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特許拒絶査定不服審判

2024-013107

放射線撮影装置、放射線撮影システム、制御装置及び照射停止方法

審判番号
2024-013107
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-036784
請求日
2024年08月13日
審決日
2025年04月22日
公報発行日
2025年07月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】キヤノン株式会社
  • 【請求人代理人】國分 孝悦
審判長/審判官
  • 審判長 南 宏輔
  • 審判官 北島 拓馬
  • 審判官 萩田 裕介
分類
P18 .561-Z (A61B) / P18 .57 -Z (A61B) / P18 .113-Z (A61B) / P18 .121-Z (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020- 36784「放射線撮影装置、放射線撮影システム、制御装置及び照射停止方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月16日出願公開、特開2021-137255〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)3月4日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 5年 3月 3日 手続補正書 同年11月30日付け 拒絶理由通知書 令和 6年 2月 8日 意見書・手続補正書 同年 2月22日付け 拒絶理由通知書(最後) 同年 5月 1日 意見書・手続補正書 同年 5月 9日付け 補正の却下の決定 同年 5月 9日付け 拒絶査定 同年 8月13日 審判請求書・手続補正書 以下では、令和6年5月9日付け拒絶査定を「原査定」という。 第2 令和6年8月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年8月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 放射線照射装置から照射される放射線を用いて放射線撮影を行う放射線撮影装置であって、 前記放射線を検出するセンサ部と、 前記放射線撮影中に前記センサ部に入射した放射線の累積線量を取得する手段と、 前記放射線撮影中に前記累積線量が所定の閾値条件を満たしたことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段と、 前記放射線撮影中に照射され被写体を透過する放射線の透過線量率を推定するための情報と、前記所定の信号の出力から前記放射線の照射が停止するまでの遅延時間と、を前記放射線撮影の前に予め取得する手段と、を有し、 前記所定の閾値条件に用いられる閾値は、前記透過線量率を推定するための情報である前記放射線照射装置の管球の管電圧と管電流の少なくとも一方および前記被写体の被写体厚と、前記遅延時間と、に基づいて前記放射線撮影の前に予め設定される閾値であることを特徴とする放射線撮影装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、令和6年2月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 放射線照射装置から照射された放射線を検出するセンサ部と、 前記放射線の累積線量を取得する手段と、 前記累積線量が所定の閾値条件を満たしたことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段と、を有し、 前記所定の閾値条件に用いられる閾値は、前記放射線の線量率と、前記所定の信号の出力から前記放射線の照射が停止するまでの遅延時間と、に応じて設定される閾値であることを特徴とする放射線撮影装置。」 2 補正の適否 (1)本件補正の内容 上記請求項1についての補正は、以下ア~カの事項を含むものである。 ア 補正事項ア 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「放射線撮影装置」について、「放射線照射装置から照射される放射線を用いて放射線撮影を行う」ものであることに限定するとともに、当該限定事項を請求項1の冒頭において「放射線照射装置から照射される放射線を用いて放射線撮影を行う放射線撮影装置であって、」と特定する(以下、補正事項アという。)。 イ 補正事項イ 上記補正事項アにより、本件補正後の請求項1において「放射線」が「放射線照射装置から照射される」ものに特定されたことに伴い、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「放射線照射装置から照射された放射線を検出するセンサ部」について、「放射線照射装置から照射された」を削除するとともに、「前記」を追加し、「前記放射線を検出するセンサ部」とする(以下、補正事項イという。)。 ウ 補正事項ウ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記放射線の累積線量を取得する手段」における「前記放射線」を、「前記放射線撮影中に前記センサ部に入射した放射線」に限定する(以下、補正事項ウという。)。 エ 補正事項エ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記累積線量が所定の閾値条件を満たしたことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段」において、「前記累積線量が所定の閾値条件を満たしたこと」が「前記放射線撮影中」であることを限定し、「前記放射線撮影中に前記累積線量が所定の閾値条件を満たしたことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段」とする(以下、補正事項エという。)。 オ 補正事項オ 本件補正前の請求項1に記載された発明に対して、「前記放射線撮影中に照射され被写体を透過する放射線の透過線量率を推定するための情報と、前記所定の信号の出力から前記放射線の照射が停止するまでの遅延時間と、を前記放射線撮影の前に予め取得する手段」を有するとの限定事項を付加する(以下、補正事項オという。)。 カ 補正事項カ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記所定の閾値条件に用いられる閾値は、前記放射線の線量率と、前記所定の信号の出力から前記放射線の照射が停止するまでの遅延時間と、に応じて設定される閾値であること」を、「前記所定の閾値条件に用いられる閾値は、前記透過線量率を推定するための情報である前記放射線照射装置の管球の管電圧と管電流の少なくとも一方および前記被写体の被写体厚と、前記遅延時間と、に基づいて前記放射線撮影の前に予め設定される閾値であること」とする(以下、補正事項カという。)。 (2)本件補正の目的について 補正事項カは、上記(1)カのとおり、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記所定の閾値条件に用いられる閾値は、前記放射線の線量率と、前記所定の信号の出力から前記放射線の照射が停止するまでの遅延時間と、に応じて設定される閾値であること」を、「前記所定の閾値条件に用いられる閾値は、前記透過線量率を推定するための情報である前記放射線照射装置の管球の管電圧と管電流の少なくとも一方および前記被写体の被写体厚と、前記遅延時間と、に基づいて前記放射線撮影の前に予め設定される閾値であること」とするものである。 ここで、本件補正前の請求項1においては、「閾値」は、「前記放射線の線量率」と「遅延時間」とに応じて設定されると特定されていたのに対し、本件補正後の請求項1においては、「閾値」は、「前記透過線量率を推定するための情報である前記放射線照射装置の管球の管電圧と管電流の少なくとも一方および前記被写体の被写体厚」と、「前記遅延時間」と、に基づいて設定されるものとなっている。 そして、補正事項カによる本件補正後の「前記透過線量率を推定するための情報である前記放射線照射装置の管球の管電圧と管電流の少なくとも一方および前記被写体の被写体厚」との事項に含まれる情報は、「前記放射線照射装置の管球の管電圧と管電流の少なくとも一方」と「前記被写体の被写体厚」であって、「線量率」が含まれるとは特定されていないから、本件補正により補正後の請求項1に係る発明は「閾値」が「線量率」に応じて設定されないような態様を含むものとなる。よって、補正事項カにより、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明から減縮されるとはいえない。 なお、補正事項カによる本件補正後の「透過線量率」は、「線量率」の下位概念であって「線量率」を限定したものといえるものの、本件補正後の請求項1においては、「閾値」の設定は、「前記透過線量率を推定するための情報である前記放射線照射装置の管球の管電圧と管電流の少なくとも一方および前記被写体の被写体厚と、前記遅延時間と、に基づ」くと特定されているのであって、「閾値」の設定に推定した「透過線量率」を用いるとは特定されていない。したがって、本件補正後の請求項1に「透過線量率」との文言があるとしても、補正事項カによる本件補正が、補正前の請求項1に係る発明を減縮するものとはいえない。 以上より、補正事項カは、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとはいえない。 また、補正事項カが請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。 よって、上記補正事項カは、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。 (3)新規事項について ア 補正事項カにより、補正後の請求項1に係る発明は、「前記所定の閾値条件に用いられる閾値は、前記透過線量率を推定するための情報である前記放射線照射装置の管球の管電圧と管電流の少なくとも一方および前記被写体の被写体厚と、前記遅延時間と、に基づいて前記放射線撮影の前に予め設定される閾値であること」と特定されている。 イ 「被写体厚」に関して、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という)には、以下の記載がある。 「【0052】 上述した第1の実施形態では、放射線Rの透過線量率及び遅延時間Tdを、事前撮影の処理の際に演算もしくは取得し、データベースに保持していた。これに対して、第2の実施形態では、上述したように、本撮影の処理時に設定した累積線量Dの基準値Drefと実際に得られた累積線量Dの値とのずれ量や、放射線Rの透過線量率及び遅延時間Td、被写体厚の影響を考慮した透過線量率等の被写体情報等をデータベースに追加またはデータベースを更新する。この第2の実施形態の構成によれば、第1の実施形態と比較して、放射線Rの照射による累積線量Dを基準値Drefにより精度よく近づけることができる。 【0053】 具体的に、第2の実施形態では、図4に示す本撮影の処理のうち、ステップS408における画像転送の後に、累積線量Dの基準値Drefと実際の累積線量Dの値とのずれ量をデータベースに追加して保存する。当該ずれ量は、被写体厚の影響等によって事前撮影の処理で推定した放射線Rの透過線量率が異なってしまうことに起因して発生するものと想定される。この際、当該ずれ量が正の値である場合には、被写体厚が薄く、放射線Rの透過線量率が推定よりも高いと考えられ、逆に、当該ずれ量が負の値である場合には、被写体厚が厚く、放射線Rの透過線量率が推定よりも低いと考えられる。したがって、第2の実施形態では、当該ずれ量を考慮した放射線Rの透過線量率を推定し直し、被写体情報とともにデータベースに追加及び更新する。また、それ以降の本撮影の処理においては、ステップS402の保存データの読み出し時に、被写体情報と併せて、更新したデータベースから読み出すデータを選択する。」 ウ 段落【0052】には、「被写体厚の影響を考慮した透過線量率等の被写体情報等をデータベースに追加またはデータベースを更新する。」との記載があるが、当該記載は「透過線量率等の被写体情報等」が「被写体厚の影響を考慮した」ものであることを意味するものであって、閾値の設定に被写体厚を用いることを示すものではない。 また、段落【0053】には、「当該ずれ量は、被写体厚の影響等によって事前撮影の処理で推定した放射線Rの透過線量率が異なってしまうことに起因して発生するものと想定される。この際、当該ずれ量が正の値である場合には、被写体厚が薄く、放射線Rの透過線量率が推定よりも高いと考えられ、逆に、当該ずれ量が負の値である場合には、被写体厚が厚く、放射線Rの透過線量率が推定よりも低いと考えられる。」との記載があるが、上記記載は、「当該ずれ量」が、「被写体厚」の影響で発生することを示すものであって、閾値の設定に被写体厚を用いることを示すものではない。 また、当初明細書等には、上記段落【0052】、【0053】以外に「被写体厚」についての記載はないから、当初明細書等には、「被写体厚」に基づいて閾値を設定する点が記載されているとはいえない。 エ 段落【0053】には、「また、それ以降の本撮影の処理においては、ステップS402の保存データの読み出し時に、被写体情報と併せて、更新したデータベースから読み出すデータを選択する。」との記載があり、「選択」された「データ」は閾値の設定に用いられると解されるが、当該「選択」に、「被写体厚」を用いるとの記載はないし、「被写体厚」を用いて選択をすることが当初明細書等の記載から当業者にとって自明であるともいえない。 さらに、段落【0052】、【0053】は、データベースに追加またはデータベースを更新することについての記載であるから、段落【0052】、【0053】における「被写体厚」は、データベースに追加またはデータベースを更新するための、過去の放射線撮影における被写体の「被写体厚」を意味するといえる。他方で、本件補正後の請求項1に係る発明においては、「前記放射線撮影中に照射され被写体を透過する放射線の透過線量率を推定するための情報」及び「前記被写体の被写体厚」と特定されており、本件補正後の請求項1に係る発明の「被写体厚」は、「前記放射線撮影中」の「被写体の被写体厚」であると解される。 そうすると、当初明細書等には、放射線撮影中の被写体の被写体厚を何らかに用いることについて何らの記載もないところ、そのような当初明細書等の記載から、放射線撮影中の被写体の被写体厚に基づいて閾値を設定することまで当業者にとって自明であるとはいえず、したがって、本件補正は、「前記放射線撮影中」の「被写体の被写体厚」に基づいて「閾値」を設定するとの、当初明細書等に記載されていない新たな技術事項を導入するものといえる。 オ 以上のとおりであるから、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 (4)審判請求書における主張について 審判請求書において、補正の目的についての記載はない。そして、上記補正事項カは、上記(2)で示したとおり、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。 また、審判請求書において、請求人は、上記補正事項カに関して、「補正後の請求項1,9~11の『前記所定の閾値条件に用いられる閾値は、前記透過線量率を推定するための情報である前記放射線照射装置の管球の管電圧と管電流の少なくとも一方および前記被写体の被写体厚と、前記遅延時間と、に基づいて前記放射線撮影の前に予め設定される閾値である』における補正は、例えば、出願当初の明細書の段落[0025],[0039]~[0041],[0052],[0053]に記載された事項、並びに、出願当初の図4及び図5に記載された事項等を根拠とするものです。」との主張をしている。しかしながら、上記(3)で示したとおり、請求人が補正の根拠として記載した段落のうち、「被写体厚」についての記載があるのは段落【0052】及び【0053】のみであり、段落【0052】及び【0053】にも、「被写体厚」に基づいて閾値を設定する点が記載されているとはいえないから、請求人の上記主張は採用できない。 3 補正却下の決定についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 また、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下された。また、令和6年5月1日にされた手続補正は、令和6年5月9日付けの補正の却下の決定により却下されているので、本願の請求項1~11に係る発明は、令和6年2月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、当該請求項1の記載は上記第2の[理由]1(2)に示したとおりである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由2は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。 また、原査定の拒絶の理由3は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 引用文献1:特開2017-209244号公報 3 引用文献1の記載事項 (1)原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された特開2017-209244号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審において付与した。以下同様。)。 ア 「【0013】 (第1の実施形態) <X線撮影装置の構成> 先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、放射線の線量が非定常な期間の線量情報に基づいて、放射線の照射を制御する例を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るX線撮影システム10の全体構成を示す図である。X線撮影システム10は、制御装置100と、X線照射装置101と、X線撮影装置102とを含んで構成されている。X線撮影システム10は、特に医療用として使用される。制御装置100は、撮影条件設定部103と、撮影制御部104と、画像処理部105と、表示制御部106とを備えている。制御装置100は、X線照射装置101及びX線撮影装置102の動作を制御するとともに、X線撮影装置102で撮影されたX線画像データを取得して処理する。 【0014】 図1において、X線照射装置101は被写体PにX線を照射する。X線照射装置101は、X線を生成するX線生成部(管球)と、X線生成部で生成したX線のビーム広がり角を規定するコリメータとを含んで構成される。X線撮影装置102はFPDであり、二次元に分布した撮影素子を有する。X線撮影装置102は、撮影素子に到達したX線量の二次元分布(線量情報)を検出し、X線画像データを生成する。X線撮影装置102は、生成したX線画像データを制御装置100の画像処理部105に送信する。またX線撮影装置102は、検出したX線量の二次元分布を制御装置100の撮影制御部104に送信する。」 イ 「【0024】 <本撮影処理> 続いて、図4及び図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る被写体の撮影開始から終了までの処理を説明する。本撮影処理では、事前撮影処理で取得した情報を使用してX線照射停止信号の出力タイミングを制御する。まず、ステップS401では、撮影条件設定部103は、操作者による入力部(不図示)の操作によって、管電圧kV、管電流mA、目標線量Daim等の撮影条件情報の入力を受け付ける。入力された撮影条件情報は、撮影制御部104に送信される。 【0025】 ステップS402では、撮影制御部104は、取得した撮影条件情報に基づいて、X線照射装置101を制御し、管電圧kV、管電流mAの条件で被写体PにX線を照射する。ステップS403では、X線撮影装置102は、撮影素子ごとの線量信号を撮影制御部104に送信する。撮影制御部104は、受信した撮影素子ごとの線量信号の最大値の累積値Dmaxと、事前撮影処理で取得した管電圧kV、管電流mAにおけるX線照射開始時の非定常期間の累積線量Dbeとを比較する。なお、ここでは線量信号の最大値の累積値としているが、これに限るものではない。線量信号の平均値や中央値等、線量信号を代表する他の値を用いてもよい。累積値DmaxがDbeより小さい間は比較を続け、Dbe以上となった時点でステップS404に進む。 【0026】 ステップS404では、撮影制御部104は、累積値DmaxとDaim-Daf-DR×Ttとを比較する。ここで、図5に示すように、Dafは事前撮影処理で取得した管電圧kV、管電流mAにおけるX線照射終了後の非定常期間の累積線量である。また、線量率DRは撮影制御部104により算出される、その時点における累積値Dmaxの時間微分値である。また、Ttは撮影制御部104がX線照射装置101にX線照射停止信号を送信してから実際に管球に印加される管電圧が低下するまでの伝搬時間である。X線の照射を停止する停止信号が出力されてから実際に照射される放射線の線量が低下するまでにはタイムラグがあるため、伝播時間Ttの間に累積される線量も考慮してX線照射停止信号の出力タイミングを制御する。具体的には、伝播時間Ttと線量率DRとの積に基づいて算出される線量情報も考慮してX線照射停止信号の出力タイミングを制御する。伝播時間Ttと放射線の線量の時間微分値DRとの積は、X線の照射を停止する停止信号が出力されてから実際に照射されるX線の線量が低下するまでに照射される線量情報に対応している。 【0027】 ステップS404では、撮影制御部104は、DmaxがDaim-Daf-DR×Ttより小さい間は比較を続け、それ以上となった時点でステップS405に進む。すなわち、この時点がX線照射停止信号を送信すべきタイミングとなる。図5の例では、DaimがDaim1の場合、Daim1に対応するX線照射停止信号の出力タイミングはtstop1の時点となる。また、DaimがDaim2の場合、Daim2に対応するX線照射停止信号の出力タイミングはtstop2の時点となる。ステップS405では、撮影制御部104は、X線照射装置101にX線照射停止信号を送信して、X線照射装置101の管球に印加される管電圧を低下させる。」 (2)引用文献1に記載された発明 上記ア、イの記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「被写体PにX線を照射するX線照射装置101と、撮影素子に到達したX線量の二次元分布(線量情報)を検出し、X線画像データを生成し、撮影素子ごとの線量信号を撮影制御部104に送信するX線撮影装置102と、(段落【0014】、【0025】) 受信した撮影素子ごとの線量信号の最大値の累積値Dmaxと、目標線量Daim-Daf-DR×Ttとを比較し、DmaxがDaim-Daf-DR×Ttより小さい間は比較を続け、それ以上となった時点でX線照射装置101にX線照射停止信号を送信する撮影制御部104と、を有し、Dafは事前撮影処理で取得した管電圧kV、管電流mAにおけるX線照射終了後の非定常期間の累積線量であり、線量率DRは撮影制御部104により算出される、その時点における累積値Dmaxの時間微分値であり、Ttは撮影制御部104がX線照射装置101にX線照射停止信号を送信してから実際に管球に印加される管電圧が低下するまでの伝搬時間である、(段落【0024】、【0025】、【0026】、【0027】) X線撮影システム10。(段落【0013】)」 4 対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 (1)引用発明1の「被写体PにX線を照射するX線照射装置101」は、本願発明の「放射線照射装置」に相当する。 また、引用発明1において、「撮影素子に到達したX線量」が、「X線照射装置101」が「被写体Pに」「照射」し、「撮影素子に到達」したX線の量であることは自明であるから、引用発明1の「撮影素子に到達したX線量の二次元分布(線量情報)を検出し、X線画像データを生成」する「X線撮影装置102」は、本願発明の「放射線照射装置から照射された放射線を検出するセンサ部」に相当する。 (2)引用発明1において、「X線撮影装置102」は「撮影素子ごとの線量信号を撮影制御部104に送信」し、「撮影制御部104」は「撮影素子ごとの線量信号」を「受信」し、「受信した撮影素子ごとの線量信号の最大値の累積値Dmaxと、目標線量Daim-Daf-DR×Ttとを比較」しているから、「撮影制御部104」は「受信した撮影素子ごとの線量信号の最大値の累積値Dmax」を取得する機能を有しているといえる。 そして、引用発明1の「受信した撮影素子ごとの線量信号の最大値の累積値Dmax」は、本願発明の「前記放射線の累積線量」に相当する。 以上より、引用発明1の「撮影制御部104」は、本願発明の「前記放射線の累積線量を取得する手段」に相当する。 (3)引用発明1において、「受信した撮影素子ごとの線量信号の最大値の累積値Dmaxと」「比較」されるものである「目標線量Daim-Daf-DR×Tt」の値は、閾値であるといえる。そして、引用発明1において、「目標線量Dmax」「がDaim-Daf-DR×Tt」「以上となった」ことは、本願発明において、「前記累積線量が所定の閾値条件を満たしたこと」に相当する。 引用発明1において、「X線照射装置101にX線照射停止信号を送信する」ことは、本願発明において、「前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する」ことに相当する。 以上より、「受信した撮影素子ごとの線量信号の最大値の累積値Dmaxと、目標線量Daim-Daf-DR×Ttとを比較し、DmaxがDaim-Daf-DR×Ttより小さい間は比較を続け、それ以上となった時点でX線照射装置101にX線照射停止信号を送信する撮影制御部104」は、本願発明の「前記累積線量が所定の閾値条件を満たしたことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段」に相当する。 (4)引用発明1において「Daim-Daf-DR×Tt」の値は、本願発明の「前記所定の閾値条件に用いられる閾値」に相当する。また、「Daim-Daf-DR×Tt」の値は、「目標線量Daim」から、「Daf」と「DR×Tt」とを引いたものであるから、「DR×Tt」に応じて設定されるものであるといえる。 引用発明1において、「DR」は、「撮影制御部104により算出される、その時点における累積値Dmaxの時間微分値」である「線量率DR」であるから、本願発明の「前記放射線の線量率」に相当する。 引用発明1において、「Tt」は、「撮影制御部104がX線照射装置101にX線照射停止信号を送信してから実際に管球に印加される管電圧が低下するまでの伝搬時間」であるから、本願発明の「前記所定の信号の出力から前記放射線の照射が停止するまでの遅延時間」に相当する。 以上より、引用発明1における、「線量率DRは撮影制御部104により算出される、その時点における累積値Dmaxの時間微分値であり、Ttは撮影制御部104がX線照射装置101にX線照射停止信号を送信してから実際に管球に印加される管電圧が低下するまでの伝搬時間であ」る、「目標線量Daim-Daf-DR×Tt」の値は、本願発明において、「前記放射線の線量率と、前記所定の信号の出力から前記放射線の照射が停止するまでの遅延時間と、に応じて設定される閾値である」「前記所定の閾値条件に用いられる閾値」に相当する。 (5)引用発明1において、「X線照射装置101」と「X線撮影装置102」と「撮影制御部104」とを有する「X線撮影システム10」は、放射線であるX線により撮影をする装置であるといえる。 よって、引用発明1の「X線撮影システム10」は、本願発明の「放射線撮影装置」に相当する。 5 一致点、相違点 上記4のとおりであるから、本願発明と引用発明1とは、 「放射線照射装置から照射された放射線を検出するセンサ部と、 前記放射線の累積線量を取得する手段と、 前記累積線量が所定の閾値条件を満たしたことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段と、を有し、 前記所定の閾値条件に用いられる閾値は、前記放射線の線量率と、前記所定の信号の出力から前記放射線の照射が停止するまでの遅延時間と、に応じて設定される閾値である放射線撮影装置。」 の点で一致し、相違する点はない。 6 小括 以上より、本願発明は、引用発明1であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。 また、本願発明と引用発明1との間に相違点があるとしても、微差であって、本願発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-013107

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