特許異議申立
2024-700264
レーザ溶接モニタリング装置及びレーザ溶接モニタリング方法
- 審判番号
- 2024-700264
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-039761
- 登録番号
- 7353221
- 請求日
- 2024年03月22日
- 審決日
- 2024年07月23日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社アマダ
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【権利者代理人】高橋 俊一
- 【権利者代理人】伊藤 正和
- 【権利者代理人】高松 俊雄
- 【異議申立人】プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
- 【異議申立人代理人】弁理士法人YKI国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 堀内 亮吾
- 分類
- P1651.113-Y (B23K) / P1651.121-Y (B23K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7353221号発明「レーザ溶接モニタリング装置及びレーザ溶接モニタリング方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7353221号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7353221号の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和2年3月9日に出願され、令和5年9月21日にその特許権の設定登録がされ、同月29日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年3月22日に、その特許に対して、特許異議申立人プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー(以下「申立人」という。)は、請求項1~8に係る特許について、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7353221号の請求項1~8の特許に係る発明(以下請求項○の特許に係る発明を「本件特許発明○」といい、まとめて「本件特許発明」ということがある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光する受光ユニットと、
前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換する分光ユニットと、
前記反射光を第2の電気信号に変換し、前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるか否かを判定して、前記第2の電気信号のレベルが前記閾値以上となると前記レーザ溶接機が前記被溶接材料への溶接を開始したタイミングを示すトリガ信号を出力するトリガユニットと、
前記トリガ信号が入力されると、前記第1の電気信号に基づいて、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの判定を開始するレーザ溶接モニタと、
を備えるレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項2】
レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光する受光ユニットと、
前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、 分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換する分光ユニットと、
前記反射光を第2の電気信号に変換し、前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるときトリガ信号を出力するトリガユニットと、
前記トリガ信号が入力されると、前記第1の電気信号を所定時間積分した積分値が予め設定した上限値と下限値との間にあるか否かに基づく、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの監視を開始するレーザ溶接モニタと、
を備えるレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項3】
前記レーザビームの波長は900nm~1100nmであり、前記モニタリング光の波長は1300nm~2500nmの近赤外光である請求項1または2に記載のレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項4】
前記加工ヘッドは、前記加工ヘッドが射出する前記レーザビームを変位、振動、または回転させるガルバノスキャナと、前記レーザビームを前記被溶接材料に集束させて照射するfθレンズとを備え、
前記fθレンズの周囲に配置された複数の受光ユニットを備える
請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項5】
レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光ユニットで受光し、
前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、
分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換し、
前記反射光を第2の電気信号に変換し、
前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるか否かを判定して、前記第2の電気信号のレベルが前記閾値以上となると前記レーザ溶接機が前記被溶接材料への溶接を開始したタイミングを示すトリガ信号を生成し、
前記トリガ信号の入力をトリガとして、前記第1の電気信号に基づいて、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの判定を開始する
レーザ溶接モニタリング方法。
【請求項6】
レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である熱放射によるモニタリング光とを含む放射光を受光ユニットで受光し、
前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、
分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換し、
前記反射光を第2の電気信号に変換し、
前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるときトリガ信号を生成し、
前記トリガ信号の入力をトリガとして、前記第1の電気信号を所定時間積分した積分値が予め設定した上限値と下限値との間にあるか否かに基づく、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの監視を開始する
レーザ溶接モニタリング方法。
【請求項7】
前記レーザビームの波長は900nm~1100nmであり、前記モニタリング光の波長は1300nm~2500nmの近赤外光である請求項5または6に記載のレーザ溶接モニタリング方法。
【請求項8】
前記加工ヘッドは、前記加工ヘッドが射出する前記レーザビームを変位、振動、または回転させるガルバノスキャナと、前記レーザビームを前記被溶接材料に集束させて照射するfθレンズとを備え、
前記放射光を、前記fθレンズの周囲に配置された複数の受光ユニットで受光する
請求項5~7のいずれか1項に記載のレーザ溶接モニタリング方法。」
第3 申立ての理由
1 申立人が特許異議申立書で主張する申立ての理由の概要
(1)理由1(新規性)[甲第1号証による新規性欠如]
請求項1~3、5~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3、5~7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)理由2(進歩性)
ア 甲第1号証のみを引用例とする進歩性欠如
請求項1~3、5~7に係る発明は、甲第1号証の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、5~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 甲第1号証~甲第4号証を引用例とする進歩性欠如
請求項1~8に係る発明は、甲第1号証~甲第4号証の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 引用文献等一覧(以下、甲第○号証を「甲○」という。)
(1)甲第1号証:特開2000-153379号公報
(2)甲第2号証:特開2019-188409号公報
(3)甲第3号証:米国特許出願公開第2014/0251960号明細書
(4)甲第4号証:特開昭60-127090公報
第4 文献の記載
1 甲1
(1)甲1の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パルス状に出射するレーザ光をワークに照射して溶接を行うレーザ溶接方法に適用され、ワークにおける溶接の良好/不良等の溶接状態を即時に検出するためのレーザ溶接の溶接状態判定方法および溶接状態判定装置に関する。
・・・
【0004】一般に、レーザ溶接における溶接状態のオンライン計測技術としては、溶接時に溶接部分にて発生するプラズマを利用したもの、溶接時に発生する音(溶接音)を利用したもの、あるいはYAGレーザを用いたレーザ溶接時に溶接部から発生する散乱光(以後、反射光と呼ぶ)を利用したものが有る。即ち、プラズマ光強度、プラズマ電位、溶接音レベル、あるいは反射光強度を測定し、その測定値に基づいて溶接欠陥を検出するものが、開示もしくは提案されている。
・・・
【0010】本発明の課題は、溶接状態を高精度かつ詳細に、しかも迅速に即時判定できるレーザ溶接の溶接状態判定方法を提供することである。
【0011】本発明の他の課題は、溶接状態を高精度かつ詳細に、しかも迅速に即時判定できるレーザ溶接の溶接状態判定装置を提供することである。
・・・
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、パルス状に発生するレーザ光をワークに照射して溶接を行うレーザ溶接方法に適用され、ワークにおける溶接の良好/不良等の溶接状態を即時に判定するためのレーザ溶接の溶接状態判定方法において、レーザ溶接時にワークから放出されるプラズマ光および反射光のうちの少なくとも一方の強度を検出光強度として検出する検出光強度検出工程と、レーザ光の1パルスに対応する前記検出光強度の1周期のうちから所定の区間を抽出区間として予め設定しておく抽出区間設定工程と、前記抽出区間における前記検出光強度に基づいてパルス毎特徴値をレーザ光の各パルス毎に抽出するパルス毎特徴値抽出工程と、ワーク毎の溶接状態の被判定値として、ワークにおける前記パルス毎特徴値のうちの極値を得る極値取得工程と、ワーク毎の溶接状態を前記極値に基づいて判定する際の判定基準としてのしきい値を予め設定しておくしきい値設定工程と、前記極値と前記しきい値とを比較してワーク毎の溶接状態を判定する溶接状態判定工程とを有することを特徴とするレーザ溶接の溶接状態判定方法が得られる。
【0013】本発明によればまた、前記抽出区間設定工程では、前記抽出区間を、前記検出光強度の1周期の立ち上がり時刻からの遅刻時間と、当該遅刻時刻からの経過時間とにより定義する前記レーザ溶接の溶接状態判定方法が得られる。
・・・
【0021】図1を参照して、本発明による溶接状態判定方法を実現するためのレーザ溶接システムは、パルス状のレーザ光を発生するYAGレーザ発振器301と、発生したレーザ光を伝搬する光ファイバ302と、図示しない走査機構が接続され、伝搬されたレーザ光が入力されるレーザトーチ303とを有している。レーザトーチ303から出射されるレーザ光は、照射光Lwとして図示しない走査テーブル上に載置されたワーク500に照射され、レーザ溶接が行われる。溶接時には、ワーク500の溶接部から、反射光Lrおよびプラズマ光Lpが発生する。
【0022】レーザトーチ303は、トーチ本体303aおよびトーチ上部303cからなる筐体を備えている。トーチ本体303a内には、光ファイバ302を通して伝搬されたレーザ光を反射する一方、反射光Lrおよびプラズマ光Lpを透過するYAGレーザ反射ミラー303bと、YAGレーザ反射ミラー303bで反射されたレーザ光を照射光Lwとして集光する図示しない集光レンズと、YAGレーザ反射ミラー303bを透過した反射光Lrおよびプラズマ光Lpを集光する図示しない集光レンズと、YAGレーザ反射ミラー303bを透過した反射光Lrおよびプラズマ光Lpのうち概ねプラズマ光Lpを透過する一方、概ね反射光Lrを反射するYAG光反射ミラー303dと、YAG光反射ミラー303dを透過したプラズマ光Lpを含む光のうちからプラズマ光Lpのみを抽出する図示しないフィルタと、YAG光反射ミラー303dを反射した反射光Lrを含む光のうちから反射光Lrのみを抽出する図示しないフィルタとが備えられている。
【0023】さらに、本レーザ溶接システムは、ワーク500における溶接状態を検出する溶接状態判定装置100を有している。溶接状態判定装置100は、トーチ上部303cに接続され、YAG光反射ミラー303dを透過後にフィルタによってろ過されたプラズマ光Lpを受光してその光強度に応じた電気信号Spを出力するプラズマ光用センサ102と、トーチ上部303cに取り付けられ、YAG光反射ミラー303dを反射後にフィルタによってろ過された反射光Lrを受光してその光強度に応じた電気信号Srを出力する反射光用センサ103と、プラズマ光用センサ102および反射光用センサ103からの電気信号Spおよび電気信号Srを用いてプラズマ光Lpおよび反射光Lr両光の強度に基づいて後述するように溶接状態を判定する溶接状態判定処理部101と、検出した溶接状態をディスプレイ等に表示するための表示部104と、検出した溶接状態を記憶するための記憶部105とを備えている。尚、溶接状態判定処理部101は、アナログの電気信号Spおよび電気信号Srをデジタル信号に変換するA/D変換器と、そのデジタル信号を処理するCPUと、処理の際に用いるデータ等を例えば予め記憶したメモリとを備えている。
【0024】さて、溶接状態判定処理部101は、レーザ溶接時にワーク500から放出されるプラズマ光Lpおよび反射光Lrの強度を検出光強度として検出する検出光強度検出部と、レーザ光(照射光Lw)の1パルスに対応する検出光強度の1周期のうちから所定の区間を抽出区間として予め設定しておく抽出区間設定部と、抽出区間における検出光強度に基づいてパルス毎特徴値をレーザ光の各パルス毎に抽出するパルス毎特徴値抽出部と、ワーク毎の溶接状態の被判定値として、ワークにおけるパルス毎特徴値のうちの極値を得る極値取得部と、ワーク毎の溶接状態を極値に基づいて判定する際の判定基準としてのしきい値を予め設定しておくしきい値設定部と、極値としきい値とを比較してワーク毎の溶接状態を判定する溶接状態判定部とを有している。
・・・
【0026】次に、本溶接状態判定装置100の動作説明をも兼ね、本発明の実施の形態によるレーザ溶接の溶接状態判定方法を説明する。
【0027】本判定方法では、反射光Lrとプラズマ光Lpのセンサ信号の特徴抽出を行い、2つのセンサの特徴値を組み合わせて、インラインで溶接欠陥自動検出を行うことが特徴である。
【0028】さらに、この特徴値にもとづいて、良品と欠陥品を分離するためのパラメータ計算も行うことができる。
【0029】尚、レーザ発振状態は矩形波発振(パルス発振)、連続発振(CW)などがある。本アルゴリズムは、パルス発振の欠陥検出アルゴリズムである。ここで、パルス発振とは、CW(連続波)に対して、後に説明する図2に示すように、ON-OFFを繰り返すものである。例えば、パルス発振のRate(発振周波数)=100Hzの場合、1秒間に100パルスのON-OFFを繰り返す。
【0030】溶接状態判定処理部101は、少なくともレーザ溶接時にワーク500から放出されるプラズマ光Lpおよび反射光Lrのうちの一方の強度を、検出光強度として検出する(検出光強度検出工程)。
【0031】尚、レーザ光の1パルスに対応する検出光強度の1周期のうちから所定の区間は、抽出区間として予め記憶部105に記憶しておく(抽出区間設定工程)。
【0032】抽出区間における検出光強度に基づいて、パルス毎特徴値を、レーザ光の各パルス毎に抽出する(パルス毎特徴値抽出工程)。
【0033】ワーク毎の溶接状態の被判定値として、ワークにおけるパルス毎特徴値のうちの極値を得る(極値取得工程)。
【0034】尚、ワーク毎の溶接状態を前記極値に基づいて判定する際の判定基準としてのしきい値は、記憶部105に予め記憶しておく(しきい値設定工程)。
【0035】極値としきい値とを比較して、ワーク毎の溶接状態を判定する(工程)。
【0036】尚、抽出区間設定工程では、抽出区間を、検出光強度の1周期の立ち上がり時刻からの遅刻時間と、その遅刻時刻からの経過時間とにより定義してもよい。
・・・
【0038】また、検出光強度としては、プラズマ光Lpおよび反射光Lrの両方の強度を用い、しきい値としては、プラズマ光Lpに関する極値の判定基準としてのプラズマ光用しきい値と、反射光Lrに関する極値の判定基準としての反射光用しきい値とを含み、溶接状態判定工程では、プラズマ光Lpおよび反射光Lrそれぞれの判定結果ならびに予め設定した両判定結果の重み付けに基づいてワーク毎の溶接状態を最終的に判定するようにしてもよい。
【0039】また、パルス毎特徴値抽出工程では、抽出区間における検出光強度について、平均値、差分処理による変化量、および差分処理による振幅のうちのいずれかを算出することにより、パルス毎特徴値を抽出するようにしてもよい。
・・・
【0042】以下、本発明の実施の形態によるレーザ溶接の溶接状態判定方法を、より具体的に説明する。
【0043】図2は、レーザ光(照射光Lw)、溶接状態判定処理部101に入力される電気信号Sr、即ち、反射光用センサ103によって検出された反射光Lr、ならびに、溶接状態判定処理部101に入力される電気信号Sp、即ち、プラズマ光用センサ102によって検出されたプラズマ光Lpの各光強度の一例を時系列的に示している。尚、溶接状態判定処理部101のCPUは、図2のような電気信号を、A/D変換器を通して、実際にはデジタル信号の形態で得る。また、照射光Lwの光強度は、例えば、YAGレーザ発振器301からのパワーモニタ信号に基づいて得ている。
【0044】次に、特徴抽出のアルゴリズムを説明する。
【0045】(1)製品(ワーク)毎にセンサ信号を取り込む。センサ信号の取り込みについては、高速なサンプリング周波数で行う。
【0046】(2)1パルス毎の特徴値抽出
(2-1)レーザ光(照射光Lw)のパルスの立ち上がりを開始基準として、反射光Lrに関する抽出期間を予め設定しておく。例えば、図3では、パルスの立ち上がり時刻からの遅刻時間dと、その遅刻時刻からの経過時間Pによって、抽出区間は定義される。尚、図3には示していないが、プラズマ光Lpに関しても、同じ抽出区間が設定されてもよい。
【0047】(2-2)パルスの立ち上がりは、容易にレーザパワー信号から得ることができる。
【0048】(2-3)全てのパルスに対して、あらかじめ設定された抽出区間(経過時間P)におけるパルス毎特徴値抽出処理を行う。
【0049】(2-4)パルス毎特徴値抽出処理とは、1パルス毎のセンサ信号の平均値を計算し、大きさを求めることである。尚、差分処理から変化量、振幅など予め設定したアルゴリズムにもとづいて計算処理を行ってもよい。
【0050】図3では反射光Lrのパルス毎特徴値抽出処理のみを示してあるが、プラズマ光Lp、レーザ光(照射光Lw)の強度についても同様な処理を行う。
【0051】(2-5)1パルスのセンサ信号から1つの特徴値(パルス毎計算結果)を計算する。
【0052】(2-6)パルス毎特徴値抽出処理は、1ワークにつき、全てのパルスについて行う。
【0053】(3)製品毎(ワーク毎)の特徴値の極値抽出
例えば、図2に示すように、欠陥が発生した部分では反射光Lrのレベルが低く、プラズマ光Lpのレベルが高い。図2および図3に示した欠陥の場合には、製品毎(ワーク毎)に、反射光Lrの下限値(最小値)、プラズマ光Lpの上限値(最高値)を特徴値の極値として欠陥の判定を行う。
【0054】(4)溶接欠陥判定
良品の場合の、反射光Lr、プラズマ光Lpの特徴値と比較して、欠陥検出処理を行う。製品毎(ワーク毎)のパルス毎特徴値の下限値、上限値を計算し、予め設定した良品と欠陥品の特徴値のしきい値との比較で欠陥判定を行う。しきい値による判定については、発明者による特願平10-33721号にて提案されている。
【0055】特徴値抽出処理の他の例として、1パルス当たり、複数の特徴値を抽出してもよい。
【0056】前述の例では、パルス毎に1部分を処理するような方法を説明した。欠陥品と良品とをより高精度に区別するために、1パルス毎の特徴値抽出区間を調整する。
・・・
【0058】また、欠陥判定については、反射光Lrとプラズマ光Lpそれぞれ独立に行ってもよい。さらに、2つのセンサ信号を組み合わせ(反射光Lrとプラズマ光Lpとの組み合わせの計算結果等)てもよい。欠陥の種類や特徴により、反射光Lr、プラズマ光Lpを組み合わせることで欠陥検出の精度が向上する。」
【0059】以下に、特徴値抽出処理のためのパルス毎の特徴値抽出区間の決定方法と、欠陥判定のしきい値を求める手法を説明する。
【0060】レーザパワーや溶接速度などの溶接条件や、欠陥の種類や特徴により、反射光Lrとプラズマ光Lpの特性は変わる。したがって、1パルス毎に特徴値抽出区間を何処(何時)に設定するかが重要である。つまり、良品と欠陥品が分離できるように、どの区間を処理すれば最適であるかを求める必要がある。
【0061】1パルス毎の最適な特徴値抽出区間は、記憶部105(図1)に蓄積記憶した製品毎(ワーク毎)のセンサデータから、オフライン解析でユーザが対話形式で更新値を求めることができる。
【0062】例えば、図5(a)はとある特徴値抽出区間に設定した際の、複数ワークの反射光Lrおよびプラズマ光Lp極値の分布である。このような設定では、良品/不良品を区別することは困難である。よって、1パルス毎の特徴値抽出区間を変更し、図5(b)に示すような分布とし、統計処理を行い、特徴値抽出区間を更新する。図5(b)のような設定によれば、良品/不良品の区別だけではなく、溶接欠陥の種類の区別をも実現できる。
【0063】しきい値についても同様に、オフライン解析で、ユーザが対話形式で更新値を求めることができる。
イ 図面
(イ)図1
[図:0001413364000001.jpg]
(イ)図2
[図:0001413364000002.jpg]
(ウ)図3
[図:0001413364000003.jpg]
(エ)図5
[図:0001413364000004.jpg]
(2)甲1の記載事項の整理
ア 段落【0021】、図1の記載からみて、甲1記載のレーザ溶接システムは、YAGレーザ発振器301のレーザ光が入力されたレーザトーチ303が、出射する照射光Lwをワーク500に照射するものである。この照射光Lwをワーク500に照射しているときに、照射光Lwの溶接部で、照射光Lwの反射光Lrと、プラズマ光Lpを含む光が溶接部から発生し、プラズマ光Lpが反射光Lrとは波長が異なる光であることは明らかである。そして、段落【0022】、図1の記載からみて、反射光Lrとプラズマ光Lpは、YAGレーザ反射ミラー303b、及び反射光Lrとプラズマ光Lpを集光する集光レンズが設けられたトーチ本体303aに受光される。
イ 段落【0022】、【0023】、図1の記載からみて、YAG光反射ミラー303d及びプラズマ光用センサ102において、溶接部から発生した光に含まれている反射光Lrとプラズマ光Lpとを分光し、分光したプラズマ光Lpを電気信号Spに変換し、また、反射光用センサ103において、反射光Lrを電気信号Srに変換する。
ウ 段落【0013】、【0031】、【0036】、【0046】、図3の記載からみて、溶接状態判定処理装置101の抽出区間設定部は、前記電気信号Sp又は前記電気信号Srの1パルスに対応する1周期のうちからパルスの立ち上がり時刻からの遅刻時間dを開始基準として所定の区間Pを、前記反射光Lr又は前記プラズマ光Lpに関する特徴値の抽出区間として予め設定する。
エ 段落【0012】、【0024】、【0038】、【0054】、【0058】、【0059】~【0062】、図3、図5の記載からみて、溶接状態判定処理装置101の溶接状態判定部は、上記ウの抽出区間において、電気信号Sp又は電気信号Srに基づいて、前記ワーク500のレーザ溶接が正常に行われているか否かの判定をする。
(3)甲1発明
上記(1)~(2)より、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「YAGレーザ発振器301のレーザ光が入力されたレーザトーチ303が出射する照射光Lwをワーク500に照射しているときに、前記照射光Lwの溶接部で発生する、前記照射光Lwの反射光Lrと、前記反射光Lrとは波長が異なる光であるプラズマ光Lpを含む溶接部から発生した光を受光する、YAGレーザ反射ミラー303b、及び反射光Lrとプラズマ光Lpを集光する集光レンズが設けられたトーチ本体303aと、
前記溶接部から発生した光に含まれている前記反射光Lrと前記プラズマ光Lpとを分光し、分光した前記プラズマ光Lpを電気信号Spに変換する、YAG光反射ミラー303d及びプラズマ光用センサ102と、
前記反射光Lrを電気信号Srに変換する、反射光用センサ103が設けられたトーチ上部303cと、
前記電気信号Sp又は前記電気信号Srの1パルスに対応する1周期のうちからパルスの立ち上がり時刻からの遅刻時間dを開始基準とした所定の区間Pを、前記反射光Lr又は前記プラズマ光Lpに関する特徴値の抽出区間として予め設定する抽出区間設定部と、
予め設定した前記抽出区間において、前記電気信号Sp又は電気信号Srに基づいて、前記ワーク500のレーザ溶接が正常に行われているか否かの判定をする溶接状態判定部と、
を備えるレーザ溶接システム。」
2 甲2
(1)甲1の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ加工装置は、加工対象物を溶融して溶接、穿孔又は切断などの加工を行う。しかしながら、加工対象物の表面状態は酸化又は汚れなどにより変化し、これによりレーザ光の吸収率が変化する。このため、レーザ光を加工対象物に照射してから加工点が溶融に至るまでの時間にはバラツキが生じる。特に、銅、アルミなど、レーザ光を反射しやすい材料では、溶融に至るまでの時間のバラツキが顕著に現れる。
【0006】
しかしながら、従来のレーザ加工装置は、上記のような溶融に至るまでの時間のバラツキを予め検知できないため、バラツキの少ない加工を行うことが難しかった。
【0007】
一方、本発明者らは、加工点の反射光の光量及び加工点のプラズマ光の光量が加工点の溶融開始時に顕著に変化することを見出した。
【0008】
本発明は、バラツキの少ない加工を実現できるレーザ加工装置の制御装置、レーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
・・・
【0012】
本発明のレーザ加工方法は、
加工対象物にレーザ光を照射し、
レーザ光が照射される加工対象物の加工点から生じる光の光量を検出し、
前記光量の検出結果に基づき前記加工対象物の溶融開始を表わす前記光量の変化点を判別し、
前記変化点を起点としてレーザ加工条件を制御する方法を採用した。
・・・
【0017】
本発明の実施形態に係るレーザ加工装置1は、金属の加工対象物25に高エネルギー密度のレーザ光を照射して溶接、穿孔又は切断する加工装置である。レーザ加工装置1は、図1に示すように、レーザ発振器11、出射ヘッド12、反射光センサ13、反射光用ミラー14、プラズマ光センサ15、プラズマ光用ミラー16、レーザ光反射ミラー22、集光レンズ23、XYZテーブル24及び計算装置30を備える。これらの構成要素のうち、計算装置30と、反射光センサ13及びプラズマ光センサ15を含んだ筐体12aとが、制御装置2を構成する。反射光センサ13とプラズマ光センサ15は本発明に係る検出部の一例に相当する。XYZテーブル24は、本発明に係る走査部の一例に相当する。
【0018】
レーザ発振器11は、例えばYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザであり、高エネルギー密度のレーザ光を出力する。レーザ発振器11としては、CO2レーザ、エキシマレーザ等を適用することもできる。
【0019】
レーザ光反射ミラー22及び集光レンズ23は出射ヘッド12内に配置され、レーザ発振器11から出力されたレーザ光を反射及び屈折させて、加工点に収束させる。また、集光レンズ23は、加工点からのレーザ光の反射光及び加工点に発生したプラズマ光を集光する。さらに、レーザ光反射ミラー22は集光された反射光及びプラズマ光の一部を検出用に透過させる。
【0020】
反射光センサ13は、出射ヘッド12に追加された筐体12a内に配置され、レーザ光反射ミラー22を透過して筐体12a内へ送られたレーザ光の反射光の光量を検出する。レーザ光反射ミラー22は、筐体12a内で反射光を反射光センサ13の方へ屈曲させる。反射光センサ13には、加工点から反射されたレーザ光の反射光が所定比率で減衰されて届く。このため、反射光センサ13が検出した反射光の光量は、加工点で生じる反射光の光量に比例する。反射光用ミラー14は、プラズマ光の波長の光を透過させる。
【0021】
プラズマ光センサ15は、筐体12a内に配置され、レーザ光反射ミラー22と反射光用ミラー14とを透過したプラズマ光の光量を検出する。プラズマ光用ミラー16は、筐体12a内でプラズマ光をプラズマ光センサ15の方へ屈曲させる。プラズマ光センサ15には、加工点で発生したプラズマ光が所定比率で減衰されて届く。このため、プラズマ光センサ15が検出したプラズマ光の光量は、加工点で生じたプラズマ光の光量に比例する。
・・・
【0026】
<溶融開始変化点の判別処理>
先ず、溶融開始変化点の判別処理の原理について説明する。図2は、溶融開始時の反射光量の変化を示す特性グラフである。
【0027】
加工対象物25にレーザ光を照射すると、レーザ光が加工点で吸収されるのに伴い加工点の温度が上昇し、溶融温度を超えて加工点が溶融する。加工対象物25にレーザ光の照射を開始した後、レーザ光の反射光の光量は、図2に示すように、一旦、上昇し、その後、照射箇所の溶融が開始されると、反射光の光量は急峻に低下する。加工対象物25の表面状態が酸化又は汚れなどにより安定していないと、溶融前のレーザ光の吸収率にバラツキが生じる。このため、照射開始から溶融開始までの時間T1は、加工対象物25の表面状態に応じてばらつくが、いずれの場合でも、溶融開始時に反射光量の急峻な低下が現れる。
【0028】
したがって、レーザ光を照射した後、反射光量の検出値と閾値lthとを比較し、検出値が閾値lthよりも低くなった場合に、溶融開始の変化点を判別することができる。閾値lthは、所定の固定値として設定されてもよく、このような設定により、溶融の前後で反射光量が大きく変わるような場合に、単純な計算処理(少ない計算負荷)で溶融開始の変化点を判別できる。また、閾値lthは、照射開始直後の安定した反射光量から所定値低い値あるいは所定の割合で低い値として設定されてもよい。このような設定により、加工対象物25の表面状態が非常に不安定で、溶融前の反射光量が低くなることがあるような場合でも、溶融開始の変化点を正確に判別できる。あるいは、加工対象物25の材質等に応じてレーザ光の出力パワーが切り替えられる場合には、閾値lthはレーザ光の出力パワーの所定比率の値として設定されてもよい。このような設定により、レーザ光の出力パワーが可変で、溶融前後の反射光量が一定とならない場合にも対応して、溶融開始の変化点を正確に判別できる。
イ 図面
(ア)図1
[図:0001413364000005.jpg]
(イ)図2
[図:0001413364000006.jpg]
(2)甲2記載の技術的事項
上記(1)より、甲2には次の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「バラツキの少ない加工を行うことを目的として、加工対象物にレーザ光を照射し、レーザ光が照射される加工対象物の加工点から生じる反射光あるいはプラズマ光の光量を検出し、前記光量の検出結果に基づき前記加工対象物の溶融開始を表わす前記光量の変化点を判別し、前記変化点を起点としてレーザ加工条件を制御するレーザ加工装置の制御。」
3 甲3
(1)甲3の記載事項(翻訳は特許異議申立書に添付されたものによる。)
ア 「[0001] The present invention refers generally to welding of nuclear components, in particular nuclear components made of zirconium based alloys.」
「本発明は、一般に原子力部品、特にジルコニウム基合金製の原子力部品の溶接に関する。」
イ 「[0010] An object of the present invention is to provide an improved method of welding a fuel rod, especially of welding end plugs without fill hole to a cladding tube of the fuel rod. This object is achieved by the method of welding a nuclear fuel rod including two end plugs, a cladding tube and a pile of fuel pellets in the interior of the cladding tube, the method comprising the steps of:
bringing one of the end plugs and the cladding tube together to abut each other at an interface, and
welding the end plug and the cladding tube by means of a welding equipment by applying a laser beam of a laser source of the welding equipment, the laser beam having a wavelength and being directed along an optical path of the welding equipment to a welding zone at the interface to melt material of the end plug and the cladding tube at the interface,
characterised by the further steps of:
sensing the welding by sensing radiation from the welding zone comprising:
sensing radiation within a first wavelength range, which includes the wavelength of the laser beam coming from reflections from the welding zone,
sensing radiation within a second wavelength range different from the first wavelength range, which includes infrared radiation from melted material in the welding zone, and
sensing radiation within a third wavelength range different from the first wavelength range and the second wavelength range, which includes radiation from plasma in the welding zone, and
monitoring the welding and melting of material by monitoring the sensed radiations.」
「この目的は、2つのエンドプラグと、被覆管と、被覆管の内部にある燃料ペレットの山と、を含む核燃料棒を溶接する方法によって達成される:
エンドプラグの一方と被覆管とを、界面において互いに突き当たるように接触させるステップと、
溶接装置を用いて、溶接装置のレーザ光源からレーザビームを照射することにより、エンドプラグと肉盛管とを溶接するステップであって、レーザビームは、界面においてエンドプラグと肉盛管との材料を溶融させるための、波長を有し、溶接装置の光路に沿って界面の溶接ゾーンに照射され、ステップと、
以下のさらなるステップを含むことを特徴とする:
溶接ゾーンからの放射光を感知することによって溶接を感知するステップであって、
溶接ゾーンからの反射から来るレーザビームの波長を含む第1の波長範囲内の放射光を検出し、
第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲内であって、溶接ゾーン内の溶融材料からの赤外線放射光を含む放射光を検出し、
第一の波長範囲及び第二の波長範囲とは異なる第三の波長範囲内であって、溶接ゾーン内のプラズマからの放射光を含む放射光を検出し、及び、
検出された放射光をモニターすることによって、材料の溶接と溶融をモニターする。」
ウ 「[0030] According to a further embodiment of the invention, the wavelength of the laser beam lies in the range 1050-1090 nm, preferably in the range 1060-1080 nm, for instance 1070 nm.」
「本発明のさらなる実施形態によれば、レーザビームの波長は、1050~1090nmの範囲、好ましくは1060~1080nmの範囲、例えば1070nmの範囲にある。」
エ 「[0031] According to a further embodiment of the invention, the second wavelength range is 1100-1800 nm.
「本発明のさらなる実施形態によれば、第2の波長域は1100~1800nmである。」
(2)甲3記載の技術的事項
上記(1)より、甲3には次の技術的事項(以下「甲3記載の技術的事項」という。)
「溶接を感知する溶接ゾーンからの放射光について、レーザビームの波長を含む第1の波長が1050~1090nmの範囲、好ましくは1060~1080nmの範囲、例えば1070nmの範囲にあり、第1の波長範囲とは異なる赤外線放射光を含む第2の波長が1100~1800nmであること。」
4 甲4
(1)甲4の記載事項
ア 発明の詳細な説明
(ア)「ダイクロイックミラー(3)の後方には第1の受光部(11)が設けられている。この第1の受光部(11)はダイクロイックミラー(3)を透過したレーザ光(2b)を受光するためのものである。また、加工物(5)の加工部付近には第2の受光部(12)が設けられている。この第2の受光部(12)は集光されたレーザ光(2a)が加工物(5)に照射したときに発生する蒸気の発光(5a)を受光するためのものである。」(第2ページ右下欄第4~11行)
(イ)「第3図は信号処理部(15)の詳細を説明するためのブロック図である。石英光ファイバー(13)、ライトガイド(14)によって送られたそれぞれの光は受光素子(21a)、(21b)で電流に変換される。さらに、受光素子(21a),(21b)は電流電圧回路(22a)、(22b)に接続され、さらにこれらは電圧増幅回路(23a),(23b)に接続されている。ここで、電流信号は電圧信号に変換され、さらに増幅される。電圧増幅回路(23a)、(23b)には積分回路(24a)、(24b)がそれぞれ接続され、増幅された電圧は積分回路(24a)、(24b)により積分され、結果的にレーザ光(2b)、蒸気の発光(5a)のそれぞれの光量が演算される。」(第3ページ左上欄第9~20行)
(ウ)「第4図に示されるように、制御部(16)は信号処理部(15)から得た検出値のうち、まず初めに、レーザ光(2b)の光量について適正値と比較する。ここで、検出した値が所定値と比較し、その許容範囲より大きければ「レーザ出力過大」、小さければ「レーザ出力過小」という表示を出力し、レーザ発振器(1)側に異常があることを知らせる。レーザ光(2b)の光量が比較の結果、適正であれば、さらに蒸気の発光(5a)の光量、時間差について適正値と比較し、それぞれの適正、過大、過小の組み合わせにより結果の表示を出力する。」(第3ページ左下欄第17行~右下欄第7行)
イ 図面
(ア)第2図
[図:0001413364000007.jpg]
(イ)第3図
[図:0001413364000008.jpg]
(ウ)第4図
[図:0001413364000009.jpg]
(2)甲4記載の技術的事項
上記(1)より、甲4には次の技術的事項(以下「甲4記載の技術的事項」という。)
「レーザ加工の異常検出をするために、レーザ光の光量、及び蒸気の発光を受光して光量を積分演算して求め、適正値と比較して、許容範囲より過大であるか、許容範囲より過小であるか、適正であるかを評価する。」
第5 当審の判断
1 本件特許発明1
(1)本件特許発明1と甲1発明の対比
ア 甲1発明の「YAGレーザ発振器301のレーザ光が入力されたレーザトーチ303」は本件特許発明1の「レーザ溶接機に備えられている加工ヘッド」に相当し、以下同様に「出射する」は「射出する」に、「照射光Lw」は「レーザビーム」に、「ワーク500」が「被溶接材料」に、「溶接部」は「照射位置」に、「反射光Lr」は「反射光」に、「溶接部から発生した光」は「放射光」に、「YAGレーザ反射ミラー303b、及び反射光Lrとプラズマ光Lpを集光する集光レンズが設けられたトーチ本体303a」は「受光ユニット」に、それぞれ相当する。そして、甲1発明の「プラズマ光Lp」と本件特許発明1の「熱放射によるモニタリング光」とを対比すると、プラズマ光は熱放射による光とは異なるものの甲1の段落【0024】には、検出光強度検出部が、プラズマ光Lpの強度を検出光強度として検出する旨が記載されており、両者は「溶接状態を判定するための光」である点では一致することが理解できる。
イ 甲1発明の「前記溶接部から発生した光に含まれている前記反射光Lrと前記プラズマ光Lpとを分光し、分光した前記プラズマ光Lpを電気信号Spに変換する、YAG光反射ミラー303d及びプラズマ光用センサ102」と、本件特許発明1の「前記放射光に含まれている前記反射光と前記モニタリング光とを分光し、分光した前記モニタリング光を第1の電気信号に変換する分光ユニット」を対比すると、「前記放射光に含まれている前記反射光と前記溶接状態を判定するための光とを分光し、分光した前記溶接状態を判定するための光を第1の電気信号に変換する分光ユニット」という点に限り一致する。
ウ 甲1発明の「前記反射光Lrを電気信号Srに変換」することは、本件特許発明1の「前記反射光を第2の電気信号に変換」することに相当する。そして、甲1発明の「前記反射光Lrを電気信号Srに変換する、反射光用センサ103が設けられたトーチ上部303cと、前記電気信号Sp又は前記電気信号Srの1パルスに対応する1周期のうちからパルスの立ち上がり時刻からの遅刻時間dを開始基準とした所定の区間Pを、前記反射光Lr又は前記プラズマ光Lpに関する特徴値の抽出区間として予め設定する抽出区間設定部」と本件特許発明1の「前記反射光を第2の電気信号に変換し、前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるか否かを判定して、前記第2の電気信号のレベルが前記閾値以上となると前記レーザ溶接機が前記被溶接材料への溶接を開始したタイミングを示すトリガ信号を出力するトリガユニット」を対比すると、両者は「前記反射光を変換した電気信号に基づいて前記被溶接部材のレーザ溶接の監視の時期を制御するユニット」という点に限り一致する。
エ 甲1発明の「予め設定した前記抽出区間において、前記電気信号Sp又は電気信号Srに基づいて、前記ワーク500のレーザ溶接が正常に行われているか否かの判定をする溶接状態判定部」と本件特許発明1の「前記トリガ信号が入力されると、前記第1の電気信号に基づいて、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かの判定を開始するレーザ溶接モニタ」を対比すると、両者は「前記第1の電気信号に基づいて、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かを判定するレーザ溶接モニタ」という点に限り一致する。
(2)本件特許発明1と甲1発明の一致点及び相違点
本件特許発明1と甲1発明は次のアの点で一致し、イ~ウの点で相違する。
ア 一致点
レーザ溶接機に備えられている加工ヘッドが射出するレーザビームを被溶接材料に照射しているときに、前記レーザビームの照射位置で発生する、前記レーザビームの反射光と、前記反射光とは波長が異なる光である溶接状態を判定するための光とを含む放射光を受光する受光ユニットと、
前記放射光に含まれている前記反射光と前記溶接状態を判定するための光とを分光し、分光した前記溶接状態を判定するための光を第1の電気信号に変換する分光ユニットと、
前記反射光を変換した電気信号に基づいて前記被溶接部材のレーザ溶接の監視の時期を制御するユニットと、
前記第1の電気信号に基づいて、前記被溶接材料のレーザ溶接が正常に行われているか否かを判定するレーザ溶接モニタと、
を備えるレーザ溶接モニタリング装置
イ 相違点1
本件特許発明1の溶接状態を判定するための光が熱放射によるものであるのに対して、甲1発明の溶接状態を判定するための光はプラズマ光である点。
ウ 相違点2
レーザ溶接が正常に行われているか否かの判定の開始の時期に関し、
(ア)本件特許発明1においては、
(A)トリガユニットが、反射光を第2の電気信号に変換し、第2の電気信号のレベルが閾値以上となるとレーザ溶接機が被溶接材料への溶接を開始したタイミングを示すトリガ信号を出力し、
(B)レーザ溶接モニタが、トリガ信号が入力されると、判定を開始するのに対して、
(イ)甲1発明においては、
(a)トーチ上部303cに設けられた反射光用センサ103が反射光Lrを電気信号Srに変換し、抽出区間設定部が、プラズマ光Lpを変換した第1の電気信号(電気信号Sp)又は反射光Lrを変換した第2の電気信号(電気信号Sr)の1パルスに対応する1周期のうちからパルスの立ち上がり時刻からの遅刻時間dを開始基準とした所定の区間Pを、前記反射光Lr又は前記プラズマ光Lpに関する特徴値の抽出期間である抽出区間として予め設定し、
(b)溶接状態判定部が、予め設定した前記抽出区間において判定する、すなわち、プラズマ光Lp又は反射光Lrのパルスの立ち上がり時刻からの遅刻時間dにおいて、判定を開始する点。
(3)理由1(新規性)(第3の1(1))について
上記(2)より、本件特許発明1は、甲1発明との間に相違点が存在するから、甲1発明と同一ではなく、甲1に記載された発明とはいえない。
(4)理由2(進歩性)(第3の1(2)ア~イ)について
事案に鑑み、上記(2)ウの相違点2から検討する。
本件特許発明1と甲1発明は、いずれもレーザ溶接機のレーザビームの反射光の立ち上がりを観察してレーザ溶接が正常に行われているか否かを判定する時期を決める点では共通するが、前者においては、反射光のパルスの電気信号のレベルが閾値以上となると判定を開始するのに対して、後者においては、反射光Lrのパルスの立ち上がり時刻からの遅刻時間dにおいて、判定を開始するところ、甲1には、この遅刻時間dを、反射光のパルスの電気信号のレベルが閾値以上となることに置換することについて、記載や示唆はない。
また、甲1の図3を参照すると、反射光Lrの強度は、パルスの立ち上がり時刻が最も強く、遅刻時間dでは低くなっているから、遅刻時間dを、反射光のパルスの電気信号のレベルが閾値以上となることで置換することはできない。すなわち、仮に、遅刻時間dにおける反射光Lrの強度を閾値とすると、パルスの立ち上がり時刻において、反射光Lrの強度が閾値以上となるため、パルスの立ち上がり時刻において、レーザ溶接が正常に行われているか否かを判定することになり、遅刻時間dにおいて、レーザ溶接が正常に行われているか否かを判定することはできない。
そして、甲1発明は、反射光Lr又はプラズマ光Lpについて抽出された区間における特徴値に基づいて、溶接欠陥判定を行うものであるところ、特徴値の抽出区間は、欠陥の種類等により、反射光Lr又はプラズマ光Lpの特性が変化することに応じて、欠陥品を判定できるように、最適に決定する必要がある(【0060】)から、甲1発明において、遅刻時間dを捨象して認定すること(すなわち、特徴値の抽出区間が、常に、パルスの立ち上がり時刻から開始されると認定すること)は相当ではない。
したがって、甲1の記載に接した当業者が、甲1発明の遅刻時間dを、反射光のパルスの電気信号のレベルが閾値以上となることで置換するように想到するとはいえない。
また、甲1発明は、欠陥の種類等に応じて良品と欠陥品が区別できるように(段落【0060】)、反射光Lrやプラズマ光Lpに関する特徴値の抽出区間を、変換した電気信号の1パルスに対応する1周期のうちから、パルスの立ち上がり時刻、遅刻時間d、及び所定区間Pにより、溶接に先立ち予め設定して(段落【0046】)溶接の判定を行うものであるのに対して、本件発明1は、溶接時に、反射光を変換した第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上になると、溶接の判定を開始するものであることからみても、甲1発明には本件発明1のような溶接時の電気信号を閾値と比較する必要性はなく、両発明は相違点2において本質的に異なるものであるといえる。
したがって、理由2(進歩性)に関し、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、甲2~4記載の技術的事項についてみても、甲2記載の技術的事項は、レーザ光が照射される加工対象物の加工点から生じる反射光あるいはプラズマ光の光量の変化点を判別することで、加工対象物の溶融開始を検知してレーザ加工条件を制御するものであるから、相違点2について開示しているとはいえない。
さらに、甲3記載の技術的事項はレーザビーム、及び赤外線放射光の波長、甲4記載の技術的事項は、光量の積分演算に関するものであるから、やはり相違点2について開示しているものとはいえない。
したがって、理由2(進歩性)に関し、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2~4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)小括
よって、相違点1について検討するまでもなく、請求項1に係る特許を、理由1(新規性)及び理由2(進歩性)により取り消すことはできない。
2 本件特許発明2
(1)本件特許発明2と甲1発明の対比
本件特許発明2は、本件特許発明と同様に、「前記第2の電気信号のレベルが所定の閾値以上であるときトリガ信号を出力するトリガユニット」という発明特定事項及び「前記トリガ信号が入力されると、・・・レーザ溶接が正常に行われているか否かの監視を開始するレーザ溶接モニタ」という発明特定事項を有するから、本件特許発明2と甲1発明は、少なくとも、上記相違点2と同様の点で相違する。
(2)理由1(新規性)(第3の1(1))について
上記(1)より、本件特許発明2は、甲1発明との間に相違点2と同様の相違点が存在するから、本件特許発明2は甲1発明と同一ではなく、甲1に記載された発明とはいえない。
(3)理由2(進歩性)(第3の1(2)ア~イ)について
上記1(4)で検討したのと同じく、本件特許発明2と甲1発明との間の相違点は、甲1~甲4に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえないから、理由2(進歩性)に関し、本件特許発明2は、甲1発明及び甲2~4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
よって、請求項2に係る特許を、理由1(新規性)及び理由2(進歩性)により取り消すことはできない。
3 本件特許発明3~4
本件特許発明3及び本件特許発明4は、本件特許発明1及び本件特許発明2に対して、さらに技術的事項を追加したものである。
したがって、本件特許発明3は、甲1発明と同一ではなく、甲1に記載された発明とはいえない。
そして、本件特許発明3及び本件特許発明4は、甲1発明に基づいて、又は甲1発明及び甲2~4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件特許発明5~6
方法の発明である本件特許発明5及び本件特許発明6は、それぞれ、物の発明である本件特許発明1及び本件特許発明2のレーザ溶接モニタリング装置として記載した発明特定事項を、レーザ溶接モニタリング方法の発明特定事項として記載したものであり、本件特許発明5は本件特許発明1と、本件特許発明6は本件特許発明2と、カテゴリーの相違による表現上の差異が存するに過ぎない。
したがって、本件特許発明5及び本件特許発明6は、上記1~2で示したのと同様の理由により、甲1発明と同一ではなく、甲1に記載された発明とはいえない。
そして、本件特許発明5及び本件特許発明6は、上記1~2で示したのと同様の理由により、甲1発明に基づいて、又は甲1発明及び甲2~4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 本件特許発明7~8
本件特許発明7及び本件特許発明8は、本件特許発明5及び本件特許発明6に対して、さらに技術的事項を追加したものである。
したがって、本件特許発明7は、甲1発明と同一ではなく、甲1に記載された発明とはいえない。
そして、本件特許発明7及び本件特許発明8は、甲1発明に基づいて、又は甲1発明及び甲2~4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700264