特許異議申立
2024-700827
合成スラブ構造
- 審判番号
- 2024-700827
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-060437
- 登録番号
- 7442370
- 請求日
- 2024年09月02日
- 審決日
- 2024年10月31日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日鉄建材株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】柳 康樹
- 【異議申立人】鈴木 憲治
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 加藤 範久
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P1651.121-Y (E04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7442370号発明「合成スラブ構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7442370号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7442370号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和2年3月30日に出願された特願2020-60437号であって、令和6年2月22日にその特許権の設定登録がされ、同年3月4日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和6年9月2日に、特許異議申立人 鈴木 憲治(以下「申立人」という。)により、請求項1~5に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~5の特許に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
段差が設けられた合成スラブ構造であって、
スラブ上段側に配置され、スパン方向に延びる溝部を複数有する上段デッキプレートと、
スラブ下段側に配置され、前記スパン方向に延びる溝部を複数有する下段デッキプレートと、
前記スラブ上段を構成し、且つ、前記スラブ下段を構成するコンクリートと、を備え、
前記上段デッキプレートと前記下段デッキプレートとは、前記スパン方向に並べられ、
前記下段デッキプレートは、前記上段デッキプレートよりも下側に配置され、
前記コンクリート内には、前記スラブ上段と前記スラブ下段との間で応力を伝達する第1の応力伝達部材が設けられ、
前記第1の応力伝達部材は、
前記上段デッキプレートの前記溝部内において、当該溝部の底面から上方に離間する位置で前記スパン方向に延びる第1の部分と、
前記上段デッキプレートの端部よりも前記スラブ下段側に延び、前記下段デッキプレートの上側に配置される第2の部分と、を備え、
前記コンクリート内には、前記下段デッキプレートの前記溝部内において、当該溝部の底面から上方に離間する位置で前記スパン方向に延びる第2の応力伝達部材が設けられ、
前記第2の応力伝達部材は、前記第1の応力伝達部材と別体の部材として構成され、
前記第2の応力伝達部材の前記スラブ上段側の端部は、上方へ曲がることなく前記スパン方向に延びている、合成スラブ構造。
【請求項2】
前記コンクリートは、上段面と、下段面と、前記上段面と前記下段面との間の段差面と、を有し、
前記段差面は、前記上段デッキプレートの端部から前記スラブ下段側に離間した位置に配置され、
前記第1の応力伝達部材の前記第2の部分は、前記段差面よりも前記スラブ下段側まで延びている、請求項1に記載された合成スラブ構造。
【請求項3】
前記コンクリート内には、前記上段デッキプレートと前記下段デッキプレートとの間の境界部において、上下方向に延びる補強部材が設けられる、請求項1又は2に記載の合成スラブ構造。
【請求項4】
前記補強部材は、少なくとも前記上段デッキプレートよりも高い位置まで延びる、請求項3に記載の合成スラブ構造。
【請求項5】
前記上段デッキプレート及び前記下段デッキプレートの複数の前記溝部のそれぞれには、少なくとも一つの前記第1の応力伝達部材が配置される、請求項1~4の何れか一項に記載の合成スラブ構造。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人による特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
1 特許異議申立理由1
本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項に基づいて、本件特許発明2~4は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証~甲第2号証に記載された事項に基づいて、本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証~甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 証拠
1 証拠一覧
甲第1号証:合成スラブ工業会、合成スラブのQ&A 構造Q-10、A-10、公知日:2006年10月、検索日:2024年10月16日、インターネットURL:http://www.gousei-slab.jp/q_a/qa_s/s_10.pdf#view=FitHf
甲第2号証:特開2020-41348号公報
甲第3号証:特開2019-31792号公報
2 各証拠について
(1)甲1
ア 記載事項1
特許異議申立人が甲第1号証として提出した「合成スラブ工業会、合成スラブのQ&A 構造Q-10、A-10」(以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001416535000001.jpg]
[図:0001416535000002.jpg]
」
イ 認定事項
上記アの記載事項から、「段差があ」る「デッキ合成スラブ」の構造に以下の事項が認定できる。
(ア)「構造Q-10」とした枠囲いの中に「デッキ合成スラブに段差があり、焼抜き栓溶接や頭付きスタッドによる施工が困難な場合の指示部の接合法はどのように考えたらよいですか。」との記載の下に、段差を有した板状部材の図が記載され、当該図において、板状部材の内部に三本斜線が描かれていることから、当該図は段差を有した板状部材の断面図であって、三本斜線はコンクリートを示していることは技術常識から明らかである。よって、当該断面図及び「構造A-10」とした枠囲いの中にある断面図は、内部にコンクリートを有する段差があるデッキ合成スラブの構造を示していること。
(イ)「構造A-10」とした枠囲いの中に「1)段差が大きい場合」として「大型の受け材を設けてデッキプレートを支持し」との記載があり、その直下の断面図では、段差の下段において、「大型の受け材」とされた部材の直上の長方形で示された部材に対して「合成スラブ用デッキプレート」との記載が付されていることから、段差があるデッキ合成スラブの下段において、長方形で示された部材は、合成スラブ用デッキプレートであること。
(ウ)「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その直下の断面図では、「デッキ受け材」よりも右側に位置する段差の上段における、長方形で示された部材に対して、矢印で「合成スラブ用デッキプレート」と付されているので、段差の上段に設けられた長方形の部材は合成スラブ用デッキプレートであること。
(エ)「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」として「受けアングル等を梁フランジ面に溶接して、デッキプレートを支持し、焼抜き栓溶接または頭付きスタッドの施工を可能にする方法です。」と記載され、その記載の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図では、梁のフランジの左端よりも左側に位置する段差の下段であって、T型の部材の上面に長方形で示された部材が接するように図示されている。上記断面図の説明の記載を踏まえると、T型の部材は、「梁」であり、その上面は「梁フランジ面」であると認められる。さらに、前記(ウ)で示したように段差の上段に設けられた長方形の部材が「合成スラブ用デッキプレート」であることを踏まえると、段差の下段において、「梁フランジ面」と接するように設けられ、上段に設けられたものと同様の長方形の部材は、合成スラブ用デッキプレートであること。
(オ)前記(ウ)及び(エ)を踏まえると、段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートとは、梁と直交する方向に並んでおり、段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートは段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートよりも下側に配置されていること。また、前記(ウ)及び(エ)で示した合成スラブの断面図では、段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートの上も含めて、合成スラブには三本斜線が描かれていることから、前記(ア)のとおり、段差の上段及び下段を含めて、合成スラブは、コンクリートで構成されていること。
(カ)「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図では、段差の上段に設けられた長方形の部材の下にL字状の部材があり、上記L字状の部材に対して矢印で「デッキ受け材」と付されていることから、前記(ウ)及び(エ)を踏まえると、段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートをL字状の部材であるデッキ受け材で支持していること。
(キ)「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図では、T型の部材がデッキ合成スラブの段差が設けられた部分の直下に設けられていることから、前記(エ)を踏まえると、T型の部材で示された梁が、デッキ合成スラブの段差が設けられた部分を支持していること。
(ク)「構造A-10」とした枠囲いの中に「2)段差が小さい場合」の下に「(1)床面をかさ上げする場合」との記載があり、その下の断面図では、段差がある合成スラブの内部に、梁と直交する方向(図では左右方向)に「段差の補強鉄筋」として示された部材が上段と下段とに渡って連続的に設けられているので、段差がある合成スラブの内部には、上段と下段とに渡って連続的に、段差の補強鉄筋が設けられていること。
ウ 記載事項2
また、甲1は、「合成スラブのQ&A」というウェブページの一部であるところ、「合成スラブのQ&A」が掲載された合成スラブ工業会のトップページ(http://www.gousei-slab.jp/index.html)には、「合成スラブのQ&A」に関して次の事項が記載されている。
「
[図:0001416535000003.jpg]
」
「
[図:0001416535000004.jpg]
」
エ 甲1発明
上記アの記載事項1及びイの認定事項から、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。なお、甲1発明は、「2)段差が小さい場合」の「(1)床面をかさ上げする場合」として図示された構造に基づいて、認定した。
<甲1発明>
「段差があるデッキ合成スラブの構造であって、(前記イ(ア))
デッキ合成スラブの段差が設けられた部分を支持する梁を設け、(前記イ(キ))
段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと、(前記イ(ウ))
段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと、(前記イ(エ))
段差の上段及び下段を含めて合成スラブを構成するコンクリートを備え、(前記イ(オ))
段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートとは、梁の直交方向に並んでおり、(前記イ(オ))
段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートは段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートよりも下側に配置され、(前記イ(オ))
段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートを支持するデッキ受け材を設け、(前記イ(カ))
段差がある合成スラブの内部には、上段と下段とに渡って連続的に、段差の補強鉄筋が設けられている(前記イ(ク))
段差があるデッキ合成スラブの構造。」
オ 甲1の公知日について
上記ウの記載事項2で示したとおり、合成スラブ工業会のトップページの「What’s New」の欄に「2006年10月 合成スラブに関する技術的問題のQ&Aを新規掲載しました。」と記載され、2006年10月以降の更新履歴として、「構造Q-10」を掲載、更新した旨の記載はない。更新履歴の記載がある箇所は、その日付で変更される一方、記載がない項目については変更がなされていないと解するのが自然であるから、前記(1)で示した「構造Q-10」に係る記載は「2006年10月」に掲載されたものと認められる。
なお、「What’s New」の欄には「2022年08月17日 「合成スラブのQ&A」を更新、表示をPDF形式に変更しました。」との記載があるが、当該記載は「合成スラブのQ&A」の表示をPDF形式に変更しただけであって、前記(1)で示した記載事項の内容は、2022年08月17日には変更されていないものと判断した。
以上のとおり、甲1の公知日は、2006年10月であるから、前記エで示した甲1発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であると認められる。
(2)甲2について
ア 記載事項
特許異議申立人が甲第2号証として提出した「特開2020-41348号公報」(以下「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)段落【0010】
「【0010】
本発明は、端部に補強手段を講じた合成デッキスラブである。
本発明は、主に鉄骨構造物に適用される、鉄骨梁上に敷設されたQLデッキなどのデッキプレートとスラブコンクリートから構成される合成デッキスラブに適用される。合成デッキスラブの基本構造は図12に示されるとおりである。QLデッキはコンクリートと一体になって働くデッキプレートで、平成14年国土交通省告示第326号に適合する合成スラブである。コンクリート打設時はデッキプレート型枠の役割をはたし、コンクリート硬化後は、主としてデッキプレートが引っ張り力に、コンクリートは圧縮力に抵抗し、大きな荷重に耐え、長いスパンをかけ渡すことができる。QLデッキの合成スラブは、床面に作用する鉛直荷重及び面内水平荷重に対して合成スラブとして設計することができる。
また、鉄骨梁と合成スラブを頭付きスタッドで接合することで鉄骨梁を合成梁として設計することができる。」
(イ)段落【0014】
「【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る合成デッキスラブについて、図2に基づいて説明する。
合成デッキスラブ1は、フランジ14Fに頭付きスタッド15を有するH形鋼製の鉄骨梁14と、この鉄骨梁14、14間に渡されたQLデッキプレート11とQLデッキプレート上にワイヤメッシュ13が配筋されて、打設されたコンクリート12から構成されている。図2に示すように、第1実施形態では、鉄骨梁の軸方向に並んでいるスタッドの列に沿って、鉄筋や細長い鋼板(フラットバー)を添わせて配置する。
図2(a)(b)に示すものは、外補強鉄筋21a、内補強鉄筋21bをスタッド15の両側に、スタッド両側補強筋21として添わせている。
図2(c)(d)は、フラットバー22をスタッド15の外側に沿わせている例である。
スタッド両側補強筋21あるいはフラットバー22は、スタッドに頭があるので、上方に抜けることは抑制されるが、さらにスタッド15に溶接などの手段で固定することができる。」
(ウ)段落【0026】
「【0026】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態に係る合成デッキスラブについて、図8に基づいて説明する。
合成デッキスラブ1の基本構造は図2と同様である。補強手段である補強鉄筋が、デッキプレートの溝内からスラブ端部に向けて配設され、補強鉄筋の端部に接合された鉄板を設けた合成デッキスラブに関する実施態様である。
QLデッキ11の溝内から伸びる下部補強筋71と合成デッキスラブの端部で下部補強筋71に接合された端面部補強板72が設けられている。本構成では、特に合成デッキスラブの端面の固定度が向上して、スラブ端部に発生するひび割れが拡大することを抑制することができる。特に、端面部補強板72が設けられているので、下面補強筋71の伸びに対する抵抗力が向上する。
図示の例では、補強用の下部補強筋71が、QLデッキ11溝の内部を通過して、合成デッキスラブの端部まで延びている。そして、スラブ端部のコンクリート内に配置されている端面部補強板72と下部補強筋71は溶接などで接合して固定されている。なお、図8の図示では、端面部補強板72はスラブコンクリートの内部に埋め込まれているが、スラブコンクリートの端部表面に設けることもできる。
下部補強筋71の設置本数は、スタッドの数分を基本とするが、設計等の必要性に応じて加減することができる。
端面部補強板62は、鉄骨梁14の軸方向に連続して設けることもできる。あるいは、分割して複数設けることもできる。分割する場合は、隣接するスタッドの間隔の長さ以上が適している。」
(エ)図2
「【図2】
[図:0001416535000005.jpg]
」
(オ)図8
「【図8】
[図:0001416535000006.jpg]
」
(カ)図面から看取できる事項
図2、図8より、QLデッキ11の溝内から伸びる下部補強筋71について以下の事項が看取できる。
・図2の上下方向がスパン方向であることは明らかであるから、QLデッキ11の溝はスパン方向に延びていること。
・図8より、QLデッキ11の溝内から伸びる下部補強筋71が、スパン方向に延びていること。
・図8より、QLデッキ11の溝の内部において、下部補強筋71が、溝の底面から上方に離間する位置に配置されていること。
・図8より、下部補強筋71は、端部においても直線で示されていることから、端部は上方へ曲がることなく延びていること。
イ 甲2記載技術
上記アの記載事項から、甲2には、第7実施形態に係る合成デッキスラブに着目すると、次の技術が記載されていると認められる(以下「甲2記載技術」という。)。
なお、甲2の第7実施形態に係る合成デッキスラブについて、「合成デッキスラブ1の基本構造は図2と同様である。」(【0026】)とあり、図2は、「本発明の第1実施形態に係る合成デッキスラブ」(【0014】)を示すものであるから、第7実施形態に係る合成デッキスラブの技術を認定する上で、基本構造に係る部分は第1実施形態に係る記載を認定した。
<甲2記載技術>
「QLデッキなどのデッキプレートとスラブコンクリートから構成される合成デッキスラブであって、(【0010】)
合成デッキスラブ1は、鉄骨梁14と、この鉄骨梁14、14間に渡されたQLデッキプレート11と、打設されたコンクリート12から構成され、(【0014】)
補強手段である補強鉄筋が、デッキプレートの溝内からスラブ端部に向けて配設され、(【0026】)
QLデッキ11の溝内から伸びる下部補強筋71が、QLデッキ11溝の内部を通過して、合成デッキスラブの端部まで延びており、(【0026】)
QLデッキ11の溝の内部において、下部補強筋71が、溝の底面から上方に離間する位置に配置され、端部は上方へ曲がることなくスパン方向に延びている(前記ア(カ))
技術。」
(3)甲3について
ア 記載事項
特許異議申立人が甲第3号証として提出した「特開2019-31792号公報」(以下「甲3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)段落【0001】
「【0001】
本発明は、デッキプレートの配筋構造に関する。」
(イ)段落【0015】
「【0015】
<配筋構造>
図1に示すように、本実施形態のデッキプレート10は、断面が波形のQLデッキであり、長さ方向にそれぞれ延びる複数の山部12と複数の谷部14とが交互に形成されている。」
(ウ)段落【0022】
「【0022】
図1及び図2に示すように、デッキプレート10の谷部14内には、下端主筋26が2本ずつ配筋されている。下端主筋26は、谷部14の延出方向、すなわち上端主筋20と同一方向に延びる鉄筋であり、2本の下端主筋26が互いに間隔をあけて吊下げ筋24の受け部24Bにそれぞれ支持されている。」
(エ)段落【0030】、【0031】
「【0030】
以上の手順により、上端主筋20、配力筋22、吊下げ筋24、及び下端主筋26をデッキプレート10上にそれぞれ配筋する。なお、上記手順は一例であるため、配筋位置や配筋手順が異なっていても構わない。その後、図2に示すスラブコンクリート28をデッキプレート10上に打設することで、合成スラブを構築する。
【0031】
<作用及び効果>
本実施形態によれば、デッキプレート10の谷部14内に下端主筋26が配筋されている。このため、デッキプレート10の谷部14内に下端主筋26が配筋されていない構成と比較して、床耐荷重を高めることができるとともに、梁によるデッキプレート10の支持スパンを長くすることができる。」
(オ)図1、2
「【図1】
[図:0001416535000007.jpg]
【図2】
[図:0001416535000008.jpg]
」
(カ)図面から看取できる事項
図1、図2より、デッキプレート10の谷部14内に配筋された下端主筋26について、以下の事項が看取できる。
・図1より、下端主筋26は、その端部において、上方へ曲がることなく延びていること。
・図2より、下端主筋26とデッキプレートの谷部14との間には、上下方向に隙間があるので、デッキプレート10の谷部14において、下端主筋26が、谷部14の底面から上方に離間する位置に配置されていること。
イ 甲3記載技術
上記アの記載事項から、甲3には、次の技術が記載されていると認められる(以下「甲3記載技術」という。)。
<甲3記載技術>
「デッキプレート10は、長さ方向にそれぞれ延びる複数の山部12と複数の谷部14とが交互に形成されており、(【0015】)
デッキプレート10の谷部14内には、下端主筋26が2本ずつ配筋されており、下端主筋26は、谷部14の延出方向、すなわち上端主筋20と同一方向に延びる鉄筋であって、(【0022】)
下端主筋26は、その端部において、上方へ曲がることなく延びており、(前記ア(カ))
デッキプレート10の谷部14において、下端主筋26が、谷部14の底面から上方に離間する位置に配置されており、(前記ア(カ))
スラブコンクリート28をデッキプレート10上に打設することで、合成スラブを構築し、(【0030】)
床耐荷重を高めることができるとともに、梁によるデッキプレート10の支持スパンを長くすることができる(【0031】)
技術。」
第5 当審の判断
1 本件特許発明1について
(1)本件特許発明1と甲1発明との対比
本件特許発明と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「段差があるデッキ合成スラブの構造」は、本件特許発明1の「段差が設けられた合成スラブ構造」に相当する。
イ 甲1発明の「段差の上段」、「段差の下段」は、それぞれ、本件特許発明1の「スラブ上段」、「スラブ下段」に相当するから、甲1発明の「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレート」は、本件特許発明1の「スラブ上段側に配置され」た「上段デッキプレート」に相当し、甲1発明の「段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレート」は、本件特許発明1の「スラブ下段側に配置され」た「下段デッキプレート」に相当する。
ウ 甲1発明の「段差の上段及び下段」を含めて合成スラブを構成する「コンクリート」は、本件特許発明1の「前記スラブ上段を構成し、且つ、前記スラブ下段を構成するコンクリート」に相当する。
エ 甲1発明において「デッキ合成スラブの段差が設けられた部分」は「梁」によって支持されており、段差の上段、段差の下段のそれぞれの端部も「梁」によって支持されていることは明らかである。すると、甲1発明の「梁の直交方向」は、本件特許発明1の「スパン方向」に相当するので、甲1発明の「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートと段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートとは、梁の直交方向に並んで」いることは、本件特許発明1の「前記上段デッキプレートと前記下段デッキプレートとは、前記スパン方向に並べられ」ていることに相当する。
オ 甲1発明の「段差の下段に設けられた合成スラブ用デッキプレートは段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートよりも下側に配置され」ていることは、本件特許発明1の「前記下段デッキプレートは、前記上段デッキプレートよりも下側に配置され」ていることに相当する。
カ 上記ア~オを踏まえると、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点1、2、3で相違する。
<一致点>
段差が設けられた合成スラブ構造であって、
スラブ上段側に配置された、上段デッキプレートと、
スラブ下段側に配置された、下段デッキプレートと、
前記スラブ上段を構成し、且つ、前記スラブ下段を構成するコンクリートと、を備え、
前記上段デッキプレートと前記下段デッキプレートとは、前記スパン方向に並べられ、
前記下段デッキプレートは、前記上段デッキプレートよりも下側に配置される
合成スラブ構造。
<相違点1>
上段デッキプレートと下段デッキプレートが、本件特許発明1では「スパン方向に延びる溝部を複数有する」ものであるのに対し、甲1発明では、そのようなものであるとの特定がない点。
<相違点2>
本件特許発明1では、「前記コンクリート内には、前記スラブ上段と前記スラブ下段との間で応力を伝達する第1の応力伝達部材が設けられ、
前記第1の応力伝達部材は、
前記上段デッキプレートの前記溝部内において、当該溝部の底面から上方に離間する位置で前記スパン方向に延びる第1の部分と、
前記上段デッキプレートの端部よりも前記スラブ下段側に延び、前記下段デッキプレートの上側に配置される第2の部分と、を備え」ているのに対し、甲1発明では、そのような第1の応力伝達部材が設けられているとの特定がない点。
<相違点3>
本件特許発明1では、「前記コンクリート内には、前記下段デッキプレートの前記溝部内において、当該溝部の底面から上方に離間する位置で前記スパン方向に延びる第2の応力伝達部材が設けられ、
前記第2の応力伝達部材は、前記第1の応力伝達部材と別体の部材として構成され、
前記第2の応力伝達部材の前記スラブ上段側の端部は、上方へ曲がることなく前記スパン方向に延びている」のに対し、甲1発明では、そのような第2の応力伝達部材が設けられているとの特定がない点。
(2)相違点についての判断
相違点1、2、3について判断する。
ア 甲2記載技術について
前記第4の2(2)イで示した甲2記載技術について、「デッキプレート」である「QLデッキ11」が「溝」を有しており、「QLデッキ11の溝の内部において、下部補強筋71が、溝の底面から上方に離間する位置に配置され、端部は上方へ曲がることなくスパン方向に延びている」ことは、前記相違点1、2、3に係る本件特許発明1の構成の「デッキプレート」が、「スパン方向に延びる溝部を複数有する」ものであって、第1の応力伝達部材及び第2の応力部材が「デッキプレートの前記溝部内」に設けられ「スパン方向に延びる」部分を備えていることに相当する。
しかし、甲2記載技術は、あくまでも一つのデッキプレートにおける鉄筋の配置に関する技術であって、下部補強筋71は、合成デッキスラブにおける二つのデッキプレートが設けられた部分の接続に設けられたものではない。そして、甲2において、下部補強筋71を二つのデッキプレートが設けられた部分の接続部に設ける点の記載も示唆もない。すると、甲2記載技術における下部補強筋71は、本件特許発明1の「応力伝達部材」に相当するものではあるが、「前記スラブ上段と前記スラブ下段との間で応力を伝達する」「応力伝達部材」ではなく、「応力」の「伝達」の態様において、本件特許発明1とは異なるものである。
次に、甲1発明に甲2記載技術を組み合わせる動機付けがあるか否かについて検討する。
甲1発明と甲2記載技術とは、共に、合成デッキスラブの構造に関するものではあるが、相違点2、3に係る鉄筋の構成に着目すると、甲2記載技術の下部補強筋71は一つのデッキプレート上に配設されたものであり、合成スラブにおける二つのデッキプレートが設けられた部分の接続に関するものではない。また、甲2記載技術は、甲1発明のように段差が設けられた合成デッキスラブでもないので、上段のデッキプレートの溝部と下段のデッキプレートの溝部内に、それぞれ下部補強筋71を設けたものでもない。
そして、甲1発明は、前記第4の2(1)エで示したとおり、「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートを支持するデッキ受け材を設け」、「デッキ合成スラブの段差が設けられた部分を支持する梁を設け」たものであるから、デッキ合成スラブの外部において「デッキ受け材」と「梁」を設けることで、「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレート」と「デッキ合成スラブの段差が設けられた部分」とを「支持」しているものである。「デッキ受け材」と「梁」を設けた甲1発明の「段差があるデッキ合成スラブの構造」は、「デッキ受け材」と「梁」という支持部材を有しているので、構造上安定したものであると認められ、甲1発明に甲2記載技術を適用する動機付けが存在しない。
つまり、甲1発明における合成スラブ用デッキプレートを甲2記載技術にある「溝」を有したものに代えた上で、甲1発明の「段差の上段」の「合成スラブ用デッキプレート」と「段差の下段」の「合成スラブ用デッキプレート」のそれぞれにスパン方向に延びる部分を有する鉄筋を設ける動機付けが存在せず、甲1発明に甲2記載技術を適用して相違点2、3に係る本件特許発明1の構成を想到し得たということはできない。
また、甲1発明におけるデッキ合成スラブの構造において、「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレート」と「デッキ合成スラブの段差が設けられた部分」とを「支持」する「デッキ受け材」と「梁」による支持構造に代えて、甲1発明における合成スラブ用デッキプレートを甲2記載技術にある「溝」を有したものとした上で甲1発明の「段差の上段」の「合成スラブ用デッキプレート」と「段差の下段」の「合成スラブ用デッキプレート」のそれぞれにスパン方向に延びる部分を有する鉄筋を設ける動機付けも存在しない。
したがって、甲1発明及び甲2記載技術に基づいて、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではあっても、さらに、相違点2、3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
イ 甲3記載技術について
前記第3で示したとおり、申立人は、本件特許発明1の進歩性を否定する証拠としては、甲1と甲2にしか挙げていないが、念のため、甲3についても検討する。
前記第4の2(3)イで示した甲3記載技術について、「デッキプレート10」が「谷部14」を有しており、「デッキプレート10の谷部14内に」「下端主筋26が」「配筋されており」、「下端主筋26は、谷部14の延出方向、すなわち上端主筋20と同一方向に延びる」ことは、前記相違点2に係る本件特許発明1の構成の「デッキプレート」が、「スパン方向に延びる溝部を複数有する」ものであって、第1の応力伝達部材及び第2の応力伝達部材が「デッキプレートの前記溝部内」に設けられ「スパン方向に延びる」部分を備えていることに相当する。
しかし、甲3記載技術は、あくまでも一つのデッキプレートにおける鉄筋の配置に関する技術であって、下端主筋26は二つのデッキプレートが設けられた部分の接続に設けられたものではない。そして、甲3において、下端主筋26を二つのデッキプレートが設けられた部分の接続部に設ける点の記載も示唆もない。すると、甲3記載技術における下端主筋26は、本件特許発明1の「応力伝達部材」に相当するものではあるが、「前記スラブ上段と前記スラブ下段との間で応力を伝達する」「応力伝達部材」ではなく、「応力」の「伝達」の態様において、本件特許発明1とは異なるものである。
次に、甲1発明に甲3記載技術を組み合わせる動機付けがあるか否かについて検討する。
甲1発明と甲3記載技術とは、共に、合成スラブの構造に関するものではあるが、相違点2、3に係る鉄筋の構成に着目すると、甲3記載技術の下端主筋26は一つのデッキプレート上に配設されたものであり、合成スラブにおける二つのデッキプレートが設けられた部分の接続に関するものではない。また、甲3記載技術は、甲1発明のように段差が設けられた合成デッキスラブでもないので、上段のデッキプレートの溝部と下段のデッキプレートの溝部内に、それぞれ下端主筋26を設けたものでもない。
そして、甲1発明は、前記第4の2(1)エで示したとおり、「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレートを支持するデッキ受け材を設け」、「デッキ合成スラブの段差が設けられた部分を支持する梁を設け」たものであるから、「デッキ受け材」と「梁」を設けることで、「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレート」と「デッキ合成スラブの段差が設けられた部分」とを「支持」しているものである。「デッキ受け材」と「梁」を設けた甲1発明の「段差があるデッキ合成スラブの構造」は、「デッキ受け材」と「梁」という支持部材を有しているので、構造上安定したものであると認められ、甲1発明に甲3記載技術を適用する動機付けが存在しない。
つまり、甲1発明における合成スラブ用デッキプレートを甲3記載技術にある「谷部14」を有したものに代えた上で、甲1発明の「段差の上段」の「合成スラブ用デッキプレート」と「段差の下段」の「合成スラブ用デッキプレート」のそれぞれにスパン方向に延びる部分を有する鉄筋を設ける動機付けが存在せず、甲1発明に甲3記載技術を適用して相違点3、4に係る本件特許発明1の構成を想到し得たということはできない。
また、甲1発明におけるデッキ合成スラブの構造において、「段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレート」と「デッキ合成スラブの段差が設けられた部分」とを「支持」する「デッキ受け材」と「梁」による支持構造に代えて、甲1発明における合成スラブ用デッキプレートを甲3記載技術にある「谷部14」を有したものとした上で甲1発明の「段差の上段」の「合成スラブ用デッキプレート」と「段差の下段」の「合成スラブ用デッキプレート」のそれぞれにスパン方向に延びる部分を有する鉄筋を設ける動機付けも存在しない。
したがって、甲1発明及び甲3記載技術に基づいて、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではあっても、さらに、相違点2、3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 相違点2、3に係る本件特許発明1の構成の効果について
本件特許発明1は、上段デッキプレート及び下段デッキプレートが、「スパン方向に延びる溝部を複数有する」ものであって、「前記コンクリート内には、前記スラブ上段と前記スラブ下段との間で応力を伝達する第1の応力伝達部材が設けられ、前記第1の応力伝達部材は、前記上段デッキプレートの前記溝部内において、当該溝部の底面から上方に離間する位置で前記スパン方向に延びる第1の部分と、前記上段デッキプレートの端部よりも前記スラブ下段側に延び、前記下段デッキプレートの上側に配置される第2の部分と、を備え、前記コンクリート内には、前記下段デッキプレートの前記溝部内において、当該溝部の底面から上方に離間する位置で前記スパン方向に延びる第2の応力伝達部材が設けられ、前記第2の応力伝達部材は、前記第1の応力伝達部材と別体の部材として構成され、前記第2の応力伝達部材の前記スラブ上段側の端部は、上方へ曲がることなく前記スパン方向に延びている」ものとしたことによって、「上段デッキプレートと下段デッキプレートとが、例えば梁材などを介して接続されることなく分割された状態であっても、第1の応力伝達部材を介して良好に応力伝達を行うことができる。また、第1の応力伝達部材は、所望の形状にして、単にコンクリート内に配置すればよいだけなので、梁材などを用いて応力伝達をする場合に比して、構造をシンプルにすることができ、施工の手間も低減できる。以上より、構造を複雑化させることなく、段差を設けることができる。」(本願の明細書の【0007】)という効果を奏するものである。
一方、甲1発明は、前記第4の2(1)エで示したとおり、「デッキ受け材」と「梁」を設けたものであって、本願の明細書に記載の「梁材などを介して接続」したものであって「梁材などを用いて応力伝達をする場合」のものであるから、構造が「複雑化」したものである。また、甲2記載技術や甲3記載技術は、いずれも、一つのデッキプレートの配筋に関する技術であって、合成スラブにおける二つのデッキプレートが設けられた部分の接続に関するものではないので、上段デッキプレートと下段デッキプレートとの間で、シンプルな構造で応力を伝達するものではない。
したがって、相違点2、3に係る本件特許発明1の構成の効果は、甲1発明及び甲2記載技術又は甲3記載技術が奏する効果の総和を超えるものであって、甲1発明及び甲2記載技術、又は、甲1発明及び甲3記載技術に基づいて当業者が予測し得たものではない。
エ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、甲1発明と甲2記載技術を組み合わせる動機付けについて、「そして、甲2記載事項4,5は、甲2記載事項1及び甲第2号証の図2,8等に記載されるように、デッキプレートと、当該デッキプレートの上側に打設されるコンクリートと、を備える合成スラブ構造に関する技術であるから、本件特許発明1及び甲1発明と技術分野を同一にしている。」(特許異議申立書の15頁下から4行~16頁2行)と主張している。
しかし、前記イの判断で示したとおり、甲2記載技術は、一つのデッキプレート上に鉄筋を配設されたものであり、二つのデッキプレートが設けられた部分の接続に関するものではない点で本件特許発明1とは異なるものである。また、甲1発明が、段差の上段に設けられた合成スラブ用デッキプレート」と「デッキ合成スラブの段差が設けられた部分」とを「支持」する「デッキ受け材」と「梁」を設け、当該「梁」などの支持部材によって応力を伝達している点においても、甲2記載技術とは異なっている。
よって、甲1発明と甲2記載技術は、鉄筋の機能や応力伝達に係る構造において相違するものであるから、単に技術分野が共通するからといって、甲1発明に甲2記載技術を組み合わせる動機付けがあるということはできない。
また、申立人は、「甲2記載事項4,5を甲1発明の例えば(ウ)における上段デッキプレートに適用して、上段デッキプレートの溝内に配置された下部補強筋を、上段デッキプレートのスラブ下段側の端部から、スラブ下段側の合成デッキスラブの端部に向かって延ばすことによって」前記相違点2に係る本件特許発明1の構成のようにするとともに、「甲2記載事項4,5を甲1発明の例えば(ウ)における下段デッキプレートに適用して、下段デッキプレートの溝内に配置された下部補強筋を、下段デッキプレートのスラブ上段側の端部から、スラブ上段側の合成デッキスラブの端部に向かって延ばすことによって」前記相違点3に係る本件特許発明1の構成のようにすることは「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に推考し得るものである」(特許異議申立書の16頁2~23行)とも主張しているので、以下、検討する。
前記ウでも示したように、本件特許発明1は、上段デッキプレートの溝内に配置された下部補強筋を、上段デッキプレートのスラブ下段側の端部から、スラブ下段側の合成デッキスラブの端部に向かって延ばすという構成を採用することによって、良好に応力伝達を行うことができ、構造をシンプルにすることができ、施工の手間も低減できるという甲1発明及び甲2記載技術にはない顕著な効果を奏するものであるから、そのような構成を甲1発明及び甲2記載技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。
したがって、申立人の上記主張を考慮しても上記イ、ウの判断を変更すべき事情がない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1に係る特許は、甲1を主たる証拠として、甲2、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないので、特許法第113条第2号に該当せず、特許異議申立理由1によって、取り消されるべきものではない。
2 本件特許発明2~5について
本件特許発明2~5は、本件特許発明1の構成を全て有し、さらに限定を付加したものであるところ、上記1において対比・判断したとおり、本件特許発明1は、甲1発明及びその他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件特許発明2~5も、甲1発明及びその他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許発明2~5に係る特許は、甲1を主たる証拠として、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないので、特許法第113条第2号に該当せず、特許異議申立理由1によって、取り消されるべきものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~5に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことができない。
また、他に本件特許発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700827