特許異議申立
2024-701162
化粧ボードの施工構造、化粧ボード及びその施工法
- 審判番号
- 2024-701162
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-069857
- 登録番号
- 7494540
- 請求日
- 2024年12月02日
- 審決日
- 2025年11月25日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】廣瀬 一
- 【権利者代理人】宮坂 徹
- 【権利者代理人】田中 秀▲てつ▼
- 【異議申立人】太田 久江
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 藏田 敦之
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1651.121-ZAA(E04F) / P1651.536-ZAA(E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第113条、特許法第120条の5第4項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7494540号発明「化粧ボードの施工構造、化粧ボード及びその施工法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7494540号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、5、〔6-7〕について訂正することを認める。
特許第7494540号の請求項1~7に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7494540号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての、出願から現在までの手続きの経緯の概略は次のとおりである。
令和2年 4月 8日 出願(特願2020-69857号)
令和6年 5月27日 特許権の設定登録
同年 6月 4日 特許掲載公報の発行
同年12月 2日 本件特許の請求項1~7に係る特許に対する
特許異議申立人太田 久江(以下「申立人」
という。)による特許異議の申立て
令和7年 2月21日付け 取消理由通知
同年 4月30日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 6月13日 申立人による意見書の提出
令和7年 7月10日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 9月11日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年10月23日 申立人による意見書の提出
なお、令和7年4月30日にされた訂正の請求は、同年9月11日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
特許権者により令和7年9月11日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の内容(以下「本件訂正」という。)は以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、260g/m2以下であり、」と記載されているのを、「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、200g/m2以上260g/m2以下であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「固形分換算で60g/m2以下であることを特徴とする」と記載されているのを、「固形分換算で60g/m2以下であり、前記基材ボードと前記発泡樹脂層との間に裏打材を有することを特徴とする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、260g/m2以下であり、」と記載されているのを、「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、200g/m2以上260g/m2以下であり、」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「固形分換算で60g/m2以下であることを特徴とする」と記載されているのを、「固形分換算で60g/m2以下であり、前記基材ボードと前記発泡樹脂層との間に裏打材を有することを特徴とする」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、260g/m2以下であり、」と記載されているのを、「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、200g/m2以上260g/m2以下であり、」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「固形分換算で60g/m2以下であることを特徴とする」と記載されているのを、「固形分換算で60g/m2以下であり、前記基材ボードと前記発泡樹脂層との間に裏打材を有することを特徴とする」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する)。
(7)一群の請求項について
訂正前の請求項1~4について、請求項2は請求項1を引用し、請求項3は請求項1、2を引用し、請求項4は請求項1~3を引用しているものである。
訂正前の請求項6~7について、請求項7は請求項6を引用しているものである。
よって、請求項1~4は、本訂正事項によって記載が訂正される請求項1~4に連動して訂正されるものである。また、請求項6~7は、本訂正事項によって記載が訂正される請求項6~7に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4、および訂正前の請求項6~7に対応する訂正後の請求項6~7は、それぞれ特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量」について、訂正前の請求項1においては「260g/m2以下であ」るとして有機質量の数値範囲のうち上限のみが特定されていたのを、さらに下限について「200g/m2以上」であることを特定して減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張・変更
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書といい、図面及び特許請求の範囲とあわせて「本件明細書等」という。)の段落【0030】には、「(実施例1)・・・続いて、裏打材5の表面に、EVA樹脂(住化ケムテックス製:「S-7400(HQ)」)100質量部に対して、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤(松本油脂製薬:「FT-16」)12.2質量部と、無機粉体である炭酸カルシウム(朝日鉱末製:「MC-100」)90質量部を加えたペーストをコーティング法により塗布して、発泡樹脂層6を形成した。発泡樹脂層6の有機質量は、200g/m2とした。」と記載され、段落【0033】には、「実施例4では、発泡樹脂層6の有機質量を260g/m2とした。それ以外は実施例2と同様にして、実施例4の化粧ボード1を作製した。」と記載され、段落【0038】には、実施例1~9及び比較例1~4の評価結果として、以下の表1が示されている。
【表1】
「
[図:0001434133000001.jpg]
」
段落【0030】及び表1によれば、有機質量を200g/m2以上とすることを認識することができるから、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、上記アにおいて検討したとおり、特許請求の範囲を減縮するものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
ウ 申立人の主張
(ア)主張の概要
申立人は、令和7年10月23日付けの意見書において、訂正の適否について、概略以下の主張をする。
発泡樹脂層に含まれる有機質量の数値範囲の下限の境界値を0g/m2から200g/m2に変更して、発泡樹脂層に含まれる有機質量の新たな数値範囲(200g/m2以上260g/m2以下)とするものである。
ここで、本件特許発明の明細書の段落【0024】や【0027】等に、発泡樹脂層に含まれる有機質量の数値範囲の上限の境界値としての260g/m2について記載されているが、発泡樹脂層に含まれる有機質量の数値範囲の下限の境界値としての200g/m2について記載されていない。本件特許発明の明細書に記載されているのは、実施例1の発泡樹脂層に含まれる有機質量である200g/m2に過ぎず(段落【0030】等)、発泡樹脂層に含まれる有機質量の新たな数値範囲(200g/m2以上260g/m2以下)は、本件特許発明の明細書に記載されていない。したがって、本件訂正は、新たな技術的事項を導入するものであるため、認められない。
(イ)主張の検討
訂正事項1に係る訂正は、上記イにおいて検討したとおり、「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量」について、訂正前の請求項1において、有機質量の数値範囲のうち「260g/m2以下で」あると上限のみが特定され、下限は特定されていなかったものを、段落【0030】、【0038】等を根拠に、有機質量の数値範囲の下限が「200g/m2 以上」であることを特定して減縮し、前記発泡樹脂層に含まれる有機質量が200g/m2未満のものを除外するものであるから、有機質量の数値範囲の下限が「200g/m2 以上」と特定されることによって発泡樹脂層に含まれる有機質量を200g/m2以上260g/m2以下となったことが、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
よって、申立人の主張を考慮しても、上記イの判断は左右されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1の「基材ボード」と、「前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられ、発泡樹脂層と、・・・・を有する化粧シート」と、を備える「前記化粧ボード」が、「前記基材ボードと前記発泡樹脂層との間に裏打材を有する」ものであることを特定して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張・変更
本件明細書の段落【0026】に「基材ボード2と発泡樹脂層6との間には、裏打材5等を形成しても良い。裏打材5としては、例えば、難燃紙、和紙、ガラス繊維不織布等抄紙体を含む不織布を採用できる。」と記載され、段落【0030】に「(実施例1)
まず、裏打材5として、坪量65g/m2の普通紙(日本製紙(株)製:「NI65AT」)を用意した。続いて、裏打材5の表面に、EVA樹脂(住化ケムテックス製:「S-7400(HQ)」)100質量部に対して、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤(松本油脂製薬:「FT-16」)12.2質量部と、無機粉体である炭酸カルシウム(朝日鉱末製:「MC-100」)90質量部を加えたペーストをコーティング法により塗布して、発泡樹脂層6を形成した。発泡樹脂層6の有機質量は、200g/m2とした。」と記載され、段落【0031】に、「続いて、形成した化粧シート4の裏打材5に、・・・接着剤3を塗工し・・・、塗工した接着剤3を介して、化粧シート4を基材ボード2に貼り付けた。」と記載されている。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、上記アにおいて検討したとおり、特許請求の範囲を減縮するものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3~6
訂正事項3及び4並びに訂正事項5及び6に係る訂正は、それぞれ、請求項5の化粧ボード及び請求項6の施工法について、訂正事項1及び2に係る訂正と同様の訂正を行うものであり、上記(1)及び(2)において訂正事項1及び2について検討したのと同様の理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
3 一群の請求項について
(1)訂正前の請求項2~4は、それぞれ、請求項1を直接または間接的に引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
そうすると、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であって、訂正事項1に係る訂正は、一群の請求項〔1-4〕についてするものである。
(2)訂正前の請求項7は、請求項6を引用しており、訂正事項5によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。
そうすると、訂正前の請求項6、7に対応する訂正後の請求項6、7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であって、訂正事項5に係る訂正は、一群の請求項〔6-7〕についてするものである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、5、〔6-7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で示したとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、請求項番号により「本件発明1」等といい、これらを併せて「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
下地材と、当該下地材に固定される化粧ボードと、前記下地材と前記化粧ボードとを接着する両面テープと、を備える化粧ボードの施工構造であって、
前記両面テープは、基材と、前記基材の表裏面にそれぞれ位置する接着層と、を備え、
前記両面テープのみを用いて、前記化粧ボードを前記下地材に直接接着し、
前記化粧ボードは、
基材ボードと、
前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられ、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の前記基材ボードと反対側の面側に形成された絵柄模様層とを有する化粧シートと、を備え、
前記基材ボードは、平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料、又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であり、
前記化粧シートは、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であり、
前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、200g/m2以上260g/m2以下であり、
前記貼り付けに用いられる接着剤は、でんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとの比率が100:0~80:20で構成された接着剤であり、
前記接着剤の塗布量は、固形分換算で60g/m2以下であり、
前記基材ボードと前記発泡樹脂層との間に裏打材を有することを特徴とする化粧ボードの施工構造。
【請求項2】
前記基材は、熱可塑性樹脂であり、
前記接着層は、アクリル系又は合成ゴム系の粘着剤であることを特徴とする請求項1に記載の化粧ボードの施工構造。
【請求項3】
前記両面テープの厚みは、0.8~1.5mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧ボードの施工構造。
【請求項4】
前記下地材は、離れて対向する一対のランナーと、前記一対のランナーの間をつなぐ複数本のスタッドと、を備え、
前記両面テープの前記下地材側の前記接着層は、前記スタッドにのみに貼り付けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧ボードの施工構造。
【請求項5】
両面テープの一面が貼り付けられた化粧ボードであって、
前記両面テープは、基材と、前記基材の表裏面にそれぞれ位置する接着層と、
を備え、
前記化粧ボードは、前記両面テープのみを用いて施工面に直接接着され、
前記化粧ボードは、
基材ボードと、
前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられ、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の前記基材ボードと反対側の面側に形成された絵柄模様層とを有する化粧シートと、を備え、
前記基材ボードは、平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料、又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であり、
前記化粧シートは、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であり、
前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、200g/m2以上260g/m2以下であり、
前記貼り付けに用いられる接着剤は、でんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとの比率が100:0~80:20で構成された接着剤であり、
前記接着剤の塗布量は、固形分換算で60g/m2以下であり、
前記基材ボードと前記発泡樹脂層との間に裏打材を有することを特徴とする化粧ボード。
【請求項6】
下地材と、当該下地材に固定される化粧ボードと、前記下地材と前記化粧ボードとを接着する両面テープと、を備え、
前記両面テープは、基材と、前記基材の表裏面にそれぞれ位置する接着層と、を備え、
前記下地材と前記化粧ボードとのいずれか一方に、前記基材の前記表裏面の一面に位置する前記接着層を直接貼り付けた後、
前記基材の前記表裏面の他面に位置する前記接着層を、前記下地材と前記化粧ボードとのいずれか他方に直接貼り付け、前記両面テープのみを用いて、前記化粧ボードを前記下地材に直接接着し、
前記化粧ボードは、
基材ボードと、
前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられ、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の前記基材ボードと反対側の面側に形成された絵柄模様層とを有する化粧シートと、を備え、
前記基材ボードは、平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料、又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であり、
前記化粧シートは、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であり、
前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、200g/m2以上260g/m2以下であり、
前記貼り付けに用いられる接着剤は、でんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとの比率が100:0~80:20で構成された接着剤であり、
前記接着剤の塗布量は、固形分換算で60g/m2以下であり、
前記基材ボードと前記発泡樹脂層との間に裏打材を有することを特徴とする化粧ボードの施工法。
【請求項7】
前記下地材に対する前記化粧ボードの接着面に、前記基材の前記表裏面の一面に位置する前記接着層を直接貼り付けた後、
前記基材の前記表裏面の他面に位置する前記接着層を、前記下地材に直接接着することを特徴とする請求項6に記載の化粧ボードの施工法。」
第4 取消理由の概要及び証拠
1 取消理由の概要
当審において令和7年7月10日付け取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)本件発明1~7に係る特許は、特許法36条4項1号の要件を満たさない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件発明1~7に係る特許は、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)本件特許の請求項1~3及び5~7に係る発明は、甲第1~3号証に記載された発明ないし技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項4に係る発明は、甲第1~3号証及び甲第6号証に記載された発明ないし技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明1~7に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 取消理由において引用した文献
取消理由通知書(決定の予告)において通知した取消理由に引用した文献は以下のとおりである。
甲第1号証 特開2020-20171号公報
甲第3号証 一般社団法人 日本壁装協会、「防火壁装材料の施工共通仕様」1~6頁、最終改訂平成23年8月25日
甲第4号証 特開2019-142202号公報
甲第6号証 特開2019-190046号公報
引用文献A 特開2017-71884号公報
(以下、各甲号証を、その番号により「甲1」等ということがある。)
第5 当審において引用する証拠
1 当審において引用する各甲号証の記載及び記載された発明
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付与した。以下、同様。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板の施工方法、より詳しくは建築物の内装壁面および天井面に対し、仕上材として窯業系化粧板を施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の内装仕上材として繊維強化セメント板等の窯業系材料を基板とし、その表面に塗膜層を形成し、あるいは化粧フィルムを接着した、不燃性の窯業系化粧板が広く使われている。窯業系化粧板は、工場生産により化粧面の品質が安定しており、施工後の現場塗装も必要無いため工期が短縮できるといったメリットがある。また、建築基準法の内装制限を受けるような大型の建築物に必要な不燃性能を容易に確保出来ることも窯業系化粧板が普及した要因といえる。」
(イ)「【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔8〕を提供するものである。
【0009】
〔1〕下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定する内装仕上化粧板の施工方法であって、
前記両面粘着テープは、厚さ0.5~2.5mm、幅15~35mmの弾性ポリマーフォーム基材の両面に、アクリル系粘着剤またはポリエステル系粘着剤を塗布してなるものであり、
少なくとも前記両面粘着テープの片側の面には剥離ライナーを備えており、
前記窯業系化粧板の裏面には含浸シーラーが塗布されていることを特徴とする内装仕上化粧板の施工方法。
・・・」
(ウ)「【0014】
本発明に用いる窯業系化粧板は、基板となる窯業系ボードの片側の面に、塗装、印刷、シート貼り等により化粧層を形成させた建築材料であり、建築物の内装仕上材として広く用いられているものである。基板となる窯業系ボードとしては、特に限定されるものではないが、繊維強化セメント板、繊維強化せっこう板等が挙げられ、なかでもJIS A 5430に規定された繊維強化セメント板の一種であるけい酸カルシウム板は、かさ密度が0.6~1.2g/cm3と軽量であり、かつ適度な柔軟性と強度を持つことから、本発明施工方法の適用に特に適している。窯業系化粧板の化粧層を形成した側と反対側の面(裏面)は、前記両面粘着テープを用いた圧着による施工に適するよう含浸シーラーを塗布しておくことが好ましい。含浸シーラーは、特に、VOC(揮発性有機化合物)の放散源とならないよう湿気硬化型のポリウレタン樹脂系シーラー等の無溶剤含浸シーラーであることが好ましい。」
(エ)「【0020】
本発明の施工方法の手順としては、まず仕上材として用いる窯業系化粧板の裏面(せっこうボードと固定する面)の外周端部から5~10mmあけた位置に額縁状に前記両面粘着テープを圧着し、該両面粘着テープで額縁状に囲われた内側の部分に長手方向に平行な向きで間隔をあけて少なくとも2本以上のスジ状に長手方向全長にわたって前記両面粘着テープを配置して圧着し(図2参照)、次いで剥離ライナーを剥がしてから該窯業系化粧板を壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に圧着して固定する方法がある。この手順は、段取りが容易であり、両面粘着テープの配置、圧着が済んだ窯業系化粧板を1枚ずつ位置合わせをしながら施工できるため比較的経験の浅い施工員であっても容易にきれいな仕上がりとすることができる。また、施工現場での作業負担をさらに軽減できる方法として、窯業系化粧板の製造工場または加工場において、あらかじめ施工する壁面あるいは天井面の割付けに合わせた寸法および数量の窯業系化粧板の裏面に対し、前記両面粘着テープを配置して圧着したものを作成し、当該両面粘着テープ付窯業系化粧板を施工現場に搬入したのち、剥離ライナーを剥がしてから壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に圧着して固定することもできる。こうすることで、施工現場での作業効率は飛躍的に向上することが期待できる。
【0021】
もう一つの手順としては、壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に、仕上施工する窯業系化粧板の割付け位置および寸法に合わせ、施工する窯業系化粧板と対向する位置の外周端部から5~10mmあけた位置に額縁状に前記両面粘着テープを圧着し、該両面粘着テープで額縁状に囲われた内側の部分に長手方向に平行な向きで間隔をあけて少なくとも2本以上のスジ状に長手方向全長にわたって前記両面粘着テープを配置して圧着し、次いで剥離ライナーを剥がしてから当該両面粘着テープに窯業系化粧板の裏面を圧着して固定する方法がある。この手順では、壁面または天井面に下貼りされたせっこうボード表面に対し先に両面粘着テープを配置、圧着しておくことで、段取りには手間がかかるものの、仕上材の貼付けを一気に進めることができる。また、複数人の施工員で作業する場合には、先行して段取り作業を進めておくことで全体の施工効率を上げることが可能と考えられる。さらに、この手順で施工する場合、下貼りのせっこうボードの目地位置を避けて両面粘着テープを配置することが容易であるため、意図しない接着面積の減少を回避して、より安全な仕上がりとすることができる。
【0022】
本発明の施工方法における両面粘着テープは、図2に示すように、仕上材として用いる窯業系化粧板の裏面の外周端部から5~10mmあけた位置における額縁状および該額縁状に囲われた内側の部分に長手方向に平行な向きで間隔をあけて少なくとも2本以上のスジ状に長手方向全長にわたって前記両面粘着テープを配置することを基本とするのが好ましい。この際、配置した両面粘着テープの総面積が、該窯業系化粧板の面積に対して8~20%、より好ましくは10~20%の範囲とするのが適切である。配置した両面粘着テープの総面積が該窯業系化粧板の面積に対して小さすぎると窯業系化粧板を固定して支えるための接着力が不十分となり、脱落の危険性があるほか、窯業系化粧板の吸放湿による反りで端部が剥がれたりするおそれがあるため好ましくなく、大きすぎると過剰に両面粘着テープのコストが膨らんで経済性が著しく低下するため好ましくない。」
(オ)「【実施例】
【0023】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
実施例1
まず平面引張試験により、両面粘着テープの接着強度を測定した。試験方法の概要を図3に示す。厚さ1mm、幅20mmの弾性ポリマーフォーム基材(ポリエチレン系樹脂フォーム:引張弾性率約12.3MPa)の両面にアクリル系無溶剤粘着剤(主成分:ポリ2-エチルヘキシルアクリレート)を片面あたり約100μmの厚さで塗布して片側の面に紙製の剥離ライナーを付けた両面粘着テープを用意し、厚さ6mm×20mm角の化粧けい酸カルシウム板(ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製)の含浸シーラー処理された裏面に圧着し、さらに剥離ライナーを剥がした面を厚さ12.5mm×50mm角のせっこうボード(タイガーボード:吉野石膏(株)製)の表面中央部にあてがい、荷重5kgで10秒間圧着して試験体を作成し、これを室温で7日間養生した。養生後の試験体の化粧けい酸カルシウム板の化粧面をエポキシ接着剤で引張試験用治具に接着し、せっこうボードを固定治具に引っかけた状態で50mm/minの試験速度で引張試験を行って平面引張強度を測定した。その結果、平面引張強度は0.35MPaであった。
・・・
【0026】
実施例2
次に、実施例1と同じ材料の組み合わせで、間仕切り壁における動的変形能試験を行った。試験に用いた装置と試験体の概要を図4に示す。試験装置は、油圧シリンダーを接続して上側長辺を平行方向に変形可能となるよう四隅を軸受で接合した矩形フレームで構成されており、当該フレームの内側上下に固定したランナーに455mmピッチでスタッドを立てて下地を組み、この下地組の両面に下貼りとして厚さ12.5mmのせっこうボード(タイガーボード:吉野石膏(株)製)をφ3.5×25mmのタッピンネジで固定して下貼り面を作成した。仕上材の窯業系化粧板としては、厚さ6mmの化粧けい酸カルシウム板(ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製)を使用し、裏面に図2と同様の配置で実施例1と同じ両面粘着テープを配置して圧着し、剥離ライナーを剥がして下貼りのせっこうボードの表面に圧着して図4に示した構成の試験体となる間仕切り壁の施工を行った。試験体はそのまま2週間の養生期間を置いたのち、動的変形能試験を実施した。
一般財団法人建材試験センター規格JSTM J 2001:1998「非耐力壁の面内せん断曲げによる動的変形能試験方法」に準拠し、加振枠上部水平材に正弦波による動的水平変形を強制的に加え、試験体の破損程度、脱落の有無を目視観察で評価した。大地震動を想定して振動加速度を400gal(気象庁震度階級6弱)に設定し、振動加速度と層間変形角より振動数を算出し、所定の層間変形角に相当する加振振幅まで約10秒かけて増大させ、その加振振幅を40秒保持したのち、約10秒かけて加振振幅を減少・停止させて目視観察する方法で試験を行った。層間変形角はJSTM規格の1/200、1/150、1/120、1/100とし、この4条件を1セットとして3回繰り返した。
その結果、試験終了までに仕上材である化粧けい酸カルシウム板に脱落や亀裂の発生等は認められず、面内変位に対して十分な耐力を持つ施工方法であることが確認された。」
イ 甲1に記載された発明
上記アより、甲1には、以下の3の発明が記載されていると認められる。
(ア)甲1施工構造発明
「下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定する」施工方法によって、「下貼りであるせっこうボードと、せっこうボードに固定される窯業系化粧板と、せっこうボードと窯業系化粧板とを固定する両面粘着テープと、を備える窯業系化粧板の施工構造」が得られることは明らかである。そうすると、甲1には、以下の発明(以下「甲1施工構造発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1施工構造発明)
下貼りであるせっこうボードと、せっこうボードに固定される窯業系化粧板と、せっこうボードと窯業系化粧板とを固定する粘着テープと、を備える窯業系化粧板の施工構造であって、
両面粘着テープは、厚さ0.5~2.5mm、幅15~35mmの弾性ポリマーフォーム基材の両面に、アクリル系粘着剤またはポリエステル系粘着剤を塗布してなるものであり、(【0009】)
両面粘着テープは、厚さ1mmの弾性ポリマーフォーム基材(ポリエチレン系樹脂フォーム)の両面にアクリル系無溶剤粘着剤を片面あたり約100μmの厚さで塗布して片側の面に紙製の剥離ライナーを付けたものとでき、(【0024】)
下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定するものであり、(【0009】)
窯業系化粧板は、基板となる窯業系ボードの片側の面に、シート貼り等により化粧層を形成させた建築材料であり、基板となる窯業系ボードとしては、繊維強化セメント板、繊維強化せっこう板等が挙げられ、(【0014】)
窯業系化粧板としては、厚さ6mmの化粧けい酸カルシウム板(ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製)を使用でき、(【0026】)
繊維強化セメント板等の窯業系材料を基板とし、その表面に化粧フィルムを接着した、不燃性の窯業系化粧板は、建築基準法の内装制限を受けるような大型の建築物に必要な不燃性能を容易に確保出来る、(【0002】)
窯業系化粧板の施工構造。
(イ)甲1化粧板発明
上記アより、甲1には、以下の発明(以下「甲1化粧板発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1化粧板発明)
裏面(せっこうボードと固定する面)に両面粘着テープを圧着した窯業系化粧板であって、(【0020】)
両面粘着テープは、厚さ0.5~2.5mm、幅15~35mmの弾性ポリマーフォーム基材の両面に、アクリル系粘着剤またはポリエステル系粘着剤を塗布してなるものであり、(【0009】)
下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定するものであり、(【0009】)
窯業系化粧板は、基板となる窯業系ボードの片側の面に、シート貼り等により化粧層を形成させた建築材料であり、基板となる窯業系ボードとしては、繊維強化セメント板、繊維強化せっこう板等が挙げられ、(【0014】)
窯業系化粧板としては、厚さ6mmの化粧けい酸カルシウム板(ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製)を使用でき、(【0026】)
繊維強化セメント板等の窯業系材料を基板とし、その表面に化粧フィルムを接着した、不燃性の窯業系化粧板は、建築基準法の内装制限を受けるような大型の建築物に必要な不燃性能を容易に確保出来る、(【0002】)
窯業系化粧板。
(ウ)甲1方法発明
上記アより、甲1には、以下の発明(以下「甲1方法発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1方法発明)
下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定する施工方法であって、(【0009】)
手順としては、まず窯業系化粧板の裏面(せっこうボードと固定する面)に両面粘着テープを圧着し、該窯業系化粧板をせっこうボードの表面に圧着して固定するか、(【0020】)
せっこうボードの表面に両面粘着テープを圧着し、当該両面粘着テープに窯業系化粧板の裏面を圧着して固定し、(【0021】)
両面粘着テープは、厚さ0.5~2.5mm、幅15~35mmの弾性ポリマーフォーム基材の両面に、アクリル系粘着剤またはポリエステル系粘着剤を塗布してなるものであり、(【0009】)
下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定するものであり、(【0009】)
窯業系化粧板は、基板となる窯業系ボードの片側の面に、シート貼り等により化粧層を形成させた建築材料であり、基板となる窯業系ボードとしては、繊維強化セメント板、繊維強化せっこう板等が挙げられ、(【0014】)
窯業系化粧板としては、厚さ6mmの化粧けい酸カルシウム板(ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製)を使用でき、(【0026】)
繊維強化セメント板等の窯業系材料を基板とし、その表面に化粧フィルムを接着した、不燃性の窯業系化粧板は、建築基準法の内装制限を受けるような大型の建築物に必要な不燃性能を容易に確保出来る、(【0002】)
施工方法。
(2)甲3
ア 甲3の記載
甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「防火壁装材料の施工共通仕様」(表題)
(イ)「第1章 一般事項
1.1 適用範囲
本共通仕様書は、一般社団法人 日本壁装協会(以下「協会」という。)の壁紙品質情報管理システムに登録している壁紙で、防火壁装材料の認定仕様に基づく施工を適法に行うための共通的注意事項をまとめたものである。
1.2 張り工法
張り工法は直張りを原則とする。
・・・
1.3.2 防火壁装材料の確認
次の事項に注意する。
(1)下地基材との組合せにより認定された防火性能と認定番号
(2)張り合わせる下地基材の防火性能、ならびに当該下地が平成12年建設省告示第1400号ならびに1401号に示す防火材料であること。(2.5並びに別表参照)
ただし認定条件により除かれている下地もあるので確認する。
(3)認定されている施工方法(直張り、金属板に認められている張り方、接着剤の種類および配合率と塗布量、その他施工方法についての条件など)
(4)認定を受けた防火壁装材料であっても認定仕様どおりに施工しなければ防火材料とは認められない。
(5)使用する防火壁装材料が、内装制限の防火性能に適合するものであること。」(1頁)
(ウ)「第3章 下地調整ならびに施工用接着剤
・・・
3.3 接着剤の配合
接着剤の配合は、JIS A 6922の品質規格に合格し、JISマーク表示されたもの、もしくはこれと同等の品質を有し、ホルムアルデヒド発散量が規制対象外の大臣認定を受けた別表2.2.3に示すでんぷん系接着剤を使用する。下地基材の種類、防火壁装材料の種類によりアクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂または酢酸ビニル系樹脂を補強剤(別表2.2.4に示すものに限る)として混ぜて使う。その際の配合率はでんぷん80部に対して20部までとし、これを水30部で希釈したものを使用する。
3.4 接着剤使用量
接着剤の使用量は、180g/m2〔60g/m2(固形換算量)〕以下であること。その他認定仕様に指定のある場合はこれに従う。」(3~4頁)
(エ)「(別表1)
【建設省告示第1400号ならびに国土交通省告示第1178号による改正】
■不燃材料を定める件(平成12年5月30日 建設省告示第1400号)
建築基準法(昭和25年法律 第201号)第2条第九号の規定に基づき、不燃材料を次のように定める。
建築基準法施行令(昭和25年政令 第338号)第108条の2各号(建築物の外部の仕上げに用いるものにあっては、同条 第一号及び第二号)に掲げる要件を満たしている建築材料は、次に定めるものとする。
一 コンクリート
二 れんが
三 瓦
四 陶磁器質タイル
五 繊維強化セメント板
六 厚さが3ミリメートル以上のガラス繊維混入セメント板
七 厚さが5ミリメートル以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板
八 鉄鋼
九 アルミニウム
十 金属板
十一 ガラス
十二 モルタル
十三 しっくい
十四 石
十五 厚さが12ミリメートル以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.6ミリメートル以下のものに限る。)
十六 ロックウール
十七 グラスウール板
・・・
(別表2)
【告示第1401号】
■準不燃材料を定める件(平成12年5月30日 建設省告示第1401号)
建築基準法施行令(昭和25年政令第308号)第1条第五号の規定に基づき、準不燃材料を次のように定める。
第1 通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後10分間建築基準法施行令(以下「令」という。)第108条の2各号に掲げる要件を満たしている建築材料は、次に定めるものとする。
一 不燃材料のうち通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間令第108条の2各号に掲げる要件を満たしているもの
二 厚さが9ミリメートル以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.6ミリメートル以下のものに限る。)
三 厚さが15ミリメートル以上の木毛セメント板
四 厚さが9ミリメートル以上の硬質木片セメント板(かさ比重が0.9以上のものに限る。)
五 厚さが30ミリメートル以上の木片セメント板(かさ比重が0.5以上のものに限る。)
六 厚さが6ミリメートル以上のパルプセメント板
第2 通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後10分間令第108条の2第一号及び第二号に掲げる要件を満たしている建築材料は、次に定めるものとする。
一 不燃材料
二 第1第二号から第六号までに定めるもの。」(5~6頁)
(3)甲4
ア 甲4の記載
甲4には以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡壁紙、各種装飾材等として用いられる発泡積層シートが知られている。
・・・
【0004】
特許文献2には、「裏打紙の上に発泡した樹脂層が形成され、
上記裏打紙は、坪量50g/m2以上100g/m2以下、かつ厚さ80μm以上150μm以下であり、
上記樹脂層は、坪量50g/m2以上220g/m2以下かつ3倍以上の発泡倍率であり、
上記樹脂層と上記裏打紙の坪量の合計が270g/m2以下であることを特徴とする壁紙。」が開示されている(請求項1等)。
・・・
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-75432号公報
【特許文献2】特開2017-71884号公報
【特許文献3】特開2017-66555号公報」
(4)甲6
ア 甲6の記載
甲6には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0013】
図1、2は、本発明の第1の実施形態に係る建築用面構造としての壁構造を示す。壁構造10は、桟を構成するスタッド及びランナーを備える。
ランナーは、横方向に延在する横桟であり、建築物の床面側に固定される下部ランナー14Aと、天面側に固定される上部ランナー14Bからなる。ランナー14A,14Bは、それぞれコの字形状を有し、下部ランナー14Aがコの字の開口部が上側を向けられ、上部ランナー14Bはコの字の開口部が下側を向けられる。
【0014】
スタッドは、縦方向に延在する縦桟であり、複数個のスタッドからなる。なお、以下の説明では、各スタッドを便宜上スタッド13A~13Dとする。各スタッド13A~13Dは、下部ランナー14Aと上部ランナー14Bの間に架設される。各スタッド13A~13Dは、両端部がそれぞれ下部ランナー14A及び下部ランナー14Bのコの字内部に挿入されて固定される。これにより、スタッド13A~13Dとランナー14A,14Bは、フレーム状に組まれ、基礎フレーム12を構成する。
基礎フレーム12には、振れ止め材17など壁構造10にて使用される公知の部材が適宜取り付けられてもよい。振れ止め材17は、複数のスタッド13間を掛け渡されるように横方向に延在する。
なお、建築用面構造が壁構造である場合、縦方向及び横方向とは、それぞれ鉛直方向、及び水平方向を意味する。ただし、縦方向及び横方向は、後述する天井構造及び床構造ではいずれも水平方向となり、互いに直交する。
・・・
【0016】
基礎フレーム12において、スタッド13A~13Dとランナー14A,14Bにより囲まれた空間は、矩形状の開口部15A~15Cとなり、開口部15A~15Cを覆うように、構造用面材を構成する石膏ボード16が取り付けられる。石膏ボード16は、図2に示すように、基礎フレーム12の正面側(図2の下側)、及び裏面側(図2の上側)の両方において、開口部15を被覆するように、基礎フレーム12に取り付けられる。
また、壁構造10は、正面側、背面側のいずれにおいても複数の石膏ボード16が配置され、複数の石膏ボード16が横方向に並べられる。ここで、隣接する石膏ボード16、16は、互いの側面が突き合わされるように配置される。
なお、図1では、基礎フレームの正面側、背面側それぞれにおいて、1つの石膏ボード16によって1つの開口部を被覆するように石膏ボード16が取り付けられるが、1つの石膏ボード16によって2つ以上の開口部を被覆するように石膏ボード16が取り付けられてもよい。2つ以上の開口部を被覆する場合には、石膏ボード16同士の繋ぎ目(目地)は、後述する第3の実施形態でも述べるように、背面側と正面側では異なる位置にあったほうがよい。」
(イ)【0018】
図1,2に示すように、石膏ボード16と基礎フレーム12の間には、粘弾性体を構成する両面粘着テープ20が配置され、石膏ボード16は、両面粘着テープ20によって基礎フレーム12に接着される。両面粘着テープ20は、基礎フレーム12の正面側、及び背面側それぞれに取り付けられ、基礎フレーム12の正面側及び背面側それぞれにおいて、石膏ボード16が両面粘着テープ20(粘弾性体)を介して基礎フレーム12に接着される。
【0019】
両面粘着テープ20は、より具体的には、縦桟であるスタッドのいずれかに取り付けられる。両面粘着テープ20は、図1に示すように複数の石膏ボード16が設けられる場合には、少なくとも石膏ボード16の目地がある縦桟(スタッド)に取り付けられる。また、通常、石膏ボード16の両側端部16X,16Yが固定されるスタッドに両面粘着テープ20が取り付けられ、両側端部16X,16Yは、いずれも両面粘着テープ20によって縦桟(スタッド)に固定されるとよい。
横桟(ランナー)は、廻り縁や幅木で塞がれたり、板厚段差があったりするので、横桟に両面粘着テープを取り付けると段差が生じることがあるが、縦桟であるスタッドに取り付けても段差が生じることがなく、石膏ボード16を基礎フレーム12に固定させやすくなる。なお、両面粘着テープ20は、縦桟の長手方向である縦方向に沿って延在するように設けられる。
・・・
【0022】
本実施形態では、石膏ボード16は、基礎フレーム12に対して、粘弾性体である両面粘着テープ20によって固定されることで、両面粘着テープ20によって面内方向に変形する振動を減衰させることができる。振動を減衰させることで面内方向の変形が小さくなり、クロス切れ、塗装のヒビ、建具の損傷などが防止できる。振動としては、自動車、電車などの通行によって発生する生活振動、地震などによって発生する振動などが挙げられる。振動を減衰させることで、石膏ボード16の表面にさらに貼付されたクロスの切れ、塗装のヒビ、建具の損傷などが防止できる。
・・・
【0024】
上記したように、石膏ボード16は、縦貼り、すなわち縦桟に貼り付けられた両面粘着テープによって固定される態様を示したが、横張り、すなわち、横桟に貼り付けられた両面粘着テープによって固定されてもよいし、縦貼りと横貼りが組み合わされてもよい。」
イ 甲6発明
上記アより、甲6には、以下の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲6発明)
壁構造10は、桟を構成するスタッド及びランナーを備え、ランナーは、建築物の床面側に固定される下部ランナー14Aと、天面側に固定される上部ランナー14Bからなり、(【0013】)
スタッドは、縦方向に延在する縦桟であり、複数個のスタッドからなり、各スタッド13A~13Dは、下部ランナー14Aと上部ランナー14Bの間に架設され、スタッド13A~13Dとランナー14A,14Bは、フレーム状に組まれ、基礎フレーム12を構成し、(【0014】)
基礎フレーム12において、スタッド13A~13Dとランナー14A,14Bにより囲まれた空間を覆うように石膏ボード16が取り付けられ、(【0016】)
石膏ボード16は、両面粘着テープ20によって基礎フレーム12に接着され、(【0018】)
両面粘着テープ20は、より具体的には、縦桟であるスタッドのいずれかに取り付けられ、(【0019】)
石膏ボード16の表面にさらに貼付されたクロスを有する(【0022】)、
壁構造10。
2 当審において引用する証拠(上記1以外)の記載及び記載された発明
(1)引用文献A
ア 引用文献Aの記載
当審において職権により探知した引用文献A(特開2017-71884号公報)には、以下の記載がある。なお、引用文献Aは、甲4の先行技術文献に特許文献2として挙げられた特許公開公報である。
(ア)「【請求項1】
裏打紙の上に発泡した樹脂層が形成され、
上記裏打紙は、坪量50g/m2以上100g/m2以下、かつ厚さ80μm以上150μm以下であり、
上記樹脂層は、坪量50g/m2以上220g/m2以下かつ3倍以上の発泡倍率であり、
上記樹脂層と上記裏打紙の坪量の合計が270g/m2以下であることを特徴とする壁紙。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性を有する壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
下地の壁面に存在する凹みや隙間、段差などを隠蔽する隠蔽性向上のために、壁紙にボリューム感が求められる場合がある。
ここで、壁紙用裏打紙と樹脂層からなる壁装材においては、樹脂層を厚くするか、あるいは特許文献1の壁紙のように樹脂を発泡形成させかつその発泡倍率を上げることでボリューム感を上げることができる。
しかしながら、樹脂層を厚くすると、表面強度を保つことが出来ず、表面強度が低下するものとなってしまう。さらにエンボスによる表面の凹凸形状もシャープな再現性が得られないものとなってしまうという問題があった。
また、壁紙製品が国土交通省の不燃認定を取得するためには、建築基準法施工令第4章第108条の2に規定された不燃性能及びその技的基準を満たす必要があるが、ボリューム感を維持しながら不燃性能を付与するには、高コストである無機質を添加した裏打紙を使用するなどの対策が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-38265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、裏打紙と樹脂層とからなる壁紙において、不陸隠蔽性を得るのに十分なボリューム感を有しかつ不燃認定を取得できるレベルの不燃性能を有する壁装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するために、本発明の一態様である壁紙は、裏打紙の上に発泡した樹脂層が形成され、上記裏打紙は、坪量50g/m2以上100g/m2以下、かつ厚さ80μm以上150μm以下であり、上記樹脂層は、坪量50g/m2以上220g/m2以下、かつ3倍以上の発泡倍率であり、上記樹脂層と上記裏打紙の坪量の合計が270g/m2以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の態様である壁紙によれば、不陸隠蔽性を得るのに十分なボリューム感を有し且つ不燃認定を取得できる壁紙を提供可能となる。
本発明の壁紙が有する不燃性とは、ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメーター試験機を用いて燃焼試験において、加熱開始後20分の総発熱量が6.5MJ/m2以下であり、加熱開始後20分間の最大発熱速度が200kW/m2を超える時間が0秒であり、加熱開始後20分間の試験終了後において、裏面まで貫通する亀裂や穴無しを満足する不燃性を指す。」
(ウ)「【0014】
<作用その他>
本実施形態の壁紙によれば、不陸隠蔽性を得るのに十分なボリューム感を有しかつ不燃認定を取得できる壁紙を提供可能となる。
また、優れた表面強度を有することで、凹凸模様5をエンボス等により設けても、凹凸形状をシャープに再現することができる壁装材を得ることができる。
また、樹脂層2に無機粉体を添加する場合には、樹脂層2が従来よりも少なく出来、紙が多いことから、裏打紙1に無機質材料を添加しなくても不燃性を得ることが可能なものとなる。
また、樹脂層2を構成する樹脂の重合度を1000以上とすることで、壁紙の強度を向上させることが出来る。」
(エ)「【0016】
<実施例2>
壁紙用裏打紙1として、坪量65g/m2厚さ110μmの普通紙(日本製紙
(株):「NI65AT」)を用いた。
その壁紙用裏打紙1の上に、塩化ビニル系樹脂(東ソー(株)製:「SP-039」、重合度1050)に無機粉体100部を加えたペーストを坪量205g/m2となるようにコーティング法により塗布して樹脂層2を形成し、その上に、水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄印刷を行い、加熱発泡(発泡倍率3倍)と同時にエンボスロールにて加圧してエンボス付与を行い、その後冷却、乾燥して実施例2の壁紙とした。
・・・
【0018】
<評価方法>
ボリューム感は、ダイヤルシクネスゲージを用いた厚さ測定を行い、厚さが0.4mmを超えているか否かで評価した。
不陸隠蔽性は、厚さ110μm、直径20mmの円形シールを準不燃規格の石膏ボード(厚さ9.5mm)に1枚貼り、側面から光を当てて目視で場所を特定できるか否かを評価した。
不燃性能は、建築基準法施工令第4章第108条の2に規定された不燃性能を有することを、東洋精機製作所の燃焼試験機「コーンカロリーメーターC3」を用いて評価した。
すなわち、加熱開始後20分の総発熱量が6.5MJ/m2以下であり、加熱開始後20分間の最大発熱速度が200kW/m2を超える時間が0秒であり、加熱開始後20分間の試験終了後において、裏面まで貫通する亀裂や穴無の場合を合格「○」とした。
表面強度は、壁紙工業会制定の規格「表面強化壁紙性能規定」に準拠した試験により、引っ掻き時の表面の破損状態を目視判定し、原紙層が露出するか否かを評価した。
【0019】
<評価結果>
評価結果を表1に示す。
【表1】
「
[図:0001434133000002.jpg]
」
(オ)上記(エ)の表1からは、実施例2の「不燃性能」が「○」であることが理解でき、段落【0018】の「評価方法」の記載を踏まえると、実施例2の壁紙は、東洋精機製作所の燃焼試験機「コーンカロリーメーターC3」を用いて評価した、建築基準法施行令第108条の2に規定された不燃性能の評価において、加熱開始後20分の総発熱量が6.5MJ/m2以下であり、加熱開始後20分間の最大発熱速度が200kW/m2を超える時間が0秒であり、加熱開始後20分間の試験終了後において、裏面まで貫通する亀裂や穴無であって、不燃性能を有すると評価されたことが理解できる。
イ 引用発明A
上記アより、引用文献Aには、以下の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明A)
裏打紙の上に発泡した樹脂層が形成される、不燃性を有する壁紙であって、(【0001】、【0005】)
実施例とされた、
壁紙用裏打紙1として、坪量65g/m2の普通紙を用い、(【0016】)
その壁紙用裏打紙1の上に、塩化ビニル系樹脂に無機粉体100部を加えたペーストを坪量205g/m2となるようにコーティング法により塗布して樹脂層2を形成し、その上に、水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄印刷を行い、加熱発泡と同時にエンボスロールにて加圧してエンボス付与を行い、その後冷却、乾燥した壁紙は、(【0016】)
建築基準法施行令第108条の2に規定された不燃性能の評価において、加熱開始後20分の総発熱量が6.5MJ/m2以下であり、加熱開始後20分間の最大発熱速度が200kW/m2を超える時間が0秒であり、加熱開始後20分間の試験終了後において、裏面まで貫通する亀裂や穴無であって、不燃性能を有すると評価された(上記(オ))、
壁紙。
第6 当審の判断
1 実施可能要件(特許法36条4項1号)
(1)本件発明1、5、6はそれぞれ、「前記化粧シートは、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」るとの構成を備えるものであり、本件発明2~4は本件発明1を、本件発明7は本件発明6を、それぞれ引用するものであるから、本件発明1~7は、いずれも、「前記化粧シートは、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」るとの構成を備える。
(2)本件明細書には、以下の記載がある。
ア 段落【0024】~【0029】
「【0024】
(化粧シート)
化粧シート4としては、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料を用いる。化粧シート4としては、例えば、発泡樹脂層6と、発泡樹脂層6の基材ボード2と反対側の面6a側に形成された絵柄模様層7とを備える発泡壁紙を採用することができる。発泡樹脂層6は、樹脂と、発泡剤(例えば、熱分解型発泡剤、マイクロカプセル型発泡剤)とを含む樹脂組成物による層に発泡処理を行って形成される。発泡樹脂層6を構成する樹脂としては、例えば、塩ビ系樹脂、オレフィン系樹脂を採用することができる。発泡樹脂層6の総質量は、400g/m2以下とする。また、発泡樹脂層6の有機質量は、260g/m2以下とする。260g/m2より大きい場合には、不燃性能が低下する。
・・・
【0027】
以上説明したように、本実施形態に係る化粧ボード1では、基材ボード2と、基材ボード2の一方の面2a側に貼り付けられ、発泡樹脂層6と、発泡樹脂層6の基材ボード2と反対側の面6a側に形成された絵柄模様層7とを有する化粧シート4とを備えた。そして、基材ボード2を平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料とし、化粧シート4を、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料とした。また、化粧シート4に含まれる有機質量を260g/m2以下とした。また、貼り付けに用いられる接着剤3を、でんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとの比率が100:0~80:20で構成された接着剤とした。
【0028】
それゆえ、基材ボード2が不燃性能を有し、化粧シート4の有機質量が適切な範囲に制限され、接着剤3の配合比率及び塗布量が適切な範囲に調節されるため、マンションやホテル等の特殊建築物にも使用可能な準不燃性を持たせることができる。また、化粧シートが貼り付けられているため、意匠性を向上できる。それゆえ、準不燃性を有するとともに、意匠性に優れた化粧ボード1を提供できる。また、このような化粧ボード1を用いた内装壁は、石膏ボードの施工、パテ埋め、乾燥、壁面施工、乾燥等の工程数が多く且つ時間も要する一般的な内装壁と異なり、軽量鉄骨や壁材に直接施工するのみで後の工程が不要なため、省施工が期待できる。また、基材ボード2を施工することで壁面施工が完了するため、下地の不陸、地震や経時による化粧シート4のひび割れ・破れを防止できる。
【0029】
また、本実施形態に係る化粧ボード1では、ISO5660-1に準拠し、建築基準法施工例(昭和25年政令第338号)第1条第5号(準不燃材料)の規定に基づく加熱試験において、(1)加熱開始後10分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、(2)加熱開始後10分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がなく、(3)加熱開始後10分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない条件を満たす準不燃性を有するようにした。それゆえ、マンションやホテル等の特殊建築物にも使用できる。
また、本実施形態に係る化粧ボード1では、貼り付けに用いられる接着剤3をでんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとを95:5~80:20の比率で含むものとし、接着剤3の塗布量を固形分換算で20g/m2以上60g/m2以下としたため、密着性を向上することができる。」
イ 段落【0030】~【0038】
「【実施例】
【0030】
以下に、本発明の実施形態に係る化粧ボード1の第1の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、裏打材5として、坪量65g/m2の普通紙(日本製紙(株)製:「NI65AT」)を用意した。続いて、裏打材5の表面に、EVA樹脂(住化ケムテックス製:「S-7400(HQ)」)100質量部に対して、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤(松本油脂製薬:「FT-16」)12.2質量部と、無機粉体である炭酸カルシウム(朝日鉱末製:「MC-100」)90質量部を加えたペーストをコーティング法により塗布して、発泡樹脂層6を形成した。発泡樹脂層6の有機質量は、200g/m2とした。続いて、発泡樹脂層6の表面に、グラビア印刷法によりアクリル樹脂系インキで絵柄模様の印刷を行って、絵柄印刷層を形成した。絵柄印刷層の坪量は、2g/m2とした。続いて、絵柄印刷層の表面に、グラビアコート法でアクリル系トップコートを塗布して、トップコート層8を形成した。トップコート層の坪量は、5g/m2とした。続いて、発泡剤を加熱発泡させ、表面保護層側の面にエンボスロール加圧によってエンボス模様を付与し、全体を冷却・乾燥させて、準不燃の不燃性能を持つ化粧シート4(準不燃材料)を形成した。
【0031】
続いて、形成した化粧シート4の裏打材5に、リップコーターを用いて、でんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとを配合した接着剤3を塗工した後、55℃の温風で60秒乾燥させた。合成樹脂エマルジョンとしては、エチレン酢酸ビニル樹脂を用いた。また、接着剤3の塗布量は、固形分換算で40g/m2とした。続いて、塗工した接着剤3を介して、化粧シート4を基材ボード2に貼り付けた。基材ボード2としては、準不燃材料(QM-9828)の不燃性能を持つ、厚さ9.5mm、スクエアエッジの石膏ボード(タイガーボード GB-R9)を用いた。続いて、化粧シート4の表面に、熱ロールによりエバールフィルムでラミネートを行った。これにより、実施例1の化粧シート4を作製した。
・・・
【0036】
(性能評価)
実施例1~9、比較例1~4の化粧ボード1に対して、以下の性能評価を行った。
(不燃性能)
準不燃性評価では、ISO5660-1に準拠し、建築基準法施工例(昭和25年政令第338号)第1条第5号(準不燃材料)の規定に基づく加熱試験において、以下の基準(1)(2)(3)のすべてを満足するかを判定した。そして、満足すると判定した場合を合格「○」とし、満足しないと判定した場合を不合格「×」とした。
(1)加熱開始後10分間の総発熱量が8MJ/m2以下
(2)加熱開始後10分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がない
(3)加熱開始後10分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない
・・・
(評価結果)
評価結果を表1に示す。表1では、「不燃性能」「密着性」の評価結果に加え、これらの評価結果を基にした「総合評価」の結果も示した。「総合評価」では、「○」「△」を合格とし、「×」を不合格とする。
【0038】
【表1】
[図:0001434133000003.jpg]
」
(3)また、平成12年建設省告示第1401号の記載は、上記第5の1(2)ア(エ)のとおりである。
(4)当審の判断
ア 実施可能要件について
特許法36条4項1号は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」と規定している。
本件発明1、5は物の発明であるところ、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があることを要すると解される。
本件発明6は方法の発明であるところ、方法の発明にあっては、その方法を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その方法を使用することができる程度にその発明が記載されていることを要すると解される。
そこで、以下、この判断基準に照らして検討する。
イ 本件明細書等には、化粧シートを「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」るものとすることについて、上記(2)のとおり、「化粧シート4としては、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料を用いる。」こと(【0024】)及び「化粧シート4を、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料とした。」こと(【0027】)が記載されている。
段落【0024】には、「化粧シート4としては、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料を用いる。化粧シート4としては、例えば、発泡樹脂層6と、発泡樹脂層6の基材ボード2と反対側の面6a側に形成された絵柄模様層7とを備える発泡壁紙を採用することができる。・・・また、発泡樹脂層6の有機質量は、260g/m2以下とする。260g/m2より大きい場合には、不燃性能が低下する。」と記載され、段落【0027】に「以上説明したように、本実施形態に係る化粧ボード1では、基材ボード2と、基材ボード2の一方の面2a側に貼り付けられ、発泡樹脂層6と、発泡樹脂層6の基材ボード2と反対側の面6a側に形成された絵柄模様層7とを有する化粧シート4とを備えた。そして、基材ボード2を平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料とし、化粧シート4を、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料とした。また、化粧シート4に含まれる有機質量を260g/m2以下とした。また、貼り付けに用いられる接着剤3を、でんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとの比率が100:0~80:20で構成された接着剤とした。」と記載される。
ウ 平成12年建設省告示第1401号の第1第一号は、
「 一 不燃材料のうち通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後10分間令第108条の2各号に掲げる要件を満たしているもの」であり、本件明細書段落【0029】の準不燃性評価である
「(1)加熱開始後10分間の総発熱量が8MJ/m2以下である
(2)加熱開始後10分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がない
(3)加熱開始後10分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない」を満たすことによって、上記平成12年建設省告示第1401号の第1第一号の要件に適合するものと理解できる。
エ 本件明細書に記載された実施例は、段落【0029】と同様の要件が示される段落【0036】に示された評価基準により、化粧ボード1、すなわち、平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料、又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料である基材ボードと、前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられる化粧シートとを、でんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとの比率が100:0~80:20で構成された接着剤を、固形分換算で60g/m2以下の塗布量で貼り付けた化粧ボード1について、準不燃性評価を行ったものである。
そうすると、発泡樹脂層6の有機質量が260g/m2以下とした化粧シートについて、本件実施例1~9の態様で使用されたときに、この化粧シートを備えた化粧ボード1が【0036】の準不燃性評価を満足するものとすることは、当業者が、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度に記載されているといえる。
しかし、本件発明1、5、6はそれぞれ、「前記化粧シートは、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」るとの構成を備えるものである。そして、本件明細書等は、「化粧シート」が「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」ることについて、段落【0036】のような準不燃性評価を示すものではない。また、「発泡樹脂層6の有機質量が260g/m2以下とした化粧シート」であれば「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料」とされた、例えば第1第二号の「厚さが9ミリメートル以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.6ミリメートル以下のものに限る。)」と同視できる準不燃の性能を有することが技術常識ともいえない。そして、化粧シートを準不燃性を有するものとすることが技術常識でもないから、本件の発明の詳細な説明は、本件発明1、5、6の「前記化粧シートは、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」ることについて、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるものではない。
本件発明1及び6の記載を直接・間接的に引用する本件発明2~4及び7に係る発明についても、いずれも、「前記化粧シートは、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」るとの構成を備えるから、本件の発明の詳細な説明が、当業者が実施ができる程度に明確かつ十分に記載されていないことについては、本件発明1、5、6と同様である。
オ 特許権者の主張について
(ア) 特許権者は、令和7年9月11日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)の4頁13~22行において、実施可能要件について、以下の主張をする。
「本件明細書【0024】に「また、発泡樹脂層6の有機質量は、260g/m2以下とする。260g/m2より大きい場合には、不燃性能が低下する。」と記載されているように、本件発明1の化粧ボードの施工構造において、化粧シートを構成する発泡樹脂層の有機質量が260g/m2以下であることで、化粧シートは平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料となっている。具体的には、告示第1401号の第1第一号を満たすものとなっている。
そして、発泡樹脂層を含む化粧シートが平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料である場合、当該化粧シートが告示第1401号の第1第二~第六号ではなく、第一号を満たすものであることは、当業者にとっては自明なことである。
よって、「前記化粧シートは、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」るとの構成は、本件明細書の発明の詳細な説明において、当業者が実施ができる程度に明確かつ十分に記載されている、と言うことができる。」
(イ)主張の検討
特許権者は、本件発明1の化粧ボードの施工構造において、化粧シートを構成する発泡樹脂層の有機質量が260g/m2以下であることで、化粧シートは平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料となっている旨主張するところ、上記エにおいて特許権者の主張のとおり、平成12年建設省告示第1401号の第1第一号に該当するかについて検討したが、化粧ボードについては段落【0036】の準不燃性評価において合格とされることから平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料となっているといえても、化粧シートについて、化粧シートを構成する発泡樹脂層の有機質量が260g/m2以下であることをもって、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料となっているとはいえない。
よって、特許権者の主張を考慮しても、上記エの判断は左右されない。
カ 小括
以上のとおりであるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1~7について、当業者が実施ができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
2 進歩性(本件発明1)
(1)対比
本件発明1と甲1施工構造発明とを対比する。
ア 甲1施工構造発明の「せっこうボード」、「せっこうボードに固定される窯業系化粧板」、「せっこうボードと窯業系化粧板とを固定する両面粘着テープ」及び「窯業系化粧板の施工構造」は、それぞれ、本件発明1の「下地材」、「当該下地材に固定される化粧ボード」、「前記下地材と前記化粧ボードとを接着する両面テープ」及び「化粧ボードの施工構造」に相当する。
イ 甲1施工構造発明の「両面粘着テープ」が「弾性ポリマーフォーム基材の両面に、アクリル系粘着剤またはポリエステル系粘着剤を塗布してなるものであ」ることは、本件発明1の「前記両面テープは、基材と、前記基材の表裏面にそれぞれ位置する接着層と、を備え」ることに相当する。
ウ 甲1施工構造発明の「下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定するものであ」ることは、本件発明1の「前記両面テープのみを用いて、前記化粧ボードを前記下地材に直接接着」することに相当する。
エ 本件発明1の「前記化粧ボードは、基材ボードと、前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられ、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の前記基材ボードと反対側の面側に形成された絵柄模様層とを有する化粧シートと、を備え」ることと、甲1施工構造発明の「窯業系化粧板は、基板となる窯業系ボードの片側の面に、シート貼り等により化粧層を形成させた」ものであることとは、「前記化粧ボードは、基材ボードと、前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられ」る、「化粧シートと、を備え」る点で共通する。
オ 甲1施工構造発明の「窯業系化粧板」は、「不燃性」であって「建築基準法の内装制限を受けるような大型の建築物に必要な不燃性能を容易に確保出来る」ものであり、例えば、甲1施工構造発明において「窯業系化粧板」として使用される「厚さ6mmの化粧けい酸カルシウム板」である「ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製」は、不燃認定を受けた化粧けい酸カルシウム板である(不燃認定番号NM-4487)。
また、甲1施工構造発明の「基板となる窯業系ボード」(本件発明1の「基材ボード」に相当)としては、「繊維強化セメント板、繊維強化せっこう板等が挙げられ」、「繊維強化セメント板の一種であるけい酸カルシウム板」が特に好適とされるところ、「繊維強化セメント板の一種であるけい酸カルシウム板」は、繊維強化がされたものであり「繊維混入けい酸カルシウム板」であるといえる。
そして、「厚さが5ミリメートル以上の繊維混入けい酸カルシウム板」が平成12年5月30日建設省告示1400号においていわゆる不燃材料として例示されるところ(甲3 5頁、別表1)、上述の「厚さ6mmの化粧けい酸カルシウム板」である「ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製」が不燃認定を受けた化粧けい酸カルシウム板であることを踏まえると、甲1施工構造発明において「窯業系ボード」として使用される「けい酸カルシウム板」は、不燃材料であり、準不燃材料としての性能も備えるものであるといえる。
そうすると、甲1施工構造発明は、「前記基材ボードは、平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料、又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」ることに相当する構成を備える。
カ 上記ア~オより、本件発明1と甲1施工構造発明とは、以下の一致点、相違点を備える。
(一致点)
下地材と、当該下地材に固定される化粧ボードと、前記下地材と前記化粧ボードとを接着する両面テープと、を備える化粧ボードの施工構造であって、
前記両面テープは、基材と、前記基材の表裏面にそれぞれ位置する接着層と、を備え、
前記両面テープのみを用いて、前記化粧ボードを前記下地材に直接接着し、
前記化粧ボードは、
基材ボードと、
前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられる化粧シートと、を備え、
前記基材ボードは、平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料、又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料である、
化粧ボードの施工構造。
(相違点1)
本件発明1は、化粧シートが、「発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の前記基材ボードと反対側の面側に形成された絵柄模様層とを有する」ものであり、「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であり、前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、200g/m2以上260g/m2以下であ」り、「前記基材ボードと前記発泡樹脂層との間に裏打材を有する」のに対し、甲1施工構造発明は、そのように特定されない点。
(相違点2)
本件発明1は、「前記貼り付けに用いられる接着剤は、でんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとの比率が100:0~80:20で構成された接着剤であり、前記接着剤の塗布量は、固形分換算で60g/m2以下である」と特定されているのに対し、甲1施工構造発明は、そのように特定されない点。
(2)判断
ア 相違点1
上記相違点1について検討する。
(ア)本件発明1の「化粧シート」について
a 本件発明1の「化粧シート」が「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」ることについて、上記1において示したように、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
b 「化粧シート」が「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」ることについて、本件明細書には、「化粧シート4としては、平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料を用いる。化粧シート4としては、例えば、発泡樹脂層6と、発泡樹脂層6の基材ボード2と反対側の面6a側に形成された絵柄模様層7とを備える発泡壁紙を採用することができる。発泡樹脂層6は、樹脂と、発泡剤(例えば、熱分解型発泡剤、マイクロカプセル型発泡剤)とを含む樹脂組成物による層に発泡処理を行って形成される。発泡樹脂層6を構成する樹脂としては、例えば、塩ビ系樹脂、オレフィン系樹脂を採用することができる。発泡樹脂層6の総質量は、400g/m2以下とする。また、発泡樹脂層6の有機質量は、260g/m2以下とする。260g/m2より大きい場合には、不燃性能が低下する。」と記載される(【0024】)。
また、実施例において「裏打材5の表面」に「発泡樹脂層6を形成」し、「発泡樹脂層6の表面」に「絵柄印刷層を形成」した「発泡壁紙」について記載され(【0030】~【0032】)、この「発泡壁紙」が「平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料」とした「基材ボード2」と共に用いられ、「化粧シート4に含まれる有機質量を260g/m2以下」とする等調整して得られた「化粧ボード1」が「性能評価」(【0036】)の(不燃性能)において、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第1条第5号(準不燃材料)の規定に基づく加熱試験において、「準不燃性を有するものである」と判定されることが記載される。
そこで、以下では、「化粧シート」について、本件明細書の実施例に記載された「発泡壁紙」であれば本件発明において規定するところの「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料」である蓋然性が高いものであると仮定して検討する。
(イ)本件発明1と引用発明Aとの対比
a 引用発明Aの「壁紙用裏打紙1の上」に「樹脂層2を形成し」た「壁紙」の「樹脂層2」を「加熱発泡」した層は、本件発明1の「化粧シート」の「発泡樹脂層」に相当する。
b 引用発明Aの「壁紙」の「樹脂層2」の上の「絵柄印刷を行」った層は、本件発明1の「絵柄模様層」に相当する。
c ここで、引用発明Aの「壁紙」が「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料」である蓋然性について、検討する。
(a)まず、本件明細書の実施例についてみると、本件明細書には、実施例1として「まず、裏打材5として、坪量65g/m2の普通紙(日本製紙(株)製:「NI65AT」)を用意した。続いて、裏打材5の表面に、EVA樹脂(住化ケムテックス製:「S-7400(HQ)」)100質量部に対して、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤(松本油脂製薬:「FT-16」)12.2質量部と、無機粉体である炭酸カルシウム(朝日鉱末製:「MC-100」)90質量部を加えたペーストをコーティング法により塗布して、発泡樹脂層6を形成した。発泡樹脂層6の有機質量は、200g/m2とした。続いて、発泡樹脂層6の表面に、グラビア印刷法によりアクリル樹脂系インキで絵柄模様の印刷を行って、絵柄印刷層を形成した。絵柄印刷層の坪量は、2g/m 2とした。続いて、絵柄印刷層の表面に、グラビアコート法でアクリル系トップコートを塗布して、トップコート層8を形成した。トップコート層の坪量は、5g/m2とした。続いて、発泡剤を加熱発泡させ、表面保護層側の面にエンボスロール加圧によってエンボス模様を付与し、全体を冷却・乾燥させて、準不燃の不燃性能を持つ化粧シート4(準不燃材料)を形成した。」(【0030】)と記載され、「実施例2では、化粧シート4として、塩化ビニル系樹脂(東ソー(株)製:「T-70A」)100質量部に対して、充填剤(備北粉化工業(株)製:「BF-200S」)165質量部と、発泡剤((株)ユニセル製:「OH-300N」)2.5質量部とを加えたペーストを塗布してなる発泡樹脂層6を有する塩ビ系壁紙を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2の化粧ボード1を作製した。」(【0032】)と記載されている。
実施例2に着目すると、本件において、塩化ビニル系樹脂と、発泡剤とを含む樹脂組成物による層に発泡処理を行って形成される発泡樹脂層を裏打材としての坪量65g/m2の普通紙に設け、絵柄印刷層を形成した塩ビ系壁紙であって、発泡樹脂層6の有機質量は、200g/m 2としたものを「化粧シート」としていることが理解できる。
また、本件明細書において、不燃性能の評価としての「準不燃性評価」は、「準不燃性評価では、ISO5660-1に準拠し、建築基準法施工例(昭和25年政令第338号)第1条第5号(準不燃材料)の規定に基づく加熱試験において、以下の基準(1)(2)(3)のすべてを満足するかを判定した。そして、満足すると判定した場合を合格「○」とし、満足しないと判定した場合を不合格「×」とした。
(1)加熱開始後10分間の総発熱量が8MJ/m2以下(2)加熱開始後10分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がない(3)加熱開始後10分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない」(【0036】)としている。
(b)次に、引用発明Aの「壁紙」についてみる。引用発明Aの「実施例」の「壁紙」は、「壁紙用裏打紙1として、坪量65g/m2」の「普通紙」を用い、「その壁紙用裏打紙1の上に、塩化ビニル系樹脂に無機粉体100部を加えたペーストを坪量205g/m2となるようにコーティング法により塗布して樹脂層2を形成し、その上に、水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄印刷を行い、加熱発泡と同時にエンボスロールにて加圧してエンボス付与を行い、その後冷却、乾燥して壁紙とした」ものである。
また、当該壁紙は、建築基準法施行令第108条の2に規定された不燃性能の評価において、加熱開始後20分の総発熱量が6.5MJ/m2以下であり、加熱開始後20分間の最大発熱速度が200kW/m2を超える時間が0秒であり、加熱開始後20分間の試験終了後において、裏面まで貫通する亀裂や穴無であって、不燃性能を有すると評価されたものである。
(c)上記(a)及び(b)より、引用発明Aの壁紙は、本件明細書に記載された塩ビ系壁紙同様、普通紙に形成されたポリ塩化ビニルの発泡樹脂層を備えたものであって、主要な層構成と使用する材料が本件明細書に「準不燃材料」として採用できるとして示された、「発泡樹脂層6と、発泡樹脂層6の基材ボード2と反対側の面6a側に形成された絵柄模様層7とを備える発泡壁紙」と同視できるものであり、不燃性能の評価も、本件明細書段落【0036】の「準不燃性評価」において「合格」とされる条件を満たすものであるから、本件実施例同様の不燃性能を有するものであり、本件発明1の「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料」である蓋然性が高い。
d 引用発明Aの「実施例」の「壁紙」の「樹脂層2」は、「塩化ビニル系樹脂に無機粉体100部を加えたペーストを坪量205g/m2となるようにコーティング法により塗布して樹脂層2を形成」されるものであるから、粉体100部を含む「樹脂層2」全体が「坪量205g/m2」であって、樹脂層に含まれる有機質量も205g未満であることは自明である。そうすると、引用発明Aは、本件発明1の「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量」について「260g/m2以下であ」ることに相当する構成を備える。
e 以上のとおりであるから、引用発明Aの「実施例」の「壁紙」は、相違点1に係る本件発明1の「発泡樹脂層」と、「絵柄模様層」とを有するものであり、本件実施例同様ないしそれ以上の不燃性能を有するものであって「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料」である蓋然性が高いものであり、「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、260g/m2以下であ」る「化粧シート」である。
(ウ)甲1施工構造発明へ引用発明Aを適用した際に「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量」を「200g/m2以上であ」るものとすることについて
a まず、本件発明1において、「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量」を「200g/m2以上であ」るとすることの技術的意義について検討する。
「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量」を「200g/m2以上であ」るとすることは、本件訂正において、実施例1、2の発泡樹脂層の有機質量が200g/m2であることを根拠として導入された発明特定事項であり、本件明細書等には、「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量」を「200g/m2以上であ」ることの技術的意義は何ら示されていない。
b 次に、甲1施工構造発明への引用発明Aの適用について検討する。
甲1施工構造発明の「窯業系化粧板」は、「建築基準法の内装制限を受けるような大型の建築物に必要な不燃性能を容易に確保出来る」ものであるところ、「繊維強化セメント板、繊維強化せっこう板」等の「基板」の「片側の面」に、「シート貼り等により化粧層を形成させた」ものである。
そして、引用発明Aは、「不燃性を有する壁紙」であるから、甲1施工構造発明の「窯業系化粧板」の「基板」の「片側の面」において「化粧層」を形成する「シート」として、引用発明Aの「壁紙」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用発明Aの「壁紙」を採用するにあたっては、絵柄が視認できるように基材と反対側に積層することは自明であり、引用発明Aの「壁紙用裏打紙1」は、「加熱発泡」される「樹脂層2」の「絵柄印刷」される層の反対側にあることから、甲1施工構造発明に引用発明Aの「壁紙」を採用すると「前記基材ボードと前記発泡樹脂層との間に裏打材を有する」ものとなる。
c 最後に、引用発明Aの「発泡樹脂層に含まれる有機質量」が「200g/m2以上」とされていないことから、甲1施工構造発明への引用発明Aの適用した際に「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量」を「200g/m2以上であ」るものとすることについて検討する。
(a)引用発明Aの「実施例」の不燃性能の評価が不燃性である壁紙、すなわち、「建築基準法施行令第108条の2に規定された不燃性能の評価において、加熱開始後20分の総発熱量が6.5MJ/m2以下であり、加熱開始後20分間の最大発熱速度が200kW/m2を超える時間が0秒であり、加熱開始後20分間の試験終了後において、裏面まで貫通する亀裂や穴無であって、不燃性能を有すると評価された」「壁紙」は、本件発明1の不燃性能の評価が準不燃性であるもの、すなわち、(1)加熱開始後10分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、(2)加熱開始後10分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がなく、(3)加熱開始後10分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない条件を満たし、準不燃と認定されることで使用可能となるもの(本件明細書段落【0029】、第6の1(1)ア)よりもさらに不燃性の性能の高いものである。
(b)ところで、化粧シートないし化粧シートを貼り付けた化粧ボードの不燃性能は、建築物の内装制限に沿って選択すべきものであり、内装制限において準不燃の材料が許容されるものにおいては、引用発明Aの上記壁紙ほどに不燃性能を高めなくとも、上記の準不燃性の不燃性能の評価を満足し、準不燃と認定されることで使用可能となるものである。
そして、「発泡樹脂層に含まれる有機質量」が不燃性と相関し、「発泡樹脂層に含まれる有機質量」が多いほど不燃性が低下し、少ないほど不燃性は向上することは技術常識であるから、不燃性能として準不燃とする場合には、不燃性を所望の性能とできる範囲において、発泡樹脂層に含まれる有機質量を適宜調整できるのであって、引用発明Aの壁紙を採用する際に、化粧シートの有機質量として「200g/m2以上であ」るものとできない理由はない。
d 上記a~cを総合すると、本件発明1において「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量」を「200g/m2以上」することに特段の技術的意義を有するものではないから、甲1施工構造発明において引用発明Aの「壁紙」を採用する際に、必要とされる内装制限に応じて「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量」を「200g/m2以上」とし、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2
上記相違点2について検討する。
「一般社団法人 日本壁装協会の壁紙品質情報管理システムに登録している壁紙で、防火壁装材料の認定仕様に基づく施工を適法に行うための共通的注意事項をまとめた」仕様書である甲3には、「施工用接着剤」について、「接着剤の配合は、・・・でんぷん系接着剤を使用する。下地基材の種類、防火壁装材料の種類によりアクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂または酢酸ビニル系樹脂を補強剤・・・として混ぜて使う。その際の配合率はでんぷん80部に対して20部までとし、これを水30部で希釈したものを使用する。」と記載され、「接着剤の使用量は、・・・60g/m2(固形換算量)・・・以下であること」と記載される。
上述のように甲3は、防火壁装材料の認定仕様に基づく施工を適法に行うための共通的注意事項をまとめたものであるから、接着剤についても、壁紙を防火壁装材料として使用する際に所要の防火の性能とするために適切なものとして定められていると認められる。
甲1施工構造発明において、「基板となる窯業系ボードの片側の面」に、「シート」を「貼り」つけるにあたり、壁紙を防火壁装材料として適切に使用するよう、甲3の仕様書に記載のとおり、「でんぷん系接着剤を使用」し、「アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂または酢酸ビニル系樹脂を補強剤」として混ぜて使う際には「その際の配合率はでんぷん80部に対して20部まで」とするとともに、「接着剤の使用量」は、「60g/m2(固形換算量)以下」とし、すなわち、「貼り付けに用いられる接着剤は、でんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとの比率が100:0~80:20で構成された接着剤であり、前記接着剤の塗布量は、固形分換算で60g/m2以下である」ものとし、もって、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(3)特許権者の主張について
ア 特許権者の主張
特許権者は、意見書5頁1行~6頁5行において、概略以下の主張をする。
引用発明Aの「樹脂層に含まれる有機質量」の上限値は150g/m2よりも小さく、つまり、本件発明の「樹脂層に含まれる有機質量」の下限値200g/m2よりかなり小さくなる。また、引用発明Aの実施例1,2では、樹脂層はいずれも{「塩化ビニル系樹脂に無機粉体100部を加えたペースト」を坪量205g/m2となるようにコーティング法により塗布して形成し、}と記載されている。これは、「塩化ビニル系樹脂100部に対して無機粉体100部を加えたペースト」と記載すべきところ、「100部に対して」を記載し忘れたものと思われる。そうすると、引用発明Aの実施例1,2では、樹脂層における塩化ビニル系樹脂の含有割合は半分であり、「樹脂層に含まれる有機質量」は坪量205g/m2の半分の102.5g/m2(200g/m2未満)となっている。このように、引用発明Aの「樹脂層に含まれる有機質量」は200g/m2未満となっているだけでなく、そもそも引用発明Aには「樹脂層の坪量」を規定することは記載されているが、「樹脂層に含まれる有機質量」を規定することについては記載も示唆もない。
また、甲1、甲3、甲6にも、「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、200g/m2以上260g/m2以下」が記載されていないし、これを示唆する記載もない。
さらに、発泡樹脂層に含まれる有機質量が少ないほど、不燃性は向上するが、加工性および生産性が低下する。本件発明1、5、6では「発泡樹脂層に含まれる有機質量を200g/m2以上260g/m2以下」とすることで、不燃性と加工性および生産性とが両立できるという有用な効果が得られる。
よって、当業者が、甲1発明、引用文献Aおよび甲3に記載された事項を組み合わせたとしても、本件発明1、5、6に容易に想到することはない。
イ 主張の検討
引用文献Aは、不燃性能を一定以上とするために、可燃である樹脂層と裏打紙の坪量の合計を所定値以下とするものであり、不燃性を考慮する上で、可燃である有機成分の量を考慮することは当然であるし、実際に引用発明Aにおいて発泡樹脂層に含まれる有機質量は、不燃性能を高めるために有効な量とされる「260g/m2以下」とする点でも本件発明と一致しているのであるから、「樹脂層に含まれる有機質量」が直接的に特定されていないことのみをもって、当業者が容易になし得たことではないということはできない。
また、「発泡樹脂層に含まれる有機質量を200g/m2以上」とすることについて、一般に、数値範囲の好適化は、当業者の通常の創作能力の発揮により適宜なし得る設計変更である。
そして、本件明細書等には「発泡樹脂層に含まれる有機質量を200g/m2以上」その技術的意義が記載されていない。また、意見書において主張された「発泡樹脂層に含まれる有機質量を200g/m2以上260g/m2以下」とすることで、不燃性と加工性及び生産性とが両立できるという有用な効果については、特に生産性及び加工性と不燃性との関係について本件明細書等に基づく効果の主張とはいえず、仮に主張する効果があるとしても、有機質量が、200g/m2未満であると両立し得ないといった臨界的意義を有するものでもなく、加工性や生産性を考慮したものとする程度のことは、当業者の通常の創作能力の発揮により適宜なし得る範囲であると認められる。そうすると、不燃性を所望の性能とできる範囲において、発泡樹脂層に含まれる有機質量の下限を適宜設定することは、当業者の通常の創作能力の発揮により適宜なし得たことであるから、甲1、甲3、甲6にも、「前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、200g/m2以上260g/m2以下」とすることが記載ないし示唆されていないことから、本件発明1、5、6に容易に想到することができないものとはいえない。
よって、特許権者の主張を考慮しても、上記(2)の判断は左右されない。
(4)小括
したがって、本件発明1は、甲1施工構造発明、引用発明A及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 進歩性(本件発明2)
(1)対比
本件発明2と甲1施工構造発明とを対比する。
ア 甲1施工構造発明の両面粘着テープの基材が「弾性ポリマーフォーム基材(ポリエチレン系樹脂フォーム)」であることは、本件発明2の「前記基材は、熱可塑性樹脂であ」ることに相当する。
イ 甲1施工構造発明の両面粘着テープの弾性ポリマーフォーム基材の両面に塗布してなるものが「アクリル系粘着剤」であることは、本件発明2の「前記接着層は、アクリル系又は合成ゴム系の粘着剤である」ことに相当する。
ウ そうすると、本件発明2と甲1施工構造発明とは、上記2(1)カの一致点に加え、「前記基材は、熱可塑性樹脂であり、前記接着層は、アクリル系又は合成ゴム系の粘着剤である」点で一致し、上記2(1)カの相違点1及び2で相違する。
(2)判断
相違点1及び2については、上記2(2)において検討したとおりである。
(3)小括
本件発明2は、甲1施工構造発明、引用発明A及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 進歩性(本件発明3)
(1)対比
本件発明3と甲1施工構造発明とを対比する。
ア 甲1施工構造発明の「両面粘着テープは、厚さ1mmの弾性ポリマーフォーム基材(ポリエチレン系樹脂フォーム)の両面にアクリル系無溶剤粘着剤を片面あたり約100μmの厚さで塗布したものであることは、本件発明3の「前記両面テープの厚みは、0.8~1.5mmである」ことに相当する。
イ そうすると、本件発明3と甲1施工構造発明とは、上記2(1)カの一致点に加え、「前記両面テープの厚みは、0.8~1.5mmである」点で一致し、上記2(1)カの相違点1及び2で相違する。
(2)判断
相違点1及び2については、上記2(2)において検討したとおりである。
(3)小括
本件発明3は、甲1施工構造発明、引用発明A及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 進歩性(本件発明4)
(1)対比
本件発明4と甲1施工構造発明とを対比すると、両者は、上記2(1)カの相違点1及び2のほか、以下の相違点3において相違し、その余の点で一致する。
(相違点3)
本件発明4は、「前記下地材は、離れて対向する一対のランナーと、前記一対のランナーの間をつなぐ複数本のスタッドと、を備え、前記両面テープの前記下地材側の前記接着層は、前記スタッドにのみに貼り付けられている」ものであるのに対し、甲1施工構造発明は下地材がせっこうボードである点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1及び2
上記相違点1及び2については、上記2(2)において検討したとおりである。
イ 相違点3
上記相違点3について検討する。
(ア)甲6発明の「建築物の床面側に固定される下部ランナー14Aと、天面側に固定される上部ランナー14B」及び「下部ランナー14Aと上部ランナー14Bの間に架設され」る「スタッド13A~13D」は、それぞれ、本件発明4の「離れて対向する一対のランナー」及び「前記一対のランナーの間をつなぐ複数本のスタッド」に相当する。
(イ)上記(ア)の対比を踏まえると、甲6発明の「スタッド13A~13Dとランナー14A,14Bは、フレーム状に組まれ、基礎フレーム12を構成」することは、本件発明4の「前記下地材は、離れて対向する一対のランナーと、前記一対のランナーの間をつなぐ複数本のスタッドと、を備え」ることに相当する。
(ウ)甲6発明の「両面粘着テープ20」が「縦桟であるスタッドのいずれかに取り付けられ」ることは、本件発明4の「前記両面テープの前記下地材側の前記接着層は、前記スタッドにのみに貼り付けられている」ことに相当する。
(エ)そうすると、甲6発明は、相違点3に係る本件発明4の「前記下地材は、離れて対向する一対のランナーと、前記一対のランナーの間をつなぐ複数本のスタッドと、を備え、前記両面テープの前記下地材側の前記接着層は、前記スタッドにのみに貼り付けられている」構成を備える。
(オ)甲1施工構造発明において、甲6発明の「基礎フレーム12」を「スタッド13A~13Dとランナー14A,14B」を「フレーム状に組」んで構成し、「両面粘着テープ20」を「縦桟であるスタッドのいずれかに取り付け」るものとする構成を採用し、相違点3に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(3)小括
本件発明4は、甲1施工構造発明、引用発明A、甲3に記載された事項及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 進歩性(本件発明5)
(1)対比
本件発明5と甲1化粧板発明とを対比する。
ア 甲1化粧板発明の「両面粘着テープを圧着した窯業系化粧板」は、本件発明5の「両面テープの一面が貼り付けられた化粧ボード」に相当する。
イ 甲1化粧板発明の「両面粘着テープ」が「弾性ポリマーフォーム基材の両面に、アクリル系粘着剤またはポリエステル系粘着剤を塗布してなるものであ」ることは、本件発明5の「前記両面テープは、基材と、前記基材の表裏面にそれぞれ位置する接着層と、を備え」ることに相当する。
ウ 甲1化粧板発明の「下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定する」ものであることは、本件発明5の「前記化粧ボードは、前記両面テープのみを用いて施工面に直接接着」されることに相当する。
エ 本件発明5の「前記化粧ボードは、基材ボードと、前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられ、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の前記基材ボードと反対側の面側に形成された絵柄模様層とを有する化粧シートと、を備え」ることと、甲1化粧板発明の「窯業系化粧板は、基板となる窯業系ボードの片側の面に、シート貼り等により化粧層を形成させた」ものであることとは、「前記化粧ボードは、基材ボードと、前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられ」る、「化粧シートと、を備え」る点で共通する。
オ 甲1化粧板発明の「窯業系化粧板」は、「不燃性」であって「建築基準法の内装制限を受けるような大型の建築物に必要な不燃性能を容易に確保出来る」ものであり、例えば、甲1化粧板発明において「窯業系化粧板」として使用される「厚さ6mmの化粧けい酸カルシウム板」である「ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製」は、不燃認定を受けた化粧けい酸カルシウム板である(不燃認定番号NM-4487)。
また、甲1化粧板発明の「基板となる窯業系ボード」(本件発明5の「基材ボード」に相当)としては、「繊維強化セメント板、繊維強化せっこう板等が挙げられ」、「繊維強化セメント板の一種であるけい酸カルシウム板」が特に好適とされるところ、「繊維強化セメント板の一種であるけい酸カルシウム板」は、繊維強化がされたものであり「繊維混入けい酸カルシウム板」であるといえる。
そして、「厚さが5ミリメートル以上の繊維混入けい酸カルシウム板」が平成12年5月3日建設省告示1400号においていわゆる不燃材料として例示されるところ(甲3 5頁、別表1)、上述の「厚さ6mmの化粧けい酸カルシウム板」である「ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製」が不燃認定を受けた化粧けい酸カルシウム板であることを踏まえると、甲1化粧板発明において「窯業系ボード」として使用される「けい酸カルシウム板」は、不燃材料であり、準不燃材料としての性能も備えるものであるといえる。
そうすると、甲1化粧板発明は、「前記基材ボードは、平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料、又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」ることに相当する構成を備える。
カ 上記ア~オより、本件発明5と甲1化粧板発明とは、以下の一致点、相違点を備える。
(一致点)
両面テープの一面が貼り付けられた化粧ボードであって、
前記両面テープは、基材と、前記基材の表裏面にそれぞれ位置する接着層と、
を備え、
前記化粧ボードは、前記両面テープのみを用いて施工面に直接接着され、
前記化粧ボードは、
基材ボードと、
前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられる化粧シートと、を備え、
前記基材ボードは、平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料、又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料である、化粧ボード。
(相違点1’)
本件発明5は、化粧シートが、「発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の前記基材ボードと反対側の面側に形成された絵柄模様層とを有する」ものであり、「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であり、前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、200g/m2以上260g/m2以下であ」り、「前記基材ボードと前記発泡樹脂層との間に裏打材を有する」のに対し、甲1化粧板発明は、そのように特定されない点。
(相違点2’)
本件発明5は、「前記貼り付けに用いられる接着剤は、でんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとの比率が100:0~80:20で構成された接着剤であり、前記接着剤の塗布量は、固形分換算で60g/m2以下である」と特定されているのに対し、甲1化粧板発明は、そのように特定されない点。
(2)判断
相違点1’及び2’については、上記2(1)カにおいて示した本件発明1と甲1施工構造発明との相違点である相違点1及び2と同様の点であり、甲1化粧板発明において、相違点1’及び2’に係る本件発明5の構成とすることは、上記2(2)において甲1施工構造発明に関し相違点1及び2について検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たことである。
(3)小括
本件発明5は、甲1化粧板発明、引用発明A及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 進歩性(本件発明6)
(1)対比
本件発明6と甲1方法発明とを対比する。
ア 甲1方法発明の「せっこうボード」、「せっこうボードの表面」に「固定」される「窯業系化粧板」及び「せっこうボードの表面に窯業系化粧板を」「固定する」「両面粘着テープ」は、それぞれ、本件発明6の「下地材」、「当該下地材に固定される化粧ボード」及び「前記下地材と前記化粧ボードとを接着する両面粘着テープ」に相当する。
イ 甲1方法発明の「両面粘着テープ」が「弾性ポリマーフォーム基材の両面に、アクリル系粘着剤またはポリエステル系粘着剤を塗布してなるものであ」ることは、本件発明6の「前記両面テープは、基材と、前記基材の表裏面にそれぞれ位置する接着層と、を備え」ることに相当する。
ウ 甲1方法発明の、「まず窯業系化粧板の裏面(せっこうボードと固定する面)に両面粘着テープを圧着し、該窯業系化粧板をせっこうボードの表面に圧着して固定するか」、「せっこうボードの表面に両面粘着テープを圧着し、当該両面粘着テープに窯業系化粧板の裏面を圧着して固定し」、「下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定するものであ」ることは、本件発明6の「前記下地材と前記化粧ボードとのいずれか一方に、前記基材の前記表裏面の一面に位置する前記接着層を直接貼り付けた後、前記基材の前記表裏面の他面に位置する前記接着層を、前記下地材と前記化粧ボードとのいずれか他方に直接貼り付け、前記両面テープのみを用いて、前記化粧ボードを前記下地材に直接接着」することに相当する。
エ 本件発明6の「前記化粧ボードは、基材ボードと、前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられ、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の前記基材ボードと反対側の面側に形成された絵柄模様層とを有する化粧シートと、を備え」ることと、甲1方法発明の「窯業系化粧板は、基板となる窯業系ボードの片側の面に、シート貼り等により化粧層を形成させた」ものであることとは、「前記化粧ボードは、基材ボードと、前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられ」る、「化粧シートと、を備え」る点で共通する。
オ 甲1方法発明の「窯業系化粧板」は、「不燃性」であって「建築基準法の内装制限を受けるような大型の建築物に必要な不燃性能を容易に確保出来る」ものであり、例えば、甲1方法発明において「窯業系化粧板」として使用される「厚さ6mmの化粧けい酸カルシウム板」である「ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製」は、不燃認定を受けた化粧けい酸カルシウム板である(不燃認定番号NM-4487)。
また、甲1方法発明の「基板となる窯業系ボード」(本件発明6の「基材ボード」に相当)としては、「繊維強化セメント板、繊維強化せっこう板等が挙げられ」、「繊維強化セメント板の一種であるけい酸カルシウム板」が特に好適とされるところ、「繊維強化セメント板の一種であるけい酸カルシウム板」は、繊維強化がされたものであり「繊維混入けい酸カルシウム板」であるといえる。
そして、「厚さが5ミリメートル以上の繊維混入けい酸カルシウム板」が平成12年5月30日建設省告示1400号においていわゆる不燃材料として例示されるところ(甲3 5頁、別表1)、上述の「厚さ6mmの化粧けい酸カルシウム板」である「ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製」が不燃認定を受けた化粧けい酸カルシウム板であることを踏まえると、甲1方法発明において「窯業系ボード」として使用される「けい酸カルシウム板」は、不燃材料であり、準不燃材料としての性能も備えるものであるといえる。
そうすると、甲1方法発明は、「前記基材ボードは、平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料、又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であ」ることに相当する構成を備える。
カ 甲1方法発明の「下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定する施工方法」は、本件発明6の「化粧ボードの施工法」に相当する。
キ 上記ア~カより、本件発明6と甲1方法発明とは、以下の一致点、相違点を備える。
(一致点)
下地材と、当該下地材に固定される化粧ボードと、前記下地材と前記化粧ボードとを接着する両面テープと、を備え、
前記両面テープは、基材と、前記基材の表裏面にそれぞれ位置する接着層と、を備え、
前記下地材と前記化粧ボードとのいずれか一方に、前記基材の前記表裏面の一面に位置する前記接着層を直接貼り付けた後、
前記基材の前記表裏面の他面に位置する前記接着層を、前記下地材と前記化粧ボードとのいずれか他方に直接貼り付け、前記両面テープのみを用いて、前記化粧ボードを前記下地材に直接接着し、
前記化粧ボードは、
基材ボードと、
前記基材ボードの一方の面側に貼り付けられる化粧シートと、を備え、
前記基材ボードは、平成12年建設省告示第1400号で定められた不燃材料、又は平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料である、化粧ボードの施工法。
(相違点1’’)
本件発明6は、化粧シートが、「発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の前記基材ボードと反対側の面側に形成された絵柄模様層とを有する」ものであり、「平成12年建設省告示第1401号で定められた準不燃材料であり、前記発泡樹脂層に含まれる有機質量は、200g/m2以上260g/m2以下であ」り、「前記基材ボードと前記発泡樹脂層との間に裏打材を有する」のに対し、甲1方法発明は、そのように特定されない点。
(相違点2’’)
本件発明6は、「前記貼り付けに用いられる接着剤は、でんぷん糊と合成樹脂エマルジョンとの比率が100:0~80:20で構成された接着剤であり、
前記接着剤の塗布量は、固形分換算で60g/m2以下である」と特定されているのに対し、甲1方法発明は、そのように特定されない点。
(2)判断
相違点1’’及び2’’については、上記2(1)カにおいて示した本件発明1と甲1施工構造発明との相違点である相違点1及び2と同様の点であり、甲1方法発明において、相違点1’’及び2’’に係る本件発明6の構成とすることは、上記2(2)において甲1施工構造発明に関し相違点1及び2について検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たことである。
(3)小括
本件発明6は、甲1方法発明、引用発明A及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 進歩性(本件発明7)
(1)対比
本件発明7と甲1方法発明とを対比する。
ア 甲1方法発明の「まず窯業系化粧板の裏面(せっこうボードと固定する面)に両面粘着テープを圧着し、該窯業系化粧板をせっこうボードの表面に圧着して固定する」ことは、本件発明7の「前記下地材に対する前記化粧ボードの接着面に、前記基材の前記表裏面の一面に位置する前記接着層を直接貼り付けた後、前記基材の前記表裏面の他面に位置する前記接着層を、前記下地材に直接接着する」ことに相当する。
イ そうすると、本件発明7と甲1方法発明とは、上記7(1)キの一致点に加え、「前記下地材に対する前記化粧ボードの接着面に、前記基材の前記表裏面の一面に位置する前記接着層を直接貼り付けた後、前記基材の前記表裏面の他面に位置する前記接着層を、前記下地材に直接接着する」点で一致し、上記7(1)キの相違点1’’及び2’’で相違する。
(2)判断
相違点1’’及び2’’については、上記7(2)において検討したとおりである。
(3)小括
本件発明7は、甲1方法発明、引用発明A及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 まとめ
以上のとおり、本件発明1~7に係る特許は、特許法36条4項1号の要件を満たさない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件発明1~7に係る特許は、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項1~3及び5~7に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証及び引用文献Aに記載された発明ないし技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項4に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証、引用文献A及び甲第6号証に記載された発明ないし技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明1~7に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701162