特許拒絶査定不服審判
2025-001313
分電盤
- 審判番号
- 2025-001313
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2024-108286外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2025年01月29日
- 審決日
- 2025年12月25日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オムロン株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (G06Q) / P18 .537-WZ (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2024-108286「分電盤」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 9月20日出願公開、特開2024-127999〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和4年5月20日に出願した特願2022-83292号の一部を令和6年7月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 6年 7月30日付け:拒絶理由通知書
令和 6年10月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和 6年10月16日付け:拒絶査定
令和 7年 1月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 7年 9月11日付け:拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」という。)
令和 7年11月12日 :意見書、手続補正書の提出(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである(下線部は、本件補正による補正箇所である。)。
「【請求項1】
特定の人が利用する建物に付帯設置される電動式移動体用の充電設備の分電盤であって、
複数の充電器に各々対応する電路毎に電路の遮断を行う複数の開閉器と、
前記電路毎の消費電力量を計測する複数の電力量センサと、
前記複数の開閉器及び前記複数の電力量センサと接続される、一つの制御装置と、を備える構成を有し、
前記制御装置は、前記複数の開閉器の開閉制御及び前記複数の電力量センサから電気料金算出のための前記消費電力量の情報の取得を行うことを特徴とし、
前記特定の人が利用する建物は、専有部と共有部に分かれる集合住宅であり、
前記分電盤は、共有部用の電線からの電力が供給される、
分電盤。」
なお、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の、令和7年1月29日にされた手続補正による特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項5に係る発明に相当するものである。
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の理由1(進歩性)は、この出願の請求項5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2010-154635号公報
引用文献2:特開2017-169349号公報
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
「【0001】
本発明は、車両に備えられたバッテリーを駐車中に充電するための車両の充電管理システムに関する。」
「【0016】
本発明をショッピングセンターや集合住宅の駐車場に適用した一実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。
【0017】
駐車場には複数の車両の駐車位置が区画して設けられており、各駐車位置に対応してそれぞれ支柱部に相当する充電ポスト10が立設されている。この充電ポスト10は、例えばステンレス鋼パイプ製で上端を閉じた円筒状に構成されており、周壁面に充電用端末に相当するコンセント11が埋め込まれている。充電ポスト10の外周面には上記コンセント11の下に位置して標識部に相当するバーコードシート12が貼り付けてある。
【0018】
バーコードシート12は、例えばQRコードにより構成されており、所定のWEBサイトのURL情報並びに駐車場名及びその駐車位置とを示す情報が記録されている。この実施形態では駐車位置とコンセント11とは1対1で対応しているから、このバーコードシート12の内容が充電用端末を特定するための充電用端末識別情報に相当する。
【0019】
各コンセント11は、それぞれ電力供給線13を介して分電盤14に接続され、分電盤14は駐車場の受電設備15からの交流電力の供給を受けるようになっている。分電盤14には、各コンセント11に対応して継電器16が設けられ、この継電器16によって各コンセント11への電力供給を個別に制御できる。各継電器16は継電器制御回路17により制御され、継電器制御回路17は充電管理サーバー18により制御される。
【0020】
さて、充電管理サーバー18によって実行される充電管理プログラムの主要機能は図2及び図3に示す通りであり、基本的には携帯電話用のWEBサーバー機能と、ユーザデータベース機能と、コンセント使用データベース機能と、継電器制御機能とを有する構成としたものである。
【0021】
次に、本実施形態の充電管理システムの動作について説明する。例えばショッピングセンターの駐車場に入場した車両EV(プラグイン充電型の電気自動車)が任意の駐車位置に駐車したとする。運転者がその車両EVの充電を行おうとする場合、車両に備えられている充電用プラグPを充電ポスト10のコンセント11に差し込んで充電可能状態とする。なお、この段階では分電盤14の対応する継電器16は閉じられておらず、コンセント11に電力は供給されていない。
【0022】
次に、運転者或いは同乗者が、携帯電話端末20のバーコード撮影機能を起動させて充電プラグPを差し込んだコンセント11の下にあるバーコードシート12を携帯電話機内蔵のカメラによって撮影する。すると、携帯電話端末20はバーコードから駐車場管理のためのWEBサイトのURL、駐車場名及び駐車位置情報を読み取ると共に、その情報に基づき、無線通信回線を基地局21との間に確立させてインターネット回線に接続し、携帯電話端末20のブラウザによってコンセント毎に設けられているWEBサイトに誘導する(ステップS101)。このWEBサイトは、充電管理サーバー18が有するWEBサーバー機能によって提供されている。
【0023】
携帯電話端末20が充電管理サーバー18に接続されると、充電管理サーバー18からはユーザIDとパスワードの入力を要求する画面が携帯電話端末20に送信されて画面に表示される。ユーザが要求に応じてユーザIDとパスワードとを入力すると(ステップS102)、ユーザデータベースに既に登録があるか否かを検索することでユーザの認証を行う(ステップS103,S104)。なお、ユーザデータベースに予め登録がない場合には、ユーザ登録を促す表示が携帯電話端末20の画面に表示される。このユーザ認証は、充電管理サーバー18が有すユーザーデータベース機能によって提供されており、そのユーザーデータベースは、ユーザID、ユーザ氏名、住所、充電料金の請求先、支払い方法等のフィールドを備え、ユーザ識別情報であるユーザIDをキーとして構築されている。
【0024】
ユーザ認証に成功すると、充電管理サーバ18からは利用時間の入力をユーザに要求する画面が送信され、これに応じてユーザは電気自動車EVの充電を行いたい時間の長さを利用時間として入力する(ステップS105)。
【0025】
次に、充電管理サーバ18からは充電方法の選択を求める画面が送信される(ステップS106)。充電方法としては、直ちに充電を開始する「即時充電」と、充電を開始する時刻を予約できる「開始時刻予約」と、充電の完了時刻を予約できる「完了時刻予約」との三種類がある。「開始時刻予約」が選択された場合には、開始時刻の入力画面が現れ、ここで開始時刻を入力すると(ステップS107)、その時刻までタイマーによって待機状態となる(ステップS108)。また、「完了時刻予約」が選択された場合には、完了予約時刻の入力画面が現れ、ここで充電が完了していることを希望する完了時刻を入力すると(ステップS109)、充電管理サーバー18は他コンセントの利用状況や予約状況と車両の充電に要する時間とを考慮して受電設備15にとって最も軽負荷となる時間帯を選択し、その時間帯における始めの時刻を充電の開始時刻として設定し(ステップS110)、その開始時刻までタイマーによって待機状態となる(ステップS111)。
【0026】
充電管理サーバー18は、上述の「即時充電」が選択された場合には直ちに、「開始時刻予約」又は「完了時刻予約」が選択された場合には開始時刻になると、その時刻をユーザIDと共にコンセント使用データベースに記録し(ステップS112)、同時的に継電器制御回路17を介して分電盤14に給電許容信号を出力する(ステップS113)。すると、継電器制御回路17は、特定されているコンセント11に電力を供給するべく分電盤14の対応する継電器16を閉じる。これにより、電気自動車EVの充電が開始され、充電管理サーバー18は終了時刻を演算し(ステップ114)、充電終了処理(ステップS200)に移行する。
【0027】
充電終了処理の具体的内容は図3に示すとおりである。すなわち、充電中の車両から充電終了通知を受けたこと(ステップS201)、または、終了時刻に達したこと(ステップS202)を条件に、その時点の時刻をユーザIDと共にコンセント使用データベースに記録し(ステップS203)、同時的に継電器制御回路17を介して分電盤14に給電許容信号の出力を停止する(ステップS204)。そして、コンセント11を通じた充電電力の使用時間を、終了時刻から開始時刻を減算することで取得し(ステップS205)、これをユーザIDと共にコンセント使用データベースに記録して(ステップS206)終了する。コンセント使用データベースは、コンセントの識別情報(充電用端末識別情報)、充電を行ったユーザのユーザID、開始時刻(日時を含む)、終了時刻(同)、使用時間のフィールドを備えている。なお、本実施形態では、コンセント11の使用量をその使用時間として記録している(ステップS205)から、充電管理サーバー18はコンセント11の使用量を測定する使用量測定手段としても機能する。
【0028】
この実施形態によれば、充電管理サーバー18のコンセント使用データベースに、コンセント11毎(駐車位置毎)のコンセント11の使用時間(充電時間)がユーザIDと共に記録される。従って、このコンセント使用データベースとユーザデータベースとにアクセスすることにより、ユーザ毎にコンセント11の使用料金を計算して課金することが可能である。
【0029】
そして、この実施形態では駐車場側の固定設備としては、各駐車位置に充電ポスト10を設置し、これを分電盤14に接続するだけでよい。その充電ポスト10は、コンセント11とバーコードシート12だけを備えた極めて単純なものであるから、極めて安価に大量生産でき、かつ、メンテナンスの負担もほとんど無い。そして、本実施形態では、車両の運転者や同乗者が広範に所有している携帯電話端末をユーザ認証を行うための装置として効果的に利用できるから、ICカード読取装置等のユーザ認証のための高価で複雑な電子機器を駐車場側で準備する必要がない。・・・」
「【0032】
(1)本実施形態では、充電用端末(コンセント11)の使用量は使用時間として測ることとし、それを充電管理サーバー18において記録・演算するようにしたが、これに限らず、充電用端末への電力供給線路に電力計や電流計等の計測装置を設け、コンセント11毎に充電に使用した電力量を充電用端末の使用量として測定し、その測定された電力量(使用量)に応じた課金を行ってもよい。この場合でも、電力計等の計測装置を分電盤14に集中的に設けることができ、そのようにすると、個々の充電ポストや充電用端末部分に計測装置を設ける必要がなく、分電盤部分のみの設置で安価な工事で取り付けることができる。また、充電用端末を追加する増設工事も極めて簡単になり、総じて工事費や設備費の低減が可能になる。」
「【図1】
[図:0001432866000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001432866000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001432866000003.jpg]
」
(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)の摘記事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されている。
ア 段落【0001】、【0016】、【0017】、【0019】及び【図1】の記載によれば、引用文献1には、「車両に備えられたバッテリーを駐車中に充電するための車両の充電管理システム」に関し、「集合住宅の駐車場」における「各駐車位置に対応して」立設されている「充電ポスト10」の「各コンセント11」が、「それぞれ電力供給線13を介して」接続された「分電盤14」が記載されている。
イ 段落【0019】の記載によれば、「分電盤14には、各コンセント11に対応して継電器16が設けられ、この継電器16によって各コンセント11への電力供給を個別に制御でき」、「各継電器16は継電器制御回路17により制御され、継電器制御回路17は充電管理サーバー18により制御される」。
ウ 段落【0021】~【0025】の記載によれば、「駐車場に入場した車両EV(プラグイン充電型の電気自動車)が任意の駐車位置に駐車し」、「運転者或いは同乗者が、携帯電話端末20のバーコード撮影機能を起動させて充電プラグPを差し込んだコンセント11の下にあるバーコードシート12を携帯電話端末20内蔵のカメラによって撮影する」と、「携帯電話端末20はバーコードから駐車場管理のためのWEBサイトのURL、駐車場名及び駐車位置情報を読み取ると共に、その情報に基づき」、「携帯電話端末20のブラウザによってコンセント毎に設けられているWEBサイトに誘導」し、「携帯電話端末20が充電管理サーバー18に接続され」、ユーザが「充電管理サーバー18」からの「要求に応じてユーザIDとパスワードとを入力すると」「ユーザの認証」が行われ、「ユーザ認証に成功」すると、ユーザが「電気自動車EVの充電を行いたい時間の長さ」である「利用時間」と「充電を開始する時刻」である「開始時刻」を入力する。
エ 段落【0020】、【0026】~【0027】、【図2】、【図3】の記載によれば、「充電管理サーバー18」は、「開始時刻に、その時刻をユーザIDと共にコンセント使用データベースに記録し、同時的に継電器制御回路17を介して分電盤14に給電許容信号を出力」し、「継電器制御回路17」が「特定されているコンセント11に電力を供給するべく分電盤14の対応する継電器16を閉じる」ことにより、「電気自動車EVの充電が開始され」、「充電中の車両から充電終了通知を受けたこと、または、終了時刻に達したことを条件に、その時点の時刻をユーザIDと共にコンセント使用データベースに記録し、同時的に継電器制御回路17を介して分電盤14に給電許容信号の出力を停止」する。
オ 段落【0027】~【0028】の記載によれば、「充電管理サーバー18」は、「コンセント11を通じた充電電力の使用時間を、終了時刻から開始時刻を減算することで取得し、これをユーザIDと共にコンセント使用データベースに記録」することにより、「充電管理サーバー18のコンセント使用データベースに、コンセント11毎(駐車位置毎)のコンセント11の使用時間(充電時間)がユーザIDと共に記録され」、「コンセント使用データベースとユーザデータベースとにアクセスすることにより、ユーザ毎にコンセント11の使用料金を計算して課金することが可能」となる。
カ 段落【0032】の記載によれば、(本実施形態の)充電管理システムでは、「充電用端末(コンセント11)の使用量」を「使用時間として測る」ほか、「充電用端末への電力供給線路に電力計や電流計等の計測装置を設け、コンセント11毎に充電に使用した電力量を充電用端末の使用量として測定し、その測定された電力量(使用量)に応じた課金を行ってもよ」く、この場合、「電力計等の計測装置を分電盤14に集中的に設けることができ」る。
キ 上記ア~カを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「車両に備えられたバッテリーを駐車中に充電するための車両の充電管理システムに関し、集合住宅の駐車場における各駐車位置に対応して立設されている充電ポスト10の各コンセント11が、それぞれ電力供給線13を介して接続された分電盤14であって、(上記ア)
分電盤14には、各コンセント11に対応して継電器16が設けられ、この継電器16によって各コンセント11への電力供給を個別に制御でき、各継電器16は継電器制御回路17により制御され、継電器制御回路17は充電管理サーバー18により制御され、(上記イ)
駐車場に入場した車両EV(プラグイン充電型の電気自動車)が任意の駐車位置に駐車し、運転者或いは同乗者が、携帯電話端末20のバーコード撮影機能を起動させて充電プラグPを差し込んだコンセント11の下にあるバーコードシート12を携帯電話端末20内蔵のカメラによって撮影すると、
携帯電話端末20はバーコードから駐車場管理のためのWEBサイトのURL、駐車場名及び駐車位置情報を読み取ると共に、その情報に基づき、携帯電話端末20のブラウザによってコンセント毎に設けられているWEBサイトに誘導し、携帯電話端末20が充電管理サーバー18に接続され、ユーザが充電管理サーバー18からの要求に応じてユーザIDとパスワードとを入力するとユーザの認証が行われ、ユーザ認証に成功すると、ユーザが電気自動車EVの充電を行いたい時間の長さである利用時間と充電を開始する時刻である開始時刻を入力し、(上記ウ)
充電管理サーバー18は、開始時刻に、その時刻をユーザIDと共にコンセント使用データベースに記録し、同時的に継電器制御回路17を介して分電盤14に給電許容信号を出力し、継電器制御回路17が特定されているコンセント11に電力を供給するべく分電盤14の対応する継電器16を閉じることにより、電気自動車EVの充電が開始され、充電中の車両から充電終了通知を受けたこと、または、終了時刻に達したことを条件に、その時点の時刻をユーザIDと共にコンセント使用データベースに記録し、同時的に継電器制御回路17を介して分電盤14に給電許容信号の出力を停止し、(上記エ)
充電管理サーバー18は、コンセント11を通じた充電電力の使用時間を、終了時刻から開始時刻を減算することで取得し、これをユーザIDと共にコンセント使用データベースに記録することにより、充電管理サーバー18のコンセント使用データベースに、コンセント11毎(駐車位置毎)のコンセント11の使用時間(充電時間)がユーザIDと共に記録され、コンセント使用データベースとユーザデータベースとにアクセスすることにより、ユーザ毎にコンセント11の使用料金を計算して課金することが可能となるものであり、(上記オ)
充電管理システムでは、充電用端末(コンセント11)の使用量を使用時間として測るほか、充電用端末への電力供給線路に電力計や電流計等の計測装置を設け、コンセント11毎に充電に使用した電力量を充電用端末の使用量として測定し、その測定された電力量(使用量)に応じた課金を行ってもよく、この場合、電力計等の計測装置を分電盤14に集中的に設けることができる、(上記カ)
分電盤14。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0016】
分電盤20は、系統電源30からの電流値、あるいは後述する負荷40の各々の負荷41~43(以下、個別負荷41~43と記載する場合がある)に流れる電流値などを計測する電流センサ群22、系統30から本電力供給システム1への電力供給の可否を切換えることが可能な切り替えスイッチ23、個別負荷41~43への電力の供給の可否をそれぞれ切り替えることが可能な複数の切り替えスイッチ群24、および、分電盤制御部21を具備する。分電盤20は、パワーコンディショナ部10及び系統電源30に接続される。分電盤20は安全上または電力契約上で別途整定された電流量、電力量、時間などのパラメータに基づき切り替えスイッチ23または切り替えスイッチ群24を自動的に切断し、あるいは、人手を用いて切り替えスイッチ23または切り替えスイッチ群24を再度投入することにより負荷を通電させることができる。
【0017】
分電盤制御部21は、分電盤内の主幹電力線、および各負荷に分岐している電力線の電流量を電流センサ群22から読み取り、また、系統電圧値を読み取る。読み取った電圧及び/又は電流値を用いて、系統から供給されている電力や各負荷に供給する電力などの情報を収集、一定時間間隔で電力情報を蓄積して後述するコントローラ50やパワーコンディショナ部10にそれらの情報を送信する。また、収集された電流量や電力量を基に、切り替えスイッチ23または切り替えスイッチ群24を自動的に切断させる信号を生成する。」
「【0021】
コントローラ50は、パワーコンディショナ部10、分電盤20内の分電盤制御部21、負荷40と接続されており、電力供給システム1内の電力情報を管理すると共に、接続された各機器の運転を制御するものである。また、コントローラ50は、住宅外部に設置されたクラウドサーバ60とインターネット回線70により接続されており、クラウドサーバ60と太陽光発電電力の逆潮流抑制情報などの送受信を行う。」
「【0023】
コントローラ50のデータ管理機能は、通信制御機能を介して分電盤20に設けられた分電盤制御部21に接続され、分電盤20から個別負荷41~43へと供給されている電力(使用電力)を検出することができる。」
「【図1】
[図:0001432866000004.jpg]
」
【図1】の記載から、「コントローラ50」は「分電盤20」の外部の装置であることが看取される。
(2)引用文献2に記載の技術事項
上記(1)の摘記事項から、引用文献2には、次の技術事項が記載されている。
「分電盤20は、個別負荷41~43に流れる電流値などを計測する電流センサ群22、個別負荷41~43への電力の供給の可否をそれぞれ切り替えることが可能な複数の切り替えスイッチ群24、および、分電盤制御部21を具備し、(【0016】)
分電盤制御部21は、各負荷に分岐している電力線の電流量を電流センサ群22から読み取り、読み取った電流値を用いて、各負荷に供給する電力などの情報を収集、一定時間間隔で電力情報を蓄積して、分電盤20の外部のコントローラ50にそれらの情報を送信し、また、切り替えスイッチ群24を自動的に切断させる信号を生成し(【0017】、【図1】)
コントローラ50は、分電盤20内の分電盤制御部21、負荷40と接続されており、電力供給システム1内の電力情報を管理し、(【0021】)
コントローラ50のデータ管理機能は、通信制御機能を介して分電盤20に設けられた分電盤制御部21に接続され、分電盤20から個別負荷41~43へと供給されている電力(使用電力)を検出することができる。(【0023】)」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 「特定の人が利用する建物に付帯設置される電動式移動体用の充電設備の分電盤」について
引用発明の「分電盤14」は、以下の相違点を除き、本願発明の「分電盤」に相当する。
また、引用発明の「分電盤14」は、「集合住宅の駐車場における各駐車位置に対応して立設されている充電ポスト10の各コンセント11が、それぞれ電力供給線13を介して接続された」ものであり、「充電ポスト10」は、「任意の駐車位置に駐車し」た「車両EV(プラグイン充電型の電気自動車)」を充電するための設備であるから、引用発明の「集合住宅」、「車両EV(プラグイン充電型の電気自動車)」、「充電ポスト10」は、それぞれ本願発明の「建物」、「電動式移動体」、「充電設備」に相当する。
そして、引用発明の「充電ポスト10」は、「集合住宅の駐車場における各駐車位置に対応して立設され」たものであるから、集合住宅に付帯設置されたものであるといえ、そのような「充電ポスト10」は、本願発明の「建物に付帯設置される電動式移動体用の充電設備」に相当する。
したがって、引用発明において、「集合住宅の駐車場における各駐車位置に対応して立設されている充電ポスト10の各コンセント11が、それぞれ電力供給線13を介して接続された」「分電盤14」は、本願発明の「特定の人が利用する建物に付帯設置される電動式移動体用の充電設備の分電盤」と、「建物に付帯設置される電動式移動体用の充電設備の分電盤」である点で共通する。
2 「複数の充電器に各々対応する電路毎に電路の遮断を行う複数の開閉器」について
引用発明の「分電盤14」に設けられた「継電器16」は、「充電ポスト10の各コンセント11」に対応して設けられるものであり、「コンセント11に電力を供給する」際は「継電器16を閉じることにより、電気自動車EVの充電が開始され」るものであるから、引用発明の「充電ポスト10の各コンセント11」、「継電器16」は、それぞれ本願発明の「複数の充電器」、「開閉器」に相当する。
また、引用発明の「継電器16」は、「各コンセント11への電力供給を個別に制御でき」るものであるから、引用発明の「継電器16」は、「各コンセント11」に対応する電路毎に電路の遮断を行うことができるものである。
そうすると、引用発明の「継電器16」は、本願発明の「複数の充電器に各々対応する電路毎に電路の遮断を行う複数の開閉器」に相当する。
3 「前記電路毎の消費電力量を計測する複数の電力量センサ」について
引用発明における「充電管理サーバー18」は、「コンセント11毎(駐車位置毎)のコンセント11の使用時間(充電時間)」を「使用量」として用い、「ユーザ毎にコンセント11の使用料金を計算して課金することが可能」なほか、「充電用端末への電力供給線路に電力計や電流計等の計測装置を設け、コンセント11毎に充電に使用した電力量を充電用端末の使用量として測定し、その測定された電力量(使用量)に応じた課金を行ってもよく、この場合、電力計等の計測装置を分電盤14に集中的に設けることができる」ものであり、引用発明における「電力計」は、本願発明の「電力量センサ」に相当する。
また、引用発明において、「使用量」として「測定された電力量」を用いる場合、当該電力量を測定するために「充電用端末への電力供給線路」に設けられる「電力計」は、「コンセント11毎に充電に使用した電力量」を測定するものであるから、本願発明の「前記電路毎の消費電力量を計測する」ものである。
そして、引用発明において、「使用量」として「測定された電力量」を用いる場合、「電力計等の計測装置を分電盤14に集中的に設けることができる」ものであるから、引用発明において、分電盤14に集中的に設けられた「電力計」は、本願発明の「前記電路毎の消費電力量を計測する複数の電力量センサ」に相当する。
4 「前記複数の開閉器及び前記複数の電力量センサと接続される、一つの制御装置と、を備える構成を有し」について
引用発明の「充電管理サーバー18」は、「継電器制御回路17を介して分電盤14に給電許容信号を出力」するものであって、これにより、「継電器制御回路17が特定されているコンセント11に電力を供給するべく分電盤14の対応する継電器16を閉じること」ものであるから、引用発明の「充電管理サーバー18」は、「継電器制御回路17」を介して「前記複数の開閉器」と接続されたものである。
また、上記3を踏まえると、引用発明において、「使用量」として「測定された電力量」を用いる場合、「充電管理サーバー18」は、「充電用端末への電力供給線路」に設けられた「電力計」によって測定された「電力量(使用量)」に応じた課金を行うことができるものであるから、引用発明の「充電管理サーバー18」は、本願発明の「前記複数の電力量センサ」と接続されたものであるといえる。
そうすると、引用発明の「充電管理サーバー18」は、「分電盤」が備えるものではないものの、本願発明の「前記複数の開閉器及び前記複数の電力量センサと接続される、一つの制御装置」と共通する。
5 「前記制御装置は、前記複数の開閉器の開閉制御及び前記複数の電力量センサから電気料金算出のための前記消費電力量の情報の取得を行う」について
上記4で示したように、引用発明の「充電管理サーバー18」は、「継電器制御回路17を介して分電盤14に給電許容信号を出力」することより、「分電盤14の対応する継電器16を閉じること」ができるものであるから、引用発明の「充電管理サーバー18」は、本願発明の「前記複数の開閉器の開閉制御」を行うものである。
また、上記3、4を踏まえると、引用発明の「充電管理サーバー18」は、「充電用端末への電力供給線路」に設けられた「電力計」によって測定された「電力量(使用量)」に応じた課金を行うことができるものであって、「電力計」から「コンセント11毎に充電に使用した電力量」の情報を取得しているといえるから、引用発明の「充電管理サーバー18」は、本願発明の「前記複数の電力量センサから」「前記消費電力量の情報の取得を行う」ものである。そして、その場合、本願発明の「充電管理サーバー18」は、取得した「コンセント11毎に充電に使用した電力量」の情報から、「測定された電力量(使用量)に応じた課金」を行うものであるから、取得した「コンセント11毎に充電に使用した電力量」の情報から「電気料金」を算出することは明らかである。
したがって、引用発明の「充電管理サーバー18」は、「前記複数の開閉器の開閉制御及び前記複数の電力量センサから電気料金算出のための前記消費電力量の情報の取得を行う」ものである点で、本願発明の「前記制御装置」、すなわち「一つの制御装置」と一致する。
6 一致点、相違点
上記1~5によれば、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「建物に付帯設置される電動式移動体用の充電設備の分電盤であって、
複数の充電器に各々対応する電路毎に電路の遮断を行う複数の開閉器と、
前記電路毎の消費電力量を計測する複数の電力量センサと、を備える構成を有し、
前記複数の開閉器及び前記複数の電力量センサと接続される、一つの制御装置は、前記複数の開閉器の開閉制御及び前記複数の電力量センサから電気料金算出のための前記消費電力量の情報の取得を行うことを特徴とする、
分電盤。」
[相違点1]
「建物に付帯設置される電動式移動体用の充電設備」に関し、本願発明は「特定の人が利用する」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものであるか定かではない点。
[相違点2]
「一つの制御装置」に関し、本願発明は「分電盤」が備える構成であるのに対し、引用発明の「充電管理サーバー18」は、「分電盤14」が備える構成ではない点。
[相違点3]
本願発明は「前記特定の人が利用する建物は、専有部と共有部に分かれる集合住宅であり、前記分電盤は、共有部用の電線からの電力が供給される」のに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
第6 相違点についての判断
1 相違点1について
引用発明において、「充電ポスト10」は「集合住宅の駐車場における各駐車位置に対応して立設され」たものであって、当該駐車場及び「充電ポスト10」を利用するのは、通常は「集合住宅」の住人である。そうすると、「集合住宅」の住人は、本願発明の「特定の人」であるといえるから、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
2 相違点2について
引用文献2に記載の技術事項は、「分電盤20」に備えられた「分電盤制御部21」は、「個別負荷41~43への電力の供給の可否をそれぞれ切り替えることが可能な複数の切り替えスイッチ群24」を「自動的に切断させる信号を生成」することにより、「複数の開閉器の開閉制御」を行ったり、「各負荷に分岐している電力線の電流量を電流センサ群22から読み取り、読み取った電流値を用いて、各負荷に供給する電力などの情報を収集」して、「電流センサ群22」から「消費電力量の情報」を取得することにより、「複数の電力量センサ」から「消費電力量の情報の取得」を行ったりする機能を果たすものである。つまり、当該機能を果たす構成である「分電盤制御部21」を「分電盤20」の内部に備えることは、引用文献2に記載されている技術事項である。
そして、引用文献2に記載の「分電盤20」に備えられた「分電盤制御部21」は、本願発明の「分電盤」が備える「複数の開閉器及び複数の電力量センサと接続され」、「前記複数の開閉器の開閉制御及び前記複数の電力量センサから消費電力量の情報の取得を行う」「一つの制御装置」に相当する。
してみると、引用発明において、「分電盤14」の外部ではあるものの、「充電管理サーバー18」は、「前記複数の開閉器及び前記複数の電力量センサと接続され」、「前記複数の開閉器の開閉制御及び前記複数の電力量センサから電気料金算出のための前記消費電力量の情報の取得を行う」機能を果たすものであるから、当該機能を果たすための装置(例えば、「充電管理サーバー18」)を、引用文献2に記載の上記技術事項を採用して、「分電盤」の内部に備えることにより、本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
3 相違点3について
引用発明は、「集合住宅の駐車場における各駐車位置に対応して立設されている充電ポスト10の各コンセント11が、それぞれ電力供給線13を介して接続された分電盤14」であるから、「集合住宅」に「専有部」と「共有部」が含まれることは一般常識である。
また、「集合住宅」の「分電盤」に「集合住宅の駐車場における各駐車位置に対応して立設されている充電ポスト10の各コンセント11」を接続する場合、通常、駐車場は「共有部」に属するものであるから、引用発明において、「充電ポスト10の各コンセント11」が接続される「分電盤14」を、共用部用の電線からの電力が供給されるものとすることは、当業者が普通になし得たことである。
4 作用効果について
そして、上記相違点を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
5 請求人の主張について
請求人は、令和7年11月12日に提出した意見書において、次の主張1~3のとおり主張している。
主張1:
引用文献1及び引用文献2の何れにも、専有部と共有部に分かれる集合住宅において、複数の充電器に各々対応する電路毎に電路の遮断を行う複数の開閉器や、複数の開閉器の開閉制御及び複数の電力量センサから電気料金算出のための消費電力量の情報の取得を行う制御装置を備えた分電盤が、共有部用の電線から電力の供給を受けることは開示されていない。例えば、引用文献1には、分電盤14が受電設備15から電力の供給を受けることが記載されているものの、当該受電設備15が共有部用のものであるか否かには触れられていない。また、引用文献2において、分電盤20が設置されるのは共用部の無い住宅であり、分電盤20への電力供給を共用部用の電線から行うことは記載されていない。
主張2:
引用文献2は、個別の住宅やマンションの専有部分(個別の住居部分)のような単一の電力契約の適用範囲内(一需要家の範囲内)を前提とした技術であり、引用文献2において分電盤20に内蔵されている「分電盤制御部21」を、本願発明が前提とする“集合住宅の共有部の電力系統”という、全く異なる適用範囲に適用する動機付けは存在しない。
主張3:
引用文献2に開示される電力供給システムは、発電装置用のパワーコンディショナや分電盤から情報を収集し、発電量に対し負荷の総消費電力量が所定の値以上となるように負荷を起動させることを特徴としたものであり、充電設備を利用する場合のみ継電器16を閉じる形態の引用文献1に引用文献2を組み合わせることに想到するのは当業者に容易ではない。
しかしながら、上記主張1に関しては、上記3に示したとおりであり、請求人の上記主張1は採用できない。
また、上記主張2について検討すると、上記2に示したとおり、複数の開閉器の開閉制御や消費電力量の取得の処理を行う手段(「分電盤制御部21」)を「分電盤」の内部に備えることは、引用文献2に記載されているとおり格別な構成といえるものではない。そして、当該手段を分電盤の内部と外部のいずれに設けるかという事項は、当該分電盤が集合住宅の共有部の電力系統に係るものであるか否か(つまり、電力契約の適用範囲)とは関係しない事項である。
そうすると、引用文献2に記載の分電盤20が、集合住宅の共有部での利用が想定されていないことをもって、引用発明の分電盤14に適用する動機付けが存在しないとはいえず、むしろ、引用発明の分電盤14と引用文献2に記載の分電盤20は、ともに当該分電盤における複数の開閉器の開閉制御及び複数の電力量センサからの消費電力量の情報の取得が可能である点で技術分野が共通するものであるから、請求人の上記主張2は採用できない。
さらに、上記主張3に関しても、上記主張2に関する検討と同様に、引用発明の分電盤14に採用した引用文献2に記載の技術事項である、複数の開閉器の開閉制御や消費電力量の取得の処理を分電盤の内部に備えられた「分電盤制御部21」が行うことは、分電盤の各電力線に接続される負荷の種類とは関係ない事項であるから、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を組み合わせることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の上記主張3は採用できない。
6 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-001313