特許異議申立
2025-700673
地盤改良翼の供廻り検知装置
- 審判番号
- 2025-700673
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-176552
- 登録番号
- 7629669
- 請求日
- 2025年06月30日
- 審決日
- 2025年10月23日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社ワイビーエム
- 【権利者代理人】弁理士法人よつ葉国際特許事務所
- 【権利者代理人】富崎 元成
- 【権利者代理人】富崎 曜
- 【異議申立人】三瓶 光毅
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 家田 政明
- 分類
- P1651.121-Y (E02D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7629669号発明「地盤改良翼の供廻り検知装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7629669号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7629669号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和6年10月8日に出願され、令和7年2月5日にその特許権の設定登録がされ、同月14日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年6月30日に、特許異議申立人 三瓶 光毅(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし5に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7629669号の請求項1ないし5に係る発明(以下、請求項番号により「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
回転駆動装置により回転駆動され、地盤に地盤改良材を吐出させて地盤改良柱を形成するための吐出穴を有する攪拌軸と、
前記攪拌軸に固定され、前記地盤の掘削穴内の掘削された掘削土と前記地盤改良材を攪拌する攪拌翼と、
前記攪拌軸の地盤底側の端部に設けられ、複数の掘削刃を有して前記掘削穴を掘削する掘削翼と、
前記攪拌翼と前記掘削翼との間の前記攪拌軸に回転自在に設けられ、前記掘削時に外周端部が前記掘削穴の周壁に係合して回転が止められ、前記攪拌翼及び前記掘削翼の回転と相対回転して掘削された掘削土を前記地盤改良材とともに混合攪拌させる供廻り防止翼と、
前記攪拌軸と前記供廻り防止翼の相対回転である供廻りデータを検出するために、前記供廻り防止翼内の供廻り検出ユニットに配置されたセンサーと、
前記供廻り防止翼に配置され、地盤改良中に前記掘削穴内で前記センサーが検知した前記相対回転を記録するためのデータ記録手段と
からなる地盤改良装置において、
一面が開口し、前記供廻り検出ユニットを内部に収納し電磁波をシールドする金属製の筐体と、
前記開口を閉じ、前記筐体に固定され前記電磁波を通す素材で作られ板材のスペーサと、
前記スペーサの外周面を外部に露出させ、かつ前記スペーサの前面をカバーして、前記掘削土と前記地盤改良材から前記スペーサを保護する金属製の保護板と
からなることを特徴とする地盤改良翼の供廻り検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地盤改良翼の供廻り検知装置において、
前記スペーサの外形は、円形、正多角形、及び長方形から選択される一つ以上である
ことを特徴とする地盤改良翼の供廻り検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の地盤改良翼の供廻り検知装置において、
前記スペーサは、前記外周面の露出面積と前記前面を保護した保護板の保護面積とを対比すると、前記保護面積が大きい
ことを特徴とする地盤改良翼の供廻り検知装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の地盤改良翼の供廻り検知装置において、
前記スペーサの素材は、合成樹脂、ガラス、セラミックス、及びゴムから選択される1種である
ことを特徴とする地盤改良翼の供廻り検知装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の地盤改良翼の供廻り検知装置において、
前記スペーサと前記筐体の間にOリングが配置されている
ことを特徴とする地盤改良翼の供廻り検知装置。」
第3 申立理由の概要
申立人が申立書において主張する申立理由は、概略次のとおりである。
1 申立理由(進歩性)
(1)本件発明1は、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載事項及び周知技術(甲第2-3号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明3は、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明4は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載事項及び周知技術(甲第2-3号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明5は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載事項及び周知技術(甲第3号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1-5は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許がなされたものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。(申立書第4~27頁)
第4 証拠について
1 証拠一覧
申立人が申立書に添付して提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2022-185457号公報
甲第2号証:特開2024-16638号公報
甲第3号証:国際公開第2022/270633号
(以下、各甲号証をその番号により「甲1」等と呼ぶことがある。)
2 各証拠の記載
(1)甲1
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下、同様。)
(ア)「【0001】
本発明は、セメント系固化材スラリーを用いた深層混合処理工法における混合撹拌翼による対象土の土質改良状況を検知するシステムおよび方法に関する。
【0002】
セメント系固化材スラリーを用いた深層混合処理工法においては、改良対象土が粘性の大きい土である場合に、撹拌翼に改良対象土が付着し、撹拌翼と改良対象土とが一体となって回転し、固化材スラリーと改良対象土とが混合できなくなるいわゆる共回り現象が起きる場合がある。
・・・
【0004】
前記地盤改良機によれば、回転ロッド回転数に対する剪断補助翼回転数(相対回転数)を検出するために、掘削翼より長い板で構成される剪断補助翼が、回転ロッドに回転自在に取り付けられ、掘削範囲外の地盤に食い込んだ部分の抵抗力によって静止するという機構を採用している。
【0005】
そして、共回り現象が起きていないならば撹拌翼が回転しても、剪断補助翼地中で静止しているはずであるから、ロッドの回転数と相対回転数は等しいと検知される、という前提で共回り現象が検知される。」
(イ)「【0026】
(深層混合処理施工機の構成)
図1に示されているように、本発明の土質改良状況監視システムが適用される深層混合処理施工機1は、回転ロッド10と、掘削翼11と、攪拌翼12と、剪断補助翼14と、を備えている。
【0027】
回転ロッド10は、略円筒状のロッド本体部101と、ロッド本体部101の下端部に同軸に接続されている略有底円筒状のヘッド部102と、により構成されている。ロッド本体部101がオーガーモータ等により回転駆動されることにより、回転ロッド10が全体的に回転駆動される。回転ロッド10の内部には、回転ロッド10の下端部に設けられた吐出口104に連通する固化材流路(図省略)が設けられている。固化材(例えば、セメント系スラリー)が固化材流路を介して地上から回転ロッド10の先端部まで送り込まれ、吐出口104から改良対象土に対して吐出される。
【0028】
掘削翼11は、ヘッド部102の先端部から略水平方向に突出するようにヘッド部102の先端部に対して固定して取り付けられている。掘削翼11は、回転ロッド1とともに一体的に回転することにより土を掘削する役割を担う。例えば、図2に示されているように、掘削翼11は、時計回りに回転駆動される回転ロッド1とともに一体的に時計回りに回転駆動される。
【0029】
攪拌翼12は、掘削翼11よりも上側でヘッド部102から略水平方向に突出するようにヘッド部10に対して固定して取り付けられている。攪拌翼12は、掘削翼11と同様、回転ロッド1とともに一体的に回転することにより、掘削翼11で掘削された対象土と、ロッド10の下端部の吐出口104から対象土に供給された固化材と、を攪拌・混合する役割を担う。例えば、図2に示されているように、攪拌翼12は、時計回りに回転駆動される回転ロッド1とともに一体的に時計回りに回転駆動される。
【0030】
剪断補助翼14は、掘削翼11と攪拌翼12との間にヘッド部10に対して遊嵌または挿嵌されて回動自在に取り付けられている。剪断補助翼14は、回転ロッド10が回転している状態で、通常は回転ロッド10に対して相対的に静止することにより対象土と固化材との攪拌および混合を補助するとともに、対象土が攪拌翼12に塊状に付着して攪拌翼12と一緒に回転してしまう共回りを防止する役割を担う。例えば、図2に示されているように、剪断補助翼14は、時計回りに回転駆動される回転ロッド1に対して静止することにより相対的に反時計回りに回転する状態になる。」
(ウ)「【0032】
(土質改良状況監視システムの構成)
図3に示されているように、本発明の一実施形態としての土質改良状況監視システム2は、第1状況監視モジュール21と、第2状況監視モジュール22と、を備えている。図1および図2に示されているように、第1状況監視モジュール21は、剪断補助翼14の根本部位に設けられているハウジングに収容されている。
【0033】
ハウジングは、第1状況監視モジュール21を保護する観点から、ステンレス等の堅牢な材料により構成されている。ハウジングは、容器部から蓋部が取り外されることによってその内部空間にアクセス可能に構成されている。容器部および蓋部の間には、ハウジングの内部空間への水および土の侵入を防止するためにシール部材が設けられている。電磁波透過性がある材料によってシール部材が構成されることにより、容器部および蓋部の間隙で変形している当該シール部材を通じて、ハウジングの内部空間と外部空間との間での無線通信が可能に構成されている。
【0034】
第1状況監視モジュール21は、その構成要素の小型化および/または近接配置、配線量の低減等により、ハウジングともども可能な範囲に小型化されたうえで、剪断補助翼14の基部に形成された凹部に収容された形態で組み込まれてもよい。図1に示されているように、第2状況監視モジュール22は、地上において深層混合処理施工機1の周囲の適当な箇所に配置されている。
【0035】
図3に示されているように、第1状況監視モジュール21は、第1演算処理装置210、状況監視センサ211、第1記憶装置212および第1無線通信機器214を備えている。第1演算処理装置210は、コンピュータを構成する演算処理装置(CPU、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ)により構成されている。第1記憶装置212は、状況監視センサ211の出力信号または当該出力信号により表わされる剪断補助翼14の回転数の時系列を記憶保持する。第1記憶装置212は、HDDもしくはSSDまたはメモリ(RAM、ROMなど)により構成されている。第1無線通信機器214は、例えば、近距離無線通信方式(例えば、Bluetooth(「Bluetooth」は登録商標))または遠距離無線通信方式(例えば、Wi-Fi(「Wi-Fi」は登録商標))の無線通信機器により構成されている。第1演算処理装置210、状況監視センサ211、第1記憶装置212および第1無線通信機器214のそれぞれに共通のまたは別個の電源としてのバッテリが第1状況監視モジュール21に含まれていてもよい。
【0036】
状況監視センサ211は、剪断補助翼14の回転数を測定するためのセンサであり、例えば、世界座標系における剪断補助翼14の回転数を測定するためのジャイロセンサ、磁気センサおよび/または地磁気センサにより構成されている。状況監視センサ211は、回転ロッド10において軸線方向について剪断補助翼14に近接し、かつ、軸線から径方向に外れた位置で周方向に配置された一または複数のマグネットに対向して配置される磁気式近接スイッチにより構成されていてもよい。マグネットおよび磁気式近接スイッチが近接することにより、非接触方式で回転ロッド10に対する剪断補助翼14の相対的な回転数が測定される。」
(エ)「【0038】
(土質改良状況監視システムの機能)
掘削翼11が回転ロッド1とともに一体的に回転することにより改良対象土が掘削される。また、回転ロッド10の下端部の吐出口104から固化材が対象土に対して吐出され、攪拌翼12が回転ロッド1とともに回転することにより、対象土と固化材とが攪拌かつ混合される。さらに、攪拌翼12が回転している間、剪断補助翼14が周辺地盤の抵抗により、回転ロッド1に対し相対的に静止していることにより、共回りが抑えられ、掘削土と固化材との攪拌・混合が促進される。
【0039】
この際、第1状況監視モジュール21において、第1演算処理装置210により、状況監視センサ211を通じて剪断補助翼14の回転数を表わすセンサデータが取得され、かつ、第1記憶装置212に時系列的に記憶保持させる(図4/STEP211)。通常は、回転ロッド10に対して回動自在に取り付けられている剪断補助翼14の回転数は0またはほぼ0である。その一方、回転ロッド10および剪断補助翼14に付着した塊状の対象土によって、剪断補助翼14に回転ロッド10の回転力が伝達される場合、その回転数が回転ロッド10の回転数に近くなる傾向がある。」
(オ)【図1】には、以下の図示がある。
「
[図:0001429042000001.jpg]
」
(カ)【図2】には、以下の図示がある。
「
[図:0001429042000002.jpg]
」
(キ) 看取できる事項について
【図1】及び【図2】から、「掘削翼11が複数の掘削刃を有する」ことが看取される。
イ 甲1発明
上記アから、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「略円筒状のロッド本体部101と、ロッド本体部101の下端部に同軸に接続されている略有底円筒状のヘッド部102と、により構成され、ロッド本体部101がオーガーモータ等により回転駆動され、固化材流路を介して地上から回転ロッド10の先端部まで送り込まれた固化材(例えば、セメント系スラリー)が、改良対象土に対して吐出される吐出口104が回転ロッド10の下端部に設けられた、回転ロッド10と、(【0027】)
ヘッド部102から略水平方向に突出するようにヘッド部10に対して固定して取り付けられ、掘削翼11で掘削された対象土と、ロッド10の下端部の吐出口104から対象土に供給された固化材と、を攪拌・混合する役割を担う攪拌翼12と、(【0029】)
ヘッド部102の先端部から略水平方向に突出するようにヘッド部102の先端部に対して固定して取り付けられ、土を掘削する役割を担う、複数の掘削刃を有する掘削翼11と、(【0028】、ア(キ))
掘削翼11と攪拌翼12との間にヘッド部10に対して遊嵌または挿嵌されて回動自在に取り付けられており、掘削翼より長い板で構成される剪断補助翼が、掘削範囲外の地盤に食い込んだ部分の抵抗力によって、回転ロッド10が回転している状態で、通常は回転ロッド10に対して相対的に静止して、対象土と固化材との攪拌および混合を補助するとともに、対象土が攪拌翼12に塊状に付着して攪拌翼12と一緒に回転してしまう共回りを防止する役割を担う剪断補助翼14と、(【0004】、【0030】)
剪断補助翼14の根本部位に設けられているハウジングに収容された第1状況監視モジュール21に備えられ、剪断補助翼14の回転数を測定するためのセンサであり、非接触方式で回転ロッド10に対する剪断補助翼14の相対的な回転数が測定される状況監視センサ211であって、(【0032】、【0035】、【0036】)
状況監視センサ211を通じて剪断補助翼14の回転数を表わすセンサデータが取得され、通常は、回転ロッド10に対して回動自在に取り付けられている剪断補助翼14の回転数は0またはほぼ0である一方、回転ロッド10および剪断補助翼14に付着した塊状の対象土によって、剪断補助翼14に回転ロッド10の回転力が伝達される場合、その回転数が回転ロッド10の回転数に近くなる傾向がある状況監視センサ211と、(【0039】)
状況監視センサ211の出力信号または当該出力信号により表わされる剪断補助翼14の回転数の時系列を記憶保持する第1記憶装置212と、(【0035】)
からなる深層混合処理施工機1において、(【0026】)
ステンレス等の堅牢な材料により構成され、容器部から蓋部が取り外されることによってその内部空間にアクセス可能に構成され、容器部および蓋部の間には、ハウジングの内部空間への水および土の侵入を防止するために電磁波透過性がある材料によって構成されたシール部材が設けられ、容器部および蓋部の間隙で変形している当該シール部材を通じて、ハウジングの内部空間と外部空間との間での無線通信が可能に構成される、ハウジング(【0033】)。」
(2)甲2
ア 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【要約】
【課題】検知器の耐久性を向上させ、検知器と物体との接触による双方の損傷リスクを低減させ、検知器との良好な無線通信状態を確保できるケーシングとキャップの組立体およびこの組立体を備えたマリンホースの流体漏れ検知システムを提供する。
【解決手段】基部18aと電波透過部18bとで形成された保圧室18cに圧力センサ部15とICタグ12が収容されるケーシング18では、平面視で電波透過部18bの外周側位置に周方向に間隔をあけて3本以上の金属製の突起部19を電波透過部18bよりも上方に基部18aから突出させ、突起部19の上端部どうしは離間させ、各突起部19の上端部を平面視で周方向に連続して被覆する樹脂またはゴム製の環状キャップ20をケーシング18に固定した状態では、各突起部19に対する内周側領域と外周側領域とが周方向に隣り合う突起部19の下端部どうしのすき間を通じて連通する。
【選択図】 図5」
(イ)「【0020】
図3~図11に例示するように、検知器11は、ケーシング18とキャップ20とで構成される組立体21と、ケーシング18の内部の保圧室18cに収容される圧力センサ部15およびパッシブ型のICタグ12とを有している。
【0021】
図5に例示するように、この実施形態では、検知器11は金属製の筒状のアダプタ部23を介して連通管10に接続されている。詳述すると、連通管10の端部にある筒状の管端接続部10aとアダプタ部23とが螺合して接続されている。このアダプタ部23とケーシング18の基部18aが接続されていて、両者の間は円環状のシール材18s(Oリング)によって水密性が確保されている。アダプタ部23の内部は水密性を有する導入室23aになっている。アダプタ部23を使用しない場合は、基部18aと管端接続部10aとが接続される。
【0022】
ケーシング18は、金属製の筒状の基部18aと、基部18aの上端部側を水密に遮断する電波透過部18bと、電波透過部18bよりも上方に突出する3本以上の金属製の突起部19とを有している。この実施形態では、ケーシング18はさらに環状の固定部18dを有している。基部18aと突起部19とは基本的に一体物である。基部18a、固定部18dおよび突起部19は例えばステンレス鋼などで形成される。
【0023】
図5、図10に例示するように基部18aは内部に、電波透過部18bが配置される大径の窪みと、この大径の窪みの下方に連接する小径の窪みとを有している。この小径の窪みの底面に、基部18aの下端部に取り付けられた逆止弁17の上端が露出している。基部18aの内部(大径の窪みの底面部分)および基部18aの下面には円環状のシール材18s(Oリング)が配置されている。尚、シール材18sは必要な位置に適宜配置される。
【0024】
電波透過部18bは、この実施形態では円盤状に形成されていて、その下面に窪みを有している。電波透過部18bの下面の窪みと、基部18aの内部の小径の窪みが上下に対向するように設定されている。電波透過部18bはその下面を、基部18aの内部の大径の窪みの底面部分に当接させて基部18aに設置されている。」
(ウ)「【0027】
電波透過部18bの比誘電率は、発信電波R1および返信電波R2を透過させ易くするために5.0以下に設定され、例えば2.0以上5.0以下、より好ましくは2.5以上3.0以下に設定される。電波透過部18bは、耐久性や耐衝撃性等を考慮して、その材質として例えばポリカーボネート、ポリアミド、エポキシ樹脂などが採用される。」
(エ)「【0036】
電波透過部18bの上面の露出面積は大きい程、ICタグ12と通信機24との間の電波通信を良好に維持するには有利になるが、電波透過部18bの耐圧性を確保するには不利になる。そこで、図7に例示するように電波透過部18bの上面を円形とした場合に直径Daは例えば40mm以上70mm以下にする。即ち、電波透過部18bの上面は直径Daが40mm以上70mm以下に相当する露出面積にするとよい。平面視で対向するそれぞれの突起部19どうしのすき間Dbは、直径Daの100%以上にする。また、図10に例示するように電波透過部18bの上面の厚さCは大きい程、耐圧性を確保するには有利になるが、ICタグ12と通信機24との間の電波通信を良好に維持するには不利になる。そこで、電波透過部18bの上面の厚さCは例えば5mm以上15mm以下にする。」
(オ)【図5】には、以下の図示がある。
「
[図:0001429042000003.jpg]
」
(カ)【図7】には、以下の図示がある。
「
[図:0001429042000004.jpg]
」
(3)甲3
ア 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「[0014] 図1に示すように、実施形態に係る非接触通信媒体100は、電子部品1と、筐体3と、蓋体4と、固定具5と、を有する。電子部品1は、筐体3の内部に収容されている。電子部品1は、たとえば、断熱材6に囲まれていてもよい。」
(イ)[0034]<蓋体について>
蓋体4は、筐体3の開口33を覆う部材であり、筐体3に対して着脱可能であってもよい。蓋体4は、平面視円形状の板状部材であってもよい。蓋体4の外径は、筐体3の内径よりも大きく、筐体3の外径よりも小さてもよい。図1に示す例において、蓋体4は、外周部において筐体3の上端面323(図2参照)に当接している。
[0035] 蓋体4は、筐体3よりも高い電波透過性を有する。このような蓋体4としては、たとえば第1基材21および第2基材22と同様、セラミックスや耐熱性樹脂で形成されうる。蓋体4を構成するセラミックスとしては、たとえばコージェライトの他、Al2O3、Si3N4、SiC、Al2TiO5、Li2O-Al2O3-SiO2等を用いてもよい。また、蓋体4を構成する耐熱性樹脂としては、たとえばPEEK、PBOおよびPBI等を用いてもよい。」
(ウ)「[0042] 図6に示すように、筐体3は、側壁部32の外周面321に螺旋状の第1溝部325を有していてもよい。また、固定具5は、側壁部32の内周面521に、筐体3の第1溝部325と螺合する螺旋状の第2溝部523を有してもよい。この場合、第1溝部325と第2溝部523とが螺合することによって固定具5が筐体3に固定される。これに伴い、筐体3と固定具5との間に位置する蓋体4は、筐体3と固定具5とに挟み込まれるようにして筐体3に固定される。」
(エ)「[0065]<第2変形例>
図9は、第2変形例に係る非接触通信媒体100の模式的な拡大断面図である。図9に示すように、蓋体4の下面42と筐体3との間に第2封止部102を有していてもよい。第2封止部102としては、たとえば耐熱性樹脂からなる円環状のガスケットを用いることができる。
[0066] 第2封止部102は、蓋体4の下面42と筐体3の上端面323とに挟み込まれることにより、蓋体4の下面42と筐体3の上端面323との隙間を塞ぐ。このように、液体または気体の侵入箇所となり得る蓋体4の下面42と筐体3の上端面323との隙間を第2封止部102で塞ぐことにより、外部から筐体3の内部への液体または気体の侵入をさらに抑制することができる。」
(オ)[図1]には、以下の図示がある。
「
[図:0001429042000005.jpg]
」
(カ)[図9]には、以下の図示がある。
「
[図:0001429042000006.jpg]
」
第5 申立理由(進歩性)についての当審の判断
1 本件発明1
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「オーガーモータ」は、「ロッド本体部101」を「回転駆動」するものであるから、本件発明1の「回転駆動装置」に相当する。
イ 甲1発明の「固化材(例えば、セメント系スラリー)」は、「改良対象土に対して吐出」されるものであるから、甲1発明の「固化材(例えば、セメント系スラリー)」は、本件発明1の「地盤」に「吐出」される「地盤改良材」に相当する。
ウ 甲1発明の「吐出口104」において、「固化材(例えば、セメント系スラリー)が固化材流路を介して地上から回転ロッド10の先端部まで送り込まれ、吐出口104から改良対象土に対して吐出され」ることにより、「掘削翼11で掘削された対象土」と、「対象土に供給された固化材と、を攪拌・混合」するものであり、その結果として柱状の地盤改良構造が形成されることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「吐出口104」は、「固化材流路を介して地上から回転ロッド10の先端部まで送り込まれた固化材(例えば、セメント系スラリー)が、改良対象土に対して吐出される」から、本件発明1の「地盤に地盤改良材を吐出させて地盤改良柱を形成するための吐出穴」に相当する。
そして、甲1発明の「回転ロッド10」は、「吐出口104が回転ロッド10の下端部に設けら」れるから、本件発明1の「吐出穴を有する攪拌軸」に相当する。
エ 甲1発明の「掘削翼11で掘削された対象土」は、本件発明1の「地盤の掘削穴内の掘削された掘削土」に相当する。
そうすると、甲1発明の「回転ロッド10」の「ヘッド部102」「に対して固定して取り付けられ」た「攪拌翼12」は、「掘削翼11で掘削された対象土」と、「対象土に供給された固化材と、を攪拌・混合する役割を担」うから、本件発明1の「前記攪拌軸に固定され、地盤の掘削穴内の掘削された掘削土と前記地盤改良材を攪拌する攪拌翼」に相当する。
オ 甲1発明の「複数の掘削刃を有する掘削翼11」は、「ヘッド部102の先端部に対して固定して取り付けられ」ており、「土を掘削する役割を担う」ので、本件発明1の「攪拌軸の地盤底側の端部に設けられ」た、「複数の掘削刃を有して」「掘削穴を掘削する掘削翼」に相当する。
カ 甲1発明の「剪断補助翼14」は、「掘削翼11と攪拌翼12との間にヘッド部10に対して遊嵌または挿嵌されて回動自在に取り付けられており」、「掘削範囲外の地盤に食い込んだ部分の抵抗力によって、回転ロッド10が回転している状態で、通常は回転ロッド10に対して相対的に静止して」おり、「対象土と固化材との攪拌および混合を補助する」ものであって、「対象土が攪拌翼12に塊状に付着して攪拌翼12と一緒に回転してしまう共回りを防止する役割を担う」から、本件発明1の「攪拌翼と掘削翼との間の攪拌軸に回転自在に設けられ、掘削時に外周端部が掘削穴の周壁に係合して回転が止められ、攪拌翼及び掘削翼の回転と相対回転して掘削された掘削土を地盤改良材とともに混合攪拌させる供廻り防止翼」に相当する。
キ 甲1発明の「剪断補助翼14の根本部位に設けられているハウジングに収容され」ている「第1状況監視モジュール21」は、本件発明1の「供廻り防止翼内の供廻り検出ユニット」に相当する。
そして、甲1発明の「剪断補助翼14」が「対象土が攪拌翼12に塊状に付着して攪拌翼12と一緒に回転してしまう」ことが「共回り」であることを踏まえると、甲1発明の「状況監視センサ211を通じて剪断補助翼14の回転数を表わすセンサデータ」が、「通常は、回転ロッド10に対して回動自在に取り付けられている剪断補助翼14の回転数は0またはほぼ0である一方、回転ロッド10および剪断補助翼14に付着した塊状の対象土によって、剪断補助翼14に回転ロッド10の回転力が伝達される場合、その回転数が回転ロッド10の回転数に近くなる傾向があ」ることは、「回転ロッド10」と「剪断補助翼14」の相対回転について、「通常は、回転ロッド10に対して回動自在に取り付けられている剪断補助翼14の回転数は0またはほぼ0である」か否かで「共回り」を知ることを意味することは明らかである。
そうすると、甲1発明の「状況監視センサ211」は、「状況監視センサ211を通じて剪断補助翼14の回転数を表わすセンサデータが取得され」るものであり、「剪断補助翼14の根本部位に設けられているハウジングに収容された第1状況監視モジュール21に備えられ」るから、本件発明1の「攪拌軸と供廻り防止翼の相対回転である供廻りデータを検出するために、供廻り防止翼内の供廻り検出ユニットに配置されたセンサー」に相当する。
ク 甲1発明の「第1記憶装置212」は、「第1状況監視モジュール21」に備えられており、「第1状況監視モジュール21は、剪断補助翼14の根本部位に設けられているハウジングに収容され」ているので、甲1発明の「第1記憶装置212」は、「剪断補助翼14の根本部位に設けられているハウジングに収容され」ているものであり、「状況監視センサ211の出力信号または当該出力信号により表わされる剪断補助翼14の回転数の時系列を記憶保持」するものである。
そうすると、甲1発明の「第1記憶装置212」は、本件発明1の「供廻り防止翼に配置され、地盤改良中に掘削穴内でセンサーが検知した相対回転を記録するためのデータ記録手段」に相当する。
ケ 上記ア~クを踏まえると、甲1発明の「深層混合処理施工機1」は、本件発明1の「地盤改良装置」に相当する。
コ 甲1発明の「容器部」は、「ステンレス等の堅牢な材料により構成され」、「容器部および蓋部の間には、ハウジングの内部空間への水および土の侵入を防止するために電磁波透過性がある材料によって構成されたシール部材が設けられ、容器部および蓋部の間隙で変形している当該シール部材を通じて、ハウジングの内部空間と外部空間との間での無線通信が可能に構成される」から、電磁場をシールドする機能を有することは明らかである。
そうすると、甲1発明の「第1状況監視モジュール21」を「収容」し、「容器部から蓋部が取り外されることによってその内部空間にアクセス可能に構成され」る「容器部」は、本件発明1の「一面が開口し、前記供廻り検出ユニットを内部に収納し電磁波をシールドする金属製の筐体」に相当する。
サ 甲1発明の「ハウジングの内部空間への水および土の侵入を防止するためにシール部材」は、「電磁波透過性がある材料によってシール部材が構成され、容器部および蓋部の間隙で変形している当該シール部材を通じて、ハウジングの内部空間と外部空間との間での無線通信が可能に構成され」ているから、本件発明1の「筐体に固定され電磁波を通す素材で作られ板材のスペーサ」と、甲1発明の「シール部材」は、「筐体に固定され電磁波を通す素材で作られた電磁波透過体」である点で共通する。
シ 甲1発明の「蓋部」は、「容器部」との「間隙で変形している当該シール部材を通じて、ハウジングの内部空間と外部空間」との「無線通信が可能に構成」されており、「シール部材」を「容器部」との「間隙で変形」させるから、「シール部材」の外周面が外部に露出することは明らかである。
また、甲1発明の「ハウジング」の「蓋部」は、ステンレス等の堅牢な材料により構成」され、「容器部および蓋部の間には、ハウジングの内部空間への水および土の侵入を防止するために電磁波透過性がある材料によって構成されたシール部材が設けられ」るから、「蓋部」が前面に配置され、「水および土の侵入を防止」することは明らかである。
そうすると、本件発明1の「保護板」と、甲1発明の「蓋部」は、「電磁波透過体の外周面を外部に露出させ、かつ電磁波透過体の前面をカバーして、掘削土と地盤改良材から電磁波透過体を保護する金属製の保護板」である点で共通する。
ス 甲1発明の「ハウジング」は、共回りを検知する「第1状況監視モジュール21」を収容するから、本件発明1の「地盤改良翼の供廻り検知装置」に相当する。
セ 上記アないしスの対比を総合すると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
回駆動装置により回転駆動され、地盤に地盤改良材を吐出させて地盤改良柱を形成するための吐出穴を有する攪拌軸と、
前記攪拌軸に固定され、前記地盤の掘削穴内の掘削された掘削土と前記地盤改良材を攪拌する攪拌翼と、
前記攪拌軸の地盤底側の端部に設けられ、複数の掘削刃を有して前記掘削穴を掘削する掘削翼と、
前記攪拌翼と前記掘削翼との間の前記攪拌軸に回転自在に設けられ、前記掘削時に外周端部が前記掘削穴の周壁に係合して回転が止められ、前記攪拌翼及び前記掘削翼の回転と相対回転して掘削された掘削土を前記地盤改良材とともに混合攪拌させる供廻り防止翼と、
前記攪拌軸と前記供廻り防止翼の相対回転である供廻りデータを検出するために、前記供廻り防止翼内の供廻り検出ユニットに配置されたセンサーと、
前記供廻り防止翼に配置され、地盤改良中に前記掘削穴内で前記センサーが検知した前記相対回転を記録するためのデータ記録手段と
からなる地盤改良装置において、
一面が開口し、前記供廻り検出ユニットを内部に収納し電磁波をシールドする金属製の筐体と、
前記筐体に固定され前記電磁波を通す素材で作られた電磁波透過体と、
前記電磁波透過体の外周面を外部に露出させ、かつ前記電磁波透過体の前面をカバーして、前記掘削土と前記地盤改良材から前記電磁波透過体を保護する金属製の保護板と
からなる地盤改良翼の供廻り検知装置。
(相違点)
外周面を外部に露出させ、かつ前面を保護板でカバーされる電磁波透過体について、
本件発明1の「スペーサー」は、筐体の開口を閉じる板材のものであるのに対し、
甲1発明の「シール部材」は、ハウジングの開口を閉じる板材であることが特定されていない点。
(2) 検討・判断
相違点について検討する。
ア 甲1発明の、「容器部および蓋部の間に」配置され、「ハウジングの内部空間への水および土の侵入を防止するために電磁波透過性がある材料によって構成されたシール部材」を「開口を閉じ、筐体に固定され電磁波を通す素材で作られ板材のスペーサ」とすることは、申立人の提出した証拠のいずれの技術事項からも当業者が容易に想到し得たものでない。
イ 甲2には、電磁波透過体として円盤状に形成された電波透過部18bが記載されており、この電波透過部18bは、基部18aに形成され、圧力センサ部15およびパッシブ型のICタグ12を収納する保圧室18cの上側の開口を閉じるものである(上記「第4 2(2)ア(イ)、(オ)」)。
しかしながら、甲2に記載の円盤状の電波透過部18bは、その下面から上面に向けて電波を透過するものであり、電磁波透過体の前面がカバーされて前面から電波が透過できなくてもその外周から透過するために外周面を外部に露出させたものでもないため、甲1発明の「シール部材」に適用する動機がなく、仮に適用できるとしても、筐体に固定された状態でその前面を保護する保護板を有さないことから介在物であるところのスペーサーであるとはいえないから、相違点に係る本件発明1の構成とはならない。
(3) 申立人の主張についての見解
ア 申立人は、申立書において、甲1発明と甲2に記載された技術事項は、金属製の筐体に収容される通信装置と、当該筐体の外部にある他の通信機器との通信を可能とするという課題の共通性、及び、当該筐体の開口を閉じる閉塞部材の一部に電波透過性をもたせることで当該課題を解決している作用・機能の共通性を有し、甲1発明に甲2に記載された技術事項を適用する動機付けが存在し、甲1発明に甲第2号証に記載された技術事項を適用して、本件発明1に想到することは当業者にとって想到容易であった旨主張(申立書23頁25行~24頁3行)するが、上記(2)に示したように、甲2に記載の電波透過部18bは、スペーサーであるとはいえず、また、外周面を外部に露出させるものでもないので、甲1発明及び甲2に記載の技術事項から、本件発明1とすることが、当業者にとって容易であるとはいえない。
イ 申立人が提出したその余の証拠をみても、相違点に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
ウ よって、当業者にとって、甲1発明及び甲2に記載された技術事項、並びに、申立人が提出したその余の証拠に記載された事項に基づいて、相違点に係る本件発明1の構成とすることはできない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された技術事項、並びに、申立人が提出したその余の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2ないし5
本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えたものであるから、上記1に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲2に記載された技術事項、並びに、申立人が提出したその余の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700673