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特許無効審判

2024-800062

ろ過装置

審判番号
2024-800062
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2022-040441外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7267649
請求日
2024年04月29日
審決日
2025年06月04日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求成立(無効)
当事者
審判長/審判官
分類
P1113.161-ZB (B01D) / P1113.111-ZB (B01D) / P1113.121-ZB (B01D) / P1113.841-ZB (B01D) / P1113.854-ZB (B01D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第9項、特許法第29条第1項第1号、特許法第134条の2第1項、特許法第29条の2、特許法第134条の2第3項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第7267649号発明「ろ過装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論
特許第7267649号の請求項1~2に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯等

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本件特許無効審判事件に係る特許第7267649号(以下、「本件特許」という。)は、株式会社マイ・テクノス(以下、「被請求人」という。)が保有するものであり、その請求項1及び2に係る発明についての出願は、令和4年3月15日に特許出願され、特願2022-40441号として審査され、令和5年4月24日にその特許権の設定登録がされたものである。

本件は、株式会社きりしま(以下、「請求人」という。)により、上記請求項1及び2に係る特許を対象として請求されたものである。

本件における手続の経緯(提出書類等)は、概略、以下のとおりである。

令和 6年 4月29日 審判請求書(請求人)

7月17日 審判事件答弁書(被請求人)

9月30日付け 審理事項通知書

11月 8日 口頭審理陳述要領書(被請求人)

11月11日 口頭審理陳述要領書(請求人)

11月22日 口頭審理

12月18日付け 審決の予告

令和 7年 2月13日 訂正請求書(被請求人)

3月 5日付け 訂正拒絶理由通知書

4月 9日 意見書、手続補正書(被請求人)

第2 訂正請求について

1 被請求人は、令和6年12月18日付けの審決の予告に応答して、令和7年2月13日に訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)を提出し、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正することを求めた(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)。

その後、当審からの令和7年3月5日付け訂正拒絶理由通知書に対し、同年4月9日に、手続補正書(以下、「本件手続補正書」という。)を提出して、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書を補正した(以下、「本件補正」という。)。

2 本件補正の適否について

(1)本件補正は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書について、本件手続補正書に添付のとおり補正するものであり、本件手続補正書と同日に提出された意見書によれば、次の補正を含むものである(当審で補正された箇所に下線を付した。)。

ア 訂正事項1に対する補正事項1

訂正特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2に対する補正事項2

訂正特許請求の範囲の請求項2のうち「前記フィルタ体は、上下に長く延びた形態であり、前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、前記フィルタ体における上側の開口端部は、前記フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する閉止板によって塞がれており、前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されており、前記フィルタ体内では、前記懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突して下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成されるものであり、」

とあるのを、

「前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になっており、前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、前記フィルタ体における上側の開口端部は、前記フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する閉止板によって塞がれており、前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されており、前記フィルタ体内では、前記懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突するものであり、」

に補正する。

ウ 訂正事項3及び4に対する補正事項3

訂正明細書の段落【0006】を削除する。

エ 訂正事項5に対する補正事項4

訂正明細書の段落【0007】に「また、本発明は、工作機械用のクーラント液からスラッジをろ過するろ過装置であって、スラッジを含むクーラント液である懸濁液を、スラッジを除いたクーラント液である清澄液とスラッジとに分離する両端開口筒状のフィルタ体と、前記フィルタ体を収容するケーシングとを備えており、前記フィルタ体は、上下に長く延びた形態であり、前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、前記フィルタ体における上側の開口端部は、前記フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する閉止板によって塞がれており、前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されており、前記フィルタ体内では、前記懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突して下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成されるものであり、前記フィルタ体は、両端開口筒状のろ布と、両端開口筒状の保持筒とを備えており、内側が前記ろ布、外側が前記保持筒という二重構造で筒形のカートリッジ状に構成されており、前記ろ布の上下開口端部は、それぞれ対応する前記保持筒の開口端部で外向きに折り返され、当該折り返し部分が耐水テープ又はOリングで前記保持筒に固定されて、前記フィルタ体における上下の開口端部が構成されており、前記フィルタ体における下側の開口端部に鍔状のフランジ板が配置されており、前記閉止板と前記フランジ板とを複数本のステーボルトにて互いに引き寄せるように締結するにあたり、前記閉止板に形成された下向き嵌合溝に、前記フィルタ体における上側の開口端部が嵌め込まれ、前記フランジ板に形成された上向き嵌合溝に、前記フィルタ体における下側の開口端部が嵌め込まれているものも含んでいる。」

とあるのを、

「本発明は、工作機械用のクーラント液からスラッジをろ過するろ過装置であって、スラッジを含むクーラント液である懸濁液を、スラッジを除いたクーラント液である清澄液とスラッジとに分離する両端開口筒状のフィルタ体と、前記フィルタ体を収容するケーシングとを備えており、前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になっており、前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、前記フィルタ体における上側の開口端部は、前記フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する閉止板によって塞がれており、前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されており、前記フィルタ体内では、前記懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突するものであり、前記フィルタ体は、両端開口筒状のろ布と、両端開口筒状の保持筒とを備えており、内側が前記ろ布、外側が前記保持筒という二重構造で筒形のカートリッジ状に構成されており、前記ろ布の上下開口端部は、それぞれ対応する前記保持筒の開口端部で外向きに折り返され、当該折り返し部分が耐水テープ又はOリングで前記保持筒に固定されて、前記フィルタ体における上下の開口端部が構成されており、前記フィルタ体における下側の開口端部に鍔状のフランジ板が配置されており、前記閉止板と前記フランジ板とを複数本のステーボルトにて互いに引き寄せるように締結するにあたり、前記閉止板に形成された下向き嵌合溝に、前記フィルタ体における上側の開口端部が嵌め込まれ、前記フランジ板に形成された上向き嵌合溝に、前記フィルタ体における下側の開口端部が嵌め込まれているものを含んでいる。」

に補正する。

(2)本件補正についての当審の判断

ア 訂正請求書の補正は、特許法第134条の2第9項において準用する第131条の2第1項の規定によれば、訂正請求書の要旨を変更するものであってはならない。

以下、この観点に立って検討する。

イ 訂正事項2に対する補正事項2について

まず、補正事項2について検討すると、補正事項2は、訂正特許請求の範囲の請求項2に記載された「上下に長く延びた形態であり」との事項を「前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり」に変更して、「前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になっており」との事項を追加し、さらに、「下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成される」との事項を削除するものであり、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等に該当しないことは明らかであって、訂正事項2を変更するものである。

ウ 訂正事項5に対する補正事項4について

次に、補正事項4について検討すると、補正事項4は、訂正明細書の段落【0007】に記載された「上下に長く延びた形態であり」との事項を「前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり」に変更して、「前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になっており」との事項を追加し、さらに、「下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成される」との事項を削除するものであり、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等に該当しないことは明らかであって、訂正事項5を変更するものである。

エ 本件補正は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書についての補正であり、本件訂正請求書の補正を行うものではないが、訂正請求書の請求の趣旨と訂正明細書等は一体のものであるから、訂正特許請求の範囲及び訂正明細書に対しての本件補正にともない、実質的に訂正請求書も同様の補正がされたといえる。

そして、上記イ、ウで検討したとおり、上記補正事項2、4は、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等に該当しないものであって、訂正事項を変更するものであるから、本件訂正請求書の要旨を変更するものである。

(3)被請求人の主張について

被請求人は、令和7年4月9日付け意見書において、補正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合すること、及び、補正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合することを主張している(第5ページ第16行~第6ページ第19行、第7ページ第9~22行)。

しかしながら、被請求人の上記主張は、訂正要件に対する主張であって、訂正請求書の要旨を変更しないことに対する主張でないから、採用できない。

(4)本件補正の適否についてのまとめ

以上のとおりであるから、補正事項2、4を含む本件補正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するものではないため、認めることはできない。

3 本件訂正の適否について

(1)訂正の趣旨及び訂正の内容

本件訂正請求は、特許法第134条の2第3項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1、2〕を訂正の単位として、訂正請求書の請求の趣旨に記載されるとおり、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを求めるものである。

そして、その訂正の内容は、上記2で述べたとおり、本件補正は認めることができないので、本件訂正請求書の請求の理由の欄に記載された、次の訂正事項1~5のとおりである(下線は訂正箇所。)。

ア 訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に

「前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になっており、
前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、前記フィルタ体における上側の開口端部は、前記フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する閉止板によって塞がれており、
前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されている」とあるのを
「前記フィルタ体は、上下に長く延びた形態であり、前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、前記フィルタ体における上側の開口端部は、前記フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する閉止板によって塞がれており、前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されており、
前記フィルタ体内では、前記懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突して下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成される」に訂正する。

イ 訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2に

「前記フィルタ体は、両端開口筒状のろ布と、両端開口筒状の保持筒とを備えており、内側が前記ろ布、外側が前記保持筒という二重構造で筒形のカートリッジ状に構成されている、
請求項1に記載したろ過装置。」とあるのを、
「工作機械用のクーラント液からスラッジをろ過するろ過装置であって、
スラッジを含むクーラント液である懸濁液を、スラッジを除いたクーラント液である清澄液とスラッジとに分離する両端開口筒状のフィルタ体と、前記フィルタ体を収容するケーシングとを備えており、
前記フィルタ体は、上下に長く延びた形態であり、前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、前記フィルタ体における上側の開口端部は、前記フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する閉止板によって塞がれており、前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されており、
前記フィルタ体内では、前記懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突して下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成されるものであり、
前記フィルタ体は、両端開口筒状のろ布と、両端開口筒状の保持筒とを備えており、内側が前記ろ布、外側が前記保持筒という二重構造で筒形のカートリッジ状に構成されており、
前記ろ布の上下開口端部は、それぞれ対応する前記保持筒の開口端部で外向きに折り返され、当該折り返し部分が耐水テープ又はOリングで前記保持筒に固定されて、前記フィルタ体における上下の開口端部が構成されており、前記フィルタ体における下側の開口端部に鍔状のフランジ板が配置されており、
前記閉止板と前記フランジ板とを複数本のステーボルトにて互いに引き寄せるように締結するにあたり、前記閉止板に形成された下向き嵌合溝に、前記フィルタ体における上側の開口端部が嵌め込まれ、前記フランジ板に形成された上向き嵌合溝に、前記フィルタ体における下側の開口端部が嵌め込まれている、
ろ過装置。」に訂正する。

ウ 訂正事項3

明細書の段落【0006】に

「前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になっており、」とあるのを、

「前記フィルタ体は、上下に長く延びた形態であり、」に訂正する。

エ 訂正事項4

明細書の段落【0006】に

「前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されているというものである。」とあるのを、

「前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されており、前記フィルタ体内では、前記懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突して下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成されるものである。」に訂正する。

オ 訂正事項5

明細書の段落【0007】に

「本発明のろ過装置において、前記フィルタ体は、両端開口筒状のろ布と、両端開口筒状の保持筒とを備えており、内側が前記ろ布、外側が前記保持筒という二重構造で筒形のカートリッジ状に構成されているようにしてもよい。」とあるのを、

「また、本発明は、工作機械用のクーラント液からスラッジをろ過するろ過装置であって、スラッジを含むクーラント液である懸濁液を、スラッジを除いたクーラント液である清澄液とスラッジとに分離する両端開口筒状のフィルタ体と、前記フィルタ体を収容するケーシングとを備えており、前記フィルタ体は、上下に長く延びた形態であり、前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、前記フィルタ体における上側の開口端部は、前記フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する閉止板によって塞がれており、前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されており、前記フィルタ体内では、前記懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突して下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成されるものであり、前記フィルタ体は、両端開口筒状のろ布と、両端開口筒状の保持筒とを備えており、内側が前記ろ布、外側が前記保持筒という二重構造で筒形のカートリッジ状に構成されており、前記ろ布の上下開口端部は、それぞれ対応する前記保持筒の開口端部で外向きに折り返され、当該折り返し部分が耐水テープ又はOリングで前記保持筒に固定されて、前記フィルタ体における上下の開口端部が構成されており、前記フィルタ体における下側の開口端部に鍔状のフランジ板が配置されており、前記閉止板と前記フランジ板とを複数本のステーボルトにて互いに引き寄せるように締結するにあたり、前記閉止板に形成された下向き嵌合溝に、前記フィルタ体における上側の開口端部が嵌め込まれ、前記フランジ板に形成された上向き嵌合溝に、前記フィルタ体における下側の開口端部が嵌め込まれているものも含んでいる。」に訂正する。

(2)訂正要件の判断

ア 訂正事項1について

(ア)訂正事項1は、「前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になっており」を「前記フィルタ体は、上下に長く延びた形態であり」とする訂正(以下、「訂正事項1-1」という。)、及び、「懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突して下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成される」との記載を追加する訂正(以下、「訂正事項1-2」という。)を含むものである(下線は当審で付した。)。

(イ)訂正事項1-1について

訂正前の「前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になっており」は、

a 「フィルタ体は、懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態」であること、

b 「懸濁液の流れ方向が上下に延びる」こと、

c 「フィルタ体の長手方向が上下に延びる」こと、及び

d 「懸濁液の流れ方向」と「フィルタ体の長手方向」が「上下に延びる平行状」であること、

を特定していたところ、訂正事項1-1によって、フィルタ体が上下に延びること、すなわち、cのみを特定するものとされた。そうすると、訂正事項1-1によって、上記a、b、及びdの構成が削除されているのであるから、その技術的範囲が拡張又は変更されていることは、明らかである。

そうすると、訂正事項1-1は、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。

(ウ)訂正事項1-2について

本件の願書に添付した明細書及び図面の記載を確認すると、訂正事項1-2に関連する記載として、【0027】には、「懸濁液は下から上に流れ込み、ろ布16付き保持筒17の上開口端部を塞ぐ閉止板18に衝突するため、その液流圧力は閉止板18との衝突によって弱められる。」との記載があり、【0028】には、「ろ布16付き保持筒17は、懸濁液の流れ方向(上下方向)に沿って長く延びた形態であり、懸濁液の流れ方向とろ布16の長手方向とが平行状であるから、懸濁液の液流圧力はろ布16に直接作用し難い。このため、実施形態によると、懸濁液の液流圧力によってろ布16が破れるおそれは、まったく又はほとんどないのである。」との記載があり、図3には、下から上に向かい、閉止板付近で折り返す形をした、懸濁液と記載された白抜き矢印の記載がある。

しかし、【0027】の記載からは、懸濁液が下から上に向かい、閉止板に衝突することは理解できるが、懸濁液が「閉止板に衝突して、その流れが下向きになるというように」「フィルタ体の長手方向に沿った懸濁液の流れが形成される」ことが記載されているとはいえない。

また、【0028】には、「懸濁液の流れ方向(上下方向)に沿って長く延びた形態であり、懸濁液の流れ方向とろ布16の長手方向とが平行状である」と記載されているが、その後に「懸濁液の液流圧力はろ布16に直接作用し難い」と記載されていることから、ここでいう「懸濁液の流れ方向(上下方向)」とは、懸濁液が流入して、閉止板に衝突する前までの流れを意味していると理解できる。したがって、【0028】にも、懸濁液が「閉止板に衝突して、その流れが下向きになるというように」「フィルタ体の長手方向に沿った懸濁液の流れが形成される」ことが記載されているとはいえない。

さらに、図3では、懸濁液と記載された白抜き矢印が、閉止板近傍で上向きから折り返して下向き矢印になる図は記載されているが、フィルタ体に沿った下向きの矢印の記載はない。そうすると、閉止板近傍で上向き矢印が下向き矢印に折り返していることは、懸濁液の閉止板への衝突を意味すると理解されるが、その後、「流れが下向きになるというように」「フィルタ体の長手方向に沿った懸濁液の流れが形成される」ことまでが示されているとはいえない。

また、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面のその余の記載をみても、「流れが下向きになるというように」「フィルタ体の長手方向に沿った懸濁液の流れが形成される」ことは記載されていない。

してみれば、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面には「懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突して下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成される」ことが記載されているとはいえない。

そうすると、訂正事項1-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。

(エ)小括

したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであるから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しない。

(オ)被請求人の主張について

被請求人は、本件訂正請求書において、【0027】の「実施形態では、下ケース3からフィルタ体15内に向かう懸濁液は下から上に流れ込み、ろ布16付き保持筒17の上開口端部を塞ぐ閉止板18に衝突するため、その液流圧力は閉止板18との衝突によって弱められる。………」との記載、【0028】の「ろ布16付き保持筒17は、懸濁液の流れ方向(上下方向)に沿って長く延びた形態であり、懸濁液の流れ方向とろ布16の長手方向とが平行状であるから、懸濁液の液流圧力はろ布16に直接作用し難い。………」との記載、及び、図3で、懸濁液の流れを説明する白抜き矢印が、フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、閉止板に衝突して下向きになるというように、フィルタ体の長手方向に沿って描かれていることを根拠にして、訂正事項1は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である旨主張している。

しかし、上記(ウ)で検討したとおり、【0027】、【0028】及び図3の記載から、「懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突して下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成される」が記載されているとはいえないため、上記主張は採用できない。

イ 訂正事項2について

訂正事項2は、

(ア)訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を独立形式に書き下した上で、

「前記フィルタ体は、上下に長く延びた形態であり、前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、前記フィルタ体における上側の開口端部は、前記フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する閉止板によって塞がれており、前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されており、
前記フィルタ体内では、前記懸濁液が前記フィルタ体における下側の開口端部から上向きに流れ込み、前記閉止板に衝突して下向きになるというように、前記フィルタ体の長手方向に沿った前記懸濁液の流れが形成される」に訂正し(以下、「訂正事項2-1」という。)、
(イ)「前記フィルタ体は、両端開口筒状のろ布と、両端開口筒状の保持筒とを備えており、内側が前記ろ布、外側が前記保持筒という二重構造で筒形のカートリッジ状に構成されている」との記載を「前記フィルタ体は、両端開口筒状のろ布と、両端開口筒状の保持筒とを備えており、内側が前記ろ布、外側が前記保持筒という二重構造で筒形のカートリッジ状に構成されており、
前記ろ布の上下開口端部は、それぞれ対応する前記保持筒の開口端部で外向きに折り返され、当該折り返し部分が耐水テープ又はOリングで前記保持筒に固定されて、前記フィルタ体における上下の開口端部が構成されており、前記フィルタ体における下側の開口端部に鍔状のフランジ板が配置されており、前記閉止板と前記フランジ板とを複数本のステーボルトにて互いに引き寄せるように締結するにあたり、
前記閉止板に形成された下向き嵌合溝に、前記フィルタ体における上側の開口端部が嵌め込まれ、前記フランジ板に形成された上向き嵌合溝に、前記フィルタ体における下側の開口端部が嵌め込まれている」に訂正する(以下、「訂正事項2-2」という。)ものである。

ここで、訂正事項2-1について検討すると、訂正事項2-1は訂正事項1と同様の訂正であり、そうすると、上記1で検討したのと同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。

したがって、訂正事項2-1を含む訂正事項2は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しない。

ウ 訂正事項3について

訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項1についての訂正事項1-1に、明細書の記載を合わせるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

しかし、上記ア(イ)で検討したとおり、訂正事項1-1は、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。

したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。

エ 訂正事項4について

訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項1についての訂正事項1-2に、明細書の記載を合わせるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

しかし、上記ア(ウ)で検討したとおり、訂正事項1-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。

したがって、訂正事項4は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しない。

オ 訂正事項5について

訂正事項5は、訂正事項2による特許請求の範囲の請求項2の訂正に、明細書の記載を合わせるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

しかし、上記イで検討したとおり、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。

したがって、訂正事項5は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しない。

(3)本件訂正の適否についてのまとめ

以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たしておらず、本件訂正請求は適法になされたものとはいえないから、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することは認められない。

第3 本件発明

上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められないので、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」といい、これらをまとめて「本件発明」という場合がある。また、対応する特許を「本件特許1」、「本件特許2」という。)は、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
工作機械用のクーラント液からスラッジをろ過するろ過装置であって、
スラッジを含むクーラント液である懸濁液を、スラッジを除いたクーラント液である清澄液とスラッジとに分離する両端開口筒状のフィルタ体と、前記フィルタ体を収容するケーシングとを備えており、
前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になっており、
前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、前記フィルタ体における上側の開口端部は、前記フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する閉止板によって塞がれており、
前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されている、
ろ過装置。
【請求項2】
前記フィルタ体は、両端開口筒状のろ布と、両端開口筒状の保持筒とを備えており、内側が前記ろ布、外側が前記保持筒という二重構造で筒形のカートリッジ状に構成されている、
請求項1に記載したろ過装置。」

第4 両当事者の主張

1 請求人の主張の趣旨及び理由

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(1)請求人の主張の趣旨

特許第7267649号の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

(2)請求の理由(無効理由及び証拠方法)

ア 無効理由

(ア)無効理由1(拡大先願要件違反)

本件発明1及び2は、本件特許出願の日前の他の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開された甲第1号証に係る特許出願(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、本件特許出願の出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許1及び2は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(イ)無効理由2(新規性、進歩性欠如)

本件発明1は、本件特許出願前に公然知られた、請求人が株式会社神崎高級工機製作所にて改善作業を行ったろ過装置(以下、「甲改善製品」という。)に係る発明であり、特許法第29条第1項第1号に該当し、同条第1項の規定により特許を受けることができないものであるし、また、本件発明2は、甲改善製品に係る発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許1及び2は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

イ 証拠方法

甲第1号証:特開2023-25359号公報
甲第2号証:株式会社きりしま、神崎高級工機様作業報告書、2022年2月4日
甲第3号証:株式会社きりしま 宮本治郎、ろ過装置改善作業報告書、令和4年2月4日
甲第4号証の1及び2:写真(撮影対象:ろ過装置、撮影日:令和4年2月4日、撮影者:宮本治郎、撮影場所:株式会社神崎高級工機製作所)
甲第5号証の1及び2:甲第4号証のEXIF情報
甲第6号証の1及び2:甲第4号証のEXIF情報に含まれる緯度経度を地図上にプロットした画像

以下、「甲第1号証」等を「甲1」等といい、「甲第4号証の1」等を「甲4の1」等という。

なお、甲1~4は審判請求書に添付して、甲5~6は、令和6年11月11日に提出された口頭審理陳述要領書(請求人)に添付して、それぞれ提出されたものである。

2 被請求人の答弁の趣旨及び理由

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(1)被請求人の答弁の趣旨

本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。

(2)答弁の理由(無効理由に対する反論及び証拠方法)

ア 無効理由に対する反論

請求人の主張する無効理由1及び2はいずれも理由がない。

イ 証拠方法

乙第1号証:「デッドエンドろ過,デッドエンド濾過」、一般社団法人粉体工学会粉体工学用語辞典のウエブページ、[令和6年11月7日検索]、一般社団法人粉体工学会、

インターネット<https://www.sptj.jp/powderpedia/words/11487/>

乙第2号証:「クロスフローろ過,クロスフロー濾過」、一般社団法人粉体工学会粉体工学用語辞典のウエブページ、[令和6年11月7日検索]、一般社団法人粉体工学会、

インターネット<https://www.sptj.jp/powderpedia/words/10586/>

以下、「乙1号証」等を「乙1」等という。

なお、乙1及び2は、令和6年11月8日に提出された口頭審理陳述要領書(被請求人)に添付して提出されたものである。

第5 当審の判断

1 甲号証の記載事項

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(1)甲1の記載事項

甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様。)。

ア「【0021】

以下に図面を用いて本発明に係るフィルタ装置の実施形態を説明する。本実施形態では、切削機械や研削機械等(以下、工作機械と総称する)の洗浄,冷却,潤滑等に用いられ、切削屑や研削屑等のスラッジ(本発明における固形異物の例)を含むクーラント液(本発明における汚濁流体の例)を濾過するフィルタ装置として用いている。

【0022】

〔フィルタ装置の全体構成〕

図1は、本実施形態におけるフィルタ装置Aの概略斜視図である。また、図2は図1におけるII-II断面図である。これらの図に示すように、フィルタ装置Aは、工作機械の洗浄等に用いられたクーラント液を流入させる流入パイプ81と、クーラント液が流入する中空のケーシング1と、濾過されたクーラント液を流出させる流出パイプ82と、濾過されたスラッジをケーシング外に排出する排出パイプ83と、を備えている。また、ケーシング1の内部にはクーラント液を濾過するフィルタ部4が備えられている。

【0023】

ケーシング1は、ドーム状の天井を有し、下方に開口する略筒状の上部ケーシング11と、上方に開口する略漏斗状の下部ケーシング12と、から構成されている。上部ケーシング11および下部ケーシング12の内部には空間が形成されており、それぞれ上部空間1a、下部空間1bと称する。上部ケーシング11の下端部には周外方向に突出する平板リング状の上部フランジ11aが形成されている。一方、下部ケーシング12の上端部には周外方向に突出する平板リング状の下部フランジ12aが形成されている。上部フランジ11aと下部フランジ12aとをネジ等を用いて水密に締結することにより、上部ケーシング11と下部ケーシング12とが連結固定され、ケーシング1を形成する。このとき、それぞれの開口が一致するように固定され、下部空間1bと上部空間1aとが連通している。

【0024】

流入パイプ81は下部ケーシング12に形成された流入口2に接続され、流出パイプ82は上部ケーシング11形成された流出口3に接続されている。また、排出パイプ83は下部ケーシング12の下端部に接続されており、接続部分近傍には排出パイプ83の流路を開閉するための排出バルブ84が備えられている。

【0025】

図3に示すように、フィルタ部4は略筒状であり、下方に開口する導入口4aが形成されている。フィルタ部4は、導入口4aが上部ケーシング11の開口と下部ケーシング12の開口と一致するように配置されている。そのため、この導入口4aを介して、クーラント液が下部空間1bから上部空間1a、より具体的には、フィルタ部4の内部へと流入する。また、図2に示すように、フィルタ部4の外周面と上部ケーシング11の内周面との間には間隙が形成されており、濾過されたクーラント液の流路となっている。なお、図2では後述するフィルタ体5は省略している。

【0026】

〔フィルタ部〕

図3はフィルタ部4の下方から見た斜視図であり、図4は上部ケーシング11を外した状態でのフィルタ装置Aの分解斜視図である。図に示すように、本実施形態におけるフィルタ部4は、フィルタ体5と、フィルタ体5を内包する支持体6と、を備えている。

【0027】

フィルタ体5は、スラッジを含むクーラント液を濾過し、クーラント液からスラッジを除去するためのものであり、濾過対象の粒径よりも細い目を有する濾布等である。フィルタ体5としては、合成繊維製の不織布やプラスチック繊維布等を単層または複層に形成したものを用いることができる。本実施形態におけるフィルタ体5は両端が開口する筒状であるが、一端が開口する袋状であっても構わない。

【0028】

支持体6は、両端が開口する筒状の支持ドラム61と、支持ドラム61の上方の開口を閉塞する天部支持板62と、下部フランジ12aから立設された支持軸63と、を備えている。支持軸63の先端には雄ねじ部63aが形成されている。一方、天部支持板62には支持軸63の雄ねじ部63aを挿通する挿通孔62aが形成されている。支持ドラム61の壁面には複数の漏出孔61aが略均一に形成されている。この漏出孔61aの径はスラッジの粒径と比べて大きいものではあるが、特に制限はない。なお、漏出孔61aの径が小さ過ぎるとクーラント液の流出を阻害するため、好ましくない。

【0029】

フィルタ部4を組み立てる際には、支持ドラム61の内部に、その内周面を覆うようにフィルタ体5を配置し、フィルタ体5の上端部と下端部とを外側に折り返す。そして、図4に示すように、支持ドラム61を下部フランジ12a上に載置する。その後、天部支持板62の雄ねじ部63aを天部支持板62の挿通孔62aに挿通するように天部支持板62を配置し、雄ねじ部63aに対してナット64を締め付ける。

【0030】

なお、図4の例では、フィルタ部4は下部ケーシング12に固定されているが、図5に示すように、下部ケーシング12とは別体とすることもできる。図5の例では、下部フランジ12aと同形状の底部支持板65を備えており、支持軸63は底部支持板65に立設されている。その他の構成は図4と同様である。なお、上部ケーシング11と下部ケーシング12とを連結固定する際には、底部支持板65は上部フランジ11aおよび下部フランジ12aとともに締結固定される。

【0031】

なお、本発明に係るフィルタ装置Aは、流出阻害部7(後述する)を備えているが、図2から図5には表していない。

【0032】

〔濾過処理〕

ここで、図2を用いて、本実施形態におけるフィルタ装置Aによってクーラント液を濾過する処理過程を説明する。なお、図中の矢印はクーラント液の流れを示している。

【0033】

工作機械の洗浄等に使用され、スラッジが混入したクーラント液は、流入パイプ81から下部ケーシング12の下部空間1b内に流入する。このとき、排出バルブ84は閉められており、クーラント液は排出パイプ83からは流出しない。そのため、クーラント液の流入が継続すると、下部空間1b内のクーラント液の水位が上昇する。そして、水位が下部空間1bの上端を越えると、クーラント液は導入口4aを介して上部空間1a、すなわち、フィルタ部4の内部へと流入する。フィルタ部4の内部に流入したクーラント液には、さらなるクーラント液の流入による下方からの圧力が加わっており、フィルタ部4の内部がクーラント液で満たされた状態では、この圧力はフィルタ部4の内部のクーラント液をフィルタ部4の外部に流出させる力として作用する。なお、本実施形態では、フィルタ部4の上部は板状の天部支持板62で閉塞されているため、フィルタ部4の内部のクーラント液はフィルタ部4の径外方向にのみ流出することができる。このとき、比較的比重の大きなスラッジは沈降するが、比重の小さなスラッジはフィルタ部4の内部に漂っている。このようなスラッジに対して径外方向への圧力が作用する。上述したように、フィルタ体5の目はスラッジの粒径よりも細かいため、この径外方向への圧力によってスラッジはフィルタ体5の内面に付着し、クーラント液のみがフィルタ体5の外方に流出する。

【0034】

このようにして、フィルタ体5によって濾過されたクーラント液は支持ドラム61の漏出孔61aからフィルタ部4の外部に流出する。フィルタ部4の外部に流出したクーラント液は、フィルタ部4と上部ケーシング11との間に形成された流路を通って、流出パイプ82へと流れる。そして、流出パイプ82から外部に流出したクーラント液は循環流路を通って還流し、再度工作機械の洗浄等に使用される。

【0035】

〔スラッジの排出処理〕

このようなフィルタ装置Aでは、上述したように、スラッジはフィルタ体5の内面に付着する。フィルタ体5の内面にスラッジが付着すると濾過性能が低下するため、所定のタイミングでフィルタ体5からスラッジを除去する必要がある。その場合には、図示しない流入パイプ81のバルブと流出パイプ82のバルブとを閉め、排出バルブ84を開く。そして、フィルタ部4の内部に溜まっていたクーラント液とともにフィルタ体5の内面に付着しているスラッジを排出パイプ83から排出する。」

イ 「
[図:0001425667000001.jpg]
[図:0001425667000002.jpg]
[図:0001425667000003.jpg]
[図:0001425667000004.jpg]
[図:0001425667000005.jpg]
」

(2)甲2の記載事項

「
[図:0001425667000006.jpg]
」

(3)甲3の記載事項

「
[図:0001425667000007.jpg]
」

(4)甲4の記載事項

ア 甲4の1

「
[図:0001425667000008.jpg]
」

イ 甲4の2

「
[図:0001425667000009.jpg]
」

(5)甲5の記載事項

ア 甲5の1

「
[図:0001425667000010.jpg]
」

イ 甲5の2

「
[図:0001425667000011.jpg]
」

(6)甲6の記載事項

ア 甲6の1

「
[図:0001425667000012.jpg]
」

イ 甲6の2

「
[図:0001425667000013.jpg]
」

2 無効理由1について

(1)甲1に記載された発明(先願発明)

ア 甲1には、上記1(1)アによれば、「切削機械や研削機械等(以下、工作機械と総称する)の洗浄,冷却,潤滑等に用いられ、切削屑や研削屑等のスラッジ・・・を含むクーラント液・・・を濾過するフィルタ装置」(【0021】)であって、「フィルタ装置Aは、工作機械の洗浄等に用いられたクーラント液を流入させる流入パイプ81と、クーラント液が流入する中空のケーシング1と、濾過されたクーラント液を流出させる流出パイプ82と、濾過されたスラッジをケーシング外に排出する排出パイプ83と、を備え・・・ケーシング1の内部にはクーラント液を濾過するフィルタ部4が備えられている」(【0022】)ことが記載されている。

そうすると、甲1には、工作機械に用いられ、スラッジを含むクーラント液を濾過するフィルタ装置Aであって、クーラント液を流入させる流入パイプ81と、クーラント液が流入する中空のケーシング1と、濾過されたクーラント液を流出させる流出パイプ82と、濾過されたスラッジをケーシング1外に排出する排出パイプ83と、ケーシング1の内部にクーラント液を濾過するフィルタ部4とを備えた、フィルタ装置Aが記載されているといえる。

イ 甲1には、上記「フィルタ部4」に関して、上記1(1)アによれば、「フィルタ部4は略筒状」(【0025】)であること、「フィルタ部4は、フィルタ体5と、フィルタ体5を内包する支持体6と、を備えて」(【0026】)おり、「フィルタ体5は両端が開口する筒状」(【0027】)であり、「支持体6は、両端が開口する筒状の支持ドラム61と、支持ドラム61の上方の開口を閉塞する天部支持板62と・・・を備えている」(【0028】)こと、「支持ドラム61の内部に、その内周面を覆うようにフィルタ体5を配置」(【0029】)されることが記載されている。

そうすると、甲1には、フィルタ部4が、両端が開口する筒状のフィルタ体5、両端が開口する筒状の支持ドラム61、支持ドラム61の上方の開口を閉塞する天部支持板62を備え、支持ドラム61の内部に、その内周面を覆うようにフィルタ体5を配置された、略筒状のフィルタ部4であることが記載されているといえる。

ウ 甲1には、上記「フィルタ体5」に関して、上記1(1)アによれば、「フィルタ体5は、スラッジを含むクーラント液を濾過し、クーラント液からスラッジを除去するためのものであり、濾過対象の粒径よりも細い目を有する濾布等である」(【0027】)ことが記載されている。

そうすると、甲1には、フィルタ体5が、スラッジを含むクーラント液からスラッジを除去するための濾布であることが記載されているといえる。

エ 甲1には、上記「フィルタ部4」に関して、上記1(1)アによれば、「フィルタ部4は・・・下方に開口する導入口4aが形成されて」おり、「この導入口4aを介して、クーラント液が・・・フィルタ部4の内部へと流入する」(【0025】)ことが記載されている。そして、同イの図3からは、フィルタ部4の下部に導入口4aがあることが見て取れる。さらに、同イの図1~5と照らし合わせれば、図3における紙面上の上下方向が「フィルタ装置A」を設置した際の上下方向であって、フィルタ部4の長手方向であるといえる。

そうすると、甲1には、フィルタ部4の長手方向が上下に延びていること、フィルタ部4には、下方に開口する導入口4aがあり、この導入口4aを介してクーラント液がフィルタ部4に流入することが記載されているといえる。

オ 甲1には、上記「濾過されたスラッジをケーシング1外に排出する排出パイプ83」に関して、上記1(1)アによれば、「ケーシング1は、・・・上部ケーシング11と・・・下部ケーシング12と、から構成されている」(【0023】)こと、「排出パイプ83は下部ケーシング12の下端部に接続されて」(【0024】)いることが記載されている。また、同イの図1、2、5からは、フィルタ装置Aのケーシング1又は下部ケーシング12の下端部に排出パイプ83が備えられていることが見て取れる。

そうすると、甲1には、ケーシング1の下端部に、スラッジをケーシング1外に排出する排出パイプ83を備えていることが記載されているといえる。

カ 上記ア~オの記載事項を整理すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。

「工作機械に用いられ、スラッジを含むクーラント液を濾過するフィルタ装置Aであって、
スラッジを含むクーラント液からスラッジを除去する、両端が開口する筒状の濾布であるフィルタ体5と、両端が開口する筒状の支持ドラム61と支持ドラム61の上方の開口を閉塞する天板支持板62を備え、支持ドラム61の内側にフィルタ体5が配置される、略筒状のフィルタ部4を備え、フィルタ部4はケーシング1の内部に備えられており、
フィルタ部4は長手方向が上下に延びており、
フィルタ部4には、下方に開口する導入口4aがあり、この導入口4aを介してクーラント液がフィルタ部4に流入し、
ケーシング1の下端部に、スラッジをケーシング1外に排出する排出パイプ83を備える、
装置。」(以下、「先願発明」という。)

(2)本件発明1について

ア 本件発明1と先願発明を対比すると、両者の対応関係は次のとおりであると認められる。

(ア)先願発明の「工作機械に用いられ」、「濾過するフィルタ装置A」は、それぞれ、本件発明1の「工作機械用の」、「ろ過装置」に相当する。

また、スラッジは、クーラント液に溶解するものではなく、クーラント液中に懸濁状態で含まれるものであるから、先願発明の「スラッジを含むクーラント液」は、本件発明1の「懸濁液」に相当するし、「スラッジを含むクーラント液からスラッジを除去する」ことは、本件発明1の「スラッジを含むクーラント液」を「スラッジを除いたクーラント液である清澄液とスラッジとに分離する」ことに相当する。

(イ)先願発明の「フィルタ部4」、「フィルタ部4はケーシング1の内部に備えられており」は、それぞれ、本件発明1の「フィルタ体」、「前記フィルタ体を収容するケーシングとを備えており」に相当する。

また、先願発明の「略筒状のフィルタ部4」は、「両端が開口する筒状の濾布であるフィルタ体5と、両端が開口する筒状の支持ドラム61と・・を備え」るものであるから、本件発明1の「両端開口筒状のフィルタ体」に相当する。

(ウ)先願発明の「フィルタ部4」の「下方に開口する導入口4a」は、本件発明1の「下側の開口端部」に相当し、先願発明において「この導入口4aを介してクーラント液がフィルタ部4に流入」することは、本件発明1の「フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している」に相当する。

(エ)先願発明において、「支持ドラム61」は「フィルタ部4」を構成するものであり、先願発明の「天板支持板62」は、本件発明1の「閉止板」に相当するから、先願発明の「支持ドラム61の上方の開口を閉塞する天板支持板62」は、本件発明1の「フィルタ体における上側の開口端部は、閉止板によって塞がれており」に相当する。

(オ)先願発明の「ケーシング1の下端部」は、本件発明1の「ケーシング底部」に相当し、先願発明の「スラッジをケーシング1外に排出する排出パイプ83を備え」ることは、本件発明1の「スラッジを排出するスラッジ排出管」が「接続されている」ことに相当する。

イ そうすると、本件発明1と先願発明とは、

「工作機械用のクーラント液からスラッジをろ過するろ過装置であって、
スラッジを含むクーラント液である懸濁液を、スラッジを除いたクーラント液である清澄液とスラッジとに分離する両端開口筒状のフィルタ体と、前記フィルタ体を収容するケーシングを備えており、
前記フィルタ体の長手方向が上下に延びており、
前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、フィルタ体における上側の開口端部は、閉止板によって塞がれており、
前記ケーシングの底部には、スラッジを排出するスラッジ排出管が接続されている、
ろ過装置。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。

<相違点1>

本件発明1では、「前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になって」いるのに対し、先願発明では「前記フィルタ部4は長手方向が上下に延びて」いるものである点。

<相違点2>

本件発明1では、「閉止板」が「フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する」ものであるのに対し、先願発明では「天部支持板62」に「懸濁液」である、スラッジを含むクーラント液が「衝突する」ものであることが特定されていない点。

<相違点3>

本件発明1では、「スラッジ排出管」が「前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙して」「連通接続されている」のに対し、先願発明には、そのような特定がない点。

ウ 相違点について

(ア)相違点1について

a 本件特許の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明(以下、「本件の発明の詳細な説明」という。)には、本件発明1について、「懸濁液が」「下向き開口状のフィルタ体15内に流れ込み、フィルタ体15を内から外向きに通過することによって懸濁液を清澄液(スラッジを除いたクーラント液)とスラッジとに分離するろ過処理が実行され」る(【0024】)ものであり、「フィルタ体15内に向かう懸濁液は下から上に流れ込み、ろ布16付き保持筒17の上部を塞ぐ閉止板18に衝突する」(【0027】)ことが記載されているから、本件発明1の「前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になって」とは、懸濁液がフィルタ体の下から上に流れ込むこと、及び、上部の閉止板によってフィルタ体が塞がれていて、懸濁液の全量がフィルタ体を内から外向きに通過することによってろ過を行うことを意味していると理解される。

b 他方で、先願発明では、「フィルタ部4は、下方に開口する導入口4aがあり、この導入口4aを介してクーラント液がフィルタ部4に流入する」のであるから、懸濁液であるクーラント液はフィルタ部4の下方から上方に向けて流入するものである。

そして、上記1(1)アによれば、「フィルタ部4の内部に流入したクーラント液には、さらなるクーラント液の流入による下方からの圧力が加わっており、フィルタ部4の内部がクーラント液で満たされた状態では、この圧力はフィルタ部4の内部のクーラント液をフィルタ部4の外部に流出させる力として作用する。・・・フィルタ部4の上部は板状の天部支持板62で閉塞されているため、フィルタ部4の内部のクーラント液はフィルタ部4の径外方向にのみ流出することができる」(【0033】)とされている。

してみれば、フィルタ部4の内部がクーラント液で満たされた状態では、天板支持部62によりフィルタ部4の上部は閉塞されているのであるから、クーラント液がフィルタ部4の径外方向のみに流出する、つまり、クーラント液は全量が径外方向に流出するものといえる。

即ち、先願発明では、フィルタ部4の内部がクーラント液で満たされた状態で、クーラント液は、フィルタ部4の下方から上方に向けて流入し、その全量はフィルタ部4の径外方向に流出するものである。

したがって、先願発明の「フィルタ部4の内部がクーラント液で満たされた状態で、クーラント液は、フィルタ部4の下方から上方に向けて流入し、その全量はフィルタ部4の径外方向に流出する」というクーラント液の流れは、本件発明1の「懸濁液が、フィルタ体に向かう懸濁液が下から上に流れ込むこと、上部の閉止板によってフィルタ体が塞がれていて、その全量がフィルタ体を内から外向きに通過することによってろ過を行うこと」と同じであり、本件発明1と、先願発明とは、クーラント液の流れ方向は同じである。

c 上記a、bを併せ考えると、本件発明1が、「前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になって」いるのであれば、クーラント液の流れ方向が同じ先願発明においても、「前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になって」いるといえる。

したがって、相違点1は実質的なものではない。

(イ)相違点2について

本件の発明の詳細な説明には、「衝突」の定義は記載されていない。そして、広辞苑(株式会社岩波書店、第四版)によれば、衝突とは、「つきあたること。ぶつかること。」である。

ここで、先願発明において、懸濁液であるスラッジを含むクーラント液は、上記1(1)アによれば、「フィルタ部4の上部は板状の天部支持板62で閉塞されているため・・フィルタ部4の径外方向にのみ流出することができる」(【0033】)ものである。そうすると、クーラント液は、上部を閉塞する天部支持板62につきあたっているといえるし、ぶつかっているといえる。

したがって、相違点2は実質的なものではない。

(ウ)相違点3について

上記1(1)イの図2から、先願発明においては、排出パイプ83は、「フィルタ部4」の「下方に開口する導入口4a」に対峙して配置されていることが看取される。また、同アによれば「フィルタ部4の内部に溜まっていたクーラント液とともにフィルタ体5の内面に付着しているスラッジを排出パイプ83から排出する」(【0035】)のであるから、フィルタ部4内部のクーラント液やスラッジが排出パイプ83から排出されることがわかるので、先願発明においても排出パイプ83がフィルタ部4に連通接続されているといえる。

したがって、相違点3は実質的なものではない。

エ 被請求人の主張について

被請求人は、令和6年7月17日に提出した審判事件答弁書において、本件発明1は、フィルタ体に対して平行な流れを作って懸濁液のスラッジがフィルタ体内面に堆積する現象を重力まで利用して抑制しながらろ過を行う「クロスフローろ過技術」を採用したものであるのに対し、先願発明は、フィルタ体内面へのスラッジ付着を前提とする「デッドエンドろ過技術」であり、それぞれが発揮する機能、作用が異なっている旨主張している(3ページ23行~5ページ22行)。

そこで、上記主張について検討すると、乙1及び乙2には、以下の記載がある。

「
[図:0001425667000014.jpg]
」

(乙1)

「
[図:0001425667000015.jpg]
」

(乙2)

そして、上記乙1の記載によれば、デッドエンドろ過では、ろ液の流れ方向がスラリーの供給方向と一致し、スラリーの全量がろ過されてろ液となり、ろ過の進行とともにろ過ケークが成長するものであり、乙2の記載によれば、クロスフローろ過は、スラリーをろ材面と平行に高速で流動させてケーク表面に到達する粒子を掃流するろ過のことであって、ろ過操作中にろ過ケークの成長を阻止するものであり、このことは、本件出願時における技術常識といえる。

一方、本件の発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明1においては、スラッジを含んだクーラント液(懸濁液)をろ過する場合、懸濁液流入管9からケーシング2の下ケース3内に流入した懸濁液が、上ケース4内にある下向き開口状のフィルタ体15内に流れ込み、フィルタ体15を内から外向きに通過することによって、懸濁液を清澄液(スラッジを除いたクーラント液)とスラッジとに分離するろ過処理が実行され、清澄液が清澄液流出管10から放出されるものであり(【0024】)、スラッジのうち比重の大きいものは、フィルタ体15に入り込まずに、又はフィルタ体15に入り込んでも内面(ろ布16)に付着せずに沈降し、下ケース3内に滞留するものであり、スラッジのうち比重の小さいものは、フィルタ体15内面(ろ布16)に付着して次第に厚みを増し(凝集して粗大化し)、粗大化したものが自重や懸濁液の液流圧力によってフィルタ体15内面(ろ布16)から剥離、脱落し、下ケース3内に降下するものである(【0025】)。

そして、上記記載からみれば、本件発明1は、懸濁液がフィルタ体15を内から外向きに通過することによって、懸濁液を清澄液(スラッジを除いたクーラント液)とスラッジとに分離するろ過処理が実行されて、スラッジのうち比重の小さいものは、フィルタ体15内面(ろ布16)に付着して次第に厚みを増す(凝集して粗大化する)ものであるから、スラリーの全量がろ過されてろ液となり、ろ過の進行とともにろ過ケークが成長するものといえるので、デッドエンドろ過を行うものといわざるを得ず、スラリーをろ材面と平行に高速で流動させてケーク表面に到達する粒子を掃流することで、ろ過操作中にろ過ケークの成長を阻止するクロスフローろ過を行うものとはいえない。

してみれば、本件発明1がクロスフローろ過技術を採用したものであり、先願発明がデッドエンドろ過技術であるということをいう上記主張は、本件の発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づかないものであるから、採用できない。

オ 小括

以上のとおり、本件発明1は先願発明と同一である。

(3)本件発明2について

ア 本件発明2と先願発明の対比

本件発明2は、本件発明1に「前記フィルタ体は、両端開口筒状のろ布と、両端開口筒状の保持筒とを備えており、内側が前記ろ布、外側が前記保持筒という二重構造で筒形のカートリッジ状に構成されている」ことを限定するものである。

ここで、先願発明の「支持ドラム61」は、本件発明2の「保持筒」に相当するから、先願発明の「両端が開口する筒状の濾布であるフィルタ体5と、両端が開口する筒状の支持ドラム61と」、「支持ドラム61の内側にフィルタ体5が配置される、略筒状のフィルタ部4を備え」ることは、本件発明2の「両端開口筒状のろ布と、両端開口筒状の保持筒とを備えており、内側が前記ろ布、外側が前記保持筒という二重構造で筒形」に相当する。

そして、フィルタ体をカートリッジ状に構成することは、フィルタを用いるろ過装置においてごく一般的に採用される事項であり、課題解決のための具体的手段における微差(周知技術、慣用技術の付加であって、新たな効果を奏するものではない)といえる。

イ 小括

したがって、本件発明2は、先願発明と実質的に同一である。

(4)無効理由1についてのまとめ

以上のとおり、本件発明1は先願発明と同一であり、本件発明2は先願発明と実質的に同一であるから、本件特許1及び2は特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するため、無効とすべきものである。

3 無効理由2について

(1)甲改善製品について

甲4の1及び甲4の2の写真は、甲5及び甲6によれば、2022年2月4日に、株式会社神崎高級工機製作所において撮影された写真である。したがって、甲4の1及び甲4の2は、株式会社神崎高級工機製作所に存在したろ過装置である甲改善製品についての、2022年2月4日に作成された証拠であるといえる。

次に、甲2には、「No.6」の欄に、「改善対策済みの同型ろ過装置の内部 ろ布「T05」(5ミクロン相当)を取り付け済」の写真があり、この写真は、甲4の2の写真と同一であるため、甲2の「No.6」の写真は、2022年2月4日に株式会社神崎高級工機製作所に存在したろ過装置である甲改善製品に関する写真であるといえ、甲2は、株式会社神崎高級工機製作所に存在したろ過装置である甲改善製品についての証拠であるといえる。

そして、口頭審理において、甲2の原本の作成日が2022年2月4日であることを確認した。

そうすると、甲2も、株式会社神崎高級工機製作所に存在したろ過装置である甲改善製品についての、2022年2月4日に作成された証拠であるといえる。

他方で、甲3は、「ろ過装置改善作業報告書」、「お客様名 株式会社神崎高級工機製作所様」と記載され、報告日が令和4年(2022年)2月4日であり、口頭審理において、原本の作成日が2022年2月4日であることは確認されたが、甲3が、2022年2月4日に株式会社神崎高級工機製作所に存在したろ過装置である甲改善製品に関するものであるといえる十分な根拠はない。

よって、甲3が甲改善製品に関する証拠であるとはいえない。

したがって、甲改善製品に係る発明は、甲2、4に記載された事項から認定する。

(2)公然知られた発明について

特許法第29条第1項第1号にいう「公然知られた」とは、発明の内容が秘密状態を脱した状態をいうものであり、特定の人に知られ、その特定の人に秘密保持義務(守秘義務)がなければ、「公然知られた発明」となると解される。

ここで、甲改善製品について、請求人である株式会社きりしまの従業員が、株式会社神崎高級工機製作所において作業を行っており、令和6年11月11日に提出された口頭審理陳述要領書(請求人)によれば、作業を行った者は守秘義務を課されていない。つまり、甲改善製品は、特定の人である、きりしまの従業員に知られ、該きりしまの従業員に秘密保持義務がない。

そうすると、甲改善製品である甲2、4に記載された装置は、「公然知られた」ものであるといえる。

(3)甲改善製品に係る発明

ア 甲2、4からは、ろ過装置であって、上部が円筒状、下部が円錐状のケーシングを有し、円筒状の部分、円錐状の部分に配管があり(甲2のNo.5の写真)、ろ過装置の内部に、ステンレスパンチングメタルを有し(甲2のNo.1の説明文及び写真)、パンチングメタルにはろ布が取り付けられている(甲2のNo.6の説明文及び写真及び甲4の写真)ものが看取される。

イ そうすると、甲2、4から、甲改善製品について、以下の発明が認定される。

「ろ過装置であって、
上部が円筒状、下部が円錐状のケーシングを有し、ケーシング内部にはろ布が取り付けられたパンチングメタルを有し、上部の円筒状ケーシング部分、下部円錐状ケーシング部分に配管がある、
ろ過装置。」(以下、「甲改善製品発明」という。)

(4)本件発明1について

ア 本件発明1と甲改善製品発明の対比

甲改善製品発明の「ろ布が取り付けられたパンチングメタル」は本件発明1の「フィルタ体」に相当し、甲改善製品発明の「ケーシング内部」に「ろ布が取り付けられたパンチングメタル」があることは、本件発明1の「フィルタ体を収容するケーシングを備え」ていることに相当する。

そうすると、本件発明1と甲改善製品発明は

「ろ過装置であって、
フィルタ体と、フィルタ体を収容するケーシングを備えたろ過装置。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点4>

本件発明1は「工作機械用のクーラント液からスラッジをろ過する」ろ過装置であって、「スラッジを含むクーラント液である懸濁液を、スラッジを除いたクーラント液である清澄液とスラッジとに分離する両端開口筒状のフィルタ体」を備えており、「前記フィルタ体は、前記懸濁液の流れ方向に沿って延びた形態であり、前記懸濁液の流れ方向と前記フィルタ体の長手方向とが上下に延びる平行状になっており、前記フィルタ体における下側の開口端部は、前記懸濁液が流入するように開口している一方、前記フィルタ体における上側の開口端部は、前記フィルタ体内に流入した前記懸濁液が衝突する閉止板によって塞がれており、前記ケーシングの底部には、前記フィルタ体における下側の開口端部に対峙してスラッジを排出するスラッジ排出管が連通接続されている」のに対し、甲改善製品発明はそのような構成を有するか不明である点。

イ 相違点4について

甲改善製品発明が、上記相違点4に係る本件発明1の構成を有することは、甲2、4に記載も示唆もされていないし、このようなことが技術常識であることを示す証拠もないため、上記相違点4は実質的なものであり、本件発明1は、甲改善製品発明であるといえない。

また、上記相違点4に係る本件発明1の構成を有するろ過装置は、甲3に記載されていないし、このようなことが本件特許の出願時の技術常識であるともいえないから、甲改善製品発明において、上記相違点4に係る本件発明1の構成とすることを当業者が容易に想到しうるものともいえない。

ウ 請求人の主張について

請求人は、審判請求書において、甲2~4の記載から、甲改善製品発明を認定した上で、本件発明1と甲改善製品発明とに実質的な相違点がない旨を主張している(9ページ1行~11ページ10行、14ページ15行~17ページ22行)。

しかしながら、上記(1)で述べたとおり、甲3は、甲改善製品に関する証拠とは認められないため、甲3を根拠とした甲改善製品発明の認定を前提とする上記主張は採用できない。

エ 小括

以上のとおり、本件発明1は、甲改善製品発明であるといえないし、甲改善製品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(5)本件発明2について

上記(4)イに記載したとおり、本件発明1は甲改善製品発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえないものである。

そして、本件発明2は本件発明1の構成を全て有するものであるため、本件発明2も、甲改善製品発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(6)無効理由2についてのまとめ

以上のとおり、本件発明1は、本件特許出願前に公然知られた甲改善製品発明であるといえず、本件発明1、2は甲改善製品発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないため、本件発明1、2は特許法第29条第1項第1号及び第2項に該当しないから、無効理由2は理由がない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、本件特許1、2は、無効理由1によって、無効とすべきものである。

本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-800062

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