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特許異議申立

2021-701048

無線通信システム、無線機、および、プログラム

審判番号
2021-701048
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-239288
登録番号
6892995
請求日
2021年11月05日
審決日
2022年03月02日
公報発行日
2022年05月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】東京瓦斯株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人青海特許事務所
  • 【権利者】国立大学法人京都大学
  • 【権利者代理人】特許業務法人青海特許事務所
  • 【異議申立人】奥野 宏美
審判長/審判官
  • 審判長 國分 直樹
  • 審判官 圓道 浩史
  • 審判官 中木 努
分類
P1651.536-Y (H04W)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6892995号発明「無線通信システム、無線機、および、プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6892995号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6892995号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成28年12月9日に出願され、令和3年6月2日にその特許権の設定登録がされ、同年6月23日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和3年11月5日に特許異議申立人 奥野 宏美 により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第6892995号の請求項1ないし3の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 第1無線機が第2無線機に周期的にRIT Data Request Frameの送信を試みるRIT方式の通信を行う無線通信システムであって、 前記第1無線機は、 送信対象となるデータである対象データがあれば、前記RIT Data Request Frameの受信待受を行う第1受信待受状態となり、該第1受信待受状態において前記第2無線機から該RIT Data Request Frameを受信すると、該対象データを該第2無線機に送信する送信制御部と、 前記RIT Data Request Frameを送信し、送信後の所定期間、送信した該RIT Data Request Frameに対する対象データの受信が可能となる第2受信待受状態となる受信制御部と、 を備え、 前記第2無線機は、 前記対象データがあれば前記第1受信待受状態となり、該第1受信待受状態において前記第1無線機から前記RIT Data Request Frameを受信すると、該対象データを該第1無線機に送信する送信制御部 を備え、 前記第1無線機の受信制御部は、 前記第1受信待受状態において、前記RIT Data Request Frameの送信タイミングになると、該第1受信待受状態を維持しつつ、これと並行して、該RIT Data Request Frameを前記第2無線機に送信して前記第2受信待受状態となる無線通信システム。 【請求項2】 周期的にRIT Data Request Frameの送信を試みるRIT方式の通信を行う無線機であって、 送信対象となるデータである対象データがあれば、前記RIT Data Request Frameの受信待受を行う第1受信待受状態となり、該第1受信待受状態において他の無線機から該RIT Data Request Frameを受信すると、該対象データを該他の無線機に送信する送信制御部と、 前記RIT Data Request Frameを送信し、送信後の所定期間、送信した該RIT Data Request Frameに対する対象データの受信が可能となる第2受信待受状態となる受信制御部と、 を備え、 前記受信制御部は、 前記第1受信待受状態において、前記RIT Data Request Frameの送信タイミングになると、該第1受信待受状態を維持しつつ、これと並行して、該RIT Data Request Frameを前記他の無線機に送信して前記第2受信待受状態となる無線機。 【請求項3】 周期的にRIT Data Request Frameの送信を試みるRIT方式の通信を行うコンピュータを、 送信対象となるデータである対象データがあれば、前記RIT Data Request Frameの受信待受を行う第1受信待受状態となり、該第1受信待受状態において他の無線機から該RIT Data Request Frameを受信すると、該対象データを該他の無線機に送信する送信制御部と、 前記RIT Data Request Frameを送信し、送信後の所定期間、送信した該RIT Data Request Frameに対する対象データの受信が可能となる第2受信待受状態となる受信制御部と、 して機能させ、 前記受信制御部は、 前記第1受信待受状態において、前記RIT Data Request Frameの送信タイミングになると、該第1受信待受状態を維持しつつ、これと並行して、該RIT Data Request Frameを前記他の無線機に送信して前記第2受信待受状態となるプログラム。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人は、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき旨主張している。 第4 当審の判断 1 特許異議申立人は、『「RIT Data Request Frame」を「RITリクエスト」と呼ぶことがあ』る(特許異議申立書の「(イ-1)意見書での出願人の主張」(5ページ下から10行ないし8行))とした上で、同「(イ-2)本件が拒絶理由を有することの説明」(6ページ下から7行ないし8ページ15行)において、本願発明1の「前記第1受信待受状態において、前記RIT Data Request Frameの送信タイミングになると、該第1受信待受状態を維持しつつ、これと並行して、該RIT Data Request Frameを前記第2無線機に送信して前記第2受信待受状態となる」という発明特定事項について、発明の詳細な説明の段落【0040】の記載によれば、「無線機は、第1の受信待受状態を維持しながら、RITリクエストを送信できることにな」るが、『第1の受信待受状態を維持しながらRITリクエストを送信できるとしても、その後に「第1の受信待受状態および第2の受信待受状態の双方を有効にする」旨の記載は』なく、また、「そもそも、無線機のような1つの物理的な装置が取り得る状態は、通常1つであり、複数の状態を同時に取り得るものでは」ないところ、「明細書においては、第1受信待受状態および第2受信待受状態が同時に有効になるような特殊な状態についての具体的な記載は」ないから、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない旨を主張している。 また、特許異議申立書の(4)「ア 本件特許発明」の5ページ13行及び14行における『請求項2および請求項3は、それぞれ「無線機」および「プログラム」 に係る発明ですが、実質的な内容は請求項1と同じなので、記載を省略します。』という記載によれば、特許異議申立人は、本願発明2及び3についても同様の旨を主張していると解される。 しかしながら、発明の詳細な説明には、「無線機110bは、対象データTDFbの発生(取得)後、第1受信待受状態となり、・・・第1受信待受状態中にフレームRFbの送信タイミングとなると、・・・フレームRFbを送信」し、「このとき、・・・第1受信待受状態が維持され」(段落【0040】)、「対象データTDFaを受信し、受信後も第1受信待受状態が維持され」(同【0042】)、「フレームRFaを受信後、無線機110aに対象データTDFbを送信」し、「対象データTDFbの送信後、第1受信待受状態が解除される」(段落【0044】)ことが記載されており、また、「無線機・・・110bは、フレーム・・・RFbの送信後、予め設定された所定期間WD・・・、第2受信待受状態となる。第2受信待受状態は、中央制御部154が、対象データの受信に必要な機能が有効となるように通信部150を制御している状態である」(段落【0026】)ことも記載されている。 そうすると、発明の詳細な説明には、対象データTDFbの発生(取得)後第1受信待受状態となってから、対象データTDFbの送信後第1受信待受状態が解除されるまでの間、第1受信待受状態を維持しながら、フレームRFbを送信した後対象データTDFaを受信するまで間第2受信待受状態となることが記載されているといえるから、発明の詳細な説明は、「第1の受信待受状態および第2の受信待受状態の双方を有効にする」旨が記載されているといえ、更に、「そもそも、無線機のような1つの物理的な装置が取り得る状態は、通常1つであり、複数の状態を同時に取り得るものでは」ないとする特許異議申立人の主張についても、発明の詳細な説明には「第1の受信待受状態および第2の受信待受状態の双方を有効にする」旨が記載されている以上、無線機が複数の状態を同時に取り得ないとはいえない。 したがって、発明の詳細な説明は、本件発明1ないし3の実施をすることができる程度に記載されていないとはいえず、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。 2 特許異議申立人は、「仮に、第1受信待受状態および第2受信待受状態を同時に有効にできるとしても、」(特許異議申立書の「(イ-2)本件が拒絶理由を有することの説明」(8ページ14及び15行))とした上で、同「(イ-2-1)第1受信待受状態時の受信処理」(8ページ下から12行ないし8行)において、「第1無線機が第1受信待受状態であるときに、第2無線機からRITリクエス卜を受信すると、対象データを第2無線機に送信して第2受信待受状態とな」るが、「第2受信待受状態においてどのような処理をするのかについて、明細書に記載が」ない旨を主張している。 特許異議申立人の主張のうち、「第1無線機が第1受信待受状態であるときに、第2無線機からRITリクエス卜を受信すると、対象データを第2無線機に送信して第2受信待受状態とな」るという部分は、本件発明1ないし3の発明特定事項に基づかない構成に対する主張であるから、採用できない。 また、第2受信待受状態について、発明の詳細な説明には、「無線機・・・110bは、フレーム・・・RFbの送信後、予め設定された所定期間WD・・・、第2受信待受状態となる。第2受信待受状態は、中央制御部154が、対象データの受信に必要な機能が有効となるように通信部150を制御している状態である。」(段落【0026】)と記載されているから、特許異議申立人の主張のうち、「第2受信待受状態においてどのような処理をするのかについて、明細書に記載が」ないとする部分もまた、採用できない。 したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1ないし3の実施をすることができる程度に記載されていないとはいえず、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。 3 特許異議申立人は、「仮に、第1受信待受状態および第2受信待受状態を同時に有効にできるとしても、」(特許異議申立書の「(イ-2)本件が拒絶理由を有することの説明」(8ページ14及び15行))とした上で、同「(イ-2-2)同時受信処理」(8ページ下から6行ないし9ページ12行)において、「明細書は、無線機がRITリクエストおよび対象データを同時に受信するための動作について記載して」おらず、「無線機がRITリクエストおよび対象データを同時に受信するための構成について全く記載して」いない旨を主張している。 しかしながら、上記「1」で検討したとおり、発明の詳細な説明には、対象データTDFbの発生(取得)後第1受信待受状態となってから、対象データTDFbの送信後第1受信待受状態が解除されるまでの間、第1受信待受状態を維持しながら、フレームRFbを送信した後対象データTDFaを受信するまで間第2受信待受状態となることが記載されており、フレームRFa(すなわちRITリクエスト)の受信タイミングと、対象データTDFaの受信タイミングが同時でない通常の場合には、前記フレームRFa及び前記対象データTDFaを問題なく受信できることが明らかである。 また、発明の詳細な説明には、以下の記載がある(下線は当審で付した。)。 ア 「 本発明は、・・・通信頻度が高くなっても、通信成功率の低下を抑制する無線通信システム、・・・・を提供することを目的としている。」(段落【0006】) イ 「 [図:0001384241000001.jpg] 」(図8) ウ 「 図8に示すように、改良型のRIT方式では、2つの無線機10a、10b間において、通信頻度λLinkが高くなっても、上記のお見合い問題が回避されるため、比較例に比べて通信成功率Sの低下幅が抑制される。・・・具体的には、通信頻度λLinkが10-1になっても、通信成功率Sは大凡100%近い値を維持できることが計算機シミュレーションによって確認された。」(段落【0046】及び【0047】) そして、上記「ア」ないし「ウ」の記載によれば、たとえ、前記フレームRFa及び前記対象データTDFaを同時に受信する場合に少なくとも一方の受信が成功しないことがあり得るとしても、通信成功率の低下を抑制するという本願発明1ないし3の目的は達成されているといえるから、発明の詳細な説明は、本件発明1ないし3の実施をすることができる程度に記載されていないとまではいえない。 したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。 4 特許異議申立人は、「仮に、第1受信待受状態および第2受信待受状態を同時に有効にできるとしても、」(特許異議申立書の「(イ-2)本件が拒絶理由を有することの説明」(8ページ14及び15行))とした上で、同「(イ-2-3)その他の矛盾点」(9ページ14行ないし22行)において、「データを送信しながらデータを受信する構成は、物理的に困難で」あることを前提に、「無線機がデータを送信するときに同時に他の無線機からデータが到着した場合は、例えば、データ受信を諦めることになり」、「すなわち、第2の受信待受状態は機能し」ないこと、及び「無線機がデータを送信するときに同時に他の無線機からデータが到着した場合、データ受信が完了するまでデータ送信を待機させ、その後、データ送信を行う構成も考えられ」るが、「この手順では、第1の受信待受状態および第2の受信待受状態が同時に実現されているとは言え」ない旨を主張している。 しかしながら、上記「1」で説示したとおり、発明の詳細な説明には、第1受信待受状態を維持しながら、フレームRFbを送信することが記載されている。また、送信と受信を同時に行うことのできる、いわゆる全二重通信手段自体は、文献を挙げるまでもない慣用技術であって当業者が適宜採用し得るものである。 したがって、特許異議申立人の「データを送信しながらデータを受信する構成は、物理的に困難で」あるという上記主張は採用できず、この前提に基づく他の上記主張も採用できない。そして、発明の詳細な説明は、本件発明1ないし3の実施をすることができる程度に記載されていないとまではいえない。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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