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特許異議申立

2024-700457

芋焼酎

審判番号
2024-700457
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-549419
登録番号
7382335
請求日
2024年05月15日
審決日
2024年12月19日
公報発行日
2025年04月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】山本 修
  • 【権利者代理人】宮前 徹
  • 【権利者代理人】松尾 淳一
  • 【権利者代理人】鶴喰 寿孝
  • 【異議申立人】中川 雅貴
審判長/審判官
  • 審判長 淺野 美奈
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 松本 陶子
分類
P1651.121-YAA(C12H) / P1651.537-YAA(C12H) / P1651.113-YAA(C12H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7382335号発明「芋焼酎」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7382335号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを認める。 特許第7382335号の請求項1及び2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7382335号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)9月27日(優先権主張 平成30年9月28日)を国際出願日とする出願であって、令和5年11月8日にその特許権の設定登録(請求項の数2)がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年5月15日に特許異議申立人 中川 雅貴(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1及び2)がされ、同年7月8日付けで取消理由が通知され、同年9月6日に特許権者 サントリーホールディングス株式会社から訂正の請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月18日に手続補正書(方式)が提出され、同年10月4日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対して特許異議申立人から応答がなかったものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和6年9月18日に提出された手続補正書(方式)により補正された同年同月6日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 請求項1において、「ゲラニオールが120ppb~660ppb」との記載を、「ゲラニオールが150ppb~660ppb」に訂正する。併せて請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 請求項1において、「フルフラールが7.0ppm以下」との記載を、「フルフラールが3.0ppm以下」に訂正する。併せて請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 請求項1において、「である、芋焼酎。」との記載の前に、「であり、そして、全体のアルコール度数が40%以上の原酒を用いたもの」との記載を追加する訂正をする。併せて請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1についての訂正について 訂正事項1及び2による請求項1についての訂正は、いずれも数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項3による請求項1についての訂正は、「芋焼酎」の原料を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし3による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)請求項2についての訂正について 訂正事項1ないし3による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし3による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1ないし3による請求項1及び2についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1ないし3による請求項1及び2についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1及び2は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1ないし3による請求項1及び2についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1及び2に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 芋焼酎であって、 ゲラニオールが150ppb~660ppb、 フェニルエチルアルコールが60ppm以下、及び フルフラールが3.0ppm以下、 であり、そして、全体のアルコール度数が40%以上の原酒を用いたものである、前記芋焼酎。 【請求項2】 芋焼酎の製造方法であって、 一次仕込み工程により一次醪を得、 該一次醪を二次仕込み工程に供し、二次醪を得、 該二次醪を蒸留する工程、該蒸留工程は留液全体のアルコール度数が40%以上になるまで行い、原酒を得、 該原酒に加水する、 を含む、 該芋焼酎は請求項1に記載の芋焼酎である、前記製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等 令和6年5月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第9号証に基づく進歩性) 本件特許発明1及び2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(甲第10号証に基づく進歩性) 本件特許発明1及び2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第10号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件明細書には、「ゲラニオールが120ppb~660ppb、 フェニルエチルアルコールが60ppm以下、及び フルフラールが7.0ppm以下」という3種類の変数が示す範囲内であれば、従来にない、キレがあり、かつふくよかな芋の香りを有する芋焼酎が提供することができると、当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。 試験例4では、原酒1~7のゲラニオールの濃度が記載されていない。そのため、キレとふくよかな芋の香りを示すアルコール度数40%以上の原酒を用いた試料が、「ゲラニオールが120ppb~660ppb、 フェニルエチルアルコールが60ppm以下、及び フルフラールが7.0ppm以下」を充足するかどうかは不明であり、3種類の変数が示す範囲内であれば、従来にない、キレがあり、かつふくよかな芋の香りを有する芋焼酎が提供することができると、当業者が認識することができない。 つまり、本件特許発明1又は2の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 5 証拠方法 甲第1号証:高峯和則ら「本格いも焼酎用原料甘藷の特性に関する研究-ヤニおよびタンパク質含量と酒質の関係-」、鹿児島県工業技術センター研究報告第14号、2000年、25~30頁及び公開情報のスクリーンショット、https://www.kagoshima-it.jp/pdf/kenkyu_report/k_report_2000_06.pdf、2001年11月、鹿児島県工業技術センター 甲第2号証:向井伸彦ら「第40回本格焼酎・泡盛鑑評会について」、酒類総合研究所報告原報第190号(2018年)、第19~34頁及び公開情報のスクリーンショット、https://www.nrib.go.jp/data/pdf/nr1/190-02.pdf、2018年9月、酒類総合研究所 甲第3号証:「本格焼酎編 第I章 一般成分」、醸造物の成分、財団法人日本醸造協会、平成11年12月10日発行、第109~111頁、115~118頁、及び124~128頁、表紙及び奥付、財団法人日本醸造協会 甲第4号証:特開2005-287357号公報 甲第5号証:特開2010-207217号公報 甲第6号証:▲高▼(当審注:はしごだか)峯和則ら「芋焼酎の風味に寄与する因子について」、日本醸造協会誌第103巻第8号、第601~606頁、2008年及び公開情報のスクリーンショット、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/103/8/103_8_601/_pdf/-char/ja、2008年8月15日、日本醸造協会 甲第7号証:野白喜久雄ら「旧式焼酎の製造に関する研究(第2報)各蒸溜区分の成分と品質について及び蒸溜方法に関する考察」、日本釀造協會雜誌第51巻第12号、第906~898頁、1956年及び公開情報のスクリーンショット、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/51/12/51_12_906/_pdf/-char/ja、1956年、日本醸造協會 甲第8号証:菅間誠之助ら「醸造技術(しょうちゅう乙類) V蒸留」、日本醸造協会雑誌第64巻第4号、第303~308頁、1969年及び公開情報のスクリーンショット、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/64/4/64_4_303/_pdf/-char/ja、1969年4月15日、日本醸造協會 甲第9号証:山本英樹ら「新しい加工用米(み系358)を用いた芋焼酎試験醸造と実用化」、研究報告第60号、宮崎県工業技術センター、宮崎県食品開発センター、2017年3月、第51~55頁及び公開情報のスクリーンショット、https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010911765.pdf、2017年3月、宮崎県工業技術センター:宮崎県食品開発センター 甲第10号証:特開平8-266266号公報 証拠の表記は、特許異議申立書及び証拠説明書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由の概要 令和6年7月8日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(甲1に基づく進歩性) 本件特許発明1は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由1のうちの請求項1に対する進歩性とおおむね同旨である。 2 取消理由2(甲9に基づく進歩性) 本件特許発明1は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲9に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由2のうちの請求項1に対する理由とおおむね同旨である。 3 取消理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者は「ゲラニオールが120ppb~660ppb、 フェニルエチルアルコールが60ppm以下、及び フルフラールが7.0ppm以下」という条件及び「全体のアルコール度数が38%以上の原酒を用いる」という条件を満たしている「芋焼酎」は、本件特許発明1の解決しようとする課題を解決できると認識できる。 しかし、本件特許発明1は、「ゲラニオールが120ppb~660ppb、 フェニルエチルアルコールが60ppm以下、及び フルフラールが7.0ppm以下」という条件は満たすものの、「全体のアルコール度数が38%以上の原酒を用いる」という条件は満たしていない。 したがって、本件特許発明1は本件特許発明1の解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできず、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するものであるとはいえない。 第6 取消理由についての当審の判断 1 主な証拠に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、おおむね次の事項が記載されている。 ・No.1~10という所定の品種の甘藷(第25ページ右欄表1)を原料として本格いも焼酎を製造し、官能評価及び成分分析を行ったこと(第25ページ左欄「1. 緒言」)。 ・いも焼酎の原酒は、一次仕込みとして米麹(第26ページ表2には米と表記されているが、製造対象が本格いも焼酎であり、米という表記は米麹を意味している。)及び仕込み水に鹿児島5号酵母を添加し、二次仕込みとして第25ページ右欄表1に示す品種の甘藷を添加し、二次仕込み後9~11日目で蒸留し、Brix(計)3.0となったところで末だれカットを行い蒸留を終了して、製造されていること(第26ページ左欄「2.3 小仕込み試験」及び「2.4 蒸留」)。 ・官能評価は、調製した原酒を蒸留水でアルコール25%に調製し、パネラー13人が香味についてコガネセンガン(No.1)と比較し行われていること(第26ページ左欄「2.5 官能評価」)。 ・香気成分の分析は、得られた焼酎を25%に調整したものについて瀬戸口らの方法に従って行われていること(第27ページ右欄「3.3 焼酎の香気成分」)。 ・原料No.4のいも焼酎のβ-フェニルエチルアルコール濃度が51mg/lであったこと(第28ページの表6のNo.4の行、β-PhOHの列)。 ・原料No.4のいも焼酎のゲラニオール濃度が122μg/lであったこと(第28ページの表7のNo.4の行、ゲラニオールの列)。 ・第28ページ右欄の表8及び表9に示された官能評価結果を参照して、原料No.4のいも焼酎の香りは5人が華やかと評価し、味は5人が辛い、4人が渋いと評価したこと(第28ページ右欄「3.4 官能評価」)。 イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特に原料No.4のいも焼酎に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「β-フェニルエチルアルコール濃度が51mg/lであり、ゲラニオール濃度が122μg/lである、いも焼酎。」 (2)甲9に記載された事項等 ア 甲9に記載された事項 甲9には、おおむね次の事項が記載されている。 ・加工用米「み系358」を焼酎麹用原料として使用して、芋焼酎の工場規模試験醸造、成分分析および、官能評価を行ったこと(第51ページ要約第1ないし2行)。 ・製麹は、精白した新米1600kgを使用し、浸漬及び後蒸しを行い、種麹として河内黒麹菌(Aspergillus luchuensis)または河内白麹菌(Aspergillus kawachii)を使用し、ドラム製麹機で40時間製麹が行われ、得られた麹に宮崎酵母(MK021)を加えて1週間発酵させて1次もろみを得、熟成1次もろみを4分割したものに主原料のコガネセンガン2000kgずつを加えて9日間発酵させて2次もろみを得、熟成2次もろみを常圧蒸留して芋焼酎を得たこと(第52ページ左欄「2-2 芋焼酎工場規模試験醸造」)。 ・得られた芋焼酎28度の成分分析は、一般香気成分についてはガスクロマトグラフ(島津製作所製GC2010 Plus)を用いてヘッドスペース法にて、モノテルペンアルコールおよびβ-ダマセノンについてはガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所製GCMS-QP2010 Plus)を用いて、ヘッドスペース固相マイクロ抽出(Solid Phase Micro Extraction : SPME)法で測定試料を調製して、行われていること(第52ページ左欄「2-3 芋焼酎の成分分析」)。 ・芋焼酎28度の官能評価は、焼酎官能評価経験者6名をパネリストとして5点法(1:秀、2:優、3:良、4:可、5:不可)により行われていること(第52ページ右欄「2-4 芋焼酎の官能評価」)。 ・焼酎原酒のアルコール分が39.3%であること(第53ページ左欄表3)。 ・「み系358」製(黒麹)のフルフラール濃度は7,977μg/Lであること(第53ページ右欄表4)。 ・「み系358」製(黒麹)のβ-フェネチルアルコール濃度は61mg/Lであること(第54ページ表5)。 ・「み系358」製(黒麹)のゲラニオール濃度は163μg/Lであること(第54ページ表6)。 ・「み系358」製(黒麹)は対照の2.8と比較して1.8と評価が高く、特に、評価者6名中6名が甘みを、5名が旨味を、4名が原料特性を認めており、キレありとも評価され、また、コゲ臭、渋味及び苦味が認められていること(第55ページ表7)。 イ 甲9に記載された発明 甲9に記載された事項を、特に加工用米「み系358」を焼酎麹用原料として使用した芋焼酎に関して整理すると、甲9には次の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されていると認める。 <甲9発明> 「フルフラール濃度が7,977μg/Lであり、β-フェネチルアルコール濃度が61mg/Lであり、ゲラニオール濃度が163μg/Lであり、焼酎原酒のアルコール分が39.3%である、芋焼酎。」 2 取消理由1(甲1に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 「μg/l」は「ppb」と同義であるから、甲1発明における「ゲラニオール濃度」は「122ppb」となり、本件特許発明1における「ゲラニオールが150ppb~660ppb」の発明特定事項の条件を満たさない。 「β-フェニルエチルアルコール」は「フェニルエチルアルコール」の別名であり、「mg/l」は「ppm」と同義であるから、甲1発明における「フェニルエチルアルコール濃度」は「51ppm」となり、本件特許発明1における「フェニルエチルアルコールが60ppm以下」の発明特定事項の条件を満たす。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「芋焼酎であって、 フェニルエチルアルコールが60ppm以下、 である、前記芋焼酎。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-1a> 本件特許発明1においては、「ゲラニオールが150ppb~660ppb」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1-1b> 本件特許発明1においては、「フルフラールが3.0ppm以下」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1-1c> 本件特許発明1においては、「全体のアルコール度数が40%以上の原酒を用いたもの」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点1-1aについて検討する。 甲1には、甲1発明において、「ゲラニオール」を「122μg/l(ppb)」から「150ppb~660ppb」の範囲内に収まるように調整する動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもそのような動機付けとなる記載はない。 したがって、甲1発明において、相違点1-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明によって得られる芋焼酎は、キレがあり、かつふくよかな香りを有する。」(発明の詳細な説明の【0036】)という、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)取消理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。 3 取消理由2(甲9に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲9発明を対比する。 「μg/L」は「ppb」と同義であるから、甲9発明における「ゲラニオール濃度」は「163ppb」となり、本件特許発明1における「ゲラニオールが150ppb~660ppb」の発明特定事項の条件を満たす。 「mg/L」は「ppm」と同義であるから、甲9発明における「β-フェネチルアルコール濃度」は「61ppm」となり、本件特許発明1における「フェニルエチルアルコールが60ppm以下」の発明特定事項の条件を満たさない。 「μg/L」は「ppb」と同義であり、「1ppm」は「1000ppb」と同義であるから、甲9発明における「フルフラール濃度」は「7.977ppm」となり、本件特許発明1における「フルフラールが3.0ppm以下」の発明特定事項の条件を満たさない。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「芋焼酎であって、 ゲラニオールが150ppb~660ppb、 である、前記芋焼酎。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点9-1a> 本件特許発明1においては、「フェニルエチルアルコールが60ppm以下」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点9-1b> 本件特許発明1においては、「フルフラールが3.0ppm以下」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点9-1c> 本件特許発明1においては、「全体のアルコール度数が40%以上の原酒を用いたもの」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点9-1aないし9-1cについて検討する。 甲1には、甲1発明において、「ゲラニオール濃度」を「163ppb」から変えることなく、又は変えるとしても「150ppb~660ppb」の範囲内に収まるようにした上で、「β-フェネチルアルコール濃度」を「61mg/L(61ppm)」から「60ppm以下」に変え、「フルフラール濃度」を「7,977μg/L(7.977ppm)」から「3ppm以下」に変え、更に「アルコール分が39.3%である」「焼酎原酒」から「全体のアルコール度数が40%以上の原酒」を用いるようにする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもそのような動機付けとなる記載はない。 したがって、甲9発明において、相違点9-1aないし9-1cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明によって得られる芋焼酎は、キレがあり、かつふくよかな香りを有する。」という、甲9発明並びに甲9及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲9発明並びに甲9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)取消理由2についてのむすび したがって、本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、取消理由2によっては取り消すことはできない。 4 取消理由3(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)サポート要件の判断 ア 特許請求の範囲の請求項1の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3の【請求項1】のとおりである。 イ 判断 本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0002】ないし【0004】によると、本件特許発明1の解決しようとする課題は「キレがあり、かつふくよかな芋の香りを有する芋焼酎」を提供することである(以下、「発明の課題1」という。)。 発明の詳細な説明の【0005】には、「芋焼酎の特定の成分がキレやふくよかな芋の香りに関与することを見出した。」と記載され、同箇所及び同【0024】には、本件特許発明1に対応する記載がある。 発明の詳細な説明の【0024】には、「全体のアルコール度数」が「38%以上」の原酒を用いることで、芋焼酎のキレやふくよかな芋の香りを感じやすくすることができることが記載されている。 発明の詳細な説明の【0026】には、「ゲラニオール濃度」が「120ppb~660ppb」、「フルフラール濃度」が「7.0ppm以下」及び「フェニルエチルアルコール濃度」が「60ppm以下」であることの技術的意義が記載されている。 発明の詳細な説明の【0037】ないし【0054】には、「フルフラール」と「フェニルエチルアルコール」は、芋焼酎において、ふくよかな芋の香りにネガティブに関与する成分であることを具体的に確認し、「フルフラール濃度」が「7.0ppm以下」が好ましく、「フェニルエチルアルコール濃度」が「60ppm以下」が好ましいと考えられることを裏付ける記載がある。 発明の詳細な説明の【0055】ないし【0057】には、「ゲラニオール」は、芋焼酎において、ふくよかな芋の香りにポジティブに関与する成分であることを具体的に確認し、「ゲラニオール濃度」が「120ppb~660ppb」の範囲が好ましいと考えられることを裏付ける記載がある。 発明の詳細な説明の【0060】ないし【0067】には、「全体のアルコール度数が36%の原酒」を用いた場合には、キレとふくよかな芋の香りはほとんど感じられず、「全体のアルコール度数が38%以上の原酒」を用いた場合に、キレとふくよかな芋の香りが感じられることを確認する記載がある。 そうすると、発明の詳細な説明の上記記載から、当業者は「ゲラニオールが120ppb~660ppb、 フェニルエチルアルコールが60ppm以下、及び フルフラールが7.0ppm以下であり、そして、全体のアルコール度数が38%以上の原酒を用いたものである」という条件を満たしている「芋焼酎」は、発明の課題1を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1は当業者が発明の課題1を解決できると認識できる上記「芋焼酎」をさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (3)取消理由3についてのむすび したがって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由3によっては取り消すことはできない。 第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は次のとおりである。 ・申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項1に対する新規性及び請求項2に対する進歩性 ・申立理由2(甲9に基づく進歩性)のうちの請求項2に対する進歩性 ・申立理由3(甲10に基づく進歩性) ・申立理由4(サポート要件)(当審注:取消理由3とは根拠が異なるものである。) 以下、順に検討する。 1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項1に対する新規性及び請求項2に対する進歩性について (1)本件特許発明1について 上記第6 2(1)アのとおり、本件特許発明1と甲1発明の間には、相違点1-1aないし1-1cがあるから、本件特許発明1は甲1発明であるとはいえない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2は請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。 そして、上記第6 2(1)ウのとおり、本件特許発明1が甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものである以上、本件特許発明2も甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものである。 (3)申立理由1のうち請求項1に対する新規性及び請求項2に対する進歩性についてのむすび したがって、本件特許発明1は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明2は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1のうちの請求項1に対する新規性及び請求項2に対する進歩性によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(甲9に基づく進歩性)のうちの請求項2に対する進歩性について (1)本件特許発明2について 本件特許発明2は請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。 そして、上記第6 3(1)ウのとおり、本件特許発明1が甲9発明並びに甲9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものである以上、本件特許発明2も甲9に記載された発明並びに甲9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものである。 (3)申立理由2のうちの請求項2に対する進歩性についてのむすび したがって、本件特許発明2は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項2に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2のうちの請求項2に対する進歩性によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(甲10に基づく進歩性)について (1)甲10に記載された事項等 ア 甲10に記載された事項 甲10には、「甘藷焼酎の製造方法」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「【0020】実 施 例 2 甘 藷 焼 酎 仕 込 試 験 : (1)仕込み方法 ・・・(略)・・・一方、本発明方法は、麹1に対し、掛け芋(乾燥甘藷)2の割合で、総汲み水を160、170、180%に変化させた。 【0021】 ・・・(略)・・・ 【0023】仕込みの麹米としては、その澱粉価が74.5%の他用途米を用いた。 種麹としては、焼酎用白麹菌、酵母としては鹿児島酵母を用いた。 また、一次もろみは28℃で6日間、二次もろみは28℃の温度で、本発明方法の場合は13日、対照の場合は8日間それぞれ発酵させた。 蒸留方法は水蒸気吹き込み方法にした。 【0024】・・・(略)・・・ 【0025】(2)生成もろみおよび生産物の分析 上記の如くして得られた甘藷焼酎について、蒸留前もろみおよび製成アルコールを分析した結果を次の表4および表5に示す。このうち表4は、甘藷乾燥温度の影響を示し、表5は、汲み水量の影響を示すものである。なお、表4における本発明品の場合の汲み水比は180%であり、表4および表5における対照の汲み水比は65%である。 【0026】 [図:0001421358000001.jpg] 汲み水: 乾燥甘藷 180%, 対照 65% 【0027】 [図:0001421358000002.jpg] 甘藷乾燥温度 50℃、対照汲み水比65%」 ・「【0032】次に、本発明甘藷焼酎中の微量成分を、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果を表6および表7に示す。 このうち表6は、乾燥温度50℃の乾燥甘藷を用い、汲み水比を変化させた時の微量成分の変化を、表7は、総汲み水比を180%とした際の甘藷乾燥温度による微量成分の変化をそれぞれ示すものである。なお、ガスクロマトグラフィーは、島津製作所のガスクロマトグラフGC-15A、カラムは、CBP20-M50を用い、注入温度200℃、検出温度250℃、カラム温度50~240℃で、内部標準としてn-アミルアルコールを用いて行った。 【0033】 [図:0001421358000003.jpg] (単位はppm; trは痕跡) 【0034】 [図:0001421358000004.jpg] (単位はppm; trは痕跡)」 イ 甲10に記載された発明 甲10に記載された事項を、特に実施例2の乾燥温度50℃の甘藷を用い、汲み水比180%にした焼酎に関して整理すると、甲10には、次の発明(以下、「甲10発明」という。)が記載されていると認める。 <甲10発明> 「蒸留後製成アルコール濃度が41.4%、フルフラールが1.5ppm、β-フェチネルアルコールが43ppmである、乾燥温度50℃の甘藷を用い、汲み水比180%にした焼酎。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲10発明を対比する。 両者は次の点で相違し、それ以外は一致する。 <相違点10> 本件特許発明1においては「ゲラニオールが150ppb~660ppb」であると特定されているのに対し、甲10発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点10について検討する。 甲10には、甲10発明において、「ゲラニオール」に着目し、「ゲラニオール」を「150ppb~660ppb」含むように調整する動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもそのような動機付けとなる記載はない。 したがって、甲10発明において、相違点10に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明によって得られる芋焼酎は、キレがあり、かつふくよかな香りを有する。」という甲10発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲10発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2について 本件特許発明2は請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1が甲10発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものである以上、本件特許発明2も甲10に記載された発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものである。 (4)申立理由3についてのむすび したがって、本件特許発明1及び2は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。 4 申立理由4(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 サポート要件の判断基準は上記第6 4(1)のとおりである。 (2)サポート要件の判断 ア 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 イ 判断 (ア)本件特許発明1について 本件特許発明1については、上記第6 4(2)のとおりであり、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (イ)本件特許発明2について 発明の詳細な説明の【0002】ないし【0004】によると、本件特許発明2の解決しようとする課題は「キレがあり、かつふくよかな芋の香りを有する芋焼酎の製造方法」を提供することである(以下、「発明の課題2」という。)。 発明の詳細な説明の記載は、上記第6 4(2)イのとおりであり、【0005】及び【0024】には、本件特許発明2に対応する記載がある。 発明の詳細な説明の記載から、当業者は「ゲラニオールが120ppb~660ppb、 フェニルエチルアルコールが60ppm以下、及び フルフラールが7.0ppm以下であり、そして、全体のアルコール度数が38%以上の原酒を用いたものである」という条件を満たした「芋焼酎」の「製造方法」は、発明の課題2を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明2は当業者が発明の課題2を解決できると認識できる上記「芋焼酎」の「製造方法」をさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明2に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第4 4における主張について検討する。 当業者が発明の詳細な説明の記載から、当業者が発明の課題1及び2を解決できると認識できる範囲は、上記第6 4(2)及び上記(2)のとおりであり、本件特許発明1及び2は、その範囲のものである。 また、本件特許発明1及び2の発明特定事項を全て有していても、発明の課題1及び2を解決できないことがあることの具体的な証拠が示されている訳でもない。 したがって、特許異議申立人の上記第4 4における主張は採用できない。 (4)申立理由4についてのむすび したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。 第8 結語 上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700457

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