特許異議申立
2025-700537
車両用ランプ
- 審判番号
- 2025-700537
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-168150
- 登録番号
- 7635108
- 請求日
- 2025年05月19日
- 審決日
- 2025年12月02日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社小糸製作所
- 【権利者代理人】鈴木 章夫
- 【異議申立人】金田 綾香
- 審判長/審判官
- 審判長 草野 顕子
- 審判官 高橋 学
- 審判官 横溝 顕範
- 分類
- P1651.121-Y (F21S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7635108号発明「車両用ランプ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7635108号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7635108号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和3年10月13日にされ、令和7年2月14日にその特許権の設定登録がされ、同年2月25日に特許掲載公報が発行され、令和7年5月19日に特許異議申立人金田綾香(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~10に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
なお、本件特許の請求項1~10に係る発明を、以下、それぞれ「本件発明1」等という。
「【請求項1】
デザイン部とシグネチャー部でランプユニットが構成されており、デザイン部は、第1光源と、内部を導光される第1光源の光を反射して所要の発光パターンを形成するための光反射ステップが形成された導光板を備え、シグネチャー部は、第2光源と、この第2光源の光を面状に発光させる発光面を備え、前記導光板は少なくとも一つの鋭角の角部を有する四角形に形成されており、前記鋭角の角部に設けられた光入射面に前記第1光源の光が入射され、前記光反射ステップは、指向性のある光反射を行う第1光反射ステップと、無指向性で光反射を行う第2光反射ステップを備え、前記第1光反射ステップで反射された光により第1発光パターンが形成され、前記第2光反射ステップで反射された光により第2発光パターンが形成され、前記第2発光パターンは観察位置の違いに関わらず観察されるパターン形状が変化せず、前記第1発光パターンは観察位置の違いに応じて観察されるパターン形状が変化する車両用ランプ。
【請求項2】
前記導光板は平行四辺形に形成されている請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項3】
前記第1光反射ステップは柱状をした凹部で構成され、前記第2光反射ステップは球面状をした凹部で構成される請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項4】
前記導光板の車幅方向の外側に位置されている鋭角の角部に設けられた光入射面に前記第1光源の光が入射され、入射された光が車幅方向の内側に向けて導光される請求項2に記載の車両用ランプ。
【請求項5】
前記導光板の車幅方向の内側に位置されている鋭角の角部に設けられた光入射面に前記第1光源の光が入射され、入射された光が車幅方向の外側に向けて導光される請求項2に記載の車両用ランプ。
【請求項6】
前記第1光反射ステップは少なくとも水平方向の指向性を有しており、当該水平方向の指向性が相違する複数のステップで構成される請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項7】
前記シグネチャー部は所要の長さの導光ロッドを備えており、当該導光ロッドは、前記第2光源の光が長さ方向に導光されかつその周面から出射される構成とされ、前記発光面は当該導光ロッドの長さ方向に沿って配設されている請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項8】
前記シグネチャー部は、前記第1光源がランプ正面に露呈されないように覆い隠す構成である請求項7に記載の車両用ランプ。
【請求項9】
車両の車体の固定部に配設される固定側ユニットと、車体の可動部に配設される可動側ユニットを備え、これら固定側ユニットと可動側ユニットの少なくとも一方のユニットにデザイン部とシグネチャー部が設けられる請求項1ないし8のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項10】
自動車のテールランプとして構成され、固定側ユニットは自動車の車体後部パネルに装備れ、可動側ユニットは自動車のトランクリッドに装備される請求項9に記載の車両用ランプ。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書で主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。また、申立人は、特許異議申立書とともに、甲第1号証~甲第13号証を提出した(以下、「甲第1号証」等を「甲1」等と略記する。)。
なお、ここでいう「甲1発明」等は、申立人が主張する「甲1に記載された発明」等を意味する。
理由(特許法第29条第2項:甲1を主引例とした進歩性)
本件発明1~10は、甲1発明及び甲2~甲13に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
<証拠一覧>
甲1:特開2019-3864号公報
甲2:特開2017-147105号公報
甲3:国際公開第2006/070746号
甲4:特開2004-253318号公報
甲5:特開2009-231045号公報
甲6:特開2007-53021号公報
甲7:特開2018-181432号公報
甲8:特開2021-115838号公報
甲9:特開2018-151556号公報
甲10:特許第6620697号公報
甲11:特許第5861797号公報
甲12:特開2012-118378号公報
甲13:特開2006-75362号公報
第4 当審の判断
1 甲1について
(1)甲1の記載事項・認定事項
本件特許の出願日前の平成31年1月10日に公開された甲1には、その記載から、以下の事項が認定できる。
なお、括弧内に主な参照箇所を示す(以下同様)。
ア ライトガイド装置11を備えた車両用前照灯である。(【0015】)
イ 第1LED光源16と、第1LED光源16から入射した光を導き反射して意匠用の配光パターンを形成する意匠用ステップ20が形成された板状導光体13は、斑点状発光部を構成していると認められる。(【0016】~【0018】、【0020】、【0022】、【図6】)
ウ 第2LED光源26と、第2LED光源26からの入射光で環状に発光する第3導光体24は、環状発光部を構成していると認められる。(【0016】、【0018】、【0020】、【0022】、【図6】)
エ 上記イ及びウを踏まえると、ライトガイド装置11は、斑点状発光部と環状発光部で構成されているといえる。
オ 板状導光体13は、円錐台形に形成されており、円周の一部に設けられた入光部14の突端入射面15に第1LED光源16の光が入射される。(【0016】、【0017】、【0022】、【図6】)
カ 意匠用ステップ20には、入射光を灯具前方へ反射する円錐面からなる反射面が設けられており、各反射面の面積は、灯具外形線から灯具内側へ離れた位置の意匠用ステップ20ほど小さくなるように設定されて、板状導光体13を外周側ほど明るく発光させ、中心側ほど暗く発光させることができる。(【0018】、【0020】、【図6】)
(2)甲1に記載された発明
上記(1)を踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「斑点状発光部と環状発光部でライトガイド装置11が構成されており、(上記(1)エ)
斑点状発光部は、第1LED光源16と、第1LED光源16から入射した光を導き反射して意匠用の配光パターンを形成する意匠用ステップ20が形成された板状導光体13を備え、(上記(1)イ)
環状発光部は、第2LED光源26と、第2LED光源26からの入射光で環状に発光する第3導光体24を備え、(上記(1)ウ)
板状導光体13は、円錐台形に形成されており、円周の一部に設けられた入光部14の突端入射面15に第1LED光源16の光が入射され、(上記(1)オ)
意匠用ステップ20には、入射光を灯具前方へ反射する円錐面からなる反射面が設けられており、各反射面の面積は、灯具外形線から灯具内側へ離れた位置の意匠用ステップ20ほど小さくなるように設定されて、板状導光体13を外周側ほど明るく発光させ、中心側ほど暗く発光させることができる、(上記(1)カ)
ライトガイド装置11を備えた車両用前照灯。(上記(1)ア)」
2 甲11について
(1)甲11の記載事項・認定事項
本件特許の出願日前の平成28年2月16日に公開された甲11には、その記載から、以下の事項が認定できる。
ア 【0111】~【0113】、及び【0207】~【0209】から、表示装置1700は、光源1121と、出射面である主面、主面とは反対側の主面、及び光源1121が設けられた入光端面を有する導光体1707を備える。
イ 【0111】~【0113】、【0118】、【0207】~【0209】、【図16】、及び【図43】から、導光体1707の反対側の主面には、複数の光収束部1740及び散乱パターン群1790が形成され、光源1121からの光は、複数の光収束部1740がそれぞれ有する複数の反射面によって反射されて主面から出射し、また、散乱パターン群1790が有する複数の光散乱部で散乱されて主面から出射する。
ウ 【0115】~【0118】、【0207】~【0209】、【図16】、【図43】、及び【図44】から、各光収束部1740のそれぞれは、複数の反射面によって、光源1121からの光を反射し、互いに異なる定点に収束する反射光を出射し、互いに異なる定点を含む複数の収束点の集まりによって、立体像が形成される。
エ 【0208】及び【0209】から、散乱パターン群1790が有する複数の光散乱部によって、光源1121からの光を散乱し、2次元像が形成される。
(2)甲11に記載された発明
上記(1)を踏まえると、甲11には、次の発明(以下「甲11発明 」という。)が記載されていると認められる。
「光源1121と、
出射面である主面、主面とは反対側の主面、及び光源1121が設けられた入光端面を有する導光体1707、を備える表示装置1700であって(上記(1)ア)、
反対側の主面には、複数の光収束部1740及び散乱パターン群1790が形成され、光源1121からの光は、複数の光収束部1740がそれぞれ有する複数の反射面によって反射され、また、散乱パターン群1790が有する複数の光散乱部で散乱されて主面から出射し(上記(1)イ)、
各光収束部1740のそれぞれは、複数の反射面によって、光源1121からの光を反射し、互いに異なる定点に収束する反射光を出射し、互いに異なる定点を含む複数の収束点の集まりによって、立体像が形成され(上記(1)ウ)、
散乱パターン群1790が有する複数の光散乱部によって、光源1121からの光を散乱し、2次元像が形成される(上記(1)エ)、
表示装置1700。」
3 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
ア 後者の「斑点状発光部」は、「意匠用の配光パターンを形成する」ものであるから、前者の「デザイン部」に相当するといえる。
イ 上記アを踏まえると、後者の「ライトガイド装置11」は、「斑点状発光部と環状発光部」で「構成されて」いるものであるから、前者の「ランプユニット」に相当するといえる。
ウ 後者の「第1LED光源16」は前者の「第1光源」に相当し、以下同様に、「意匠用ステップ20」は「光反射ステップ」に、「板状導光体13」は「導光板」に、それぞれ相当する。
そうすると、後者の「第1LED光源16から入射した光を導き反射して意匠用の配光パターンを形成する意匠用ステップ20」という態様は、前者の「内部を導光される第1光源の光を反射して所要の発光パターンを形成するための光反射ステップ」という態様に相当する。
エ 後者の「第2LED光源26」と「環状に発光する第3導光体24」は、前者の「第2光源」と「発光面」にそれぞれ相当する。
そうすると、後者の「第2LED光源26からの入射光で環状に発光する第3導光体24」という態様は、前者の「この第2光源の光を面状に発光させる発光面」という態様に相当する。
したがって、後者の「第2LED光源26と、第2LED光源26からの入射光で環状に発光する第3導光体24を備え」た「環状発光部」は、前者の「第2光源と、この第2光源の光を面状に発光させる発光面を備え」た「シグネチャー部」に相当する。
オ 後者の「入光部14の突端入射面15」は、前者の「光入射面」に相当する。
そうすると、後者の「板状導光体13は、円錐台形に形成されており、円周の一部に設けられた入光部14の突端入射面15に第1LED光源16の光が入射され」ることと、前者の「前記導光板は少なくとも一つの鋭角の角部を有する四角形に形成されており、前記鋭角の角部に設けられた光入射面に前記第1光源の光が入射され」ることとは、「導光板は光入射面に前記第1光源の光が入射され」ることの点で共通する。
カ 後者の「意匠用ステップ20」は、「入射光を灯具前方へ反射する円錐面からなる反射面が設けられて」いるものであるから、無指向性で、観察位置の違いに関わらず観察されるパターン形状が変化しないものであるといえる。
そうすると、後者の「意匠用ステップ20には、入射光を灯具前方へ反射する円錐面からなる反射面が設けられており、各反射面の面積は、灯具外形線から灯具内側へ離れた位置の意匠用ステップ20ほど小さくなるように設定されて、板状導光体13を外周側ほど明るく発光させ、中心側ほど暗く発光させることができる」ことと、前者の「前記光反射ステップは、指向性のある光反射を行う第1光反射ステップと、無指向性で光反射を行う第2光反射ステップを備え、前記第1光反射ステップで反射された光により第1発光パターンが形成され、前記第2光反射ステップで反射された光により第2発光パターンが形成され、前記第2発光パターンは観察位置の違いに関わらず観察されるパターン形状が変化せず、前記第1発光パターンは観察位置の違いに応じて観察されるパターン形状が変化する」こととは、「前記光反射ステップは、無指向性で光反射を行う第2光反射ステップを備え、前記第2光反射ステップで反射された光により第2発光パターンが形成され、前記第2発光パターンは観察位置の違いに関わらず観察されるパターン形状が変化しない」ことの点で共通する。
キ 以上の限りにおいて、後者の「ライトガイド装置11を備えた車両用前照灯」は、前者の「車両用ランプ」に相当する。
ク そうすると両者は、
「デザイン部とシグネチャー部でランプユニットが構成されており、デザイン部は、第1光源と、内部を導光される第1光源の光を反射して所要の発光パターンを形成するための光反射ステップが形成された導光板を備え、シグネチャー部は、第2光源と、この第2光源の光を面状に発光させる発光面を備え、導光板は光入射面に前記第1光源の光が入射され、前記光反射ステップは、無指向性で光反射を行う第2光反射ステップを備え、前記第2光反射ステップで反射された光により第2発光パターンが形成され、前記第2発光パターンは観察位置の違いに関わらず観察されるパターン形状が変化しない、車両用ランプ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点1〕
導光板に関し、本件発明1は、前記導光板は「少なくとも一つの鋭角の角部を有する四角形に形成されており、前記鋭角の角部に設けられた光入射面」に前記第1光源の光が入射されるのに対して、甲1発明の板状導光体13は、「円錐台形に形成されており、円周の一部に設けられた入光部14の突端入射面15」に第1LED光源16の光が入射される点。
〔相違点2〕
光反射ステップに関し、本件発明1の光反射ステップは、「指向性のある光反射を行う第1光反射ステップ」と、無指向性で光反射を行う第2光反射ステップを備え、「前記第1光反射ステップで反射された光により第1発光パターンが形成され」、前記第2光反射ステップで反射された光により第2発光パターンが形成され、前記第2発光パターンは観察位置の違いに関わらず観察されるパターン形状が変化せず、「前記第1発光パターンは観察位置の違いに応じて観察されるパターン形状が変化する」ものであるのに対して、甲1発明の意匠用ステップ20は、第1光反射ステップを備えていない点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
甲1発明の斑点状発光部における「意匠用ステップ20」は、「入射光を灯具前方へ反射する円錐面からなる反射面が設けられており、各反射面の面積は、灯具外形線から灯具内側へ離れた位置の意匠用ステップ20ほど小さくなるように設定されて、板状導光体13を外周側ほど明るく発光させ、中心側ほど暗く発光させることができる」(下線は当審で付した。以下同様。)ものであり、観察位置の違いに応じて観察されるパターン形状を変化させるという技術思想がない。
ここで、甲11には、上記2(2)に示した甲11発明が記載されていると認められるところ、甲11発明は、ある観察位置においても、別の観察位置においても、視認されるのは、各光収束部1740のそれぞれの複数の反射面で形成した立体像と散乱パターン群1790の複数の光散乱部で形成した2次元像であり、「観察位置の違いに応じて観察されるパターン形状が変化する」立体像及び2次元像が形成されるものではない。
また、他の証拠にも、「指向性のある光反射を行う第1光反射ステップ」により「観察位置の違いに応じて観察されるパターン形状が変化する」「第1発光パターン」を形成することは、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることが容易になし得たものであるということはできない。
(3)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、概略、以下のような主張をしている。
(28ページ)甲11に開示されている立体像は、観察位置の違いに応じて観察されるパターン形状が変化するものである。
上記主張について検討する。
甲11発明の立体像は、観察位置の違いに応じて観察される形状に違いがあるように見えたとしても、それは、立体像の正面視形状や側面視形状といったものにすぎず、立体像そのもののパターン形状が変化するものではないから、「観察位置の違いに応じて観察されるパターン形状が変化する」ものではない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。
(4)小括
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲13に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
4 本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2~甲13に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明2~10は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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