特許異議申立
2024-700845
粘着テープ
- 審判番号
- 2024-700845
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-054446
- 登録番号
- 7444670
- 請求日
- 2024年09月05日
- 審決日
- 2025年10月06日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【異議申立人】前田 洋志
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 河原 正
- 審判官 宮澤 浩
- 分類
- P1652.113-YAA(C09J) / P1652.121-YAA(C09J) / P1652.536-YAA(C09J) / P1652.537-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第4号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7444670号発明「粘着テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7444670号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第7444670号の請求項1~3、6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7444670号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和2年3月25日(先の出願に基づく優先権主張 平成31年3月26日)に出願され、令和6年2月27日にその特許権の設定登録がされ、同年3月6日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 6年 9月 5日 :特許異議申立人前田洋志(以下「申
立人」という。)による請求項1~
3、6に係る特許に対する特許異議
の申立て
令和 6年11月15日付け:取消理由通知書
令和 7年 1月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求
書の提出
令和 7年 3月 6日 :申立人による意見書の提出
令和 7年 4月 7日付け:取消理由通知書<決定の予告>
令和 7年 6月12日 :特許権者による意見書及び訂正請求
書(以下、この訂正請求書による訂
正を「本件訂正請求」という。)の
提出
令和 7年 6月23日付け:訂正拒絶理由通知書
令和 7年 7月23日 :特許権者による意見書及び補正書の
提出
なお、令和7年1月17日の訂正請求書は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。また、申立人に対し、令和7年7月28日付けで、訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの意見書の提出はなかった。
第2 本件訂正請求
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第7444670号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「粘着剤層」とあるのを、「粘着剤(但し、カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むものを除く。)層」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2及び4~6も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、
「SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び/又は
SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂とを含有し、
前記石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂の含有量が前記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対して35重量部以下である」
とあるのを、
「SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び
SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂とを含有し、
前記芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び、前記芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂の含有量が前記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対して35重量部以下である」
に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ」とあるのを、「請求項1、2、4又は5記載の粘着テープ」に訂正する。
(4)一群の請求項であること
訂正前の請求項1~6について、請求項2及び4~6は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、また、請求項4~6は、それぞれ請求項3を直接又は間接的に引用しているものであって、上記訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正請求による訂正は、一群の請求項1~6に対して請求されたものである。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載の「粘着剤層」における「粘着剤」について、「カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むものを除く」との限定を付加するものである。
そうすると、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項4~6についても同様である。
イ 新規事項の有無
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載の「粘着剤層」における「粘着剤」について、「カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むもの」を除くものである。そして、本件特許の明細書の記載を参酌しても、「粘着剤」において、「カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むもの」を除いたことにより、新たな技術的事項を導入したということはできない。
そうすると、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項4~6についても同様である。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
前記アに記載したとおり、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項4~6についても同様である。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項3に記載の「芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂」と「芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂」について、その両方を含有することに限定するとともに、前記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対して35重量部以下であるとされていた含有量について「前記石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂の含有量」とされていたのを、「前記芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び、前記芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂の含有量」と特定するものである。
そうすると、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。請求項3の記載を引用する請求項4~6についても同様である。
イ 新規事項の有無
訂正事項2による訂正は、前記アに記載したとおり、「芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂」と「芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂」について、その両方を含有することに限定するとともに、前記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対して35重量部以下であるとされていた含有量について「前記石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂の含有量」とされていたのを、「前記芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び、前記芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂の含有量」と特定するものである。
そうすると、訂正事項2による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。したがって、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。請求項3の記載を引用する請求項4~6についても同様である。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項2による訂正は、前記アに記載したとおり、「芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂」と「芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂」について、その両方を含有することに限定するとともに、前記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対して35重量部以下であるとされていた含有量について「前記石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂の含有量」とされていたのを、「前記芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び、前記芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂の含有量」と特定するものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。請求項3の記載を引用する請求項4~6についても同様である。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3による訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項6が、「請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ」とされていたところ、請求項3の記載を直接引用する粘着テープを除いたものとする訂正である。
そうすると、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
イ 新規事項の有無
訂正事項3による訂正は、前記アに記載したとおり、請求項3の記載を直接引用する粘着テープを除いたものとする訂正である。
そうすると、訂正事項3による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。したがって、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項3による訂正は、前記アに記載したとおり、請求項3の記載を直接引用する粘着テープを除いたものとする訂正である。
したがって、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
3 まとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、結論に記載のとおり、特許第7444670号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明6」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
電子機器部品固定用途、車載部品固定用途、基地局アンテナ固定用途、基地局送受信機固定用途、スマートグラス固定用途に用いられる、粘着剤(但し、カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むものを除く。)層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は一般式(A-B)nCで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマーと、
SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び/又は
SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂とを含有し、
前記ラジアル型スチレン系エラストマーは水素添加率が96%以上である
ことを特徴とする粘着テープ。
A:芳香族アルケニル重合体ブロック
B:共役ジエン重合体ブロック
C:カップリング剤に由来する成分
n:3以上の整数
【請求項2】
前記石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂の含有量が前記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対して5重量部以上、100重量部以下であることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
電子機器部品固定用途、車載部品固定用途、基地局アンテナ固定用途、基地局送受信機固定用途、スマートグラス固定用途に用いられる、粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は一般式(A-B)nCで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマーと、
SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び
SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂とを含有し、
前記芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び、前記芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂の含有量が前記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対して35重量部以下である
ことを特徴とする粘着テープ。
A:芳香族アルケニル重合体ブロック
B:共役ジエン重合体ブロック
C:カップリング剤に由来する成分
n:3以上の整数
【請求項4】
前記粘着剤層はSP値が8.5以下であり、23℃で液体の軟化剤を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記軟化剤の含有量が前記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対して100重量部以下であることを特徴とする請求項4記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層の厚みが1μm~300μmであることを特徴とする請求項1、2、4又は5記載の粘着テープ。」
第4 取消理由の概要
本件特許の特許請求の範囲の請求項3、6に係る発明に対して、令和7年4月7日付けで特許権者に通知した取消理由、及び、引用文献は、次のとおりである。
本件特許の請求項3、6に係る発明は、本件特許の優先権主張に係る先の出願前に、日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許の優先権主張に係る先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
なお、甲第2号証を主引用発明が記載された文献として引用し、甲第1号証、は本件特許の優先権主張に係る先の出願前において知られていた周知技術を示す文献として引用している。また、甲第3号証、甲第5号証及び追加引用文献1は、甲第2号証において用いられた化学製品の物性を示す文献として引用している。
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2018-150447号公報
甲第2号証:特開2016-186049号公報
甲第3号証:特開2011-88998号公報
甲第5号証:特開平11-59001号公報
追加引用文献1:特開平9-169968号公報
第5 合議体の判断
1 引用文献及び引用文献に記載された発明
(1)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載事項
本件特許に係る先の出願前の平成28年10月27日に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第2号証(特開2016-186049号公報)には、以下の記載事項がある。なお、引用発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。以下の文献についても同様である。
(ア)技術分野
「【0001】
本発明は、ブロック共重合体組成物、粘接着剤組成物及びこれらの製造方法に関する。」
(イ)発明が解決しようとする課題
「【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているブロック共重合体は、重合工程及びストリッピング工程の後の乾燥工程において、ブロック共重合体の乾燥が十分ではなく、乾燥機の壁面に付着するという問題があり、また、臭気の観点からも更なる改善が必要である。そこで、上記問題点に鑑み、本発明は、製造工程における乾燥状態が良好であり、かつ低臭気のブロック共重合体組成物を提供することを目的とする。」
(ウ)課題を解決するための手段
「【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を所定量含有するブロック共重合体組成物が、上記課題を効果的に解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0007】
1. (a)成分:ビニル芳香族化合物単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックBとを有するブロック共重合体、並びに
(b)成分:カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩
を含み、
(a)成分中のビニル芳香族化合物単位の含有量が10質量%以上60質量%以下であり、
15質量%トルエン溶液粘度が、25℃において、10mPa・s以上70mPa・s未満であり、かつ
(a)成分100質量部に対し、(b)成分を0.02質量部以上0.3質量部以下含有する、ブロック共重合体組成物。
・・・
【0013】
7. 前記(a)成分が,下記式(1)で表される(a-1)成分と、下記式(2)で表される(a-2)成分とを含み、
成分(a)中の、(a-1)成分の含有量が1~80質量%であり、(a-2)成分の含有量が20~99質量%である、上記1~6のいずれかに記載のブロック共重合体組成物;
(A-B)n 式(1)
[(A-B)k]m+1-X 式(2)
(式(1)、(2)中、Aは、それぞれ独立して、ビニル芳香族化合物単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックであり、Xはカップリング剤の残基を示し、n、kは、それぞれ独立して、1以上の整数であり、mは1~9の整数である。1つの化合物中に複数のA及び/又はBを含むとき、それらブロックを構成する化合物単位は互いに独立である。)。」
(エ)発明を実施するための形態
「【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0021】
本実施形態のブロック共重合体組成物は、(a)成分として、ビニル芳香族化合物単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックBとを有するブロック共重合体、並びに(b)成分としてカルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含み、(a)成分中のビニル芳香族化合物単位の含有量が10質量%以上60質量%以下であり、15質量%トルエン溶液粘度が、25℃において10mPa・s以上70mPa・s未満であり、(a)成分100質量部に対し、(b)成分を0.02質量部以上0.3質量部以下含有する。本実施形態のブロック共重合体組成物は、その製造において、脱溶剤後の乾燥の際乾燥状態が良好で、乾燥機の壁面への付着が低減され、かつ低臭気である。また、本実施形態のブロック共重合体組成物を含む粘接着剤組成物も低臭気である。なお、本明細書において、ブロック共重合体組成物の「仕上げ性」とは、ブロック共重合体組成物の製造における、脱溶剤後の乾燥の際のブロック共重合体組成物の乾燥状態のことを意味するものとする。
【0022】
本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれる各成分について以下説明する。
<(a)成分:ブロック共重合体>
本実施形態のブロック共重合体組成物は、ビニル芳香族化合物単位を主体とする重合体ブロックA(以下、「重合体ブロックA」、又は「A」と記載することもある。)と、共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックB(以下、「重合体ブロックB」、又は「B」と記載することもある。)と、を有するブロック共重合体(以下、単に「ブロック共重合体」又は「(a)成分」と記載することもある)を含む。ここで、ビニル芳香族化合物単位を主体とする重合体ブロックAの「主体とする」とは、重合体ブロックA中、ビニル芳香族化合物単位を50質量%超え、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上含有することを意味し、100質量%であってもよい。共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックBの「主体とする」とは、重合体ブロックB中、共役ジエン化合物単位を50質量%超え、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上含有することを意味し、100質量%であってもよい。また、「ビニル芳香族化合物単位」及び「共役ジエン化合物単位」とは、それぞれ、重合体中におけるビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物に基づく単位のことをいい、好ましくは、それぞれ、ビニル芳香族単量体単位、及び共役ジエン単量体単位のことをいう。ブロック共重合体中の重合体ブロックAは、共役ジエン化合物単位とビニル芳香族化合物単位との共重合体ブロック及び/又はこれらの水素添加物であってもよいし、ビニル芳香族化合物の単独重合体ブロックであってもよい。重合体ブロックBは、共役ジエン化合物単位とビニル芳香族化合物単位との共重合体ブロック及び/又はこれらの水素添加物であってもよいし、共役ジエン化合物の単独重合体ブロック及び/又はこれらの水素添加物であってもよい。ブロックAとブロックBとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。また、(a)成分として、一種のブロック共重合体を単独で含んでもよいし、二種以上を組み合わせて含んでもよい。
・・・
【0028】
(a)成分は、共役ジエン化合物単位が水素添加されていてもよく、水素添加されている場合は、臭気を抑制できるという観点から、(a)成分中の共役ジエン化合物単位の総量に対して、水素添加された共役ジエン化合物単位が30~100mol%であることが好ましく、60~100mol%であることがより好ましい。また、仕上げ性に優れるという観点からは、(a)成分中の共役ジエン化合物単位の総量に対して、水素添加された共役ジエン化合物単位が90mol%以下であることが好ましく、水添されていなくてもよい。水素添加率は後述する実施例記載の方法により測定することができる。
【0029】
また、水素添加率は、臭気の観点からは、ビニル結合量のうち、95mol%以上が水素添加されていることが好ましく、98mol%以上であることがより好ましく、100mol%であることがさらに好ましい。ここで、「ビニル結合量」とは、水素添加前において、1,2-結合、3,4-結合及び1,4-結合の結合様式で組み込まれている(a)成分中の共役ジエン化合物単位の総mol量に対する、1,2-結合及び3,4-結合で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総mol量の割合である。水素添加率は後述する実施例記載の方法で測定することができる。
・・・
【0034】
(a)成分のブロック共重合体の構造としては、例えば、(A-B)n、B-(A-B)n、A-(B-A)n、(A-B)n-X、(B-A)n-X、A-(B-A)n-X、B-(A-B)n-X、[(A-B)k]m+1-X、[(B-A)k]m+1-X、[B-(A-B)k]m+1-X、[(A-B)k-A]m+1-X等が挙げられる。
ここで、Aは、それぞれ独立して、ビニル芳香族化合物単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは、それぞれ独立して、共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックであり、Xはカップリング剤の残基を示し、n、kは1以上の整数であり、mは1~9の整数である。mは1~3であることがより好ましい。
【0035】
これらのブロック共重合体の構造の中でも、仕上げ性の向上と臭気の抑制の観点から、(a)成分が下記式(1)で表される(a-1)成分と、下記式(2)で表される(a-2)成分を含むことが好ましい。
(A-B)n 式(1)
[(A-B)k]m+1-X 式(2)
上記式(1)、(2)中、Aは、それぞれ独立して、ビニル芳香族化合物単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは、それぞれ独立して、共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックであり、Xはカップリング剤の残基を示し、n、kは、それぞれ独立して、1以上の整数であり、mは1~9の整数である。mは1~3であることがより好ましい。また、1つの化合物中に複数のA及び/又はBを含むとき、それらブロックを構成する化合物単位は互いに独立である。
・・・
【0052】
(カップリング工程)
本実施形態のブロック共重合体は、カップリングされたものであってもよく、その場合は、製造工程において、上記重合工程の後にカップリング剤を用いてカップリングする工程を含むことが好ましい。
・・・
【0057】
(水素添加工程)
ブロック共重合体は共役ジエンに由来する不飽和二重結合の一部又は全てが水素添加されていてもよく、その場合は水素添加工程を含むのが好ましい。水素添加工程は、重合工程の後であればよく、失活工程の後であるのがより好ましく、カップリング工程を含む場合は、カップリング工程と失活工程の後に行うのが好ましい。
・・・
【0068】
<(b)成分:カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩>
本実施形態のブロック共重合体組成物はカルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩(本明細書において、単に「(b)成分」と記載することもある。)を含む。
・・・
【0098】
〔粘接着剤組成物〕
本実施形態の粘接着剤組成物は、上記ブロック共重合体組成物を含み、さらに粘着付与剤を含むことが好ましく、軟化剤を含んでもよい。
【0099】
粘着付与剤は、特に限定されないが、例えば、脂肪族系環状炭化水素樹脂(例えば、荒川化学工業(株)製:アルコンM100)、ポリテルペン樹脂(例えば、ヤスハラケミカル(株)製:クリアロンM115)等を好ましく使用できる。
【0100】
軟化剤は、特に限定されないが、例えば、色調の観点からパラフィン系プロセスオイル(例えば、出光興産(株)製:PW-90)を好ましく使用できる。
・・・
【0103】
〔用途〕
本実施形態の粘接着剤組成物は、良好な溶解性、塗工性を有し、粘着性、粘着力、及び保持力に優れ、かつこれらの粘接着特性バランスも良好である。このような特徴を生かして、各種粘着テープ・ラベル類、感圧性薄板、感圧性シート、表面保護シート・フィルム、各種軽量プラスチック成型品固定用裏糊、カーペット固定用裏糊、タイル固定用裏糊、接着剤等に利用でき、特に粘着性テープ用、粘着性シート・フィルム用、粘着性ラベル用、表面保護シート・フィルム用、衛材用の粘接着剤用として有用である。」
(オ)実施例
「【0104】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本実施形態について詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
・・・
【0122】
〔(V)ブロック共重合体組成物及び粘接着剤組成物の調製〕
以下、各ブロック共重合体組成物の製造方法について説明する。下記ポリマー組成物1~21とポリマー組成物25~36は、カップリングスチレン-ブタジエン共重合体を含むブロック共重合体組成物であり、ポリマー組成物22~24はスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体を含むブロック共重合体組成物である。なお、下記において、単に「ポリマー」と記載したときは、ブロック共重合体を表すものとし、ブロック共重合体とそれ以外の成分を含む「ポリマー組成物」と区別するものとする。また、「ポリマー」のことを、「ブロック共重合体」または「(a)成分」と記載することもある。
【0123】
<実施例1>
<ポリマー組成物1:2官能カップリングスチレン-ブタジエンブロック共重合体を含む組成物>
攪拌機及びジャケット付きの内容量10Lのステンレス製オートクレーブを、洗浄、乾燥、窒素置換し、シクロヘキサン5720g、予め精製したスチレン336gを仕込み、ジャケットに温水を通水して内容物を約45℃に設定した。次に、n-ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(純分で1.5g)を添加し、スチレンの重合を開始した。スチレンの重合を開始して、最高温度(55℃)に達してから6分後、最高温度から2℃低下した後に、ブタジエン(1,3-ブタジエン)464gを添加し、重合を継続し、ブタジエンがほぼ完全に重合して最高温度(87℃)に達してから30秒後に、カップリング剤として安息香酸エチルを添加し、カップリングさせた。カップリング剤添加より10分後に、水1.6gを加えて失活させた。得られブロック共重合体溶液中のブロック共重合体((a)成分))をポリマー1とする。
得られたポリマー1を含むブロック共重合体溶液に、有機酸としてオレイン酸とステアリン酸((b1)成分)が質量比1:9(オレイン酸:ステアリン酸)で含まれる混合物を、ブロック共重合体(ポリマー1)100質量部に対して0.2質量部になるように添加して充分混合した。さらに、酸化防止剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジブチル-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〔以下、「酸化防止剤A」と記載することもある。((e)成分)〕と4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール〔以下、「酸化防止剤B」と記載することもある。((f)成分)〕を、上記ブロック共重合体(ポリマー1)100質量部に対してそれぞれ0.1質量部と0.05質量部添加して充分混合した。この混合溶液をスチームストリッピングするにあたり、α-(p-ノニルフェニル)-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)のジハイドロジエンリン酸エステルとモノハイドロジエンリン酸エステルとが質量比3:1(α-(p-ノニルフェニル)-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)のジハイドロジエンリン酸エステル:モノハイドロジエンリン酸エステル)で含まれる混合物((c)成分)をストリッピング帯の水に対して30質量ppm用い、90~98℃の温度で溶媒を除去した。溶媒除去槽内のスラリー中のブロック共重合体クラムの濃度は約5質量%であった。
【0124】
次いで、上記で得られたブロック共重合体クラムの水分散スラリーを、回転式スクリーンに送り、含水率45質量%の含水クラムを得た。この含水クラムを1軸スクリュー押出機型水絞り機に送り、脱水したクラムを得た。この脱水したクラムを85℃での箱型の熱風乾燥機で1時間乾燥した(得られたブロック共重合体組成物をポリマー組成物1とする)。得られたポリマー組成物1は無色透明であった。上記(I-1)で記載した方法により、ポリマー組成物1の仕上げ性について評価した。
【0125】
ポリマー1のスチレン含有量はポリマー1の全質量に対して42.4質量%であり、スチレンブロック率は97.5%であった。ポリマー1には、式(1)で表される重合体である(a-1)成分と、式(2)で表される重合体である(a-2)成分とが含まれ、(a-1)成分の数平均分子量が5.9万、(a-2)成分の数平均分子量が12.1万であり、(a-1)成分と(a-2)成分の質量比〔(a-1):(a-2)〕は69:31であった。ポリマー組成物1の15質量%トルエン溶液粘度は25mPa・sであった。
【0126】
ポリマー組成物1中、(b1)成分の含有量が、ポリマー1の全質量に対して0.2質量%であり、(c)成分の含有量が、ポリマー1の全質量に対して0.1質量%であった。なお、ポリマー1のブタジエン部分のビニル結合量は12.4mol%であった。
【0127】
<粘接着剤組成物の製造>
ブロック共重合体組成物(ポリマー組成物1)100質量部に対して、粘着付与剤としてアルコンM100(荒川化学工業(株)製)を300質量部、軟化剤としてダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産(株)製)を100質量部の配合比で配合し、180℃で30分間、加圧双腕型ニーダー(型式:D0.3-3、(株)森山製作所製)で溶融混練し、淡黄色の均一なホットメルト型粘接着剤組成物を得た。粘接着剤組成物には、前記ブロック共重合体(ポリマー1)100質量部に対して、熱安定剤として2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレートを1質量部配合した。得られた粘接着剤組成物の臭気について評価を行った。
・・・
【0193】
<実施例19>
<ポリマー組成物19:3官能カップリングスチレン-ブタジエンブロック共重合体を含む組成物>
カップリング剤として安息香酸エチルに代えてトリクロロメチルシランを添加し、10分後に水1.6gを添加し失活させた。その他の条件はポリマー1の製造工程と同様の方法を用いてポリマー組成物19を得た。得られたポリマー組成物19は無色透明であった。
【0194】
ポリマー19のスチレンの含有量がポリマー19の全質量に対して41.7質量%であり、前記スチレンブロック率が96.9%であった。(a)成分中、(a-1)成分の数平均分子量が5.2万、(a-2)成分として、式(2)のk=1、m=1である成分(以下、「(a-21)成分」と記載することもある)の数平均分子量が10.8万であり、式(2)のk=1、m=2である成分(以下、「(a-22)成分」と記載することもある)の数平均分子量が17.1万で、(a-1)成分と(a-21)成分と(a-22)成分の質量比は50:9:41であった。ポリマー組成物19の15質量%トルエン溶液粘度は44mPa・sであった。
【0195】
また、(b1)成分の含有量がポリマー19の全質量に対して0.2質量%であり、(c)成分の含有量がポリマー19の全質量に対して0.1質量%であった。なお、ポリマー組成物19のブタジエン部分のビニル結合量は12.6mol%であった。
【0196】
<粘接着剤組成物の製造>
ポリマー組成物1の代わりにポリマー組成物19を用いたほかは実施例1と同様にして粘接着剤組成物を製造し、その臭気を評価した。
【0197】
<実施例20>
<ポリマー組成物20:4官能カップリングスチレン-ブタジエンブロック共重合体を含む組成物>
カップリング剤として安息香酸エチルに代えてテトラクロロシランを添加し、10分後に水1.6gを添加し失活させた以外はポリマー組成物1の製造と同様にしてポリマー組成物20を得た。得られたポリマー組成物20は無色透明であった。
【0198】
ポリマー20のスチレン含有量がポリマー20の全質量に対して42.0質量%であり、スチレンブロック率が97.9%であった。(a-1)成分の数平均分子量が4.9万、(a-2)成分として、式(2)のk=1、m=1である成分((a-21)成分)の数平均分子量が10.2万であり、式(2)のk=1、m=2((a-22)成分)である成分の数平均分子量が16.0万であり、式(2)のk=1、m=3である成分((a-23)成分)の数平均分子量が20.8万であり、(a-1)成分と(a-21)成分と(a-22)成分と(a-23)成分の質量比は55:2:11:32であった。ポリマー組成物20の15質量%トルエン溶液粘度は59mPa・sであった。
【0199】
また、ポリマー組成物20中、(b1)成分含有量がポリマー20全体に対して0.2質量%であり、(c)成分含有量がポリマー20全体に対して0.1質量%であった。なお、ブタジエン部分のビニル結合量は12.6mol%であった。
【0200】
<粘接着剤組成物の製造>
ポリマー組成物1の代わりにポリマー組成物20用いたほかは実施例1と同様にして粘接着剤組成物を製造し、その臭気を評価した。
・・・
【0267】
ポリマー組成物(ブロック共重合体組成物)1~36およびこれらを用いた各粘接着剤組成物の組成および評価結果を表1~表5に示す。なお、粘接着剤組成物の製造において、40分混練してもトルクが安定しない場合は、トルクが安定するまで混練した。
【0268】
上記ブロック共重合体組成物(ポリマー組成物)の組成及び特性、並びに粘接着剤組成物の特性について、表1~表5に示す。なお、表中、「ポリマーの質量比(4/3/2/1)」は、4個、3個、2個、及び1個の分岐を有するブロック共重合体のそれぞれの質量比を表し、「ポリマーの分子量((4/3/2/1))は、4個、3個、2個、及び1個の分岐を有するブロック共重合体のそれぞれの数平均分子量(単位は万)を表す。また、実施例22~24については、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)の質量比とその分子量を記載した。
【0269】
ここで、上記ポリマー1~18及びポリマー26~36に含まれる(a-1)成分は、式(1)中、n=1であるブロック共重合体であり、(а-2)成分は、式(2)中、k=1、m=1であるブロック共重合体である。ポリマー25に含まれる(a-1)成分は、式(1)中、n=1であるブロック共重合体である。ポリマー19に含まれる(a-1)成分は、式(1)中、n=1であるブロック共重合体であり、(а-2)成分は、式(2)中、k=1、m=1であるブロック共重合体と、k=1、m=2であるブロック共重合体である。ポリマー20に含まれる(a-1)成分は、式(1)中、n=1であるブロック共重合体であり、(а-2)成分は、式(2)中、k=1、m=1であるブロック共重合体と、k=1、m=2であるブロック共重合体と、k=1、m=3であるブロック共重合体である。ポリマー22~24に含まれる(a-3)成分は、式(3)中、p=1であるブロック共重合体である。
・・・
【0272】
【表3】
[図:0001431115000001.jpg]
・・・
【0275】
表1~5に示したように、実施例1~24のブロック共重合体組成物1~24(ポリマー組成物1~24)は、いずれも、実用上良好な仕上げ性を有していることが分かった。また、ブロック共重合体組成物1~24(ポリマー組成物1~24)の臭気、及びこれらブロック共重合体組成物をそれぞれ含む粘接着剤組成物の臭気も低く、実用上良好であることが分かった。」
(カ)産業上の利用可能性
「【0276】
本発明のブロック共重合体組成物を含む粘接着剤組成物は、各種粘着テープ・ラベル類、感圧性薄板、感圧性シート、表面保護シート・フィルム、各種軽量プラスチック成型品固定用裏糊、カーペット固定用裏糊、タイル固定用裏糊、接着剤等に利用でき、特に、粘着性テープ用、粘着性シート・フィルム用、粘着性ラベル用、表面保護シート・フィルム用、衛生材料用の粘接着剤として産業上の利用可能性がある。」
イ 甲第2号証に記載された発明
(ア)引用発明19
甲第2号証には、実施例19として記載された粘接着剤組成物に関する発明として、次の発明(以下「引用発明19」という。)が記載されていると認められる。
「シクロヘキサン5720g、予め精製したスチレン336gを仕込み、n-ブチルリチウムシクロヘキサン溶液を添加し、スチレンの重合を開始し、最高温度(55℃)に達してから6分後、最高温度から2℃低下した後に、ブタジエン(1,3-ブタジエン)464gを添加し、重合を継続し、ブタジエンがほぼ完全に重合して最高温度(87℃)に達してから30秒後に、カップリング剤としてトリクロロメチルシランを添加し、10分後に水1.6gを添加し失活させて得られたブロック共重合体溶液に、有機酸としてオレイン酸とステアリン酸((b1)成分)が質量比1:9(オレイン酸:ステアリン酸)で含まれる混合物を、ブロック共重合体100質量部に対して0.2質量部になるように添加して充分混合し、酸化防止剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジブチル-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートと4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを、上記ブロック共重合体100質量部に対してそれぞれ0.1質量部と0.05質量部添加して充分混合し、この混合溶液をスチームストリッピングするにあたり、α-(p-ノニルフェニル)-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)のジハイドロジエンリン酸エステルとモノハイドロジエンリン酸エステルとが質量比3:1(α-(p-ノニルフェニル)-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)のジハイドロジエンリン酸エステル:モノハイドロジエンリン酸エステル)で含まれる混合物((c)成分)をストリッピング帯の水に対して30質量ppm用い、90~98℃の温度で溶媒を除去し、得られたブロック共重合体クラムの水分散スラリーを、回転式スクリーンに送り、含水率45質量%の含水クラムを得て、この含水クラムを1軸スクリュー押出機型水絞り機に送り、脱水したクラムを得て、この脱水したクラムを85℃での箱型の熱風乾燥機で1時間乾燥して得られたポリマー組成物19の100質量部に対して、粘着付与剤としてアルコンM100(荒川化学工業(株)製)を300質量部、軟化剤としてダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産(株)製)を100質量部の配合比で配合し、180℃で30分間、加圧双腕型ニーダーで溶融混練し、前記ブロック共重合体100質量部に対して、熱安定剤として2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレートを1質量部配合して製造した、粘接着剤組成物。」
(イ)引用発明20
甲第2号証には、実施例20として記載された粘接着剤組成物に関する発明として、次の発明(以下「引用発明20」という。)が記載されていると認められる。
「シクロヘキサン5720g、予め精製したスチレン336gを仕込み、n-ブチルリチウムシクロヘキサン溶液を添加し、スチレンの重合を開始し、最高温度(55℃)に達してから6分後、最高温度から2℃低下した後に、ブタジエン(1,3-ブタジエン)464gを添加し、重合を継続し、ブタジエンがほぼ完全に重合して最高温度(87℃)に達してから30秒後に、カップリング剤としてテトラクロロシランを添加し、10分後に水1.6gを添加し失活させて得られたブロック共重合体溶液に、有機酸としてオレイン酸とステアリン酸((b1)成分)が質量比1:9(オレイン酸:ステアリン酸)で含まれる混合物を、ブロック共重合体100質量部に対して0.2質量部になるように添加して充分混合し、酸化防止剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジブチル-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートと4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを、上記ブロック共重合体100質量部に対してそれぞれ0.1質量部と0.05質量部添加して充分混合し、この混合溶液をスチームストリッピングするにあたり、α-(p-ノニルフェニル)-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)のジハイドロジエンリン酸エステルとモノハイドロジエンリン酸エステルとが質量比3:1(α-(p-ノニルフェニル)-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)のジハイドロジエンリン酸エステル:モノハイドロジエンリン酸エステル)で含まれる混合物((c)成分)をストリッピング帯の水に対して30質量ppm用い、90~98℃の温度で溶媒を除去し、得られたブロック共重合体クラムの水分散スラリーを、回転式スクリーンに送り、含水率45質量%の含水クラムを得て、この含水クラムを1軸スクリュー押出機型水絞り機に送り、脱水したクラムを得て、この脱水したクラムを85℃での箱型の熱風乾燥機で1時間乾燥して得られたポリマー組成物19の100質量部に対して、粘着付与剤としてアルコンM100(荒川化学工業(株)製)を300質量部、軟化剤としてダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産(株)製)を100質量部の配合比で配合し、180℃で30分間、加圧双腕型ニーダーで溶融混練し、前記ブロック共重合体100質量部に対して、熱安定剤として2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレートを1質量部配合して製造した、粘接着剤組成物。」
(ウ)引用発明
引用発明19及び引用発明20を総称して、引用発明という。
(2)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載事項
本件特許に係る先の出願前の平成30年9月27日に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第1号証(特開2018-150447号公報)には、以下の記載事項がある。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
基材層および粘着材層を含む多層フィルムであって、前記粘着材層が、少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマー(a)および少なくとも一種の粘着付与剤(b)を含む樹脂組成物(E)よりなり、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)が、芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位からなる重合体ブロック(A)とイソプレンに由来する単量体単位および/または1,3-ブタジエンに由来する単量体単位からなる重合体ブロック(B)とを含み、かつ、水素添加されている水添ブロック共重合体であって、前記重合体ブロック(A)の含有量が、水素添加前におけるブロック共重合体の総量に対して5~40質量%であり、前記重合体ブロック(B)の水素添加率が70%以上であり、前記樹脂組成物(E)が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、前記粘着付与剤(b)の合計80~400質量部を含有し、前記樹脂組成物(E)の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×103Pa~2.0×105Paであることを特徴とする多層フィルム。」
(イ)技術分野
「【0001】
本発明は、非極性樹脂に対する室温接着性および低タック性に優れた粘着材を有する加飾用の多層フィルム、並びに、該多層フィルムが被着体に貼合されてなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品、電子部品、機械部品、自動車部品などの様々な用途で、意匠性、耐久性、耐熱性および機械強度に優れたセラミックス、金属、合成樹脂などよりなる部材が幅広く使用されている。これらの部材は用途、部品構成および使用方法などにより、異なる材料同士を接着または複合化して使用する場合がある。また、家電製品の外装・壁紙、自動車の内装などには、木目調などの絵柄による加飾やメタリック調やピアノブラック調などの意匠性の付与、耐傷つき性や耐候性といった機能性の付与などを目的として加飾フィルムが用いられている。
【0003】
しかしながら、加飾フィルムと被着体とが極性の異なる異種材料である場合、加飾フィルムが被着体に接着しないという問題がある。このような場合、フィルムを被着体に接着させるためには、通常別途接着剤の塗布が必要となる。この作業には溶剤の塗布工程、乾燥工程、養生工程などが必要であり、接着性の付与に長い時間を要したり、VOCによる作業環境の悪化が懸念されたり、塗布ムラによる接着不良等が発生したりする。したがって、接着剤を必要とせず異種材料に接着できる加飾フィルムが求められている。」
(ウ)発明が解決しようとする課題
「【0013】
以上より、本発明の目的は、特定の組成および物性範囲に制御した樹脂組成物と基材を用いることで、通常はいわゆるトレードオフの関係となるオレフィン系基材への室温接着力と低いタック性を両立する多層フィルムおよび加飾フィルム、並びに、これらのフィルムが被着体に貼合されてなる成形体を提供することである。」
(エ)課題を解決するための手段
「【0014】
本発明によれば、上記の目的は、基材層および粘着材層を含む多層フィルムであって、前記粘着材層が、少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマー(a)および少なくとも一種の粘着付与剤(b)を含む樹脂組成物(E)よりなり、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)が、芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位からなる重合体ブロック(A)とイソプレンに由来する単量体単位および/または1,3-ブタジエンに由来する単量体単位からなる重合体ブロック(B)とを含み、かつ、水素添加されている水添ブロック共重合体であって、前記重合体ブロック(A)の含有量が、水素添加前におけるブロック共重合体の総量に対して5~40質量%であり、前記重合体ブロック(B)の水素添加率が70%以上であり、前記樹脂組成物(E)が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、前記粘着付与剤(b)の合計80~400質量部を含有し、前記樹脂組成物(E)の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×103Pa~2.0×105Paであることを特徴とする多層フィルムを提供することにより達成される。」
(オ)発明の効果
「【0019】
本発明の粘接着材層および基材層を含む多層フィルムは、当業者が想定しえないことに、オレフィン系基材への室温接着力と低タック性の両方に優れるため、特に車輌外装に用いる多層フィルムとして好適に使用できる。」
(カ)発明を実施するための形態
「【0020】
本発明の多層フィルムは、樹脂組成物(E)よりなる粘着剤層と基材層とを含む。
前記樹脂組成物(E)は、芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位を含む重合体ブロック(A)とイソプレンに由来する単量体単位および/または1,3-ブタジエンに由来する単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であるスチレン系熱可塑性エラストマー(aと粘着付与剤(b)とを含み、前記重合体ブロック(A)の含有量が、水素添加前におけるスチレン系熱可塑性エラストマー(a)の総量に対して5~40質量%、前記重合体ブロック(B)の水素添加率が70%以上であって、前記樹脂組成物(E)が前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、粘着付与剤(b)の合計80~400質量部を含有し、前記樹脂組成物(E)の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×103Pa~2.0×105Paであることを特徴とする。以下、上記成分(a)、(b)について順に説明し、次いで、他の成分および樹脂組成物(E)について説明する。
【0021】
[スチレン系熱可塑性エラストマー(a)]
樹脂組成物(E)が含有するスチレン系熱可塑性エラストマー(a)は、芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位(以下、芳香族ビニル化合物単位と称することがある)を含む重合体ブロック(A)とイソプレンに由来する単量体単位および/または1,3-ブタジエンに由来する単量体単位(以下、共役ジエン化合物単位と称することがある)を含む重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物である。前記熱可塑性エラストマー(a)は、樹脂組成物(E)に柔軟性や、良好な力学特性および成形加工性などを付与するものであり、該組成物中でマトリックスの役割を果たす。
【0022】
-重合体ブロック(A)-
前記重合体ブロック(A)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックは、これらの芳香族ビニル化合物の1種のみに由来する構造単位からなっていてもよいし、2種以上に由来する構造単位からなっていてもよい。中でも、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレンが好ましい。
・・・
【0027】
スチレン系熱可塑性エラストマー(a)における芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロック(A)と共役ジエン化合物を含有する重合体ブロック(B)との結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはこれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、直鎖状の結合形態であることが好ましい。
直鎖状の結合形態の例としては、芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロック(A)をAで、共役ジエン化合物を含有する重合体ブロック(B)をBで表したとき、A-Bで表されるジブロック共重合体、A-B-AまたはB-A-Bで表されるトリブロック共重合体、A-B-A-Bで表されるテトラブロック共重合体、A-B-A-B-AまたはB-A-B-A-Bで表されるペンタブロック共重合体、(A-B)nX型共重合体(Xはカップリング残基を表し、nは2以上の整数を表す)、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、ジブロックもしくはトリブロック共重合体が好ましい。
【0028】
スチレン系熱可塑性エラストマー(a)は、耐熱性および耐候性を向上させる観点から、共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(B)の一部または全部が水素添加(以下、「水添」と略称することがある)されていることが好ましい。その際の共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(B)の水素添加率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。ここで、本明細書において、水素添加率は、水素添加反応前後のブロック共重合体のヨウ素価を測定して得られる値である。
・・・
【0033】
[粘着付与剤(b)]
粘着付与剤(b)として用いられる粘着性付与樹脂としては、例えば脂肪族不飽和炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂、脂環式不飽和炭化水素樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、水添芳香族炭化水素樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特に脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、スチレン樹脂はスチレン系熱可塑性エラストマーとの相溶性が高く、好ましい。
【0034】
[軟化剤(c)]
軟化剤(c)としては、例えば、一般にゴム、プラスチックスに用いられる軟化剤が挙げられる。例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;ホワイトオイル、ミネラルオイル、エチレンとα-オレフィンのオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、低分子量ポリイソプレンなどが挙げられる。
【0035】
[その他の成分]
本発明の樹脂組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、光安定剤、加工助剤、顔料や色素などの着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、香料などを含有していてもよい。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系、リン系、ラクトン系、ヒドロキシル系の酸化防止剤などが挙げられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0036】
[樹脂組成物(E)]
樹脂組成物(E)は、少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、少なくとも一種の粘着付与剤(b)の合計80~400質量部含有する。粘着付与剤(b)が80質量部より少ないと、被着体に接着させることが難しいことがある。一方、粘着付与剤(b)が400質量部から多くなると、樹脂組成物(E)が硬くなり、柔軟性および力学特性が発現しにくくなることがある。粘着付与剤(b)の含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対して、好ましくは85質量部以上、より好ましくは90質量部以上であり、より好ましくは300質量部以下であり、さらに好ましくは280質量部以下である。
・・・
【0043】
[多層フィルム]
本発明の多層フィルムは、基材層と本発明の樹脂組成物(E)よりなる粘着材層とを少なくとも有する。
・・・
【0067】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明の多層フィルムが前記粘着材層を介して被着体に貼合されてなるものである。より好ましくは、本発明の多層フィルムが、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、木質基材または非木質繊維基材等の被着体の表面に貼合されてなるものである。
・・・
【0072】
本発明の多層フィルムまたは該多層フィルムを具備する成形体は、多層フィルムの良好な延伸性および成形加工性、優れた両極性接着性および表面平滑性を活かして、意匠性の要求される物品に適用することができる。例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板等の看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、ミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根等の建築用部品、自動車内外装部材、バンパーなどの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品;保育器、定規、文字盤、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、壁紙;マーキングフィルム、各種家電製品の加飾用途に好適に用いられる。本発明の多層フィルムは上記特性を備えるため、特に加飾フィルムとして好適に用いることができる。」
(キ)実施例
「【0073】
以下、実施例などにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。実施例および比較例中の試験サンプルの作製および各物性の測定または評価は、以下のようにして行い、結果を表にまとめた。
・・・
【0075】
[樹脂組成物(E)のPP樹脂に対する接着強度評価]
実施例および比較例で得られた樹脂組成物溶液を、それぞれメタクリル樹脂組成物からなるシート(30cm×20cm×厚み0.125mm)にwet厚み100μm、dry厚み40μmとなるように塗布した。PP樹脂シート(日本ポリプロ社製のMA3、縦75mm×横100mm×厚さ0.2mm)、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトンフィルム、縦40mm×横150mm×厚さ0.05mm)をこの順で重ね、塗布したシートの樹脂組成物側の面を、ラミネーター(株式会社エム・シー・ケー社製のMRK-650Y)を用いて、圧力0.2MPa、搬送速度3cm/secの条件で貼合した。これにより、PP樹脂、樹脂組成物とメタクリル樹脂組成物の多層フィルムを得た。
該多層フィルムを23℃環境下で24時間養生した後に、25mm幅に切断し、接着強度測定用試験片とし、PP樹脂と樹脂組成物間の剥離強度をJIS K 6854-2に準じて、ピール試験機(島津製作所社製AGS-X)を使用して、剥離角度180°、引張速度50mm/分、環境温度23℃の条件で測定し、樹脂組成物(E)のPP樹脂に対する接着強度とした。
・・・
【0077】
なお、以下の実施例および比較例で用いた各成分は以下の通りである。
【0078】
<製造例1>〔スチレン系熱可塑性エラストマー(a-1)の合成〕
予め耐圧容器を窒素置換することで、耐圧容器を乾燥させた。係る耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウムの10.5質量%シクロヘキサン溶液94.1g(sec-ブチルリチウム9.9g当量)、及びルイス塩基としてテトラヒドロフラン300gを仕込んだ。係る溶液を50℃に昇温した。係る溶液に、スチレン(1)1.25kgを加えた後に、1時間の重合反応を行った。引き続いて係る溶液に、イソプレン10.00kgを加えた後に、2時間の重合反応を行った。更に係る溶液に、スチレン(2)1.25kgを加えた後に、1時間の重合反応を行った。以上により、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。
【0079】
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボンを、ブロック共重合体100質量%あたり5質量%添加した。なおパラジウムカーボン100質量%あたりのパラジウムの担持量は5質量%である。水素圧力2MPa、150℃の環境下で10時間の反応を行った。反応液を放冷し、かつ放圧した。その後、濾過により反応液からパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、該濃縮液を真空乾燥してスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の水素添加物であるブロック共重合体(a-1)を得た。
【0080】
<製造例2> 〔スチレン系熱可塑性エラストマー(a-2)の合成〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)61.1g(sec-ブチルリチウム6.42g)を仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)0.81kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン10.87kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)0.81kgを加えて1時間重合することにより、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。
放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の水素添加物(a-2-1)を得た。
【0081】
また上記水素添加物(a-2-1)を得た手順と同様に、窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)420.0g(sec-ブチルリチウム44.1g)を仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)2.83kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン19.81kgを加えて2時間重合を行い、スチレン-イソプレンジブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、上記と同様に水素添加を行い、スチレン-イソプレンジブロック共重合体の水素添加物(a-2-2)を得た。
上記で得られた(a-2-1)および(a-2-2)をコぺリオン社製二軸押出機ZSK26MegaCompounder(L/D=54)を用いてスクリュー300rpm、混練温度200℃にて溶融混練してスチレン系熱可塑性エラストマー組成物(a-2)を得た。
【0082】
〔粘着付与剤(b)〕
粘着付与剤(b)として、以下の市販材料を用いた。
粘着付与剤(b-1):YSレジンSX100(スチレン樹脂、ヤスハラケミカル社製)
粘着付与剤(b-2):アルコンP-90(脂環族飽和炭化水素樹脂、荒川化学工業社製)
粘着付与剤(b-3):YSポリスターU115(テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル社製)
【0083】
〔軟化剤(c)〕
軟化剤(c)として、以下の市販材料を用いた。
軟化剤(c-1):ダイアナプロセスオイルPW90(パラフィン系プロセスオイル、出光興産社製)
軟化剤(c-2):ルーカントHC-10(炭化水素系合成油、三井化学社製)
【0084】
<製造例3> [(メタ)アクリル系樹脂の合成]
メタクリル酸メチル95質量部、アクリル酸メチル5質量部からなる単量体混合物に重合開始剤(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部および連鎖移動剤(n-オクチルメルカプタン)0.28質量部を加え溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部および懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、前記混合液420質量部と前記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状の(メタ)アクリル系樹脂を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は30,000、Tgは128℃であった。
【0085】
<製造例4> [多層構造体]
攪拌機、温度計、窒素ガス同入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器に、イオン交換水1050質量部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5質量部および炭酸ナトリウム0.7質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換した後、内温を80℃に設定した。そこに過硫酸カリウム0.25質量部を投入して5分間撹拌した後、メタクリル酸メチル:アクリル酸メチル:メタクリル酸アリル=94:5.8:0.2(質量比)からなる単量体混合物245質量部を50分連続的に滴下し、滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
次いで同反応器にペルオキソ2硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間撹拌した後、アクリル酸ブチル80.6質量%、スチレン17.4質量%およびメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物315質量部を60分間かけて連続的に滴下し、滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
続いて同反応器にペルオキソ2硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間撹拌した後、メタクリル酸メチル:アクリル酸メチル=94:6(質量比)からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、さらに60分間重合反応を行って、多層構造体を得た。
【0086】
<製造例5> [基材層]
製造例4で得られた多層構造体20質量部と、製造例3で得られた(メタ)アクリル系樹脂80質量部とを、二軸押出機(東芝機械社製TEM-28)を用いて230℃で溶融混練した後、ストランド状に押出し、切断することによって、メタクリル樹脂組成物のペレット(P)を製造した。
【0087】
<実施例1>
スチレン系熱可塑性エラストマー(a-1)、粘着付与剤(b-2)および軟化剤(c-1)を表1に示す割合で、トルエン溶媒中で混合することで、樹脂組成物のトルエン溶液を得た。この時、不揮発成分(スチレン系エラストマー(a)、粘着付与剤(b)、軟化剤(c)成分の合計)の、トルエン溶液中濃度は40重量%とした。
得られた樹脂組成物の25℃環境下における粘弾性、PP樹脂に対する接着強度、塗布膜のタック性を、上述の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0088】
<実施例2~22、比較例1~12>
スチレン系熱可塑性エラストマー(a)、粘着付与剤(b)および軟化剤(c)を、表1、2に示す割合で混合したこと以外は実施例1と同様の方法で、樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物について上述の方法により評価した。結果を表1、2に示す。
【0089】
【表1】
[図:0001431115000002.jpg]
【0090】
【表2】
[図:0001431115000003.jpg]
【0091】
実施例1の樹脂組成物(E)は、PP樹脂との剥離強度は10N/25mm以上と優れた値を示し、プローブタック試験機で測定したタック値は小さかった。また、実施例2~21においてスチレン系熱可塑性エラストマー(a)、粘着付与剤(b)および軟化剤(c)の配合比を変えても、樹脂組成物の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×103Pa~2.0×105Paの範囲内であれば、実施例1と同様にPP樹脂との高い接着力と、低タック性を両立していた。
【0092】
一方、比較例1~10でもスチレン系熱可塑性エラストマー(a)、粘着付与剤(b)および軟化剤(c)の配合比を変えているが、樹脂組成物の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×103Paより小さいために、PP樹脂との接着力は高いものの、100g以上という高いタック性を示しており、取扱いが困難であった。また比較例11に示す樹脂組成物は25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が2.0×105Paより大きいために、低タック性であるものの、PP樹脂との接着力は非常に小さかった。また比較例12に示す樹脂組成物は25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×103Pa~2.0×105Paの範囲内であるものの、スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、前記粘着付与剤(b)の含有量が少ないために、PP樹脂との接着力は小さかった。」
イ 甲第1号証に記載された技術的事項
前記ア(カ)の段落【0072】の記載に基づけば、甲第1号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「粘着材を有する多層フィルムを、自動車内外装部材、電子機器部品、各種家電製品に用いること。」
ウ 甲第1号証に記載された発明
前記ア(ア)の記載に基づけば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材層および粘着材層を含む多層フィルムであって、前記粘着材層が、少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマー(a)および少なくとも一種の粘着付与剤(b)を含む樹脂組成物(E)よりなり、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)が、芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位からなる重合体ブロック(A)とイソプレンに由来する単量体単位および/または1,3-ブタジエンに由来する単量体単位からなる重合体ブロック(B)とを含み、かつ、水素添加されている水添ブロック共重合体であって、前記重合体ブロック(A)の含有量が、水素添加前におけるブロック共重合体の総量に対して5~40質量%であり、前記重合体ブロック(B)の水素添加率が70%以上であり、前記樹脂組成物(E)が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、前記粘着付与剤(b)の合計80~400質量部を含有し、前記樹脂組成物(E)の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×103Pa~2.0×105Paであることを特徴とする多層フィルム。」
(3)甲第3号証
ア 甲第3号証の記載事項
本件特許に係る先の出願前の平成23年5月6日に、日本国内又は外国において頒布された文献である甲第3号証(特開2011-88998号公報)には、以下の記載事項がある。
「【0023】
(水素添加樹脂)
まず、本実施形態における水素添加樹脂について説明する。
本実施形態のゴム組成物に用いる水素添加樹脂は、樹脂を水添してなり、好ましくは、石油樹脂や天然樹脂を水添した樹脂である。ここで、樹脂の水添は、公知の方法で行うことができ、また、本実施形態においては、市販の水素添加樹脂を使用することもできる。
・・・
【0026】
上記水素添加樹脂として、具体的には、・・・、荒川化学(株)製アルコンM100(商品名、軟化点:100℃)、・・・等が挙げられる。これら水素添加樹脂は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。」
イ 甲第3号証に記載された技術的事項
前記アに基づけば、甲第3号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「荒川化学(株)製アルコンM100」の軟化点が「100℃」であること。
(4)甲第5号証
ア 甲第5号証の記載事項
本件特許に係る先の出願前の平成11年3月2日に、日本国内又は外国において頒布された文献である甲第5号証(特開平11-59001号公報)には、以下の記載事項がある。
「【0019】実施例4
実施例3のインクE液中の水添石油樹脂を70%水添石油樹脂(SP値8.5、アルコンM100、荒川化学社製)に代えた以外は、実施例3と同様にして本発明の熱転写記録媒体を作成した。」
イ 甲第5号証に記載された技術的事項
前記アに基づけば、甲第5号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「アルコンM100(荒川化学社製)」が、「水添石油樹脂」であり、「SP値8.5」であること。
2 本件特許発明3について
(1)対比
本件特許発明3と引用発明とを対比する。
ア ラジアル型スチレン系エラストマー
引用発明の「ポリマー組成物19」に含まれるブロック共重合体及び「ポリマー組成物20」に含まれるブロック共重合体は、その製法からみて、「スチレンブロック」、「ブタジエン部分」及び3官能又は4官能のカップリング剤の残基を有し、甲第2号証の段落【0035】に式(2)で表される構造を有するエラストマーであるといえる。
そうすると、引用発明の「ポリマー19」に含まれるブロック共重合体及び「ポリマー20」に含まれるブロック共重合体は、本件特許発明3の「A:芳香族アルケニル重合体ブロック」、「B:共役ジエン重合体ブロック」、「C:カップリング剤に由来する成分」、「n:3以上の整数」とした場合の「一般式(A-B)nCで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマー」に相当する。
イ 粘着付与樹脂
引用発明の「アルコンM100」は「粘着付与剤」である。また、甲第2号証の段落【0099】における「脂肪族系環状炭化水素樹脂(例えば、荒川化学工業(株)製:アルコンM100)」との記載に基づけば、「アルコンM100」は、「樹脂」である。そうすると、引用発明の「アルコンM100」は、本件特許発明3の「粘着付与樹脂」に相当する。
ウ 粘着剤層を有する粘着テープ
本件特許発明3の「粘着剤層を有する粘着テープ」と引用発明の「粘接着剤組成物」とは、「粘着剤」を含む点で共通する。
エ 一致点及び相違点
以上より、本件特許発明3と引用発明とは、
「粘着剤であって、一般式(A-B)nCで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマーと、
粘着付与樹脂とを含有する粘着剤。
A:芳香族アルケニル重合体ブロック
B:共役ジエン重合体ブロック
C:カップリング剤に由来する成分
n:3以上の整数」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点2-3-1]
本件特許発明3は、「粘着剤層を有する粘着テープ」であって、「電子機器部品固定用途、車載部品固定用途、基地局アンテナ固定用途、基地局送受信機固定用途、スマートグラス固定用途に用いられる」のに対し、引用発明は、「粘接着剤組成物」であって、「粘着剤層を有する粘着テープ」ではなく、その用途も特定されていない点。
[相違点2-3-2]
粘着付与樹脂が、本件特許発明3では「SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系」及び「SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系」であるのに対し、引用発明では「アルコンM100」が単独で含まれており、そのSP値、軟化点、及び芳香族を含むのか否か、石油樹脂系又は天然物系のいずれであるのかが、明らかでない点。
[相違点2-3-3]
ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量が、本件特許発明3では、「35重量部以下」であるのに対し、引用発明では、「ポリマー組成物19の100質量部」又は「ポリマー組成物20の100質量部」に対して、「アルコンM100(荒川化学工業(株)製)を300質量部」「配合」している点。
(2)判断
事案に鑑みて、[相違点2-3-2]について検討する。
甲第2号証の段落【0098】には、粘接着剤組成物について、「本実施形態の粘接着剤組成物は、上記ブロック共重合体組成物を含み、さらに粘着付与剤を含むことが好ましく、軟化剤を含んでもよい。」と記載されており、段落【0099】には、「粘着付与剤は、特に限定されないが、例えば、脂肪族系環状炭化水素樹脂(例えば、荒川化学工業(株)製:アルコンM100)、ポリテルペン樹脂(例えば、ヤスハラケミカル(株)製:クリアロンM115)等を好ましく使用できる。」と記載されている。当該記載に基づけば、引用発明において、粘着付与剤として配合された「アルコンM100」は、「脂肪族系環状炭化水素樹脂」である。
そして、「アルコンM100」は、甲第5号証の段落【0019】の記載に基づけば、「水添石油樹脂」であって、SP値が「8.5」であり、甲第3号証の段落【0026】の記載に基づけば、軟化点が「100℃」であるといえる。
そうすると、引用発明の「アルコンM100」は、石油樹脂系の脂環族飽和炭化水素樹脂、つまり、「芳香族環を含まない石油樹脂系」の粘着付与樹脂であって、SP値が「SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上」であるとする要件を満たすものである。
しかしながら、甲第2号証には、粘着付与剤について、「SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂」と共に「SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂」を含むことについて記載がない。
そして、「SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂」と共に「SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂」を、粘着付与樹脂として用いることが、周知技術であったということはできず、上記要件を満たす2種の樹脂を混合して用いることが当業者にとって自明であったということもできない。
したがって、当業者であっても、引用発明の「アルコンM100」と共に、「SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂」を、粘着付与樹脂として用いることが容易になし得たということができない。
(3)まとめ
以上のとおり、[相違点2-3-2]は、当業者であっても、容易に想到し得たものということができない。したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は、引用発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件特許の請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
3 本件特許発明6について
本件特許発明6と引用発明とを対比すると、少なくとも前記2(1)エに記載した[相違点2-3-2]において相違しており、当該[相違点2-3-2]は、前記2(2)において検討したとおり、当業者が容易に想到し得たということができないものである。
したがって、本件特許発明6も、本件特許発明3と同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件特許の請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 甲第1号証に基づく新規性・進歩性違反
(1)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と、前記第5の1(2)ウに記載した甲1発明とを対比する。
(ア)ラジアル型スチレン系エラストマー
甲1発明の「スチレン系熱可塑性エラストマー(a)」は、「芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位からなる重合体ブロック(A)とイソプレンに由来する単量体単位および/または1,3-ブタジエンに由来する単量体単位からなる重合体ブロック(B)とを含み、かつ、水素添加されている水添ブロック共重合体であって、前記重合体ブロック(A)の含有量が、水素添加前におけるブロック共重合体の総量に対して5~40質量%であり、前記重合体ブロック(B)の水素添加率が70%以上」である。ここで、甲1発明の「スチレン系熱可塑性エラストマー(a)」を構成する「芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位からなる重合体ブロック(A)」は、本件特許発明1の「A:芳香族アルケニル重合体ブロック」に相当する。また、甲1発明の「イソプレンに由来する単量体単位および/または1,3-ブタジエンに由来する単量体単位からなる重合体ブロック(B)」は、本件特許発明1の「B:共役ジエン重合体ブロック」に相当する。
そうすると、本件特許発明1の「一般式(A-B)nCで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマー」と甲1発明の「スチレン系熱可塑性エラストマー(a)」とは、「一般式(A-B)n」「で表される構造を有する」「スチレン系エラストマー」である点で共通する。
また、本件特許発明1の「ラジアル型スチレン系エラストマー」と甲1発明の「水素添加率が96%以上である」とされる「スチレン系熱可塑性エラストマー(a)」とは、「水素添加」された「スチレン系エラストマー」である点でも共通する。
(イ)粘着付与樹脂
甲1発明の「少なくとも一種の粘着付与剤(b)」は、技術的にみて、本件特許発明1の「粘着付与樹脂」に相当する。
(ウ)粘着剤層を有する粘着テープ
甲1発明は、「基材層および粘着材層を含む多層フィルム」である。ここで、甲1発明の「粘着材層」は、「少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマー(a)および少なくとも一種の粘着付与剤(b)を含む樹脂組成物(E)」よりなるものであって、「カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物」を含んでいない。そうすると、甲1発明の「粘着材層」は、本件特許発明の「粘着剤(但し、カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むものを除く。)層」に相当する。
また、甲1発明の「多層フィルム」は、その形状からみて、テープ状であるといえる。そうすると、甲1発明の「多層フィルム」は、本件特許発明1の「粘着テープ」に相当し、「粘着剤(但し、カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むものを除く。)層を有する」とする要件を満たしている。
(エ)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲1発明とは、
「粘着剤(但し、カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むものを除く。)層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は一般式(A-B)nで表される構造を有するスチレン系エラストマーと、
粘着付与樹脂とを含有し、
前記スチレン系エラストマーは水素添加されている
ことを特徴とする粘着テープ。
A:芳香族アルケニル重合体ブロック
B:共役ジエン重合体ブロック
n:整数」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-1-1]
本件特許発明1は「電子機器部品固定用途、車載部品固定用途、基地局アンテナ固定用途、基地局送受信機固定用途、スマートグラス固定用途に用いられる」のに対し、甲1発明は用途が特定されていない点。
[相違点1-1-2]
スチレン系エラストマーが、本件特許発明1は「一般式(A-B)nC」(C:カップリング剤に由来する成分、n:3以上の整数)で表される構造を有する「ラジアル型」スチレン系エラストマーであるのに対し、甲1発明は「一般式(A-B)nC」で表される構造を有する「ラジアル型」スチレン系エラストマーに限定されていない点。
[相違点1-1-3]
粘着付与樹脂が、本件特許発明1は「SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系」及び/又は「SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系」であるのに対し、甲1発明は「粘着付与剤(b)」のSP値、軟化点、及び、芳香族環を含む天然物系又は芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系のいずれかであるかを特定していない点。
[相違点1-1-4]
スチレン系エラストマーの水素添加率が、本件特許発明1では「96%以上」であるのに対し、甲1発明では「70%以上」である点。
イ 判断
事案に鑑みて、[相違点1-1-2]及び[相違点1-1-3]についてまとめて検討する。
甲第1号証の記載事項(カ)の段落【0027】には、「スチレン系熱可塑性エラストマー(a)」について、その結合形態の例として、「(A-B)nX型共重合体(Xはカップリング残基を表し、nは2以上の整数を表す)」とすることが記載されている。当該記載に基づけば、甲第1号証には、甲1発明の「スチレン系熱可塑性エラストマー(a)」について、その結合形態を、「(A-B)nX型共重合体(Xはカップリング残基を表し、nは2以上の整数を表す)」(下線は合議体が付した。)とすることまでは示唆されていたといえる。ただし、甲第1号証には、nを3以上とすることまでは示唆されておらず、nが3以上の整数であるとする要件を満たす「スチレン系熱可塑性エラストマー(a)」の具体例や実施例の記載はない。
また、甲第1号証の記載事項(カ)の【0033】には、「粘着付与剤(b)として用いられる粘着性付与樹脂」について、「脂肪族不飽和炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂、脂環式不飽和炭化水素樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、水添芳香族炭化水素樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特に脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、スチレン樹脂はスチレン系熱可塑性エラストマーとの相溶性が高く、好ましい。」との記載がある。しかし、甲第1号証には、「粘着付与剤(b)」のSP値、軟化点、及び、芳香族環を含む天然物系、又は、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系のいずれかを、選択することについて、何ら記載も示唆もない。
一方、本件特許の明細書の【0007】に基づけば、本件特許発明1が解決しようとする課題は、「水蒸気バリア性、高温粘着性及び透明性に優れる粘着テープを提供する」ことにあり、その課題を解決するための手段は、段落【0008】の記載に基づけば「一般式(A-B)nCで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマー」と、「SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び/又は、SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂」とを含有する粘着剤層であるといえる。段落【0009】における「本発明者らは更に検討を進めた結果、特定の粘着付与樹脂を用いることで、ラジアル型スチレン系エラストマーを用いながらも透明性が低下し難いことを見出し、本発明を完成させるに至った。」との記載からも、特定の粘着付与樹脂と特定のラジアル型スチレン系エラストマーとを組み合わせることによって、上記課題を解決しているものと理解できる。
以上より、甲第1号証には、「スチレン系熱可塑性エラストマー(a)」について、本件特許発明1の上記[相違点1-1-2]に係る構成とすることの示唆がなく、また、「粘着付与剤(b)」について、本件特許発明1の上記[相違点1-1-3]に係る構成とすることの示唆もないことから、特定の粘着付与樹脂と特定のラジアル型スチレン系エラストマーとを組み合わせることによって、「水蒸気バリア性、高温粘着性及び透明性に優れる粘着テープを提供する」という課題を解決することを記載も示唆もしていない。また、特定の粘着付与樹脂と特定のラジアル型スチレン系エラストマーとを組み合わせることが、本件特許に係る先の出願前において知られていたとする根拠も見出せない。
そうすると、当業者といえども、甲第1号証の記載に基づいて、「スチレン系熱可塑性エラストマー(a)」を「一般式(A-B)nC」(C:カップリング剤に由来する成分、n:3以上の整数)で表される構造を有する「ラジアル型」スチレン系エラストマーとし、さらに、「粘着付与剤(b)」を「SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系」及び/又は「SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系」とすることが、容易に想到し得たということができない。
なお、審判請求書の6頁5行~7頁4行において請求人は、甲第1号証について、前記第5の1(2)ア(ア)に示す請求項1の記載の一部(b1)と、前記第5の1(2)ア(カ)に発明を実施するための形態として記載された段落【0027】の記載の一部(c1)と、段落【0028】の記載の一部(e1)と、段落【0036】の記載の一部(f1)と、段落【0072】の記載の一部(a1)と、前記第5の1(2)ア(キ)に実施例として記載された段落【0075】の記載の一部(l1)、段落【0082】の記載の一部(d1)を引用し、審判請求書の8頁7~8行において、「甲第1号証に記載の(a1)~(e1)は、それぞれ本件特許発明1における(A)~(E)に相当する。」と主張している。当該主張は、上記甲第1号証における(a1)~(e1)に係る記載事項から、一つの発明を認定することができることを前提としているものと理解できる。しかし、段落【0027】の「(A-B)nX型共重合体(Xはカップリング残基を表し、nは2以上の整数を表す)」(c1)、段落【0028】の「共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(B)の一部または全部が水素添加(以下、「水添」と略称することがある)されていることが好ましい。その際の共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(B)の水素添加率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。」(e1)、段落【0072】の「自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品」(a1)との記載は、それぞれ独立した選択肢を示す記載であり、甲第1号証に、これらの要件を全て満たす多層フィルムの発明が開示されていたと理解することができない。また、実施例として記載された段落【0075】の「実施例および比較例で得られた樹脂組成物溶液を、それぞれメタクリル樹脂組成物からなるシート(30cm×20cm×厚み0.125mm)にwet厚み100μm、dry厚み40μmとなるように塗布した。」(l1)、段落【0082】の「粘着付与剤(b-2):アルコンP-90(脂環族飽和炭化水素樹脂、荒川化学工業社製)」との記載も、実施にあたっての一形態を開示するものである。また、いずれの実施例も「(A-B)nX型共重合体(Xはカップリング残基を表し、nは2以上の整数を表す)」(c1)という要件を満たしていない。そうすると、これらの要件を全て満たす発明が、甲第1号証に記載されていると認定することができない。
ウ まとめ
以上のとおり、[相違点1-1-2]及び[相違点1-1-3]は、当業者であっても、容易に想到し得たものということができないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
(2)本件特許発明2及び本件特許発明6
本件特許発明2及び本件特許発明6と引用発明とを対比すると、少なくとも前記(1)ア(エ)に記載した[相違点1-1-2]及び[相違点1-1-3]において相違しており、当該[相違点1-1-2]及び[相違点1-1-3]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が容易に想到し得たということができないものである。
したがって、本件特許発明2及び本件特許発明6も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件特許の請求項2及び請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
2 甲第2号証に基づく進歩性違反
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と前記5の1(2)イに記載した引用発明とを対比すると、前記第5の2(1)における本件特許発明3と引用発明との対比のア及びイと同様のことがいえる。
また、本件特許発明1の「粘着剤層を有する粘着テープ」と引用発明の「粘接着剤組成物」とは、「粘着剤」を含む点で共通する。
なお、引用発明の「得られたブロック共重合体溶液に」「添加」される「有機酸としてオレイン酸とステアリン酸((b1)成分)が質量比1:9(オレイン酸:ステアリン酸)で含まれる混合物」における「オレイン酸」及び「ステアリン酸」は、その構造式及び分子量からみて、カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸といえるものである。そうすると、引用発明の「粘接着剤組成物」は、本件特許発明1の「粘着剤」から、「除く」とされている「カルボキシ基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むもの」といえる。
以上より、本件特許発明1と引用発明とは、
「粘着剤であって、一般式(A-B)nCで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマーと、
粘着付与樹脂とを含有する粘着剤。
A:芳香族アルケニル重合体ブロック
B:共役ジエン重合体ブロック
C:カップリング剤に由来する成分
n:3以上の整数」
である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
[相違点2-1-1]
本件特許発明1は、「粘着剤層を有する粘着テープ」であって、「電子機器部品固定用途、車載部品固定用途、基地局アンテナ固定用途、基地局送受信機固定用途、スマートグラス固定用途に用いられる」のに対し、引用発明は、「粘接着剤組成物」であって、「粘着剤層を有する粘着テープ」ではなく、その用途も特定されていない点。
[相違点2-1-2]
粘着剤が、本件特許発明1では「但し、カルボキシ基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むものを除く」と特定されているのに対し、引用発明は、「有機酸としてオレイン酸とステアリン酸((b1)成分)が質量比1:9(オレイン酸:ステアリン酸)で含まれる混合物」を含んでいる点。
[相違点2-1-3]
粘着付与樹脂が、本件特許発明1では「SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系」及び/又は「SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系」であるのに対し、引用発明では、「アルコンM100」のSP値、軟化点、及び芳香族環を含むのか否か、石油樹脂系又は天然物系のいずれであるのかが、明らかでない点。
[相違点2-1-4]
ラジアル型スチレン系エラストマーが、本件特許発明1は「水素添加率が96%以上」であるのに対し、引用発明の「ポリマー19」に含まれるブロック共重合体及び「ポリマー20」に含まれるブロック共重合体は水素添加がなされていない点。
イ 判断
事案に鑑みて[相違点2-1-2]について検討する。
甲第2号証の記載事項(イ)に基づけば、引用発明が解決しようとする課題は、「製造工程における乾燥状態が良好であり、かつ低臭気のブロック共重合体組成物を提供すること」であるといえる。また、甲第2号証の記載事項(ウ)に基づけば、「(b)成分:カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩」を含むことは、上記課題を解決するための手段であると理解できる。
そうすると、当業者といえども、引用発明の粘接着剤組成物において、「(b)成分:カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩」(「有機酸としてオレイン酸とステアリン酸((b1)成分)が質量比1:9(オレイン酸:ステアリン酸)で含まれる混合物」)を除いたものとすることに容易に想到し得たとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和7年3月6日に提出した意見書の2頁9~27行において、特許権者が行った主張を参照すると、(b)成分が含まれる粘着剤と(b)成分が含まれない粘着剤とで、その構成の持つ技術的意義について全く述べられていないとし、「発明の効果の差がない場合には、新たな技術的意義を提供しているものとは言えず、設計事項に過ぎません。」と主張している。
しかし、引用発明は、「製造工程における乾燥状態が良好であり、かつ低臭気のブロック共重合体組成物を提供すること」という課題を解決するために、「(b)成分:カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩」という課題解決手段を採用したものであるのに対し、本件特許発明1は、「水蒸気バリア性、高温粘着性及び透明性に優れる粘着テープを提供すること」(段落【0007】)を目的とし、粘着剤層が「一般式(A-B)nCで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマー」と「SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び/又は、SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂」(段落【0008】)とを含有するという課題解決手段を採用したものであって、技術思想としては顕著に異なっていたところ、「粘着剤(但し、カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むものを除く。)」と特定することによって、課題解決手段が異なることが明確となったものである。そして、既に検討したとおり、当該相違点について、当業者が容易に想到し得たということができないものである。
以上より、申立人の上記主張は採用できない。
なお、申立人は、令和7年3月6日に提出した意見書の3頁1~9行において、「ブロック共重合体組成物」について「ブロック共重合体が含まれるのか含まれないのかが明らかにされておらず、除かれる対象が不明確であります。」と主張している。
しかし、「ブロック共重合体組成物」が「ブロック共重合体」を含む組成物であることは、文言上明らかである。また、「粘着剤(但し、カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むものを除く。)」との文言において、「カルボキシル基」は、官能基を意味する技術用語であって、分子やその塩を構成するものであることは明らかである。また、「分子量」も、分子やその塩の大きさを特定するものであることが明らかである。そうすると、「カルボキシル基を有する」及び「分子量800未満」の「有機酸及び/又はその塩を含む」と特定される「ブロック共重合体組成物」は明確である。そうすると、「粘着剤(但し、カルボキシル基を有する、分子量800未満の有機酸及び/又はその塩を含むブロック共重合体組成物を含むものを除く。)」とは、「カルボキシル基」を有すると共に分子量が800未満の「有機酸及び/又はその塩」と「ブロック共重合体」とを含む「組成物」が含まれる「粘着剤」を除くことを意味することは明らかであって、除かれる対象は明確である。
したがって、申立人の上記主張も採用できない。
エ まとめ
以上のとおり、[相違点2-1-2]は、当業者であっても、容易に想到し得たものということができない。したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
(2)本件特許発明2及び本件特許発明6について
本件特許発明2及び本件特許発明6と引用発明とを対比すると、少なくとも前記(1)ア(エ)に記載した[相違点2-1-2]において相違しており、当該[相違点2-1-2]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が容易に想到し得たということができないものである。
したがって、本件特許発明2及び本件特許発明6も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件特許の請求項2及び請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
3 サポート要件違反
(1)申立人が主張する特許異議申立理由
申立人は、特許異議申立書の14頁1~13行において、本件特許発明1において特定される「前記ラジアル型スチレン系エラストマーは水素添加率が96%以上である」ことについて、発明の詳細な説明の記載からは、「所定の効果を奏するかどうかを、当業者が認識することができない」、発明の詳細な説明には、「水素添加率を所定の範囲に調整することにより、どのような技術的な効果が生じるか」が開示されていないから、「サポート要件違反に該当する」と主張している。
(2)当審の判断
発明の詳細な説明の段落【0016】には、「上記スチレン系ブロック共重合体は、光学的な無色透明性を高める観点から、水素添加率が95%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましい。上記スチレン系ブロック共重合体の水素添加率は、通常100%以下である。」との記載がある。そうすると、本件特許発明1における「前記ラジアル型スチレン系エラストマーは水素添加率が96%以上である」とする要件が、発明の詳細な説明に記載したものであることは明らかである。
また、発明の詳細な説明の段落【0007】の記載に基づけば、本件特許発明1~3及び6が解決しようとする課題は、「水蒸気バリア性、高温粘着性及び透明性に優れる粘着テープを提供すること」であると理解できる。そして、段落【0008】の記載に基づけば、課題を解決するための手段は、「粘着剤層」について、「一般式(A-B)nCで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマーと、SP値が8.0~9.0、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂及び/又は、SP値が7.5~8.5であり、軟化点が80℃以上であり、芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂とを含有する」ことであるから、「前記ラジアル型スチレン系エラストマーは水素添加率が96%以上である」とする要件は、課題解決における必須の要件ではない。このことは、段落【0009】における「ラジアル型スチレン系エラストマーは、粘着付与樹脂等の添加剤と相溶しにくく、高温粘着性を高めるために粘着付与樹脂を加えた場合に透明性が低下してしまうという問題が生じた。そこで、本発明者らは更に検討を進めた結果、特定の粘着付与樹脂を用いることで、ラジアル型スチレン系エラストマーを用いながらも透明性が低下し難いことを見出し、本発明を完成させるに至った。」という記載からも理解できる。そうすると、「前記ラジアル型スチレン系エラストマーは水素添加率が96%以上である」とする要件の効果は、段落【0016】に記載された「光学的な無色透明性を高める」という更なる効果を付加するにとどまるものである。そして、実験的に確認された効果が記載されていないとしても、当業者が、本件特許発明1~3及び6について、段落【0007】に記載された課題を解決できないと理解することはない。
したがって、本件特許発明1~3及び6に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
4 実施可能要件違反
(1)申立人が主張する特許異議申立理由
申立人は、特許異議申立書の14頁14~25行において、発明の詳細な説明の段落【0038】の「カップリング剤としてトリクロロシラン」という記載及び【0039】の「ラジアル型スチレン系エラストマー(A-B)4Cを得た」という記載が整合しないから、「本件特許明細書は当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものとは言えない。」と主張している。
なお、特許異議申立書の1頁下から2行、16頁9行及び10~11行における「特許法第36条第6項第4号」との記載、及び、特許異議申立書の3頁8行における「特許法第36条第6項第2号」との記載は、申立人の主張の内容からみて、いずれも、「特許法第36条第4項第1号」の誤記である。
(2)当審の判断
発明の詳細な説明の段落【0039】における「ラジアル型スチレン系エラストマー(A-B)4Cを得た」という記載は、申立人が「通常、3官能のトリクロロシランを用いた場合、(A-B)3Cで表される3官能のラジカルスチレン系エラストマーが得られると考えられる」と主張するように、当業者にとって明らかな誤記であり、正しくは「ラジアル型スチレン系エラストマー(A-B)3Cを得た」であるといえる。
そして、発明の詳細な説明の記載が、このような誤記を含んでいたとしても、「一般式(A-B)nCで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマー」を得る方法は、発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が理解できるものであるといえる。
そうすると、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明1~3、6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
したがって、本件特許発明1~3及び6に係る特許は、特許法36条4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明の請求項1~3及び6に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件特許の請求項1~3及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700845