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特許拒絶査定不服審判

2020-000096

印刷装置、その制御方法、およびプログラム

審判番号
2020-000096
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-194400
請求日
2020年01月06日
審決日
2021年03月02日
公報発行日
2021年06月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】キヤノン株式会社
  • 【請求人代理人】特許業務法人大塚国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 藤田 年彦
  • 審判官 尾崎 淳史
  • 審判官 清水 康司
分類
P18 .121-Z (B41J) / P18 .572-Z (B41J) / P18 .575-Z (B41J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-194400「印刷装置,その制御方法,およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開,特開2017- 65128〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は,成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成27年9月30日に出願されたものであって,平成30年9月25日及び平成31年1月23日に手続補正書が提出され,令和1年6月20日付けで拒絶の理由が通知され,同年8月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年9月20日付けで拒絶の査定がなされ,同謄本は同月30日に請求人に送達された。 その後,令和2年1月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に,手続補正書の提出がされたものである。 第2 令和2年1月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年1月6日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容について (1)本件補正は,令和2年1月6日に提出された手続補正書によれば,特許請求の範囲の記載を全文にわたって補正するものであり,明細書の段落番号【0006】の記載を補正するものであって,その補正の一部には,つぎのとおり,本件補正前の請求項1の記載を本件補正後の請求項1のとおりに補正する補正事項(以下,「本件補正事項」という。)を含むものである。 ア 本件補正前の特許請求の範囲(令和1年8月27日に提出された手続補正書の特許請求の範囲)の請求項1の記載 「【請求項1】 印刷装置であって, 1部のページ数と,前記1部のページ数を超えるページ数の印刷データとを,前記印刷装置とは異なる情報処理装置から受信する受信手段と, 前記受信手段の受信した前記印刷データのページ数と,前記受信手段の受信した前記1部のページ数とに基づき,印刷部数を求める手段と, 求められた前記印刷部数を表示する表示手段と, を有することを特徴とする印刷装置。」 イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 「【請求項1】 印刷装置であって, 1部のページ数を示す情報と,前記1部のページ数を超える複数部数分の印刷データとを,前記印刷装置とは異なる情報処理装置から受信する受信手段と, 前記受信手段の受信した前記印刷データのページ数と,前記受信手段の受信した前記情報に基づく1部のページ数とに基づき,印刷部数を表す1を超える値を求める手段と, 前記受信手段の受信した前記1部のページ数を超える複数部数分の印刷データを処理する1つのジョブの印刷部数として,求められた前記1を超える値を表示する表示手段と, を有することを特徴とする印刷装置。」(下線は,補正箇所を示す。) 2 本件補正事項の補正の目的について (1)本件補正事項は,請求項1の「印刷装置とは異なる情報処理装置」から「受信手段」が受信するものについて,本件補正前の請求項1においては「1部のページ数」と,「1部のページ数を超えるページ数の印刷データ」であったものを本件補正後の請求項1においては,「1部のページ数を示す情報」と「1部のページ数を超える複数部数分の印刷データ」とする補正事項(以下,「本件補正事項1」という。),本件補正前の請求項1の「印刷部数を求める手段」を本件補正後の請求項1においては,「印刷部数を表す1を超える値を求める手段」とする補正事項(以下,「本件補正事項2」という。),及び本件補正前の請求項1の「求められた前記印刷部数を表示する表示手段」を,本件補正後の請求項1においては,「受信手段の受信した前記1部のページ数を超える複数部数分の印刷データを処理する1つのジョブの印刷部数として,求められた前記1を超える値を表示する表示手段」とする補正事項(以下,「本件補正事項3」)という。)するものである。 (2)本件補正事項1は,受信手段が受信するものについて「1部のページ数」を「1部のページ数を示す情報」と限定し,「1部のページ数を超えるページ数の印刷データ」を「1つのページ数を超える複数部数分の印刷データ」と限定するものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)本件補正事項2は,「印刷部数を求める手段」を,「印刷部数を表す1を超える値を求める手段」とするものであって,当該手段を印刷部数を求めるものから,「1を超える」「印刷部数」の値を求めるものであることに限定するものであるから,同号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (4)本件補正事項3は,「表示手段」が表示するものについて「求められた前記印刷部数」から,「受信手段の受信した前記1部のページ数を超える複数部数分の印刷データを処理する1つのジョブの印刷部数として,求められた前記1を超える値を表示する」ものに限定するものであるから,同号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (5)上記の検討によれば,本件補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3 独立特許要件についての検討 上記2のとおり,本件補正のうち,請求項1に係る補正は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するから,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)イにおいて摘示したとおりの発明特定事項により特定されるものである。 (2)引用例 ア 原査定の拒絶の理由の引用文献1として引用され,本願の出願前に出願公開がされた特開平11-165455号公報(以下,「引用文献1」という。)には,つぎの事項が記載されている。(改行は一部省略している。) (ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,コンピュータによるプリント制御方法およびプリント制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体,ならびにプリント制御装置に関する。」 (イ)「【0004】【発明が解決しようとする課題】ところが,このようにプリンタの機能が向上している反面,このようなプリンタを利用してプリントを実行するパソコンに搭載されているアプリケーションソフトウェアの処理が上記のような様々な機能に対応していない場合がある。例えば1部の文書データとして1-2-3の3ページからなるデータがあり,これを3部プリントする場合,上記のような高機能のプリンタでは,各部ごとにソートしたりステープルしたりするのが通常の機能である。ところが,パソコンで実行されるアプリケーションソフトウェアの中には,複数部のデータを一まとめにして1ジョブとして出力するものがある。上記例の場合,1-2-3-1-2-3-1-2-3の9ページからなるデータが1部であるかのように,9ページ分のデータが1ジョブとして出力される。このようなデータがプリンタに送られた場合,プリンタ側では部ごとの切れ目を認識することができないため,部ごとのソート処理をすることが不可能であり,また,ステープル処理をする場合には9ページの出力用紙をステープルしてしまうことになる。 【0005】また,このような部の切れ目のない出力データによる問題は,両面プリントやNin1プリントのときにも発生し,例えば上記のように1部の文書データが1-2-3と奇数枚で構成されていると,第1部目の最終ページと第2部目の最初のページが1枚の用紙の両面,あるいは2in1の場合では1ページにプリントされることとなって,本来必要とする部ごとのプリント結果が得られないことになる。 【0006】そこで,本発明の目的は,部ごとに区切られることなく複数部のプリントデータを1ジョブとして出力するようなアプリケーションソフトウェアを用いた場合でも,ソートやステープル,また,両面プリントやNin1プリントなどを部単位で適切に処理することができるコンピュータによるプリント制御方法およびそのためのプリント制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体,ならびにこのような処理を実行するプリント制御装置を提供することである。」 (ウ)「【0007】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための請求項1記載の本発明は,複数部のプリントを実行するために1部のデータを複数連続させて1ジョブのデータとして出力されたプリントデータを,部ごとに分割して複数のジョブにすることを特徴とするコンピュータによるプリント制御方法である。 【0008】この発明は,複数部をプリントするためのデータとして,1ジョブにまとめられたプリントデータを部ごとに分割することにより,部単位で処理を実行するプリンタにおいて部の区切りを認識できるようにするプリント制御方法である。」 (エ)「【0014】図1は,本発明を適用するネットワークコンピュータシステムの構成を示すブロック図である。このネットワークコンピュータシステムは,複数のクライアントコンピュータ10,プリンタサーバコンピュータ20,およびデジタル複写機30がネットワーク回線50により接続されたもので,一般的なLAN環境によるシステムである。 【0015】ここで用いられているデジタル複写機30は,複写機としての機能の他,クライアントコンピュータ10からの指令によりプリントを行うプリンタとしての機能と,外部の電話回線(不図示)と接続されてファクシミリとしての機能とを有する複合機である。 【0016】このデジタル複写機30の概略構成を図2のブロック図に示す。このデジタル複写機30は,複写機やファクシミリ送信の際に用いられる原稿画像読み取りのためのイメージリーダ部(IR)35,イメージリーダ部35により読み取った原稿画像やファクシミリにより受信した画像およびプリンタサーバコンピュータ20から送信されてきた文書データをプリントアウトするための電子写真方式によるプリンタ部(PRT)36,プリントされた用紙を部ごとに分けて集積するための複数のトレイと部ごとにステープル処理するためのステープル装置を有する後処理装置38,これら各部を制御し,かつ,プリントアウトとする画像の拡大・縮小,あるいはNin1プリントやその他の画像処理などを実行するCPU31,このCPU31の処理のために画像データを一時的に記憶するためのメモリ32,操作パネル37,およびプリンタサーバコンピュータ20とデータの受け渡しを行うためのインターフェースユニット(IU)33によって構成されている。」 (オ)「【0021】図4は,プリントシーケンスを説明するための図面である。ここでは,ユーザがクライアントコンピュータ10上でプリントを指示してから,デジタル複写機30によりプリントアウトとされるまでの手順を説明する。 【0022】まず,ユーザは,クライアントコンピュータ10で動作する文書作成アプリケーションソフトウェアを用いて目的の文書の作成,編集を行う(S1)。文書作成アプリケーションソフトウェアは,通常,クライアントコンピュータ10内のハードディスクに記憶されており,ユーザが必要なときにRAM13にロードし,CPU11で制御することで実行される。このとき文書のレイアウトやプリント指示情報などは,ディスプレイ19上に表示される。また,ユーザの文字入力,文書や画像などの編集,プリント指示などは,キーボード20やマウス21から行い,これらの情報はCPU11に通知されて処理される。 【0023】このような文書作成アプリケーションソフトウェアによってプリント指示が行われると(S2),プリントモードの通常設定画面がディスプレイ19上に表示される。通常設定画面からは,複数部のプリント指定や,部ごとにプリントを行うか否かの設定などが行われる(S4)。」 (カ)「【0026】通常のプリント動作では,通常設定画面での設定だけでプリントモードの設定を終了する場合もあるが,プリンタ特有の機能を設定する場合にはさらに詳細なプリントモードの設定を行うために,ユーザの指示により,詳細設定画面を表示して,プリンタ特有の機能を用いるための詳細設定を行う(S11)。このとき,プリンタドライバでは,詳細設定を行う指示,すなわち,詳細設定画面を表示する際に,プリント指示をかけた文書作成アプリケーションソフトウェアが何であるかを一時記憶する。ここでは,プリント指示をかけた文書作成アプリケーションソフトウェアの名称をそのバージョンまでを含めて一時記憶する。 【0027】表示される詳細設定画面は,ユーザの要求によりプリンタドライバが,例えば図5に示すように,両面プリント,Nin1プリント,ソート,ステープル,画像サイズ(拡大・縮小)などデジタル複写機30特有の機能を利用するための詳細設定画面をディスプレイ19上に表示する。 【0028】また,この詳細設定画面では,プリント部数の設定をすることができるようになっている。これは,文書作成アプリケーションソフトウェアによっては,通常設定画面上での複数部の設定値はその文書作成アプリケーションソフトウェア内において,1ジョブ分のプリントデータを作成するための数値として利用されるだけで,この通常設定画面での複数部の設定値がその後プリンタドライバに渡されないものがあるため,このプリンタドライバが出力する詳細設定画面上で改めて設定することができるようにしたものである。したがって,通常設定画面上での複数部の設定値がプリンタドライバに設定情報として渡される場合には,図5に示したプリント部数の設定入力枠には通常設定画面で設定した部数が表示されることになるが,複数部の設定値が渡されない場合には,ここで改めて部数を入力するようにユーザを促すための表示を行うようにしてもよい。また,同様にページ情報が必要なときに,文書作成アプリケーションソフトウェアからページ情報がプリンタドライバに渡されない場合にも,この詳細設定画面上で入力できるようにしてもよい。」 (キ)「【0029】プリントモードの設定終了後,プリント実行の指示がユーザから与えられると(S5),文書作成アプリケーションソフトウェアにより作成された文書データ,および通常設定画面により設定されたプリントモードのデータが,プリンタドライバに渡される(ただし,上記のように文書作成アプリケーションソフトウェアによっては,通常設定画面上での設定値が渡されないものもある)。 【0030】このとき,複数部のプリントを部ごとにプリントする指示が行われた場合に,本実施の形態では,プリンタドライバにより,文書作成アプリケーションソフトウェアから送られた複数部のプリントデータを各部ごとに1ジョブとする処理を行う(以下ジョブ分割と称する,S12)。なお,通常設定画面での情報がプリンタドライバに渡されない場合には,詳細設定画面からの情報,すなわち,ソートやステープル,またはNin1や両面プリントなどを実行する設定がなされている場合に,部ごとのプリント処理を行うものと判断するか,または,改めて部ごとの処理を実行するか否かをユーザに問い合わせるための画面表示を行って,ユーザから入力するようにしてもよい。 【0031】このジョブ分割は,例えば文書作成アプリケーションソフトウェアによっては,複数部のプリント処理を行う場合,プリンタドライバへ送信するデータとして複数部のデータを1ジョブにまとめて送信するものがあり,このような場合,そのままではプリントを行うデジタル複写機30側で部の切れ目が分からなくなるので,ここで,部ごとに1ジョブとする分割処理を行うものである。このような複数部のデータを1ジョブにまとめて送信するような文書作成アプリケーションソフトウェアとしては,例えばマイクロソフト株式会社製の「Word」などがある。 【0032】ところが,アプリケーションソフトウェアによっては,逆に,複数部のプリント指示を行った場合に,部ごとにジョブ単位で送信するもの,例えば3部のプリントの際には3つのジョブを送信するものもある。 このような部ごとにジョブ単位で送信するアプリケーションソフトウェアからのプリントデータの場合には,ジョブ分割を実行すると逆に不都合が生じてしまうことになる。そこで,本実施の形態では,後述するように予め複数部を1ジョブとして送信するアプリケーションソフトウェア,すなわち,ジョブ分割が必要となるアプリケーションソフトウェアを予め登録しておき,登録されたアプリケーションソフトウェアから複数部のプリント指示があった場合にのみジョブ分割を実行するようにしている。」 (ク)「【0033】図6は,このようなジョブ分割における処理の流れを示すフローチャートである。まず,プリント指示をかけた文書作成アプリケーションソフトウェア,すなわち,プリントデータを送信するアプリケーションソフトウェアが,予め登録されているアプリケーションソフトウェアかどうか,前記ステップS11において一時記憶したアプリケーションソフトウェア(バージョンまで含めた名称)と比較して調べる(S13)。ここで,予め登録したアプリケーションソフトウェアとは,前記したように複数部のプリント処理を行う場合,プリンタドライバへ送信するデータとして複数部のデータを1ジョブにまとめて送信するアプリケーションソフトウェアを予め登録しておいたものである。 【0034】予め登録したアプリケーションソフトウェアと前記ステップS11において一時記憶したアプリケーションソフトウェアが同じである場合には,ジョブを分割する処理を実行する(ジョブ分割処理,S14)。 【0035】このジョブ分割処理は,例えば文書作成アプリケーションソフトウェアから渡された複数部を1ジョブとするプリントデータの総ページ数を,上記設定画面により入力された部数データで割ることにより,1部ごとのページ数を求め,1部を1ジョブに分割する。これをより具体的な例として示せば,1部のデータが1-2-3の3ページからなり,これを3部プリントするように指示された場合,文書作成アプリケーションソフトウェアからは,1-2-3-1-2-3-1-2-3を1ジョブとする合計9ページ分のデータがプリンタドライバに渡されるので,この1ジョブ分のページ数「9」をプリント指示された部数データ「3」で割ることにより1ジョブ当たりのページ数が3ページであることが分かるので,この9ページで1ジョブのデータを3ページごとに分割して1-2-3で1ジョブとし,これを3ジョブ分のデータにする。 【0036】なお,このジョブ分割処理は,上記のように,文書作成アプリケーションソフトウェアから渡された複数部を1ジョブとするプリントデータの総ページ数を,部数データで割ることにより求める他,例えば1部当たりのページ数,上記の例では「3」で割ることにより部数を求め,文書作成アプリケーションソフトウェアから渡された複数部を1ジョブとするプリントデータをこの3で分割しても,同様に部ごとに1ジョブとする分割ができる。さらに,プリントするデータの最初のページをメモリに記憶し,記憶した最初のページと順次送られてくるプリントデータを比較し,同じデータが来たところを,次の部の始まりとして認識して分割を行っても よい。 【0037】その後,プリンタドライバは,文書作成アプリケーションソフトウェアから送られて来た文書データを,分割された各ジョブごとにページ記述言語に変換して,設定されたプリントモードと共にプリンタサーバコンピュータ20に送信する(S15)。」 (ケ)「【0046】なお,プリンタサーバコンピュータ20がジョブ分割処理を行う場合には,このジョブ分割処理のためのプログラムは,フロッピーディスクやCD-ROMなどの記憶媒体によって提供され,通常の場合は,これらの記憶媒体からプリンタサーバコンピュータ20内のハードディスクにインストールされることで,プリンタサーバコンピュータ20内に記憶されて,実行されることになる。したがって,このようにプリンタサーバコンピュータ20がジョブの分割処理を行う場合には,プリンタサーバコンピュータ20が本発明におけるプリント制御装置となる。一方,デジタル複写機30により複数部プリントジョブの分割処理を行う場合には,予め,デジタル複写機内の制御装置に,このジョブ分割処理を行うためのプログラムを,ROMやその他の不揮発性メモリ(例えばEPROM,EEPROM,フラッシュメモリなど)などに記憶させておき,これを制御装置のCPUが適宜実行することにより処理される。したがって,このようにデジタル複写機30がジョブの分割処理を行う場合には,デジタル複写機30がプリント制御装置となる。」 (コ)上記(ケ)の記載によれば,ジョブ分割処理をデジタル複写機により行うことについて記載されているから,引用文献1には,ジョブ分割処理を行うデジタル複写機が記載されているものということができる。 (サ)上記(ア)ないし(コ)によれば,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「プリントデータを送信するアプリケーションソフトウェアが,予め登録されているアプリケーションソフトウェアと同じである場合に,ジョブを分割する処理を実行するデジタル複写機であって, 文書作成アプリケーションソフトウェアから渡された複数部を1ジョブとするプリントデータの総ページ数を,1部当たりのページ数で割ることにより部数を求め,文書作成アプリケーションソフトウェアから渡された複数部を1ジョブとするプリントデータを分割して部ごとに1ジョブとする処理を実行するデジタル複写機」の発明(以下,「引用発明1」という。) イ 原査定の拒絶の理由の引用文献2として引用され,本願の出願前に出願公開された特開2012-106453号公報(以下,「引用文献2」という。)には,つぎの事項が記載されている。 (ア)「【0047】以下,図面を参照しながら,この発明の実施形態に係る情報処理装置,画像形成装置及び情報処理方法について説明をする。図1に示すカラー複写機100は画像形成装置の一例を構成し,カラー用の画像情報(以下画像データDINという)に基づいてカラー画像を複数の用紙に形成して出力する際に,出力設定操作に対応して,サンプル出力形態を一括又は分けてプレビュー表示する機能を有している。ここにサンプル出力形態とは,選択された画像形成条件の設定の組み合わせによって作成されたサンプル出力候補(以下で単にサンプル出力という)を印刷又は表示する際の出力態様をいう。」 (イ)「【0106】 この例では,図4に示した「プレビュー」のボタンB3を選択押下すると,蓄積データ選択画面P1からプレビュー画面P2へ表示画面が切り替わる。プレビュー画面P2によれば,画像データDINに基づく画像をプレビュー表示するための表示領域IIIが設けられ,表示領域IIIには,画像データDINに基づく,例えば,「A」の文字を印字するための画像が用紙の線画Pp(用紙サイズ=縦×横:画枠)と共に表示される。 【0107】 この例では,表示領域IIIには,左向き△印のアイコン用のボタンB8と,右向き△印のアイコン用のボタンB9とが表示される。例えば,ボタンB8を選択押下すると,プレビュー表示された画像のページがアップ方向にページ送りするようになされ,ボタンB9を選択押下すると,プレビュー表示された画像のページがダウン方向にページ送りするようになされる。このようにプレビュー表示するページの切り替えが行えるようになっている。 【0108】 表示領域IIIにはボタンB8,B9の他にページ表示領域IIIaが設けられる。ページ表示領域IIIaには「1/50」が表示される。「1/50」は,全50ページの画像データDINに基づく第1のページの画像を表示している場合である。これにより,プレビュー画面P2において,プレビューするページを選択することができる。なお,プレビュー表示は,図中の虫眼鏡マークM1をクリックすることで,画像を拡大できるようになっている。 【0109】 この例で,アイコンボタン用の表示領域IIは,表示領域IIIの左右端領域及び下方領域に割り当てられている。プレビュー画面P2の表示領域IIには,「基本設定」のアイコンA1,「出力設定」のアイコンA2,「応用設定」のアイコンA3,「用紙設定」のアイコンA4,「印刷面」のアイコンA5,「後処理設定」のアイコンA6及び,「画質調整」のアイコンA7が表示されている。 【0110】 アイコンA1の下位には,「ファイル名:文書1.doc」や,「部数:0001」等の基本設定の下位の設定項目a11,a12が表示される。アイコンA2の下位には,「ソート:ソートOff」や,「排紙面:フェースダウン」,「排紙順:順方向」等の出力設定の下位の設定項目a21~a23が表示される。アイコンA3の下位には,「小冊子:Off」や,「集約:2in1」,「綴じ代:Off」,「タンプ:Off」等の応用設定の下位の設定項目a31~a34が表示される。」 (ウ)図5 ウ 原査定の拒絶の理由の引用文献3として引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-48891号公報(以下,「引用文献3」という。)には,つぎの事項が記載されている。 (ア)「【0032】 例えば,印刷処理の実行の関連画像が記憶領域300bに記憶されていた場合に生成された要求取得パネルの遷移の一例を,以下具体的に説明する。図7は,ファイルのアイコンが作成日に応じて分類されて表示されるカレンダービュー形式の要求取得パネルを例示している。図7に例示される要求取得パネルにおいては,アイコンのクリックにより,印刷処理が実行されるように定義付けられている。 図8~10は,印刷処理の実行に伴い表示されるパネルの例示図である。また,図11は,印刷処理の実行に伴う処理フローを示す図である。 図7に示す要求取得パネルにおいてドキュメントファイルのアイコンがクリックされると,サーバ装置300は,図8のような印刷プレビューパネルをMFP200の表示部200cに表示させる。ここでは,印刷する文章の内容の確認や部数を設定することが可能である。また,図8の印刷プレビューパネルにおいてPrintsettingボタンをクリックすると図9のようなプリントセッティングパネルが表示される。ここでは,色,2面印刷,ステープル,ホールパンチの設定ができるようになっており,ここで,プリントセッティングの機能を設定することによってユーザが指定する資料をより所望する内容で印刷することが可能である。そして,図9のパネル中でPrintボタンを押下されると,MFP200により,選択されたドキュメントが印刷される。また,Printボタンの押下に伴い,表示部200cには,印刷していることを示しているパネル(図10)が表示される。 このように特定の動作に対応するパネルの遷移をモジュール化して要求取得パネル中の当該特定の動作に係る構成部品と関連付けることで,画面製作者は,より簡単にカスタマイズされた要求取得パネルを生成することができる。」 (イ)図8 (3)当審の判断 ア 本件補正発明と引用発明1との対比 (ア)引用発明1と本件補正発明とを対比すると,引用発明1の「デジタル複写機」,「文書作成アプリケーションソフトウェアから渡された複数部を1ジョブとするプリントデータ」,「1部あたりのページ数」,「プリントデータの総ページ数を,1部あたりのページ数で割ることにより部数を求め」ることは,それぞれ,本件補正発明の「印刷装置」,「1部のページ数を超える複数部数分の印刷データ」,「1部のページ数」,「印刷データのページ数」と,「1部のページ数とに基づき,印刷部数を表す1を超える値を求める」ことに相当する。 (イ)上記(2)ア(オ)の記載によれば,引用発明1の「文書作成アプリケ-ションソフトウェアは,クライアントコンピュータのCPUで実行されるものであり,当該「アプリケーションソフトウェア」により送信されるプリントデータを処理するのであるから,引用発明1の「デジタル複写機」が,異なる情報処理装置であるクライアントコンピュータからプリントデータを受信する受信手段を備えるものであるといえるから,本件補正発明と引用発明1とは,「1部のページ数を示す情報と,前記1部のページ数を超える複数部数分の印刷データとを,前記印刷装置とは異なる情報処理装置から受信する受信手段」を備えるものである点で一致する。 (ウ)上記(イ)に照らせば,引用発明1が,文書作成アプリケーションソフトウェアから渡された,「複数部を1ジョブとするプリントデータの総ページ数」,「1部あたりのページ数」は,それぞれ,受信手段が受信したものであるといえるから,本件補正発明と引用発明1とは,「受信手段の受信した」「印刷データのページ数」と,「受信手段の受信した」「情報に基づく1部のページ数」とに基づき,「印刷部数を表す1を超える値を求める手段」を備えるものである点で一致する。 イ 本件補正発明と引用発明1の一致点と相違点について 上記アの対比を踏まえると,本件補正発明と引用発明1とは,つぎの一致点で一致し,相違点において相違する。 <一致点> 「印刷装置であって, 1部のページ数を示す情報と,前記1部のページ数を超える複数部数分の印刷データとを,前記印刷装置とは異なる情報処理装置から受信する受信手段と, 前記受信手段の受信した前記印刷データのページ数と,前記受信手段の受信した前記情報に基づく1部のページ数とに基づき,印刷部数を表す1を超える値を求める手段と, を有することを特徴とする印刷装置」 <相違点> 本件補正発明が「前記受信手段の受信した前記1部のページ数を超える複数部数分の印刷データを処理する1つのジョブの印刷部数として,求められた前記1を超える値を表示する表示手段」を備えるのに対して,引用発明1は,表示手段を備えるか否かが不明である点。 ウ 相違点についての検討 (ア)上記(2)イ及びウのとおり,本願出願前において,「複写装置」の操作画面に「プレビュー画面」を表示する機能を備えるものであって,当該「プレビュー画面」において「印刷部数」を表示することは,例えば,引用文献2及び3に記載されているように周知の技術にすぎない。 (イ)そして,上記(2)ア(カ)に記載されているように,引用文献1の「クライアントコンピュータ10」上において実行される「文書作成アプリケーションソフトウェア」のプリント指示を行う「通常設定画面」において「複数のプリント指定」や「部毎にプリントを行うか否かの設定」などが行われても,この通常設定画面での複数部の設定値がその後プリンタドライバに渡されないものがある」こと,そのため,「通常設定画面上での複数部の設定値がプリンタドライバに設定情報として渡される場合には,プリント部数の設定入力枠には通常設定画面で設定した部数が表示されることになるが,複数部の設定値が渡されない場合には,ここで改めて部数を入力するようにユーザを促すための表示を行うようにしてもよい」旨記載されており,また,同(キ)に記載されているように「複数部のプリントを部ごとにプリントする指示が行われた場合に,本実施の形態では,プリンタドライバにより,文書作成アプリケーションソフトウェアから送られた複数部のプリントデータを各部ごとに1ジョブとする処理を行う」こと,また,「通常設定画面での情報がプリンタドライバに渡されない場合には,詳細設定画面からの情報,すなわち,ソートやステープル,またはNin1や両面プリントなどを実行する設定がなされている場合に,部ごとのプリント処理を行うものと判断するか,または,改めて部ごとの処理を実行するか否かをユーザに問い合わせるための画面表示を行って,ユーザから入力するようにしてもよい」ことなどが記載されているから,引用文献1には,「文書作成アプリケーションソフトウェア」から送られた「複数部数のプリントデータ」の部数を当該情報が伝達されない場合においても「データ受信側」で表示することの有用性が示唆されているものといえる。 (ウ)そして,周知技術のような「プレビュー画面」がこれから実行しようとするジョブの内容を表示するためのものであること,そして,引用発明1が「部ごとに区切られることなく複数部のプリントデータ」を一つのジョブとする「プリントデータ」に含まれる「部数」を求めて,当該部数でジョブを分割するものであることからすれば,このような分割されたジョブを表示するにあたって,そのプレビュー画面において「一つのジョブ」を単位として,当該求めた部数を表示することは,プレビュー画面の目的からして当業者が当然に想起し得ることというべきである。 (エ)そして,上記(2)ア(コ)のとおり,引用発明1のような「デジタル複写機」により「ジョブ分割処理」を行う実施形態においては,プリンタドライバにおいて表示される「詳細設定画面」の情報を「デジタル複写機」の操作画面に表示することとなることも技術常識に照らせば明らかというべきことである。 (オ)以上のことからすれば,引用発明1の「デジタル複写機」に,周知のプレビュー画面を表示する手段を備えるようにすることにより,一つのジョブを単位として分割する際に求めた印刷部数を表示するようにすることで,上記相違点に係る本件補正発明のように構成することは,当業者が周知技術に基づいて適宜なし得る程度のことというべきである。 (カ)本件補正発明の効果についても,当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとはいえない。 エ 小括 上記で検討したとおり,本件補正発明は,引用発明1に引用文献2及び3に記載の周知技術を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 オ 請求人の主張について 請求人は,「引用文献1に記載の発明は,「1部を1ジョブに分割する」と記載されているように,分割により生成された複数のジョブの各々を1部ごとの異なるジョブとして管理するものであり,転送されてきた複数部を含む1つのジョブを部ごとの複数のジョブに分割することに技術的意義を有している」こと,「引用文献1には,分割後の複数のジョブを再び,1つのジョブとして取り扱うことの記載はおろか,示唆すらされてい」ないこと,引用文献1に記載の発明における「分割後の複数のジョブは,ページ数および印刷部数の表示がジョブごとに行われることとなるため,分割後の各ジョブの表示画面における部数の表示は単に「1」と表示されるだけになることから,引用文献1に記載の発明に,引用文献2,3に記載の周知技術を組み合わせたとしても,それは,部ごとに分割された複数のジョブの各々に含まれる部数(即ち「1」)が表示されるだけであり,プリンタに転送されてきた1つのジョブに含まれる部数(即ち「3」)を表示することはできないことから,引用文献1に記載された発明は,分割後の複数のジョブをそれぞれ1つのジョブとして扱うものであり,引用文献2,3に記載の周知技術を組み合わせても,当業者は,本願発明の上記特徴,特に「前記受信手段の受信した前記1部のページ数を超える複数部数分の印刷データを処理する1つのジョブの印刷部数として,求められた前記1を超える値を表示する表示手段」を容易に想到することができない旨主張している。 しかしながら,引用発明は,「文書アプリケーションソフトウェア」から「複数部のプリントを実行するために1部のデータを複数連続させて1ジョブのデータとして出力されたプリントデータを,部ごとに分割して複数のジョブにする」ものであるところ,そのような「ジョブ」をプレビュー表示するにあたっては,一つのジョブを単位として印刷部数,プレビュー画面の表示をしようとすることは,プレビュー画面の目的からみて,当業者が当然想起し得ることというべきであることは,上記で検討したとおりであるから,請求人の主張は,採用することができない。 (4)独立特許要件についての検討のまとめ 以上検討したように,本件補正発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって,本件補正発明は,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。 4 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり,本件補正は,上記において検討したように,本件補正事項は特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものであって,本件補正発明は同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから,本件補正は,同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は,上記第2のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし29に係る発明は,令和1年8月27日に提出された手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載された事項により特定されるものであって,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記第2の1(1)アにおいて説示したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由の概要 本願発明に対する原査定の拒絶の理由は,本願発明は,その出願前に日本国内において,頒布された上記引用文献1に記載の発明並びに引用文献2及び3等に記載された周知技術に基づいて,出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をしたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 3 引用例及びその記載事項 原査定で引用された引用文献1ないし3記載の事項及び引用発明1は,それぞれ,上記第2の3(2)において説示し,認定したとおりである。 4 本願発明と引用発明との対比・判断 (1)本願発明は,前記第2の2で検討した本件補正発明から,受信手段が受信するものについて「1部のページ数」を「1部のページ数を示す情報」とする限定事項,「1部のページ数を超えるページ数の印刷データ」を「1部のページ数を超える複数部数分の印刷データ」とする限定事項,「印刷部数を求める手段」を,「印刷部数を表す1を超える値を求める手段」とする限定事項,「表示手段」が表示するものについて「求められた前記印刷部数」から,「受信手段の受信した前記1部のページ数を超える複数部数分の印刷データを処理する1つのジョブの印刷部数として,求められた前記1を超える値を表示する」ものとする限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の3に記載したとおり,引用発明1に引用文献2及び3に記載の周知技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明1に引用文献2及び3に記載の周知技術を適用して,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 上記で検討したとおり,本願発明は,その出願前に頒布された刊行物である引用文献1に記載の発明(引用発明1)に引用文献2及び3に記載の周知技術を適用して当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,上記結論のとおり審決する。

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2020-000096

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