層パイプを形成し、該内層パイプを第1の引取機で引き取り、次いで、内層パイプの進行方向に対して略直角に配置した第2の押出成形機のクロスヘッド・ダイの中を通過させ、第2の押出成形機により熱可塑性樹脂を前記内層パイプの外周面に連続的に押出成形して外層パイプを形成した後冷却装置で冷却し、得られた2層構造の複合パイプを第2の引取機で引き取ることを特徴とする複合パイプの製造方法。」 「【0015】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を説明する。 (実施例1)第1の50mmφ押出成形機〔(株)プラスチック工学研究所製「BT-50」〕のシリンダー温度を150~190℃に設定し、該押出成形機のホッパーに塩化ビニル樹脂(重合度1000)100重量部、錫系安定剤2重量部、エステル系内部滑剤1重量部、ポリエチレンワックス系外部滑剤1.5重量部及び顔料1重量部からなる硬質塩化ビニル系樹脂組成物を投入してパイプを押出成形し、このパイプを第1の冷却水槽の中を連続的に通過させて冷却した後第1の引取機を用いて引き取り内層パイプを得た。得られた内層パイプの外径は32mm、内径は25mmであった。 【0016】次いで、この内層パイプを、その進行方向に対して直角に配置した第2の押出成形機〔(株)プラスチック工学研究所製「GT-30」〕のクロスヘッド・ダイの中を通過させた。 【0017】一方、第2の押出成形機のシリンダー温度を140~180℃に設定し、該押出機のホッパーに、塩化ビニル樹脂(重合度600)100重量部、錫系安定剤2重量部、熱分解型無機発泡剤2重量部、エステル系内部滑剤2重量部、ポリエチレンワックス系外部滑剤2重量部及び顔料1重量部からなる発泡性塩化ビニル系樹脂組成物を投入して、クロスヘッド・ダイを通過する内層パイプの外周面に、該発泡性塩化ビニル系樹脂組成物を8mmの肉厚となるように連続的に押出発泡成形して外層パイプを形成した。得られた2層構造のパイプを第2の冷却水槽の中を通過させることによって連続的に冷却し、第2の引取機を用いて引き取ることにより、内層パイプと外層パイプとが独立して積層された複合パイプを得た。この複合パイプは、内径25mm、外径48mmであり、内層パイプの肉厚が3.5mm、外層パイプの肉厚が8mmであった。」 上記記載事項を総合すると、甲16には、下記の技術(以下「甲16技術」という。)が記載されている。 (甲16技術) 「重合度1000の塩化ビニル樹脂に錫系安定剤と滑剤、顔料を配合してなる硬質塩化ビニル系樹脂組成物を内層パイプとし、その外側に8mm肉厚の重合度600の塩化ビニル樹脂に錫系安定剤と熱分解型無機発泡剤と滑剤、顔料を配合してなる発泡性塩化ビニル系樹脂組成物を外層パイプとするよう、2台の押出成形機を使用して外層と内層とが積層された2層構造の複合パイプを製造すること。」 チ 甲17の記載事項 甲17には、「硬質塩化ビニル樹脂製連続気泡体」に関して、以下の記載がある。 「(産業上の利用分野) 本発明は、暗渠用パイプ、曝気用パイプ、各種エアレーション用パイプ、法面除水用杭、各種エアーフィルター、固体-気体分離材、固体-液体分離材、液中への気体の噴出材、脱臭剤用母材、芳香剤用担体等の広範囲な用途に使用される新規な硬質塩化ビニル樹脂製連続気泡体を与えるための樹脂組成物及び該組成物から得られる連続気泡体に関するものである。」 「[実施例23及び24] 下記第10表に示した配合により、実施例1と同様にして本発明の組成物を調製し、該組成物を用いて本発明の連続気泡体を成形し、実施例1と同様に評価して下記第10表の結果を得た。尚、特性評価の基準は前記第5表と同様である。 (以下余白) 第 1 0 表 実 施 例 配 合 剤 23 24 PVC チッソSG - 100 クレハS-9007 100 - 加 工 助 剤 エラスレン301A 10 10 メタブレンP-530 4.0 4.0 安 定 剤 marcAG-116*1 3.0 3.0 アニオン系 界面活性剤 リボラン 1400 2.0 2.0 ワ ッ ク ス ヘキストワックスOP 1.0 1.0 滑 剤 ロキシロールG-16 2.0 2.0 発 泡 剤 AW-9 1.5 1.5 充 填 剤 CaCO3 (重質) 20 20 押 出 条 件 温度条件(℃) C1 130 120 C2 140 130 C3 150 140 C4 160 150 C5 170 160 H 175 165 回転数(RPM) 60 60 評 価 特 性 1)外 観 × ○ 2)セル状態 × ○ 3)透水性 △ ○ 4)通気性(秒) - 1.8 5)厚さ(mm) - 2.7 (備 考) *1 アデカアーガス(株)製、Ca-Zn 系液状安定剤 この安定剤は発泡剤分解温度を著しく低くするので、重合度700のPVC系(実施例23)では組成物の加工温度とタイミングが合わず、良品は得られない。その点、重合度450のPVCを用い、加工温度を低めにすると非常に優れた製品が得られる(実施例24)。」 上記記載事項を総合すると、甲17には、下記の技術(以下「甲17技術」という。)が記載されている。 (甲17技術) 「硬質塩化ビニル樹脂製連続気泡体の組成として、重合度700、または450のPVCにCa-Zn系液状安定剤を加えたこと。」 (2)本件特許発明1と甲1発明との対比・判断 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「樹脂管継手」と本件特許発明1の「樹脂管継手」とを、全体構造に関して対比すると、甲1発明の「軸方向両端に開口した主管部11」は、本件特許発明1の「内部に流路を有し両端に開口部が形成された本体部」に相当する。 また、甲1発明の「第1受口21,第2受口22」は、「前記本体部の前記開口部の周縁を囲む受入部」に相当する。 以下、同様に、 「発泡性樹脂により形成された断熱層10a」は、「本体部」が「備え」る「発泡層」に、 「断熱層10aの内外を」「挟むように設けられ」た「透明あるいは半透明の光透過性を有した非発泡樹脂により形成された」「一般層10b」は、「本体部」が「備え」る「前記発泡層の両面を覆う非発泡層」でありかつ「前記非発泡層は、透明又は半透明である」に、 それぞれ相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「内部に流路を有し両端に開口部が形成された本体部と、前記本体部の前記開口部の周縁を囲む受入部とを備える樹脂管継手において、 前記本体部は、発泡層と、前記発泡層の両面を覆う非発泡層とを備え、 前記発泡層は、発泡性樹脂組成物を発泡し成形してなり、 前記非発泡層は、非発泡性樹脂組成物を成形してなり、 前記非発泡層は、透明又は半透明である 樹脂管継手。」 [相違点] 本件特許発明1の「樹脂管継手」の「発泡層と、前記発泡層の両面を覆う非発泡層とを備え」るとした「本体部」は、「前記発泡層は、第一の塩化ビニル系樹脂と有機系発泡剤と第一の安定剤とを含有する発泡性樹脂組成物を発泡し成形してなり」及び「前記非発泡層は、第二の塩化ビニル系樹脂と第二の安定剤とを含有する非発泡性樹脂組成物を成形してなり」、「前記発泡層及び前記非発泡層は、実質的に鉛を含有せず」、「前記第一の安定剤及び前記第二の安定剤が錫系安定剤であり」との特定を有するのに対し、甲1発明の「樹脂管継手」の「主管部11」を構成する「断熱層10a」及び「一般層10b」はいずれも「樹脂」で形成されるとの特定にとどまり、当該樹脂が「塩化ビニル系」でありかつ、「錫系」の「安定剤」を「含有」するか否かが特定されておらず、また、「実質的に鉛を含有」していないこと、有機系発泡剤を「断熱層10a」が含むことも明らかでない点。 以下、相違点について検討する。 甲1発明の「非発泡樹脂により形成された一般層10b」を形成する主材料について、甲1では塩化ビニル樹脂が候補の一つとして列挙されているにとどまる(【0023】)。また、甲1発明は、一般層10bを形成する材料に安定剤が含まれることについては全く言及がない。 加えて、甲1発明は、一般層10bが透明又は半透明である点では本件特許発明1と一致するものの、どのような工夫で透明又は半透明をなしたかについては不知である。 この点に関し、甲2ないし甲17に記載の技術を見ると、樹脂として塩化ビニル系樹脂を用いることを前提とした場合、透明性にすぐれる成形品を得るためには、安定剤として錫系の安定剤を用いるようにすべきことが公知技術として確認できるのは甲10技術及び甲11技術に見られ、他の公知技術では、安定剤として他の安定剤とともに列挙されているにとどまるものであり、錫系の安定剤を用いるようにすべきとしたもの、すなわち、鉛系を使ってはいけないとしたものではない。 さらに、これら2つの公知技術は、透明性を求められない発泡層との組み合わせを論じたものでなく、甲1発明における断熱層10a(発泡層)の組成をいかなるものにすべきかを示唆するところがない。 してみると、甲1発明に甲10技術又は甲11技術を適用した結果としては、透明又は半透明な一般層10b(非発泡層)を塩化ビニル樹脂に錫系安定剤を加えたものを用いるにとどまり、透明性を求められない断熱層10a(発泡層)に関していかなる材料の配合とするかは公知の任意の材料の選択ができるものであるから、必ずしも当該相違点に係る本件特許発明1の構成である、「発泡層と非発泡層との界面が黒く変色する外観不良を生じる問題」の解決に至るとはいえない。 さらに、甲2~4に、塩化ビニル樹脂組成物においてアゾジカルボンアミド(有機系発泡剤)と錫系安定剤を用いることが記載されていたとしても、上記のとおり、甲1発明の断熱層10a(発泡層)は任意の材料の選択ができるものであり、また、甲1発明において上記「発泡層と非発泡層との界面が黒く変色する外観不良を生じる問題」についての課題を認識していないから、甲1発明の透明性を求められない断熱層10a(発泡層)に甲2~4に記載されたアゾジカルボンアミド(有機系発泡剤)と錫系安定剤を採用するとともに鉛を含有させないとする動機付けがない。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲17技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件特許発明1と甲5発明との対比・判断 本件特許発明1と甲5発明とを対比する。 甲5発明の「塩化ビニル樹脂100質量部と亜鉛化合物-ハイドロタルサイト類安定剤(株式会社ADEKA製品名RX-405)3.5質量部と滑剤0.5質量部とフェノール系酸化防止剤0.1質量部の配合で可塑剤を含有せずに混練し190℃でシート状にプレス成形したものを材料とし」た「硬質系塩化ビニル系樹脂組成物」と、本件特許発明1の「第二の塩化ビニル系樹脂と第二の安定剤とを含有する非発泡性樹脂組成物」とは、材料に「塩化ビニル系樹脂」と「安定剤」とを「含有する」限りにおいて一致する。 したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「材料に塩化ビニル系樹脂と安定剤とが含有された塩化ビニル系樹脂組成物が用いられたもの。」 [相違点1] 発明の対象に関し、本件特許発明1は「内部に流路を有し両端に開口部が形成された本体部と、前記本体部の前記開口部の周縁を囲む受入部とを備える樹脂管継手」でありかつ、「前記本体部は、発泡層と、前記発泡層の両面を覆う非発泡層とを備え」ると特定しているのに対し、甲5発明は「硬質系塩化ビニル系樹脂組成物」にとどまり、継手に利用できるとのみされるにとどまる点。 [相違点2] 本件特許発明1の「樹脂管継手」の「発泡層と、前記発泡層の両面を覆う非発泡層とを備え」るとした「本体部」は、「前記発泡層は、第一の塩化ビニル系樹脂と有機系発泡剤と第一の安定剤とを含有する発泡性樹脂組成物を発泡し成形してなり」及び「前記非発泡層は、第二の塩化ビニル系樹脂と第二の安定剤とを含有する非発泡性樹脂組成物を成形してな」るのに加え、「前記発泡層及び前記非発泡層は、実質的に鉛を含有せず、前記第一の安定剤及び前記第二の安定剤が錫系安定剤であり」との特定を有するのに対し、甲5発明の「硬質系塩化ビニル系樹脂組成物」は、発泡層と非発泡層の2つを用いるとされておらず、発泡層についても発泡剤の添加を任意とし、その発泡剤が有機系であるかは明らかでなく、安定剤の特定もない点。 [相違点3] 本件特許発明1は、「非発泡層」が「透明又は半透明である」との特定を有するのに対し、甲5発明の「硬質系塩化ビニル系樹脂組成物」は、外観の透明性が明らかでない点。 以下、相違点1~3について検討する。 上記相違点1、2に係る相違についてみると、甲5発明が継手を用途として想定しているだけでは、必ずしも本件特許発明1の樹脂管継手が備える、「内部に流路を有し両端に開口部が形成された本体部と、前記本体部の前記開口部の周縁を囲む受入部とを備える樹脂管継手」でありかつ、「前記本体部は、発泡層と、前記発泡層の両面を覆う非発泡層とを備え」る構成には直ちに至り得ない。 樹脂管継手の構成としてかかる「前記本体部は、発泡層と、前記発泡層の両面を覆う非発泡層とを備え」るものは甲1に記載された公知の構成の採用で足りるとした場合であっても、甲1に記載された管継手は、鉛の含有及び安定剤の特定について有意な特定がなく、相違点2に係る構成によりもたらされる作用効果である「発泡層と非発泡層との界面が黒く変色する外観不良を生じる問題」の解決に関し、これと一致ないし示唆を含む技術は、甲1~4、ないし甲6~17には見いだせず、当業者が容易になしえたものとは認められない。 よって、相違点3を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲5発明及び甲1~4ないし甲6~17技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件特許発明2と甲1発明との対比・判断 本件特許発明2は、本件特許発明1の「発泡層」が「含有」する「発泡剤」を、「有機系」から「無機系」へと置換し、さらに「第一の安定剤」を「CaZn系安定剤又は錫系安定剤」としたものである。 本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、上記(2)の相当関係及び一致点を変更するものではない。 そして、上記(2)の検討を踏まえれば、甲2、3、4、14~16に、塩化ビニル樹脂組成物において無機系発泡剤と錫系安定剤とを組み合わせることが記載され、甲17に硬質塩化ビニル樹脂組成物において発泡剤とともにCaZn系安定剤を配合することが記載されていたとしても、同様に、甲1発明の透明性を求められない断熱層10a(発泡層)に、無機系発泡剤とCaZn系安定剤又は錫系安定剤からなる第一安定剤を採用するとともに、鉛を含有させないとする動機付けがない。 とすれば、上記(2)の検討についても結論を左右するものではなく、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様の理由により甲1発明及び甲2ないし甲17技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件特許発明2と甲5発明との対比・判断 本件特許発明2は、本件特許発明1の「発泡層」が「含有」する「発泡剤」を、「有機系」から「無機系」へと置換し、さらに「第一の安定剤」を「CaZn系安定剤又は錫系安定剤」としたものである。 本件特許発明2と甲5発明とを対比すると、上記(3)の相当関係及び一致点を変更するものではない。 とすれば、上記(3)の検討についても結論を左右するものではなく、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様の理由により甲5発明及び甲1~4ないし甲6~17技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件特許発明3ないし4について 本件特許発明3ないし4は、いずれも本件特許発明1または2を引用し、その細部をさらに特定するものであって、本件特許発明1又は2の一部を置き換えるものではない。 とすれば、本件特許発明1,2がいずれも当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、上記(2)~(5)で示した結論と同様、本件特許発明3ないし4も、甲1発明及び甲2ないし甲17技術に基いて、又は甲5発明及び甲1~4ないし甲6~17技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)理由1についての小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし4は、甲1発明及び甲2ないし甲17技術に基いて、又は甲5発明及び甲1~4ないし甲6~17技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (8)異議申立人の主張 異議申立人は異議申立書において、本件特許発明1と甲1発明、又は甲5発明とで相違する構成(上記[相違点]と同様の内容。)について、以下を概略主張している。 ア 甲1と甲2~13技術とから容易になし得たとの主張(申立書の「(4-19)」関係) 本件特許発明1の構成要件である塩化ビニル系樹脂組成物からなる成形品において透明性を確保するために錫系安定剤を用いるとしたことは、甲5,8~13に記載されているため、当業者にとって技術常識であり、錫系安定剤は,鉛安定剤使用品との混合で硫化汚染(黒変色)が生じ得ることについては、甲7に記載されており、当業者にとって技術常識であるから、非発泡層において錫系安定剤を用いる場合、発泡層において鉛安定剤を用いないようにすることは当業者にとって当然のことであるとし、発泡樹脂組成物の具体的な組成として、塩化ビニル樹脂と、有機系発泡剤と、錫系安定剤からなるものを準備することは、甲2,3,4のいずれにも記載されている周知技術であるし、非発泡層の具体的な組成として、塩化ビニル樹脂と錫系安定剤とからなるものは甲6に記載されている周知技術であり、 また、甲1発明の継手が実質的に鉛(安定剤)を含有しないようにすることは当業者であれば容易に想到できることである、 と主張している。 イ 甲5と甲7とから容易になし得たとの主張(申立書の「(4-20)」関係) 甲5発明において、透明管継手が内部に流路を有し両端に開口部が形成された本体部と、本体部の前記開口部の周縁を囲む受入部とを備えること、本体部は、発泡層と、発泡層の両面を覆う非発泡層とを備えること、発泡層は、第一の塩化ビニル系樹脂と有機系発泡剤と第一の安定剤とを含有する発泡性樹脂組成物を発泡して成形すること、発泡層及び非発泡層は、実質的に鉛を含有しないことについては不明である。 しかしながら、甲第1号証には、継手本体が、軸方向両端に開口した主管部と、この主管部の軸直交方向の一方に開口した分岐管とを備え、主管部の両端に同軸に第1受口および第2受口が設けられ、分岐管部の先端に第3受口を備えたチーズ状の管継手が記載され、継手本体および各受口が、透明あるいは半透明の光透過性を有した非発泡樹脂により形成され、継手本体の肉厚内部には、発泡性樹脂により形成された断熱層が設けられること、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを混合させた発泡性樹脂を用いることが記載されている。甲5発明において、甲第1号証の記載に基づいて構成要件A、B及びCを充足するように透明管継手を製造することは当業者にとって単なる設計事項に過ぎない。 また、甲第7号証には、錫系安定剤は、鉛安定剤使用品との混合で硫化汚染が生じ得ることが記載されている。塩化ビニルの配合で、鉛安定剤と錫安定剤とを混合させると、鉛金属と錫安定剤に含まれる硫黄との反応で鉛が硫化鉛となって黒変色することは、当業者にとっては、技術常識である。したがって、非発泡層において錫系安定剤を用いる場合、発泡層において鉛安定剤を用いないようにすることは当業者にとって当然のことである、 と主張している。 ウ 上記ア及びイの主張の検討 アの主張について見ると、本件特許発明1の「樹脂管継手」は、その「本体部」として「発泡層」と「非発泡層」との二種の「樹脂組成物」を「成形して」なるものとされる。そうすると、塩化ビニル系樹脂組成物が複合して複数用いられる際には、安定剤としてどの樹脂組成物にも錫系安定剤を用いるべきだとする内容の公知性が問われるところ、甲1ないし17のいずれの提出証拠にもそういった二種の樹脂組成物の成形品における安定剤についての記載が無いのは明らかである。 よって、上記アの主張は採用できない。 上記イの主張について、異議申立人は甲第7号証に塩化ビニルへの配合で硫化汚染が生じ得ることが記載されていると主張しているが、当該記載に関係する【0019】によると、硫化汚染が生じ得るとされる局面は、「リサイクルした場合」による「鉛安定剤使用品との混合」であると明記され、異議申立人が主張する「塩化ビニルの配合で、鉛安定剤と錫安定剤とを混合させる」ことによって起こる局面での言及ではない。事実【0037】以降に記載された実施例の中には、2層成形品の表層と中層の各々に配合される安定剤として、表層では錫系を、中層では鉛系を使用した例が、【表2】に実施例5,6として記載されており、技術常識であるとは認めがたい。 また、甲第7号証では塩化ビニルに配合する安定剤を錫系安定剤とすべき理由は、「耐候性」に「優れる」とされているから、本件特許発明が解決しようとする課題や解決する手段の作用効果とは思想を異にすることが明らかである。 そうすると、もはや異議申立人の主張に沿って本件特許発明が甲5発明、甲1記載事項、及び甲7に基いて当業者が容易に想到し得たとは認められない。 よって、上記イの主張は採用できない。 よって、異議申立書における異議申立人の主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700116

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