特許異議申立
2024-701059
フラックス組成物、およびはんだ組成物
- 審判番号
- 2024-701059
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-013102
- 登録番号
- 7478173
- 請求日
- 2024年10月30日
- 審決日
- 2025年03月14日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社タムラ製作所
- 【権利者代理人】弁理士法人樹之下知的財産事務所
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 相澤 啓祐
- 審判官 土屋 知久
- 分類
- P1651.121-Y (B23K) / P1651.55 -Y (B23K) / P1651.537-Y (B23K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7478173号発明「フラックス組成物、およびはんだ組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7478173号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7478173号の請求項1~5に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和4年1月31日(優先権主張 令和3年3月3日)の出願であって、令和6年4月23日にその特許権の設定登録がなされ、同年5月2日に特許掲載公報が発行された。
本件は、その後、同年10月30日に特許異議申立人赤松智信(以下、「申立人」という。)より請求項1~5(全請求項)に係る特許に対してなされた特許異議申立事件である。
第2 本件発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明(以下、これらをそれぞれ「本件発明1」~「本件発明5」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(A)ロジン系樹脂、(B)アミン化合物、(C)チクソ剤、(D)活性剤および溶剤を含有するフラックス組成物であって、
前記(A)成分が、ロジン類およびロジン系変性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記ロジン類が、ガムロジン、ウッドロジンおよびトール油ロジンからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記ロジン系変性樹脂が、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記(B)成分が、(B1)トリアゾール化合物、(B2)1分子中に、1つの水素がアミノ基で置換されたベンゼン環、またはピリジン環と、1つのカルボキシル基とを有する環状アミン化合物、並びに、(B3)イミダゾリン化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記(C)成分が、(C1)1分子中に、1つ以上の炭素数10以上である長鎖炭化水素基と、1つ以上のカルボニル基と、1つ以上の水酸基とを有し、示差走査熱量測定による融点が150℃以上である化合物を含有し、
前記(D)成分が、(D1)有機酸を含有し、
前記(D1)成分が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、フマル酸、マレイン酸、プロパントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ダイマー酸、トリマー酸、グリコール酸、ジグリコール酸、レブリン酸、乳酸、酒石酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、および3-ヒドロキシ-2ナフトエ酸からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記溶剤が、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルジグリコール、1,5-ペンタンジオール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、2-エチルヘキシルジグリコール、オクタンジオール、フェニルグリコール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、およびジブチルマレイン酸からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記(A)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、30質量%以上70質量%以下であり、
前記(B)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、0.05質量%以上10質量%以下であり、
前記(C)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であり、
前記(C1)成分の配合量が、前記(C)成分100質量%に対して、50質量%以上であり、
前記(D)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であり、
前記溶剤の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、10質量%以上60質量%以下である、
フラックス組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のフラックス組成物において、
前記(B)成分が、前記(B1)成分および前記(B2)成分からなる群から選択される少なくとも1つである、
フラックス組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフラックス組成物において、
前記(B1)成分が、1分子中に、1つのカルボキシル基を有する、
フラックス組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のフラックス組成物において、
前記(B)成分が、前記(B3)成分である、
フラックス組成物。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のフラックス組成物と、(E)はんだ粉末と
を含有するはんだ組成物であって、
前記(E)成分の配合量が、前記はんだ組成物100質量%に対して、65質量%以上95質量%以下である、
はんだ組成物。」
第3 特許異議申立理由
申立人は、証拠方法として次の甲第1~4号証及び参考資料1~3を提出し、以下の特許異議申立理由により、請求項1~5に係る特許を取り消すべきである旨主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:特開2014-36985号公報
甲第2号証:特開2020-44562号公報
甲第3号証:国際公開第2020/083529号
甲第4号証:特開2008-110392号公報
参考資料1:青山敏明、「中鎖脂肪酸の栄養学的研究-最近の研究を中心に―」、オレオサイエンス、社団法人日本油化学会、平成15年8月1日、第3巻、第8号、第23~30頁
参考資料2:望月和樹他、「エネルギー産生回路とエピジェネティックスを介した中鎖脂肪の代謝改善作用」、オレオサイエンス、社団法人日本油化学会、平成30年8月1日、第18巻、第8号、第11~17頁
参考資料3:特開2002-244280号公報
なお、以下、甲第1~4号証をそれぞれ「甲1」~「甲4」という。
1 申立理由1(進歩性)
本件特許の下記の請求項に係る発明は、下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるため、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
・請求項1、2:甲1及び甲2
・請求項3:甲1~甲3
・請求項4、5:甲1~甲4
2 申立理由2(新規事項)
令和5年10月6日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとはいえないから、かかる手続補正をした特許出願に対してなされた本件特許は、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)
本件明細書に記載された実施例は、いずれも本件発明1~5の範囲内のものではないため、同発明は本件発明が解決しようとする課題を解決し得ないものであるから、同発明に係る本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 特許異議申立理由の検討
当合議体は、以下に示すとおり、上記第3の特許異議申立理由はいずれも採用できないと判断する。
1 申立理由1(進歩性)
1-1 本件発明1について
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1の実施例5のフラックスに注目すると、甲1(特に、【0027】~【0029】、表1参照。)には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ロジン系樹脂として水添ロジン、
溶剤としてヘキシルジグリコール、
アミド系縮合体微粒子の分散液として、下記の製造例1で得られる分散液、
活性剤Aとしてジブロモブテンジオール、
活性剤Bとしてアジピン酸、
活性剤Cとしてマロン酸、及び、
アミン系化合物としてベンゾイミダゾール、を含み、
ロジン系樹脂100.0質量部、溶剤51.0質量部、アミド系縮合体微粒子の分散液9.0質量部、活性剤A1.8質量部、活性剤B4.5質量部、活性剤C1.2質量部、およびアミン系化合物0.4質量部を容器に投入し、らいかい機を用いて混合して得たフラックス。
[製造例1]
攪拌器、温度計、分水器を備えた反応装置に、水素添加ひまし油脂肪酸由来の12-ヒドロキシステアリン酸600.0質量部を加え、80~100℃に加温して溶融させた。その後、ジアミンであるヘキサメチレンジアミン116.0質量部を加え、170℃で、窒素雰囲気下、5~8時間、脱水しながら縮合反応を行いアミド化させ、酸価4.2、アミン価9.4の低分子量ジアミド化合物を得た。更に、重量平均分子量10000、酸価80mgKOH/gのプロピレン・無水マレイン酸共重合体であるカルボキシル基含有ポリマー68.0質量部を加え、170℃で1~2時間、脱水しながら縮合反応を行い、低分子量ジアミド化合物の一部の未反応アミノ基に反応させてアミド化させ高分子量ジアミド化合物を生成させた。その結果、淡黄色で低分子量ジアミド化合物と高分子量ジアミド化合物との混合物(酸価6.0、アミン価4.2)をワックス状生成物として得た。得られた生成物を粉砕し、平均粒径7μmに微粒化したアミド系縮合体微粒子を得た。
次いで、密閉容器に、ミネラルターペン120質量部、ベンジルアルコール40質量部、および、得られたアミド系縮合体微粒子40質量部を加え、10~20℃で十分に分散させ、懸濁液を得た。その後、この懸濁液の入った密閉容器を、公知の手法により加温処理すると、微粒子が膨潤し、アミド系縮合体微粒子の分散液が得られた。なお、この分散液中のアミド系縮合体微粒子の濃度は20質量%である。」
(2)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「水添ロジン」は、本件発明1の「水素添加ロジン」に相当するから、甲1発明の「ロジン系樹脂として水添ロジン」「を含」む事項は、本件発明1の「(A)ロジン系樹脂」「を含有」し、「前記(A)成分が、ロジン類およびロジン系変性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記ロジン類が、ガムロジン、ウッドロジンおよびトール油ロジンからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記ロジン系変性樹脂が、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つであ」る事項に相当する。
イ 甲1発明の「アミン系化合物」「を含」む事項は、本件発明1の「(B)アミン化合物」「を含有する」事項に相当する。
ウ 甲1の「はんだ組成物のチクソ性を調整できる成分(いわゆるチクソ剤)は数多あるが、このように数多あるチクソ剤の中でも、・・・(略)・・・アミド系縮合体微粒子を用いた場合・・・(略)・・・」(【0006】)との記載、及び、「本発明に用いるフラックスでは、前記アミド系縮合体微粒子と、これ以外のチクソ剤とを併用してもよい」(【0016】)との記載からすると、甲1発明の「アミド系縮合体微粒子」は、チクソ剤であるといえるから、本件発明1の「(C)チクソ剤」に相当する。
そうすると、甲1発明の「アミド系縮合体微粒子の分散液として、下記の製造例1で得られる分散液」「を含」む事項は、本件発明1の「(C)チクソ剤」「を含有する」事項に相当する。
エ 甲1発明の「活性剤Aとしてジブロモブテンジオール、活性剤Bとしてアジピン酸、活性剤Cとしてマロン酸」「を含」む事項は、本件発明1の「(D)活性剤」「を含有」し、「前記(D)成分が、(D1)有機酸を含有し、前記(D1)成分が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、フマル酸、マレイン酸、プロパントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ダイマー酸、トリマー酸、グリコール酸、ジグリコール酸、レブリン酸、乳酸、酒石酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、および3-ヒドロキシ-2ナフトエ酸からなる群から選択される少なくとも1つであ」(当審注:下線は当審で付した。以下、同じ。)る事項に相当する。
オ 甲1発明の「溶剤としてヘキシルジグリコール」「を含」む事項は、本件発明1の「溶剤を含有」し、「前記溶剤が、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルジグリコール、1,5-ペンタンジオール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、2-エチルヘキシルジグリコール、オクタンジオール、フェニルグリコール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、およびジブチルマレイン酸からなる群から選択される少なくとも1つであ」る事項に相当する。
カ 甲1発明の「フラックス」が組成物であることは明らかであるから、甲1発明の「フラックス」は本件発明1の「フラックス組成物」に相当する。
キ 甲1発明は、「ロジン系樹脂100.0質量部、溶剤51.0質量部、アミド系縮合体微粒子の分散液9.0質量部、活性剤A1.8質量部、活性剤B4.5質量部、活性剤C1.2質量部、およびアミン系化合物0.4質量部を容器に投入し、らいかい機を用いて混合して得た」ものであるから、フラックス100質量部としたとき、各成分の含有量は次のとおりである。
ロジン系樹脂:約59.6質量部
溶剤:約30.4質量部
アミド系縮合体微粒子の分散液:約5.4質量部
活性剤A:約1.1質量部
活性剤B:約2.7質量部
活性剤C:約0.7質量部
アミン系化合物:約0.2質量部
ク 上記キによれば、フラックス100質量部としたとき、ロジン系樹脂の含有量は約59.6質量部であるから、甲1発明は、本件発明1の「(A)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、30質量%以上70質量%以下であ」る事項を有するものである。
ケ 上記キによれば、フラックス100質量部としたとき、アミン系化合物の含有量は約0.2質量部であるから、甲1発明は、本件発明1の「(B)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、0.05質量%以上10質量%以下であ」る事項を有するものである。
コ 甲1発明の「アミド系縮合体微粒子の分散液」は、その「濃度」が「20質量%である」ため、上記キによれば、甲1発明の「フラックス」に含まれる「アミド系縮合体微粒子」は、フラックス100質量部としたとき、約5.4質量部×20質量%=約1.1質量部である。
そうすると、甲1発明は、本件発明1の「(C)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であ」る事項を有するものである。
サ 上記キによれば、フラックス100質量部としたとき、活性剤A、活性剤B及び活性剤Cの含有量はそれぞれ約1.1質量部、約2.7質量部及び約0.7質量部であるから、甲1発明の「活性剤A」、「活性剤B」、「活性剤C」の合計量は、フラックス100質量部としたとき、約4.5重量部である。
そうすると、甲1発明は、本件発明1の「(D)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であ」る事項を有するものである。
シ 上記キによれば、フラックス100質量部としたとき、溶剤の含有量は約30.4質量部であるから、甲1発明は、本件発明1の「溶剤の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、10質量%以上60質量%以下であ」る事項を有するものである。
ス 上記ア~シより、本件発明1と甲1発明とは、
「(A)ロジン系樹脂、(B)アミン化合物、(C)チクソ剤、(D)活性剤および溶剤を含有するフラックス組成物であって、
前記(A)成分が、ロジン類およびロジン系変性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記ロジン類が、ガムロジン、ウッドロジンおよびトール油ロジンからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記ロジン系変性樹脂が、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記(D)成分が、(D1)有機酸を含有し、
前記(D1)成分が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、フマル酸、マレイン酸、プロパントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ダイマー酸、トリマー酸、グリコール酸、ジグリコール酸、レブリン酸、乳酸、酒石酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、および3-ヒドロキシ-2ナフトエ酸からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記溶剤が、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルジグリコール、1,5-ペンタンジオール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、2-エチルヘキシルジグリコール、オクタンジオール、フェニルグリコール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、およびジブチルマレイン酸からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記(A)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、30質量%以上70質量%以下であり、
前記(B)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、0.05質量%以上10質量%以下であり、
前記(C)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であり、
前記(D)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であり、
前記溶剤の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、10質量%以上60質量%以下である、
フラックス組成物。」の点で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点1)
「(B)アミン化合物」が、本件発明1は、「(B1)トリアゾール化合物、(B2)1分子中に、1つの水素がアミノ基で置換されたベンゼン環、またはピリジン環と、1つのカルボキシル基とを有する環状アミン化合物、並びに、(B3)イミダゾリン化合物からなる群から選択される少なくとも1つであ」るのに対し、甲1発明は、「ベンゾイミダゾール」である点。
(相違点2)
「(C)チクソ剤」が、本件発明1は、「(C1)1分子中に、1つ以上の炭素数10以上である長鎖炭化水素基と、1つ以上のカルボニル基と、1つ以上の水酸基とを有し、示差走査熱量測定による融点が150℃以上である化合物を含有し、」「前記(C1)成分の配合量が、前記(C)成分100質量%に対して、50質量%以上であ」るのに対し、甲1発明は、「下記の製造例1で得られる分散液」に含まれる「アミド系縮合体微粒子」であり、これが(C1)成分であるか否か不明であるし、また、その含有量も不明である点。
[製造例1]
攪拌器、温度計、分水器を備えた反応装置に、水素添加ひまし油脂肪酸由来の12-ヒドロキシステアリン酸600.0質量部を加え、80~100℃に加温して溶融させた。その後、ジアミンであるヘキサメチレンジアミン116.0質量部を加え、170℃で、窒素雰囲気下、5~8時間、脱水しながら縮合反応を行いアミド化させ、酸価4.2、アミン価9.4の低分子量ジアミド化合物を得た。更に、重量平均分子量10000、酸価80mgKOH/gのプロピレン・無水マレイン酸共重合体であるカルボキシル基含有ポリマー68.0質量部を加え、170℃で1~2時間、脱水しながら縮合反応を行い、低分子量ジアミド化合物の一部の未反応アミノ基に反応させてアミド化させ高分子量ジアミド化合物を生成させた。その結果、淡黄色で低分子量ジアミド化合物と高分子量ジアミド化合物との混合物(酸価6.0、アミン価4.2)をワックス状生成物として得た。得られた生成物を粉砕し、平均粒径7μmに微粒化したアミド系縮合体微粒子を得た。
次いで、密閉容器に、ミネラルターペン120質量部、ベンジルアルコール40質量部、および、得られたアミド系縮合体微粒子40質量部を加え、10~20℃で十分に分散させ、懸濁液を得た。その後、この懸濁液の入った密閉容器を、公知の手法により加温処理すると、微粒子が膨潤し、アミド系縮合体微粒子の分散液が得られた。なお、この分散液中のアミド系縮合体微粒子の濃度は20質量%である。
(3)相違点の検討
ア まず、上記相違点1について検討する。
イ 甲1には、「本発明に用いるアミン系化合物としては、例えば、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物が挙げられる」(【0023】)と記載されており、甲1発明において、「アミン系化合物」の「ベンゾイミダゾール」に代えて、本件発明1の「(B)成分」に含まれる「トリアゾール化合物」を採用する動機が一応はあるといえる。
ウ しかしながら、本件明細書の実施例の記載において、「トリアゾール化合物」を用いている実施例1~3、7、8と「イミダゾール化合物」を用いている比較例2とを比較(両者の他の成分は全く同一である。)すると、前者は後者よりも、少なくとも「はんだ耐熱性」(【0042】の(4)、表1参照。)が優れており、かかる効果は甲1に記載された事項から予測できないものである。
エ したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
オ この結論は、甲2の記載を参照しても変わらない。
カ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
1-2 本件発明2~5について
ア 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、甲1発明とは少なくとも上記相違点1で相違し、上記相違点1については上記1-1の(3)で検討したとおりである。
イ この結論は、甲3、4の記載を参照しても変わらない。
ウ よって、本件発明2は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて、本件発明3は、甲1発明及び甲2、3に記載された事項に基いて、本件発明4、5は、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
1-3 申立人の主張について
(1)申立人は特許異議申立書において、甲1の【0023】の記載(下記(3)を参照。)を根拠として、甲1には「(B)成分が、(B1)トリアゾール化合物、(B2)1分子中に、1つの水素がアミノ基で置換されたベンゼン環、またはピリジン環と、1つのカルボキシル基とを有する環状アミン化合物、並びに、(B3)イミダゾリン化合物からなる群から選択される少なくとも1つであ」る構成(当審注:甲1の【0023】の記載からすると、具体的には、(B)成分が(B1)トリアゾール化合物である構成と解される。)が記載されており(第13頁第21~27行)、また、甲1に記載された発明は、かかる構成を含むものである(第15頁最後から4行~最終行)と主張している。
そして、申立人は、上記主張を前提として、本件発明1と甲1発明とは、(C)成分が(C1)成分を含有する点で一応相違するものの、甲1の実施例(【0027】)におけるアミド系縮合体微粒子は(C1)成分に相当するから、当該相違点は実質的な相違点ではない(第22頁最後から5行~第24頁第11行)と主張している。
(2)申立人の上記(1)の主張は、要するに、甲1には、(B)成分が(B1)トリアゾール化合物である構成と、(C)成分が(C1)成分(アミド系縮合体微粒子)を含有する構成と、を組み合わせた発明が記載されていることをいうに等しいと解される。
(3)確かに、甲1の【0023】には、「本発明に用いるアミン系化合物としては、例えば、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物が挙げられる」と記載されている。
(4)ここで、本件明細書には、「本実施形態のフラックス組成物によれば、リフロー加熱時などに(B1)成分または(B2)成分と、(C1)成分とが、相互作用を起こし、(C1)成分のチクソ性をさらに向上できる。これにより、リフロー加熱時などに、はんだ組成物がダレにくくなる。また、はんだ組成物中のはんだ粉末が流れ出しにくくなる。さらに、はんだ組成物中のフラックス成分が流れ出しにくくなる」(【0012】)、「(B3)成分のイミダゾリン構造が、長鎖炭化水素基を有する(C)成分中のカルボニル基などとの間で、相互作用を起こすことで、(C1)成分のチクソ性をさらに向上できる」(【0017】)と記載されており、これらの記載からすると、本件発明は、(B)成分と(C)成分との組合せに技術的意義があると認められる。
(5)しかしながら、甲1の【0023】には、アミン系化合物として、イミダゾール化合物とトリアゾール化合物とが単に並列的に記載されているだけであり、特にトリアゾール化合物の方が好ましい旨の記載はない。また、仮に、甲1発明における「アミド系縮合体微粒子」が、本件発明1における(C1)成分に相当する(相違点2を参照。)と解したとしても、甲1には、アミン系化合物(本件発明1の「(B)成分」に相当。)としてのトリアゾール化合物(同「(B1)成分」に相当。)と、チクソ剤(同「(C)成分」に相当。)としてのアミド系縮合体微粒子(同「(C1)成分」に相当。)と、の組合せについて何ら記載されていない(実施例及び比較例(【0027】~【0030】、表1、表2)において、イミダゾール化合物(ベンゾイミダゾール)と、アミド系縮合体微粒子と、の組合せが記載されているだけである。)。
(6)そうすると、甲1には、申立人が主張するような発明(上記(2)を参照。)が記載されているとはいえない。申立人が主張する発明は、甲1におけるアミン系化合物についての一般的な説明の記載(【0023】)と、実施例における特定のアミド系縮合体微粒子についての記載(【0027】)とを、恣意的に組み合わせるものであり、妥当なものとはいえない。上記(4)の本件発明の技術的意義を踏まえると、アミン系化合物とアミド系縮合体微粒子との組合せについて具体的に記載されている実施例の記載から、甲1に記載された発明を認定すべきである。
(7)よって、申立人の主張は採用できない。
2 申立理由2(新規事項)
(1)本件特許の請求項1には、「(C)チクソ剤」「を含有」し、「(C)成分が、(C1)1分子中に、1つ以上の炭素数10以上である長鎖炭化水素基と、1つ以上のカルボニル基と、1つ以上の水酸基とを有し、示差走査熱量測定による融点が150℃以上である化合物を含有し、」と記載されている。
(2)そして、上記(1)の「炭素数10以上である長鎖炭化水素基」は、本件特許の出願の過程において、令和5年10月6日になされた手続補正により、当該補正前の「長鎖炭化水素基」が「炭素数10以上である長鎖炭化水素基」と補正されたものである。
(3)そこで、上記(2)の手続補正が、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものか否かを、以下検討する。
(4)本件の願書に最初に添付された明細書(以下、「当初明細書」という。)には、次の記載がある。
「【0039】
[調製例1]
攪拌器、温度計、分水器を備えた反応装置に、水素添加ひまし油脂肪酸由来の12-ヒドロキシステアリン酸600.0質量部を加え、80~100℃に加温して溶融させた。その後、ジアミンであるヘキサメチレンジアミン116.0質量部を加え、170℃で、窒素雰囲気下、5~8時間、脱水しながら縮合反応を行いアミド化させ、酸価4.2、アミン価9.4の低分子量ジアミド化合物を得た。さらに、重量平均分子量10000、酸価80mgKOH/gのプロピレン・無水マレイン酸共重合体であるカルボキシル基含有ポリマー68.0質量部を加え、170℃で1~2時間、脱水しながら縮合反応を行い、低分子量ジアミド化合物の一部の未反応アミノ基に反応させてアミド化させ高分子量ジアミド化合物を生成させた。その結果、淡黄色で低分子量ジアミド化合物と高分子量ジアミド化合物との混合物(酸価6.0、アミン価4.2)をワックス状生成物として得た。得られた生成物を粉砕し、平均粒径7μmに微粒化したアミド系縮合体微粒子(チクソ剤A)を得た。」
(5)上記(4)によれば、「12-ヒドロキシステアリン酸」と「ヘキサメチレンジアミン」とを「脱水しながら縮合反応を行いアミド化させ、」「低分子量ジアミド化合物を得」ており、さらに、「プロピレン・無水マレイン酸共重合体であるカルボキシル基含有ポリマー」「を加え、」「脱水しながら縮合反応を行い、低分子量ジアミド化合物の一部の未反応アミノ基に反応させてアミド化させ高分子量ジアミド化合物を生成させ」、「その結果、」「低分子量ジアミド化合物と高分子量ジアミド化合物との混合物」を得て、「得られた生成物を粉砕し、」「アミド系縮合体微粒子(チクソ剤A)を得」ている。
(6)ここで、上記(4)の「12-ヒドロキシステアリン酸」は、カルボキシ基と水酸基との間に炭素数10の炭化水素基を有するものである。
(7)そして、「低分子量ジアミド化合物」は、「12-ヒドロキシステアリン酸」と「ヘキサメチレンジアミン」とを、「脱水しながら縮合反応を行いアミド化させ」たものであるから、「12-ヒドロキシステアリン酸」の炭化水素基と水酸基とはそのまま「低分子量ジアミド化合物」の一部として存在する。
(8)そうすると、上記(4)の「アミド系縮合体微粒子(チクソ剤A)」は、炭素数10の炭化水素基、水酸基、カルボニル基(カルボキシ基が脱水縮合反応により変化したもの)を有するものであることが理解できる。
(9)また、上記(2)の「長鎖炭化水素基」との記載から、炭化水素基がある程度以上の長さの炭素鎖を有していることは自明であるところ、上記(8)のとおり、当初明細書には、炭素鎖の長さとして炭素数10である場合が記載されており、さらに、上記(8)の炭素数10の炭化水素基は、仮に炭素数が10を超える場合であっても長鎖炭化水素基としての機能を果せることも理解できるから、「炭素数10以上である長鎖炭化水素基」は、当初明細書に記載された範囲内のものといえる。
(10)よって、上記(2)の手続補正は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(11)なお、申立人は特許異議申立書(第26頁第8~16行)において、参考資料1、2によれば、一般に、長鎖脂肪酸とは炭素数14以上のものであると理解されているから、上記(2)の手続補正は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないと主張している。
(12)しかしながら、本件発明1の「チクソ剤」が炭素数10以上の炭化水素基を有することが、当初明細書の記載の範囲内のものであることは上述したとおりであり、申立人の上記(11)の主張にかかわらず、少なくとも、上記(2)の「長鎖炭化水素基」との記載は、炭素数10の長さの炭素鎖を有する炭化水素基を含むものと理解されるものである。また、次の参考文献には、長鎖脂肪酸を炭素数12以上であるとしていることから、一般に、長鎖脂肪酸とは炭素数14以上のものであると理解されているか否かは不明である。
(参考文献)
「知っておきたい基礎知識」、一般財団法人日本水産油脂協会、『脂肪酸』欄、2項目目(https://www.suisan.or.jp/html/kisochishiki.html)
(13)よって、申立人の主張は採用できない。
3 申立理由3(サポート要件)
(1)請求項1の「(C)チクソ剤」について
ア 本件発明の解決しようとする課題は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、「加熱だれおよびはんだボールの発生を抑制でき、プリント配線基板上の絶縁被膜への悪影響が小さいフラックス組成物、およびはんだ組成物」を「提供すること」(【0005】)であると認められる。
イ そして、本件明細書には次の記載がある。
「【0012】
本実施形態のフラックス組成物によれば、加熱だれおよびはんだボールの発生を抑制でき、プリント配線基板上の絶縁被膜への悪影響が小さい理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、加熱だれおよびはんだボールの発生要因の1つには、リフロー加熱時などにはんだ組成物が流れてしまうことにある。また、リフロー加熱時などにはんだ組成物中のフラックス成分が流れることで、プリント配線基板上の絶縁被膜へ悪影響を与えやすくなる。そのため、フラックス成分として、絶縁被膜への悪影響が少ないものを選択しなければならない。
これに対し、本実施形態のフラックス組成物によれば、リフロー加熱時などに(B1)成分または(B2)成分と、(C1)成分とが、相互作用を起こし、(C1)成分のチクソ性をさらに向上できる。これにより、リフロー加熱時などに、はんだ組成物がダレにくくなる。また、はんだ組成物中のはんだ粉末が流れ出しにくくなる。さらに、はんだ組成物中のフラックス成分が流れ出しにくくなる。また、(B1)成分または(B2)成分は、絶縁被膜への悪影響が少ないものである。以上のようにして、上記本発明の効果が達成されるものと本発明者らは推察する。」
「【0017】
(B3)成分としては、2-フェニルイミダゾリン、および2-ベンジルイミダゾリンなどが挙げられる。これらの中でも、(C)成分との相互作用の観点から、2-フェニルイミダゾリンが特に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この(B3)成分のイミダゾリン構造が、長鎖炭化水素基を有する(C)成分中のカルボニル基などとの間で、相互作用を起こすことで、(C1)成分のチクソ性をさらに向上できる。」
ウ 上記イの【0012】より、本件発明は、「リフロー加熱時などに(B1)成分または(B2)成分と、(C1)成分とが、相互作用を起こし、(C1)成分のチクソ性をさらに向上でき」、「これにより、リフロー加熱時などに、はんだ組成物がダレにくくな」り、「また、はんだ組成物中のはんだ粉末が流れ出しにくくな」り、「さらに、はんだ組成物中のフラックス成分が流れ出しにくくなる」ことが理解できる。
そうすると、上記アの課題のうち、「加熱だれおよびはんだボールの発生を抑制でき」るという課題(以下、「課題1」という。)を解決することが理解できる。
エ また、上記イの【0012】より、「(B1)成分または(B2)成分は、絶縁被膜への悪影響が少ないものである」から、上記アの課題のうち、「プリント配線基板上の絶縁被膜への悪影響が小さい」という課題(以下、「課題2」という。)を解決することが理解できる。
オ さらに、上記イの【0017】より、「(B3)成分のイミダゾリン構造が、長鎖炭化水素基を有する(C)成分中のカルボニル基などとの間で、相互作用を起こすことで、(C1)成分のチクソ性をさらに向上できる」から、上記イの【0012】の記載を参酌すると、課題1を解決することが理解できる。
カ また、上記イの【0012】の「(B1)成分または(B2)成分は、絶縁被膜への悪影響が少ないものである」との記載は、その記載振りからみて、他の成分との相互作用は少なく、「(B1)成分」自体、「(B2)成分」自体の作用によって、上記アの課題のうち、「プリント配線基板上の絶縁被膜への悪影響が小さい」という課題を解決すると解される。
そして、本件明細書に記載された実施例1~14において、含有量による差異はあるものの、「(B1)成分」、「(B2)成分」を用いたフラックス組成物は、「(4)はんだ耐熱性」において、◎~△と(表1参照。)課題2を解決するものである。
そうすると、「(B3)成分」を用いたフラックス組成物である実施例15が、「(4)はんだ耐熱性」において、○という結果が出ていることから、他の成分の如何に関わらず、「(B3)成分」自体の作用によって、課題2を解決するものであると解される。
キ 上記ウ~カの検討によれば、(C1)成分に対し、(B1)成分、(B2)成分、または、(B3)成分を加えることにより、上記アの課題を解決することが理解できる。
ク そして、本件発明1は、「(B)アミン化合物、(C)チクソ剤」を「含有するフラックス組成物であって、」「前記(B)成分が、(B1)トリアゾール化合物、(B2)1分子中に、1つの水素がアミノ基で置換されたベンゼン環、またはピリジン環と、1つのカルボキシル基とを有する環状アミン化合物、並びに、(B3)イミダゾリン化合物からなる群から選択される少なくとも1つであ」るとの発明特定事項を含むものであるから、上記アの課題を解決し得るものである。
ケ よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
コ また、本件発明2~5も同様に、発明の詳細な説明に記載されたものである。
サ なお、申立人は、特許異議申立書(第27頁第9~23行)において、本件明細書に記載された各実施例のフラックス組成物は、「(C1)成分の配合量が、前記(C)成分100質量%に対して、50質量%以上であ」る点で、少なくともチクソ剤の含有量が本件発明1の範囲内のものではないから、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないと主張している。
シ しかしながら、仮に、本件明細書に記載された各実施例のフラックス組成物について、少なくともチクソ剤の含有量が本件発明1の範囲内のものではなかったとしても、本件発明1は、上記ア~ケで検討したとおり、発明の詳細な説明に記載されたものである。
ス よって、申立人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本件の請求項1~5に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできず、また、他に本件の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-701059