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特許無効審判

2019-800080

固液分離装置

審判番号
2019-800080
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2017-160514外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年10月09日
審決日
2021年07月13日
公報発行日
2021年10月29日
結論
請求成立(無効)
当事者
審判長/審判官
分類
P1113.112-Z (B01D) / P1113.121-Z (B01D) / P1113.151-Z (B01D) / P1113.152-Z (B01D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第123条第1項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第1項、特許法第123条第1項第6号、特許法第38条、特許法第123条第2項、特許法第29条、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6301541号発明「固液分離装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第6301541号の請求項1、2、4、5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 1 本件特許の出願から設定登録に至るまでの経緯 本件特許無効審判事件に係る特許第6301541号(以下、「本件特許」という。)は、本件被請求人である菊池誠二が、本件請求人であるアムコン株式会社に在職中(後記甲第35号証を参照した。以下、請求人提出の甲各号証を「甲1」などと略称する。被請求人提出の乙各号証についても同じ)の平成29年8月23日に出願され、特願2017-160514号として審査され、その請求項1~5に係る発明について、平成30年3月9日に特許権の設定登録がされたものである。 2 別件異議における経緯 その後、その請求項1~5に係る特許に対して、平成30年7月5日に特許異議申立人であるアムコン株式会社(本件請求人に同じ)により特許異議の申立てがされ、異議2018-700539号(以下、この特許異議申立事件を「別件異議」という。)として審理され、平成31年1月28日にされた訂正の請求(後記甲6)を踏まえて、同年4月17日付けで「特許第6301541号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4、5〕、3について訂正することを認める。特許第6301541号の請求項1、2、4、5に係る特許を維持する。特許第6301541号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。」との異議の決定(後記甲10)がされ、この決定は、同年同月25日に確定した。 3 本件特許無効審判事件における経緯 本件は、前記異議の決定の確定後に、先の特許異議申立人であるアムコン株式会社により、前記訂正後の請求項1、2、4、5に係る特許を対象として請求されたものである。 本件におけるおおよその手続の経緯は、以下のとおりである。 令和元年10月 9日   審判請求書、甲1~40及び証拠説明書(1 )の提出(請求人) 同年12月27日   答弁書及び乙1~4の提出(被請求人) 令和2年 3月16日付け 審理事項通知 同年 4月 7日   口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) 同年 4月10日   口頭審理陳述要領書、甲41の1~46及び 証拠説明書(2)の提出(請求人) 同年 7月 7日   第1回口頭審尋 同年 8月 4日   上申書、乙5及び証拠説明書の提出(被請求 人) 同年 8月26日   上申書の提出(請求人) 令和3年 1月12日付け 審決の予告 なお、審決の予告に対する被請求人の応答はなかった。 第2 本件発明 本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明4」、「本件発明5」といい、これらをまとめて「本件発明」という場合がある。また、対応する特許を「本件特許1」などという。)は、前記訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、4、5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 互いに間隙をあけて軸線方向に配列される複数の固定リングと、 この固定リング間の間隙に遊動可能に配置された遊動リングと、 これら固定リング及び遊動リング内に回転自在に配置されたスクリューコンベアと、を備え、 前記スクリューコンベアは、スクリュー軸と、 このスクリュー軸の外周に設けられる螺旋羽根と、を有し、 前記スクリュー軸には、基端側から他端側へ広がるテーパー部と、 このテーパー部の他端側に形成される円柱部と、が形成されており、 前記テーパー部及び前記円柱部の外周には、前記螺旋羽根が設けられ、 前記円柱部の長さは、前記スクリュー軸の全長の15~20%の範囲の長さに設定され、 前記固定リング及び前記遊動リング内に前記テーパー部が配置された濃縮エリアと、 前記固定リング及び前記遊動リング内に前記円柱部が配置された脱水エリアと、が形成されていることを特徴とする、固液分離装置。 【請求項2】 前記円柱部の直径は、前記スクリューコンベアの螺旋羽根の外接円の直径の80~90%の範囲の大きさに設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の固液分離装置。 【請求項4】 前記固定リングの間にはスペーサーが設けられており、 このスペーサーは、前記遊動リングよりも肉厚に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の固液分離装置。 【請求項5】 前記固定リングと前記遊動リングとの間には、微小ギャップが形成されており、 前記脱水エリアの微小ギャップは、前記濃縮エリアの微小ギャップよりも幅狭に設定されていることを特徴とする、請求項1、2及び4の何れかに記載の固液分離装置。」 第3 両当事者の主張及び証拠方法 1 請求人の主張の概要及び証拠方法 (1) 請求人の主張の概要 請求の趣旨は、「特許第6301541号の請求項1、2、4、5に記載された各発明ついての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」というものであり、具体的な無効理由は、整理すると、概略、次のとおりである。 ア 無効理由1(甲1発明に基づく進歩性欠如) 本件発明1、2、4は、後記甲1に記載された発明(甲1発明(主たる発明))及び甲1に記載された事項に基いて、また、本件発明5は、甲1発明(主たる発明)及び後記甲1~3に記載された事項に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1、2、4、5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、無効とされるべきものである(特許法第123条第1項第2号に該当)。 イ 無効理由2(公然実施発明に基づく新規性欠如) 本件発明1、2、4、5は、本件特許の出願前に公然実施をされた、請求人が住友化学株式会社の愛媛工場に納入したヴァルート脱水機に係る発明(公然実施発明。後記甲11の1~甲34参照)であり、特許法第29条第1項第2号の公然実施をされた発明に該当するから、本件特許1、2、4、5は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、無効とされるべきものである(特許法第123条第1項第2号に該当)。 ウ 無効理由3(公然実施発明に基づく進歩性欠如) 本件発明1、2、4、5は、前記公然実施発明(主たる発明)並びに後記甲33及び甲34に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1、2、4、5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、無効とされるべきものである(特許法第123条第1項第2号に該当)。 エ 無効理由4(甲1発明及び公然実施発明に基づく進歩性欠如) 本件発明1、2、4、5は、前記甲1発明(主たる発明)、前記公然実施発明並びに後記甲2、甲3、甲33及び甲34に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1、2、4、5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、無効とされるべきものである(特許法第123条第1項第2号に該当)。 オ 無効理由5(冒認出願) 本件発明1、2、4、5について、請求人が特許を受ける権利を有する者であり、被請求人は同権利を有しない者であるから(後記甲35~40参照)、本件特許1、2、4、5は、その発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたものであり、無効とされるべきものである(特許法第123条第1項第6号に該当)。 カ 無効理由6(共同出願違反) 本件発明1、2、4、5について特許を受ける権利は、請求人(被請求人以外の従業者が発明者である持ち分)と被請求人の共有に係るものであるから(後記甲35~40参照)、本件特許1、2、4、5は、特許法第38条の規定に違反してされたものであり、無効とされるべきものである(特許法第123条第1項第2号に該当)。 (2) 請求人の提出した証拠方法 請求人が提出した証拠方法は、次のとおりである。なお、別件異議において提出されたものについては括弧内にその旨を記載した。 ア 審判請求書と共に提出した証拠方法 ・甲1:特許第3904590号公報(別件異議の甲1) ・甲2:特開2009-166092号公報(別件異議の甲2) ・甲3:「ヴァルート脱水機 TS SERIES」のカタログ(1997     年7月、請求人発行、別件異議の甲3) ・甲4:別件異議における「特許異議申立書」 ・甲5:別件異議における「取消理由通知書」 ・甲6:別件異議における「訂正請求書」及び「訂正特許請求の範囲」 ・甲7:別件異議における特許権者提出の「意見書」 ・甲8の1:別件異議における特許権者提出の「実験成績証明書」 ・甲8の2:別件異議における特許権者提出の「試算書」 ・甲9:別件異議における特許異議申立人(本件請求人)提出の「意見書 」 ・甲10:別件異議における「異議の決定」 ・甲11の1:請求人が作成した2014年7月25日付けの「納入仕様 書」(1~4頁を抜粋) ・甲11の2:請求人が作成した2014年8月27日付けの「御見積書 」 ・甲11の3:請求人宛ての2014年9月1日付けの「注文書」 ・甲11の4:請求人が作成した2014年10月24日付けの「保証書 」 ・甲12:2015年4月3日付けの「住友化学株式会社 愛媛工場向けE S354改修 出張報告書」 ・甲13:2015年6月10日付けの「住友化学株式会社 愛媛工場向 けES354改修 出張報告書」 ・甲14:2015年6月9日付けの「打ち合わせ議事録」 ・甲15:2015年8月17日付けの「住友化学株式会社 愛媛工場向 けES354改修 出張報告書」 ・甲16:「C0754-00-0」の図面(1頁目のみ)※甲15の添付資料 ・甲17:2015年8月21日付けの「打ち合わせ議事録」 ・甲18:2015年8月31日に被請求人が提出した「業務改善実施報 告書」 ・甲19:2015年10月30日付けの「打ち合わせ議事録」 ・甲20:2015年12月14日付けの「報告書」 ・甲21:「C0754-00-0」の図面(1頁目と2頁目) ・甲22:「C0754-00-1」の図面(1頁目と2頁目) ・甲23の1:2016年2月8日付けの「注文書」 ・甲23の2:2016年2月17日付けの「発注書」 ・甲23の3:2016年6月29日付けの「請求書(兼出荷案内書)」 ・甲23の4:「作業委託書」(印刷日:2019年7月25日、作成日 :2016年4月18日) ・甲23の5:「サービスオーダ確認レポート」(印刷日:2019年 7月25日) ・甲24:請求人の従業員 野藤克俊の「陳述書」 ・甲25の1:2015年1月13日付けの「出張指示(申請)書」(野 藤) ・甲25の2:2014年12月26日付けの「出張指示(申請)書」( 木村) ・甲25の3:2014年12月26日付けの「出張指示(申請)書」( 広瀬) ・甲26の1:2015年3月31日付けの「出張指示(申請)書」(野 藤) ・甲26の2:2015年3月31日付けの「出張指示(申請)書」(木 村) ・甲26の3:2015年3月15日付けの「出張指示(申請)書」(米 澤) ・甲26の4:2015年3月19日付けの「出張指示(申請)書」(田 村) ・甲26の5:2015年3月19日付けの「出張指示(申請)書」(三 好) ・甲27の1:2015年5月29日付けの「出張指示(申請)書」(木 村) ・甲27の2:2015年5月27日付けの「出張指示(申請)書」(田 村) ・甲27の3:2015年5月27日付けの「出張指示(申請)書」(三 好) ・甲28の1:2015年8月18日付けの「出張指示(申請)書」(野 藤) ・甲28の2:2015年8月28日付けの「出張指示(申請)書」(木 村) ・甲28の3:2015年8月4日付けの「出張指示(申請)書」(菊池 ) ・甲28の4:2015年9月3日付けの「出張指示(申請)書」(門脇 ) ・甲29の1:2015年10月5日付けの「出張指示(申請)書」(野 藤) ・甲29の2:2015年10月30日付けの「出張指示(申請)書」( 木村) ・甲29の3:2015年10月16日付けの「出張指示(申請)書」( 菊池) ・甲29の4:2015年10月13日付けの「出張指示(申請)書」( 門脇) ・甲30の1:2015年11月6日付けの「出張指示(申請)書」(野 藤) ・甲30の2:2015年11月27日付けの「出張指示(申請)書」( 木村) ・甲31:「出張指示(申請)書」(野藤) ・甲32の1:2016年4月28日付けの「出張指示(申請)書」(野 藤) ・甲32の2:2016年4月25日付けの「出張指示(申請)書」(三 好) ・甲33:「汚泥処理関連装置」のカタログ(2016年10月、請求人 発行) ・甲34:「ヴァルート脱水機ESシリーズ」のカタログ(2005年7 月、請求人発行) ・甲35:2017年11月29日付けの「誓約書(退職時)」 ・甲36:「雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)」 ・甲37:「アムコン株式会社職務発明規程」(2005年12月26日 、請求人開発Gr作成) ・甲38:「発案書<職務発明届>」(甲37の3条関係) ・甲39:中山信弘ら著「新・注解 特許法 【第2版】[上巻]」、20 17年10月5日第2版第1刷発行、青林書院、中表紙、67 8~681頁、奥付 ・甲40:請求人従業員 小島幹男の「陳述書」 イ 口頭審理陳述要領書と共に提出した証拠方法 ・甲41の1:業務改善実施報告書(Sample A) ・甲41の2:業務改善実施報告書(Sample B) ・甲41の3:業務改善実施報告書(Sample C) ・甲41の4:業務改善実施報告書(Sample D) ・甲41の5の1:業務改善実施報告書(Sample E-1) ・甲41の5の2:業務改善実施報告書(Sample E-2) ・甲42:人財シート Ver1.2(2015.1.5)職種【販売 営業(総合職)】 ・甲43:アムコン株式会社組織図(2015年6月8日 41期第2版) ・甲44の1:ヴァルート事業部・部長会議の議事録(2015年5月15日) ・甲44の2:ヴァルート事業部・部長会議の議事録(2015年7月9日) ・甲44の3:ヴァルート事業部・部長会議の議事録(2015年9月15日) ・甲44の4:ヴァル-ト事業部・部長会議の議事録(2015年10月14日) ・甲44の5:ヴァル-ト事業部・部長会議の議事録(2015年11月17日) ・甲44の6:ヴァル-ト事業部・部長会議の議事録(2015年12月22日) ・甲44の7:ヴァル-ト事業部・部長会議の議事録(2016年11月9日) ・甲44の8:ヴァル-ト事業部・部長会議の議事録(2017年3月10日) ・甲45:株式会社ノアットの企業概要(ウェブサイトの印刷物、2018年 4月13日時点) ・甲46:株式会社ノアットの履歴事項全部証明書 2 被請求人の主張の概要及び証拠方法 被請求人の答弁の趣旨は、「『本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。』との審決を求める。」というものであり、請求人は、先の無効理由1~6はいずれも理由がない旨主張し、証拠方法として次のものを提出している。 ・乙1:特許第6301541号公報(本件特許公報) ・乙2:別件異議における「異議の決定」(甲10に同じ) ・乙3:実験成績証明書(平成30年1月23日に、被請求人指示のもと 、元ノアット社員 三好佑治が作成。内容は甲8の1に略同じ) ・乙4:試算書(平成31年1月9日に、被請求人指示のもと、元ノアッ ト社員 三好佑治が作成。内容は甲8の2に略同じ) (以上、答弁書と共に提出) ・乙5:実験概要(令和2年7月21日に、被請求人作成) (以上、上申書と共に提出) なお、請求人は、上記乙3及び乙4に係る文書の成立の真正を認めていない(口頭審理陳述要領書18、19頁、上申書など)。 第4 各無効理由についての当審の判断 当審は、無効理由1~4に係る請求については理由があるから、本件特許1、2、4、5は特許法第123条第1項第2号に該当するため無効にすべきものである、と判断する。 以下、その理由について詳述する。 なお、無効理由5、6については、(i) 請求人であるアムコン株式会社の職務発明規程をみても、いわゆる予約承継に関する規程はなく、また、当該規程に代わる黙示の合意の成立についても、従業者の認識を確認する証拠として甲40だけでは不十分と解されるため、本件発明が職務発明であるとしても、請求人がその特許を受ける権利を有する者であるとは言い難いこと、(ii) 請求人以外の従業者が職務発明たる本件発明の成立に関与しており、その特許を受ける権利を有しているとしても、上記のとおりその権利は請求人に帰属するとまではいえないため、特許法第123条第2項の規定により、請求人は冒認出願及び共同出願についての無効理由に係る請求をすることはできないこと、(iii) 本件発明は円柱部の長さを特定の範囲に設定したこと(後記無効理由1における相違点1の「比率設定」のこと)を発明特定事項とするところ、当該比率設定を含めた発明までが職務発明として成立していたことを示す証拠は見当たらないため、本件発明を職務発明によるものと直ちに解することはできないこと、及び、(iv) 請求人は、無効理由2のとおり本件発明を公然実施発明として認識しており、本件発明が特許を受けることができる発明(特許出願をすべき発明)であるとの認識に至っていなかったと解されること、を併せ考慮し理由がないものと判断した。 1 無効理由1(甲1発明に基づく進歩性欠如)について (1) 甲1~甲3の記載事項 ア 甲1の記載事項 甲1には、以下の記載がある(当審注:「・・・」は、記載の省略を表す。以下、同様である。)。 (ア)「【請求項1】 複数の固定板及び隣り合う固定板の間に配置された可動板を有する固液分離部と、該固液分離部を貫通して延びる少なくとも1本のスクリューとを具備し、回転するスクリューによって前記可動板が押し動かされるように、該可動板が形成されていると共に、固液分離部に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって固液分離部の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、固液分離部の濾液排出ギャップを通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から固液分離部外に排出させる固液分離装置において、 処理対象物が前記固液分離部に入り込む固液分離部の入口よりも処理対象物の移動方向下流側のスクリューの位置をスクリューの所定の位置としたとき、該スクリューの所定の位置よりも、固液分離部の出口側のスクリュー部分の軸部の直径が、該出口の側に向けて漸次大きくなっていると共に、そのスクリュー部分のリード角が13°乃至14°に設定されていることを特徴とする固液分離装置。」 (イ)「【0003】 ところで、この種の固液分離装置においては、その固液分離部の出口側の領域を移動する処理対象物の含液率は既に低下しているので、この領域に存する処理対象物の脱液効率を高め、含液率の低くなった処理対象物を固液分離部の出口から排出させる必要がある。このため、従来は、固液分離部の出口側の領域に位置するスクリュー部分のリード角を、8°乃至9°程度の小さな値に設定し、このスクリュー部分のリードの値を小さくすることによって、固液分離部の出口側領域の容積を狭くし、固液分離部の出口側領域に存する処理対象物に対して大きな圧力を加え、その処理対象物に対する脱液効率を高めていた。 【0004】 固液分離装置を上述のように構成することによって、確かに、処理対象物に対する脱液効率、すなわち処理対象物から液体を絞り出す効率を高めることができるのであるが、本発明者による最近の検討の結果、スクリューのリード角を小さくすると、回転するスクリューにより押し動かされる可動板の摩耗が著しくなり、可動板の寿命が短くなってしまうことが明らかとなった。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、上記認識に基づきなされたものであって、その目的とするところは、処理対象物に対する脱液効率を低下させることなく、可動板の摩耗を従来よりも抑制することのできる固液分離装置を提供することにある。」 (ウ)「【0014】 図1は固液分離装置の一例を示す部分断面正面図である。この固液分離装置によって、液体を含む各種の処理対象物を固液分離することが可能であるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。 【0015】 ここに示した固液分離装置は、入口部材1と、出口部材2と、これらの間に配置された固液分離部3とを有し、入口部材1は、上部が開口した矩形の箱状に形成され、その上部開口によって、汚泥が流入する流入口4が構成されている。・・・ ・・・ 【0018】 一方、本例の固液分離部3は、小リング状の複数のスペーサ38によって軸線方向に互いに間隔をあけて配置されたリングより成る複数の固定板28と、軸線方向に隣り合う固定板28の間に配置されたリングより成る可動板29とを有している。図2は隣り合う2つの固定板28と、これらの固定板28の間に配置された可動板29と、スペーサ38の外観を示す分解斜視図であり、図3は固液分離部3の部分縦断面図である。複数の固定板28は、図1乃至図3に示すように同心状に配列され、軸線方向に隣り合う固定板28の間に4つのスペーサ38がそれぞれ配置されている。図1に示すように、固液分離部3は出口部材2の側が高くなるように傾斜して配置されている。 ・・・ 【0021】 図3に示すように、各固定板28の間にそれぞれ配置された各可動板29の厚さTは、各固定板間の間隙幅Gより小さく設定され、各固定板28の端面と、これに対向する可動板29の端面の間には、例えば0.1mm乃至1mm程の微小なギャップgが形成される。かかる微小ギャップgは、後述するように汚泥から分離された水分、すなわち濾液を通過させる濾液排出部を構成するものである。・・・ ・・・ 【0026】 また、図1乃至図3に示すように、複数の固定板28と複数の可動板29を有する固液分離部3の内部には、その固液分離部3の軸線方向に延びるスクリュー21が配置され、このスクリュー21は、軸部41と、この軸部41に一体に形成されたらせん状の羽根部42を有している。かかるスクリュー21は、図1に示すように、入口部材1の側壁5と、出口部材2の側壁19,20に形成された開口6,22,23を貫通して延びていて、このスクリュー21の軸部41の一方の端部が、軸受部材18に軸受15を介して回転自在に支持されている。・・・」 (エ)「【0035】 ところで、上述した固液分離装置においては、先にも説明したように、固液分離部3内の出口3Bの側の領域を搬送される汚泥の含水率は、既に低下しているので、この領域に存する汚泥の脱水効率を特に高め、出口3Bから排出される汚泥の含水率を充分に低下させる必要がある。このため、従来の固液分離装置においては、図10に示すように、固液分離部3の出口3Bの側に位置するスクリュー部分21Aのリード角を、8°乃至9°程の小さな値に設定し、これによって、このスクリュー部分21Aの存する固液分離部3内の領域の容積を狭くして、ここを搬送される汚泥に対して大きな圧力を加え、その汚泥に対する脱水効率を高めていた。ところが、このようにスクリューのリード角が小さくなると、スクリュー21によって押し動かされる可動板29の内周面の摩耗が著しくなり、その寿命が低下する欠点を免れない。その理由は以下のように考えられる。 ・・・ 【0039】 但し、上述のように、スクリュー部分21Aのリード角αを大きくすると、スクリュー部分21Aが位置する固液分離部3内の領域の容積が従来よりも大きくなり、汚泥に対する脱水効率が低下するおそれがある。そこで、本例の固液分離装置においては、前述のように、スクリュー部分21Aの軸部41の直径dが出口3Bの側へ向けて漸次大きくなっている。このため、スクリュー部分21Aが位置する固液分離部3内の領域の容積を小さくすることができ、これによって汚泥に対する脱水効率を、従来と同等ないしはそれ以上に高めることができる。・・・ ・・・ 【0041】 ・・・また、固液分離部3の出口側の領域に存する汚泥に加えられる圧力が大きくなりすぎると、微小ギャップgを通して排出される固形分の量が増大してしまう不具合が発生するので、この点をも考慮に入れて、スクリュー部分21Aのリード角αと、その直径dの大きさを設定すべきは当然である。 【0042】 図1に示した例では、処理対象物が固液分離部3に入り込む固液分離部3 の入口3Aよりも、処理対象物の移動方向下流側のスクリュー21の位置を スクリューの所定の位置S1とし、この所定の位置S1よりも、固液分離部3の出口3Bの側のスクリュー部分21Aの軸部41の直径dを、出口3 Bの側に向けて漸次大きく設定したが、スクリューの所定の位置S1は、 固液分離部3の入口3Aに対応するスクリュー位置であってもよい。この場 合には、入口3Aに対応するスクリュー位置よりも、出口3Bの側のスクリ ュー部分の軸部41の直径が、出口3Bの側に向けて漸次大きく形成される 。 【0043】 また、図1及び図7に示した例では、スクリュー部分21Aの軸部41の直径dが、そのスクリュー部分21Aの全長に亘って、固液分離部3の出口3Bの側に向けて漸次大きくなっているが、スクリュー部分21Aにおける一部の軸部の直径dが出口3Bに向けて漸次大きく形成されていてもよい。例えば、図9に示すように、スクリュー部分21Aのうちの出口3Bの近傍の部分21Bの軸部の直径を一定の大きさに設定することもできる。」 (オ)「【図1】 」 (カ)「【図3】 」 (キ)「【図7】 」 (ク)「【図9】 」 イ 甲2の記載事項 (ア) 「【0011】 図1は固液分離装置の一例を示す部分断面正面図である。この固液分離装置によって、液体を含む各種の処理対象物を固液分離することが可能であるが、ここでは、水分中に細かな繊維を含んでいて、フロック化されていない処理対象物、例えば凝集剤を添加しないパルプ原料やパルプ排水を脱水処理する場合について説明する。かかる処理対象物のほかにも、小サイズのフロックを含む原料や汚泥なども、図示した固液分離装置によって効率よく固液分離することができる。 【0012】 ここに示した固液分離装置は、入口部材1と、出口部材2と、これらの間に配置された固液分離部3とを有している。入口部材1は、上部が開口した矩形の箱状に形成され、その上部開口によって、水分中に繊維を含む処理対象物が流入する流入口4が構成されている。符号7は入口部材1の底壁を示す。また固液分離部3を向いた側の入口部材1の側壁5には開口6が形成され、さらに入口部材1の側壁5に対向したもう一つの側壁8には、横断面が矩形状に形成されたモータ支持部材9の一方の側壁10がボルトとナットによって固定され、モータ支持部材9の他方の側壁11に、減速機付きのモータ12が固定されている。 【0013】 入口部材1の両側壁5,8は下方に延び、その下端部が図示していないボルトとナットによって支持フレームのステー13,14にそれぞれ着脱可能に固定され、モータ支持部材9の両側壁10,11も下方に延び、その下端部が図示していないボルトとナットによって支持フレームのステー14に着脱可能に固定されている。 【0014】 出口部材2は、その上部と下部が開口し、水平断面が矩形状に形成されていて、固液分離部3を向いた側の出口部材2の側壁19と、これに対向する出口部材2の側壁20には、開口22,23がそれぞれ形成されている。側壁19,20は、下方に延び、その下端部が支持フレームのステー52,53に図示していないボルトとナットによって着脱可能に固定されている。また、側壁20に形成された開口23には、軸受部材18が配置され、その軸受部材18は、ボルト24とナット25によって側壁20に着脱可能に固定されている。出口部材2の下部開口は、脱水処理された処理対象物が排出される排出口26を構成している。 【0015】 一方、本例の固液分離部3は、小リング状の複数のスペーサ38によって軸線方向に互いに間隔をあけて配置されたリングより成る複数の固定板28と、軸線方向に隣り合う固定板28の間に配置されたリングより成る可動板29とを有している。図2は隣り合う2つの固定板28と、これらの固定板28の間に配置された可動板29と、スペーサ38の外観を示す分解斜視図であり、図3は固液分離部3の部分縦断面図である。複数の固定板28は、図1乃至図3に示すように同心状に配列され、軸線方向に隣り合う固定板28の間に4つのスペーサ38がそれぞれ配置されている。図1に示すように、固液分離部3は出口部材2の側が高くなるように傾斜して配置されているが、この固液分離部3を水平に配置することもできる。 【0016】 図示した固液分離装置においては、図2及び図3に示すように、各固定板28に、その半径方向に突出し、かつその周方向に配列された4つの耳部39が形成され、その各耳部39に取付孔32がそれぞれ形成されている。各耳部39に形成された各取付孔32と、軸線方向に隣り合う固定板28の間に配置された各スペーサ38の中心孔には、ステーボルト34がそれぞれ貫通して延び、さらにその各ステーボルト34は、図1に示すように、入口部材1の側壁5と、出口部材2の側壁19を貫通し、その各端部に形成された雄ねじにナット36,36Aがそれぞれ螺着されて締め付けられている。なお、図1においては、図を判りやすくするため、一部のステーボルトとスペーサなどの図示を省略してある。 【0017】 上述のようにして、複数の固定板28は、複数のステーボルト34と、ナット36,36Aとによって一体的に固定連結され、入口部材1と出口部材2に対して固定されている。各ステーボルト34は、複数の固定板28を貫通して延びていて、その複数の固定板28を連結する用をなす。スペーサによって互いに間隙をあけて配置された各固定板をわずかに遊動できるように組み付けることもできる。 【0018】 図3に示すように、各固定板28の間にそれぞれ配置された各可動板29の厚さTは、隣り合う2つの固定板間の間隙幅Gより小さく設定され、各固定板28の端面と、これに対向する可動板29の端面の間には、微小なギャップgが形成される。かかる微小ギャップgは、後述するように処理対象物から分離された水分、すなわち濾液を通過させる濾液排出ギャップを構成するものである。図1乃至図3に示した固液分離装置においては、可動板29の厚さTの方が、固定板28の厚さtよりも薄くなっているが、これらの厚さT,tは互いに等しくなっていてもよいし、逆に可動板29の厚さTのほうが固定板28の厚さtよりも厚くなっていてもよい。」 (イ) 「【0027】 次に、本例の固液分離装置の基本的な動作例を説明する。 【0028】 水分中に繊維を含有する処理対象物(図には示さず)は、図1に矢印Aで示すように、固液分離装置の入口部材1内に流入する。かかる処理対象物の含水率は、例えば99重量%程度である。このとき、スクリュー21はモータ12によって回転駆動されているので、入口部材1に流入した処理対象物は、矢印Bで示すように、入口部材1の側壁5に形成された開口6を通って、固定板28と可動板29の内部空間、すなわち固液分離部3の内部空間に、その軸線方向一端側の入口3Aから流入する。 【0029】 上述のようにして固液分離部3の内部に流入した処理対象物は、モータ12により回転駆動されたスクリュー21によって、図1に破線矢印Cで示したように、固液分離部3の軸線方向他端側の出口3Bへ向けて搬送される。このとき、処理対象物から分離された水分、すなわち濾液が、各固定板28と可動板29との間の微小ギャップg(図3)より成る濾液排出ギャップを通して固液分離部外に排出される。排出された濾液は、ステー13,52に固定された濾液受け部材40に受け止められ、次いで濾液排出管46を通って流下する。この濾液には未だ多少の固形分が含まれているので、当該濾液は他の処理対象物と共に再び固液分離装置に供給されて脱水処理される。 【0030】 ここで、図3に示す如く、スクリュー21の外径D6は、その回転が阻害されないように、固定板28の内径D3よりもわずかに小なる大きさに設定されている(D3>D6)が、このスクリュー21の外径D6は可動板29の内径D5よりも大きく設定されている。可動板29の内径D5がスクリュー21の外径D6よりも小さく設定されているのである(D6>D5)。このため、スクリュー21の回転によって、各可動板29は、スクリュー21から外力を受けて半径方向に押し動かされ、固定板28に対して積極的に運動する。このようにして、可動板29を駆動する専用の駆動手段を設けることなく、微小ギャップgに入り込んだ固形物を積極的に排出させることができ、そのギャップgに対するクリーニング効率を高めることができる。このように、回転するスクリュー21によって可動板29が押し動かされるように、各可動板29が形成されているのである。 【0031】 上述のように固液分離部3内の処理対象物の含水率が下げられ、含水量の減少した処理対象物が、図1に矢印Dで示すように、固液分離部3の軸線方向他端側の出口3Bから排出される。この出口3Bに対向して背圧板47が設けられ、出口3Bから排出される処理対象物が背圧板47に当り、出口3Bから排出される処理対象物の量が規制される。これにより、固液分離部内の圧力が高められ、処理対象物に対する脱水効率が高められる。図示した例では、背圧板47はスクリュー21の軸部41に、図示していないボルトによって位置調整可能に固定されている。固液分離部3から排出された水分量の減少した処理対象物は、下部の排出口26を通して下方に落下する。このようにして脱水処理された後の処理対象物の含水率は、例えば80乃至90重量%程度である。 【0032】 上述のように、固液分離装置は、その固液分離部内に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって、固液分離部の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、固液分離部の濾液排出ギャップを通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を固液分離部の出口から固液分離部外に排出させるように構成されている。 【0033】 以上説明した基本構成は、従来の固液分離装置と変わりはない。 【0034】 ここで、先にも示したように、隣り合う2つの固定版28の間の間隙幅Gから、その両固定板28の間に配置された可動板29の厚さTを引いた残りの間隙の幅を有効ギャップ幅と称することにする。図3に示した例では、微小なギャップgの幅の2倍の値が有効ギャップ幅である。また、隣り合う固定板28の間に複数の可動板29が配置されている場合には、間隙幅Gから、その複数の可動板29の全厚さを引いた残りの間隙の幅が有効ギャップ幅である。図7に示した例では、隣り合う2つの固定板28の間の間隙幅Gから、2つの可動板29の全厚さ2Tを引いた値が有効ギャップ幅であるから、固定板28と可動板29の各間の微小なギャップgの幅の3倍の値が有効ギャップ幅となる。 【0035】 その際、従来の固液分離装置においては、前述のように、固液分離部3の処理対象物移動方向上流側の領域における有効ギャップ幅が、処理対象物移動方向下流側の領域における有効ギャップ幅よりも大きく設定されていた。より具体的に示すと、図1に示した固液分離部3を、処理対象物移動方向Cに沿って上流側領域AR1と、中間領域AR2と、下流側領域AR3とに分けたとき、上流側領域AR1における有効ギャップ幅を例えば0.5mmとし、中間領域AR2の有効ギャップ幅を例えば、0.3mmとし、下流側領域AR3の有効ギャップ幅を例えば、0.15mmに設定するのである。このように構成すれば、先に説明したように、処理対象物を凝集剤によって大きなフロックに形成した場合に、その処理対象物を効率よく固液分離することができる。ところが、本例のように水分中に細かな繊維が多量に含まれていて、フロック化されていない処理対象物や、微小サイズのフロックを含む汚泥などの処理対象物を従来の固液分離装置によって固液分離しようとすると、その処理対象物中の大量の固形分が、固液分離部3の上流側領域AR1において濾液排出ギャップを通して固液分離外に流出してしまい、固液分離効率が大きく低下する。」 (ウ) 「【図1】 」 (エ) 「【図3】 」 ウ 甲3の記載事項 「■ヴァルート構造原理 脱水機本体はスクリューとろ過部で構成されています。ろ過部は、固定リングと遊動リングが、空隙を作りながら交互に積層し、ろ体を形成しています。リングの内径は81mm、外径は106mmで、リングに挿入されたスクリューの外径は86mmと、リングの内径より大きいためスクリューのエッジが常にリングを押して空隙を清掃し、目詰まりを起こさない機構となっています。 ろ過部の空隙は濃縮部で0.5mm、脱水部で0.3mm、0.15mmと排出口に向かうほど狭くなっています。スクリューピッチも濃縮部より脱水部に向かうほどが小さくなっていて容積式に圧力が生じるようになっています。さらに排出口の背圧板により内圧が高まり脱水されます。」(「ヴァルート構造原理」の項目) (2) 甲1に記載された発明 ア 前記(1)ア(ア)の【請求項1】の記載によれば、甲1には「固液分離装置」に係る発明が記載されており、当該「固液分離装置」は、「複数の固定板及び隣り合う固定板の間に配置された可動板を有する固液分離部と、該固液分離部を貫通して延びる少なくとも1本のスクリューとを具備し、回転するスクリューによって前記可動板が押し動かされるように、該可動板が形成されていると共に、固液分離部に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって固液分離部の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、固液分離部の濾液排出ギャップを通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から固液分離部外に排出させる固液分離装置において、処理対象物が前記固液分離部に入り込む固液分離部の入口よりも処理対象物の移動方向下流側のスクリューの位置をスクリューの所定の位置としたとき、該スクリューの所定の位置よりも、固液分離部の出口側のスクリュー部分の軸部の直径が、該出口の側に向けて漸次大きくなっている」部分を有しているものであることが分かる。 イ また、前記(1)ア(ウ)の【0018】の記載から、前記「固液分離装置」の固液分離部は、小リング状の複数のスペーサによって軸線方向に互いに間隔をあけて配置されたリングより成る複数の固定板と、軸線方向に隣り合う固定板の間に配置されたリングより成る可動板とを有していること、同【0021】の記載から、各固定板の間にそれぞれ配置された各可動板の厚さは、各固定板間の間隙幅より小さく設定され、各固定板の端面と、これに対向する可動板の端面の間には、微小なギャップが形成され、かかる微小なギャップは、濾液排出部を構成するものであること、及び、同【0026】の記載から、前記スクリューは、軸部と、この軸部に一体に形成されたらせん状の羽根部を有していることを、それぞれ理解することができる。 ウ 更に、前記(1)ア(エ)の【0035】、【0043】及び前記(1)ア(ク)の【図9】の記載から、前記「固液分離装置」は、前記固液分離部の出口の側に位置するスクリュー部分のうちの出口の近傍の部分の軸部の直径を一定の大きさに設定した部分を有することもできること、及び、同【図9】の記載から、前記アの「固液分離部の出口側のスクリュー部分の軸部の直径が、該出口の側に向けて漸次大きくなっている」部分及び上記「固液分離部の出口の側に位置するスクリュー部分のうちの出口の近傍の部分の軸部の直径を一定の大きさに設定した部分」の外周には、前記らせん状の羽根部が設けられていることを、それぞれ把握することができる。 エ 前記ア~ウによれば、甲1(特に【図9】の態様に着目した。)には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「複数の固定板及び隣り合う固定板の間に配置された可動板を有する固液分離部と、該固液分離部を貫通して延びる少なくとも1本のスクリューとを具備し、回転するスクリューによって前記可動板が押し動かされるように、該可動板が形成されていると共に、固液分離部に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって固液分離部の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、固液分離部の濾液排出ギャップを通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から固液分離部外に排出させる固液分離装置において、 処理対象物が前記固液分離部に入り込む固液分離部の入口よりも処理対象物の移動方向下流側のスクリューの位置をスクリューの所定の位置としたとき、該スクリューの所定の位置よりも、固液分離部の出口側のスクリュー部分の軸部の直径が、該出口の側に向けて漸次大きくなっている部分を有し、 前記固液分離部は、小リング状の複数のスペーサによって軸線方向に互いに間隔をあけて配置されたリングより成る複数の固定板と、軸線方向に隣り合う固定板の間に配置されたリングより成る可動板とを有し、各固定板の間にそれぞれ配置された各可動板の厚さは、各固定板間の間隙幅より小さく設定され、各固定板の端面と、これに対向する可動板の端面の間には、微小なギャップが形成され、かかる微小なギャップは、濾液排出部を構成するものであり、 前記スクリューは、軸部と、この軸部に一体に形成されたらせん状の羽根部を有し、 更に、前記固液分離部の出口側のスクリュー部分のうちの出口の近傍の部分の軸部の直径を一定の大きさに設定した部分を有し、 前記固液分離部の出口側のスクリュー部分の軸部の直径が、該出口の側に向けて漸次大きくなっている部分、及び、前記固液分離部の出口側のスクリュー部分のうちの出口の近傍の部分の軸部の直径を一定の大きさに設定した部分の外周には、前記らせん状の羽根部が設けられている、固液分離装置。」 (3) 本件発明1について ア 甲1発明との対比 (ア) 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「軸線方向に互いに間隔をあけて配置されたリングより成る複数の固定板」は、本件発明1における「互いに間隙をあけて軸線方向に配列される複数の固定リング」に相当し、甲1発明における「軸線方向に隣り合う固定板の間に配置されたリングより成る可動板」は、本件発明1における「この固定リング間の間隙に遊動可能に配置された遊動リング」に相当し、甲1発明における「複数の固定板及び隣り合う固定板の間に配置された可動板を有する固液分離部」「を貫通して延びる少なくとも1本のスクリュー」は、本件発明1における「これら固定リング及び遊動リング内に回転自在に配置されたスクリューコンベア」に相当し、甲1発明におけるスクリューの「軸部」及び「この軸部に一体に形成されたらせん状の羽根部」は、それぞれ本件発明1におけるスクリューコンベアの「スクリュー軸」及び「このスクリュー軸の外周に設けられる螺旋羽根」に相当するといえる。 (イ) また、甲1発明における「処理対象物が前記固液分離部に入り込む固液分離部の入口よりも処理対象物の移動方向下流側のスクリューの位置をスクリューの所定の位置としたとき、該スクリューの所定の位置よりも、固液分離部の出口側のスクリュー部分の軸部の直径が、該出口の側に向けて漸次大きくなっている部分」は、本件発明1の「基端側から他端側へ広がるテーパー部」に相当し、甲1発明の「前記固液分離部の出口側のスクリュー部分のうちの出口の近傍の部分の軸部の直径を一定の大きさに設定した部分」は、本件発明1の「このテーパー部の他端側に形成される円柱部」に相当するものということができる。 (ウ) そして、甲1発明の「前記固液分離部の出口側のスクリュー部分のうちの出口の近傍の部分の軸部の直径を一定の大きさに設定した部分の外周には、前記らせん状の羽根部が設けられている」構成は、本件発明1の「前記テーパー部及び前記円柱部の外周には、前記螺旋羽根が設けられ」る構成に相当するものである。 (エ) 前記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、 「互いに間隙をあけて軸線方向に配列される複数の固定リングと、 この固定リング間の間隙に遊動可能に配置された遊動リングと、 これら固定リング及び遊動リング内に回転自在に配置されたスクリューコンベアと、を備え、 前記スクリューコンベアは、スクリュー軸と、 このスクリュー軸の外周に設けられる螺旋羽根と、を有し、 前記スクリュー軸には、基端側から他端側へ広がるテーパー部と、 このテーパー部の他端側に形成される円柱部と、が形成されており、 前記テーパー部及び前記円柱部の外周には、前記螺旋羽根が設けられる、固液分離装置。」 である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。 ・相違点1:本件発明1では、「前記円柱部の長さは、前記スクリュー軸の全長の15~20%の範囲の長さに設定」(以下では、単に「比率設定」などということがある。)されているのに対して、甲1発明では、そのように設定されているかは不明である点。 ・相違点2:本件発明1では、「前記固定リング及び前記遊動リング内に前記テーパー部が配置された濃縮エリアと、前記固定リング及び前記遊動リング内に前記円柱部が配置された脱水エリアと、が形成されている」のに対して、甲1発明では、当該「濃縮エリア」及び「脱水エリア」に関する明示はない点。 イ 相違点についての検討 (ア) 相違点1について a あらかじめ前記相違点1に係る本件発明1の比率設定の意義について確認しておくと、本件明細書の段落【0031】に次の記載を認めることができる。 「【0031】 円柱部3bの長さは、スクリュー軸31の全長の15~20%の範囲に設定されている。 円柱部3bの長さを、スクリュー軸31の全長の15%以下に設定した場合には、処理対象物Pを圧縮する距離が短くなりすぎてしまい、固形分中の水分を有効に排出させることができない。その結果、固形分中水分率が高くなってしまう問題がある。 一方、円柱部3bの長さを、スクリュー軸31の全長の20%以上に設定した場合には、処理対象物Pを圧縮する距離が長くなりすぎてしまい、水分排出口SC3から固形分が排出されてしまう。その結果、固形分除去率が低くなってしまうという問題がある。」 この記載に照らすと、当該比率設定の意義は、固形分中水分率及び固形分除去率の改善にあるということができる。 b 一方、甲1には、前記比率設定に関する記載、すなわち、円柱部(甲1発明の「出口の近傍の部分の軸部の直径を一定の大きさに設定した部分」)の長さに関する直接的な記載はない。しかし、甲1には、次の記載を認めることができる。 ・「【0003】 ところで、この種の固液分離装置においては、その固液分離部の出口側の領域を移動する処理対象物の含液率は既に低下しているので、この領域に存する処理対象物の脱液効率を高め、含液率の低くなった処理対象物を固液分離部の出口から排出させる必要がある。このため、従来は、固液分離部の出口側の領域に位置するスクリュー部分のリード角を、8°乃至9°程度の小さな値に設定し、このスクリュー部分のリードの値を小さくすることによって、固液分離部の出口側領域の容積を狭くし、固液分離部の出口側領域に存する処理対象物に対して大きな圧力を加え、その処理対象物に対する脱液効率を高めていた。」 ・「【0035】 ・・・ 従来の固液分離装置においては、図10に示すように、固液分離部3の出口3Bの側に位置するスクリュー部分21Aのリード角を、8°乃至9°程の小さな値に設定し、これによって、このスクリュー部分21Aの存する固液分離部3内の領域の容積を狭くして、ここを搬送される汚泥に対して大きな圧力を加え、その汚泥に対する脱水効率を高めていた。・・・」 これらの記載は、固液分離部内の領域の容積を狭くすると汚泥に対する圧力が大きくなり、脱水効率が高まることを示唆するものといえる。 また、甲1には、次の記載もある。 ・「【0041】 ・・・ また、固液分離部3の出口側の領域に存する汚泥に加えられる圧力が大きくなりすぎると、微小ギャップgを通して排出される固形分の量が増大してしまう不具合が発生するので、この点をも考慮に入れて、スクリュー部分21Aのリード角αと、その直径dの大きさを設定すべきは当然である。」 この記載は、固液分離部の圧力が大きくなりすぎると、微小ギャップgを通して排出される固形分の量が増大し、固形分の除去効率が低下することを示唆していると解される。 以上を総合すると、甲1には、固液分離装置の固液分離部の容積と脱液効率及び固形分の除去効率との関係、すなわち、当該容積を狭くし汚泥に対する圧力が大きくなると、脱液効率が高まる一方、これが大きくなりすぎると、固形分の除去効率が低下してしまうという知見が示されているということができる。なお、このような知見は、固液分離装置の構造から当然に導かれる技術的事項であるということもできる。 c 前記の知見に照らして、甲1発明をあらためてみてみると、甲1発明の円柱部(「出口の近傍の部分の軸部の直径を一定の大きさに設定した部分」)付近の領域は、固液分離部において、汚泥の存在する容積が最も狭くなっており、他の領域と比べて汚泥に対する圧力が大きくなっているところであるから、当該円柱部が長くなると脱液効率は高まり、これが長すぎると固形分の除去効率が低下してしまうことは、前記の知見あるいは甲1発明のスクリュー構造などからみて、当然の帰結というべきである。 そうである以上、甲1発明の円柱部の長さをなにがしかの値に設定するにあたり、上記脱液効率及び固形分の除去効率を考慮して、その値を最適化することに格別の創意を認めることはできない。 また、甲1発明における当該円柱部の長さやテーパー部の長さは、固液分離装置の全体寸法が定まり、そのスクリュー軸の全長が決定された後に設計されるものであるから(当該円柱部の長さの絶対値を先んじて決定し、これを前提として装置全体が設計されるわけではないという意味)、結果的に、当該円柱部の長さは、当該全長に対する長さ、すなわち当該全長に対する相対的な数値として設計されるものと解される。実際、甲1の【0042】によれば、テーパー部(及び円柱部)を有するスクリュー部分21Aの開始位置を定める所定の位置S1は、入口側からの絶対的長さなどではなく、「処理対象物の移動方向下流側のスクリュー21の位置」といった、スクリュー軸の全長に対する相対的な位置として定められている。 そして、上記のとおり、甲1発明の円柱部の長さの設定(最適化)において考慮される脱液効率及び固形分の除去効率は、前記aにおいて確認した本件発明1の比率設定の意義に係る固形分中水分率及び固形分除去率にほかならない。 以上を併せ考えると、当該甲1発明における円柱部の長さは、既定値であるスクリュー軸の全長に対する比率として設定される類いのものであり、その比率設定と、本件発明1における比率設定とは、軌を一にする観点に従って行われるものである上、その最適化が、種々の実験を重ねても実現できないとも考えにくいから、甲1発明における当該比率設定の最適化の結果は、本件発明1と同程度に落ち着くと解するのが合理的である。 d 被請求人は、答弁書において、乙3(実験成績証明書)及び乙4(試算書)を論拠に、本件発明1における比率設定による格別な効果(甲1発明に対する有利な効果)を主張する(答弁書5~8頁)。 しかしながら、前記cのとおり、本件発明1における比率設定と甲1発明における円柱部の長さの設定とは、軌を一にする観点により行われるものであるから、それらの設定により期待される定性的効果に違いを認めることはできない。 また、当該比率設定による臨界的効果(当該比率設定内における定量的な効果)についてみても、本件明細書には、上記の定性的効果に関する記載はその段落【0031】に認められるも、当該比率設定に係る具体的な実施例などは見当たらないから、当該比率設定内において、当業者が甲1発明などからは予想し得ないような固形分中水分率及び固形分除去率に関する顕著な定量的な効果を認めることはできない。この点は、乙3及び乙4の存在に左右されるものではない。すなわち、当該比率設定による定性的効果は、上記のとおり、既に甲1発明などから予測の範疇であるから、当該比率設定内であれば、固形分中水分率及び固形分除去率において改善された相応の数値が見込まれることは当然のことであり、このことを単に示す乙3の追試実験の結果は容易想到性の判断に影響しない。仮に、当該追試実験の結果が、当該相応の数値の量的な顕著性を示すとしても、それは本件明細書に記載されていなかった事項であり、そのような結果の補充は、当初から実験を重ねてそのデータを明細書に記載しているような第三者との公平の観点からも許容できない。その上、そもそも乙3の追試実験がどのようにして行われたのかについては、その実験の概要を説明した乙5をみても明らかではないから、当該追試実験の結果自体、信憑性に乏しいものといわざるを得ない。さらにいうと、本件発明1の脱水エリアにおける固形分中水分率及び固形分除去率は、その内圧により変動するものであって、当該内圧への影響因子としては、上記比率設定以外にも、円柱部直径、微小ギャップ長、リード角などの諸因子が想定されるし、ほかにもテーパー部の長さやテーパー角度などにも依拠するものと考えられることから、本件発明1における比率設定は、それらの諸因子が所定の値にある場合を前提とするものと解すべきであり(それら諸因子の数値が変更されれば、それに応じて、当該比率設定の最適数値範囲も自ずと変化してしまうという意味)、そのような前提を欠く本件発明1において、当該比率設定の数値自体に特段の意味を見いだすことはできない。 以上の点にかんがみると、本件発明1における比率設定には、甲1発明などからは予想し得ない格別の定性的効果はもとより定量的効果も認めることはできないから、上記被請求人の主張を採用することはできない。 e 以上のとおりであるから、前記相違点1に係る本件発明1の構成は、容易想到の事項というべきである。 (イ) 相違点2について a はじめに、前記相違点2に関する用語の意味について確認しておくと、本件明細書の段落【0020】によれば、本件発明1における「前記固定リング及び前記遊動リング内に前記テーパー部が配置された濃縮エリア」は、大まかに処理対象物の濃縮を行うエリアをいい、「前記固定リング及び前記遊動リング内に前記円柱部が配置された脱水エリア」は、処理対象物をより強く圧搾し、脱水するエリアを指すことが分かる。 b 一方、甲1発明の「固液分離部」における、「軸部」の直径が出口の側に向けて漸次大きくなっている部分が配置されたところは、固定リング及び遊動リング内にテーパー部が配置されたエリアである。 そして、甲1の段落【0039】によれば、上記「固液分離部」は、固液分離部内の汚泥の含水率が出口に近づくに従って低下するのに合わせて、スクリュー部分の軸部の直径を出口に近づくに従って大きくすることで、固液分離部内の汚泥に対する脱水効率が出口に近づくに従って高められるところであるから、このエリアは、脱水効率が出口に近づくに従って高められ、相対的に、大まかに処理対象物の濃縮を行うエリアといえることから、本件発明1における「前記固定リング及び前記遊動リング内に前記テーパー部が配置された濃縮エリア」に相当するものである。 また、甲1発明の「固液分離部」における、「軸部」の直径が一定の大きさに設定された部分が配置されたところは、固定リング及び遊動リング内に円柱部が配置されたエリアであって、このエリアは、前記甲1の段落【0039】によれば、脱水効率が最も高められた出口近傍のエリアであり、処理対象物をより強く圧搾し、脱水するエリアといえることから、本件発明1における「前記固定リング及び前記遊動リング内に前記円柱部が配置された脱水エリア」に相当するものである。 c そうすると、甲1には、前記「濃縮エリア」及び「脱水エリア」が実質的に記載されているといえるし、この相違点は結局、どのエリアをどのように呼称するかといった呼称の問題にすぎないから、前記相違点2は、実質的な相違点であるとはいえない。 ウ 小活 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲1の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 本件発明2について ア 本件発明2は、本件発明1における円柱部の直径についてさらに特定を加えるものであり、本件発明2と甲1発明とは、前記相違点1及び2に加えて、以下の点で相違している。 ・相違点3:本件発明2では、円柱部の直径は、スクリューコンベアの螺旋羽根の外接円の直径の80~90%の範囲の大きさに設定されているのに対して、甲1発明では、円柱部の直径と螺旋羽根の外接円との比率は不明である点。 イ そこで、前記相違点3について検討すると、前記(3)イ(ア)bに記載したように、甲1の段落【0035】及び【0041】には、固液分離部内の領域の容積が狭いと汚泥に対する圧力が大きくなって脱液効率が高まるが、圧力が大きくなりすぎると、排出される固形分の量が増大し、固形分の除去効率が低下することが示唆されている。さらに、甲1発明において、円柱部の直径を調節することにより、上記容積が変動し、もって円柱部の周囲の領域の圧力が調節できることは、その構造から明らかである。 ウ そうすると、甲1発明において、所望する脱液効率や固形分の除去効率に応じて、円柱部の直径を最適化することは、当業者による通常の創作能力の発揮に過ぎないというべきである。 また、本件明細書の段落【0030】をみても、円柱部の直径をスクリューコンベアの螺旋羽根の外接円の直径の80~90%の範囲の大きさに設定することの効果は、固形分中水分率を高くすることなく、固形分除去率の低下を防ぐ、という程度にとどまるから、前記甲1の記載事項から当業者であれば予測し得る範疇のものである。 エ 以上によれば、本件発明2は、甲1発明及び甲1の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5) 本件発明4について 本件発明4は、本件発明1などに対して、さらにスペーサーに関する限定を加えたものであるが、甲1発明の小リング状の複数の「スペーサ」は、本件発明1の「固定リング」の間に設けられる「スペーサー」に相当するものである。そして、甲1発明は「リングより成る複数の固定板」を「軸線方向に互いに間隔をあけて配置」するものであるところ、「各固定板の間にそれぞれ配置された各可動板の厚さは、各固定板間より小さく設定され、各固定板の端面と、これに対向する可動板の端面の間には、微小なギャップが形成」されるものであるから、甲1発明の「スペーサ」の厚さは、「可動板」の厚さよりも当然に厚く形成されていると認められる。 そうすると、甲1発明は、本件発明4に係るスペーサーに関する限定事項を既に具備するものであるといえる。 したがって、本件発明4は、甲1発明及び甲1の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6) 本件発明5について ア 本件発明5は、本件発明1などに対して「微小ギャップ」に関する限定を追加するものであり、当該「微小ギャップ」は、甲1発明の「微小なギャップ」に相当するところ、本件発明5と甲1発明とは、前記相違点1及び2に加えて、以下の点で相違している。 ・相違点4 本件発明5においては、脱水エリアの微小ギャップは、濃縮エリアの微小ギャップよりも幅狭に設定されているのに対して、甲1発明においては、脱水エリアの微小ギャップと濃縮エリアの微小ギャップの幅の関係が不明である点。 イ 前記相違点4について検討する。 甲2の段落【0034】、【0035】には、複数の隣り合う「固定板」の間に配置された「可動板」を有する「固液分離部」を具備した「固液分離装置」において、隣り合う2つの「固定板」の間の間隙幅から、その両「固定板」の間に配置された「可動板」の厚さを引いた残りの間隙の幅を「有効ギャップ幅」としたとき、従来の「固液分離装置」においては、処理対象物を凝集剤によって大きなフロックに形成した場合に、その処理対象物を効率よく固液分離するために、「固液分離部」の「処理対象物移動方向上流側の領域」における「有効ギャップ幅」を、「処理対象物移動方向下流側の領域」における「有効ギャップ幅」よりも大きく設定していたことが記載されている。 また、甲3には、「固定リング」と「遊動リング」とを空隙を作りながら交互に積層した「ろ過部」を備える「脱水機」において、「ろ過部」の空隙を、「濃縮部」で0.5mm、「脱水部」で0.3mm、0.15mmと排出口に向かうほど狭くすることが記載されている。 これら甲2の「固液分離装置」及び甲3の「脱水機」は、本件発明5の「固液分離装置」に相当し、甲2の「固液分離部」及び甲3の「ろ過部」は、本件発明1の濃縮・脱水エリアに相当するところであるから、前記甲2及び甲3に示されるように、「固定リング」と「遊動リング」との間に「微小ギャップ」が形成されている「濃縮エリア」及び「脱水エリア」を具備した「固液分離装置」において、「脱水エリア」の「微小ギャップ」を、「濃縮エリア」の「微小ギャップ」よりも幅狭に設定することは、本件特許の出願日当時における周知技術といえるものである。 そうすると、甲1発明において、このような甲2、3記載の周知技術を採用することは当業者が容易になし得るものであって、そうすることによる格別の効果も認められない。 ウ 以上によれば、本件発明5は、甲1発明及び甲1~3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7)  無効理由1についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1、2、4、5は、甲1発明及び甲1~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1、2、4、5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当するため、無効とされるべきものである。 2 無効理由2(公然実施発明に基づく新規性欠如)について (1)  請求人の主張 請求人の主張する無効理由2は、要するに、本件発明は、本件特許の出願日(平成29年(2017年)8月23日)より1年以上も前に、請求人が住友化学株式会社(以下、「住友化学」という。)の愛媛工場に納入し設置した、ヴァルート脱水機「スクリューE搭載ES-354」と同一の発明であるから、本件発明は、特許法第29条第1項第2号にいう「特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明」に該当するというものである。 (2) 甲11の1~甲17、甲19~甲24、甲33、甲34の記載事項 甲11の1~甲17、甲19~甲24、甲33、甲34の記載事項のうち、主要なところを抜粋して、以下摘記する。 ア 甲11の1の記載事項 「発行日 2014年07月25日 名称    納入仕様書 客先名称  中村機械商事株式会社 様 納入先名称 住友化学株式会社 愛媛工場 様 機器名称  ヴァルート脱水機ES-354-TA-JP(仕様変更)」(1頁) 「機器仕様書 ヴァルート脱水機ESシリーズ 型式 ES-354-TA-JP型 ・・・ 項目         仕様 方式         多重円板外胴型スクリュープレス方式 ・・・ 標準据付寸法     L5493×W2760×H2249[mm] 総電力        8.95[kW] ・・・ シリンダーユニット 径×長 φ350×2764[mm] 有効長L=1785[mm] 本数  4[本] 材質  スクリュー、支柱類:SUS304 遊動、固定リング:SUS304」(3頁) イ 甲11の2の記載事項 「御見積書 中村機械商事株式会社 御中 2014年8月27日 ・・・ 件  名:ヴァルート脱水機 納入場所:住友化学株式会社 愛媛工場様 ・・・ 品名              型式 ヴァルート脱水機 ES Series  ES-354-TA-JP型」 ウ 甲11の3の記載事項 「注文書 注文番号 J2-6160 注文月日 2014年9月1日 ・・・ 引合先 住友化学株式会社 受渡期日 2014年10月20日 受渡場所 住友化学(株)愛媛工場 ・・・ 品名及び仕様 ヴァルート脱水機ES Series 型式:ES-354-TA-JP型(自動制御仕様)」 エ 甲11の4の記載事項 「発行日 平成26年10月24日 ・・・ 保証書 ・・・ 製品名/Product Name : ヴァルート脱水機/・・・ 型式/Model : ES-354-TA-JP ・・・ 納入先名/Client : 住友化学株式会社 愛媛工場 保証開始日/Starting Date : 11/05/2014」 オ 甲12の記載事項 「住友化学株式会社 愛媛工場向け ES354 改修 出張報告書 ・・・ 1. 出張者:  国内営業Gr 野藤・・・ ・・・ 設計Gr 木村(1名)・・・ 2.出張期間: 2015年3月22日(日)~2015年3月27日(金) 3.出張先:  住友化学株式会社 愛媛工場(愛媛県新居浜市)」(1頁) 「7.今後の予定 詳細な分析結果がまだ出ていないが,脱水機の能力が未達であるため以下の対策が必要だと考えられる. ■シリンダー組み換え 〇1(当審注:丸囲みの1のこと。以下同じ)スクリューを標準から高圧縮スクリュー仕様に交換する (⇒含水率を下げるため) 〇2今回濃縮部〇2の半分に組み込んだt0.5のワッシャーを取り外す (⇒SS回収率が予想以上に悪かったためクリアランスを元に戻す) ⇒改修工事の日程としては,部材製作等の関係により5月中旬以降に予定している (現在客先とは日程調整中) 〇1については交換作業すると確定(スクリュー製作進行済み),〇2については分析値詳細が出てから判断する ・・・ ■スクリュー、固定リングの腐食?について ・・・」(3頁) 「 」(5頁) カ 甲13の記載事項 「住友化学株式会社 愛媛工場向けES354改修 出張報告書 ・・・ 出張者 野藤 ・・・ 日時  2015年5月31日(日)~6月5日(金) 場所  住友化学 愛媛工場(愛媛県新居浜市) ・・・ 1.作業内容 ・・・ 1.3 高圧縮型スクリューと交換」(1頁) 「3.今後の予定 3.1新たなスクリューを考案する →改修工事後の社内打ち合わせにより以下のスクリューを考案する ・テーパー部をさらに太く長くさせたスクリュー(内圧を高めるため) ・二条スクリュー 以上のスクリュー案を考案し再度打ち合わせ後製作など進めていく。 4.所見 今回、スクリューを高圧縮型に交換したことで大きな変化を期待していたが残念ながらそれほど能力的に変化は見られなかった。濃縮部のスリットをt1.5に変えたことで濾過面積が広がり(約1.3倍)、ろ液の抜けは最初に比べてかなり向上した(ほとんど一番給泥側のスパンで抜ける)。しかし含水率の感触的には80%以下という数値には及んでいない。その原因として考えられるのは、そもそもシリンダー内の内圧が足りないという点、内圧が逃げている点などが考えられる。このことから内圧を高めるスクリュー形状をいくつか考案しそれぞれ検証していき、一つ一つ要因を潰していく必要があると感じた。」(2頁) キ 甲14の記載事項 「打ち合わせ議事録 実施日 2015年6月9日 納入先名称 住友化学株式会社 愛媛工場 型式 ES-354-TA-JP型 ・・・ 打ち合わせの内容 ■現在の状況 お客様に保証している脱水機の能力(含水率)が出ていない ■保証能力値 含水率80%以下、・・・ SS回収率90%以上 ■現状の含水率 含水率82%~85%(処理量とSS回収率はクリア)」(1頁) 「■今後の対策 スクリュー変更でシリンダー内圧を高める 以下スクリュー案 〇1 脱水部のテーパー部を太くし内圧を高めたスクリュー(菊池さん案) 〇2 二条スクリュー(野藤さん案)」(2頁) ク 甲15の記載事項 「住友化学株式会社 愛媛工場向け ES354改修 出張報告書 ・・・ 出張者 野藤 ・・・ 日時  2015年8月2日(日)~8月7日(金) 場所  住友化学 愛媛工場(愛媛県新居浜市) ・・・ 1.作業内容 1.1新スクリュー(3本)と交換 1.2スクリュー比較実験(保証能力値は・・・含水率80%以下) 1.2.1 スクリュー4本運転(※添付資料を参照) 1.2.2 スクリューB,Cそれぞれ1本運転 (4本運転の結果、含水率が良かったスクリューB,Cをそれぞれ1本運転を行った) 1.3 元のスクリュー (GS仕様)再度交換 1.4 再度運転調整 2. 改修結果 ⇒スクリューCが含水率等の点から一番良好であった。 ・・・ 3.今後の予定 ⇒次回、改修日程が10/19~10/23の予定で行動していく。 ・・・ 改修内容については現状予定しているのは以下の通りである。 ○1スクリューCを元にしたスクリューに4本交換(スクリューは更に向上させたい)」(1、2頁) ケ 甲16の記載事項 「 」 コ 甲17の記載事項 「打ち合わせ議事録 実施日 2015年8月21日 納入先名称 住友化学株式会社 愛媛工場 型式 ES-354-TA-JP型 ・・・ 打ち合わせの内容 ■スクリューの比較実験の結果 新スクリュー3案(スクリューA,B,C)で比較実験を行った結果、 スクリューC(12巻+円筒状)が一番良好な結果を得た ・・・ ・・・ ■次回行なう対策案 ・・・ ○3スクリューCを元にして4本製作→採用 ⇒スクリューCからさらに改良し、円筒部をさらに150mm延ばし、テーパー部はそのまま給泥側にずらすイメージ。 溶射については、従来のものを溶射しそのうえで封孔処理をする。」 サ 甲19の記載事項 「打ち合わせ議事録 実施日 2015年10月30日 納入先名称 住友化学株式会社 愛媛工場 型式 ES-354-TA-JP型 ・・・ 打ち合わせ内容 住友化学株式会社 愛媛工場において2015.10.19~23の間に改修工事と運転調整を行った。 ■改修工事内容 〇1 スクリュー4本交換 ⇒前回(2015.08.03~07)行ったスクリュー比較実験より結果が良好であったスクリュー(C07454-00-0)を元に最終仕様のスクリュー(C07492-00-0)を4本製作し交換作業を行った。・・・ ・・・ ■今後の対応 電流値とSS回収率悪化の対策として、以下の案が出た。 ○1 前回スクリュー比較実験時に一番結果が良好であったスクリュー(C07454-00-0)を試してみる。 ⇒前回の時は添加ポイントを増やしていない状態で含水率がもう少しという状態(81.8%)であったため、添加ポイントを増やしフロック状態が良くなった現状なら保証値クリアできるのではないかとの算段から) ・・・ ○1⇒採用 11月に1本だけスクリュー交換して試す。 ただし溶射をしていないため、業者に納期が間に合うか確認したうえで仮の溶射をしてもらう (打ち合わせ後、11/11or12に工場納品予定) ・・・ そして○1の結果が良好であった場合、その仕様でスクリューを製作する。」(1頁) 「決定事項 今後のスケジュール 11/16~20 前回スクリュー比較実験時に一番結果が良好であったスクリュー(C07454-00-0)を1本交換し試運転」(2頁) シ 甲20の記載事項 「2015年12月14日 ・・・ 報告書 ・・・ 1.対象機器等 納入先名称 住友化学株式会社 愛媛工場 殿 機器形式  Z-613(ES-354-TA-JP)型 内容    Z-613 検収報告」(1/9頁) 「2.試運転報告 2.1 背景 2015年10月19日のスクリュー更新によって、これまで課題であった含水率の保証値をクリアするも、SS回収率が悪化し、保証値を下回ったため、再度スクリューを更新し、検証を行いました。 ・・・ 2.2 作業内容 Z-613(ES-354-TA-JP型)脱水機において、2015年11月16日~19日の期間に8月にテストしたスクリューEとの交換作業を行い、スクリューEの再度検証を行いました。 ・・・ 尚、前回の報告書のスクリューNoに変更があるため下記します。 ・・・ 2.3 結論 スクリューEで、含水率,SS回収率,処理量いずれの保証値もクリアしました。 ・・・ 2.3.1考察 ・・・ スクリューFは、内圧が高いタイプのため、制御範囲が狭く、不適と判断しました。」(2/9頁) 「 」(5/9頁) 「 」(9/9頁) ス 甲21の記載事項 「 」(1頁) 「 」(2頁) セ 甲22の記載事項 「 」(1頁) 「 」(2頁) ソ 甲23の1の記載事項 「注文書 注文月日 2016年2月8日 ・・・ 引合先  住友化学株式会社 受渡期日 2015年5月12日 受渡場所 愛媛県新居浜市惣開町5-1 住友化学(株) 愛媛工場 環境管理課 現地 品名及び仕様 Z-613 脱水機スクリュー溶射費用」 タ 甲23の2の記載事項 「発注書  発注日 2016/02/17」 「<品名>」 「脱水スクリュー350型(12山+円筒状テーパー)(溶射+封孔処理)」 「<品目説明>」 「ES-350型」 「<数量>」 「4.00個」 「<納期>」 「2016/4/27」 「<購買注記> C07454-00-1」 チ 甲23の3の記載事項 「請求書(兼出荷案内書)・・・ 注文月日 2016年2月8日 請求日 2016年6月29日 ・・・ 引合先  住友化学株式会社 受渡期日 2015年5月12日 受渡場所 愛媛県新居浜市惣開町5-1 住友化学(株) 愛媛工場 環境管理課 現地 品名及び仕様           数量 Z-613 脱水機スクリュー溶射費用 4本」 ツ 甲23の4の記載事項 「作業依頼・確認・報告書」 「 」 テ 甲23の5の記載事項 「サービスオーダ確認レポート」 「 」 ト 甲24の記載事項 摘記は省略するが、甲24には、住友化学・愛媛工場へのヴァルート脱水機ES-354の納入に関する一連の経緯について、野藤の陳述内容(最終的に、溶射及び封孔処理が施されたスクリューE搭載ES-354は、2016年5月に住友化学に納入され運転開始されたことなど)が記載されている。 ナ 甲33の記載事項 「 」(9頁) ニ 甲34の記載事項 「 」 「 」 (3) 検討 前記(1)の請求人の主張について検討をする。 請求人が主張する無効理由2(公然実施発明に基づく新規性欠如)を、理由あるものとして認めるためには、(i) 「スクリューE搭載ES-354」が公然実施をされた発明(以下、「公然実施発明」ということがある。)であること、(ii) 当該公然実施が本件特許出願前に日本国内又は外国においてされたこと、及び、(iii) 本件発明の構成が「スクリューE搭載ES-354」の構成と同一であること、の三つの要件を満足する必要があるから、以下、順に検討をする。 なお、当該「スクリューE搭載ES-354」の納入経緯などを示す証拠が複雑であるため、事前に前記(2)における証拠記載事項について整理した上で、上記の三点について検討を進めるが、被請求人からは、上記(ii)及び(iii)についての具体的な釈明はない。 ア 前記(2)の記載事項から認定できる事実の整理 前記(2)において摘記した甲11の1~甲34の記載事項を整理すると、請求人のいう「スクリューE搭載ES-354」が住友化学愛媛工場に納入された経緯(下記(ア)~(ナ))、及び、その基本構造(下記(ニ)、(ヌ))について、次のとおり認定することができる。 (ア) 請求人は、2014年9月に住友化学の指定商社(中村機械商事株式会社、以下「中村機械商事」という)から受注して、2014年11月に住友化学・愛媛工場にヴァルート脱水機ES-354-TA-JP型を納入した(甲11の1~4)。 ヴァルート脱水機ES-354-TA-JP型は、「多重円板銅型スクリュープレス方式」であり、シリンダーユニットは、径「φ350×2764mm」、長さ「有効長L=1785mm」であり、スクリューは4本である(甲11の1)。 なお、審判請求書によると、ESシリーズにおいて、350mm径の脱水スクリューを搭載するタイプは、ES351からES354までの4つのモデルがあり、機種名末尾の数字は脱水スクリューの搭載本数を示している(審判請求書64、65頁)。 (イ) 2015年3月までに「ES-354」の試運転が行われ、2015年3月22日~27日には、現場にて改修作業を施したが、保証性能を達成できなかった(甲12)。この時点において、ES354に搭載されていたスクリューは、「スクリューA」である(甲20)。 (ウ) 2015年5月31日~6月5日に、「スクリューA」を、4本とも高圧縮型スクリューである「スクリューB」と交換した(甲13、20)。 (エ) 2015年6月9日に住友化学愛媛工場に納入したES-354の能力が不足していることについて、請求人の社内で対策会議が行われた(甲14)。 (オ) 前記2015年6月の会議の後に、脱水部のテーパー部を太くする等によりシリンダー内圧を高めるためにスクリュー変更が行われることになった(甲14)。 (カ) 2015年8月2~7日に、住友化学愛媛工場において、新スクリュー(3本)に変更して比較実験を行い、その結果、スクリューCが含水率等の点から一番良好な結果が得られた。そして、2015年10月に「スクリューCを元にしたスクリューに4本交換」することが予定された(甲15)。 (キ) 2015年6月24日付けの「スクリューC」の図面(甲16)には、「TITLE 脱水スクリュー(12山+円筒状テーパー)(溶射なし)」、「MODEL 350型 共通」、「DRAWING No. C07454-00-0」と記載されており、この「スクリューC」は、円柱部を備えたスクリューであり、スクリュー軸の全長は2730mm、羽根部の長さは2000±3mmである。 (ク) 2015年8月21日に対策会議が行われ、新スクリュー3案(スクリューA、B、C)で比較実験を行った結果、スクリューC(12巻+円筒状)が一番良好な結果を得たことから、今後、スクリューCを元にして、円筒部をさらに150mm延ばしたスクリューを試作することが決定された(甲17)。 なお、上記「スクリューC」は、その後、「スクリューE」と呼称が変更された(甲20)。 (ケ) 2015年10月19~23日に住友化学愛媛工場において、ES-354-TA-JP型脱水機に関して、改修工事と運転調整が行われた。前回(2015年8月3日~7日)に行ったスクリュー比較実験により結果が良好であったスクリュー(C07454-00-0)を元にスクリュー(C07492-00-0)を4本製作して交換作業を行ったところ、保証性能値に対して、含水率と処理量はクリアしたが、SS回収率が前回より悪化した。そこで、前回スクリュー比較実験時に一番結果が良好であったスクリュー(C07454-00-0)を一本交換して試運転を行うこととされた(甲19)。 なお、上記「スクリュー(C07454-00-0)」及び「スクリュー(C07492-00-0)」は、それぞれ甲20の「スクリューE」及び「スクリューF」である。 (コ) 2015年11月16~19日にスクリューF4本のうち、1本をスクリューEに変更して試運転を行った(甲20)。 (サ) スクリューEは、含水率、SS回収率及び処理量のいずれの保証値もクリアし、最終的にES-354-TA-JP型の脱水機のスクリューとして採用された(甲20 5/9、9/9頁)。 そして、スクリューEは、羽根枚数12+円筒形状の仕様であり、スクリューの全長は2730mm、円筒の長さは330mm、テーパー最大径(すなわち、円柱径)はφ250mmである(甲20 9/9頁)。 (シ) 2015年6月24日付けのスクリューの図面(甲21)には、「TITLE 脱水スクリュー(12山+円筒状テーパー)溶射なし)」、「MODEL 350型 共通」、「DRAWING No. C07454-00-0」と記載されている。1頁の図面及び2頁の詳細図によると、このスクリューは、円柱部を備えたスクリューであり、スクリュー軸の全長は2730mm、羽根部の長さは2000±3mm、円柱部の直径及び長さは、それぞれ250mm及び330mmである。 (ス) 2015年6月24日付けのスクリューの図面(甲22)には、「TITLE 脱水スクリュー(12山+円筒状テーパー)(溶射+封孔処理)」、「MODEL 350型 共通」、「DRAWING No. C07454-00-1」と記載されている。また、甲22の左上欄には、「NOTICE」の欄に「溶射と封孔処理指示追加」と記載され、「DATE」の欄に「2016.1.28」と記載されている。そして、1頁の図面及び2頁の図面によると、このスクリューは、前記甲21のスクリューと同一の寸法である。 (セ) 前記(サ)~(ス)のとおり、ES-354のスクリューとして、「スクリューE」(C07454-00-0)を最終的に採用することが決定されたが、2016年1月に溶射及び封孔処理することが指示された。この溶射及び封孔処理された「スクリューE」(C07454-00-1)は、処理前のものとスクリュー軸や円筒などの寸法を含む構造は同じである。 (ソ) 中村機械商事による「Z613 脱水機スクリュー溶射費用」の注文書(甲23の1)の注文月日は、2016年2月8日であり、この「Z613」は、「ES-354-TA-JP型」を意味すると認められる(甲20 1/9、2/9頁)。 なお、上記注文書には、「受渡期日 2015年5月12日」とあるが、「受渡期日 2016年5月12日」の誤記である。 (タ) 請求人からサイクロフェーシング株式会社に対する「発注書」(甲23の2)には、脱水スクリュー350型(12山+円筒状テーパー)のスクリュー4本について溶射及び封孔処理を依頼したことが記載され、「ES-350型」及び「C07454-00-1」との記号からみて、当該スクリューは、「スクリューE」のことである。 (チ) 請求人から中村機械商事に対する「請求書」(甲23の3)では、「注文月日 2016年2月8日」、「請求日 2016年6月29日」、「受渡期日 2015年5月12日」(2016年の誤記と認められる。)とし、「Z-613 脱水機スクリュー溶射費用」が請求された。 (ツ) 株式会社新開トランスポートシステムズの「作業委託」書(甲23の4)では、請求人の第2工場(積込 2016年5月6日(金))から住友化学愛媛工場(荷卸 2016年5月9日(月))への脱水スクリュー4本の運送が委託された。 (テ) 請求人による「サービスオーダー確認レポート」(甲23の5)によると、ヴァルート脱水機ES-354―TA-JPに搭載する溶射、封孔処理された4本の「脱水スクリュー350型(12山+円筒状テーパー)」は、2016年5月12日に住友化学・愛媛工場に納入された。 (ト) 前記の「スクリューE」が2016年5月に住友化学に納入された経緯は、甲24の陳述書における野藤克俊の陳述に合致するものであり、これによっても裏付けられている。 (ナ) また、甲24の陳述書によると、2016年5月に住友化学・愛媛工場において、溶射及び封孔処理を施された「スクリューE」は、「ES-354」に搭載され、2016年5月以降において、住友化学愛媛工場において実際に運転された。 (ニ) 甲33(2016年10月発行)は、請求人により発行された「汚泥処理関連装置」のカタログである。甲33の9頁には、「汚泥脱水機ヴァルートESシリーズ」と記載され、仕様一覧としてESシリーズの型式及びその機械寸法、総電力並びに重量が列挙されているところ、その一型式として「ES-354」が記載されているから、「ES-354」の基本構造は、ESシリーズとして共通のものである。 (ヌ) 甲34(2005年7月発行)は、請求人により発行された「ヴァルート脱水機ESシリーズ」のカタログであり、「ES-シリーズ」の基本構造について記載されている。甲34には、「ES-354」の記載はないが、甲33、34によれば、この「ES-354」は、2005年7月以降2016年10月までに販売開始されたものである(請求人の主張によると、2013年である(審判請求書80頁))。そして、甲33によれば「ES-354」は、従来のESシリーズの機種を大型化し処理能力を向上されたものであるが、同一シリーズであるからその基本構造は他のES-シリーズと共通するものである。 イ 「 (i) 「スクリューE搭載ES-354」が「公然実施発明」であること」について (ア) この点に関する請求人の具体的な論拠は、次のとおりである(審判請求書93頁)。 「本件については、請求人と住友化学との間で、納入したES-354に関して秘密保持契約は締結されていなかった。請求人から住友化学に交付した、2014年7月25日付け納入仕様書(甲11の1)や2015年12月14日付け「報告書」(甲20)などにも、ES-354及びスクリューEに関して、秘密情報が含まれることを示す記載は一切ない。 ES-354及びスクリューEの構造及び形状については、その構造・形状が秘密として管理されていたという状況にはなく、秘密保持義務を負わない住友化学の従業員が、これらの構造及び形状を容易に知り得る状況にあった。スクリューEの形状は、住友化学に提出された2015年12月14日付け「報告書」(甲20)9頁にも記載されている。 したがって本件特許の出願日(2017年8月23日)より前に、スクリューE搭載ES-354は、その本件特許請求項1、2、4及び5の構造、形状について、不特定多数の者が知り得る状況で使用されていたのであり、この状況は、特許法29条1項2号の「公然実施された発明」に該当する。」 (イ) そうすると、請求人が、「スクリューE搭載ES-354」につき、公然実施をされていた、すなわち、不特定多数の者が知り得る状況で使用されていたとする論拠は、住友化学(その従業員)に「スクリューE搭載ES-354」に関する秘密保持義務はないこと、及び、その秘密保持義務を負わない従業員は、「スクリューE搭載ES-354」の構造及び形状を容易に知り得る状況にあり、請求人が住友化学に提出した報告書(甲20)にも、その構造及び形状が記載されていることにあると解される。 (ウ) そこで検討するに、特許法第29条第1項第2号にいう「公然実施をされた発明」とは、その内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で実施をされた発明をいうとされ、また、「公然」とは、不特定又は多数の人が認識することのできる状態をいうとされており、現実に不特定又は多数人が認識したことを要しないし、きわめて少数の者が知っている場合であってもこれらの者が秘密を保つ義務を有しない者である場合は公然ということを妨げないと解される。すなわち、「公然」の範疇には、発明の実施品の内容を開示した直接の相手方は特定少数人であっても、伝播して間接に不特定多数人が認識できるようになる場合も含まれ得るということであるが、不特定多数人の認識できることが「公然」を基礎づけるのである以上、そのような伝播可能性は、具体的であることが必要であって、その内容が実際に不特定又は多数人に伝播するであろうことを積極的に推認させるような具体的事情があることを要すると解すべきである。 そして、当該伝播は、当該特定少数人が、発明の実施品の内容を知り得る状態にあることが前提であるから、当該具体的事情の立証としては、特定少数人がその内容について秘密保持義務を負っていないということはもとより、当該特定少数人が、発明の実施品の内容を知り得る状態にあることの立証が必要であるというべきである。もっとも、当該状態には、当該実施品を外部から観察しただけで発明の内容を知り得る場合はもちろん、外部からは分からなくても、当業者が当該実施品を通常の方法で分解、分析することによって知ることができる場合も含まれると解される。 (エ) まず、秘密保持義務の有無についてみると、前記アにおいて整理した「スクリューE搭載ES-354」の納入経緯などによれば、当初、住友化学に納入された、標準仕様のスクリューを搭載したES-354(前記ア(ア))は、およそ請求人が普通に販売している仕様のもの(前記ア(ニ))と解されるから、当該当初装置につき、請求人と住友化学との間に秘密保持契約が締結されていたとは考え難い。事実、「スクリューE搭載ES-354」が販売されるに当たり、その購入者である住友化学に対し、当該製品の構成を秘密として保護すべき義務又は社会通念上あるいは商慣習上秘密を保つべき関係が発生するような事情を認めるに足りる証拠はない。 また、当初装置は、請求人が住友化学に対して保証している保証性能値を達成するものではなかったため(前記ア(イ))、これを改善して、スクリューEを搭載したのが「スクリューE搭載ES-354」であることが分かるから(前記ア(サ)、(ナ)など)、当該改善は、住友化学に対して特別に講じられたものであり、その技術内容は、商道徳上、みだりにこれを第三者に開示しないことが期待されるなどの事情はあるにしても、当然に法的な拘束力を伴う秘密保持義務を負うと認めるべき証拠はない。その上、当該改善は、単に保証内容の履行の一環として請求人側が行ったものであり、住友化学側が関与していたとする事実は認められないから、住友化学は、その共同開発者という立場にはなく、信義則上も、「スクリューE搭載ES-354」について秘密保持義務を負うものではないと考えるのが合理的である。 したがって、住友化学(その従業者)は、契約上も信義則上も、「スクリューE搭載ES-354」について秘密保持義務を負うものではないというべきである。 (オ) 次に、前記のように秘密保持義務を負うものではない住友化学の従業者が、「スクリューE搭載ES-354」、特に「スクリューE」における円柱部形状部の比率設定(本件発明における「前記円柱部の長さは、前記スクリュー軸の全長の15~20%の範囲の長さに設定」に関連する部分であり、前記無効理由1において、「比率設定」と呼称したもの)について、知り得る状態にあったか否かについてみると、当該「スクリューE搭載ES-354」は、住友化学用に、保証の一環として汎用販売品を改良したものであって、住友化学以外の不特定多数の者に販売されていた商品ではないから、当該商品の購入者である住友化学は、上記特定少数人にあたるところ、当該「スクリューE搭載ES-354」の「スクリューE」の構成(構造・形状)は、当該商品を外観して観察するだけで、その内容を知ることはできないものの、住友化学は、販売者である請求人等からその内容に関し分解等を行うことが禁じられているなどの事情は認められず、当該商品の所有権を取得し、当該商品を自由に使用し、また、処分することができるのであるから、当該商品を分解してその内部を観察することもできることは当然であるというべきである。 確かに、当該「スクリューE搭載ES-354」は、汚泥処理装置であり汚泥を扱うという性質上、簡便な電化製品などとは異なり、たやすく分解、分析することはままならない上、当該商品が設置された住友化学・愛媛工場で扱う汚泥は、スクリュー表面に想定外の腐食が発生するようなものであることや(甲12、甲24の4頁)、当該「スクリューE」はリング内に換装されていることなどに照らすと、その分解、分析作業には労を要することは否めないが、通常の方法で分解、分析することによりその構成を知ることができないような商品であるとまでいうことはできない。実際、請求人は、住友化学の工場内において、当該商品を分解し、当該「スクリューE」を外観することができており(甲12の「9.現場写真」などを参酌した。)、装置のメンテナンスや故障修理の際にも、同様の作業が想定されることから、当該分解、分析は、特別な方法でないとできないと解するのは合理的でない。 加えて、甲20に係る住友化学宛ての報告書には、「スクリューE」の図面が記載され、そこには、およそ正確な寸法で円柱形状部分の長さが記載されていると解されるから、当該報告書による報告を受けた住友化学の従業者は、「スクリューE搭載ES-354」の「スクリューE」の前記比率設定も含めて、その詳細を知悉していると考えるのが合理的である。 そうすると、住友化学の従業員は、「スクリューE搭載ES-354」について秘密保持義務を負わない上、「スクリューE搭載ES-354」の「スクリューE」の構造及び形状を容易に知り得る状況にあったと認められる。 (カ)小括 以上によれば、「スクリューE搭載ES-354」は、「スクリューE」の構成を含めて、「公然実施発明」にあたるものというべきである。 ウ  「(ii) 当該公然実施が本件特許出願前に日本国内又は外国においてされたこと」について 前記アにおいて整理したとおり、本件特許の出願前である2016年5月には、「スクリューE」は、「ES-354」に搭載され、住友化学・愛媛工場において運転開始されたものと認められるから、前記「スクリューE搭載ES-354」は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施されたものであるということができる。 なお、ここでいう「スクリューE」は、溶射及び封孔処理されたものである。 エ 「(iii) 本件発明の構成が「スクリューE搭載ES-354」の構成と同一であること」について (ア) 「ES-354」の基本構造について はじめに、「ES-354」の基本構造について確認する。 前記ア(ニ)、(ヌ)のとおり、「ES-354」の基本構造は、ESシリーズと共通するものと認められるところ、当該ES-シリーズは、甲34のヴァルート脱水機のES-シリーズの「構造原理」の記載によれば、「固定リング」と「遊動リング」及び「スペーサー」で構成されたろ過部を、「スクリュー」が貫いた構造であり、「固定リング」は、4箇所を固定されたリングであり、「遊動リング」は、ろ過部を上下に動くリングであり、また、甲34の「スクリューの回転(約1.5rpm)に伴って、そのエッジで常に遊動リングを押し上げます。それによって遊動リングは常に動き、ろ過部の空隙を掃除し、目詰まりを起こさない機構となっています。」との記載及び図面の記載などからすると、スクリューの長さ方向において、隣り合う「固定リング」の間に「遊動リング」が配置され、「スペーサー」は「固定リング」の間隙を規定するものであり、「固定リング」と「遊動リング」との間には、「ろ過部の空隙」が形成されていることが分かる。 さらに、当該ES-シリーズは、甲34の「脱水原理」の記載によると、装置本体において、「濃縮部」は、汚泥の流入口側の領域であり、「脱水部」は、排出口側の領域であり、「ろ過部の空隙」は、濃縮部で0.5mm、脱水部で0.3mm、0.15mmとケーキ排出口に向かうほど狭くなっていることを理解することができる。 これらのことから、「ES-354」に係る脱水機は、次の基本構成を有するものと認められる。 ・互いに間隙をあけてスクリュー軸方向に配置された複数の固定リングと、 この固定リング間の間隙に上下に動くように配置された複数の遊動リングと、 これらの固定リング及ぶ遊動リング内で回転するように配置されたスクリューと、を備え、 ・固定リングの間にはスペーサーが設けられ、 ・スペーサーは固定リングの間隙を規定し、固定リングと遊動リングとの間にろ過部の空隙が設けられ、 ・前記ろ過部の空隙は、濃縮部で0.5mm、脱水部で0.3mm、0.15mmに設定されている。 (イ)「スクリューE」について 次に、「スクリューE」の構造について確認する。 スクリューEは、甲20(9/9頁)~甲22によると、スクリュー本体部と、このスクリュー本体部の外周に設けられた羽根部と、先端側から他端側に広がるテーパー部とテーパー部の他端側に円筒部とを有し、当該羽根部は、当該テーパー部と円筒部に形成されていることが分かる。また、甲21、22によると、スクリューにおける羽根部の長さ、すなわち、スクリューの周囲に羽根部が設けられている部分の長さは2000mm、先端部から羽根部開始点までの長さは108mmであり、円筒部の長さは、330mmであり、さらに、円筒部の直径は250mmであり、羽根部の外接円に相当する部分の直径は294mmであることを看取することができる。 これらのことから、「スクリューE」は、次の構造を有するものということができる。 ・スクリュー本体部は、スクリューの外周に設けられる羽根部を有し、 ・スクリュー本体部は、先端側から他端側へ広がるテーパー部と、このテーパー部の他端側に形成される、円筒部が形成され、 ・前記テーパー部及び前記円筒部の外周には、前記羽根部が設けられ、 ・前記円筒部の長さは330mmであり、前記スクリューの周囲に羽根部が設けられている部分の長さは2000mmであり、前記スクリューの先端部から羽根部の開始点までの長さは108mmであり、 ・前記円筒部の直径は、250mmであり、前記羽根部の外接円に相当する部分の直径は294mmである。 (ウ) 「スクリューE搭載ES-354」に係る公然実施発明の認定 前記(ア)、(イ)をまとめると、「スクリューE搭載ES-354」に係る公然実施発明を、次のとおり認定することができる。 「互いに間隙をあけてスクリューの長さ方向に配置された複数の固定リングと、 この固定リング間の間隙に上下に動くように配置された複数の遊動リングと、 これらの固定リング及ぶ遊動リング内で回転するように配置されたスクリューと、を備え、 前記スクリューは、スクリュー本体部と、 このスクリュー本体部の外周に設けられる羽根部と、を有し、 前記スクリュー本体部には、先端側から他端側へ広がるテーパー部と、 このテーパー部の他端側に形成される円筒部と、が形成されており、 前記テーパー部及び前記円筒部の外周には、前記羽根部が設けられ、 前記円筒部の長さは330mmであり、前記スクリューの周囲に羽根部が設けられている部分の長さは2000mmであり、前記スクリューの先端部から羽根部の開始点までの長さは108mmであり、 前記円筒部の直径は、250mmであり、前記羽根部の外接円に相当する部分の直径は294mmであり、 固定リングの間にはスペーサーが設けられ、スペーサーは固定リングの間隙を規定し、固定リングと遊動リングとの間にろ過部の空隙が設けられ、  前記ろ過部の空隙は、濃縮部で0.5mm、脱水部で0.3mm、0.15mmに設定されている、 脱水機。」 (エ) 本件発明と「スクリューE搭載ES-354」に係る公然実施発明との構成同一性について a 本件発明1について 本件発明1と、「スクリューE搭載ES-354」に係る公然実施発明(以下、単に「本件公然実施発明」という。)とを対比する。 本件公然実施発明の「互いに間隙をあけてスクリューの長さ方向に配置された複数の固定リング」は、本件発明1の「互いに間隙をあけて軸線方向に配列される複数の固定リング」に相当し、本件公然実施発明の「この固定リング間の間隙に上下に動くように配置された複数の遊動リング」は、本件発明1の「この固定リング間の間隙に遊動可能に配置された遊動リング」に相当し、本件公然実施発明の「これらの固定リング及ぶ遊動リング内で回転するように配置されたスクリュー」は、本件発明1の「これら固定リング及び遊動リング内に回転自在に配置されたスクリューコンベア」に相当するものといえる。 また、本件公然実施発明の「スクリュー本体部」は、本件発明1の「スクリュー軸」に相当し、本件公然実施発明の「このスクリュー本体部の外周に設けられる羽根部」は、本件発明1の「このスクリュー軸の外周に設けられる螺旋羽根」に相当し、本件公然実施発明の「前記スクリュー本体部には、先端側から他端側へ広がるテーパー部と、このテーパー部の他端側に形成される円筒部」は、本件発明1の「前記スクリュー軸には、基端側から他端側へ広がるテーパー部と、このテーパー部の他端側に形成される円柱部と、が形成されており」という構成に相当し、本件公然実施発明の「前記テーパー部及び前記円筒部の外周には、前記羽根部が設けられ」という構成は、本件発明1の「前記テーパー部及び前記円柱部の外周には、前記螺旋羽根が設けられ、」という構成に相当するものといえる。 さらに、前述の比率設定についてみると、本件明細書には、円柱部の長さとして次の記載がある。 「【0027】 図5は、本実施形態に係るスクリューコンベア3の正面図である。 スクリューコンベア3は、駆動手段4に接続されるスクリュー軸31と、このスクリュー軸31の外周に設けられる螺旋羽根32と、駆動手段4と接続される接続部33と、を有している。このスクリューコンベア3は、スクリーン筒SCの基端側(導入口SC1側)及び他端側(固形分排出口SC2側)に配置された軸受41に軸支され、接続部33が駆動手段4に接続されることにより、スクリュー軸31及び螺旋羽根32を回転可能に構成されている。 【0028】 このスクリュー軸31は、基端側から他端側へ広がるテーパー部3aと、このテーパー部3aの他端側に形成される円柱部3bと、テーパー部3aの基端側に形成される3cと、を有している。 ・・・ 【0030】 円柱部3bの長さは、スクリュー軸31の全長の15~20%の範囲に設定されている。」 「【図1】 」 「【図5】 」 上記の記載によると、本件発明1におけるスクリュー軸とは、実施形態では、スクリュー軸31であって「基端側から他端側へ広がるテーパー部3aと、このテーパー部3aの他端側に形成される円柱部3bと、テーパー部3aの基端側に形成される3cと、を有している。」というものである。 そして、図1、5をみると、スクリュー軸31の全長とは、テーパー部3a、円柱部3b及びテーパー部3aの基端側に形成される3cの各長さの合計であって、テーパー部3aの基端側に形成される3cが軸受41に軸支されている部分を含んでいるものと解される。 これを踏まえて、本件公然実施発明におけるスクリューEをみると、当該スクリューEの全長とは、スクリューの先端部から羽根部の開始点までの長さ108mmとスクリューの羽根部が設けられている部分の長さ2000mmの合計2108mmとなるから、円筒部のスクリューの全長に対する比率は、15.7%(=330÷2108×100)と算出できる。 したがって、本件公然実施発明は、本件発明1の「前記円柱部の長さは、前記スクリュー軸の全長の15~20%の範囲の長さに設定され」るという構成を充足する。 そして、本件公然実施発明は、本件発明1における「前記固定リング及び前記遊動リング内に前記テーパー部が配置された濃縮エリアと、 前記固定リング及び前記遊動リング内に前記円柱部が配置された脱水エリアと、が形成されている」という構成を、外見上具備するものではないが、前記無効理由1における相違点2の検討と同様に考えれば、本件公然実施発明も当該構成を具備するものと解される。 以上をまとめると、本件公然実施発明の「脱水機」は、本件発明1の「固液分離装置」に相当するものであり、両者の構成は同一であるということができる。 b 本件発明2について 本件公然実施発明の「前記円筒部の直径は、250mmであり、前記羽根部の外接円に相当する部分の直径は294mmである」という構成において、羽根部の外接円に相当する部分の直径に対する円筒部の直径の比率は、85.0%(=250÷294×100)となるから、本件発明2の「前記円柱部の直径は、前記スクリューコンベアの螺旋羽根の外接円の直径の80~90%の範囲の大きさに設定されている」という構成を充足する。 したがって、本件発明2と本件公然実施発明とは、その構成において何ら相違しない。 c 本件発明4について 本件公然実施発明の「固定リングの間にはスペーサーが設けられ、スペーサーは固定リングの間隙を規定し、固定リングと遊動リングとの間にろ過部の空隙が設けられ」という構成は、スペーサーが、遊動リングよりも肉厚であることにより、「ろ過部の空隙」が形成されることを意味するから、本件発明4の「前記固定リングの間にはスペーサーが設けられており、このスペーサーは、前記遊動リングよりも肉厚に形成されている」という構成を充足する。 したがって、本件発明4と本件公然実施発明とは、その構成において相違するところはない。 d 本件発明5について 本件公然実施発明の「前記ろ過部の空隙」は、本件発明5の「微小ギャップ」、に相当する。そして、当該「ろ過部の空隙」は、「濃縮部で0.5mm、脱水部で0.3mm、0.15mmに設定されている」ところ、本件公然実施発明において、当該「濃縮部」は、スクリューの円筒部を含む領域であり、当該「脱水部」は、スクリューのテーパー部を含む領域であることから、円筒部を含むろ過部の空隙は、テーパー部を含むろ過部の空隙よりも狭くなっているといえる。 したがって、本件公然実施発明は、本件発明5の「前記固定リングと前記遊動リングとの間には、微小ギャップが形成されており、前記脱水エリアの微小ギャップは、前記濃縮エリアの微小ギャップよりも幅狭に設定されている」という構成を充足しているといえる。 よって、本件発明5と本件公然実施発明とは、その構成において一致しており、相違するところはない。 (4) 無効理由2についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1、2、4、5は、特許法第29条第1項第2号にいう公然実施をされた発明に該当するから、本件特許1、2、4、5は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当するため、無効とされるべきものである。 3 無効理由3(公然実施発明に基づく進歩性欠如)について 本件発明1、2、4、5と本件公然実施発明との間には、前記2のとおり、何ら相違するところはないが、仮に相違点があったとしても、その点は微差程度の事項にすぎないから、甲33、34の記載などに基いて当業者であれば容易に想到し得るものである。 したがって、本件発明1、2、4、5は、前記公然実施発明並びに甲33及び甲34に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1、2、4、5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当するため、無効とされるべきものである。 4 無効理由4(甲1発明及び公然実施発明に基づく進歩性欠如)について (1) 本件発明1について (ア) 本件発明1と前記甲1発明とを対比すると、前記1(3)アの検討のとおり、前記相違点1及び相違点2が存在するところ、相違点2については、前記1(3)イ(イ)の検討のとおり、実質的な相違点ではないといえる。 また、相違点1については、本件公然実施発明における「スクリューE」は、含水率やSS回収率などの脱水能力が優れていることにより採用されたものであることに照らすと、甲1発明における円筒部の長さ設定にあたり、当該「スクリューE」における比率設定を採用することは、当業者が容易に想到しうるものである。 (2) 本件発明2について 本件発明2と甲1発明とを対比すると、前記1(4)アに記載したとおり、さらに前記相違点3が存在するが、本件公然実施発明におけるスクリューEも、当該相違点3に係る本件発明2の構成を具備するものであるから、当該構成は容易想到の事項というべきである。 (3) 本件発明4について 本件発明4と甲1発明とを対比すると、前記1(5)に記載したとおり、前記相違点1、2のほかに新たな相違点は存在しないから、本件発明4は、甲1発明及び本件公然実施発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 本件発明5について 本件発明5と甲1発明とを対比すると、前記1(6)アに記載したとおり、さらに前記相違点4が存在するが、この相違点4については、1(6)イのとおりである上、当該相違点4に係る本件発明5の構成は、本件公然実施発明におけるスクリューEが具備し、また、甲33、34にも開示される事項であるから、当該構成は容易想到の事項というべきである。 したがって、本件発明5は、甲1発明及び公然実施された発明である住友化学・愛媛工場に納入されたスクリューE、甲2、甲3、甲33、甲34の記載に基いて、当業者が容易に想到しうるものである。 (5) 無効理由4についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1、2、4、5は、甲1発明、本件公然実施発明並びに甲2、甲3、甲33及び甲34に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1、2、4、5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当するため、無効とされるべきものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本件特許1、2、4、5は、請求人が主張する無効理由1~4によって、無効とすべきものである。 本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-800080

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