特許異議申立
2025-700027
現場業務支援装置、及び現場業務支援プログラム
- 審判番号
- 2025-700027
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-048747
- 登録番号
- 7506627
- 請求日
- 2024年12月25日
- 審決日
- 2025年03月13日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東京瓦斯株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】横井 雅人
- 審判長/審判官
- 審判長 梶尾 誠哉
- 審判官 古川 哲也
- 審判官 安藤 一道
- 分類
- P1652.121-Y (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7506627号発明「現場業務支援装置、及び現場業務支援プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7506627号の請求項1、2、3、7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7506627号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和3年3月23日に出願され、令和6年6月18日にその特許権の設定登録がされ、同年6月26日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1、2、3、7に係る特許に対し、同年12月25日に特許異議申立人 横井雅人(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1、2、3、7(以下、それぞれの発明について、「本件発明1」、「本件発明2」などといい、併せて「本件発明」という。)の特許に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1、2、3、7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、各請求項に記載された「1A」~「1D」などは、異議申立人が異議申立書で付与したものであり、本決定において、それぞれ「構成1A」~「構成1D」などという。
「【請求項1】
1A:施工により地中に埋設された埋設物を撮影した複数の画像、及び前記埋設物が設置された位置の情報である位置情報を取得する取得部と、
1B:前記画像から前記埋設物の特徴を抽出して、前記埋設物が設置された状況を示す空間モデルを生成するモデル生成部と、
1C:前記画像、及び前記空間モデルを用いて前記埋設物を識別し、前記埋設物の設置に係る検収を行うための情報である検収情報を抽出する検収情報抽出部と、
1D:前記位置情報に対応する施工前後の前記検収情報を用いて検収を行う検収実行部と、
を備えた現場業務支援装置。
【請求項2】
2A:前記モデル生成部は、前記埋設物が設置された状況を平面、及び立体の少なくとも一方で示す請求項1に記載の現場業務支援装置。
【請求項3】
3A:前記検収情報は、学習済み検収情報モデルを用いて、前記埋設物の前記検収情報を抽出し、
3B:前記学習済み検収情報モデルは、過去に設置された埋設物に係る画像、及び前記過去に設置された埋設物に係る空間モデルを学習データとして検収情報モデルに入力し、
3C:機械学習を行うことにより、対応する前記過去に設置された埋設物に係る検収情報を出力するように学習されている請求項1又は請求項2に記載の現場業務支援装置。
【請求項7】
コンピュータに
7A:施工により地中に埋設された埋設物を撮影した複数の画像、及び前記埋設物が設置された位置の情報である位置情報を取得し、
7B:前記画像から前記埋設物の特徴を抽出して、前記埋設物が設置された状況を示す空間モデルを生成し、
7C:前記画像、及び前記空間モデルを用いて前記埋設物を識別し、前記埋設物の設置に係る検収を行うための情報である検収情報を抽出し、
7D:前記位置情報に対応する施工前後の前記検収情報を用いて検収を行う、
ことを実行させるための現場業務支援プログラム。」
第3 申立理由の概要
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1号証~甲第3号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲3」という。)を証拠として提出している。
甲第1号証(甲1):特開2020-95009号公報
甲第2号証(甲2):特開2009-275406号公報
甲第3号証(甲3):国際公開第2021/024499号
2 特許異議の申立理由
異議申立人の主張する特許異議の申立理由(進歩性)の概要は、以下のとおりである。
本件発明は、甲1~甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。なお、より具体的には以下のとおりである。
(1) 本件発明1は、甲1に記載された発明と、甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件発明2は、甲1に記載された発明と、甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 本件発明3は、甲1に記載された発明と、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 本件発明7は、甲1に記載された発明と、甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 異議申立人の提出した証拠の記載
異議申立人の提出した証拠には、以下の記載がある。(下線は当審において加筆した。)
1 甲1について
(1) 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。
「【0001】
[0001]本発明の諸実施形態は、概略的には、コンピュータによる鉄筋測定検査システムに関する。
【0002】
[0002]建物の建設現場において直面する問題は、建設の各段階の後に厳格な検査を行う必要があることである。検出されない誤差の影響は、建設者が部品又は建物全体を交換しなければならなくなり得るため、甚大である。このプロセスにおいて重要なことは、コンクリートが鉄筋の上に流し込まれる前に鉄筋構造を検査することである。現在、検査鉄筋は手作業で行われている。これは、設計計画、建築法規、建物モデル等への鉄筋の準拠性を確認するために遂行されなければならない、非常にゆっくりした厄介なプロセスである。労務費が増大し、検査、及び関連する修理/補修を必要に応じて遂行するための熟練工を探索するので、手作業の検査を遂行することは、人件費、及び検査の完了を待つ遅延の両方において、法外な費用がかかるものになる。
【0003】
[0003]多くの場合、特定のミスは、特定の時点の後では費用がかかりすぎて修復できない。それゆえ、建設/作業は、特定の構造において、検査が完了するまで続行することができない。したがって、建設の様々な側面が計画/法規に従って行われていることを確実にする必要がある。さらに、数千個の鉄筋構造を有する大規模な構造及び建設現場を検査するには、検査されるべき鉄筋について現場を探索し、全ての必要な図面/計画を携え、現場を検査し、あらゆる不整合に標識を付けるなどすることに、多大な時間及び労働力を必要とする。
【0004】
[0004]それゆえ、厄介で、ゆっくりした手作業を、鉄筋の自動的な精細レベル検査、及び既存の建築計画との比較の遂行を支援することができるシステム及び方法と置換することが必要とされている。」
「【0030】
[0030]コンピュータによる鉄筋測定検査システム(「CARMIS」)の諸実施形態が本明細書において説明される。本開示は特定の例を参照して発明概念を説明する。しかし、その意図は、本開示と一貫した発明概念の全ての変更、同等物、及び代替例を網羅することである。本設計の完全な理解をもたらすために、ステップの数、カメラの種類、カメラの位置付け、用いられる画像の種類、ピッチ測定、BIMモデル、異なる可視化による鉄筋軸線推定表示のための方法論等などの、数多くの具体的詳細が説明される。しかし、当業者には、本設計は、これらの具体的詳細を有せず実施され得ることが明らかであろう。それゆえ、説明される具体的詳細は単なる例示にすぎない。また、1つの実施形態において実装される特徴は、論理的に可能な場合には、別の実施形態においても実装され得る。具体的詳細は変更することができ、本設計の趣旨及び範囲内にあることが依然として予期され得る。CARMISは、限定するものではないが、以下のことを含む、複数の方法で検査の仕事を単純化する。1)ユーザが、構築された鉄筋構造を計画(建物情報モデル(BIM))と視覚的に比較すること、及び2)鉄筋特性(計数、直径、位置等)を自動的に測定し、BIMモデルと比較し、準拠性報告を生成することを可能にすること。」
「【0034】
[0034]図1は、本原理の諸実施形態に係るコンピュータによる鉄筋測定検査システム(CARMIS)100の高レベルブロック図を示す。CARMIS100は、データ取得システム102、データ分析システム110、及びユーザインターフェース180を含む。実施形態によっては、データ取得システム102、データ分析システム110、及びユーザインターフェース180は、以下において図2を参照して説明されるとおりのハンドヘルドセンサパッケージ200などの、単一のデバイス上に配置されていてもよい。他の実施形態では、データ取得システム102、データ分析システム110、及びユーザインターフェース180、或いはこれらの部分は、以下において図2を参照して説明されるとおりの互いに通信可能に結合する複数のデバイス及びサーバにわたって分散していてもよい。
【0035】
[0035]データ取得システム102は、鉄筋構造の精細レベル測定値104及び/又は鉄筋構造の画像若しくは映像106を得ることができる任意のデバイス、又は複数のデバイスであり得る。実施形態によっては、鉄筋精細レベル測定値104は、慣性測定ユニット(IMU:inertial measurement unit)データ、奥行き情報、並びに/或いは気圧計、高度計、磁気計、GPS、及びデータ取得システム102内に含まれる他のセンサ/デバイスからの他の情報を含み得る。実施形態によっては、鉄筋構造の画像及び映像106は、立体カメラから得られた立体画像の1つ又は複数のフレームを含み得る。」
「【0037】
[0037]データ分析システム110は、データ取得システム102からの鉄筋測定値104及び鉄筋画像/映像106からシーン(例えば、鉄筋構造)の3D(3次元)表現を取得し、分析される鉄筋構造の3D(3次元)点群を生成する3D(3次元)点群モデル生成システム120を含む。実施形態によっては、3D(3次元)点群モデル生成システム120によって、単一の画像又は映像フレームからの立体写真の使用を通じて鉄筋構造の奥行きが取得/特定され得る。実施形態によっては、複数の画像又は映像フレームは、より広い視野をカバーし、より高密度の3D(3次元)点群を得るために用いられる。例えば、図4A及び図4Bに示されるように、図4Aにおける鉄筋構造の立体画像がデータ取得システム102によって取得され、3D(3次元)点群モデル生成システム120に提供される。次に、3D(3次元)点群モデル生成システム120は、図4Bにおける鉄筋構造の3D(3次元)点群モデルを生成する。実施形態によっては、3D(3次元)点群モデル生成システム120は、高密度立体点群統合技法及び/又はバンドル調整技法のうちの少なくとも1つを用いて、鉄筋構造の測定値104並びに/或いは鉄筋構造の画像及び映像106(例えば、データ取得システム102から受信された三眼立体データ及びIMUデータ)を処理し、鉄筋構造の走査区域の統合3D(3次元)点を計算する。バンドル調整は、カメラ姿勢、及び鉄筋構造内の各鉄筋に対応する3D(3次元)点部位を洗練するために実行される。バンドル調整アルゴリズムは、データ取得ユニットの複数の立体カメラの間の相対運動が経時的に一定であるという事実を利用し、それは、3D(3次元)再現のスケールを固定するための校正から分かる。3D(3次元)点群モデル生成システム120はまず、入力映像系列上の視覚ナビゲーションを実行し、画像ごとの初期姿勢推定を得る。これらの姿勢に基づき、画像のサブセット(キーフレーム)が3D(3次元)復元のために選択される。次に、特徴軌跡が複数のフレームにわたって生成される。次に、3D(3次元)点群モデル生成システム120は、洗練された姿勢を用いて、高密度視差マップから生成された点を統合する。最後に、各ステレオペアからの3D(3次元)点群が集約され、検査される鉄筋構造のための高密度点群を生成する。」
「【0039】
[0039]実施形態によっては、鉄筋検出システム130は、点群を洗練し、外れ値を除去すること(点群の枝刈り又はフィルタリングとも呼ばれる)によって、統合3D(3次元)点群から鉄筋を検出する。図5に、鉄筋検出後の洗練された3D(3次元)点群が示されている。図5に示されるように、鉄筋構造内の鉄筋を明瞭に認識することができる。鉄筋検出システム130が、洗練された3D(3次元)点群を生成した後に、きれいになった3D(3次元)点群は、鉄筋の検出を容易にするために2D(2次元)ヒストグラムで表現される。実施形態によっては、鉄筋検出システム130は、図6に示されるとおりの水平及び鉛直方向に沿った鉄筋と垂直なx-y、x-z、及びy-z平面上に投影された3D(3次元)点群のヒストグラム内のピーク602を検出する。直径は、ピーク区域602のサイズから大まかに推定することができる。直径は、(例えば、画像/映像106からの)エッジ情報を用いて複数のフレームを用いて洗練される - これにより、推定の正確さ及び精度の増大がもたらされる。図6に示されるように、ピーク602は、鉄筋ごとに収集されたデータ点の計数(すなわち、ヒストグラム)である - すなわち、多くの点が同じ部位に入り、その部位のその値がより高くなるため、鉄筋端部がピークとして現れる。それが、筋の位置を特定するとともに、ノイズ(すなわち、ピークの周りのグレー区域)のために、ノイズもフィルタリングして除去するために用いられる。
【0040】
[0040]実施形態によっては、鉄筋検出システム130は、立体鉄筋画像/映像106及び/又は鉄筋測定値104を用いて鉄筋を検出する。鉄筋検出システム130は、同様の直径を有する鉄筋、平面を形成する鉄筋、及び場合によっては、図7に示されるとおりの規則正しく離間された鉄筋などの特徴を用いて、おおよそ平行な筋の立体画像のフレーム内で鉄筋のセットを検出し得る。鉄筋検出システム130は、消失点検出(すなわち、平行な線が一点において会して消失する幾何学的概念)、非最大抑制、或いは鉄筋の検出のため、又は鉄筋のセットを検出するための他の発見的方法などの技法を用い得る。非最大抑制は、システムがいずれかの鉄筋を識別/検出する - したがって、システムが、筋がそこにいくらかの間隔を有することを知る技法である。それゆえ、システムが鉄筋を検出した場合には、このとき、システムは、その部位の周りには、それ以上の鉄筋が見えると期待しないと想定することができ、他の鉄筋を検出するために、検出された鉄筋から少し遠くを見る。」
「【0046】
[0046]データ分析システム110は、鉄筋検出システム130によって検出された鉄筋及び鉄筋構造の特徴を測定するための鉄筋測定システム140をさらに含む(例えば、鉄筋及び鉄筋構造の数、直径、ピッチ等を測定する)。鉄筋測定システム140は、これらの測定を遂行するために、1つ又は複数のシステムを含み、様々な技法を用いる。例えば、実施形態によっては、鉄筋測定システム140は、鉄筋の直径を測定するための異なる方法を各々提供する、3D(3次元)点群直径推定システム142及び/又はエッジベース直径推定システム144を含む。各システムはその利点を有する。3D(3次元)点群直径推定システム142及びエッジベース直径推定システム144はまた、鉄筋のピッチ及び数を測定することもでき、鉄筋の直径の測定に限定されない。」
「【0052】
[0052]データ分析システムは、鉄筋検出システム140及び/又は継手検出システム150によって検出された鉄筋及び鉄筋構造の測定された特徴を3D(3次元)建物情報モデル(BIM)170と比較するように構成された不一致検出システム160をさらに含む。不一致検出システム160は、BIMとの比較を遂行し、鉄筋構造について得られた測定値及び情報と鉄筋のBIMとの間の任意の不一致を特定する。不一致が特定されてまとめられ、それらの不一致、又は不一致についての情報/概要を含む準拠性報告が生成される。鉄筋構造について得られた測定値及び情報と鉄筋構造のBIMとの間で特定される不一致は、測定された鉄筋の数対モデルにおける鉄筋の数の差異、鉄筋の直径/厚さ、各鉄筋の間のピッチ、鉄筋上の引張標示、鉄筋の角度等の差異を含み得る。準拠性報告は、例えば、何が測定されたのか、及びどこに不一致が存在するのかを含み得る。実施形態によっては、測定されたデータはモデルデータと比較され、所定の閾値(例えば、期待値の0.1~25%)を超える値が不一致としてフラグを付けられ、準拠性報告に含まれてもよい。実施形態によっては、測定された値が既定の閾値を超えた場合には、誤りのある要素は修理/修正され、再検査されるであろう。実施形態によっては、不一致は、BIM170、又はその部分を、図13Dに示されるように生成された3D(3次元)点群モデル上に重ね合わせて表示することによって、視覚的に検出されてもよい。」
「【図1】
[図:0001422473000001.jpg]
」
「【図4A】
[図:0001422473000002.jpg]
」
「【図4B】
[図:0001422473000003.jpg]
」
(2)甲1発明
ア 段落【0034】によれば、甲1には、「コンピュータによる鉄筋測定検査システム」が記載されている。
イ 段落【0034】によれば、「コンピュータによる鉄筋測定検査システム」は、データ取得システム102、データ分析システム110を含む。
ウ 段落【0035】によれば、「データ取得システム102」は、鉄筋構造の精細レベル測定値104及び/又は鉄筋構造の画像若しくは映像106を得ることができ、鉄筋精細レベル測定値104は、GPSからの情報を含む。
エ 段落【0037】によれば、「データ分析システム110」は、データ取得システム102からの鉄筋測定値104及び鉄筋画像/映像106からシーン(例えば、鉄筋構造)の3D(3次元)表現を取得し、分析される鉄筋構造の3D(3次元)点群を生成する3D(3次元)点群モデル生成システム120を含む。
オ 段落【0040】によれば、「鉄筋検出システム130」は、立体鉄筋画像/映像106及び/又は鉄筋測定値104を用いて鉄筋を検出する。
カ 段落【0046】によれば、「データ分析システム110」は、鉄筋検出システム130によって検出された鉄筋及び鉄筋構造の特徴を測定するための鉄筋測定システム140をさらに含む。
キ 段落【0052】によれば、「データ分析システム110」は、鉄筋検出システム140によって検出された鉄筋及び鉄筋構造の測定された特徴を3D(3次元)建物情報モデル(BIM)170と比較するように構成された不一致検出システム160をさらに含む。
以上によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
[甲1発明]
「コンピュータによる鉄筋測定検査システムであって、
GPSからの情報を含む鉄筋構造の精細レベル測定値104及び/又は鉄筋構造の画像若しくは映像106を得ることができるデータ取得システム102と、データ分析システム110を含み、
データ分析システム110は、
データ取得システム102からの鉄筋測定値104及び鉄筋画像/映像106からシーン(例えば、鉄筋構造)の3D(3次元)表現を取得し、分析される鉄筋構造の3D(3次元)点群を生成する3D(3次元)点群モデル生成システム120と、
立体鉄筋画像/映像106及び/又は鉄筋測定値104を用いて鉄筋を検出する鉄筋検出システム130によって検出された鉄筋及び鉄筋構造の特徴を測定するための鉄筋測定システム140と、
鉄筋検出システム140によって検出された鉄筋及び鉄筋構造の測定された特徴を3D(3次元)建物情報モデル(BIM)170と比較するように構成された不一致検出システム160とを
さらに含む、
鉄筋測定検査システム。」
2 甲2について
甲2には、以下の記載がある。
「【0002】
建物の建設工事では、品質管理のため、施工状態を記録する必要がある。この記録は、施工業者による自主的な検査、施主及び公的機関による検査、施主への施工状態の説明、及び設計仕様に沿った施工が行われたことの証明等に用いられる。従来における施工状態の記録は、撮影箇所を記載した黒板等を含めてその箇所の写真を撮影することにより行っていた。ここで黒板等に記載される撮影箇所に関する情報は、主に設計図面から取得される。また、これらの検査等は、施工完了後にも行われる。ここで、特許文献1には、光源から放射されるスリット光を用いて、施工後の鉄筋の径を計測する方法が記載されている。
(省略)」
「【0020】
撮像装置2は、建物の鉄筋の配筋状態等の施工状態の写真を撮影し、撮影した写真の写真データを制御部8に送出する。」
「【0022】
GPS4は、施工状態記録装置1の位置を測位する。この位置に関する情報には、緯度、経度及び高度が含まれる。GPS4は、測位した位置に関する情報を位置情報として制御部8に送出する。」
「【0027】
制御部8は、GPS4及びTSデータ取得部6から送出された位置情報を取得すると共に、取得した位置情報をRFIDリーダ/ライタ7に送出する。また、制御部8は、撮像装置2から送出された写真データを取得すると共に、RFIDリーダ/ライタ7から送出された位置情報に写真データを対応付けてデータ記憶部9に記録する。ここで、写真データに対応付ける位置情報には、姿勢センサ3から送出された方位情報及び仰角情報を含ませることができる。また、この位置情報には、高さ情報をさらに含ませることができる。この高さ情報は、施工状態記録装置1を設置する面から、撮像装置2が設けられる位置までの距離である。制御部8は、例えばコンピュータ等により構成される。」
「【0045】
この写真データを配筋検査に用いることが可能である。写真データに対応付けられている位置情報に基づき、対応する箇所の設計データを抽出し、抽出した設計データと写真データとを対比することにより、配筋検査を行うことができる。両データの対比により、鉄筋の直径、ピッチ、かぶり厚さ及びスペーサの位置等の確認が可能となる。設計データはCADデータとしてコンピュータに利用可能なデータであるので、位置情報に基づくデータの抽出は容易である。また、両データの対比を容易にするために、図6に示されるように、撮影対象である鉄筋26やスペーサ27に、予め着色しておくことができる。例えば、鉄筋26の所定位置28やスペーサ27に直径や大きさ毎に色を変えて着色することにより、検査における判定精度の向上が可能である。また、1つの対象物を異なる位置から撮影した2枚の写真データを準備することにより、ステレオ写真の構築が可能である。」
「【0049】
また、本実施形態では、鉄筋構造の建物への適用例として説明したが、建設途中における施工状態の記録を必要とする全ての建物に適用が可能である。例えば、鉄骨構造の建物にも適用が可能である。また、道路工事の現場において、地中の構造物の状況を記録する場合にも、本発明の適用が可能である。」
「【図1】
[図:0001422473000004.jpg]
」
3 甲3について
甲3には、以下の記載がある。
「[0017] 図1は、実施形態に係る施工済みの鉄筋の撮影を例示する図である。図1に示す様に、ユーザは、工事現場で、検査対象となる鉄筋101を、撮影装置102を用いて撮影する。撮影装置102は、例えば、単眼のカメラであっても、またはステレオカメラであってよい。」
「[0021] 図4は、実施形態に係る鉄筋判定処理を説明する図である。図4に示すように、鉄筋判定装置201の記憶部302には、鉄筋情報401が記憶されている。図4の鉄筋情報401の例では、種別情報として鉄筋径を示すD41、D25などの鉄筋の種別と、その種別の鉄筋を撮影したサンプル鉄筋画像とが、鉄筋の異なる複数の種別ごとに対応づけて登録されている。」
「[0022] また、図4には、例えば、ユーザが配筋検査の際などに施工済みの鉄筋を撮影することで得られる鉄筋を写した画像403が示されている。そして、制御部301は、例えば、画像403から種別の判定対象の鉄筋の写る画像領域を抽出して鉄筋画像404を作成する。そして、制御部301は、鉄筋画像404と、鉄筋情報401に登録されているそれぞれのサンプル鉄筋画像との類似度を評価する。続いて、制御部301は、類似度の評価結果に基づいて、判定対象の鉄筋画像404と類似するサンプル鉄筋画像を特定し、そのサンプル鉄筋画像と対応づけられている種別情報を判定対象の鉄筋の種別として出力する。例えば、図4では、D41の鉄筋が最も類似度の高い鉄筋として評価されており、判定対象の鉄筋の径がD41であることが特定できる。そして、画像間の類似度は、画像から抽出した様々な特徴情報を用いて評価することができるため、評価精度の高い特徴情報を用いて類似度を評価したり、または、複数の特徴情報を用いて類似度を評価したりすることで、種別の判定精度を高めることが可能である。以下、類似度の評価についていくつかの例を説明する。」
「[0041] (評価例8)
深層学習などの機械学習を行い得られた学習済みモデルを用いて、判定対象の鉄筋画像に写る鉄筋の種別を特定してもよい。図6は、実施形態に係る学習済みモデルの生成を例示する図である。例えば、鉄筋を写したサンプル鉄筋画像と、そのサンプル鉄筋画像に写る鉄筋の種別を示す種別情報と対応づけた複数の情報を学習の教師データとして用いる(図6(a))。そして、例えば、入力層に入力されたサンプル鉄筋画像に対して、そのサンプル鉄筋画像に写る鉄筋の種別情報を出力層から出力するように、ニューラルネットワークの重み付けを学習することで学習済みモデルが生成されてよい(図6(b))。制御部301は、得られた学習済みモデルに、判定対象の鉄筋画像を入力することで、学習済みモデルから鉄筋画像と対応する鉄筋の種別情報の出力を受けることができる(図6(c))。また、一例として、シャムネットワーク(Siamese Network)を用いて学習が実行されてもよい。シャムネットワークは、例えば、2つの画像を入力として、その画像どうしが似ているか似ていないかの距離を算出するのに適したネットワークである。また、機械学習手法としては、深層学習に限られるものではなく、サポートベクターマシン(support vector machine:SVM)等を用いてもよい。」
「[0082] また、検査対象情報1512には、例えば、検査対象と、検査項目の情報とを対応づけるレコードが登録されている。検査対象は、例えば、検査情報1500に示される工事で行われる配筋検査の検査対象(例えば、鉄筋)を指定する情報である。図15の例では、検査対象情報1512の検査対象は、位置1、位置2、および鉄筋番号の情報を含んでいる。位置1および位置2は、例えば、工事の設計図において検査対象が配置されるエリアを示す情報であってよい。なお、位置2は、例えば、位置1内での更なる詳細なエリアを指定する情報であってよい。鉄筋番号は、位置の情報で指定されるエリア内で使用されている鉄筋、または鉄筋のグループに割り振られた番号である。」
「[0083] また、検査項目は、例えば、検査対象情報1512の検査対象に対して実行する検査の項目を示す情報である。図15の例では、検査対象情報1512の検査項目は、検査項目1および検査項目2を含んでいる。また、検査項目1に示すように、検査項目は、例えば、設計値、および計測値を含んでよい。設計値は、検査項目に対する設計図上での値である。計測値には、例えば、配筋検査で計測された計測結果が登録される。検査項目は、例えば、検査対象の鉄筋の径、位置、配置の平均間隔、かぶり厚さ、および本数などを含んでよい。」
「【図2】
[図:0001422473000005.jpg]
」
「【図3】
[図:0001422473000006.jpg]
」
「【図4】
[図:0001422473000007.jpg]
」
「【図6】
[図:0001422473000008.jpg]
」
「【図15】
[図:0001422473000009.jpg]
」
第5 当審の判断
1 申立理由(進歩性)の検討
(1) 本件発明1について
ア 対比
(ア)「現場業務支援装置」について
甲1の【0001】~【0004】によれば、甲1発明の「コンピュータによる鉄筋測定検査システム」は、「建設の各段階の後に厳格な検査を行う必要があり、鉄筋の自動的な精細レベル検査、及び既存の建築計画との比較の遂行を支援することができる」ものであると認められ、建設の各段階の後に行う検査における既存の建築計画との比較の遂行を支援することができるものであるから、現場業務を支援するものといえ、以下の相違点を除き、本件発明1の「現場業務支援装置」に相当する。
(イ)構成1Aについて
甲1発明の「画像若しくは映像106」、「GPSからの情報」は、それぞれ、本件発明1の「撮影した複数の画像」、「位置情報」に相当する。そして、甲1発明の「鉄筋」は、施工により設置されるものであるから、本件発明1の「施工により地中に埋設された埋設物」とは、「施工により設置された物」という点で共通する。
そうすると、甲1発明の「GPSからの情報を含む鉄筋構造の精細レベル測定値104及び/又は鉄筋構造の画像若しくは映像106を得ることができるデータ取得システム102」と、本件発明1の「取得部」は、「施工により設置された物を撮影した複数の画像、及び前記物が設置された位置の情報である位置情報を取得する取得部」という点で共通する。
(ウ)構成1Bについて
甲1発明の「3D(3次元)点群モデル生成システム120」は、「データ取得システム102からの鉄筋測定値104及び鉄筋画像/映像106からシーン(例えば、鉄筋構造)の3D(3次元)表現を取得し、分析される鉄筋構造の3D(3次元)点群を生成する」ものであることから、甲1発明の「3D(3次元)点群モデル生成システム120」と、本件発明1の「モデル生成部」は、「前記画像から前記物の特徴を抽出して、前記物が設置された状況を示す空間モデルを生成するモデル生成部」という点で共通する。
(エ)以上、(ア)~(ウ)によると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
施工により設置された物を撮影した複数の画像、及び前記物が設置された位置の情報である位置情報を取得する取得部と、
前記画像から前記物の特徴を抽出して、前記物が設置された状況を示す空間モデルを生成するモデル生成部と、
を備えた現場業務支援装置。
[相違点]
[相違点1]
「施工により設置された物」に関し、本件発明1は、「地中に埋設された埋設物」であるのに対し、甲1発明は、「鉄筋」であって、「地中に埋設された埋設物」でない点。
[相違点2]
本件発明1は、「前記画像、及び前記空間モデルを用いて前記埋設物を識別し、前記埋設物の設置に係る検収を行うための情報である検収情報を抽出する検収情報抽出部」(構成1C)と、「前記位置情報に対応する施工前後の前記検収情報を用いて検収を行う検収実行部」(構成1D)とを備えるのに対して、甲1発明は、構成1C及び構成1Dを備えていない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記[相違点2]について検討する。
本件発明1の「検収実行部」は、「前記位置情報に対応する施工前後の前記検収情報を用いて検収を行う」ものであるから、「検収」は「施工前」の「検収情報」と「施工後」の「検収情報」の2つの「検収情報」を用いて行うものである。
しかしながら、甲1発明は、少なくとも、「施工前」の「検収情報」を抽出したり、「施工前」の「検収情報」を用いて検収を行うものではなく、甲1にも「施工前」の「検収情報」を抽出したり、「施工前」の「検収情報」を用いて検収を行うことは記載も示唆もされておらず、甲2や甲3をみても、記載も示唆もない。
そうすると、本件発明1の上記[相違点2]に係る構成は、甲1発明及び甲2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、相違点2に係る構成1C及び1Dについて、甲1発明の「3D(3次元)建物情報モデル(BIM)170」が「施工前」の「検収情報」に相当する旨主張する。
しかしながら、甲1の段落【0030】には、「構築された鉄筋構造を計画(建物情報モデル(BIM))と視覚的に比較する」と記載されているように、甲1発明の「3D(3次元)建物情報モデル(BIM)170」は、あくまでも、建物情報モデル、すなわち建物に関する計画時の情報であって、本件発明1で特定されているような「検収を行うための情報である検収情報」とはいえない。
そして、甲1発明において、「施工前」の「検収を行うための情報である検収情報」が存在しない以上、甲1発明は、「施工前」の「検収情報」を抽出したり、「施工前」の「検収情報」を用いて検収を行うものでもないことは、上記イのとおりである。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおりであるから、上記[相違点1]について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2) 本件発明2、本件発明3について
本件発明2は、本件発明1の構成に限定を加えて減縮したものであって、上記(1)ア(エ)に示した上記[相違点2]に係る構成を有しているから、上記(1)のとおり、本件発明1が、甲1発明と、甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明2も、同様に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明3も、本件発明1の構成に限定を加えて減縮したものであって、上記(1)ア(エ)に示した上記[相違点2]に係る構成を有しており、上記(1)のとおり、甲3にも上記[相違点2]に係る構成は記載も示唆もないから、本件発明3は、甲1発明と、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3) 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1の「現場業務支援装置」の発明を「現場業務支援プログラム」として記載した発明であるから、上記(1)のとおり、本件発明1が、甲1発明と、甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明7も、甲1に記載された発明と、甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 まとめ
以上によれば、本件特許の請求項1、2、3、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
したがって、異議申立人の主張する申立理由は理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許の請求項1、2、3、7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2、3、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700027