特許拒絶査定不服審判
2022-003123
アルカリ性洗剤の金属保護を強化するためのアミノカルボキシレートの使用
- 審判番号
- 2022-003123
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-207985外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月01日
- 審決日
- 2023年11月14日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (C11D) / P18 .537-Z (C11D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第50条の2、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-207985「アルカリ性洗剤の金属保護を強化するためのアミノカルボキシレートの使用」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 9日出願公開、特開2020- 56032〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)10月23日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2013年10月29日(以下「本件優先日」という。)(US)米国)を国際出願日とする特願2016-527223号の一部を、2017年(平成29年)10月17日に新たな特許出願とした特願2017-200954号の一部を、2019年(令和元年)11月18日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年12月17日 :手続補正書及び上申書の提出
令和3年 1月27日付け:拒絶理由通知書(特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知)
令和3年 5月26日 :意見書及び誤訳訂正書の提出
令和3年10月28日付け:令和3年5月26日に提出された誤訳訂正書による補正の却下の決定及び拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年11月 2日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 3月 1日 :審判請求書及び誤訳訂正書の提出
第2 令和4年3月1日に提出された誤訳訂正書による補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年3月1日に提出された誤訳訂正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 0.5質量%~90質量%の、炭酸塩を含むアルカリ源と;
0.3質量%~10質量%のキレート剤であって、クエン酸塩又はクエン酸を含む、キレート剤と;
1質量%~7.5質量%の界面活性剤であって、前記界面活性剤は、エトキシレート、プロポキシレート、又はエトキシレート及びプロポキシレートの両方である非イオン性界面活性剤である、界面活性剤と;
ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリル酸、これらのコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤と;
4質量%~20質量%の水と;
(i)15質量%~30質量%のシリケート、及び(ii)0.1質量%~3.5質量%のアミノカルボキシレートを含む、33.5質量%以下の金属保護成分であって、前記アミノカルボキシレートは、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、グルタミン酸-N,N-二酢酸(GLDA)、これらの塩、又はこれらの誘導体の一つ又は複数である、金属保護成分とを含む、固体アルカリ性洗剤組成物であって、
前記固体アルカリ性洗剤組成物は、キャスト固体、圧縮固体及び押出固体からなる群から選択される固体であり、
前記組成物は、漂白剤を含まず、
それぞれの成分の量は、その合計量が100質量%を超えないように選択される、固体アルカリ性洗剤組成物。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
令和4年3月1日にされた審判請求において、令和3年10月28日付け補正の却下の決定に対する不服申立はされていないから、当該補正の却下の決定は確定している。
そうすると、本件補正前の、特許請求の範囲は、令和元年12月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲により定められ、その請求項1の記載は次のとおりである。
「約0.5質量%~約90質量%の、炭酸塩を含むアルカリ源と;
約0.3質量%~約10質量%のキレート剤であって、クエン酸塩又はクエン酸を含む、キレート剤と;
約1質量%~約7.5質量%の界面活性剤であって、前記界面活性剤は、エトキシレート、プロポキシレート、又はエトキシレート及びプロポキシレートの両方である非イオン性界面活性剤である、界面活性剤と;
ホスホノカルボン酸、ホスホネート、ホスフェート、ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、腐食防止剤と;
約4質量%~約20質量%の水と;
シリケート、及びアミノカルボキシレートを含む金属保護成分と
を含む、固体アルカリ性洗剤組成物であって、
前記金属保護成分は前記洗剤組成物の33.5質量%以下を構成し、
前記シリケートの量は、約15質量%~約30質量%であり、
前記固体アルカリ性洗剤組成物は、キャスト固体、圧縮固体及び押出固体を含む群から選択される固体である、固体アルカリ性洗剤組成物。」
2 補正の適否
(1)補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ホスホノカルボン酸、ホスホネート、ホスフェート、ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、腐食防止剤」のうちの「ポリマー」について、「ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリル酸、これらのコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤」と成分及び量を限定するものであり、また、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「アミノカルボキシレート」について、「前記アミノカルボキシレートは、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、グルタミン酸-N,N-二酢酸(GLDA)、これらの塩、又はこれらの誘導体の一つ又は複数である」と成分を限定するものであり、また、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「固体アルカリ性洗剤組成物」について、「漂白剤を含まず」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する補正を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(2)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
(3)本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノカルボキシレートを用いたアルカリ性物品洗剤処方において、腐食を低減し、金属保護を提供するのに有効な洗剤組成物に関する。約9~12.5のアルカリ性条件において使用するための、洗剤組成物を使用し腐食を防止する方法が提供される。」
「【0005】
したがって、請求項に係る発明は、金属保護を改善し、微粒子の沈殿を低減し、及び有効な洗浄力を維持したアルカリ性洗剤組成物を開発することを目的とする。」
「【0033】
本発明の組成物
アミノカルボキシレート
本発明によれば、アミノカルボキシレートを用いて、硬水と組み合わせられて物品洗浄機械を詰まらせるおそれのあるアルカリ性洗剤からの沈殿物の蓄積を低減することを助ける。この問題の例は、炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムの蓄積であろう。出願人は、驚くべきことに、アミノカルボキシレートを使用することでこの問題が低減され、金属保護の増加にも繋がることを見いだした。従来の金属保護成分を低減した場合でさえもそうだった。したがって、本発明は、アルカリ性洗剤における金属保護及び沈殿を低減するため、一つ又は複数のアミノカルボキシレートを使用する。
【0034】
本発明において有用な適切なアミノカルボキシレートの例としては、生物分解可能なアミノカルボキシレートが挙げられる。これらは:エタノールジグリシン、例えばエタノールジグリシンのアルカリ金属塩、例えばエタノールジグリシン二ナトリウム(Na2EDG);メチルグリシン二酢酸、例えばメチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、例えばメチルグリシン二酢酸三ナトリウム;イミノジコハク酸、例えばイミノジコハク酸のアルカリ金属塩、例えばイミノジコハク酸ナトリウム塩;N,N-ビス(カルボキシラトメチル)-L-グルタミン酸(GLDA)、例えばN,N-ビス(カルボキシラトメチル)-L-グルタミン酸のアルカリ金属塩、例えばイミノジコハク酸ナトリウム塩(GLDA-Na.sub.4)・・・が挙げられる。
【0035】
洗浄組成物は、金属保護を補助し、水中の粒子の問題を低減して目詰まりを防止する程度に充分な量のアミノカルボキシレートを含むことができる。例えば、アミノカルボキシレートは、驚くべきことに、アルカリ性洗剤に暴露された金属の腐食を低減し、総溶解固形分を低減することができる。洗浄溶液中のアミノカルボキシレート及びその塩の適切な濃度としては、洗浄溶液の約0.01質量%~約7質量%が挙げられる。アミノカルボキシレート及びその塩の特に適切な濃度としては、洗浄溶液の約0.04質量%~約5質量%、又は洗浄溶液の約0.1質量%~約3.5質量%が挙げられる。」
「【0036】
アルカリ源
洗剤組成物はアルカリ源を含む。
例示的なアルカリ源としては、アルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属水酸化物が挙げられる。
【0037】
洗剤の処方中に使用されるアルカリ金属炭酸塩は、多くの場合灰分ベースの洗剤と呼ばれ、多くの場合炭酸ナトリウムを使用する。更なるアルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムが挙げられる。本発明の側面において、アルカリ金属炭酸塩は、メタシリケート、シリケート、重炭酸塩、及びセスキ炭酸塩を含むことが更に理解される。本発明によれば、あらゆる「灰分ベース」又は「アルカリ金属炭酸塩」は、全てのアルカリ金属炭酸塩、メタシリケート、シリケート、重炭酸塩、及び/又はセスキ炭酸塩を含むこともまた理解される。」
「【0040】
有効量の一つ又は複数のアルカリ源が洗剤組成物中に提供される。本明細書において、有効量とは、pHが少なくとも約9、好ましくは少なくとも約10である使用組成物を提供する量を意味する。使用組成物のpHが約9~約10であれば穏和なアルカリ性であると考えることができ、pHが約12より高ければ使用組成物は苛性であると考えることができる。いくつかの状況において、洗剤組成物は、例えば洗剤組成物の希釈率を増大させることにより、約9未満のpHレベルで有用な使用組成物を提供してもよい。一般に、濃縮物中に提供されるアルカリの量は、アルカリ性濃縮物の質量の少なくとも約0.05質量%であることができる。濃縮物中のアルカリ源は、好ましくは約0.05質量%~約99質量%、より好ましくは約0.1質量%~約95質量%、最も好ましくは0.5質量%~90質量%である。」
「【0041】
金属を保護するシリケート
本発明は、金属を保護するシリケートを含むこともできる。出願人は、本発明によるアミノカルボキシレートを用いて、この従来の物品洗浄組成物の成分を低減することができ、又は完全に除去することさえできることを見いだした。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において使用してもよいシリケートは、物品洗浄処方に従来から使用されてきたものである。例えば、典型的なアルカリ金属シリケートは、無水又は好ましくは水和水(5~25質量%、好ましくは15~20質量%の水和水)を含む、粉末、粒状、又は顆粒状のシリケートである。これらのシリケートはケイ酸ナトリウムであることができ、Na2O:SiO2比率がそれぞれ約1:1~約1:5であり、5~約25質量%の利用可能な結合水を典型的に含む。一般に、本発明のシリケートは、Na2O:SiO2比率が1:1~約1:3.75、好ましくは約1:1.5~約1:3.75、最も好ましくは約1:1.5~約1:2.5である。一つの例は、0.0066質量%~約0.1166質量%の割合である。Na2O:SiO2比率が約1:2であり、約16~22質量%の水和水を有するシリケートが適切である。
【0043】
例えば、そのようなシリケートは、PQ社から、GD Silicateとして粉末の形態で、及びBritesil H-20として顆粒状で入手可能である。これらの比率は、単一のシリケート組成物で得られてもよく、又はシリケートの組合せによって組み合せた結果として好ましい比率が得られてもよい。好ましい比率、Na2O:SiO2比率が約1:1.5~約1:2.5である水和シリケートは、最適な金属保護を提供し、固体ブロック洗剤をすばやく形成することがわかった。本発明の組成物を形成する際に使用するシリケートの量は、水和の程度によって、約5質量%~約40質量%、好ましくは約10質量%~約35質量%、より好ましくは約15質量%~約30質量%で変化する傾向がある。水和シリケートが好ましい。」
「【0045】
界面活性剤
洗剤組成物は、界面活性剤又は界面活性剤系を含む少なくとも1つの洗浄剤を含むことができる。様々な界面活性、例えばアニオン性、非イオン性、カチオン性、及び双性界面活性剤を、物品洗浄組成物に用いることができる。界面活性剤は洗剤組成物の任意の成分であり、除外することができることを理解すべきである。濃縮物中の界面活性剤の例示的な範囲としては、約0.05質量%~15質量%、より好ましくは約0.5質量%~10質量%、最も好ましくは約1質量%~7.5質量%が挙げられる。」
「【0048】
洗剤組成物において有用な非イオン性界面活性剤としては、例えば、界面活性剤分子の一部としてポリアルキレンオキシドポリマーを含むものが挙げられる。そのような非イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アルコールの、クロロ-、ベンジル-、メチル-、エチル-、プロピル-、ブチル-、及び他の同様のアルキルキャップしたポリエチレングリコールエーテル;ポリアルキレンオキシドを有しない非イオン性物質、例えばアルキルポリグリコシド;ソルビタン、及びスクロースエステル、及びこれらのエトキシレート;アルコキシル化エチレンジアミン;アルコールアルコキシレート、例えばアルコールエトキシレートプロポキシレート、アルコールプロポキシレート、アルコールプロポキシレートエトキシレートプロポキシレート、アルコールエトキシレートブトキシラートなど;
ノニルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレングリコールエーテルなど;カルボン酸エステル、例えば、グリセロールエステル、ポリオキシエチレンエステル、脂肪酸のエトキシレート及びグリコールエステルなど;カルボン酸アミド、例えばジエタノールアミン縮合物、モノアルカノールアミン縮合物、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなど;並びに、ポリアルキレンオキシドブロックコポリマー、例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、例えば商標PLURONIC(登録商標)(BASF-Wyandotte社)の下で商業的に入手可能なもの等;並びに、他の同様の非イオン性化合物が挙げられる。シリコーン界面活性剤、例えばABIL(登録商標)B8852もまた使用することができる。」
「【0052】
キレート剤
本発明の組成物は、組成物全体の0.1質量%~20質量%、好ましくは0.2質量%~15質量%、より好ましくは0.3質量%~10質量%の濃度でキレート剤を含むこともできる。本明細書においてキレート化とは、二座又は多座配位子の結合又は錯化を意味する。多くの場合有機化合物であるこれらの配位子は、キレート剤(chelants)、キレート剤(chelators)、キレート剤(chelating agents)、及び/又は封鎖剤と呼ばれる。キレート剤は、単一の金属イオンと多重結合を形成する。キレート剤は、特定の金属イオンと可溶性の錯体分子を形成して、それらが他の元素又はイオンと通常に反応して沈殿物又はスケールを生じることができないように、イオンを不活性化する化学品である。配位子は基材とキレート錯体を形成する。この用語は、金属イオンがキレート剤の二つ以上の原子と結合する錯体を意味する。本発明において使用されるキレート剤は、結晶成長阻害特性、すなわち小さな炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム粒子と相互作用して、これらが硬いスケールの堆積へと凝集することを防止する特性を有するものである。粒子は互いに反発して水中に懸濁したままであるか、又は沈殿することがあるゆるい凝集を形成する。これらのゆるい凝集は容易にすすぎ落とされ、堆積を形成しない。」
「【0056】
他のキレート剤としては、ポリカルボン酸のホモポリマー及びコポリマー、及びそれらの部分的又は完全に中和された塩、モノメリックポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸、並びにこれらの塩が挙げられる。上述の化合物の好ましい塩は、アンモニウム塩及び/又はアルカリ金属塩、すなわちリチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩であり、特に好ましい塩はナトリウム塩である。
【0057】
適切なポリカルボン酸は非環式、脂環式、複素環式、及び芳香族のカルボン酸であり、この場合、少なくとも2つのカルボキシル基を含み、これらはいずれの場合においても好ましくは2以下の炭素原子によって互いに分離している。2つのカルボキシル基を含むポリカルボキシレートとしては、例えば、マロン酸、(エチレンジオキシ)二酢酸、マレイン酸、オキシ二酢酸、酒石酸、タルトロン酸、及びフマル酸の水溶性塩が挙げられる。3つのカルボキシル基を含むポリカルボキシレートとしては、例えば水溶性クエン酸塩が挙げられる。対応して、適切なヒドロキシカルボン酸は、例えばクエン酸である。他の適切なポリカルボン酸は、アクリル酸のホモポリマーである。末端がスルホネートによってキャップされたポリカルボキシレートが好ましい。」
「【0061】
腐食防止剤
洗剤組成物は腐食防止剤を含んでもよい。一般に、腐食防止剤成分は、一旦少なくとも8.0のpHにさらされると、カルシウムをゆるく保持し、(これをアルカリ源として使用したときに)あらゆる炭酸カルシウムの沈殿を低減すると考えられる。
【0062】
例示的な腐食防止剤としては、ホスホノカルボン酸、ホスホネート、ホスフェート、ポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。・・・例示的なポリマーとしては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、スルホン酸化ポリマー、コポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。混合物は、同一の一般分類の中の異なる酸置換ポリマーの混合物を含むことができることを理解すべきである。更に、酸置換ポリマーの塩を用いることができることを理解すべきである。・・・ポリマーを使用することが好ましい。」
「【0068】
水
洗剤組成物は水を含む。多くの水は、組成物に独立して加えられてもよく、又は組成物に加えられる水性材料中に存在する結果として組成物中に提供されてもよい。例えば、組成物に加えられる材料は、水を含むか、又は一つ若しくは複数の固化剤成分との反応に利用できる水性プレミックス中で調製してもよい。典型的に、水を組成物に導入して、固化の前に所望の粘度を有する洗剤組成物を提供し、所望の固化速度を提供する。」
「【0071】
他の添加剤
洗剤組成物は、他の添加剤、例えば漂白剤、洗剤ビルダー、硬化剤、又は溶解性調節剤、消泡剤、抗再析剤、閾値剤、安定剤、分散剤、酵素、美的強化剤(すなわち、染料、香料)等を含むことができる。補助剤及び他の添加剤成分は、製造されている組成物の種類によって様々であろう。これらの添加剤は任意であり、洗浄組成物中に含まれる必要はないことを理解すべきである。含まれる場合、それらは特定種類の成分の効果を提供する量で含まれることができる。」
「【0084】
処理されて洗剤を形成する成分をブロックへと処理する場合、成分は、押出、キャスト、又は圧縮固体技術によって処理することができると考えられる。一般に、成分を押出技術によって処理する場合、組成物は、キャスト技術に比べて比較的少量の水を処理のための補助として含むことができると考えられる。一般に、押出によって固体を調製する場合、組成物は、約2質量%~約10質量%の水を含むことができると考えられる。キャストによって固体を調製する場合、水量は約20質量%~約50質量%の量で提供することができると考えられる。」
「【0101】
本発明のサンプル処方
全ては組成物の重量パーセントである。本明細書に記載の更なる成分は、組成物の0.001~約15質量%の量であることができる。
【0102】
[図:0001408258000001.jpg]
」
「【0104】
本発明の実施形態を、以下の非限定的な例において更に定める。これらの例は、本発明の特定の実施形態を示すと共に、単に説明としてのみ示すことを理解すべきである。上記の議論及びこれらの例から、当業者であれば、本発明の基本的な特性を確認することができ、これらの精神及び範囲を逸脱することなく、本発明の実施形態の様々な変更及び変形を行い、様々な用途及び条件に適応させることができる。したがって、本明細書に示し記載するものに加えて、本発明の実施形態の様々な変形は、前述の記載から、当業者にとって明らかである。そのような変更態様もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。
【0105】
例1
Pluronic LF221は、BASF社から商業的に入手可能な、エチレン/プロピレンオキシドブロックコポリマー界面活性剤である。
【0106】
Pluronic N-3は、BASF社から商業的に入手可能な、エチレン/プロピレンオキシドブロックコポリマー界面活性剤である。
【0107】
Acumer 5000は、Dow社から商業的に入手可能なケイ酸マグネシウムポリマーである。
【0108】
Versaflex Siは、Akzo Nobel社から商業的に入手可能なアクリルコポリマーである。
【0109】
Acusol 425、929、及び445Nは、Dow社から入手可能なアクリル酸コポリマーである。
【0110】
Belclene 200は、BioLab Water Additives社から商業的に入手可能なポリマレイン酸ポリマーである。
【0111】
Ecolab社から商業的に入手可能な、アミノカルボキシレートを有しないアルカリ性物品洗浄洗剤Apex Metalを含む本発明による組成物、本発明のアミノカルボキシレートを有する組成物、他の金属保護成分であるVersaflx Siを有する組成物及びAcumer 5000を有する組成物を作製した。各例において、金属保護シリケートの一部を異なる金属保護成分で置換した。以下の方法によるマルチサイクルアルミニウム腐食防止評価でそれぞれを試験した。
【0112】
業務用物品洗浄洗剤又はすすぎ補助剤のための、マルチサイクルアルミニウム腐食防止評価
【0113】
目的:
業務用食器洗浄機におけるアルミニウムパンの腐食を評価する一般的な方法を提供すること。手順は、試験処方、Ecolab社製品、及び競合製品を評価するために用いた。
【0114】
装置及び材料:
1.適切な水供給源に繋いだ業務用食器洗浄機。
2.ラバーンパンラック(Raburn pan rack)。
3.13インチ×18インチのパンを半分に切ることによって得た13インチ×9インチのアルミニウムシートパン。
4.天秤
5.試験を完了するのに十分な洗剤。
【0115】
調製:
1.暖かい石鹸水及び非摩耗性スポンジでアルミニウムパンを軽く洗浄して、切断及び保存からのあらゆる異物又は残留物を確実に除去した。
2.所望の種類の水:都市水、軟水、又は井戸水を食器洗浄機に充填し、ヒーターを付けた。
3.最終的なすすぎ温度を、高温機のための180°F(約82.2℃)に設定した。
4.所望の洗剤濃度で物品洗浄機をプライミングした。
5.枠が下、及び切った端が上を向くように、第2スロット内にパンを正面から置いた。
6.機械を始動させた。パンラックを機械へ押し込み、サイクルを開始した。
7.各々のサイクルの初めに適切な量の洗剤を洗浄タンクに加えて、すすぎの希釈を補った。
8.所望のサイクル数が完了するまで工程6及び7を繰り返した。
9.試験処方の比較のための標準的なEcolab社洗剤又はすすぎ補助剤を試験した。
【0116】
評価結果:
パンを視覚的に、及び黒色背景に対して撮影して評価した。使用したスケールの評価は以下のとおりであり、それぞれのパンの正面及び背面について同じであった。
【0117】
評価 フィルム
1 腐食又は変色なし
2 約25%のパンが変色及び/又は腐食した。
3 約50%のパンが変色及び/又は腐食した。
4 約75%のパンが変色及び/又は腐食した。
5 全て又はほぼ全てのパンがひどく変色及び/又は腐食した。
【0118】
結果を下表1に示す。
【0119】
[図:0001408258000002.jpg]
【0120】
例2
分配システム試験は、ディスペンサーの詰まりを再現するよう設計されている。分配組立体は、複数のディスペンサーを並んで有し、同時に複数の製品を分配するスタンドである。ディスペンサー内の洗剤ブロックは、底面から吹き付けられ、流体は管を通ってディスペンサーからドレインへと流れる。最初の試験パラメータは、17グレイン水、華氏85~95度(約29.4℃~約35℃)の温度、スプレー時間は5分間オン及び20分間オフに設定した。分配時間を、試験残り14日の後、2分間オン及び40分間オフのスプレー時間に変えた。試験は90日間行い、合計52個の洗剤ブロックを分配した。結果を、下記の表2に示す。
【0121】
【表3】
[図:0001408258000003.jpg]
」
(4)独立特許要件1(特許法第36条第6項第1号(サポート要件))について
ア 判断手法
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号の要件(以下「サポート要件」という。)に適合するか否かについては、特許請求の範囲と本願明細書の発明の詳細な説明を対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、上記判断基準に基づいて、本件補正後発明が、サポート要件に適合するか、以下、検討する。
イ 本件補正発明の課題
本件補正発明の課題は、明細書の【0005】から、「金属保護を改善し、微粒子の沈殿を低減し、及び有効な洗浄力を維持したアルカリ性洗剤組成物を提供すること」と認められる。
ウ サポート要件適合性
本願明細書の発明の詳細な説明には、実施例として、【0111】に、「Ecolab社から商業的に入手可能な、アミノカルボキシレートを有しないアルカリ性物品洗浄洗剤Apex Metalを含む本発明による組成物」、「本発明のアミノカルボキシレートを有する組成物」、「他の金属保護成分であるVersaflx Siを有する組成物」、「Acumer 5000を有する組成物」を作製し、「各例において、金属保護シリケートの一部を異なる金属保護成分で置換した」ことが記載され、【0119】、【0121】に、組成物の説明として「シリケートに加えてアミノカルボキシレートを使用した金属保護処方。」という説明がされた例が、アルミニウム腐食防止及びディスペンサーの詰まり防止の点で良好な結果であったことが記載されている。しかしながら、各組成物における「シリケート」及び「アミノカルボキシレート」の具体的な化合物名及び配合割合、その他の配合成分名及び配合割合が記載されていないため、実施例として用いられた各組成物、すなわち、前記アの「発明の詳細な説明に記載された発明」が、本件補正発明の発明特定事項を満たす洗剤組成物であるか否かを確認することができない。したがって、前記アの「特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で」あるといえない。そうすると、明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例の実験データに基づいては、本件補正発明の洗剤組成物が、前記イに記載した課題を解決できるものであると認識することはできない。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の記載における実施例以外の記載を見ても、本件補正発明の洗剤組成物が、前記イに記載した課題を解決できることが作用機序の説明等によって記載されているとはいえず、また本件補正発明の洗剤組成物が前記課題を解決できることが技術常識であるともいえない。
そうすると、本件補正発明は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に照らして、上記した課題を解決できると認識できる範囲のものということはできない。
したがって、本件補正発明の記載は、明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものではない。
エ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書において、本願明細書の実施例1と2の結果から、「このように、本願明細書の実施例は、本発明におけるアミノカルボキシレートとシリケートの組み合わせが、引用文献に開示されていない驚くべき利点と改善をもたらすことを示しています。」と主張している。そして、実施例1と2について、【0119】、【0121】の表に記載の組成物についての説明には、「シリケートに加えてアミノカルボキシレートを使用した金属保護処方。」という説明がされた実験が、「対照-シリケートのみを使用した現行の金属保護処方。」という説明がされた実験等と比較してアルミニウム腐食防止及び詰まり防止の点で良好な結果であることが記載されている。
しかしながら、「シリケートに加えてアミノカルボキシレートを使用した金属保護処方。」において、「シリケート」及び「アミノカルボキシレート」として用いた具体的な化合物名が不明である。「本発明のアミノカルボキシレート」とは、第2の2(3)に摘記した本件明細書の段落【0033】~【0034】に記載されたように生分解性の化合物が好ましいとされているものの、生分解性の化合物とは限らない。また、「シリケートに加えてアミノカルボキシレートを使用した金属保護処方。」において、「シリケート」及び「アミノカルボキシレート」の含有割合が不明であり、さらに「シリケート」及び「アミノカルボキシレート」以外の他の成分名及び含有割合も不明であることから、実施例1と2の結果から、本願発明が前記本願発明の課題を解決できるものとも認識できない。
(イ)また、審判請求人は、審判請求書において、本願明細書の【0102】に、「「本発明のサンプル処方」を含む表を提供し、さらに「最も好ましい」範囲を開示して」いることから、「実施例1及び2で評価された本発明の組成物は、段落0102の「本発明のサンプル処方」に記載された範囲に対応していることは明らかです。」と主張するとともに、「明細書段落0105~0110に記載された特定の商品名と組み合わせて、また、段落0111に記載されているように、実施例の組成物は、「Ecolab社から商業的に入手可能な、アミノカルボキシレートを有しないアルカリ性物品洗浄洗剤Apex Metal」の処方を用いて調製されていることと合わせて、明細書段落0102の表を参照することで、当業者であれば、使用された最も好ましい濃度に加えて、実施例で検討された各成分、すなわち、アルカリ源、キレート剤、界面活性剤(すなわち、Pluronic LF221、Pluronic N-3)、腐食防止剤(Acusol 425、929、445N、Belclene 200)、シリケート、アミノカルボキシレート、および水を特定することができます。」と主張している。
しかしながら、本願明細書に「実施例1及び2で評価された本発明の組成物」が「段落0102の「本発明のサンプル処方」に記載された範囲」のものであるとの記載はないから、審判請求人の「実施例1及び2で評価された本発明の組成物は、段落0102の「本発明のサンプル処方」に記載された範囲に対応していることは明らかです。」との主張には根拠がない。そもそも、実施例は【0102】に記載された範囲が本願発明の効果を奏することを確認するために、具体的な成分や配合比を特定して実施されるべきものであるところ、そのような確認ができない実施例1及び2は、公開すべき情報を開示しないようにしたものであるから、【0102】に好ましい配合割合の範囲が記載されていても、実施例1、2の組成物において具体的な化合物の種類や配合割合が記載されていない以上、実施例の組成物が【0102】に記載の配合割合で製造されているとは限らない。また成分についても、「Ecolab社から商業的に入手可能な、アミノカルボキシレートを有しないアルカリ性物品洗浄洗剤Apex Metal」がいかなる成分及び配合割合であるか不明であることから、実施例1、2の組成物における具体的な成分名及び配合割合は明らかではない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。
(5)独立特許要件2(特許法第29条第2項(進歩性))について
ア 引用文献の記載事項及び引用発明
(ア)引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2006-296470号公報(以下、「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】
(A)アルカリ剤40~80重量%、(B)有機ホスホン酸塩0.5~10重量%、(C)低泡性ノニオン界面活性剤0.5~5重量%を含有し、(A)が(A1)M2O/SiO2=1/1~1/3(重量比)である珪酸アルカリ金属塩(Mはアルカリ金属)及び(A2)炭酸アルカリ金属塩を含み、(A1)/(A2)=1/0.2~1/2(重量比)であり、(A)/(B)=4~100(重量比)である洗浄剤組成物から調製された洗浄液により、食器類を10秒~3分で洗浄する、食器類の洗浄方法。
・・・
【請求項6】
前記洗浄剤組成物が、更に、(D)高分子カルボン酸又はその塩を含有する請求項1~5の何れか1項記載の食器類の洗浄方法。
・・・
【請求項8】
(C)低泡性ノニオン界面活性剤が、一般式(1)で表される請求項1~7の何れか1項記載の食器類の洗浄方法。
HO-(PO)x-(EO)y-(PO)z-H (1)
〔式中、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示し、x及びzはプロピレンオキシドの平均付加モル数を示し、何れも0を超える数であり、x+zは10~50の数であり、yはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、2~50の数である。〕
【請求項9】
(D)高分子カルボン酸又はその塩が、重量平均分子量2,000~15,000のポリアクリル酸又はその塩及び重量平均分子量5,000~80,000のアクリル酸-マレイン酸コポリマー又はその塩から選ばれる1種以上である請求項6~8の何れか1項記載の食器類の洗浄方法。
【請求項10】
(A)アルカリ剤40~80重量%、(B)有機ホスホン酸塩0.5~10重量%、(C)低泡性ノニオン界面活性剤0.5~5重量%を含有し、(A)が(A1)M2O/SiO2=1/1~1/3(重量比)である珪酸アルカリ金属塩(Mはアルカリ金属)及び(A2)炭酸アルカリ金属塩を含み、(A1)/(A2)=1/0.2~1/2(重量比)であり、(A)/(B)=4~100(重量比)である食器用洗浄剤組成物。」
「【0035】
<任意成分>
本発明に用いられる洗浄剤組成物には、任意成分として、キレート剤〔以下、(E)成分という〕、次亜塩素酸塩や塩素化イソシアヌル酸塩などの有効塩素放出成分、脂肪酸やリン酸エステル類、シリコーン系消泡剤等の消泡剤、酵素、色素や染料、香料等の食器洗浄剤に一般的に配合される成分を含んでもよい。また、液体型の製品形態をとる場合は、可溶化剤としてカプリル酸ナトリウム等の中鎖脂肪酸アルカリ金属塩やプロピレンクリゴール等のグリコール系溶剤を併用すると透明安定な製品外観が得られる。(E)成分のキレート剤は、(B)成分、(D)成分以外のキレート剤であり、具体的には、クエン酸塩に代表されるヒドロキシカルボン酸塩、ニトリロトリカルボン酸(NTA)塩、エチレンジアミンテトラカルボン酸(EDTA)塩等のアミノカルボン酸塩、トリポリリン酸塩等の縮合リン酸塩等が挙げられる。中でも好ましくはクエン酸塩、NTA塩、EDTA塩、トリポリリン酸塩である。塩はナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0036】
洗浄剤組成物は、液体型または、固体若しくは粉末型の形態をとり、液体型の場合はバランス量の水が配合される。固体若しくは粉末型の場合は、増量剤として硫酸アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩などを含んでもよい。」
「【0045】
洗浄剤組成物の形態が固形や粉末状である場合は、溶解性を考慮することが肝要である。洗浄液の洗浄剤組成物濃度が規定濃度を下回り、そのシグナルを受信した時、洗浄剤組成物の溶解性が良い、即ち溶解速度が速いと、洗浄剤組成物濃厚液の供給が速やかとなり、洗浄液中の適正な洗浄剤組成物濃度が維持され、食器類の洗浄性が適正となる。通常、洗浄剤組成物濃厚液作製の際の条件としては、水より温水を用いることが好ましく、流量も小さいより大きい方が好ましい。また、洗浄剤組成物の形態は、溶解性の観点から、結合剤等の形態加工成分の配合、及びタブレット化やブロック化等、洗浄剤組成物の緻密化工程は注意する必要がある。一般的には、高分子量ポリエチレングリコール等の結合剤を含み、緻密化工程により形態加工されたタブレット状やブロック状の洗浄剤組成物よりも、各成分を混合したままの粉末や粒状等の形態の方が、冷水や低圧水条件での溶解性の点で有利である。」
「【0051】
<試験例>
表1、2に示す洗浄剤組成物について以下の評価を行った。これらの洗浄剤組成物は、表1、2に示す(A)~(E)成分に硫酸ナトリウムを加えて100重量%とした後、均一になるまで混合して製造されたものである。(A)~(B)成分は含水品であるため、有効分は水を除いたものとして計算できる。
【0052】
(1)アルミニウム腐食試験(非腐食性の評価)
アルミニウム材質のテストピース(日本テストパネル社製、A1050P、20mm×50mm×1mm)を予め中性洗剤で洗浄しアセトン処理して乾燥させたもの使用する。水道水で表1、2に示す洗浄剤組成物を0.1重量%に希釈した洗浄剤希釈液を50mL容プラスティック容器に50g収容する。
【0053】
テストピースの全体が洗浄剤希釈液と接触するよう浸漬させてキャップし、室温にて24時間保存する。24時間後テストピースを取り出し、イオン交換水にてすすいだ後乾燥させて、テストピース表面の状態を目視観察し、以下の判定基準で非腐食性を評価した。
【0054】
判定基準
○;変化を認めず
△;白く変色した部分が認められる
×;茶若しくは黒く変色した部分が認められる
【0055】
(2)スケール付着試験(スケール防止性の評価)
ステンレス材質のテストピース(日本テストパネル社製、JIS G4305、15×40×1mm)及びスライドグラス(松浪ガラス工業社製、26mm×76mm×1mm)を予め中性洗剤で洗浄しアセトン処理して乾燥させたもの使用する。水道水で表1、2に示す洗浄剤組成物を0.1重量%に希釈した洗浄剤希釈液を100mL容プラスティック容器に100g収容する。
【0056】
テストピースの全体が洗浄剤希釈液と接触するよう浸漬させて、600度(ドイツ硬度換算)に調整したCa/Mg硬水を2mL添加してキャップし、60℃乾燥機にて24時間保存する。24時間後テストピースを取り出し、イオン交換水にてすすいだ後乾燥させて、テストピース表面の状態を目視観察する。併せて、0.1mgまで秤量可能な天秤で、浸漬前と浸漬(乾燥)後のテストピースの重量を測定し、差分にてスケール付着量を求める。テストピース表面の状態、及びスケール付着量から、以下の判定基準でスケール防止性を評価した。なお、Ca/Mg硬水は、塩化カルシウム(無水)9.5gと塩化マグネシウム(6水和物)4.34gをイオン交換水1Lに溶かし600度としたものである。
【0057】
判定基準
○;スケール付着を認めない(スケール付着量:0.0mg)
△;微量のスケール付着を認める(スケール付着量:0.1~0.5mg)
×;明らかにスケール付着を認める(スケール付着量:0.5mg超)
【0058】
(3)洗浄力評価
水道水で表1、2に示す洗浄剤組成物を0.1重量%に希釈した洗浄剤希釈液のpH(25℃)及びアルカリ度を測定して以下の判定基準により洗浄力を評価した。なお、アルカリ度は、NaOH換算の濃度(ppm)として評価したものであり、洗浄剤希釈液100gをビーカーに計量し、フェノールフタレイン(1%エタノール溶液)指示薬を数滴添加して赤色にしてから、0.1N塩酸にて赤色が消滅するまで滴定し、滴定量から次式にて算出した。
アルカリ度(NaOHppm)=滴定量(mL)×〔0.4/100(g)〕×10000
【0059】
判定基準
◎;pHが12超、且つNaOH濃度が350ppm超
○;pHが11以上12以下、且つNaOH濃度が220ppm以上350ppm以下
△;pHが11以上12以下、且つNaOH濃度が220ppm未満
×;pHが11未満、且つNaOH濃度が220ppm未満
【0060】
【表1】
[図:0001408258000004.jpg]
【0061】
【表2】
[図:0001408258000005.jpg]
【0062】
(注)表中の成分は以下のものである。
*1:品名粉末珪酸ソーダ1号、日本化学工業(株)、Na2O/SiO2=1/2、22.5重量%含水品
*2:品名ドライメタケイソー5aq、広栄化学工業(株)、Na2O/SiO2=1/1、42.5重量%含水品
*3:品名ネオーオルソ80粒、広栄化学工業(株)、Na2O/SiO2=2/1、20重量%含水品
*4:品名DEQUEST2006、ソルーシア・ジャパン(株)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム塩、有効分40重量%
*5:品名DEQUEST2016、ソルーシア・ジャパン(株)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸4ナトリウム塩、有効分30重量%
*6:品名プルロニックPE6100、BASF・ジャパン(株)、エチレンオキシド・プロピレンオキシド・エチレンオキシドコポリマー、重量平均分子量2000、エチレンオキシドモル分率10%
*7:品名プルロニックRPE2520、BASF・ジャパン(株)、プロピレンオキシド・エチレンオキシド・プロピレンオキシドコポリマー、重量平均分子量3100、エチレンオキシドモル分率20%
*8:品名ソカランCP5、BASF・ジャパン(株)、アクリル酸-マレイン酸コポリマーナトリウム塩、アクリル酸/マレイン酸=7/3(モル比)、重量平均分子量70000
*9:品名アクアリックDL-100、(株)日本触媒、アクリル酸ポリマーナトリウム塩、重量平均分子量3500
【0063】
<実施例1及び比較例1>
表1、2の本発明品1、10、比較品5を用いて次の条件により洗浄性評価を行った。結果を表3に示す。
【0064】
(1)モデル汚垢の作製
直径約20cmの陶磁器製皿の中央部に、卵黄2gを刷毛で直径約16cmの円形に均一塗布し、80℃に設定した電気乾燥機に入れる。30分後、卵黄を塗布した皿を取り出して、自然冷却したものをモデル汚垢として洗浄性評価に用いた。
【0065】
(2)洗浄性評価
ドア型の業務用食器洗浄機〔三洋電機(株)製 SANYO DR53〕に60℃の温水を導入し、洗浄剤組成物(本発明品1、10、又は比較品5)を38g計量し投入した。洗浄浴槽は、約38Lであり、洗浄液中の洗浄剤組成物濃度は約0.1重量%であった。専用ラックにモデル汚垢の皿2枚をセットして、5秒、1分、2分、5分と洗浄時間を変動させて、洗浄液タンクで調製された洗浄液を循環して流量280L/分でスプレーノズルより噴射し洗浄した。洗浄後、80℃の温水2.6Lを、スプレーノズルより8秒で噴射し、すすぎを行った。すすぎ水は循環させずに用いた。洗浄された皿を、エリスロシン色素1重量%水溶液にて着色させて以下基準にて判定した。
【0066】
判定基準
◎;着色痕は全く認められず、完全に汚れが除去された
○;僅かな着色痕を認めるが、殆どの汚れが除去された
△;明らかに着色痕を認め、半量程度の汚れが残留している
×;殆どに着色痕が認められ、若干程度にしか除去されていない
【0067】
【表3】
[図:0001408258000006.jpg]
【0068】
実施例1-1~1-3は、洗浄時間1分、2分で良好な洗浄性が得られた。しかし、比較例1-1の洗浄時間5秒では、洗浄効果が殆ど発現しなかった。比較例1-2~1-3は、1分、2分でも洗浄性不良であった。参考例として、5分まで洗浄時間を延長させれば良好な洗浄性が得られたが、洗浄回数が非常に多い業務用の場合は、非効率的で実用化できない。」
(イ)引用文献4の【0060】表1に記載された「本発明品9」に注目すると、引用文献4には、「「珪酸ナトリウム1号」15重量%、「メタ珪酸ナトリウム」25重量%、「炭酸ナトリウム」」30重量%、「ATMP」7.5重量%、「PEPコポリマー」1重量%、「AA/AMコポリマー」2重量%、「EDTA4Na・2H2O」10重量%、「硫酸ナトリウム」9.5重量%を含む洗浄剤組成物」の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明」という。)。
(ウ)引用文献6
原査定の拒絶の理由で引用された、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2011-508821号公報(以下、「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】
(a)生分解性アミノカルボキシレートと、
(b)炭酸ナトリウムと、
(c)水と、
を含んで成る、凝固マトリックスであって、
(d)該凝固マトリックスが、水和物の固体である、凝固マトリックス。
・・・
【請求項5】
生分解性アミノカルボキシレートが、エタノールジグリシン二ナトリウム、メチルグリシン三ナトリウム二酢酸三ナトリウム塩溶液、イミノジコハク酸ナトリウム塩溶液、L-グルタミン酸、二酢酸四ナトリウム塩、およびエチレンジアミンジコハク酸三ナトリウム、および3-ヒドロキシ-2、2’-イミノジコハク酸四ナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の凝固マトリックス。」
「【0012】
アミノカルボキシレートは、洗剤組成物中に取り込まれる前に水と混合され、そして水溶液中、例えば、液体予混合物中で溶媒和する固体水和物(solid hydrate)としてまたは固体塩(solid salt)として提供されることができる。しかし、アミノカルボキシレートが、洗剤組成物を効果的に凝固させるために、洗剤組成物に加えられる場合、アミノカルボキシレートは、水マトリックス中にあることが好ましい。一般的に、アミノカルボキシレートの有効量は、水の速度および動きを制御することにより、凝固システムを動力学的および熱力学的に効果的に制御する量と考えられている。特に好適なアミノカルボキシレートの例は、生分解性アミノカルボキシレートを含むがこれらに限られない。特に好適な生分解性アミノカルボキシレートの例は、Na2EDG、エタノールジグリシン二ナトリウム(disodium ethanoldiglycine);メチルグリシン三ナトリウム二酢酸三ナトリウム塩溶液(trisodium methylglycine diacetic acid trisodium solution);イミノジコハク酸ナトリウム塩溶液(iminodisuccinic acid sodium salt solution);GLDA-Na4、N、N-ビス(カルボキシラトメチル)-L-グルタミン酸四ナトリウム(tetrasodium N,N-bis(carboxylatomethyl)-L-glutamate);EDDS、[S-S]-エチレンジアミンジコハク酸(ethylenediaminedisuccinic acid);および3-ヒドロキシ-2、2’-イミノジコハク酸四ナトリウム(tetrasodium 3-hydroxy-2,2-iminodisuccinate)を含むがこれらに限られない。特に好適な市販されている生分解性アミノカルボキシレートの例は、Dow Chemical、Midland、MIから入手可能であるVersene HEIDA(52%);BASF Corporation、Charlotte、NCから入手可能であるTrilon M(40%);Lanxess、Leverkusen、Germanyから入手可能であるIDS;Akzo Nobel、Tarrytown、NJから入手可能であるDissolvine GL-3(38%);Octaquest(37%);およびInnospec Performance Chemicals(Octe Performance Chemicals)、Edison、NJから入手可能であるHIDS(50%)を含むがこれらに限られない。」
「【0072】
Trilon M、40%:BASF Corporation、Charlotte、NCから入手可能であるメチルグリシン三ナトリウム二酢酸三ナトリウム塩溶液。」
「【0080】
表1は、例1、2、3,4,5および6ならびに比較例Aの組成物での成分濃度を示す。
表1
【表1】
[図:0001408258000007.jpg]
」
(エ)引用文献8
原査定の拒絶の理由で引用された、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2002-544324号公報(以下、「引用文献8」という。)には、次の記載がある。
「【0002】
本発明は、粉末、ペレット、レンガ状塊または固体ブロック洗浄剤(detergent)の形をとることが可能な、洗濯物、器物洗浄、CIP、硬表面等の洗浄剤組成物に関する。本洗浄剤組成物の各物理的実施形態は、分配および販売のために適切な包装システム中に包装することが可能である。一般に、本洗浄剤組成物は、アルカリ源と、汚れ除去を実質的に改善すると共に特に多くの汚れ場所に共通的な澱粉質汚れ、ワックス性の脂肪汚れおよび蛋白汚れの汚れ除去を改善する改善された界面活性剤パッケージとを含む。本洗浄剤組成物は、工業的器物洗浄用途において用いるために特に適する。」
「【0009】
同様に、ヘイルらにおいて、無水カルボネート塩または無水スルフェート塩は、一水和物固体、七水和物固体および十水和物固体の部分を含む約55℃の融点を有する水和物を形成するプロセスにおいて水和される。カルボネート水和物は、同様に、固体ブロック多成分洗浄剤を製造するためにファーンホルツらの苛性アルカリ水和物向けに用いられる。こうした溶融プロセスの他の例には、モーガンソン(Morganson)による米国特許第4,861,518号が挙げられ、それには、溶融物を形成するために約38℃より高い範囲の温度で、ポリエチレングリコール等の硬化剤と合わせてイオンおよび非イオン界面活性剤系を加熱することにより形成される固体浄化コンセントレートが開示されている。こうした溶融物は他の原料と混合されて、均質分散液が形成され、その後、その均質分散液は型に注いで硬化させる。モーガンソンらによる米国特許第5,080,819号には、汚れ除去を強化するのに有効な浄化量の非イオン界面活性剤を用いて低温器物洗浄温度で用いるようにされた高度にアルカリ性のキャスト固体組成物が教示されている。グラドフェルター(Gradfelter)による米国特許第5,316,688号には、水溶性または水分散性のフィルム包装中にラップされた固体ブロックアルカリ洗浄剤組成物が教示されている。
【0010】
固体ペレット化材料は、グラドフェルターによる米国特許第5,078,301号、第5,198,198号および第5,234,615号ならびにガンサー(Gansser)による米国特許第4,823,441号および第4,931,202号に示されている。こうしたペレット化材料は、一般に、溶融液体を押出すことにより、あるいは粉末を錠剤またはペレットに圧縮することにより製造される。押出非溶融アルカリ洗浄剤材料は、グラドフェルターらによる米国特許第5,316,688号において開示されている。」
「【0088】
本発明の組成物と合わせて硬化剤として使用できるその他の組成物には、カルバミドとしても知られているウレアおよび酸またはアルカリ処理を通して水溶性にされた澱粉が挙げられる。本組成物に固化特性を付与し、アルカリ剤を保持するための圧縮錠剤に加工できる種々の無機物も有用である。こうした無機剤には、炭酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、アルカリ金属リン酸塩、無水酢酸ナトリウムおよびその他の公知の水和性化合物が挙げられる。本発明者らは、アルカリ金属炭酸塩洗浄剤組成物用の新規の硬化または結合剤も見出した。本発明者らは、結合剤が有機ホスホン酸塩化合物、炭酸ナトリウムおよび水の両性錯体を含むと考えている。この結合性硬化剤は、同時係属米国特許出願第08/781,493号において開示されている。この特許出願はその全体において本明細書に引用して援用する。この炭酸塩-リン酸塩-水結合剤は、非イオン界面活性剤等の他の硬化剤と合わせて用いることができる。」
「【0096】
洗浄剤の製造において、ドライブレンド粉末は、粉末状成分をブレンドして完成した配合物にすることにより製造することが可能である。液体原料は、乾燥成分上で前もって吸収させることが可能であるか、あるいは混合の前に封入することが可能である。公知の技術および装置を用いて凝集材料を製造することが可能である。本発明の固体洗浄剤の製造において、原料は、原料が塊全体を通して実質的に均一に分配されている実質的に均質なコンシステンシーを形成するために高剪断で合わせて混合される。その後、混合物は、型または他の容器にキャストする、混合物を押出す等により混合システムから排出される。好ましくは、混合物は、組成物用のディスペンサーとして任意にではあるが、好ましくは使用できる型または他の包装システムにキャストまたは押出される。混合システムから排出された時の混合物の温度は、先ず混合物を冷却せずに、混合物を包装システムに直接キャストするか、あるいは押出すことを可能にするために充分に低く維持される。好ましくは、排出の時点における混合物の温度は、およそ室温、約30~50℃、好ましくは約35~45℃である。その後、組成物は、低密度でスポンジ様の順応性コーク状コンシステンシーから高密度で溶融した固体コンクリート様ブロックに及ぶことが可能である固体形態に放置して硬化される。」
イ 対比・判断
(ア)対比
引用発明の「珪酸ナトリウム1号」、「メタ珪酸ナトリウム」は、【0062】を参照すると、それぞれ「品名粉末珪酸ソーダ1号、日本化学工業(株)、Na2O/SiO2=1/2、22.5重量%含水品」、「品名ドライメタケイソー5aq、広栄化学工業(株)、Na2O/SiO2=1/1、42.5重量%含水品」であり、本件補正発明の「シリケート」及び「水」に相当する。また引用発明の洗浄剤組成物全体における含有割合は、「珪酸ナトリウム1号」15重量%であるから、そのうち「水」が15重量%×0.225=3.375重量%、「Na2O/SiO2」が15重量%×0.775=11.625重量%であり、「メタ珪酸ナトリウム」25重量%であるから、そのうち「水」が25重量%×0.425=10.625重量%、「Na2O/SiO2」が25重量%×0.575=14.375重量%であり、「水」の合計は3.375重量%+10.625重量%=14重量%、「Na2O/SiO2」の合計は11.625重量%+14.375重量%=26重量%であるため、本件補正発明の「4質量%~20質量%の水」、「15質量%~30質量%のシリケート」を充足する。
引用発明の「「炭酸ナトリウム」30重量%」は、本件補正発明の「0.5質量%~90質量%の、炭酸塩を含むアルカリ源」に相当する。
引用発明の「「PEPコポリマー」1重量%」は、【0062】を参照すると、「「品名プルロニックRPE2520、BASF・ジャパン(株)、プロピレンオキシド・エチレンオキシド・プロピレンオキシドコポリマー、重量平均分子量3100、エチレンオキシドモル分率20%」1重量%」であり、本件補正発明の「1質量%~7.5質量%の界面活性剤であって、前記界面活性剤は、エトキシレート、プロポキシレート、又はエトキシレート及びプロポキシレートの両方である非イオン性界面活性剤である、界面活性剤」に相当する。
引用発明の「AA/AMコポリマー」は、【0062】を参照すると、「「品名ソカランCP5、BASF・ジャパン(株)、アクリル酸-マレイン酸コポリマーナトリウム塩、アクリル酸/マレイン酸=7/3(モル比)、重量平均分子量70000」2重量%」であり、アクリル酸コポリマーといえる。
また、【0060】の実施例1と、【0061】の比較例とを対比すると、(D)成分である「AA/AMコポリマー」のみを欠く比較例1は、非腐食性が×となっていることから、腐食防止剤であることが当業者であれば読み取れる。
そうすると、引用発明の「「AA/AMコポリマー」2重量%」は、本件補正発明の「ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリル酸、これらのコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤」に相当する。
引用発明の「EDTA4Na・2H2O」は、【0035】を参照すると、「エチレンジアミンテトラカルボン酸」(EDTA)のナトリウム塩の水和物であり、本件補正発明の「アミノカルボキシレート」に相当する。
引用発明は、漂白剤に相当する物質を含まないため、本件補正発明の「前記組成物は、漂白剤を含まず」を充足する。
引用発明は、各成分の合計量が100重量%であり、本件補正発明の「それぞれの成分の量は、その合計量が100質量%を超えないように選択される」を充足する。
(イ)一致点及び相違点
以上より、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
本件補正発明と引用発明とは、
「 0.5質量%~90質量%の、炭酸塩を含むアルカリ源と;
1質量%~7.5質量%の界面活性剤であって、前記界面活性剤は、エトキシレート、プロポキシレート、又はエトキシレート及びプロポキシレートの両方である非イオン性界面活性剤である、界面活性剤と;
ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリル酸、これらのコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤と; 4質量%~20質量%の水と;
(i)15質量%~30質量%のシリケート、及び(ii)アミノカルボキシレートを含む、金属保護成分とを含む、洗剤組成物であって、
前記組成物は、漂白剤を含まず、
それぞれの成分の量は、その合計量が100質量%を超えないように選択される、洗剤組成物。」
の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
組成物が、本件補正発明は、「0.3質量%~10質量%のキレート剤であって、クエン酸塩又はクエン酸を含む、キレート剤」を含むのに対し、引用発明は、クエン酸塩又はクエン酸を含まない点。
(相違点2)
アミノカルボキシレートが、本件補正発明は、「メチルグリシン二酢酸(MGDA)、グルタミン酸-N,N-二酢酸(GLDA)、これらの塩、又はこれらの誘導体の一つ又は複数」であるのに対し、引用発明は、「EDTA4Na・2H2O」(エチレンジアミンテトラカルボン酸(EDTA)のナトリウム塩の水和物)である点。
(相違点3)
アミノカルボキシレートの含有割合が、本件補正発明は、「0.1質量%~3.5質量%」であり、シリケートとアミノカルボキシレートを含む金属保護成分の含有割合が「33.5質量%以下」であるのに対し、引用発明は、アミノカルボキシレートである「EDTA4Na・2H2O」(エチレンジアミンテトラカルボン酸(EDTA)のナトリウム塩の水和物)を10重量%含み、シリケートとアミノカルボキシレートの含有割合が36重量%である点。
(相違点4)
洗剤組成物が、本件補正発明は、「キャスト固体、圧縮固体及び押出固体からなる群から選択される固体」であり、「固体アルカリ性洗剤組成物」であるのに対し、引用発明は、洗剤組成物についてそのような特定がされていない点。
(ウ)判断
(相違点1及び3について)
引用発明を認定した引用文献4の【0035】には、キレート剤として、「具体的には、クエン酸塩に代表されるヒドロキシカルボン酸塩、ニトリロトリカルボン酸(NTA)塩、エチレンジアミンテトラカルボン酸(EDTA)塩等のアミノカルボン酸塩、トリポリリン酸塩等の縮合リン酸塩等が挙げられる。」と記載されている。また、実施例において、【0060】の本発明品8では、クエン酸3ナトリウムを含む洗剤組成物の例が記載されている。よって、クエン酸塩をアミノカルボン酸塩と同様にキレート剤として用いることができることが記載されているといえる。また組成物において、同様の機能を有する成分を併用することは一般に行われている事項である。
そうしてみると、引用発明において、キレート剤として、アミノカルボン酸塩であるEDTA4Na・2H2Oの一部に代えて同様の機能を有するクエン酸塩を用いることは、当業者が容易になし得たことである。そして、その際のアミノカルボン酸塩とクエン酸塩のそれぞれの量は、合計が10重量%程度となるように適宜調整し得るものであり、アミノカルボン酸塩を0.1~3.5重量%(シリケートとアミノカルボン酸塩の含有割合は26.1~29.6重量%)とし、クエン酸塩を9.9~6.5重量%とすることは、クエン酸塩を採用する際に適宜なし得る事項である。
(相違点2について)
引用文献4の【0035】には、キレート剤として、「具体的には、クエン酸塩に代表されるヒドロキシカルボン酸塩、ニトリロトリカルボン酸(NTA)塩、エチレンジアミンテトラカルボン酸(EDTA)塩等のアミノカルボン酸塩、トリポリリン酸塩等の縮合リン酸塩等が挙げられる。」と記載されている。そして、洗剤組成物に用いるアミノカルボン酸塩として、メチルグリシン二酢酸(MGDA)の塩及びグルタミン酸-N,N-二酢酸(GLDA)の塩は、生分解性のアミノカルボン酸塩として周知である(引用文献6の請求項1、5、【0012】、【0072】、【0080】例2参照)。
そうしてみると、引用発明において、洗剤組成物の分野において周知の課題である環境に好ましい組成物とするため、アミノカルボン酸塩として用いている「EDTA4Na・2H2O」(エチレンジアミンテトラカルボン酸(EDTA)のナトリウム塩の水和物)に代えて、生分解性であるメチルグリシン二酢酸(MGDA)の塩又はグルタミン酸-N,N-二酢酸(GLDA)の塩を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
(相違点4について)
引用発明の成分から、洗剤組成物はアルカリ性であると認められるため、「アルカリ性」である点は実質的な相違点とはいえない。また、引用文献4の【0045】には、洗浄剤組成物の形態が固形である場合が記載され、タブレット化やブロック化についても記載されている。そして、固体の洗浄剤組成物として、キャスト固体、圧縮固体及び押出固体は周知であるから(引用文献6【0009】、【0010】、【0088】、【0096】)、引用発明において、固体の形態を選択する際、キャスト固体、圧縮固体、押出固体のいずれかを採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願明細書には、シリケートとアミノカルボキシレートを含むことにより、優れたアルミニウム腐食防止効果及びディスペンサーの詰まり防止効果を奏することが記載されているが(【0119】、【0121】)、シリケートとアミノカルボキシレートの具体的化合物名及び配合割合、その他の成分名と配合割合が不明であり、前記効果が、本件補正発明の奏する効果であるとは認められない。なお、仮に本件補正発明が前記効果を奏するとしても、引用発明も、シリケートである珪酸ナトリウム1号及びメタ珪酸ナトリウムと、アミノカルボキシレートである「EDTA4Na・2H2O」を含むものであり、またアルミニウム非腐食性及びスケール防止性に優れたものであるから(【0060】)、前記効果が、引用文献4の記載から当業者が予測し得ない顕著な効果とは認められない。
ウ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、「引用文献4では、ヒドロキシカルボン酸、ニトリロトリカルボン酸、エチレンジアミンテトラカルボン酸(EDTA)、縮合リン酸塩などのキレート剤についての開示があるのみで、MGDA及びGLDAについての開示は十分になされていません。」と記載し、引用文献4は、本発明の重要な構成要素を記載又は示唆していないため、本発明は、引用文献4に記載された発明及び周知技術を参照して容易に発明をできたものではない旨を主張している。しかしながら、前記イ(相違点2について)で検討したとおり、引用文献4にはMGDA及びGLDAについて開示はないものの、キレート剤としてアミノカルボン酸塩を使用できることが記載されており、そして洗剤組成物に用いるアミノカルボン酸塩として、メチルグリシン二酢酸(MGDA)の塩及びグルタミン酸-N,N-二酢酸(GLDA)の塩は、生分解性のアミノカルボン酸塩として周知であることを考慮すると、引用発明において、MGDAやGLDAを採用することは、当業者が容易になし得たことといえる。よって、審判請求人の主張は採用できない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものではなく、また、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年3月1日に提出された誤訳訂正書による手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和元年12月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また本願の請求項1~16に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献4に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
記
引用文献4:特開2006-296470号公報
引用文献8:特表2002-544324号広報(周知技術を示す文献)
3 当審の判断
(1)特許法第36条第6項第1号について
前記第2の[理由]2(4)と同様に、本願発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)特許法第29条第2項について
ア 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4の記載事項は、前記第2の[理由]2(5)ア(ア)に記載したとおりである。
イ 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリル酸、これらのコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される、0.1質量%~15質量%の腐食防止剤」について、「ホスホノカルボン酸、ホスホネート、ホスフェート、ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、腐食防止剤」とし、本件補正発明の「前記アミノカルボキシレートは、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、グルタミン酸-N,N-二酢酸(GLDA)、これらの塩、又はこれらの誘導体の一つ又は複数である」について、「アミノカルボキシレート」の成分を特定しないようにし、本件補正発明の「漂白剤を含まず」について、漂白剤を含まないと特定しないものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比した場合、前記第2[理由]2(5)イ(イ)の相違点1、3、4の点でのみ相違するが、記第2の[理由]2(5)イ(ウ)に記載した理由と同じ理由により、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-003123