特許訂正審判
2025-390069
18F放射性ラベルされた生体分子
- 審判番号
- 2025-390069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2021-569929外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7669290
- 請求日
- 2025年05月19日
- 審決日
- 2025年10月20日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】デューク・ユニバーシティ
- 【請求人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 分類
- P141 .852-Y (C07B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項特許法126条5項特許法126条6項特許法126条7項特許法184条の19
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第184条の19、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7669290号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7669290号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第7669290号は、2020年5月22日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2019年5月24日 米国(US))を国際出願日とする特願2021-569929号の請求項1~8について、令和7年4月18日に特許権の設定登録がされたものである。
そして、令和7年5月19日に本件訂正審判の請求がされ、その後、令和7年8月27日に審判請求書に対する手続補正書が提出されたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第7669290号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
第3 訂正の内容
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項1のとおりである。
<訂正事項1>
請求項2における
「上記ジエノフィルは、オクテン部分、trans-シクロオクテン(TCO)部分およびテトラジン(Tz)部分からなる群から1種以上選択される部分を含む、請求項1に記載の方法。」
との記載を、
「上記ジエノフィルは、オクテン部分およびtrans-シクロオクテン(TCO)部分からなる群から1種以上選択される部分を含み、
上記ジエンは、テトラジン(Tz)部分を含む、請求項1に記載の方法。」
との記載に訂正する。
(下線は請求人が訂正箇所として付したものである。)
第4 当審合議体の判断
1 訂正の目的について
(1)訂正事項1は、訂正前の請求項2において、「ジエノフィル」に含まれる「部分」の選択肢の記載から「テトラジン(Tz)部分」を削除し、「上記ジエンは、テトラジン(Tz)部分を含む」との記載を追加するものである。
(2)請求人は、当該訂正事項について、誤記の訂正を目的とするものである旨を主張しているので、当該訂正事項が誤記の訂正を目的とするものであるか検討する。
(3)ここで、「誤記の訂正」とは、誤記が存在し、本来その意であることが、特許請求の範囲、明細書又は図面などから明らかな内容の字句又は語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいうと解される。
そこで、訂正前の請求項2において、「テトラジン(Tz)部分」との記載が、「ジエノフィル」に含まれる「部分」の選択肢として記載されていたことが誤記であって、訂正前の請求項2の記載は、本来、「テトラジン(Tz)部分」との記載が「ジエノフィル」に含まれる部分の選択肢から除外され、かつ「上記ジエンは、テトラジン(Tz)部分を含む」と記載されていることと同一の意味であったかについて検討する。
(4)誤記の存在について
ディールス・アルダー反応において、「ジエノフィル」とは、共役ジエンに対して反応するアルケンを意味し、逆電子要請型ディールス・アルダー付加環化反応で、「ジエン」であるテトラジン(Tz)部分と、「ジエノフィル」であるtrans-シクロオクテン(TCO)部分が反応することはよく知られた事項であるから(必要であれば、Chem-Station、odos 有機反応データベース「歪み促進逆電子要請型Diels-Alder反応」、URL<https://www.chem-station.com/odos/2018/12/spiedac-reaction.html>を参照。)、「テトラジン」は、「ジエノフィル」ではない。
このことは、本件明細書【0009】に、
「ジエノフィルは、オクテン部分を含む。例えば、1つの好適なジエノフィルは、trans-シクロオクテン(TCO)部分を含む。同様に、・・・ジエンは、テトラジン(Tz)部分を含む。」
と記載され、「テトラジン(Tz)部分」が「ジエノフィル」ではなく、「ジエン」であることが記載されていることからも明らかである。
よって、上記「テトラジン(Tz)部分」が、「ジエノフィル」に含まれる「部分」の選択肢として記載されていることは、明らかな誤りであり、誤記であるといえる。
(5)請求項2の正しい記載について
次に、訂正前の請求項2の記載は、「テトラジン(Tz)部分」の記載が、「ジエノフィル」に含まれる「部分」の選択肢から除外され、かつ、「上記ジエンは、テトラジン(Tz)部分を含む」と、「ジエン」に含まれる「部分」として記載されていることが明らかであったかについて検討する。
ア 上記(4)で述べたとおり、「テトラジン(Tz)部分」が「ジエノフィル」に含まれる「部分」の選択肢とされることは、明らかな誤りであるから、本来、その選択肢から除外されているべきであったと認められる。
イ 本件明細書【0009】において記載されるように、「テトラジン(Tz)部分」「を含む」ものは、「ジエン」であるから、「テトラジン(Tz)部分」については、「上記ジエンは、テトラジン(Tz)部分を含む」と記載されるべきものであったことは明らかである。
ウ したがって、訂正後の請求項2の記載は、訂正前の記載と同一の意味を表示するものであると認められる。
(6)まとめ
以上のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。
2 国際出願日における国際出願の明細書又は請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
上記1で述べたとおり、訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項2において、それ自体で誤りであることが明らかな記載を正しい記載とするものである。そして、国際出願日における国際出願時の明細書[0011]には、
「In some embodiments, the dienophile comprises an octene moiety. For example, one suitable dienophile comprises a trans-cyclooctene (TCO) moiety. Likewise, the diene functionality can vary. In some embodiments, the diene comprises a tetrazine (Tz) moiety. 」
(当審による翻訳:「いくつかの実施形態において、ジエノフィルは、オクテン部分を含む。例えば、1つの好適なジエノフィルは、トランスシクロオクテン(TCO)部分を含む。同様に、同ジエンの機能性は、変わり得る。いくつかの実施形態では、ジエンは、テトラジン(Tz)部分を含む。」)
と、上記1(4)で述べた本件明細書【0009】の記載と同じ事項が記載されている。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第184条の19の規定により読み替えて適用する同法第126条第5項の規定に適合する。
3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないことについて
上記1で述べたとおり、訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項2において、それ自体で誤りであることが明らかな記載を正しい記載とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
4 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
上記1で述べたとおり、訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項2において、それ自体で誤りであることが明らかな記載を正しい記載とするものであるから、訂正後の請求項2には、特許要件の適否について見直すべき新たな事情が存在するものではなく、また、訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする新たな理由は見いだせない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第7項に規定の独立特許要件を満たすものである。
第5 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同法第184条の19の規定により読み替えて適用する同法第126条第5項、並びに同法第126条第6項及び第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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