特許異議申立
2024-700736
弾性不織材料を製造するための装置
- 審判番号
- 2024-700736
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-052898
- 登録番号
- 7428744
- 請求日
- 2024年08月06日
- 審決日
- 2024年10月11日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】デューケイン アイエーエス エルエルシー
- 【権利者代理人】弁理士法人大島特許事務所
- 【異議申立人】カート ジー.ジョア、インコーポレイテッド
- 【異議申立人代理人】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 長清 吉範
- 審判官 岩谷 一臣
- 分類
- P1651.121-Y (D04H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項、特許法第44条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7428744号発明「弾性不織材料を製造するための装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7428744号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7428744号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)9月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年9月30日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2019-517094号の一部を令和4年3月29日に新たな特許出願とした出願であって、令和6年1月29日にその特許権の設定登録がなされ(特許掲載公報の発行日は令和6年2月6日)、その後、その特許に対し、令和6年8月6日に特許異議申立人カート ジー.ジョア、インコーポレイテッド(以下、単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第7428744号の請求項1~7の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、請求項1に係る発明から順に、「本件発明1」、「本件発明2」、・・・という。)。
「【請求項1】
少なくとも1本の弾性ストランドを含む弾性不織材料を製造するための超音波結合装置であって、
ホーンモジュールと、
前記ホーンモジュールに近接して配置可能なアンビルモジュールと、
前記少なくとも1本の弾性ストランドを収容する少なくとも1つのスプールを含む供給ステーションと
を備え、
前記アンビルモジュールは、幅方向に或る幅寸法及び周方向に延在する円周軸を有するフェイスを含み、かつ回転軸の周りを回転可能であり、
前記フェイスは、複数の突条を有し、
前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールは、前記少なくとも1本の弾性ストランド及び不織材料を受容するように配置され、互いに協働して前記少なくとも1本の弾性ストランド及び前記不織材料を超音波結合することで前記弾性不織材料を製造するように構成され、
前記少なくとも1つのスプールを含む前記供給ステーションが、前記少なくとも1本の弾性ストランドを、前記アンビルモジュールが回転するとき前記周方向に沿って湾曲する曲線に沿って前記幅方向にわたって誘導するように構成され、
前記供給ステーションは、前記少なくとも1本の弾性ストランドが前記少なくとも1つのスプールから巻き出されるときに、前記少なくとも1本の弾性ストランドを左右動させるように構成されている、超音波結合装置。
【請求項2】
前記突条は、前記少なくとも1本の弾性ストランドを受容するように配列されたノッチ及びランドを有し、
前記ノッチ及び前記ランドは、前記曲線に沿って前記少なくとも1本の弾性ストランドを受容するようにオフセットしている、請求項1に記載の超音波結合装置。
【請求項3】
前記突条は、前記幅方向の一部に沿って延在し、前記周方向に沿って前記曲線に一致するように配列されている、請求項2に記載の超音波結合装置。
【請求項4】
前記複数の突条の内の少なくとも1つは、交互に設けられた複数のランド及び複数のノッチを有し、
前記ランドの各々及び前記ノッチの各々は、前記周方向に平行に、かつ前記複数の突条の少なくとも1つの延長方向に対して斜めに、配置された、請求項1に記載の超音波結合装置。
【請求項5】
不織材料と少なくとも1本の弾性ストランドとを含む弾性不織材料を製造するための方法であって、
少なくとも一方が、幅方向に或る幅寸法及び周方向に延在する円周軸を有するフェイスを含むホーンモジュール及びアンビルモジュールを、前記ホーンモジュールを前記アンビルモジュールに近接して配置するステップと、
前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールの少なくとも一方を回転するステップと、
供給ステーションから前記弾性ストランドを供給して、前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールの間に、前記不織材料及び前記少なくとも1本の弾性ストランドを提供するステップと、
前記フェイスの前記幅方向に沿って左右動する態様で前記供給ステーションのスプールから前記弾性ストランドを供給し、前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールの間で、前記周方向に沿って湾曲する曲線に沿って前記少なくとも1本の弾性ストランドを誘導するステップと、
前記弾性不織材料を第1の領域及び第2の領域で、超音波結合により結合するステップであって、前記第2の領域では、前記弾性不織材料を超音波結合により前記第1の領域と異なる突条のパターンで結合する、ステップとを含み、
前記弾性ストランドの少なくとも一部は、前記第1の領域に捕捉され、
前記弾性ストランドの少なくとも一部は、前記第2の領域に捕捉され、
前記弾性ストランドは、前記第1の領域及び前記第2の領域の間を前記曲線に沿って延在する、方法。
【請求項6】
前記曲線に沿って前記弾性ストランドを誘導するステップは、
前記フェイスの前記突条に画定されたノッチの間に前記弾性ストランドを誘導するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記突条の各々は、交互に設けられた複数のランド及び複数の前記ノッチを有し、
前記ランドの各々及び前記ノッチの各々は、前記周方向に平行に、かつ前記突条の延長方向に対して斜めに配置された、請求項6に記載の方法。」
第3 申立理由の概要
申立人による申立理由は、概略以下のとおりである。なお、それぞれの申立を「申立理由1」等という。
1 申立人は、証拠として、甲第1号証~甲第5号証を提出し、請求項1~7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~7に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
2 申立人は、請求項1~7に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1~7に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
3 申立人は、証拠として、甲第6号証~甲第9号証を提出し、請求項1~7に係る特許は分割要件違反であり、その結果、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、請求項1~7に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証:国際公開2016/033226号
甲第2号証:米国特許第5745922号明細書
甲第3号証:米国特許第7045031号明細書
甲第4号証:米国特許第4917746号明細書
甲第5号証:米国特許出願公開第2008/0105384号明細書
甲第6号証:国際公開2018/064340号
甲第7号証:特表2019-536659号公報
甲第8号証:海野文男、外1名(編)、「ビジネス技術実用英語大辞典」、日外アソシエーツ株式会社、1998年12月24日、第686ページ
甲第9号証:新村出(編)、「広辞苑」、第六版、株式会社岩波書店、2008年1月11日、第354ページ
(以下順に「甲1」~「甲9」という。)
第4 当審の判断
1 申立理由1について(甲1を主とする進歩性欠如)
(1) 甲号証の記載及び引用発明
ア 甲1
甲1には以下の記載がある(括弧内は当審で付した訳である。また、下線は当審で付した。以下同様。)。
「
[図:0001416528000001.jpg]
」(第1ページ第19~25行)
(代表的なインサートを形成する際に使用される原材料は、典型的には、セルロースパルプ、ティッシュペーパー、ポリ、不織布ウェブ、アクイジション、及び弾性体であるが、用途に応じた材料が利用されることもある。通常、ほとんどのインサート原料はロール状で提供され、組み立てライン方式で巻き戻されて適用される。)
「
[図:0001416528000002.jpg]
」(第7ページ第14~15行)
(このような接着は、接着剤、超音波、圧力などを用いて行われるが、これらに限定されるものではない。)
「
[図:0001416528000003.jpg]
[図:0001416528000004.jpg]
」(第8ページ第1~9行)
(本発明の別の態様では、弾性体は不織布材料の層内に捕捉され、弾性体は積層体の不織布材料の結合点間の蛇行パターンで不織布層の間に敷かれ捕捉される。この構成では、ロールまたはドラム上の異なる形状及び構成のピンまたは突起が、弾性体を接合点間で蛇行するように促すことができる。言い換えれば、弾性体は、直線、曲線、蛇行、またはそれらの任意の組み合わせの敷設パターンを実行するように仕向けられることができ、特に弾性体が非直線接合点を蛇行している場合、その後、弾性材料と不織布材料との間の摩擦により、その敷設位置に保持される。)
「
[図:0001416528000005.jpg]
」(第8ページ第10~20行)
(回転ドラム上で複数のピンと突起の構成(長方形、曲線、長方形、円形)を異なるパターンで使用することができ、例えば、間隔を変えたパターン、オフセットパターン、曲線パターンなどがあり、弾性体を捕捉している不織布層の接合点を通って蛇行する弾性体の複雑なパターンを確立することができ、弾性体と材料の間の摩擦によって弾性体が十分に保持されるため、積層体を作成するのに必要な弾性体と不織布の間の接着的接合力を最小限に抑えることができる。)
「
[図:0001416528000006.jpg]
」(第10ページ第3~9行)
(図8は、アンビル接合点間のスペースについての弾性ストランドの蛇行経路を促す第2の代替アンビル接合点の構成である(ここでは、第1及び第2の材料層が接着され、短いトンネルが形成され、クリープを制限するためにこれらのトンネル間の弾性体のレース作用を促進する);)
「
[図:0001416528000007.jpg]
[図:0001416528000008.jpg]
[図:0001416528000009.jpg]
」(第11ページ第31行~12ページ第32行)
(図4bに示すように、本発明の代替実施形態では、図4aを参照して説明した形成技術が図4bに側面図で示されている。ピンまたは突起またはアンビル接合点52がアンビルロール50の周りに配置され、弾性糸14がピン52によってテント状にされた不織布層12の上に敷かれる。その結果、弾性体14は、超音波ホーン54に対して作用する点52によって形成される第1及び第2の材料層12及び20のそれぞれの間の接合点に適合することによって、横方向(または機械横断方向)の移動から拘束される。あるいは、接着剤が使用され得る
さらに図4cを参照し、また図5を参照すると、アンビルロール50上の突起52が不織布12を保持し、突起52によって保持された不織布12の部分を上昇させることによってテント効果を生み出す。弾性体14が、機械方向に直線的に移動するのとは対照的に、機械方向に概ね蛇行することを許容されるか、またはそれを促されるのは、これらの隣接し、かつ下流側の接合点の間及びその付近である。弾性体14は、突起52を超えてその周辺を迂回する経路で張力をもって敷設される。弾性体14は、不織布12を突起52の周りに押し下げ、突起52は、第2の不織布層12を第1の不織布12に超音波接着するために使用される。弾性体14は、不織布層12の接合セグメントに対してかなり高い摩擦力を経験するが、これは、弾性体14の接合点に関する蛇行した経路のためであり、材料層12及び20自体に対して、弾性体14がクリープしないようにするためである。)
「
[図:0001416528000010.jpg]
[図:0001416528000011.jpg]
」(第12ページ第33行~第13ページ第12行)
(次に、図4dを参照すると、図3bを参照して説明した形成技術が図4に側面図で示されている。特に、最初に弛緩させた弾性体14と最初に弛緩させた第1の材料層12とを接合ユニット54によって接合点16で接合した後、弾性体14を伸長させることによって第1の材料層12と弾性体層14とを緊張させることができる。第1の材料層12が十分に張った後、第2の材料層20(好ましくは不織布)が積層体12/14に導入され、材料層20と積層体12/14との間で第2の接合操作が行われる。この接合は、接着剤(図示せず)またはドラム70に対して作動する超音波ホーン54によって行うことができる。)
「
[図:0001416528000012.jpg]
」(第13ページ第13~21行)
(次に図6を参照すると、図4及び図5のピン止めされたアンビル配置の代替実施形態が示されており、アンビルロール50についてスロット54が設けられている。第1の不織布層12、及びその上に、弾性体14がスロット54内に敷設され、最上層の不織布層12が敷設され、第1の不織布層12に接着される。これにより、不織布のトンネルが形成され、前述したように、締まった弾性体14がクリープしにくくなる。)
「
[図:0001416528000013.jpg]
[図:0001416528000014.jpg]
」
(第14ページ第30行~第15ページ第3行)
(例えば、図8の第2の代替アンビル接合点構成に示すように、接合点52は、アンビル接合点に関する弾性糸14の迂回経路を促すように間隔を空けることができる(接合点52上に不織布がドレープされる好ましい実施形態では、不織布は図8に示されていないことに留意されたい)。)
「
[図:0001416528000015.jpg]
」(第15ページ第10~25行)
(図9を参照すると、第3の代替アンビル接合点52の構成は、接合点52の隣接する列の間に設けられたオフセットによって機械方向間隔y′、y″及びy″を変化させる。このように、yとxの両方を変化させてトンネルの形成を促し、蛇行する弾性体14を促進することができる。あるいは、図9に示すように、突起は、隣接する列の第1の系列の突起が機械横断方向にずらされないように、ずらすことができる。これにより、弾性体の直線的な走行が促され(図9の先端部分)、機械方向の下流側では、隣接する列の第2の系列が、曲線的な走行
を促すために距離x′だけずらされるか、またはオフセットされ(図9の中間部分)、または、x′及びy′のずらしは、ゴム14の蛇行パターンをもたらすよりランダムであることができる。)
「
[図:0001416528000016.jpg]
[図:0001416528000017.jpg]
」(第15ページ第33行~第16ページ第4行)
(ここで図11を参照すると、三層積層体を形成するために2つの材料12と14と間に含まれる弾性材料14の斜視図が示されている。図から分かるように、弾性体14は、材料層12と14との間の結合点の周囲で蛇行している。)
「
[図:0001416528000018.jpg]
」(第18ページ第2~15行)
(1.積層材料であって、
第1の材料層と、
第2の材料層と、
前記第1の材料層と前記第2の材料層との間に配置された複数の弾性ストランドとを備え、
前記第1の材料層及び前記第2の材料層が、離間した結合点で互いに結合され、
前記弾性ストランドが、前記第1の材料層と前記第2の材料層との間に非線形に置かれ、前記ストランドが、機械横断方向に蛇行し、機械方向線を横断し、前記弾性ストランドが、前記第1の層及び前記第2の層によって前記機械横断方向及び前記機械方向の少なくとも一方への移動を抑制される、積層材料。)
「
[図:0001416528000019.jpg]
」
図4Bからは、超音波ホーン54がアンビルロール50に近接配置されている事項が看取される。
「
[図:0001416528000020.jpg]
」
図4Cからは、アンビルロール50の表面が円筒面であり、当該円筒面上に突起52が配置されている事項が看取される。また、同図からは、破線により示された、超音波ホーン54の位置が、アンビルロール50の円筒面上にある突起52に対応して、近接配置されている事項も看取される。
「
[図:0001416528000021.jpg]
」
「
[図:0001416528000022.jpg]
」
「
[図:0001416528000023.jpg]
」
「
[図:0001416528000024.jpg]
」
「
[図:0001416528000025.jpg]
」
「
[図:0001416528000026.jpg]
」
これらの記載とともに、特に甲1第11ページ第31行~第12ページ第32行及び図4b、図4cに記載された、弾性体14が蛇行している実施形態に着目して総合すると、甲1には以下の発明(以下、それぞれ「甲1発明1」、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
(ア)甲1発明1
「弾性糸14と不織布12を含む、積層材料を製造するための超音波ホーン54及び突起52を備えた装置であって、
超音波ホーン54と、
超音波ホーン54に近接して配置可能で、突起52が周りに配置されたアンビルロール50と
を備え、前記アンビルロール50は回転可能な円筒面を有し、
前記円筒面は、複数の突起52を有し、
前記アンビルロール50は、アンビルロール50上の突起52が不織布12を保持し、突起52によって保持された不織布12の部分を上昇させることによってテント効果を生み出し、弾性体14が機械方向におおむね蛇行することが許容され、弾性糸14が突起52によってテント状にされた不織布層12の上にその周辺を迂回する経路で張力をもって敷かれ、突起52は第2の不織布層20を第1の不織布12に超音波接着する、
超音波結合装置。」
(イ)甲1発明2
「弾性糸14と不織布12を含む、積層材料を製造するための方法であって、
超音波ホーン54と、
超音波ホーン54に回転可能な円筒面を有するアンビルロール50を近接して配置するステップと、
アンビルロール50を回転するステップと、
弾性糸14を供給して、超音波ホーン54及びアンビルロール50の間に、不織布12及び弾性糸14を供給するステップと、
アンビルロール50に設けられた突起52が不織布12を保持し、突起52によって保持された不織布12の部分を上昇させることによってテント効果を生み出し、弾性体14が機械方向におおむね蛇行することが許容され、弾性糸14が突起52によってテント状にされた不織布層12の上にその周辺を迂回する経路で張力をもって敷かれるステップと、
前記不織布12を超音波接合により結合するステップ、を有する、方法。」
イ 甲2
甲2の主に第4欄第56行~第5欄第12行、第13欄第32~56行、第14欄第23~45行及び図8~11には、弾性スレッド112(elastic threads 112)が、弾性スレッド112の連続供給部114(a continuous supply 114)から、スレッドガイド118(thread guides 118)と組になったガイドフィンガー120A及び120B(sets of guide fingers 120A and 120B)を通って供給され、ここで、スレッドガイド118とこれに対応するガイドフィンガー組120Aと120Bで構成される、横方向のガイド122Aと122B(lateral guides 122A and 122B)が、ウェブの機械進行方向に対し横方向に摺動することで、前進するウェブ12と14の機械方向(machine direction of the advancing webs 12 and 14)に対し弾性スレッド112の横方向の位置決めを行なう技術が記載されている。
ウ 甲3
甲3の主に第6欄第65行~第7欄第44行及び図3には、一対のピボットアーム18(pivot arms 18)を横方向に揺動することによって、それぞれのピボットアーム18の各弾性ガイド開口部17(the elastic guide openings 17)でガイドされる弾性部材58(elastic members 58)を湾曲したパターンで適用する技術が記載されている。
エ 甲4
甲4の主に第3欄第16~62行及び図1~2には、リール(a reel)から供給される弾性リボン4(the elastomeric ribbon 4)が、揺動ロール20(the oscillating roll 20)により、横方向に揺動する技術が記載されている。
オ 甲5
甲5の主に段落[0004]及び図3~4には、ダイバータ(the diverter)の回転を振動させることにより、連続ウェブ上の弾性部材の弾性プロファイル(an elastic profile of the elastic member)を変化させる技術が記載されている。
(1)本件発明1について
ア 以下、本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1における「弾性糸14と不織布12を含む、積層材料を製造」は、本件発明1における「少なくとも1本の弾性ストランドを含む弾性不織材料を製造」に相当する。
甲1発明1における「超音波ホーン54」は、その機能にかんがみれば本件発明1の「ホーンモジュール」に相当する。また、甲1発明1の「超音波ホーン54に近接して配置可能」な「アンビルロール50」は、本件発明1における「ホーンモジュールに近接して配置可能なアンビルモジュール」に相当する。
甲1発明1における「アンビルロール50」は、「円筒面」を有するものであるところ、本件発明1と同様、「幅方向に或る幅寸法及び周方向に延在する円周軸」があることは明らかであるし、「回転軸」があることも明らかであるから、甲1発明1の「アンビルロール」は、本件発明1における「幅方向に或る幅寸法及び周方向に延在する円周軸を有するフェイスを含み、かつ回転軸の周りを回転可能であ」るものといえる。
甲1発明1における「複数の突起52」は本件発明1における「複数の突条」と対比して、「突起」が「突条」といえるかどうかかはさておき、「複数の突起」である点に限り相当する。
甲1発明1における「前記アンビルロール50は、アンビルロール50上の突起52が不織布12を保持し、突起52によって保持された不織布12の部分を上昇させることによってテント効果を生み出し、弾性体14が機械方向におおむね蛇行することが許容され、弾性糸14が突起52によってテント状にされた不織布層12の上にその周辺を迂回する経路で張力をもって敷かれ、」という事項は、「アンビルロール」上に「不織布」が保持され、さらに「弾性糸」が「突起周辺を迂回して敷かれる」ものであり、ここで、突起周辺を迂回する経路は、湾曲する曲線といえるし、「弾性糸」が敷かれるのは、「アンビルロール50」の回転に伴って生じるものであるから、本件発明1における「前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールは、前記少なくとも1本の弾性ストランド及び不織材料を受容するように配置され」ている事項及び「前記少なくとも1本の弾性ストランドを、前記アンビルモジュールが回転するとき前記周方向に沿って湾曲する曲線に沿って前記幅方向にわたって誘導するように構成され」ている事項に一応相当する。
甲1発明1における「突起52は第2の不織布層20を第1の不織布12に超音波接着する」という事項は、超音波接着が「超音波ホーン54」の協働によってなされることは明らかであるから、本件発明1における「互いに協働して前記少なくとも1本の弾性ストランド及び前記不織材料を超音波結合する」という事項に関し、「互いに協働して」「前記不織材料を超音波結合する」という点に限り相当する。
イ そうすると、両者の一致点及び相違点は以下の通りである。
<一致点>
少なくとも1本の弾性ストランドを含む弾性不織材料を製造するための超音波結合装置であって、
ホーンモジュールと、
前記ホーンモジュールに近接して配置可能なアンビルモジュールと、
を備え、
前記アンビルモジュールは、幅方向に或る幅寸法及び周方向に延在する円周軸を有するフェイスを含み、かつ回転軸の周りを回転可能であり、
前記フェイスは、複数の突起を有し、
前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールは、前記少なくとも1本の弾性ストランド及び不織材料を受容するように配置され、互いに協働して前記不織材料を超音波結合することで前記弾性不織材料を製造するように構成され、
前記少なくとも1本の弾性ストランドを、前記アンビルモジュールが回転するとき前記周方向に沿って湾曲する曲線に沿って前記幅方向にわたって誘導するように構成されている、超音波結合装置。
<相違点1>
本件発明1は「前記少なくとも1本の弾性ストランドを収容する少なくとも1つのスプールを含む供給ステーション」を備えており、「前記供給ステーションは、前記少なくとも1本の弾性ストランドが前記少なくとも1つのスプールから巻き出されるときに、前記少なくとも1本の弾性ストランドを左右動させるように構成され」ているものであり、さらに「前記少なくとも1つのスプールを含む前記供給ステーションが」「前記少なくとも1本の弾性ストランドを、前記アンビルモジュールが回転するとき前記周方向に沿って湾曲する曲線に沿って前記幅方向にわたって誘導するように構成」されているのに対し、
甲1発明1は「弾性ストランドを収容する少なくとも1つのスプールを含む供給ステーション」を備えているかどうかが明らかでなく、また、「前記少なくとも1本の弾性ストランドを、前記アンビルモジュールが回転するとき前記周方向に沿って湾曲する曲線に沿って前記幅方向にわたって誘導する」ための手段は、アンビルロール50上の突起52が不織布12を保持し、突起52によって保持された不織布12の部分を上昇させることによって生じるテント効果である点。
<相違点2>
本件発明1は「互いに協働して前記少なくとも1本の弾性ストランド及び前記不織材料を超音波結合することで前記弾性不織材料を製造するように構成され」ているのに対し、甲1発明1では「弾性糸」を「不織布」と超音波結合しているとはいえない点。
<相違点3>
「アンビルモジュール」の「フェイス」に設けられた突起に関し、本件発明1は「突条」であるのに対し、甲1発明1は「突起」である点。
ウ 以下、上記相違点1について検討する。
甲1発明1は、上述のとおり、突起22上に不織布12を配置することにより、テント状とし、その上に弾性糸14を敷くことで、テント効果、すなわち、弾性糸14が突起52の部分を避けることで、弾性糸14が蛇行して配置されるものである。そして、突起52は、超音波ホーン54と作用することで、不織布12と不織布20とを超音波接合するものであるところ、接合点を迂回するように配置された弾性糸14は、不織布12との摩擦力により、クリープしないようになっているものである、
そうすると甲1発明1において、突起52により弾性糸14を蛇行して配置可能としているにもかかわらず、あえて供給ステーションにより弾性糸14が蛇行するように誘導する構成を採用する必要がない。してみれば、甲2~5に記載の供給ステーションにより弾性糸を左右に揺動させるという技術的事項を甲1発明1に適用する動機は認められない。
加えて、甲1発明1では、突起52によるテント効果により突起52上に弾性糸14が配置されることを避けるようにされているところ、ここに甲2~5に記載の当該技術的事項を適用した場合、突起52の位置とは無関係に弾性糸14が配置されることになり、その適用について阻害事由も認められる。
したがって、本件発明1は、相違点2~3について検討するまでもなく、甲1発明1及び甲2~甲5に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~4について
本件発明2~4は本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、上記甲1発明1及び甲2~甲5に記載された技術的事項から当業者が容易になし得たものではない。
(3)本件発明5について
ア 本件発明5と甲1発明2とを対比する。
甲1発明2における「弾性糸14と不織布12を含む、積層材料を製造するための方法」は、上記(1)も踏まえると、本件発明5における「不織材料と少なくとも1本の弾性ストランドとを含む弾性不織材料を製造するための方法」に相当する。
甲1発明2における「超音波ホーン54に回転可能な円筒面を有するアンビルロール50を近接して配置するステップ」は、上記(1)を踏まえると、「幅方向に或る幅寸法及び周方向に延在する円周軸を有するフェイスを含むアンビルモジュール」と「ホーンモジュール」に近接して配置するステップであるといえるから、本件発明5における「少なくとも一方が、幅方向に或る幅寸法及び周方向に延在する円周軸を有するフェイスを含むホーンモジュール及びアンビルモジュールを、前記ホーンモジュールを前記アンビルモジュールに近接して配置するステップ」に相当する。
甲1発明2における「アンビルロール50を回転するステップ」は、本件発明5における「前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールの少なくとも一方を回転するステップ」に相当する。
甲1発明2における「弾性糸14を供給して、超音波ホーン54及びアンビルロール50の間に、不織布12及び弾性糸14を供給するステップ」は、本件発明5における「供給ステーションから前記弾性ストランドを供給して、前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールの間に、前記不織材料及び前記少なくとも1本の弾性ストランドを提供するステップ」と対比すると、「前記弾性ストランドを供給して、前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールの間に、前記不織材料及び前記少なくとも1本の弾性ストランドを提供するステップ」に限って相当する。
甲1発明2の「アンビルロール50に設けられた突起52が不織布12を保持し、突起52によって保持された不織布12の部分を上昇させることによってテント効果を生み出し、弾性体14が機械方向におおむね蛇行することが許容され、弾性糸14が突起52によってテント状にされた不織布層12の上にその周辺を迂回する経路で張力をもって敷かれるステップ」は、上記(1)を踏まえると、本件発明5における「前記フェイスの前記幅方向に沿って左右動する態様で前記供給ステーションのスプールから前記弾性ストランドを供給し、前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールの間で、前記周方向に沿って湾曲する曲線に沿って前記少なくとも1本の弾性ストランドを誘導するステップ」及び「前記弾性ストランドは、前記第1の領域及び前記第2の領域の間を前記曲線に沿って延在する」事項と対比して、「前記フェイスの前記幅方向に沿って左右動する態様で前記弾性ストランドを供給し、前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールの間で、前記周方向に沿って湾曲する曲線に沿って前記少なくとも1本の弾性ストランドを誘導するステップ」であり、かつ「前記弾性ストランドは、前記曲線に沿って延在する」という点に限って相当する。
甲1発明2における「前記不織布12を超音波接合により結合するステップ」は、本件発明5における「前記弾性不織材料を第1の領域及び第2の領域で、超音波結合により結合するステップ」と対比して、「前記弾性不織材料を、超音波結合により結合するステップ」という点に限って相当する。
イ そうすると、両者の一致点及び相違点は以下の通りである。
<一致点>
不織材料と少なくとも1本の弾性ストランドとを含む弾性不織材料を製造するための方法であって、
少なくとも一方が、幅方向に或る幅寸法及び周方向に延在する円周軸を有するフェイスを含むホーンモジュール及びアンビルモジュールを、前記ホーンモジュールを前記アンビルモジュールに近接して配置するステップと、
前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールの少なくとも一方を回転するステップと、
前記弾性ストランドを供給して、前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールの間に、前記不織材料及び前記少なくとも1本の弾性ストランドを提供するステップと、
前記フェイスの前記幅方向に沿って左右動する態様で前記弾性ストランドを供給し、前記ホーンモジュール及び前記アンビルモジュールの間で、前記周方向に沿って湾曲する曲線に沿って前記少なくとも1本の弾性ストランドを誘導するステップと、
前記弾性不織材料を、超音波結合により結合するステップを含み、
前記弾性ストランドは、前記曲線に沿って延在する、方法。
<相違点4>
弾性ストランドの供給にあたり、本件発明5は「供給ステーションから前記弾性ストランドを供給して」おり、さらに「前記フェイスの前記幅方向に沿って左右動する態様で前記供給ステーションのスプールから前記弾性ストランドを供給」するものであるのに対し、甲1発明2は、そのような供給がなされているかどうかが不明である点。
<相違点5>
弾性不織布材料の超音波接合にあたり、本件発明5では「異なる突条のパターン」の「第1の領域及び第2の領域」を有し、「記弾性ストランドの少なくとも一部」は「前記第1の領域」と「前記第2の領域」のそれぞれに「捕捉され」るものであって、「前記第1の領域及び前記第2の領域の間を前記曲線に沿って延在」するものであるのに対し、甲1発明2では、そのような事項を有していない点。
ウ 以下、上記相違点4について検討する。
上記(1)ウと同様の理由により、甲1発明1が「弾性糸14」を供給するにあたり、甲2~甲5の記載事項を踏まえても、「供給ステーションにより」「左右動」させて供給させるという事項を適用する動機付けがなく、むしろ阻害事由が認められる。
してみれば、本件発明5は、相違点5について検討するまでもなく、甲1発明2及び甲2~甲5に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明6~7について
本件発明6~7は本件発明5を更に減縮したものであるから、上記本件発明5についての判断と同様の理由により、上記甲1発明及び甲2~甲5に記載された技術的事項から当業者が容易になし得たものではない。
(5)小括
以上のとおり、本件発明1~7は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由1は理由がない。
2 申立理由2について(明確性要件違反)
(1)申立人は特許異議申立書の4(4)エ.(ア)において「請求項1の「前記ホーンモジュールに近接して配置可能なアンビルモジュール」の「配置可能」との記載は、アンビルモジュールがホーンモジュールに近接して配置されない構成を含んでいるが、そのような構成は、明細書中に記載されていないし、不明確な記載である。」と主張している。
ここで、請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要である。
そうすると、請求項1の「前記ホーンモジュールに近接して配置可能なアンビルモジュール」の「配置可能」とは、「アンビルモジュールがホーンモジュールに近接して配置される」という構成を取り得るかどうかが把握できればよく、申立人のいう「アンビルモジュールがホーンモジュールに近接して配置されない構成を含んでいる」かどうか、ということは当該構成に関係しない。
してみると、申立人の主張は採用できない。
(2)また、申立人は特許異議申立書の4(4)エ.(イ)~(ク)においても、本件特許が明確でない旨、主張している。
しかしながら、いずれの主張を踏まえても、本件特許の特許請求の範囲の記載において、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できないほどに第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な記載はみられない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~7は特許法第36条第6項第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由2は理由がない。
3 申立理由3について(分割要件違反に伴う甲6を主とした新規性欠如)
申立人は特許異議申立書の4(4)オ.において「本件特許の請求項1、5及び明細書段落0058には「左右動」との記載がある。この「左右動」の記載は、分割原出願の出願時当初の明細書等(甲第6号証:国際公開2018/064340号)に記載された事項の範囲内ではないので、本件特許は特許法第44条第1項の分割の実体的要件に違反する。」と主張している。
この点に関し、本件特許の明細書には、図23とともに次の記載がある。
「【0058】
図23は、本装置200のアンビルフェイス226の他の実施形態の展開図である。弾性ストランド420は、円周軸276に沿って湾曲した曲線422に沿って、アンビルフェイス226の幅寸法278にわたって延在する。弾性ストランド420は、(図1で示された)供給ステーション102によって、曲線422に沿って誘導され得る。例えば、図1、図2、及び図23を参照すると、供給ステーション102は、アンビル220が回転するときに、弾性ストランド420がアンビルフェイス226上の突条280によって受容されるように弾性ストランド420を往復(左右動)して供給する(巻き出す)ように構成され得る。この往復運動に従って、弾性ストランド420は、それが曲線422に沿って誘導されるように突条280の様々な位置で受容され得る。代替の実施形態として、弾性ストランド420は、弾性不織材料が本明細書に記載されたような機能を果たせる任意の態様で誘導され得る。」
この記載にかんがみれば、弾性ストランド420がアンビルフェイス226上で左右方向に往復動していることを意味することは明らかである。してみれば、この記載は、分割原出願の出願当初の明細書及び図面に記載された範囲のものであるから、これによって分割要件を満たさないとする申立人の主張は理由がない。
そして、本件特許が分割要件違反とはいえない以上、甲6を主とした新規性欠如の主張は成り立たない。
以上のとおりであるから、申立理由3は理由がない。
第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由によって、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700736