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特許異議申立

2018-700559

警報システム

審判番号
2018-700559
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-130107
登録番号
特許第6258611号(P6258611)
請求日
2018年07月10日
審決日
2019年09月05日
公報発行日
2019年12月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ホーチキ株式会社
  • 【権利者代理人】竹内 進
  • 【異議申立人】市東 勇
審判長/審判官
  • 審判長 北岡 浩
  • 審判官 富澤 哲生
  • 審判官 衣鳩 文彦
分類
P1651.121-YAA(G08B) / P1651.536-YAA(G08B) / P1651.537-YAA(G08B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6258611号発明「警報システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6258611号の明細書,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第6258611号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 特許6258611号の請求項1~4に係る特許についての出願は,平成25年6月21日に出願され,平成29年12月15日にその特許権の設定登録がされ,平成30年1月10日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許について,平成30年7月10日に特許異議申立人 市東 勇より請求項1~4に対して特許異議の申立てがされた。 その後の手続の経緯は,概ね次のとおりである。 平成30年 9月28日付け 取消理由通知 平成30年12月 4日   特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 平成31年 2月15日   特許異議申立人による意見書の提出 平成31年 4月22日付け 取消理由通知(決定の予告) 令和 元年 6月11日   特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 元年 8月15日   特許異議申立人による意見書の提出 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 令和元年6月11日に提出された訂正請求書に係る訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は,以下のア~エのとおりである。なお,平成30年12月4日に提出された訂正請求書に係る訂正請求(以下「先の訂正請求」という。)は,特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を, 「監視領域に配置した検出器で異常を検出した場合に,異常検出信号を防災受信盤に送信して異常警報を出力すると共に,前記防災受信盤から,受信した異常に対応した移報信号を出力する防災監視設備と, 前記監視領域に配置され,ネットワークを経由して信号を送受信する複数の情報端末装置と, 前記防災受信盤から移報信号が出力された場合に,当該移報信号に基づく防災情報信号を生成し,当該防災情報信号を,前記ネットワークを経由して前記情報端末装置へ配信して防災情報を表示させるアダプタ装置と, を備え, 前記防災監視設備は,監視領域に配置した火災感知器で火災を検出した場合に火災検出信号を前記防災受信盤に送信して火災警報を出力すると共に,前記防災受信盤から,火災発生場所を含む移報信号を出力し, 前記アダプタ装置は,前記防災受信盤からの火災発生場所を含む移報信号を受信した場合に,当該移報信号に基づき,火災警報及び火災発生場所を含む火災情報信号を生成して前記ネットワークを経由して前記複数の情報端末装置へ配信し, 前記複数の情報端末装置は,日常的に使用されているパソコンであり,当該日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報を予め記憶し,前記ネットワークを経由して前記アダプタ装置からの火災情報信号を受信した場合に,当該火災情報信号に基づき,火災発生場所を示す火災警報画面及び直近の避難口を示す地図画面として当該地図情報を表示する画面を切り替え可能に表示することを特徴とする警報システム。」 に訂正し,請求項1を引用する請求項3,4も同様に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を, 「監視領域に配置した検出器で異常を検出した場合に,異常検出信号を防災受信盤に送信して異常警報を出力すると共に,前記防災受信盤から,受信した異常に対応した移報信号を出力する防災監視設備と, 前記監視領域に配置され,無線ネットワークを経由して信号を送受信する複数の情報端末装置と, 前記防災受信盤から移報信号が出力された場合に,当該移報信号に基づく防災情報信号を生成し,当該防災情報信号を,前記無線ネットワークを経由して前記情報端末装置へ配信して防災情報を表示させるアダプタ装置と, を備え, 前記防災監視設備は,監視領域に配置した火災感知器で火災を検出した場合に火災検出信号を前記防災受信盤に送信して火災警報を出力すると共に,前記防災受信盤から,火災発生場所を含む移報信号を出力し, 前記アダプタ装置は,前記防災受信盤からの火災発生場所を含む移報信号を受信した場合に,当該移報信号に基づき,火災警報及び火災発生場所を含む火災情報信号を生成して前記無線ネットワークを経由して前記複数の情報端末装置へ配信し, 前記複数の情報端末装置は,日常的に使用されているタブレットや携帯電話であり,当該日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報を予め記憶し,前記無線ネットワークを経由して前記アダプタ装置からの火災情報信号を受信した場合に,当該火災情報信号に基づき,火災発生場所を示す火災警報画面及び直近の避難口を示す地図画面として当該地図情報を表示する画面を切り替え可能に表示することを特徴とする警報システム。」 に訂正し,請求項2を引用する請求項3,4も同様に訂正する。 ウ 訂正事項3 明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】に記載された,「複数の情報端末装置は,日常的に使用されているパソコンであり,ネットワークを経由してアダプタ装置からの火災情報信号を受信した場合に,当該火災情報信号に基づき,火災発生場所を示す火災警報画面及び直近の避難口を示す地図画面を切り替え可能に表示することを特徴とする。」を,「複数の情報端末装置は,日常的に使用されているパソコンであり,当該日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報を予め記憶し,ネットワークを経由してアダプタ装置からの火災情報信号を受信した場合に,当該火災情報信号に基づき,火災発生場所を示す火災警報画面及び直近の避難口を示す地図画面として当該地図情報を表示する画面を切り替え可能に表示することを特徴とする。」へと訂正する。 エ 訂正事項4 明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に記載された,「複数の情報端末装置は,日常的に使用されているタブレットや携帯電話であり,無線ネットワークを経由してアダプタ装置からの火災情報信号を受信した場合に,当該火災情報信号に基づき,火災発生場所を示す火災警報画面及び直近の避難口を示す地図画面を切り替え可能に表示することを特徴とする。」を,「複数の情報端末装置は,日常的に使用されているタブレットや携帯電話であり,当該日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報を予め記憶し,無線ネットワークを経由してアダプタ装置からの火災情報信号を受信した場合に,当該火災情報信号に基づき,火災発生場所を示す火災警報画面及び直近の避難口を示す地図画面として当該地図情報を表示する画面を切り替え可能に表示することを特徴とする。」へと訂正する。 本件訂正請求は,一群の請求項〔1~4〕に対して請求されたものである。また,明細書に係る訂正は,一群の請求項〔1~4〕について請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について (ア)訂正事項1は,訂正前の請求項1に「当該日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報を予め記憶し,」との記載を追加して,「日常的に使用されているパソコン」である「複数の情報端末装置」について,「当該日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報を予め記憶」するものであるという点で限定し,また,訂正前の請求項1の「地図画面を切り替え可能に表示する」との記載を「地図画面として当該地図情報を表示する画面を切り替え可能に表示する」との記載に変更して,「複数の情報端末装置」が表示する「地図画面」の内容について,「当該地図情報を表示する画面」であるという点で限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としている。 (イ)明細書の段落【0016】には,「監視領域となるオフィスビルで働いている人が日常的に使用しているパソコン等の情報端末装置」と記載されており,段落【0057】には,「情報端末装置24」が「パソコン」であることが記載されており,段落【0061】には,「情報端末装置24は,その設置場所に応じて避難口を示したフロアマップ情報を予め記憶しており,火災情報信号を受信した場合に,火災警報画面W1に合わせて,その階のフロアマップ画面W2を,火災警報画面W1の下に表示し」と記載されている。ここで,「フロアマップ情報」は地図情報であるといえる。したがって,訂正事項1は,新規事項の追加に該当せず,明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。 (ウ)訂正事項1が,実質上特許請求の範囲を拡張するものでなく,変更するものでもないことは明らかである。 イ 訂正事項2について (ア)訂正事項2は,訂正前の請求項2について,「複数の情報端末装置」が「日常的に使用されているタブレットや携帯電話」である点を除き,上記ア(ア)の訂正事項1と同様の記載の追加及び変更を行って,発明特定事項を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としている。 (イ)明細書には,上記ア(イ)の記載に加えて,段落【0087】に「上記の実施形態は,情報端末装置としてパソコンを例にとっているが,防災情報を表示可能な機器であれば,タブレットや携帯電話などの適宜の端末機器を含む。」と記載されているから,訂正事項2は,新規事項の追加に該当せず,明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。 (ウ)訂正事項2が,実質上特許請求の範囲を拡張するものでなく,変更するものでもないことは明らかである。 ウ 訂正事項3,4について 訂正事項3,4は,それぞれ上記ア,イの特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正であるから,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 (3)訂正の適否についてのまとめ 以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって,明細書,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下,請求項1~4に係る発明を,それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明4」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により,特定されるものである。 (1)本件特許発明1 「監視領域に配置した検出器で異常を検出した場合に,異常検出信号を防災受信盤に送信して異常警報を出力すると共に,前記防災受信盤から,受信した異常に対応した移報信号を出力する防災監視設備と, 前記監視領域に配置され,ネットワークを経由して信号を送受信する複数の情報端末装置と, 前記防災受信盤から移報信号が出力された場合に,当該移報信号に基づく防災情報信号を生成し,当該防災情報信号を,前記ネットワークを経由して前記情報端末装置へ配信して防災情報を表示させるアダプタ装置と, を備え, 前記防災監視設備は,監視領域に配置した火災感知器で火災を検出した場合に火災検出信号を前記防災受信盤に送信して火災警報を出力すると共に,前記防災受信盤から,火災発生場所を含む移報信号を出力し, 前記アダプタ装置は,前記防災受信盤からの火災発生場所を含む移報信号を受信した場合に,当該移報信号に基づき,火災警報及び火災発生場所を含む火災情報信号を生成して前記ネットワークを経由して前記複数の情報端末装置へ配信し, 前記複数の情報端末装置は,日常的に使用されているパソコンであり,当該日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報を予め記憶し,前記ネットワークを経由して前記アダプタ装置からの火災情報信号を受信した場合に,当該火災情報信号に基づき,火災発生場所を示す火災警報画面及び直近の避難口を示す地図画面として当該地図情報を表示する画面を切り替え可能に表示することを特徴とする警報システム。」 (2)本件特許発明2 「監視領域に配置した検出器で異常を検出した場合に,異常検出信号を防災受信盤に送信して異常警報を出力すると共に,前記防災受信盤から,受信した異常に対応した移報信号を出力する防災監視設備と, 前記監視領域に配置され,無線ネットワークを経由して信号を送受信する複数の情報端末装置と, 前記防災受信盤から移報信号が出力された場合に,当該移報信号に基づく防災情報信号を生成し,当該防災情報信号を,前記無線ネットワークを経由して前記情報端末装置へ配信して防災情報を表示させるアダプタ装置と, を備え, 前記防災監視設備は,監視領域に配置した火災感知器で火災を検出した場合に火災検出信号を前記防災受信盤に送信して火災警報を出力すると共に,前記防災受信盤から,火災発生場所を含む移報信号を出力し, 前記アダプタ装置は,前記防災受信盤からの火災発生場所を含む移報信号を受信した場合に,当該移報信号に基づき,火災警報及び火災発生場所を含む火災情報信号を生成して前記無線ネットワークを経由して前記複数の情報端末装置へ配信し, 前記複数の情報端末装置は,日常的に使用されているタブレットや携帯電話であり,当該日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報を予め記憶し,前記無線ネットワークを経由して前記アダプタ装置からの火災情報信号を受信した場合に,当該火災情報信号に基づき,火災発生場所を示す火災警報画面及び直近の避難口を示す地図画面として当該地図情報を表示する画面を切り替え可能に表示することを特徴とする警報システム。」 (3)本件特許発明3 「請求項1又は2記載の警報システムに於いて,前記情報端末装置は,マルチウィンドウ形式の表示画面を有し,前記火災情報信号を受信した場合,前記火災警報画面を最前面に表示すると共に,前記地図画面を当該火災警報画面の下に表示し,利用者の所定の操作により当該地図画面を最前面に表示することを特徴とする警報システム。」 (4)本件特許発明4 「請求項1又は2記載の警報システムに於いて,前記情報端末装置は,前記火災警報画面に,エレベータが使用できない旨を表示することを特徴とする警報システム。」 4 取消理由通知に記載した取消理由について (1)取消理由の概要 当審が平成31年4月22日付けで特許権者に通知した取消理由は,先の訂正請求による訂正後の請求項2~4に係る特許に対して通知したものであり,その概要は,次のとおりである。 請求項2~4に係る発明は,以下の刊行物1に記載された発明,及び,刊行物2,3,5,7,8のいずれかに示される周知技術に基づいて,当業者が容易に想到することができたものである。よって,請求項2~4に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。 刊行物1:特開2011-242881号公報(異議申立人提出の甲第1号証) 刊行物2:特開2002-183864号公報(異議申立人提出の甲第2号証) 刊行物3:特開平6-111172号公報(異議申立人提出の甲第3号証) 刊行物5:特開平8-305985号公報(異議申立人提出の甲第5号証) 刊行物7:特開2013-73415号公報(異議申立人提出の甲第7号証) 刊行物8:特表2008-526058号公報(異議申立人提出の甲第8号証) なお,上記取消理由では,以下の刊行物は引用されていない。 刊行物4:特開2004-272398号公報(異議申立人提出の甲第4号証) 刊行物6:特開平6-111172号公報(異議申立人提出の甲第6号証) (2)刊行物1の記載,甲1発明 ア 刊行物1(特開2011-242881号公報)には,図面とともに,以下の事項が記載されている(下線は当審による。)。 (ア)「【0001】 本発明は,避難誘導方法,及びこの方法に用いる情報処理システムに関し,とくに災害発生時に建物内に居る人を迅速かつ安全に避難させるための技術に関する。」 (イ)「【0023】 以下,本発明の一実施形態につき図面を参照しつつ説明する。 =情報処理システム= 図1は実施形態として説明する情報処理システム1の概略的な構成を示している。情報処理システム1は,火災,ガス漏れ,地震などの災害発生時に被災者の安全地帯への誘導が必要な施設(例えば,ホテル等の宿泊施設,オフィスビル,病院,校舎,ショッピングセンター,デパート,高層マンション,大型客船)に設けられる。以下の説明では,高層階のホテル2を施設の一例として説明する。 【0024】 同図に示すように,情報処理システム1は,ホテル2の所定位置に設けられる,サーバ装置100,サーバ装置100と通信ネットワーク50を介して通信可能に接続される一台以上の基地局200,ホテル2の宿泊客や従業員等(以下,被誘導者3と称する。)によって所持される被誘導者端末300,被誘導者3を救助するレスキュー隊員などの救助者4によって所持される救助者端末400,及びホテル2内の随所に設けられサーバ装置100と通信可能に接続される複数の災害検知センサ500(火災検知センサ,地震計,ガス漏れ検知センサ等)を含む。」 (ウ)「【0026】 通信ネットワーク50は有線通信方式又は無線通信方式で機器間を通信可能に接続する。通信ネットワーク50は,例えば,LAN(Local Area Network),インターネットなどである。」 (エ)「【0030】 図3にサーバ装置100の主な機能を示している。同図に示すように,サーバ装置100は,被誘導者現在位置管理部121,避難誘導情報提供部122,災害情報管理部123,救助者現在位置管理部125,及び救助支援情報提供部126の各機能を備えている。 【0031】 被誘導者現在位置管理部121は,基地局200と通信して被誘導者端末300の現在位置(被誘導者3の現在位置)を取得する。 【0032】 避難誘導情報提供部122は,基地局200を介して被誘導者端末300と通信し,被誘導者端末300に避難経路を案内する情報(以下,避難誘導情報と称する。)を提供する。 【0033】 災害情報管理部123は,火災検知センサ500から送られてくる情報に基づきホテル2内に現在生じている災害に関する情報を後述の災害情報136として管理する。尚,これらの機能の詳細については後述する。」 (オ)「【0041】 図6に被誘導者端末300(救助者端末400も共通)のハードウエア構成を示している。同図に示すように,被誘導者端末300は,CPU311,メモリ312,無線通信インタフェース313,指向性アンテナ314,タッチパネルや操作ボタン等の入力装置315,及び液晶ディスプレイ等の表示装置316を備える。CPU311は,メモリ312に記憶されているプログラムを実行することにより被誘導者端末300が備える各種の機能を実現する。尚,被誘導者端末300(又は救助者端末400)は,携帯電話機等の他の用途に用いられる携帯機器のハードウエアを用いて構成してもよい。また携帯電話機等の無線通信を行うハードウエアを用いる場合には,通話やデータ通信等の他の用途で使用する無線信号の周波数帯と,後述する位置標定に用いる無線信号の周波数帯を分けるようにしてもよい(この場合は夫々の周波数帯の波長に適合するアンテナを用意する必要がある。) 【0042】 図7に被誘導者端末300(救助者端末400も共通)が備える主な機能を示している。同図において,位置標定信号受信部331は,無線通信インタフェース313により基地局200から送信される位置標定信号を受信する。情報送受信部332は,通信ネットワーク50を介してサーバ装置100と通信し,ファームウエア等の被誘導者端末300で実行されるプログラムやデータの更新情報や被誘導者3(又は救助者4)に提示するための情報の受信(ダウンロード),及びサーバ装置100において用いられる各種情報についての被誘導者端末300(又は救助者端末400)からサーバ装置100への送信(アップロード)を行う。」 (カ)「【0073】 図18に災害情報136の一例を示す。災害情報136には,ホテル2にて現在生じている災害に関する情報が格納されている。同図に示すように,災害情報136は,発生時刻1361,種類1362,階数1363,及び座標1364の各項目を有する一つ以上のレコードで構成される。 【0074】 発生時刻1361には,災害が発生した時刻(例えば,災害検知センサ500に基づき災害の発生を検知した時刻)が設定される。種類1362には,その災害の種類(火災,ガス漏れ,地震等)を示す情報が設定される。階数1363には,その災害現場のフロア(階数)が設定される。座標1364には,そのフロアの災害の発生現場の位置を示す座標(例えばフロア毎に設定される平面座標系における座標)が設定される。」 (キ)「【0078】 <避難誘導> 次に情報処理システム1において行われる避難誘導に関する処理について説明する。図20はこの処理(以下,避難誘導処理S2000と称する。)を説明するフローチャートである。同図に示す処理は,例えば,火災報知器の警報やホテル2の館内放送などによりホテル2内で災害が発生したことを知った被誘導者3が,入力装置315に対して所定の操作を行うことにより開始される。尚,災害発生時にサーバ装置100から自動的に被誘導者端末300に災害が発生した事を示す情報を表示して被誘導者3に災害の発生を通知するようにしてもよい。」 (ク)「【0082】 次にサーバ装置100は,避難経路情報135に登録されている避難経路のうち,被誘導者端末300の現在位置(S2014で取得した階数と端末位置情報2111とで特定される位置)に対応する避難経路(以下,避難経路候補と称する。)を抽出する(S2015)。より具体的には,避難経路情報135に登録されている避難経路のうち,適用階数1353と適用範囲1354とで特定される範囲に被誘導者端末300の現在位置を含む避難経路(避難経路ID1351)を抽出する。 【0083】 次にサーバ装置100は,S2015にて抽出した避難経路候補のうち,災害発生現場を通る経路を除外する(S2016)。この処理は,例えば避難経路候補の避難経路1352とチェックポイント情報134とに基づき,各避難経路候補が災害情報136から取得される災害発生現場を通るか否かを判断することにより行う。 【0084】 次にサーバ装置100は,S2016にて除外されずに残った避難経路候補の夫々について,さらに条件を課して最終的に1つの避難経路を決定する(S2017)。」 (ケ)「【0091】 次にサーバ装置100は,S2017にて決定した避難経路を案内する避難誘導情報を生成する(S2019)。ここで生成される避難誘導情報には,例えば,フロアマップ情報133から取得されるマップデータに,S2017にて決定した避難経路を案内するための画面データや,避難経路の周囲に存在する施設(例えば,客室,売店,自動販売機,給湯室,洗面所,エレベータ,階段,非常口,火災報知器など)の種類や位置を示す情報などが含まれる。 【0092】 次にサーバ装置100は,生成した避難誘導情報を,避難誘導情報取得要求2100を送信してきた被誘導者端末300に送信する(S2020)。 【0093】 被誘導者端末300は,サーバ装置100から避難誘導情報を受信すると(S2021),受信した情報に基づく画面や音声案内を被誘導者3に提供する(S2022)。図24に,被誘導者端末300に避難誘導情報が表示されている様子を示す。同図に示すように,表示装置316には,被誘導者3の現在位置3161,施設の位置3163,災害発生場所3164,及び避難経路3165が表示される。」 【0094】 以上によれば,サーバ装置100は,携帯端末(被誘導者端末300)による位置標定によって取得される正確な現在位置を用いて,被誘導者3に正確な避難経路を提供することができる。これによれば,被誘導者3は,正確な避難経路の情報を利用して,安全な場所に効率よく避難することができる。」 (コ)図1 (サ)図20 (シ)図24 イ 上記アから,以下のことがいえる。 火災検知センサ,ガス漏れ検知センサ等の災害検知センサ500は,ホテル2内に設けられる。(段落【0024】) 被誘導者端末300は,携帯電話機を用いて構成され,ホテル2の宿泊客や従業員等によって所持され,無線通信方式等の通信ネットワーク50を介してサーバ装置100と通信し,情報の受信及び送信を行う。(段落【0024】,【0026】,【0041】,【0042】) 被誘導者端末300は複数存在する。(図1) 災害検知センサ500が火災検知センサであれば,当該火災検知センサが火災を検知した場合に情報をサーバ装置100に送る。(段落【0024】,【0030】,【0033】) サーバ装置100が,災害発生時に被誘導者端末300に災害が発生した事を示す情報を表示して被誘導者3に災害の発生を通知することで,ホテル2内で災害が発生したことを知った被誘導者3が,入力装置315に対して所定の操作を行うことにより,避難誘導に関する処理が開始される。(段落【0078】) 災害の発生の通知(段落【0078】)は,火災検知センサが火災を検知した場合は,火災発生時のものであることが明らかである。 避難誘導に関する処理において,サーバ装置100は,抽出した避難経路候補から災害発生現場を通る経路を除外する際に除外されずに残った避難経路候補の中から,1つの避難経路を決定し,マップデータに当該決定した避難経路を案内するための画面データが含まれる避難誘導情報を生成して,被誘導者端末300は,避難誘導情報に基づいて,災害発生場所3164,及び避難経路3165を表示する。(段落【0078】,【0082】~【0084】,【0091】,【0093】,図20,24) 災害発生場所3164として,火災発生場所が表示される。(図24) ウ 甲1発明 上記ア,イによれば,刊行物1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ホテル内に設けられた火災検知センサ,ガス漏れ検知センサ等の災害検知センサと, ホテルの宿泊客や従業員等によって所持され,無線通信方式等の通信ネットワークを介してサーバ装置と通信し,情報の受信及び送信を行う複数の被誘導者端末と, 災害発生時に被誘導者端末に災害が発生した事を示す情報を表示して被誘導者に災害の発生を通知するサーバ装置と, を備え, ホテル内に設けられた火災検知センサが火災を検知した場合に情報をサーバ装置に送り, サーバ装置は,火災発生時に被誘導者端末に災害が発生した事を示す情報を表示して被誘導者に災害の発生を通知し, 複数の被誘導者端末は,携帯電話機を用いて構成され, 複数の被誘導者端末は,サーバ装置が災害発生時に被誘導者端末に災害が発生した事を示す情報を表示して被誘導者に災害の発生を通知することで,ホテル内で災害が発生したことを知った被誘導者が,入力装置に対して所定の操作を行うことにより開始される,避難誘導に関する処理において,サーバ装置が生成する避難誘導情報に基づいて,火災発生場所及び避難経路を表示し,ここで,避難経路は,抽出した避難経路候補から災害発生現場を通る経路を除外する際に除外されずに残った避難経路候補の中から,1つの避難経路を決定したものであり,避難誘導情報には,マップデータに当該決定した避難経路を案内するための画面データが含まれる,情報処理システム。」 (4)本件特許発明2についての対比・判断 ア 本件特許発明2と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「ホテル内」は,監視領域であり,同「火災検知センサ,ガス漏れ検知センサ等の災害検知センサ」は,異常検出信号を送信する検出器であるとともに,防災監視設備を構成しており,同「無線通信方式等の通信ネットワーク」は,「無線通信方式」の場合,無線ネットワークであり,同「被誘導者端末」は情報端末装置であり,同「情報処理システム」は警報システムであるといえる。 (イ)甲1発明の「被誘導者端末」は「ホテルの宿泊客や従業員等によって所持され」るから,監視領域に配置されるものであるといえる。 (ウ)甲1発明の「災害が発生した事を示す情報」は,本件特許発明2の「防災情報」に相当する。 (エ)本件特許明細書の例えば「アダプタ装置30は,防災受信盤10から火災受信に基づく移報信号を受信した場合に,当該移報信号に基づく火災情報信号を生成してLAN回線26を経由して情報端末装置24へ配信して火災情報を表示させる。」(段落【0032】)との記載を参酌すると,本件特許発明2の「アダプタ装置」とは,受信した信号(移報信号)を変換して,他の信号(火災情報信号等)を生成する手段であるものと解される。 一方,甲1発明の「被誘導者端末」は「通信ネットワークを介してサーバ装置と通信」することから,「サーバ装置」は,「被誘導者端末に災害が発生した事を示す情報を表示」するための信号を生成し,当該信号を通信ネットワークを経由して被誘導者端末へ配信することが必要であるところ,上記信号の生成が,「災害検知センサが火災等を検知した場合にサーバ装置に送る情報」に対応する信号をサーバ装置が変換することにより行われることが明らかである。 したがって,甲1発明の「サーバ装置」は,変換前後の各信号の内容は別として,本件特許発明2の「アダプタ装置」に相当し,また,甲1発明の「被誘導者端末に災害が発生した事を示す情報を表示して被誘導者に災害の発生を通知するサーバ装置」と,本件特許発明2の「防災情報信号を生成し,当該防災情報信号を,前記無線ネットワークを経由して前記情報端末装置へ配信して防災情報を表示させるアダプタ装置」とは,「信号を生成し,当該信号を,無線ネットワークを経由して情報端末装置へ配信して防災情報を表示させるアダプタ装置」という点で共通している。 (オ)甲1発明において,「ホテル内に設けられた火災検知センサが火災を検知した場合に情報をサーバ装置に送」ることと,本件特許発明2において,「前記防災監視設備は,監視領域に配置した火災感知器で火災を検出した場合に火災検出信号を前記防災受信盤に送信」することとは,「防災監視設備は,監視領域に配置した火災感知器で火災を検出した場合に火災検出信号を送信」するという点で共通している。 (カ)上記(エ)と同様の理由により,甲1発明において「サーバ装置は,火災発生時に被誘導者端末に災害が発生した事を示す情報を表示して被誘導者に災害の発生を通知」することと,本件特許発明2において,「前記アダプタ装置」が「火災情報信号を生成し,所定のグループを指定して前記無線ネットワークを経由して前記複数の情報端末装置へ配信」することとは,「アダプタ装置は,火災発生時に信号を生成して無線ネットワークを経由して複数の情報端末装置へ配信」するという点で共通している。 (キ)甲1発明の「複数の被誘導者端末」は,「携帯電話機を用いて構成され」るから,本件特許発明2の「日常的に使用されているタブレットや携帯電話」と,「携帯電話」である点で共通している。 (ク)甲1発明の「複数の被誘導者端末」は,「サーバ装置が災害発生時に被誘導者端末に災害が発生した事を示す情報を表示して被誘導者に災害の発生を通知することで,ホテル内で災害が発生したことを知った被誘導者が,入力装置に対して所定の操作を行うことにより開始される,避難誘導に関する処理において,火災発生場所及び避難経路を表示する」から,「災害発生場所及び避難経路」の「表示」と,上記(エ)で検討した「サーバ装置」が生成する信号とは,被誘導者端末が後者の信号を受信した場合に,後者の信号に基づき,前者の表示を行う関係を有しているといえる。 また,甲1発明の「複数の被誘導者端末」における「避難誘導情報」に基づく「火災発生場所及び避難経路」の表示は,「避難誘導情報」に「マップデータに当該決定した避難経路を案内するための画面データが含まれる」から,火災発生場所及び避難口を示す地図画面として地図情報を表示する画面を表示するものである。 したがって,甲1発明において,「複数の被誘導者端末は,サーバ装置が災害発生時に被誘導者端末に災害が発生した事を示す情報を表示して被誘導者に災害の発生を通知することで,ホテル内で災害が発生したことを知った被誘導者が,入力装置に対して所定の操作を行うことにより開始される,避難誘導に関する処理において,サーバ装置が生成する避難誘導情報に基づいて,火災発生場所及び避難経路を表示」することと,本件特許発明2において,「前記複数の情報端末装置」が「当該日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報を予め記憶し,前記無線ネットワークを経由して前記アダプタ装置からの火災情報信号を受信した場合に,当該火災情報信号に基づき,火災発生場所を示す火災警報画面及び直近の避難口を示す地図画面として当該地図情報を表示する画面を切り替え可能に表示する」こととは,「複数の情報端末装置は,無線ネットワークを経由してアダプタ装置からの信号を受信した場合に,当該信号に基づき,火災発生場所及び避難口を示す地図画面として地図情報を表示する画面を表示する」という点で共通している。 イ そうすると,本件特許発明2と甲1発明とは,以下の点で一致し,また,相違する。 (ア)一致点 「監視領域に配置した検出器で異常を検出した場合に,異常検出信号を出力する防災監視設備と, 前記監視領域に配置され,無線ネットワークを経由して信号を送受信する複数の情報端末装置と, 信号を生成し,当該信号を,前記無線ネットワークを経由して前記情報端末装置へ配信して防災情報を表示させるアダプタ装置と, を備え, 前記防災監視設備は,監視領域に配置した火災感知器で火災を検出した場合に火災検出信号を送信し, 前記アダプタ装置は,信号を生成して前記無線ネットワークを経由して前記複数の情報端末装置へ配信し, 前記複数の情報端末装置は,携帯電話であり,前記無線ネットワークを経由して前記アダプタ装置からの信号を受信した場合に,当該信号に基づき,火災発生場所及び避難口を示す地図画面として地図情報を表示する画面を表示することを特徴とする警報システム。」 (イ)相違点1 「防災監視設備」に関し,本件特許発明2では,検出器の他に「防災受信盤」から構成され,異常検出信号を当該「防災受信盤」に送信して「異常警報を出力する」と共に,「前記防災受信盤から,受信した異常に対応した移報信号を出力する」ものであるのに対し,甲1発明では,単に「災害検知センサ」から構成され,「防災受信盤」は存在せず,異常検出信号の送信先が「防災受信盤」ではない点。 また,それに伴い,「アダプタ装置」が「信号を生成」するのが,本件特許発明2では,「防災受信盤から移報信号が出力された場合に,当該移報信号に基づく」ものであるのに対し,甲1発明では,その特定がない点。 (ウ)相違点2 「アダプタ装置」が「生成」する「信号」の内容が,本件特許発明2では「防災情報信号」であるのに対し,甲1発明では内容が特定されない点。 (エ)相違点3 相違点1に関連して,本件特許発明2では,火災検出信号を「防災受信盤」に送信し,かつ当該「防災受信盤」が「火災警報を出力すると共に」,当該「防災受信盤」から「火災発生場所を含む移報信号を出力」するのに対し,甲1発明では,「防災受信盤」が存在せず,火災検出信号の送信先が「防災受信盤」ではない点。 また,それに伴い,「アダプタ装置」が「信号を生成」するのが,本件特許発明2では,「前記防災受信盤からの火災発生場所を含む移報信号を受信した場合に,当該移報信号に基づ」いているのに対し,甲1発明では,その特定がない点。 (オ)相違点4 相違点2に関連して,「アダプタ装置」が「生成」する「信号」の内容が,本件特許発明2では「火災警報及び火災発生場所を含む火災情報信号」であるのに対し,甲1発明では内容が特定されない点。 また,それに伴い,「複数の情報端末装置」が「表示する」のが,本件特許発明2では,「火災情報信号」を受信した場合であり,当該信号に基づいて「火災発生場所を示す火災警報画面」を表示するのに対し,甲1発明では,受信する信号が特定されず,表示内容も「災害発生場所」であって「火災発生場所を示す火災警報画面」ではない点。 (カ)相違点5 「携帯電話」が,本件特許発明2では「日常的に使用されている」ものであるのに対し,甲1発明ではその特定がない点。 (キ)相違点6 「前記複数の情報端末装置」が,本件特許発明2では,「当該日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報を予め記憶」するとともに,「地図情報を表示する画面」に表示する「避難口」が,本件特許発明2では,「直近の」ものであるのに対し,甲1発明ではそれらの特定がない点。 (ク)相違点7 「火災発生場所」を表示することが,本件特許発明2では,「直近の避難口を示す地図画面として当該地図情報を表示する画面」とは別の,「火災発生場所を示す火災警報画面」において行われるのに対し,甲1発明で「火災発生場所及び避難経路」を表示するものとして行われる点。また,画面表示の態様が,本件特許発明2では「切り替え可能に」であるのに対し,甲1発明ではその特定がない点。 ウ 事案に鑑み,まず相違点6について検討する。 甲1発明において,個々の「被誘導者端末」に表示される「避難経路」は,「抽出した避難経路候補から災害発生現場を通る経路を除外する際に除外されずに残った避難経路候補の中から,1つの避難経路を決定したもの」であるから,「避難経路」は,災害発生現場に対応して変化することが明らかである。 一方,特開平6-111172号公報(刊行物6,異議申立人提出の甲第6号証)には,「表示装置101及び記憶装置107を備える情報出力システム100(段落【0031】)において,表示装置101あるいは情報出力システム100の設置場所が会議室とされ,記憶装置107が,地震時の避難経路の地図とが含まれている避難情報であって,会議室のある建物における位置あるいは環境またその建物の敷地条件等に応じてカスタマイズされた避難情報を記憶し(段落【0038】),表示装置101の信号検出部104が緊急地震速報の信号を検出すると(段落【0032】,【0044】),記憶装置107から地震時の対処方法と地震時の避難経路の地図とが含まれている避難情報を読み出し(段落【0046】),避難情報の映像データを表示装置101へ送信して表示部105にて表示させる(段落【0048】)こと」が記載されていると認められる。 しかしながら,刊行物6の上記記載事項において,情報出力システム100の記憶装置107に記憶される避難経路の地図が,会議室のある建物における「直近の避難口」までの経路であるとしても,仮に甲1発明に当該記載事項を適用した場合,表示される避難経路は,災害発生現場の場所にかかわらず変化することのない,固定的なものとなるところ,刊行物1には,災害発生現場と無関係に「直近の避難口」を固定的に表示する必然性について記載も示唆もないことから,甲1発明に当該記載事項を適用する動機付けはない。 むしろ,甲1発明は,災害発生現場に対応して変化する避難経路を表示することにより,刊行物1の段落【0094】(上記(2)ア(ケ))に記載されているように,「サーバ装置100は,携帯端末(被誘導者端末300)による位置標定によって取得される正確な現在位置を用いて,被誘導者3に正確な避難経路を提供することができる」ものであるから,刊行物6の上記記載事項を適用することには,「正確な避難経路」が提供できなくなる点で阻害要因があるといえる。 また,他に,相違点6に係る構成が当業者が容易に想到し得るとする根拠は見出せない。 エ よって,他の相違点について検討するまでもなく,本件特許発明2は,甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 (5)本件特許発明1,3,4についての対比・判断 本件特許発明1は,本件特許発明2において,「無線ネットワーク」を「ネットワーク」で,「タブレットや携帯電話」を「パソコン」で,それぞれ置き換えたものであるから,本件特許発明1を甲1発明と対比した場合の相違点には,相違点6(上記(4)イ(キ))が含まれる。 また,本件特許発明3,4は請求項1又は2を引用している。 そうすると,本件特許発明1,3,4も,本件特許発明2と同様に,甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 5 先の取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由について (1)特許異議申立人は,特許異議申立書において,本件特許の明細書及び図面は,当業者が本件特許の請求項1~4に係る発明(当審注:訂正前のもの)を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく,また,本件特許の請求項1~4に係る発明は,本件特許の明細書及び図面に記載された範囲を超える発明であって,特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨,主張する。 上記主張の理由として指摘されている内容は,概ね次のとおりである。 本件特許の明細書には,情報端末装置において直近の避難口を示す地図画面を表示する手法として,情報端末装置の設置場所に応じて避難ロを示したフロアマップ情報を予め情報端末装置に記憶させ,これを用いて直近の避難口を示す方法しか記載されておらず,これは,情報端末装置の設置場所が特定されていない場合には用いることができない手法であって,その場合において,どのようにして直近の避難口を特定し,これを示す地図情報を表示するのかは全く示されていない。しかしながら,本件特許発明1においては,情報端末装置は,「日常的に使用されているパソコン」とされており,また,本件特許発明2においては,情報端末装置は,「日常的に使用されているタブレットや携帯電話」とされているところ,「日常的に使用されているパソコン」が,例えばノートパソコン等,必ずしも設置場所が特定されていないものを含むことは明らかであり,また,「日常的に使用されているタブレットや携帯電話」に至っては,およそ設置場所が特定されていることなど考え難い。 (2)また,特許異議申立人は,令和元年8月15日に提出された意見書(以下,単に「意見書」という。)において,本件特許発明1~4は,明確でなく,発明の詳細な説明に記載されていないから,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない旨,主張するとともに,本件特許の発明の詳細な説明は,当業者が本件特許発明1~4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない旨,主張する。 上記主張の理由として指摘されている内容は,概ね次のとおりである。 本件特許発明2における,特定の設置場所が存在せず,その所在が一か所に定まらないタブレットや携帯電話については,これが使用される場所には,極めて多くの場所が含まれるから,どの範囲までが,「日常的に使用されている場所」に該当し,かつ,それぞれの場所において,どのような地図情報が,その「場所に応じた避難口を示す地図情報」に該当するのかは,請求項2の記載のみからでは,当業者にとって不明である。また,本件特許の明細書には,「設置場所」が存在し得ないタブレットや携帯電話について,「日常的に使用されている場所に応じ避難口を示す地図情報」が,いかなる場所に対応した,いかなる地図情報を意味するかについての記載は一切存在しない。したがって,いかなる場所に対応した,いかなる地図情報であれば,本件特許発明2の「日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報」という発明特定事項に含まれるかは,明細書の記載を考慮しても,当業者にとって到底理解できるものではないから,本件特許発明2は明確でない。 発明の詳細な説明には,情報端末装置がタブレットや携帯電話である場合について,「日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報」として,いかなる場所に対応して,それぞれの場所についていかなる情報を記憶することで,本件特許発明2に係る発明を実現し得るかにつき,その一例さえも記載されていない。 この点に鑑みれば,本件特許発明2は,発明の詳細な説明に記載された範囲を超える発明であり,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のもの,又はその記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものに該当しないから,本件特許発明2は発明の詳細な説明に記載したものではなく,また,タブレットや携帯電話について,これが日常的に使用されている場所として,極めて多くの場所が想定される本件特許発明2について,それぞれの場所に応じて「避難口を示す地図情報」を記憶させ,本件特許発明2の全体を実施するに足る記載が,発明の詳細な説明に存在しないことは明白であり,本件特許発明2に係る発明の全体を実施することに,当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤や創意工夫を強いる事情のある場合に該当することは明らかであるから,発明の詳細な説明の記載は,本件特許発明2につき,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 本件特許発明1についても,少なくとも情報端末装置としてのパソコンがモバイル端末としてのノートパソコンである場合については本件特許発明2と同様に解される以上,「日常的に使用されている場所に応じた避難口を示す地図情報」を予め記憶するという発明特定事項を含む本件特許発明1が,本件特許発明2と同様に,明確でないものとして特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,発明の詳細な説明に記載したものではないものとして特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず,かつ,本件特許の発明の詳細な説明の記載が本件特許発明1につき当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないものとして特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないことは明らかである。 本件特許の明細書においては,本件特許に係る発明が奏すべき効果として,「……この防災情報表示として火災発生場所や直近の避難口を表示することで,発生した火災の状況を正確に把握でき,防災受信盤と同等な火災情報を情報端末装置の使用者毎に個別に表示し,迅速且つ適切な初期消火や避難行動といった火災対処を可能とする。」という効果が掲げられている(段落【0016】)が,本件特許発明1における情報端末装置としてのパソコンを,特定の設置場所が存在する据え置き型のものに限定的に解したとしても,本件特許発明1によってこのような効果が得られるのは,一部の場合に過ぎないから,どの範囲までが本件特許が奏すべき効果を得られるのかは不明であり,本件特許発明1は,依然として明確でないものとして特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,発明の詳細な説明に記載したものではないものとして特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず,かつ,本件特許の発明の詳細な説明の記載が本件特許発明1につき当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないものとして特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (3)そこで,本件特許発明1~4について,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号,同第2号に規定する要件を満たしているか否か,及び,発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているか否か,検討する。 本件特許発明1,2の「複数の情報端末装置」は,いずれも,「前記監視領域に配置され」るものであるから,それらの設置場所である「日常的に使用されている場所」を,「監視領域」におけるいずれかの場所として特定できることは,明らかであり,当該設置場所は「監視領域」内に限られるから,特許異議申立人のいうような「極めて多くの場所」が含まれるものではない。 そして,この点は,「情報端末装置」が,本件特許発明1のように「日常的に使用されているパソコン」であることや,本件特許発明2のように「日常的に使用されているタブレットや携帯電話」であることとは無関係であり,パソコンや携帯電話がともに移動可能であって後者は前者よりも移動性が高いとしても,「監視領域」内のある場所に留まっているものとして,実質的な設置場所を特定できることは明らかであって,移動可能であるという理由で設置場所を特定し得ないとすることはできない。 よって,本件特許発明1,2のそれぞれの「複数の情報端末装置」である「日常的に使用されているパソコン」,「日常的に使用されているタブレットや携帯電話」は,いずれも,「監視領域」において設置場所が特定可能であり,本件特許発明1,2の「当該日常的に使用されている場所に応じた避難口」とは,「パソコン」等の設置場所が特定可能であることを前提に,当該特定される設置場所に対応する避難口を意味していると理解でき,発明の詳細な説明の「情報端末装置24は,その設置場所に応じて避難口を示したフロアマップ情報を予め記憶しており」(段落【0061】)との記載における「その設置場所に応じて避難口を示したフロアマップ情報」についても同様に,当該特定される設置場所に対応する避難口を示した情報であると理解できる。 また,段落【0016】の記載によれば,明細書に記載されている発明の解決しようとする課題には,「発生した火災の状況を正確に把握でき,防災受信盤と同等な火災情報を情報端末装置の使用者毎に個別に表示し」た上で,「迅速且つ適切な初期消火」という「火災対処」を可能とすることが含まれており,本件特許発明1は当該課題を解決できることが明らかである。一方,上記段落に,「初期消火」とは異なる「火災対処」として記載されている「避難行動」については,本件特許発明1において,利用できない「直近の避難口」が表示される場合が想定できるとしても,その場合は,当該避難口を利用しない避難行動が促されるといえる。 したがって,本件特許発明1は,発明の詳細な説明に記載された発明の課題が解決できることを当業者において認識できる範囲を超えるものではない。そして,この点は本件特許発明2についても同様である。 以上によれば,請求項1又は2を引用する本件特許発明3,4も含め,本件特許発明1~4は,明確であるとともに,発明の詳細な説明に記載された発明であるから,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第1号,同第2号に規定する要件を満たしている。 また,発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件特許発明1~4を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであって,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。 したがって,特許異議申立人の上記(1),(2)の各主張はいずれも理由がない。 6 むすび 以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書並びに意見書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。

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2018-700559

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    共通の審決分類: 121・G08B、536・G08B、537・G08B
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    共通の審決分類: 121・G08B、536・G08B、537・G08B

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