特許異議申立
2025-700033
火災関連情報表示機
- 審判番号
- 2025-700033
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-205241
- 登録番号
- 7511626
- 請求日
- 2024年12月25日
- 審決日
- 2025年03月03日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】能美防災株式会社
- 【権利者代理人】曾我 道治
- 【権利者代理人】上田 俊一
- 【異議申立人】六條 直樹
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 衣鳩 文彦
- 分類
- P1651.121-Y (G08B) / P1651.536-Y (G08B) / P1651.537-Y (G08B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7511626号発明「火災関連情報表示機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7511626号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7511626号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年7月25日に出願した特願2018-139141号の一部を令和4年12月22日に新たな特許出願としたものであって、令和6年6月27日にその特許権の設定登録がされ、同年7月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年12月25日に特許異議申立人 六條 直樹(以下「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てをした。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~3の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、請求項3の符号3A~3Fは、請求項3を分説するために当審で付与したものであり、分説した発明特定事項を、以下では「発明特定事項3A」のように参照する。
「【請求項1】
複数の端末機器と接続され、前記複数の端末機器からの送信情報に基づいてイベントの発生を判定する判定部と、
前記判定部により3つ以上のイベントが重複して発生したと判定された場合には、前記3つ以上のイベントを1画面内に表示させる表示制御部と、
鳴動指令に応じて、イベントごとにあらかじめ設定された警報音による報知、およびあらかじめ決められた音声による報知を行う報知部と
を備え、
前記表示制御部は、前記判定部により前記3つ以上のイベントが重複して発生したと判定された場合には、あらかじめ設定されたイベントごとの重要度に応じて、前記3つ以上のイベントのうち、前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定して、前記警報音および前記音声の両方を用いた報知を行うように前記鳴動指令を出力し、前記3つ以上のイベントのうち、前記重要イベント以外のイベントに関しては、前記警報音を用いた報知を省略し、前記音声を用いた報知を行うように前記鳴動指令を出力する
火災関連情報表示機。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記3つ以上のイベントとして、重要度の高い第1イベントおよび第2イベントと、重要度の低い第3イベントの3つのイベントが重複して発生した場合には、前記第1イベントの警報音による報知→前記第1イベントの音声による報知→前記第2イベントの警報音による報知→前記第2イベントの音声による報知→前記第3イベントの音声による報知、を繰り返し行うように前記鳴動指令を順次出力し、前記重要イベントに相当する前記第1イベントおよび前記第2イベントに関しては警報音と音声の両方を鳴動させ、前記重要イベント以外のイベントに相当する前記第3イベントに関しては音声を鳴動させる一方で警報音による鳴動を省略した上で、前記3つのイベントを順番に繰り返し鳴動させる
請求項1に記載の火災関連情報表示機。
【請求項3】
3A 複数の端末機器と接続され、前記複数の端末機器からの送信情報に基づいてイベントの発生を判定する判定部と、
3B 前記判定部により3つ以上のイベントが重複して発生したと判定された場合には、前記3つ以上のイベントを1画面内に表示させる表示制御部と、
3C 鳴動指令に応じて、イベントごとにあらかじめ設定された警報音による報知を行う報知部と
3D を備え、
3E 前記表示制御部は、前記判定部により前記3つ以上のイベントが重複して発生したと判定された場合には、あらかじめ設定されたイベントごとの重要度に応じて、前記3つ以上のイベントのうち、前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定して、前記警報音を用いた報知を行うように前記鳴動指令を出力し、前記3つ以上のイベントのうち、前記重要イベント以外のイベントに関しては、前記警報音を用いた報知を省略し、前記重要度の高いイベントとして2つの重要イベントが限定された場合には、順番に繰り返し鳴動指令を出力することで、前記2つの重要イベントに関して警報音を用いた報知を繰り返し行う
3F 火災関連情報表示機。」
第3 特許異議申立理由の概要
1 申立理由
特許異議申立人が主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりであると認められる。
(1)申立理由1(進歩性)
請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
(2)申立理由2(明確性)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、次の点で、請求項1~3に係る発明が明確でないから、請求項1~3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法第113条第4号)
請求項1、3の「前記3つ以上のイベントのうち、前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定して」との発明特定事項の意味するところが不明である。請求項2も、その不明点を明らかにするものでない。
(3)申立理由3(実施可能要件)
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、次の点で、請求項1~3に係る発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、請求項1~3に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条4号)
発明の詳細な説明の記載は、請求項1~3に係る発明の「前記3つ以上のイベントのうち、前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定して」との発明特定事項を、本件特許の発明者の意図する態様で実施できる程度に明確かつ十分に記載していない。
2 証拠方法
特許異議申立人が特許異議申立書に添付した証拠方法は、以下のとおりである(以下、甲第1号証~甲第3号証を、「甲1」等という。)。
甲1:特開2003-67855号公報
甲2:実願平5-10207号(実開平6-70097号)のCD-ROM
甲3:特開2007-286839号公報
なお、甲2について、特許異議申立書及び証拠説明書には「実開平6-70097号公報」と表記されているが、提出された証拠等から上記の誤記であると認める。
第4 甲号証の記載
1 甲1
(1)甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のために当審で付したものである(以下、同じ。)。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、防災受信機に関し、特に防災受信機の警報に関する。」
イ 「【0014】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の防災受信機の一例としての防災受信機10が設けられている防災システム1の構成を示す。防災システム1は、主に、防災受信機10と、これに線路Lを介して接続されている中継器40、40と、2つの中継器40それぞれに接続された多数の端末から構成され、いわゆるR型システムを有する。中継器40、40は、例えば1フロアなどの1つの地区ごとに1つずつ設置される。
【0015】端末としては、火災感知器41、41、41…、ガス漏れ検知器42、42、42…、防火戸43、43、43…、ダンパー44、44、44…を例示した。これら端末の動作に応じて中継器40を介して防災受信機10に対して所定の信号が出力され、例えば火災感知器41が火災を検出すれば火災検出信号、ガス漏れ検知器42がガス漏れを検知すればガス漏れ検知信号、防火戸43やダンパー44が作動すれば作動信号が出力される。なお、火災感知器41、41…は、ON/OFF式の感知器であってもよいし、アナログ感知器であってもよいが、アナログ感知器の場合、まず火災注意信号を発信し、さらに火災であることを検出すれば火災検出信号を出力するようになっている。なお、防災システム1を構成する中継器の数や端末の種類及び数については、図1に示すものに限定されない。
【0016】図2に防災受信機10の外観を示し、図3に防災受信機10の制御回路20を示した。防災受信機10は、線路Lを介して各地区の火災発生等を監視し、イベント発生時には、警報の表示、鳴動を行うとともに、防火戸やダンパーなどの防排煙設備を制御駆動するものである。防災受信機10の正面には、各種操作や表示のための操作パネル10aが設けられている。該操作パネル10aは、表示画面11と、複数のLED(発光ダイオード)からなる表示灯群12と、各種スイッチからなるスイッチ群13と、プリンター16と、スピーカ17とを備える。表示画面11は、液晶表示パネルからなり、防災受信機10や防災システム1についてイベントの発生や過去の記録など適宜表示するものである。また、表示画面11は、タッチパネル方式のスイッチとしても機能する。表示灯群12は、防災受信機10の状態や地区ごとのイベント発生などを報知するもので、状態やイベントに合わせて点灯・点滅する。」
ウ 「【0019】制御回路20には、CPU(Central Processing Unit)21が設けられ、このCPU21に対してRAM(Random Access Memory)22、ROM(Read Only Memory)23が接続されている。ROM23には、防災受信機10における各種処理のための制御プログラムや設定データが書き込まれ、RAM22には、各種処理に用いられる運用データが書き込まれているとともに、ワーキングエリアとして使用される。CPU21は、インターフェース24を介して前記線路Lに接続され、各地区の中継器40からの火災信号、ガス漏れ検知信号などの各種信号を受信する。また、CPU21には、インターフェース25を介して保守スイッチ26が接続され、保守スイッチ26が操作されると、CPU21は音響部33を介して警報の鳴動を完全に停止させる。さらに、CPU21には、インターフェース28を介して操作部32が接続されている。操作部32は、前記スイッチ群13及び表示画面11内のタッチパネル式のスイッチから構成され、これらスイッチが操作されると、所定の信号がCPU21に入力するようになっている。
【0020】CPU21は、操作部32、保守スイッチ26、あるいは線路Lを介して入力する信号を受けて、ROM23内の制御プログラムに従って、RAM22内のデータを利用しながら、防災受信機10における各種処理を実行する。例えば、CPU21は、インターフェース27、29、30それぞれを介して接続されている表示部31、音響部33、印字部34を制御し、所定の動作を行わせる。すなわち、CPU21の制御の下で、表示部31は、表示画面11に所定の内容を表示し、表示灯群12のそれぞれのLEDに適宜点滅・点灯させる。印字部34は、CPU21からの制御信号により、所定の内容をプリンター16に印刷する。
【0021】また、音響部33は、CPU21からの信号により、所定内容の警報を鳴動したり、あるいは鳴動を停止する。音響部33は、図4に示すように、スピーカ17と、アンプ36と、D/A変換部37とから構成される。また、前記RAM22には、スピーカ17から発せられる各警報の内容がデジタルデータ(以下、警報データ)として複数書き込まれている。この警報データは、図5のテーブルで示すように、警報音と音声メッセージから構成され、警報のレベルや種類に応じて、異なる警報音と音声メッセージが設定されている。これら警報音と音声メッセージは、RAM22内にADPCM(adaptive differential pulse code modulation)方式の音声データとして記憶され、警報鳴動時にはCPU21により解凍されるようになっている。
【0022】CPU21は、線路Lを介してイベント情報を受信すると、イベント内容に応じて、RAM22内のデータから所定の警報データを選択し、その警報データを音響部33に送出する。音響部33は、入力した警報データを、D/A変換部37においてデジタル信号からアナログ信号に変換し、さらにアンプ36で増幅した後、スピーカ17から警報として鳴動させる。スピーカ17から発せられる警報は、図5で示す警報音と音声メッセージが連続したものを1サイクルとして、これを繰り返して構成される。
【0023】上記のように、防災受信機10においては、1つのスピーカ17から警報が発せられるようになっている。従って、1つのスピーカ17から多種類の警報を効果的に鳴動させるために、警報の要因となるイベントの重要性に応じて警報をレベル分けし、優先順位を定めた。図5には、レベル分けを警報内容とともに例示した。ここでは、優先度の高い順に、レベル1、レベル2、レベル3と3種類に設定した。
【0024】優先度の最も高いレベル1としては、火災感知器41、41…からの第1報目の火災検出信号を受けて発する感知器発報警報、同じ火災感知器41からの第2報目の火災検出信号を受けて発する火災確定警報、及びガス漏れ検知器42、42…からのガス漏れ検出信号を受けて発するガス漏れ警報の3種類を定めている。レベル2としては、火災感知器41がアナログ感知器である場合に、第1報目の火災注意信号を受けての注意報警報を定めている。レベル3としては、防火戸43やダンパー44などの防排煙機器からの作動信号を受けての防排煙機器作動信号と、線路Lを介して入力する何らかの故障信号を受けての故障警報を定めている。図5から分かるように、イベントに応じて、異なる警報音と音声メッセージが設定されている。なお、感知器発報警報と火災確定警報については警報音として同じものを使用している。このようにレベルが同じであれば、異なる種類の警報について同じ警報音を使用してもよい。」
エ 「【0027】(2)同じレベルの警報の要因となる複数のイベントが発生した場合
・・・(中略)・・・
【0030】図7(d)に示すように、防火戸の作動を受けて「警報音+音声」からなる警報を繰り返し鳴動中に、シャッターの作動信号がt13時に入力すると、防火戸の鳴動サイクルの終了後t13’時から、シャッターと防火戸の警報が交互に繰り返されるようになる。その後、t14時に新たにダンパーから作動信号が入力しても、ダンパーに関する警報は鳴動しない。この後、防火戸が復旧すれば、シャッターとダンパーの警報が交互に鳴動し、あるいはシャッターが復旧すれば防火戸とダンパーの警報が交互に鳴動する。なお、1つの防火戸の警報の後、さらに別の防火戸から作動信号が出力されても、警報には変化がない。この状態でさらにシャッターが作動した場合、防火戸とシャッターの警報が1サイクルずつ交互に鳴動することになる。このように、同じレベルの警報に対応する複数のイベントが生じた場合、最大2種類の警報について交互に鳴動させるようになっている。」
オ 「【0031】(3)異なるレベルの警報の要因となる複数のイベントが発生した場合
異なるレベルの警報の要因となる複数のイベントが発生した場合、図7のように交互鳴動は行わず、より優先度の高いレベルの警報を優先する。図8(a)に示すように、相対的に低いレベルの警報の鳴動中、t15時により高いレベルの警報に対応するイベントが発生すると、それまで鳴動していた低レベルの警報の鳴動サイクルには無関係に、即座に高いレベルの警報が鳴動し、それ以後は高いレベルの警報のみ繰り返す。また、図8(a)の状態から図8(b)に示すように、t16時に高いレベルの警報の要因となっているイベントが復旧した場合、その復旧時に鳴動中のサイクルが終了したt16’時から、低レベルの警報の鳴動が開始し、以後この警報を繰り返す。」
カ 「【0033】(4)警報鳴動中に音響停止スイッチ14が操作された場合
スピーカ17からの警報の鳴動中に音響停止スイッチ14が操作されると、操作された時点で即警報は停止し、同時に点滅していた音響停止スイッチ14は消灯する。図9に具体例を示した。まず、t20時において火災検出信号を受けてレベル1の感知器発報警報が鳴動する。次いで、t21時にガス漏れ警報が発生すると、この時に鳴動中であった感知器発報警報の1サイクルが終了したt23時からガス漏れ警報が鳴動し、以後感知器発報信号(当審注:「感知器発報警報」の誤記と認める。)とガス漏れ警報が繰り返される。なお、t21とt23との間のt22時に防火戸が作動するが、レベル3の警報であるため、警報は鳴動しない。」
キ 「【図2】
[図:0001421408000001.jpg]
」
ク 「【図5】
[図:0001421408000002.jpg]
」
ケ 「【図9】
[図:0001421408000003.jpg]
」
(2)甲1発明
前記(1)の下線部に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明をa~lに分説し、「構成a」のように参照する。
「a 防災受信機10と、これに線路Lを介して接続されている中継器40と、中継器40に接続された多数の端末から構成された防災システム1の防災受信機10であって、(【0014】)
b 端末の動作に応じて中継器40を介して防災受信機10に対して所定の信号、例えば火災検出信号、ガス漏れ検知信号、作動信号が出力され、(【0015】)
c 防災受信機10は、線路Lを介して各地区の火災発生等を監視し、イベント発生時には、警報の表示、鳴動を行うとともに、防火戸やダンパーなどの防排煙設備を制御駆動し、(【0016】)
d 防災受信機10の制御回路20には、CPU21が設けられ、CPU21は、前記線路Lに接続され、中継器40からの火災信号、ガス漏れ検知信号などの各種信号を受信し、(【0016】、【0019】)
e CPU21は、線路Lを介して入力する信号を受けて、各種処理を実行し、表示部31、音響部33を制御し、CPU21の制御の下で、表示部31は、表示画面11に所定の内容を表示し、(【0020】)
f CPU21は、線路Lを介してイベント情報を受信すると、イベント内容に応じて、所定の警報データを選択し、その警報データを音響部33に送出し、音響部33は、入力した警報データを、スピーカ17から警報として鳴動させ、スピーカ17から発せられる警報は、警報音と音声メッセージが連続したものを1サイクルとして、これを繰り返して構成され、(【0022】)
g 警報の要因となるイベントの重要性に応じて警報をレベル分けし、優先順位を定め、優先度の高い順に、レベル1、レベル2、レベル3と3種類に設定し、(【0023】)
h イベントに応じて、異なる警報音と音声メッセージが設定されており、(【0024】)
i 同じレベルの警報に対応する複数のイベントが生じた場合、最大2種類の警報について交互に鳴動させ、(【0030】)
j 異なるレベルの警報の要因となる複数のイベントが発生した場合、交互鳴動は行わず、より優先度の高いレベルの警報を優先し、(【0031】)
k 具体例として、まず、t20時において火災検出信号を受けてレベル1の感知器発報警報が鳴動し、次いで、t21時にガス漏れ警報が発生すると、この時に鳴動中であった感知器発報警報の1サイクルが終了したt23時からガス漏れ警報が鳴動し、以後感知器発報警報とガス漏れ警報が繰り返され、t21とt23との間のt22時に防火戸が作動するが、レベル3の警報であるため、警報は鳴動しない(【0033】)
l 防災受信機10」
2 甲2
甲2には、次の事項が記載されている。
「【0011】
【実施例】
図2は本考案の表示パネルが用いられる防災監視装置における全体構成を示した説明図である。
図2において、10は受信機であり、中央監視室や管理人室等に設置される。
受信機10からは伝送路としての信号線12および電源線14が引き出され、感知器用中継器16、アナログ感知器18および制御用中継器20,21を接続している。感知器用中継器16からは電源兼用信号線22が引き出され、電源兼用信号線22に1または複数のオンオフ感知器24を接続している。」
「【0018】
図3において、30は前記表示パネルであり、表示パネル30は、火災表示、ガス漏れ表示など必要不可欠な情報の表示を固定して行う固定表示部40と、それ以外のシステム構成に合わせて任意の表示を行う任意表示部42と、情報の詳細を表示する液晶表示部44と、警報を行う鳴動部36により構成されている。
表示パネル30の表面94には、表示シート46が貼着され、表示シート46には火災などの文字と火災などを示す絵が予めプリントされている。」
「【0027】
80は電話呼出表示部であり、電話呼出表示部80は電話呼出があると、点灯する。電話呼出表示部80に隣接して、電話の文字がプリントされている。
以上の各表示部48~80および各プリント文字が全体として固定表示部40を構成している。
44は前記液晶表示部であり、液晶表示部44には、各警報および障害発生時にその内容と地区番号が詳細に表示される。また、各保守、試験時に操作する操作スイッチなどが表示される。
【0028】
例えば、種々の警報が同時入力したときの表示例を以下に示す。
火 災:開研2階 第1会議室 *11272
火 災:開研2階 廊下発信機 11261
ガス漏れ :開研3階 湯沸かし室 *11031
ガス漏れ :工場1階 乾 燥 室 10123
防火戸 確認:工場1階 生産管理課 *20012
監 視:工場2階 空調停止 20024
また、種々のアドレス障害、回線障害が同時に入力したときの表示例を以下に示す。
応答なし :開研2階 南側収容盤 *11270
感知器汚れ :開研2階 食堂窓側 11011
種別異常 :開研3階 北側収容盤 *11030
端末障害 :開研4階 湯沸かし室 11041
未 接 続 :工場1階 収容盤防排煙 *20010
端末制御線 :工場1階 ベル 20111
また、各保守、試験時のメニュー表示画面を以下に示す。
★メニュー表示★
◆操作スイッチ
運動停止
試験・保守
データ一覧
印字
36は前記鳴動部であり、鳴動部36はブザーなどからなり、各警報を音声で警告する。」
「【図3】
[図:0001421408000004.jpg]
」
3 甲3
甲3には、次の事項が記載されている。
「【0024】
図3は、実施例1である火災受信機RE1におけるLCD30の表示例を示す図である。
【0025】
LCD30は、個別表示エリアA1と、種別表示エリアA2とを有する。
【0026】
個別表示エリアA1では、棟階地区名称、棟階地区番号と共に、作動した設備機器を、個別に表示し、また、発生した諸警報、設備異常も、個別に表示し、さらに、10報を一度に表示し、11報目以降を、スクロールによって表示するエリア(10報表示画面)である。
【0027】
つまり、個別表示エリアA1は、10報を同時に表示することができるエリアであり、複数の設備機器のそれぞれが作動したことや、諸警報、設備異常が発生したことを、個別に表示する表示エリアであり、10個の表示エリア40、41、42、43、44、45、46、47、48、49を有する。」
「【図3】
[図:0001421408000005.jpg]
」
第5 当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1)対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
ア 発明特定事項3A、3Dについて
甲1発明において、「防災受信機10」の「制御回路20」に設けられた「CPU21」(構成d)が、「中継機40」から受信する「火災信号、ガス漏れ検知信号などの各種信号」(構成d)、「線路Lを介して」受ける「入力する信号」(構成e)、及び「線路L」を介して受信する「イベント情報」(構成f)とは、「中継器40」と接続された「多数の端末」(構成a)が「出力」する「火災検出信号、ガス漏れ検知信号、作動信号」等の「所定の信号」(構成b)のことであることは明らかであり、「多数の端末」は、本件発明3の「複数の端末機器」に相当し、「各種信号」、「入力する信号」、「イベント情報」、「所定の信号」(以下、単に「信号」ということがある。)は、本件発明3の「前記複数の端末機器からの送信情報」に相当する。
前記「CPU21」は、前記信号を受信すると、「表示部31」を制御して「表示画面11に所定の内容を表示」させ(構成e)、また「警報として鳴動」する「所定の警報データを選択」(構成f)しており、これらの処理を実行するにあたり、「CPU21」は、前記信号に基づいて「イベント発生」(構成c)を判定していると認められる。そのため、甲1発明の「CPU21」は、前記判定をする処理部を構成しているといえるから、本件発明3の「前記複数の端末機器からの送信情報に基づいてイベントの発生を判定する判定部」に相当する。
前記「CPU21」は、「前記線路Lに接続され」ている(構成d)ため、該「線路L」を介して「中継機40」、さらには「多数の端末」(構成a)と接続されているといえる。
したがって、本件発明3と甲1発明とは、「複数の端末機器と接続され、前記複数の端末機器からの送信情報に基づいてイベントの発生を判定する判定部と」「を備え」る点で一致する。
イ 発明特定事項3B、3Dについて
(ア)甲1発明の「防災受信機10」の「CPU21」は、「表示部31」を制御して「表示画面11に所定の内容を表示」させる(構成e)ものであり、該「所定の内容の表示」は、「イベント」についての「警報の表示」(構成c)と解されるから、「イベント」を表すものといえる。そして、甲1発明の「CPU21」は、上記「表示部31」を制御して「表示画面11に所定の内容の表示」させる処理部を構成しているといえるから、本件発明3の「表示制御部」とは「イベントを画面に表示させる表示制御部」である点で共通する。
他方で、甲1発明は、本件発明3で特定される「3つ以上のイベントが重複して発生した」ときに、該「イベント」をどのように画面に表示するかは明らかでない。
(イ)また、以下に示すとおり、甲1発明は、本件発明3の「前記判定部により3つ以上のイベントが重複して発生したと判定された場合」について特定していない。
a 甲1発明は、「同じレベルの警報に対応する複数のイベントが生じた場合、最大2種類の警報について交互に鳴動させ」る(構成i)ことを特定している。
前記「警報」の「鳴動」は、前記アのとおり「CPU21」が「イベント発生」を判定することで行われる(構成f)から、前記「最大2種類の警報について交互に鳴動させ」るのは、「同じレベルの警報に対応する複数のイベントが生じた」と「CPU21」が判定することによると解される。ここで、前記「レベル」は、「警報」をその「要因となるイベントの重要性に応じて」、「優先度の高い順に、レベル1、レベル2、レベル3」に「レベル分けし」た(構成g)ものであるから、「警報の要因となるイベント」の重要度ということができ、これは、本件発明3の「あらかじめ設定された」「イベント」の「重要度」に相当するものである。また、「最大2種類の警報について交互に鳴動させ」ることから、「警報に対応する複数のイベント」が重複して発生していることは明らかである。そうすると、甲1発明において、「CPU21」が、前記「同じレベルの警報に対応する複数のイベントが生じた」と判定することは、同じ重要度の複数のイベントが重複して発生したと判定することといえる。
しかしながら、甲1発明の前記構成iは、それらのイベントの重要度に関係なく、本件発明3で特定される「前記判定部により3つ以上のイベントが発生したと判定される」ことを示すものではない。
b また、甲1発明は、「異なるレベルの警報の要因となる複数のイベントが発生した場合、交互鳴動は行わず、より優先度の高いレベルの警報を優先」する(構成j)ことを特定しており、前記aを踏まえると、「CPU21」は、異なる重要度の複数のイベントが重複して発生したと判定しているといえる。しかしながら、このことは、それらのイベントの重要度に関係なく、本件発明3で特定される「前記判定部により3つ以上のイベントが発生したと判定される」ことを示すものではない。
(ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明3と甲1発明とは、「イベントを画面に表示させる表示制御部」「を備え」る点で共通する一方、本件発明3は、「前記判定部により3つ以上のイベントが重複して発生したと判定された場合」に、「表示制御部」が「前記3つ以上のイベントを1画面内に表示させる」のに対し、甲1発明は、そのような構成を特定していない点で相違する。
ウ 発明特定事項3C、3Dについて
甲1発明の「音響部33」は、「警報データを、スピーカ17から警報として鳴動させ」る(構成f)ものであり、該「警報」は「警報音と音声メッセージ」で「構成され」(構成f)、「警報音と音声メッセージ」は「イベントに応じて」異なるよう「設定され」た(構成h)ものである。そうすると、甲1発明の「警報音」は、本件発明1の「イベントごとにあらかじめ設定された警報音」に相当し、甲1発明の「音響部33」は、本件発明3の「イベントごとにあらかじめ設定された警報音による報知を行う報知部」に相当する。
さらに、甲1発明の「警報として鳴動させる」前記「警報データ」は、「CPU21」から「音響部33」に「送出」される(構成f)ものであり、それにより「音響部33」は「警報」を「鳴動」させるから、該「CPU21」から「音響部33」に「送出」される「警報データ」は、本件発明3の「鳴動指令」に相当するといえる。
したがって、本件発明3と甲1発明とは、「鳴動指令に応じて、イベントごとにあらかじめ設定された警報音による報知を行う報知部」「を備え」る点で一致する。
エ 発明特定事項3Eについて
前記イ(イ)のとおり、甲1発明は、本件発明3の「前記判定部により前記3つ以上のイベントが重複して発生したと判定された場合」について特定していない。そのため、甲1発明は、前記「場合」に、どのように警報の鳴動を行うかについても特定していない。
オ 発明特定事項Fについて
甲1発明の「防災受信機10」は、「火災発生等を監視し」、「イベント発生時には、警報の表示」を行う(構成c)ものであり、「火災」という「イベント」の発生時に「表示」する該「警報」は、火災関連情報といえる。そして、「防災受信機10」は、前記火災関連情報を「表示」する点で、火災関連情報の表示機であるといえるから、本件発明3と甲1発明とは、「火災関連情報表示機」である点で一致する。
カ 一致点、相違点
前記ア~オによれば、本件発明3と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
複数の端末機器と接続され、前記複数の端末機器からの送信情報に基づいてイベントの発生を判定する判定部と、
前記イベントを画面に表示させる表示制御部と、
鳴動指令に応じて、イベントごとにあらかじめ設定された警報音による報知を行う報知部と
を備えた、
火災関連情報表示機。
[相違点]
(相違点1)「判定部」について、本件発明3は、「3つ以上のイベントが重複して発生した」ことを「判定」するものであるのに対し、甲1発明は、そのような構成を特定していない点。
(相違点2)相違点1に付随して、本件発明3は、「前記判定部により3つ以上のイベントが重複して発生したと判定された場合」に、「表示制御部」が「前記3つ以上のイベントを1画面内」に表示させるのに対し、甲1発明は、そのような構成を特定していない点。
(相違点3)相違点1に付随して、本件発明3は、「前記判定部により前記3つ以上のイベントが重複して発生したと判定された場合」に、「表示制御部が」「あらかじめ設定されたイベントごとの重要度に応じて、前記3つ以上のイベントのうち、前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定して、前記警報音を用いた報知を行うように前記鳴動指令を出力し、前記3つ以上のイベントのうち、前記重要イベント以外のイベントに関しては、前記警報音を用いた報知を省略し、前記重要度の高いイベントとして2つの重要イベントが限定された場合には、順番に繰り返し鳴動指令を出力することで、前記2つの重要イベントに関して警報音を用いた報知を繰り返し行う」のに対し、甲1発明は、そのような構成を特定していない点。
(2)相違点についての判断
相違点2及び3は相違点1に付随するものであるため、相違点1~3についてまとめて検討する。
甲1発明は、前記(1)イ(イ)のとおり、「CPU21」が、同じ重要度の複数のイベントが重複して生じたと判定した場合に、最大2種類の警報について交互に鳴動させ(前記(1)イ(イ)a)、また、異なる重要度の複数のイベントが重複して発生したと判定した場合に、交互鳴動は行わず、より優先度の高いレベルの警報を優先する(前記(1)イ(イ)a)ものである。そうすると、甲1発明において、複数のイベントが重複して発生した場合の警報の鳴動を行うにあたり、前記2つの判定の少なくとも1つは肯定判定となり、該判定に従って警報が鳴動されることは明らかであるから、前記2つの判定を行うことに加えて、それらのイベントの重要度に関係なく、3つ以上のイベントが重複して発生したかを判定する必要性は見い出せない。これは、甲2及び甲3の記載を参酌しても変わらない。
また、甲1発明は、複数のイベントが重複して発生した場合のイベントの表示の具体的な態様が、前記(1)イ(ア)のとおり不明であるところ、甲2、甲3には、複数のイベントを1画面内に表示することが開示されていると認められるが、甲2、甲3には、該表示を行うにあたり3つ以上のイベントが重複して発生したことを判定することについて記載も示唆もない。
さらに、甲1発明の前記2つの判定と、3つ以上のイベントが重複して発生したかの判定とは等価ではないから、甲1発明の前記2つの判定に代えて、3つのイベントが重複して発生したかの判定を行うことは、単なる設計変更には当たらない。
したがって、甲1発明において、3つ以上のイベントが重複して発生したと判定すること、すなわち相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。また、相違点1に係る構成を前提とする相違点2及び相違点3に係る構成も、同様に当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明3は、甲1発明並びに甲2及び甲3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書16~20頁において、本件発明3と甲1に記載された発明の対比判断を行っているが、そこでは、前記相違点3を相違点とはせず、相違点3に係る構成(発明特定事項3E)は、甲1の【0033】(甲1発明の構成k)に記載されていると判断していると認められる。そこで、この点について、以下、検討する。
甲1発明の構成kは、「まず、t20時において火災検出信号を受けてレベル1の感知器発報警報が鳴動し、次いで、t21時にガス漏れ警報が発生すると、この時に鳴動中であった感知器発報警報の1サイクルが終了したt23時からガス漏れ警報が鳴動し、以後感知器発報警報とガス漏れ警報が繰り返され、t21とt23との間のt22時に防火戸が作動するが、レベル3の警報であるため、警報は鳴動しない」(【0033】)というものである。
この構成kの動作は、まず、t20時において「火災検出信号」を受けたCPU21は、イベントが発生したと判定して「感知器発報警報」を鳴動させ(構成f)、次いで、t21に「ガス漏れ警報」に対応する信号を受けたCPU21は、同じ「レベル1」の警報に対応する複数のイベントが発生したと判定し、最大2種類の警報の「感知器発報警報」と「ガス漏れ警報」を、t23時以後に繰り返して鳴動させている(構成i)と理解できる。さらに、t21とt23との間のt22時に「防火戸」「作動」の信号を受けたCPU21は、それまでの「レベル1」の「感知器発砲警報」及び「ガス漏れ警報」に対応するイベントと、異なる「レベル3」の「警報」に対応するイベントが発生した、すなわち異なる「レベル1」と「レベル3」の警報の要因となる複数のイベントが発生したと判定し、より優先度の高い「レベル1」の「感知器発砲警報」及び「ガス漏れ警報」を優先し、「防火戸」の警報の鳴動は行わなかった(構成j)と理解できる。
つまり、甲1発明の構成kは、構成iと構成jの動作を順次行った結果として、「レベル1」の「感知器発砲警報」及び「ガス漏れ警報」の鳴動を行い、「防火戸」の警報は行わなかったものであって、それらの警報のレベル(重要度)に関係なく、「3つ以上のイベントが重複して発生したと判定」し、「前記3つ以上のイベントのうち、前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定し」たという動作によるものではない。
したがって、相違点3に係る構成は、甲1に記載されたものではないから、相違点3は、実質的な相違点である。そして、相違点3に係る構成が、甲1発明並びに甲2及び甲3から容易に想到し得ないことは、前記(2)のとおりである。
(4)申立理由1についてのまとめ
以上のとおり、本件発明3は、甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立理由1は、理由がない。
2 申立理由2(明確性)について
(1)申立理由2の概要
申立理由2は、請求項1、3の「前記3つ以上のイベントのうち、前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定して」との発明特定事項の意味するところが不明であり、請求項2も、その不明点を明らかにするものでないというものであり、具体的には、特許異議申立人は、次の(i)及び(ii)を主張している。
(i)「重要度の高い」について、3つ以上のイベントのうちある閾値よりも高い1つまたは2つを意味するのか、あるいは、3つ以上のイベントの重要度ランキングで最上位の1つまたは2つを意味するのか、あるいは、これら以外を意味するのか不明である。(特許異議申立書21頁)
(ii)「1つまたは2つ」について、あるときは1つの重要イベントに限定し、別のあるときは2つの重要イベントに限定するというように動的に限定数を変更する単一の火災関連情報表示機を意図したものなのか、あるいは、固定的に1つの重要イベントに限定する火災関連情報表示機と固定的に2つの重要イベントに限定する火災関連情報表示機の2台をひとつの請求項に記載したものなのか不明である。(特許異議申立書21~22頁)
(2)検討
ア 主張(i)について
本件発明1の「あらかじめ設定されたイベントごとの重要度に応じて、前記3つ以上のイベントのうち、前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定して、前記警報音および前記音声の両方を用いた報知を行うように前記鳴動指令を出力し」との事項に関して、本件特許の発明の詳細な説明には「すなわち、表示制御部14は、3つ以上のイベントが重複して発生した場合には、すべてのイベントに対応して警報音をならすのではなく、重要度の高い1つまたは2つのイベントに限定して、警報音を鳴らすように制御することができる。この結果、3つ以上の警報音が混在して鳴ることで、警報音を識別しづらくなる状況を回避することができる。」(【0054】)との記載がある。
前記記載によれば、本件発明1の前記事項の技術的意義は、3つ以上のイベントが重複して発生した場合に、警報音を鳴らすイベントを、3つ以上のイベントのうちの1つまたは2つのイベントに限定することで、警報音を識別しづらくなる状況を回避することであると理解される。そして、本件発明1の前記事項の「限定」は、「あらかじめ設定されたイベントごとの重要度に応じて」行われるものであり、「限定」する1つまたは2つのイベントは、該イベントが火災関連であることからして、当然重要なイベントとされるものであるから、本件発明1の前記事項は、該「限定」する1つまたは2つのイベントを「重要度の高い」「重要イベント」と表現していると理解される。
したがって、本件発明1の前記事項の「重要度の高い1つまたは2つの重要イベント」の「重要度の高い」は、1つまたは2つのイベントが、「あらかじめ設定されたイベントごとの重要度に応じて」重要なものとして「限定」されることを表現したものであって、その意味するところが不明であるとはいえない。また、本件発明1の前記事項の「イベントごとの重要度に応じ」た「重要度の高い1つまたは2つの重要イベント」の「限定」は、イベントごとの重要度に応じて1つまたは2つのイベントを重要なイベントとして「限定」する限りにおいて任意のものであると解され、該「限定」の仕方を具体的に特定しないことによって、本件発明1が、第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確なものになるとはいえない。
以上の点は、本件発明2及び3についても当てはまる。
よって、主張(i)は採用することができない。
イ 主張(ii)について
本件発明1の「あらかじめ設定されたイベントごとの重要度に応じて、前記3つ以上のイベントのうち、前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定して、前記警報音および前記音声の両方を用いた報知を行うように前記鳴動指令を出力し」との事項における該「限定」の仕方は、前記アのとおり、任意であると理解されるから、限定するイベントの数が動的であるか固定的であるかを具体的に特定しないことが、本件発明1が、第三者に不測の不利益を不測の不利益を及ぼすほどに不明確なものにするとはいえない。本件発明2及び3についても同様である。
よって、主張(ii)も採用することができない。
(3)申立理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~3の「前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定して」との発明特定事項は不明確ではなく、本件発明1~3は明確である。
よって、申立理由2は、理由がない。
3 申立理由3(実施可能要件)について
(1)申立理由3の概要
申立理由3は、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~3の「前記3つ以上のイベントのうち、前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定して」との発明特定事項を、本件特許の発明者の意図する態様で実施できる程度に明確かつ十分に記載していないというものである。(特許異議申立書22~23頁)
(2)検討
本件発明1~3の「前記3つ以上のイベントのうち、前記重要度の高い1つまたは2つの重要イベントに限定して」との事項の「限定」は、その仕方が任意であると解されることは、前記2(2)のとおりである。そして、複数のイベントのうち、その重要度に応じてイベントを選択(限定)することは、本件特許の技術分野に限らず周知慣用の技術であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本件発明1~3を実施するにあたり、該周知慣用技術を採用すればよいと理解するものと認められ、その実施のために過度の試行錯誤を要するとはいえない。
(3)申立理由3についてのまとめ
したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~3を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、申立理由3は、理由がない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に上記請求項に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700033