特許異議申立
2024-701000
合成スラブ構造
- 審判番号
- 2024-701000
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-166820
- 登録番号
- 7466422
- 請求日
- 2024年10月11日
- 審決日
- 2025年02月14日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日鉄建材株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】柳 康樹
- 【異議申立人】鈴木 憲治
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 立澤 正樹
- 審判官 藤脇 沙絵
- 分類
- P1651.121-Y (E04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7466422号発明「合成スラブ構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7466422号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7466422号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和2年10月1日に出願され、令和6年4月4日にその特許権の設定登録がされ、同月12日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年10月11日に、特許異議申立人 鈴木 憲治(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1~6に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。それ以降の手続きは下記のとおりである。
令和6年12月 9日付け 審尋(申立人宛)
同月25日 回答書及び参考資料1の提出
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」等といい、請求項1~6に係る発明をまとめて「本件特許発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
段差が設けられた合成スラブ構造であって、
スラブ上段側に配置され、スパン方向に延びる溝部を複数有する上段デッキプレートと、
スラブ下段側に配置され、前記スパン方向に延びる溝部を複数有する下段デッキプレートと、
前記スラブ上段を構成し、且つ、前記スラブ下段を構成するコンクリートと、を備え、
前記上段デッキプレートと前記下段デッキプレートとは、前記スパン方向に並べられ、
前記下段デッキプレートは、前記上段デッキプレートよりも下側に配置され、
前記コンクリート内には、前記上段デッキプレートと前記下段デッキプレートとの間の境界部において、幅方向に互いに離間するように複数の補強部材が設けられ、
前記補強部材は、上下方向に延びる第1の辺部、及び前記第1の辺部の下端部から前記スパン方向に延びる第2の辺部を有し、
前記第1の辺部と第2の辺部との間の角部は、前記スパン方向から見て前記下段デッキプレートの前記溝部に配置されると共に、前記角部には前記幅方向に延びる接続筋が設けられており、
前記接続筋は、少なくとも前記補強部材の位置においては、前記下段デッキプレートの山部の上端よりも低い位置に配置される、合成スラブ構造。
【請求項2】
前記コンクリート内には、前記スラブ上段と前記スラブ下段との間で応力を伝達する応力伝達機構が設けられる、請求項1に記載の合成スラブ構造。
【請求項3】
前記下段デッキプレートの前記スパン方向における前記上段デッキプレート側の端部は、当該上段デッキプレートから離間するように配置され、
前記接続筋は、前記スパン方向において、前記下段デッキプレートと前記上段デッキプレートとの間に配置される、請求項1又は2に記載の合成スラブ構造。
【請求項4】
前記下段デッキプレートには前記幅方向に貫通する貫通部が形成され、
前記接続筋は、前記貫通部を通過するように前記幅方向に延びる、請求項1又は2に記載の合成スラブ構造。
【請求項5】
前記接続筋は、前記スパン方向から見て曲がることによって、前記下段デッキプレートの前記山部の前記上端を乗り越える、請求項1又は2に記載の合成スラブ構造。
【請求項6】
前記接続筋は、前記幅方向において、前記下段デッキプレートの前記山部の位置において切断されている、請求項1又は2に記載の合成スラブ構造。
第3 証拠方法及び特許異議申立理由の概要
1 証拠方法
申立人が提示する証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:合成スラブ工業会ホームページ、合成スラブに関する技術的
問題のQ&A(構造Q-10、A-10)、
http://www.gousei-slab.jp/
甲第2号証:特開2000-144996号公報
甲第3号証:特開2019-31792号公報
甲第4号証:特開平10-245922号公報
甲第5号証:特開2001-20428号公報
2 特許異議申立理由の概要
申立人が申立書において主張する申立理由の概要は、次のとおりである。
本件特許発明1~3は、本件出願より前に公開された甲第1号証記載の発明、及び、甲第2号証~甲第5号証記載の事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、
本件特許発明4~6は、本件出願より前に公開された甲第1号証記載の発明、甲第2号証~甲第5号証記載の事項、及び、技術常識に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許発明1~6に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 甲号証について
(1)甲第1号証
ア 甲1の公知日について
甲第1号証において、その公知日が本願出願日である令和2年10月1日より以前であるとする根拠が不明であること、及び、「構造Q-10、A-10」が特許異議申立書の13頁13~15行に記載のとおり、2006年10月から掲載されていたのかに疑義があること、について、当審合議体は、令和6年12月9日付けで申立人宛てに審尋を行った。
当該審尋に対応して、回答書及び参考資料1が提出された。
そして、回答書において、「甲第1号証に関して、2014年10月14日に最も早いスナップショットが保存されていることがわかり、かつ、構造Q-10のURLをクリックするとその内容を確認することができます。」と説明がされ、甲第1号証の「構造Q-10、A-10」について、インターネットアーカイブサービスであるウェイバックマシンが2014年10月14日に収集したものであることを示す参考資料1が、添付して提出された。したがって、甲第1号証の「構造Q-10、A-10」の部分は、電気通信回線を通じて公衆に使用可能となった日が本願出願日である令和2年10月1日より以前であると認められる。
イ 甲第1号証の記載
特許異議の申立人が甲第1号証として提出した「合成スラブ工業会 合成スラブのQ&A 構造Q-10、A-10」(以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001420356000001.jpg]
[図:0001420356000002.jpg]
」
ウ 認定事項
上記イの記載事項から、「段差があ」る「デッキ合成スラブ」の構造に関し、以下の事項が認定できる。
(ア)「構造Q-10」とした枠囲いの中に「デッキ合成スラブに段差があり、焼抜き栓溶接や頭付きスタッドによる施工が困難な場合の支持部の接合法はどのように考えたらよいですか。」との記載の下に、段差を有した板状部材の図が記載され、当該図において、板状部材の内部に三本斜線が描かれていることから、当該図は段差を有した板状部材の断面図であって、三本斜線はコンクリートを示していることは技術常識から明らかである。よって、当該断面図及び「構造A-10」とした枠囲いの中にある断面図は、内部にコンクリートを有する段差があるデッキ合成スラブの構造を示していること。
(イ)「構造A-10」とした枠囲いの中に「1)段差が大きい場合」として「大型の受け材を設けてデッキプレートを支持し」との記載があり、その直下の断面図では、段差の下段において、「大型の受け材」とされた部材の直上の長方形で示された部材に対して「合成スラブ用デッキプレート」との記載が付されていることから、段差があるデッキ合成スラブの下段において、長方形で示された部材は、合成スラブ用デッキプレートであること。
(ウ)「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その直下の断面図では、「デッキ受け材」よりも右側に位置する段差の上段における、長方形で示された部材に対して、矢印で「合成スラブ用デッキプレート」と付されているので、段差の上段に設けられた長方形の部材は合成スラブ用デッキプレートであること。
(エ)「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」として「受けアングル等を梁フランジ面に溶接して、デッキプレートを支持し、焼抜き栓溶接または頭付きスタッドの施工を可能にする方法です。」と記載され、その記載の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図では、T型の部材のフランジの左端よりも左側に位置する段差の下段であって、T型の部材の上面に長方形で示された部材が接するように図示されている。上記断面図の説明の記載を踏まえると、T型の部材は、「梁」であり、その上面は「梁フランジ面」であると認められる。さらに、前記(ウ)で示したように段差の上段に設けられた長方形の部材が「合成スラブ用デッキプレート」であることを踏まえると、段差の下段において、「梁フランジ面」と接するように設けられ、上段に設けられたものと同様の長方形の部材は、合成スラブ用デッキプレートであること。
(オ)前記(ウ)及び(エ)を踏まえると、段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートとは、梁と直交する方向に離間していること。
(カ)前記(ア)及び(オ)を踏まえると、段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートとが梁と直交する方向に離間している箇所は、合成スラブ用デッキプレートの段差が形成された箇所の一部であること。
(キ)前記(ウ)~(オ)を踏まえると、段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートとは、梁と直交する方向に離間して並んでおり、段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートは段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートよりも下側に配置されていること。また、前記イで示した合成スラブの断面図では、段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートの上も含めて、合成スラブには三本斜線が描かれていることから、前記(ア)で述べた技術常識を踏まえると、段差の上段及び下段を含めて、合成スラブは、コンクリートで構成されていること。
(ク)「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図では、段差の上段に設けられた長方形の部材の下にL字状の部材があり、上記L字状の部材に対して矢印で「デッキ受け材」と付されていることから、前記(ウ)及び(エ)を踏まえると、段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートをL字状の部材であるデッキ受け材で支持していること。
(ケ)「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図では、T型の部材がデッキ合成スラブの段差が設けられた部分の直下に設けられていることから、前記(エ)を踏まえると、T型の部材で示された梁が、デッキ合成スラブの段差が設けられた部分を支持していること。
(コ)「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図では、段差がある合成スラブの内部に、梁と直交する方向(図では左右方向)に「段差の補強鉄筋」として示された部材が上段と下段とに渡って連続的に設けられているので、段差がある合成スラブの内部には、上段と下段とに渡って連続的に、段差の補強鉄筋が設けられていること。
(サ)前記(キ)及び(コ)を踏まえると、「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図では、「段差の補強鉄筋」は、段差の下段で下段の合成スラブ用デッキプレートの方向に延びる辺部、当該辺部に連続し、上下方向に延びる辺部と、当該辺部に連続し、段差の上段で上段の合成スラブ用デッキプレートの方向に延びる辺部を有すること。
(シ)上記(サ)を踏まえると、「段差の補強鉄筋」の段差の下段で下段の合成スラブ用デッキプレートの方向に延びる辺部と、当該辺部に連続し、上下方向に延びる辺部との間に、角部が形成されていること。
(ス)「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図において、数カ所円形の図形が描かれているが、円形の図形が紙面垂直方向に配筋された鉄筋を示すことは技術常識から明らかである。そして、上記(ウ)、(エ)、(シ)を踏まえると、「段差の補強鉄筋」の「角部」に、円形の図形が記載されていることから、「段差の補強鉄筋」の「角部」に「段差の補強鉄筋」と垂直方向である梁方向に配筋された鉄筋が設けられていること。
エ 甲1発明
上記イの記載事項、及び、ウの認定事項から、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。なお、甲1発明は、「2)段差が小さい場合」の「(1)床面をかさ上げする場合」として図示された構造に基づいて、認定した。
<甲1発明>
「段差があるデッキ合成スラブの構造であって(前記ウ(ア))、
デッキ合成スラブの段差が設けられた部分を支持する梁を設け(前記ウ(ケ))、
段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと(前記ウ(ウ))、
段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと(前記ウ(エ))、
段差の上段及び下段を含めて合成スラブを構成するコンクリートを備え(前記ウ(キ))、
段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートとは、梁の直交方向に離間して並んでおり(前記ウ(キ))、
段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートは段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートよりも下側に配置され(前記ウ(キ))、
段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートとが梁と直交する方向に離間している箇所は、合成スラブ用デッキプレートの段差が形成された箇所の一部であり(前記ウ(カ))、
段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートを支持するデッキ受け材を設け(前記ウ(ク))、
段差がある合成スラブの内部には、上段と下段とに渡って連続的に、段差の補強鉄筋が設けられ(前記ウ(コ))、
段差の補強鉄筋は、段差の下段で下段の合成スラブ用デッキプレートの方向に延びる辺部、当該辺部に連続し、上下方向に延びる辺部と、当該辺部に連続し、段差の上段で上段の合成スラブ用デッキプレートの方向に延びる辺部を有し(前記ウ(サ))、
段差の下段で下段の合成スラブ用デッキプレートの方向に延びる辺部と、当該辺部に連続し、上下方向に延びる辺部との間に、角部が形成され(前記ウ(シ))、
前記角部に、段差の補強鉄筋と垂直方向である梁方向に配筋された鉄筋が設けられている(前記ウ(ス))、
段差があるデッキ合成スラブの構造。」
(2)甲第2号証
ア 記載事項
特許異議申立人が甲第2号証として提出した特開2000-144996号公報(以下、「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マンションやアパート等の共同住宅用の床構造に関し、とりわけ、振動騒音防止に好適の共同住宅用の床構造に関するものである。」
(イ)段落【0019】
「【0019】図2に示すように、共同用住宅の1戸分の住居1は、一般に、居間1A、和室1B、台所1C、洗面所1D、浴室1E、トイレ(WC)1F、洋室1G、1H、収納室1I、廊下1J、バルコニー1K等からなり、1Nは仕切り壁である。この住居1の床は、四隅に柱2が立設され、図3、図4に示すように、柱2と柱2との間には各梁3が掛け渡されている。各梁3にはデッキプレート4が図3、図4に示すように掛け渡されている。デッキプレート4は図1、図5に示すように、溝部5と山部6とを有する凹凸形状とされている。」
(ウ)段落【0022】、【0023】
「【0022】スラブ施工の際(コンクリート打設の際)には、図4に示した如く、デッキプレート4は破線で示す支保工7によって支えられる(支保工7の図として図4の破線で示したものでよいかご確認下さい)。各梁3が鉄骨鉄筋コンクリート構造、鉄筋コンクリート構造ではなく鉄骨構造の場合には、デッキプレート4は各梁3の鉄骨に掛け渡される。デッキプレート4の上面には、図5に拡大して示すように、これと間隔を開けて、補強用の鉄筋8、9が縦横に配設されている。このデッキプレート4には、コンクリート10が所定の厚さとなるように打設され、コンクリート10が所定の強度を発揮するまで乾くのを待って、支保工7は外され、これにより、デッキプレート合成スラブ構造が完成する。
【0023】このデッキプレート合成スラブ構造からなる共同用住宅の床構造では、デッキプレート4は、コンクリート10を打設の際に型枠として用いられ、コンクリート10の打設後にこのコンクリート10に突起部5Z、6Zが食い込んでコンクリート10との滑りが防止され、このコンクリート10と共同して床の剛性を高めて振動騒音を防止する役割を果たす。また、デッキプレート4上に配設された床補強用の鉄筋8、9はコンクリート10と共同して床強度を与える役割を果たす。」
(エ)図1
「【図1】
[図:0001420356000003.jpg]
」
(オ)図4
「【図4】
[図:0001420356000004.jpg]
」
(カ)図5
「【図5】
[図:0001420356000005.jpg]
」
(キ)図面から看取できる事項
上記(イ)の段落【0019】及び上記(カ)の図5より、補強用の鉄筋8が溝部5の内部に設けられていることが看取される。
イ 甲2記載の技術的事項
上記アの記載事項から、甲2には次の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「甲2記載の技術的事項」という。)。
<甲2記載の技術的事項>
「床構造に関し(【0001】)、
床は、四隅に柱2が立設され、柱2と柱2との間には各梁3が掛け渡され、各梁3にはデッキプレート4が掛け渡され、デッキプレート4は、溝部5と山部6とを有する凹凸形状とされ(【0019】)、
各梁3が鉄骨鉄筋コンクリート構造、鉄筋コンクリート構造ではなく鉄骨構造の場合には、デッキプレート4は各梁3の鉄骨に掛け渡され、デッキプレート4の上面には、補強用の鉄筋8、9が縦横に配設され、デッキプレート4には、コンクリート10が所定の厚さとなるように打設され、デッキプレート合成スラブ構造が完成し(【0022】)、
鉄筋8、9はコンクリート10と共同して床強度を与える役割を果たし(【0023】)、
補強用の鉄筋8が溝部5の内部に設けられていること(前記ア(キ))。」
(3)甲第3号証
ア 記載事項
特許異議申立人が甲第3号証として提出した特開2019-31792号公報(以下、「甲3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)段落【0001】
「【0001】
本発明は、デッキプレートの配筋構造に関する。」
(イ)段落【0015】
「【0015】
<配筋構造>
図1に示すように、本実施形態のデッキプレート10は、断面が波形のQLデッキであり、長さ方向にそれぞれ延びる複数の山部12と複数の谷部14とが交互に形成されている。」
(ウ)段落【0018】~【0022】
「【0018】
また、デッキプレート10上には、複数の配力筋22が配筋されている。配力筋22は、デッキプレート10の谷部14の延出方向に直交する方向、すなわち上端主筋20と交差する方向に延びる鉄筋であり、互いに一定の間隔をあけて配置されている。
【0019】
なお、デッキプレートの山部12には、図示しないスペーサブロックが設置されており、複数の配力筋22は、スペーサブロックにそれぞれ載置されることでデッキプレート10の山部12に対して間隔をあけて保持されている。また、配力筋22は、上端主筋20の下部に配置されており、上端主筋20を支持している。
【0020】
さらに、上端主筋20には、複数の吊下げ筋24が支持されている。吊下げ筋24は、略U字形状の鉄筋であり、外側へ向かって鉤状に曲げられた一対の係止部24Aが上端部にそれぞれ設けられ、平坦な受け部24Bが下端部に設けられている。
【0021】
吊下げ筋24は、一対の係止部24Aが2本の上端主筋20にそれぞれ係止されており、受け部24Bがデッキプレート10の谷部14内に位置している。なお、図1に示すように、吊下げ筋24は、上端主筋20の延出方向に沿って一定の間隔で配置されており、本実施形態では、吊下げ筋24の間隔は配力筋22の間隔と略等しくされている。
【0022】
図1及び図2に示すように、デッキプレート10の谷部14内には、下端主筋26が2本ずつ配筋されている。下端主筋26は、谷部14の延出方向、すなわち上端主筋20と同一方向に延びる鉄筋であり、2本の下端主筋26が互いに間隔をあけて吊下げ筋24の受け部24Bにそれぞれ支持されている。」
(エ)段落【0030】
「【0030】
以上の手順により、上端主筋20、配力筋22、吊下げ筋24、及び下端主筋26をデッキプレート10上にそれぞれ配筋する。なお、上記手順は一例であるため、配筋位置や配筋手順が異なっていても構わない。その後、図2に示すスラブコンクリート28をデッキプレート10上に打設することで、合成スラブを構築する。」
(オ)図1
「
[図:0001420356000006.jpg]
」
(カ)図2
「【図2】
[図:0001420356000007.jpg]
」
イ 甲3記載の技術的事項
上記アの記載事項から、甲3には次の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「甲3記載の技術的事項」という。)。
<甲3記載の技術的事項>
「デッキプレートの配筋構造に関し(【0001】)、
デッキプレート10は、断面が波形のQLデッキであり、長さ方向にそれぞれ延びる複数の山部12と複数の谷部14とが交互に形成され(【0015】)、
デッキプレート10上には、複数の配力筋22が配筋され、配力筋22は、デッキプレート10の谷部14の延出方向に直交する方向、すなわち上端主筋20と交差する方向に延びる鉄筋であり、互いに一定の間隔をあけて配置され(【0018】)、
配力筋22は、上端主筋20の下部に配置されており、上端主筋20を支持し(【0019】)、
さらに、上端主筋20には、複数の吊下げ筋24が支持され、吊下げ筋24は、略U字形状の鉄筋であり、外側へ向かって鉤状に曲げられた一対の係止部24Aが上端部にそれぞれ設けられ、平坦な受け部24Bが下端部に設けられ(【0020】)、
吊下げ筋24は、一対の係止部24Aが2本の上端主筋20にそれぞれ係止されており、受け部24Bがデッキプレート10の谷部14内に位置し(【0021】)、
デッキプレート10の谷部14内には、下端主筋26が2本ずつ配筋され(【0022】)、
上端主筋20、配力筋22、吊下げ筋24、及び下端主筋26をデッキプレート10上にそれぞれ配筋し、その後、スラブコンクリート28をデッキプレート10上に打設することで、合成スラブを構築すること(【0030】)。」
(4)甲第4号証
ア 記載事項
特許異議申立人が甲第4号証として提出した特開平10-245922号公報(以下、「甲4」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、合成床用穴あきPC板を用いた合成床工法において、一体構造のスラブに段差を設ける段差床工法に関する。」
(イ)段落【0015】、【0016】
「【0015】梁用のコンクリート型枠6間に段差をつけてセットした両パネル1a、1bの段差部分を形成する端部は、対向面間に所定の間隔を設けた配置とし、この間隔に段差用の鉄筋7を配筋し、両パネル1a、1bの段差部分に臨む端部側には、穴3の上フランジ部分を除去した切り欠き部分8を設け、該切り欠き部分8から穴3内に引っ張り鉄筋9を配置する。この切り欠き部分8は合成床用穴あきPC板1の製造時に設けても、現場で加工してもよい。
【0016】上記穴3内に納まる引っ張り鉄筋9は、図2(A)に示すように、段差用の鉄筋7と結合し、両パネル1a、1bの上面に配置したスラブ用鉄筋10も段差用の鉄筋7と結合する。
(ウ)段落【0018】
「【0018】なお、打設したコンクリート11の一部は切り欠き部分8から穴3内に侵入し、引っ張り鉄筋9と両パネル1a、1bを結合し、段差用の鉄筋7の埋設とによって段差部分に、両側の両パネル1a、1bを支え、隣接する床や梁に荷重を伝達する梁状の鉄筋コンクート部分が構成される。」
(エ)図2
「【図2】
[図:0001420356000008.jpg]
」
(オ)図面から看取できる事項
上記(イ)の段落【0015】及び上記(エ)の図2より段差用の鉄筋7及び段差に関して、
・横方向の鉄筋と上下方向の鉄筋とを備えること
・横方向の鉄筋と上下方向の鉄筋から角部が形成されていること
・角部4カ所に引っ張り鉄筋9の配置された方向と直交する方向に鉄筋が配置されていること
がそれぞれ看取される。
イ 甲4記載の技術的事項
上記アの記載事項から、甲4は次の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「甲4記載の技術的事項」という。)。
<甲4記載の技術的事項>
「一体構造のスラブに段差を設ける段差床に関し(【0001】)、
梁用のコンクリート型枠6間に段差をつけてセットした両パネル1a、1bの段差部分を形成する端部は、対向面間に所定の間隔を設けた配置とし、この間隔に段差用の鉄筋7を配筋し、両パネル1a、1bの段差部分に臨む端部側には、穴3の上フランジ部分を除去した切り欠き部分8を設け、該切り欠き部分8から穴3内に引っ張り鉄筋9を配置し(【0015】)、
打設したコンクリート11の一部は切り欠き部分8から穴3内に侵入し、引っ張り鉄筋9と両パネル1a、1bを結合し、段差用の鉄筋7の埋設とによって段差部分に、両側の両パネル1a、1bを支え、隣接する床や梁に荷重を伝達する梁状の鉄筋コンクート部分が構成され(【0018】)、
段差用の鉄筋7が、横方向の鉄筋と上下方向の鉄筋とを備え、
横方向の鉄筋と上下方向の鉄筋から角部が形成され、
角部4カ所に引っ張り鉄筋9の配置された方向と直交する方向に鉄筋が配置されること(前記ア(オ))。」
(5)甲第5号証
ア 記載事項
特許異議申立人が甲第5号証として提出した特開2001-20428号公報(以下、「甲5」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スラブ段差部の配筋方法及びスラブ段差部の構造に関するものであり、特に、集合住宅等の建築物の床スラブに部分段差床スラブを形成する際、構築現場に於て、配筋作業が容易に行うことができるスラブ段差部の配筋方法及びスラブ段差部の構造に関するものである。」
(イ)段落【0009】
「【0009】図1は、RC構造で構築される集合住宅の住居の居住空間の一部にバスルーム、便所等の落し込み空間を形成するためのスラブ段差部3の配筋状態の平面を示す。図の左側の該スラブ段差部3には、図2(a)の縦断側面図で示すように床スラブ1の上面近傍と部分段差床スラブ2の下面近傍に所定間隔を置いて梁主筋5,5,5,5を配設し、該梁主筋5,5,5,5の周囲を長手方向の所定間隔にスタラップ6,6…を配設し、互に番線(図示せず)等で結束して直方体状の梁型筋4を設置する。」
(ウ)図1
「【図1】
[図:0001420356000009.jpg]
」
(エ)図2
「【図2】
[図:0001420356000010.jpg]
」
(オ)図面から看取できる事項
図2(b)から、直方体状の梁型筋4は、上下方向の鉄筋と横方向の鉄筋からなるスタラップ6を有し、当該上下方向の鉄筋と横方向の鉄筋とで角部が形成され、当該角部4カ所に梁主筋5が配筋されていること。
イ 甲5記載の技術的事項
上記アの記載事項から、甲5は次の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「甲5記載の技術的事項」という。)。
<甲5記載の技術的事項>
「スラブ段差部の構造に関し(【0001】)、
スラブ段差部3には、床スラブ1の上面近傍と部分段差床スラブ2の下面近傍に所定間隔を置いて梁主筋5,5,5,5を配設し、該梁主筋5,5,5,5の周囲を長手方向の所定間隔にスタラップ6,6…を配設し、互に番線等で結束して直方体状の梁型筋4を設置し(【0009】)、
直方体状の梁型筋4は、縦方向の鉄筋と横方向の鉄筋からなるスタラップ6を有し、当該上下方向の鉄筋と横方向の鉄筋とで角部が形成され、当該角部4カ所に梁主筋5が配筋されていること(上記ア(オ))。」
2 本件特許発明1について
(1)本件特許発明1と甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「段差があるデッキ合成スラブの構造」は、本件特許発明1の「段差が設けられた合成スラブ構造」に相当する。
イ 甲1発明の「段差の上段」、「段差の下段」は、それぞれ、本件特許発明1の「スラブ上段」、「スラブ下段」に相当するから、甲1発明の「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレート」は、本件特許発明1の「スラブ上段側に配置され」た「上段デッキプレート」に相当し、甲1発明の「段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレート」は、本件特許発明1の「スラブ下段側に配置され」た「下段デッキプレート」に相当する。
ウ 甲1発明の「段差の上段及び下段」を含めて合成スラブを構成する「コンクリート」は、本件特許発明1の「前記スラブ上段を構成し、且つ、前記スラブ下段を構成するコンクリート」に相当する。
エ 甲1発明において「デッキ合成スラブの段差が設けられた部分」は「梁」によって支持されていることは明らかである。
そうしてみると、甲1発明の「梁の直交方向」は、本件特許発明1の「スパン方向」に相当するので、甲1発明の「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートとは、梁の直交方向に並んで」いることは、本件特許発明1の「前記上段デッキプレートと前記下段デッキプレートとは、前記スパン方向に並べられ」ていることに相当する。
オ 甲1発明の「段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートは段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートよりも下側に配置され」ていることは、本件特許発明1の「前記下段デッキプレートは、前記上段デッキプレートよりも下側に配置され」ていることに相当する。
カ 甲1発明では、「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートとが梁と直交する方向に離間している箇所は、合成スラブ用デッキプレートの段差が形成された箇所の一部であり」、また、「段差がある合成スラブの内部には、上段と下段とに渡って連続的に、段差の補強鉄筋が設けられ」ている。
そうしてみると、甲1発明において、段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートとの間の合成スラブの内部にも段差の補強鉄筋が設けられていることは明らかである。
したがって、甲1発明の「段差がある合成スラブの内部には、上段と下段とに渡って連続的に、段差の補強鉄筋が設けられ」ていることは、本件特許発明1の「前記コンクリート内には、前記上段デッキプレートと前記下段デッキプレートとの間の境界部において」、「補強部材が設けられ」ていることに相当する。
キ 上記カを踏まえると、甲1発明の「上下方向に延びる辺部」、「段差の下段で下段の合成スラブ用デッキプレートの方向に延びる辺部」は、本件特許発明1の「上下方向に延びる第1の辺部」、「前記第1の辺部の下端部から前記スパン方向に延びる第2の辺部」に相当する。
したがって、甲1発明の「段差の補強鉄筋は、段差の下段で下段の合成スラブ用デッキプレートの方向に延びる辺部、当該辺部に連続し、上下方向に延びる辺部と」を有することは、本件特許発明1の「前記補強部材は、上下方向に延びる第1の辺部、及び前記第1の辺部の下端部から前記スパン方向に延びる第2の辺部を有」することに相当する。
ク 上記キを踏まえると、甲1発明の「段差の下段で下段の合成スラブ用デッキプレートの方向に延びる辺部と、当該辺部に連続し、上下方向に延びる辺部との間」の「角部」は、本件特許発明1の「前記第1の辺部と第2の辺部との間の角部」に相当する。
ケ 上記クを踏まえると、甲1発明の「段差の補強鉄筋と垂直方向である梁方向」とは、甲1発明の「幅方向」に相当し、甲1発明の「前記角部に、段差の補強鉄筋と垂直方向である梁方向に配筋された鉄筋が設けられている」ことは、本件特許発明1の「前記角部には前記幅方向に延びる接続筋が設けられて」いることに相当する。
コ 上記ア~ケを踏まえると、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、下記の点で相違する。
<一致点>
段差が設けられた合成スラブ構造であって、
スラブ上段側に配置された上段デッキプレートと、
スラブ下段側に配置された下段デッキプレートと、
前記スラブ上段を構成し、且つ、前記スラブ下段を構成するコンクリートと、を備え、
前記上段デッキプレートと前記下段デッキプレートとは、前記スパン方向に並べられ、
前記下段デッキプレートは、前記上段デッキプレートよりも下側に配置され、
前記コンクリート内には、前記上段デッキプレートと前記下段デッキプレートとの間の境界部に補強部材が設けられ、
前記補強部材は、上下方向に延びる第1の辺部、及び前記第1の辺部の下端部から前記スパン方向に延びる第2の辺部を有し、
前記第1の辺部と第2の辺部との間の角部には前記幅方向に延びる接続筋が設けられている、
合成スラブ構造。
<相違点1>
上段デッキプレートと下段デッキプレートが、本件特許発明1では、「スパン方向に延びる溝部を複数有する」ものであるのに対して、甲1発明では、そのようなものであるとの特定がない点。
<相違点2>
本件特許発明1では、幅方向に互いに離間するように複数の補強部材が設けられているのに対して、甲1発明では、そのようなものであるとの特定がない点。
<相違点3>
本件特許発明1では、「角部は、前記スパン方向から見て前記下段デッキプレートの前記溝部に配置される」のに対して、甲1発明の「角部」について、そのようなものであるとの特定がない点。
<相違点4>
本件特許発明1では、「前記接続筋は、少なくとも前記補強部材の位置においては、前記下段デッキプレートの山部の上端よりも低い位置に配置される」のに対して、甲1発明の「角部」に「段差の補強鉄筋と垂直方向である梁方向に配筋された鉄筋」がそのようなものであるとの特定がない点。
(2)相違点についての判断
相違点1~4について判断する。
ア 相違点1について
上記第4 1(2)イで示した甲2記載の技術的事項について、「各梁3にはデッキプレート4が掛け渡され、デッキプレート4は、溝部5と山部6とを有する凹凸形状とされ」ていること、及び、上記第4 1(3)イで示した甲3記載の技術的事項について、「デッキプレート10は、断面が波形のQLデッキであり、長さ方向にそれぞれ延びる複数の山部12と複数の谷部14とが交互に形成され」ていることから、梁間の方向がスパン方向であることも踏まえ、梁間に掛け渡されたデッキプレートとして、スパン方向に延びる溝部と山部とが交互にスパン方向と直交する幅方向に複数形成される技術は周知技術である(以下、「周知技術1」という。)。
そして、上記周知技術1において、「梁間に掛け渡されたデッキプレートとして、スパン方向に延びる溝部と山部とが交互に複数形成される」ことは、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成の「デッキプレート」が、「スパン方向に延びる溝部を複数有する」ものであることに相当する。
また、甲第1号証には、「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図は、「デッキ合成スラブ」の一断面であり、甲第1号証の紙面奥行き方向に延在するように合成スラブ用デッキプレートが設けられていることは明らかである。
また、甲1発明の「段差があるデッキ合成スラブの構造」と上記周知技術1とは、スパン方向に直交する幅方向にデッキプレートが形成されるという共通の機能及び作用を有するものである。
そうしてみると、甲1発明の「段差があるデッキ合成スラブの構造」において、幅方向に延在する「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレート」及び「段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレート」の具体的構成として、上記周知技術1の「梁間に掛け渡されたデッキプレートとして、スパン方向に延びる溝部と山部とが交互にスパン方向と直交する幅方向に複数形成される技術」を適用し、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成をなすことは、当業者が容易に想到し得ることである。
イ 相違点2について
甲第1号証には、「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図は、「デッキ合成スラブ」の一断面であり、甲第1号証の紙面奥行き方向に「デッキ合成スラブ」が形成されていることは明らかである。
そして、甲1発明の「段差の補強鉄筋」は、形成された「段差」の補強を行うことが目的の「鉄筋」であることは、その名称からみても明らかであるので、甲1発明の「デッキ合成スラブ」が梁の平行方向に形成されていることを考えると、その方向に複数設けられていることは明らかである。
また、梁の平行方向に「デッキ合成スラブ」を形成する際、段差の補強となるように、梁の平行方向に互いに距離を持って離間させて設けるようにすることは明らかである。
よって、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成は、実質的相違点ではない。
ウ 相違点3、相違点4について
上記相違点3、4については合わせて検討する。
上記アで判断したとおり、下段デッキプレートがスパン方向に延びる溝部を複数有する場合に、甲1発明の「角部」が「段差の下段」の「合成スラブ用デッキプレート」の「溝部」に配置し、かつ、甲1発明の「角部に、段差の補強鉄筋と垂直方向である梁方向に配筋された鉄筋」を「下部デッキプレートの山部の上端よりも低い位置」に配置しようとすると、「段差の下段」の「合成スラブ用デッキプレート」と干渉する。
そして、段差又は梁部の配筋に関し、甲2には、上記第4 1(2)イで示した技術的事項が記載されているが、角部及び角部に設けられた鉄筋を示すものではないから、甲1発明において、上記相違点3及び4に係る本件特許発明1の構成とすることを示唆するものではない。
また、上記第4 1(3)イで示した甲3記載の技術的事項は、「デッキプレートの配筋構造に関し」、「デッキプレート10は、断面が波形のQLデッキであり、長さ方向にそれぞれ延びる複数の山部12と複数の谷部14とが交互に形成され」、「吊下げ筋24は、一対の係止部24Aが2本の上端主筋20にそれぞれ係止されており、受け部24Bがデッキプレート10の谷部14内に位置し」ている構成を有する。
しかし、甲1発明の「段差の補強鉄筋」の「角部」に「段差の補強鉄筋と垂直方向である梁方向に配筋された鉄筋」と、甲3記載の技術的事項が有する「吊下げ筋24」とは、その形状と配置及び機能がいずれも異なるから、甲1発明に甲3記載の技術的事項における「吊下げ筋24」を適用する動機付けはない。
また、甲1発明に甲3記載の技術的事項が有する「吊下げ筋24」を組み合わせても、相違点3及び4に係る本件特許発明1の構成とはならない。
さらに、段差又は梁部の配筋に関し、甲4には、上記第4 1(4)イで示した技術的事項が、また、甲5には、上記第4 1(5)イで示した技術的事項が記載されているが、いずれもデッキプレートの溝部及び山部の上端と鉄筋との関係を示すものではないから、甲1発明において、上記相違点3及び4に係る本件特許発明1の構成とすることを示唆するものではない。
したがって、甲1発明において、上記相違点3及び4に係る本件特許発明1の構成とすることは、甲2記載の技術的事項、甲3記載の技術的事項、甲4記載の技術的事項、甲5記載の技術的事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものではない。
エ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、上記相違点4に関し、「しかしながら、甲第3号証には、「吊下げ筋24の受け部24B(接続筋に相当)は、少なくとも補強部材の位置においては、デッキプレートの山部の上端よりも低い位置に配置される点」が記載されている。そして、甲第3号証に記載された事項は、「合成スラブにおけるデッキプレートの配筋構造」に関するものであり、甲1発明と技術分野が共通する。」、「甲第4号証には、「接続筋(図2に図示)は、少なくとも補強部材の位置においては、パネルの山部の上端よりも低い位置に配置される点」が記載されている。そして、甲第4号証に記載された事項は、「一体構造のスラブの段差を設ける段差床工法」に関するものであり、甲1発明と技術分野が共通する。」、「したがって、甲3号証~甲第4号証に記載された事項を甲1発明に適用して、甲1発明が「接続筋は、少なくとも補強部材の位置においては、下段デッキプレートの山部の上端よりも低い位置に配置される」ようにすることは、当業者が容易になし得ることである。」(特許異議申立書23頁23行~24頁7行)と主張している。
しかしながら、申立人の上記主張を考慮しても、上記ウの判断を変更すべき事情はない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明において、上記相違点3及び4に係る本件特許発明1の構成とすることは、甲2記載の技術的事項、甲3記載の技術的事項、甲4記載の技術的事項、甲5記載の技術的事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件特許発明1に係る特許は、甲1を主たる証拠として、甲2~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないので、特許法第113条第2号に該当せず、特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
3 本件特許発明2~6について
本件特許発明2~6は、本件特許発明1の構成を全て有し、さらに限定を付加したものであるところ、上記2において対比・判断したとおり、本件特許発明1は、甲1発明及びその他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件特許発明2~6も、甲1発明及びその他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許発明2~6に係る特許は、甲1を主たる証拠として、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないので、特許法第113条第2号に該当せず、特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~6に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことができない。
また、他に本件特許発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-701000