特許異議申立
2024-700190
方向性電磁鋼板およびその製造方法
- 審判番号
- 2024-700190
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-577696外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7340045
- 請求日
- 2024年02月29日
- 審決日
- 2024年06月25日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
- 【権利者代理人】弁理士法人共生国際特許事務所
- 【異議申立人】前田 洋志
- 分類
- P1652.537-Y (C23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7340045号発明「方向性電磁鋼板およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7340045号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7340045号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~20に係る特許についての出願(特願2021-577696号。以下、「本願」という。)は、2020年(令和 2年) 6月26日(パリ条約による優先権主張:外国庁受理 2019年 6月26日 大韓民国(KR))を国際出願日とする出願であって、令和 5年 8月29日にその特許権の設定登録がされ、同年 9月 6日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その請求項1~9に係る特許に対し、令和 6年 2月29日差出で特許異議申立人である前田 洋志(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~20のうち、請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」等といい、総称して「本件特許発明」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
方向性電磁鋼板基材、
前記方向性電磁鋼板基材上に位置するスケール層、および
前記スケール層上に位置する金属酸化物層を含み、
前記金属酸化物層は、フォルステライト化合物を含み、
前記金属酸化物層のF含有量が0.1~3重量%であり、
前記スケール層の厚さが5~100nmである、ことを特徴とする方向性電磁鋼板。
【請求項2】
前記金属酸化物層は、フォルステライト化合物を含む第1相と、Siで構成される第2相とを含み、
前記第1相は、金属酸化物層100面積%に対して5面積%超過95面積%未満で含まれ、第2相は、金属酸化物層100面積%に対して3面積%超過20面積%未満で含まれることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項3】
前記金属酸化物層上に位置する絶縁コーティング層をさらに含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項4】
前記金属酸化物層は、酸化マグネシウム(MgO)を1.0重量%以下で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項5】
前記スケール層は、重量%で、Si:1~80重量%、O:1~80重量%、並びに残部Feおよび不可避不純物からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項6】
スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板に形成されたスケールの一部を除去し、厚さ10nm~300nmのスケール層を残留させてスケール層が残留する熱延板を製造する段階、
前記スケール層が残留する熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、
前記冷延板を1次再結晶焼鈍して1次再結晶焼鈍された冷延板を製造する段階、
前記1次再結晶焼鈍された冷延板に焼鈍分離剤を塗布する段階、および
前記焼鈍分離剤が塗布された冷延板を2次再結晶焼鈍する段階を含み、
前記焼鈍分離剤は、酸化マグネシウム(MgO)または水酸化マグネシウム(MgOH)とフッ化物を含むことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムの含有量100重量%に対して、フッ化物を0.5~2重量%含むことを特徴とする請求項6に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記フッ化物は、アンモニウムフルオライド(NH4F)、CaF2、NaF、およびMgF2からなる群のうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記スラブは、重量%で、Si:1.0~4.0%、C:0.03~0.09重量%、Al:0.015~0.040%、Mn:0.04~0.15%、N:0.001~0.005%、S:0.01%以下(0%を除く)を含み、残部としてFeおよびその他の不可避不純物からなることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、次の甲第1号証~甲第4号証を提出し、以下の申立理由1により、本件特許の請求項1~9に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
(証拠方法)
(1)甲第1号証:特開2016-89255号公報
(2)甲第2号証:特願2017-528562号(サポート要件に関する事例A)の公表特許公報(特表2018-504517号公報)
(3)甲第3号証:事例Aの審査段階における拒絶理由通知書(起案日:平成30年5月22日)
(4)甲第4号証:事例Aの審査段階における手続補正書(提出日:平成30年8月23日)
1 申立理由1(サポート要件)
(1)申立理由1-1:本件特許発明1~5は、金属酸化物層のF含有量が「0.1~3重量%」の全範囲において金属酸化物層を均一に形成させることができるのか不明であるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2:本件特許発明6は、焼鈍分離剤に含まれる「フッ化物」の含有量を何ら特定しておらず、当該含有量がどのような量であっても金属酸化物層を均一に形成させることができるのか不明であるから、本件特許の請求項6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由1-3:本件特許発明7、8は、焼鈍分離剤に含まれる「フッ化物」の含有量の範囲及び種類をそれぞれ特定しているが、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)に具体的に記載されているのは「アンモニウムフルオライド1重量%」のみであり、本願出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明7、8の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件特許の請求項7、8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由1-4:本件特許発明9は、本件特許発明6~8を引用するものであり、方向性電磁鋼板の製造に用いるスラブの鋼組成を特定しているにすぎないものであるから、上記申立理由1-2、1-3と同様の理由により、本件特許の請求項9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
以下に述べるとおり、当審は、上記第3の申立理由1によっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 申立理由1(サポート要件)
(1)申立理由1-1について
ア 本件明細書の記載事項
本件明細書には、「方向性電磁鋼板およびその製造方法」に関して、次の記載がある(なお、下線は当審が付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。
(ア)「【0001】
本発明は、方向性電磁鋼板およびその製造方法に係り。より詳しくは、熱延板の製造後、熱延板の表面に存在するスケールを一部残留させ、酸化被膜を形成した方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
・・・
【0003】
・・・
方向性電磁鋼板の生産工程として、スラブ(Slab)を製造した後、熱間圧延、予備焼鈍、冷間圧延、脱炭焼鈍、最終焼鈍を経て絶縁コーティング層を形成する。
【0004】
方向性電磁鋼板の生産工程において、予備焼鈍と冷間圧延工程との間に熱延工程で発生する表面スケール(Scale)を除去して、後に展開される工程の効率を改善する工程が存在するが、これを酸洗工程という。
しかし、酸洗後の鋼板表面はFe元素が多量存在し、この鋼板の表面はO、OH官能基と結合力が大きく、他元素が作用しなくなる。このような表面にO、OH成分で構成された酸化物を含む絶縁コーティング層を形成する時、絶縁コーティング層が均一に形成されない問題および鋼板と絶縁コーティング層との間の密着力が低下する問題が発生していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的とするところは、方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することにある。具体的には、熱延板の製造後、熱延板の表面に存在するスケールを一部残留させ、酸化被膜を形成した方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。」
(イ)「【発明の効果】
【0015】
・・・
また、本発明の一実施形態によれば、内部スケール層上にフォルステライト(Mg2SiO4)化合物を含む金属酸化物層を均一に形成させることができる。
また、本発明の一実施形態によれば、金属酸化物層上に絶縁コーティング層を均一に形成させることができる。」
(ウ)「【0021】
・・・
図1に示したとおり、本発明の一実施例による方向性電磁鋼板100は、方向性電磁鋼板基材10の表面から内部方向に存在するスケール層20を含む。このようにスケール層20を含むことによって、金属酸化物層30とスケール層20との間の強固な結合を形成して、金属酸化物層30との密着性を向上させることができる。また、スケール層20自体に絶縁特性が存在して、絶縁特性を付与させることができる。金属酸化物層30は、フォルステライト化合物を含み、前記金属酸化物層は、F含有量が0.1~3重量%であることがよい。
【0022】
・・・
スケール層20は、方向性電磁鋼板基材10の表面から内部方向に存在する。スケール層20の厚さは、5~100nmであることがよい。さらに具体的には5~20nmであることが好ましい。スケール層20が薄すぎると、前記のスケール層20の存在によって発生する金属酸化物層30との密着性および絶縁特性の効果を得ることが難しい。また、スケール層20が厚すぎると、むしろ磁性に悪影響を及ぼす虞がある。
【0023】
・・・
スケール層20は、Fe含有量が方向性電磁鋼板基材10に比べて少なく、代わりにSi含有量が比較的高くて、OH、O成分と結合力が大きく作用する。したがって、金属酸化物層30を形成する時、金属酸化物層30が均一に形成され、密着力が向上する。また、スケール層20は、O成分の含有量が方向性電磁鋼板基材10に比べて高くて、それ自体で絶縁特性が付与される。」
(エ)「【0026】
図1および2に示したとおり、金属酸化物層30上には絶縁コーティング層40がさらに形成される。本発明の一実施例において、金属酸化物層30が適切に形成されると、絶縁コーティング層40の密着性を向上させることができ、絶縁コーティング層40の厚さを薄く形成しても十分な絶縁性を確保することができる。具体的には、絶縁コーティング層40の厚さは、3~5μmである。
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、前記熱延板に形成されたスケールの一部を除去し、10nmの厚さ以上のスケール層を残留させてスケール層が残留する熱延板を製造する段階、前記スケール層が残留する熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、前記冷延板を1次再結晶焼鈍して1次再結晶焼鈍された冷延板を製造する段階、前記1次再結晶焼鈍された冷延板に焼鈍分離剤を塗布する段階、および前記焼鈍分離剤が塗布された冷延板を2次再結晶焼鈍する段階を含み、前記焼鈍分離剤は、酸化マグネシウム(MgO)または水酸化マグネシウム(MgOH)とフッ化物を含む。
【0027】
前記酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムの含有量100重量%に対して、フッ化物を0.5~2重量%含むことができる。具体的には0.1~2重量%、より具体的には0.5~1.5重量%を含むことができる。
前記フッ化物は、アンモニウムフルオライド(NH4F)、CaF2、NaFおよびMgF2のうちの1種以上を含むことができる。
以下、各段階別に具体的に説明する。
まず、スラブの合金成分は特に限定されず、電磁鋼板で使用される合金成分であればすべて使用することができる。一例としては、スラブは、重量%で、Si:1.0~4.0%、C:0.03~0.09%、Al:0.015~0.040%、Mn:0.04~0.15%、N:0.001~0.005%、S:0.01%以下(0%を除く)を含み、残部としてFeおよびその他の不可避不純物からなることができる。」
(オ)「【0028】
・・・
次に、熱延板に形成されたスケールの一部を除去して10nm以上の厚さのスケールを残留させる。具体的には10~300nm、より具体的には30nm~150nmであることがよい。
熱間圧延は高い温度で行われるため、必然的に熱延板の表面にスケールが形成される。このスケールは磁性に悪影響を及ぼし、圧延時にスリップ(slip)が発生させるため、全部除去することが一般的であった。
【0029】
本発明の一実施例では、スケール層を10nmの厚さ以上に意図的に残留させることによって、金属酸化物層との密着性を改善し、追加的な絶縁特性を得ることができた。スケールはFe含有量が鋼板基材に比べて少なく、代わりにSi含有量が比較的高くて、OH、O成分と結合力が大きく作用する。一般的な方法のようにスケールをすべて除去する場合には、表面にFeのみ存在する。Feは、焼鈍分離剤である酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムとの親密度が非常に低いので、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムがFe表面に効果的に塗布されない。しかし、Siは、Oとの結合力が大きくて、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムとの親密度も非常に高い。したがって、内部スケールにSiO2が含まれているので、内部スケールを残留させる場合には、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムが効果的に塗布できる。」
イ 課題
上記ア(ア)の摘記事項からみて、本件特許発明が解決しようとする課題は、「「方向性電磁鋼板の生産工程において」「発生していた」「絶縁コーティング層が均一に形成されない問題および鋼板と絶縁コーティング層との間の密着力が低下する問題」を解決すること」であると認められる。
ウ 判断
(ア)上記ア(イ)の摘記事項によれば、内部スケール層上にフォルステライト(Mg2SiO4)化合物を含む金属酸化物層を均一に形成させ、金属酸化物層上に絶縁コーティング層を均一に形成させることにより、上記イの課題を解決することができると解される。
(イ)そして、上記ア(ウ)の摘記事項には、方向性電磁鋼板100が、方向性電磁鋼板基材10の表面から内部方向に存在するスケール層20を含むことによって、金属酸化物層30とスケール層20との間の強固な結合を形成して、金属酸化物層30との密着性を向上させることができるため、金属酸化物層30を形成する時、金属酸化物層30が均一に形成され、密着力が向上する旨が記載されている。
(ウ)また、上記ア(エ)の摘記事項には、金属酸化物層30が適切に形成されると、金属酸化物層30上に形成される絶縁コーティング層40の密着性を向上させることができる旨が記載されている。
(エ)そうすると、方向性電磁鋼板100が、方向性電磁鋼板基材10の表面から内部方向に存在するスケール層20を含むことによって、スケール層20上に金属酸化物層30を均一に形成させることができ、金属酸化物層30上に形成される絶縁コーティング層40の密着性を向上させることもできる結果、上記イの課題を解決することができるといえる。
(オ)この観点から検討すると、本件特許発明1は、「厚さが5~100nmである」「スケール層」を含むことが特定されている「方向性電磁鋼板」であるから、上記イの課題を解決することができる発明であると解される。
(カ)また、本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~5も、本件特許発明1と同様に上記イの課題を解決することができる発明であると解される。
(キ)したがって、本件特許発明1~5は、発明の詳細な説明において、上記イの課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~5の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるといえる。
(2)申立理由1-2について
ア 上記(1)ア(エ)及び(オ)の摘記事項には、方向性電磁鋼板の製造方法において、熱延板に形成されたスケールの一部を除去し、スケール層を10nmの厚さ以上に意図的に残留させることによって、金属酸化物層との密着性を改善できた旨が記載されている。
イ ここで、方向性電磁鋼板の製造方法において、熱延板に形成されたスケールの一部を除去し、スケール層を10nmの厚さ以上に意図的に残留させることによって、金属酸化物層との密着性を改善できれば、上記(1)ウ(イ)のとおり、金属酸化物層30を形成する時、金属酸化物層30が均一に形成されるため、上記(1)ウ(ウ)のとおり、金属酸化物層30上に形成される絶縁コーティング層40の密着性を向上させることもできる結果、上記(1)イの課題を解決することができるといえる。
ウ この観点から検討すると、本件特許発明6は、「熱延板に形成されたスケールの一部を除去し、厚さ10nm~300nmのスケール層を残留させてスケール層が残留する熱延板を製造する段階」を含むことが特定されている「方向性電磁鋼板の製造方法」であるから、上記(1)イの課題を解決することができる発明であると解される。
エ したがって、本件特許発明6は、発明の詳細な説明において、上記(1)イの課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるとはいえないから、本件特許の請求項6の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるといえる。
(3)申立理由1-3について
ア 本件特許発明7、8は、本件特許発明6を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明7、8において新たに特定される事項は、上記(1)ア(エ)に摘記したとおり、いずれも本件明細書に記載されているから、上記(2)で検討したとおり、本件特許発明6が上記(1)イの課題を解決することができる発明である以上、本件特許発明7、8も、上記(1)イの課題を解決することができる発明であると解される。
イ したがって、本件特許発明7、8は、発明の詳細な説明において、上記(1)イの課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるとはいえないから、本件特許の請求項7、8の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるといえる。
(4)申立理由1-4について
ア 本件特許発明9は、本件特許発明6を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明9において新たに特定される事項は、上記(1)ア(エ)に摘記したとおり、本件明細書に記載されているから、上記(2)で検討したとおり、本件特許発明6が上記(1)イの課題を解決することができる発明である以上、本件特許発明9も、上記(1)イの課題を解決することができる発明であると解される。
イ したがって、本件特許発明9は、発明の詳細な説明において、上記(1)イの課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるとはいえないから、本件特許の請求項9の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるといえる。
(5)申立人の主張
ア 申立人は、特許異議申立書において、「本件特許発明の課題(「絶縁コーティング層が均一に形成されない問題」等)を解決するためには、「金属酸化物層・・・を均一に形成する」ことが必要であると解されるから、それゆえ、金属酸化物層中のFを特定量にすることも、課題解決のためには、必須の要件であると認められる。」(第6頁第6~9行)との前提の下で、本件特許発明1~9がサポート要件を満たさないものであることを主張している。
イ しかしながら、上記(1)及び(2)で検討したとおり、「金属酸化物層中のFを特定量にすること」は、必ずしも上記(1)イの課題を解決する上での「必須の要件である」とは認められないから、上記アの主張はその前提において誤っており、採用することはできない。
(6)小括
以上のとおりであるから、申立理由1によっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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