特許訂正審判
2025-390088
水排出構造を有する燃料電池スタック
- 審判番号
- 2025-390088
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2011-086329
- 登録番号
- 5791940
- 請求日
- 2025年07月22日
- 審決日
- 2025年10月30日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】現代自動車株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人共生国際特許事務所
- 【請求人】起亞株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人共生国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 涌井 智則
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P141 .852-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第5791940号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第5791940号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第5791940号に係る出願は、平成23年4月8日(パリ条約に基づく優先権主張 2010年11月17日、韓国(KR))に出願され、平成27年8月14日に特許権の設定登録がされ、令和6年12月16日に訂正審判の請求がされ、令和7年2月5日に訂正を認める旨の審決がされ、同年2月25日に当該審決が確定し、その後、同年7月22日に訂正審判(以下、「本件訂正審判」という。)の請求がなされたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5791940号の明細書、特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
第3 訂正事項
本件訂正審判の請求に係る訂正事項(以下、「本件訂正事項」という。)は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「スタック発電部のエンドセルと前記両端のエンドプレート(EP)との間にはスタックの水排出のためのダミーセルとしてアノードに水素が流入するがカソードに空気が流入することがなくアノードの水排出だけが行われるアノードダミーセル(ED)とカソードに空気が流入するがアノードに水素が流入することがなくカソードの水排出だけが行われるカソードダミーセル(CD)がそれぞれ少なくとも一側に1つ以上積層されることを特徴とする」
と記載されているのを、
「スタック発電部のエンドセルと前記両端のエンドプレート(EP)との間にはスタックの水排出のためのダミーセルとしてアノードに水素が流入するがカソードに空気が流入することがなくアノードの水排出だけが行われるアノードダミーセル(AD)とカソードに空気が流入するがアノードに水素が流入することがなくカソードの水排出だけが行われるカソードダミーセル(CD)がそれぞれ少なくとも一側に1つ以上積層されることを特徴とする」
に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する)。
2.訂正事項2
明細書段落【0012】に記載された「アノードダミーセル(ED)」を「アノードダミーセル(AD)」に訂正する。
3.訂正事項3
明細書段落【0023】に
「すなわち、アノードの水排出のためのアノードダミーセル(ED)は、アノードプレート(AP)とエンドカソードプレート(ECP)を含んで構成され、カソードの水排出のためのカソードダミーセル(CD)は、カソードプレート(CP)とエンドアノードプレート(EAP)を含んで構成される。
上記アノードダミーセル(ED)には、アノードプレート(AP)を介して水素が流入するが、エンドカソードプレート(ECP)を介して空気が流入することはないため、燃料電池の化学反応が起こることがなく、アノードの水排出だけが行われる。」
と記載されているのを、
「すなわち、アノードの水排出のためのアノードダミーセル(AD)は、アノードプレート(AP)とエンドカソードプレート(ECP)を含んで構成され、カソードの水排出のためのカソードダミーセル(CD)は、カソードプレート(CP)とエンドアノードプレート(EAP)を含んで構成される。
上記アノードダミーセル(AD)には、アノードプレート(AP)を介して水素が流入するが、エンドカソードプレート(ECP)を介して空気が流入することはないため、燃料電池の化学反応が起こることがなく、アノードの水排出だけが行われる。」
に訂正する。
4.訂正事項4
明細書段落【0024】に記載された「アノードプレート(AD)」を「アノードプレート(AP)」に訂正する。
第4 当審の判断
1.訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正前の請求項1の「スタックの水排出のためのダミーセルとしてアノードに水素が流入するがカソードに空気が流入することがなくアノードの水排出だけが行われるアノードダミーセル」との記載からすれば、「アノードダミーセル」の略称は、「AD」と解される。
そして、「アノードダミーセル」に関し、訂正前の【請求項2】に「前記アノードダミーセル(AD)は、アノードプレート(AP)及びエンドカソードプレート(ECP)分離板を含んで形成される」、同【請求項4】に「前記アノードダミーセル(AD)のアノードプレート(AP)とエンドカソードプレート(ECP)との間には、気体拡散層(GDL)をさらに含む」、同【請求項5】に「前記カソードダミーセル(CD)及びアノードダミーセル(AD)は、膜電極接合体(MEA)を含まず、2つの気体拡散層(GDL)が互いに接合して積層される」とそれぞれ記載され、また、訂正前の明細書の段落【0013】に「上記アノードダミーセル(AD)は、アノードプレート(AP)及びエンドカソードプレート(ECP)分離板を含んで形成されることを特徴とする。」、同段落【0015】に「上記アノードダミーセル(AD)のアノードプレート(AP)とエンドカソードプレート(ECP)との間には、気体拡散層(GDL)をさらに含むことが好ましい。」、同段落【0016】に「また、・・・アノードダミーセル(AD)は、膜電極接合体(MEA)を含まず、2つの気体拡散層(GDL)が互いに接合して積層されてもよい。」、同段落【0024】に「上記気体拡散層(GDL)は、アノードダミーセル(AD)のアノードプレート(AD)とエンドカソードプレート(ECP)との間にも同様に積層することができる。」とそれぞれ記載されている。(なお、下線は当審が付与。)
してみれば、訂正前の請求項1に記載の「アノードダミーセル(ED)」は、「アノードダミーセル(AD)」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「アノードダミーセル(ED)」を「アノードダミーセル(AD)」と訂正することにより、請求項1の記載の誤記を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定に該当し、「誤記又は誤訳の訂正」を目的とする訂正である。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
訂正事項1に係る訂正は、上記(1)のとおり「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであって、上記(1)で検討したように、訂正前の【請求項2】、【請求項4】、【請求項5】、段落【0013】、【0015】、【0016】、【0024】には「アノードダミーセル(AD)」なる語句がそれぞれ記載されている。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、上記(1)のとおり「誤記又は誤訳の訂正」を目的とし、訂正前の請求項1の記載の誤記を正すものであるから、特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
訂正事項1は「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであるところ、訂正後における特許請求の範囲の請求項に記載される事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
2.訂正事項2及び訂正事項3について
(1)訂正の目的について
上記1(1)で検討したのと同様に、訂正事項2及び訂正事項3は、訂正前の明細書段落【0012】、【0023】に記載の「アノードダミーセル(ED)」を「アノードダミーセル(AD)」と訂正することにより、明細書の記載の誤記を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定に該当し、「誤記又は誤訳の訂正」を目的とする訂正である。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
訂正事項2及び訂正事項3に係る訂正は、上記(1)のとおり「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであって、上記1(1)で検討したように、訂正前の【請求項2】、【請求項4】、【請求項5】、段落【0013】、【0015】、【0016】、【0024】には「アノードダミーセル(AD)」なる語句がそれぞれ記載されている。
よって、訂正事項2及び訂正事項3は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項2及び訂正事項3は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2及び訂正事項3は、上記(1)のとおり「誤記又は誤訳の訂正」を目的とし、訂正前の明細書の記載の誤記を正すものであるから、特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではない。
したがって、訂正事項2及び訂正事項3は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
訂正事項2及び訂正事項3は「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであるところ、訂正後における特許請求の範囲の請求項に記載される事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、訂正事項2及び訂正事項3は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
3,訂正事項4について
(1)訂正の目的について
訂正前の明細書の段落【0024】に記載された「アノードプレート」との語句自体からすれば、その略称は「AP」と解される。
そして、「アノードプレート」に関し、訂正前の【請求項2】に「前記アノードダミーセル(AD)は、アノードプレート(AP)及びエンドカソードプレート(ECP)分離板を含んで形成される」、同【請求項3】に「前記エンドアノードプレート(EAP)は、アノードプレート(AP)の水素入口/出口ホールが除去されて形成され、」、同【請求項4】に「前記アノードダミーセル(AD)のアノードプレート(AP)とエンドカソードプレート(ECP)との間には、気体拡散層(GDL)をさらに含む」とそれぞれ記載され(下線は、当審が付与。)、また、また訂正前の明細書には「アノードプレート(AP)」との語句が多数記載されている。(段落【0001】、【0003】、【0004】、【0006】、【0019】、【0021】、【0022】、【0023】を参照。)
してみれば、訂正前の明細書の段落【0024】に記載の「アノードプレート(AD)」は、「アノードプレート(AP)」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項4は、訂正前の明細書の段落【0024】に記載の「アノードプレート(AD)」を「アノードプレート(AP)」と訂正することにより、明細書の記載の誤記を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定に該当し、「誤記又は誤訳の訂正」を目的とする訂正である。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
訂正事項4に係る訂正は、上記(1)のとおり「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであって、上記(1)で検討したように、訂正前の【請求項2】~【請求項4】、段落【0001】、【0003】、【0004】、【0006】、【0019】、【0021】、【0022】、【0023】には「アノードプレート(AP)」との語句がそれぞれ記載されている。
よって、訂正事項4は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、上記(1)のとおり「誤記又は誤訳の訂正」を目的とし、訂正前の明細書の記載の誤記を正すものであるから、特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
訂正事項4は「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであるところ、訂正後における特許請求の範囲の請求項に記載される事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、訂正事項4は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項から第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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