特許訂正審判
2024-390109
凹凸素材の遮熱構造
- 審判番号
- 2024-390109
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2013-121593
- 登録番号
- 5445808
- 請求日
- 2024年09月27日
- 審決日
- 2025年01月30日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】日本遮熱 株式会社
- 【請求人代理人】福田 伸一
- 【請求人代理人】高橋 克宗
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 津熊 哲朗
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P141 .841-Y (E04B) / P141 .851-Y (E04B) / P141 .854-Y (E04B) / P141 .855-Y (E04B) / P141 .856-Y (E04B) / 標準データ:手続:訂正 / 標準データ:41・841-Y (E04B) / 標準データ:41・851 / 標準データ:41・854 / 標準データ:41・855 / 標準データ:41・856 / 標準データ:確定ステータス:1 維持(出訴無し)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条、特許法第29条、特許法第131条の2第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)、特許情報標準データ(審判)
事件の表示
特許第5445808号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第5445808号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1,4-6〕について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第5445808号の請求項1ないし6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(以下「本件出願」という。)は、平成25年6月10日(優先権主張:平成25年1月10日)に出願され、平成26年1月10日に、その特許権の設定登録がなされたものである。
その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年 4月 8日 無効審判の請求(無効2022-80003
6)
令和5年 3月 2日付け 審決(請求不成立)
令和5年 4月10日 審決の確定
令和6年 9月27日 訂正審判(以下「本件訂正審判」という。)
の請求
令和6年10月24日付け 手続補正指令書(方式)
令和6年11月 5日 手続補正書(方式)の提出
令和6年11月12日 上申書の提出
本件特許に関し、特許権等侵害差止請求事件が係属中である。
第2 審判請求書の補正の適否
令和6年11月5日提出の手続補正書(方式)による補正は、令和6年9月27日提出の本件訂正審判請求書のうち、「5 請求の趣旨」の項目を補正するものであって、「2 審判の請求に係る請求項の数」の項目との間に生じていた請求の単位に関する不整合を解消しようとするものであり、「6 請求の理由」中に含まれる訂正事項自体については、変更していない。すなわち、本件訂正審判請求書の要旨を変更するものではない。
したがって、令和6年11月5日提出の手続補正書(方式)による補正は、特許法第131条の2第1項の規定に適合するから、これを認める。
第3 訂正請求の趣旨
上記のとおり、令和6年11月5日提出の手続補正書(方式)による補正は認められるから、令和6年11月5日提出の手続補正書(方式)により補正された審判請求書(以下「本件審判請求書」という。)の請求の趣旨は、特許第5445808号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1,4ないし6について訂正することを認める、との審決を求めるものである。
第4 訂正事項
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
[訂正事項1]
特許請求の範囲の請求項1に「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた遮熱構造であって、」とあるのを、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた遮熱構造であって、前記接着手段は、接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段であり、」に訂正する。なお、本件訂正審判の全趣旨からみて、請求項1の記載を引用する請求項4ないし6についても同様に訂正するものと解する。
第5 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明、及び請求項1を引用する請求項4ないし6に係る発明における、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を」「取り付け」る「接着手段」について、「前記接着手段は、接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段であ」ることを特定して限定する、訂正事項である。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条1項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
願書に添付した明細書の【0034】には、「施工方法は非常に簡単で、例えばあらゆる素材の凸部に接着剤を塗布、その上からアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5を貼ればよい。・・・(中略)・・・ここで、あらゆる素材の凸部に対する、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5の接着方法には、上記のような接着剤による接着の他に熱溶着、両面テープなどによる接着方法がある。なお、あらゆる素材の凸部に対する、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5の接着を工場にて行う場合は、熱溶着又は接着剤による接着が主体であり、現地工事の場合は、接着剤による接着又は両面テープによる接着が主体となる。」と記載されている。
上記記載から、「凸部に対する、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5の接着方法には、」「接着剤による接着の他に熱溶着、両面テープなどによる接着方法があ」り、「凸部に対する、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5の接着」を行う場所(工場、現地工事)に応じて、接着、熱溶着、両面テープから接着方法が選択されていると認められる。
そうすると、「接着手段は、接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段であ」ることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「願書に添付した明細書等」という。)に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法126条5項の規定に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項1に係る発明、及び請求項1を引用する請求項4ないし6に係る発明について減縮を行うものであり、各発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合するものである。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項4ないし6は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1,4ないし6に対応する本件訂正後の請求項1,4ないし6は一群の請求項である。
(5)独立特許要件について
訂正事項1に係る訂正により、請求項1に係る発明は減縮が行われているところ、本件訂正後の請求項1,4ないし6に係る発明について、特許法126条7項に規定する、いわゆる独立特許要件を満たすか否かについては、請求項1について訂正事項1に係る訂正がされていることを踏まえて、後記2において判断する。
2 本件訂正後の請求項1,4ないし6に係る発明の独立特許要件について
(1)本件訂正後の請求項1,4ないし6に係る発明
上記1(1)のとおり、請求項1に係る発明、及び請求項1を引用する請求項4ないし6に係る発明は、訂正事項1により、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がされているから、本件訂正が認められるか否かを判断するうえでは、本件訂正後の請求項1,4ないし6に係る発明について、上記1(5)のとおり、特許法126条7項に規定するいわゆる独立特許要件を満たすか否かを、判断することとなる。
本件訂正後の請求項1,4ないし6に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、本件審判請求書に添付した特許請求の範囲における請求項1,4ないし6の記載により特定される、以下のとおりのものである。
なお、構成要件AないしKの分説は当審において付し、本件訂正発明1における上記構成要件AないしEの分説については、後記別件侵害訴訟における被告の無効主張中で、本件訂正前の請求項1における構成要件について用いられた「A」ないし「E」の分説と整合させた。
<本件訂正発明1>
A 表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材と、
B 該凹凸のある素材の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材とからなり、
C 前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた遮熱構造であって、
前記接着手段は、接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段であり、
D 前記凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させていることを特徴とする
E 凹凸素材の遮熱構造。
<本件訂正発明4>
F 前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材において、前記凹凸のある素材側の裏面に、電食防止層を更に設けることを特徴とする
G 請求項1から3のいずれか1項に記載の凹凸素材の遮熱構造。
<本件訂正発明5>
H 前記凹凸のある素材には、金属、コンクリート、レンガ、プラスチック、木、折板屋根材、スレート屋根材を含むことを特徴とする
I 請求項1から3のいずれか1項に記載の凹凸素材の遮熱構造。
<本件訂正発明6>
J 前記電食防止層は、高分子樹脂、不織布、塗装のうち少なくとも1つから成ることを特徴とする
K 請求項4に記載の凹凸素材の遮熱構造。
なお、上記構成要件Cは、訂正事項1により、本件訂正前の構成要件「C」から限定された構成要件であり、構成要件A,B,DないしKは、本件訂正の前後において変更がない。
(2)別件侵害訴訟における無効の抗弁の概要
本件特許に関し、特許権等侵害差止請求事件(以下「別件侵害訴訟」という。)が係属中であり、別件侵害訴訟においては、本件訂正前の本件特許について、特許無効の抗弁がされている。
審判請求人により令和6年11月12日に提出された上申書(以下、「上申書」という。)に添付された、別件侵害訴訟における被告の無効主張に関する書面、及び関連する証拠によれば、本件訂正前の本件特許について、特許無効の抗弁の理由は、概略、次のものである。
なお、上申書に記載された別件侵害訴訟における証拠について、「乙13」等の表記を、以下ではそのまま用いる。
ア 無効の抗弁の理由1
乙13(特開平6-336790号公報)を引用例とした新規性欠如
イ 無効の抗弁の理由2
乙17(特開2004-11240号公報)を引用例とした新規性欠如
ウ 無効の抗弁の理由3
乙18(特開2008-190311号公報)を主たる引用例とした進歩性欠如
エ 無効の抗弁の理由4
乙13を主たる引用例とした進歩性欠如
そこで、本件訂正発明1,4ないし6が独立特許要件を満たすかに関し、別件侵害訴訟における無効の抗弁の理由1ないし4を考慮した際に、本件訂正発明1,4ないし6が独立特許要件を満たさないこととなるか否かを、以下において判断する。
(3)無効の抗弁の理由1について
ア 無効の抗弁の理由1の概要
別件侵害訴訟における無効の抗弁の理由1の概要は、次のものである(別件侵害訴訟における被告の無効主張に関する書面の第26頁~第36頁における、「乙13を引用例とする新規性欠如について」に関する主張)。
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である乙13(特開平6-336790号公報)に記載された発明と同一であるから、特許法29条1項3号の規定により、特許を受けることができない。
イ 乙13
(ア)乙13の記載
乙13には、次の記載がある。
a 【0009】
「【0009】
【実施例】実施例について図面を参照して説明すると、図1及び図2において、1は折版屋根鋼板、2はシート状断熱材、5は板状断熱材である。3、4はそれぞれ、シート状断熱材及び板状断熱材に糸6、7により縫着されている面ファスナーである。折版屋根鋼板1は、上方に拡がった逆台形の断面形状をしており、連結部1aで複数連結して用いられる。」
b 【0010】~【0014】
「【0010】シート状断熱材2は折版屋根鋼板1の裏面に、その一面側が屈曲形状にそって固着されている。シート状断熱材2としては、厚さ5~8mm程度、平方メートル当り700~1200g前後のガラス繊維等の断熱性、不燃性、吸音性、防露性などに優れており、また温度変化などによる劣化が少なく、腐食、カビの発生を生じないものが好ましい。
・・・
【0012】折版屋根鋼板1とシート状断熱材2との間の固着手段としては、ニトリルゴム系、クロロプレンゴム系などの接着剤による接着のほか、シート状断熱材2自体の材質によっては、熱接着あるいは、熱融着等の周知の手段を用いることもできる。なお、シート状断熱材2と折版屋根鋼板1との接合面積は、シート状断熱材2に加わる荷重を分散支持できるように、接合面全体で、接着するかあるいは融着するような固着手段を用いることが好ましい。一例として、接着剤はシート状断熱材2の平方メートル当り100g程度用いられる。
【0013】シート状断熱材2には、面ファスナー3が適所にポリエステル、ナイロン等の耐熱性や引張り強度の高い糸6によって縫いつけられ、この実施例においては、シート状断熱材2の下方の折曲部にその長手方向に沿って複数条、面ファスナー3が縫着されている。面ファスナー3は、市販のポリプロピレンなどの合成樹脂製のものを用いることができるが、温度変化に安定で耐久性が大きく、また係合力の大きいものを使用する条件に合わせて選択して用いる。
【0014】糸6は、シート状断熱材2をその厚み方向に完全に貫通して面ファスナー3を縫着して固定し、シート状断熱材2を補強する。」
c 【0016】~【0017】
「【0016】板状断熱材5は、シート状断熱材2の下方に配置され、使用条件に応じて、グラスウール、ロックウール等の周知の材料の中から選択して用いることができる。この実施例では、板状断熱材5は、製造、屋根施工が容易なように複数の部分に分割された板状のものを組合わせて用いている。一例として、板状断熱材5は厚さ25mm程度で重量が平方メートル当り2Kg程度のものが用いられる。
【0017】図4に示すように、板状断熱材5の上面には、シート状断熱材2側の面ファスナー3と係合できる位置に、面ファスナー4が配置され、これと対向する板状断熱材5の下面位置には補強用の裏当て9が施され、板状断熱材5の厚み方向に貫通する糸7により、面ファスナー4、板状断熱材5、裏当て9が一体的に縫着されている。裏当て9は板状断熱材5の下面側で糸7を支持し、板状断熱材に糸の荷重が直接作用しないように補強するためのものである。」
d 【0019】~【0021】
「【0019】ここに記載した実施例のように、板状断熱材5を複数の板状のものを並べて用いる場合には、断熱効果を高めるために、隣接する端面に相互に係合する段部8を設けて相互の隙間を無くすことが好ましい。また、図5のように、板状断熱材5をアルミ箔10で包むことも可能である。板状断熱材5の下面には必要に応じて種々の化粧材を張ってもよい。
【0020】板状断熱材5は、その面ファスナー4をシート状断熱材2側の面ファスナー3と対向した位置で位置決めして両者を係着することにより、図2に示すような、本発明の断熱折版屋根構造を得ることができる。
【0021】本実施例においては、面ファスナー3はシート状断熱材2の折曲部間に形成された下方の辺の下面に、折曲部の折線方向に配置され、また、板状断熱材5の形状も分割された複数の板状のものを平面的に配列されたものを用いているが、面ファスナー3は、他の部分に配置したり、シート状断熱材2の下面全面に縫着してもよく、この場合には、面ファスナー4が面ファスナー3と係合できるように、シート状断熱材2の屈曲形状に沿った状態で板状断熱材5を配置すればよい。」
e 【0024】(当合議体注:「シート状断熱材にの面ファスナー」との記載は、「シート状断熱材の面ファスナー」の明らかな誤記として摘記した。)
「【0024】しかも、シート状断熱材の面ファスナーを糸により縫着固定したことにより、面ファスナーの固定部分が補強されて、長期の使用においてもシート状断熱材に層間剥離が生ずることが防止されるので、板状断熱材が脱落するようなことがなく、断熱折版屋根構造の簡略化を行っても、安全性や耐久性の低下が起らない効果もある。」
f 【図2】
「
[図:0001422336000001.jpg]
」
(イ) 認定事項
a 【0010】の「シート状断熱材2は折版屋根鋼板1の裏面に、その一面側が屈曲形状にそって固着されている」との記載、及び、【0016】の「板状断熱材5は、シート状断熱材2の下方に配置され」との記載を踏まえると、図2における上下方向の下方が、折版屋根鋼板1やシート状断熱材2の裏面側や下方であり、反対に、図2における上方が、折版屋根鋼板1やシート状断熱材2の表面側や上方であると認められる。
そして、図2における折版屋根鋼板1の上方に、太陽が位置していることは明らかであることから、折版屋根鋼板1の表面側に太陽が位置していることが認められる(以下「認定事項1」という。)。
b 上記a及び【0009】の「折版屋根鋼板1は、上方に拡がった逆台形の断面形状をしており、連結部1aで複数連結して用いられる」との記載を踏まえると、図2より、折版屋根鋼板1は、逆台形の断面形状の下方の辺及び当該下方の辺の両端から上方に拡がった斜辺を有し、当該斜辺の上端から左右方向外側に拡がる上方の辺を有し、折版屋根鋼板1の左右方向の両端には、連結部1aが設けられることが看てとれる(以下「認定事項2」という。)。
(ウ)乙13に記載された発明
上記(ア)及び(イ)より、乙13には、次の発明(以下「乙13発明」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙13発明>
「折版屋根鋼板1は、連結部1aで複数連結して用いられ(【0009】)、
折版屋根鋼板1の表面側に太陽が位置しており(「認定事項1」)
折版屋根鋼板1は、逆台形の断面形状の下方の辺及び当該下方の辺の両端から上方に拡がった斜辺を有し、当該斜辺の上端から左右方向外側に拡がる上方の辺を有し、折版屋根鋼板1の左右方向の両端には、連結部1aが設けられ(「認定事項2」)、
シート状断熱材2は折版屋根鋼板1の裏面に、その一面側が屈曲形状にそって固着され(【0010】)、
シート状断熱材2の下方の折曲部にその長手方向に沿って複数条、面ファスナー3がポリエステル、ナイロン等の耐熱性や引張り強度の高い糸6によって縫着され(【0012】)、
板状断熱材5は、シート状断熱材2の下方に配置され、材料はグラスウール、ロックウール等であり、厚さ25mm程度で重量が平方メートル当り2Kg程度であり(【0016】)、
板状断熱材5の上面には、シート状断熱材2側の面ファスナー3と係合できる位置に、面ファスナー4が配置され、これと対向する板状断熱材5の下面位置には補強用の裏当て9が施され、板状断熱材5の厚み方向に貫通する糸7により、面ファスナー4、板状断熱材5、裏当て9が一体的に縫着され(【0017】)、
板状断熱材5をアルミ箔10で包み(【0019】)、
面ファスナー3はシート状断熱材2の折曲部間に形成された下方の辺の下面に、折曲部の折線方向に配置され、また、板状断熱材5の形状も分割された複数の板状のものを平面的に配列されたものを用い(【0021】)、
シート状断熱材の面ファスナーを糸により縫着固定したことにより、面ファスナーの固定部分が補強されて、長期の使用においてもシート状断熱材に層間剥離が生ずることが防止されるので、板状断熱材が脱落するようなことがなく(【0024】)、
板状断熱材5側の面ファスナー4をシート状断熱材2側の面ファスナー3と対向した位置で位置決めして両者を係着することにより、得られる断熱折版屋根構造(【0020】)。」
ウ 本件訂正発明1
(ア)対比
本件訂正発明1と、乙13発明とを、対比する。
a 乙13発明において、「折版屋根鋼板1は、連結部1aで複数連結して用いられ」、「折版屋根鋼板1は、逆台形の断面形状の下方の辺及び当該下方の辺の両端から上方に拡がった斜辺を有し、当該斜辺の上端から左右方向外側に拡がる上方の辺を有し、折版屋根鋼板1の左右方向の両端には、連結部1aが設けられ」ることから、「複数」の「折版屋根鋼板1」を「連結部1a」で連結すると、「上方の辺」と「下方の辺」とが「斜辺」を介して交互に並ぶ凹凸のある構造となることは明らかであり、乙13発明の「複数」の「折版屋根鋼板1」を「連結部1a」で連結したものは、本件訂正発明1の「凹凸のある素材」に相当する。
b 折版屋根構造を有する建物において、太陽の熱により建物の内部の温度が上昇することは、本件特許の優先権主張の日前において技術常識であることを踏まえると、乙13発明の「太陽」は、本件訂正発明1の「熱源」に相当する。
そして、乙13発明の「折版屋根鋼板1の表面側に太陽が位置」することは、本件訂正発明1の「凹凸のある素材」が「熱源側を向いて」いることに相当する。
また、乙13発明の「折版屋根鋼板1」の「上方の辺」及び「下方の辺」は、それぞれ本件訂正発明1の「熱源側に位置する凹部」及び「非熱源側に位置する凸部」に相当する。
c 上記a及びbを総合すると、乙13発明の「表面側に太陽が位置し」た、「複数」の「折版屋根鋼板1」を「連結部1a」で連結したものは、本件訂正発明1の「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材」に相当する。
d 乙13発明の「アルミ箔」は、本件訂正発明1の「アルミホイル」に相当する。
そして、アルミ箔が輻射熱を反射する素材であることは、本件特許の優先権主張の日前において技術常識であることを踏まえると、乙13発明の「アルミ箔で包」んだ「板状断熱材5」は、「アルミ箔」と同様に輻射熱を反射することは明らかであり、本件訂正発明1の「アルミホイル等輻射熱に対して高反射の素材」に相当する。
また、乙13発明において、「シート状断熱材2は折版屋根鋼板1の裏面に」、「固着され」、「板状断熱材5は、シート状断熱材2の下方に配置され」ることから、「板状断熱材5」は、「折版屋根鋼板1」の「裏面」側に位置しており、乙13発明の「折版屋根鋼板1の裏面に」「固着され」た「シート状断熱材2」の「下方に配置され」る「板状断熱材5」は、本件訂正発明1の「該凹凸のある素材の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材」に相当する。
e 一般に、「接着」とは、「くっつくこと。また、くっつけること。」を意味する(広辞苑第三版)。
そして、乙13発明の「面ファスナー3」及び「面ファスナー4」による「係着」について、面ファスナーは引っかかることで結合しくっつくものであることは、本件特許の優先権主張の日前において技術常識であることから、乙13発明の「面ファスナー3」及び「面ファスナー4」は、本件訂正発明1の「接着手段」に相当する。
f 上記aを踏まえると、乙13発明において、「シート状断熱材2は折版屋根鋼板1の裏面に、その一面側が屈曲形状にそって固着され」ることから、「シート状断熱材2」は、「折版屋根鋼板1」と同様に、凹凸のあるものであると認められる。
そして、乙13発明において、「面ファスナー3はシート状断熱材2の折曲部間に形成された下方の辺の下面に」、「配置され」、「板状断熱材5の形状も分割された複数の板状のものを平面的に配列されたものを用い」ており、凹凸のある部材と平面状の部材が接するのは凹部又は凸部のみであることは明らかであるから、凹凸のある「シート状断熱材2」の「下方の辺の下面」にのみ「板状断熱材5」が取り付けられると認められる。
また、乙13発明において、「板状断熱材5側の面ファスナー4をシート状断熱材2側の面ファスナー3と対向した位置で位置決めして両者を係着」することから、「シート状断熱材2」が「固着され」る「折版屋根鋼板1」と「板状断熱材5」は、「シート状断熱材2」、「面ファスナー3」及び「面ファスナー4」を介して取り付けられている。
以上を総合すると、乙13発明の「折版屋根鋼板1」の「下方の辺」に、「シート状断熱材2」、「面ファスナー3」及び「面ファスナー4」を介して「板状断熱材5」が取り付けられることは、本件訂正発明1の、「凹凸のある部材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付け」ることに相当する。
g 乙13発明の「折版屋根鋼板1」の「上方の辺」は、「下方の辺の両端から上方に拡がった斜辺」「の上端から左右方向外側に拡がる」ものであるから、上記fを踏まえると、「板状断熱材5」との間に空間が存在することは明らかであり、乙13発明は、本件訂正発明1と、「前記凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させている」点で一致する。
h 上記d及び輻射熱を反射することで遮熱されることは、本件特許の優先権主張の日前において技術常識であることを踏まえると、乙13発明の「アルミ箔で包」んだ「板状断熱材5」を備える「断熱折版屋根構造」は、本件訂正発明1の「凹凸素材の遮熱構造」に相当する。
i 以上を総合すると、本件訂正発明1と乙13発明とは、以下の相違点1で相違し、その余の点で一致する。
<相違点1>
構成要件Cに関し、
本件訂正発明1においては、「接着手段」が、「接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段であ」るのに対し、乙13発明では、「面ファスナー3」及び「面ファスナー4」である点。
(イ)判断
相違点1は、実質的な相違点である。
なお、仮に無効の抗弁で主張されているように、乙13発明の「折版屋根鋼板1」と「シート状断熱材2」を一体としたものが本件訂正発明1の「凹凸のある素材」に相当するとしても、相違点1は実質的な相違点である。
(ウ)小括
したがって、実質的な相違点があるため、本件訂正発明1は、乙13発明ではない。
エ 本件訂正発明4ないし6
本件訂正発明4ないし6のいずれも、本件訂正発明1の構成を備える「凹凸素材の遮熱構造」の発明であるところ、上記ウ(イ)で判断したとおり、本件訂正発明1は乙13発明ではないから、本件訂正発明4ないし6のそれぞれについても、乙13発明ではない。
オ 無効の抗弁の理由1についての小括
したがって、本件訂正発明1,4ないし6は、無効の抗弁の理由1によって、独立特許要件を満たさないこととなるものではない。
(4)無効の抗弁の理由2について
ア 無効の抗弁の理由2の概要
別件侵害訴訟における無効の抗弁の理由2の概要は、次のものである(別件侵害訴訟における被告の無効主張に関する書面の第36頁~第43頁における、「乙17を引用例とする新規性欠如について」に関する主張)。
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である乙17(特開2004-11240号公報)に記載された発明と同一であるから、特許法29条1項3号の規定により、特許を受けることができない。
イ 乙17
(ア)乙17の記載
乙17には、次の記載がある。
a 【0005】~【0006】
「【0005】
【課題を解決するための手段、及び作用】
本発明の断熱材保護用遮熱材は、例えば図1に示す如く、シート材から成るフレーム10(図2)と、フレーム10内の空気層空間Sに挿入保持してフレーム10の立体形態を保持したシート材から成る自立片15とを含み、フレーム10は、少なくとも上面シート11が表面に輻射熱反射層Reを備えた、少なくとも上面シート11と下面シート12を含む複数シートを、シート材から成る倒伏自在の起立片13,14で連結して長手方向に空気流通可能な空気層空間Sを形成したものであり、自立片15は、上面シート11及び下面シート12を当接支持する頂部15t及び底部15bを幅方向両端部15E間で、長手方向に並行する形態に屈曲立体化したものである(請求項1)。
【0006】
尚、「シート材」は、折曲容易、且つ面状形態の保持出来る紙、不織布シート等であって、典型的には0.1~0.3mm厚のクラフト紙である。
また、「輻射熱反射層Re」は、熱反射性の金属箔や金属蒸着膜であり、典型的には市場入手容易な6×10-3~6×10-2mm厚のアルミニウム箔である。
そして、輻射熱反射層Reは、上面シート11への付与が必須であるが、必要に応じて自立片15の表面及び下面シート12にも付与すれば、例え、上面シート11の輻射熱反射層Reが埃等で汚染されて熱線反射機能低下を生じても、下方の輻射熱反射層Reが補償することとなり、遮熱材1の熱線透過防止機能がいっそう向上する。」
b 【0010】
「【0010】
更に、自立片15の頂部15t及び底部15bがフレーム10の上面シート11と下面シート12とを当接支承して自立片15の断面立体形態の上部空間St及び下部空間Sbを形成するため、フレーム10は空気流動保証の下に、全面に亘って立体形態の保持が可能となり、遮熱材1の断熱層2表面への被覆及び保持が容易となる。」
c 【0019】
「【0019】
また、自立片15は、端部15Eをフレーム10の空気層空間Sの隅端部SEと止着するのが好ましい。
この場合、自立片15をフレーム10の長手方向一端から空気層空間S内に挿入した後、図1(B)の如く、自立片15の一端、又は両端で、端部15Eを空間Sの隅端部SEに当接して接着剤Adを点付与すれば良く、止着作業が簡単である。
そして、自立片15の幅方向変位が固定されるため、自立片15は、傾斜部15sがブレース(斜材)兼支柱として機能し、フレーム10の立体形態を強固に、且つ充分に保持する。」
d 【0031】~【0032】
「【0031】
〔自立片(図1、図2)〕
自立片15は、断面が図2(B)の如く頂角θが40~55°で等長、且つ、平面から成る傾斜部15sを備えた屈曲立体形態であり、上面シート11と同様に0.3mm厚のクラフト紙の表面にアルミ箔を貼着し、微細孔hを穿設して透湿性を付与し、更に、3~5mm径の空気孔Oを分散穿孔したシート材を頂部15t及び底部15bで折曲して形成する。
【0032】
従って、自立片15は、幅方向にアコーデオン状に伸縮可能なものであり、傾斜部15s1辺の頂部15tから底部15bまでの寸法は、図1の如く、フレーム10の空気層空間S内に自立片15を挿入し、両端15Eが両側隅端部SEに当接した際に、傾斜部15sに、ブレース機能と支柱機能とをバランスさせるために、空間Sの高さSHと底部15b相互間寸法PLとが略同一(PL/SH=0.8~1)で、且つ頂部15t及び底部15bがそれぞれ上面シート11及び下面シート12に当接する寸法とし、空気層空間Sの幅SW及び高さSHに対応して決定する。」
e 【0040】
「【0040】
〔遮熱材の性能(図7)〕
発明者は、図7に示す如く、空気対流のない実験室内で断熱材2上に遮熱材1を載置し、遮熱材上部のヒーターで加熱して、各部位での温度を測定したところ、遮熱材上方の空気層a1が57.8℃の際に、フレーム上面シート(アルミ箔)a2は51.6℃、アルミ箔を備えた自立片15の上部空間上層空気a3は50.0℃、自立片中層a4は49.8℃、自立片下部空間a5は48.0℃、フレーム下面シートa6は47.4℃、断熱材表面a7は47.0℃であった。
即ち、簡単なモデル試験ではあったが、遮熱材1が、上方空気層a1の57.8℃を断熱材表面a7の47.0℃に、10℃以上阻止出来ること、及び自立片の上部空間a3と下部空間a5とは2℃の温度差があることより、自立片の傾斜部15s(図1)も有効な熱線反射作用を奏すること、が確認出来た。」
f 【0042】
「【0042】
〔遮熱材1の使用(図8、図9、図10)〕
フレーム10の空気層空間S内に自立片15を挿入して上面シート11の横変位や垂れ下りを防止して立体形態の保持された遮熱材1は、単体のボード状部材として適所に配置可能である。
例えば図9の如く、屋根裏の天井下地材3で張設された天井仕上材4上に、慣用のグラスウール等の断熱材2を慣用の施工によって敷設し、該断熱材表面を本発明の遮熱材1の載置により被覆保護出来る。」
g 【図1】(当合議体注:図1は便宜のため右90°回転して摘記した。)
「
[図:0001422336000002.jpg]
」
(イ)乙17に記載された発明
上記(ア)より、乙17には、次の発明(以下「乙17発明」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙17発明>
「シート材から成るフレーム10と、フレーム10内の空気層空間Sに挿入保持してフレーム10の立体形態を保持したシート材から成る自立片15とを含む断熱保護遮熱材であって(【0005】)、
フレーム10は、上面シート11と下面シート12を含む複数シートを、シート材から成る倒伏自在の起立片13,14で連結して長手方向に空気流通可能な空気層空間Sを形成したものであり、自立片15は、上面シート11及び下面シート12を当接支持する頂部15t及び底部15bを幅方向両端部15E間で、長手方向に並行する形態に屈曲立体化したものであり(【0005】)、
輻射熱反射層Reは、上面シート11への付与が必須であり、自立片15の表面及び下面シート12にも付与することで、上面シート11の輻射熱反射層Reが埃等で汚染されて熱線反射機能低下を生じても、下方の輻射熱反射層Reが補償することとなり、遮熱材1の熱線透過防止機能が向上し(【0006】)、
輻射熱反射層Reは、熱反射性の金属箔や金属蒸着膜であり、典型的には市場入手容易な6×10-3~6×10-2mm厚のアルミニウム箔であり(【0006】)、
自立片15の頂部15t及び底部15bがフレーム10の上面シート11と下面シート12とを当接支承して自立片15の断面立体形態の上部空間St及び下部空間Sbを形成し(【0010】)、
自立片15の端部15Eをフレーム10の空気層空間Sの隅端部SEと止着する場合、自立片15をフレーム10の長手方向一端から空気層空間S内に挿入した後、自立片15の一端、又は両端で、端部15Eを空間Sの隅端部SEに当接して接着剤Adを点付与し(【0019】)、
自立片15は、頂角θが40~55°で等長、且つ、平面から成る傾斜部15sを備えた屈曲立体形態であり(【0031】)、
自立片15は、幅方向にアコーデオン状に伸縮可能なものであり(【0032】)、
屋根裏の天井下地材3で張設された天井仕上材4上に、慣用のグラスウール等の断熱材2を慣用の施工によって敷設し、該断熱材表面を遮熱材1の載置により被覆保護出来(【0042】)、
空気対流のない実験室内で断熱材2上に遮熱材1を載置し、遮熱材上部のヒーターで加熱して、各部位での温度を測定したところ、遮熱材1が、上方空気層a1の57.8℃を断熱材表面a7の47.0℃に、10℃以上阻止出来ること、及び自立片の上部空間a3と下部空間a5とは2℃の温度差があることより、自立片の傾斜部15sも有効な熱線反射作用を奏する(【0040】)、
断熱保護遮熱材(【0005】)。」
ウ 本件訂正発明1
(ア)対比
本件訂正発明1と、乙17発明とを、対比する。
a 乙17発明において、「自立片15」は、「頂部15t及び底部15bを幅方向両端部15E間で、長手方向に並行する形態に屈曲立体化し」、「幅方向にアコーデオン状に伸縮可能なものであ」るものであるところ、アコーデオンの形状は凹部と凸部とが交互に繰り返す形状であることは明らかであることを踏まえると、乙17発明の「頂部15t及び底部15bを幅方向両端部15E間で、長手方向に並行する形態に屈曲立体化し」、「幅方向にアコーデオン状に伸縮可能なものであ」る「自立片15」は、本件訂正発明1の「凹部と」「凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材」に相当する。
b 乙17発明において、「空気対流のない実験室内で断熱材2上に遮熱材1を載置し、遮熱材上部のヒーターで加熱して、各部位での温度を測定したところ」、「自立片の上部空間a3と下部空間a5とは2℃の温度差があることより、自立片の傾斜部15sも有効な熱線反射作用を奏する」ことから、「自立片15」の上方からの熱が下方に伝わることを阻止しており、乙17発明の「自立片15」は、本件訂正発明1の「凹凸のある素材」と、「表面が熱源側を向いて」いる点で一致する。
そして、乙17発明において、「自立片15」の「頂部15t」は、「底部15b」よりも上方に位置することは明らかであることから、乙17発明の「自立片15」の「頂部15t」及び「底部15b」は、それぞれ本件訂正発明1の「熱源側に位置する凹部」及び「非熱源側に位置する凸部」に相当する。
c 上記a及びbを総合すると、乙17発明の「上面シート11及び下面シート12を当接支持する頂部15t及び底部15bを幅方向両端部15E間で、長手方向に並行する形態に屈曲立体化したものであり」、「幅方向にアコーデオン状に伸縮可能な」「自立片15」は、本件訂正発明1の「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材」に相当する。
d 乙17発明の「アルミニウム箔」は、本件訂正発明1の「アルミホイル」に相当する。
そして、乙17発明の「熱反射性の金属箔や金属蒸着膜であり、典型的には市場入手容易な6×10-3~6×10-2mm厚のアルミニウム箔であ」る「輻射熱反射層Re」は、本件訂正発明1の「アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材」に相当する。
e 乙17発明において、「自立片15」は、「上面シート11と下面シート12を含む複数シートを、シート材から成る倒伏自在の起立片13,14で連結して」「形成した」「長手方向に空気流通可能な空気層空間S」に「挿入保持」するものであることから、「下面シート12」は「自立片15」の下方に位置している。
してみると、乙17発明の「下面シート12」に付与された「輻射熱反射層Re」は、上記dを踏まえると、本件訂正発明1の「該凹凸のある素材の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材」に相当する。
f 乙17発明において、「自立片15の頂部15t及び底部15bがフレーム10の上面シート11と下面シート12とを当接支承して自立片15の断面立体形態の上部空間St及び下部空間Sbを形成」するところ、「下部空間sb」は、「自立片15」と「下面シート12」で囲まれた空間であるから、乙17発明の「下部空間sbを形成」することは、本件訂正発明1の「前記凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させている」ことに相当する。
g 乙17発明の「輻射熱反射層Re」を備える「断熱保護遮熱材」は、本件訂正発明1の「凹凸素材の遮熱構造」に相当する。
h 以上を総合すると、本件訂正発明1と乙17発明とは、以下の相違点2で相違し、その余の点で一致する。
<相違点2>
本件訂正発明1では、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付け」ているのに対し、乙17発明では、「輻射熱反射層Reは、上面シート11への付与が必須であり、自立片15の表面及び下面シート12にも付与する」点。
(イ)判断
相違点2は実質的な相違点である。
(ウ)小括
したがって、実質的な相違点があるため、本件訂正発明1は、乙17発明ではない。
エ 本件訂正発明4ないし6
本件訂正発明4ないし6のいずれも、本件訂正発明1の構成を備える「凹凸素材の遮熱構造」の発明であるところ、上記ウ(イ)で判断したとおり、本件訂正発明1は乙17発明ではないから、本件訂正発明4ないし6のそれぞれについても、乙17発明ではない。
オ 予備的検討
進歩性についても予備的に検討する。
(ア)本件訂正発明1
乙17全体の記載及び他の全ての証拠の記載を見ても、乙17発明において、必須としている「上面シート11への」「輻射熱反射層Re」の「付与」を行わずに、「輻射熱反射層Re」を「下面シート12」のみに「付与する」動機付けを示す記載も示唆もない。
また、他の乙号証にもそのような動機付けがあることを示す記載も示唆もない。
よって、本件訂正発明1は、乙17発明に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
(イ)本件訂正発明4ないし6
本件訂正発明4ないし6のいずれも、本件訂正発明1の構成を備える「凹凸素材の遮熱構造」の発明であるところ、上記(ア)で判断したとおり、本件訂正発明1は、乙17発明に基いて、当業者が容易に発明できたものではないから、本件訂正発明4ないし6のそれぞれについても、乙17発明に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
カ 無効の抗弁の理由2及び予備的検討についての小括
したがって、本件訂正発明1,4ないし6は、無効の抗弁の理由2及び特許法29条2項の規定によって、独立特許要件を満たさないこととなるものではない。
(5)無効の抗弁の理由3について
ア 無効の抗弁の理由3の概要
別件侵害訴訟における無効の抗弁の理由3の概要は、次のものである(別件侵害訴訟における被告の無効主張に関する書面の第43頁~第68頁における、「乙18を主引用例とする進歩性欠如について」に関する主張)。
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先権主張の日前に頒布された乙18に記載された発明及び乙19乃至22に示す周知技術、乙18に記載された発明及び乙20,23ないし27に示す周知技術、あるいは、乙18に記載された発明、乙19ないし22に示す周知技術及び乙13,17,28に示す周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
<刊行物一覧>
乙18:特開2008-190311号公報
乙19:特開2004-100428号公報
乙20:特開平5-1448号公報
乙21:特開2008-127871号公報
乙22:Melody, Ingrid, “Radiant Barriers: A Question and Answer Primer”, インターネットのURL<https://publications.energyresearch.ucf.edu/wp-content/uploads/2018/06/FSEC-EN-15-87.pdf >から得られる電子ファイル「FSEC-EN-15-87.pdf」の印刷物及び抄訳
乙23:登録実用新案第3009512号公報
乙24:特開2001-3521号公報
乙25:特開2003-90088号公報
乙26:特表2006-527111号公報
乙27:特開2007-168413号公報
乙13:特開平6-336790号公報
乙17:特開2004-11240号公報
乙28:特開2007-77741号公報
イ 刊行物等について
(ア)乙18
a 乙18の記載
乙18には、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
現在、鉄製の折板屋根は工場や倉庫などに広く使われている。また、それに対して内部温度を保つためにさまざまな断熱工事や断熱処理が考案されたり実施されたりしている。しかしその多くは専門業者による施工が必要であり、また施工時間が長時間必要となるものもある。断熱処理を施した建築材も流通しているが、既存の建築物に対して取り替えるためにはやはり工事が必要である。このため、工場や倉庫の使用、作業に支障をきたすこともある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0002]で述べた問題点を解決するために、建材加工や接着加工といった専門的な工事を実施することなく、また、短時間で断熱処理を簡単に施工できる方法を提供しようとするものである。そのために本発明では、現状の設備や建材に手を加えるのではなく、板形状の断熱材に磁石を取り付け、折板屋根に内側から直接固定する方法をとっており、専門知識や技能がなくても工事できることを特徴としている。」
「【0005】
図Aにより、断熱工事の断面図を示す。なお、Aは屋根部を構成する折板建材であり、鉄製である。Bは断熱材である。Cは磁石であり、DはCの磁石に付随するカバーであり、Cの磁石の磁力を保つために金属製とする。DはCに対して接着または溶接などで固定されるものとする。EのピンはBの断熱材を貫通して反対側に先端が突出するものとし、EはDに接着または溶接などで固定されるものとする。Fは突出したEのピンの先端を保護するためのカバーである。同時にCの磁石、DのカバーおよびEのピンをBの断熱材に固定する役目も果たしている。また、Gは緩衝材となり、Bの断熱材が直接Aの折板建材に接触するのを防ぐ役割をもつ。
以下、Aは建材A、Bは断熱材B、Cは磁石C、DはカバーD、EはピンE、FはカバーF、Gは緩衝材Gと表記する。また、C、D、E、及びGは一体形状であり、一体形状を留め具Hと表記する。
以下、工事方法を図B-1より説明する。まず、工事を施工する位置を決定し、建材Aに留め具Hを取り付ける。留め具Hは磁石Cを有するため、鉄製の建材Aに磁力で固定される。留め具Hを必要な数量建材Aに取り付ける。
次に、図B-2において、断熱材Bを取り付ける。断熱材Bに対してピンEを貫通させる。この時、断熱材Bは緩衝材Gによって直接建材Aと接することがない。
図B-3において、断熱材Bを貫通しているピンEの先端に、カバーFを取り付ける。カバーFはピンEの先端を保護するだけでなく、断熱材Bが留め具Hから脱落するのを防ぐ役割も持つ。以上、図B-1より図B-3の手順を繰り返すことにより、建築物に対する断熱工事を施工することができる。
【発明の効果】
【0006】
[0005]で記述した工事方法における最大の利点は、現状の屋根や壁に直接手を加えることなく、また特殊な工具や接着剤などを用いることなく、誰でも簡単に内側断熱工事が施工できる点である。現状の建築物・建材に手を加えない為、工事期間を大幅に短縮でき、同時に工事費用の大幅な削減も期待できる。
また、断熱材は現在一般に市販・使用されているものを使うため、断熱効果も既存の工事方法と同等の効果が見込めるものである。また、図B-1、図B-2、図B-3で示すとおり、断熱材Bは建材Aと直接接する事がないため、高い温度維持効果が期待できる。」
図A
「
[図:0001422336000003.jpg]
」
b 認定事項
図Aより、折板建材Aが、凹凸を交互に繰り返す形状であること、以下「認定事項3」という。)、留め具Hが、折板建材Aの底部に取り付けられていること(以下「認定事項4」という。)、及び、断熱材Bが平板状であること(以下「認定事項5」という。)が看てとれる。
c 乙18に記載された発明
上記a及びbより、乙18には、次の発明(以下「乙18発明」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙18発明>
「折板建材Aは屋根部を構成し、カバーDは磁石Cに付随し、磁石Cの磁力を保つために金属製とし、カバーDは磁石Cに対して接着または溶接などで固定され、ピンEは断熱材Bを貫通して反対側に先端が突出し、ピンEはカバーDに接着または溶接などで固定され、カバーFは突出したピンEの先端を保護すると同時に磁石C、カバーDおよびピンEを断熱材Bに固定する役目も果たしており、緩衝材Gは断熱材Bが直接折板建材Aに接触するのを防ぐ役割をもち(【0005】)、
留め具Hは、磁石C、カバーD、ピンE及び緩衝材Gを一体形状としたものであり(【0005】)、
折板建材Aが、凹凸を交互に繰り返す形状であり(「認定事項3」)、
留め具Hが、折板建材Aの底部に取り付けられ(「認定事項4」)、
断熱材Bが平板状であり(「認定事項5」)、
まず、工事を施工する位置を決定し、建材Aに留め具Hを取り付け、留め具Hは磁石Cを有するため、鉄製の建材Aに磁力で固定され、留め具Hを必要な数量建材Aに取り付け、次に、断熱材Bに対してピンEを貫通させることで、断熱材Bを取り付け、この時、断熱材Bは緩衝材Gによって直接建材Aと接することがなく、断熱材Bを貫通しているピンEの先端に、カバーFを取り付け、カバーFはピンEの先端を保護するだけでなく、断熱材Bが留め具Hから脱落するのを防ぐ役割も持ち、以上のの手順を繰り返すことにより、建築物に対する断熱工事を施工することができ(【0005】)、
現状の屋根や壁に直接手を加えることなく、また特殊な工具や接着剤などを用いることなく、誰でも簡単に内側断熱工事が施工でき、断熱材Bは建材Aと直接接する事がないため、高い温度維持効果が期待できる(【0006】)、
屋根の内側断熱構造(【0006】)。」
(イ)乙19
a 乙19の記載
乙19には、次の記載がある。
「【0018】
【課題を解決するための手段】
上記第1の課題を解決するために、本発明の屋根裏断熱構造(請求項1)は、家屋屋根の内面に、少なくとも片面を低放射率素材で構成した柔軟性のあるシート(低放射率シート)、又は少なくとも片面を低放射率加工した柔軟性のあるシート(低放射率シート)を屋根面に対向させて、室内と屋根材間に挿入敷設し、かつ屋根材と前記シート間に空隙を設けた構成とした。
即ち、少なくとも片面を低放射率面に形成した低放射率シートを用い、その低放射率面を屋根面に対向させて、室内と屋根材間に挿入敷設し、かつ屋根材と前記シート間に空気層(空隙)を設けたものである。」
「【0025】
【実施例】
以下説明を容易にするために、図を用いて実施例を示す。
図1は、一般家屋に適用した本発明の第1実施例である。
低放射率シート10は、ほぼ屋根裏全面積に対応して、屋根材1を支える屋根架構2から直接吊り下げて、屋根材1と低放射率シート10間に空隙4を設ける状態に敷設され、室内への入熱遮断を行っている。
低放射率シート10は合成繊維やガラス繊維で織られた丈夫なシートに、両面アルミペイントが塗布されており、表面・裏面ともに放射率が0.3程度のシートとなっている。もし、片面にのみアルミペイントが塗布されたシートであれば、太陽熱の入熱側の放射率を低くすることが肝要なので、放射率が0.9に近い合成繊維の剥き出し面でなく、アルミペイントが塗布された側を屋根面方向、つまり、上面にして低放射率シート10を敷設する。」
b 乙19に記載された技術的事項
上記aより、乙19には、次の技術的事項(以下「乙19記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙19記載技術>
「屋根裏断熱構造において(【0018】)、
低放射率シート10は、ほぼ屋根裏全面積に対応して、屋根材1を支える屋根架構2から直接吊り下げて、屋根材1と低放射率シート10間に空隙4を設ける状態に敷設され、室内への入熱遮断を行い(【0025】)、
低放射率シート10は合成繊維やガラス繊維で織られた丈夫なシートに、両面アルミペイントが塗布されており、アルミペイントが塗布された側を屋根面方向、つまり、上面にして低放射率シート10を敷設すること(【0025】)。」
(ウ)乙20
a 乙20の記載
乙20には、次の記載がある。
「【0005】
【課題を解決するための手段】この発明の屋根構造は、屋根板の裏側に、棟および軒に開放された空気層を形成する熱反射フィルムを設けたものである。」
「【0008】屋根板である野地板2は、屋根の傾斜方向に延びる垂木10上に設けてあり、図2に示すように野地板2との間に空気層12を形成する熱反射フィルム11が垂木10の下面に貼付けてある。垂木10への熱反射フィルム11の貼付けは、両面テープで貼付けた後、その上からコ字状のステープル(タッカー)を打付けることにより行う。空気層12の軒先部および棟部は、それぞれ換気ガラリ13,14から屋外に開放する。前記熱反射フィルム11としては、アルミ箔、アルミ付クラフト紙、アルミ付シート断熱材あるいは白色シート等が使用される。」
「【0010】上記構成の屋根構造によれば、屋根葺き材3の熱が野地板2から伝導と対流により空気層12に伝わるとともに、野地板2からのふく射熱が熱反射フィルム11で遮断されて空気層12側に反射される。空気層12では、軒先部の換気ガラリ13から入った空気が、前記の熱伝導やふく射熱で温まることによって図1の矢印xのような上昇流れを生じ、棟部の換気ガラリ14の下方の換気経路14bから外部へ排出される。 このように、熱反射フィルム11でふく射熱が遮断され、その遮断した熱が空気層12の換気により屋外に排出されるため、小屋裏空間5の優れた断熱性が得られる。」
b 乙20に記載された技術的事項
上記aより、乙20には、次の技術的事項(以下「乙20記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙20記載技術>
「屋根構造において(【0005】)、
屋根板である野地板2は、屋根の傾斜方向に延びる垂木10上に設けてあり、野地板2との間に空気層12を形成する熱反射フィルム11が垂木10の下面に貼付け、垂木10への熱反射フィルム11の貼付けは、両面テープで貼付けた後、その上からコ字状のステープル(タッカー)を打付けることにより行い、前記熱反射フィルム11としては、アルミ箔、アルミ付クラフト紙、アルミ付シート断熱材あるいは白色シート等が使用され(【0008】)、
熱反射フィルム11でふく射熱が遮断され、その遮断した熱が空気層12の換気により屋外に排出されるため、小屋裏空間5の優れた断熱性が得られること(【0010】)。」
(エ)乙21
a 乙21の記載
乙21には、次の記載がある。
「【0013】
図1は本発明の一実施例に係る屋根構造の断面図、図2は図1の要部拡大図、図3は図1のA-A断面図、図4は熱反射シートの断面図である。これらの図において、10は断面略コ字状の支持梁であり、支持梁10は屋根の骨組みとして複数本が略平行に、且つ水平に設けられている。支持梁10は屋根の峰位置から屋根の軒先位置に向かって低くなるように所定間隔をおいて階段状に設けられている。
【0014】
支持梁10の上には熱反射シート12が敷き詰められている。熱反射シート12は、多孔質樹脂シート14と、多孔質樹脂シート14の表裏面に一体的に形成された一対の金属反射層16,16とにより構成されている。金属反射層16,16はアルミニウムからなる。熱反射シート12の端部はジョイントアルミテープ(図示せず)により連結され、熱反射シート12は2次元方向に広がっている。
【0015】
熱反射シート12の上には屋根材18が敷き詰められている。屋根材18は断面略台形の突条20と断面略逆台形の凹溝22を交互に略平行に有する折板(鋼板)からなる。屋根材18の一方の端縁側は突条20の一つからなり、屋根材18の他方の端縁側には、凹溝22の底から立ち上がる傾斜部24の先に延長形成された断面略クランク形の取付部26が形成されている。」
「【0020】
熱反射シート12と屋根材18との間には静止空気層38が形成されている。屋外が暑い場合、屋外の熱が屋根材18を伝わって屋内側に入って来るが、屋内側に入ってきた熱は熱反射シート12の金属反射層16によって屋外側に反射されるので、屋内側が屋外側の熱によって暑くなり難く、従って、屋内を冷房している場合はその冷房効率が良くなる。」
b 乙21に記載された技術的事項
上記aより、乙21には、次の技術的事項(以下「乙21記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙21記載技術>
「屋根構造において(【0013】)、
支持梁10の上には熱反射シート12が敷き詰められており、熱反射シート12は、多孔質樹脂シート14と、多孔質樹脂シート14の表裏面に一体的に形成された一対の金属反射層16,16とにより構成され、金属反射層16,16はアルミニウムからなり(【0014】)、
熱反射シート12の上には屋根材18が敷き詰められ(【0015】)、
熱反射シート12と屋根材18との間には静止空気層38が形成され、屋外が暑い場合、屋外の熱が屋根材18を伝わって屋内側に入って来るが、屋内側に入ってきた熱は熱反射シート12の金属反射層16によって屋外側に反射されること(【0020】)。」
(オ)乙22
a 乙22の発行日
合議体が、インターネットのURL<https://publications.energyresearch.ucf.edu>から、「FSEC-EN-15-87」の発行日を調査した結果、乙22の内容は、本件特許の優先権主張の日前である1987年(昭和62年)10月25日に発行されたものと認められる。
b 乙22の記載
乙22には、次の記載がある。なお、合議体が作成した翻訳文を併せて示す。
1頁左欄16~22行
「
[図:0001422336000004.jpg]
」
(翻訳文:質問:放射障壁とは何ですか?
放射障壁とは、熱を発する面(高温の屋根など)と熱を吸収する面(従来の屋根裏の断熱材など)との間の輻射熱の移動を遮断するために、空気層にアルミニウム箔を敷いたものです。図1は、屋根裏に設置された放射障壁の例です。)
4頁左欄14~20行
「
[図:0001422336000005.jpg]
」
(翻訳文:質問:私の屋根裏に放射障壁をどのように設置するとよいでしょうか?
既存の屋根裏に放射障壁を設置する最も効果的な方法は、屋根トラスの垂木の下側または屋根板の下側に箔材料をステープル留めするだけのことです。説明のために図3を参照してください。)
c 乙22に記載された技術的事項
上記bより、乙22には、次の技術的事項(以下「乙22記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙22記載技術>
「屋根裏において(1頁左欄16~22行)、
放射障壁を設置し(1頁左欄16~22行)、
放射障壁は、熱を発する面(高温の屋根など)と熱を吸収する面(屋根裏の断熱材)との間の輻射熱の移動を遮断するために、空気層にアルミニウム箔を敷いたものであり(1頁左欄16~22行)、
屋根トラスの垂木の下側または屋根板の下側に箔材料をステープル留めすることで、屋根トラスの垂木の下側または屋根板の下側に箔材料をステープル留めすること(4頁左欄14~20行)。」
(カ)乙23
a 乙23の記載
乙23には、次の記載がある。
「 【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は上記課題を解決するため、断熱材を埋設し外気に対して閉鎖的な床下を形成するとともに立上り部外周周壁に断熱材を設けたコンクリート基礎部、内壁材の外側に設けた気密性アルミニュウム被覆断熱ボードと外壁材との間に地上から屋根部まで連通する外壁通気層を有する外壁構造体、外側屋根材と屋内側に設けた気密性アルミニュウム被覆断熱ボードとの間に前記外壁通気層の上端部と連通する屋根通気層を形成し、屋根通気層の最上部に換気用小屋根部を形成した屋根構造体、家屋内全室を循環する空気循環式空調装置とによって、高気密高断熱性家屋を構成したものである。」
「 【0012】
屋根部分については図1及び図3に示すように、柱15の上端部に設けた桁材16の上方に適宜の支持によって所定の傾斜のタルキ27を組み上げ、屋根の基本構造を構成し、その上に前記外壁部の断熱ボード17と同様のビニールコーティングしたアルミ箔を貼った断熱ボード28を全面に、前記と同様両面にわたるシール手段を施こしつつ貼り付ける。外壁部の断熱ボード17上端部と屋根部の断熱ボード28の接続部にも、スポンジ状の両面気密テープ30で気密層を連続しつつシリコン31を充填してシールを行う。断熱ボード28の上方にはタルキ32で空隙を保持して杉材等の野地板33を張り、その上に屋根材として例えばアスファルトルーフィング34を設けて屋根35を形成する。屋根35の端面36は外壁部と同様の外壁材23によって塞ぐ。タルキ32で形成された空隙は屋根通気層19として下端部において外壁通気層24と密封状に連通し、一連の通気層を形成している。」
「 【0020】
また、室内の空調機からの冷熱は、内壁、床、天井等を通って外へ伝熱しようとするが、その熱は家屋の外囲全周に設けた断熱ボードによって伝熱が遮断され、熱の放散は防止される。また、この断熱ボードにはアルミニウム被覆を施こしているので、気密性が高く熱伝導率が極めて低いことから、外部からの熱を室内側に伝えることは最小限となる。更に、断熱ボードの継手等には各種二重シールを施こしており、これらの部分からの空気の漏洩は防止され、断熱ボードの端部にもシールを施こしているので断熱ボード内の気泡の中に閉じ込められたガスの流出も防止される。また、1階の床下は断熱材を埋設したコンクリートにより外気に対して閉鎖的空間を形成しているので、従来のもののような床下への放熱が防止されるばかりでなく、年間を通してほぼ一定の地熱を取り出すことができ、基礎の立ち上がり部外周に断熱ボードを設けることにより、より断熱効果を高めることができ、これらの相乗によって小型の空調機によって屋内全室の空調を行うことができるとともに、空調機の運転経費を減少することができる。」
b 乙23に記載された技術的事項
上記aより、乙23には、次の技術的事項(以下「乙23記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙23記載技術>
「高気密高断熱性家屋の屋根部分において(【0005】、【0012】)、
柱15の上端部に設けた桁材16の上方にタルキ27を組み上げ、屋根の基本構造を構成し、その上にビニールコーティングしたアルミ箔を貼った断熱ボード28を全面に、両面にわたるシール手段を施こしつつ貼り付け、断熱ボード28の上方にはタルキ32で空隙を保持して杉材等の野地板33を張り、その上に屋根材としてアスファルトルーフィング34を設けて屋根35を形成し(【0012】)、
断熱ボードにはアルミニウム被覆を施こしているので、気密性が高く熱伝導率が極めて低いことから、外部からの熱を室内側に伝えることは最小限となること(【0020】)。」
(キ)乙24
a 乙24の記載
乙24には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、既設屋根材と屋根葺きする新屋根材との間に係合介在させて葺設し、屋根を断熱リフォームするためのリフォーム用屋根葺き断熱材に関するものである。」
「【0007】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて説明すると、本発明は図1に示すように、下面を建物の既設屋根材の上面の形状に係合するように形成し、上面を葺設する新屋根材の下面底部の形状に係合するように形成した断熱板1と、該断熱板の上下両面に密着させて被覆した薄いアルミ箔2、2とから構成される。」
「【0016】そして、新屋根材5の上方から日光により照射されても、上下両面をアルミ箔2、2で被覆された断熱板1により断熱されると共に、前記通気溝1a、1a、1a、…や1b、1b、1b、…及び隙間5a、…からの通気より、既設屋根材4の下方への断熱効果を向上させることができる。」
b 乙24に記載された技術的事項
上記aより、乙24には、次の技術的事項(以下「乙24記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙24記載技術>
「既設屋根材と屋根葺きする新屋根材との間に係合介在させて葺設し、屋根を断熱リフォームするためのリフォーム用屋根葺き断熱材において(【0001】)、
下面を建物の既設屋根材の上面の形状に係合するように形成し、上面を葺設する新屋根材の下面底部の形状に係合するように形成した断熱板1と、該断熱板の上下両面に密着させて被覆した薄いアルミ箔2、2とから構成され(【0007】)、
新屋根材5の上方から日光により照射されても、上下両面をアルミ箔2、2で被覆された断熱板1により断熱されること(【0016】)。」
(ク)乙25
a 乙25の記載
乙25には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、屋根用断熱パネル、およびそれを用いた断熱防水屋根構造に関する。」
「【0019】本発明の断熱パネル(1)は、図1、図2に示すように、断熱パネル(1)の一端から他端まで延びる凹溝(2)が設けられ、その凹溝(2)の左右の上部縁端に、凹溝(2)に沿って、ほぼ水平な支持片(3)(4)が外側向きに延設されている。
【0020】さらに、その左右の支持片(3)(4)のうち、一方の支持片(3)の縁端に、凹溝(2)に沿って、防水片(5)が垂下延設されて、パネル本体部(6)が形成されている。」
「【0029】本発明の断熱パネル(1)は、前記パネル本体部(6)の凹溝(2)に、熱反射シート(10)を貼付して構成されている。
【0030】熱反射シート(10)は、太陽熱により屋根葺き材(11)を介して温まった野地板(7)からの副射熱を反射して遮断するものであり、たとえば、アルミ箔、アルミ付クラフト紙、その他白色系シートなどが使用される。」
「【0035】凹溝(2)の内面には、熱反射シート(10)が貼付してあるため、太陽熱により屋根葺き材(11)を介して温まった野地板(7)からの副射熱は、前記熱反射シート(10)により反射されて、前記通気層(8)中の空気を温める。その結果、温められた空気は、上昇流となって換気ガラリ(15)からの排出が促進される。」
b 乙25に記載された技術的事項
上記aより、乙25には、次の技術的事項(以下「乙25記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙25記載技術>
「屋根用断熱パネルにおいて(【0001】)、
断熱パネル(1)は、断熱パネル(1)の一端から他端まで延びる凹溝(2)が設けられ、その凹溝(2)の左右の上部縁端に、凹溝(2)に沿って、ほぼ水平な支持片(3)(4)が外側向きに延設され(【0019】)、
その左右の支持片(3)(4)のうち、一方の支持片(3)の縁端に、凹溝(2)に沿って、防水片(5)が垂下延設されて、パネル本体部(6)が形成され(【0020】)、
断熱パネル(1)は、前記パネル本体部(6)の凹溝(2)に、熱反射シート(10)を貼付して構成され(【0029】)、
熱反射シート(10)は、太陽熱により屋根葺き材(11)を介して温まった野地板(7)からの副射熱を反射して遮断するものであり、たとえば、アルミ箔、アルミ付クラフト紙、その他白色系シートなどが使用され(【0030】)、
凹溝(2)の内面には、熱反射シート(10)が貼付してあるため、太陽熱により屋根葺き材(11)を介して温まった野地板(7)からの副射熱は、前記熱反射シート(10)により反射されること(【0035】)。」
(ケ)乙26
a 乙26の記載
乙26には、次の記載がある。
「【0011】
図4は,本発明にかかる断熱シートの部分切断斜視図であり,本発明にかかる断熱シートは,図4に示すように,内部に気泡が形成されている空隙材である発泡断熱材3と,発泡断熱材3の片面に,直接加熱または間接加熱で貼付(140℃~150℃の温度で融着)されたアルミホイル10と,発泡断熱材3の他面に,油紙7がステッカーのように使用されるよう,接着剤2によって貼り付けられた油紙7とからなる構造である。」
「【0016】
図6は,本発明にかかる断熱シートの概略断面図である。図6に示すように,本発明にかかる断熱シートは,その全厚さが3mm(3T)にしかならない。その厚さは従来の発泡断熱材または断熱シートに比べて厚さが薄い。断熱シートは,従来の発泡断熱材の20倍程度の断熱性能を有する。さらに,断熱シートは,新築の,または既存の建物の内壁に容易に接着させることができる。そして,断熱シートは,既存の発泡断熱材の20倍にもなる断熱性能を発揮し,大気中の熱流の殆ど(95%)を占めている輻射熱を97%遮断させることができる。両面を空気が貫通する構造により,上記アルミホイル10の両面は,空気がアルミホイル10の内部を通過する構造によって,等しい温度を有するように形成されているので,微細孔が形成されたアルミホイル10は結露を防止する。さらに,空隙材として用いられる発泡断熱材3は,伝導熱および対流熱も断熱することができ,石造りまたはサイディングからなる建物の外断熱,乾燥室,温風器の内外部断熱などに用いられる。」
b 乙26に記載された技術的事項
上記aより、乙26には、次の技術的事項(以下「乙26記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙26記載技術>
「新築の,または既存の建物の内壁に容易に接着させる断熱シートにおいて(【0016】)、
内部に気泡が形成されている空隙材である発泡断熱材3と,発泡断熱材3の片面に,直接加熱または間接加熱で貼付(140℃~150℃の温度で融着)されたアルミホイル10と,発泡断熱材3の他面に,油紙7がステッカーのように使用されるよう,接着剤2によって貼り付けられた油紙7とからなる構造であること(【0011】)。」
(コ)乙27
a 乙27の記載
乙27には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、建築の構造材等に使用されている木質合板の片面又は両面に、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を取付ける事により、構造材兼遮熱断熱ボードとした遮熱木質合板である。」
「【発明の効果】
【0005】
木質合板の片面又は両面に取付けたアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材は、両外面からくる輻射熱を大半侵入面側に跳ね返してしまう。このため、木質合板を透る熱量は非常に少なくなり、高遮熱高断熱材とすることが出来る。従って、木造建物の構造躯体の外側に直接取り付けると、構造材兼遮熱断熱材として使う事が出来る。
又、空気や湿気を全く透さないので、雨水の浸入や結露等による腐食もなく木質合板の耐久性も向上するばかりか、より高気密も期待出来る。
更に、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材は、電磁波をも反射してしまう為、電磁波対策としても有効である。」
b 乙27に記載された技術的事項
上記aより、乙27には、次の技術的事項(以下「乙27記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙27記載技術>
「建築の構造材等に使用されている木質合板において(【0001】)、
木質合板の片面又は両面に取付けたアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材は、両外面からくる輻射熱を大半侵入面側に跳ね返すため、ため、木質合板を透る熱量は非常に少なくなり、高遮熱高断熱材とすることが出来ること(【0005】)。」
(サ)乙13
a 乙13の記載
乙13には、上記(3)イ(ア)に示したとおりの記載がある。
b 乙13に記載された技術的事項
上記aより、乙13には、次の技術的事項(以下「乙13記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙13記載技術>
「断熱折版屋根構造において(【0020】)、
シート状断熱材2は折版屋根鋼板1の裏面に、その一面側が屈曲形状にそって固着され(【0010】)、
シート状断熱材2の下方の折曲部に面ファスナー3が耐熱性や引張り強度の高い糸6によって縫着され(【0012】)、
板状断熱材5は、シート状断熱材2の下方に配置され(【0016】)、
板状断熱材5の上面には、シート状断熱材2側の面ファスナー3と係合できる位置に、面ファスナー4が配置され、板状断熱材5の厚み方向に貫通する糸7により、面ファスナー4、板状断熱材5、裏当て9が一体的に縫着され(【0017】)、
板状断熱材5をアルミ箔10で包み(【0019】)、
板状断熱材5側の面ファスナー4をシート状断熱材2側の面ファスナー3と対向した位置で位置決めして両者を係着することにより、断熱折版屋根構造が得られること(【0020】)。」
(シ)乙17
a 乙17の記載
乙17には、上記(4)イ(ア)に示したとおりの記載がある。
b 乙17に記載された技術的事項
上記aより、乙17には、次の技術的事項(以下「乙17記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙17記載技術>
「天井仕上材4上の断熱材2表面に載置する遮熱材において(【0042】)、
シート材から成るフレーム10と、フレーム10内の空気層空間Sに挿入保持してフレーム10の立体形態を保持したシート材から成る自立片15とを含み(【0005】)、
フレーム10は、上面シート11と下面シート12を含む複数シートを、シート材から成る倒伏自在の起立片13,14で連結して長手方向に空気流通可能な空気層空間Sを形成したものであり、自立片15は、上面シート11及び下面シート12を当接支持する頂部15t及び底部15bを幅方向両端部15E間で、長手方向に並行する形態に屈曲立体化したものであり(【0005】)、
輻射熱反射層Reは、上面シート11への付与が必須であり、自立片15の表面及び下面シート12にも付与することで、上面シート11の輻射熱反射層Reが埃等で汚染されて熱線反射機能低下を生じても、下方の輻射熱反射層Reが補償することとなり、遮熱材1の熱線透過防止機能が向上し(【0006】)、
輻射熱反射層Reは、熱反射性の金属箔や金属蒸着膜であり、典型的には市場入手容易な6×10-3~6×10-2mm厚のアルミニウム箔であり(【0006】)、
自立片15の端部15Eをフレーム10の空気層空間Sの隅端部SEと止着する場合、自立片15をフレーム10の長手方向一端から空気層空間S内に挿入した後、自立片15の一端、又は両端で、端部15Eを空間Sの隅端部SEに当接して接着剤Adを点付与すること(【0019】)。」
(ス)乙28
a 乙28の記載
乙28には、次の記載がある。
「【0017】
図4は、本発明の第2の実施例における石綿スレート構造体を示す断面図である。本実施例では、石綿スレート構造体10-2は、波型の石綿スレート材11の上面にこの石綿スレート材11とほぼ同形状の波型に形成されるとともに粘着剤13の付着された鋼板12を貼着する。また、石綿スレート材11の下面に平板状の鋼板18を粘着剤13を介して貼着する。
【0018】
このように構成した場合、石綿スレート材が完全に鋼板で覆われて石綿が飛散する虞れがない。また、石綿スレート材の下面に空気層17が形成されて、保温効果を高めることができる。」
b 乙28に記載された技術的事項
上記aより、乙28には、次の技術的事項(以下「乙28記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙28記載技術>
「石綿スレート構造体において(【0017】)、
石綿スレート構造体10-2は、波型の石綿スレート材11の上面にこの石綿スレート材11とほぼ同形状の波型に形成されるとともに粘着剤13の付着された鋼板12を貼着し、石綿スレート材11の下面に平板状の鋼板18を粘着剤13を介して貼着することで(【0017】)、
石綿スレート材が完全に鋼板で覆われて石綿が飛散する虞れがなく、石綿スレート材の下面に空気層17が形成されて、保温効果を高めることができること。(【0018】)」
ウ 本件訂正発明1
(ア)対比
本件訂正発明1と、乙18発明とを、対比する。
a 乙18発明の「凹凸を交互に繰り返す形状であ」る「折板建材A」は、本件訂正発明1の「凹部」と「凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材」に相当する。
そして、折板建材は太陽の熱によって温度が上昇することは、本件特許の優先権主張の日前において技術常識であることを踏まえると、乙18発明の「折板建材」の屋外側に突出する頂部及び屋内側に突出する底部は、それぞれ本件訂正発明1の「熱源側に位置する凹部」及び「非熱源側に位置する凸部」に相当する。
以上を総合すると、乙18発明の「凹凸を交互に繰り返す形状であ」る「折板建材A」は、本件訂正発明1の「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材」に相当する。
b 乙18発明は、「屋根の内側断熱構造」であるから、「折板建材A」に取り付けられる「断熱材B」が屋内側に配置されていることは明らかであり、乙18発明の屋内側に配置された「断熱材B」と、本件訂正発明1の「該凹凸のある素材の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材」とは、「該凹凸のある素材の裏面側に位置する」部材である点で一致する。
c 乙18発明の「折板建材Aの底部」は、本件訂正発明1の「凹凸のある素材の凸部の裏面」に相当する。
そして、乙18発明において、「留め具Hが、折板建材Aの底部に取り付けられ」、「平板状であ」る「断熱材B」が「建材A」と直接接することがないことから、「留め具H」が「折板建材Aの底部」のみに取り付けられていると解するのが自然である。
したがって、乙18発明の「折板建材Aの底部に」「断熱材B」を取り付けることと、本件訂正発明1の「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を」「取り付け」ることは、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ」部材を取り付ける点で一致する。
d 上記(3)ウ(ア)eに示した「接着」の意味を踏まえると、乙18発明の「留め具H」は「磁石Cを有するため、鉄製の建材Aに磁力で固定され」ることから、乙18発明の「留め具H」は、本件訂正発明1の「接着手段」に相当する。
e 乙18発明において、「断熱材Bは建材Aと直接接することがない」ことから、上記cを踏まえると、「折板建材A」の頂部と「断熱材B」とは離れており、乙18発明の「断熱材Bは建材Aと直接接することがない」ことと、本件訂正発明1の「前記凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させていること」は、「前記凹部」と部材「との間に空間を存在させている」点で一致する。
f 乙18発明の「折板建材A」を備えた「屋根の内側断熱構造」と、本件訂正発明1の「凹凸素材の遮熱構造」は、「凹凸素材の」「構造」である点で一致する。
g 以上を総合すると、本件訂正発明1と乙18発明とは、以下の一致点1で一致し、以下の相違点3ないし5で相違する。
<一致点1>
「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材と、
該凹凸のある素材の裏面側に位置する部材とからなり、
前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記部材を接着手段により取り付けた構造であって、
前記凹部と前記部材との間に空間を存在させている
凹凸素材の構造。」
<相違点3>
本件訂正発明1の「接着手段」は、「接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段」であるのに対し、乙18発明では、「磁石C、カバーD、ピンE及び緩衝材Gを一体形状とした」「留め具H」である点。
<相違点4>
本件訂正発明1では、「該凹凸のある素材の裏面側に位置」し、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ」「取り付け」、「前記凹部」「との間に空間を存在させている」部材は、「アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材」であるのに対し、乙18発明では、「断熱材B」である点。
<相違点5>
本件訂正発明1は、「遮熱構造」であるのに対し、乙18発明は、「断熱構造」である点。
(イ)判断
a 相違点3について
乙18発明は、【0006】の「最大の利点は、現状の屋根や壁に直接手を加えることなく、また特殊な工具や接着剤などを用いることなく、誰でも簡単に内側断熱工事が施工できる点である」との記載から、接着剤や特殊な工具を必要とする熱溶着の使用について阻害要因があり、それを代替手段としての接着剤や熱溶着を採用する動機がない。
また、乙18発明は、断熱材Bは建材Aと直接接する事がないため、高い温度維持効果が期待できるものであるところ、直接接する接着剤、熱溶着、両面テープの使用について阻害要因があり、それを代替手段としての接着剤や熱溶着や両面テープを採用する動機がない。
そして、これらの点を覆すに足る動機付けに関して、乙13,17,19~28には記載も示唆もされていない。
なお、別件侵害訴訟における被告の無効主張に関する書面の第46頁には、断熱材の固定態様及び方法について、「ここで、乙18には、「建材加工や接着加工といった専門的な工事を実施することなく、また、短時間で断熱処理を簡単に施工できる方法を提供しようとするものである」ことが記載されている(【0003】)。この接着加工とは具体的には接着剤を用いたものである(【0006】)。
乙18においては、留め具Hを使用することによって、接着施工を実施することなく、断熱材を固定することが可能となっているのだから、対比すべき従来技術において、留め具Hの代わりに折板屋根と断熱材を接着加工により固定していたことが記載されているといえる。」と記載されている。
しかしながら、【0003】には、接着加工だけでなく、建材加工についても記載されており、【0006】には、「[0005]で記述した工事方法における最大の利点は、現状の屋根や壁に直接手を加えることなく、また特殊な工具や接着剤などを用いることなく、誰でも簡単に内側断熱工事が施工できる点である。現状の建築物・建材に手を加えない為、工事期間を大幅に短縮でき、同時に工事費用の大幅な削減も期待できる。」と記載されており、接着剤を用いることだけでなく、現状の屋根や壁に手を加えることや、特殊な工具を用いることが記載されており、これらの記載を考慮すると、現状の建築物・建材に手を加えることなく、留め具Hの構成のみ接着剤に置き換えた構成が従来技術として記載されているとは認められない。
よって、乙18発明、乙13,17,19~28記載技術によって、本件訂正発明1の相違点3に係る構成のようにすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
b 相違点4及び5について
事案に鑑み、相違点4及び5についてまとめて検討する。
乙23記載技術及び乙24記載技術に示すとおり、断熱材として、アルミニウム被覆を施した板状断熱材を用いることは、本件特許の優先権主張の日前において周知技術である。
乙18発明と上記周知技術は、ともに板状断熱材を用いた断熱構造であり、技術分野が共通する。
また、乙18発明の断熱材Bは断熱機能以外に特段の機能等を有するとの記載の示唆もない。
そうすると、断熱材の材質を適宜のものから選択するということは、当業者の通常の創作能力の範囲で変更することの動機付けはあるものである。
したがって、乙18発明の断熱材Bとして、アルミニウム被覆を施した板状断熱材を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、その結果として、アルミニウム被覆により輻射熱を反射する遮熱構造となり、相違点4及び5に係る本件訂正発明の構成となることは明らかである。
(ウ)小括
以上を総合すると、本件訂正発明1は、乙18発明、乙13,17,19~28記載技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
エ 本件訂正発明4ないし6
本件訂正発明4ないし6のいずれも、本件訂正発明1の構成を備える「凹凸素材の遮熱構造」の発明であるところ、上記ウ(イ)で判断したとおり、本件訂正発明1は乙18発明、乙13,17,19~28記載技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものではないから、本件訂正発明4ないし6のそれぞれについても、乙18発明、乙13,17,19~28記載技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
オ 無効の抗弁の理由3についての小括
したがって、本件訂正発明1,4ないし6は、無効の抗弁の理由3によって、独立特許要件を満たさないこととなるものではない。
(6)無効の抗弁の理由4について
ア 無効の抗弁の理由4の概要
別件侵害訴訟における無効の抗弁の理由4の概要は、次のものである(別件侵害訴訟における被告の無効主張に関する書面の第68頁~第69頁における、「乙13を主引用例とする進歩性欠如について」に関する主張)。
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先権主張の日前に頒布された乙13に記載された発明乙17,18,28に示す周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
<刊行物一覧>
乙13:特開平6-336790号公報
乙17:特開2004-11240号公報
乙18:特開2008-190311号公報
乙28:特開2007-77741号公報
イ 刊行物等について
(ア)乙13
乙13の記載及び乙13発明については、上記(3)イで示したとおりである。
(イ)乙17
乙17の記載及び乙17記載技術については、上記(5)イ(シ)で示したとおりである。
(ウ)乙18
a 乙18の記載
乙18には、上記(5)イ(ア)で示したとおりの記載がある。
b 乙18に記載された技術的事項
上記aより、乙18には、次の技術的事項(以下「乙18記載技術」という。)が、記載されている。なお、各構成に関連する段落番号を括弧書きで付した。
<乙18記載技術>
「屋根の内側断熱構造において(【0006】)、
折板建材Aは屋根部を構成し、カバーDは磁石Cに付随し、磁石Cの磁力を保つために金属製とし、カバーDは磁石Cに対して接着または溶接などで固定され、ピンEは断熱材Bを貫通して反対側に先端が突出し、ピンEはカバーDに接着または溶接などで固定され、カバーFは突出したピンEの先端を保護すると同時に磁石C、カバーDおよびピンEを断熱材Bに固定する役目も果たしており、緩衝材Gは断熱材Bが直接折板建材Aに接触するのを防ぐ役割をもち(【0005】)、
留め具Hは、磁石C、カバーD、ピンE及び緩衝材Gを一体形状としたものであり(【0005】)、
まず、工事を施工する位置を決定し、建材Aに留め具Hを取り付け、留め具Hは磁石Cを有するため、鉄製の建材Aに磁力で固定され、留め具Hを必要な数量建材Aに取り付け、次に、断熱材Bに対してピンEを貫通させることで、断熱材Bを取り付け、この時、断熱材Bは緩衝材Gによって直接建材Aと接することがなく、断熱材Bを貫通しているピンEの先端に、カバーFを取り付け、カバーFはピンEの先端を保護するだけでなく、断熱材Bが留め具Hから脱落するのを防ぐ役割も持ち、以上のの手順を繰り返すことにより、建築物に対する断熱工事を施工することができ(【0005】)、
現状の屋根や壁に直接手を加えることなく、また特殊な工具や接着剤などを用いることなく、誰でも簡単に内側断熱工事が施工でき、断熱材Bは建材Aと直接接する事がないため、高い温度維持効果が期待できること(【0006】)。」
(エ)乙28
乙28の記載及び乙28記載技術については、上記(5)イ(ス)で示したとおりである。
ウ 本件訂正発明1
(ア)対比
本件訂正発明1と、乙13発明の対比については、上記(3)ウ(ア)で示したとおりである。
したがって、本件訂正発明1と乙13発明とは、以下の相違点1で相違し、その余の点で一致する。
<相違点1>
構成要件Cに関し、
本件訂正発明1においては、「接着手段」が、「接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段であ」るのに対し、乙13発明では、「面ファスナー3」及び「面ファスナー4」である点。
(イ)判断
相違点について検討する。
乙13発明において、「板状断熱材5」は、「重量が平方メートル当り2Kg程度であり」、「シート状断熱材の面ファスナーを糸により縫着固定したことにより、面ファスナーの固定部分が補強されて、長期の使用においてもシート状断熱材に層間剥離が生ずることが防止されるので、上記重量の板状断熱材が脱落する」ことがなく取り付けることができると認められる。
しかしながら、「面ファスナー3」及び「面ファスナー4」による接着に代えて、接着剤や熱溶着や両面テープによる接着を採用した場合、糸によって補強されないため、上記シート状断熱材における層間剥離の防止の効果が得られないことは明らかである。
したがって、「面ファスナー3」及び「面ファスナー4」による接着に代えて、接着剤や熱溶着や両面テープによる接着として、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、動機付けがない。
この点に関し、乙17記載技術は、天井仕上材4上の断熱材2表面に載置する遮熱材であって、折板建材に断熱材を取り付けるものではなく、「折板屋根鋼板1」に「板状断熱材5」を直接取り付け、面ファスナーによる接着に代えて接着剤や熱溶着や両面テープによる接着とすることを、開示あるいは示唆するものではない。
乙18記載技術は、磁石C、カバーD、ピンE及び緩衝材Gを一体形状とした留め具Hにより折板建材Aに断熱材Bを取り付けるものであり、「折板屋根鋼板1」に「板状断熱材5」を直接取り付け、面ファスナーによる接着に代えて接着剤や熱溶着や両面テープによる接着とすることを、開示あるいは示唆するものではない。
乙28記載技術は、石綿スレート剤の石綿が飛散することがないように、鋼板で覆うものであって、折板建材に断熱材を取り付けるものではなく、「折板屋根鋼板1」に「板状断熱材5」を直接取り付け、面ファスナーによる接着に代えて接着剤や熱溶着や両面テープによる接着とすることを、開示あるいは示唆するものではない。
よって、乙13発明、乙17,18,28記載技術によって、本件訂正発明1の相違点1及び2に係る構成のようにすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
(ウ)小括
以上を総合すると、本件訂正発明1は、乙13発明、乙17,18,28記載技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
エ 本件訂正発明4ないし6
本件訂正発明4ないし6のいずれも、本件訂正発明1の構成を備える「凹凸素材の遮熱構造」の発明であるところ、上記ウ(イ)で判断したとおり、本件訂正発明1は乙13発明、乙17,18,28記載技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものではないから、本件訂正発明4ないし6のそれぞれについても、乙13発明、乙17,18,28記載技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
オ 無効の抗弁の理由4についての小括
したがって、本件訂正発明1,4ないし6は、無効の抗弁の理由4によって、独立特許要件を満たさないこととなるものではない。
(7)独立特許要件のまとめ
上記(3)ないし(6)のとおり、本件訂正発明1,4ないし6は、別件侵害訴訟における無効の抗弁の理由1ないし4を考慮しても、独立特許要件を満たさないものではない。
他に、本件訂正発明1,4ないし6が、独立特許要件を満たさないとする理由を発見しない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法126条1項ただし書1号に規定された事項を目的とし、同条5ないし7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-390109