特許無効審判
2021-800043
保護性通気性材料および保護性通気性材料を製造するための方法
- 審判番号
- 2021-800043
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2018-029686
- 登録番号
- 6743078
- 請求日
- 2021年05月19日
- 審決日
- 2024年01月09日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サーティ エス ピー エイ
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】杉村 光嗣
- 【請求人代理人】深津 拓寛
- 【請求人代理人】時井 真
- 【請求人代理人】伊藤 佐保子
- 【請求人代理人】市枝 信之
- 【被請求人】シーファー アーゲー
- 【被請求人代理人】井上 一
- 審判長/審判官
- 審判長 原 賢一
- 審判官 金 公彦
- 審判官 増山 淳子
- 分類
- P1113.121-ZDA(B01D) / P1113.536-ZDA(B01D) / P1113.851-ZDA(B01D) / P1113.853-ZDA(B01D) / P1113.857-ZDA(B01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第134条の2第6項、特許法第164条の2第2項、特許法第36条第4項、特許法第36条第4号、特許法第134条の2第3項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6743078号発明「保護性通気性材料および保護性通気性材料を製造するための方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6743078号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~12、14〕、〔13、15〕、16について訂正することを認める。
特許第6743078号の請求項13、15、16に係る発明についての特許を無効とする。
特許第6743078号の請求項1~12、14に係る発明についての審判請求は、成り立たない。
審判費用は、その16分の13を請求人の負担とし、16分の3を被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本件特許の出願から設定登録に至るまでの経緯
本件特許無効審判事件に係る特許第6743078号(以下、「本件特許」という。)は、シーファー アーゲー(以下、「被請求人」という。)が保有するものであり、平成30年2月22日(パリ条約による優先権主張 2017年2月23日 (EP)欧州特許庁)に出願され、特願2018-29686号として審査され、令和2年7月31日に特許権の設定登録がされたものである(登録時の請求項の数は「14」、発明の名称は「保護性通気性材料および保護性通気性材料を製造するための方法」)。
2 本件特許無効審判事件における経緯
本件特許無効審判事件は、サーティ エス ピー エイ(以下、「請求人」という。)により請求されたものであって、本件特許の登録時の請求項1~14に係る特許を対象とするものである。
そして、本件特許無効審判事件における手続の経緯(提出書類等)は、概略、以下のとおりである。
令和 3年 5月19日 審判請求書(請求人)
同年 9月16日 審判事件答弁書及び訂正請求書(被請求
人)
同年12月 3日 審判事件弁駁書(請求人)
令和 4年 2月 8日付け 訂正拒絶理由通知書
同年 3月31日 手続補正書及び意見書(被請求人)
同年 5月24日付け 補正許否の決定
同年 8月12日 審判事件答弁書及び訂正請求書(被請求
人)
同年 8月25日 手続補正書(被請求人)
同年10月28日 審判事件弁駁書(請求人)
令和5年 2月 7日付け 審理事項通知
同年 3月16日 口頭審理陳述要領書(請求人、被請求人
)
同年 3月30日 第1回口頭審理、上申書(請求人)
同年 7月 4日付け 審決の予告
なお、令和4年8月12日に訂正の請求がされたので(以下、この請求を「本件訂正請求」という。)、令和3年9月16日にされた先の訂正の請求は、特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなす。また、令和5年7月4日付けの審決の予告において、特許法第164条の2第2項所定の規定にしたがって指定した期間内に、被請求人からの応答はなかった。
第2 両当事者の主張
1 請求の趣旨及び理由
(1) 請求の趣旨は、「特許第6743078号発明の特許請求の範囲の請求項1~14に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」というものである。
(2) 請求の理由(無効理由)は、最終的に令和5年3月30日の第1回口頭審理で整理したとおりの、以下の無効理由1~無効理由6である。
なお、請求人が提出した証拠方法については、後記(3)に挙示した。
ア 無効理由1(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~16に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証、甲第6号証~甲第19号証、甲第22号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
イ 無効理由2(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~16に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第21号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
ウ 無効理由3(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~16に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第8号証~甲第15号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
エ 無効理由4(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~16に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第8号証~甲第15号証、甲第28号証、甲第29号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
オ 無効理由5(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~16に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、甲第1号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
カ 無効理由6(実施可能要件違反)
本件特許に係る発明は、エレクトロスピニング膜と担体層のモノフィラメント布の両方にプラズマコーティングが設けられ、エレクトロスピニング膜の内部の繊維と、モノフィラメント布の内部のフィラメントにもプラズマコーティングが形成されている保護性通気性材料及びその製造方法に関するものであるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、具体的なプラズマ反応装置の構成、反応装置内の温度・圧力条件、原料ガスや処理対象の基材の反応装置内への供給条件等に関する具体的な記載がない。
また、前記発明の詳細な説明に記載された実施例は、特にプラズマコーティングの形成の点で、本件特許に係る発明に相当するものであるかが不明であり、再現性に係るデータも示されていないから、前記発明の詳細な説明に、本件特許に係る発明により所定の効果を奏することが開示されているとはいえない。
このため、前記発明の詳細な説明は、当業者が本件特許に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1項所定の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるので、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(3) 証拠方法
甲第1号証:特表2012-525243号公報
甲第2号証:WO2016/141902A1及び抄訳
甲第3号証:Sefar Customer Information No.6及び抄訳
甲第4号証:特開2011-32613号公報
甲第5号証:特開2013-91886号公報
甲第6号証:特表2002-524313号公報
甲第7号証:特表2002-521179号公報
甲第8号証:特表2011-504207号公報
甲第9号証:WO2013/043397A2及び抄訳
甲第10号証:特表2016-500763号公報
甲第11号証:Woodhead Publishing in Textiles:Number97 "Surface modification of textiles" 126~138頁、表紙、出版年記載頁及び抄訳
甲第12号証:"Applications of Low Pressure Plasma in High-tech Textiles"及び抄訳
https://conference.ep.liu.se/index.php/PSE/article/view/441
甲第13号証:"Plasma treatment advantages for textiles",及び抄訳
https://arxiv.org/abs/0801.3727
甲第14号証:"Plasma polymerization and its applications in textiles" Indian Journal of Fibre & Textile Research Vol.31,pp.99-115及び抄訳
http://www.surfxtechnologies.com/fileaway-directory/full/191.%20Plasma%20polymerization%20and%20its%20applications%20in%20textiles.pdf
甲第15号証:"Plasma Treatment in Textile Industry"Plasma Process. Polym.及び抄訳
https://core.ac.uk/download/pdf/55630271.pdf
甲第16号証:"ELECTROSPUN NANOFIBER SCAFFOLDS AND PLASMA POLYMERIZATION:A PROMISING COMBINATION TOWARDS COMPLETE, STABLE ENDOTHELIAL LINING FOR VASCULAR GRAFTS" Macromol Biosci. 14, 1084-1095
及び抄訳
https://espace2.etsmtl.ca/id/eprint/7808/1/Lerouge%20S%202014%207808%20Electrospun%20nanofiber%20scaffolds%20and%20plasma.pdf
甲第17号証:特表2005-539157号公報
甲第18号証:特表2010-520386号公報
甲第19号証:特表2011-509358号公報
甲第20号証:特表2009-534543号公報
甲第21号証:Sefar Customer Information No.7及び抄訳
甲第22号証:US2014/0060330A1及び抄訳
甲第23号証:特開2014-30775号公報
甲第24号証:特開2010-464号公報
甲第25号証:繊維の種類と加工が一番わかる(編者 日本繊維技術士センター)表紙、12頁、60頁、奥付け
甲第26号証:テキスタイル用語辞典(成田典子著)表紙、505頁、515頁、518頁、奥付け
甲第27号証:富山県の繊維企業(松井隆幸)富山大学紀要.富大経済論集第62巻第1号、p.1(1)-10(10)
https://toyama.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=13306&item_no=1&page_id=32&block_id=36
甲第28号証:特開2014-117610号公報
甲第29号証:特開2016-124170号公報
甲第30号証:特開2010-30289号公報
甲第31号証:広辞苑 第五版(編者 新村出)2624頁、奥付け
甲第32号証:繊維の種類と加工が一番わかる(編者 日本繊維技術士センター)82頁、奥付け
甲第33号証:Merriam-Webster"knit"及び抄訳
https://www.merriam-webster.com/dictionary/knit
甲第34号証:PCT/EP2010/053110優先権証明書(優先権主張番号MI2009A000730)及び抄訳
甲第35号証の1、2:Google翻訳「maglia quadra」
甲第36号証:"Evaluating Filtration Efficiency Filtration Efficiency of Monofilament Woven Meshes" Filtration + Separation Vol.7 Issue 2, March 2000 pp.26-27、及び抄訳
甲第37号証:広辞苑 第五版(編者 新村出)948頁、奥付け
甲第38号証:"Nanoscale finishing of textiles via plasma treatment" Materials Technology 2009 Vol.24 No.1 pp.46-51、及び抄訳
甲第39号証:"How Products Are Made"及び抄訳
http://www.madehow.com/
甲第40号証:Merriam-Webster“fleece”及び抄訳
https://www.merriam-webster.com/dictionary/fleece
甲第41号証:Sefar Customer Information No.25
甲第42号証:Sefar Customer Information No.27
甲第43号証:ウィキペディア「日付」
甲第44号証:ウエイバックマシンが収集・保存したシーファー社のウェブサイト
https://web.archive.org/web/20140729235042/http:/www.sefar.com/en/679/FS-Brochure-overview.htm
甲第45号証:ウエイバックマシンが収集・保存したシーファー社のカスタマーインフォメーションNo.6
https://web.archive.org/web/20140730152612/http://www.sefar.com/data/docs/en/4848/FS-PDF-IF-CI-6-Aerospacelndustries-EN.pdf
Sefar Customer Information No.6及び抄訳
甲第46号証:特開2010-464号公報
甲第47号証:WO2016/100265A1及び抄訳
甲第48号証:特表平11-506976号公報
甲第49号証:特開2013-66839号公報
甲第50号証:SAATI PRINTTM HANDBOOK Tech Tips for Screen Printers表紙、表紙の裏頁、5、6、7及び9頁及び抄訳
甲第51号証:イタリア国特許出願102009901727523(旧番号:MI2009A000730)
甲第52号証の1~4:Google翻訳「un tessuto di precisione a maglia quadra in monofilo sintetico」及び「monofilo」
甲第53号証:韓国特許第2082218号 無効審判審決書及び審決翻訳(機械翻訳)
甲第54号証:広辞苑 第五版(編者 新村出)2453頁、奥付け
甲第55号証:米国特許出願番号15/897,189に対するオフィスアクション、2022年12月15日及び抄訳
甲第56号証:テキスタイル用語辞典(成田典子著)表紙、470頁、奥付け
ここで、甲第1号証~甲第30号証は、審判請求書に添付して、甲第31号証~甲第49号証は、令和3年12月3日提出の審判事件弁駁書に添付して、甲第50号証~甲第53号証は、令和4年10月28日提出の審判事件弁駁書に添付して、甲第54号証~甲第55号証は、令和5年3月16日提出の口頭審理陳述要領書に添付して、甲第56号証は、令和5年3月30日提出の上申書に添付して、それぞれ提出されたものである。
2 答弁の趣旨及び理由
(1) 答弁の趣旨は、「本件審判事件の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」というものである。
(2) 答弁の理由は、令和4年8月12日提出の審判事件答弁書及び令和5年3月16日提出の口頭審理陳述要領書の記載からみて、概略、次のとおり整理することができる。
なお、被請求人が提出した証拠方法については、後記ウに挙示した。
ア 無効理由1~5について
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~16に係る発明は、甲第1~3号証に記載された発明と、甲各号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、無効理由1~5はいずれも理由がない。
イ 無効理由6について
本件明細書の発明の詳細な説明には、プラズマコーティングに、例えばPECVD(プラズマ化学気相成長)法を使用できることが記載されており(段落【0035】~【0036】、【0065】)、PECVD(プラズマ化学気相成長)法は、多用途において確立した技術であって、PECVD(プラズマ化学気相成長)法により布地にプラズマコーティングすることは甲第14号証により知られていることからみれば、当業者は、前記請求項1~16に係る発明を容易に実施することができるから、前記発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4号第1号に規定する要件を満たしているので、無効理由6には理由がない。
ウ 証拠方法
乙第1号証:http://www.madehow.com/Volume-4/Polyester-Fleece.html及び抄訳
乙第2号証:https://en.wikipedia.org/wiki/Knitted_fabric及び抄訳
乙第3号証:WO2010/124899A1及び抄訳
乙第4号証:本件特許の図5-7の拡大図 写し
乙第5号証:マルチフィラメント布の拡大図 写し
乙第6号証:"Studies on Nanocrystalline TiN Coatings Prepared by Reactive Plasma Spraying" Journal of Nanomaterials Vol.2008、及び抄訳
乙第7号証:特表2008-517159号公報
乙第8号証:広辞苑 第三版(編者 新村出)1603頁、奥付け
ここで、乙第1号証~乙第4号証は、令和3年9月16日提出の審判事件答弁書に添付して、乙第5号証~乙第8号証は、令和5年3月16日提出の口頭審理陳述要領書に添付して、それぞれ提出されたものである。
第3 訂正請求についての当審の判断
1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第6743078号明細書及び特許の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~16について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の具体的内容(訂正事項)は以下のとおりである(当審注:下線部は訂正箇所である。)。
(1) 訂正事項1
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記プラズマコーティング(14)は、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントにも形成され、」
と記載されているのを、
「前記プラズマコーティング(14)は、5nmから40nmの厚さのPECVD膜であって、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維
を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントにも形成され、」に訂正する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられることを特徴とする、保護性通気性材料。」
と記載されているのを、
「前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられ、
前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設けることを特徴とする、保護性通気性材料。」に訂正する。
(2) 訂正事項2
ア 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2に
「前記プラズマコーティング(14)はPECVD膜であることを特徴とする、請求項1に記載の保護性通気性材料。」
と記載されているのを、
「少なくとも1つの担体層(11、15)と、
前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、
を有する保護性通気性材料であって、
前記担体層(11、15)はモノフィラメント布を含み、
前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、
前記プラズマコーティング(14)は、5nmから40nmの厚さのPECVD膜であって、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントにも形成され、
前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられることを特徴とする、保護性通気性材料。」に訂正する(請求項2を引用する請求項3~12及び14も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1または2に記載の保護性通気性材料。」
と記載されているのを、
「請求項2に記載の保護性通気性材料。」に訂正する(請求項3を引用する請求項4~12及び14も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項2-3
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1から4のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。」
と記載されているのを、
「請求項2または3に記載の保護性通気性材料。」に訂正する(請求項5を引用する請求項6~12及び14も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項2-4
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1から5のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。」
と記載されているのを、
「請求項2から5のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。」に訂正する(請求項6を引用する請求項7~12及び14も同様に訂正する。)。
オ 訂正事項2-5
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1から6のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。」
と記載されているのを、
「請求項2から6のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。」に訂正する(請求項7を引用する請求項8~12及び14も同様に訂正する。)。
カ 訂正事項2-6
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1から7のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。」
と記載されているのを、
「請求項2から7のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。」に訂正する(請求項8を引用する請求項9~12及び14も同様に訂正する。)。
キ 訂正事項2-7
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの保護性通気性材料が設けられることを特徴とする、寝具。」
と記載されているのを、
「請求項2から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの保護性通気性材料が設けられることを特徴とする、寝具。」に訂正する。
ク 訂正事項2-8
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つ保護性通気性材料が設けられることを特徴とする、筐体を有する電気電子機器。」
と記載されているのを、
「請求項2から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つ保護性通気性材料が設けられることを特徴とする、筐体を有する電気電子機器。」に訂正する。
ケ 訂正事項2-9
特許請求の範囲の請求項5に
「前記担体層(11、15)は、前記エレクトロスピニング膜(12)に固定的に接続されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。」
と記載されているうち、請求項1を引用するものについて、
「少なくとも1つの担体層(11、15)と、
前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、
を有する保護性通気性材料であって、
前記担体層(11、15)はモノフィラメント布を含み、
前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、
前記プラズマコーティング(14)は、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントにも形成され、
前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられ、
前記担体層(11、15)は、前記エレクトロスピニング膜(12)に固定的に接続され、
前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設けることを特徴とする、保護性通気性材料。」に訂正して、新たに請求項16とする。
(3) 訂正事項3
ア 訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1から8のいずれか一項に記載の保護性通気性材料を製造する方法であって、」
と記載されているのを、
「請求項2から8のいずれか一項に記載の保護性通気性材料を製造する方法であって、」に訂正する(請求項11を引用する請求項12及び14も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項11に
「前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントと、にもプラズマコーティング処理が施され、」
と記載されているのを、
「前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントと、にも5nmから40nmの厚さのPECVD膜を形成するプラズマコーティング処理が施され、」に訂正する(請求項11を引用する請求項12及び14も同様に訂正する。)。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項13に
「前記膜(12)は前記担体層(11、15)上に直接設けられ、前記膜(12)は前記担体層(11、15)に固定的に接続されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。」
と記載されているのを、
「保護性通気性材料を製造する方法であって、
少なくとも1つの担体層(11、15)を設けることと、
前記担体層(11、15)上に、多孔質構造となるように重ねられた繊維を使用して、エレクトロスピニング法により設けられる膜(12)を設けることと、
を有し、
前記担体層と前記膜とで保護性通気性材料膜を形成し、
前記担体層(11、15)がモノフィラメント布を含み、
前記膜(12)は前記担体層(11、15)上に直接設けられ、前記膜(12)は前記担体層(11、15)に固定的に接続され、
前記保護性通気性材料膜(10)にプラズマコーティング処理を施して、前記モノフィラメント布を含む前記担体層(11、15)と、前記エレクトロスピニング膜(12)との両方に表面コーティング(14)を設け、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントと、にもプラズマコーティング処理が施され、
前記担体層と前記膜とをホットメルト処理により接合部で接続して、前記保護性通気性材料膜を形成し、
前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設けることを特徴とする、方法。」に訂正する。
(5) 訂正事項5
ア 訂正事項5-1
特許請求の範囲の請求項14に
「請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。」
と記載されているのを、
「請求項11に記載の方法。」 に訂正する。
イ 訂正事項5-2
特許請求の範囲の請求項14に
「前記膜に接続される少なくとも1つのさらなる担体層が設けられ、前記膜は前記担体層間に配置されることを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。」
と記載されているうち、請求項13を引用するものについて、
「前記膜に接続される少なくとも1つのさらなる担体層が設けられ、前記膜は前記担体層間に配置されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。」に訂正して、新たに請求項15とする。
(6) 訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0051】に
「本発明の保護性通気性材料は、継ぎ目や枠要素によってろ過装置に固定設置することができる。継ぎ目または枠要素は、少なくとも保護性通気性材料の周辺領域に設けられる。」
と記載されているのを、
「本発明の保護性通気性材料の継ぎ目または枠要素は、少なくとも保護性通気性材料の周辺領域に設けられる。」に訂正する。
(7) 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~14は、直接的又は間接的に本件訂正前の請求項1を引用し、これら請求項1~14は一群の請求項を構成するものであるから、訂正事項1~5に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第134条の2第3項の規定に従い、この一群の請求項〔1~14〕を訂正の単位として請求されたものであり、訂正事項6に係る願書に添付した明細書の訂正も、前記一群の請求項〔1~14〕を訂正の単位として請求されたものである。
そして、被請求人は、本件訂正後の請求項1、13及び16について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項のほかの請求項とは別途訂正することを求めている。
2 訂正の適否についての検討
(1) 訂正事項1について
ア 訂正事項1-1について
(ア) 訂正の目的について
訂正事項1-1に係る訂正は、「プラズマコーティング(14)」が、「5nmから40nmの厚さのPECVD膜」であること、及び、「エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維」と、「前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメント」にも形成されるものであることを更に限定するものであり、また、「モノフィラメント布」の内部の「フィラメント」が「モノフィラメント」であることを更に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(イ) 実質上の特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無、新規事項の追加の有無について
訂正事項1-1に係る訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であることは、前記(ア)に記載したとおりであるから、訂正事項1-1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、本件明細書の段落【0065】には、「プラズマコーティングにより、極薄の機能性フィルム、特に撥水性および/または疎油性機能が、保護性通気性材料、特に膜の個々の繊維および/または担体層の個々の繊維またはフィラメントに適用される。この場合、数nm(ナノメートル)、特に80nm未満、好ましくは5nmから40nmの薄い層の厚さを実現できる。」と記載されており、更に「モノフィラメント布」の内部の「フィラメント」が「モノフィラメント」であることは明らかであるから、訂正事項1-1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項1-2について
(ア) 訂正の目的について
訂正事項1-2に係る訂正は、「保護性通気性材料」を、「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設け」たものに更に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(イ) 実質上の特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無、新規事項の追加の有無について
訂正事項1-2に係る訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であることは、前記(ア)に記載したとおりであるから、訂正事項1-2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、本件明細書の段落【0022】には、「好ましくは、特に保護性通気性材料を囲繞および/または補強するように設計された継ぎ目を、保護性通気性材料の周囲縁として設けてもよい。」と記載されているから、訂正事項1-2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正事項2-1について
(ア) 訂正の目的について
訂正事項2-1に係る訂正は、本件訂正前の請求項2において請求項1を引用していたのを独立形式に改めると共に、「プラズマコーティング(14)」が、「5nmから40nmの厚さ」であること、及び、「エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維」と、「前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメント」にも形成されるものであることを更に限定するものであり、また、「モノフィラメント布」の内部の「フィラメント」が「モノフィラメント」であることを更に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮、及び、同第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
(イ) 実質上の特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無、新規事項の追加の有無について
訂正事項2-1に係る訂正が、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正であることは、前記(ア)に記載したとおりであるから、訂正事項2-1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項2-1に係る訂正は、前記(1)ア(イ)に記載したのと同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2-2~訂正事項2-8について
(ア) 訂正の目的について
訂正事項2-2及び訂正事項2-4~訂正事項2-8に係る訂正は、それぞれ、本件訂正前の請求項3において請求項1又は2を引用し、本件訂正前の請求項6において請求項1から5のいずれか一項を引用し、同請求項7において請求項1から6のいずれか一項を引用し、同請求項8において請求項1から7のいずれか一項を引用し、同請求項9において請求項1から8のいずれか一項を引用し、同請求項10において請求項1から8のいずれか一項を引用していたのを、いずれも請求項1を引用しないものとする訂正であり、訂正事項2-3に係る訂正は、本件訂正前の請求項5において請求項1から4のいずれか一項を引用していたのを、請求項2又は3を引用するものに訂正するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(イ) 実質上の特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無、新規事項の追加の有無について
訂正事項2-2~訂正事項2-8に係る訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であることは、前記(ア)に記載したとおりであるから、訂正事項2-2~訂正事項2-8に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項2-9について
(ア) 訂正の目的について
訂正事項2-9に係る訂正は、本件訂正前の請求項5において請求項1から4のいずれか一項を引用していたのを、請求項1を引用するものについて独立形式に改めると共に、「保護性通気性材料」を、「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設け」たものに更に限定して、新たな請求項16とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮、及び、同第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
(イ) 実質上の特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無、新規事項の追加の有無について
訂正事項2-9に係る訂正が、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正であることは、前記(ア)に記載したとおりであるから、訂正事項2-9に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、前記(1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、訂正事項2-9に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3) 訂正事項3について
ア 訂正事項3-1について
(ア) 訂正の目的について
訂正事項3-1に係る訂正は、本件訂正前の請求項11において請求項1から8のいずれか一項を引用していたのを、請求項1を引用しないものとする訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(イ) 実質上の特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無、新規事項の追加の有無について
訂正事項3-1に係る訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であることは、前記(ア)に記載したとおりであるから、訂正事項3-1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項3-2について
(ア) 訂正の目的について
訂正事項3-2に係る訂正は、本件訂正前の請求項11の「プラズマコーティング処理」を、「前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維」と、「前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメント」に、「5nmから40nmの厚さのPECVD膜を形成する」ものに更に限定するものであり、また、「モノフィラメント布」の内部の「フィラメント」が「モノフィラメント」であることを更に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(イ) 実質上の特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無、新規事項の追加の有無について
訂正事項3-2に係る訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であることは、前記(ア)に記載したとおりであるから、訂正事項3-2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、前記(1)ア(イ)に記載したのと同様の理由により、訂正事項3-2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4) 訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4に係る訂正は、実質的な内容からすると、本件訂正前の請求項13について、請求項12を引用し、前記請求項12において請求項11を引用し、前記請求項11において請求項1から8のいずれか一項を引用していたところを、そのうちの請求項1を対象としつつ、請求項11及び請求項12を含む部分について独立形式に改めたということができる。更に、この訂正は、「保護性通気性材料」を、「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設け」たものに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮、及び、同第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 実質上の特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無、新規事項の追加の有無について
訂正事項4に係る訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であることは、前記アに記載したとおりであるから、訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、前記(1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5) 訂正事項5について
ア 訂正事項5-1について
(ア) 訂正の目的について
訂正事項5-1に係る訂正は、本件訂正前の請求項14において請求項11から13のいずれか一項を引用していたのを、請求項11を引用するものとする訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(イ) 実質上の特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無、新規事項の追加の有無について
訂正事項5-1に係る訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であることは、前記(ア)に記載したとおりであるから、訂正事項5-1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項5-2について
(ア) 訂正の目的
訂正事項5-2に係る訂正は、本件訂正前の請求項14において請求項11から13のいずれか一項を引用していたのを、請求項13を引用するものについて新たに請求項15とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(イ) 実質上の特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無、新規事項の追加の有無について
訂正事項5-2に係る訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であることは、前記(ア)に記載したとおりであるから、訂正事項5-2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(6) 訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6に係る訂正は、「保護性通気性材料の継ぎ目または枠要素」が「少なくとも保護性通気性材料の周辺領域に設けられる」ことを明確にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
イ 実質上の特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無、新規事項の追加の有無について
願書に添付した明細書の段落【0022】には、「好ましくは、特に保護性通気性材料を囲繞および/または補強するように設計された継ぎ目を、保護性通気性材料の周囲縁として設けてもよい。」と記載されているから、訂正事項6に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(7) 独立特許要件について
本件特許無効審判の請求は、請求項1~14についてされているので、これから派生したものを含め、本件訂正後の請求項1~16に係る発明に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項所定の独立特許要件は課されない。
3 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、被請求人は、本件訂正後の請求項1、13及び16について、別の訂正単位とすることを求めているので、訂正後の請求項1、〔2~12、14〕、〔13、15〕、16について訂正することを認める。
第4 本件発明
本件訂正が認められたことにより、本件特許の請求項1~16に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明16」といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。なお、以下では、本件訂正後の明細書を「本件明細書」という。
「【請求項1】
少なくとも1つの担体層(11、15)と、
前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、
を有する保護性通気性材料であって、
前記担体層(11、15)はモノフィラメント布を含み、
前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、
前記プラズマコーティング(14)は、5nmから40nmの厚さのPECVD膜であって、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントにも形成され、
前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられ、
前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設けることを特徴とする、保護性通気性材料。
【請求項2】
少なくとも1つの担体層(11、15)と、
前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、
を有する保護性通気性材料であって、
前記担体層(11、15)はモノフィラメント布を含み、
前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、
前記プラズマコーティング(14)は、5nmから40nmの厚さのPECVD膜であって、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントにも形成され、
前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられることを特徴とする、保護性通気性材料。
【請求項3】
前記プラズマコーティング(14)は、疎水性および/または疎油性を有する材料から形成されることを特徴とする、請求項2に記載の保護性通気性材料。
【請求項4】
前記材料は、少なくとも飽和、一価および/または多価不飽和エーテル、ケトン、アルデヒド、アルケン、アルキン、アミド、アミン、ニトリル、チオエーテル、カルボン酸エステル、チオエーテル、スルホン、チオケトン、チオアルデヒド、スルフェン、スルフェンアミド、フルオロアクリレート、シロキサン、エポキシド、ウレタン、アクリレート、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド6,6(PA66)、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミドポリウレタン(PU)、ポリ尿素ウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリラクチド(PLA)、ポリカーボネート(PC)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリスルホン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルロース、酢酸セルロース(CA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PVA/シリカ、PAN/TiO2、PETFEポリエーテルイミド、ポリアニリン、ポリ(エチレンナフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルブチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、コポリマー、誘導体化合物、それらの混合物、および/またはそれらの組合せを含むことを特徴とする、請求項3に記載の保護性通気性材料。
【請求項5】
前記担体層(11、15)は、前記エレクトロスピニング膜(12)に固定的に接続されることを特徴とする、請求項2または3のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。
【請求項6】
前記エレクトロスピニング膜(12)は2つの担体層(11、15)の間に設けられることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。
【請求項7】
前記エレクトロスピニング膜(12)は、最大孔径が0.10μmから1.0μmとなるように形成されることを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。
【請求項8】
前記エレクトロスピニング膜(12)は、微生物の透過に対するバリアとして形成されることを特徴とする、請求項2から7のいずれか一項に記載の保護性通気性材料。
【請求項9】
請求項2から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの保護性通気性材料が設けられることを特徴とする、寝具。
【請求項10】
請求項2から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つ保護性通気性材料が設けられることを特徴とする、筐体を有する電気電子機器。
【請求項11】
請求項2から8のいずれか一項に記載の保護性通気性材料を製造する方法であって、
担体層(11、15)を設けることと、
前記担体層(11、15)上に、多孔質構造となるように重ねられた繊維を使用して、エレクトロスピニング法により設けられる膜(12)を設けることと、を有し、
前記担体層と前記膜とで保護性通気性材料膜を形成し、
前記担体層(11、15)がモノフィラメント布を含み、
前記保護性通気性材料膜(10)にプラズマコーティング処理を施して、前記モノフィラメント布を含む前記担体層(11、15)と、前記エレクトロスピニング膜(12)との両方に表面コーティング(14)を設け、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントと、にも5nmから40nmの厚さのPECVD膜を形成するプラズマコーティング処理が施され、
前記担体層と前記膜とを接合部で接続して、前記保護性通気性材料膜を形成することを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記膜(12)が、ホットメルト処理により、前記担体層(11、15)に接合されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
保護性通気性材料を製造する方法であって、
少なくとも1つの担体層(11、15)を設けることと、
前記担体層(11、15)上に、多孔質構造となるように重ねられた繊維を使用して、エレクトロスピニング法により設けられる膜(12)を設けることと、
を有し、
前記担体層と前記膜とで保護性通気性材料膜を形成し、
前記担体層(11、15)がモノフィラメント布を含み、
前記膜(12)は前記担体層(11、15)上に直接設けられ、前記膜(12)は前記担体層(11、15)に固定的に接続され、
前記保護性通気性材料膜(10)にプラズマコーティング処理を施して、前記モノフィラメント布を含む前記担体層(11、15)と、前記エレクトロスピニング膜(12)との両方に表面コーティング(14)を設け、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントと、にもプラズマコーティング処理が施され、
前記担体層と前記膜とをホットメルト処理により接合部で接続して、前記保護性通気性材料膜を形成し、
前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設けることを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記膜に接続される少なくとも1つのさらなる担体層が設けられ、前記膜は前記担体層間に配置されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記膜に接続される少なくとも1つのさらなる担体層が設けられ、前記膜は前記担体層間に配置されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの担体層(11、15)と、
前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、
を有する保護性通気性材料であって、
前記担体層(11、15)はモノフィラメント布を含み、
前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、
前記プラズマコーティング(14)は、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントにも形成され、
前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられ、
前記担体層(11、15)は、前記エレクトロスピニング膜(12)に固定的に接続され、
前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設けることを特徴とする、保護性通気性材料。」
第5 無効理由についての当審の判断
当審は、無効理由1~6のうち、本件発明13、15、16についての特許に係る無効理由4には理由があり、その余の無効理由には理由がないと判断する。
その判断理由は、次のとおりである。
1 甲各号証の記載事項等
(1) 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過の手段または媒体として使用するための布地材料複合構造であって、前記構造は1以上のナノ繊維層と直角に編まれた合成単一糸精密布地との組み合わせを含むことを特徴とする布地材料複合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の複合構造であって、前記ナノ繊維層を電界紡糸塗布法によって前記単一糸布地に塗布し、かつ前記支持布地において組み込むことで、一重のろ過手段または相互に密に結合したろ過手段を形成することを特徴とする複合構造。
・・・
【請求項4】
請求項1に記載の複合構造であって、前記布地に接着材料を塗布した後に、前記ナノ繊維層を前記布地に塗布することを特徴とする複合構造。」
「【0001】
本発明はろ過の手段または媒体として使用するための布地材料複合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、1-2ミクロン未満の粒径を有する粒子はろ過布地材料によって分離することが不可能である。それは製織布地材料のメッシュの目開きを5ミクロン未満とすることを妨げている製織工程の技術的限界のためである。
【0003】
したがって、本発明の目的は、1-2ミクロンの粒径を有する粒子の通過を阻止する布地材料複合構造を提供することである。
・・・
【0006】
さらに本発明の他の対象は、音響応用において使用するための同様のメッシュサイズを有する布地材料よりも低い音響インピーダンスを有し、かつ、例えば布地が磁性および粉末の粒子から電話の内部部品も保護する携帯電話において保護機能を提供可能な布地材料複合構造を提供することであり、布地は音がそこを通過することを可能とする一方で非常に小さいメッシュサイズおよび低い布地インピーダンスを有する。
【0007】
さらにその他の対象のほかに上述の目的および対象は、後に本明細書においてより明確となるが、ろ過の手段または媒体として使用するための布地材料複合構造によって達成され、前記構造は1以上のナノ繊維層および直角に編まれた合成単一糸精密布地との組み合わせを含むことを特徴とする。」
「【0029】
上述した非常に優れた多機能特性によって、前記ナノ繊維を以下の広い範囲内において使用可能とする。
-工業用織物材料、
-液体または空気をろ過するための、ろ過の手段または媒体、
-保護用および壁膜となる布地材料(衛生的、軍事的、布製品の応用等)、
-生物医学用装置および材料(薬剤放出ベクター、止血装置、特殊な有機布地および包帯用材料)、
-医学および診断の分野において、
-吸音応用において、
-複合材料の補強として、
-美肌マスクとして(洗浄剤および肌への薬物治療)、
-皮膚多孔質膜などの有機布地材料のための架橋配置、血管および神経組織を再生するための管状配置、骨および軟骨を再生するための三次元架橋。」
「【0066】
本発明は意図する目的および対象を十分に達成したことが分かった。
【0067】
つまり、本発明は、1-2ミクロンの粒径を有する粒子の通過を阻止することが可能な、ろ過の手段または媒体として使用するための布地材料複合構造を提供する。今まで1-2ミクロンの粒径を有する粒子は、上述した以前の製織工程における技術的限界により5ミクロン未満のメッシュサイズを有する布地を作ることが不可能であったため、以前のろ過布地によって分離不可能であった。
・・・
【0071】
さらに、発明の複合布地構造は、同様のメッシュサイズ値を有する以前の布地よりも低い音響インピーダンスを有し、その特徴は音響応用のために非常に重要である。また、布地材料は強磁性および粉末の粒子から(携帯電話などの)装置の内部部品を保護する機能も提供する。」
イ 前記アの記載(特許請求の範囲、段落【0003】)によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。
「1以上のナノ繊維層と直角に編まれた合成単一糸精密布地との組み合わせを含むことを特徴とする布地材料複合構造であって、
前記ナノ繊維層を電界紡糸塗布法によって前記単一糸布地に塗布し、かつ前記支持布地において組み込むことで、一重のろ過手段または相互に密に結合したろ過手段を形成し、
前記布地に接着材料を塗布した後に、前記ナノ繊維層を前記布地に塗布する、
ろ過の手段または媒体として使用するための1-2ミクロンの粒径を有する粒子の通過を阻止する布地材料複合構造。」
また、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。
「1以上のナノ繊維層と直角に編まれた合成単一糸精密布地との組み合わせを含むことを特徴とする布地材料複合構造の製造方法であって、
前記ナノ繊維層を電界紡糸塗布法によって前記単一糸布地に塗布し、かつ前記支持布地において組み込むことで、一重のろ過手段または相互に密に結合したろ過手段を形成し、
前記布地に接着材料を塗布した後に、前記ナノ繊維層を前記布地に塗布する、
ろ過の手段または媒体として使用するための1-2ミクロンの粒径を有する粒子の通過を阻止する布地材料複合構造の製造方法。」
なお、前記甲1発明1は、審理事項通知の第5の1で認定された甲1発明と同じであり、前記認定について、請求人及び被請求人からは特段の意見は述べられていない。また、前記甲1発明2は、前記甲1発明1にのっとった上で、発明のカテゴリーを単に方法の発明に変更したものである。
(2) 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明
ア 甲第2号証には、以下の記載がある。
(ア) 「PATENT CLAIMS
1. A method for producing a textile composite, especially for outdoor applications, which contains at least one layer (2) of polymeric nanofibers deposited on a textile carrier layer (3), characterized in that after the layer (2) of polymeric nanofibers is deposited on the textile layer (3) and these layers (2), (3) are connected to each other by a binder, at least one hydrophobic agent in a liquid or plastic state is applied by plasma spraying to the textile carrier layer (3) from the side opposite the side where the layer (2) of polymeric nanofibers has been deposited.
・・・
10. A textile composite (1), especially for outdoor applications, which contains a layer (2) of polymeric nanofibers deposited on a textile carrier layer (3), characterized in that the layer (2) of polymeric nanofibers and the textile carrier layer (3) are connected by formations of a binder, which extend into the inner structure the layer (2) of polymeric nanofibers, whereby on the fibers of the textile carrier layer (3) is formed at least from one of their sides a coating of at least one hydrophobic agent applied by plasma spraying.
11. The textile composite (1) according to Claim 10, characterized in that a coating of at least one hydrophobic agent applied by plasma spraying is formed on the nanofibers of the layer (2) of polymeric nanofibers from at least one of their sides.」(16ページ1行~17ページ28行)
(当審訳:特許請求の範囲
1. 布地担体層(3)上に堆積されたポリマーナノファイバーの少なくとも1つの層(2)を含有する、特に屋外用途のための布地複合体の製造方法であって、ポリマーナノファイバーの層(2)を布地層(3)上に堆積させ、かつ、前記層(2)、(3)をバインダーによって互いに連結した後、前記ポリマーナノファイバーの層(2)が堆積された側とは反対側から、前記布地担体層(3)に、液体又は塑性状態の少なくとも1つの疎水性剤をプラズマスプレーにより適用する、方法。
・・・
10. 布地担体層(3)上に堆積されたポリマーナノファイバーの層(2)を含有する布地複合体(1)であって、前記ポリマーナノファイバーの層(2)及び前記布地担体層は、前記ポリマーナノファイバーの層(2)の内部構造内に延在するバインダーの形成によって連結され、それによって、前記布地担体層(3)の繊維上に、プラズマスプレーによって適用された少なくとも1つの疎水性剤のコーティングが少なくとも一方の面から形成される、特に屋外用途の布地複合体(1)。
11. プラズマスプレーによって適用される少なくとも1つの前記疎水性剤のコーティングが、前記ポリマーナノファイバーの層(2)のナノファイバー上に、それらの面の少なくとも一方から形成される、請求項10に記載の布地複合体(1)。)
(イ) 「Another method for increasing hydrophobic properties of a layer of polymeric nanofibers was proposed in CZ PV 2012-325.・・・The disadvantage of this process is the fact that the layer of polymeric nanofibers, having been treated in this manner, cannot be joined to other layers of material in the conventional manner, since its increased hydrophobic properties inhibit the penetration of a liquid binder into its structure and, consequently, there is no bonding between adjacent polymeric nanofibers. Due to this, the resulting composite is extremely predisposed to mechanical damage of the layer of nanofibers, or the layer separation, which considerably reduces its practical applicability.
The goal of the invention is to eliminate or at least reduce the disadvantages of the background art and provide a method which would enable to produce a textile composite, especially for outdoor applications, which would contain at least one layer of polymeric nanofibers connected to at least one textile layer with sufficient resistance, while achieving at the same time high hydrostatic resistance, as well as vapor permeability and breathability.
The goal of the invention is also to provide a textile composite, especially for outdoor applications, which contains at least one layer of polymeric nanofibers prepared by this method.
Principle of the invention
The aim of the invention is achieved by a method for producing a textile composite, especially for outdoor applications, which contains at least one layer of polymeric nanofibers deposited on a textile carrier layer, whose principle consists in that after deposition of the layer of polymeric nanofibers and connecting the layers by a binder, at least one hydrophobic agent in a liquid or plastic state is applied by plasma spraying to the textile carrier layer, from the side opposite the side where the layer of polymeric nanofibers is deposited. In this process, the binder can penetrate into the inner structure of the layer of polymeric nanofibers which has not been pretreated, by which means this layer is reinforced and the resistance of its connection to the textile carrier layer increases. In addition, if the binder penetrates through its entire thickness of layer of polymeric nanofibers, it also protects it from abrasion from its outer side. The hydrophobic agent considerably increases the hydrophobic properties of the textile carrier layer, without reducing its vapor permeability and breathability due to the method of its application.」(2ページ16行~3ページ22行)
(当審訳:ポリマーナノファイバーの層の疎水性を増加させる別の方法が、CZ PV2012-325において提案されている。・・・この方法の欠点は、このように処理されたポリマーナノファイバーの層は、増加した疎水性特性がその構造への液体バインダーの浸透を阻害し、その結果、隣接するポリマーファイバー間に結合がないため、従来の方法ではほかの材料層に接合することができないという事実であり、このため、得られる複合体は、ナノファイバー層の機械的損傷や、層分離が極めて発生しやすく、これは、複合体の実用性を著しく低下させる。
本発明の目的は、背景技術の欠点を排除するか又は少なくとも低減させ、かつ、高い静水圧抵抗、並びに透湿性及び通気性を同時に達成しつつ、十分な耐性を有する少なくとも1つの布地層に連結されたポリマーナノファイバーの少なくとも1つの層を含む、特に屋外用途のための布地複合体を製造することを可能にする方法を提供することである。
本発明の目的はまた、上記方法によって調製されたポリマーナノファイバーの少なくとも1つの層を含む、特に屋外用途のための布地複合体を提供することである。
発明の原理
本発明の目的は、原則として、布地担体層上に堆積されたポリマーナノファイバーの少なくとも1つの層を含有する、特に屋外用途のための布地複合体を製造するための方法によって達成され、その原理は、ポリマーナノファイバーの層を堆積させ、かつ、バインダーによって層同士を連結した後、ポリマーナノファイバーの層が堆積された側の反対側から、液体又はプラスチック状態の少なくとも1つの疎水性剤をプラズマスプレーによって布地担体層に適用することにある。このプロセスでは、前処理されていないポリマーナノファイバーの層の内部構造にバインダーが浸透することができ、これにより、この層が強化され、布地担体層へのその連結の抵抗が増加する。更に、バインダーがポリマーナノファイバーの層の厚さ全体に浸透する場合、バインダーはまた、バインダーをその外側からの摩耗から保護する。疎水性剤は、その適用方法により、その透湿性及び通気性を低下させることなく、布地担体層の疎水性特性を大幅に増加させる。)
(ウ) 「The hydrophobic agent can be also applied to the layer of polymeric nanofibers by plasma spraying at least from one side.」(4ページ29行~30行)
(当審訳:疎水性剤はまた、少なくとも片側からプラズマスプレーすることによって、ポリマーナノファイバーの層に適用することができる。)
(エ) 「In the method for producing a textile composite 1 (Figs. 1 and 3), especially for outdoor applications, which contains at least one layer 2 of polymeric nanofibers according to the invention, first a semi-finished product is formed, which contains at least one layer 2 of polymeric nanofibers and at least one textile carrier layer 3 formed by a standard textile fabric (knitted, woven, non-woven), whereby after connecting these layers 2, 3 by a suitable binder, e.g. fusible, at least one hydrophobic agent in a liquid or plastic state is applied to the textile carrier layer 3 by plasma spraying. This agent is at the same time deposited at least on the impacting parts of the surface of the individual fibers of the textile carrier layer 3, or on their entire surface, where it creates a continuous coating, thereby increasing substantially the hydrostatic resistance of this layer 3. Due to the fact that during plasma spraying it is on principle a very small amount of the hydrophobic agent that is applied, the inter-fibrous spaces of the textile carrier layer 3 cannot be filled up, or blocked, and so the textile carrier layer 3 retains substantially unchanged vapor permeability and breathability. If during the application of the hydrophobic agent a certain part of it penetrates through the entire thickness of the textile carrier layer 3, it is deposited at least on the impacting side of unillustrated formations of the binder connecting the textile carrier layer 3 and the layer 2 of polymeric nanofibers, and optionally also at least on the impacting side of the polymeric nanofibers, by which means the hydrostatic resistance the layer 2 of polymeric nanofibers is further increased.」(5ページ29行~6ページ19行)
(当審訳:本発明によるポリマーナノファイバーの少なくとも1つの層2を含有する、特に屋外用途のための布地複合体1(図1及び3)の製造方法において、最初に、ポリマーナノファイバーの少なくとも1つの層2と、標準的な布地(編布、織布、不織布)によって形成された少なくとも1つの布地担体層3とを含有する半完成品が形成され、それにより、これらの層2、3を適切なバインダー、例えば可融性バインダーによって連結した後、液体又は可塑状態の少なくとも1つの疎水性剤が、プラズマスプレーによって布地担体層3に適用される。同時に、この剤は少なくとも布地担体層3の個々の繊維の表面の衝突部分に、又はそれらの表面全体に堆積され、そこで連続的なコーティングを作り出し、それによってこの層3の静水圧抵抗を実質的に増加させる。プラズマスプレーの間は、原則として、適用される疎水性剤が非常に少量であるため、布地担体層3の繊維間空間は充填されたりブロックされないので、布地担体層3は実質的に変化しない透湿性及び通気性を保持する。疎水性剤を適用している間、その一部が布地担体層3の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、布地担体層3とポリマーナノファイバーの層2とを連結するバインダーの形成部(不図示)の衝突側と、任意で、ポリマーナノファイバーの少なくとも衝突側にも堆積され、それによって、ポリマーナノファイバーの層2の静水圧抵抗は更に増加する。)
(オ) 「In order to obtain uniform properties of the final composite 1 it is favourable if the layer 2 (layers) of polymeric nanofibers is as uniform as possible, both in the direction of its width and in the direction of its length or also its thickness. At present, the highest evenness is achieved by producing it by nozzle-less electrostatic spinning, in which a polymer solution or melt is spun in an electric field created between a collecting electrode and a spinning electrode of elongated shape - composed, for example, of a cylinder (see, e.g., EP 1673493) or a string (see, e.g., EP 2059630 or EP 2173930). This principle is commercially employed in the technology NanospiderTM of the company Elmarco. Moreover, the layer 2 of polymeric nanofibers can be deposited directly to the textile carrier layer 3, which is used as a substrate material for depositing nanofibers during electrostatic spinning, whereby for connecting these layers 2, 3 by a binder, which can be also, e.g., the material of one or both these layers 2, 3, and, optionally, also after adding at least one more layer, the hydrophobic agent is applied to the textile carrier layer 3 by plasma spraying.
In other variants it is possible to prepare the layer 2 of polymeric nanofibers by another method for producing polymeric nanofibers, for example, by using a static spinning electrode formed, e.g., by a needle, a tube, a nozzle, or a group of needles, tubes or nozzles, a listel, a string, etc., or movable spinning electrodes formed, e.g., by a rotating disc, spiral, ring, a rewinding belt according to CZ 2008-529, etc., whereby the solution for spinning is spun from the surface of this spinning electrode, or its spinning element/elements.」(7ページ30行~8ページ19行)
(当審訳:最終複合体1の均一な特性を得るために、ポリマーナノファイバーの1つ又は複数の層2は、その幅方向及びその長さ方向又はその厚さ方向の両方で、可能な限り均一であることが好ましい。現在、最も高い均一性は、ノズルレス静電紡糸により複合体を生成することによって達成される。ノズルレス静電紡糸では、重合体溶液又は溶融物が、収集電極と、例えば、円筒(例えば、EP1673493を参照のこと)又はストリング(例えば、EP 2059630又はEP 2173930を参照のこと)から構成される細長い形状の紡糸電極との間に生成される電場中で紡糸される。この原理は、Elmarco社のNanospider(登録商標)技術で商業的に使用されている。更に、ポリマーナノファイバーの層2は静電紡糸中にナノファイバーを堆積させるための基材材料として使用される布地担体層3に直接堆積させることができ、それによって、これらの層2、3をバインダー(例えば、これらの層2、3の一方又は両方の材料であってもよい)によって連結するために、任意選択で、少なくとも1つ以上の層を加えた後にも、疎水性剤がプラズマスプレーによって布地担体層に適用される。
他の変形例では、例えば、ニードル、管、ノズル、又は一群の針、管若しくはノズル、リステル、ストリング等によって形成された静止紡糸電極、又は例えば、回転ディスク、スパイラル、リング、CZ2008-529による巻き戻しベルト等によって形成された可動紡糸電極を使用することによって、ポリマーナノファイバーの層2を製造することができ、それによって、紡糸のための液がこの紡糸電極又はその紡糸要素の表面から紡糸される。)
(カ) 「If the layer 2 of polymeric nanofibers is overlaid by a cover layer 4 (different from or the same as the textile carrier layer 3), it is possible to apply the hydrophobic agent both to the textile carrier layer 3, and the cover layer 4, whereby to each of them it is possible to apply a hydrophobic agent from its outer side, whereby the hydrophobic agent can be of another type and/or it can be applied in a different amount and/or with different parameters of applying, or it is possible to leave the cover layer 4 without plasma spraying, or optionally only with plasma spray penetrating through the other layers 2, 3 of the textile composite 1. If the hydrophobic agent is applied to the cover layer 4, its amount is up to approximately 5 % of basis weight of the cover layer 4 according to the requirements and the materials used.」(10ページ18行~28行)
(当審訳:ポリマーナノファイバーの層2がカバー層4(布地担体層3とは異なるか又は同じ)によって覆われる場合、疎水性剤を布地担体層3及びカバー層4の両方に適用することが可能であり、それによって、それらのそれぞれに、疎水性剤をその外側から適用することが可能であり、それによって、疎水性剤は別の種類のものであってもよく、及び/又はそれは適用の異なる量及び/又は異なるパラメータで適用されてもよく、又はプラズマスプレーを用いずに、又は任意に、布地複合体の他の層2、3を通って浸透するプラズマスプレーのみを用いて、カバー層4を残すことが可能である。疎水性剤がカバー層4に適用される場合、その量は、要件及び使用される材料に従って、カバー層4の坪量の約5%までである。)
(キ) 「
[図:0001414440000001.jpg]
」
イ 前記甲第2号証は、「布地複合体」について記載するところ、特に、前記ア(ア)、同(エ)、同(オ)及び同(カ)で下線を付したところをまとめると、甲第2号証には、この「布地複合体」に係る以下の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されているといえる。
「布地担体層(3)上に堆積されたポリマーナノファイバーの層(2)を含有する布地複合体(1)であって、前記ポリマーナノファイバーの層(2)及び前記布地担体層は、前記ポリマーナノファイバーの層(2)の内部構造内に延在する、例えば可融性バインダーであるバインダーの形成によって連結され、
ポリマーナノファイバーの層(2)は静電紡糸中にナノファイバーを堆積させるための基材材料として使用される布地担体層に直接堆積させることができ、
前記布地担体層(3)の繊維上に、プラズマスプレーによって適用された少なくとも1つの疎水性剤のコーティングが少なくとも一方の面から形成され、
この剤は少なくとも布地担体層(3)の個々の繊維の表面の衝突部分に、又はそれらの表面全体に堆積され、そこで連続的なコーティングを作り出し、それによってこの層(3)の静水圧抵抗を実質的に増加させ、
適用される疎水性剤が非常に少量であるため、布地担体層(3)の繊維間空間は充填されたりブロックされないので、布地担体層(3)は実質的に変化しない透湿性及び通気性を保持し、
疎水性剤を適用している間、その一部が布地担体層(3)の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、布地担体層(3)とポリマーナノファイバーの層(2)とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、ポリマーナノファイバーの少なくとも衝突側にも堆積され、それによって、ポリマーナノファイバーの層(2)の静水圧抵抗は更に増加し、
ポリマーナノファイバーの層(2)がカバー層(4)(布地担体層(3)とは異なるか又は同じ)によって覆われる、
特に屋外用途の布地複合体(1)。」
また、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明2」という。)が記載されているといえる。
「布地担体層(3)上に堆積されたポリマーナノファイバーの層(2)を含有する布地複合体(1)の製造方法であって、前記ポリマーナノファイバーの層(2)及び前記布地担体層は、前記ポリマーナノファイバーの層(2)の内部構造内に延在する、例えば可融性バインダーであるバインダーの形成によって連結され、
ポリマーナノファイバーの層(2)は静電紡糸中にナノファイバーを堆積させるための基材材料として使用される布地担体層(3)に直接堆積させることができ、
前記布地担体層(3)の繊維上に、プラズマスプレーによって適用された少なくとも1つの疎水性剤のコーティングが少なくとも一方の面から形成され、
この剤は少なくとも布地担体層(3)の個々の繊維の表面の衝突部分に、又はそれらの表面全体に堆積され、そこで連続的なコーティングを作り出し、それによってこの層(3)の静水圧抵抗を実質的に増加させ、
適用される疎水性剤が非常に少量であるため、布地担体層(3)の繊維間空間は充填されたりブロックされないので、布地担体層(3)は実質的に変化しない透湿性及び通気性を保持し、
疎水性剤を適用している間、その一部が布地担体層(3)の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、布地担体層(3)とポリマーナノファイバーの層(2)とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、ポリマーナノファイバーの少なくとも衝突側にも堆積され、それによって、ポリマーナノファイバーの層(2)の静水圧抵抗は更に増加し、
ポリマーナノファイバーの層(2)がカバー層(4)(布地担体層(3)とは異なるか又は同じ)によって覆われる、
特に屋外用途の布地複合体(1)の製造方法。」
なお、前記甲2発明1は、審理事項通知の第5の2で認定された甲2発明と同じであり、前記認定について、請求人及び被請求人からは特段の意見は述べられていない。また、前記甲2発明2は、前記甲2発明1にのっとった上で、発明のカテゴリーを単に方法の発明に変更したものである。
(3) 甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明
ア 甲第3号証には、以下の記載がある。
「Sefar Customer Infomation No.6
Technical information and applications: Filter components for the aerospace industry」(1頁タイトル)
(甲第3号証抄訳:シーファー カスタマーインフォメーション No.6技術情報及び用途:航空宇宙産業向けフィルタ部品)、
「Sefar solution for coalescers
Sefar fabrics are used as filter media in separators in-line after the coalescer.
The high water repellency, high throughput rates and precise mesh openings of Sefar's monofilament fabrics guarantee outstanding reliability and performance when fitted on a coalescer separator system.」(2頁1行目~11行目)
(甲第3号証抄訳:コアレッサーのためのシーファー社のソリューション
シーファー社のファブリックは、コアレッサの後段でインラインでセパレータ中のろ過媒体として使用されます。
シーファー社のモノフィラメント布の高い撥水性、高いスループット、精密なサイズのメッシュ開口部は、コアレッサ・セパレータシステムに装着した場合に、優れた信頼性と性能を保証します。)
「Hydrophobic surface
As the coalescer/separator has to retain water droplets that by nature are hydrophilic, the separation fabrics usually have a water repellant (hydrophobic) coating in order to enhance water removal.
This hydrophobic coating may be achieved by conventional wet chemical procedures or by low-temperature plasma treatment.」(2頁左下欄1~13行)
(甲第3号証抄訳:疎水性表面
コアレッサ/セパレータは本来親水性ですが、水滴を保持しなければならないため、分離用の布には、通常、水の除去を促すために撥水性(疎水性)のコーティングが施されています。この疎水性コーティングは、従来の湿式化学処理又は低温プラズマ処理で実現できます。)
イ 前記アの記載によれば、甲第3号証には、以下の発明(以下、「甲3発明1」という。)が記載されているといえる。
「水の除去を促すために撥水性(疎水性)のコーティングが施される分離用の布であって、この疎水性コーティングは、従来の湿式化学処理又は低温プラズマ処理で実現される、コアレッサ・セパレータシステムに装着されるモノフィラメント布。」
また、甲第3号証には、以下の発明(以下、「甲3発明2」という。)が記載されているといえる。
「水の除去を促すために撥水性(疎水性)のコーティングが施される分離用の布の製造方法であって、この疎水性コーティングは、従来の湿式化学処理又は低温プラズマ処理で実現される、コアレッサ・セパレータシステムに装着されるモノフィラメント布の製造方法。」
なお、前記甲3発明1は、審理事項通知の第5の3で認定された甲3発明と同じであり、前記認定について、請求人及び被請求人からは特段の意見は述べられていない。また、前記甲3発明2は、前記甲3発明1にのっとった上で、発明のカテゴリーを単に方法の発明に変更したものである。
(4) 甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、以下の記載がある。
「【0012】
発明の概要
具体的には、本発明は、特許請求の範囲に記載の特徴を有し、薄い、良好な接着性を有し、無孔質の超疎水性を有する、すなわち滑らかで平坦な表面で測定した静水接触角(WCA)値が約120°より大きく、好ましくは130°より大きく、更に好ましくは150°より大きいことを特徴とするフッ化炭素コーティングをコートした基体に関する。この方法で処理した基体は、その疎水性を著しく向上させ、例えば、気体および蒸気に対する透過性のような上記の特徴を維持したまま効果的に防水性とすることができる。疎水性が向上することによって、(例えば、ガラス、セラミック、金属、および埃に暴露されている他の表面への)汚れの蓄積の防止、粉体や顆粒の塊状化の防止、液体洗剤やシャンプーボトルのような親水性材料を入れた容器、または飲料容器、または液体タンク、または流動性粒子タンク、例えば小麦粉タンクを完全に空にすることの促進、歯ブラシおよび剛毛品(bristles)への汚染または蓄積の防止のような付帯的効果も生じる。基体がポリマー性であると、体液の耐漏洩性の向上した通気性製品の製造などに用いることができる。
・・・
【0014】
本発明の目的とする基体としては、ウェブ、テープ、フィルム、粉末、顆粒、粒子、織布または不織布層の形態の広汎な材料を挙げることができ、基体は多孔性または非多孔性の、成形または造形した、硬質または柔軟な、ポリマー、織物、紙、セルロース誘導体、生物分解性材料、金属、セラミック、半導体、および他の無機または有機材料から作られているものであることができる。好ましくは、基体は、目的とする用途によって所望な形状または配置に成形した後、本発明の処理目的を施す。
・・・
【0016】
製品は、好ましくは基体が配置されている適正に配置した反応装置に供給されたフッ化炭素気体または蒸気化合物を用いて行う変調グロー放電プラズマ処理を施す。プラズマ工程は、基体に密接に結合した超疎水表面特性を有する連続したフッ化炭素の薄膜を蒸着する。」
(5) 甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、以下の記載がある。
「【0004】
しかしながら、加えて、ポリマー化合物は基材と耐久性のある結合を形成することが可能でなければならない。撥水撥油性テキスタイルの処理は、一般に水性エマルジョンの形で布に塗布されるフルオロポリマーに基づいている。処理は極薄の撥液性膜によりファイバーを単にコートするだけなので、布は通気性のままで空気透過性を保つ。これらの仕上げ剤を耐久性のあるものとするためには、これらは、往々にしてフルオロポリマーをファイバーに結合する架橋性樹脂と共に共塗布される。このようにして、洗濯とドライクリーニングに対する良好なレベルの耐久性を得ることができる一方、架橋性樹脂はセルロース繊維を甚だしく損傷し、材料の機械的強度を低下させる。例えば、WO 97/13024及び英国特許第1,102,903号またはM.Lewinら「Handbook of Fibre Science and Technology」,Marcel and Dekker Inc.,New York,(1984),第2巻,B部,第2章に撥水撥油性テキスタイルを製造する化学的方法が開示されている。」
「【0012】
本発明によれば、ポリマー層により表面をコーティングする方法であって、この方法はモノマー飽和有機化合物を含むパルスされたプラズマに前記表面を曝露することを含んでなり、前記化合物がヘテロ原子により任意に介在された少なくとも5個の炭素原子の任意に置換されたアルキル鎖を含んでなる、前記基材上に撥水又は撥油性コーティングを形成する方法が提供される。」
「【0028】
本発明の方法において使用されるモノマー化合物は、好ましくは任意にハロゲンにより置換されたC6-25アルカン、特にペルハロアルカン、特にペルフルオロアルカンを含んでなる。
・・・
【0032】
本発明に従ってコートされる表面は、布、金属、ガラス、セラミックス、紙またはポリマー等のいかなる固体の基材でもよい。特に、表面は、撥水及び/又は撥油性を付与すべきセルロースの布等の布基材を含んでなる。あるいは、布はアクリル/ナイロン布等の合成布であってもよい。
・・・
【0041】
このように、本発明は、上述の方法により塗布されたアルキルポリマーと特にハロアルキルポリマーのコーティングを含んでなる基材からなり、疎水性あるいは疎油性の基材を更に提供する。特に、基材は布であるが、生物医療器具等の固体材料であってもよい。」
(6) 甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、以下の記載がある。
「【0008】
したがって、支持体の機械的特性を改質することなく、満足できる撥水特性および良好な弾性を有し、これらの特性がさらに経時的に耐久性である通気性撥水性膜を得るためのプロセスが、依然として必要とされている。
【0009】
これらの特性を有する膜は、好適な支持体へのプラズマ処理により得ることができ、この処理により、水蒸気を通過させ、非常に疎水性で液体形態の水に対し不透過性であり、また弾性を有するナノ構造化架橋非晶質ポリマーの層が堆積され得る。
【0010】
そのような処理は、前駆体(気体、液体または固体にかかわらず)を励起状態に通過させ、基材上に堆積するイオン化種を生成するように、前記前駆体をエネルギー源に曝露することにより行うことができる。イオン化種は、PECVD(プラズマエンハンスト化学気相堆積)、LECVD(レーザエンハンスト化学気相堆積)、PVD(物理気相堆積)、反応性PVD、スパッタリングまたはその他の任意のプラズマ堆積技術で前駆体を処理することにより生成することができる。イオン化種の生成の好ましい様式は、RF(高周波)-PECVD処理である。
・・・
【0018】
本発明は、通気性撥水性膜を製造するための方法であって、
(i)ガス透過性材料で作製されたフィルムまたは膜からなる支持層が使用され、
(ii)必要に応じて、この支持層の面のうちの少なくとも1つが、
-アルゴン、酸素、ヘリウムおよびこれらの混合物から選択されるガスのプラズマを使用したプラズマ処理、ならびに
-化学洗浄ステップ
から選択される少なくとも1つの処理に供され、
(iii)ステップ(i)またはステップ(ii)から得られたフィルムまたは膜の同じ面が、炭化水素ガス、フルオロカーボンガスおよび炭化水素ガス/フルオロカーボンガス混合物;フルオロカーボン液体;ならびにフルオロカーボン固体から選択される前駆体化合物であって、F/C<2であるように選択される前駆体化合物のプラズマを使用したプラズマ処理に供され、また、
(iv)ステップ(iii)から得られたフィルムまたは膜の同じ面が、2以上のF/C比を有するように選択されるフルオロカーボンガスのプラズマを使用したプラズマ処理に供されることを特徴とする方法に関する。
・・・
【0020】
本発明の方法において使用されるプラズマは、好ましくは、DCもしくはパルス(高周波(13.56MHz)、低周波もしくはマイクロ波)プラズマまたはマグネトロン生成プラズマである。それらはまた、PECVD(プラズマ化学気相堆積)もしくはLECVD(レーザ化学気相堆積)によるガスもしくは液体前駆体の処理、またはPVD(物理気相堆積)、スパッタリングもしくはその他の任意のプラズマ堆積技術による固体前駆体の処理から得ることができる。好ましい堆積法は、PECVDである。
【0021】
本発明の方法において使用される支持層は、ポリマー材料、不織布材料、織物または編物繊維材料、複合材、すなわちポリマーと天然および合成繊維から選択される少なくとも1種の材料とをベースとした材料、セルロース、ならびにセルロース誘導体で作製された膜であってもよい。好ましくは、支持層は、ポリマーで作製された、または複合材で作製された不織物または膜からなる。そのような膜は、表面上に通気性接着層を含んでもよい。
・・・
【0033】
本発明の方法は、有利には、プラズマが反応器内で形成され、次いでそこからイオン化種のフラックスの形態で基材に運搬される遠隔プラズマプロセスとは異なり、直接型プラズマ反応器内、すなわち反応種が形成されるチャンバ内に基材が設置されるプラズマ反応器内で実行される。
【0034】
直接型プラズマ反応器は、通常、
-電磁波を供給する発生器を備える励起システムと、
-電極および対極を備えるアルミニウムチャンバ(1つの電極が発生器に直接接続され、
一般にチャンバが対極として機能する。電極の形状は処理される生成物の種類に従い適合される)と、
-ポンピングシステムとを備える。
【0035】
上述のもの等、ガスプラズマを生成するための任意の方法およびすべての手段を使用して本発明を実行することができるが、高周波直接型プラズマ反応器を選択することが好ましい。
【0036】
処理は、通常20℃から350℃、有利には20℃から50℃の温度で行われる。
【0037】
処理は、通常0.05mbarから10mbar、有利には0.2mbarから1mbarの圧力で行われる。
【0038】
本発明の方法によれば、膜または支持フィルムの表面を改質するプラズマを生成するために、いくつかの化合物が連続して使用される。
・・・
【0041】
ステップ(iii)において使用することができるガスのうち、・・・例えばC2H2、CF4、CH4、CHF3、C3F8およびSF6等を挙げることができる。・・・
・・・
【0044】
有利には、このステップを行うための出力Pは、カソードの有効面積に比例する。出力Pは、有利には、0.04W/cm2から2W/cm2である。処理時間tは30秒から150秒であり、ガス流量Qはチャンバの容積に依存し、その中の圧力は0.1mbarから0.4mbarである。
・・・
【0046】
本発明の別の主題は、本発明の方法により得ることができる膜であり、該膜は通気性撥水性膜であるという点で差別化される。
【0047】
これらの特性を有する膜は、支持体の処理により得られ、この処理により、水蒸気を通過させ、撥水性すなわち液体形態の水に対し不透過性であり、また弾性を有するナノ構造化架橋非晶質ポリマーの層が堆積され得る。
・・・
【0050】
この層は、10nmから500nm、好ましくは50nmから150nmのサイズのナノ粒子の形態であってもよい。これらのナノ粒子は、互いに集合していてもいなくてもよく、10nmから200nm、好ましくは20nmから100nmの範囲の細孔サイズを有する多孔質フィルムを形成する。それらは、10nmから200nm、好ましくは20nmから100nmの範囲の細孔サイズを有するナノ多孔質ポリマーフィルムの形態であってもよい。この層は、共有結合および/またはイオン結合および/またはファンデルワールス結合で基材に結合する。この層の厚さは、20nmから1000nm、有利には40nmから100nmの範囲であってもよい。」
(7) 甲第9号証の記載事項
甲第9号証には、以下の記載がある。
「Referring to FIG. 7A, a nanofiber membrane 700 may include electrospun and/or melt blown, e.g., extruded, fibers 702 defining openings (or pores) 704 among the fibers 702. The openings 704 are tortuous, and can be nano-sized or micro-sized. Multiple openings 704 are interconnected within the nanofiber membrane 700, forming channels for air and water vapor to pass the membrane 700. The fibers are coated, e.g., individually coated, with a hydrophobic material 706, such as fluorocarbon, wax, silicon, or others, with or without additives, such as cross-linking agents, bonding agents, silane, and etc. The hydrophobic material 706 does not block a substantial number of openings 704 so that the substantial number of channels in the membrane 702 remains unblocked, e.g., for air and/or vapor passage.」(26ページ19行~28行)
(当審訳:図7Aを参照すると、ナノ繊維膜700は、繊維702の間の開口(又は孔)704を画定する、エレクトロスピニングされた及び/又はメルトブローンされた、例えば、押出しされた繊維702を含むことができる。開口704は、彎曲していて、ナノサイズ又はマイクロサイズであってもよい。複数の開口704は、ナノ繊維膜700内で相互接続され、膜700を通過する空気と水蒸気のチャネルが形成される。繊維は、架橋剤、結合剤、シランなどの添加剤を用いて、又は用いずに、フルオロカーボン、ワックス、シリコンなどの疎水性材料706でコーティングされており、例えば、個々にコーティングされている。疎水性材料706は、空気及び/又は蒸気の通過などのために膜702の実質的な数のチャンネルがブロックされないままにするために、実質的な数の開口704をブロックしない。)
「The nanofiber membrane 700 coated with the hydrophobic material 706 maintains desired levels of wind and water resistant and vapor permeability properties, e.g. as discussed for the membrane 60 of FIGS. 4A and 4B. In particular, the hydrophobic material 706 on the walls 712 of the openings 704 serves to reduce the sizes of the openings without blocking a substantial or significant number of openings so that the nanofiber membrane 700 maintains its fibrous and/or porous structure. The hydrophobic material 706 facilitates, e.g., enhances, the water resistant and vapor permeability properties with controlled air permeability of the nanofiber membrane 700. For example, water is not attracted to, e.g., expelled from, the surfaces and the openings 704 of the nanofiber membrane 700 so that water does not pass into or through the membrane 700 readily. For example, water contacting the hydrophobic material 706 of the membrane 700 has a large contact angle and, as a result, does not readily spread on or through the membrane. (A reduced portion of the vapor may still pass the membrane without contacting the membrane.) 」(27ページ13行~26行)
(当審訳:例えば図4A及び図4Bの膜60で述べたような、疎水性材料706で被覆されたナノ繊維膜700は、風や耐水性、蒸気透過性の所望のレベルを維持する。特に、開口704の壁712上の疎水性材料706は、ナノ繊維膜700が繊維状及び/又は多孔質構造を維持するように、実質的な又はかなりの数の開口部を遮断することなく、開口部の大きさを小さくすることができる。疎水性材料706は、ナノ繊維膜700の空気透過性を制御しつつ、耐水性、蒸気透過性を容易にし、例えば、増強する。例えば、水はナノ繊維膜700の表面及び開口704に引き寄せられない(例えば、そこから追い出される)ので、水は容易に膜700の中に侵入したり通過しない。例えば、膜700の疎水性材料706と接触する水の接触角が大きく、結果として、容易に膜の上又は膜の中に拡散しない(少量の蒸気は膜に接触することなく通過しうる。)。
「A membrane including hydrophobic material, such as the membrane 700, can be made using various methods. In some implementations, the membrane formed by an electrospinning process (such as the process described in FIG. 5) or by a melt blown process (such as the process described in FIG. 6), e.g., an extrusion process, is coated with the hydrophobic material using nano-coating technologies, e.g., plasma technology or using a pulsed, ionized gas plasma created within a chamber at room temperature. Suitable technologies can include those provided by P2i Ltd. (Milton Park, UK). For example, the hydrophobic material can be introduced in the chamber in a gas phase or in the form of an aerosol at an atmospheric pressure or at a pressure below the atmospheric pressure, e.g., in vacuum. The hydrophobic material coating can be thin, e.g., having a nanometer thickness. Other deposition methods, such as a plasma enhanced chemical vapor (CVD) deposition process, atomic layer deposition, pulsed laser deposition, spin coating, and/or printing can be used.」(29ページ11行~23行)
(当審訳:膜700のような疎水性材料を含む膜は、様々な方法を用いて製造できる。幾つかの具現化形態では、エレクトロスピニングプロセス(図5で説明したプロセス)、又はメルトブローンプロセス(図6で説明したプロセス)、例えば押出プロセスにより形成された膜は、ナノコーティング技術、例えばプラズマ技術を使用して、又は室温でチャンバ内に生成されるパルス化、イオン化ガスプラズマを用いて、疎水性材料で被覆される。適切な技術は、P2i Ltd.(英国ミルトンパーク)によって提供されるものを含むことができる。疎水性材料は、例えば大気圧又は大気圧未満の圧力(例えば真空中)で、気相又はエアロゾルの形態でチャンバー内に導入することができる。疎水性材料のコーティングは、薄くすることができ、例えば、ナノメートルの厚さを有している。他の堆積方法、プラズマ強化化学気相成長(CVD)法、原子層堆積法、パルスレーザー蒸着法、スピンコート法、及び/又は印刷などを用いることができる。)
(8) 甲第10号証の記載事項
甲第10号証には、以下の記載がある。
「【0014】
本発明の第1の態様では、テキスタイル材料を含むファブリックをポリマーコーティングでコーティングする方法を提供し、本方法は、ファブリックをモノマーでコーティングすることと、モノマーを低電力プラズマ重合技法にさらすことを含み、モノマーは、一般式(I)
【数1】
・・・
を含む。・・・」
「【0045】
好ましくは、本方法は、堆積されたポリマーコーティングを形成するため、プラズマに衝突するモノマーを利用するステップを含む。有利には、プラズマに衝突する更なるガスを利用する必要性は存在しない。
【0046】
好ましくは、本方法は、10nm~500nm、より好ましくは10nm~250nm、更により好ましくは20nm~150nm、例えば、最も好ましくは30nm~100nm、40nm~100nm、40nm~90nmの厚さを有するポリマーコーティングを塗布するステップを含む。層は、500nm未満、例えば、450nm未満、400nm未満、350nm未満、300nm未満、250nm未満、200nm未満、150nm未満、100nm未満であり得る。
・・・
【0061】
本発明の方法の利点は、反応性が高いクラスのモノマーが低電力連続波条件下で重合することを可能にすることと、良性プラズマを生成することと、生産環境における改善された実装のためにプロセス速度を最適化するための適応可能なプラズマゾーンの設計及び電極の数と、望ましくない温度勾配を回避するため温度を正確に制御する手段を設けることと、材料の最適な巻取りのための、ロードセルに対する適応可能な張力及びローラーの可変駆動と、コーティングされるテキスタイル材料のロールの寸法及び重量に応じた繰出しゾーン及び巻取りゾーンの適応可能な設計とのうちの1つ又は複数を含むが、それに限定されない。
【0062】
本発明のポリマーコーティングの利点は、コーティングされたテキスタイルの改善された疎水性特性及び疎油性特性と、コーティングされたテキスタイルの改善された機能と、改善された付着性と、静電的に帯電した濾過テキスタイル、例えば、エレクトレットのための、イソプロパノール等の排出液と接触する場合の、コーティングされたテキスタイルの改善された耐久性、及び静電電荷の所定時間の維持とを含むが、それに限定されない。」
(9) 甲第11号証の記載事項
甲第11号証には、以下の記載がある。
「An alternative chemical deposition scheme retains the useful aspects of CVD but drives the reactions by electrical discharge(plasma-enhanced CVD, PECVD) which enables substrate temperatures to be reduced; even lower temperatures may be possible if the reactions can be driven by photons but these should be short-wavelength ultraviolet(UV) to break chemical bonds, and so can attack many textile substrate materials as well.」(127ページ11行~16行)
(当審訳:代替の化学蒸着スキームは、CVDの有用な側面を保持しつつ、放電によって反応を駆動する(プラズマCVD、PECVD)ことで基板の温度を下げることができる。光子によって反応を駆動できれば更に低温が可能であるが、これらは化学結合を切断するために短波長の紫外線(UV)である必要があり、多くのテキスタイル基板材料を攻撃する可能性もある。)
「Given these constraints, what can be achieved by CVD on a textile surface? Typical requirements include hydrophilicity or hydrophobicity, electrical conductance, flame retardance, antistatic or antibacterial action, and a host of other more complex functions.」(127ページ最終行~128ページ3行)
(当審訳:このような制約の中、テキスタイルの表面のCVDによって、何が達成できるだろうか?典型的な要求としては、親水性や疎水性、導電性、帯電防止又は抗菌作用、及びそのほかのより複雑な機能が挙げられる。)
(10) 甲第12号証の記載事項
甲第12号証には、以下の記載がある。
「
[図:0001414440000002.jpg]
」(248ページ27行~36行)
(当審訳:本研究では、布に対する従来の防水仕上げをプラズマプロセスに置き換える可能性を更に検討した。プラズマ化学気相成長(PECVD)法でシランプラズマを使用することにより、優れたはっ水仕上げを得ることができた。更に、非重合ガスを使用したプラズマ前処理とそれに続くパーフルオロアクリレートによるグラフト化によって、洗浄永久的な超疎水性・疎油性コーティングが得られた。このコーティングは、優れた洗浄耐久性(ISO 6330、洗浄サイクル80回)を有し、また、スプレー試験(AATCC 22)とブンデスマン法による試験で非常に優れたはっ水性を有する。
プラズマ親水コーティングの永久性は、50回の洗浄後及びエージング後の沈降時間を測定することにより記録した。また、このコーティングの機械的安定性をマーチンデール試験(SN 198514、ラビングサイクル 60000回)に従って評価した。)
(11) 甲第13号証の記載事項
甲第13号証には、以下の記載がある。
「
[図:0001414440000003.jpg]
」(4ページ左欄1行~13行)
(当審訳:プラズマはまた、材料の「堆積」も引き起こすことができる。すなわち、プロセスガスとしてより複雑な分子を使用すると、プラズマ化学気相成長(PECVD)として知られるプロセスが生じ得る。例えば、メタン又は四フッ化炭素を使用すると、このガスはプラズマ内で断片化され、それ自体と反応してポリマーとなる。プロセス条件を選択すると、ピンホールのない化学的にユニークな膜がプラズマ反応器内の材料の表面上に堆積され得る。PECVDコーティングは、これらが堆積された材料の表面特性を恒久的に変化させる。)
(12) 甲第14号証の記載事項
甲第14号証には、以下の記載がある。
「Plasma technology is offering an attractive way to add new functionalities, such as water repellency, hydrophilicity, dyeability, conductivity, and biocompatibility, due to the nanoscaled modification of textiles and fibers.」(99ページ左欄7行~11行)
(当審訳:プラズマ技術は、布地及び繊維がナノスケールで装飾されるため、はっ水性、親水性、染色性、導電性、生体適合性などの新しい機能性を追加するための魅力的な方法を提供している。)
「When adverting of plasma polymerization, a radical-dominated plasma chemical vapor deposition(plasma CVD) process is thought of, resulting in macromolecule formation, i.e. mainly amorphous, more or less cross-linked structures.」(100ページ左欄24行~28行)
(当審訳:プラズマ重合に言及するとき、ラジカル支配プラズマ化学蒸着(プラズマCVD)プロセスが考えられ、高分子の生成、すなわち、主に非晶質である多少架橋された構造がもたらされる。)
「Especially, plasma technology is offering an attractive way to add new functionalities such as water repellence, hydrophilicity, dyeability, conductivity, and biocompatibility, due to the nanoscaled and tailored modification of textiles and fibers. Plasma polymerization, which leads to the deposition of thin coatings via gas phase activation and plasma-substrate interactions, enables the design of more or less cross-linked plasma polymers containing more or less functional groups covering the entire range from swellable hydrogel-like(PEO-like) up to diamond-like(DLC) coatings.」(112ページ左欄23行~35行)
(当審訳:特に、プラズマ技術は、布地及び繊維がナノスケールで適切に装飾されるため、はっ水性、親水性、染色性、生体適合性などの新しい機能を追加するための魅力的な方法を提供している。気相活性化及びプラズマ-基材相互作用を介して薄いコーティングが堆積されるプラズマ重合は、膨潤性ハイドロゲル状(PEO状)コーティングからダイヤモンド状(DLC)コーティングまでの全範囲をカバーする、多少の官能基を含む多少架橋されたプラズマポリマーの設計を可能にする。)
「Plasma-modified textiles enable new and interesiting application in different fields such as clothing, filtration, automotive industry, architecture, medical engineering and biotechnology.」(112ページ右欄32行~35行)
(当審訳:プラズマで装飾された布地は、衣類、ろ過、自動車産業、建築、医工学、バイオテクノロジーなどの様々な分野で新規かつ興味深い応用を可能にする。)
(13) 甲第15号証の記載事項
甲第15号証には、以下の記載がある。
「The English P2i and the Italian SAATI companies employ low-pressure plasma chemical vapor deposition techniques to produce extremely durable water proofing textiles and to enhance the meshes durability for screen-printing, respectively.」(4ページ右欄9行~13行)
(当審訳:イギリスの会社P2i及びイタリアの会社SATTIは、極めて耐久性のある防水布地を製造し、スクリーン印刷用にメッシュ耐久性を高めるために、低圧プラズマ化学蒸着技術を採用している。)
「The coating deposition is one of the most important processes in thin-film and composite manufacturing. In this field, the physical sputtering and the chemical vapour deposition under low-pressure plasmas are the dominant technologies.」(4ページ右欄22行~26行)
(当審訳:コーティングの堆積は、薄型フィルム及び複合体の製造における最も重要なプロセスの一つである。この分野では、低圧プラズマ下での物理スパッタリング及び化学蒸着が支配的な技術である。)
「The hydrophobicity of a textile substrate can be obtained by introducing hydrophobic functional groups as coating or graft co-polymerization.」(10ページ左欄2行~4行)
(当審訳:布地基材の疎水性は、コーティングとして疎水性官能基を導入することによって、すなわち、グラフト共重合によって、得られる。)
「However, the method with the highest potential is the deposition of a polymer onto the fibers during the plasma treatment. The deposition can occur while the plasma is excited (plasma polymerization) or in a two-step process: (i) creation of radicals on the fibere surface by plasma in inert gas(e.g. argon) and (ii) reaction of these radicals with unsaturated monomers.[11] As can be observed in Table 2, numerous studies with different plasma discharges were conducted with the objective of increasing the hydrophobicity of various textile fibers, such as polyesters(PET),[88-90] polyacrylonitrile(PAN),[91] polypropylene(PP),[92] cotton,[24,93-96] cellulose,[97] cellophane,[92] silk,[98] poly(lactic acid)(PLA)[99] and cotton/polyester blends.[20] In particular, the increase in fabric hydrophobicity using plasma with polymerizing fluorocarbon gases such as hexafluoropropylene,[100] fluorodecylacrylate,[101] hexafluoroethane[102] and tetrafluoromethane[92] were deeply investigated.」(10ページ左欄11行~右欄6行)
(当審訳:しかしながら、最もポテンシャルが高い方法は、プラズマ処理中に繊維上にポリマーを堆積させるものである。堆積は、プラズマが励起されている間(プラズマ重合)か、以下の二段階のプロセス中に起こり得る:(i)不活性ガス(例えばアルゴン)中のプラズマによる繊維表面のラジカルの発生及び(ii)これらのラジカルと不飽和モノマーとの反応。表2に示されるように、ポリエステル(PET)[88-90]、ポリアクリロニトリル(PAN)[91]、ポリプロピレン(PP)[92]、コットン[24,93-96]、セルロース[97]、セロファン[92]、シルク[98]、ポリ(乳酸)(PLA)[99]及びコットン/ポリエステルブレンド[20]などの種々の布地繊維の疎水性を増加させる目的で様々なプラズマ放電を用いた多数の研究を行った。特に、ヘキサフルオロプロピレン[100]、フルオロデシルアクリレート[101]、ヘキサフルオロエタン[101]、及びテトラフルオロメタン[92]などの重合フルオロカーボンガスを用いてプラズマを使用した場合の布の疎水性増加を深く研究した。)
(14) 甲第16号証の記載事項
甲第16号証には、以下の記載がある。
「
[図:0001414440000004.jpg]
」(2ページ4行~8行)
(当審訳:血管移植片における血栓症のリスクを低減するためには、管腔内皮の下の細胞外マトリックスのものに近い形態学的及び機械的特性を有する表面を提供し、また、内皮細胞の集密的かつ安定な単層の成長を促すことが必須である。これは、本論文において、エレクトロスピニングされたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)マットを、「L-PPE:N」と命名した、アミンが豊富な薄型プラズマ重合コーティングと組み合わせることによって達成される。)
「
[図:0001414440000005.jpg]
」(5ページ19行~25行)
(当審訳:エチレン(C2H4)/アンモニア(NH3)ガス混合物(C2H4:99.5%;NH3:99.99%;Air Liquide Canada Ltd.,ケベック州モントリオール)を用いて、低圧(「L」)容量結合高周波(周波数:13.56MHz)グロー放電プラズマ反応期中でナノファイバーマットの表面上にL-PPE:Nコーティングを堆積させた。コーティングは、円筒形アルミニウム/鋼反応器チャンバ内で、600ミリTorr(80Pa)の圧力で堆積させた。高純度供給ガスの流れは電子式流量計/コントローラ(Vacuum General Inc.,カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて制御し、直径10cmのシャワーヘッドガス分配器を介してチャンバ内へ導入した。)
「
[図:0001414440000006.jpg]
」(17ページ2行~9行)
(当審訳:3.2.1.化学組成とその深さ依存性
上述した特別なL-PPE:N被覆2層マット試料を用いて、最上部([a]:0μm)、中央部([b]:45μm)、及び底部([c]:90μm)の位置それぞれでXPS測定を行った(n=3)。これら3つの位置のそれぞれにおける[N]の各値は、[a]:13%、[b]:5%、[c]:5%であった。[N]は深さの増加と共に減少したと考えられるが、プラズマへの暴露中のマットの表面の下の数十マイクロメートルである、[b]及び[c]の位置では明らかにゼロではなかった。これは、プラズマからの活性種がマットの多孔質構造を通って浸透したことを疑いなく明らかにする。)
(15) 甲第17号証の記載事項
甲第17号証には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約145cmの水頭および少なくとも約0.3m3/m2-分のフレーザー(Frazier)通気度を有する、サポートウェブと繊維バリアウェブとを含んでなる不織布。」
「【0085】
バリアウェブ繊維の直径は通常約2マイクロメートル未満、より通常では約1マイクロメートル未満であり、約0.5マイクロメートル未満の直径を有する「ナノファイバー」範囲にあることさえでき、ここで、直径は数平均繊維サイズである。
・・・
【0088】
通常の親水性ポリマー・ナノファイバーの不織ウェブを収集/サポートウェブ上へ付着することによって、およびウェブのナノファイバーをフルオロカーボンコーティング材料のような疎水性コーティング材料でコーティングすることによって、本発明に従ったナノファイバーを含有する疎水性不織シートを提供することもまた可能である。コーティング材料が極めて薄い層で塗布される場合、例えば、2002年6月26日に出願された同時係属中の米国仮出願第60/391,864号明細書に記載されているように、下にあるウェブの通気性のたとえあったとしてもほんの僅かの変化がもたらされる。
・・・
【実施例】
【0092】
様々なポリマーを好適な溶媒に溶解し、それを次に、参照により本明細書に援用される米国特許第4,127,706号明細書に記載されているもののような電子紡糸装置へ供給することによって試料布を製造した。形成された微細繊維をメルトブローン布サポート層上へ付着して微細繊維のバリア層を形成し、微細繊維/メルトブローン層をスパンボンド・ポリエステル繊維の層の間に挟むことによって試料に機械的強度を与えて、スパンボンド/メルトブローン/微細繊維/スパンボンド構造の4層積層品を形成した。」
(16) 甲第18号証の記載事項
甲第18号証には、以下の記載がある。
「【0009】
一実施形態では、本発明は、着用者を水から保護しながら水蒸気を透過する機能を有する、複合布帛を含む耐水性で通気性の衣類に関し、この複合布帛は、布帛層と;約50nm~約1000nmの数平均直径を有するポリマーナノ繊維の少なくとも1つの多孔質層を含む多孔質のコーティングされたナノ繊維層であって、約1g/m2~約100g/m2の坪量および145°を超える、コーティングされたナノ繊維層の表面に対する水滴の接触角を有するコーティングされたナノ繊維層とを含み;ここで、ナノ繊維の表面へのコーティングは、フッ化炭素ポリマー部分および樹脂バインダーまたは増量剤を含み;ここで、コーティングされたナノ繊維層は、約0.5m3/分/m2~約8m3/分/m2のフレージャ透気率、約500g/m2/日を超えるMVTRおよび少なくとも約50cmwcの静水圧頭を有する。
・・・
【0019】
一実施形態では、本発明は、高いMVTRおよび液体水の浸透に対する高い抵抗性(本明細書においては「静水圧頭」、「水頭」、および「耐水性」と同義的に呼ばれる)を同時に保つ機能を有する耐水性衣類に関する。この衣類は、約1g/m2~約100g/m2の坪量を有するポリマーナノ繊維の少なくとも1つの多孔質層のナノ繊維層を含有する。ポリマーナノ繊維は、フッ化炭素ポリマー部分および樹脂バインダーまたは水および/もしくは他の溶媒に可溶である増量剤を含む撥水処理によってコーティングされる。
・・・
【0023】
不織ウェブは、従来の電界紡糸または電気ブロー加工(両方とも一般に溶液紡糸プロセスである)、および場合によってはメルトブロー加工プロセスまたは他の好適なプロセスなどの電界紡糸によって好都合に製造されるナノ繊維を主に含むかまたはそのナノ繊維のみを含む。従来の電界紡糸は、全体が本明細書に援用される米国特許第4,127,706号明細書に示される技術であり、ここで、高い圧力が溶液中のポリマーにかけられて、ナノ繊維および不織マットが生成される。この不織ウェブは、メルトブローン繊維も含み得る。
・・・
【0030】
多種多様な天然および合成の布帛が公知であり、例えば、スポーツウェア、丈夫な上着(rugged outerwear)およびアウトドアウェア、保護衣などの衣類(例えば、手袋、エプロン、革ズボン、パンツ、ブーツ、スパッツ(gators)、シャツ、ジャケット、コート、靴下、靴、下着、チョッキ、防水長靴、帽子、長手袋、寝袋、テントなど)を構成するための、本発明の1つまたは複数の布帛層として用いられてもよい。通常、丈夫な上着として使用するためにデザインされた衣類は、比較的低い強度または靭性を有する天然および/または合成繊維(例えば、ナイロン、綿、ウール、絹、ポリエステル、ポリアクリル、ポリオレフィンなど)から作製された比較的緩く折られた布帛から構成されていた。各繊維は、約8グラム/デニール(gpd)未満、より典型的には約5gpd未満、および場合によっては約3gpd未満の引張り強さまたは靭性を有し得る。このような材料は、例えば、可染性、通気性、軽さ、心地良さ、および場合によっては、耐磨耗性といった様々な有益な特性を有し得る。あるいは、約8グラム/デニール(gpd)超、より典型的には約10gpd超の靭性を有する高い靭性の繊維を用いることができる。このような繊維としては、アラミド繊維、オキサゾール繊維、ポリオレフィン繊維、炭素繊維、チタン繊維および鋼繊維が挙げられる。」
(17) 甲第19号証の記載事項
甲第19号証には、以下の記載がある。
「【0010】
一実施形態では、本発明は、着用者を水から保護しながら水蒸気を透過する機能を有する、複合布帛を含む耐水性で通気性の衣類に関し、この複合布帛は、布帛層と;約50nm~約1000nmの数平均直径を有するポリマーナノ繊維の少なくとも1つの多孔質層を含む多孔質のコーティングされたナノ繊維層であって、約1g/m2~約100g/m2の坪量および145°を超える、コーティングされたナノ繊維層の表面に対する水滴の接触角を有するコーティングされたナノ繊維層とを含み;ここで、ナノ繊維の表面へのコーティングは、フッ化炭素ポリマー部分および樹脂バインダーまたは増量剤を含み;ここで、コーティングされたナノ繊維層は、約0.5m3/分/m2~約8m3/分/m2のフレージャ透気率、約500g/m2/日を超えるMVTRおよび少なくとも約50cmwcの静水圧頭を有する。
・・・
【0020】
一実施形態では、本発明は、高いMVTRおよび液体水の浸透に対する高い抵抗性(本明細書においては「静水圧頭」、「水頭」、および「耐水性」と同義的に呼ばれる)を同時に保つ機能を有する耐水性衣類に関する。この衣類は、約1g/m2~約100g/m2の坪量を有するポリマーナノ繊維の少なくとも1つの多孔質層のナノ繊維層を含有する。ポリマーナノ繊維は、フッ化炭素ポリマー部分および樹脂バインダーまたは水および/もしくは他の溶媒に可溶である増量剤を含む撥水処理によってコーティングされる。
・・・
【0024】
不織ウェブは、従来の電界紡糸または電気ブロー加工(両方とも一般に溶液紡糸プロセスである)、および場合によってはメルトブロー加工プロセスまたは他の好適なプロセスなどの電界紡糸によって好都合に製造されるナノ繊維を主に含むかまたはそのナノ繊維のみを含む。従来の電界紡糸は、全体が本明細書に援用される米国特許第4,127,706号明細書に示される技術であり、ここで、高い圧力が溶液中のポリマーにかけられて、ナノ繊維および不織マットが生成される。この不織ウェブは、メルトブローン繊維も含み得る。」
(18) 甲第21号証の記載事項
甲第21号証には、以下の記載がある。
「
[図:0001414440000007.jpg]
」(1ページ左欄1行~最終行)
(当審訳:はじめに
織布の表面品質は、様々な形でフィルターの特性に影響を与える、ますます重要な要素になっている。表面処理は、様々な要求に応じて織布の機能を変えることで、得られるフィルターの有効性を特定の環境において大幅に向上させる。
シーファー社は、精密織布の製造のみならず、布地表面の改質においても長年の経験がある。シーファー社は、次の表面処理技術を提供している。
-湿式化学表面改質(主に親水性及び疎水性)
-低温プラズマ処理(主に活性化、機能化、プラズマポリマー堆積)
-金属コーティング(アルミニウム、銅、ニッケルコーティング)
シーファー社製品の用途に応じて、適切な表面処理が織布に適用される。ほぼ全ての種類のシーファー社製品は、これらの技術で処理することができる。表面処理の詳細については、www.sefar.com/Filtration/fabrics&Mediaを参照。)
「
[図:0001414440000008.jpg]
」(3ページ左欄1行~最終行)
(当審訳:優れたはっ水性と防汚性
シーファー社のファブリックは、電子機器をほこり、水、汚れから保護する。
織物フィルターは、スピーカーやマイクなど、多くの音響デバイスで使用されている。シーファー社のフィルターは、不要な周波数ピークを吸収することにより、携帯電話の通話や音質を改善するだけでなく、繊細な電子機器を湿気、ほこり、汚れから保護する。疎水性表面処理は、水分の取り込みと汚染に対する優れた保護を提供する。
シーファー社の音響用ファブリックは疎水性処理されており、湿気の取り込みに対する最適な保護を提供し、ほこりや汚れをはじく。疎水性ファブリックは、黒又は客の要望に応じた色でも利用できる。
(詳細はパンフレット「携帯電話」を参照。))
「
[図:0001414440000009.jpg]
」(3ページ右欄)
(当審訳:シーファー社の疎水性織布は、スピーカーやマイクを湿気、ほこり、汚れから保護する
図 スピーカーとマイクを備えた携帯電話)
(19) 甲第22号証の記載事項
甲第22号証には、以下の記載がある。
「[0008] The technology described herein generally relates to venting media laminates. In one embodiment, the technology described herein is a venting media laminate having a microporous membrane layer, a fine fiber layer directly coupled to the microporous membrane layer, and a colorant disposed in the fine fiber layer.
・・・
[0010] In yet another embodiment, the technology described herein is an acoustic venting assembly with a microporous membrane layer and a fine fiber layer directly coupled to the microporous membrane layer.」
(当審訳:[0008]本明細書に記載される技術は、一般に、通気媒体積層体に関する。一実施形態では、本明細書に記載された技術は、微多孔性膜層に直接結合された微細繊維層と、微細繊維層に配置された着色剤とを有する通気媒体積層体である。
・・・
[0010]更に別の実施形態において、本明細書に記載される技術は、微多孔性膜層と、微多孔性膜層に直接結合された微細繊維層とを有する音響ベントアセンブリである。)
「[0037] FIG. 1 depicts a schematic of an example implementation of the current technology. An electronic assembly 10 has an enclosure 50 defining at least one opening 52 with an acoustic venting assembly 30 sealably disposed across each opening 52. The acoustic venting assembly 30 is generally configured to prevent entry of particulates and water through the opening 52 of the enclosure 50 and accommodate acoustic pressure waves passing through.」
(当審訳:[0037]図1は、本発明の技術の例示的な実施形態の概略図を示す。電子アセンブリ10は、各開口52にわたってシール可能に配置された、音響ベントアセンブリ30を有する少なくとも1つの開口を画定するエンクロージャ50を有する。音響ベントアセンブリ30は、一般的にエンクロージャ50の開口52を介した微粒子や水の浸入を防止して、通過する音響圧力波に適応するように構成されている。)
「[0056] ・・・
Fine Fiber Formation-Electro-Spinning」
(当審訳:[0056]・・・
微細繊維の形成-エレクトロスピニング)
「Functional Layers
[0061] Referring back to the Figures, FIG. 6 depicts a schematic cross-sectional view of another laminate consistent with the technology disclosed herein. The laminate 110 has a microporous membrane layer 210, a fine fiber layer 310, and a functional layer 410 adjacent to the fine fiber layer 310. Although one functional layer 410 is depicted in FIG. 6, it will be appreciated that, in some embodiments, more functional layers can be incorporated. The functional layers are generally additives that can improve and/or change the properties of the laminate 110. Functional layers will now be described in detail.
[0062] Additive materials can substantially improve the fine fiber resistance to the effects of heat, humidity, impact, mechanical stress and other negative environmental effects. We have found that while processing the microfiber materials of the invention, that the additive materials can improve the oleophobic character, the hydrophobic character and can appear to aid in improving the chemical stability of the materials. The presence of oleophobic and hydrophobic additives in the current technology form a functional layer or protective coating, ablative surface or penetrate the surface to some depth to improve the nature of the polymeric material. We believe the important characteristics of these materials are the presence of a strongly hydrophobic group that can preferably also have oleophobic character. Strongly hydrophobic groups include fluorocarbon groups, hydrophobic hydrocarbon surfactants or blocks and substantially hydrocarbon oligomeric compositions.」
(当審訳:機能層
[0061]これらの図面に戻ると、図6は、本明細書に開示された技術に準拠する別の積層体の概略断面図を示す。積層体110は、微孔質膜層210、繊維層310、及び微細繊維層310に隣接する機能層410とを備えている。図6には、1つの機能層410が示されているが、いくつかの実施形態では、2つ以上の機能層を組み込むことができることが理解されよう。機能層は、一般的に、積層体110の特性を改良及び/又は変化させることができる添加物である。機能層は、以下に詳細に説明する。
[0062]添加材料は、熱、湿度、衝撃、機械的応力、及び他の負の環境作用の影響に対する繊維の耐性を実質的に改善することができる。本発明者らは、本発明の微細繊維材料を加工する間に、添加材料が疎油性、疎水性を改善することができ、材料の化学的安定性を高めるのに役立つように見えることを見いだした。本技術における疎油性及び疎水性の添加剤の存在は、機能層又は保護コーティング、アブレーション表面を形成するか、あるいはある深さまで浸透してポリマー材料の性質を向上させる。本発明者らは、これらの材料の重要な特性は、好ましくは疎油性も有することができる、強疎水性基の存在であると考える。強力な疎水基には、フルオロカーボン基、疎水性炭化水素界面活性剤又はブロック、及びほぼ炭化水素オリゴマーの組成物が挙げられる。)
(20) 甲第28号証の記載事項
甲第28号証には、以下の記載がある。
「【請求項1】
防水性・透湿性履物物品(10)用アッパーアセンブリー(12)であって、防水性・透湿性機能性層(22)と、前記機能性層(22)に直接、前記機能性層(22)の内側で取り付けられたインナーライニング層(24)とを含む積層体(16)を前記アッパーアセンブリーが含み、 前記インナーライニング層(24)が、モノフィラメントで作られた編布又は織布であることを特徴とするアッパーアセンブリー。」
「【0015】
本発明によれば、防水性・透湿性履物物品用のアッパーアセンブリーは、防水性・透湿性機能性層と、この機能性層に直接、機能性層の内側で取り付けられたインナーライニング層とを含む積層体を含む。このインナーライニング層は、モノフィラメントで作られた編布又は織布である。
・・・
【0019】
上記のようなアッパーアセンブリー、及び、上記のようなアッパーアセンブリーを用いた履物物品は、軽量で、透湿性が高いことが分かっている。更に、上記のようなアッパーアセンブリーを用いた履物物品は、充分な防水性と耐久性を有することができる。特に、このような履物物品は、内側が濡れたら、素早く再乾燥できる能力を有することができる。」
(21) 甲第29号証の記載事項
甲第29号証には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
極細繊維の絡合体である不織布と、メッシュ素材と、前記不織布と前記メッシュ素材とを接着する接着層を有し、
前記接着層は孔径1~2.5mmの複数の孔を有し、その全面に対して前記孔の総面積割合が1~4%であることを特徴とする繊維積層体。」
「【0009】
本発明の一局面は、極細繊維の絡合体である不織布と、メッシュ素材と、不織布とメッシュ素材とを接着する接着層を有し、接着層は孔径1~2.5mmの複数の孔を有し、その全面に対して孔の総面積割合が1~4%である繊維積層体である。このような繊維積層体は、接着層に微細な孔が形成されているために、高い透湿性を保持することができる。また、大きな孔が外観に現れないために、外観の意匠を損なわない。さらに、総面積割合が1~4%であるために剥離強度を大幅に低下させずに透湿性を維持できる。このような繊維積層体は、スポーツシューズの甲皮材として好ましく用いられる。」
「【0051】
そして、不織布と、メッシュ素材と、不織布とメッシュ素材との間に介在するように孔を形成した熱可塑性ポリウレタンシートとを重ねて積層中間体を形成した。そして、積層中間体を熱プレス機(表面温度130℃、プレス圧0.1MPa、プレス時間20sec)で熱プレスすることにより繊維積層体を得た。なお、メッシュ素材としてはナイロンモノフィラメントのメッシュ素材を用いた。」
(22) 甲第46号証の記載事項
甲第46号証には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状に形成された接着層と、該接着層に接着された通気膜とを有する通気フィルターであって、前記通気膜の外周部は前記枠状接着層の外周部よりも外側となるように構成されていることを特徴とする通気フィルター。」
「【発明の効果】
【0021】
本発明の通気フィルター及びその製造方法によれば、枠状に形成された接着層と通気膜とから構成される通気フィルターにおいて、通気膜が破損しにくい構造を提供することができる。また、通気膜が収縮し易い材料で構成されている場合においては、通気膜が収縮しても接着層が露出しにくい構造を提供するものである。」
(23) 甲第47号証の記載事項
甲第47号証には、以下の記載がある。
「[0013] This disclosure provides for the protection of an open port of a MEMS device by enabling a vent, which is an environmental barrier such as an ePTFE membrane, to act as a barrier to dust and liquid while allowing transmission of the intended signal: typically a temperature, pressure, or acoustic signal. The disclosure specifically relates to the attachment method, and more specifically to constructions that allow the vent to be attached with equipment that is readily available, and already used, by MEMS packaging companies.
・・・
[0015] Exemplary embodiments of vent assemblies according to this disclosure will now be described in connection with the Figures. One exemplary embodiment is vent assembly 10, shown in Fig.1. Vent assembly 10 comprises a vent 11, preferably comprising an ePTFE membrane, that has a stiff carrier 12 as its bottom layer. Stiff carrier 12 is attached to the ePTFE membrane vent 11 with an adhesive 13 in this embodiment, such as a pressure sensitive adhesive. Alternatively, it is attached with typical welding methods like heat welding, ultrasonic welding, or laser welding. Once assembled, vent 11 and carrier 12 form vent assembly 10. Vent assembly 10 is attached to a thin, low tack liner 14 with enough adhesion to keep vent assembly 10 in place during shipping, but low enough adhesion that vent assembly 10 can easily be removed.・・・Stiff carrier layer 12 is a material suitable for the industry; i.e., resistant to reflow temperatures, having a low CTE, and a low moisture absorption.」
(当審訳:[0013]本開示は、意図された信号、典型的には温度、圧力、又は音響信号の伝送を可能にしながら、通気孔がダスト及び液体に対するバリアとして作用する、ePTFE膜などの環境バリアである、MEMSデバイスの開放ポートの保護を提供する。本開示は、具体的には、取り付け方法に関し、より具体的には、MEMSパッケージング会社によって容易に利用可能であり、既に使用されている機器にベントを取り付けることを可能にする構造に関する。
・・・
[0015]次に、本開示によるベントアセンブリの例示的な実施形態を、図面に関連して説明する。1つの例示的な実施形態は、図1に示されるベントアセンブリ10である。ベントアセンブリ10は、その底部層として剛性キャリア12を有する、好ましくはePTFE膜を含むベント11を含む。剛性キャリア12は、この実施形態では、感圧接着剤などの接着剤13でePTFE膜ベント11に取り付けられる。あるいは、それは、熱溶接、超音波溶接、又はレーザー溶接のような典型的な溶接方法で取り付けられる。組み立てられると、ベント11及びキャリア12は通気孔アセンブリ10を形成する。ベントアセンブリ10は、輸送中にベントアセンブリ10を所定の位置に保持するのに十分な接着力を有するが、ベントアセンブリ10を容易に取り外すことができるほど十分に低い接着力を有する薄い低粘着性ライナー14に取り付けられる。・・・硬いキャリア12は、産業に適した材料であり、すなわち、リフロー温度に耐性があり、低いCTE及び低い吸湿性を有する。)
「
[図:0001414440000010.jpg]
」
(24) 甲第48号証の記載事項
甲第48号証には、以下の記載がある。
「好ましい具体例の詳細な説明
図面を参照して、ここに同様な引用番号は全図面を通して対応する構造体を指す。特に図1を参照して、ここには、一般に10で指定されたフィルター装置が示されている。このフィルター装置10は、外側のシール部分14で囲まれた活性ろ過媒体領域12を包含する。
図2に示されているように、フィルター装置10は非常に狭い形状をしている。図3を参照して、このブリーザフィルター装置10は、それに貼り付けた環状接着層28を含む。この接着層28は前記フィルター装置に張り付き、剥がしうる紙層を有する第2の接着側を持ち、これはこのフィルターを磁気ディスクドライブ又は他の装置のハウジングの適当な位置に張りつけるために除きうる。このフィルター装置10は円形で示されているが、他の形状、例えば長方形、楕円形、又は他の一般的な形状も使用できる。」(8ページ15行~26行)
「【図1】
[図:0001414440000011.jpg]
」
「【図3】
[図:0001414440000012.jpg]
」
(25) 甲第49号証の記載事項
甲第49号証には、以下の記載がある。
「【0014】
図1(a)および(b)に、本発明の一実施形態に係る撥油性通気材1を示す。この撥油性通気材1は、表面1aおよび裏面1bを有しており、撥油処理が施されたPTFE多孔質膜2を含んでいる。図例では、表面1aおよび裏面1bの双方が、撥油処理が施されたPTFE多孔質膜2で構成されている。表面1aには、その周縁部に沿って環状の両面テープ3が貼着されている。」
「【図1】
[図:0001414440000013.jpg]
」
2 無効理由1について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、本件明細書には、「本発明の担体層は、設けられた膜に対して、特に補助および/または保護機能を有する、特にモノフィラメント、編布のような織布または不織布のような布であってもよい。」(段落【0036】)と記載されているから、甲1発明1の「合成単一糸精密布地」は、本件発明1の「担体層(11、15)」に相当する。
また、甲1発明1の「ナノ繊維層」は、電界紡糸塗布法によって単一糸布地に塗布され、電界紡糸とはエレクトロスピニングのことであり、「電界紡糸フィラメント・・・はナノ繊維・・・が互いに結合することで非常に小さい細孔径を有する」(甲第1号証の段落【0062】)から、本件発明1の「前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)」に相当する。
更に、本件明細書には、「本発明においては、膜を当該分野で公知の方法で担体層に接合することが好ましい。当該方法としては、反応性ホットメルト接着、レーザーボンディング、超音波溶接、積層、熱カレンダー処理、接着またはその組合せを含むが、それに限定されない。」(段落【0058】)と記載されており、甲1発明1は、布地に接着材料を塗布した後に、ナノ繊維層を布地に塗布するものであるから、甲1発明1の塗布された接着材料は、本件発明1の「前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部」に相当する。
そして、甲1発明1は、「ろ過の手段または媒体として使用するための1-2ミクロンの粒径を有する粒子の通過を阻止する布地材料複合構造」であることから、通気性を有することは明らかである。
そうすると、本件発明1と甲1発明1は次の点で一致するといえる。
「少なくとも1つの担体層(11、15)と、
前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、
を有する材料であって、
前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられる、
通気性材料。」
一方、本件発明1と甲1発明1は次の点で相違する。
(相違点1-1)
本件発明1は「保護性」通気性材料であるのに対し、甲1発明1の布地材料複合構造は「保護性」を有するか否かが明らかでない点。
(相違点1-2)
本件発明1は「担体層(11、15)はモノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲1発明1は「合成単一糸精密布地」である点。
(相違点1-3)
本件発明1は「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、前記プラズマコーティング(14)は、5nmから40nmの厚さのPECVD膜であって、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントにも形成され」るものであるのに対し、甲1発明1はプラズマコーティングがない点。
(相違点1-4)
本件発明1は「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設ける」ものであるのに対し、甲1発明1には補強する継ぎ目がない点。
なお、本件発明1と甲1発明1とが前記相違点1-3の点で相違することについては、当事者間に争いはない。
イ 判断
事案に鑑み、前記アの相違点1-3から検討すると、前記1(1)アの甲第1号証の記載によれば、甲1発明1は、従来技術の課題、すなわち、従来、製織工程の技術的限界のために、製織布地材料のメッシュの目開きを5ミクロン未満とすることができず、1-2ミクロン未満の粒径を有する粒子はろ過布地材料によって分離することが不可能であった、という課題(以下、「甲1課題」という。)を解決するものであって、1-2ミクロンの粒径を有する粒子の通過を阻止する布地材料複合構造を提供することを目的としたものである(段落【0002】、【0003】)。
そして、甲1発明1は、ろ過の手段または媒体として使用するための布地材料複合構造であって、前記構造は1以上のナノ繊維層及び直角に編まれた合成単一糸精密布地との組み合わせを含む布地材料複合構造により、前記甲1課題を解決できるものである(段落【0007】、【0029】、【0066】、【0067】)。
このことからみれば、前記甲1課題を解決するものである甲1発明1は、布地材料複合構造のメッシュの目開きに注目したものであって、布地材料複合構造を構成する繊維又はフィラメントの表面の構成や物性に注目したものではないし、更に、甲1発明1は、1以上のナノ繊維層及び直角に編まれた合成単一糸精密布地との組み合わせを含む布地材料複合構造により、前記甲1課題を解決できているのであるから、これに更にプラズマコーティングを設ける動機づけはもとより存在しない。
また、本件発明1におけるプラズマコーティング膜の技術的意義について検討すると、本件明細書の段落【0045】の「本発明の保護性通気性材料のさらなる実施形態によると、プラズマコーティングがナノ繊維膜および少なくとも1つの担体層に蒸着されることが特に好適である。これにより、保護性通気性材料が柔軟に使用できる。すなわち、担体層が通気性物体の内部、外部に面しているかに関わらず、保護性通気性材料の油、脂、病原体、アレルゲン、塵、および/または水をはじく性質が保証される。」との記載によれば、本件発明1におけるプラズマコーティング膜は、保護性通気性材料の油、脂、病原体、アレルゲン、塵、及び/又は水をはじく性質を保証するものであり、同【0100】には、プラズマコーティング膜を有する保護性通気性材料では、良好な撥水性、撥油性を有することが示されている。
一方、甲1発明1は、前記段落【0002】及び【0003】の記載によれば、ろ過対象物である1-2ミクロンの粒径を有する粒子と製織布地材料との目開きとの大小関係に着目するものであり、甲1発明1の布地材料複合構造に求められる特性としては、1-2ミクロンの粒径を有する粒子が透過できない目開きを有することであるといえる。
以上によれば、甲1発明1の布地材料複合構造では、ろ過において、撥水性、撥油性が必要になるような要因は何ら認められないし、また、甲1発明1の布地材料複合構造の使用形態や使用分野についてみても、甲第1号証の前記段落【0029】には漠然と種々の分野が記載されているにすぎず、前記段落【0071】に最も具体的に記載される、強磁性及び粉末の粒子から(携帯電話などの)装置の内部部品を保護するために適用する技術分野を考慮しても、本件発明1の保護性通気性材料が用いられる、撥水性、撥油性が必要とされる分野での使用形態などとは明らかに相違しているといえる。
そうすると、撥水性、撥油性を必要とすることのない甲1発明1において、布地材料複合構造のナノ繊維層や合成単一糸精密布地に、プラズマコーティング膜を設ける動機付けは存在しない。
更に、布地材料複合構造のナノ繊維層や合成単一糸精密布地に、プラズマコーティング膜を設ける動機付けは存在しないのであるから、当然、前記相違点1-3に係るプラズマコーティングとして、50nmから40nmの厚さのPECVD膜を設けることや、プラズマコーティング膜をエレクトロスピニング膜の個々の繊維とモノフィラメント布の個々のモノフィラメントに形成する動機付けが甲1発明1にあるとはいえない。
また、甲1発明1を、上述のように具体的に記載される用途である携帯電話等の音響デバイスに用いるものとしたとき、甲1発明1は、同様のメッシュサイズ値を有する以前の布地よりも低い音響インピーダンスを有する、という特徴を有するものであるが(段落【0006】、【0071】)、仮に、これに更にプラズマコーティングを設けたとき、前記音響インピーダンスに影響を及ぼすことが推認される。
ところが、前記プラズマコーティングが前記音響インピーダンスにいかなる影響を及ぼすかを予測することは、当業者といえども困難であるから、甲1発明1に更にプラズマコーティングを設けたとき、依然として、同様のメッシュサイズ値を有する以前の布地よりも低い音響インピーダンスを有するものとなるか否かを予測することも、困難である。
そうすると、当業者は、甲1発明1に、あえて、音響インピーダンスに及ぼす影響を予測することが困難なプラズマコーティングを設けることはしないのであるから、甲1発明1において、更にプラズマコーティングを設ける動機づけがあるといえるものではない。
ここで、甲第2号証の前記1(2)ア(ア)、(イ)及び(ウ)、甲第6号証の同(4)、甲第7号証の同(5)、甲第8号証の同(6)の段落【0008】~【0010】、【0018】、【0021】、甲第9号証の同(7)、甲第10号証の同(8)、甲第11号証の同(9)、甲第12号証の同(10)、甲第13号証の同(11)、甲第14号証の同(12)、甲第15号証の同(13)、甲第17号証の同(15)、甲第18号証の同(16)、甲第19号証の同(17)、甲第22号証の同(19)の記載によれば、布製品又は繊維層に対して、撥水性を向上させるためプラズマコーティング処理又は撥水性の処理を施すことは、本件特許の優先日当時の周知の技術的事項であるといえるが、上述のとおり、甲1発明1には、布地材料複合構造のナノ繊維層や合成単一糸精密布地に撥水性を付与し、これを向上させようとする動機がないのであるから、当業者が前記の周知の技術的事項に接したとしても、甲1発明1に前記の周知の技術的事項を適用することはない。
なお、甲第16号証は、同(14)の記載によれば、薄層プラズマ重合コーティングにおいて、プラズマからの活性種がマットの多孔質構造を通って浸透することを示すものである。
更に、甲第46号証の同(22)、甲第47号証の同(23)、甲第48号証の同(24)、甲第49号証の同(25)の記載によれば、甲第46号証~甲第49号証は、それぞれ、通気フィルターの接着層、ベントアセンブリの剛性キャリア、フィルター装置のシール部分、PTFE多孔質膜の両面テープが開示されるものにすぎず、いずれも、前記相違点1-3に係る本件発明1の発明特定事項を開示するものではない。
してみれば、甲1発明1において、前記相違点1-3に係る本件発明1の発明特定事項を備えるものとすることは、本件特許の優先日当時の周知技術に関わらず、当業者が容易になし得ることではないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1、及び、甲第2号証、甲第6号証~甲第19号証、甲第22号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件発明2~12、14について
ア 対比
本件発明2と甲1発明1とを対比すると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、甲1発明1の「合成単一糸精密布地」は、本件発明2の「担体層(11、15)」に相当し、甲1発明1の「ナノ繊維層」は、本件発明2の「前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)」に相当し、甲1発明1の塗布された接着材料は、本件発明2の「前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部」に相当し、甲1発明1が、通気性を有することは明らかである。
そうすると、本件発明2と甲1発明1は次の点で一致するといえる。
「少なくとも1つの担体層(11、15)と、
前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、
を有する材料であって、
前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられる、
通気性材料。」
一方、本件発明2と甲1発明1は次の点で相違する。
(相違点1-1’)
本件発明2は「保護性」通気性材料であるのに対し、甲1発明1の布地材料複合構造は「保護性」を有するか否かが明らかでない点。
(相違点1-2’)
本件発明2は「担体層(11、15)はモノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲1発明1は「合成単一糸精密布地」である点。
(相違点1-3’)
本件発明2は「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、前記プラズマコーティング(14)は、5nmから40nmの厚さのPECVD膜であって、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントにも形成され」るものであるのに対し、甲1発明1はプラズマコーティングがない点。
イ 判断
事案に鑑み、前記アの相違点1-3’から検討すると、前記相違点1-3’は前記(1)アの相違点1-3と同じであるから、前記(1)イに記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明1、及び、甲第2号証、甲第6号証~甲第19号証、甲第22号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明3~8は、いずれも、直接又は間接的に請求項2を引用する保護性通気性材料で、本件発明2を更に限定するものであり、本件発明9及び10は、直接又は間接的に請求項2を引用する寝具及び電気電子機器で、少なくとも本件発明2の特定事項を全て含むものであり、本件発明11、12、14は、直接又は間接的に請求項2を引用する保護性通気性材料を製造する方法で、少なくとも本件発明2の特定事項を全て含むものであるから、これらの発明について検討しても事情は同じである。
(3) 本件発明13、15について
本件発明15は、本件訂正により新たに生じた請求項15に係る発明であって、当初の無効理由1において請求の対象とされていないが、令和4年5月24日付けの補正許否の決定により、令和3年12月3日に提出した弁駁書による請求の理由の補正は許可されているので、以下、本件発明13と共に検討する(後記無効理由2~6についての検討に際しても同様に取り扱う。)。
ア 対比
本件発明13と甲1発明2とを対比すると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、甲1発明2の「合成単一糸精密布地」は、本件発明13の「担体層(11、15)」に相当し、甲1発明2において、「前記ナノ繊維層を電界紡糸塗布法によって前記単一糸布地に塗布し、かつ前記支持布地において組み込むことで、一重のろ過手段または相互に密に結合したろ過手段を形成」することは、本件発明13において、「前記担体層(11、15)上に、多孔質構造となるように重ねられた繊維を使用して、エレクトロスピニング法により設けられる膜(12)を設け」、「前記担体層と前記膜とで」「通気性材料膜を形成」することに相当し、甲1発明2において、「前記布地に接着材料を塗布した後に、前記ナノ繊維層を前記布地に塗布する」ことは、本件発明13の「前記膜(12)は前記担体層(11、15)上に」「設けられ、前記膜(12)は前記担体層(11、15)に固定的に接続」することに相当し、甲1発明2における「布地材料複合構造の製造方法」は、本件発明13における「通気性材料を製造する方法」に相当する。
そうすると、本件発明13と甲1発明2は次の点で一致するといえる。
「通気性材料を製造する方法であって、
少なくとも1つの担体層(11、15)を設けることと、
前記担体層(11、15)上に、多孔質構造となるように重ねられた繊維を使用して、エレクトロスピニング法により設けられる膜(12)を設けることと、
を有し、
前記担体層と前記膜とで通気性材料膜を形成し、
前記膜(12)は前記担体層(11、15)上に設けられ、前記膜(12)は前記担体層(11、15)に固定的に接続される、方法。」
一方、本件発明13と甲1発明2は次の点で相違する。
(相違点1-1'')
本件発明13の通気性材料は「保護性」通気性材料であるのに対し、甲1発明2の布地材料複合構造は「保護性」を有するか否かが明らかでない点。
(相違点1-2'')
本件発明13は「担体層(11、15)がモノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲1発明2は「合成単一糸精密布地」である点。
(相違点1-3'')
本件発明13は「前記保護性通気性材料膜(10)にプラズマコーティング処理を施して、前記モノフィラメント布を含む前記担体層(11、15)と、前記エレクトロスピニング膜(12)との両方に表面コーティング(14)を設け、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントと、にもプラズマコーティング処理が施され」るものであるのに対し、甲1発明2はプラズマコーティングがない点。
(相違点1-4’)
本件発明13は、「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設ける」ものであるのに対し、甲1発明2には補強する継ぎ目がない点。
(相違点1-5)
本件発明13は、「前記膜(12)は前記担体層(11、15)上に直接設けられ」るものであって、「前記担体層と前記膜とをホットメルト処理により接合部で接続して、前記保護性通気性材料膜を形成」するものであるのに対して、甲1発明2は、「担体層」に接着材料を塗布した後に、「膜」を前記「担体層」に塗布するものである点。
イ 判断
事案に鑑み、前記アの相違点1-3''から検討すると、甲1発明1に係る布地材料複合構造に、更にプラズマコーティングを設ける動機づけはもとより存在しないことは、前記(1)イに記載したとおりであって、甲1発明2について検討しても事情は同じであるから、甲1発明2において、前記相違点1-3''に係る本件発明13の発明特定事項を備えるものとすることは、本件特許の優先日当時の甲第2号証、甲第6号証~甲第19号証、甲第22号証及び甲第46号証~甲第49号証に記載される周知技術に関わらず、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明13は、甲1発明2、及び、甲第2号証、甲第6号証~甲第19号証、甲第22号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明15は、請求項13を引用する方法で、本件発明13を更に限定するものであるから、本件発明15について検討しても事情は同じである。
(4) 本件発明16について
本件発明16は、本件訂正により新たに生じた請求項16に係る発明であって、当初の無効理由1において請求の対象とされていないが、令和4年5月24日付けの補正許否の決定により、令和3年12月3日に提出した弁駁書による請求の理由の補正は許可されているので、以下、検討する(後記無効理由2~6についての検討に際しても同様に取り扱う。)。
ア 対比
本件発明16と甲1発明1とを対比すると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、甲1発明1の「合成単一糸精密布地」は、本件発明16の「担体層(11、15)」に相当し、甲1発明1の「ナノ繊維層」は、本件発明16の「前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)」に相当し、甲1発明1の塗布された接着材料は、本件発明16の「前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部」に相当し、甲1発明1において、「前記布地に接着材料を塗布した後に、前記ナノ繊維層を前記布地に塗布する」ことは、「前記担体層(11、15)は、前記エレクトロスピニング膜(12)に固定的に接続され」ることに相当し、甲1発明1が、通気性を有することは明らかである。
そうすると、本件発明16と甲1発明1は次の点で一致するといえる。
「少なくとも1つの担体層(11、15)と、
前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、
を有する通気性材料であって、
前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられ、
前記担体層(11、15)は、前記エレクトロスピニング膜(12)に固定的に接続される、
通気性材料。」
一方、本件発明16と甲1発明1は次の点で相違する。
(相違点1-1''')
本件発明16は「保護性」通気性材料であるのに対し、甲1発明1の布地材料複合構造は「保護性」を有するか否かが明らかでない点。
(相違点1-2''')
本件発明16は「担体層(11、15)はモノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲1発明1は「合成単一糸精密布地」である点。
(相違点1-3''')
本件発明16は「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、前記プラズマコーティング(14)は、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントにも形成され」るものであるのに対し、甲1発明1はプラズマコーティングがない点。
(相違点1-4'')
本件発明16は「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設ける」ものであるのに対し、甲1発明1には補強する継ぎ目がない点。
イ 判断
事案に鑑み、前記アの相違点1-3'''から検討すると、甲1発明1に係る布地材料複合構造に、更にプラズマコーティングを設ける動機づけはもとより存在しないことは、前記(1)イに記載したとおりであるから、甲1発明1において、前記相違点1-3'''に係る本件発明16の発明特定事項を備えるものとすることは、本件特許の優先日当時の甲第2号証、甲第6号証~甲第19号証、甲第22号証及び甲第46号証~甲第49号証に記載される周知技術に関わらず、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明16は、甲1発明1、及び、甲第2号証、甲第6号証~甲第19号証、甲第22号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5) 請求人の主張について
ア 無効理由1における前記相違点1-3、相違点1-3’、相違点1-3''及び相違点1-3'''に係る発明特定事項についての請求人の主張の概要は、概略、以下のとおりである。なお、審判請求書等における請求人の主張は、全て本件発明(本件発明1~16の総称)についての主張と解して検討する。以下、同様である。
(ア) 本件特許の優先日当時において、布製品に関して、気体透過性を維持しつつ、疎水性を向上させるために、プラズマコーティング処理を施すことは周知の技術事項であり、エレクトロスピニング膜を有する複合布地材料について、気体透過性を維持しつつ、疎水性を向上させるための処理を行うことも、周知の技術事項であることから、エレクトロスピニング膜を有する複合布地材料であって、布製品の応用を用途とする甲第1号証に記載された発明において、気体透過性を維持しつつ、疎水性を向上させるために、プラズマコーティング処理を施すことは、当業者の通常の創作能力の範囲内である。
また、基材が多孔質構造の場合、プラズマコーティング処理により、細孔中にコーティング材料が侵入することは、本件特許の優先日当時の周知の技術事項であるから、「前記プラズマコーティング(14)は、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントにも形成され」ることは自明であり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(審判請求書46ページ2行~52ページ最終行、令和3年12月3日提出の審判事件弁駁書6ページ8行~22行、令和4年10月28日提出の審判事件弁駁書20ページ下から4行~21ページ13行、口頭審理陳述要領書5ページ3行~14行。)。
(イ) 被請求人は、令和3年9月16日提出の答弁書において、前記相違点1-3及び相違点1-3’に係る発明特定事項は、エレクトロスピニング膜の全ての繊維及びモノフィラメント布の全てのフィラメントにプラズマコーティングが形成されること、更にモノフィラメント布に関しては、モノフィラメントの外表面全体にプラズマコーティングが形成されることを意味するものとして主張している。
ところが、前記相違点1-3及び相違点1-3’に係る発明特定事項には、「個々の前記繊維」、「個々の前記モノフィラメント」との記載はあるが、全ての繊維や全てのモノフィラメントとの記載はないし、本件明細書の段落【0065】にも、全ての繊維や全てのモノフィラメントにプラズマコーティングを形成すること、モノフィラメントの外表面全体にプラズマコーティングを形成することは記載されていないから、被請求人の前記主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、失当である(令和3年12月3日提出の審判事件弁駁書5ページ19行~6ページ7行、令和4年10月28日提出の審判事件弁駁書22ページ下から6行~23ページ16行)。
(ウ) プラズマコーティング処理をPECVD法により行うことは周知の技術事項(甲第8号証~甲第15号証)であり、その際の膜厚は当業者が適宜設定し得る事項にすぎないし、甲第8号証及び甲第10号証に開示されるPECVD膜の厚さからみて、5~40nmの厚さは一般的な厚さである。
また、本件明細書は、「プラズマコーティング」の厚さについて、「5nmから40nm」という数値範囲の技術的意義は何ら記載していないし、実施例でもPECVD膜の厚さすら示していないから、「プラズマコーティング」を「5nmから40nmの厚さのPECVD膜」とすることは、本件特許の優先日当時の周知技術から容易想到である(令和4年10月28日提出の審判事件弁駁書5ページ22行~6ページ7行、23ページ17行~最終行)。
イ 前記アの主張に対する検討
(ア) 前記ア(ア)及び(ウ)の主張に対する検討
甲第1号証に記載された発明に更にプラズマコーティングを設ける動機づけはもとより存在しないことは、前記(1)イに記載したとおりであるから、甲第1号証に記載された発明に、更にプラズマコーティングを設けることはそもそも想定されない。
そうすると、本件特許の優先日当時において、布製品に関して、気体透過性を維持しつつ、疎水性を向上させるために、プラズマコーティング処理を施すことや、エレクトロスピニング膜を有する複合布地材料について、気体透過性を維持しつつ、疎水性を向上させるための処理を行うこと、及び、基材が多孔質構造の場合、プラズマコーティング処理により、細孔中にコーティング材料が侵入することが、本件特許の優先日当時の周知の技術事項であり、PECVD膜の厚さとして5~40nmの厚さが一般的な厚さであるとしても、単にそれだけで、甲第1号証に記載された発明にプラズマコーティングを設けることが容易想到であるということはできないから、本件発明1~16は、甲第1号証に記載された発明、及び本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことに変わりはないので、前記ア(ア)及び(ウ)の主張はいずれも採用できない。
(イ) 前記ア(イ)の主張に対する検討
本件発明1等の「個々の前記繊維」、「個々の前記モノフィラメント」との記載について、本件明細書の段落【0065】(下記7(2)ア(ウ))の記載からは、PECVD法では、プラズマ重合(ラジカル中心のプラズマ重合)中に生成されるラジカルは、孔径に比べて無視できるほど小さいので、繊維/フィラメント間空間を容易に透過することができることから、ラジカルは、繊維/フィラメント間空間全体に対して浸透し、繊維/フィラメント間空間全体に接している繊維/フィラメントの表面にプラズマ重合による好ましくは5nmから40nmの極薄の機能性フィルムを形成することが理解できる。
そして、本件明細書の前記段落【0065】に記載される、PECVD法における技術的な特徴を考慮すれば、本件発明1等の「個々の前記繊維」、「個々の前記モノフィラメント」との記載は、実質的には、エレクトロスピニング膜の全ての繊維、モノフィラメント布の全てのフィラメントであると理解できるから、前記ア(イ)の主張も採用できない。
(6) 小括
したがって、本件発明1~16は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第2の1(2)アの無効理由1は理由がない。
3 無効理由2について
(1) 本件発明1について
本件発明1と甲1発明1とを対比した場合、前記相違点1-1~相違点1-4の点で相違することは、前記2(1)アに記載したとおりであるが、事案に鑑み、前記相違点のうち相違点1-3について検討する。
前記1(18)の甲第21号証の記載からみれば、甲第21号証には、織布の表面の改質のため低温プラズマ処理を行うことや、その具体的な表面改質の例として、音響デバイスで使用されるフィルタ用の音響用ファブリックに疎水性処理を施すこと等が記載されているが、甲1発明1に、更にプラズマコーティングを設ける動機づけはもとより存在しないことは、前記2(1)イに記載したとおりであるから、前記2(1)イに記載したのと同様の理由により、前記相違点1-3に係る本件発明1の発明特定事項を備えるものとすることは、本件特許の優先日前に公開された甲第21号証に記載された事項に関わらず、当業者が容易になし得ることではない。
また、甲第46号証~甲第49号証は、いずれも、前記相違点1-3に係る本件発明1の発明特定事項を開示するものではないことは、前記2(1)イに記載したとおりである。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1、甲第21号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件発明2~12、14について
本件発明2と甲1発明1とを対比した場合、前記相違点1-1’~相違点1-3’の点で相違することは、前記2(2)アに記載したとおりである。
そして、前記相違点のうち相違点1-3’について検討すると、前記2(2)イ及び前記(1)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2~12及び14は、甲1発明1、甲第21号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 本件発明13、15について
本件発明13と甲1発明2とを対比した場合、前記相違点1-1''~相違点1-5の点で相違することは、前記2(3)アに記載したとおりである。
そして、前記相違点のうち相違点1-3''について検討すると、甲1発明2に更にプラズマコーティングを設ける動機づけはもとより存在しないことは、前記2(3)イに記載したとおりであるから、前記2(3)イ及び前記(1)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明13及び15は、甲1発明2、甲第21号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 本件発明16について
本件発明16と甲1発明1とを対比した場合、前記相違点1-1'''~相違点1-4''の点で相違することは、前記2(4)アに記載したとおりである。
そして、前記相違点のうち相違点1-3'''について検討すると、前記2(4)イ及び前記(1)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明16は、甲1発明1、甲第21号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5) 請求人の主張について
ア 無効理由2における前記相違点1-3、相違点1-3’、相違点1-3''及び相違点1-3'''に係る発明特定事項についての請求人の主張の概要は、概略、以下のとおりである。
(ア) 防水性の向上の点から、携帯電話等の音響デバイスにおいて、通気部を構成するフィルタにはっ水性を付与する試みがなされることは周知の課題であり、甲第21号証の音響ベントアセンブリはそのような課題を解決するためになされたものであるから、周知の課題の下、音響応用の使用が意図される甲1発明1に、甲第21号証に記載された事項を組み合わせる動機付けがある。
そして、甲1発明1の布地材料複合構造を、携帯電話等の音響デバイスにフィルタとして使用するに際して、防水性を向上させるために、甲第21号証に記載の低温プラズマ処理によってプラズマポリマー堆積を行い、フィルタに疎水性を付与しようとすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、甲1発明1に低温プラズマ処理によってプラズマポリマー堆積を行えば、細孔にポリマーが侵入し、「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ」ること、また、その際、「前記プラズマコーティング(14)は、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントにも形成され」ることは自明であるから、本件発明1は、甲1発明1及び甲第21号証に記載の事項に基づき容易想到である(審判請求書59ページ21行~62ページ14行、令和3年12月3日提出の審判事件弁駁書7ページ3行~19行)。
(イ) 甲第21号証にはPECVD処理が開示されており、それによって形成されるプラズマポリマー堆積はPECVD膜にほかならないし、その際の膜厚は当業者が適宜設定し得る事項にすぎないから、「プラズマコーティング」を「5nmから40nmの厚さのPECVD膜」とすることは、甲第21号証に記載されている事項か、少なくとも容易想到である(令和4年10月28日提出の審判事件弁駁書8ページ8行~20行)。
イ 以下、前記アの主張について検討すると、前記アのいずれの主張も、携帯電話等の音響デバイスに用いられるフィルターに関する甲第21号証の記載によれば、甲第1号証に記載された発明に、更にプラズマコーティングを設ける動機づけがあるといえることを前提としたものといえる。
ところが、当業者は、甲第1号証に記載された発明に、あえて、音響インピーダンスに及ぼす影響を予測することが困難なプラズマコーティングを設けることはしないことは、前記2(1)イに記載したとおりであるから、甲第21号証に、携帯電話等の音響デバイスにフィルタとして使用するに際して、防水性を向上させるために、低温プラズマ処理によってプラズマポリマー堆積を行うことが記載されているとしても、甲第1号証に記載された発明において、更にプラズマコーティングを設ける動機づけがあるといえるものではない。
してみれば、甲第21号証に記載された事項をみても、甲第1号証に記載された発明に更にプラズマコーティングを設ける動機づけが存在するとはいえないから、前記前提は誤っているといわざるを得ない。
また、前記1(1)アの甲第1号証の記載(段落【0029】)からみれば、甲第1号証に記載された発明は、携帯電話等の音響デバイスのみならず、工業用織物材料等の様々な用途に用いられる可能性のあるものであって、用途が携帯電話等の音響デバイスのみに限られるものではない。
そして、これらの様々な用途においても、プラズマコーティングを設ける動機づけがあると必ずしもいえるものでもないから、前記アの主張はいずれも採用できない。
(6) 小括
したがって、本件発明1~16は、甲第1号証に記載された発明、甲第21号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第2の1(2)イの無効理由2は理由がない。
4 無効理由3について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1の「布地担体層(3)」は、本件発明1の「担体層(11、15)」に相当する。
また、甲2発明1のポリマーナノファイバーの層(2)は、静電紡糸(電解紡糸(当審注:「電界紡糸」の誤記であると認められる。))中にナノファイバーを堆積させるための基材材料として使用される布地担体層に直接堆積させるものであること、静電紡糸(電界紡糸)とは、エレクトロスピニングのことであること、また、技術常識を参酌すれば、電解紡糸により堆積されるポリマーナノファイバーは、「ナノ繊維・・・が互いに結合することで非常に小さい細孔径を有する」(甲第1号証の段落【0062】参照)ことから、甲2発明1の「ポリマーナノファイバーの層(2)」は、本件発明1の「前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)」に相当する。
更に、甲2発明1では、ポリマーナノファイバーの層(2)と布地担体層(3)は「バインダー」によって連結されているから、甲2発明1の「バインダー」は、本件発明1の「前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部」に相当する。
そして、甲2発明1は、水蒸気透過度及び通気性を保持しているから、甲2発明1の「布地複合体(1)」は、本件発明1の「通気性材料」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明1は次の点で一致するといえる。
「少なくとも1つの担体層(11、15)と、
前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、
を有する通気性材料であって、
前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられる、
通気性材料。」
一方、本件発明1と甲2発明1は次の点で相違する。
(相違点2-1)
本件発明1は「保護性」通気性材料であるのに対し、甲2発明1は「保護性」を有するか否かが明らかでない点。
(相違点2-2)
本件発明1は「担体層(11、15)はモノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲2発明1は「布地」である点。
(相違点2-3)
本件発明1は、「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、前記プラズマコーティング(14)は、5nmから40nmの厚さのPECVD膜であって、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントにも形成され」るものであるのに対し、甲2発明1は、「前記布地担体層(3)の繊維上に、プラズマスプレーによって適用された少なくとも1つの疎水性剤のコーティングが少なくとも一方の面から形成され、この剤は少なくとも布地担体層(3)の個々の繊維の表面の衝突部分に、又はそれらの表面全体に堆積され、そこで連続的なコーティングを作り出し」、「疎水性剤を適用している間、その一部が布地担体層(3)の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、布地担体層(3)とポリマーナノファイバーの層(2)とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、ポリマーナノファイバーの少なくとも衝突側にも堆積され」るものである点。
(相違点2-4)
本件発明1は「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設ける」ものであるのに対し、甲2発明1には補強する継ぎ目がない点。
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、まず、前記アの相違点2-3が実質的な相違点であるか否かについて検討するために、本件発明1における「PECVD」と甲2発明1の「プラズマスプレー」が同じものといえるか否かについて検討する。
下記7(2)ア(ア)(段落【0036】)、同(ウ)(段落【0065】、【0080】、【0085】)の本件明細書の記載からみれば、表面コーティング手段である「PECVD」においては、プラズマ重合中に生成されるラジカルは、孔径に比べて無視できるほど小さいので、繊維/フィラメント間空間を容易に透過することができると共に、非常に薄いポリマー層(ナノメートル単位)を基板表面に蒸着させることができるものである。
これによれば、前記「PECVD」によるラジカルは、「保護性通気性材料」のエレクトロスピニング膜及びモノフィラメント布の繊維/フィラメント間空間全体に対して浸透し、繊維/フィラメント間空間全体に接している繊維/フィラメントの表面にプラズマ重合による好ましくは5nmから40nmの極薄の機能性フィルムを形成することが理解できる。
これに対して、甲2発明1は、「担体層」の繊維上に、「プラズマスプレー」によって適用された少なくとも1つの疎水性剤のコーティングが少なくとも一方の面から形成され、この剤は少なくとも「担体層」の個々の繊維の表面の衝突部分に、又はそれらの表面全体に堆積され、そこで連続的なコーティングを作り出し、それによってこの層の静水圧抵抗を実質的に増加させるものであり、また、疎水性剤を適用している間、その一部が「担体層」の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、「担体層」と「エレクトロスピニング膜」とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、「エレクトロスピニング膜」の少なくとも衝突側にも堆積され、それによって、「エレクトロスピニング膜」の静水圧抵抗が更に増加するものである。
すると、甲2発明1の「プラズマスプレー」は、疎水性剤のコーティングを、専ら「担体層」や「エレクトロスピニング膜」のプラズマスプレーと衝突する衝突側に堆積するものであって、疎水性剤を適用している間、その一部が「担体層」の全厚を貫通する場合には、疎水性剤が、「担体層」と「エレクトロスピニング膜」とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、「エレクトロスピニング膜」の少なくとも衝突側にも堆積されるものであるから、必ずしも、本件発明1の「PECVD」のように、プラズマ重合中に生成されるラジカルが、孔径に比べて無視できるほど小さく、繊維/フィラメント間空間を容易に透過することができ、非常に薄いポリマー層(ナノメートル単位)を繊維/フィラメント間空間に接している繊維/フィラメントの全表面に蒸着させるものとはいえないし、本件発明1の「PECVD」が、甲2発明1の「プラズマスプレー」のように、疎水性剤を、専ら「担体層」や「エレクトロスピニング膜」の衝突側に堆積するものともいえない。
また、甲2発明1は、前述のように、疎水性剤を適用している間、その一部が「担体層」の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、「担体層」と「エレクトロスピニング膜」とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、「エレクトロスピニング膜」の衝突側に堆積されるものであるが、甲2発明1の「プラズマスプレー」は、本件発明1の「PECVD」のように、「プラズマ重合中に生成されるラジカルは、孔径に比べて無視できるほど小さいので、繊維/フィラメント間空間を容易に通過できるもの」とまではいえないため、保護通気性材料に対して「PECVD」を行った場合のように、「エレクトロスピニング膜」の繊維/フィラメント間空間全体に接している繊維/フィラメントの表面、すなわち、エレクトロスピニング膜を形成している全繊維の全表面にプラズマ重合による極薄の機能性フィルムを形成しているとはいえない。
してみれば、本件発明1の「PECVD」と甲2発明1の「プラズマスプレー」は、同じものではなく、このため、形成されるコーティングの態様も同じものとはいえないから、甲2発明1は、疎水性剤のコーティングとして「PECVD膜」を設けたものとはいえない。
更に、本件発明1の「PECVD」と甲2発明1の「プラズマスプレー」によりそれぞれ形成されるコーティングの態様の違いに起因して、甲2発明1は、前記相違点2-3に係る、PECVD膜が5nmから40nmであることや、PECVD膜がエレクトロスピニング膜の内部の繊維を含む前記エレクトロスピニング膜の個々の前記繊維と、モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメントの個々の前記モノフィラメントにも形成されることに相当する構成を備えるものとはいえない。
そうすると、前記相違点2-3は実質的な相違点である。
(イ) 次に、前記相違点2-3の容易想到性について検討すると、前記1(2)ア(イ)の甲第2号証の記載(2ページ16行~3ページ22行)によれば、甲2発明1は、ポリマーナノファイバーの層の疎水性を増加させる従来の方法の欠点に鑑みてなされたものであって、この方法の場合、処理されたポリマーナノファイバーの層は、増加した疎水性特性がその構造への液体バインダーの浸透を阻害する結果、隣接するポリマーファイバー間に結合がないために、ほかの材料層に接合することができないので、得られる複合体は、ナノファイバー層の機械的損傷や、層分離が極めて発生しやすく、結果的に、複合体の実用性を著しく低下させてしまう、という課題(以下、「甲2課題」という。)があるので、これを解決するものであることが分かる。そして、その原理(解決策)は、ポリマーナノファイバーの層を布地担体層に堆積させ、かつ、バインダーによって層同士を連結した後、ポリマーナノファイバーの層が堆積された側の反対側から、液体又はプラスチック状態の少なくとも1つの疎水性剤を「プラズマスプレー」によって布地担体層に適用することにあるものである。
すると、甲2発明1は、ポリマーナノファイバーの層と布地担体層をバインダーによって連結した後に、疎水性剤が専ら衝突側に堆積される前記「プラズマスプレー」を、ポリマーナノファイバーの層が堆積された側の反対側から適用することを原理として、甲2課題を解決するものといえる。
これに対し、本件発明1の「PECVD」では、繊維/フィラメント間空間全体に接している繊維/フィラメントの表面、すなわち、モノフィラメント布を形成しているモノフィラメント及びエレクトロスピニング膜を形成している繊維の全表面にプラズマ重合による極薄の機能性フィルムが形成され、プラズマが供給される側の反対面にも極薄の機能性フィルムが形成されるところ、甲2発明1において、「プラズマスプレー」に代えて、疎水性剤を専ら衝突側に堆積するものとはいえない「PECVD」を採用することは、前記原理を破却することとなるから、そもそも想定されないものであるし、プラズマが供給される側の反対面にも極薄の機能性フィルムが形成される「PECVD」を採用しようとする動機づけは存在しない。
更に、前述のように、本件発明1は、「エレクトロスピニング膜」の繊維/フィラメント間空間全体に接している繊維/フィラメントの表面、すなわち、エレクトロスピニング膜を形成している全繊維の表面にプラズマ重合による極薄の機能性フィルムを形成しているといえるところ、疎水性剤を適用している間、その一部が「担体層」の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、「担体層」と「エレクトロスピニング膜」とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、「エレクトロスピニング膜」の衝突側に堆積されるとされている甲2発明1は、前記「プラズマスプレー」を、少なくとも「担体層」を構成するモノフィラメントの衝突側に疎水性剤が適用されれば、前記甲2課題を解決するものであり、このような甲2発明1に、前記甲2課題を解決する上では不要である、「エレクトロスピニング膜」の繊維/フィラメント間空間全体に接している繊維/フィラメントの表面、すなわち、エレクトロスピニング膜を形成している全繊維の全表面にまでもプラズマ重合による極薄の機能性フィルムを形成することを採用する動機づけがあるとはいえない。
ここで、甲第8号証~甲第15号証等の記載から、布製品又は繊維層に対して、撥水性を向上させるため、「PECVD」を含めプラズマコーティング処理又は撥水性の処理を施すことは、本件特許の優先日当時の周知の技術的事項であるといえることは、前記2(1)イに記載したとおりであるが、そうであるとしても、当業者は、もともと「PECVD」を採用しようとする動機づけが存在しない甲2発明1に前記の周知の技術的事項を適用することはないし、前記2(1)イに記載したのと同様の理由により、甲第46号証~甲第49号証は、いずれも、前記相違点2-3に係る本件発明1の発明特定事項を開示するものではない。
そうすると、甲2発明1において、前記相違点2-3に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、甲第8号証~甲第15号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることではない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明1、及び、甲第8号証~甲第15号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件発明2~12、14について
ア 対比
本件発明2と甲2発明1とを対比すると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、甲2発明1の「布地担体層(3)」、「ポリマーナノファイバーの層(2)」、「バインダー」及び「布地複合体(1)」は、それぞれ、本件発明2の「担体層(11、15)」、「前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)」、「前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部」及び「通気性材料」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲2発明1は次の点で一致するといえる。
「少なくとも1つの担体層(11、15)と、
前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、
を有する通気性材料であって、
前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられる、
通気性材料。」
一方、本件発明2と甲2発明1は次の点で相違する。
(相違点2-1’)
本件発明2は「保護性」通気性材料であるのに対し、甲2発明1の布地複合体(1)は「保護性」を有するか否かが明らかでない点。
(相違点2-2’)
本件発明2は「担体層(11、15)はモノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲2発明1は「布地」である点。
(相違点2-3’)
本件発明2は「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、前記プラズマコーティング(14)は、5nmから40nmの厚さのPECVD膜であって、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントにも形成され」るものであるのに対し、甲2発明1は「前記布地担体層(3)の繊維上に、プラズマスプレーによって適用された少なくとも1つの疎水性剤のコーティングが少なくとも一方の面から形成され、この剤は少なくとも布地担体層(3)の個々の繊維の表面の衝突部分に、又はそれらの表面全体に堆積され、そこで連続的なコーティングを作り出し」、「疎水性剤を適用している間、その一部が布地担体層3の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、布地担体層3とポリマーナノファイバーの層2とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、ポリマーナノファイバーの少なくとも衝突側にも堆積され」るものである点。
イ 判断
事案に鑑み、前記アの相違点2-3’から検討すると、前記相違点2-3’は、前記(1)アの相違点2-3と同じであるから、前記(1)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、前記相違点2-3’は実質的な相違点であるし、前記(1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲2発明1において、前記相違点2-3’に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとすることは、甲第8号証~甲第15号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることではないので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明1、及び、甲第8号証~甲第15号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明3~8は、いずれも、直接又は間接的に請求項2を引用する保護性通気性材料で、本件発明2を更に限定するものであり、本件発明9及び10は、直接又は間接的に請求項2を引用する寝具及び電気電子機器で、少なくとも本件発明2の特定事項を全て含むものであり、本件発明11、12、14は、直接又は間接的に請求項2を引用する保護性通気性材料を製造する方法で、少なくとも本件発明2の特定事項を全て含むものであるから、これらの発明について検討しても事情は同じである。
(3) 請求人の主張について
ア 前記相違点2-3及び相違点2-3’に係る発明特定事項についての請求人の主張の概要は、概略、以下のとおりである。
(ア) 甲第2号証には「PECVD」との明記はないが、プラズマコーティング処理を「PECVD」で行うことは、本件特許の優先日当時の周知技術であるから、当業者が容易になし得ることである(審判請求書66ページ12行~17行)。
(イ) 「プラズマスプレー」も「PECVD」もプラズマを利用してコーティングを形成する処理である点で共通し、布製品に「PECVD」処理でコーティングを形成することは、本件特許の優先日当時の周知技術であり、その際の膜厚を一般的な厚さの範囲内である5nm~40nmとすることは、当業者が容易になし得ることであり、形成される膜厚を薄くするため、「プラズマスプレー」に代えて「PECVD」処理を行う動機づけがあり、更に、コーティング方法として「PECVD」を採用したことによる優位性もないから、「5nmから40nmの厚さのPECVD膜」を形成することは、当業者が容易に想到し得ることである(令和4年10月28日提出の審判事件弁駁書9ページ下から9行~10ページ9行、10ページ最終行~11ページ6行、18ページ25行~20ページ9行)。
(ウ) 甲第2号証における「プラズマスプレー」とはプラズマ溶射ではなく、本件発明1の「PECVD」と成膜原理が同じであり、その場合コーティングの厚みも変わりがないし、甲第2号証における「プラズマスプレー」で発生する活性種も「担体層」及び「エレクトロスピニング膜」の内部に入り込むから、前記相違点2-3は実質的な相違点ではない(陳述要領書6ページ下から4行~8ページ8行)。
イ 事案に鑑み、始めに、前記ア(ウ)の主張について検討すると、本件発明1の「PECVD」と甲2発明1の「プラズマスプレー」は、形成されるコーティングの態様が同じものとはいえないことは、前記(1)イ(ア)に記載したとおりであるから、本件発明1の「PECVD」と甲2発明1の「プラズマスプレー」の成膜原理が同じであるとはいえないし、甲第2号証の「プラズマスプレー」がプラズマ溶射ではないとしても、前記相違点2-3が実質的な相違点であることに変わりはないので、前記ア(ウ)の主張は採用できない。
次に、前記ア(ア)、(イ)の主張について検討すると、甲2発明1において、疎水性剤を専ら衝突側に堆積するものとはいえない「PECVD」を採用することはそもそも想定されず、「PECVD」を採用する動機づけがないことは、前記(1)イ(イ)に記載したとおりである。
そうすると、プラズマコーティング処理を「PECVD」で行うことが、本件特許の優先日当時の周知技術であり、プラズマスプレーも「PECVD」もプラズマを利用してコーティングを形成する処理である点で共通し、布製品に「PECVD」処理でコーティングを形成することは、本件特許の優先日当時の周知技術であり、その際の膜厚を5nm~40nmとすることは一般的な厚さの範囲内であるとしても、単にそれだけで、甲2発明1において「5nmから40nmの厚さのPECVD膜」を形成することは、当業者が容易に想到し得ることではないから、前記ア(ア)及び(イ)の主張もいずれも採用できない。
したがって、前記アの主張はいずれも採用できない。
(4) 本件発明13、15について
ア 対比
本件発明13と甲2発明2とを対比すると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、甲2発明2の「布地担体層(3)」は、本件発明13の「担体層(11、15)」に相当し、甲2発明2において、「前記ポリマーナノファイバーの層(2)及び前記布地担体層は、前記ポリマーナノファイバーの層(2)の内部構造内に延在するバインダーの形成によって連結され」、「ポリマーナノファイバーの層(2)」を「静電紡糸中にナノファイバーを堆積させるための基材材料として使用される布地担体層に直接堆積させる」ことは、本件発明13において、「前記担体層(11、15)上に、多孔質構造となるように重ねられた繊維を使用して、エレクトロスピニング法により設けられる膜(12)を設け」、「前記担体層と前記膜とで」「通気性材料膜を形成」し、「前記膜(12)は前記担体層(11、15)上に直接設けられ、前記膜(12)は前記担体層(11,15)に固定的に接続され」ることに相当し、甲2発明2における「布地複合体(1)の製造方法」は、本件発明13における「通気性材料を製造する方法」に相当する。
そうすると、本件発明13と甲2発明2は次の点で一致するといえる。
「通気性材料を製造する方法であって、
少なくとも1つの担体層(11、15)を設けることと、
前記担体層(11、15)上に、多孔質構造となるように重ねられた繊維を使用して、エレクトロスピニング法により設けられる膜(12)を設けることと、
を有し、
前記担体層と前記膜とで通気性材料膜を形成し、
前記膜(12)は前記担体層(11、15)上に直接設けられ、前記膜(12)は前記担体層(11,15)に固定的に接続される、方法。」
一方、本件発明13と甲2発明2は次の点で相違する。
(相違点2-1'')
本件発明13の通気性材料は「保護性」通気性材料であるのに対し、甲2発明2の布地複合体(1)は「保護性」を有するか否かが明らかでない点。
(相違点2-2'')
本件発明13は「担体層(11、15)がモノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲2発明2は「布地」である点。
(相違点2-3'')
本件発明13は「前記保護性通気性材料膜(10)にプラズマコーティング処理を施して、前記モノフィラメント布を含む前記担体層(11、15)と、前記エレクトロスピニング膜(12)との両方に表面コーティング(14)を設け、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントと、にもプラズマコーティング処理が施され」るものであるのに対し、甲2発明2は、「前記布地担体層(3)の繊維上に、プラズマスプレーによって適用された少なくとも1つの疎水性剤のコーティングが少なくとも一方の面から形成され、この剤は少なくとも布地担体層(3)の個々の繊維の表面の衝突部分に、又はそれらの表面全体に堆積され、そこで連続的なコーティングを作り出し」、「疎水性剤を適用している間、その一部が布地担体層(3)の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、布地担体層(3)とポリマーナノファイバーの層(2)とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、ポリマーナノファイバーの少なくとも衝突側にも堆積され」るものである点。
(相違点2-4’)
本件発明13は「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設ける」ものであるのに対して、甲2発明2には補強する継ぎ目がない点。
(相違点2-5)
本件発明13は「前記担体層と前記膜とをホットメルト処理により接合部で接続して、前記保護性通気性材料膜を形成」するものであるのに対して、甲2発明2は、「前記ポリマーナノファイバーの層(2)及び前記布地担体層は、前記ポリマーナノファイバーの層(2)の内部構造内に延在する、例えば可融性バインダーであるバインダーの形成によって連結され」るものである点。
イ 判断
事案に鑑み、前記アの相違点2-2''から検討すると、無効理由3において提出されている証拠である甲第8号証~甲第15号証、甲第46号証~甲第49号証には、「担体層(11、15)」を「モノフィラメント布を含」むものとすることは記載も示唆もされていないから、甲2発明2において、前記相違点2-2''に係る本件発明13の発明特定事項を有するものとすることは、甲第8号証~甲第15号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることではない。
よって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明13は、甲2発明2、及び、甲第8号証~甲第15号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明15は、請求項13を引用する方法で、本件発明13を更に限定するものであるから、本件発明15について検討しても事情は同じである。
(5) 本件発明16について
ア 対比
本件発明16と甲2発明1とを対比すると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、甲2発明1の「布地担体層(3)」、「ポリマーナノファイバーの層(2)」及び「布地複合体(1)」は、それぞれ、本件発明16の「担体層(11、15)」、「前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)」及び「通気性材料」に相当し、甲2発明1において、「前記ポリマーナノファイバーの層(2)及び前記布地担体層は、前記ポリマーナノファイバーの層(2)の内部構造内に延在する、例えば可融性バインダーであるバインダーの形成によって連結され」ることは、本件発明16において、「前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられ、前記担体層(11、15)は、前記エレクトロスピニング膜(12)に固定的に接続され」ることに相当する。
また、甲2発明1において、「前記布地担体層(3)の繊維上に、プラズマスプレーによって適用された少なくとも1つの疎水性剤のコーティングが少なくとも一方の面から形成され、この剤は少なくとも布地担体層(3)の個々の繊維の表面の衝突部分に、又はそれらの表面全体に堆積され、そこで連続的なコーティングを作り出し、それによってこの層(3)の静水圧抵抗を実質的に増加させ」、「疎水性剤を適用している間、その一部が布地担体層(3)の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、布地担体層(3)とポリマーナノファイバーの層(2)とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、ポリマーナノファイバーの少なくとも衝突側にも堆積され、それによって、ポリマーナノファイバーの層(2)の静水圧抵抗は更に増加」することは、本件発明16において、「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)」「両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、前記プラズマコーティング(14)は、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記担体層(11、15)の内部のフィラメントにも形成され」ることに相当する。
そうすると、本件発明16と甲2発明1は次の点で一致するといえる。
「少なくとも1つの担体層(11、15)と、
前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、
を有する通気性材料であって、
前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、
前記プラズマコーティング(14)は、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記担体層(11、15)の内部のフィラメントにも形成され、
前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられ、
前記担体層(11、15)は、前記エレクトロスピニング膜(12)に固定的に接続される、保護性通気性材料。」
一方、本件発明16と甲2発明1は次の点で相違する。
(相違点2-1''')
本件発明16は「保護性」通気性材料であるのに対し、甲2発明1の布地複合体(1)は「保護性」を有するか否かが明らかでない点。
(相違点2-2''')
本件発明16は「担体層(11、15)」が「モノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲2発明1は「布地」である点。
(相違点2-3''')
本件発明16は「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、前記プラズマコーティング(14)は、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントにも形成され」るのに対し、甲2発明1は「前記布地担体層(3)の繊維上に、プラズマスプレーによって適用された少なくとも1つの疎水性剤のコーティングが少なくとも一方の面から形成され、この剤は少なくとも布地担体層(3)の個々の繊維の表面の衝突部分に、又はそれらの表面全体に堆積され、そこで連続的なコーティングを作り出し」、「疎水性剤を適用している間、その一部が布地担体層3の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、布地担体層3とポリマーナノファイバーの層2とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、ポリマーナノファイバーの少なくとも衝突側にも堆積され」るものである点。
(相違点2-4'')
本件発明16は「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設ける」ものであるのに対して、甲2発明1には補強する継ぎ目がない点。
イ 判断
事案に鑑み、前記アの相違点2-2'''から検討すると、前記相違点2-2'''は前記(4)アの相違点2-2''と同じであるから、前記(4)イに記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明16は、甲2発明1、及び、甲第8号証~甲第15号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6) 請求人の主張について
ア 無効理由3における前記相違点2-2''及び相違点2-2'''に係る発明特定事項についての請求人の主張の概要は、概略、以下のとおりである。
(ア) 甲第2号証に記載された発明における布地担体層は織布であり、ここで、織布は、一般に経糸と緯糸を、原則として互いに直角かつ上下に交錯させて平面のシートにしたものである(甲第25号証)。そして、織布に使用される糸の種類については、長繊維であるフィラメントについて、一本のみからなるものをモノフィラメントといい、それ以外はマルチフィラメントであり(甲第25号証、甲第26号証)、糸の種類による織布の場合分けについて、フィラメントで構成しようとすれば、その種類は限定的であり、甲第27号証には、モノーモノ、モノーマルチ、マルチーマルチの三択の組合せしかないことが示されている。
そうすると、経糸と緯糸の織布の双方をモノフィラメントで構成したモノフィラメント布とすることは容易想到である(審判請求書65ページ8行~25行)。
(イ) 被請求人は、令和3年9月16日提出の答弁書において、甲第25号証~甲第27号証は、不織布又は編物について無言であること、マルチフィラメントよりも硬いモノフィラメントは、製造過程で大きく曲げられる編物に不向きであること、硬いモノフィラメントで織物を製造するには、特定の糸が必要であることを指摘して、「担体層(11、15)」を「モノフィラメント布を含」むものとすることは容易想到ではない旨を主張するが、ここで検討すべきは「織布」をモノフィラメント布とすることが容易想到かどうかであるのに対して、被請求人が検討しているのは、任意の布をモノフィラメント布とするのが容易想到であるかどうかであるから、被請求人の主張は的外れである。
そして、「織布」をモノフィラメントとするのが容易想到であるか否かに、甲第25号証~甲第27号証が不織布又は編物に無言であること等は何ら影響せず、審判請求書の65ページ8行~25行(前記(ア))に記載したとおり、甲第2号証に記載された発明における布地担体層をモノフィラメントとすることは容易想到である(令和3年12月3日提出の審判事件弁駁書8ページ19行~10ページ4行)。
(ウ) 審判請求書の65ページ8行~25行(前記(ア))、令和3年12月3日提出の審判事件弁駁書8ページ19行~10ページ4行(前記(イ))に記載したとおり、甲第2号証において「織布」をモノフィラメント布とするのは容易想到であり、モノフィラメント布は、甲第2号証の優先日時点で公知である(甲第36号証、甲第51号証)。
また、本件明細書の段落【0021】、【0036】の記載から、本件発明におけるモノフィラメント布は単なる布の選択肢の1つにすぎず、モノフィラメントを採用したことに進歩性は見いだせない(令和4年10月28日提出の審判事件弁駁書18ページ12行~24行)。
(エ) 前記相違点2-2''及び相違点2-2'''として、「甲2発明は「織布」である点」と認定するのが妥当であり、織布である甲2発明から出発してモノフィラメント布の構成に想到するのが容易であることは、審判請求書、令和3年12月3日提出の審判事件弁駁書、令和4年10月28日提出の審判事件弁駁書で述べたとおりである。
仮に、「甲2発明は「布地」である点」が相違点であるとしても、布地に含まれる選択肢として、不織布、編布が増えるだけであるから、前記相違点が容易想到であることに変わりはない(陳述要領書6ページ1行~30行)。
イ 以下、前記アの主張について検討すると、前記アの主張は、総じて、布を構成するフィラメントの組合せが、モノーモノ、モノーマルチ、マルチーマルチの組合せしかなく、更に、モノフィラメント布自体、本件特許の優先日当時公知であることから、前記相違点2-2''及び相違点2-2'''は容易想到である旨を主張するものと解される。
ところが、布を構成するフィラメントの組合せが、モノーモノ、モノーマルチ、マルチーマルチの組合せしかなく、更に、モノフィラメント布自体、本件特許の優先日当時公知であるとしても、単にそれだけで、甲第2号証に記載された発明において、あえて、「担体層(11、15)」を「モノフィラメント布を含」むものとする動機にはならないのであり、このことは、本件発明におけるモノフィラメント布が単なる布の選択肢の1つにすぎないとしても、また、前記相違点2-2''及び相違点2-2'''として、「甲2発明は「織布」である点」と認定したとしても、変わりはない。
そうすると、無効理由3で引用されている証拠に加え、甲第25号証~甲第27号証に基づく前記アの主張を検討しても、甲第2号証に記載された発明において、「担体層(11、15)」を「モノフィラメント布を含」むものとする動機づけは見いだせないから、前記相違点2-2''及び相違点2-2'''が容易想到であるとはいえないので、前記アの主張はいずれも採用できない。
(7) 小括
したがって、本件発明1~16は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第8号証~甲第15号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第2の1(2)ウの無効理由3は理由がない。
5 無効理由4について
(1) 本件発明1について
本件発明1と甲2発明1とを対比した場合、前記相違点2-1~相違点2-4の点で相違することは、前記4(1)アに記載したとおりである。
そして、前記相違点のうち相違点2-3について検討すると、前記相違点2-3が実質的な相違点であることは、前記4(1)イ(ア)に記載したとおりであり、甲2発明1において、「プラズマスプレー」に代えて「PECVD」を採用することはそもそも想定されず、「PECVD」を採用する動機づけがないことは、前記4(1)イ(イ)に記載したとおりである。
また、甲第1号証、甲第8号証~甲第15号証、甲第28号証、甲第29号証及び甲第46号証~甲第49号証には、それぞれ、前記1(1)ア、(6)~(13)、(20)~(25)に記載の事項が記載されているが、いずれも、前記相違点2-3に関するものではなく、他の相違点に関するものであるから、これらの証拠に記載の事項は、前記相違点2-3に係る判断を左右しない。
してみると、甲2発明1において、前記相違点2-3に係る本件発明1の発明特定事項を備えるものとすることは、本件特許の優先日当時の周知技術に関わらず、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明1、及び、甲第1号証、甲第8号証~甲第15号証、甲第28号証、甲第29号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件発明2~12、14について
本件発明2と甲2発明1とを対比した場合、前記相違点2-1’~相違点2-3’の点で相違することは、前記4(2)アに記載したとおりである。
そして、前記相違点のうち相違点2-3’について検討すると、前記相違点2-3’は前記相違点2-3と同じであるから、前記(1)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明1、及び、甲第1号証、甲第8号証~甲第15号証、甲第28号証、甲第29号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明3~8は、いずれも、直接又は間接的に請求項2を引用する保護性通気性材料で、本件発明2を更に限定するものであり、本件発明9及び10は、直接又は間接的に請求項2を引用する寝具及び電気電子機器で、少なくとも本件発明2の特定事項を全て含むものであり、本件発明11、12、14は、直接又は間接的に請求項2を引用する保護性通気性材料を製造する方法で、少なくとも本件発明2の特定事項を全て含むものであるから、これらの発明について検討しても事情は同じである。
(3) 本件発明13について
ア 対比
本件発明13と甲2発明2とを対比した場合、前記相違点2-1''~相違点2-5の点で相違することは、前記4(4)アに記載したとおりである。
イ 判断
(ア) 始めに、前記相違点2-1''から検討すると、「保護性」について、本件明細書には以下の記載がある。
「【0018】
本発明の目的は、保護性通気性材料および保護性通気性材料の製造方法を提供することである。これによると、水、汗、脂、病原体、アレルゲン、油、塵、汚れに対する高保護性および/または低空気抵抗が実現される。」
前記記載からみれば、本件発明における「保護性」は、「水、汗、脂、病原体、アレルゲン、油、塵、汚れ」に対する「保護性」と解される。
一方、甲2発明2は、疎水性剤が担体層の個々の繊維の表面の衝突部分に、又はそれらの表面全体に堆積され、そこで連続的なコーティングを作り出し、それによってこの層の静水圧抵抗を実質的に増加させるものであるから、甲2発明2の通気性材料は、少なくとも「水」に対する「保護性」を有しているといえる。
すると、甲2発明2の通気性材料も「保護性」を有しているといえるから、前記相違点2-1''は実質的な相違点とはいえない。
(イ) 次に、前記相違点2-2''について検討すると、前記1(20)の甲第28号証の記載からみれば、甲第28号証には、防水性・透湿性履物物品用アッパーアセンブリーであって、防水性・透湿性機能性層と、前記機能性層に直接、前記機能性層の内側で取り付けられたインナーライニング層とを含む積層体を前記アッパーアセンブリーが含み、前記インナーライニング層が、モノフィラメントで作られた編布又は織布であるアッパーアセンブリーが記載されている。
そして、防水性・透湿性機能性層と、この機能性層に直接、機能性層の内側で取り付けられたインナーライニング層とを含む積層体を含み、このインナーライニング層がモノフィラメントで作られた編布又は織布である防水性・透湿性履物物品用のアッパーアセンブリーを用いた履物物品は、軽量で、透湿性が高く、更に、前記のようなアッパーアセンブリーを用いた履物物品は、充分な防水性と耐久性を有するものである。
すると、甲第28号証の記載に接した当業者は、防水性・透湿性を有する材料を、モノフィラメントで作られた編布又は織布とすることで、軽量で、透湿性が高いものとなり、充分な防水性と耐久性を有するものとすることができることを理解することができる。
一方、前記(ア)によれば、甲2発明2による通気性材料の担体層は、透湿性及び通気性を有し、また、少なくとも「水」に対する「保護性」を有しているといえるから、前記担体層も、防水性・透湿性を有する材料といえるものである。
そうすると、軽量性、透湿性、防水性及び耐久性を高めるために、甲2発明2の前記担体層を「モノフィラメント布を含」むものとして、前記相違点2-2''に係る本件発明13の発明特定事項を有するものとすることは、前記甲第28号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得ることである。
(ウ) 次に、前記相違点2-3''について検討すると、甲2発明2の担体層を「モノフィラメント布を含」むものとすることは、甲第28号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得ることであることは、前記(イ)に記載したとおりである。
そして、甲2発明2は、担体層の繊維上に、プラズマスプレーによって適用された少なくとも1つの疎水性剤のコーティングが少なくとも一方の面から形成され、この剤は少なくとも布地担体層の個々の繊維の表面の衝突部分に、又はそれらの表面全体に堆積され、そこで連続的なコーティングを作り出し、疎水性剤を適用している間、その一部が担体層の全厚を貫通する場合、疎水性剤は、少なくとも、担体層とエレクトロスピニング膜とを連結するバインダーの形成部の衝突側と、任意で、エレクトロスピニング膜の少なくとも衝突側にも堆積されるものであるから、甲2発明2において通気性材料の担体層を「モノフィラメント布を含」むものとしたとき、たとえ繊維又はフィラメントの衝突部分のみ、又はエレクトロスピニング膜の内部の一部の繊維、モノフィラメント布の内部のフィラメントの一部のフィラメントに対してであるとしても、前記モノフィラメント布を含む前記担体層と、前記エレクトロスピニング膜との両方に表面コーティングが設けられ、前記エレクトロスピニング膜の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントと、にもプラズマコーティング処理が施されるものとなることが推認されるものである。
してみれば、甲2発明2を、「前記保護性通気性材料膜(10)にプラズマコーティング処理を施して、前記モノフィラメント布を含む前記担体層(11、15)と、前記エレクトロスピニング膜(12)との両方に表面コーティング(14)を設け、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントと、にもプラズマコーティング処理が施され」るものとして、前記相違点2-3''に係る本件発明13の発明特定事項を有するものとすることも、甲第28号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得ることである。
(エ) 次に、前記相違点2-4’について検討すると、前記1(23)の甲第47号証の記載からみれば、甲第47号証には、通気孔がダスト及び液体に対するバリアとして作用する、ePTFE膜などの環境バリアである、MEMSデバイスの開放ポートの保護のためのベントアセンブリが記載されており、前記ベントアセンブリは、その底部層として剛性キャリアを有し、ePTFE膜を含むベントを含むものであり、剛性キャリアは、接着剤でePTFE膜ベントに取り付けられるものであって、そのようなベントアセンブリは、取り付け方法に関して容易に利用可能であり、既に使用されている機器にベントを取り付けることを可能にするものである。
そして、通気孔がダスト及び液体に対するバリアとして作用するePTFE膜は「保護性通気性材料」といえ、前記剛性キャリアは、前記「保護性通気性材料」の周囲縁に設けられた、前記保護性通気性材料を補強する「継ぎ目」といえるから、甲第47号証には、「保護性通気性材料」を補強する「継ぎ目」を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設けることが開示されているといえる。
更に、甲第47号証には、そのようなベントアセンブリが容易に利用可能であることが記載されているのであるから、甲2発明2を、「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設ける」ものとして、前記相違点2-4’に係る本件発明13の発明特定事項を有するものとすることは、甲第47号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得ることである。
(オ) 最後に、前記相違点2-5について検討すると、甲2発明2においては、ポリマーナノファイバーの層及び布地担体層を連結するバインダーとして、例えば可融性バインダーが用いられており、ここで可融性バインダーが、溶融してポリマーナノファイバーの層及び布地担体層を連結するものであり、層の連結では通常圧接が行われることを考慮すると、甲2発明2においては、前記相違点2-5に係る「前記担体層と前記膜とをホットメルト処理により接合部で接続して、前記保護性通気性材料膜を形成」することが実質的に行われているといえるし、また、このようなものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
(カ) そして、本件明細書の記載をみても、前記相違点2-1''~相違点2-5の組合せにより、当業者が予測し得ない相乗的な効果を奏するものとはいえないから、本件発明13は、甲2発明2、甲第28号証及び甲第47号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 本件発明15について
本件発明15と甲2発明2とを対比すると、甲2発明2において、「ポリマーナノファイバーの層2がカバー層4(布地担体層3とは異なるかまたは同じ)によって覆われる」ことは、本件発明15において、「前記膜に接続される少なくとも1つのさらなる担体層が設けられ、前記膜は前記担体層間に配置される」ことに相当するから、本件発明15と甲2発明2とを対比した場合、新たな相違点は存在しない。
このことと、前記(3)によれば、本件発明15も、甲2発明2、甲第28号証及び甲第47号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 本件発明16について
ア 対比
本件発明16と甲2発明1とを対比した場合、前記相違点2-1'''~相違点2-4''の点で相違することは、前記4(5)アに記載したとおりである。
イ 判断
(ア) 始めに、前記相違点2-1'''から検討すると、前記相違点2-1'''は、布地複合体(1)が「保護性」を有するか否かが明らかでないことをいう点で前記4(4)アの相違点2-1''と同じであるから、前記(3)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、実質的な相違点とはいえない。
(イ) 次に、前記相違点2-2'''について検討すると、前記相違点2-2'''は前記4(4)アの相違点2-2''と同じであるから、前記(3)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲2発明1において、前記相違点2-2'''に係る本件発明16の発明特定事項を有するものとすることは、甲第28号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得ることである。
(ウ) 次に、前記相違点2-3'''について検討すると、前記相違点2-3'''は、保護性通気性材料膜にプラズマコーティング処理を施して、モノフィラメント布を含む担体層と、エレクトロスピニング膜との両方に表面コーティングを設け、前記エレクトロスピニング膜の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントと、にもプラズマコーティング処理が施されることに係るものである点で、前記4(4)アの相違点2-3''と同じであるから、前記(3)イ(ウ)に記載したのと同様の理由により、甲2発明1において、前記相違点2-3'''に係る本件発明16の発明特定事項を有するものとすることは、甲第28号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得ることである。
(エ) 最後に、前記相違点2-4''について検討すると、前記相違点2-4''は前記4(4)アの相違点2-4’と同じであるから、前記(3)イ(エ)に記載したのと同様の理由により、甲2発明1において、前記相違点2-4''に係る本件発明16の発明特定事項を有するものとすることは、甲第47号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得ることである。
(オ) そして、本件明細書の記載をみても、前記相違点2-1'''~相違点2-4''の組合せにより、当業者が予測し得ない相乗的な効果を奏するものとはいえないから、本件発明16は、甲2発明1、甲第28号証及び甲第47号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6) 被請求人の主張について
ア 無効理由4における本件発明13、15及び16についての被請求人の主張は、概略、以下のとおりである。なお、令和3年9月16日提出の審判事件答弁書等における被請求人の主張は、本件発明についての主張と解して検討する。
(ア) 当業者は、「担体層」が「モノフィラメント布を含」むものとすることを、甲第1号証、甲第25~27号証に記載された事項に基づいて容易に想到することはできない(令和3年9月16日提出の審判事件答弁書2ページ下から3行~6ページ15行)。
(イ) 本件発明における「継ぎ目」により、担体層とエレクトロスピニング層が周囲縁から剥離することを防止できるが、甲第1~30号証には「継ぎ目」が記載も示唆もされていないから、本件発明13、15及び16の特許は維持されるべきである(令和3年9月16日提出の審判事件答弁書7ページ10行~8ページ1行)。
(ウ) 本件明細書の段落【0051】の記載からみれば、本件発明における「継ぎ目」は、保護性通気性材料の周囲縁に設けられて保護性通気性材料を補強するものであって、ろ過装置に固定設置するためのものではないから、甲第46~49号証には、本件発明における「継ぎ目」は記載されていない(令和4年8月12日提出の審判事件答弁書3ページ16行~4ページ8行、令和5年3月16日提出の口頭審理陳述要領書5ページ19行~6ページ10行)。
イ 始めに、前記ア(ア)の主張から検討すると、甲2発明2において、「担体層(11、15)」を「モノフィラメント布を含」むものとすることは、甲第28号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることは、前記(3)イ(イ)に記載したとおりであるから、前記ア(ア)の主張は採用できない。
次に、前記ア(イ)及び(ウ)の主張について検討すると、前記「継ぎ目」について、本件明細書の段落【0051】には以下の記載がある。
「【0051】
本発明の保護性通気性材料の継ぎ目または枠要素は、少なくとも保護性通気性材料の周辺領域に設けられる。枠は固くても、弾性を有してもよく、保護性通気性材料を囲繞するものである。継ぎ目は別部材でもよいし、縁を加熱成形または溶接することで形成されてもよい。これにより、強固な接続が実現される。」
前記記載によれば、前記「継ぎ目」は、「枠要素」と同様に、少なくとも「保護性通気性材料」の周辺領域に設けられるものであって、別部材でもよいし、縁を加熱成形又は溶接することで形成されてもよいものであり、これにより、強固な接続が実現されるものである。
そして、このことからみれば、前記「継ぎ目」は、単に、「保護性通気性材料」の周辺領域に別部材などとして強固に接続して設けられるものに過ぎず、これにより、直ちに、「担体層」と「エレクトロスピニング層」が周囲縁から剥離することを防止できるといえるものではないし、前記「継ぎ目」が、ろ過装置に固定設置するためのものであるか否かも明らかでないから、ろ過装置に固定設置するためのものではないということはできない。
すると、前記ア(イ)及び(ウ)の主張は、本件明細書の記載に基づいたものとはいえないので、採用できない。
(7) 小括
したがって、本件発明1~12及び14は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第8号証~甲第15号証、甲第28号証、甲第29号証、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明13、15及び16は、甲第2号証に記載された発明、甲第28号証及び甲第47号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、無効とすべきものである。
6 無効理由5について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明1とを対比すると、甲3発明1は、コアレッサ・セパレータで使用される「分離用の布」である「モノフィラメント」であって、メッシュ開口を有し、空気のような気体が通過可能なものであることは明らかであるから、甲3発明1の「分離用の布」及び「モノフィラメント」は、本件発明1の「モノフィラメント布を含」む「通気性材料」に相当する。 そうすると、両者は、「モノフィラメント布を含」む「通気性材料」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
(相違点3-1)
本件発明1は「保護性」通気性材料であるのに対し、甲3発明1は「保護性」を有するか否か明らかでない点。
(相違点3-2)
本件発明1は「少なくとも1つの担体層(11、15)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、を有する保護性通気性材料であって、前記担体層(11、15)はモノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲3発明1は、「モノフィラメント布」であって、「エレクトロスピニング膜」が「担体層(11、15)」上に設けられる構成でない点。
(相違点3-3)
本件発明1は「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、前記プラズマコーティング(14)は、5nmから40nmの厚さのPECVD膜であって、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントにも形成され、前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられ」るものであるのに対し、甲3発明1は、「モノフィラメント布」に対して、「疎水性コーティングは、従来の湿式化学処理又は低温プラズマ処理で実現される」ものである点。
(相違点3-4)
本件発明1は「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設ける」ものであるのに対し、甲3発明1には補強する継ぎ目がない点。
なお、本件発明1と甲3発明1とが前記相違点3-2の点で相違することについては、当事者間に争いはない。
イ 判断
事案に鑑み、前記アの相違点3-2から検討すると、前記1(3)アの記載からみれば、甲第3号証は、シーファー社のカスタマーインフォメーションであって、航空宇宙産業向けフィルタ部品の技術情報及び用途を説明するものであり、シーファー社のモノフィラメント布は、コアレッサの後段のセパレータ中のろ過媒体として使用され、その高い撥水性、高いスループット、精密なサイズのメッシュ開口部は、コアレッサ・セパレータシステムに装着した場合に、優れた信頼性と性能を保証することを紹介するものである。
すると、甲第3号証は、シーファー社のモノフィラメント布がそれだけで優れた信頼性と性能を保証することを顧客に紹介するものであり、これに更なる改良を加える理由はないから、前記モノフィラメント布に更に「エレクトロスピニング膜」を設けることはそもそも想定されない。
してみれば、甲3発明1において、前記相違点3-2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとする動機づけは存在しないので、甲第1号証に、前記1(1)アに記載した事項が記載されているとしても、前記甲第1号証の記載事項に関わらず、甲3発明1において、前記相違点3-2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。
更に、前記相違点3-3に係る本件発明1の特定事項は、前記相違点3-2に係る本件発明1の「少なくとも1つの担体層(11、15)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、を有する保護性通気性材料であって、前記担体層(11、15)はモノフィラメント布を含む」ものであることを前提とするものであるから、甲3発明1において、前記相違点3-2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることが、当業者が容易になし得ることでないのであれば、当然のことながら、前記相違点3-3に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることも、当業者が容易になし得ることではない。
また、甲第46号証~甲第49号証には、それぞれ、前記1(22)~(25)に記載の事項が記載されているが、いずれも、前記相違点3-2及び相違点3-3に関するものではなく、他の相違点に関するものであるから、これらの証拠に記載の事項は、前記相違点3-2及び相違点3-3に係る判断を左右しない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明1、甲第1号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件発明2~12、14について
ア 対比
本件発明2と甲3発明1とを対比すると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、甲3発明1の「分離用の布」及び「モノフィラメント」は、本件発明2の「モノフィラメント布を含」む「通気性材料」に相当する。
そうすると、両者は、「モノフィラメント布を含」む「通気性材料」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
(相違点3-1’)
本件発明2は「保護性」通気性材料であるのに対し、甲3発明1は「保護性」を有するか否か明らかでない点。
(相違点3-2’)
本件発明2は、「少なくとも1つの担体層(11、15)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、を有する保護性通気性材料であって、前記担体層(11、15)はモノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲3発明1は「モノフィラメント布」であって、「エレクトロスピニング膜」が「担体層(11、15)」上に設けられる構成でない点。
(相違点3-3’)
本件発明2は、「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、前記プラズマコーティング(14)は、5nmから40nmの厚さのPECVD膜であって、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維を含む前記エレクトロスピニング膜(12)の個々の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメントを含む前記モノフィラメント布の個々の前記モノフィラメントにも形成され、前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられ」るものであるのに対し、甲3発明1は、「モノフィラメント布」に対して、「疎水性コーティングは、従来の湿式化学処理又は低温プラズマ処理で実現される」ものである点。
イ 判断
事案に鑑み、前記アの相違点3-2’から検討すると、前記相違点3-2’は、前記(1)アの相違点3-2と同じであるから、前記(1)イに記載したのと同様の理由により、当業者が容易になし得ることではない。更に、前記相違点3-3’は、前記(1)アの相違点3-3と同じであるから、同じく前記(1)イに記載したのと同様の理由により、当業者が容易になし得ることではない。
そうすると、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲3発明1、甲第1号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明3~8は、いずれも、直接又は間接的に請求項2を引用する保護性通気性材料で、本件発明2を更に限定するものであり、本件発明9及び10は、直接又は間接的に請求項2を引用する寝具及び電気電子機器で、少なくとも本件発明2の特定事項を全て含むものであり、本件発明11、12、14は、直接又は間接的に請求項2を引用する保護性通気性材料を製造する方法で、少なくとも本件発明2の特定事項を全て含むものであるから、これらの発明について検討しても事情は同じである。
(3) 本件発明13、15について
ア 対比
本件発明13と甲3発明2とを対比すると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、甲3発明2の「分離用の布」及び「モノフィラメント」は、本件発明13の「モノフィラメント布を含」む「通気性材料」に相当し、甲3発明2において、「疎水性コーティング」が「従来の湿式化学処理又は低温プラズマ処理で実現される」ことは、本件発明13において、「通気性材料」に「プラズマコーティング処理を施して、前記モノフィラメント布」「に表面コーティングを設け」ることに相当する。
そうすると、本件発明13と甲3発明2は次の点で一致するといえる。
「通気性材料を製造する方法であって、モノフィラメント布を含む通気性材料にプラズマコーティング処理を施して、前記モノフィラメント布に表面コーティングを設ける、方法。」
一方、本件発明13と甲3発明2は次の点で相違する。
(相違点3-1'')
本件発明13は、「保護性」通気性材料の製造方法であるのに対し、甲3発明2は「保護性」を有するか否か明らかでない点。
(相違点3-2'')
本件発明13は、「少なくとも1つの担体層(11、15)を設けることと、前記担体層(11、15)上に、多孔質構造となるように重ねられた繊維を使用して、エレクトロスピニング法により設けられる膜(12)を設けることと、を有し、前記担体層と前記膜とで保護性通気性材料膜を形成し、前記担体層(11、15)がモノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲3発明2は「モノフィラメント布」を製造するものであって、「エレクトロスピニング膜」が「担体層(11、15)」上に設けられる構成でない点。
(相違点3-3'')
本件発明13は、「前記保護性通気性材料膜(10)にプラズマコーティング処理を施して、前記モノフィラメント布を含む前記担体層(11、15)と、前記エレクトロスピニング膜(12)との両方に表面コーティング(14)を設け、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントと、にもプラズマコーティング処理が施され」るものであるのに対し、甲3発明2は、「モノフィラメント布」に対して、「疎水性コーティング」が「従来の湿式化学処理又は低温プラズマ処理で実現される」ものである点。
(相違点3-4’)
本件発明13は「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設ける」ものであるのに対し、甲3発明2には補強する継ぎ目がない点。
(相違点3-5)
本件発明13は、「前記膜(12)は前記担体層(11、15)上に直接設けられ、前記膜(12)は前記担体層(11、15)に固定的に接続され」るものであって、「前記担体層と前記膜とをホットメルト処理により接合部で接続して、前記保護性通気性材料膜を形成」するものであるのに対して、甲3発明2は、「エレクトロスピニング膜」が「担体層(11、15)上」に設けられる構成でない点。
イ 判断
事案に鑑み、前記アの相違点3-2''から検討すると、前記相違点3-2''は、「エレクトロスピニング膜」が「担体層(11、15)」上に設けられる構成であるか否かに係るものである点で、前記(1)アの相違点3-2と同じであるから、前記(1)イに記載したのと同様の理由により、当業者が容易になし得ることではない。更に、前記相違点3-3''は、「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ前記プラズマコーティング(14)は、」「前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維」「と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメント」「にも形成され」る構成であるか否かに係るものである点で、前記(1)アの相違点3-3と同じであるから、同じく前記(1)イに記載したのと同様の理由により当業者が容易になし得ることではない。
そうすると、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明13は、甲3発明2、甲第1号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明15は、請求項13を引用する方法で、本件発明13を更に限定するものであるから、本件発明15について検討しても事情は同じである。
(4) 本件発明16について
ア 対比
本件発明16と甲3発明1とを対比すると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、甲3発明1の「分離用の布」及び「モノフィラメント」は、本件発明16の「モノフィラメント布を含」む「通気性材料」に相当する。
そうすると、両者は、「モノフィラメント布を含」む「通気性材料」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
(相違点3-1''')
本件発明16は「保護性」通気性材料であるのに対し、甲3発明1は「保護性」を有するか否か明らかでない点。
(相違点3-2''')
本件発明16は、「少なくとも1つの担体層(11、15)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)上に設けられ、互いに重ねられて孔構造を形成する繊維から形成されるエレクトロスピニング膜(12)と、を有する保護性通気性材料であって、前記担体層(11、15)はモノフィラメント布を含」むものであるのに対し、甲3発明1は「モノフィラメント布」であって、「エレクトロスピニング膜」が「担体層(11、15)」上に設けられる構成でない点。
(相違点3-3''')
本件発明16は、「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ、前記プラズマコーティング(14)は、前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維と、前記モノフィラメント布の内部のフィラメントにも形成され、前記担体層と前記エレクトロスピニング膜とを接続するための接合部が設けられ、前記担体層(11、15)は、前記エレクトロスピニング膜(12)に固定的に接続され」るものであるのに対し、甲3発明1は、「モノフィラメント布」に対して、「疎水性コーティングは、従来の湿式化学処理又は低温プラズマ処理で実現される」ものである点。
(相違点3-4'')
本件発明16は「前記保護性通気性材料を補強する継ぎ目を、前記保護性通気性材料の周囲縁に設ける」ものであるのに対し、甲3発明1には補強する継ぎ目がない点。
イ 判断
事案に鑑み、前記アの相違点3-2'''から検討すると、前記相違点3-2'''は、前記(1)アの相違点3-2と同じであるから、前記(1)イに記載したのと同様の理由により、当業者が容易になし得ることではない。更に、前記相違点3-3'''は、「前記エレクトロスピニング膜(12)と、前記少なくとも1つの担体層(11、15)の前記モノフィラメント布の両方にプラズマコーティング(14)が設けられ前記プラズマコーティング(14)は、」「前記エレクトロスピニング膜(12)の内部の前記繊維」「と、前記モノフィラメント布の内部のモノフィラメント」「にも形成され」る構成であるか否かに係るものである点で、前記(1)アの相違点3-3と同じであるから、同じく前記(1)イに記載したのと同様の理由により当業者が容易になし得ることではない。
そうすると、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明16は、甲3発明1、甲第1号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5) 請求人の主張について
ア 前記相違点3-2、相違点3-2’、相違点3-2''及び相違点3-2'''に係る発明特定事項についての請求人の主張の概要は、概略、以下のとおりである。
甲第1号証には、前記相違点3-2、相違点3-2’、相違点3-2''及び相違点3-2'''に係る発明特定事項に係る構造が記載されており、甲第3号証に記載されたろ過手段において、高いろ過効率を得ることは普遍的な課題といえるから、甲第3号証に記載された発明において、モノフィラメント布に代えて甲第1号証に記載された構造を採用する動機づけがあり、そうすることは容易想到である(審判請求書72ページ12行~20行、令和4年10月28日提出の審判事件弁駁書20ページ13行~20行。)。
イ 以下、前記アの主張について検討すると、甲第3号証は、シーファー社のモノフィラメント布がそれだけで優れた信頼性と性能を保証することを顧客に紹介するものであることは、前記(1)イに記載したとおりである。
すると、ろ過手段において、高いろ過効率を得ることは普遍的な課題といえるとしても、既にそれだけで優れた信頼性と性能が保証されている甲第3号証に記載されたモノフィラメント布に、更に「エレクトロスピニング膜」を設けることは想定されないし、仮に「エレクトロスピニング膜」を設けたとしても、ろ過効率が高くなるかは不明であるから、甲第3号証に記載された発明において、モノフィラメント布に代えて甲第1号証に記載された構造を採用する動機づけがあるとはいえないので、前記アの主張は採用できない。
(6) 小括
したがって、本件発明1~16は、甲第3号証に記載された発明、甲第1号証に記載された事項、及び、甲第46号証~甲第49号証に記載された、本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第2の1(2)オの無効理由5は理由がない。
7 無効理由6について
(1) 実施可能要件の一般的な判断基準
特許法第36条第4項第1号は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と定めている。
これは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(「当業者」)が、明細書に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、物の発明については、その物を作れ、かつ、その物を使用することができ、物を生産する方法の発明については、その方法により物を生産することができる程度に、発明の詳細な説明を記載しなければならないことを意味するものである。
(2) 一般的な実施可能要件の判断基準に沿った検討
ア 始めに、前記(1)の一般的な判断基準に沿って、実施可能要件について検討すると、本件明細書の発明の詳細な説明には以下の(ア)~(オ)の記載がある。
(ア) 「【0035】
本発明に係る保護性通気性材料の好ましい実施形態は、特に、PECVD(プラズマ化学気相成長)法による、プラズマコーティングによりコーティングされる。プラズマコーティングは、保護性通気性材料の性質を補うように設計されることが好ましい。具体的には、ロールオフ効果(いわゆるロータス効果)、バリア効果、および/または非粘着性が提供される。但し、少なくとも架橋プラズマポリマーすなわちプラズマコーティングは、保護性通気性材料の撥油、撥脂、および/または撥水性に寄与する。
【0036】
PECVDは、表面コーティング手段である。具体的には、基板に異なる化学組成がコーティングされる。プラズマは、基板上で直接生成されてコーティングされてもよいし(直接プラズマ法)、別途チャンバで生成されてもよい(遠隔プラズマ法)。例えば、加速電子のため、反応ガスの分子の解離が行われる(プラズマ)。これは、基板上の反応性プラズマ粒子、例えばラジカルおよびイオンの層体積に影響を及ぼし得る。したがって、従来の湿式化学重合プロセス(適切な溶剤での重合反応)と比較して、高架橋度のポリマー構造を実現するが、膜の孔を塞ぐことはない表面コーティングを実施してもよい。本発明の担体層は、設けられた膜に対して、特に補助および/または保護機能を有する、特にモノフィラメント、編布のような織布または不織布のような布であってもよい。
・・・
【0046】
本発明に係る保護性通気性材料のさらなる好適な実施形態では、材料は、少なくとも飽和、一価および/または多価不飽和エーテル、ケトン、アルデヒド、アルケン、アルキン、アミド、アミン、ニトリル、チオエーテル、炭酸エステル、チオエーテル、スルホン、チオケトン、チオアルデヒド、スルフェン、スルフェンアミド、フルオロアクリレート、シロキサン、エポキシド、ウレタン、アクリレート、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド6,6(PA66)、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミドポリウレタン(PU)、ポリ尿素ウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリラクチド(PLA)、ポリカーボネート(PC)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリスルホン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルロース、酢酸セルロース(CA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PVA/シリカ、PAN/TiO2、PETFEポリエーテルイミド、ポリアニリン、ポリ(エチレンナフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルブチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、コポリマー、誘導体化合物、それらの混合物、および/またはそれらの組合せである。
【0047】
コーティング材料として特に好ましいのは、プラズマコーティング処理の際にラジカル、イオンまたはエネルギー粒子を放出して、保護性通気性材料の、疎油性かつ非極性テフロン状(登録商標:ポリテトラフルオロエチレン状)表面の形成に寄与するような材料である。」
(イ) 「【0053】
用途に合わせた機能要件に応じて、複数の担体層と、複数の膜とが、保護性通気性材料において交互に配されることが特に好ましい。・・・本発明の膜は、例えばマットレス、枕、羽毛布団、寝具、クッション、(電気)機器用の(内部および外部)通気フィルタ、(外科)マスク、(手術用)衣装、静脈内インラインフィルタ、加圧ろ過装置(例えば、鼻スプレー)、特に医療用具や、工業用の室内換気用およびバリア媒体に使用することができる。
・・・
【0055】
本発明はさらに、本明細書に記載の少なくとも1つの保護性通気性材料を有する、筐体を持つ電気または電子機器(電気電子機器)を対象とする。これら機器は、少なくとも携帯電話、ポータブルメディアプレーヤ、ハイファイ機器、タブレット、ノートパソコン、あらゆる種類の携帯機器、およびテレビを含む。
【0056】
さらに、本発明の保護性通気性材料は、フィルタ技術、音響用通気性材料、換気用フィルタ、燃料フィルタ、水分離、衣類、包装、建築および電子シール、靴、創傷包帯またはフェイシャルマスクにも適用できる。本発明に係る保護性通気性材料は気孔率が個別調整可能であり、これは例えばガス流中の固体の沈着、または創傷治療に使用することができる呼吸性支持体の提供に有利に寄与する。」
(ウ) 「【0064】
本発明に係る方法によると、保護性通気性材料はプラズマコーティング法により表面コーティングされることが特に好ましい。これにより、保護性通気性材料の表面への所定の官能基の導入、または保護性通気性材料の表面改質が可能となる。上述の、撥油、撥脂、防汚、撥水性、および/または保護性通気性材料のその他性質は、ナノスケールコーティングにより、特に好ましい影響を受ける。コーティングされた膜層の気孔率および/または通気性は、コーティングされていない状態での透過性と本質的に一致する。
【0065】
プラズマコーティングにより、極薄の機能性フィルム、特に撥水性および/または疎油性機能が、保護性通気性材料、特に膜の個々の繊維および/または担体層の個々の繊維またはフィラメントに適用される。この場合、数nm(ナノメートル)、特に80nm未満、好ましくは5nmから40nmの薄い層の厚さを実現できる。プラズマ重合(ラジカル中心のプラズマ重合)中に生成されるラジカルは、孔径に比べて無視できるほど小さいので、繊維/フィラメント間空間を容易に透過することができる。したがって、本発明に係る膜層の孔径は、例えばPECVD法のような、プラズマ式気相成膜後のコーティング処理によって変化することはない。・・・
【0066】
製造方法および処理
好ましい製造方法を、図9の概略図を参照して説明する。
【0067】
図9の概略図は、保護性通気性材料を製造する処理を示す。エレクトロスピニング膜が形成される回収基板(上図)が設けられる(第1製造ステップ)。後述のエレクトロスピニング膜は、公知の手法で形成される。
【0068】
第2ステップでは、形成された膜が、担持層に転写および接合される(接合1)。エレクトロスピニング膜が形成されていた回収基板は、任意で除去してもよい(回収基板除去)。上述の図示の担体層はメッシュ/布である。
【0069】
上記膜と層の第2接合(接合2)は、第2外層を導入し、任意でカレンダー仕上げを施した後に実行してもよい。したがって、サンドイッチ構造を形成する2つの等しいまたは異なる層の間に、任意で層を配置してもよい。例えば第2外層は、メッシュ、裏地、または不織材料として設けられてもよい。最後に、担体層と膜の少なくとも一方にプラズマコーティングが施される。
【0070】
エレクトロスピニング
ナノ繊維ウェブの作成処理は、参照により全文が本稿に組み込まれるWO 2006/131081およびWO 2008/106903に記載されている。
【0071】
簡潔に説明すると、エレクトロスピニング処理においては、高電圧により、帯電した高分子溶液を噴射したり、ピペットから溶融させたりする。収集面到達前に、噴射溶液は蒸発または固化し、互いに接続された細かい繊維のウェブとして収集される。・・・
【0072】
接合方法
ホットメルトグラビア積層技術、超音波接合技術、浸漬接合技術、UFD繊維化スプレー技術(ホットメルト)およびスパンウェブ接合技術等、様々な接合方法が利用できる。
【0073】
ホットメルトグラビア積層技術が、インラインプロセス用に工業的に確立されている。すなわち、「サンドイッチ型」膜に対しては、1つのライン処理で2段階接合が可能である。・・・
【0074】
グラビアローラを使用して接着剤を塗布する場合、2つの異なる反応性ポリウレタン型接着剤(ポリウレタン電子スピニング用のものとPA6用のもの)を使用することができる。・・・
【0075】
浸漬接合技術(化学的接合)を、エレクトロスピニングプロセス前のキャリア前処理に使用することが可能である。これを使用することが望ましい場合もある。・・・
【0076】
UFDは、繊維化スプレー技術であり、ホットメルト接着剤塗布用の最先端技術である。・・・
【0077】
スパンウェブ接合技術を利用すれば、表面が閉鎖されたフィルムではなく、三次元構造が得られる。開放構造で得られる積層体は、より柔軟性、通気性に優れる。・・・
【0078】
カレンダー仕上げ
カレンダー仕上げは、布、メッシュ、積層対換気部等の材料に実行される。これにより、より滑らか且つ肉薄の材料が得られる。こうして得られた材料は、より高い温度および圧力のローラの間またはその下を通される。なお、カレンダー仕上げの条件によっては、孔の大きさや形状が影響を受ける。
【0079】
プラズマPECVD
工業用および医療用織物ならびに合成材料の撥水撥油性のような表面特性を向上するため、織物仕上げプロセスとして織物材料のプラズマ処理を実行してもよい。従来の湿式化学繊維仕上げよりも、プラズマ技術は環境適合性の面で有利である。PECVD処理により、例えば、粘着特性、疎水性の向上、表面への特別な官能基の導入、または表面形状の変更を実現できる。
【0080】
一般にプラズマ重合またはPECVDとして知られているプラズマ蒸着では、非常に薄いポリマー層(ナノメートル単位)を基板表面に蒸着させることができる。この層は有機ガスの重合によって形成される。有機ガスは基板表面上で直接重合される。伝統的な重合と異なり、プラズマ重合は、すべてのモノマーガスまたは蒸気を、その反応性に限定されることなく使用することができる。プラズマ重合体は、分枝しランダムに終端された鎖および高架橋度により、特異な重合挙動を示す。
・・・
【0085】
図1は、本発明に係る、担体層11を有する保護性通気性材料10の断面図である。・・・保護性通気性材料10の表面と、孔を形成する繊維は、コーティング材によりコーティングされてもよい。コーティング材は、特にプラズマ蒸着法により蒸着できる。図において、繊維の表面コーティングを点および線14にて概略的に示す。本発明では、保護性通気性材料10は表面がプラズマポリマーで完全にコーティングされてもよい。すなわち、膜の各繊維およびフィラメント、ならびに担体層がコーティングされる。さらに、保護性通気性材料の内部領域や、膜の孔内の下方領域における繊維も含まれる。したがって、保護性通気性材料の外表面のような目に見える部分だけでなく、例えば内部の繊維や凹凸のような、目に見えない内表面もコーティングされる。すなわち、各繊維がコーティング材により包まれるまたは被覆される。」
(エ) 「【0108】
【表3】
[図:0001414440000014.jpg]
」
(オ) 「【図9】
[図:0001414440000015.jpg]
」
イ 前記ア(ウ)、(オ)の記載によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、エレクトロスピニング膜が形成される回収基板が設けられ(第1製造ステップ)、エレクトロスピニング膜は、公知の手法で形成され(段落【0067】)、第2ステップでは、形成された膜が、担持層に転写及び接合され(接合1)(段落【0068】)、上記膜と層の第2接合(接合2)は、第2外層を導入し、任意でカレンダー仕上げを施した後に実行してもよく、最後に、担体層と膜の少なくとも一方にプラズマコーティングが施される(段落【0069】)、本件発明に係る「保護性通気性材料」の製造方法が記載されている。
そして、前記製造方法におけるエレクトロスピニング処理は、WO 2006/131081及びWO 2008/106903に記載されているものであって(段落【0070】)、高電圧により、帯電した高分子溶液を噴射したり、ピペットから溶融させたりするものであり、収集面到達前に、噴射溶液は蒸発又は固化し、互いに接続された細かい繊維のウェブとして収集されるものである(段落【0071】)。
また、接合方法は、ホットメルトグラビア積層技術、超音波接合技術、浸漬接合技術、UFD繊維化スプレー技術(ホットメルト)及びスパンウェブ接合技術等、様々な接合方法が利用できるものであり(段落【0072】)、カレンダー仕上げは、布、メッシュ、積層対換気部等の材料に実行され、これにより、より滑らか且つ肉薄の材料が得られるものであり(段落【0078】)、プラズマコーティングは、PECVDにより、粘着特性、疎水性の向上、表面への特別な官能基の導入、又は表面形状の変更を実現できるものであり(段落【0079】)、一般にプラズマ重合又はPECVDとして知られているプラズマ蒸着では、非常に薄いポリマー層(ナノメートル単位)を基板表面に蒸着させることができ、この層は有機ガスの重合によって形成され、有機ガスは基板表面上で直接重合されるものである(段落【0080】)。
更に、前記ア(エ)の記載によれば、保護性通気材料(メッシュ+ナノ繊維ウェブ+PECVD)と、未コーティング比較用材料、未コーティングかつメッシュを含まない比較用材料(モノフィラメント布)との比較において、PECVDを適用した保護性通気材料は、良好な水柱及び通気性の結果が得られている。
ウ 前記イによれば、本件発明に係る「保護性通気性材料」は、エレクトロスピニング処理、ホットメルトグラビア積層技術、超音波接合技術、浸漬接合技術、UFD繊維化スプレー技術(ホットメルト)及びスパンウェブ接合技術等の接合方法、カレンダー仕上げ及びPECVDといった、本件特許の優先日当時に周知の手法により製造されるものであり、これらの周知の手法における具体的な製造条件は、当業者が技術常識として知悉しているものであって、本件明細書には、実際にPECVDが適用された水密性及び通気性を有する保護性通気性材料を製造したことが記載されているのであるから、本件発明に係る「保護性通気性材料」を製造するに当たって、これらの手法の具体的な製造条件を決定する場合に、当業者に過度の試行錯誤を強いるものとはいえない。
そして、前記ア(イ)によれば、本件発明に係る「保護性通気性材料」は、マットレス、枕、羽毛布団、寝具、クッション、(電気)機器用の(内部及び外部)通気フィルタ、(外科)マスク、(手術用)衣装、静脈内インラインフィルタ、加圧ろ過装置(例えば、鼻スプレー)、特に医療用具や、工業用の室内換気用及びバリア媒体等に使用することができるものである。
エ 前記ウによれば、当業者は、前記発明の詳細な説明の記載に基づいて、本件発明に係る「保護性通気性材料」を過度の試行錯誤をすることなく作ることができ、かつ、使用することができるし、本件発明に係る「保護性通気性材料を製造する方法」により、前記「保護性通気性材料」を生産することができるものである。
そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、前記発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合するといえる。
(3) 請求人の主張に沿った検討
ア 前記第2の1(2)カによれば、請求人は、総じて、プラズマコーティングの形成について、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合しない旨を主張していると解されるので、前記主張について検討する。
イ 前記1(6)の甲第8号証の記載によれば、甲第8号証には、支持体の機械的特性を改質することなく、満足できる撥水特性及び良好な弾性を有し、これらの特性が更に経時的に耐久性である通気性撥水性膜を得るためのプロセスとして、RF(高周波)-PECVD処理が挙げられており(段落【0008】~【0010】、【0020】)、同(7)の甲第9号証の記載によれば、甲第9号証には、エレクトロスピニングプロセスやメルトブローンプロセスにより形成された膜が、プラズマ強化化学気相成長(CVD)法によって、疎水性材料で被覆されることが記載されており(26ページ19行~28行、29ページ11行~23行)、同(12)の甲第14号証の記載によれば、甲第14号証には、プラズマ技術は、布地及び繊維がナノスケールで装飾されるため、はっ水性、親水性、染色性、導電性、生体適合性などの新しい機能性を追加するための魅力的な方法を提供しており、プラズマ重合に言及するとき、ラジカル支配プラズマ化学蒸着(プラズマCVD)プロセスが考えられることが記載されている(99ページ左欄7行~11行、100ページ左欄24行~28行)。
これらの記載に加え、前記1(9)の甲第11号証(127ページ11行~16行)、同(10)の甲第12号証(248ページ27行~37行)、同(11)の甲第13号証(4ページ左欄1行~13行)の記載によれば、布の表面をPECVDにより被覆することは、本件特許の優先日当時の周知技術といえるから、PECVDについて前記(2)ウに記載した事項は、前記甲各号証の記載によっても裏付けられるものである。
ウ してみれば、本件明細書の発明の詳細な説明に、具体的なプラズマ反応装置の構成、反応装置内の温度・圧力条件、原料ガスや処理対象の基材の反応装置内への供給条件等に関する具体的な記載がなく、また、前記発明の詳細な説明に記載された実施例は、特にプラズマコーティングの形成の点で、本件特許に係る発明に相当するものであるかが不明であり、再現性に係るデータも示されていないとしても、当業者は、本件発明に係る「保護性通気性材料」を過度の試行錯誤をすることなく作ることができ、かつ、使用することができるし、本件発明に係る「保護性通気性材料を製造する方法」により、前記「保護性通気性材料」を生産することができることに変わりはないから、前記発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合するといえ、請求人の前記第2の1(2)カの主張は採用できない。
エ 前記第2の1(2)カ以外の、実施可能要件についての請求人の主張は、概略、以下のとおりである。
なお、下記(ア)~(オ)の主張は、本件発明におけるプラズマコーティングの条件に関するものである点で、前記第2の1(2)カの主張と軌を一にするので、無効理由6に含まれるものとして扱うこととする。
(ア) 被請求人は、令和3年9月16日提出の審判事件答弁書において、PECVDにより布地をプラズマコーティングすることは甲第2号証により知られていることを主張する一方で、本件発明におけるプラズマコーティングは甲第2号証によるものとは区別される旨を主張しており、このことからすれば、本件発明におけるプラズマコーティングの条件は、甲第2号証に記載された条件とは異なるはずであるのに、本件明細書の発明の詳細な説明にはプラズマコーティングの条件が記載されていないし、前記審判事件答弁書において明らかにしたプラズマコーティングの条件により、本件明細書の記載を補完できるものでもないから、前記発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。
また、被請求人は、令和4年8月12日提出の審判事件答弁書において、令和3年9月16日提出の審判事件答弁書の記載内容を修正しているが、係る修正により発明の詳細な説明の記載不備が治癒するものでもない(令和3年12月3日提出の審判事件弁駁書13ページ下から2行~14ページ17行)。
(イ) 本件明細書の段落【0046】等にコーティングに使用される材料が記載されているとしても、前記記載からプラズマコーティングの条件が明らかになるものではないから、前記発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない(令和3年12月3日提出の審判事件弁駁書14ページ18行~27行)。
(ウ) 本件明細書の段落【0046】に記載された材料は無数にあるといってよく、前記審判事件答弁書において明らかにしたプラズマコーティングの条件も無数にあるといってよいから、これらの記載によっても、当業者は、本件発明の実施に過度の試行錯誤を強いられるので、前記発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない(令和3年12月3日提出の審判事件弁駁書14ページ28行~15ページ10行)。
(エ) 本件発明の特徴的な構成であるプラズマコーティングが視認できない図5~7は本件発明の理解に資するとはいえないから、実施可能要件の充足に貢献しない(令和3年12月3日提出の審判事件弁駁書15ページ11行~17行)。
(オ) 本件明細書の実施例には、PECVD膜が全ての繊維及び全てのモノフィラメントに形成されていることは記載されておらず、膜厚については一切記載がないし、どのような条件を採用すれば、5nmから40nmの極めて薄いPECVD膜を全ての繊維及び全てのモノフィラメントに形成することができるか、どのような測定方法によれば、全ての繊維及び全てのモノフィラメントに5nmから40nmの極めて薄いPECVD膜が形成されていることを確認できるか、といった点についても記載されていない。
また、被請求人は、本件発明において5nmから40nmの厚さのPECVD膜が形成される点が進歩性を有する旨を主張するが、そうであるならば、発明の詳細な説明に、PECVD膜を形成する条件や、PECVD膜の膜厚の測定方法が記載されているべきであるのに、これらの記載はない。
そして、それらを見いだすには当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤が必要であるから、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない(令和4年10月28日提出の審判事件弁駁書14ページ17行~15ページ17行)。
オ 以下、前記エの主張について検討する。
(ア) 始めに、前記エ(ア)の主張について検討すると、本件発明1における「PECVD」と甲2発明1の「プラズマスプレー」は、形成されるコーティングの態様が同じものとはいえないから、甲2発明1が疎水性剤のコーティングとして「PECVD膜」を設けたものとはいえないことは、前記4(1)イ(ア)に記載したとおりであるので、もともと、本件発明におけるプラズマコーティングの条件は、甲第2号証に記載された条件とは異なることが推認されるものである。
そして、本件発明におけるプラズマコーティングの条件が甲第2号証に記載された条件とは異なるとしても、当業者は、本件発明に係る「保護性通気性材料」を過度の試行錯誤をすることなく作ることができ、かつ、使用することができるし、本件発明に係る「保護性通気性材料を製造する方法」により、前記「保護性通気性材料」を生産することができることに変わりはないので、前記エ(ア)の主張は採用できない。
(イ) 次に、前記エ(イ)~(エ)の主張について検討すると、前記1(6)の甲第8号証の記載によれば、甲第8号証には、更に、プラズマ処理は、通常20℃から350℃、有利には20℃から50℃の温度で行われ、通常0.05mbarから10mbar、有利には0.2mbarから1mbarの圧力で行われ(段落【0035】~【0037】)、プラズマ処理のガスとして、例えばC2H2、CF4、CH4、CHF3、C3F8及びSF6等を挙げることができ、プラズマ処理の出力Pは、有利には、0.04W/cm2から2W/cm2であり、処理時間tは30秒から150秒であり、ガス流量Qはチャンバの容積に依存し、その中の圧力は0.1mbarから0.4mbarであり(段落【0041】~【0047】)、コーティング層の厚さは、20nmから1000nm、有利には40nmから100nmの範囲であること(段落【0050】)が記載されており、同(7)の甲第9号証の記載によれば、甲第9号証には、更に、繊維は、架橋剤、結合剤、シランなどの添加剤を用いて、又は用いずに、フルオロカーボン、ワックス、シリコンなどの疎水性材料でコーティングされることが記載されており(26ページ19行~28行)、同(12)の甲第14号証の記載によれば、甲第14号証には、更に、プラズマ技術は、布地及び繊維がナノスケールで装飾されるため、はっ水性、親水性、染色性、導電性、生体適合性などの新しい機能性を追加するための魅力的な方法を提供していることが記載されている(112ページ左欄23行~35行)。
これらの記載からみれば、通常のプラズマコーティングの条件は、当業者であれば適宜選択し、決定し得るものであるし、プラズマコーティングの材料や、繊維や布地にナノスケールの厚さの膜を形成することも、本件特許の優先日当時の周知技術といえるものである。
更に、本件特許明細書の前記(2)ア(ウ)(段落【0085】)の記載によれば、本件明細書の記載に接した当業者は、PECVDにより、膜の各繊維及びフィラメント、並びに担体層がコーティングされ、「保護性通気性材料」の外表面のような目に見える部分だけでなく、例えば内部の繊維や凹凸のような、目に見えない内表面もコーティングされ、各繊維がコーティング材により包まれる又は被覆されることを理解できる。
また、(2)ア(ア)の段落【0046】に記載される材料は、汎用の材料であり、その例示の数も無数とはいえないし、好ましい材料としてポリテトラフルオロエチレンが挙げられている(段落【0047】)。更に、前記エ(ウ)で指摘している「前記審判事件答弁書において明らかにしたプラズマコーティングの条件」についても、そのプラズマ条件が所定の範囲をもって記載されているものの、その範囲自体相当な幅があるといえるほどの範囲ではないから、プラズマコーティングの条件が無数にあるとはいえない。
してみれば、本件明細書の図5~7において、本件発明の特徴的な構成であるプラズマコーティングが視認できず、本件明細書の実施例に、PECVD膜が全ての繊維及び全てのモノフィラメントに形成されていることが記載されておらず、膜厚についても一切記載がなく、どのような条件を採用すれば、5nmから40nmの極めて薄いPECVD膜を全ての繊維及び全てのモノフィラメントに形成することができるか、どのような測定方法によれば、全ての繊維及び全てのモノフィラメントに5nmから40nmの極めて薄いPECVD膜が形成されていることを確認できるか、といった点についての記載がないとしても、当業者は、本件発明に係る「保護性通気性材料」を過度の試行錯誤をすることなく作ることができ、かつ、使用することができるし、本件発明に係る「保護性通気性材料を製造する方法」により、前記「保護性通気性材料」を生産することができることに変わりはないから、前記エ(イ)~(エ)の主張も、いずれも採用できない。
(ウ) 最後に、前記エ(オ)の主張について検討すると、本件発明に係る「保護性通気性材料」は、本件特許の優先日当時に周知の手法により製造されるものであることは、前記(2)ウに記載したとおりであるから、本件発明は、PECVDによる製造条件や形成されたPECVD膜の膜厚の測定方法に特徴を有するものではない。
そうすると、本件発明において5nmから40nmの厚さのPECVD膜が形成される点が進歩性を有し、また、発明の詳細な説明に、PECVD膜を形成する条件や、PECVD膜の膜厚の測定方法が記載されていないとしても、当業者は、本件発明に係る「保護性通気性材料」を過度の試行錯誤をすることなく作ることができ、かつ、使用することができるし、本件発明に係る「保護性通気性材料を製造する方法」により、前記「保護性通気性材料」を生産することができることに変わりはないので、前記エ(オ)の主張も採用できない。
(4) 小括
よって、請求人の主張する無効理由6についての論旨は採用することができず、また、一般的な実施可能要件の判断基準に照らしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号所定の規定(実施可能要件)に適合するので、前記第2の1(2)カの無効理由6には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明13、15及び16についての特許に関して、無効理由4は理由があるので、当該特許は無効とすべきである。
また、本件発明1~12及び14についての特許に関しては、無効理由1~6はいずれも理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、当該特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、その16分の13を請求人の負担とし、16分の3を被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-800043