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特許異議申立

2024-700618

無機材料の加工に用いる油剤組成物及び加工液

審判番号
2024-700618
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-236614
登録番号
7407591
請求日
2024年07月03日
審決日
2024年10月09日
公報発行日
2024年11月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ユシロ化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】小島 清路
  • 【権利者代理人】鈴木 勝雅
  • 【異議申立人】弁理士法人 河野国際特許商標事務所
審判長/審判官
  • 審判長 関根 裕
  • 審判官 瀬下 浩一
  • 審判官 長谷川 真一
分類
P1651.121-Y (C10M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7407591号発明「無機材料の加工に用いる油剤組成物及び加工液」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7407591号の請求項1-4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許に係る出願は、令和元年12月26日の出願であって、令和5年12月21日に特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、令和6年1月4日に特許掲載公報が発行され、その後、同年7月3日に特許異議申立人 弁理士法人 河野国際特許商標事務所により請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 特許第7407591号の請求項1~4に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 無機材料の加工に用いる油剤組成物であって、 (A)JIS K 2283に準ずる動粘度(40℃)が40mm2/秒以下の油、 (B)カルボン酸、及び (C)塩基性化合物、 を含有し、 前記成分(B)が、(B1)下記一般式(1)で表される化合物と、(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物とを、質量比0:100~45:55で含み、 前記成分(C)が、ヒドロキシ基を有するアミンを含むことを特徴とする油剤組成物。 R1-COOH (1) (式中、R1は炭素数11~21の炭化水素基である。) 【請求項2】 前記成分(B2)が、カルボキシル基を2つ有する化合物、又は、カルボキシル基を3つ有する化合物を含む請求項1に記載の油剤組成物。 【請求項3】 更に、水を含有する請求項1又は2に記載の油剤組成物。 【請求項4】 請求項1から3のいずれか一項に記載の油剤組成物を水で希釈させてなることを特徴とする無機材料加工用加工液。」 第3 特許異議の申立ての理由の概要 特許異議申立人は、後記1の理由を主張するとともに、後記2の証拠方法を提出した。 1 理由(進歩性) 本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 証拠方法 甲第1号証:特開2000-63863号公報 甲第2号証:特開平4-88097号公報 甲第3号証:特開2000-256695号公報 甲第4号証:特開2014-105232号公報 甲第5号証:特開平10-251683号公報 第4 当審の判断 1 甲号証の記載について (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。) 1a「【請求項1】 (A)成分として、ヒドロキシ脂肪酸重縮合物と脂肪酸とのエステル又はその塩;(B)成分として、アルカノールアミン;(C)成分として、脂肪酸、ダイマー酸又は二塩基酸からなる油性剤;を含有する金属加工油組成物。 【請求項2】 更に、極圧剤を含有する請求項1記載の金属加工油組成物。 【請求項3】 水に、(A)成分としてヒドロキシ脂肪酸重縮合物と脂肪酸とのエステル又はその塩、(B)成分としてアルカノールアミン、(C)成分として脂肪酸、ダイマー酸又は二塩基酸からなる油性剤を含有する水溶性金属加工油組成物。 【請求項4】 鉱油、合成油、油脂或いはこれらの混合物から成る基油に、(A)成分としてヒドロキシ脂肪酸重縮合物と脂肪酸とのエステル又はその塩、(B)成分としてアルカノールアミン、(C)成分として脂肪酸、ダイマー酸又は二塩基酸からなる油性剤を含有するエマルジョン型金属加工油組成物。」 1b「【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで、水性金属加工油は、鉱油、油脂、水等の他、脂肪酸、金属石鹸、乳化剤、硫黄や塩素を含有する極圧剤、アミン類等様々な成分を含有するのが一般的であるが、これらの各種成分の中には基材である水や鉱油との相溶性や保存安定性等に問題があるものがあった。特に、多種多様な配合成分の組み合わせからなる加工油剤は配合条件が一定ではないので、安定な配合を見つけ出すには常に困難が付きまとった。そこで本発明者らは鋭意検討し、これまで油性剤又は潤滑剤の一成分として使用されていたリシノール酸誘導体に、加工油全体の配合を安定化させ、時間が経った場合でも配合系全体を安定化させ、分離を防ぐ効果があることを発見した。従って本発明の目的は、配合安定性に優れた金属加工油組成物を提供することにある。」 1c「【0011】本発明の金属加工油組成物は、他の成分を含有してもよい。例えば、界面活性剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、酸化防止剤、油性剤、防錆剤、防腐剤、防食剤、溶剤等が挙げられる。上記(A)、(B)及び(C)成分、更に基油や水等を含有する本発明の金属加工油組成物は、切削加工油又は研削加工油として使用するのに適した組成である。切削加工油又は研削加工油として使用する場合は、上記のような配合の原液を、水で5~100倍程度に希釈して使用される。」 1d「【0013】 【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中、部及び%は特に記載がない限り重量基準である。表1に本発明のソリュブル型加工油の配合例を比較品の配合例とともに、又表2に本発明のエマルジョン型加工油の配合例を比較品の配合例とともに示す。これらの配合について、その配合直後、及び室温で1ヶ月又は3ヶ月保存した後の液の状態を目視で観察して評価した。その結果をそれぞれ表1及び表2に示す。 【0014】尚、表1及び表2の本発明品の配合(実施例1~6)で使用した(A)成分は以下のものである。 重縮合物1:リシノール酸2~3モル縮合物のオレイン酸エステル 重縮合物2:リシノール酸4~5モル縮合物のオレイン酸エステル 重縮合物3:12-ヒドロキシステアリン酸4~5モル縮合物のオレイン酸エステル 【0015】 【表1】 [図:0001416511000001.jpg] 【0016】 【表2】 [図:0001416511000002.jpg] 【0017】尚、表1及び表2において、原液の外観の「透明」、「濁り」、「分離」は、それぞれ以下のような状態を示す。 透明:濁りのない状態 濁り:不溶物が存在し、液の透明性が低下した状態 分離:液が2層に分離しているか、沈殿物が生じている状態」 (2)甲第2号証(以下、「甲2」という。) 2a「特許請求の範囲 下記の一般式(I)で表されるジカルボン酸またはそのアミン塩またはそのアルカリ金属塩1~40重量%と硫黄系極圧剤1~30重量%を含有する金属加工油。 [図:0001416511000003.jpg] (ただし、R1はCOOHまたはHであり、R1がCOOHのときはR2はHであり、R1がHのときはR2はCOOHであるものとする。)」 2b「〔問題点を解決するための手段〕 本発明者らは、上記現状に鑑み、切削性、研削性、塑性加工性に優れるばかりでなく、腐敗性や劣化性、消泡性に優れた金属加工油を見出すべく鋭意検討を重ねた結果、次の一般式(I)で表されるジカルボン酸またはそのアミン塩またはそのアルカリ金属塩1~40重量%と硫黄系極圧剤1~30重量%を含有する金属加工油が上記の目的に使用するのに極めて好適な化合物であることを見出した。 [図:0001416511000004.jpg] (ただし、R1はCOOHまたはHであり、R1がCOOHのときはR2はHであり、R1がHのときはR2はCOOHであるものとする。)」(第2ページ右上欄第14行~左下欄下から第13行) 2c「実施例 1 次の第1表に示した組成の不水溶性切削油をそれぞれ製造し、シェル式高速四球型試験機により荷重摩耗指数(LWI)(ASTM D-2783)の試験を行い、それらの結果を第1表に示した。 なお、表中の添加量は断りのないかぎり重量部を表す。 [図:0001416511000005.jpg] 実施例 2 次の第3表に示す組成のエマルジョン型研切削油をそれぞれ製造し、曽田式振子型油性試験機N2型を用いて25℃における摩擦係数、7日放置後の腐敗臭、鋳物のドライカッティングの切粉を第3表に示す組成のエマルジョン型切研削油に24時間浸漬後の液を切ってシャールに入れ、72時間後の発錆状態を観察した防錆性を測定した。切削性試験はドリルプレス機によりトルク値が10KWになる穴の個数を測定し、評価とした。その切削条件を第2表に、その結果を第3表に示した。 [図:0001416511000006.jpg] [図:0001416511000007.jpg] 」(第3ページ左下欄第7行~第5ページ) (3)甲第3号証(以下、「甲3」という。) 3a「【請求項1】 下記の成分を含有する水溶性金属加工油剤。(A)ヒドロキシ脂肪酸と脂肪酸の脱水縮合物およびヒドロキシ脂肪酸重縮合物と脂肪酸の脱水縮合物なる群から選ばれる少なくとも1種、(B)ヒドロキシ脂肪酸重縮合物およびひまし油誘導体なる群から選ばれる少なくとも1種、および(C)ポリオールエステルおよび(D)二塩基酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種。」 3b「【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題に着目し、切削加工、研削加工をはじめとする、金属加工油剤として用いた場合に、優れた加工性能を示し、かつ、環境にも悪影響を及ぼしにくい金属加工油剤を提供することを目的とする。」 3c「【0034】 【実施例および比較例】以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明する。本発明に使用した成分(A)、(B)、(C)、(D)の内容と、以下の実施例、比較例において使用する記号について表1に記す。表2及び3に示した組成を有する水溶性金属加工油剤を調製した。これらの油剤について以下の実験を行い、それぞれの性能評価を行った。尚、表2にはエマルションタイプの水溶性金属加工油剤の組成を、表3にはソリュブルタイプの水溶性金属加工油剤の組成をそれぞれ示す。また、各表中の組成に関する数値の単位は、重量%である。 【0035】試料の調製 表2及び3に示した組成の水溶性金属加工油剤(原液)をそれぞれ水道水で希釈して10重量%水溶液として試料とした。 硬水希釈安定性試験 調整した硬水(塩化カルシウム2水塩0.757gを蒸留水で希釈し1Lとした水:ドイツ硬度30°,Ca硬度540ppm、JIS K 2221切削油剤 乳化安定性試験参照)を用い、水溶性金属加工油剤(原液)の2重量%希釈液を作り、希釈直後及び、24時間後の状態を確認する。 判定 ○:合 格 透明あるいは白濁状で、クリーム層、油層がない。 ×:不合格 クリーム層、油層等、分離が認められる。 【0036】切削性試験 当該組成物を含有する水溶性金属加工油剤(原液)の10重量%希釈液200Lをマシニングセンターのクーラントタンクに張り込み、下記切削条件で実際と同様、切削実験を行い、タッピングトルクおよび工具の摩耗状態を調べる。そのときの工具の摩耗状態により油剤の良否を判定する。 【0037】 切削諸元 工作機械:マシニングセンターMV-40A(森精機製作所製) 切削工具:ポイントタップ M10×1.5 被切削材:SCM-440 研削条件 切削速度:7.8m/min 送り速度:375mm/min 回転送り:1.5mm/rev 回転数 :250rpm 下穴 :φ8.5mm 切削長 :t=30mm(貫通) n数 :100(トルク値は、n=98,99,100の3回の平均値とした。) 評価 :工具外観、トルク値1400N・cm未満を合格(○)、1400N・cm以上を不合格(×)とする。 【0038】肌あれ性 水溶性金属加工油剤(原液)を2倍に希釈した液を、パッチテストユニット(epitest社製 フィンチャンバー)に1滴滴下し、上腕部にテープで貼り付け、24時間後の皮膚の状態を観察する。以下の判定基準で判定する。 判定基準 3点 : 水泡、丘疹を伴う赤変 2点 : 赤変し、腫れ上がる 1点 : 少し赤変 0.5点 : 疑わしい 0点 : 反応なし 被験者(男子10名)の判定結果を合計する。点数が低いほど皮膚に対する刺激が少なく、肌あれ性が少ないことを示す。5点未満を合格(○)、5点以上を不合格(×)とする。 【0039】表2及び3の実施例および比較例の結果から、本発明の成分を含有した水溶性金属加工油剤(原液)の実施例1~14は、切削性の向上に充分寄与していることが判る。また、肌あれ性も良好な結果を示している。さらに、本発明の水溶性金属加工油剤は、硬水で希釈しても優れた安定性(耐硬水性)を有し、潤滑性が優れている。従って、切削性、研削性の向上に充分寄与できる。 【0040】 【発明の効果】本発明の水溶性金属加工油剤は、従来の金属加工油剤に含まれる塩素系極圧添加剤、硫黄系極圧添加剤、リン系極圧添加剤などの代替品として、特定の重縮合カルボン酸と特定のエステルを含有することにより、塩素系極圧添加剤、硫黄系極圧添加剤、リン系極圧添加剤などを含有した金属加工油剤と同等あるいはそれ以上の切削研削性能を有する。よって、この水溶性金属加工油剤は、切削、研削加工をはじめとする金属加工において、極めて有用である。 【0041】 【表1】 [図:0001416511000008.jpg] 【0042】 【表2】 エマルション [図:0001416511000009.jpg] [図:0001416511000010.jpg] (-)は原液が製造できなかったことを示す。 【0043】 【表3】 ソリュブル [図:0001416511000011.jpg] [図:0001416511000012.jpg] 」 (4)甲第4号証(以下、「甲4」という。) 4a「【請求項1】 (A)アニリン点が85~110℃の鉱油または合成油10~80重量%、 (B)第1級アルカノールアミン1~6重量%、 (C)有機酸化合物4~20重量%、 (D)グリフィンの式から算出されるHLB1~6の非イオン性界面活性剤1~10重量%、及び (E)水 を含有する水溶性切削油剤。」 4b「【0010】 本発明の目的は、上記問題点を解決するためになされたものであり、排水処理性が良好で、且つ設備攻撃性の少ない水溶性切削油剤を提供することである。」 4c「【0021】 鉱油には、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などがあるが、パラフィン系が好ましい。また、合成油としてはポリブテンが挙げられる。また、鉱油又は合成油の動粘度は、40℃において8~60mm2/sであるものが好ましい。(A)成分の配合量は、水溶性切削油剤(原液)全量基準で通常10~80重量%であり、50~70重量%が好ましい。」 4d「【0028】 次に、(C)有機酸化合物について説明する。有機酸化合物には、カルボキシル基を有する有機酸、および、その誘導体が含まれる。有機酸化合物は、上記アルカノールアミンと有機酸アミン塩を形成し、アニオン乳化剤として作用し乳化安定性を高めるとともに、潤滑性を高めて切削加工性を向上させる効果がある。また、有機酸化合物は、ゴムに対して劣化させる傾向があるが、有機酸アミン塩となることで設備攻撃性の問題が解消される。 【0029】 有機酸化合物として、C8~C36モノカルボン酸、C8~C36ジカルボン酸等が挙げられる。C8~C36モノカルボン酸として、オクチル酸、ペラルゴン酸、イソノナン 酸、イソデカン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸等が挙げられる。また、C8~C36モノカルボン酸には、天然物から得られる脂肪酸、例えば、ヤシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸等も含まれる。C8~C36ジカルボン酸として、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられる。有機酸の誘導体としては、ヒマシ油脂肪酸の2~6量体縮合物、硬化ヒマシ油脂肪酸の4量体縮合物、リシノール酸のモノカルボン酸エステル等が含まれる。有機酸化合物の炭素数が7以下の場合には金属を腐食する可能性があり、モノカルボン酸及びジカルボン酸については、炭素数が36より大きいと発泡しやすいという問題がある。 【0030】 (C)成分の配合量は、水溶性切削油剤(原液)全量基準で通常4~20重量%であり、9~13重量%が好ましい。」 4e「【0046】 本発明の水溶性切削油剤は、油剤の原液であり、実使用に際しては1~20重量%程度に水で希釈して用いる。用途としては、特に切削油として有用である。例えば、鋳物、鋼、アルミニウム、またはアルミニウム合金のドリル、リーマ、タップ加工等に用いられる。」 4f「【実施例】 【0047】 以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。 【0048】 実施例及び比較例として、表1~表3に示す各成分を配合し、各種試験を行った。その結果をそれぞれ表1~表3に示す。 【0049】 【表1】 [図:0001416511000013.jpg] 【0050】 【表2】 [図:0001416511000014.jpg] 【0051】 【表3】 [図:0001416511000015.jpg] 」 (5)甲第5号証(以下、「甲5」という。) 5a「【特許請求の範囲】 【請求項1】 潤滑油基油に、(A)アニオン系乳化剤、(B)アルキルアミン化合物、(C)ほう酸アミド化合物、及び(D)ノニオン系乳化剤を配合してなる水溶性金属加工油剤組成物。」 5b「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記観点からなされたもので、油剤寿命の長い切削加工用の潤滑油に好適な水溶性金属加工油剤組成物を提供することを目的とするものである。」 5c「【0005】 【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を説明する。本発明の水溶性金属加工油剤組成物を構成する潤滑油基油としては、鉱油,合成油あるいはこれらの混合物を使用することができる。この鉱油や合成油については、一般に金属加工油の基油として用いられているものであればよく、特に制限はないが、40℃における動粘度が1~50mm2/sの範囲にあるものが好ましく、2~30mm2/sの範囲にあるものがより好ましい。基油の動粘度が高すぎると油剤が被加工物に付着して持ち去られる量が多くなり、経済的でなくなる場合があり好ましくない。逆に、低すぎるとミスト発生により作業性悪化を招く場合があり好ましくない。また、この基油の低温流動性の指標である流動点については特に制限はないが、-10℃以下であるのが好ましい。」 5d「【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。 実施例1~4及び比較例1~3 第1表に示す割合で、基油に各成分を配合し、実施例及び比較例の水溶性切削油剤組成物を調製した。これら実施例と比較例の組成物につき、下記の要領で強制劣化試験(耐腐敗性試験)及び該強制劣化試験前後のタップ加工性の評価を行った。結果を第1表に示す。 【0021】(1)(当審注:「(1)」は○の中に1。)強制劣化試験 タービン油劣化試験に用いるガラス製の円柱管に、30倍に調製した水溶性切削油を300ml,アルミニウム粉3g,鉄粉1g,亜鉛粉0.5g,マグネシウム粉0.5g及び他油を混入させる条件の場合は、他油として摺動面油と油圧油を各15mlずつ加え、95℃,24時間攪拌させた。同時に酸素を3リットル/hr吸入させ、強制的に酸化劣化させた。試験後の水溶性切削油の濃度を求め、劣化度合を確認した。 【0022】(2)(当審注:「(2)」は○の中に2。)タップ加工性 上記の強制劣化試験前後のタップ加工性を下記の条件で行った。 工具:SKH M10×1.5 被削材:A7075(アルミ材) [図:0001416511000016.jpg] 評価法:タッピング効率(%) 【数1】 [図:0001416511000017.jpg] 【0023】 【表1】 [図:0001416511000018.jpg] 【0024】 【表2】 [図:0001416511000019.jpg] 【0025】(注) *1:成分はすべて切削油剤原液としての重量%で示す。 *2:40℃における動粘度8.4mm2/sのパラフィン系鉱油 *3:1-デセンのオリゴマー(40℃における動粘度2.6mm2/s) *4:オレイン酸-ジエタノールアミン塩 *5:オルトほう酸とジエタノールアミンの縮合物 *6:ポリオキシエチレングリコールモノオレイルエーテル *7:ポリオキシプロピレングリコール *8:ソルビタンのオレイン酸エステル *9:防錆防食剤をはじめとするその他の添加剤 第1表より実施例の水溶性切削油剤は比較例のそれと比較して耐腐敗性及び切削加工性ともに優れていることがわかる。」 2 甲号証に記載された発明 (1)甲1に記載された発明(以下、「甲1発明」という。) 甲1には実施例3のエマルジョン型金属加工油組成物として「鉱油:61重量%、石油スルホン酸ナトリウム:5重量%、ノニオン性界面活性剤:5重量%、オレイン酸:2重量%、ダイマー酸:5重量%、トリエタノールアミン:10重量%、重縮合物1:リシノール酸2~3モル縮合物のオレイン酸エステル:5重量%、防腐剤:2重量%及び水:5重量%からなるエマルジョン型金属加工油組成物。」の発明が記載されているといえる(摘記1d参照)。 (2)甲2に記載された発明(以下、「甲2発明」という。) 甲2には実施例2-1のエマルジョン型研切削油として「鉱油:70重量部、石油スルホン酸Na:5重量部、ノニルフェノール系界面活性剤:8重量部、防腐剤:0.5重量部、トリエタノールアミン:6重量部、DA-1550 [図:0001416511000020.jpg] :5重量部、硫化合成マッコウ油:5重量部からなるエマルジョン型研切削油。」の発明が記載されているといえる(摘記2c参照)。 (3)甲3に記載された発明(以下、「甲3発明1」~「甲3発明4」という。) ア 甲3発明1 甲3には実施例1のエマルジョンタイプの水溶性金属加工油剤として「A-1:12ヒドロキシオクタデカン酸2量体とDA-1550の脱水縮合物:10重量%、B-2:12ヒドロキシオクタデカン酸4量体:10重量%、D-1:ダイマー酸とステアリルアルコールのジエステル:10重量%、鉱油:37.5重量%、ヒマシ油脂肪酸:5重量%、ヤシ油脂肪酸:1重量%、トリエタノールアミン:2重量%、モノエタノールアミン:2重量%、石油スルホン酸ソーダ:10重量%、水:10重量%、防腐剤A:2重量%及び腐食防止剤B:0.5重量%からなる水溶性金属加工油剤。」の発明が記載されているといえる(摘記3c参照)。 イ 甲3発明2 甲3には実施例2のエマルジョンタイプの水溶性金属加工油剤として「A-2:12ヒドロキシオクタデカン酸4量体とDA-1550の脱水縮合物:10重量%、B-3:12ヒドロキシオクタデセン酸2量体:5重量%、C-1:トリメチロールプロパントリオレエート:5重量%、D-2:ダイマー酸とラウリルアルコールのジエステル:10重量%、鉱油:20.0重量%、ポリαオレフィン:17.5重量%、ヒマシ油脂肪酸:5重量%、ヤシ油脂肪酸:1重量%、トリエタノールアミン:2重量%、モノエタノールアミン:2重量%、石油スルホン酸ソーダ:10重量%、水:10重量%、防腐剤A:2重量%及び腐食防止剤B:0.5重量%からなる水溶性金属加工油剤。」の発明が記載されているといえる(摘記3c参照)。 ウ 甲3発明3 甲3には実施例3のエマルジョンタイプの水溶性金属加工油剤として「A-3:12ヒドロキシオクタデセン酸2量体とDA-1550の脱水縮合物:10重量%、B-1:12ヒドロキシオクタデカン酸2量体:10重量%、D-1:ダイマー酸とステアリルアルコールのジエステル:5重量%、鉱油:42.5重量%、ヒマシ油脂肪酸:5重量%、ヤシ油脂肪酸:1重量%、トリエタノールアミン:2重量%、モノエタノールアミン:2重量%、石油スルホン酸ソーダ:10重量%、水:10重量%、防腐剤A:2重量%及び腐食防止剤B:0.5重量%からなる水溶性金属加工油剤。」の発明が記載されているといえる(摘記3c参照)。 エ 甲3発明4 甲3には実施例4のエマルジョンタイプの水溶性金属加工油剤として「A-4:12ヒドロキシオクタデカン酸2量体とダイマー酸の脱水縮合物:30重量%、B-3:12ヒドロキシオクタデセン酸2量体:5重量%、D-3:ダイマー酸とオレイルアルコールのジエステル:5重量%、鉱油:27.5重量%、ヒマシ油脂肪酸:5重量%、ヤシ油脂肪酸:1重量%、トリエタノールアミン:2重量%、モノエタノールアミン:2重量%、石油スルホン酸ソーダ:10重量%、水:10重量%、防腐剤A:2重量%及び腐食防止剤B:0.5重量%からなる水溶性金属加工油剤。」の発明が記載されているといえる(摘記3c参照)。 (4)甲4に記載された発明(以下、「甲4発明」という。) 甲4には実施例3の水溶性切削油剤として「40℃動粘度10mm2/sのアニリン点91℃のパラフィン系鉱油:29.4%、40℃動粘度10mm2/sのアニリン点98℃の合成油:30.0%、モノイソプロパノールアミン:3%、ジエタノールアミン:3%、C21ダイマー酸:1%、C9脂肪酸:2%、ひまし油脂肪酸:3%、ひまし油脂肪酸縮合物:6%、オレイルアルコール:7%、非イオン界面活性剤(HO-(EO)m(PO)n(EO)m-H (1) 分子量2500 HLB 2):4%、トリアジン系防腐剤:1.5%、ベンゾトリアゾール:0.1%及び水:10%からなる水溶性切削油剤。」の発明が記載されているといえる(摘記4f参照)。 4 対比・判断 (1)甲1発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲1発明との対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「鉱油」は本件特許発明1の「油」に相当する。 甲1発明の「オレイン酸」及び「ダイマー酸」は、いずれも、本件特許発明1の「(B)カルボン酸」に相当し、甲1発明の「オレイン酸」は、本件特許発明1の「(B1)下記一般式(1)で表される化合物」及び「R1-COOH (1) (式中、R1は炭素数11~21の炭化水素基である。)」に相当し、甲1発明の「ダイマー酸」は本件特許発明1の「(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物」に相当し、甲1発明の「オレイン酸:2重量%、ダイマー酸:5重量%」は、本件特許発明1の「成分(B)が、(B1)下記一般式(1)で表される化合物と、(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物とを、質量比0:100~45:55で含み」を充足する。 甲1発明の「トリエタノールアミン」は本件特許発明1の「(C)塩基性化合物」及び「前記成分(C)が、ヒドロキシ基を有するアミン」に相当する。 甲1発明の「エマルジョン型金属加工油組成物」は本件特許発明1の「無機材料の加工に用いる油剤組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「無機材料の加工に用いる油剤組成物であって、 (A)油、 (B)カルボン酸、及び (C)塩基性化合物、 を含有し、 前記成分(B)が、(B1)下記一般式(1)で表される化合物と、(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物とを、質量比0:100~45:55で含み、 前記成分(C)が、ヒドロキシ基を有するアミンを含むことを特徴とする油剤組成物。 R1-COOH (1) (式中、R1は炭素数11~21の炭化水素基である。)」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 油が、本件特許発明1ではJIS K 2283に準ずる動粘度(40℃)が40mm2/秒以下であるのに対し、甲1発明ではその特定がない点。 (イ)相違点についての検討 甲1発明は、配合安定性に優れた金属加工油組成物を提供することを目的とするものであって(摘記1b参照)、甲1には、ミスト発生の抑制や鉱油の動粘度(40℃)について記載も示唆もされていない。 これに対し、甲4には、水溶性切削油剤において油の動粘度は40℃において8~60mm2/sであるものが好ましいことが記載され(摘記4c参照)、実施例において、40℃動粘度が10mm2/sのもの及び45mm2/sのものが使用されているが(摘記4f参照)、甲4に記載された発明は、排水処理性が良好で、且つ設備攻撃性の少ない水溶性切削油剤を提供することを目的とするものであり(摘記4b参照)、ミスト発生の抑制や、鉱油の動粘度を40mm2/秒以下にする動機付けについては、記載も示唆もないから、甲4に記載された事項に基づいて、甲1発明の鉱油の動粘度を40mm2/秒以下のものとすることが容易とはいえない。 また、甲5には、水溶性金属加工油剤組成物を構成する潤滑油基油として40℃における動粘度が2~30mm2/sの範囲にあるものが好ましいことが記載され(摘記5c参照)、実施例において、40℃動粘度が8.4mm2/sのものが使用されている(摘記5d参照)が、甲5は、油剤寿命の長い切削加工用の潤滑油に好適な水溶性金属加工油剤組成物を提供することを目的とするものであり(摘記5b参照)、甲1発明に甲5に記載された事項を適用する動機付けはないから、甲5に記載された事項に基づいて甲1発明の鉱油の動粘度を40mm2/秒以下のものとすることが容易とはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 甲5には、基油の動粘度が低いとミストが発生することが記載されており(摘記5c参照)、この記載によれば、40℃における動粘度が高い方がミスト発生を抑制できると予測されることも考慮すれば、本件特許発明1の、動粘度(40℃)が40mm2/秒以下である油を含む油剤組成物の方が、動粘度(40℃)が40mm2/秒より大きい油を含む油剤組成物と比較して、ミスト発生を抑制するとの効果は、当業者が本件特許の出願当時に本件発明1の構成が奏するであろうと予測できた効果と比較して、顕著で予測できないものである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、並びに、甲4及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~4 本件特許発明2~4は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明との<相違点1>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~4は、甲1に記載された発明、並びに、甲4及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (2)甲2発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲2発明との対比 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「鉱油」は本件特許発明1の「油」に相当する。 甲2発明の「DA-1550 [図:0001416511000021.jpg] 」は本件特許発明1の「(B)カルボン酸」及び「(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物」に相当し、甲2発明は本件特許発明1の「(B1)下記一般式(1)で表される化合物」及び「R1-COOH (1) (式中、R1は炭素数11~21の炭化水素基である。)」に相当するものを含まないが、甲2発明の「DA-1550 [図:0001416511000022.jpg] :5重量部」は、本件特許発明1の「前記成分(B)が、(B1)下記一般式(1)で表される化合物と、(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物とを、質量比0:100~45:55で含み」を充足する。 甲2発明の「トリエタノールアミン」は本件特許発明1の「(C)塩基性化合物」及び「前記成分(C)が、ヒドロキシ基を有するアミン」に相当する。 甲1発明の「エマルジョン型研切削油」は、金属加工油であるから(摘記2a参照)、本件特許発明1の「無機材料の加工に用いる油剤組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、「無機材料の加工に用いる油剤組成物であって、 (A)油、 (B)カルボン酸、及び (C)塩基性化合物、 を含有し、 前記成分(B)が、(B1)下記一般式(1)で表される化合物と、(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物とを、質量比0:100~45:55で含み、 前記成分(C)が、ヒドロキシ基を有するアミンを含むことを特徴とする油剤組成物。 R1-COOH (1) (式中、R1は炭素数11~21の炭化水素基である。)」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 油が、本件特許発明1ではJIS K 2283に準ずる動粘度(40℃)が40mm2/秒以下であるのに対し、甲2発明ではその特定がない点。 (イ)相違点についての検討 甲2発明は、切削性、研削性、塑性加工性に優れるばかりでなく、腐敗性や劣化性、消泡性に優れた金属加工油を見出すことを目的とするものであって(摘記2b参照)、甲2には、ミスト発生の抑制や鉱油の動粘度(40℃)について記載も示唆もされていない。 これに対し、甲4には、水溶性切削油剤において油の動粘度は40℃において8~60mm2/sであるものが好ましいことが記載され(摘記4c参照)、実施例において、40℃動粘度が10mm2/sのもの及び45mm2/sのものが使用されているが(摘記4f参照)、甲4に記載された発明は、排水処理性が良好で、且つ設備攻撃性の少ない水溶性切削油剤を提供することを目的とするものであり(摘記4b参照)、ミスト発生の抑制や、鉱油の動粘度を40mm2/秒以下にする動機付けについては、記載も示唆もないから、甲4に記載された事項に基づいて、甲2発明の鉱油の動粘度を40mm2/秒以下のものとすることが容易とはいえない。 また、甲5には、水溶性金属加工油剤組成物を構成する潤滑油基油として40℃における動粘度が2~30mm2/sの範囲にあるものが好ましいことが記載され(摘記5c参照)、実施例において、40℃動粘度が8.4mm2/sのものが使用されている(摘記5d参照)が、甲5は、油剤寿命の長い切削加工用の潤滑油に好適な水溶性金属加工油剤組成物を提供することを目的とするものであり(摘記5b参照)、甲2発明に甲5に記載された事項を適用する動機付けはないから、甲5に記載された事項に基づいて甲2発明の鉱油の動粘度を40mm2/秒以下のものとすることが容易とはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)のとおり、本件特許発明1により奏される効果は、当業者が本件特許の出願当時に本件発明1の構成が奏するであろうと予測できた効果と比較して、顕著で予測できないものである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明、並びに、甲4及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~4 本件特許発明2~4は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲2発明との<相違点2>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~4は、甲2に記載された発明、並びに、甲4及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (3)甲3発明1~4を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲3発明1~4との対比 本件特許発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明1~4の「鉱油」は本件特許発明1の「油」に相当する。 甲3発明1の「A-1:12ヒドロキシオクタデカン酸2量体とDA-1550の脱水縮合物」、甲3発明2の「A-2:12ヒドロキシオクタデカン酸4量体とDA-1550の脱水縮合物」、甲3発明3の「A-3:12ヒドロキシオクタデセン酸2量体とDA-1550の脱水縮合物」及び「A-4:12ヒドロキシオクタデカン酸2量体とダイマー酸の脱水縮合物」は、ヒドロキシ脂肪酸重縮合物は何量体であっても水酸基とカルボキシル基の数は1つずつなので、DA-1550(構造は甲2発明参照。)及びダイマー酸は二塩基酸なので、両者の反応物はカルボキシル基を2つ持つから、いずれも、本件特許発明1の「(B)カルボン酸」及び「(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物」に相当し、甲3発明1~4の「ヒマシ油脂肪酸及びヤシ油脂肪酸」は、本件特許発明1の「(B1)下記一般式(1)で表される化合物」及び「R1-COOH (1) (式中、R1は炭素数11~21の炭化水素基である。)」に相当する化合物を含有するから、「(B)カルボン酸」に相当し、甲3発明1の「A-1:12ヒドロキシオクタデカン酸2量体とDA-1550の脱水縮合物:10重量%」、甲3発明2の「A-2:12ヒドロキシオクタデカン酸4量体とDA-1550の脱水縮合物:10重量%」、甲3発明3の「A-3:12ヒドロキシオクタデセン酸2量体とDA-1550の脱水縮合物:10重量%」及び「A-4:12ヒドロキシオクタデカン酸2量体とダイマー酸の脱水縮合物:30重量%」に対して、甲3発明1~4の「ヒマシ油脂肪酸:5重量%、ヤシ油脂肪酸:1重量%」であるから、甲3発明1~4は本件特許発明1の「前記成分(B)が、(B1)下記一般式(1)で表される化合物と、(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物とを、質量比0:100~45:55で含み」を充足する。 甲3発明1~4の「トリエタノールアミン」及び「モノエタノールアミン」は、いずれも、本件特許発明1の「(C)塩基性化合物」及び「前記成分(C)が、ヒドロキシ基を有するアミン」に相当する。 甲3発明1~4の「水溶性金属加工油剤」は本件特許発明1の「無機材料の加工に用いる油剤組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲3発明1~4は、「無機材料の加工に用いる油剤組成物であって、 (A)油、 (B)カルボン酸、及び (C)塩基性化合物、 を含有し、 前記成分(B)が、(B1)下記一般式(1)で表される化合物と、(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物とを、質量比0:100~45:55で含み、 前記成分(C)が、ヒドロキシ基を有するアミンを含むことを特徴とする油剤組成物。 R1-COOH (1) (式中、R1は炭素数11~21の炭化水素基である。)」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 油が、本件特許発明1ではJIS K 2283に準ずる動粘度(40℃)が40mm2/秒以下であるのに対し、甲3発明1~4ではその特定がない点。 (イ) 相違点についての検討 甲3発明1~4は、切削加工、研削加工をはじめとする、金属加工油剤として用いた場合に、優れた加工性能を示し、かつ、環境にも悪影響を及ぼしにくい金属加工油剤を提供することを目的とするものであって(摘記3b参照)、甲3には、ミスト発生の抑制や鉱油の動粘度(40℃)について記載も示唆もされていない。 これに対し、甲4には、水溶性切削油剤において油の動粘度は40℃において8~60mm2/sであるものが好ましいことが記載され(摘記4c参照)、実施例において、40℃動粘度が10mm2/sのもの及び45mm2/sのものが使用されているが(摘記4f参照)、甲4に記載された発明は、排水処理性が良好で、且つ設備攻撃性の少ない水溶性切削油剤を提供することを目的とするものであり(摘記4b参照)、ミスト発生の抑制や、鉱油の動粘度を40mm2/秒以下にする動機付けについては、記載も示唆もないから、甲4に記載された事項に基づいて、甲3発明1~4の鉱油の動粘度を40mm2/秒以下のものとすることが容易とはいえない。 また、甲5には、水溶性金属加工油剤組成物を構成する潤滑油基油として40℃における動粘度が2~30mm2/sの範囲にあるものが好ましいことが記載され(摘記5c参照)、実施例において、40℃動粘度が8.4mm2/sのものが使用されている(摘記5d参照)が、甲5は、油剤寿命の長い切削加工用の潤滑油に好適な水溶性金属加工油剤組成物を提供することを目的とするものであり(摘記5b参照)、甲3発明1~4に甲5に記載された事項を適用する動機付けはないから、甲5に記載された事項に基づいて甲3発明1~4の鉱油の動粘度を40mm2/秒以下のものとすることが容易とはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)のとおり、本件特許発明1により奏される効果は、当業者が本件特許の出願当時に本件発明1の構成が奏するであろうと予測できた効果と比較して、顕著で予測できないものである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲3に記載された発明、並びに、甲4及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~4 本件特許発明2~4は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲3発明1~4との<相違点3>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~4は、甲3に記載された発明、並びに、甲4及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (4)甲4発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲4発明との対比 本件特許発明1と甲4発明を対比する。 甲4発明の「40℃動粘度10mm2/sのアニリン点91℃のパラフィン系鉱油」及び「40℃動粘度10mm2/sのアニリン点98℃の合成油」は、いずれも、本件特許発明1の「(A)JIS K 2283に準ずる動粘度(40℃)が40mm2/秒以下の油」に相当する。 甲4発明の「モノイソプロパノールアミン」及び「ジエタノールアミン」は、いずれも、本件特許発明1の「(C)塩基性化合物」及び「前記成分(C)が、ヒドロキシ基を有するアミン」に相当する。 甲4発明の「C21ダイマー酸」は本件特許発明1の「(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物」に相当し、甲4発明の「ひまし油脂肪酸」は、炭素数の少ない方からパルミチン酸~リシノレイン酸までの脂肪酸からなり、本件特許発明1の「(B1)下記一般式(1)で表される化合物」及び「R1-COOH (1) (式中、R1は炭素数11~21の炭化水素基である。)」(パルミチン酸はR1の炭素数が15、リシノレイン酸はR1の炭素数が17)に相当し、甲4発明の「C21ダイマー酸」及び「ひまし油脂肪酸」は、いずれも、本件特許発明1の「(B)カルボン酸」に相当する。 甲4発明の「水溶性切削油剤」は、鋳物、鋼、アルミニウム、またはアルミニウム合金のドリル、リーマ、タップ加工等に用いられるものであるから(摘記4e参照)、本件特許発明1の「無機材料の加工に用いる油剤組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲4発明は、「無機材料の加工に用いる油剤組成物であって、 (A)JIS K 2283に準ずる動粘度(40℃)が40mm2/秒以下の油、 (B)カルボン酸、及び (C)塩基性化合物、 を含有し、 前記成分(B)が、(B1)下記一般式(1)で表される化合物と、(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物とを、含み、 前記成分(C)が、ヒドロキシ基を有するアミンを含むことを特徴とする油剤組成物。 R1-COOH (1) (式中、R1は炭素数11~21の炭化水素基である。)」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4> (B1)と(B2)の質量比が、本件特許発明1では0:100~45:55であるのに対し、甲4発明では3:1(ひまし油脂肪酸:ダイマー酸)である点。 (イ)相違点についての検討 甲4発明は、排水処理性が良好で、且つ設備攻撃性の少ない水溶性切削油剤を提供することを目的とするものであって(摘記4b参照)、甲4には、ひまし油脂肪酸及びダイマー酸の質量比については記載も示唆もない。 これに対し、前記(1)ア(ア)、前記(2)ア(ア)及び前記(3)ア(ア)で検討したとおり、甲1に記載のエマルジョン型金属加工油組成物、甲2に記載のエマルジョン型研切削油及び甲3に記載の水溶性金属加工油剤は、いずれも、本件特許発明1の「(B1)下記一般式(1)で表される化合物と、(B2)炭素原子数が15以上であり、カルボキシル基を2つ以上有する化合物とを、質量比0:100~45:55で含み」を充足するものであるが、甲1は配合安定性に優れた金属加工油組成物を提供することを目的とするものであり(摘記1b参照)、甲2は、切削性、研削性、塑性加工性に優れるばかりでなく、腐敗性や劣化性、消泡性に優れた金属加工油を見出すことを目的とするものであり(摘記2b参照)、甲3は、切削加工、研削加工をはじめとする、金属加工油剤として用いた場合に、優れた加工性能を示し、かつ、環境にも悪影響を及ぼしにくい金属加工油剤を提供することを目的とするものである(摘記3b参照)。 そうすると、甲4発明に甲1~甲3に記載された事項を適用する動機付けはないから、甲1~3に記載された事項に基づいて甲4発明のひまし油脂肪酸及びダイマー酸の質量比を0:100~45:55とすることが容易とはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)のとおり、本件特許発明1により奏される効果は、当業者が本件特許の出願当時に本件発明1の構成が奏するであろうと予測できた効果と比較して、顕著で予測できないものである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲4に記載された発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~4 本件特許発明2~4は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲4発明との<相違点4>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~4は、甲4に記載された発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立人による特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700618

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