2024-390023
タフティング機のためのステッチ分布制御システム
- 審判番号
- 2024-390023
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2013-024279外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 5622876
- 請求日
- 2024年03月11日
- 審決日
- 2024年08月21日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P141 .121-Y (D05C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 9項目
第1 手続の経緯
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本件訂正審判の請求に係る特許第5622876号(以下「本件特許」という。)は、2009年7月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年7月2日(US)米国、2009年2月23日(US)米国、2009年6月8日(US)米国、2009年6月30日(US)米国)を国際出願日とする特願2011-516872の一部を平成25年2月12日に新たな特許出願としたものであって、平成26年10月3日に特許権の設定登録がされた。その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
第2 本件訂正審判の請求について
1 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第5622876号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを認める、との審決を求める。」というものであって、その内容は、以下のとおりである(なお、下線は訂正箇所を示す。)。
2 本件訂正の内容
本件訂正は、請求項1~7からなる一群の請求項に係る訂正であって、次に示す訂正事項からなるものである(なお、下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「一連の糸を該針に供給するための糸供給機構と、一連のゲージ部品であって、該一連のゲージ部品は、該針が該裏打ち材料の中において糸のタフトを形成するように該裏打ち材料の中へ往復運動させられるとき、該少なくとも1つの針棒の該針と係合する位置において、該タフティング区画の下に載置される、一連のゲージ部品と、」とあるのを、
「一連の糸を該針に供給するための糸供給機構と、該少なくとも1つの針棒を、該タフティング区画を横断して横方向に移行させるための、該少なくとも1つの針棒に連結された少なくとも1つのシフターと、一連のゲージ部品であって、該一連のゲージ部品は、該針が該裏打ち材料の中において糸のタフトを形成するように該裏打ち材料の中へ往復運動させられるとき、該少なくとも1つの針棒の該針と係合する位置において、該タフティング区画の下に載置される、一連のゲージ部品と、」と訂正するとともに、
「該パターン化タフト状物品を形成するように該パターン化タフト状物品に対する所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する、」とあるのを、
「該パターン化タフト状物品を形成するように該パターン化タフト状物品に対する所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、前記効果的ステッチレート毎にステッチを行い、前記選択されたステッチ場所において、前記提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持することによって、該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する、」と訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
第3 当審の判断
1 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1
訂正事項1は以下の訂正事項からなるものである。
(ア)本件訂正前の請求項1において、本件訂正前のタフティング機が「該少なくとも1つの針棒を、該タフティング区画を横断して横方向に移行させるための、該少なくとも1つの針棒に連結された少なくとも1つのシフター」を備えることを限定し、
(イ)本件訂正前の請求項1において、本件訂正前のステッチ分布制御システムが「前記効果的ステッチレート毎にステッチを行い、前記選択されたステッチ場所において、前記提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持する」という制御内容を含むことを限定するものである。
(ウ)上記(ア)については、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該特定は、本件訂正前の請求項7に記載された事項であるとともに、本件特許明細書の【0010】、【0013】、【0021】、【0022】及び図2Aの記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
また、上記(イ)については、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該特定は、本件特許明細書の【0013】、【0019】~【0020】、【0027】、【0031】、【0045】、【0047】~【0049】、【0051】~【0052】、【0055】及び【図10A】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
2 独立特許要件(進歩性)について
上記1で示したとおり、請求項1に係る訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮の訂正(特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項)を目的とするものであるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許法第126条第7項に規定された要件(独立特許要件)を満たすものか否かの検討を要するところ、訂正審判1上申書に添付された証拠(本件特許に係る特許権侵害行為差止等請求事件(大阪地方裁判所 令和3年(ワ)第4061号)で被告が特許無効の抗弁の主張を裏付けるために提出した証拠)に基いて、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が容易に想到し得たものであるか否かについて、以下に検討する。
(1)本件訂正後の請求項1~7に係る発明
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~7は、本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された、以下の事項により特定されるものである(以下、本件訂正後の請求項1~6に係る発明を「訂正発明1」等という。)。
「【請求項1】複数の異なる糸を含むパターン化タフト状物品を形成するためのタフティング機であって、該タフティング機は、少なくとも1つの針棒であって、該少なくとも1つの針棒に沿って一連の針が載置されている、少なくとも1つの針棒と、続きを表示(全21行)該タフティング機のタフティング区画を通して裏打ち材料を供給するための裏打ち供給ロールと、一連の糸を該針に供給するための糸供給機構と、該少なくとも1つの針棒を、該タフティング区画を横断して横方向に移行させるための、該少なくとも1つの針棒に連結された少なくとも1つのシフターと、一連のゲージ部品であって、該一連のゲージ部品は、該針が該裏打ち材料の中において糸のタフトを形成するように該裏打ち材料の中へ往復運動させられるとき、該少なくとも1つの針棒の該針と係合する位置において、該タフティング区画の下に載置される、一連のゲージ部品と、ステッチ分布制御システムであって、該ステッチ分布制御システムは、一連のパターンステップに従って、該裏打ち材料に沿って選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持するように該針への該糸の供給を制御するために、該糸供給機構を制御し、かつ、該パターン化タフト状物品を形成するように該パターン化タフト状物品に対する所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、前記効果的ステッチレート毎にステッチを行い、前記選択されたステッチ場所において、前記提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持することによって、該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する、ステッチ分布制御システムとを備える、タフティング機。【請求項2】前記ゲージ部品は、レベルカットループルーパを備える、請求項1に記載のタフティング機。【請求項3】前記ゲージ部品は、ループパイルルーパを備える、請求項1に記載のタフティング機。【請求項4】前記ゲージ部品は、カットパイルフックを備える、請求項1に記載のタフティング機。【請求項5】前記ゲージ部品は、カット/ループフックを備える、請求項1に記載のタフティング機。【請求項6】前記糸供給機構は、スクロール、ロール、シングルエンド、またはダブルエンドの糸供給パターン装置のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載のタフティング機。【請求項7】(削除)」
(2)引用文献、引用文献に記載された事項及び引用発明、並びに技術常識
ア 引用文献一覧
イ 引用文献1に記載された事項及び発明
(ア)引用文献1には以下の記載がある(下線は当審が付した。また、「・・・」は文の省略を示す。以下同様。)。
「【請求項31】タフト作製機において、間隔を空けられた一連の針に対する個々の糸の送りを制御して基材に一連の糸のタフトを形成する糸送りユニットであって、該糸送りユニットが、複数の糸送り装置であって、該複数の糸送り装置の各々が駆動モータを含み、該駆動モータが駆動ロールを駆動して、選択された糸の1つを針の1つに係合して送る、複数の糸送り装置、糸送りコントローラであって、該糸送りコントローラが、該糸送り装置の該駆動モータと通信して該駆動モータの動作を制御し、プログラムされたパターン命令に応答して糸送りを制御する、糸送りコントローラ、および糸送り分配装置であって、該糸送り分配装置が、別々の管群セクションとして配列された一連の糸送り管を有し、該糸送り管の各々が該糸送り装置から該糸の1つを受け取って該タフト作製機の選択された針へ該糸を案内する、糸送り分配装置、を含む、糸送りユニット。」
「【0002】(発明の分野)本発明は、一般的には、カーペットのタフト作製機に関し、具体的には、タフト作製機の針に対する個々の糸送りを制御する糸送りシステムまたはパターン取付具に関する。【背景技術】【0003】(発明の背景)・・・【0004】従来、パターン取付具を有するタフト作製機の針に対して、選択された糸のグループの送りを制御するため、パターン取付具、たとえば、ロールまたはスクロール・パターン取付具が使用されてきた。そのようなロールおよび/またはスクロール・パターン取付具は一連の糸送りロールを含み、これらの糸送りロールは、選択された糸のグループを、選択された針へ送る。これらの送りロールの動作を制御することによって、針に対する糸の送りレートが制御され、タフト作製機を通過する基材に形成される糸のタフトのパイルの高さが変更され、隣接するタフトによって幾つかの糸のタフトがバックロブおよび隠され、異なったパターン・リピートが基材の幅を横切って形成されることが可能になる。」
「【0008】(要旨)簡単に述べれば、本発明は、一般的に、タフト作製機へ取り外し可能に取り付けられ、タフト作製機の各々の針へ一連の糸を個々に送るように構成された糸送りシステムまたはパターン糸送り取付具に関する。個々の糸の各々の針への送りは、糸送りシステムによって独立に制御され、必要または所望に応じて向上した精度および制御を提供し、プログラムされたカーペット・パターン命令に従ってタフト作製機を通過する基材に糸のタフトを形成する。本発明の糸送りシステムは、一般的に、タフト作製機へ解放可能に取り付けられ、および/または、除去されることのできる標準化された自立型ユニットまたは取付具として構成可能な糸送りユニットを含み、タフト作製機の針の数に依存して必要な複数の糸送りユニットを順次にタフト作製機へ取り付けることを可能にする。【0009】本発明の糸送りユニットは、一般的に、一連の糸送り装置が受け取られて支持されるハウジングを画定するフレームを含む。各々の糸送り装置は、一般的に、フレームの中に解放可能に取り付けられて駆動ロールを駆動する駆動モータを含み、また駆動ロールと係合する方向にバイアスされて駆動ロールとの間で糸を係合するアイドルロールを含む。一連の糸送り管が、糸供給源から糸送り装置の各々へ個々の糸を送り、糸は、関連した糸送り装置の駆動ロールとアイドルロールとの間に係合して案内される。糸送り装置の駆動モータは独立に制御され、タフト作製機の選択された針へ糸を所望のレートで送る。」
「【0011】各々の糸送りコントローラの制御プロセッサは、さらに、システム制御ユニットまたはコントローラへ電気的に接続される。システム制御ユニットまたはコントローラは、モータ・コントローラからのフィードバックをモニタし、各々の糸送りコントローラの制御プロセッサへパターン制御命令を提供する。これらの命令は、モータ・コントローラへ通信され、各々の駆動モータの速度を制御し、各々の糸の対応する針への送りを個々に制御し、所望またはプログラムされたパターンを形成する。システム・コントローラは、入力機構、たとえば、キーボード、マウスなど、およびモニタを有する別個のワークステーションとして設けられることができ、一般的に、タフト作製機の様々な動作要素をモニタするタフト作製機コントローラと通信する。代替的に、システム・コントローラおよび/またはその機能は、タフト作製機コントローラの一部分として含められることができる。」
「【0013】したがって、本発明の糸送りユニットは、プログラムされたパターン命令に従ってタフト作製機の各々の針に対する一連の糸の各々の送りを個々に制御して所望のパターンを形成する。本発明の糸送りユニットは、さらに、標準化された糸送り取付具またはユニットの製作を可能にする。標準化された糸送り取付具またはユニットは、在庫品として製作、テスト、貯蔵されることができ、その後でタフト作製機へ取り外し可能に設置され、そのようなパターン取付具を特別注文によって設計および設置する必要はなく、コストおよび時間を消費して機械およびその管群アレーをセットアップする必要はない。さらに、糸送りユニットのハウジングは、実質的に開放設計で形成されることができ、糸送りユニットは、糸送りコントローラのために設けられた一連のファンおよび吸熱源を含んで、糸送りユニットからの熱の効率的消散を促進し、その電子構成部品を効率的および信頼性をもって動作させることができる。」
「【発明を実施するための最良の形態】【0015】(発明の詳細な説明)ここで図面を詳細に参照すると、同様の数字は幾つかの図面を通して同様の部品を示す。図1~図6は、本発明の糸送り制御システムまたは糸送りパターン取付具10を示す。装置10はタフト作製機11(図1および図2)へ解放可能に取り付けられ、個々の糸12がタフト作製機11の針13へ送られるのを制御する。本発明の糸送りシステムは、プログラムまたは所望されるカーペット・パターンを形成するため、各々の針への個々の糸の送りを独立に制御して、タフト作製機を通り針13の下を通過する基材14に、より大きな精度および制御で糸のタフトが形成されることを可能にする。【0016】図2で示されるように、タフト作製機11は、一般的に、米国特許第5,979,344号で開示されるような従来型タフト作製機を含む。このタフト作製機は、間隔を空けられた列で取り付けられた針13を保有する少なくとも1つの往復針棒17を往復駆動する機械駆動または主駆動シャフト(図示されず)が支持されるフレーム16、タフト作製機の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して、矢印21によって示された送り方向へ基材14を送るスパイクロール19を含む基材送りロール18、および針13へ糸を直接引っ張って送る引っ張りロール22を有する。本発明は、横方向でシフト可能なシングルおよびデュアルのシフト可能針棒17を有する機械、および複数の列形または食い違い針行を取り付けられた単一の往復針棒を有する機械を含む本質的に任意のタフト作製機11で利用できることが理解されるであろう。針棒が往復するにつれて、針13は、通過する基材14と係合しない上昇位置と、基材の中に糸のループまたはタフトを形成するため基材を通して延長され、タフト作製機のベッド板24の下に取り付けられた一連のルーパ(looper)23またはフックと係合する下降係合位置との間を、垂直に移動する。【0017】図2で示されるように、タフト作製機11は、さらに、一般的に、米国特許第5,979,344号で開示されるようなタフト作製機コントローラまたは制御ユニット26を含む。制御ユニット26は、タフト作製機の様々な動作要素、たとえば、針棒の往復、基材の送り、針棒のシフト、ベッド板の位置などをモニタおよび制御する。機械コントローラ26は、典型的には、制御コンピュータまたはプロセッサ28を格納するキャビネットまたはワークステーション27、およびユーザ・インタフェース29を含む。ユーザ・インタフェース29は、モニタ31および入力装置32、たとえば、キーボード、マウス、キーパッド、描画タブレット、または当業者によって認識される類似の入力装置またはシステムを含むことができる。さらに、モニタ31は、タフト作製機コントローラへの作業者入力を可能にするタッチ・スクリーン型モニタであってよい。【0018】タフト作製機コントローラ26は、一般的に、タフト作製機の様々な動作または駆動要素からのフィードバックを制御およびモニタし、たとえば、主軸駆動モータ34を制御して針の往復を制御するため主軸エンコーダ33からフィードバックを受け取り、また基材送りロールの駆動モータ37を制御して基材のステッチ・レートまたは送りレートを制御するため基材送りエンコーダ36からのフィードバックをモニタする。さらに、針に関してさらなる位置フィードバックを提供するフレーム位置に、針センサまたは近接スイッチ(図示されず)を取り付けることができる。さらに、シフト可能針棒タフト作製機については、コントローラ26は、さらに、一般的に、プログラムされたパターン命令に従って針棒17をシフトするため、針棒シフト機構38(図2)の動作をモニタおよび制御する。」
「【0020】作業者は、デザイン・センターのコンピュータ41で、パターン・データ・ファイル、および可能性として、所望のカーペット・パターンのグラフィック表現を作成することができる。コンピュータ41は、そのようなカーペット・パターンをタフト作製機でタフトにするために要求される様々なパラメータを計算する。そのような計算には、糸送りレート、パイル高、基材の送りまたはステッチ・レート、およびパターンをタフトにするために要求される他のパラメータの計算が含まれる。これらのパターン・データ・ファイルは、典型的には、機械コントローラ、フロッピー(登録商標)ディスクまたは類似の記録メディアへダウンロードまたは転送されるか、デザイン・センターまたはネットワーク・サーバでメモリに記憶されて、後でタフト作製機コントローラへ転送および/またはダウンロードされることができる。さらに、デザイン・センターに機械が置かれ、および/または機械コントローラがデザイン・センターの機能またはプログラムされた構成要素を有する場合、必ずしも要求されないが、デザイン・センター40および/または機械コントローラ26が普通のインターネット・プロトコル(即ち、ウェブ・ブラウザ、FTPなど)をプログラムされてそれを使用し、モデム、インターネット、またはネットワーク接続を有して、リモート・アクセスおよびトラブル・シューティングを可能にすることが好ましい。」
「【0024】図1~図3で示されるように、糸送りユニット50は、さらに、一連の糸送り装置70を含む。糸送り装置70は、糸送りユニットのハウジング56の中に受け取られ、取り外し可能に取り付けられる。糸送り装置は、一般的に、個別または単一端の糸送り制御のため、個々の糸と係合してタフト作製機の関連する針へ送るが、ある構成では、さらに、針の選択されたセットまたはグループへ複数の糸を送るため糸送り装置を使用することができる。たとえば、2,000本の針を有する機械では、各々の糸送りユニットは2つ以上の糸を制御することができ、針へ糸を送るため1,000個以下の糸送りユニットを使用することができる。糸送りユニットは、典型的には、所定数または一連の糸送り装置を設けられ、これらの糸送り装置は、典型的には、タフト作製機のある複数の針に対応する。たとえば、糸送りユニットは、典型的には、取り外し可能に取り付けられる約192個の糸送り装置70を有するように製作されることができる(もっとも、より大きいか少ない糸送り装置を有する他の構成も使用することができる)。このようにして、糸送りユニットは、実質的に標準的な取付具またはユニットとして製作されることができ、必要に応じて使用される在庫品として製作および貯蔵され、タフト作製機の構成と一緒に本発明の糸送りユニットを特注で製作および組み立てることを必要としない。したがって、タフト作製機のパターン糸送り取付具が必要とされるとき、本発明に従った一連の糸送りユニットまたは取付具が在庫品から取り除かれて、タフト作製機の幅を横切って順次に取り付けられる。糸送りユニットの数は、タフト作製機の針の数、および糸送り装置によって制御される糸の数に依存して選択される。【0025】図1および図4Aで示されるように、糸送り装置70の各々は、一般的に、駆動モータ71を含む。駆動モータ71は、ハウジング56の前面又は側面59に沿って糸送りユニット50のフレーム51へ取り付けられたモータ取り付け板72の中に受け取られるか、解放可能に取り付けられる。モータ取り付け板72は一連の開口または窓73を含み、図4Aで示されるように、駆動モータ71は窓73へ受け取られて取り付けられる。」
「【0056】所望のカーペット・パターンが202で示されるように選択された後、パターン情報は、典型的には、糸送り制御システム10のシステム・コントローラ165(図2)へロードされる。次に、作業者は、図7の218で示されるように、糸送り制御システムの作業をスタートする。そこで糸送り装置70(図2)は、プログラムされたパターン情報に従って可変レートでクリール(図示されず)から糸を引っ張って送り、糸は引っ張りロール22へ送られ、ロール22はタフト作製機11の個々の針13へ直接糸を送る。219(図7)で示されるように、システム・コントローラは、タフト作製機の駆動主軸の回転に比例した糸送りレートまたはモータ・ギヤ/送りおよび個々の糸に関するパターン制御命令または信号を、約13~15ミリ秒の時間間隔で制御情報ネットワーク・ケーブル174を介して糸送りコントローラ140(図2)へ送る。221(図7)で示されるように、そのようなパターン制御命令または信号/情報は制御プロセッサ152によって受け取られ、制御プロセッサ152は特定のパターン制御命令をモータ・コントローラまたはドライブ153へ送り、ドライブ153は、パターン・ステップで要求されたように、駆動モータ71に糸12の送りを増加または減少させる。」
「【図2】[図:0001416413000001.jpg]」
「【図7】[図:0001416413000002.jpg]」
(イ)上記(ア)の記載から以下の事項が認定できる。
a 前提構成について
(a)【0008】には「個々の糸の各々の針への送りは、糸送りシステムによって独立に制御され、必要または所望に応じて向上した精度および制御を提供し、プログラムされたカーペット・パターン命令に従ってタフト作製機を通過する基材に糸のタフトを形成する。」及び「タフト作製機の針の数に依存して必要な複数の糸送りユニットを順次にタフト作製機へ取り付ける」との記載がある。
【0013】には「糸送りユニットは、プログラムされたパターン命令に従ってタフト作製機の各々の針に対する一連の糸の各々の送りを個々に制御して所望のパターンを形成する」との記載がある。
以上の記載及び発明を実施するための形態の記載を踏まえると、引用文献1に記載された発明の前提構成は、「複数の糸を送る糸送りユニット50を備え、所望のカーペット・パターンを持つカーペットを形成するためのタフト作製機11」であることがわかる。
(b)【0016】には「このタフト作製機は、間隔を空けられた列で取り付けられた針13を保有する少なくとも1つの往復針棒17を往復駆動する機械駆動または主駆動シャフト(図示されず)が支持されるフレーム16、・・・を有する。本発明は、横方向でシフト可能なシングルおよびデュアルのシフト可能針棒17を有する・・・任意のタフト作製機11で利用できる」との記載がある。
上記記載を踏まえると、引用文献1に記載された発明の前提構成において、「横方向でシフト可能な少なくとも1つの往復針棒17であって、該少なくとも1つの往復針棒17に沿って一連の針13が載置されている」ことがわかる。
(c)【0016】には「タフト作製機の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して、矢印21によって示された送り方向へ基材14を送るスパイクロール19を含む基材送りロール18」との記載がある。
上記記載を踏まえると、引用文献1に記載された発明の前提構成は、「該タフト作製機11の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して基材14を供給するための基材送りロール18」を有することがわかる。
(d)【0024】には「糸送りユニット50は、さらに、一連の糸送り装置70を含む。・・・糸送りユニットは、典型的には、所定数または一連の糸送り装置を設けられ」との記載がある。
【0025】には「糸送り装置70の各々は、一般的に、駆動モータ71を含む」との記載がある。
以上の記載を踏まえると、引用文献1に記載された発明の前提構成は、「一連の糸を該針に供給するための、駆動モータ71を含む糸送り装置70を有する糸送りユニット50」を有することがわかる。
(e)【0016】には、「針棒が往復するにつれて、針13は、通過する基材14と係合しない上昇位置と、基材の中に糸のループまたはタフトを形成するため基材を通して延長され、タフト作製機のベッド板24の下に取り付けられた一連のルーパ(looper)23またはフックと係合する下降係合位置との間を、垂直に移動する」との記載がある。
上記記載を踏まえると、引用文献1に記載された発明の前提構成において、「一連のルーパ23は、該針13が基材14の中において糸のループ又はタフトを形成するように基材14の中を上昇、下降させられるとき、該針13のつくる糸のループ又はタフトと係合する位置において、タフト作製領域の下に配置される」ことは明らかである。
b 制御システムについて
(a)【請求項31】には「該糸送り装置の該駆動モータと通信して該駆動モータの動作を制御し、プログラムされたパターン命令に応答して糸送りを制御する、糸送りコントローラ」との記載がある。
【0009】には「糸送り装置の駆動モータは独立に制御され、タフト作製機の選択された針へ糸を所望のレートで送る。」との記載がある。
【0025】には「糸送り装置70の各々は、一般的に、駆動モータ71を含む。」との記載がある。
【0056】には「219(図7)で示されるように、システム・コントローラは、タフト作製機の駆動主軸の回転に比例した糸送りレートまたはモータ・ギヤ/送りおよび個々の糸に関するパターン制御命令または信号を、約13~15ミリ秒の時間間隔で制御情報ネットワーク・ケーブル174を介して糸送りコントローラ140(図2)へ送る。221(図7)で示されるように、そのようなパターン制御命令または信号/情報は制御プロセッサ152によって受け取られ、制御プロセッサ152は特定のパターン制御命令をモータ・コントローラまたはドライブ153へ送り、ドライブ153は、パターン・ステップで要求されたように、駆動モータ71に糸12の送りを増加または減少させる。」との記載がある。
以上の記載を踏まえると、引用文献1に記載された発明の制御システムは、「該糸送りコントローラ140は、プログラムされたパターン命令に応答して、糸12の送りを増加又は減少させるように該針13への該糸12の供給を制御するために、該糸送り装置70の駆動モータ71を制御」するものであることがわかる。
(b)【0015】には「本発明の糸送りシステムは、プログラムまたは所望されるカーペット・パターンを形成するため、各々の針への個々の糸の送りを独立に制御して、タフト作製機を通り針13の下を通過する基材14に、より大きな精度および制御で糸のタフトが形成されることを可能にする。」との記載がある。
「プログラムされたパターン命令に応答して」(【請求項31】)ステッチが行われる場所は当然存在し、この場所を「選択されたステッチ場所」と表現することができ、「選択されたステッチ場所」は「基材に沿っ」た場所である。
プログラムされたパターン命令に応答してステッチされた糸は「提示された糸12」と表現することができる。
以上の事項を踏まえると、引用文献1に記載された発明における、糸送り装置70の駆動モータ71によって供給が制御される糸12は「該基材に沿って選択されたステッチ場所において提示された糸12」であることは明らかである。
(c)【0016】には「間隔を空けられた列で取り付けられた針13を保有する少なくとも1つの往復針棒17を往復駆動する機械駆動または主駆動シャフト(図示されず)が支持されるフレーム16、タフト作製機の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して、矢印21によって示された送り方向へ基材14を送るスパイクロール19を含む基材送りロール18、および針13へ糸を直接引っ張って送る引っ張りロール22を有する。」との記載がある。
【0017】には「制御ユニット26は、タフト作製機の様々な動作要素、たとえば、針棒の往復、基材の送り、針棒のシフト、ベッド板の位置などをモニタおよび制御する。」との記載がある。
【0018】には「タフト作製機コントローラ26は、一般的に、タフト作製機の様々な動作または駆動要素からのフィードバックを制御およびモニタし、たとえば、主軸駆動モータ34を制御して針の往復を制御するため主軸エンコーダ33からフィードバックを受け取り、また基材送りロールの駆動モータ37を制御して基材のステッチ・レートまたは送りレートを制御するため基材送りエンコーダ36からのフィードバックをモニタする。」との記載がある。
以上の記載を踏まえると、「タフト作製機コントローラ26は(該所望のカーペット・パターンを持つカーペットを形成するように)該所望のカーペット・パターンを持つカーペットに対するステッチ・レートまたは送りレートで該基材の送りを制御するために、該基材送りロール18の駆動モータ37を制御」することがわかる。
(d)【0017】の「制御ユニット26は、タフト作製機の様々な動作要素、たとえば、針棒の往復、基材の送り、針棒のシフト、ベッド板の位置などをモニタおよび制御する。」との記載及び【0018】の「タフト作製機コントローラ26は、一般的に、タフト作製機の様々な動作または駆動要素からのフィードバックを制御およびモニタし、たとえば、主軸駆動モータ34を制御して針の往復を制御するため主軸エンコーダ33からフィードバックを受け取り、また基材送りロールの駆動モータ37を制御して基材のステッチ・レートまたは送りレートを制御するため基材送りエンコーダ36からのフィードバックをモニタする。」との記載を踏まえると、「ステッチ・レートまたは送りレート毎にステッチを行」うことは明らかである。
そして、【0015】の「本発明の糸送りシステムは、プログラムまたは所望されるカーペット・パターンを形成するため、各々の針への個々の糸の送りを独立に制御して、タフト作製機を通り針13の下を通過する基材14に、より大きな精度および制御で糸のタフトが形成されることを可能にする。」との記載及び【0056】の「219(図7)で示されるように、システム・コントローラは、タフト作製機の駆動主軸の回転に比例した糸送りレートまたはモータ・ギヤ/送りおよび個々の糸に関するパターン制御命令または信号を、約13~15ミリ秒の時間間隔で制御情報ネットワーク・ケーブル174を介して糸送りコントローラ140(図2)へ送る。221(図7)で示されるように、そのようなパターン制御命令または信号/情報は制御プロセッサ152によって受け取られ、制御プロセッサ152は特定のパターン制御命令をモータ・コントローラまたはドライブ153へ送り、ドライブ153は、パターン・ステップで要求されたように、駆動モータ71に糸12の送りを増加または減少させる。」との記載も踏まえると、引用文献1に記載された発明の制御システムは、「(該所望のカーペット・パターンを持つカーペットを形成するように)ステッチ・レートまたは送りレート毎にステッチを行い、前記選択されたステッチ場所において、前記提示された糸12の送りを増加又は減少させるようにする」ものであることがわかる。
(e)【0020】の「作業者は、デザイン・センターのコンピュータ41で、パターン・データ・ファイル、および可能性として、所望のカーペット・パターンのグラフィック表現を作成することができる。コンピュータ41は、そのようなカーペット・パターンをタフト作製機でタフトにするために要求される様々なパラメータを計算する。そのような計算には、糸送りレート、パイル高、基材の送りまたはステッチ・レート、およびパターンをタフトにするために要求される他のパラメータの計算が含まれる。」との記載から、引用文献1に記載された発明において、「所望のカーペット・パターンを持つカーペットの表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する」ものであることは明らかである。
(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「複数の糸を送る糸送りユニット50を備え、所望のカーペット・パターンを持つカーペットを形成するためのタフト作製機11であって、該タフト作製機は、横方向でシフト可能な少なくとも1つの往復針棒17であって、該少なくとも1つの往復針棒17に沿って一連の針13が載置されている、少なくとも1つの針棒と、該タフト作製機11の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して基材14を供給するための基材送りロール18と、続きを表示(全12行)一連の糸を該針に供給するための、駆動モータ71を含む糸送り装置70を有する糸送りユニット50と、該針13が基材14の中において糸のループ又はタフトを形成するように基材14の中を上昇、下降させられるとき、該針13のつくる糸のループ又はタフトと係合する位置において、タフト作製領域の下に配置される、一連のルーパ23と、糸送りコントローラ140及びタフト作製機コントローラ26であって、該糸送りコントローラ140は、プログラムされたパターン命令に応答して、該基材に沿って選択されたステッチ場所において提示された糸12の送りを増加又は減少させるように該針13への該糸12の供給を制御するために、該糸送り装置70の駆動モータ71を制御し、かつ、タフト作製機コントローラ26は該所望のカーペット・パターンを持つカーペットを形成するように該所望のカーペット・パターンを持つカーペットに対するステッチ・レートまたは送りレートで該基材の送りを制御するために、該基材送りロール18の駆動モータ37を制御し、ステッチ・レートまたは送りレート毎にステッチを行い、前記選択されたステッチ場所において、前記提示された糸12の送りを増加又は減少させるようにすることによって、該所望のカーペット・パターンを持つカーペットの表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する、糸送りコントローラ140及びタフト作製機コントローラ26と、を備える、タフト作製機。」
ウ 技術常識
(ア)引用文献2
引用文献2には以下の記載がある(日本語は当審による翻訳である。)。
「[図:0001416413000003.jpg]」(127ページ)
(6.9 カーペット構造の制御
カーペット構造を制御する必須のパラメータは、ゲージ、ステッチ長さ、パイル高さ、ヤーンの線密度である(図6.11参照)。
タフティングマシンのゲージは、針の中心間の距離を1インチの何分の一に相当するかで規定したものである(タフティングマシンは、メートル法が確立される前のアメリカを起源としている)。マシンは1/20の細いものから1/2の粗いものまで作られているが、利用可能なゲージは1/16から1/4まである。ゲージは、固定されたパラメータと考えられる。クリールを含むマシンを別のゲージに変更することは大掛かりな作業であり、おそらく余剰マシンを市場の要求により近いゲージにアップグレードするために行われる。通常、タフティング工場は、様々な製品ラインを生産するために、様々なゲージのマシンで構成されている。
ステッチの長さはバッキング布の給送速度によって制御され、マシンの回転数に対して布の速度が遅いほど、ステッチの長さは短くなり、カーペットは重くなる。)
「[図:0001416413000004.jpg]」(133ページ)
(7 タフテッドカーペットのパターニングシステム
タフティングマシンにおけるパターニングシステムは、主に以下の3つに大別される。
・ヤーンテンショニングシステムは、通常パイルの高さを制御する。
・クロスオーバーシステムは、パイルヤーンの横方向の相対的な位置を変える。
・カラー・インターチェンジ・システムは、デザイン上の特定の位置に挿入されるヤーンを、数色のヤーンから選択できる。
最初の2つの技術を組み合わせたシステムもあり、また、厳密にはこれらの分類に入らないものもあるが、便宜上、ヤーンテンショニングシステムと一緒に説明する。もちろん、エクリュカーペットのプリンティングは非常に重要なパターニングシステムであり、ヤーンによるデザインの特徴(色や質感の効果)を持つカーペットも多く、しばしば「セミプレーン」として知られている。」
7.1 ヤーンテンショニングシステム
ループパイルタフティングでは、パイルの高さを変えることで、さまざまな効果を生み出すことができる。最も単純なケースでは、単色の彫刻的なパイルが生成される。パイルの高さを2つ、3つ作ることも可能である。彫刻カーペットをシャーリングマシン(18.2項参照)にかけると、高い方のパイルの先端がカットパイルとなり、ループの中にカットパイルのパターンが入る。チップシェアードデザインとしても知られるものとなる。交互に異なる色のヤーンを通した針により、一方の色の低いループがもう一方の色の高いパイルに完全に隠れ、これを適宜反転させることで、2色のデザインになる。もちろん、高いパイルの密度は一つおきの針のみで形成されることが決まり、埋もれたパイルをうまく隠すには、嵩高なヤーンが必要となる。)
「[図:0001416413000005.jpg]」(142ページ)
(7.2 クロスオーバーシステム
クロスオーバー・タフティングシステムのコンセプトは「ジュートシフター」又はカム作動のスライド式針棒を使用して、一連のカラーパイルヤーンから粗いジグザグ又は正弦曲線を作り出すことから始まっている。一部のステッチ・プレースメントシステムでは、バッキング布を横方向に往復させる機構が用いられているが(6.11項参照)、色付きパイルヤーンを横方向に移動させるパターンニングシステムとしては、ニードルバーをスライドさせる機構に重点が置かれてきた。精密な機構とCADシステムに支援されたデザイナーの該技術への強い関心とにより、非常に高度な効果が得られるようになった。)
「[図:0001416413000006.jpg]」(148ページ)
(7.3 パターニングアタッチメントの組み合わせ
タフテッドカーペットの主要なパターニングシステムにはそれぞれ基本的な制限があり、埋め込みパイル技術は使用できる色数が少なく、スライドニードルバー技術は色数を多くできるが、すべての色が常にパイルの中に見える。これらの技術及び他の技術のバリエーションを組み合わせることで、タフティングのパターニング範囲は大きく広がる。
従来のタフティングマシンに大幅な変更を加えるような組み合わせ方もあるが、多くの場合、マシンの両側に2つの異なるパターニング装置を備え、それぞれがスライドニードルバーにヤーンをパルスを供給する(つまり、各ニードルバーにテンショニングや他のパターニング装置を備えたダブルスライドニードルバーマシンである)。既存の機械の多くは、従来の機構をベースにしているが、現在のトレンドは、サーボモータ制御を基礎とし、保存されたデジタル情報からカーペットの品質やデザインを呼び出すコントロールパネルと連動させた様々なシステムである。マシンゲージを含めた組み合わせの可能性は多岐にわたり、現時点ではまだ網羅されていない。おそらく最も大きな可能性は、FRSやサーボスクロールシステムとの組み合わせによるものであろう。多くのマシンは大量生産されておらず、特定の企業が独自のデザインテーマを追求するために購入する傾向がある。以下はその一例である。)
(イ)引用文献3
引用文献3には以下の記載がある。
「シフト・ハイロー(shift high&low)パイルに高低差をつけながらさらにジュートムーバー、またはスライディングニードルバーで左右に振り製作された柄タフトカーペット。グラフィックマシンによるループハイロー柄などである。」(66ページ左欄)
(ウ)引用文献2及び引用文献3に示されている技術常識
上記(ア)及び(イ)から以下の事項は本件特許の優先日前においてタフティング機の技術分野において技術常識(以下「技術常識」という。)であったといえる。
「カーペット柄を生成する制御システムを備えるタフティング機において、ニードルバーを左右に動かすニードルシフト及びタフトに高低をつけるハイロー制御を組み合わせることで、一方の色の低いループがもう一方の色の高いパイルに完全に隠れ、これを適宜反転させることで、2色のデザインになる、シフト・ハイロー制御。」
(3)訂正発明1について
ア 対比
訂正発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
(ア)タフティング機の前提構成について
引用発明の「所望のカーペット・パターンを持つカーペット」、「タフト作製機11」はそれぞれ、訂正発明1の「パターン化タフト状物品」、「タフティング機」に相当する。
そうすると、引用発明の「複数の糸を送る糸送りユニット50を備え、所望のカーペット・パターンを持つカーペット形成するためのタフト作製機11」と、訂正発明1の「複数の異なる糸を含むパターン化タフト状物品を形成するためのタフティング機」は、「複数の糸を含むパターン化タフト状物品を形成するためのタフティング機」である限りにおいて一致する。
引用発明の「1つの往復針棒17に沿っ」た「一連の針13」は訂正発明1の「1つの針棒に沿っ」た「一連の針」に相当する。
そうすると、引用発明の「横方向でシフト可能な少なくとも1つの往復針棒17であって、該少なくとも1つの往復針棒17に沿って一連の針13が載置されている、少なくとも1つの針棒」は、横方向でシフト可能とするための機構を有することは明らかであるから、訂正発明1の「少なくとも1つの針棒であって、該少なくとも1つの針棒に沿って一連の針が載置されている、少なくとも1つの針棒」及び「該少なくとも1つの針棒を、該タフティング区画を横断して横方向に移行させるための、該少なくとも1つの針棒に連結された少なくとも1つのシフター」に相当する。
引用発明の「タフト作製領域」、「基材14」はそれぞれ、訂正発明1の「タフティング区画」、「裏打ち材料」に相当する。
そうすると、引用発明の「該タフト作製機11の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して基材14を供給するための基材送りロール18」は、訂正発明1の「該タフティング機のタフティング区画を通して裏打ち材料を供給するための裏打ち供給ロール」に相当する。
引用発明の「一連の糸を該針に供給するための、駆動モータ71を含む糸送り装置70を有する糸送りユニット50」は、訂正発明1の「一連の糸を該針に供給するための糸供給機構」に相当する。
引用発明の「ルーパ23」は、本件明細書の「加えて、糸のループをその上に選択的に保持するための、・・・ゲージ部品を含むルーパ」(【0012】)との記載を踏まえると、訂正発明1の「ゲージ部品」に相当する。また、「糸のループ又はタフト」は訂正発明1の「糸のタフト」に相当する。
そうすると、引用発明の「該針13が基材14の中において糸のループ又はタフトを形成するように基材14の中を上昇、下降させられるとき、該針13のつくる糸のループ又はタフトと係合する位置において、タフト作製領域の下に配置される、一連のルーパ23」は、訂正発明1の「一連のゲージ部品であって、該一連のゲージ部品は、該針が該裏打ち材料の中において糸のタフトを形成するように該裏打ち材料の中へ往復運動させられるとき、該少なくとも1つの針棒の該針と係合する位置において、該タフティング区画の下に載置される、一連のゲージ部品」に相当する。
(イ)ステッチ分布制御システムについて
a 引用発明の「該基材に沿って選択されたステッチ場所」、「該糸送り装置70の駆動モータ71」はそれぞれ、訂正発明1の「該裏打ち材料に沿って選択されたステッチ場所」、「該糸供給機構」に相当する。
引用文献1の「タフト作製機コントローラ26は、一般的に、一連の異なったカーペット・パターンについて、そのようなプログラムされたパターン命令または情報を受け取って記憶する。・・・コンピュータ41は、そのようなカーペット・パターンをタフト作製機でタフトにするために要求される様々なパラメータを計算する。」(【0019】~【0020】)との記載及び本件明細書の「タフティング機システムコントローラ26は、概して、計算パターンステップを含む、1つ以上のタフト状物品に対する所望のパターンでプログラムすることができ」(【0019】)との記載を踏まえると、引用発明の「プログラムされたパターン命令」は、訂正発明1の「一連のパターンステップ」に相当する。
訂正発明1の「保持」とはその文言、及び請求項1の「該一連のゲージ部品は、該針が該裏打ち材料の中において糸のタフトを形成するように該裏打ち材料の中へ往復運動させられるとき、該少なくとも1つの針棒の該針と係合する位置において、該タフティング区画の下に載置される」との記載からみてパターン化タフト状物品を形成するタフトとして残すという意味であるとわかる。そうすると、引用発明もタフトとして残すものであるから糸を保持するものである。
そうすると、引用発明の「該糸送りコントローラ140」が「プログラムされたパターン命令に応答して、該基材に沿って選択されたステッチ場所において提示された糸12の送りを増加又は減少させるように該針13への該糸12の供給を制御するために、該糸送り装置70の駆動モータ71を制御」することと、訂正発明1の「一連のパターンステップに従って、該裏打ち材料に沿って選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持するように該針への該糸の供給を制御するために、該糸供給機構を制御」することは、「一連のパターンステップに従って、該裏打ち材料に沿って選択されたステッチ場所において提示された糸」を「保持するように該針への該糸の供給を制御するために、該糸供給機構を制御」することである限りにおいて一致する。
b 引用発明の「該基材送りロール18の駆動モータ37を制御」することは、訂正発明1の「該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御」することに相当する。
そうすると、引用発明の「該所望のカーペット・パターンを持つカーペットを形成するように該所望のカーペット・パターンを持つカーペットに対するステッチ・レートまたは送りレートで該基材の送りを制御するために、該基材送りロール18の駆動モータ37を制御し、ステッチ・レートまたは送りレート毎にステッチを行」うことと、訂正発明1の「該パターン化タフト状物品を形成するように該パターン化タフト状物品に対する所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、前記効果的ステッチレート毎にステッチを行」うことは、「該パターン化タフト状物品を形成するように該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、前記ステッチレート毎にステッチを行」うという限りにおいて一致する。
c 引用発明の「該所望のカーペット・パターンを持つカーペットの表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する」ことは、訂正発明1の「該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する」ことに相当する。
また、引用文献1の「針棒が往復するにつれて、針13は、通過する基材14と係合しない上昇位置と、基材の中に糸のループまたはタフトを形成するため基材を通して延長され、タフト作製機のベッド板24の下に取り付けられた一連のルーパ(looper)23またはフックと係合する下降係合位置との間を、垂直に移動する。」(【0016】)との記載を踏まえると、引用発明の「前記選択されたステッチ場所において、前記提示された糸12」は下降係合位置において保持されていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「前記選択されたステッチ場所において、前記提示された糸12の送りを増加又は減少させるようにすることによって、該所望のカーペット・パターンを持つカーペットの表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する」ことと、訂正発明1の「前記選択されたステッチ場所において、前記提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持することによって、該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する」ことは、
「前記選択されたステッチ場所において、前記提示された糸を保持することによって、該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する」ことである限りにおいて一致する。
d 上記a~cの制御内容を踏まえると、引用発明の「糸送りコントローラ140及びタフト作製機コントローラ26」は、訂正発明1の「ステッチ分布制御システム」に相当する。
以上を総合すると、訂正発明1と引用発明は以下の一致点で一致し、相違点1及び相違点2で相違する。
[一致点]
「複数の糸を含むパターン化タフト状物品を形成するためのタフティング機であって、該タフティング機は、少なくとも1つの針棒であって、該少なくとも1つの針棒に沿って一連の針が載置されている、少なくとも1つの針棒と、該タフティング機のタフティング区画を通して裏打ち材料を供給するための裏打ち供給ロールと、一連の糸を該針に供給するための糸供給機構と、該少なくとも1つの針棒を、該タフティング区画を横断して横方向に移行させるための、該少なくとも1つの針棒に連結された少なくとも1つのシフターと、一連のゲージ部品であって、該一連のゲージ部品は、該針が該裏打ち材料の中において糸のタフトを形成するように該裏打ち材料の中へ往復運動させられるとき、該少なくとも1つの針棒の該針と係合する位置において、該タフティング区画の下に載置される、一連のゲージ部品と、ステッチ分布制御システムであって、該ステッチ分布制御システムは、一連のパターンステップに従って、該裏打ち材料に沿って選択されたステッチ場所において提示された糸を保持するように該針への該糸の供給を制御するために、該糸供給機構を制御し、かつ、該パターン化タフト状物品を形成するように該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、前記ステッチレート毎にステッチを行い、前記選択されたステッチ場所において、前記提示された糸を保持することによって、該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する、ステッチ分布制御システムとを備える、タフティング機。」
[相違点1]
「複数の糸を含むパターン化タフト状物品を形成するためのタフティング機」について、
訂正発明1では「複数の異なる糸」であるのに対し、
引用発明では「複数の糸」である点。
[相違点2]
「一連のパターンステップに従って、該裏打ち材料に沿って選択されたステッチ場所において提示された糸を保持するように該針への該糸の供給を制御するために、該糸供給機構を制御し、かつ、該パターン化タフト状物品を形成するように該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、前記ステッチレート毎にステッチを行い、前記選択されたステッチ場所において、前記提示された糸を保持することによって、該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する」点について、
訂正発明1は、「選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持するように該針への該糸の供給を制御するために、該糸供給機構を制御」し、かつ、「該パターン化タフト状物品に対する所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、前記効果的ステッチレート毎にステッチを行」い、「前記選択されたステッチ場所において、前記提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持する」のに対し、
引用発明は、そのような構成を備えていない点。
イ 判断
(ア)相違点1について
引用発明は複数の糸を用いてユーザの所望するカーペット・パターンを生成するものであるから「複数の糸」は「複数の異なる糸」を用いることが含まれているといえる。
そうすると、相違点1は実質的な相違点ではない。
(イ)相違点2について
a 相違点2の用語の意味について
(a)「効果的ステッチレート」について
本件訂正後の請求項1には「パターン化タフト状物品に対する所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレート」との記載があるから、「効果的ステッチレート」とは、パターン化タフト状物品のパターンに対応した所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度なステッチレートであると理解できる。
かかる理解について本件明細書の記載を確認すると、【0027】には「本発明では、ステッチ分布制御システムによって実行される有効または効果的プロセスステッチレートは、そのような標準的な従来の所望の織物ステッチレートより実質的に高くなる。・・・本発明によるステッチ分布制御システムによって、タフト状物品の中に現れる、1インチ当たりほぼ10ステッチの所望の織物ステッチレートを達成するように概して実行される1/10ゲージ機械について、例えば、パターンの中に3つの色が存在する場合、ステッチ分布制御システムによって計算および実行される有効または効果的プロセスステッチレートは、所望のステッチレート(1インチ当たり10ステッチ)に色の数(3)を乗じることによって決定され、1インチ当たりほぼ30ステッチの有効または効果的プロセスステッチとなり」と記載され、【0031】には「裏打ち材料Bは、概して、本発明のステッチ分布制御システムによって形成されているパターンに対する、有効または効果的プロセスステッチレート(すなわち、パターンの色の数を乗じた所望の速度)で供給され」と記載されている。当該記載は、効果的ステッチレートとは、従来技術に係る所望の織物ステッチレートにパターンの色の数(一連の糸の色の数)を乗じた所望の速度であることを説明するものであり、上記請求項1の記載の理解と整合する。
(b)「一連の糸の中の糸を選択的に保持する」について
本件訂正後の請求項1には「複数の異なる糸を含むパターン化タフト状物品を形成するためのタフティング機」との記載があるから、「一連の糸」は、「複数の異なる糸」を意味するとわかる。
また、上記ア(イ)aで述べたとおり、訂正発明1の「保持」とは、パターン化タフト状物品を形成するタフトとして残すという意味であると解される。
さらに、「一連の糸の中の糸を選択的に」とは、「複数の異なる糸」から少なくとも1つの糸を選択することと解される。
そうすると、「一連の糸の中の糸を選択的に保持する」とは、複数の異なる糸の中から1つ以上の糸を選択してタフトとして残し、選択しない糸はタフトとして残さない、という意味であると理解できる。
かかる理解について本件明細書の記載を確認すると、【0028】には「図8に示されるように、操作中に、各画素またはステッチ場所に配置/タフトすることができる各色または種類の糸は、そのようなタフティングに対する画素またはステッチ場所に提示されて、示されるか、または現されるべき糸だけが、画素またはステッチ場所に保持される。したがって、図8に示される4色パターンの場合、例えば、全ての4色の糸A、B、C、およびDを、移行プロファイルの示されたステップで各画素に提示することができ、「A」の糸だけが保持され、一方で、残りの糸B-Dが提示されて、画素またはステッチ場所から引き戻されるか、および/または除去される。」と記載されている。当該記載は、要するに、各ステッチ場所において配置/タフトすることができる各色または種類の糸のうち、現わされるべき糸だけが保持され、残りの糸が引き戻されるか除去される態様を説明するものであり、当該態様は、上記理解と整合する。
b 相違点2について
(a)相違点2に係る訂正発明1の構成のうち、「選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持するように該針への該糸の供給を制御するために、該糸供給機構を制御し」、かつ、「選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持する」点(以下「相違点2-1」という。)について、
上記a(b)で検討したとおり、訂正発明1の「一連の糸の中の糸を選択的に保持する」とは、複数の異なる糸の中から1つ以上の糸を選択してタフトとして残し、選択しない糸はタフトとして残さない、という意味であり、選択されたステッチ場所においてステッチされる複数の異なる糸の中から1つ以上の糸を選択してタフトとして残し、選択しない糸はタフトとして残さない、という意味、すなわち、選択されたステッチ場所において、選択された糸のタフトが必ず残されるものである。
他方、引用発明では「所望のカーペット・パターンを持つカーペットを作成するように」「ステッチ・レートまたは送りレート毎にステッチを行」うものであり、具体的には「タフト作製機を通過する基材に形成される糸のタフトのパイルの高さが変更され、隣接するタフトによって幾つかの糸のタフトがバックロブおよび隠され、異なったパターン・リピートが基材の幅を横切って形成される」(【0004】)。このことと上記技術常識を併せみると、引用発明は、ハイロー制御により所望の箇所に提示された1本の糸がパターン(模様)に現したい糸であれば高いパイル高で残し、パターン(模様)に表したくない糸であれば低いパイル高で残すという構成を備えたものであり、隠されるべき低いパイル高のパイルが残る部分には、高いパイル高のパイル、すなわち現したい色のタフトは存在しないものである。
そうすると、選択されたステッチ場所においてステッチされる複数の異なる糸の中から1つ以上の糸を選択してタフトとして残し、選択しない糸をタフトとして残さないものとした訂正発明1は、引用発明と、パターン(模様)を表すに際しての具体的手法に違いが存在するものである。
(b)相違点2-1の容易想到性について
引用文献1には、選択されたステッチ場所においてステッチされる複数の異なる糸の中から1つ以上の糸を選択してタフトとして残し、選択しない糸はタフトとして残さないことについての記載及び示唆はなく、上記技術常識を踏まえても、引用発明において、相違点2-1に係る訂正発明1の構成のように、「選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持する」ようにすることが、当業者にとって容易に想到し得たことであるということはできない。
(c)相違点2に係る訂正発明1の構成のうち、「所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、前記効果的ステッチレート毎にステッチを行」う点(以下「相違点2-2」という。)について
上記a(a)で検討したとおり、訂正発明1の「効果的ステッチレート」とは、パターン化タフト状物品のパターンに対応した従来の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度なステッチレートという意味であり、訂正発明1では、かかる「効果的ステッチレート」で「裏打ち材料の供給を制御するために」、「裏打ち供給ロールを制御し、前記効果的ステッチレート毎にステッチを行」っている。
また、訂正発明1では、「選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持する」ものである。
そうすると、訂正発明1は、選択されたステッチ場所において一連の糸(すべての色の糸)を提示し、このうちの現したい色を選択して保持するものであって、かかる事項は、裏打ち供給ロールの制御を介して裏打ち材料の供給を効果的ステッチレートで制御し、これによって効果的ステッチレート毎にステッチを行うことによって実現されていると理解することができる。
すなわち、例えば、1/10ゲージ機で所望のパターン密度が1インチ当たり12ステッチであって、4色の糸を一連の糸として使用する場合、効果的ステッチレートで裏打ち材料の供給を制御することにより、1インチ当たり48ステッチの提示が可能となり、このうち、現したい色の糸のみを選択して保持し、残りの糸は引っ張る、又はバックロブして、結果として視覚的に1インチ当たり12ステッチの完成タフト状物品が得られるというものである。
そして、本件明細書には、「完成タフト状物品の中に視覚的に見えるように、どの糸を裏打ちの中の所望のタフト場所またはパターン画素の中に残すのかを制御するために、各ルーパに提示される種々の色の糸について、糸供給機構を制御し、一方で、ルーパまたはフックに提示される残りの糸は、裏打ち材料の裏面に浮かび上がるように、裏打ち材料から完全に低く引っ張られるか、又はバックロブされる。・・・裏打ち材料は、概して、操作者によって選択された所望のパターン密度を達成するために、例えば、4色を走らせる1/10ゲージ機では、1インチの1/10、1インチの1/40移動させるか、さらには全く移動させない等の、有効または効果的プロセスステッチレートに従って、随意に可変量だけ移動させられる。したがって、操作者が、所望のパターン密度またはステッチレートとして、1インチ当たり10-12ステッチを選択する場合、本発明のステッチ分布制御システムは、視覚的には完成タフト状物品から10-12ステッチだけしか現れないが、実際には、1インチ当たり20-48またはそれ以上のステッチを実行し得る。」(【0052】)と記載されており、上記理解と整合する。
他方、引用発明は、「該糸送りコントローラ140は、・・・該基材に沿って選択されたステッチ場所において提示された糸12の送りを増加又は減少させるように該針13への該糸12の供給を制御するために、該糸送り装置70の駆動モータ71を制御し、・・・ステッチ・レートまたは送りレート毎にステッチを行い、・・・前記選択されたステッチ場所において、前記提示された糸12の送りを増加又は減少させるようにする」ものであり、すなわち「選択されたステッチ場所」に「提示された糸12」をステッチするために「ステッチ・レートまたは送りレート毎にステッチを行」うものである。
以上のように、訂正発明1と引用発明とは、パターン(模様)を表すに際しての具体的手法に違いが存在するものである。
(d)相違点2-2の容易想到性について
引用発明は、「該所望のカーペット・パターンを持つカーペットに対するステッチ・レートまたは送りレートで該基材の送りを制御するために、該基材送りロール18の駆動モータ37を制御し、ステッチ・レートまたは送りレート毎にステッチを行」うものであるが、引用文献1には、選択されたステッチ場所において複数の異なる糸をステッチするために、パターン化タフト状物品のパターンに対応した従来の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度なステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、前記効果的ステッチレート毎にステッチを行うことについての記載及び示唆はなく、上記技術常識を踏まえても、引用発明において、相違点2-2に係る訂正発明1の構成のように、「所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、前記効果的ステッチレート毎にステッチを行」うようにすることが、当業者にとって容易に想到し得たことであるということはできない。
(e)相違点2についての小括
以上より、引用発明において相違点2に係る訂正発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。
ウ 訂正発明1についての小括
上記ア及びイのとおりであるから、訂正発明1は、引用発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(4)本件発明2~6について
訂正発明2~6は、訂正発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、他の発明特定事項の検討を要するまでもなく、訂正発明1についての判断と同様の理由により、引用発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)独立特許要件(進歩性)についての小括
以上のとおりであるから、訂正発明1~6は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできない。
3 まとめ
上記1及び2によれば、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項、第5項~第7項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-390023