特許拒絶査定不服審判
2025-008914
ガスセンサモジュール
- 審判番号
- 2025-008914
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-032861
- 請求日
- 2025年06月09日
- 審決日
- 2026年03月09日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】旭化成エレクトロニクス株式会社
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】杉村 光嗣
- 【請求人代理人】吉田 憲悟
- 【請求人代理人】鹿山 昌代
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 浩
- 審判官 松本 隆彦
- 審判官 遠藤 直恵
- 分類
- P18 .113-WZ (G01N) / P18 .121-WZ (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 32861「ガスセンサモジュール」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月27日出願公開、特開2021-148784〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)3月2日に出願され、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 6年11月 6日付け 拒絶理由通知書
令和 7年 1月 8日 意見書・手続補正書の提出
令和 7年 2月28日付け 拒絶査定
令和 7年 6月 9日 審判請求書・手続補正書の提出
以下では、令和7年2月28日付け拒絶査定を「原査定」という。
第2 令和7年6月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年6月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を補正する補正事項を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所を示す。)
「 【請求項1】
駆動電流に応じて赤外線を発光する赤外線発光ダイオードと、
検出対象ガスを透過した赤外線を受光する量子型赤外線センサと、
前記駆動電流を前記赤外線発光ダイオードに出力する駆動回路と、
電源と接続され、前記駆動電流よりも電流量が小さい充電電流を出力する充電回路と、
前記充電回路から前記充電電流が供給されることで充電され、前記駆動回路へ前記駆動電流を供給することで放電するキャパシタと、
を備え、
前記充電電流と充電時間の積は、前記駆動電流と駆動時間の積以上であり、
前記駆動時間は100μs未満であり、
前記量子型赤外線センサの赤外線の受光量に応じて、赤外線に対して吸収特性を有する前記検出対象ガスによる赤外線の吸収量を検出し、前記検出対象ガスの濃度を算出する非分散赤外線吸収型ガスセンサモジュール。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和7年1月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
駆動電流に応じて赤外線を発光する赤外線発光ダイオードと、
検出対象ガスを透過した赤外線を受光する量子型赤外線センサと、
前記駆動電流を前記赤外線発光ダイオードに出力する駆動回路と、
電源と接続され、前記駆動電流よりも電流量が小さい充電電流を出力する充電回路と、
前記充電回路から前記充電電流が供給されることで充電され、前記駆動回路へ前記駆動電流を供給することで放電するキャパシタと、
を備え、
前記充電電流と充電時間の積は、前記駆動電流と駆動時間の積以上であり、
前記駆動時間は100μs以下であるガスセンサモジュール。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である駆動時間について、「100μs以下であ」ることを、「100μs未満であ」ることに限定するとともに、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ガスセンサモジュール」について、「記量子型赤外線センサの赤外線の受光量に応じて、赤外線に対して吸収特性を有する前記検出対象ガスによる赤外線の吸収量を検出し、前記検出対象ガスの濃度を算出する非分散赤外線吸収型」ガスセンサモジュールと限定するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のように構成A~構成Hに分説する。(A~Hは、各構成単位毎に分説するために当審にて付した分説番号であり、以下、各構成単位について、該分説番号を用いて「構成A」などということがある。引用発明等についても同様である。)
「【請求項1】
A 駆動電流に応じて赤外線を発光する赤外線発光ダイオードと、
B 検出対象ガスを透過した赤外線を受光する量子型赤外線センサと、
C 前記駆動電流を前記赤外線発光ダイオードに出力する駆動回路と、
D 電源と接続され、前記駆動電流よりも電流量が小さい充電電流を出力する充電回路と、
E 前記充電回路から前記充電電流が供給されることで充電され、前記駆動回路へ前記駆動電流を供給することで放電するキャパシタと、
を備え、
F 前記充電電流と充電時間の積は、前記駆動電流と駆動時間の積以上であり、
G 前記駆動時間は100μs未満であり、
H 前記量子型赤外線センサの赤外線の受光量に応じて、赤外線に対して吸収特性を有する前記検出対象ガスによる赤外線の吸収量を検出し、前記検出対象ガスの濃度を算出する非分散赤外線吸収型ガスセンサモジュール。」
(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された特表2013-529296号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審において付与した。以下同様。)。
a 「【0004】
従って、本発明は、光源と、光受信部と、検知器の動作を制御する制御回路と、を具備する光学式煙検知器であって、前記制御回路は、前記光源に未調整の電圧を印加して発光させ、前記光源によって放出される光をモニタするために前記光源を通る電流をモニタし、前記光受信部によって受信された前記光をモニタするために前記光受信部によって受信した前記光によって生成される前記電流をモニタし、前記モニタされた電流の比率を表す比率信号を生成し、前記比率信号を基準値と比較するとともにそれに基づいて煙検知信号を生成するように構成されることを特徴とする光学式煙検知器を提供する。」
b 「【0018】
図面を参照すると、光学式煙アラーム110の好ましい形態は、ベース114とカバー116とを持つハウジング112を持つことが示されている。前記ベースは、前記アラームを適切な手段によって部屋の天井などの表面に取り付けられることを可能にする。前記ベースは、天井または中間取付板に当接するための通常は平面底部壁118と、側部壁120を持つ。後者は、煙等を侵入させるための円周に沿って配置された複数の開口部122を持つ。前記カバー116は、通常は前記カバーの内側を形成する側部壁124と底部壁126をもつ「カップ」または「皿型」をしている。前記底部壁は、通常は前記ベース114に向かって対向する内面(図示せず)を持つ。」
c 「【0019】
前記アラームは、好ましくは前記内面127と前記ベース114との間のハウジング内に設けられ、光学センサ131と、制御回路130とを持ち、前記制御回路は前記検知器の動作を制御する。前記アラームは、前記センサから受信した信号に応答して前記制御回路によってトリガしたときに可聴警報を鳴らすための音響器132(図3)も含む。代替方法としてまたは付加的に、音響器はアラームから離れた位置であってもよく、かつ無線あるいは他のワイヤレス信号伝送によって駆動してもよい。」
d 「【0020】
図3を参照すると、ハイサイド駆動ゲート152が前記光センサ131の光源154に流れる電流を切り替えるために使用される制御回路130の発光ダイオードが示されている。図示された実施形態において、前記ハイサイド駆動ゲートは、トランジスタであるが、他適切な半導体装置を使用してもよい。前記光源は、好ましくは発光ダイオード(LED)であるとともに、前記放出された光は、好ましくは赤外(IR)光である。従来の方法は、一般的に電流を調整するロウサイド駆動トランジスタ(例えば、NPNトランジスタ)を使用する。しかしながら、これは、調整を確実に行うためにより高い最少供給電圧を要とする。図3の好ましい実施形態では、前記トランジスタ152は、前記LED154を駆動するために十分に切り替わるとともに、電流は調整されない。」
e 「【0021】
電流制限手段は、前記光源154を通る前記電流を制限するために使用される。 図示された実施形態によると、前記電流制限手段は、抵抗156、158を具備する電圧分割抵抗チェーンによって形成される。前記トランジスタ152のエミッタは、一般的に+3Vの電圧供給ライン162に接続されるとともに、リザーバキャパシタ(reservoir capacitor)160は、前記エミッタと前記供給ラインの間に接続される。前記キャパシタは、前記トランジスタがOFF状態の間に充電されるとともに、好ましくはバッテリから過剰な電流を受け取ることなく、前記トランジスタ152が前記LED154へ高電流パルスを供給するためにONに切り替わるとき、前記トランジスタ152およびLED154を通して放電される。前記エミッタおよびキャパシタ160を前記電力供給ラインに接続する前記抵抗164は、前記トランジスタがOFF状態の間前記キャパシタの再充電を可能にする。」
f 「【0023】
前記制御回路130は、前記光学センサ131の前記光受信部172によって前記受信された光をモニタするためのセンシング回路170も持つ。前記光受信部は、前記回路170の演算増幅器174の一入力(反転入力(inverting input))へ接続される受信ダイオードの形態をとる。前記演算増幅器の他の入力は、前記電圧分割器の形態の抵抗178、180によって形成される電圧基準レベルに接続される。一方、電圧分割器の出力は、さらに第2の演算増幅器176によって増幅されるとともに前記マイクロプロセッサ136の入力へ印加される。」
g 「【0025】
通常、前記制御回路130がスリープモードでは、煙が存在するか存在しないかをチェックするために事前設定された時間間隔で動作する。前記制御回路が動作モードに切り替えるとき、前記トランジスタ152の前記ベースへターンオンパルス(この実施形態では立下りパルス)を印加し、前記トランジスタを起動し、前記LED154を通じて部分的に前記キャパシタ160を放電する。前記LEDを通る電流は、前記マイクロプロセッサ136によってモニタされる抵抗158の電圧降下を生み出す。一般的に、トランジスタ152は、10秒毎に約100μsの間、起動される。」
h 「【0026】
前記LED154が発光するために活性化されるとき、前記受信ダイオード172は、前記受信したIR放射に比例した電流を供給する。これは、前記増幅器174の出力の信号を供給するために増幅される。この信号は、さらに増幅器176によって増幅される。一定レベルのIR放射は、内部表面から前記LED154および前記受信ダイオード172の周りに作られた前記センサ131の前記煙センサチャンバへの反射により常に受信される。煙が前記チャンバへ入ったとき、より多くの放射が前記煙から反射されるとともに、前記受信ダイオード172の放射入射(radiation incident)量は増加する。したがって、前記増幅器176の出力信号は、他の動作条件が変化しなければ増加する。」
i 「【0027】
ここで図4aを参照すると、これは清浄な空気の前記センシング回路170の応答を示している。前記IR発光ダイオード154を通る電流は、前記直列抵抗158を間接的に使用することで測定できる。供給電圧の変化による前記ダイオードを通るこの電流の前記変化、およびそれゆえに前記LED154の光出力の前記変化は、曲線150に示される。入射光による前記受信ダイオード172によって生成される前記電流の変化と、前記センシング回路170によって測定される前記電流の変化も曲線152に示される。」
j 「【0029】
煙が前記光学センサチャンバ131に入る場合、前記受信ダイオード172の反射入射光の量は増加するとともに、それゆえにダイオード172を通る前記電流は増加する。図4bは、前記チャンバが部分的または十分に煙で満たされたときのダイオードの応答を示している。前記曲線154に示される前記(発光中の)LED電流は、影響を受けていない。しかしながら、前記受信ダイオード172によって生成される電流は、曲線156に示されるように、曲線152に示される値を超え、増加する。」
k 「図3
[図:0001435059000001.jpg]
」
(イ)引用文献1に記載された発明
上記(ア)b~jの記載事項及び図面を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 光学式煙アラーム110であって、
ベース114とカバー116とを持つハウジング112を持ち、前記ベースは、前記アラームを部屋の天井の表面に取り付けられることを可能にし、前記ベースは、天井または中間取付板に当接するための平面底部壁118と、側部壁120を持ち、前記底部壁は、前記ベース114に向かって対向する内面を持ち、(【0018】)
前記アラームは、前記内面127と前記ベース114との間のハウジング内に設けられ、光学センサ131と、制御回路130とを持ち、前記制御回路は前記検知器の動作を制御し、(【0019】)
制御回路130のハイサイド駆動ゲート152は、前記光学センサ131の光源154に流れる電流を切り替えるために使用され、前記光源は発光ダイオードであるとともに、前記放出された光は赤外光であり、(【0020】)
前記ハイサイド駆動ゲートは、トランジスタであり(【0020】)
前記トランジスタ152のエミッタは、+3Vの電圧供給ライン162に接続されるとともに、リザーバキャパシタ160は、前記エミッタと前記供給ラインの間に接続され、(【0021】)
前記キャパシタは、前記トランジスタがOFF状態の間に充電され、バッテリから過剰な電流を受け取ることなく、前記トランジスタ152が前記LED154へ高電流パルスを供給するためにONに切り替わるとき、前記トランジスタ152およびLED154を通して放電され、前記エミッタおよびキャパシタ160を前記電力供給ラインに接続する前記抵抗164は、前記トランジスタがOFF状態の間前記キャパシタの再充電を可能にし、(【0021】)
前記制御回路が動作モードに切り替えるとき、前記トランジスタ152の前記ベースへターンオンパルスを印加し、前記トランジスタを起動し、前記LED154を通じて部分的に前記キャパシタ160を放電し、トランジスタ152は、事前設定された時間間隔である10秒毎に約100μsの間、起動され、(【0025】)
前記制御回路130は、前記光学センサ131の前記光受信部172によって前記受信された光をモニタするためのセンシング回路170も持ち、前記光受信部は、受信ダイオードの形態をとり、(【0023】)
前記LED154が発光するために活性化されるとき、前記受信ダイオード172は、前記受信したIR放射に比例した電流を供給し、煙が前記チャンバへ入ったとき、より多くの放射が前記煙から反射されるとともに、前記受信ダイオード172の放射入射量は増加し、(【0026】)
前記チャンバが部分的または十分に煙で満たされたときのダイオード172によって生成される電流が、清浄な空気のときに生成される電流を超える、(【0027】、【0029】)
光学式煙アラーム110(【0018】)」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
本願の出願日前に頒布された、特開2009-229414号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、煙及び検知対象ガスの少なくとも一方を検知する検知装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る検知装置の特徴構成は、煙及び検知対象ガスの少なくとも一方を検知する検知装置であって、外部光を遮断しつつ前記煙及び前記検知対象ガスの少なくとも一方を含む外気を内部に流通可能な暗室に、前記検知対象ガスの吸収波長を含む検査光を照射する発光素子と、前記検査光が前記煙により散乱されて生じる散乱光を受光する煙検知用受光素子とを有する煙検知手段と、前記発光素子と、前記検査光が前記検知対象ガスを透過した透過光を受光するガス検知用受光素子とを備えたガス検知手段とを設けたことにある。
【0010】
本構成の検知装置において、煙の検知は、当該煙に対して検査光を照射し、その散乱光を煙検知用受光素子で受光することにより行われる。一方、検知対象ガスの検知は、特定のガス分子が特定波長の光を吸収する性質を利用することにより行われる。すなわち、検知対象ガスに対して検査光を照射し、検知対象ガスを通過した前記特定波長の光をガス検知用受光素子で受光する。このように、本構成の検知装置では、ガス検知及び煙検知の両方とも検査光を利用して行っている。従って、これらの検知に使用する検査光を共通化すれば、二つの異なる方式での火災検知において同一の光源を使用することができる。
この点に関し、本構成の検知装置では、光源として、検知対象ガスの吸収波長を含む検査光を照射する発光素子を採用している。従って、検知対象ガスに対して、確実に検知対象ガスの吸収波長を有する光を照射することができる。また、検知対象ガスと同時に煙が発生している場合には、発光素子から照射される検査光は当該煙により散乱されるので、前記のガス検知と併せて煙検知も行うことができる。
このように、本構成の検知装置では、複数の情報を用いて多角的な検知(すなわち、ガス検知及び煙検知)を行うことを可能としながら、光源を共通化することができる。その結果、装置構成が大型化・複雑化することなく、省電力で合理的な検知装置を実現することができる。」
b 「【0028】
発光素子11は、一酸化炭素の吸収波長(1568nm)を含む検査光を照射する光源として構成され、例えば、広帯域の光を出力可能な固体発光素子が採用される。固体発光素子の例としては、スーパールミネッセント発光ダイオード(SLED)が挙げられる。SLEDは、所定以上の帯域幅を有するパルス光を出力する。」
(イ)引用文献2に記載された事項
上記(ア)a~bの記載事項を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載の技術手段」という。)が記載されていると認められる。
「煙及び検知対象ガスの少なくとも一方を検知する検知装置であって(【0001】)
検知対象ガスの吸収波長を含む検査光を照射する発光素子と、前記検査光が前記煙により散乱されて生じる散乱光を受光する煙検知用受光素子とを有する煙検知手段と、前記発光素子と、前記検査光が前記検知対象ガスを透過した透過光を受光するガス検知用受光素子とを備えたガス検知手段とを設け(【0009】)
二つの異なる方式での火災検知において同一の光源を使用することにより(【0010】)
省電力で合理的な検知装置を実現し(【0010】)、
発光素子11は、一酸化炭素の吸収波長(1568nm)を含む検査光を照射する光源として構成される(【0028】)
検知装置。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 構成Aについて
引用発明は「光学センサ131と、制御回路130とを持ち、前記制御回路は前記検知器の動作を制御し、制御回路130のハイサイド駆動ゲート152は、前記光センサ131の光源154に流れる電流を切り替えるために使用され、前記光源は発光ダイオードであるとともに、前記放出された光は赤外光であ」るものである。
ここで、引用発明の「光源154」は、「赤外光」を発光する「発光ダイオード」であるから、本件補正発明の「赤外線を発光する赤外線発光ダイオード」に相当する。
また、引用発明は、「制御回路130のハイサイド駆動ゲート152」により「光源154に流れる電流を切り替え」るから、引用発明の「光源154」は「電流」により発光すると認められ、当該「電流」は本件補正発明の「駆動電流」に相当する。
してみると、引用発明の「光源」は、本件発明における「駆動電流に応じて」発光するとの要件を備えている。
イ 構成Bについて
引用発明は「前記LED154が発光するために活性化されるとき、前記受信ダイオード172は、前記受信したIR放射に比例した電流を供給し、煙が前記チャンバへ入ったとき、より多くの放射が前記煙から反射されるとともに、前記受信ダイオード172の放射入射量は増加」するものである。
ここで、引用発明の「受信したIR放射」は本件補正発明の「受光する」「赤外線」に相当する。そして、引用発明の「受信ダイオード172」は、受信したIR放射に比例した電流を供給」するから、当該「受信ダイオード172」は本件補正発明の「量子型赤外線センサ」に相当する。
してみると、引用発明の「受信ダイオード172」は、本件補正発明の「赤外線を受光する量子型赤外線センサ」に相当する。
ウ 構成Cについて
引用発明は「制御回路130のハイサイド駆動ゲート152は、前記光学センサ131の光源154に流れる電流を切り替えるために使用され」るものである。
ここで、アで述べたように、引用発明の「前記ハイサイド駆動ゲート」は、「光源154に流れる」「駆動電流」を「切り替える」から、本件補正発明の「駆動回路」に相当し、当該「駆動回路」は、「駆動電流」を「光源154」へ出力すると認められる。
また、アで述べたように、引用発明の「光源154」は本件補正発明の「赤外線発光ダイオード」に相当する。
したがって、引用発明の「制御回路130のハイサイド駆動ゲート152」は、本件補正発明の「前記駆動電流を前記赤外線発光ダイオードに出力する駆動回路」に相当する。
エ 構成Dについて
引用発明は「前記トランジスタ152のエミッタは、+3Vの電圧供給ライン162に接続されるとともに、リザーバキャパシタ160は、前記エミッタと前記供給ラインの間に接続され」、
「前記キャパシタは、前記トランジスタがOFF状態の間に充電され、バッテリから過剰な電流を受け取ることなく、前記トランジスタ152が前記LED154へ高電流パルスを供給するためにONに切り替わるとき、前記トランジスタ152およびLED154を通して放電され、前記エミッタおよびキャパシタ160を前記電力供給ラインに接続する前記抵抗164は、前記トランジスタがOFF状態の間前記キャパシタの再充電を可能にし」、
「前記制御回路が動作モードに切り替えるとき、前記トランジスタ152の前記ベースへターンオンパルスを印加し、前記トランジスタを起動し、前記LED154を通じて部分的に前記キャパシタ160を放電し、トランジスタ152は、事前設定された時間間隔である10秒毎に約100μsの間、起動され」るものである。
ここで、引用発明の「電力供給ライン」は、本件補正発明の「電源」に相当する。
また引用発明の「エミッタおよびキャパシタ160を前記電力供給ラインに接続する前記抵抗164は、前記トランジスタがOFF状態の間前記キャパシタの再充電を可能に」しているから、「抵抗164」が「キャパシタ」に「電力供給ライン」から「充電」電流を出力していると認められ、当該「抵抗164」は「本件補正発明の「充電回路」に相当する。
また、「制御回路が動作モードに切り替えるとき」、すなわち、光学センサ131が煙を検出するモードの時は、「前記トランジスタを起動し、前記LED154を通じて部分的に前記キャパシタ160を放電」するが、その際、「トランジスタ152は、10秒毎に約100μsの間、起動され」る、すなわち、10秒のうち、100μsは「キャパシタ160を放電」して「LED154」に「駆動電流」を出力し、残りの9900μsは「トランジスタがOFF状態の間前記キャパシタの再充電」していると認められるから、キャパシタへの充電電流は、前記「駆動電流」よりも小さいことは明らかである。
してみると、引用発明の「抵抗164」は、本件補正発明の「電源と接続され、前記駆動電流よりも電流量が小さい充電電流を出力する」とする要件を備えているといえる。
オ 構成Eについて
引用発明は「前記キャパシタは、前記トランジスタがOFF状態の間に充電され、バッテリから過剰な電流を受け取ることなく、前記トランジスタ152が前記LED154へ高電流パルスを供給するためにONに切り替わるとき、前記トランジスタ152およびLED154を通して放電され、前記エミッタおよびキャパシタ160を前記電力供給ラインに接続する前記抵抗164は、前記トランジスタがOFF状態の間前記キャパシタの再充電を可能に」するものである。
ここで、引用発明の「トランジスタ」、「抵抗164」は本件補正発明の「駆動回路」、「充電回路」に相当する。
また、引用発明は「前記抵抗164は、前記トランジスタがOFF状態の間前記キャパシタの再充電を可能に」することは、本件補正発明の「充電回路」が「キャパシタ」に「充電電流を供給」することに相当する。
引用発明は「トランジスタ152が前記LED154へ高電流パルスを供給するためにONに切り替わるとき、前記トランジスタ152およびLED154を通して放電され」るから、本件補正発明の「キャパシタ」は「駆動回路」へ「駆動電流を供給」することは明らかである。
してみると、引用発明の「キャパシタ」は、本件補正発明の「前記充電回路から前記充電電流が供給されることで充電され、前記駆動回路へ前記駆動電流を供給することで放電するキャパシタ」に相当するといえる。
カ 構成Hについて
引用発明は「前記LED154が発光するために活性化されるとき、前記受信ダイオード172は、前記受信したIR放射に比例した電流を供給し、煙が前記チャンバへ入ったとき、より多くの放射が前記煙から反射されるとともに、前記受信ダイオード172の放射入射量は増加」する「光学式煙アラーム110」であり、「部屋の天井の表面」に取り付けて使用されるものである。
そして、引用発明の「受信ダイオード172の放射入射量」は、本件補正発明の「量子型赤外線センサの受光量」に相当する。
また、引用発明は「煙が前記チャンバへ入ったとき、より多くの放射が前記煙から反射」され、「受信ダイオード172の放射入射量は増加する」から、「受信ダイオード172」の「受光量」に応じて部屋の天井付近の空気に含まれる「煙」からの「反射」量を検出していると認められる。そして、引用発明は、「受光量」の違いによって、「部屋の天井付近の空気」が「煙」を含むものであるか、「煙」を含まない「清浄な空気」であるかを検知するものであるから、「空気」の状態を検知するもの、つまり、「ガスセンサ」であるといえる。
してみると、引用発明の「光学式煙アラーム110」は、本件補正発明の「前記量子型赤外線センサの赤外線の受光量に応じて、」「検出対象」を検出する「非分散赤外線」「ガスセンサモジュール」に相当する構成を備えるといえる。
キ 一致点、相違点
上記ア~カのとおりであるから、本件補正発明と引用発明とは、以下の(ア)の点で一致し、下記(イ)~(エ)の点で相違する。
(ア)一致点
「A 駆動電流に応じて赤外線を発光する赤外線発光ダイオードと、
B’赤外線を受光する量子型赤外線センサと、
C 前記駆動電流を前記赤外線発光ダイオードに出力する駆動回路と、
D 電源と接続され、前記駆動電流よりも電流量が小さい充電電流を出力する充電回路と、
E 前記充電回路から前記充電電流が供給されることで充電され、前記駆動回路へ前記駆動電流を供給することで放電するキャパシタと、
を備え、
H’前記量子型赤外線センサの赤外線の受光量に応じて、検出対象を検出する非分散赤外線ガスセンサモジュール。」
(イ)相違点1(構成Fについて)
本件補正発明は、「前記充電電流と充電時間の積は、前記駆動電流と駆動時間の積以上であ」ると特定されているのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。
(ウ)相違点2(構成Gについて)
駆動時間について、本件補正発明は、「100μs未満」であるのに対し、引用発明は「約100μs」である点。
(エ)相違点3(構成B’、H’について)
本件補正発明は、量子型赤外線センサが、検出対象ガスを「透過」した赤外線を受光し、「赤外線に対して吸収特性を有する前記検出対象ガスによる赤外線の吸収量を検出し、前記検出対象ガスの濃度を算出する」非分散赤外線吸収型ガスセンサモジュールであるのに対し、引用発明は、受信ダイオード172が、煙により「反射」された赤外線を受光する「煙」検知器である点。
(4)判断
ア 相違点について
(ア)相違点1
上記(3)エで述べたように、引用発明は「前記キャパシタは、前記トランジスタがOFF状態の間に充電され、前記トランジスタ152が前記LED154へ高電流パルスを供給するためにONに切り替わるとき、前記トランジスタ152およびLED154を通して放電され」るものである。
すなわち、引用発明は、キャパシタに充電された電荷量が、トランジスタをONに切り替えた後、LEDへ放電されるから、キャパシタへ充電される「充電電流」と「充電時間」の積で表される電荷量は、キャパシタからLED154へ供給される「駆動電流」と「駆動時間」の積で表される電荷量と等しい、又は、それ以上となることが当然想定される。
してみると、相違点1は、実質的な相違点ではない。
(イ)相違点2
引用発明の「トランジスタ152」は、「事前設定された時間間隔である10秒毎」に起動されるものである。また、引用発明は、「バッテリから過剰な電流を受け取ることなく」キャパシタを充電し、トランジスタがONに切り替わるときに、LED154が発光するのに必要な「高電流パルスを供給する」ものである。
ここで、「キャパシタ」から供給する「高電流パルス」に使用できる電荷量は、トランジスタがOFF状態の間に受け取るバッテリからの電流値と受け取る時間に依存するため、バッテリから受け取る電流値が低い場合には、「事前設定された時間間隔である10秒毎」に起動できる「高電流パルス」の「駆動時間」が制限されることは明らかである。
そうすると、「約100μs」とされる引用発明の「トランジスタ152」が起動する時間、すなわち「駆動時間」を、バッテリから受け取る電流値がより低い場合に対応できるように最適化し、「100μs」より少ない数値とすることは、当業者が適宜選択しうる事項である。
(ウ)相違点3
a 引用文献2記載の技術手段は「煙及び検知対象ガスの少なくとも一方を検知する検知装置であって、検知対象ガスの吸収波長を含む検査光を照射する発光素子と、前記検査光が前記煙により散乱されて生じる散乱光を受光する煙検知用受光素子とを有する煙検知手段と、前記発光素子と、前記検査光が前記検知対象ガスを透過した透過光を受光するガス検知用受光素子とを備えたガス検知手段とを設け、二つの異なる方式での火災検知において同一の光源を使用することにより、省電力で合理的な検知装置を実現し、発光素子11は、発光素子11は、一酸化炭素の吸収波長(1568nm)を含む検査光を照射する光源として構成される検知装置」である。
ここで、引用文献2記載の技術手段の「発光素子」は、本件補正発明の「発光ダイオード」に相当する。
また、引用文献2記載の技術手段の「ガス検知用受光素子」は、「吸収波長(1568nm)を含む」「検査光が前記検知対象ガスを透過した透過光を受光する」から、本件補正発明の、検出対象ガスを「透過した」赤外線を受光し、「赤外線に対して吸収特性を有する前記検出対象ガスによる赤外線の吸収量を検出」する「吸収型ガスセンサ」に相当する。
b 引用発明と引用文献2記載の技術手段とは、光学式煙検知器に関するものである点で、共通する技術分野に属するものであり、また引用発明の「煙」検知器と引用文献2記載の技術手段の「煙検知手段」とは、検査光が煙により散乱されて生じる散乱光を受光することにより煙を検知する点で、その機能が共通するものである。
そして、引用発明において、引用文献2記載の技術手段の「ガス検知用受光素子」を付加し、引用発明の「発光ダイオード」を「煙」検知器と「同一の光源」として使用し、「ガス検知用受光素子」とともに「ガス検知手段」を形成して、「煙及び検知対象ガスの少なくとも一方を検知する検知装置」とすることは、当業者が容易に想到しうることである。
また「検出対象ガスによる赤外線の吸収量を検出」した後、検出対象ガスの濃度を算出することは、どの程度の量の検出対象ガスが存在するかを検出するために、当業者が当然なし得ることである。
c 以上より、引用発明において、引用文献2記載の技術手段を適用し、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 効果について
本件補正発明により奏される効果も、引用発明、引用文献2記載の技術手段から当業者が予期し得るものであり、格別顕著なものではない。
ウ 請求人の主張について
請求人は、令和7年6月9日提出の審判請求書において、
「 ここで、引用文献1に記載された発明は、煙検知器に関する発明であり、LED154が発光したIR放射が煙によって反射され、受信ダイオード172が受信することによって煙を検知するものです(引用文献1の段落[0026]等)。したがって、煙が多いほど受信ダイオード172のIR放射の入射量が増加します。
一方で、本願発明は、非分散赤外線吸収型ガスセンサモジュールであり、検出対象ガスの濃度が濃い程、赤外線が検出ガスに多く吸収されます(本願の段落[0021]等)。したがって、検出対象ガスの濃度が濃い程、量子型赤外線センサ20が受光する赤外線の受光量は小さくなります。
すなわち、本願発明は、引用文献1に記載された発明とは、構成のみならずセンサの原理も全く異なるものであります。」
との主張をしているので、検討する。
上記ア(ウ)で述べたように、引用発明において、引用文献2記載の技術手段の「ガス検知用受光素子21」を付加し、「煙及び検知対象ガスの少なくとも一方を検知する検知装置」とすることは、当業者が容易に想到しうることであり、当該「ガス検知用受光素子21」は「吸収波長(1568nm)を含む」「検査光が前記検知対象ガスを透過した透過光を受光する」ものであるから、検知対象ガスの濃度が濃い程、受光する赤外線の受光量が小さくなることは、当業者が容易に想到し得た事項にすぎない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
(5)小括
以上より、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~8に係る発明は、令和7年1月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に示した請求項1の記載により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
理由1(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2013-529296号公報
3 引用文献の記載事項等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1に記載された発明(引用発明)は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
(1)本願発明は、上記第2の[理由]2で独立特許要件の検討をした本件補正発明において、「駆動時間」に関して、「100μs未満」から「100μs以下」に拡張し、本件補正発明における「前記量子型赤外線センサの赤外線の受光量に応じて、赤外線に対して吸収特性を有する前記検出対象ガスによる赤外線の吸収量を検出し、前記検出対象ガスの濃度を算出する非分散赤外線吸収型ガスセンサモジュール」を、「ガスセンサモジュール」と拡張したものである。
(2)本願発明と引用発明とを対比すると、前記第2の[理由]2(3)キで記載した相違点2、3は存在しないことになり、前記第2の[理由]2(4)アで述べたとおり、相違点1は実質的な相違点ではないから、本願発明は引用発明と差異はなく、また、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-008914