特許拒絶査定不服審判
2023-011487
効率的なマルチリターン光検出器のためのシステムおよび方法
- 審判番号
- 2023-011487
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-531048
- 請求日
- 2023年07月07日
- 審決日
- 2024年07月10日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベロダイン ライダー ユーエスエー,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人山崎国際特許事務所
- 【請求人代理人】朴 志恩
- 【請求人代理人】赤松 利昭
- 【請求人代理人】内藤 忠雄
- 【請求人代理人】今井 千裕
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 濱本 禎広
- 審判官 小島 寛史
- 分類
- P18 .575-Z (G01S) / P18 .121-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-531048「効率的なマルチリターン光検出器のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年 6月13日国際公開、WO2019/112733、令和 3年 2月18日国内公表、特表2021-505885〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)11月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年12月7日、米国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。なお、以下、2017年12月7日を「優先日」という。
令和2年 8月 5日 :翻訳文の提出
令和3年11月 9日 :手続補正書の提出
令和4年 6月17日付け:拒絶理由通知書
同年12月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 3月 1日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月 7日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年7月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年7月7日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和5年7月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和4年12月21日にされた手続補正後をいう。)の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
特定のパルス波形を有する信号を有するレーザービームを放出するように構成された送信機と、
期間内の一連のN個のピークを含むマルチリターン信号を受信するように構成された整合フィルターであって、前記マルチリターン信号を、前記レーザービームの前記信号の前記特定のパルス波形を有する整合フィルター信号と畳み込む、整合フィルターと
前記整合フィルターの出力を受信し、前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で最初の最大ピークを決定するように構成されたピーク検出器と、
前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記最初の最大ピークの位置を導き出すように構成された重心計算部品と、
前記マルチリターン信号の一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去するように構成されたゼロ化部品と、を備え、
前記ゼロ化部品が、前記マルチリターン信号の一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去することによって、前記ピーク検出器が前記一連のN個のピークの中で第2の有意なピークを決定し、前記重心計算部品が前記期間内で前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記第2の有意なピークの位置を導き出すようになり、
前記ピーク検出器、前記重心計算部品、および前記ゼロ化部品は、一連のN個のピークの中でM個の有意なピークが前記期間内のマルチリターン信号で検出されるまで、後続の有意なピークを決定し、該ピークの位置を導き出すように構成され、前記重心計算部品は、前記期間内のマルチリターン信号の一連のN個のピークの中で最初の有意なピーク、最後の有意なピーク、および最大ピークの位置を導き出すように構成される、装置。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
特定のパルス波形を有する信号を有するレーザービームを放出するように構成された送信機と、
期間内の一連のN個のピークを含むマルチリターン信号を受信するように構成された整合フィルターであって、前記マルチリターン信号を、前記レーザービームの前記信号の前記特定のパルス波形を有する整合フィルター信号と畳み込む、整合フィルターと
前記整合フィルターの出力を受信し、前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で最初の最大ピークを決定するように構成されたピーク検出器と、
前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記最初の最大ピークの位置を導き出すように構成された重心計算部品と、
前記マルチリターン信号の一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去するように構成されたゼロ化部品と、を備え、
前記ゼロ化部品が、前記マルチリターン信号の一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去することによって、前記ピーク検出器が前記一連のN個のピークの中で第2の有意なピークを決定し、前記重心計算部品が前記期間内で前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記第2の有意なピークの位置を導き出すようになり、
前記ピーク検出器、前記重心計算部品、および前記ゼロ化部品は、一連のN個のピークの中でM個の有意なピークが前記期間内のマルチリターン信号で検出されるまで、後続の有意なピークを決定し、該ピークの位置を導き出すように構成され、前記重心計算部品は、前記期間内のマルチリターン信号の一連のN個のピークの中で最初の有意なピーク、最後の有意なピーク、および最大ピークの位置を導き出すように構成され、そして、
前記ゼロ化部品は、前記一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去する際に、前記最初の最大ピークの盲点に隠されたピークを検出するように構成される、装置。」
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の「ゼロ化部品」について、「前記一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去する際に、前記最初の最大ピークの盲点に隠されたピークを検出するように構成される」ものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
なお、後記(3)の対比の議論のために、請求項1の記載を便宜上次のように構成Xと構成A~Hに分説する。
<構成A>
特定のパルス波形を有する信号を有するレーザービームを放出するように構成された送信機と、
<構成B>
期間内の一連のN個のピークを含むマルチリターン信号を受信するように構成された整合フィルターであって、前記マルチリターン信号を、前記レーザービームの前記信号の前記特定のパルス波形を有する整合フィルター信号と畳み込む、整合フィルターと
<構成C>
前記整合フィルターの出力を受信し、前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で最初の最大ピークを決定するように構成されたピーク検出器と、
<構成D>
前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記最初の最大ピークの位置を導き出すように構成された重心計算部品と、
<構成E>
前記マルチリターン信号の一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去するように構成されたゼロ化部品と、を備え、
<構成F>
前記ゼロ化部品が、前記マルチリターン信号の一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去することによって、前記ピーク検出器が前記一連のN個のピークの中で第2の有意なピークを決定し、前記重心計算部品が前記期間内で前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記第2の有意なピークの位置を導き出すようになり、
<構成G>
前記ピーク検出器、前記重心計算部品、および前記ゼロ化部品は、一連のN個のピークの中でM個の有意なピークが前記期間内のマルチリターン信号で検出されるまで、後続の有意なピークを決定し、該ピークの位置を導き出すように構成され、前記重心計算部品は、前記期間内のマルチリターン信号の一連のN個のピークの中で最初の有意なピーク、最後の有意なピーク、および最大ピークの位置を導き出すように構成され、そして、
<構成H>
前記ゼロ化部品は、前記一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去する際に、前記最初の最大ピークの盲点に隠されたピークを検出するように構成される、
<構成X>
装置。
(2) 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、優先日前に発行された文献である国際公開第2017/138155号(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。)
a [0022]~[0026]、[図1]
「[0022] [全体構成]
図1は、本実施例に係るライダユニット100のブロック構成図である。図1に示すライダユニット100は、TOF(Time Of Flight)方式のライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)であって、水平方向の全方位における物体の測距を行う。ライダユニット100は、例えば、先進運転支援システムの一部として、車両の周辺環境認識補助の目的で用いられる。ライダユニット100は、主に、コア部1と、信号処理部2と、表示制御部3と、ディスプレイ4と、点群処理部5とを有する。ライダユニット100は、本発明における「情報処理装置」の一例である。
[0023] コア部1は、出射方向を徐変させながら水平方向の360°の全方位を対象にパルスレーザを出射する。このとき、コア部1は、水平方向の360°の全方位を等角度により区切ったセグメント(本実施例では900セグメント)ごとにパルスレーザを出射する。そして、コア部1は、パルスレーザ出射後の所定期間内に当該パルスレーザの反射光を受光することで生成したセグメントごとの受光強度に関する信号(「セグメント信号Sseg」とも呼ぶ。)を、信号処理部2へ出力する。
[0024] 信号処理部2は、コア部1から受信したセグメントごとのセグメント信号Ssegの波形からピーク位置をそれぞれ検出し、検出したピーク位置に基づきレーザが照射された対象物の照射位置(「計測点」とも呼ぶ。)までの距離を算出する。そして、信号処理部2は、セグメントごとに算出した距離と、当該セグメントに対応するスキャン角度との組み合わせを、計測点の情報(「計測点情報Ip」とも呼ぶ。)として点群処理部5へ供給する。
[0025] また、信号処理部2は、コア部1から受信したセグメントごとのセグメント信号Ssegを統合することで、水平方向の360°の全方位における各セグメントとライダユニット100からの距離との関係を表す極座標空間の2次元画像(「極座標空間フレームFp」とも呼ぶ。)を生成する。そして、信号処理部2は、極座標空間フレームFpに基づき、パルスレーザの走査面(照射平面)を基準とした直交座標空間の2次元画像(「直交座標空間フレームFo」とも呼ぶ。)を生成し、表示制御部3へ出力する。このとき、後述するように、信号処理部2は、極座標空間フレームFpを生成する前の各セグメントのセグメント信号Ssegに対し、検出した計測点の点群(単に「点群」とも呼ぶ。)に対応する情報を除外する処理を行う。これにより、信号処理部2は、点群として検出した比較的近距離の対象物が直交座標空間フレームFoに表示されないようにする。
[0026] 表示制御部3は、信号処理部2から受信した直交座標空間フレームFoに基づく画像をディスプレイ4に表示させる。点群処理部5は、信号処理部2から受信した計測点情報Ipに基づく処理を行う。例えば、点群処理部5は、ライダの出力を用いた公知の周辺環境認識処理、自己位置推定処理、又は/及びディスプレイ4への表示処理などを行う。」
「[図1]
[図:0001417217000001.jpg]
」
b [0027]~[0035]、[図2]
「[0027] [コア部の構成]
図2は、コア部1の概略的な構成例を示す。図2に示すように、コア部1は、主に、水晶発振器10と、同期制御部11と、LDドライバ12と、レーザダイオード13と、スキャナ14と、モータ制御部15と、受光素子16と、電流電圧変換回路(トランスインピーダンスアンプ)17と、A/Dコンバータ18と、セグメンテータ19とを有する。
[0028] 水晶発振器10は、同期制御部11及びA/Dコンバータ18にパルス状のクロック信号「S1」を出力する。本実施例では、一例として、クロック周波数は、1.8GHzであるものとする。また、以後では、クロック信号S1が示すクロックを「サンプルクロック」とも呼ぶ。
[0029] 同期制御部11は、パルス状の信号(「トリガ信号S2」とも呼ぶ。)をLDドライバ12に出力する。本実施例では、トリガ信号S2は、131072(=217)サンプルクロック分の周期で周期的にアサートされる。以後では、トリガ信号S2がアサートされてから次にアサートされるまでの期間を「セグメント期間」とも呼ぶ。また、同期制御部11は、後述するセグメンテータ19がA/Dコンバータ18の出力を抽出するタイミングを定める信号(「セグメント抽出信号S3」とも呼ぶ。)をセグメンテータ19に出力する。トリガ信号S2及びセグメント抽出信号S3は、論理信号であり、後述する図3に示すように同期している。本実施例では、同期制御部11は、セグメント抽出信号S3を、2048サンプルクロック分の時間幅(「ゲート幅Wg」とも呼ぶ。)だけアサートする。
[0030] LDドライバ12は、同期制御部11から入力されるトリガ信号S2に同期してパルス電流をレーザダイオード13へ流す。レーザダイオード13は、例えば赤外(905nm)パルスレーザであって、LDドライバ12から供給されるパルス電流に基づき光パルスを出射する。本実施例では、レーザダイオード13は、5nsec程度の光パルスを出射する。
[0031] スキャナ14は、送出及び受信光学系の構成を含み、レーザダイオード13が出射する光パルスを水平面で360°走査すると共に、出射された光パルスが照射された物体(「対象物」とも呼ぶ。)で反射された戻り光を受光素子16に導く。本実施例では、スキャナ14は、回転するためのモータを含み、モータは、900セグメントで一回転するように、モータ制御部15により制御される。この場合の角度分解能は、1セグメントあたり0.4°(=360°/900)となる。LDドライバ12及びスキャナ14は、本発明における「照射部」の一例である。
[0032] 好適には、スキャナ14のスキャン面は、傘状ではなく平面であることが望ましく、かつ、ライダユニット100が移動体に搭載される場合には、移動体が走行する地表に対して平行(即ち水平)であることが望ましい。これにより、後述する時系列で連続して生成される極座標空間フレームFp間の相関が高くなり、より高精度な周辺環境の表示を行うことができる。
[0033] 受光素子16は、例えば、アバランシェフォトダイオードであり、スキャナ14により導かれた対象物からの反射光の光量に応じた微弱電流を生成する。受光素子16は、生成した微弱電流を、電流電圧変換回路17へ供給する。電流電圧変換回路17は、受光素子16から供給された微弱電流を増幅して電圧信号に変換し、変換した電圧信号をA/Dコンバータ18へ入力する。
[0034] A/Dコンバータ18は、水晶発振器10から供給されるクロック信号S1に基づき、電流電圧変換回路17から供給される電圧信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をセグメンテータ19に供給する。以後では、A/Dコンバータ18が1クロックごとに生成するデジタル信号を「サンプル」とも呼ぶ。1サンプルは、後述する極座標空間フレームFpの1ピクセル分のデータに相当する。受光素子16、電流電圧変換回路17及びA/Dコンバータ18は、本発明における「受光部」の一例である。
[0035] セグメンテータ19は、セグメント抽出信号S3がアサートされているゲート幅Wg分の期間における2048サンプルクロック分のA/Dコンバータ18の出力であるデジタル信号を、セグメント信号Ssegとして生成する。セグメンテータ19は、生成したセグメント信号Ssegを信号処理部2へ供給する。」
「[図2]
[図:0001417217000002.jpg]
」
c [0036]~[0041]、[図3]
「[0036] 図3は、トリガ信号S2及びセグメント抽出信号S3の時系列での波形を示す。図3に示すように、本実施例では、トリガ信号S2がアサートされる1周期分の期間であるセグメント期間は、131072サンプルクロック(図面では「smpclk」と表記)分の長さに設定され、トリガ信号S2のパルス幅は64サンプルクロック分の長さ、ゲート幅Wgは2048サンプルクロック分の長さに設定されている。
[0037] この場合、トリガ信号S2がアサートされた後のゲート幅Wgの期間だけセグメント抽出信号S3がアサートされているため、セグメンテータ19は、トリガ信号S2(当審注:[図3]から「セグメント抽出信号S3」の誤記であると認められる。)がアサート中の2048個分のA/Dコンバータ18が出力するサンプルを抽出することになる。そして、ゲート幅Wgが長いほど、ライダユニット100からの最大測距距離(測距限界距離)が長くなる。
[0038] 本実施例では、セグメント期間の周波数は、約13.73kHz(≒1.8GHz/131072)となり、信号処理部2がセグメント信号Ssegに基づき生成する極座標空間フレームFpのフレーム周波数(即ちスキャナ14の回転速度)は、1フレームが900セグメントで構成されることから、約15.36Hz(≒13.73kHz/900)となる。また、最大測距距離は、単純計算した場合、ゲート幅Wgに相当する時間幅で光が往復する距離に相当する170.55m(≒{2048/1.8GHz}・c/2、「c」は光速)となる。後述するように、最大測距距離は、電気的及び光学的な遅れにより170.55mよりも若干短くなる。
[0039] ここで、トリガ信号S2がアサートされてから当該トリガ信号S2に基づき出射された光パルスに相当するサンプルが出力されるまでの遅延時間(「遅延時間Td」とも呼ぶ。)と、対象物までの距離(「ターゲット距離Ltag」とも呼ぶ。)との関係について補足説明する。
[0040] スキャナ14の走査角度に相当するセグメントのインデックスを「s」(s=0~899)、セグメント抽出信号S3がアサートされる期間においてA/Dコンバータ18が生成する2048個分のサンプルのインデックスを「k」(k=0~2047)とすると、サンプルのインデックスkの大きさは、ターゲット距離Ltagに対応する。具体的には、サンプルのインデックスkと、遅延時間Tdの関係は、クロック周波数を「fsmp」(=1.8GHz)とすると、電気的及び光学的遅れ等を考慮しない場合、
Td=k/fsmp≒k×0.55555nsec
となる。この場合、ターゲット距離Ltagと遅延時間Tdとの関係は、遅れ等を考慮しない場合、
Ltag=Td・(c/2)=(k/fsmp)・(c/2)
となる。
[0041] なお、実際には、同期制御部11からLDドライバ12へトリガ信号S2を送出してからスキャナ14が光を出射するまでの送出ルート、及び、スキャナ14に戻り光が入射してからA/Dコンバータ18によりデジタル信号に変換されるまでの受信ルートのそれぞれに電気的及び光学的な遅れが存在する。従って、サンプルのインデックスkからターゲット距離Ltagを算出するには、インデックスkに対してオフセット(「始点オフセットk0」とも呼ぶ。)を設け、始点オフセットk0の分だけインデックスkを減算する必要がある。始点オフセットk0を考慮した場合、ターゲット距離Ltagは、以下の式により表される。
Ltag={(k-k0)/fsmp}・(c/2)」
「[図3]
[図:0001417217000003.jpg]
」
d [0042]~[0048]、[図4]
「[0042] [信号処理部の詳細]
(1)ブロック構成
図4は、信号処理部2の論理的な構成を示すブロック図である。図4に示すように、信号処理部2は、セグメント信号処理部21と、点検出部22と、基準パルス記憶部23と、レプリカパルス生成部24と、演算部25と、フレーム方向フィルタリング部26と、を有する。
[0043] セグメント信号処理部21は、セグメント信号Ssegに対して雑音抑圧を行うための信号処理を行う。例えば、セグメント信号処理部21は、マッチドフィルタ等を適用してセグメント信号Ssegに対してSNの最大化を行う。
[0044] 点検出部22は、セグメント信号処理部21による処理後のセグメント信号Ssegの波形からピークを検出し、検出したピークに対応する振幅(「振幅Ap」とも呼ぶ。)及び遅延時間Tdの推定を行う。そして、点検出部22は、セグメント信号Ssegが示す波形のピークのうち、推定した振幅Apが所定の閾値(「閾値Apth」とも呼ぶ。)以上となるピークが存在する場合に、当該ピークの振幅Ap及び遅延時間Tdの情報をレプリカパルス生成部24に供給する。また、点検出部22は、推定した振幅Apが閾値Apth以上となるピークごとに、遅延時間Tdに対応する距離と、対象のセグメントに対応するスキャン角度との組み合わせを示す計測点情報Ipを生成し、点群処理部5へ供給する。なお、計測点情報Ipには、遅延時間Tdに対応する距離に加えて、受光強度を示す情報(即ち振幅Apに相当する情報)が含まれていてもよい。この場合、例えば、点群処理部5は、計測点情報Ipに含まれる受光強度の情報を、距離補正して反射強度に変換することで、白線検出等の処理に用いる。閾値Apthは、本発明における「所定値」の一例であり、計測点情報Ipは、本発明における「第2情報」の一例である。
[0045] 基準パルス記憶部23は、反射光を受光素子16が理想的に受信した場合のセグメント信号Ssegの波形(「基準パルス」とも呼ぶ。)を予め記憶する。本実施例では、基準パルスは、ライダユニット100に近づけた対象物に対してレーザ光を出射させた場合の反射光を受光素子16が理想的に受信した場合のセグメント信号Ssegの波形を示すものとし、例えば実験等に基づき予め生成される。基準パルスは、レプリカパルス生成部24により読み出される。
[0046] レプリカパルス生成部24は、点検出部22によって検出されたピークの波形を示す信号(「レプリカパルスSrep」とも呼ぶ。)を生成する。具体的には、レプリカパルス生成部24は、点検出部22から供給された振幅Ap及び遅延時間Tdの推定値に基づき、基準パルス記憶部23から読み出した基準パルスを補正することで、レプリカパルスSrepを生成する。レプリカパルスSrepの生成方法の具体例については、図5を参照して後述する。レプリカパルスSrepは、本発明における「第3情報」の一例である。
[0047] レプリカパルス生成部24は、セグメント信号処理部21から供給されるセグメント信号Ssegに対し、レプリカパルス生成部24から供給されるレプリカパルスSrepの減算処理を行う。そして、レプリカパルス生成部24は、レプリカパルスSrepを減算した後のセグメント信号Sseg(「ピーク除去信号Ssub」とも呼ぶ。)を、フレーム方向フィルタリング部26へ供給する。
[0048] フレーム方向フィルタリング部26は、900セグメント分のセグメント信号Ssegの各々から抽出されたピーク除去信号Ssubから1つの極座標空間フレームFpを生成し、さらにフレーム方向でのフィルタリングを行うことで、直交座標空間フレームFoを生成する。フレーム方向フィルタリング部26が実行する処理については、図6を参照して後述する。なお、点検出部22及びフレーム方向フィルタリング部26は、本発明における「出力部」の一例である。」
「[図4]
[図:0001417217000004.jpg]
」
e [0049]~[0054]、[図5]、[図6]
「[0049] (2)レプリカパルスの生成及び減算処理
次に、レプリカパルス生成部24が実行するレプリカパルスSrepの生成処理及び演算部25が実行するレプリカパルスSrepの減算処理の具体例について、図5及び図6を参照して説明する。
[0050] 図5(A)は、あるセグメントに対してセグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegの波形の一例を示す。図5(A)の縦軸の受光強度は、受光素子16が理想的に反射光を受光したときが「1」となる。
[0051] この場合、点検出部22は、閾値Apth以上の振幅Apを有するピーク(枠90参照)を検出し、当該ピークの振幅Apが「0.233」、遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkが「231.1」であると推定する。
[0052] 図5(B)は、基準パルスの波形の一例を示す。図5(B)に示すように、この場合、遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkが「0」付近となり、振幅Apは「1」となっている。基準パルス記憶部23は、図5(B)に示すような基準パルスを予め記憶しておき、レプリカパルス生成部24に供給する。
[0053] 図5(C)は、図5(A)に示すセグメント信号Ssegから推定した振幅Ap及び遅延時間Tdと図5(B)に示す基準パルスとに基づき生成したレプリカパルスSrepを示す。この場合、レプリカパルス生成部24は、図5(B)の基準パルスを、図5(A)の例で推定した振幅Ap及び遅延時間Tdに基づき補正することで、図5(C)のレプリカパルスSrepを生成する。具体的には、レプリカパルス生成部24は、基準パルスの振幅Apを、点検出部22から取得した振幅Apの推定値「0.233」に変更すると共に、基準パルスのピーク位置のサンプルインデックスkを、点検出部22から取得したサンプルインデックスkの推定値「231.1」に変更する。
[0054] 図6は、演算部25が実行するレプリカパルスSrepの減算処理の概要を示す図である。図6に示すように、演算部25は、図5(A)のセグメント信号Sseg(図6の左上参照)に対し、図5(C)のレプリカパルスSrep(図6の右上参照)を減算することで、図5(A)のセグメント信号Ssegから閾値Apth以上のピークが除去されたピーク除去信号Ssub(図6の中央下参照)を生成する。このように、演算部25は、レプリカパルスSrepに基づき、点検出部22が検出した点群の情報をセグメント信号Ssegから除外したピーク除去信号Ssubを生成することができる。」
「[図5]
[図:0001417217000005.jpg]
」
「[図6]
[図:0001417217000006.jpg]
」
f [0068]
「[0068] 以上説明したように、本実施例に係るライダユニット100の信号処理部2は、コア部1が出力するセグメント信号Ssegに基づいて、レーザ光の照射方向を示すスキャン角度と、ターゲット距離Ltagと、におけるレーザ光の受光強度を示す極座標空間フレームFpを生成し、直交座標空間フレームFoに変換して表示制御部3に出力する。また、信号処理部2は、コア部1が出力するセグメント信号Ssegが閾値Apth以上の受光強度を示す照射方向については、当該セグメント信号Ssegに基づいて計測点情報Ipを生成して点群処理部5に出力する。この態様により、ライダユニット100は、比較的近距離に存在する対象物の点群については計測点情報Ipとして出力しつつ、遠方に存在する対象物を直交座標空間フレームFoにより表示することができる。換言すれば、例えばライダユニット100を周辺環境認識用として車両に搭載した場合、比較的近距離に存在する対象物(例えば他の移動物体等)については、点群処理を行うことにより高速に対象物を検出し、遠方に存在する対象物については、直交座標空間フレームを例えば時間軸上で平均化処理を行うことにより精度良く対象物を検出することが可能となる。」
g [0069]~[0074]、[図13]
「[0069] [変形例]
次に、実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
[0070] (変形例1)
一般に、レーザ光の対象物への一部照射等に起因したマルチパスにより、1つのセグメントのセグメント信号Ssegに複数の閾値Apth以上となるピークが存在する場合がある。この場合、信号処理部2は、ピーク除去信号Ssubに閾値Apth以上のピークがなくなるまで、レプリカパルスSrepによる減算処理を繰り返して実行してもよい。
[0071] 図13は、本変形例における信号処理部2Aのブロック構成図を示す。図13の例では、信号処理部2Aは、複数の点検出部22(22A、22B、…)と、複数のレプリカパルス生成部24(24A、24B、…)と、複数の演算部25(25A、25B、…)とを有する。
[0072] そして、点検出部22Aは、セグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegから最も振幅Apが大きいピークを検出する。そして、点検出部22Aは、振幅Apが閾値Apth以上の場合、対応する振幅Ap及び遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkをレプリカパルス生成部24Aに供給すると共に、検出したピークに対応する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給する。その後、レプリカパルス生成部24Aは、点検出部22Aから受信した振幅Ap及びサンプルインデックスkに基づきレプリカパルスSrepを生成し、演算部25Aは、レプリカパルス生成部24Aが生成したレプリカパルスSrepを、セグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegから減算する。
[0073] 同様に、点検出部22Bは、演算部25(当審注:[図13]から「演算部25A」の誤記であると認められる。)が出力するセグメント信号Ssegから最も振幅Apが大きいピークを検出する。そして、点検出部22Bは、振幅Apが閾値Apth以上の場合、対応する振幅Ap及び遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkをレプリカパルス生成部24Bに供給すると共に、検出したピークに対応する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給する。その後、レプリカパルス生成部24Bは、点検出部22Bから受信した振幅Ap及びサンプルインデックスkに基づきレプリカパルスSrepを生成し、演算部25Bは、レプリカパルス生成部24Bが生成したレプリカパルスSrepを、演算部25Aが出力する信号から減算する。なお、点検出部22Bは、検出したピークの振幅Apが閾値Apth未満の場合、レプリカパルス生成部24BにレプリカパルスSrepの生成を実行させることなく、演算部25Aが出力した信号をピーク除去信号Ssubとしてフレーム方向フィルタリング部26に入力させる。
[0074] このように、図13の構成例では、信号処理部2Aは、1つのセグメントから複数個の計測点を検出可能であり、これらの計測点に関する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給すると共に、これらの計測点の情報を全て除去したピーク除去信号Ssubを生成して直交座標空間フレームFoを生成することができる。」
「[図13]
[図:0001417217000007.jpg]
」
(イ) 引用文献1から読み取れる認定事項
a 引用文献1の[0069]の記載から、引用文献1に記載の実施例([0022]~[0068])の「信号処理部2」の代わりに、変形例1([0070]~[0074])の「信号処理部2A」を適用したライダユニット100が読み取れる。
b(a) 引用文献1の[0035]、[0037]から、セグメント信号Ssegが、2048サンプルクロック分のA/Dコンバータ18の出力である、2048個のデジタル信号からなるものであることが読み取れる。
(b) 引用文献1の[0040]と、セグメント信号Ssegの波形の一例である[図5(A)]から、サンプルインデックスk(0~2047)が、セグメント抽出信号S3がアサートされる期間においてA/Dコンバータ18が生成する2048個分のサンプルのインデックスであることが読み取れるから、前記(a)を踏まえると、サンプルインデックスkは、k番目のサンプルクロックでデジタル変換されたサンプルを示す値であることが読み取れる。
(c) 引用文献1の[0040]から、サンプルインデックスkの大きさがターゲット距離Ltagに対応することが読み取れる。
(d) 引用文献1の[0051]には、「点検出部22は、閾値Apth以上の振幅Apを有するピーク(枠90参照)を検出し」、「遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkが「231.1」であると推定する。」と記載されているところ、当該記載から、点検出部22は、閾値Apth以上の振幅Apを有する検出したピークのサンプルインデックスkを小数第一位のオーダーで推定していることが読み取れる。
(e) 前記(a)~(d)を踏まえると、サンプルインデックスkは、k番目のサンプルクロックでデジタル変換されたサンプルを示す値であり、kの大きさはターゲット距離Ltagに対応するものであり、点検出部22は、閾値Apth以上の振幅Apを有するピークのサンプルインデックスkを小数第一位のオーダーで推定していることが読み取れる。
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)の記載事項及び前記(イ)の認定事項を総合すると、引用文献1には、実施例([0022]~[0068])の「信号処理部2」の代わりに変形例1([0070]~[0074])の「信号処理部2A」を適用したライダユニット100である、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる引用文献1の記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「コア部1と、信号処理部2Aと、表示制御部3と、ディスプレイ4と、点群処理部5とを有するライダユニット100であって、([0022]、前記(イ)aの認定事項)
コア部1は、出射方向を徐変させながら水平方向の360°の全方位を対象にパルスレーザを出射し、このとき、コア部1は、水平方向の360°の全方位を等角度により区切ったセグメント(本実施例では900セグメント)ごとにパルスレーザを出射し、コア部1は、パルスレーザ出射後の所定期間内に当該パルスレーザの反射光を受光することで生成したセグメントごとの受光強度に関する信号(「セグメント信号Sseg」とも呼ぶ。)を、信号処理部2Aへ出力し、([0023]、前記(イ)aの認定事項)
コア部1は、同期制御部11と、LDドライバ12と、レーザダイオード13と、受光素子16と、電流電圧変換回路(トランスインピーダンスアンプ)17と、A/Dコンバータ18と、セグメンテータ19とを有し、([0027])
同期制御部11は、パルス状の信号(「トリガ信号S2」とも呼ぶ。)をLDドライバ12に出力し、([0029])
LDドライバ12は、同期制御部11から入力されるトリガ信号S2に同期してパルス電流をレーザダイオード13へ流し、レーザダイオード13は、赤外(905nm)パルスレーザであって、LDドライバ12から供給されるパルス電流に基づき光パルスを出射し、([0030])
受光素子16は、対象物からの反射光の光量に応じた微弱電流を生成し、電流電圧変換回路17は、受光素子16から供給された微弱電流を増幅して電圧信号に変換し、変換した電圧信号をA/Dコンバータ18へ入力し、([0033])
A/Dコンバータ18は、電流電圧変換回路17から供給される電圧信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をセグメンテータ19に供給し、([0034])
セグメンテータ19は、セグメント抽出信号S3がアサートされているゲート幅Wg分の期間における2048サンプルクロック分のA/Dコンバータ18の出力であるデジタル信号を、セグメント信号Ssegとして生成し、生成したセグメント信号Ssegを信号処理部2Aへ供給し、([0035]、前記(イ)aの認定事項)
1つのセグメントのセグメント信号Ssegに複数の閾値Apth以上となるピークが存在する場合、信号処理部2Aは、ピーク除去信号Ssubに閾値Apth以上のピークがなくなるまで、レプリカパルスSrepによる減算処理を繰り返して実行し、([0070]、前記(イ)aの認定事項)
信号処理部2Aは、セグメント信号処理部21と、複数の点検出部22(22A、22B、…)と、基準パルス記憶部23と、複数のレプリカパルス生成部24(24A、24B、…)と、複数の演算部25(25A、25B、…)と、フレーム方向フィルタリング部26と、を有し、([0042]、[0071]、前記(イ)aの認定事項)
セグメント信号処理部21は、セグメント信号Ssegに対して雑音抑圧を行うための信号処理を行い、例えば、マッチドフィルタ等を適用してセグメント信号Ssegに対してSNの最大化を行い、([0043])
点検出部22Aは、セグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegから最も振幅Apが大きいピークを検出し、振幅Apが閾値Apth以上の場合、対応する振幅Ap及び遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkをレプリカパルス生成部24Aに供給すると共に、検出したピークに対応する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給し、その後、レプリカパルス生成部24Aは、点検出部22Aから受信した振幅Ap及びサンプルインデックスkに基づきレプリカパルスSrepを生成し、演算部25Aは、レプリカパルス生成部24Aが生成したレプリカパルスSrepを、セグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegから減算し、([0072]、前記(イ)aの認定事項)
同様に、点検出部22Bは、演算部25Aが出力するセグメント信号Ssegから最も振幅Apが大きいピークを検出し、点検出部22Bは、振幅Apが閾値Apth以上の場合、対応する振幅Ap及び遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkをレプリカパルス生成部24Bに供給すると共に、検出したピークに対応する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給し、その後、レプリカパルス生成部24Bは、点検出部22Bから受信した振幅Ap及びサンプルインデックスkに基づきレプリカパルスSrepを生成し、演算部25Bは、レプリカパルス生成部24Bが生成したレプリカパルスSrepを、演算部25Aが出力する信号から減算し、点検出部22Bは、検出したピークの振幅Apが閾値Apth未満の場合、レプリカパルス生成部24BにレプリカパルスSrepの生成を実行させることなく、演算部25Aが出力した信号をピーク除去信号Ssubとしてフレーム方向フィルタリング部26に入力させ、([0073]、前記(イ)aの認定事項)
サンプルインデックスkは、k番目のサンプルクロックでデジタル変換されたサンプルを示す値であり、kの大きさはターゲット距離Ltagに対応するものであり、点検出部22は、閾値Apth以上の振幅Apを有するピークのサンプルインデックスkを小数第一位のオーダーで推定し、(前記(イ)bの認定事項)
信号処理部2Aは、1つのセグメントから複数個の計測点を検出可能であり、これらの計測点に関する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給し、([0074]、前記(イ)aの認定事項)
この態様により、比較的近距離に存在する対象物の点群については計測点情報Ipとして出力する、([0068])
ライダユニット100。」
イ 引用文献6及び7に記載された事項と技術常識の認定
(ア) 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である特表2007-518968号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0252】
好ましい実施形態の諸変形形態においては、シーケンス(IN、QN、IN+1、QN+1、など)に対して、さらに音声周波数フィルタリングが適用される。
整合フィルタ
検出アルゴリズムの別の部分では、整合フィルタを使用して、パルス波形の検出を機能拡張する。所与の入力x[n]に対する整合フィルタの出力y[n]は以下で与えられる。
【0253】
【数1】
[図:0001417217000008.jpg]
【0254】
ただし、h[n]は、フィルタのインパルス応答である。
インパルス応答h[n]を、予想される信号波形(すなわち、通常なら整合フィルタ原型として知られる、送信機によって送信される個々のパルスの形)の反転として設定することにより、フィルタの出力が入力信号を予想される信号波形と相互相関させたものに等しいことを示すことができる。これにより、計算的に効率的な受信パルス波形の検出方法が得られ、これを前処理方法として用いると、処理される信号の信号対雑音比が向上する。
【0255】
整合フィルタを使用するシステムがより狭帯域である程、SN比はより向上する。これにより、付加白色ガウス雑音において最適なSN比が得られる。整合フィルタのインパルス応答の長さに等しい範囲内にオフセットが存在する。狭帯域信号の場合、到達距離の解像度が、やがて2分の1に悪化し、到達距離内の分解能が半分になる。
【0256】
実際には、予想される信号波形または予想される信号波形の反転を関数に適合させることによって、整合フィルタのインパルス応答が設定される。予想される信号波形の包絡線上の特定の波形、または予想される信号波形の反転に対して、いくつかの点を、例えば10または適切な数だけ二次関数または指数関数に適合させることによって、良好な結果を得ることができる。
【0257】
整合フィルタは、各受信ユニットにおいてパルスの受信によって生成されるレーダデータに個々に適用される。各受信ユニットのレーダデータに対しては、レーダデータに対する一連のタイムシフトにおいて整合フィルタが適用され、各タイムシフトごとにフィルタの出力が比較される。フィルタの最大出力に対応するタイムシフトを見つけ出すことにより、受信パルスに対する受信時間、または位相が確認される。すなわち、フィルタの最大出力における位相成分および直交成分で比較することによって、受信パルスに対する位相が確認される。
【0258】
したがって、各受信ユニットにおける受信パルスに対する受信時間または位相が確認され、次いでそうした受信時間を使用して、上述のように、すなわち各受信機からの時間/位相のそうした時間を比較して角位置情報を決定することによって、位置情報が得られる。」
(イ) 引用文献7に記載された事項
当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である特開平9-211107号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0026】次に、上記処理によって、雑音が除去される原理を説明する。受信したい信号をs(t)で表現し、雑音をn(t)で表現する。ここで、tは時刻を示すパラメータである。すると、入力信号a(t)はa(t)=s(t)+n(t)で表現できる。前にも述べた様に、この様な入力信号の中の雑音を除去するには、マッチドフィルタ(Matched Filter)が最適であることが知られている(電気通信学会刊「レーダ技術」参照)。
【0027】このMatched Filterは、次の変換によって実現できる。
フィルタ処理前 → フィルタ処理前
a(t) → ∫a(t+u)s(u)*du (1)
ここで、*は共役複素数を示す。なお信号s(t)に対するMatched Filterが式(1)の変換で得られることは、公知の文献に書かれている。
【0028】式(1)によれば、a(t)に対するMatched Filterを作るためには、予めs(t)を知っておく必要がある。しかし、実際に電波逆探知装置が受信する信号がどのようなものか予め知ることは困難であるし、またs(t)は必ず雑音n(t)と共に受信されるため受信信号に基づいてs(t)がどのようなものか知ることもできない。・・・(後略)。」
(ウ) 技術常識の認定
前記引用文献6及び7に例示されているように、次の事項は技術常識であると認められる。
<技術常識>
「レーダの受信信号パルスから雑音を除去するために、前記受信信号パルスと前記レーダの送信信号パルスの畳み込み演算を行うマッチドフィルタ(整合フィルタ)を設けること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xについて
a 引用発明の「ライダユニット100」は、本件補正発明の「装置」に相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「装置」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aについて
a 本件補正発明の「特定のパルス波形を有する信号」の「特定のパルス波形」がどのような波形であるのかについて、本願の明細書には明示の説明がされていない。
この点に関し、段落【0039】には「放出光信号110は、媒体を通って伝播し、物体112に反射する。…システム制御およびデータ収集108は、送信機104による発光を制御することができ、…光検出および測距システム102は、LIDARシステムであってもよく、送信機104は、特定のシーケンスで複数のパルスを有するレーザーがビームを放出してもよい。」と記載されており、これを踏まえると、本件補正発明の「特定のパルス波形を有する信号」の「特定のパルス波形」とは、特定のシーケンスで発光が制御されることにより生成された光パルスの波形のことであると解するのが相当である。
b 引用発明の「コア部1」の「同期制御部11」は「パルス状の信号(「トリガ信号S2」とも呼ぶ。)をLDドライバ12に出力し」、「LDドライバ12」は「同期制御部11から入力されるトリガ信号S2に同期してパルス電流をレーザダイオード13へ流し」、「レーザダイオード13は、赤外(905nm)パルスレーザであって、LDドライバ12から供給されるパルス電流に基づき光パルスを出射[する]」ものであるところ、「同期制御部11から入力されるトリガ信号S2」の出力を時系列的にみると、一連の「パルス状の信号」が時間間隔を有して並ぶ制御パターン信号と考えることができ([図3]を参照)、かかる制御パターン信号により「レーザダイオード13」の発光に係る動作順序(シーケンス)を制御しているといえるから、引用発明においても、「トリガ信号S2」のシーケンスで「レーザダイオード13」の発光が制御されることにより、「光パルス」が生成されるといえる。
ここで、前記aにおいて示した解釈を踏まえると、引用発明の「トリガ信号S2」のシーケンスで発光が制御されることにより生成された「光パルス」の波形は、本件補正発明の「特定のパルス波形」に相当する。
c また、引用発明の「光パルス」は、「対象物の点群」に係る「計測点情報Ip」を得るために「レーザダイオード13」から出射されるものであり、送信信号としてのレーザービームであるといえるから、本件補正発明の「特定のパルス波形を有する信号を有するレーザービーム」に相当する。
d そうすると、引用発明の「コア部1」の「同期制御部11」、「LDドライバ12」及び「レーザダイオード13」は、本件補正発明の「特定のパルス波形を有する信号を有するレーザービームを放出するように構成された送信機」に相当する。
e したがって、本件補正発明と引用発明は、「特定のパルス波形を有する信号を有するレーザービームを放出するように構成された送信機」を備える点において一致する。
(ウ) 構成Bについて
a 「マルチリターン信号」について
(a) 引用発明の「セグメント信号Sseg」は、「パルスレーザ出射後の所定期間内に当該パルスレーザの反射光を受光することで生成したセグメントごとの受光強度に関する信号」であるところ、上記「所定期間」は、「セグメント抽出信号S3がアサートされているゲート幅Wg分の期間」のことであり、引用発明の「ゲート幅Wg分の期間」は、本件補正発明の「期間」に相当する。
そうすると、引用発明の「ゲート幅Wg分の期間」において生成した「デジタル信号」である「セグメント信号Sseg」は、本件補正発明の「期間内の」「リターン信号」に相当する。
(b) 引用発明においては、「1つのセグメントのセグメント信号Ssegに複数の閾値Apth以上となるピークが存在する場合」、「ピーク除去信号Ssubに閾値Apth以上のピークがなくなるまで、レプリカパルスSrepによる減算処理を繰り返して実行[する]」ことにより、「1つのセグメントから複数個の計測点を検出可能であり、これらの計測点に関する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給する」ものであるから、引用発明においては、「1つのセグメントのセグメント信号Sseg」には複数のピークが含まれ得ることを想定している。
(c) ここで、引用発明の「セグメント信号Sseg」に含まれる「ピーク」についてさらに検討すると、引用文献1の[0070]には、「一般に、レーザ光の対象物への一部照射等に起因したマルチパスにより、1つのセグメントのセグメント信号Ssegに複数の閾値Apth以上となるピークが存在する場合がある。」と記載されているところ、上記記載の「マルチパス」という語句の通常の意味に従うと、引用発明の「受光素子16」が受光する反射光には、ある対象物から直接返ってくる反射光のみならず、対象物からの反射光が対象物以外の障害物において更に反射して返ってくる多重反射光も含まれるように思われる。
(d) しかしながら、引用発明においては、「コア部1は、水平方向の360°の全方位を等角度により区切ったセグメント(本実施例では900セグメント)ごとにパルスレーザを出射し」、「信号処理部2Aは、1つのセグメントから複数個の計測点を検出可能であり、これらの計測点に関する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給し」ていることから、1つのセグメントに対応する水平走査角度は、360度/900=0.4度であると見積もることができ、このような限られた水平走査角度範囲ごとにパルスレーザーを出射して、その反射光を受光することにより、当該水平走査角度範囲内において複数個の計測点を検出していることになる(引用文献1の段落[0031]の記載も参照)。
そして、引用文献1の「マルチパス」は、「レーザ光の対象物への一部照射等に起因した」ものであるとしているから、上記のような限られた水平走査角度範囲においてレーザ光の照射範囲がある程度発散し、「コア部1」に近い位置にある対象物Aの端部近傍領域にレーザ光が「一部照射」されるとともに、対象物Aにより遮られなかった残りのレーザ光が、さらに遠方にある対象物Bにも照射され、結果として、対象物Aからの反射光に加えて対象物Bからの反射光も受光されて、1セグメントにおいて複数のピークが存在するような事態を想定していると考えられる。
以上を踏まえると、引用発明において、1つのセグメント信号Ssegに含まれる複数のピークとしては、対象物以外の障害物において更に反射して返ってくる多重反射光(通常の意味における「マルチパス」)に由来するものを想定しておらず、概ね同じ方向にありながらターゲット距離が異なる複数の対象物A及びBからの反射光に由来するものを想定していることは明らかである。
(e) そして、本件補正発明の「マルチリターン信号」は、本願明細書の段落【0040】の「マルチリターン光信号」に関する記載(「レーザーのビーム発散により、1回のレーザー発射で複数の物体に衝突し、複数の反射が発生することがよくある。」「ビームの大部分は領域206で近位壁204に当たり、結果として戻り信号203が生じ、ビームの他の部分は領域210で遠位壁208に当たり、戻り信号205が生じる。戻り信号203は、戻り信号205と比較して、TOFが短く、受信信号強度が強い場合がある。」)を踏まえると、引用発明の場合と同様に、概ね同じ方向にありながらターゲット距離が異なる複数の対象物からの反射光に由来したものを想定している。
(f) 前記(a)~(e)を踏まえると、引用発明の「ゲート幅Wg分の期間」において生成した「デジタル信号」であって、「複数の」「ピークが存在する場合」を想定可能な「1つのセグメントのセグメント信号Sseg」は、本件補正発明の「期間内の一連のN個のピークを含むマルチリターン信号」に相当する。
b 「整合フィルター」について
引用発明の「信号処理部2A」の「セグメント信号処理部21」は、「セグメント信号Ssegに対してSNの最大化を行[う]」「マッチドフィルタ」であるから、前記aの検討を踏まえると、本件補正発明の「マルチリターン信号を受信するように構成された整合フィルター」に相当する。
c 前記a及びbの検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「期間内の一連のN個のピークを含むマルチリターン信号を受信するように構成された整合フィルター」を備える点において共通する。
(エ) 構成Cについて
a 引用発明の「信号処理部2A」の「複数の点検出部22(22A、22B、…)」に含まれる「点検出部22A」は、「セグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegから最も振幅Apが大きいピークを検出[する]」ものであるところ、「点検出部22A」に入力される「セグメント信号Sseg」はピークが除去される前の信号であり、「点検出部22A」は、最初の最大ピークを検出することになるから、前記(ウ)を踏まえると、引用発明の「点検出部22A」は、本件補正発明の「前記整合フィルターの出力を受信し、前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で最初の最大ピークを決定するように構成されたピーク検出器」に相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記整合フィルターの出力を受信し、前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で最初の最大ピークを決定するように構成されたピーク検出器(以下「第1ピーク検出器」という。)」を備える点において共通する。
(オ) 構成Dについて
a 引用発明の「信号処理部2A」の「点検出部22A」は、「セグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegから最も振幅Apが大きいピークを検出し」、「遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkをレプリカパルス生成部24Aに供給する」ものであるところ、この「サンプルインデックスk」の大きさは、「ターゲット距離Ltag」に対応するものであるから、「点検出部22A」は、「サンプルインデックスk」を最初の「最も振幅Apが大きいピーク」の位置を導き出すための指標として抽出しているといえる。
そうすると、引用発明の「点検出部22A」は、本件補正発明の「前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記最初の最大ピークの位置を導き出すように構成された」「部品」に相当する。
b 前記aを踏まえると、引用発明の「点検出部22A」を含む「複数の点検出部22(22A、22B、…)」と、本件補正発明の「前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記最初の最大ピークの位置を導き出すように構成された重心計算部品」は、「前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記最初の最大ピークの位置を導き出すように構成された部品(以下「第1ピーク位置導出部品」という。)」という点において共通する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記最初の最大ピークの位置を導き出すように構成された第1ピーク位置導出部品」を備える点において共通する。
(カ) 構成Eについて
a 引用発明においては、「レプリカパルス生成部24Aは、点検出部22Aから受信した振幅Ap及びサンプルインデックスkに基づきレプリカパルスSrepを生成し、演算部25Aは、レプリカパルス生成部24Aが生成したレプリカパルスSrepを、セグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegから減算[する]」ものである。
b ここで、「レプリカパルスSrep」は、「セグメント信号Sseg」の「最も振幅Apが大きいピーク」の位置に対応する「サンプルインデックスk」において、Apと同じ大きさの振幅を有するように基準パルスの波形を補正することにより複製(レプリカ)されたパルス信号であるから(引用文献1の段落[0053]の記載を参照)、「セグメント信号Sseg」から「レプリカパルスSrep」を「減算」すると、当該「サンプルインデックスk」において、同じ大きさの振幅同士が相殺されて、「セグメント信号Sseg」の「最も振幅Apが大きいピーク」は除去されることになる。
c 前記bの検討に加えて、前記(エ)及び前記(オ)の検討も踏まえると、引用発明の「レプリカパルス生成部24A」及び「演算部25A」は、本件補正発明の「前記マルチリターン信号の一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去するように構成されたゼロ化部品」に相当する。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記マルチリターン信号の一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去するように構成されたゼロ化部品(以下「第1ゼロ化部品」という。)」を備える点において共通する。
(キ) 構成Fについて
a 引用発明においては、「点検出部22Bは、演算部25Aが出力するセグメント信号Ssegから最も振幅Apが大きいピークを検出し[ている]」ところ、引用発明の「演算部25Aが出力するセグメント信号Sseg」は、レプリカパルスSrepによる減算処理を一度行った後の信号であるから、「点検出部22B」が「検出」する「最も振幅Apが大きいピーク」は、本件補正発明の「前記一連のN個のピークの中で第2の有意なピーク」に相当する。
b ここで、引用発明の「点検出部22B」は、「点検出部22A」とは別の検出部であることに留意すると、「第1ピーク検出器」という観点とは別に、本件補正発明の「ピーク検出器」と引用発明の「点検出部22B」を含む「複数の点検出部22(22A、22B、…)」は、「前記一連のN個のピークの中で第2の有意なピークを決定」する「ピーク検出器」(以下「第2ピーク検出器」という。)である点において共通するといえる。
c また、引用発明の「点検出部22B」は、「振幅Apが閾値Apth以上の場合」に、「検出したピークに対応する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給し[ている]」ところ、前記(オ)において検討したことと同様にして、本件補正発明の「重心計算部品」と引用発明の「点検出部22B」を含む「複数の点検出部22(22A、22B、…)」は、「第1ピーク位置導出部品」という観点とは別に、「前記期間内で前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記第2の有意なピークの位置を導き出す」「部品」(以下「第2ピーク位置導出部品」という。)である点において共通するといえる。
d したがって、前記a~cの検討結果に加えて前記(エ)~(カ)も踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記第1ゼロ化部品が、前記マルチリターン信号の一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去することによって、第2ピーク検出器が前記一連のN個のピークの中で第2の有意なピークを決定し、第2ピーク位置導出部品が前記期間内で前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記第2の有意なピークの位置を導き出すようにな[る]」点において共通する。
(ク) 構成Gについて
a M個の有意なピークについて
(a) 引用発明の「閾値Apth以上のピーク」は、本件補正発明の「有意なピーク」に相当する。
(b) 引用発明において、「信号処理部2Aは、ピーク除去信号Ssubに閾値Apth以上のピークがなくなるまで、レプリカパルスSrepによる減算処理を繰り返して実行[し]」、「1つのセグメントから複数個の計測点を検出可能であ[る]」としているところ、1つのセグメントのセグメント信号Ssegのピークの数がN個であった場合には、「閾値Apth以上となるピーク」の数MがNを越えることはないのは明らかである。
(c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、引用発明の「閾値Apth以上のピーク」は、本件補正発明の「一連のN個のピークの中でM個の有意なピーク」に相当する。
b 繰り返し動作に係る構成について
(a) ピーク検出器について
引用発明の「複数の点検出部22(22A、22B、…)」については、「検出部22A」が「最も振幅Apが大きいピーク」を検出し、「検出部22B」が二番目の「最も振幅Apが大きいピーク」を検出し、さらに続く複数の検出部が三番目以降の「最も振幅Apが大きいピーク」をそれぞれ検出し、「閾値Apth以上のピークがなくなるまで」その検出を繰り返し行うものであることは明らかであり、引用発明のこのような繰り返し検出は、本件補正発明の「一連のN個のピークの中でM個の有意なピークが前記期間内のマルチリターン信号で検出されるまで、後続の有意なピークを決定」することに相当する。
したがって、本件補正発明の「ピーク検出器」と引用発明「複数の点検出部22(22A、22B、…)」は、「第1ピーク検出器」及び「第2ピーク検出器」という観点も包含されるものとして、「一連のN個のピークの中でM個の有意なピークが前記期間内のマルチリターン信号で検出されるまで、後続の有意なピークを決定するように構成された、ピーク検出器(以下「繰り返しピーク検出器」という。)」という点において共通する。
(b) 重心計算部品について
前記(a)において述べた繰り返しピーク検出に伴って、引用発明の「複数の点検出部22(22A、22B、…)」のそれぞれは、各ピークの位置を導き出すための指標としての「サンプルインデックスk」の抽出を行うことは明らかであるから、このことは、本件補正発明の「一連のN個のピークの中でM個の有意なピークが前記期間内のマルチリターン信号で検出されるまで、後続の有意なピークの位置を導き出す」ことに相当する。
したがって、本件補正発明の「重心計算部品」と引用発明の「複数の点検出部22(22A、22B、…)」は、「第1ピーク位置導出部品」及び「第2ピーク位置導出部品」という観点も包含されるものとして、「一連のN個のピークの中でM個の有意なピークが前記期間内のマルチリターン信号で検出されるまで、後続の有意なピークの位置を導き出すように構成された」「部品」(以下「繰り返しピーク位置導出部品」という。)である点において共通する。
(c) ゼロ化部品について
引用発明の「複数のレプリカパルス生成部24(24A、24B、…)」と「複数の演算部25(25A、25B、…)」が、前記(a)において述べた繰り返しピーク検出において、直前に検出されたピークの除去を行うための動作をおこなっていることは明らかであるから、本件補正発明の「ゼロ化部品」と、引用発明の「複数のレプリカパルス生成部24(24A、24B、…)」及び「複数の演算部25(25A、25B、…)」は、「第1ゼロ化部品」という観点も包含されるものとして、「一連のN個のピークの中でM個の有意なピークが前記期間内のマルチリターン信号で検出されるまで、後続の有意なピークの位置を導き出すように構成された」「ゼロ化部品」(以下「繰り返しゼロ化部品」という。)である点において共通する。
(d) 前記(a)~(c)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「繰り返しピーク検出器、繰り返しピーク位置導出部品、および繰り返しゼロ化部品は、一連のN個のピークの中でM個の有意なピークが前記期間内のマルチリターン信号で検出されるまで、後続の有意なピークを決定し、該ピークの位置を導き出すように構成され[る]」点において共通する。
c 重心計算部品の構成について
引用発明においては、「複数の点検出部22」が、「閾値Apth以上のピークがなくなるまで」、「検出したピークに対応する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給し[ている]」ところ、この「閾値Apth以上のピーク」が複数の場合、これらのピークに対応する複数の「計測点情報Ip」は、それぞれ「振幅Ap及び遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスk」を有していることになる。そうすると、前記b(b)の検討結果も踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記繰り返しピーク位置導出部品は、前記期間内のマルチリターン信号の一連のN個のピークの中で複数のピークの位置を導き出すように構成され[る]」点において共通する。
d したがって、前記a~cを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「繰り返しピーク検出器、繰り返しピーク位置導出部品、および繰り返しゼロ化部品は、一連のN個のピークの中でM個の有意なピークが前記期間内のマルチリターン信号で検出されるまで、後続の有意なピークを決定し、該ピークの位置を導き出すように構成され、前記繰り返しピーク位置導出部品は、前記期間内のマルチリターン信号の一連のN個のピークの中で複数のピークの位置を導き出すように構成され[る]」点において共通する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア) 一致点
特定のパルス波形を有する信号を有するレーザービームを放出するように構成された送信機と、
期間内の一連のN個のピークを含むマルチリターン信号を受信するように構成された整合フィルターと、
前記整合フィルターの出力を受信し、前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で最初の最大ピークを決定するように構成された第1ピーク検出器と、
前記期間内の前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記最初の最大ピークの位置を導き出すように構成された第1ピーク位置導出部品と、
前記マルチリターン信号の一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去するように構成された第1ゼロ化部品と、を備え、
前記第1ゼロ化部品が、前記マルチリターン信号の一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去することによって、第2ピーク検出器が前記一連のN個のピークの中で第2の有意なピークを決定し、第2ピーク位置導出部品が前記期間内で前記マルチリターン信号の一連のN個のピークの中で前記第2の有意なピークの位置を導き出すようになり、
繰り返しピーク検出器、繰り返しピーク位置導出部品、および繰り返しゼロ化部品は、一連のN個のピークの中でM個の有意なピークが前記期間内のマルチリターン信号で検出されるまで、後続の有意なピークを決定し、該ピークの位置を導き出すように構成され、前記繰り返しピーク位置導出部品は、前記期間内のマルチリターン信号の一連のN個のピークの中で複数のピークの位置を導き出すように構成される、
装置、である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
「期間内の一連のN個のピークを含むマルチリターン信号を受信するように構成された整合フィルター」が、
本件補正発明においては、
「前記マルチリターン信号を、前記レーザービームの前記信号の前記特定のパルス波形を有する整合フィルター信号と畳み込む」(構成B)ものであるのに対して、
引用発明においては、
そのようなものであるのか不明な点。
b 相違点2
「第1ピーク検出器」、「第2ピーク検出器」及びこれらを含む「繰り返しピーク検出器」が、
本件補正発明においては、
「ピーク検出器」(構成C、F、G)という一つの手段として構成されているのに対して、
引用発明においては、
「複数の点検出部22(22A、22B、…)」という別々の手段として構成されている点。
c 相違点3
「第1ピーク位置導出部品」、「第2ピーク位置導出部品」及びこれらを含む「繰り返しピーク位置導出部品」が、
本件補正発明においては、
「重心計算部品」(構成D、F、G)という一つの手段として構成されており、
「前記重心計算部品は、前記期間内のマルチリターン信号の一連のN個のピークの中で最初の有意なピーク、最後の有意なピーク、および最大ピークの位置を導き出すように構成される」(構成G)のに対して、
引用発明においては、
「複数の点検出部22(22A、22B、…)」という別々の手段として構成されており、
「複数の点検出部22」は、検出した閾値Apth以上の振幅Apを有するピークのサンプルインデックスkを小数第一位のオーダーで推定しているが、そのサンプルインデックスkを重心計算で求めているのか不明であり、
最初の有意なピーク、最後の有意なピーク及び最大ピークの位置を導き出すように構成されるのか不明な点。
d 相違点4
「第1ゼロ化部品」及びこれを含む「繰り返しゼロ化部品」が、
本件補正発明においては、
「ゼロ化部品」(構成E、F、G)という一つの手段として構成されており、
「前記ゼロ化部品は、前記一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去する際に、前記最初の最大ピークの盲点に隠されたピークを検出するように構成される」(構成H)のに対して、
引用発明においては、
「複数のレプリカパルス生成部24(24A、24B、…)」及び「複数の演算部25(25A、25B、…)」という別々の手段として構成されており、
「演算部25A」により最も振幅Apが大きいピークが除去されたセグメント信号Ssegから、前記最も振幅Apが大きいピークの盲点に隠されたピークを検出するように構成されているのか不明な点。
(4) 当審の判断
ア 相違点1について
前記相違点1について検討する。
(ア) 前記(2)イ(ウ)において示したとおり、以下の事項は優先日前に技術常識として知られたものである。
「レーダの受信信号パルスから雑音を除去するために、前記受信信号パルスと前記レーダの送信信号パルスの畳み込み演算を行うマッチドフィルタ(整合フィルタ)を設けること。」
(イ) 前記技術常識は、対象物で反射されたレーダー信号が受信されたとき、その受信信号に含まれる雑音を低減するためのものであるところ、引用発明においても、「対象物にパルスレーザを出射し」、「パルスレーザ照射後の所定期間内に当該パルスレーザの反射光を受光することで生成したセグメントごとの受光強度に関する信号」である「セグメント信号Sseg」に対して「雑音抑制を行うための信号処理」を「マッチドフィルタ等を適用して」行っているから、上記技術常識を適用し得ることは、当業者にとって明らかである。
(ウ) したがって、引用発明の「セグメント信号処理部21」に用いられる「マッチドフィルタ」を、前記技術常識を踏まえて、受信信号パルス(「セグメント信号Sseg」)と送信信号パルス(「レーザダイオード13」から「出射」される「光パルス」)の畳み込み演算を行うものとし、引用発明において、前記相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
前記相違点2について検討する。
引用発明において、「1つのセグメントのセグメント信号Sseg」に「存在」する「複数の閾値Apth以上となるピーク」を検出するための手段として、ピークごとに「複数の点検出部22(22A、22B、…)」という別々の手段を設ける代わりに、一つの点検出部が各ピークを検出するように構成することは、当業者にとって適宜なし得た設計変更にすぎず、前記相違点2は格別のものではない。
ウ 相違点3について
前記相違点3について検討する。
(ア) 一つの手段としての構成について
前記イに説示した理由と同様に、引用発明において、ピークの位置を導出するための手段として、「複数の点検出部22(22A、22B、…)」という別々の手段を設ける代わりに、一つの点検出部が各ピークの位置を導出するように構成することは、当業者にとって適宜なし得た設計変更にすぎない。
(イ) 重心計算部品という構成について
a 引用発明においては、「複数の点検出部22」において、「セグメント信号Sseg」から「閾値Apth以上の振幅Apを有するピーク」を検出し、「検出したピークに対応する計測点情報Ip」(「対応する振幅Ap及び遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスk」)を推定しているところ、その「サンプルインデックスk」は「小数第一位のオーダーで推定」されており、例えば、引用文献1の[0051]では「231.1」として推定されている(図5(A)も参照)。
b ここで、引用発明の「セグメント信号Sseg」は、「2048サンプルクロック分のA/Dコンバータ18の出力であるデジタル信号」であることを踏まえると、検出されたピークのサンプルインデックスkが小数第一位(例えば231.1)として推定される場合、当該ピークが、少なくとも231番目のサンプルクロックによるデジタル信号と、232番目のサンプルクロックによるデジタル信号に跨がっていることを前提として、当該ピークが231の値に近いか、232の値に近いかを示す両値の間の内分点を小数第一位までの値として表現できるように、両値を按分して算出したものと理解される。
c そして、このような按分算出の方法として、ピークの重心に着目して上記内分点のサンプルインデックスkを重心計算により推定することは、当業者にとって自明な設計事項である。
(ウ) 最初、最後及び最大ピークの位置導出について
a 引用発明において、推定された複数の「計測点情報Ip」から、「サンプルインデックスk」が一番小さいピーク、「サンプルインデックスk」が一番大きいピーク、「振幅Ap」が一番大きいピークを抽出することが可能であり、その「サンプルインデックスk」から、これらのピークの位置が分かることは明らかである。
b ここで、前記aの「サンプルインデックスkが一番小さいピーク」、「サンプルインデックスkが一番大きいピーク」及び「振幅Apが一番大きいピーク」は、それぞれ本件補正発明の「最初の有意なピーク」、「最後の有意なピーク」及び「最大ピーク」に相当する。
c したがって、引用発明において、「複数の点検出部22」が、最初の有意なピーク、最後の有意なピーク及び最大ピークの位置を導き出すように構成することは、格別のものではない。
(エ) 相違点3の検討のまとめ
前記(ア)~(ウ)の検討結果をまとめると、引用発明において、前記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 相違点4について
前記相違点4について検討する。
(ア) 一つの手段としての構成について
前記イに説示した理由と同様に、引用発明において、ピークを除去するための手段として、「複数のレプリカパルス生成部24(24A、24B、…)」及び「複数の演算部25(25A、25B、…)」という別々の手段を設ける代わりに、一つの手段がピークを除去するように構成することは、当業者にとって適宜なし得た設計変更にすぎない。
(イ) 構成Hについて
a 「最初の最大ピークの盲点に隠されたピーク」の解釈
(a) 前記相違点4に係る「前記ゼロ化部品は、前記一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去する際に、前記最初の最大ピークの盲点に隠されたピークを検出するように構成される」構成について、本願明細書には、次のとおり記載されている。
「【0087】
図12Aは、本文書の実施形態による、重なり合う波形1200を含む戻り信号の波形をグラフで示す。重なり合う波形1200は、ピーク1202およびピーク1206を含み、ピーク1202は最大ピークであり得、ピーク1206は隠れたピークまたは最大ピークの盲点であり得る。潜在的に、2つのピークの時間的近接性が与えられると、マルチリターン検出器は、図12Aの波形において1つのピークのみを検出し得る。
【0088】
重なり合う波形1200内の2つのピークを検出する方法は、最初に最大ピークを識別し、次に計算バッファを利用して、最大ピークの波形の寄与をゼロにすることにより最大ピークの直後に隠れているピークを識別することを含む。基本的に、このプロセスには、戻り信号のピークの元の形状を再構築することが含まれる。最大ファインダー機能を使用すると、最大のピークであるピーク1202を識別できる。関心領域について、図12Aに示すように、重なり合う波形について20個のサンプルが得られる。この情報を使用して、最大ピークの振幅および位置を決定できる。」
「【図12A】
[図:0001417217000009.jpg]
」
(b) 前記(a)の記載から、本件補正発明の構成Hの「最初の最大ピークの盲点に隠されたピーク」とはピーク1206のことであり、「最初の最大ピーク」とはピーク1202であることが読み取れる。そして、【図12A】から、ピーク1206はピーク1202に部分的に重なり合ってはいるものの、ピーク1206がピーク1202と完全に重なり合ってはいないことが読み取れる。
(c) この点に関し、上記段落【0087】には、「潜在的に、2つのピークの時間的近接性が与えられると、マルチリターン検出器は、図12Aの波形において1つのピークのみを検出し得る。」との記載があるところ、ピーク1206がピーク1202と完全に重なり合うときは、ピーク1206は、ピーク1202に完全に埋もれているから、「最初の最大ピーク」であるピーク1202を「ゼロ化部品」によって「除去」してしまうと、ピーク1206も同時に除去されてしまうことになり、ピーク1206を「最初の最大ピークの盲点に隠されたピーク」として検出できなくなるのは明らかである。
すなわち、上記段落【0087】の「1つのピークのみを検出し得る」場合では、一方のピークに他方のピークが完全に埋もれている事態を想定しており、そのようなピークは、本件補正発明の構成Hの「最初の最大ピークの盲点に隠されたピーク」には該当しないというべきである。
(d) 以上を踏まえると、本件補正発明の構成Hの「最初の最大ピークの盲点に隠されたピーク」とは、「盲点に隠された」と表現することが妥当であるか否かは措くとして、「最初の最大ピーク」と部分的には重なり合う波形を有するものの、「最初の最大ピーク」に完全に埋もれてはいないようなピークのことであると解するのが相当である。
b 引用発明におけるピーク検出
(a) 引用発明においても、「信号処理部2A」の「点検出部22A」は、「セグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegから最も振幅Apが大きいピークを検出し」、「対応する振幅Ap及び遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkをレプリカパルス生成部24Aに供給[し]」、「レプリカパルス生成部24Aは、点検出部22Aから受信した振幅Ap及びサンプルインデックスkに基づきレプリカパルスSrepを生成し」、「演算部25Aは、レプリカパルス生成部24Aが生成したレプリカパルスSrepを、セグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegから減算し」、「点検出部22Bは、演算部25Aが出力するセグメント信号Ssegから最も振幅Apが大きいピークを検出[する]」のであるから、「点検出部22B」が検出する「最も振幅Apが大きいピーク」は、「点検出部22A」が検出する「最も振幅Apが大きいピーク」に完全に埋もれてはいないことは明らかである(完全に埋もれていたら、「演算部25A」の「減算」において除去されてしまい、「点検出部22B」における検出対象にならない。)。
(b) そして、引用発明の「サンプルインデックスk」の「大きさはターゲット距離Ltagに対応する」から、概ね同じ方向にありながら、ターゲット距離Ltagが若干異なる複数の対象物からの反射光に由来する「セグメント信号Sseg」には、「最も振幅Apが大きいピーク」と部分的に重なり合うピークが存在することになり、そのような部分的に重なり合うピークについては、前記aに示した解釈を踏まえると、引用発明の「演算部25A」が「最も振幅Apが大きいピーク」を除去し、「点検出部22B」が、その除去された信号から「最初の最大ピークの盲点に隠されたピーク」として検出されることは明らかである。
(c) そうすると、引用発明の「複数のレプリカパルス生成部24(24A、24B、…)」及び「複数の演算部25(25A、25B、…)」も、本件補正発明の構成Hに相当する構成を備えたものであるといえる。
(ウ) 相違点4の検討のまとめ
前記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明において、前記相違点4に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
オ 小括
前記ア~エの検討結果を踏まえると、引用発明において、前記相違点1から相違点4に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の内容
請求人は、審判請求の理由において、概略次の主張をしている。
本件補正発明の「前記ゼロ化部品は、前記一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去する際に、前記最初の最大ピークの盲点に隠されたピークを検出するように構成される」点について、引用文献1には、記載も示唆もされていない。
(イ) 請求人の主張についての検討
前記主張について検討する。
請求人の主張は、引用発明は、前記相違点4に係る本件補正発明の構成を備えていないというものであるが、前記エにおいて検討したとおり、前記相違点4に係る本件補正発明の構成を備えることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
(5) 独立特許要件の判断についてのまとめ
前記(3)及び(4)において検討したとおり、本件補正発明は、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年12月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由4(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2017/138155号(主たる引用文献)
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
引用文献1、6、7に記載された事項並びに引用発明及び技術常識の認定は、前記第2の3(2)ア及びイにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、「前記ゼロ化部品は、前記一連のN個のピークから前記最初の最大ピークを除去する際に、前記最初の最大ピークの盲点に隠されたピークを検出するように構成される」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、当該構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)及び(4)において説示したとおり、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-011487