特許異議申立
2025-700274
車両用ランプ
- 審判番号
- 2025-700274
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-019456
- 登録番号
- 7555282
- 請求日
- 2025年03月06日
- 審決日
- 2025年06月30日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社小糸製作所
- 【権利者代理人】鈴木 章夫
- 【異議申立人】金田 綾香
- 審判長/審判官
- 審判長 草野 顕子
- 審判官 横溝 顕範
- 審判官 高橋 学
- 分類
- P1651.121-Y (F21S) / P1651.537-Y (F21S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7555282号発明「車両用ランプ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7555282号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7555282号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和3年2月10日に出願され、令和6年9月12日にその特許権の設定登録がされ、同年9月24日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~8に係る特許に対し、令和7年3月6日に特許異議申立人金田綾香(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、本件特許の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のものである。
「【請求項1】
光源と、表面と裏面を有し内部に前記光源の光を導光する導光体を備え、前記導光体はその裏面に内部を導光される光を反射して表面から出射させる複数の光反射ステップが形成されており、前記複数の光反射ステップにおいて反射されかつ前記導光体の表面から出射される光により所要の発光パターンが構成される車両用ランプであって、
前記複数の光反射ステップは、
前記導光体の内部を導光される光をそれぞれ相違する方向に向けて指向性を有する状態で反射する複数の第1光反射ステップと、
前記導光体の内部を導光される光を指向性がない状態で反射する複数の第2光反射ステップを備え、
一の視認位置では第1光反射ステップの一部と第2光反射ステップで反射される光が結合された所要の発光パターンが視認され、
前記一の視認位置と異なる視認位置では第1光反射ステップの他の一部と第2光反射ステップで反射される光が結合された前記所要の発光パターンと部分的に異なる発光パターンが視認される車両用ランプ。
【請求項2】
前記第2光反射ステップで反射される光の発光パターンは、前記一の視認位置と前記異なる視認位置で同じ発光パターンが視認される請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項3】
前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部として構成されてその底面が反射面として構成され、出射される光の方向が相違する複数の第1光反射ステップは、それぞれ導光体における反射面の角度が相違されている請求項1または2に記載の車両用ランプ。
【請求項4】
前記第2光反射ステップは球面状又は円錐面状の凹部で構成されてその底面が反射面として構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項5】
前記光反射ステップは、それぞれ複数の第1光反射ステップで構成された複数のステップ群として構成され、同じステップ群の第1光反射ステップから出射される光の方向は同じであり、異なるステップ群の第1光反射ステップから出射される光の方向が相違される請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項6】
前記ステップ群は、複数の第1光反射ステップが線状に配列された複数のステップ列として構成される請求項5に記載の車両用ランプ。
【請求項7】
前記第1光反射ステップは、導光板から出射される光の方向が少なくとも水平方向に相違される請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項8】
前記導光体は、配設される車両の車体形状の曲面に倣って裏面と表面が湾曲された板状に形成される請求項1ないし7のいずれかに記載の車両用ランプ。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、次の証拠を提示し、以下の特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。
1 提示された証拠
甲第1号証:特許第5861797号公報
甲第2号証:国際公開第2020/179936号
甲第3号証:特開2012-118378号公報
甲第4号証:特開2006-75362号公報
甲第5号証:特開2020-4610号公報
甲第6号証:特許第5701434号公報
甲第7号証:特開2018-63890号公報
甲第8号証:財団法人新村出記念財団、広辞苑 第5版 日本、株式会社岩波書店、1998年11月11日、表紙、第1565ページ、及び奥付
以下、甲第○号証を甲○という。
2 申立理由
(1)申立理由1
甲1を主たる証拠としての本件発明1~8の進歩性の欠如[特許法第29条第2項(同法第113条第2号)]
本件発明1~8は、甲1に記載された発明、及び甲2~甲7に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明することができたものである。
(2)申立理由2
本件発明3、4の明確性要件違反[特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)]
本件発明3、4は、明確でない。
(3)申立理由3
本件発明3、4のサポート要件違反[特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)]
本件発明3、4は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
第4 当審の判断
1 甲1について
(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線については、当審で付したものである(甲2~甲7の記載についても同様)。
ア「【0111】
図16は、表示装置10の断面を概略的に示す。図17は、表示装置10の他方の断面を観察者によって視認される像5と共に概略的に示す。表示装置10は、表示装置700、表示装置102の変形例としての表示装置である。
【0112】
表示装置10は、導光板7と、光源21とを有する。導光板7は、導光板707及び導光板70に対応する。
【0113】
導光板7は、光を出射する出射面である主面71と、主面71とは反対側の主面72とを有する。また、導光板7は、導光板7の四方の端面である端面73、端面74、端面75及び端面76を有する。端面73は、導光板7の入光端面である。端面73には光源21が設けられ、光源21からの光は、端面73から導光板7に入射する。端面74は、端面73とは反対側の面である。端面76は、端面75とは反対側の面である。導光板7は、主面71に平行な面内で光を導く。導光板7が導く光の広がり角は、少なくとも主面71に平行な面内で所定値より小さい。
【0114】
図16には、表示装置10のyz平面に平行な断面が示される。図17には、表示装置10のxz平面に平行な断面が示される。
【0115】
光収束部40aは、反射面41、反射面42及び反射面43を含む複数の反射面を含む。反射面41は、光源21からの光を、反射面41上の点と定点P1とを結ぶ直線に沿う方向に反射させる。反射面42は、光源21からの光を、反射面42上の点と定点P1とを結ぶ直線に沿う方向に反射させる。反射面43は、光源21からの光を、反射面43上の点と定点P1とを結ぶ直線に沿う方向に反射させる。反射面41が反射した光線、反射面42が反射した光線、及び反射面43が反射した光線のそれぞれを、光線の進む方向と反対の方向に延長したとき、定点P1に収束する。
【0116】
このように、光収束部40aが含む複数の反射面は、光源21からの光を、それぞれの反射面上の点と定点P1とを結ぶ直線に沿う方向に反射させる。光収束部40aが含む複数の反射面が反射した光線のそれぞれを、それぞれの光線の進む方向と反対の方向に延長したとき、定点P1に収束する。したがって、表示装置10によれば、定点P1から、位置V2から位置V3の範囲内のどの位置にも向かう光を提供できる。
【0117】
光収束部40bは、反射面46を含む複数の反射面を含む。反射面46は、光源21からの光を、反射面46上の点と定点P2とを結ぶ直線に沿う方向に反射させる。同様に、光収束部40bが含む複数の反射面は、光源21からの光を、それぞれの反射面上の点と定点P2とを結ぶ直線に沿う方向に反射させる。光収束部40bは、光収束部40bが含む複数の反射面が反射した光線は、定点P2に収束する。
【0118】
主面72には、光収束部40a、光収束部40bと同様、互いに異なる定点に収束する反射光を出射する光収束部を複数有する。こうして、表示装置10は、定点P1及び定点P2を含む複数の収束点の集まりによって、立体的な像5を形成する。なお、反射面41、反射面42、反射面43及び反射面46を含む各反射面は、光学面の一例である。」
イ「【0207】
図43は、表示装置10の変形例としての表示装置1700を概略的に示す。表示装置1700は、導光板1707と、光源1121と、光源1722とを有する。導光板1707は、導光板7に対応する。光源1121は、光源21と同様に、導光板1707のxz面に平行な入光端面に設けられる。光源1722は、xz面とは直交する側面1775に設けられる。側面1775は、導光板1707への入光端面として機能する。
【0208】
導光板1707には、光収束部40a及び光収束部1740b(合議体注:光収束部40bの誤記と認める。)と同様の光収束部1740a及び光収束部1740bを含む複数の光収束部1740が形成されている。また、導光板1707には、光源21からの光を散乱する複数の光散乱部を有する散乱パターン群1790が形成されている。光散乱部は、例えばz軸プラス方向に直立する円錐状のパターンである。散乱パターン群1790は、光散乱部の位置によって定まる2次元像を形成する。
【0209】
光源1121を発光させた場合、光源1121からの光は、光収束部1740a及び光収束部1740bを含む複数の光収束部1740がそれぞれ有する反射面によって反射される。これにより、立体像が導光板1707からの光によって形成される。また、光源1121からの光は、散乱パターン群1790が有する光散乱部によって散乱されて、導光板1707上に2次元像を形成する。」
ウ 図16は、以下に示すとおりである。
「
[図:0001425791000001.jpg]
」
エ 図43は、以下に示すとおりである。
「
[図:0001425791000002.jpg]
」
オ 図44は、以下に示すとおりである。
「
[図:0001425791000003.jpg]
」
(2)甲1の認定事項
前記(1)から、甲1について、以下の点が認められる。
ア 段落【0111】~【0113】、及び【0207】~【0209】から、表示装置1700は、光源1121と、出射面である主面、主面とは反対側の主面、及び光源1121が設けられた入光端面を有する導光体1707を備える。
イ 段落【0111】~【0113】、【0118】、【0207】~【0209】、図16、及び図43から、導光体1707の反対側の主面には、複数の光収束部1740及び散乱パターン群1790が形成され、光源1121からの光は、複数の光収束部1740がそれぞれ有する複数の反射面によって反射されて主面から出射し、また、散乱パターン群1790が有する複数の光散乱部で散乱されて主面から出射する。
ウ 段落【0115】~【0118】、【0207】~【0209】、図16、図43、及び図44から、各光収束部1740のそれぞれは、複数の反射面によって、光源1121からの光を反射し、互いに異なる定点に収束する反射光を出射し、互いに異なる定点を含む複数の収束点の集まりによって、立体像が形成される。
エ 段落【0208】及び【0209】から、散乱パターン群1790が有する複数の光散乱部によって、光源1121からの光を散乱し、2次元像が形成される。
(3)甲1発明
前記(1)、(2)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。なお、括弧内に主な参照箇所を示した。
「光源1121と、
出射面である主面、主面とは反対側の主面、及び前記光源1121が設けられた入光端面を有する導光体1707、を備える表示装置1700であって(前記(1)ア)、
前記反対側の主面には、複数の光収束部1740及び散乱パターン群1790が形成され、前記光源1121からの光は、前記複数の光収束部1740がそれぞれ有する複数の反射面によって反射され、また、前記散乱パターン群1790が有する複数の光散乱部で散乱されて主面から出射し(前記(1)イ)、
各光収束部1740のそれぞれは、前記複数の反射面によって、前記光源1121からの光を反射し、互いに異なる定点に収束する反射光を出射し、前記互いに異なる定点を含む複数の収束点の集まりによって、立体像が形成され(前記(1)ウ)、
前記散乱パターン群1790が有する前記複数の光散乱部によって、前記光源1121からの光を散乱し、2次元像が形成される(前記(1)エ)、
表示装置1700。」
2 甲2について
(1)甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
ア「[0021] 図2および図3に示すように、テールランプユニット1Aは、光源2と、導光板10と、カバー30とを備えている。光源2および導光板10は、車両Cのテールランプ(尾灯とも呼ばれる)およびブレーキランプ(制動灯とも呼ばれる)を示す立体画像を結像させる。
[0022] 光源2は、導光板10に光を出射する。光源2は、例えばLED(Light Emitting diode)光源である。光源2は、導光板10の下面である端面10cに設置されている。
[0023] 導光板10は、光源2から出射された光を導光し、導光された光を後述する光路変更部により光路変更させることにより空間に立体画像を結像させる。
[0024] 図4は、導光板10の構成を示す図である。導光板10は、図3および図4に示すように、立体画像形成部11(第1領域)と、補助部材21(第2領域)とからなっている。導光板10は、透明性および比較的高い屈折率を有する樹脂材料で成形されている。導光板10を形成する材料は、例えばポリカーボネイト樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ガラスなどであってよい。」
イ「[0027] 立体画像形成部11の背面11bには、複数の光路変更部群13が形成されている。・・・
[0028] 図5は、立体画像形成部11により結像された立体画像Iを示す図である。立体画像形成部11には、上述したように複数の光路変更部群13が形成されており、複数の光路変更部群13の収束点が互い異なっている。これにより、立体画像形成部11では、図5に示すように、各光路変更部群13に対応する複数の収束点の集まりによって立体画像結像面Pに立体画像Iとしての虚像が形成される。すなわち、立体画像形成部11から出射された光によって結像された立体画像Iが車両Cのテールランプおよびブレーキランプとして機能する。」
(2)甲2の認定事項
前記(1)から、甲2には、次の事項(以下「甲2記載事項」という。)が示されているといえる。
「光源2と、導光板10と、導光板10の下面に設置された光源2と、カバー30を備えたテールランプユニット1Aにおいて、導光板10の立体画像形成部11の背面11bには、複数の光路変更部群13が形成され、光路変更群13の光路変更部により、光源2から出射し、前記導光体10で導光された光を光路変更し、各光路変更部群13に対応する複数の収束点の集まりによって立体画像結像面Pに立体画像Iとしての虚像が形成される」こと。
3 甲3について
(1)甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
ア「【0018】
図1は、立体表示の原理を説明するための概念図である。図1では、観測者を基準に奥側から手前側に向かって「ABC」の各文字が立体的に表示される場合を考える(図1(d)参照)。詳細には、各文字は奥側から「A」、「B」、「C」の順に立体的に視認される。このような表示を行うために、図1(a)に示すような右眼用画像(第1画像)と、図1(b)に示すような左眼用画像(第2画像)を1枚あるいは複数枚の導光板を用いて表示する。右眼用画像は、観測者の右眼の存在する方向へ進行し、左眼用画像は、観測者の左眼の存在する方向へ進行するようにそれぞれ形成される。・・・」
イ「【0024】
(実施例1)
図6は、実施例1の画像表示装置の構成を示す図である。詳細には、図6(a)は画像表示装置の平面図、図6(b)は画像表示装置の断面図、図6(c)は画像表示装置の平面図の部分拡大図である。図示のように、実施例1の画像表示装置では、各表示パターン3、4は、それぞれ導光板1の一面に一方を平行移動させたように設けられ、円弧状に配置されたプリズム11からなる領域である。表示パターン3の各プリズム(第1プリズム)11a、表示パターン4の各プリズム(第2プリズム)11bは、それぞれ繋がった連続のプリズムであり、図6(b)に示すように、導光板1の一面から窪ませて設けられている。すなわち、各プリズムは、導光板1の表面(第1面)に設けられた凹部からなる。光源2からの光はこれらのプリズムによって反射され、導光板1の他方の表面(第2面)に進む。第1プリズム11aと第2プリズム11bは、その反射光がそれぞれ異なる目標点に対し集光される。このふたつの目標点が観測者の左右の眼の位置として想定されている。本例における表示パターン3と表示パターン4は、導光板1の中央付近において部分的に重なり、第1プリズム11aと第2プリズム11bは交差するように配置されている(図6(c)参照)。なお、図6(並びに以下の各実施例における図)では理解を容易にするために各表示パターン3、4を実際よりも拡大して示している。」
ウ 図6は、以下に示すとおりである。
「
[図:0001425791000004.jpg]
」
(2)甲3の認定事項
前記(1)から、甲3には、次の事項(以下「甲3技術事項」という。)が示されているといえる。
「導光板1と光源2を備えた画像表示装置において、導光板1の表面(第1面)に、凹部からなる右眼用の表示パターン3の各プリズム(第1プリズム)11a及び左眼用の表示パターン4の各プリズム(第2プリズム)11bを設け、光源2からの光を第1プリズム11a及び第2プリズム11bによって反射し、その反射光を観測者の左右の眼の位置として想定されるそれぞれ異なる目標点に対して集光し、右眼用の表示パターン3の画像を観測者の右眼の存在する方向へ進行させ、左眼用の表示パターン4の画像を観測者の左眼の存在する方向へ進行させる」こと。
4 甲4について
(1)甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
一般に、導光板を用いた表示手段としては、発光ダイオードなどの発光素子から導光板の側面に出射光を透光させて導いた光を効率良く反射させることにより発光出力を得る光学的な表示構造を有している。このため、導光板の平面部には出射光を効率良く屈折させるために多数の微細な凹部形状のドット部を形成している。このドット部の凹部形状は、図32(A)に示すように、円錐形のドット部321や図32(B)に示すように、半球状のドット部322のものが多かった。」
(2)甲4の認定事項
前記(1)から、甲4には、次の事項(以下「甲4記載事項」という。)が示されているといえる。
「発光素子から導光板の側面に出射光を透光させて導いた光を効率良く反射させることにより発光出力を得る光学的な表示手段において、出射光を効率良く屈折させるために、導光板の平面部に対して円錐形のドット部321や半球状のドット部322からなる多数の微細な凹部形状のドット部を形成する」こと。
5 甲5について
(1)甲5の記載事項
ア「【0011】
図2は、照明装置1の光源装置5の概略構成図である。図2(a)の正面図に示すように、光源装置5は、LED基板6と、導光板10を備える。・・・また、図2(a)に示すように、導光板10の光源側の上側側面11には、複数の溝12が設けられる。複数の溝12は、周囲方向に一致するY方向に隣り合うように配置され、各溝12は、X方向に延在する。上側側面11は、入光端面を構成する。・・・
【0012】
LED基板6は、基板15と、光源としての複数のLED16を含む。・・・」
イ「【0016】
図2(a),(b)に示すように、導光板10は、X方向の一方側に位置する第1板面17と、X方向の他方側に位置する第2板面(不図示)を有し、第1板面17は、導光板10における発光面3a(図1参照)側とは反対側に位置する。第1板面17には、複数の長溝状プリズム20と、複数の円錐状プリズム40が設けられる。」
ウ「【0020】
上記構成において、LED16が発光すると、LED16からZ方向下側に出射された出射光が、断面V字状の溝12に到達して溝12で反射したり屈折したりすることで導光板10内をZ方向下側にY方向に広がるように進行する。また、そのY方向に広がった光は、長溝状プリズム20に到達すると、Y方向に広がるようにZ方向下側に進行する特性を有した上で長溝状プリズム20で第2板面側に厚さ方向に反射される。その結果、長溝状プリズム20で反射した光を、第2板面から図1にW方向で示すワイド方向に進行させることができ、十分な輝度を有する光をワイド方向に出射させることができる。
【0021】
更には、上述のように、照明装置1では、長溝状プリズム20の根元角θ1と、円錐状プリズムの根元角θ2に関し、θ1<θ2が成立する。また、円錐状プリズム40の根元角θ1が大きいため、円錐状プリズム40は、Y方向に広がって到達した光に対しても、X方向に対する傾斜角(0°も含む)が小さい方向に反射することができる。したがって、円錐状プリズム40に到達した光を、図1にF方向で示す正面下方向に精度高く進行させることができる。よって、導光板10の出射光を、長溝状プリズム20で反射した光が届きにくい、照明装置1の正面下方向に出射させることができる。」
エ 甲5の図1は、以下に示すとおりである。
「
[図:0001425791000005.jpg]
」
オ 甲5の図2は、以下に示すとおりである。
「
[図:0001425791000006.jpg]
」
(2)甲5の認定事項
前記(1)から、甲5には、次の事項(以下「甲5記載事項」という。)が示されているといえる。
「光源である複数のLED16を含むLED基板6と導光板10を備える、照明装置1の光源装置5において、照明装置1の発光面3a側とは反対側に位置する導光板10の第1板面17に、複数の長溝状プリズム20と複数の円錐状プリズム40を設け、長溝状プリズム20の根元角θ1と円錐状プリズムの根元角θ2の角度の関係をθ1<θ2として、長溝状プリズム20及び円錐状プリズム40に到達したLED16からの光を第1板面17と対向する第2板面側に反射し、長溝状プリズム20で反射した光を第2板面から照明装置1の幅方向であるワイド方向に出射させるとともに、円錐状プリズム40で反射した光を第2板面から照明装置1の正面下方向に出射させる」こと。
6 甲6について
(1)甲6の記載事項
ア「【0023】
図1に示すように、表示装置1は、透明材料からなる表示パネル3と、この表示パネル3の端面3cから光を入射する点光源(光源)4とから概略構成されている。
この表示装置1は、光源4から入射した光を、表示パネル3の前面3a側の特定方向に反射させ、表示パネル3の前面3a側から観察する観察者(例えば観察者O)の両目に異なる画像を認識させることにより、特定の表示パターンの立体視を実現する装置である。
本実施形態において、表示パネル3の厚み方向を±Z方向とし、+Z方向から観察者Oが観察するものとする。また、観察者Oは、表示パネル3と対向して直立し、観察者Oにとって左右方向(各視点が並ぶ方向)が±X方向であるとし、上下方向(即ち、両視点同士を結ぶ直線と直交する方向)が±Y方向であるとする。」
イ「【0027】
表示パネル3は、描画「A」として表される4つの表示パターン(第1表示パターン10A、第2表示パターン10B、第3表示パターン10C、第4表示パターン10D)を有している。これら第1~第4表示パターン10A~10Dは、光源4からの光Lを反射する第1反射要素2A、第2反射要素2B、第3反射要素2C、第4反射要素2Dがそれぞれ集合して構成される要素群であり、各反射要素2A、2B、2C、2Dの集合として各表示パターンが描かれている。」
ウ「【0029】
図2(a)に示すように、第1表示パターン10Aは、第1視点E1から仮想的な立体表示パターン10Vを表示パネル3に投影させた投影描画となるように構成されている。同様に、図2(b)~(c)に示すように、第2~第4表示パターン10B~10Dは、第2~第4視点E2~E4から立体表示パターン10Vを表示パネル3に投影させた投影描画となるように構成されている。
各表示パターン10A~10V(当審注:「10D」の誤記と認める。)は、特定の角度の反射面を持った反射要素2A~2Dにより、光Lを特定の視点方向に反射する。これにより、各々の表示パターン10A~10Dは、それぞれ設定された視点E1~E4の方向にのみ光を反射する。これによって、観察者Oは、立体表示パターン10Vを認識する。
このように、第1~第4表示パターン10A~10Dを構成することで、視差を利用して立体表示パターン10Vを観察者に認識させることができる。・・・」
エ「【0068】
図7(a)に示す反射要素21は、一つの面を反射面21aとする三角錐の形状を有する。図7(b)に示す反射要素22は、円柱を斜めに切断したような形状を有しており、その切断面が反射面22aとして構成されている。
【0069】
図7(c)、(d)に示す反射要素23、24は、円柱を倒したような形状を有している。また、図7(e)に示す反射要素25は、三角錐に類似の形状であって、反射面である一面が曲面形状を有している。これらの反射要素23、24、25の反射面23a、24a、25aは、円柱外周面として形成されている。」
(2)甲6の認定事項
前記(1)から、甲6には、次の事項(以下「甲6記載事項」という。)が示されているといえる。
「光源4から入射した光を、表示パネル3の前面3a側の特定方向に反射させ、観察者の両目に異なる画像を認識させることにより、特定の立体表示パターン10Vを投影描画する表示装置1において、表示パネル3は、立体表示パターン10Vとして表される第1~第4表示パターン10A~10Dの4つの表示パターンを有し、各表示パターン10A~10Dは、特定の角度の反射面を持った反射要素2A~2Dによって、それぞれ設定された視点E1~E4の方向にのみ光を反射することにより、観察者が立体表示パターン10Vを認識でき、反射要素2A~2Dは、三角錐の形状、円柱を斜めに切断したような形状、又は円柱を倒したような形状であり、円柱を倒したような形状の反射面は、円柱外周面として形成される」こと。
7 甲7について
(1)甲7の記載事項
ア「【請求項1】
導光板と、
前記導光板の側面から前記導光板に入射する光を出射する光源と、
を備え、
前記導光板の表面には、凸レンズ部が少なくとも一つの方向に沿って複数並列され、
前記導光板の裏面には、前記光を前記表面から出射するように反射させる光反射部と前記光反射部が形成されない非形成部とが、前記凸レンズ部が並列される方向に沿って交互に複数形成され、
前記導光板の厚さ方向に平行な方向から見る平面視において、それぞれの前記凸レンズ部と少なくとも一つの前記光反射部とが互いに重なる領域を有する
ことを特徴とする灯具。
【請求項2】
複数の前記光反射部が複数の光反射部群に分けられ、
それぞれの前記光反射部群は、前記導光板の平面視において、それぞれ互いに異なる所定の領域の少なくとも外周上に形成され、
それぞれの前記光反射部群で反射されて前記導光板の表面から出射する前記光は、それぞれ互いに異なる視点から視認可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の灯具。」
イ「【0010】
・・・視認者の視点が動くことによって、発光領域の位置や形状が変化するように見せることができる。」
ウ「【0060】
また、これまでの本発明の説明では、凸レンズ部41と光反射部42との相対的位置を変化させることによって、視認者の視点の移動に応じて視認可能となる光反射部42が変わる例を挙げて説明した。しかし、本発明は当該形態に限定されず、複数の凸レンズ部の形状や大きさを変化させることによって、視認者の視点の移動に応じて視認可能となる光反射部42が変わる形態とすることもできる。
(2)甲7の認定事項
前記(1)から、甲7には、次の事項(以下「甲7記載事項」という。)が示されているといえる。
「導光板と光源を備えた灯具において、導光板の表面に、一つの方向に沿って複数並列された凸レンズ部を設け、導光板の裏面に、光源からの光を表面から出射するための光反射部と光反射部が形成されない非形成部を凸レンズ部が並列される方向に沿って交互に複数形成すること、及び複数の光反射部を複数の光反射部群に分けて、導光板の平面視において、それぞれ互いに異なる所定の領域に形成し、凸レンズ部と光反射部の相対位置を変化させることによって、視認者の視点の移動に応じて視認可能となる光反射部が変化し、発光領域の位置や形状が変化するように見せる」こと。
8 申立理由1(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明を対比すると、後者の「光源1121」が前者の「光源」に相当し、以下同様に、後者の「出射面である主面」が前者の「表面」に、後者の「主面とは反対側の主面」及び「前記反対側の主面」が前者の「裏面」に、後者の「導光体1707」が前者の「導光体」に、後者の「複数の光収束部1740及び散乱パターン群1790」が前者の「複数の光反射ステップ」に、後者の「立体像」及び「2次元像」が前者の「所要の発光パターン」に、後者の「複数の光収束部1740がそれぞれ有する複数の反射面」が前者の「複数の第1光反射ステップ」に、後者の「散乱パターン群1790が有する複数の光散乱部」が前者の「複数の第2光反射ステップ」に、後者の「反射」及び「散乱」が前者の「反射」に、それぞれ相当する。
そして、以上の相当関係から、以下のことがいえる。
(イ)後者の「光源1121と、出射面である主面と、主面とは反対側の主面と、前記光源1121が設けられた入光端面を有する導光体1707、を備える」ことは、「導光体1707」が「光源1121」の光を導光することは明らかなので、前者の「光源と、表面と裏面を有し内部に前記光源の光を導光する導光体を備え」ることに相当する。
(ウ)前記(イ)から、後者の「前記反対側の主面には、複数の光収束部1740及び散乱パターン群1790が形成され、前記光源1121からの光は、前記複数の光収束部1740がそれぞれ有する複数の反射面によって反射され、また、前記散乱パターン群1790が有する複数の光散乱部で散乱されて主面から出射」することは、前者の「前記導光体はその裏面に内部を導光される光を反射して表面から出射させる複数の光反射ステップが形成され」ることに相当する。
(エ)後者の「各光収束部1740のそれぞれは、前記複数の反射面によって、前記光源1121からの光を反射し、互いに異なる定点に収束する反射光を出射し、前記互いに異なる定点を含む複数の収束点の集まりによって、立体像が形成され、前記散乱パターン群1790が有する前記複数の光散乱部によって、前記光源1121からの光を散乱し、2次元像が形成され」ることは、「前記複数の反射面によって」「反射」された「前記光源1121からの光」及び「前記複数の光散乱部によって」「散乱」した「前記光源1121からの光」が「導光体1707」の「主面」から「出射」することが明らかなので、前者の「前記複数の光反射ステップにおいて反射されかつ前記導光体の表面から出射される光により所要の発光パターンが構成される」ことに相当する。
(オ)後者の「表示装置1700」と前者の「車両用ランプ」は、「発光装置」の点で共通する。
(カ)後者の「前記複数の光収束部1740がそれぞれ」「複数の反射面」を「有する」こと、及び「前記散乱パターン群1790が」「複数の光散乱部」「有する」ことは、前者の「前記複数の光反射ステップは、」「複数の第1光反射ステップと、」「複数の第2光反射ステップを備え」ることに相当する。
(キ)後者の「各光収束部1740のそれぞれは、前記複数の反射面によって、前記光源1121からの光を反射し、互いに異なる定点に収束する反射光を出射」することにおいて、「前記複数の反射面」が「定点」に「収束」するように「前記光源1121からの光を」をそれぞれ相違する方向に向けて反射していること、及び「前記光源1121からの光」が「導光体1707」の内部を導光される光であることは明らかである。
そうすると、後者の「各光収束部1740のそれぞれは、前記複数の反射面によって、前記光源1121からの光を反射し、互いに異なる定点に収束する反射光を出射」することと、前者の「前記複数の光反射ステップは、前記導光体の内部を導光される光をそれぞれ相違する方向に向けて指向性を有する状態で反射する」ことは、「前記複数の光反射ステップは、前記導光体の内部を導光される光をそれぞれ相違する方向に向けて反射する」ことで共通する。
(ク)後者の「前記散乱パターン群1790が有する前記複数の光散乱部によって、前記光源1121からの光を散乱」することは、「前記複数の光散乱部によって」「散乱し」た光が指向性を有さないことは明らかなので、前者の「前記導光体の内部を導光される光を指向性がない状態で反射する」ことに相当する。
(ケ)後者の「各光収束部1740のそれぞれ」の「前記複数の反射面によって、前記光源1121からの光を反射し、互いに異なる定点に収束する反射光を出射し、前記互いに異なる定点を含む複数の収束点の集まりによって、」「形成され」る「立体像」と「前記散乱パターン群1790が有する前記複数の光散乱部よって、前記光源1121からの光を散乱し」て「形成」する「2次元画像」は、前者の「第1光反射ステップの一部と第2光反射ステップで反射される光が結合された所要の発光パターン」に相当する。
そうすると、後者の「各光収束部1740のそれぞれは、前記複数の反射面によって、前記光源1121からの光を反射し、互いに異なる定点に収束する反射光を出射し、前記互いに異なる定点を含む複数の収束点の集まりによって、立体像が形成され、前記散乱パターン群1790が有する前記複数の光散乱部によって、前記光源1121からの光を散乱し、導光板1707上に2次元像が形成され」ることは、「立体画像」と「2次元画像」が視認されることは明らかなので、前者の「一の視認位置では第1光反射ステップの一部と第2光反射ステップで反射される光が結合された所要の発光パターンが視認され、前記一の視認位置と異なる視認位置では第1光反射ステップの他の一部と第2光反射ステップで反射される光が結合された前記所要の発光パターンと部分的に異なる発光パターンが視認される」ことと、「第1光反射ステップと第2光反射ステップで反射される光が結合された所要の発光パターンが視認され」ることで共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「光源と、表面と裏面を有し内部に前記光源の光を導光する導光体を備え、前記導光体はその裏面に内部を導光される光を反射して表面から出射させる複数の光反射ステップが形成されており、前記複数の光反射ステップにおいて反射されかつ前記導光体の表面から出射される光により所要の発光パターンが構成される発光装置であって、
前記複数の光反射ステップは、
前記導光体の内部を導光される光をそれぞれ相違する方向に向けて反射する複数の第1光反射ステップと、
前記導光体の内部を導光される光を指向性がない状態で反射する複数の第2光反射ステップを備え、
前記第1光反射ステップと前記第2光反射ステップで反射される光が結合された所要の発光パターンが視認される発光装置。」
との点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
発光装置に関して、本件発明1は、「車両用ランプ」であるのに対して、甲1発明は、「表示装置1700」である点。
(相違点2)
複数の第1反射ステップに関して、本件発明1は、導光体の内部を導光される光をそれぞれ相違する方向に向けて「指向性を有する状態で」反射するのに対して、甲1発明は、各光収束部1740のそれぞれの複数の反射面は、光源1121からの光を「互いに異なる定点に収束する」ように反射する点。
(相違点3)
視認される発光パターンに関して、本件発明1は、「一の視認位置では」第1光反射ステップ「の一部」と第2光反射ステップで反射される光が結合された所要の発光パターンが視認され、「前記一の視認位置と異なる視認位置では第1光反射ステップの他の一部と第2光反射ステップで反射される光が結合された前記所要の発光パターンと部分的に異なる発光パターンが視認される」のに対して、甲1発明は、「一の視認位置」においても、「前記一の視認位置と異なる視認位置」においても、視認されるのは、各光収束部1740のそれぞれの複数の反射面で形成した立体像と散乱パターン群1790の複数の光散乱部で形成した2次元像であり、「部分的に異なる」立体像及び2次元像が視認されるものではない点。
イ 相違点についての検討
事案に鑑み、相違点3について検討する。
甲2、甲3、及び甲6には、前記2(2)の甲2記載事項、前記3(2)の甲3記載事項、及び前記6(2)の甲6記載事項として示したように、いずれも立体像が表示される表示装置に関する記載はあるが、視認位置を異ならせた場合に、異なる立体像が視認されることについては、記載も示唆もない。
また、甲7は、前記7(2)に甲7記載事項として示したように、視認者の視点の移動に応じて視認可能となる光反射部が変化し、発光領域の位置や形状が変化するように見せる灯具について記載されている。
しかしながら、甲7は、導光板の表面に設けられた凸レンズ部と導光板の裏面に設けられた光反射部の相対位置の変化によって、視認可能となる光反射部を変化させるものであり、また、その用途は灯具であるので、甲1発明の表示装置1700とは、導光体の構造が大きく異なり、表示されるパターンも立体像とは異なるものである。
そうすると、甲1発明に対して、甲7記載事項を適用することに動機はなく、また、仮に、適用できたとしても、その際には、立体像の表示ではなくなるので、立体像の表示を前提とする甲1発明への適用には、阻害要因があると認められる。
そして、甲4及び甲5にも、前記4(2)の甲4記載事項及び前記5(2)の甲5記載事項として示したように、視認位置を異ならせた場合に、異なる立体像が視認されることについては、記載も示唆もない。
したがって、甲1発明において、甲2記載事項~甲7記載事項を踏まえ、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項~甲7記載事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、前記(1)と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものではない。
9 申立理由2(明確性要件)について
(1)申立理由2の概要
特許異議申立書の第35ページ~第36ページの「イ 明確性要件(特許法第36条第6項第2号)、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について」の記載から、申立理由2は、要するに、本件特許の請求項3(以下、単に「請求項3」という。他の請求項についても同様。)における「前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部として構成されてその底面が反射面として構成され」との記載において、次のア、イの点が不明であるというものである。
ア 「その底面」が「円柱状又は角柱状」の「底面」を意味するのか、「凹部」の「底面」を意味するのか不明である。
イ 「その底面」が「凹部」の「底面」を意味する場合、「円柱状又は角柱状の凹部」を構成する面のうち、どこまでを底面とするのか不明である。
また、請求項4についても、「前記第2光反射ステップは球面状又は円錐面状の凹部で構成されてその底面が反射面として構成されている」との記載があるところ、前記イと同様に、「球面状又は円錐面状の凹部」の「底面」が、「球面状又は円錐面状の凹部」を構成する面のうち、どこまでを底面とするのか不明であるというものである。
(2)申立理由2の検討
発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面(以下「明細書等」という。)を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断される。
ア 請求項3の「その底面」について
請求項3の「前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部として構成されてその底面が反射面として構成され」るとの記載についてみると、この記載は、まず、「前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部として構成されて」との記載で、「前記第1光反射ステップ」が「円柱状又は角柱状の凹部として構成され」ることを特定した上で、続いて、「その底面が反射面として構成され」るとしているものと認められる。
そうすると、上記記載において、「その底面」が「前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部」の「底面」を意味することは明らかであるといえる。
そして、このような解釈は、明細書等の段落【0017】の「導光板2の内部を導光された光を光反射ステップ3の凹底面において反射し」との記載、段落【0022】の「第1光反射ステップ31は、・・・ここでは、柱軸を水平方向ないし水平方向に対して所要の角度で傾斜された円柱状の凹部、換言すればシリンドリカル(かまぼこ)状の凹部として形成されている。」との記載、段落【0023】の「第1光反射ステップ31は・・・三角柱や四角柱の凹部として形成されてもよい。」との記載、図3における「導光板2の内部を導光した光」を反射する「第1光反射ステップ31」を示す記載と矛盾するものではない。
イ 請求項3の「円柱状又は角柱状の凹部」の「底面」について
請求項3が引用する請求項1の「前記導光体はその裏面に内部を導光される光を反射して表面から出射させる複数の光反射ステップが形成されており、」「前記複数の光反射ステップは、」「複数の第1光反射ステップ」「を備え」るとの記載、及び請求項3の「前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部として構成され」るとの記載から、請求項3の「円柱状又は角柱状の凹部」は、「導光体」の「裏面」を「導光体」の内側に凹ませて形成したものであるといえる。
そして、申立人が甲8を提示して述べるように、「底」の字義は、「凹んだものや容器の下の所」(広辞苑 第7版)であるところ、「導光体」の「裏面」を凹ませて形成した「円柱状又は角柱状の凹部」の下の所とは、「円柱状又は角柱状の凹部」における「導光体」の「裏面」と反対側に位置する所であるといえ、そうすると、「円柱状又は角柱状の凹部」の「底面」とは、「円柱状又は角柱状の凹部」における「導光体」の「裏面」と反対側に位置する所の面であると解することができる。
また、このような解釈は、明細書等の段落【0017】の「導光板2の内部を導光された光を光反射ステップ3の凹底面において反射し」との記載及び図3における「導光板2の内部を導光した光」を反射する「第1光反射ステップ31」を示す記載と矛盾するものではない。
ウ 請求項4の「球面状又は円錐面状の凹部」の「底面」について
請求項4が引用する請求項1の「前記導光体はその裏面に内部を導光される光を反射して表面から出射させる複数の光反射ステップが形成されており、」「前記複数の光反射ステップは、」「前記導光体の内部を導光される光を指向性がない状態で反射する複数の第2光反射ステップを備え」るとの記載、及び請求項4の「前記第2光反射ステップは球面状又は円錐面状の凹部で構成され」るとの記載から、請求項4の「球面状又は円錐面状の凹部」は、「導光体」の「裏面」を「導光体」の内部に凹ませて形成したものであるといえる。
そうすると、前記イと同様に、「球面状又は円錐面状の凹部」の「底面」とは、「「球面状又は円錐面状の凹部」における「導光体」の「裏面」と反対側に位置する所の面であると解することができる。
また、このような解釈は、明細書等の段落【0017】の「導光板2の内部を導光された光を光反射ステップ3の凹底面において反射し」との記載、段落【0024】の「第2光反射ステップ32は、・・・ここでは球面状の凹部として形成されている。・・・なお、図示は省略するが、第2光反射ステップ32は、・・・円錐状の凹部として形成されてもよい。」との記載、及び図3における「導光板2の内部を導光した光」を反射する「第2光反射ステップ32」を示す記載と矛盾するものではない。
以上のとおりであるから、請求項3、4の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確ではないといえる。
10 申立理由3(サポート要件)について
(1)申立理由3の概要
特許異議申立書の第35ページ~第36ページの「イ 明確性要件(特許法第36条第6項第2号)、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について」の記載から、申立理由3は、要するに、本件特許の請求項3における「前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部として構成されてその底面が反射面として構成され」との記載において、「その底面」が「円柱状又は角柱状」の「底面」を意味するのか、「凹部」の「底面」を意味するのか不明であるところ、「その底面」が「円柱状又は角柱状」の「底面」を意味するのであれば、このようなことは、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていないというものである。
また、請求項4については、「前記第2光反射ステップは球面状又は円錐面状の凹部で構成されてその底面が反射面として構成されている」との記載があるところ、「その底面」が「円錐面」の「底面」を含みうるが、このような「第2光反射ステップ」の「底面」については、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていないというものである。
(2)申立理由3の検討
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
ア 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比
(ア)請求項3の「その底面」について
前記9(2)アで述べたように、請求項3の「前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部として構成されてその底面が反射面として構成され」るとの記載において、「その底面」が「前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部」の「底面」を意味することは明らかである。
一方、明細書等には、段落【0017】に「導光板2の内部を導光された光を光反射ステップ3の凹底面において反射し」との記載があり、段落【0022】に「第1光反射ステップ31は、・・・ここでは、柱軸を水平方向ないし水平方向に対して所要の角度で傾斜された円柱状の凹部、換言すればシリンドリカル(かまぼこ)状の凹部として形成されている。」との記載があり、段落【0023】に「第1光反射ステップ31は・・・三角柱や四角柱の凹部として形成されてもよい。」との記載があり、また、図3には、「第1光反射ステップ31」の底面で「導光板2の内部を導光された光」が反射されることが示唆されている。
そうすると、請求項3の「前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部として構成されてその底面が反射面として構成され」るとの記載と明細書等の記載に矛盾があるとは認められない。
(イ)請求項4の「その底面」について
前記9(2)ウで述べたように、請求項4の「球面状又は円錐面状の凹部」は、「導光体」の「裏面」を「導光体」の内部に凹ませて形成したものであるといえる。
そして、前記9(2)ウで示したように、「球面状又は円錐面状の凹部」の「底面」とは、「球面状又は円錐面状の凹部」における「導光体」の「裏面」と反対側に位置する所の面であると解することができる。
一方、明細書等には、段落【0017】に「導光板2の内部を導光された光を光反射ステップ3の凹底面において反射し」との記載があり、段落【0024】に「第2光反射ステップ32は、・・・ここでは球面状の凹部として形成されている。・・・なお、図示は省略するが、第2光反射ステップ32は、・・・円錐状の凹部として形成されてもよい。」との記載があり、また、図3に、「導光板2」の「裏面」とは反対側にある「第2光反射ステップ32」の面で「導光板2の内部を導光された光」を反射することが示唆されている。
そうすると、請求項4の「前記第2光反射ステップは球面状又は円錐面状の凹部で構成されてその底面が反射面として構成されている」るとの記載と明細書等の記載に矛盾があるとは認められない。
イ 本件特許の課題の解決について
明細書等の【0006】に記載されるように、本件特許の課題は「導光体の構成を簡略化するとともに、発光パターンのパターン形状の自由度を高め、さらに導光体の設計、製造を容易に行なうことが可能な車両用ランプを提供する」ことであるところ、明細書等の段落【0038】~【0049】の記載を踏まえれば、当該課題は、請求項1の「前記導光体はその裏面に内部を導光される光を反射して表面から出射させる複数の光反射ステップが形成されており、」「前記複数の光反射ステップは、前記導光体の内部を導光される光をそれぞれ相違する方向に向けて指向性を有する状態で反射する複数の第1光反射ステップと、前記導光体の内部を導光される光を指向性がない状態で反射する複数の第2光反射ステップを備え」るとの発明特定事項によって解決できるものであるといえる。
そして、請求項3の「前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部として構成されてその底面が反射面として構成され、出射される光の方向が相違する複数の第1光反射ステップは、それぞれ導光体における反射面の角度が相違されている」との記載は、請求項1の「複数の第1光反射ステップ」との発明特定事項を具体的に特定したものであり、また、請求項4の記載は、請求項1の「複数の第2光反射ステップ」との発明特定事項を具体的に特定したものである。
したがって、請求項3、4の記載は、その記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
以上のとおりであるから、請求項3、4の記載は、サポート要件を満たしているといえる。
11 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~8は、甲1発明及び甲2記載事項~甲7記載事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
そして、本件発明3、4は、明確であり、また、本件発明3、4は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、申立理由1~3は、理由がない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700274