特許異議申立
2024-700396
フィルム用グラビア印刷インキ組成物、印刷方法、印刷物及びラミネート積層体
- 審判番号
- 2024-700396
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-034468
- 登録番号
- 7372177
- 請求日
- 2024年04月25日
- 審決日
- 2025年06月10日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サカタインクス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
- 【権利者代理人】山田 泰之
- 【権利者代理人】安藤 達也
- 【異議申立人】西村 裕之
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 弘實 由美子
- 分類
- P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7372177号発明「フィルム用グラビア印刷インキ組成物、印刷方法、印刷物及びラミネート積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7372177号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7372177号の請求項1-5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和2年2月28日の出願であって、令和5年10月23日に特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月31日に特許掲載公報が発行され、その後、令和6年4月25日に西村 裕之(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年7月2日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年8月28日に意見書及び訂正請求書の提出を行い、同年10月23日に前記訂正請求書を補正対象とする手続補正書を提出し、当審は、特許権者から訂正請求があったことを、同年10月29日付けで申立人に通知し、申立人は、同年11月28日に意見書を提出し、当審は、令和7年1月22日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年3月6日に意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)の提出を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったことを、同年同月26日付けで申立人に通知し、それに対して、申立人からの応答はなかったものである。
なお、令和6年8月28日提出の訂正請求書は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1~2からなる。下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「顔料、ポリウレタン樹脂及び有機溶剤を含有するフィルム用グラビア印刷インキ組成物であり、」と記載されているのを、「顔料、ポリウレタン樹脂及び有機溶剤を含有するフィルム用グラビア印刷インキ組成物であり(但し、カルボジイミド基又はアジリジニル基を含むポリウレタン樹脂を含有する場合を除く)、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記酸基含有化合物は、27以上の理論酸価を有し、かつ以下の(1)~(5)から選択される一種以上である、フィルム用グラビア印刷インキ組成物」と記載されているのを、「前記酸基含有化合物は、27以上の理論酸価を有し、かつ以下の(1)~(5)から選択される一種以上である、フィルム用グラビア印刷インキ組成物(但し、ディスパーBYK111を含有する場合を除く)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では「ポリウレタン樹脂・・・を含有するフィルム用グラビアインキ組成物」とされているのを、訂正後の請求項 1に係る発明では「ポリウレタン樹脂・・・を含有するフィルム用グラビアインキ組成物(但し、カルボジイミド基又はアジリジニル基を含むポリウレタン樹脂を含有する場合を除く)」として、フィルム用グラビアインキ組成物に含まれるポリウレタン樹脂の種類の一部を除くことで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。このため、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、フィルム用グラビアインキ組成物に含まれるポリウレタン樹脂の種類の一部を除くものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。このため、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
前記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、フィルム用グラビアインキ組成物に含まれるポリウレタン樹脂の種類の一部を除くものであり、新たな技術的事項を導入しないことは明らかである。
このため、訂正事項1は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~5について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では「前記酸基含有化合物は、27以上の理論酸価を有し、かつ以下の(1)~(5)から選択される一種以上である、フィルム用グラビア印刷インキ組成物」とされているのを、訂正後の請求項1に係る発明では「前記酸基含有化合物は、27以上の理論酸価を有し、かつ以下の(1)~(5)から選択される一種以上である、フィルム用グラビア印刷インキ組成物(但し、ディスパーBYK111を含有する場合を除く)」として、酸基含有化合物の種類の一部を除くことで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。このため、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的するものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、酸基含有化合物の種類の一部を除くものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。このため、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項の有無
前記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、酸基含有化合物の種類の一部を除くものであり、新たな技術的事項を導入しないことは明らかである。
このため、訂正事項2は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~5について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)一群の請求項について
訂正前の請求項2~5は、訂正前の請求項1を引用しているものであって、訂正事項1及び訂正事項2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~5についてされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許第7372177号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~5に係る発明は、令和7年3月6日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下項番順に「本件特許発明1」等といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
顔料、ポリウレタン樹脂及び有機溶剤を含有するフィルム用グラビア印刷インキ組成物であり(但し、カルボジイミド基又はアジリジニル基を含むポリウレタン樹脂を含有する場合を除く)、
フィルム用グラビア印刷インキ組成物の固形分中に、数平均分子量が500以上の酸基含有化合物を0.2~7.0質量%含有し、
前記ポリウレタン樹脂は、1.0~15.0mgKOH/gのアミン価を有し、
前記酸基含有化合物は、27以上の理論酸価を有し、かつ以下の(1)~
(5)から選択される一種以上である、フィルム用グラビア印刷インキ組成物
(但し、ディスパーBYK111を含有する場合を除く):
(1)ポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸
(2)酸変性ポリエチレングリコール
(3)酸変性ポリプロピレングリコール
(4)酸変性ポリカプロラクトン
(5)ジイソシアネート化合物により多量体化されたポリアルキレングリコール化合物のカルボン酸変性物。
【請求項2】
該酸基含有化合物は、ポリエーテル構造を有する請求項1に記載のフィルム用グラビア印刷インキ組成物。
【請求項3】
該酸基含有化合物は、ポリオキシエチレン構造を有する請求項2に記載のフィルム用グラビア印刷インキ組成物。
【請求項4】
酸基含有化合物の酸基がカルボン酸、リン酸、スルホン酸から選ばれた1種以上である請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム用グラビア印刷インキ組成物。
【請求項5】
前記顔料が、酸化チタンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム用グラビア印刷インキ組成物。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由通知に記載した取消理由について
1 特許異議の申立ての理由は、次の理由1~4である。
理由1(新規性)本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2(新規性)本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由3(進歩性)本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由4(進歩性)本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2007-169357号公報
甲第1号証の1:国際公開第98/36033号
甲第1号証の2:特開2015-134854号公報
甲第1号証の3:国際公開第2018/066296号
甲第1号証の4:DISPERBYK-110 DISPERBYK-111 溶剤型塗料用湿潤分散剤、Data Sheet W216、BYK Additives & Instruments、2008年2月
甲第2号証:特開2011-252120号公報
甲第2号証の1:特開2015-950号公報
2 令和6年7月2日付けで通知した取消理由の概要は、次の理由1~2である。
理由1(新規性)本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2(進歩性)本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証及び甲第2号証の1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 令和7年1月22日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次の理由1、2である。
理由1(新規性)本件特許の請求項5~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2(進歩性)本件特許の請求項5~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証及び甲第2号証の1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 前記第4 2及び3における理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
1 甲号証について
甲第1号証、甲第1号証の1~甲第1号証の4、甲第2号証及び甲第2号証の1は前記第4の理由1及び理由2のものと同じ
甲第3号証:特開2003-183652号公報
甲第4号証:特開2018-184584号公報
2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
1a「【請求項1】
水酸基、カルボニル基およびアミノ基の群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、炭素数3~10である配位子を含むチタン有機化合物を含有し、かつ、少なくとも1種類の白色系無機顔料を含有することを特徴とする溶剤型印刷インキ組成物。」
1b「【0005】
本発明の目的は、従来技術に基づく既存の印刷インキでは解決し得なかった前記の欠点を解決することである。即ち、優れたインキ安定性および印刷適性を有する溶剤型印刷インキを提供することにある。」
1c「【0030】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部および%は、重量部および重量%を表わす。なお、水酸基は、樹脂1g中に含有する水酸基を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数で、JIS K0070に従って行った値である。アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数である。アミン価の測定方法については、後述の通り行なった。分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量として求めた。アミン価の測定方法は、下記の通りである。
・・・
【0032】
[合成例1]
アジピン酸とプロピレングリコールから得られる数平均分子量2000のポリエステルジオール(PPA2000)259.76部、イソホロンジイソシアネート28.81部、2-エチルヘキシル酸第1錫0.03部および酢酸エチル40.0部を窒素気流下に85℃で3時間反応させ、酢酸エチル50.0部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液328.60部を得た。次いでイソホロンジアミン11.26部、ジ-n-ブチルアミン0.17部、酢酸エチル279.0部およびイソプロピルアルコール246.0部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液328.60部を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分25%、重量平均分子量75000、アミン価1.9 mgKOH/樹脂1g、25℃における粘度1000mPa・sのポリウレタン樹脂溶液Aを得た。
・・・
【0047】
[比較例8]
チタニックスJR-805(テイカ社製)30部、合成例1で得たポリウレタン樹脂ワニスA10部、Disperbyk-111(ビックケミー・ジャパン社製:溶剤型湿潤分散剤)1部(←顔料に対する標準添加量1-3%)、酢酸n-プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比1/1)10部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂ワニス40部、酢酸n-プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤9部を混合し印刷インキ(O)を得た。
【0048】
[実施例1-7および比較例1-8]
実施例1-7および比較例1-8で得られた印刷インキ(A)~(O)は、印刷時の粘度に調整するため、メチルエチルケトン40%、イソプロピルアルコール30%、酢酸n-プロピル20%、酢酸エチル10%からなる混合溶剤を用いて、25℃においてザーンカップNo.3で測定した粘度が15秒となるようにそれぞれ希釈し、さらに硬化剤LPスーパー硬化剤(東洋インキ製造社製)を印刷インキに対して3%添加し、希釈印刷インキ(A’)~(O’)を得た。
【0049】
該希釈印刷インキを、版深35~10μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機により、印刷速度150m/分で、厚さ12μmのコロナ放電処理ポリエチレンテレクタレートフィルム「E5100」(東洋紡績社製)のコロナ放電処理面に1時間印刷し、残肉印刷インキ(A”)~(O”)を得た。」
(2)甲第1号証の1(以下、「甲1の1」という。)
11a「本発明に使用する酸化チタンは、筆記描線に隠蔽性を付与する白色顔料として使用する。酸化チタンの種類としては、結晶構造の違いからルチル型、アナターゼ型の2種類があり、両方共使用できる。
市販品としては、タイペークR-550、タイペークR-580、タイペークR-780(石原産業製)、チタニックスJR-300、チタニックスJR-701、チタニックスJR-801、チタニックスJR-805(テイカ製)、タイピュアーR-706、タイピュアーR-900、タイピュアーR-960(デュポン製)等が挙げられる。その使用量は、水性インキ全量に対して10~40重量%が好ましく、2種類以上の酸化チタン製品を混合して使用することもできる。」(第2ページ第20行~第3ページ第4行)
(3)甲第1号証の2(以下、「甲1の2」という。)
12a「【0108】
「DISPERBYK111」は、エチレングリコールとポリカプロラクトンのブロック共重合体のリン酸エステル化合物であり、共重合体の両末端にリン酸基を有する。」
(4)甲第1号証の3(以下、「甲1の3」という。)
13a「[0209]
<合成例A:マクロモノマーの合成>
3000mL三口フラスコに、ε-カプロラクトン(1024.5g、環状化合物に該当する。)、δ-バレロラクトン(198.44g、環状化合物に該当する。)、及び、2-エチル-1-ヘキサノール(77.06g、開環重合開始剤に該当する。)を導入し、窒素を吹き込みながら、混合物を攪拌した。次に、混合物にDisperbyk111(13.4g、リン酸基を主鎖末端に含有する高分子化合物Bに該当する、pKaは1.91、数平均分子量は1000、ビックケミー社製)を加え、得られた混合物を90℃に加熱した。7時間後、1H-NMR(nuclear magnetic resonance spectroscopy)にて、原料である2-エチル-1-ヘキサノールに由来するシグナルが消失したのを確認後、混合物を110℃に加熱した。窒素下にて110℃で12時間重合反応を続けた後、1H-NMRでε-カプロラクトン及びδ-バレロラクトンに由来するシグナルの消失を確認し、GPC(Gel Permeation Chromatography)法(後述する測定条件による。)により反応生成物の分子量測定を行った。反応生成物が所望の分子量に到達したことを確認した後、上記の混合物に2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(0.37g)を添加して、更に、得られた混合物に対して、2-メタクリロイロキシエチルイソシアネート(93.64g)を30分かけて滴下した。滴下終了から6時間後、1H-NMRにて2-メタクリロイロキシエチルイソシアネート(MOI)に由来するシグナルが消失したのを確認後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(1493.6g)を混合物に添加し、濃度が50質量%のマクロモノマー溶液(2770g)を得た。マクロモノマーの構造(式(1)に示した)は、1H-NMRにより確認した。得られたマクロモノマーの重量平均分子量は6,000であった。
(5)甲第1号証の4(以下、「甲1の4」という。)
14a「
[図:0001427935000001.jpg]
」
(6)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
酸化亜鉛(A)、40~180mgKOH/gの酸価を持つ分散剤(B)およびポリウレタン樹脂(C)からなる紫外線遮断コーティング組成物であって、
分散剤(B)が、
酸化亜鉛(A)100重量部に対し1~10重量部
であり、
ポリウレタン樹脂(C)が、
カルボジイミド基又はアジリジニル基を有する
ことを特徴とする紫外線遮断コーティング組成物。
【請求項2】
水酸基を有する塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂(D)が、さらに含まれていることを特徴とする請求項1記載の紫外線遮断コーティング組成物。
【請求項3】
プラスチックフィルムの少なくとも片面に、請求項1又は2記載の紫外線遮断コーティング組成物からなる紫外線遮断層とヒートシール性を有する樹脂からなるヒートシール層とを順次積層させてなる紫外線遮断包装材。」
2b「【0007】
本発明は、液状媒体中に分散されている酸化亜鉛粒子が長時間におよび安定である紫外線遮断コーティング組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、食品、化粧品、医薬品、その他化成品等の包装材料として好適な、可視光に対しては高い透明性を持ち、紫外線に対しては高い遮断性を持つ、ヒートシール強度の優れた紫外線遮断コーティング組成物を用いた包装材を提供することを目的とする。
・・・
【0021】
酸価を持つ分散剤(B)は、酸価や配合量以外に特に限定は無く、市販されているものを使用できる。例えば分散剤(B)は酸価を持つことが必要であって、アミン価を持つものでも持たないものでも良い。実際に使用できる市販の分散剤の例としては、ディスバーBYK102(酸価=101mgKOH;以下括弧内の数値は酸価を示す)、ディスパーBYK106(132)、ディスパーBYK110(53)、ディスパーBYK111(129)、ディスバーBYK140(73)、ディスバーBYK142(46)、ディスバーBYK145(76)、ディスバーBYK180(95)、ディスバーBYK2070(40)、ディスバーBYK-P104(180)、ディスバーBYK-P104S(150)、ディスバーBYK220S(100)、アンチテラー204(41)、アンチテラー205(40)などが挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。
【0022】
本発明の紫外線遮断コーティング組成物中に含まれるウレタン樹脂(C)は、酸化亜鉛(A)を紫外線遮断層中に保持するバインダー樹脂として働くものであり、カルボジイミド基又はアジリジニル基を樹脂中に含有させる必要がある。」
2c「【0025】
一般式(1)
【化1】
[図:0001427935000002.jpg]
(式中、Rは置換基を有してもよいアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、複素環式を、nは1以上の整数を表し、Rは同一または異なってもよい。)」
2c「【0064】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明中の「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
【0065】
〔合成例1;カルボジイミド基導入ウレタン樹脂(樹脂c1)〕
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール100部、およびヘキサメチレンジイソシアネートを原料とし、カルボジイミド基を1個有するジイソシアネート化合物溶液〔一般式(1)において、R:ヘキサメチレン、n:1である固形分50%の酢酸エチル溶液〕58部を仕込み、窒素気流下に85℃で6時間反応させ、末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得た。次いで、イソホロンジアミン 8.2部、ジ-n-ブチルアミン0.97部、酢酸エチル234部およびイソプロピルアルコール59部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液158部を徐々に添加し、撹拌下に50℃で3時間反応させ、固形分30%、分子量40,000のカルボジイミド基を含有するポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)を得た。
・・・
【0067】
[合成例3;ポリウレタン樹脂(樹脂c3)]
攪拌機、温度計、還流冷却管、および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール125部、およびイソホロンジイソシアネート29.5部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル153部を加えて末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得た。次に、イソホロンジアミン10.3部、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール0.78部、ジ-n-ブチルアミン1.0部、酢酸エチル118部、およびイソプロピルアルコール118部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を307.5部添加し、50℃で3時間反応させ、固形分30%、分子量25,000のポリウレタン樹脂(樹脂c3)を得た。
【0068】
[実施例1]
平均粒子径0.1μmの酸化亜鉛粒子100部、分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)5部、樹脂c1(合成例1で得られたカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂、分子量40,000、固形分30%)100部、酢酸エチル50部、およびイソフロピルアルコール30部を混合し、ディスパーで10分間攪拌した後、サンドミルを使用してこれを分散、酸化亜鉛粒子分散体を得た。次に、この分散体に前記樹脂c1 100部、酢酸エチル65部、イロプロピルアルコール20部を加え、再びディスパーで10分間攪拌して紫外線遮断コーティング組成物Aを得た。
【0069】
次に、コーティング組成物Aを、酢酸エチル/酢酸nプロピル/イソプロピルアルコール=5/2/3(重量比)の混合溶剤で希釈して、粘度をザーンカップNo.3(離合社製)で16秒に調整し、二軸延伸ポリエステル(PET)フィルム(東洋紡績製「エステルE5100」、厚さ12μm)と、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績製「パイレンP2161」、厚さ20μm)の片側コロナ処理面にグラビア印刷機でコートして、乾燥膜厚1.0μmの紫外線遮断層を形成した印刷物を得た。
次に、PETフィルムの紫外線遮断層上に2液硬化型接着剤(東洋モートン製「TM-265」/「CAT-RT37」=100/7.5(重量比))を約3g/m2塗布し、ドライラミネート機を使用してシーラントである直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(東セロ社製「TUX-FCD#40」、厚さ40μm)を積層し、40℃3日間エージングさせ積層体を得た。更に積層体を140℃でヒートシールすることにより、製袋し、紫外線遮断包装材を得た。
【0070】
また、OPPフィルムの紫外線遮断層上に2液硬化型接着剤(東洋モートン製「TM-329」/「CAT-8B」=50/50(重量比))を約3g/m2塗布し、ドライラミネート機を使用してシーラントである無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東セロ社製「トーセロCP GHC」、厚さ25μm)を積層し、40℃3日間エージングさせ積層体を得た。更に積層体を140℃でヒートシールすることにより、製袋し、紫外線遮断包装材を得た。
【0071】
[実施例2~6]
表1に示した処方に従いコーティング組成物B~Hを得た。次に、実施例1と同様にして調整およびグラビア印刷機でコートし、更に接着剤を塗布した後に、シーラントを積層し、積層体、更に紫外線遮断包装材を得た。
【0072】
[比較例1~4]
表1に示した処方に従いコーティング組成物I~Lを得た。次に、実施例1と同様にして調整およびグラビア印刷機でコートし、更に接着剤を塗布した後に、シーラントを積層し、積層体、更に紫外線遮断包装材を得た。
【0073】
【表1】
[図:0001427935000003.jpg]
【0074】
表1中以下の通りである。
分散剤b1 ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価無し
分散剤b2 ディスパーBYK180、酸価95mgKOH/g、
アミン価95mgKOH/g
分散剤b3 ディスパーBYK P104、酸価180mgKOH/g、アミン価無し
分散剤b4 ディスパーBYK142、酸価46mgKOH/g、
アミン価43mgK OH/g
分散剤b5 ディスパーBYK108、酸価無し、アミン価71mgKOH/g
樹脂c1 合成例1で得られたカルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂、
分子量40,000、固形分30%
樹脂c2 合成例2で得られたアジリジニル基含有ポリウレタン樹脂、
分子量22,000、固形分30%
樹脂c3 合成例3で得られたポリウレタン樹脂、分子量25,000、固形分30%
樹脂d 塩化ビニル/酢酸ビニル/ポリビニルアルコール=81/4/15
(重量%)、分子量20,000、固形分30%
PETフイルム 二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績社製「エステルE 5100」、厚さ12μm)
OPPフイルム 二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績社製「パイレンP 2161」、厚さ20μm)
LLDPEフイルム 直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製「TUX-FC D#40」、厚さ40μm)
CPPフイルム 無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製「トーセロCP GH C」、厚さ25μm)」
(7)甲第2号証の1(以下、「甲2の1」という。)
21a「【0009】
前記着色粒子を構成する白色無機粒子としては、二酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料、雲母チタン、白雲母等のパール顔料、シリカ粉、ホワイトカーボン、微粉ケイ酸、珪藻土等のシリカ微粒子並びにクレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、タルク及び透明性酸化チタン等の体質顔料が挙げられる。
尚、前記材料として、白色顔料を用いた際には高い隠蔽力により鮮明な色合を発現でき、パール顔料を用いた際には真珠様の光沢が得られ、パール顔料や体質顔料を用いた際には透明性が得られるため、所望の色調に応じて各種選択できる。」
(8)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「【請求項1】有機顔料またはカーボンブラック顔料、下記一般式(1)で示される塩基性官能基含有有機色素誘導体、および下記一般式(2)で示されるリン酸エステルを含む顔料組成物。
一般式(1)
P-[X1-(CH2)m-N(R1,R2)]n
(式中、Pは有機色素残基、X1は-CH2NH-、-SO2NH-、-CH2NHCO-、-CH2NHCOCH2NH-、-CONH-から選ばれる2価の連結基、R1,R2はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、またはR1,R2で窒素原子または酸素原子を含んでも良い複素環、mは1~4の整数、nは1~4の整数を表す。)
一般式(2)
【化1】
[図:0001427935000004.jpg]
(式中、R3は数平均分子量500~30000のポリエーテル及び/またはポリエステル、yは1または2を表す。)」
3b「【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、印刷インキまたは塗料に使用した場合の流動性、分散安定性ならびに乾燥皮膜にした場合の光沢等に優れる顔料組成物およびそれを用いた顔料分散体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、有機顔料またはカーボンブラック顔料、特定の塩基性官能基含有有機色素誘導体および特定のリン酸エステルを含む顔料組成物が、印刷インキまたは塗料に使用した場合の流動性、分散安定性ならびに乾燥皮膜にした場合の光沢等に優れることを発見し、本発明を完成させるに至った。」
3c「【0014】本発明における一般式(2)で示されるリン酸エステルは公知の化合物であり、特開平3-112992号公報に開示された方法で容易に得ることができる。本発明における一般式(2)のR3は、数平均分子量500~30000のポリエーテル及び/またはポリエステルであって、さらに詳しくはポリエーテル、ポリエステルまたはポリエーテル-ポリエステルのコポリマーである。
【0015】ポリエーテルの好ましい例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。また、ポリエステルの好ましい例としては、プロピオラクトン、バレロラクトン、カプロラクトンまたはそれらの混合物の重合体、またはコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸またはそれらの低級アルコールエステルと、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、あるはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等またはこれらの混合物との重合物等が挙げられる。」
3d「【0020】上記樹脂のうち、重量平均分子量が5000~100000の通常インキ等のバインダーに用いられるウレタン樹脂は、従来の顔料分散剤や、本発明の有機色素誘導体またはリン酸エステルの単独使用では顔料分散が極めて困難な樹脂であるが、本発明の顔料組成物を使用すると、良好に顔料を分散することができる。一般的に印刷インキ等のバインダーに使用されるウレタン樹脂は、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネートとの反応により得られる成分を主骨格とし、バインダーとしての性能を付与する目的でしばしばグリコール類、ジアミン類、アミノアルコール類等の化合物を1種または2種以上用いて鎖延長反応と呼ばれる反応によって高分子量化されることが多い。これらのウレタン樹脂のうち、ジアミン類またはアミノアルコール類により鎖延長反応を行うことにより得られる、樹脂1分子中に少なくとも1個以上の尿素結合を有する塩基性の比較的強いウレタン樹脂に本発明の顔料組成物を分散する場合に、顕著な顔料分散効果を示す。このような塩基性樹脂は塩基性官能基含有有機色素誘導体との相互作用がほとんどないため、塩基性樹脂を含む顔料分散体においては、塩基性官能基含有有機色素誘導体は分散剤としての性能をほとんど示さないことが知られている。しかし、本発明のリン酸エステルを併用するとリン酸エステルが選択的に塩基性官能基含有有機色素誘導体と相互作用を起こすことで特異的に優れた分散性能を発揮する。」
3e「【0024】(リン酸エステルの製造例)窒素雰囲気下で、数平均分子量750のポリエチレングリコールモノメチルエーテル1125部、ε-カプロラクトン684部およびジブチルスズラウレート1.8部を加熱、攪拌し160℃で固形分が98%以上になるまで反応を続け、ポリエーテル-ポリエステルモノヒドロキシ化合物を得た。得られたポリエーテル-ポリエステルモノヒドロキシ化合物の数平均分子量は、1200であった。5酸化リンを含量84%のポリリン酸84.5部を先に得られたポリエーテル-ポリエステルモノヒドロキシ化合物1200部に加え、水分を除去しながら80℃で5時間反応させ、数平均分子量1280のリン酸モノエステルを得た。
【0025】(実施例1~4)銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue15:3)20部、グラビアインキ用ワニス(ウレタン樹脂15%、酢酸エチル65%、イソプロピルアルコール20%)80部、有機色素誘導体(1)(当審注:(1)は○の中に1。)2部、製造例で得られたリン酸モノエステル2部および2mmスチールボール300部と混合しペイントコンディショナーで60分間分散して顔料分散体を作成した。同様に銅フタロシアニン顔料、有機色素誘導体の代わりに、表2に示す種々の顔料、有機色素誘導体(2)~(4)(当審注:(2)及び(4)は、それぞれ、○の中に2又は4。)を用いて顔料分散体を作成した。作成した顔料分散体の粘度をB型粘度計(6rpm)で測定した結果および作成した顔料分散体に溶剤(酢酸エチル70%、イソプロピルアルコール30%からなる)を加え、ザーンカップNO.3で14~16秒に調整して作成したグラビアインキをバーコーターで展色した際の乾燥皮膜の光沢値(60゜)を表2に示す。なお、上記のウレタン樹脂としては、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸を縮重合したポリエステルポリオールとイソホロンジイソシアネートを縮重合して得られたプレポリマーをイソホロンジアミンで鎖延長した重量平均分子量約30000の尿素結合含有ウレタン樹脂を用いた。」
(9)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「【請求項1】
基材1と基材2の間に印刷層を有する積層体の印刷層を形成するためのグラビアインキであって、バインダー樹脂(A)、塩素化ポリオレフィン樹脂(B)、有機溶剤、および水を含み、下記(1)および(2)を満たすことを特徴とするグラビアインキ。
(1)バインダー樹脂(A)は、ポリウレタン樹脂(a1)と、塩化ビニル共重合樹脂(a2)、セルロース系樹脂(a3)およびロジン樹脂(a4)からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂と、を95/5~40/60の質量比で含有する。
(2)塩素化ポリオレフィン樹脂(B)は、塩素含有率が25~45質量%であり、かつインキ100質量%中に0.1~2質量%の範囲で含有する。」
4b「【0024】
また、ポリウレタン樹脂(a1)は、アミン価および/または水酸基価を有するものが好ましく、アミン価は1~20mgKOH/gであることが好ましい。また水酸基価は1~20mgKOH/gであることが好ましい。なお、ポリウレタン樹脂(a1)はウレア結合を有していても良いし、ウレア結合を有していなくても良く、更に2種類以上を併用しても良い。」
3 甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
甲1には比較例8の印刷インクとして「チタニックスJR-805(テイカ社製)30部、合成例1で得た固形分25%、重量平均分子量75000、アミン価1.9mgKOH/樹脂1g、25℃における粘度1000mPa・sのポリウレタン樹脂ワニスA10部、Disperbyk-111(ビックケミー・ジャパン社製:溶剤型湿潤分散剤)1部(←顔料に対する標準添加量1-3%)、酢酸n-プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比1/1)10部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂ワニス40部、酢酸n-プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤9部を混合し得た、希釈し、グラビア印刷機により、コロナ放電処理ポリエチレンテレクタレートフィルム「E5100」(東洋紡績社製)のコロナ放電処理面に印刷する、印刷インキ(O)。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1c参照。)。
(2)甲2に記載された発明
ア 甲2発明1
甲2には実施例1の紫外線遮断コーティング組成物Aとして「攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール100部、およびヘキサメチレンジイソシアネートを原料とし、カルボジイミド基を1個有するジイソシアネート化合物溶液〔一般式(1)
[図:0001427935000005.jpg]
において、R:ヘキサメチレン、n:1である固形分50%の酢酸エチル溶液〕58部を仕込み、窒素気流下に85℃で6時間反応させ、末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得て、次いで、イソホロンジアミン8.2部、ジ-n-ブチルアミン0.97部、酢酸エチル234部およびイソプロピルアルコール59部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液158部を徐々に添加し、撹拌下に50℃で3時間反応させ、得た、固形分30%、分子量40,000のカルボジイミド基を含有するポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)100部、
平均粒子径0.1μmの酸化亜鉛粒子100部、分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)5部、酢酸エチル50部、およびイソフロピルアルコール30部を混合し、ディスパーで10分間攪拌した後、サンドミルを使用してこれを分散、酸化亜鉛粒子分散体を得て、次に、この分散体に前記樹脂c1 100部、酢酸エチル65部、イロプロピルアルコール20部を加え、再びディスパーで10分間攪拌して得た、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績製「パイレンP2161」、厚さ20μm)の片側コロナ処理面にグラビア印刷機でコートする、紫外線遮断コーティング組成物A。」の発明が記載されているといえる(摘記2c参照。)。
イ 甲2発明2
甲2には実施例2の紫外線遮断コーティング組成物Bとして「攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール100部、およびヘキサメチレンジイソシアネートを原料とし、カルボジイミド基を1個有するジイソシアネート化合物溶液〔一般式(1)
[図:0001427935000006.jpg]
において、R:ヘキサメチレン、n:1である固形分50%の酢酸エチル溶液〕58部を仕込み、窒素気流下に85℃で6時間反応させ、末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得て、次いで、イソホロンジアミン8.2部、ジ-n-ブチルアミン0.97部、酢酸エチル234部およびイソプロピルアルコール59部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液158部を徐々に添加し、撹拌下に50℃で3時間反応させ、得た、固形分30%、分子量40,000のカルボジイミド基を含有するポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)50部、
平均粒子径0.1μmの酸化亜鉛粒子100部、分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)5部、樹脂d(塩化ビニル/酢酸ビニル/ポリビニルアルコール=81/4/15(重量%)、分子量20,000、固形分30%)50部、酢酸エチル50部、およびイソフロピルアルコール30部を混合し、ディスパーで10分間攪拌した後、サンドミルを使用してこれを分散、酸化亜鉛粒子分散体を得て、次に、この分散体に前記樹脂c1 100部、酢酸エチル55部、イロプロピルアルコール30部を加え、再びディスパーで10分間攪拌して得た、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績製「パイレンP2161」、厚さ20μm)の片側コロナ処理面にグラビア印刷機でコートする、紫外線遮断コーティング組成物B。」の発明が記載されているといえる(摘記2c参照。)。
ウ 甲2発明3
甲2には実施例3の紫外線遮断コーティング組成物Cとして「攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール100部、およびヘキサメチレンジイソシアネートを原料とし、カルボジイミド基を1個有するジイソシアネート化合物溶液〔一般式(1)
[図:0001427935000007.jpg]
において、R:ヘキサメチレン、n:1である固形分50%の酢酸エチル溶液〕58部を仕込み、窒素気流下に85℃で6時間反応させ、末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得て、次いで、イソホロンジアミン8.2部、ジ-n-ブチルアミン0.97部、酢酸エチル234部およびイソプロピルアルコール59部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液158部を徐々に添加し、撹拌下に50℃で3時間反応させ、得た、固形分30%、分子量40,000のカルボジイミド基を含有するポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)50部、
平均粒子径0.1μmの酸化亜鉛粒子100部、分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)1部、樹脂d(塩化ビニル/酢酸ビニル/ポリビニルアルコール=81/4/15(重量%)、分子量20,000、固形分30%)50部、酢酸エチル50部、およびイソフロピルアルコール30部を混合し、ディスパーで10分間攪拌した後、サンドミルを使用してこれを分散、酸化亜鉛粒子分散体を得て、次に、この分散体に前記樹脂c1 117部、酢酸エチル38部、イロプロピルアルコール30部を加え、再びディスパーで10分間攪拌して得た、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績製「パイレンP2161」、厚さ20μm)の片側コロナ処理面にグラビア印刷機でコートする、紫外線遮断コーティング組成物C。」の発明が記載されているといえる(摘記2c参照。)。
エ 甲2発明4
甲2には実施例6の紫外線遮断コーティング組成物Fとして「攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール100部、およびヘキサメチレンジイソシアネートを原料とし、カルボジイミド基を1個有するジイソシアネート化合物溶液〔一般式(1)
[図:0001427935000008.jpg]
において、R:ヘキサメチレン、n:1である固形分50%の酢酸エチル溶液〕58部を仕込み、窒素気流下に85℃で6時間反応させ、末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得て、次いで、イソホロンジアミン8.2部、ジ-n-ブチルアミン0.97部、酢酸エチル234部およびイソプロピルアルコール59部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液158部を徐々に添加し、撹拌下に50℃で3時間反応させ、得た、固形分30%、分子量40,000のカルボジイミド基を含有するポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)50部、
平均粒子径0.1μmの酸化亜鉛粒子100部、分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)8部、樹脂d(塩化ビニル/酢酸ビニル/ポリビニルアルコール=81/4/15(重量%)、分子量20,000、固形分30%)50部、酢酸エチル50部、およびイソフロピルアルコール30部を混合し、ディスパーで10分間攪拌した後、サンドミルを使用してこれを分散、酸化亜鉛粒子分散体を得て、次に、この分散体に前記樹脂c1 83部、酢酸エチル77部、イロプロピルアルコール30部を加え、再びディスパーで10分間攪拌して得た、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績製「パイレンP2161」、厚さ20μm)の片側コロナ処理面にグラビア印刷機でコートする、紫外線遮断コーティング組成物F。」の発明が記載されているといえる(摘記2c参照。)。
オ 甲2発明5
甲2には比較例3の紫外線遮断コーティング組成物Kとして「攪拌機、温度計、還流冷却管、および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール125部、およびイソホロンジイソシアネート29.5部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル153部を加えて末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得て、次に、イソホロンジアミン10.3部、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール0.78部、ジ-n-ブチルアミン1.0部、酢酸エチル118部、およびイソプロピルアルコール118部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を307.5部添加し、50℃で3時間反応させ、得た、固形分30%、分子量25,000のポリウレタン樹脂(樹脂c3)100部、
平均粒子径0.1μmの酸化亜鉛粒子100部、分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)5部、酢酸エチル85部、およびイソフロピルアルコール30部を混合し、ディスパーで10分間攪拌した後、サンドミルを使用してこれを分散、酸化亜鉛粒子分散体を得て、次に、この分散体に前記樹脂c3 100部、酢酸エチル35部、イロプロピルアルコール25部を加え、再びディスパーで10分間攪拌して得た、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績製「パイレンP2161」、厚さ20μm)の片側コロナ処理面にグラビア印刷機でコートする、紫外線遮断コーティング組成物K。」の発明が記載されているといえる(摘記2c参照。)。
4 対比・判断
(1)甲1発明を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「チタニックスJR-805(テイカ社製)」は、白色顔料であるから(摘記11a参照。)、本件特許発明1の「顔料」に相当する。
甲1発明の「合成例1で得た固形分25%、重量平均分子量75000、アミン価1.9mgKOH/樹脂1g、25℃における粘度1000mPa・sのポリウレタン樹脂ワニスA」は、本件特許発明1の「ポリウレタン樹脂」及び「前記ポリウレタン樹脂は、1.0~15.0mgKOH/gのアミン価を有し」に相当する。
甲1発明の「酢酸n-プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比1/1)」は、本件特許発明1の「有機溶剤」に相当する。
甲1発明の「Disperbyk-111(ビックケミー・ジャパン社製:溶剤型湿潤分散剤)」は、エチレングリコールとポリカプロラクトンのブロック共重合体のリン酸エステル化合物であるから(摘記12a)、本件特許発明1の「(1)ポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸」、「(2)酸変性ポリエチレングリコール」及び「(4)酸変性ポリカプロラクトン」に相当し、甲1発明の「Disperbyk-111(ビックケミー・ジャパン社製:溶剤型湿潤分散剤)」は、数平均分子量が1000であり(摘記13a)、129の酸価を有するから(摘記14a、2b、2c参照。)、本件特許発明1の「数平均分子量が500以上の酸基含有化合物」、「前記酸基含有化合物は、27以上の理論酸価を有し、かつ以下の(1)~(5)から選択される一種以上である」及び「(1)ポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸
(2)酸変性ポリエチレングリコール
(3)酸変性ポリプロピレングリコール
(4)酸変性ポリカプロラクトン
(5)ジイソシアネート化合物により多量体化されたポリアルキレングリコール化合物のカルボン酸変性物」に相当する。
甲1発明の「グラビア印刷機により、コロナ放電処理ポリエチレンテレクタレートフィルム「E5100」(東洋紡績社製)のコロナ放電処理面に印刷する、印刷インキ(O)」は、甲1発明の「合成例1で得た固形分25%、重量平均分子量75000、アミン価1.9mgKOH/樹脂1g、25℃における粘度1000mPa・sのポリウレタン樹脂ワニスA」はカルボジイミド基もアジリジニル基も含まないから、本件特許発明1の「フィルム用グラビア印刷インキ組成物であり(但し、カルボジイミド基又はアジリジニル基を含むポリウレタン樹脂を含有する場合を除く)」に相当する。
甲1発明の「Disperbyk-111(ビックケミー・ジャパン社製:溶剤型湿潤分散剤)1部」は、甲1発明の印刷インキ(O)中の固形分の2.3%(1×100/(30+((10+40)×25/100)+1))であるから、本件特許発明1の「フィルム用グラビア印刷インキ組成物の固形分中に、数平均分子量が500以上の酸基含有化合物を0.2~7.0質量%含有し」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、
「顔料、ポリウレタン樹脂及び有機溶剤を含有するフィルム用グラビア印刷インキ組成物であり(但し、カルボジイミド基又はアジリジニル基を含むポリウレタン樹脂を含有する場合を除く)、
フィルム用グラビア印刷インキ組成物の固形分中に、数平均分子量が500以上の酸基含有化合物を0.2~7.0質量%含有し、
前記ポリウレタン樹脂は、1.0~15.0mgKOH/gのアミン価を有し、
前記酸基含有化合物は、27以上の理論酸価を有し、かつ以下の(1)~(5)から選択される一種以上である、フィルム用グラビア印刷インキ組成物:
(1)ポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸
(2)酸変性ポリエチレングリコール
(3)酸変性ポリプロピレングリコール
(4)酸変性ポリカプロラクトン
(5)ジイソシアネート化合物により多量体化されたポリアルキレングリコール化合物のカルボン酸変性物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
フィルム用グラビア印刷インキ組成物が、本件特許発明1は「但し、ディスパーBYK111を含有する場合を除く」と特定されるのに対し、甲1発明はディスパーBYK111を含有する点。
(イ)相違点についての検討
<相違点1-1>は実質的な相違点である。
甲1は、「優れたインキ安定性および印刷適性を有する溶剤型印刷インキを提供すること」(課題)を目的としているところ(摘記1b参照。)、甲1発明は甲1において比較例相当のものであり、優れたインキ安定性および印刷適性を有するものではないから、比較例相当の甲1発明の印刷インキにおいて、分散剤として用いられるディスパーBYK111に代えて、ディスパーBYK111以外の分散剤を採用し、甲1発明の印刷インキからディスパーBYK111を含有する場合を除くものとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲3には分散安定性に優れるグラビアインキにおいてディスパーBYK111のようなポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸エステルを配合することが記載されているが(摘記3a~3e参照。)、当該リン酸エステルは、特定の塩基性官能基含有有機色素誘導体と相互作用を起こすことで特異的に優れた分散性能を発揮するもの(摘記3d参照。)とされており、そのような特定の塩基性官能基含有有機色素誘導体を用いるものではない甲1発明において、甲3に記載のリン酸エステルを採用し、ディスパーBYK111を含有する場合を除くものとする動機付けがあるとはいえない。
また、他の証拠をみても、甲1発明の印刷インキにおいて、ディスパーBYK111に代えて、他の酸基含有化合物を採用し、ディスパーBYK111を含有する場合を除くものとする動機付けとなる記載はない。
(ウ)申立人の主張及び当審の判断について
申立人は、令和6年11月28日提出の意見書において、甲3の段落0024~0025は、ポリエチレングリコールとポリカプロラクトンに基づくリン酸モノエステルを、顔料、ウレタン樹脂、及び有機溶剤と共に配合してグラビアインキとすることを記載しており、本件特許発明1~4は、主引用発明からの単なる設計変更(均等物による置換等)にすぎず当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない旨主張するが、前記(イ)で検討したとおり、そのような均等物を採用する動機付けがあるとはいえず、申立人の前記主張は採用できない。
(エ)小括
本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明、並びに、甲1の1~甲1の4、甲2及び甲2の1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明2~5
本件特許発明2~5は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明との<相違点1-1>と同じの相違点を有するものであり、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明、並びに、甲1の1~甲1の4、甲2及び甲2の1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)甲2発明1~5を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲2発明1~4との対比
本件特許発明1と甲2発明1~4を対比する。
甲2発明1~4の「ポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)」100gあたり、「アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール」のOH基モル数(a):0.0217(mo1)({(100/(100+58+8.2+0.97+234+59)×100)/2000}×2)であり、「ヘキサメチレンジイソシアネートを原料とし、カルボジイミド基を1個有するジイソシアネート化合物溶液〔一般式(1)
[図:0001427935000009.jpg]
において、R:ヘキサメチレン、n:1である固形分50%の酢酸エチル溶液〕」(分子量:292.38)のNCO基モル数(b):0.0431(mo1)([{(58×(50/100))/(100+58+8.2+0.97+234+59)×100}/292.38]×2)であり、「イソホロンジアミン」(アミノ基を2個有し、分子量170.3)のNH基モル数(c):0.0209(mo1)({(8.2/(100+58+8.2+0.97+234+59)×100)/170.3}×2)であり、「ジ-n-ブチルアミン」(アミノ基を1個有し、分子量129.24)のNH基モル数(d):0.0016(mo1){(0.97/(100+58+8.2+0.97+234+59)×100)/129.24}×1)であり、ポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)100gあたりの固形分(e):30(g)であり、KOHの分子量(f):56.1であるから、甲2発明1~4の「ポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)」のアミン価は、2.057(mgKOH/g)({c+d-(b-a)}×f×1000/e)となるから、甲2発明1~4の「攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール100部、およびヘキサメチレンジイソシアネートを原料とし、カルボジイミド基を1個有するジイソシアネート化合物溶液〔一般式(1)
[図:0001427935000010.jpg]
において、R:ヘキサメチレン、n:1である固形分50%の酢酸エチル溶液〕58部を仕込み、窒素気流下に85℃で6時間反応させ、末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得て、次いで、イソホロンジアミン8.2部、ジ-n-ブチルアミン0.97部、酢酸エチル234部およびイソプロピルアルコール59部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液158部を徐々に添加し、撹拌下に50℃で3時間反応させ、得た、固形分30%、分子量40,000のカルボジイミド基を含有するポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)」は、本件特許発明1の「ポリウレタン樹脂は、1.0~15.0mgKOH/gのアミン価を有し」に相当する。
甲2発明1~4の「分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)」は、エチレングリコールとポリカプロラクトンのブロック共重合体のリン酸エステル化合物であるから(摘記12a)、本件特許発明1の「(1)ポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸」、「(2)酸変性ポリエチレングリコール」及び「(4)酸変性ポリカプロラクトン」に相当し、甲2発明1~4の「分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)」は、数平均分子量が1000であり(摘記13a)、129の酸価を有するから(摘記14a、2b、2c参照。)、本件特許発明1の「数平均分子量が500以上の酸基含有化合物」、「前記酸基含有化合物は、27以上の理論酸価を有し、かつ以下の(1)~(5)から選択される一種以上である」及び「(1)ポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸
(2)酸変性ポリエチレングリコール
(3)酸変性ポリプロピレングリコール
(4)酸変性ポリカプロラクトン
(5)ジイソシアネート化合物により多量体化されたポリアルキレングリコール化合物のカルボン酸変性物」に相当する。
甲2発明1の「分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)5部」は甲2発明1の紫外線遮断コーティング組成物の固形分の3.0%(5×100/(100+5+100×30/100+100×30/100))であり、甲2発明2の「分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)5部」は甲2発明2の紫外線遮断コーティング組成物の固形分の3.0%(5×100/(100+5+50×30/100+50×30/100+100×30/100))であり、甲2発明3の「分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)1部」は甲2発明3の紫外線遮断コーティング組成物の固形分の0.6%(1×100/(100+1+50×30/100+50×30/100+117×30/100))であり、甲2発明4の「分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)8部」は甲2発明4の紫外線遮断コーティング組成物の固形分の4.9%(8×100/(100+8+50×30/100+50×30/100+83×30/100))であるから、本件特許発明1の「フィルム用グラビア印刷インキ組成物の固形分中に、数平均分子量が500以上の酸基含有化合物を0.2~7.0質量%含有し」に相当する。
甲2発明1~4の「平均粒子径0.1μmの酸化亜鉛粒子」は、白色顔料であるから(摘記21a参照。)、本件特許発明1の「顔料」に相当する。
甲2発明1~4の「酢酸エチル」及び「イソプロピルアルコール」は、いずれも、本件特許発明1の「有機溶剤」に相当する。
甲2発明1~4の「紫外線遮断コーティング組成物」は、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績製「パイレンP2161」、厚さ20μm)の片側コロナ処理面にグラビア印刷機でコートされ、紫外線を吸収するものであるから、インキ組成物といえるものであり、本件特許発明1の「フィルム用グラビア印刷インキ組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明1~4は、
「顔料、ポリウレタン樹脂及び有機溶剤を含有する組成物であり、
フィルム用グラビア印刷インキ組成物の固形分中に、数平均分子量が500以上の酸基含有化合物を0.2~7.0質量%含有し、
前記ポリウレタン樹脂は、1.0~15.0mgKOH/gのアミン価を有し、
前記酸基含有化合物は、27以上の理論酸価を有し、かつ以下の(1)~(5)から選択される一種以上である、組成物:
(1)ポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸
(2)酸変性ポリエチレングリコール
(3)酸変性ポリプロピレングリコール
(4)酸変性ポリカプロラクトン
(5)ジイソシアネート化合物により多量体化されたポリアルキレングリコール化合物のカルボン酸変性物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
フィルム用グラビア印刷インキ組成物が、本件特許発明1は「但し、カルボジイミド基又はアジリジニル基を含むポリウレタン樹脂を含有する場合を除く」と特定されるのに対し、甲2発明1~4はカルボジイミド基を含有するポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)を含む点。
<相違点2-2>
フィルム用グラビア印刷インキ組成物が、本件特許発明1は「但し、ディスパーBYK111を含有する場合を除く」と特定されるのに対し、甲2発明1~4はディスパーBYK111を含有する点。
(イ)相違点についての検討
<相違点2-1>について
<相違点2-1>は実質的な相違点である。
甲2は、「液状媒体中に分散されている酸化亜鉛粒子が長時間におよび安定である紫外線遮断コーティング組成物を提供すること」を目的(課題)とするところ(摘記2b参照。)、甲2には「本発明の紫外線遮断コーティング組成物中に含まれるウレタン樹脂(C)は、酸化亜鉛(A)を紫外線遮断層中に保持するバインダー樹脂として働くものであり、カルボジイミド基又はアジリジニル基を樹脂中に含有させる必要がある。」との記載がある(摘記2b参照。)。
また、甲2の請求項1~3のいずれにおいても「カルボジイミド基又はアジリジニル基を有するポリウレタン樹脂(C)」が含有成分として規定され、甲2に記載される全ての実施例が「カルボジイミド基又はアジリジニル基を有するポリウレタン樹脂(C)」としてカルボジイミド基を含有するポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)を必ず含んでいる。
そうすると、甲2は、上記課題を解決するための手段として「カルボジイミド基又はアジリジニル基を有するポリウレタン樹脂(C)」を配合することを必須の要件としていると理解できるのであって、そうであれば、甲2発明1~4の紫外線遮断コーティング組成物から「カルボジイミド基又はアジリジニル基を有するポリウレタン樹脂(C)」であるカルボジイミド基を含有するポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)を除くことを動機づけることはできず、除くことには、むしろ阻害要因が存在するといえる。
そして、このことは、他の証拠をみても覆らない。
そうすると、相違点2-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明1~4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)申立人の主張及び当審の判断について
申立人は、令和6年11月28日提出の意見書において、前記<相違点2-2>について、前記(1)ア(ウ)と同様の主張をしているが、前記(1)ア(ウ)のとおり、前記申立人の主張は採用できない。
なお、前記<相違点2-1>についての主張はない。
(エ)甲2発明5との対比
本件特許発明1と甲2発明5を対比する。
甲2発明5の「ポリウレタン樹脂溶液(樹脂c3)」100gあたり、「アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール」のOH基モル数(a):0.0225(mo1)({(125/(125+29.5+153+10.3+0.78+1.0+118+118)×100)/2000}×29であり、「イソホロンジイソシアネート」(イソシアネート基を2個有し、分子量222.28)のNCO基モル数(b):0.0478(mo1)([{(29.5/(125+29.5+153+10.3+0.78+1.0+118+118)×100}/222.28]×2)であり、「イソホロンジアミン」(アミノ基を2個有し、分子量170.3)のNH基モル数(c):0.0218(mo1){(10.3/(125+29.5+153+10.3+0.78+1.0+118+118)×100)/170.3}×2)であり、「ジ-n-ブチルアミン」(アミノ基を1個有し、分子量129.24)のNH基モル数(d):0.0027(mo1){(0.78/(125+29.5+153+10.3+0.78+1.0+118+118)×100)/104.15}×2)であり、ポリウレタン樹脂溶液(樹脂c3)100gあたりの固形分(e):30(g)であり、KOHの分子量(f):56.1であるから、甲2発明5の「ポリウレタン樹脂溶液(樹脂c1)」のアミン価は、1.122(mgKOH/g)({c+d-(b-a)}×f×1000/e)となるから、甲2発明5の「攪拌機、温度計、還流冷却管、および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる分子量2,000のポリエステルジオール125部、およびイソホロンジイソシアネート29.5部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル153部を加えて末端イソシアネートのプレポリマー溶液を得て、次に、イソホロンジアミン10.3部、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール0.78部、ジ-n-ブチルアミン1.0部、酢酸エチル118部、およびイソプロピルアルコール118部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を307.5部添加し、50℃で3時間反応させ、得た、固形分30%、分子量25,000のポリウレタン樹脂(樹脂c3)」は、本件特許発明1の「ポリウレタン樹脂は、1.0~15.0mgKOH/gのアミン価を有し」に相当する。
甲2発明5の「分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)」は、エチレングリコールとポリカプロラクトンのブロック共重合体のリン酸エステル化合物であるから(摘記12a)、本件特許発明1の「(1)ポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸」、「(2)酸変性ポリエチレングリコール」及び「(4)酸変性ポリカプロラクトン」に相当し、甲2発明5の「分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)」は、数平均分子量が1000であり(摘記13a)、129の酸価を有するから(摘記14a、2b、2c参照。)、本件特許発明1の「数平均分子量が500以上の酸基含有化合物」、「前記酸基含有化合物は、27以上の理論酸価を有し、かつ以下の(1)~(5)から選択される一種以上である」及び「(1)ポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸
(2)酸変性ポリエチレングリコール
(3)酸変性ポリプロピレングリコール
(4)酸変性ポリカプロラクトン
(5)ジイソシアネート化合物により多量体化されたポリアルキレングリコール化合物のカルボン酸変性物」に相当する。
甲2発明5の「分散剤b1(ディスパーBYK111、酸価129mgKOH/g、アミン価なし)5部」は甲2発明5の紫外線遮断コーティング組成物の固形分の3.3%(5×100/(100+5+50×30/100+100×30/100))であるから、本件特許発明1の「フィルム用グラビア印刷インキ組成物の固形分中に、数平均分子量が500以上の酸基含有化合物を0.2~7.0質量%含有し」に相当する。
甲2発明5の「平均粒子径0.1μmの酸化亜鉛粒子」は、白色顔料であるから(摘記21a参照。)、本件特許発明1の「顔料」に相当する。
甲2発明5の「酢酸エチル」及び「イソプロピルアルコール」は、いずれも、本件特許発明1の「有機溶剤」に相当する。
甲2発明5の「紫外線遮断コーティング組成物」は、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績製「パイレンP2161」、厚さ20μm)の片側コロナ処理面にグラビア印刷機でコートされ、紫外線を吸収するものであるから、インキ組成物といえるものであり、カルボジイミド基又はアジリジニル基を含むポリウレタン樹脂を含有しないから、本件特許発明1の「フィルム用グラビア印刷インキ組成物」及び「(但し、カルボジイミド基又はアジリジニル基を含むポリウレタン樹脂を含有する場合を除く)」相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明5は、
「顔料、ポリウレタン樹脂及び有機溶剤を含有する組成物であり(但し、カルボジイミド基又はアジリジニル基を含むポリウレタン樹脂を含有する場合を除く)、
フィルム用グラビア印刷インキ組成物の固形分中に、数平均分子量が500以上の酸基含有化合物を0.2~7.0質量%含有し、
前記ポリウレタン樹脂は、1.0~15.0mgKOH/gのアミン価を有し、
前記酸基含有化合物は、27以上の理論酸価を有し、かつ以下の(1)~(5)から選択される一種以上である、組成物:
(1)ポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸
(2)酸変性ポリエチレングリコール
(3)酸変性ポリプロピレングリコール
(4)酸変性ポリカプロラクトン
(5)ジイソシアネート化合物により多量体化されたポリアルキレングリコール化合物のカルボン酸変性物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-3>
フィルム用グラビア印刷インキ組成物が、本件特許発明1は「但し、ディスパーBYK111を含有する場合を除く」と特定されるのに対し、甲2発明5はディスパーBYK111を含有する点。
(オ)相違点についての検討
<相違点2-3>について
<相違点2-3>は実質的な相違点である。
甲2は、「液状媒体中に分散されている酸化亜鉛粒子が長時間におよび安定である紫外線遮断コーティング組成物を提供すること」を目的(課題)とするところ(摘記2b参照。)、甲2発明5は甲2において比較例相当のものであり、液状媒体中に分散されている酸化亜鉛粒子が長時間におよび安定であるものではないから、比較例相当の甲2発明5の印刷インキにおいて、分散剤として用いられるディスパーBYK111に代えて、ディスパーBYK111以外の分散剤を採用し、甲2発明5の紫外線遮断コーティング組成物からディスパーBYK111を含有する場合を除くものとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲3には分散安定性に優れるグラビアインキにおいてディスパーBYK111のようなポリアルキレンエーテル構造を有するリン酸エステルを配合することが記載されているが(摘記3a~3e参照。)、当該リン酸エステルは、特定の塩基性官能基含有有機色素誘導体と相互作用を起こすことで特異的に優れた分散性能を発揮するもの(摘記3d参照。)とされており、そのような特定の塩基性官能基含有有機色素誘導体を用いるものではない甲2発明5の紫外線遮断コーティング組成物において、甲3に記載のリン酸エステルを採用し、ディスパーBYK111を含有する場合を除くものとする動機付けがあるとはいえない。
また、他の証拠をみても、甲2発明5の紫外線遮断コーティング組成物において、ディスパーBYK111に代えて、ディスパーBYK111以外の分散剤を採用し、甲2発明5の紫外線遮断コーティング組成物からディスパーBYK111を含有する場合を除くものとする動機付けとなる記載はない。
そうすると、本件特許発明1は、甲2発明5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(カ)申立人の主張及び当審の判断について
申立人は、令和6年11月28日提出の意見書において、前記<相違点2-3>について、前記(1)ア(ウ)と同様の主張をしているが、前記(1)ア(ウ)のとおり、前記申立人の主張は採用できない。
(キ)小括
本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明、並びに、甲1、甲1の1~甲1の4及び甲2の1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明2~5
本件特許発明2~5は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲2発明1~4との<相違点2-1>及び<相違点2-2>又は前記本件特許発明1と甲2発明5との<相違点2-3>と同じ相違点を有するものであり、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明、並びに、甲1、甲1の1~甲1の4及び甲2の1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第6 申立人によって令和6年11月28日に提出された意見書において新たに申し立てられた取消理由
申立人は、前記意見書において、訂正後の特許請求の範囲に関し、請求項1に記載の「但し、ディスパーBYK111を含有する場合を除く」という、特定の製品名を参照する記載を含む訂正後の請求項1~4に係る発明は明確でない旨主張するが、ディスパーBYK111自体は、甲1の4に記載されるような物性を有する特定の製品として当業者が明確に理解できるといえるから、「但し、ディスパーBYK111を含有する場合を除く」なる事項は明確であり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。その結果、本件特許発明1~4は明確である。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、令和6年7月2日付けの取消理由通知書に記載した取消理由、令和7年1月22日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由、令和6年11月28日に提出された意見書において新たに申し立てられた取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によって、本件請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700396