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特許異議申立

2023-701357

熱伝導性組成物

審判番号
2023-701357
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-206973
登録番号
7315133
請求日
2023年12月21日
審決日
2024年10月02日
公報発行日
2025年01月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】積水ポリマテック株式会社
  • 【権利者代理人】田口 昌浩
  • 【異議申立人】柏木 里実
審判長/審判官
  • 審判長 河本 充雄
  • 審判官 棚田 一也
  • 審判官 大橋 達也
分類
P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L) / P1651.55 -YAA(H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7315133号発明「熱伝導性組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7315133号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4について訂正することを認める。 特許第7315133号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7315133号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2016年(平成28年) 1月 19日(優先権主張 平成27年 1月29日)を国際出願日とする特許出願の一部を、令和3年12月21日に新たな特許出願としたものであって、令和 5年 7月18日にその特許権の設定登録がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和5年12月21日 :特許異議申立人 柏木 里実(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て 令和6年 3月27日付け :取消理由通知書 同年 5月22日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 同年 6月14日付け :手続補正指令書(方式) 同年 7月 3日 :手続補正書(方式) なお、当審は、令和6年 5月22日に提出され、同年 7月 3日提出の手続補正書(方式)によって補正された訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)について、同年 7月16日付けの通知書によって期間を指定して申立人に意見を提出する機会を与えたが、申立人から期間内に応答はなかった。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 本件訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正請求書に記載のとおり。) (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に、「前記熱伝導性充填材にさらに平均粒径が8~20μmの中粒径の粒子を含む」と記載されているのを、「前記熱伝導性充填材にさらに粒径が8~20μmの中粒径の粒子を含む」に訂正する。 (2)訂正事項2 本件訂正前の明細書の段落0061に、「そのため、大粒径の熱伝導性充填材は小粒径の熱伝導性充填材と併用することが好ましいが、粒径が5μm以下の粒子は少ない方が良いから平均粒径が8~20μm程度の中粒径のものと併用することが好ましいと考えられる。」と記載されているのを、「そのため、大粒径の熱伝導性充填材は小粒径の熱伝導性充填材と併用することが好ましいが、粒径が5μm以下の粒子は少ない方が良いから粒径が8~20μm程度の中粒径のものと併用することが好ましいと考えられる。」に訂正する。 2 本件訂正についての当審の判断(この項において、下線は、強調のため当審にて付した。) (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4の記載が明確でないとの取消理由に対して、その記載の不備を訂正し、本来の意を明らかにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 本件特許の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、段落0041に、実施例として「各実験例では、熱伝導性充填剤の配合を変更した各種資料を作製した。」と記載され、熱伝導性充填剤の配合について、段落0060に「5μm以下の粒子の含有量は20体積%以下であることが剥離性、残滓の量、拭取り性にとって良いと考えられる。」と記載され、段落0061に「30μmを超える粒子の含有量は25体積%以上が好ましく、30体積%以上がより好ましいことがわかる。このように、熱伝導率を高めるためには大粒径の熱伝導性充填材が可能な範囲で多く含まれていた方が好ましいが、大粒径の熱伝導性充填材は、それ自体を単独で用いると熱伝導性組成物の粘度が高くなる傾向があり、それ自体で充填量を高めることは難しい。そのため、大粒径の熱伝導性充填材は小粒径の熱伝導性充填材と併用することが好ましいが、粒径が5μm以下の粒子は少ない方が良いから平均粒径が8~20μm程度の中粒径のものと併用することが好ましいと考えられる。」と記載されていることから、熱伝導性充填剤の配合は、5μm以下の粒子の含有量は20体積%以下であることが剥離性、残滓の量、拭取り性にとって良く、30μmを超える粒子の含有量は25体積%以上が好ましいが、大粒径の熱伝導性充填材の充填量を高めることは難しいため、中粒径の粒子を併用することが好ましいものである。 そうすると、当初明細書等に記載された、併用される「中粒径のもの」は、剥離性、残滓の量、拭取り性の点で5μm以下の粒子を含まず、充填量を高めることが難しい点で30μmを超える粒子を含まない粒子であるといえるから、段落0061に記載された「平均粒径が8~20μm程度の中粒径のもの」は、5μm以下の粒子及び30μmを越える粒子を含まない、「粒径が8~20μmの中粒径の粒子」を意味するものであるといえる。 したがって、訂正事項1による訂正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされるものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて 訂正事項1による訂正は、上記アのとおり、本件訂正前の請求項4に係る発明の「平均粒径」により特定される「中粒径の粒子」が明瞭でなかったところ、「中粒径の粒子」を、「粒径」により特定することにより明瞭にしたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 エ 独立特許要件について 本件訂正前の請求項1~4について特許異議の申立てがされているので、本件訂正後の請求項4に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2による訂正は、本件訂正前の明細書の段落0061の記載が明確でないとの取消理由に対して、その記載の不備を訂正し、本来の意を明らかにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 上記(1)イにおける検討と同様の理由により、訂正事項2による訂正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項2による訂正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされるものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて 訂正事項2による訂正は、上記アのとおり、本件訂正前の明細書の段落0061に記載された「平均粒径」により特定される「中粒径の粒子」が明瞭でなかったところ、「中粒径の粒子」を、「粒径」により特定することにより明瞭にしたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 エ 独立特許要件について 本件訂正前の請求項1~4について特許異議の申立てがされているので、本件訂正後の請求項4に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 (3)訂正の適否についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項4について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、請求項の番号に従って「本件発明1~4」などといい、まとめて「本件発明」ともいう。) 「【請求項1】 高分子マトリクスと、50~90体積%を占める平均粒径が8.0~50μmの熱伝導性充填材と、を含む熱伝導性組成物であって、 前記高分子マトリクスが主剤と硬化剤でなるシリコーン系高分子から形成されたものであり、 前記熱伝導性充填のうち粒径5μm以下の粒子が前記熱伝導性充填材全体に対して20体積%以下であり、 前記熱伝導性充填材のうち粒径30μmを超える粒子が前記熱伝導性充填材全体に対して25体積%以上であり、 前記熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含み、 硬さがE20以下で且つ不混和ちょう度が100以下である熱伝導性組成物。 【請求項2】 高分子マトリクスと、50~90体積%を占める平均粒径が8.0~50μmの熱伝導性充填材と、を含む熱伝導性組成物であって、 前記高分子マトリクスが主剤と硬化剤でなるシリコーン系高分子から形成されたものであり、 前記熱伝導性充填材のうち粒径5μm以下の粒子が前記熱伝導性充填材全体に対して20体積%以下であり、 前記熱伝導性充填材のうち粒径30μmを超える粒子が前記熱伝導性充填材全体に対して25体積%以上であり、 前記熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含み、 不混和ちょう度が50~100である熱伝導性組成物。 【請求項3】 硬さがE0である請求項1又は請求項2記載の熱伝導性組成物。 【請求項4】 前記熱伝導性充填材にさらに粒径が8~20μmの中粒径の粒子を含む請求項1~請求項3何れか1項記載の熱伝導性組成物。」 第4 取消理由通知書に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項4に係る特許に対して、当審が令和6年3月27日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由1(明確性要件)本件訂正前の本件特許の請求項4に係る発明は、「熱伝導性充填材」として、「さらに平均粒径が8~20μmの中粒径の粒子を含む」ものである点で明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 取消理由1(明確性要件)についての当審の判断 上記第3のとおり、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項4には、「前記熱伝導性充填材にさらに粒径が8~20μmの中粒径の粒子を含む請求項1~請求項3何れか1項記載の熱伝導性組成物。」と記載され、また、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項4の記載が直接的又は間接的に引用する請求項1には、「平均粒径が8.0~50μmの熱伝導性充填材」「を含む熱伝導性組成物であって」「前記熱伝導性充填材のうち粒径5μm以下の粒子が前記熱伝導性充填材全体に対して20体積%以下であり、前記熱伝導性充填材のうち粒径30μmを超える粒子が前記熱伝導性充填材全体に対して25体積%以上で」「ある熱伝導性組成物。」と記載されている。したがって、本件発明4において、平均粒径が8.0~50μmの熱伝導性充填材のうち、粒径5μm以下の粒子が20体積%以下であり、粒径30μmを超える粒子が25体積%以上であり、熱伝導性充填材にさらに粒径が8~20μmの中粒径の粒子を含むといえる。そうすると、本件発明4の「熱伝導性充填材にさらに粒径が8~20μmの中粒径の粒子を含むこと」は、「粒径30μmを超える粒子」及び「粒径5μm以下の粒子」とは別の、「粒径が8~20μmの中粒径の粒子」について特定するものであること、及び、「平均粒径が8.0~50μmの熱伝導性充填材」に「粒径が8~20μmの中粒径の粒子」が含まれることに矛盾はない。 よって、本件発明4は明確であり、請求項4の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、取消理由1には理由がない。 第5 取消理由通知書において採用しなかった特許異議の申立ての理由について 1 申立ての理由の概要 当審が令和6年3月27日付けで特許権者に通知した取消理由において採用しなかった特許異議の申立ての理由は、次のとおりである。 (1)申立理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1~2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項1~2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と、甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(サポート要件) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び2には、「前記熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含み」との記載があるが、水酸化アルミニウムと酸化アルミニウムを併用することが特定されていない点で、請求項1及び2に係る発明は、本件明細書に記載された発明に比べて著しく広く、また、請求項1及び2を引用する請求項3及び4に係る発明も同様であるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (4)申立理由4(実施可能要件) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び2には、「前記熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含み」と記載され、熱伝導性充填材として水酸化アルミニウムを含むことが特定されないため、請求項1及び2に係る発明において、熱伝導性充填材として水酸化アルミニウムを含まない場合に、発明の効果を達成できることを理解することができず、また、請求項1及び2を引用する請求項3及び4に係る発明についても同様であるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (5)申立理由5(新規事項) 令和 4年 1月26日提出の手続補正書による補正において、「熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含む」を加えたこと、及び、令和 5年 2月10日提出の手続補正書による補正(以下、まとめて「本件補正」という。)において「熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含む」を加えたことは、当初明細書等の記載の範囲を超えるものである点で、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされた特許出願に対してされたものである。 <甲号証一覧> 甲第1号証:特開2001-348483号公報 甲第2号証:特開2010-21407号公報 甲第3号証:特開2002-363410号公報 甲第4号証:国際公開第2010/103852号 甲第5号証:特開2022-33201号公報 甲第6号証:特願2021-206973の令和4年1月26日提出の手続補正書 甲第7号証:特願2021-206973の令和5年2月10日提出の手続補正書 2 申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)についての当審の判断 (1)甲号証の記載について ア 甲1の記載、甲1発明 (ア)甲第1号証(以下、「甲第1号証」~「甲第7号証」を、甲号証の番号に従って「甲1」~「甲7」という。)には、以下の記載がある。(下線は、当審が付した。) 「【特許諸求の範囲】 【請求項1】 (A)硬化性オルガノポリシロキサン、(B)硬化剤、および(C)熱伝導性充填剤から少なくともなる熱伝導性シリコーンゴム組成物であって、前記(C)成分の表面が、(D)一般式: 【化1】 [図:0001418229000001.jpg] (式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数2以上の一価炭化水素基であり、R1は同じか、または異なる脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~10の一価炭化水素基であり、R1は炭素原子数2以上のアルキレン基であり、R1はアルキル基であり、aは0~2の整数であり、bは1~3の整数であり、かつ、a+bは1~3の整数であり、cは1~3の整数であり、nは0または1である。)で表されるシルアルキレンオリゴシロキサンで処理されていることを特徴とする熱伝導性シリコーンゴム組成物。 【請求項2】 (D)成分の(C)成分に対する処理基が、(C)成分100重量部に対して0.1~10重量部であることを特徴とする、請求項1記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。 【請求項3】 (C)成分がアルミナ粉末であることを特徴とする、請求項1記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。 【請求項4】 (C)成分が、(C-1)平均粒径が5~50μmである球状のアルミナ粉末と(C-2)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末との混合物であることを特徴とする、請求項3記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。 【請求項5】 (C)成分が、(C-1)成分30~90重量%と(C-2)成分10~60重量%からなることを特徴とする、請求項4記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。 【請求項6】 (C)成分の含有量が、(A)成分100重量部に対して500~2,500重量部であることを特徴とする、請求項1記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。」 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明者は上記の課題について鋭意検討した結果、本発明に達した。すなわち、本発明の目的は、高熱伝導性のシリコーンゴムを形成するために、熱伝導性充填剤を多量に含有させても、取扱性および成形性が良好である熱伝導性シリコーンゴム組成物を提供することにある。」 「【0014】(B)成分の硬化剤は、本組成物がヒドロシリル化反応硬化型のものである場合には、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと白金系触媒からなるものである。」 「【0036】本組成物を硬化させる方法は限定されず、例えば、本組成物を成形後、室温で放置する方法、本組成物を成形後、50~200℃に加熱する方法が挙げられる。また、このようにして得られるシリコーンゴムの性状は限定されないが、例えば、高硬度のゴム状から低硬度のゴム状、すなわちゲル状が挙げられ、得られるシリコーンゴムを放熱材料として部材に十分に密着させることができ、また、取扱性が良好であることから、JIS K 6253に規定のタイプEデュロメータ硬さが5~90の範囲内であるものが好ましい。 【0037】 【実施例】本発明の熱伝導性シリコーンゴム組成物を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の特性は25℃における値である。また、熱伝導性シリコーンゴム組成物の特性は次のようにして測定した。 [熱伝導性シリコーンゴム組成物のちょう度]50mlのガラス製ビーカーに熱伝導性シリコーンゴム組成物を注入した後、この組成物の1/4ちょう度をJIS K2220に規定の方法により測定した。なお、ちょう度の値が大きいということは、熱伝導性シリコーンゴム組成物の可塑性が大きく、取扱性が優れることを意味する。 ・・・(略)・・・」 (イ)上記(ア)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。(括弧内の請求項番号、段落番号は、上記(ア)における対応箇所を示す。) 「(A)硬化性オルガノポリシロキサン、(B)硬化剤、および(C)熱伝導性充填剤から少なくともなり、 前記(C)成分の表面が、(D)一般式: 【化1】 [図:0001418229000002.jpg] (式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数2以上の一価炭化水素基であり、R1は同じか、または異なる脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~10の一価炭化水素基であり、R1は炭素原子数2以上のアルキレン基であり、R1はアルキル基であり、aは0~2の整数であり、bは1~3の整数であり、かつ、a+bは1~3の整数であり、cは1~3の整数であり、nは0または1である。)で表されるシルアルキレンオリゴシロキサンで処理されており、(請求項1) (C)成分が、(C-1)平均粒径が5~50μmである球状のアルミナ粉末と(C-2)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末との混合物であって、(C-1)成分30~90重量%と(C-2)成分10~60重量%からなり、(請求項4、請求項5) (C)成分の含有量が、(A)成分100重量部に対して500~2,500重量部であり、(請求項6) (B)成分の硬化剤は、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと白金系触媒からなるものである、熱伝導性シリコーンゴム組成物を、成形後、室温で放置する方法、又は、50~200℃に加熱する方法で硬化させて得られる、(段落0014、段落0036) JIS K 6253に規定のタイプEデュロメータ硬さが5~90の範囲内である、高熱伝導性のシリコーンゴム。(段落0004、段落0036)」 イ 甲2の記載 (ア)甲2には、以下の記載がある。 「【0038】 次に、実施例、比較例を挙げて本実施形態をさらに具体的に説明する。 (実施例1) 実施例1においては、以下の工程に従って、図3(a),(b)に示す構成を備えた熱伝導性シート複合体を作製した。熱伝導性シートを作製するため、まず、高分子材料としての液状のシリコーンポリマー100質量部と、熱伝導性充填材としての酸化アルミニウム粒子とを、プラネタリーミキサーによる脱泡を行いつつ、30分間混練して、熱伝導性の高分子組成物を調製した。液状のシリコーンポリマーとして、東レダウコーニング株式会社製のCY52-291を用いた。また、酸化アルミニウム粒子として、45μmの平均粒径を有する酸化アルミで万ム粒子800質量部、3μmの平均粒径を有する酸化アルミニウム粒子300質量部、1.6μmの平均粒径を有する酸化アルミニウム粒子80質量部の混合物を用いた。得られた高分子組成物を、コンマコーター法によりシーティングライン上でシート状に形成し、硬化炉で1次加硫を120℃で、10分間行った。その結果、タイプEの硬度計により測定される硬度が5未満(E硬度0)であるゲル状のシート材(厚さ約1.2mm)を得た。その後、更に、シート材の2次加硫を150℃で、1時間行うことにより、熱伝導性シートを作製した。そして、得られた熱伝導性シートを、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の補強シート(厚さ約200μm)上に積層し、熱伝導性シート複合体を作製した。」 ウ 甲3の記載 (ア)甲3には、以下の記載がある。 「【0014】また、具体的な粒子径は、15:6の系においては大粒子として100μm~1μmの範囲、中粒子は、大粒子の40%の直径であるから、40μm~0.4μmの範囲が好ましいが、用途やその他の条件により、基本的には2種類の直径比が15:6の要件を満たしておれば良い。15:6:1の系においては、最小粒子の製造技術が事実上の技術制約条件となるが、0.05μmまでの球状/真球状粒子は開発されており、最小拉子径として15μm~0.05μmの範囲、中粒子はその6倍の直径であるから、90μm~0.30μmの範囲、大粒子は中粒子の2.5倍の直径であるから、225μm~0.75μmの範囲の中からの選択が好ましい。」 エ 甲4の記載 (ア)甲4には、以下の記載がある。 「[0030] 熱伝導性フィラーには、酸化マグネシウムの単一材を使用する。酸化マグネシウムは、コストメリットに優れるとともに、熱伝導性が高く、電気絶縁性を有している。電気絶縁性を持たせることにより、電子部品(電気部品)にとって、より望ましいコーティング剤或いはポッティング材を得ることができる。また、熱伝導性フィラーとして用いる酸化マグネシウム粒子は、主剤又は硬化剤の100〔wt%〕に対して、350~2000〔wt%〕の範囲で選定する。さらに、酸化マグネシウム粒子の粒径は、0.1~100〔μm〕の範囲で選定し、特に、複数の異なる粒径を含ませることが望ましい。本実施形態では、5~100〔μm〕程度の大粒フィラー、0.5~20〔μm〕程度の中粒フィラー、0.1~10〔μm〕程度の小粒フィラーを混在させた。勿論、粒径が0.1~100〔μm〕の範囲であれば、単一の粒径であってもよい。その他、酸化マグネシウム粒子の代わりとしては、窒化アルミニウム粒子又は窒化ホウ素粒子の単一材、或いは酸化アルミニウム粒子又は酸化ケイ素粒子を用いてもよいし、酸化マグネシウム粒子,窒化アルミニウム粒子,窒化ホウ素粒子,酸化アルミニウム粒子,酸化ケイ素粒子の二つ以上を含む複合材を用いてもよい。このように、熱伝導性フィラーに、少なくとも、酸化マグネシウム,窒化アルミニウム,窒化ホウ素,酸化アルミニウム,酸化ケイ素の一つ又は二つ以上を含む単一材又は複合材を用いれば、良好な熱伝導性及び放熱性を確保する観点から、より大きなパフォーマンスを得ることができるとともに、複数の異なる粒径を有するフィラーを選定すれば、バインダーとなる主剤又は硬化剤に対して各フィラーを高密度で均一分散させるに際し、異なる粒径の混在により、熱伝導性(放熱性)を高める観点からより最適化させることができる。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)a 本件発明1の「高分子マトリクス」は、「主剤と硬化剤でなるシリコーン系高分子から形成されたもの」である。 b 甲1発明は、「(A)硬化性オルガノポリシロキサン、(B)硬化剤」「から少なくとも」なる「熱伝導性シリコーンゴム組成物」を「成形後」「硬化させて得られる」ものあり、「(B)成分の硬化剤は、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと白金系触媒からなるもので」あるところ、「(A)硬化性オルガノポリシロキサン、(B)硬化剤」は、主剤と硬化剤でなるシリコーン系高分子であるから、甲1発明の「(A)硬化性オルガノポリシロキサン、(B)硬化剤」を硬化させて得られるものは、上記aを踏まえると、本件発明1の「高分子マトリクス」に相当し、さらに、「前記高分子マトリクスが主剤と硬化剤でなるシリコーン系高分子から形成されたもので」あることに相当する。 (イ)甲1発明は、「(C)熱伝導性充填剤から少なくとも」なる「熱伝導性シリコーンゴム組成物」を「成形後」「硬化させて得られる」「シリコーンゴム」であり、「(C)成分が、(C-1)平均粒径が5~50μmである球状のアルミナ粉末と(C-2)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末との混合物で」あり、「(C)成分の含有量が、(A)成分100重量部に対して500~2,500重量部で」あるところ、シリコーンの比重1、アルミナの比重4から計算すると、「(C)熱伝導性充填剤」の「シリコーンゴム」に対する含有割合は、56~86体積%である。また、「(C)熱伝導性充填剤」は、「平均粒径が5~50μmである」「アルミナ粉末」と「平均粒径が0.1~5μmである」「アルミナ粉末」との混合物であるから、「(C)熱伝導性充填剤」の平均粒径は0.1~50μmの範囲にある。 よって、甲1発明の「(C)熱伝導性充填剤」は、「シリコーンゴム」に対する含有割合が56~86体積%である点で、本件発明1の「50~90体積%を占める熱伝導性充填材」に相当する。 しかし、本件発明1は「平均粒径が8.0~50μmの熱伝導性充填材」「を含む」のに対し、甲1発明は、「(C)熱伝導性充填剤」の平均粒径は0.1~50μmの範囲にあり、8.0~50μmであることが限定されていない点で相違する。 (ウ)甲1発明は、「(C)成分が」「(C-2)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末」を含む「混合物」であり、「(C-2)成分10~60重量%から」なるところ、上記(イ)を踏まえると、「(C-2)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末」の割合は、5.6体積%~52体積%であるといえる。 そうすると、本件発明1が「前記熱伝導性充填材のうち粒径5μm以下の粒子が前記熱伝導性充填材全体に対して20体積%以下で」あるのに対し、甲1発明は、「(C-2)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末」の割合は、5.6体積%~52体積%であるが、本件発明1の上記構成を有さない点で相違する。 (エ)甲1発明は、「(C)成分が」「(C-1)平均粒径が5~50μmである球状のアルミナ粉末」を含む「混合物」であって、「(C-1)成分30~90重量%」からなるところ、上記(イ)を踏まえると、「(C-1)平均粒径が5~50μmである球状のアルミナ粉末」の割合は、17体積%~77体積%であるといえる。 そうすると、本件発明1が「前記熱伝導性充填材のうち粒径30μmを超える粒子が前記熱伝導性充填材全体に対して25体積%以上で」あるのに対し、甲1発明は、「(C-1)平均粒径が5~50μmである球状のアルミナ粉末」の割合は、17体積%~77体積%であるが、本件発明1の上記構成を有さない点で相違する。 (オ)甲1発明の「(C)成分が、(C-1)平均粒径が5~50μmである球状のアルミナ粉末と(C-2)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末との混合物で」あることは、本件発明1の「前記熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含」むことに相当する。 (カ)本件発明1は、「硬さがE20以下で且つ不混和ちょう度が100以下である熱伝導性組成物」であるのに対し、甲1発明は、「JIS K 6253に規定のタイプEデュロメータ硬さが5~90の範囲内である、高熱伝導性のシリコーンゴム」であるが、硬さがE20以下に限定されず、不混和ちょう度が特定されない点で相違する。 (キ)上記(ア)~(カ)によれば、甲1発明の「高熱伝導性のシリコーンゴム」は、高分子マトリクスと熱伝導性充填剤とを含む点で、本件発明1の「熱伝導性シリコーンゴム」と一致する。 (ク)上記(ア)~(キ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「高分子マトリクスと、50~90体積%を占める熱伝導性充填材と、を含む熱伝導性組成物であって、 前記高分子マトリクスが主剤と硬化剤でなるシリコーン系高分子から形成されたものであり、 前記熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含み、 熱伝導性組成物。」 <相違点1> 本件発明1は「平均粒径が8.0~50μmの熱伝導性充填材」「を含む」のに対し、甲1発明は、「(C)熱伝導性充填剤」の平均粒径は0.1~50μmの範囲にあるが、8.0~50μmであることが限定されていない点。 <相違点2> 本件発明1が「前記熱伝導性充填材のうち粒径5μm以下の粒子が前記熱伝導性充填材全体に対して20体積%以下で」あるのに対し、甲1発明は、「(C-2)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末」の割合は、5.6体積%~52体積%であるが、本件発明1の上記構成を有さない点。 <相違点3> 本件発明1が「前記熱伝導性充填材のうち粒径30μmを超える粒子が前記熱伝導性充填材全体に対して25体積%以上で」あるのに対し、甲1発明は、「(C-1)平均粒径が5~50μmである球状のアルミナ粉末」の割合は、17体積%~77体積%であるが、本件発明1の上記構成を有さない点。 <相違点4> 本件発明1は、「硬さがE20以下で且つ不混和ちょう度が100以下である熱伝導性組成物」であるのに対し、甲1発明は、「JIS K 6253に規定のタイプEデュロメータ硬さが5~90の範囲内である、高熱伝導性のシリコーンゴム」であるが、硬さがE20以下に限定されず、不混和ちょう度が特定されない点。 イ 上記相違点について検討する。 事案に鑑み、相違点2から検討する。 (ア)甲1発明の「平均粒径が0.1~5μmである」ことは、平均粒径を限定する特定であり、粒径の範囲を限定する特定ではないから、甲1発明において、「(C-2)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末」のうち、粒径が5μm以下の球状もしくは不定形状のアルミナ粉末の熱伝導性組成物に対する含有量は不明である。 よって、相違点2は実質的なものである。 したがって、他の相違点1、3~4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではない。 (イ)また、甲1~甲4には、相違点2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていないから、甲1~甲4の記載を参酌しても、甲1発明を、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 したがって、他の相違点1、3~4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の構成において「硬さがE20以下で且つ不混和ちょう度が100以下である」ことに替えて「不混和ちょう度が50~100以下である」ことを特定したものであり、その他の構成は、本件発明1と同じものである。 そうすると、本件発明2は、少なくとも、上記(1)ア(ク)の相違点2の点で、甲1発明と相違するものであり、上記(1)イ(ア)及び(イ)における判断と同様の理由により、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明3及び4について 請求項3及び4の記載は、請求項1又は2の記載を引用してさらに限定するものであり、本件発明3及び4は、本件発明1又は2の構成をすべて備えるものであるから、少なくとも、上記(1)ア(ク)の相違点2の点で、甲1発明と相違するものであり、上記(1)イ(イ)における判断と同様の理由により、甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)小括 上記(1)~(4)のとおりであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項、又は、同法同条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1及び2には理由がない。 3 申立理由3(サポート要件)についての当審の判断 (ア)申立人は、特許異議申立書において、特許請求の範囲の請求項1及び2には、「前記熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含み」との記載があるのに対し、本件明細書の段落0018、段落0044の表1及び段落0046の表2の記載によれば、水酸化アルミニウムと酸化アルミニウムを併用することは必須であるから、請求項1及び2に係る発明と、請求項1及び2を引用する請求項3及び4に係る発明は、本件明細書に記載された発明に比べて著しく広い旨主張している。 (イ)a 上記主張について検討する。本件明細書には、段落0028に「熱伝導性充填材には、例えば、金属や炭素、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭素繊維などからなる微細粉が挙げられる。」と記載され、段落0029に「金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、石英などが挙げられ」と記載されており、熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含むことが記載されているといえる。 よって、請求項1及び2に記載された「前記熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含み」は、本件明細書に記載された事項である。 b また、本件明細書には、段落0013に「このように本発明はリワーク性の良い熱伝導体を得るためになされたものであり、発熱体や放熱体から熱伝導体を簡単に剥せる技術を提供することを第1の目的とする。」との記載があるから、本件発明が解決しようとする課題は、発熱体や放熱体から熱伝導体を簡単に剥せる技術を提供すること(以下、「本件課題」という。)であるといえる。 c そして、本件明細書には、段落0031に「熱伝導性充填材の平均粒径は、8.0~50μmである。8.0μmよりも小さいと、粒径が5μm以下の粒子も相対的に多くなり、被着体に対する熱伝導性組成物の付着性が高くなって被着体から剥がし難くなる。」と記載され、段落0032に「また、熱伝導性充填材全体の含有量を100体積%としたときに、粒径5μm以下の粒子は20体積%以下であり、さらには14体積%以下が好ましい。粒径5μm以下の粒子の割合が20体積%を超えると、被着体に対する熱伝導性組成物の付着性が高くなり被着体から剥がし難くなるためである。」と記載され、段落0034に「熱伝導性充填材は、高分子マトリクスと混合した熱伝導性組成物において50~90体積%を占めるものとし、60~90体積%とすることがより好ましい。50体積%未満では、熱伝導性が低くなるおそれがある。また、被着体からの剥離性が悪くなるおそれがある。一方、90体積%を超えると熱伝導性組成物が塊状にならないか、塊状になっても凝集力が低くなって脆くなることから、被着体から千切れて剥すことが困難になる。」と記載されており、熱伝導性充填材の平均粒径が8.0~50μmであり、粒径5μm以下の粒子は20体積%以下であり、熱伝導性充填材は、高分子マトリクスと混合した熱伝導性組成物において50~90体積%を占める構成(以下、「構成2」という。)により、被着体から熱伝導性組成物を簡単に剥がせることを理解できる。 そうすると、構成2は、請求項1及び2に記載されたものであるから、請求項1及び2と、請求項1及び2を引用する請求項3及び4とに記載された構成により、上記bの本件課題を解決できることを当業者は理解できる。 よって、上記(ア)の申立人の主張を採用することはできない。 d したがって、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、申立理由3には理由がない。 4 申立理由4(実施可能要件)についての当審の判断 申立人は、特許異議申立書において、特許請求の範囲の請求項1及び2には、「前記熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含み」と記載され、熱伝導性充填材として水酸化アルミニウムを含むことは記載されていないのに対し、本件明細書の段落0018、段落0044の表1及び段落0046の表2によれば、水酸化アルミニウムと酸化アルミニウムを併用することは必須であるから、請求項1及び2に係る発明において、熱伝導性充填材として水酸化アルミニウムを含まない場合に、発明の効果を達成できることを理解することができず、また、請求項1及び2の記載を引用する請求項2~4に係る発明についても同様である旨主張している。 しかし、本件明細書には、段落0036に「熱伝導性組成物の製造は、高分子マトリクスに熱伝導性充填材やその他の必要な添加剤を加えて十分に攪拌、分散させることで行う。高分子マトリクスの主剤と硬化剤の何れか一方に熱伝導性充填材を混合させてから、熱伝導性充填材を含まない主剤と硬化剤の何れか他方を混合しても良いし、主剤と硬化剤の両者に熱伝導性充填材をそれぞれ混合してから、その主剤と硬化剤とを混合しても良い。」と記載されており、当業者は、上記記載により、本件発明1~4を製造すること、すなわち実施することが可能であることを理解できる。 よって、上記申立人の主張を採用することはできない。 したがって、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、申立理由4には理由がない。 5 申立理由5(新規事項)について 当初明細書等には、段落0028に「熱伝導性充填材には、例えば、金属や炭素、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭素繊維などからなる微細粉が挙げられる。」と記載され、段落0029に「金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、石英などが挙げられ」と記載されており、熱伝導性充填材として、金属酸化物が挙げられ、金属酸化物として酸化アルミニウムが挙げられている。 よって、当初明細書等には、熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含むことが記載されているといえる。 そうすると、本件補正により補正された請求項1及び2に記載された「前期熱伝導性充填材として酸化アルミニウムを含み」は、当初明細書等に記載された事項であるから、本件補正は、当初明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 したがって、請求項1~4に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす補正がされた特許出願に対してされたものであるから、申立理由5には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701357

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