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特許拒絶査定不服審判

2024-016447

誘電率測定装置、及び誘電率測定方法

審判番号
2024-016447
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-189597
請求日
2024年10月15日
審決日
2026年06月29日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】森田テック 株式会社
  • 【請求人代理人】鈴木 均
審判長/審判官
  • 審判長 濱野 隆
  • 審判官 道祖土 新吾
  • 審判官 谷垣 圭二
分類
P18 .121-Z (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第158条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-189597「誘電率測定装置、及び誘電率測定方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月25日出願公開、特開2022- 78723〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和2年11月13日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和6年 4月25日付け:拒絶理由通知書 同年 6月 5日 :意見書、手続補正書の提出 同年 8月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年 9月 3日 :原査定の謄本の送達) 同年10月15日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 本願発明について 1 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年10月15日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。 「 第1高さ及び第1横幅を有する平坦な出射面を有し、600MHz~110GHz、又は600MHz~145GHzの超広帯域特性を有する第1アンテナと、 前記第1高さ及び前記第1横幅を有する平坦な出射面を有し、前記第1アンテナとほぼ同一の超広帯域特性を有する第2アンテナと、 第2高さ及び第2横幅を有する平坦な面と所定の厚みを有する被試験試料と、 前記第1アンテナと前記第2アンテナのそれぞれの平坦な出射面を互いに対向するように平行に配置し、かつ前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間に前記被試験試料を配置し、前記第1アンテナと前記第2アンテナとのそれぞれの平坦な出射面と前記被試験試料の平坦な面とを互いに対向するように平行に配置する配置手段と、 前記第1アンテナから前記被試験試料及び前記第2アンテナに向かって、所定の周波数範囲の電磁波を出射し、前記第1アンテナからの反射波、前記第2アンテナからの透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成する測定手段と、 前記測定手段により生成されたSパラメータを取得するSパラメータ取得手段と、 前記Sパラメータに基づいて、当該被試験試料の誘電率特性を評価する評価手段と、を備え、 前記配置手段は、前記第1アンテナと前記被試験試料とを密接させ、かつ前記第2アンテナと前記被試験試料とを密接させ、前記第1高さよりも前記第2高さが大きく、かつ前記第1横幅よりも前記第2横幅が大きくなるという条件を満足させ、 前記測定手段は、平坦化した透過波特性を有する前記第1アンテナおよび第2アンテナからの反射波、透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成することを特徴とする誘電率測定装置。」 2 本願発明の分説 検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Cまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】を元に部材名を記入したものを掲載する。 <本願発明の分説> A 第1高さ及び第1横幅を有する平坦な出射面を有し、600MHz~110GHz、又は600MHz~145GHzの超広帯域特性を有する第1アンテナと、 前記第1高さ及び前記第1横幅を有する平坦な出射面を有し、前記第1アンテナとほぼ同一の超広帯域特性を有する第2アンテナと、 B1 第2高さ及び第2横幅を有する平坦な面と所定の厚みを有する被試験試料と、 B2 前記第1アンテナと前記第2アンテナのそれぞれの平坦な出射面を互いに対向するように平行に配置し、かつ前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間に前記被試験試料を配置し、前記第1アンテナと前記第2アンテナとのそれぞれの平坦な出射面と前記被試験試料の平坦な面とを互いに対向するように平行に配置する配置手段と、 C1 前記第1アンテナから前記被試験試料及び前記第2アンテナに向かって、所定の周波数範囲の電磁波を出射し、前記第1アンテナからの反射波、前記第2アンテナからの透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成する測定手段と、 C2 前記測定手段により生成されたSパラメータを取得するSパラメータ取得手段と、 C3 前記Sパラメータに基づいて、当該被試験試料の誘電率特性を評価する評価手段と、を備え、 B3 前記配置手段は、前記第1アンテナと前記被試験試料とを密接させ、かつ前記第2アンテナと前記被試験試料とを密接させ、前記第1高さよりも前記第2高さが大きく、かつ前記第1横幅よりも前記第2横幅が大きくなるという条件を満足させ、 C4 前記測定手段は、平坦化した透過波特性を有する前記第1アンテナおよび第2アンテナからの反射波、透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成することを特徴とする X 誘電率測定装置 <参考図> 【図1】 [図:0001438765000001.jpg] 3 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、目標となる物体や液体、生体などの誘電率を非接触で測定するのに好適な誘電率測定装置、誘電率測定方法、プログラム、及び記憶媒体に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、マイクロ波、ミリ波帯における物体(主として板状)の誘電率測定方法には、ホーンアンテナまたはホーンアンテナに誘電体レンズを用いたフリースペース法が知られている。 図10は、従来のフリースペース法による測定システムの概念図である。 図10に示すように、ホーンアンテナを用いたフリースペース法の場合、電波暗室1000において壁面からの反射がない環境で使用する必要があり、また、ホーンアンテナ1010から照射された電波(メインビーム1020とサイドローブ1030)が、被測定物1040以外の計測器、プラットホーム(試料架台)1050等からの反射等の影響が大きく、測定精度が低下するといた問題があった。」 「【図10】 [図:0001438765000002.jpg] 」 「 【0003】 このような問題を解決するために、ホーンアンテナに誘電体レンズを用いる手法が開発されている。 図11は、従来の誘電体レンズを用いたフリースペース法による測定システムの概念図である。図11に示す測定システムによれば、5組のホーンアンテナ1110と、誘電体レンズ1120および同軸導波管変換器1130の組み合わせにより、18GHz~110GHzに対応するものです。 この手法にあっては、電波を直径数cmほどのビームに絞り込むため、電波暗室のような環境が不要であり、計測器、プラットホーム等からの反射等の影響がないという利点がある。 しかしながら、ホーンアンテナ1110に誘電体レンズ1120を取り付けた系は、片側だけで数kgの重量があり、プラットホーム1140の剛性が必要となり、ビームを絞り込む作業もマイクロメータを使用して実施する必要があり、且つアジマス(方位角)及びエレベーション(仰角)調整機能、試料の方位角調整及び仰角調整機構1150を必要とするなど、設置、測定手順、使用方法が複雑となるといった問題がある。 また、誘電体レンズ1120が高額であるという問題がある。」 「【図11】 [図:0001438765000003.jpg] 」 「 【0004】 図12(a)(b)は、従来の誘電体レンズを用いたフリースペース法による測定システムの概念図である。図12に示す測定システムによれば、7組のホーンアンテナ1210と、誘電体レンズおよび同軸導波管変換器1220の組み合わせにより、18GHz~110GHzに対応するものである。」 「【図12】 [図:0001438765000004.jpg] 」 「 【0005】 図13は、従来の誘電体レンズを用いたフリースペース法による測定システムの概念図である。図13に示す測定システムによれば、6組のホーンアンテナ1310と、誘電体レンズ1320および同軸導波管変換器1330の組み合わせにより、2.6GHz~18GHzに対応するものである。」 「【図13】 [図:0001438765000005.jpg] 」 「 【0006】 ホーンアンテナを用いるフリースペース法の場合、広い周波数範囲をカバーするためには、ホーンアンテナのバンドごとに導波管を準備する必要がある。具体的には、図14に示すように、周波数範囲に対応した導波管を設置する必要がある。」 「【図14】 [図:0001438765000006.jpg] 」 「 【0011】 <従来技術の問題点> 従来のホーンアンテナ、またはホーンアンテナに誘電体レンズを組み合わせたフリースペース法による誘電率測定にあっては、遠方界での計測に由来する制約を受けている。このため、プラットホームを含めた測定系(治具)の寸法が大きく、重量も重いため、限られた研究室等での使用に限定されるといった問題があった。このため、例えば製造ラインでの検査工程に導入するのが困難であった。 また、ホーンアンテナに誘電体レンズを組み合わせた測定系(プラットホーム、アンテナ、誘電体レンズ)は大変高額であり、しかも、導波管のバンド毎に準備する必要があり、その金額はさらに高額となるため、このような測定システムを導入するには、導入費用が増大するといった問題がった。 導波管は周波数によりそのサイズが決定されるため、商品化されている製品の下限周波数は18GHzが最も低いものとなっている(図11、図12)。 図13に示すように、2.6GHz~18GHzに対応するシステムもあるが、プラットホーム、ホーンアンテナ1310、誘電体レンズ1320も大型となり、被測定試料も大きな材料を準備する必要があり、実際に使用できるケースは少ない。 以上のように、従来の測定システムであっては、マイクロ波帯600MHzからの板状資料の誘電率測定が困難であった。また、ミリ波帯においても、従来のホーンアンテナや導波管を何セットも交換して、バンド毎の測定が必要だった。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0019】 本発明の一実施形態は、上記に鑑みてなされたもので、その目的は、1対のアンテナカプラを用いて1回の測定により広帯域で被試験試料の誘電率を測定することが可能な構成を提供することにある。」 「 【0071】 <本実施形態の効果> 本発明は、アンテナカプラを利用したフリースペース法に属する発明であり、本実施形態では、被試験試料16とアンテナカプラとの距離を密着(0cm)から数cmとした近距離で測定することができる。 従来技術に用いられたホーンアンテナではバンドごとに分割されるという欠点を持っていた。 これに対して、本発明の本実施形態では、アンテナカプラの広帯域特性を利用して、アンテナカプラが例えば600MHz~18GHz、600MHz~67GHzを1つのアンテナカプラでカバーしていれば、この周波数範囲において、1回の測定により被試験試料16の誘電率を測定することが可能になる。 また、アンテナカプラが例えば600MHz~110GHzの超広帯域特性を有していれば、1回の測定により被試験試料16の誘電率を測定することが可能になる。 さらに、アンテナカプラが例えば600MHz~145GHzの超広帯域特性を有していれば、1回の測定により被試験試料16の誘電率を測定することが可能になる。」 「 【0075】 <本実施形態の態様例の作用、効果のまとめ> <第1態様> 本態様の誘電率測定装置1は、第1アンテナカプラ12と第2アンテナカプラ14のそれぞれの平坦な出射面を互いに対向するように並行に配置し、かつ第1アンテナカプラ12と第2アンテナカプラ14との間に被試験試料16を配置するプラットホーム10(配置手段)と、第1アンテナカプラ12から被試験試料16及び第2アンテナカプラ14に向かって、所定の周波数範囲の電磁波を出射し、第1アンテナカプラ12からの反射波、第2アンテナカプラ14からの透過波をそれぞれ測定して、反射波及び透過波に基づいてSパラメータを生成する計測器30(測定手段)と、計測器30により生成されたSパラメータを取得するパソコン50(Sパラメータ取得手段)と、Sパラメータに基づいて、当該被試験試料16の誘電率特性を評価するパソコン50(評価手段)と、を備えることを特徴とする。 本態様によれば、1対のアンテナカプラを用いて1回の測定により広帯域で被試験試料16の誘電率を測定することが可能な構成を提供することができる。」 「 【0077】 <第3態様> 本態様のプラットホーム10(配置手段)は、第1アンテナカプラ12と被試験試料16との間の第1間隔L1、第2アンテナカプラ14と被試験試料16との間の第2間隔L2に対して、0cmから数cmまでの距離をそれぞれ許容することを特徴とする。 本態様によれば、第1アンテナカプラ12と被試験試料16との間の第1間隔L1、第2アンテナカプラ14と被試験試料16との間の第2間隔L2に対して、0cmから数cmまでの距離をそれぞれ許容することで、被試験試料16の誘電率特性の評価精度を維持することができる。」 「 【0081】 <第7態様> 本態様の計測器30(測定手段)から出力される所定の周波数範囲の電磁波は、600MHzから110GHzまでの範囲の周波数、又は600MHzから145GHzまでの範囲の周波数を有することを特徴とする。 本態様によれば、計測器30から出力される所定の周波数範囲の電磁波は、600MHzから110GHzまでの範囲の周波数、又は600MHzから145GHzまでの範囲の周波数を有することで、計測器30により生成可能なSパラメータの有効な周波数範囲を600MHzから110GHz、又は600MHzから145GHzとすることができる。」 第3 審査段階における拒絶理由通知の概要について 令和6年4月25日付けで通知された、令和6年6月5日に提出された手続補正書により補正される前の請求項1、3~7、9に係る発明についての拒絶の理由4(進歩性欠如)の概要は、次のとおりである。 本願の請求項1、3~7、9に係る発明は、下記の引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献3.特開2017-223614号公報(主たる引用文献) 引用文献4.国際公開第2016/025569号(周知技術を示す文献) 引用文献5.米国特許第8629681号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献6.韓国公開特許第10-2014-0082376号公報(周知技術を示す 文献) 引用文献7.特開2000-28550号公報(周知技術を示す文献) 第4 当審の判断 1 当審の判断の概要について 当審において、引用文献3を主たる引用文献とする進歩性欠如の拒絶の理由について検討したところ、後述するとおり、本願発明は、引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると判断した。 また、この拒絶の理由は、前記第3に示した、令和6年4月25日付け拒絶理由通知における拒絶の理由4と実質的に同じである。 そして、審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においても、その効力を有するところ(特許法158条)、この拒絶の理由に対して、請求人(出願人)には意見を述べる機会が既に与えられたといえる。 なお、原査定においては、「…補正後の請求項1及び7に記載した事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内にないことが明らかであるので、補正後の請求項1及び7に係る発明、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~6に係る発明、並びに、請求項7を引用する請求項8に係る発明については、上記拒絶理由通知に記載した拒絶理由が解消されているか否かについての判断を行っていない。」として進歩性の判断を留保しており、前記第3において示した進歩性欠如の拒絶の理由が解消したと説示していない。 2 引用文献3の記載事項及び引用発明の認定 (1) 引用文献3に記載された事項 令和6年4月25日付けで通知された拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2017-223614号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(3)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。 ア 【0001】 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は反射伝送法における時間領域解析を用いた誘電率評価において冶具由来の雑音を含む反射波信号を補正するための技術に関する。 【背景技術】 【0002】 電磁波遮蔽材・吸収材の開発に必要な誘電率評価のための測定方法として反射伝送法が用いられている。 反射伝送法では試料に入射した電磁波の反射・伝送特性(Sパラメータ)から誘電率を導出する(非特許文献1)。」 イ 【0011】~【0014】、図13 「【0011】 試料を封入した治具のSパラメータを測定する(ステップS1)。 長さ2Lの同軸線路治具の中央に長さdの被測定試料が封入されている(図13(B))場合、伝送線路理論からSパラメータは次式で表される。 [図:0001438765000007.jpg] ここで、z=exp(-γd)、γ:試料領域の伝搬定数、γ0:空気領域の伝搬定数、Γ:は、試料面における反射係数である。 Γはγとγ0の関数であり、γ0は試料に依らない定数であり、γは試料の誘電率の関数なので、測定されたSパラメータを式(1)から(3)に代入し、誘電率について解くことで、試料の誘電率を求めることができる。」 「【図13】 [図:0001438765000008.jpg] 」 「【0012】 実際のSパラメータの測定においては、治具の接続部における多重反射の影響が表れる。 しかし、式(1)から(3)の導出では反射がゼロと仮定されているため、多重反射はSパラメータから誘電率を解析する際の誤差となり、その結果として誘電率の周波数特性にリップルが表れる。 多重反射の影響を除去するために、既存の時間領域解析法(ゲーティング法)では以下のように解析する。 例えば測定される反射量をFFTで時間領域波形にすると図8のRaw dataとなり、試料面における反射に起因するピーク(図8のまる2、以下同じ)のほかに、その両端に治具の接続部における反射に起因するピークが表れる(まる1、まる3)。 ゲーティング法では、ピーク(まる2)のまわりの有限の幅の時間領域波形だけ残し、その外側をゼロとすることで、治具の接続部における反射の影響を除去する(ステップS2)。 【0013】 ゲーティング法で得られた時間領域波形を逆FFTで周波数領域波形に戻し、そのSパラメータから式(1)から(3)に従って誘電率を求めると図4の波波形を得る(ステップS3)。 多重反射の影響は除去されたものの、ゲーティングを行うことで時間領域波形に不連続な変化が生じることに由来するリップルが誘電率の周波数特性に表れている。 【0014】 本発明方法では時間領域波形をゲーティング領域の外側に延伸し、不連続な変化をなくすことで、誘電率の周波数特性においてこのリップルが生じない誘電率測定・解析を実現する。 まず、ゲーティング法で得られた振動する誘電率の中央値を誘電率の初期推定値とする(図4)(ステップS4)。 誘電率の初期推定値を式(1)から(3)に代入すると、治具の接続部で反射がゼロである理想的な同軸線路治具(長さ2L)の中央に長さdの被測定試料が封入された場合のSパラメータが計算される。」 ウ 【0032】~【0033】、図7 「【実施例2】 【0032】 次にミリ波帯の材料計測法として利用されるフリースペース法において有効な通常のゲーティング操作に代えて、本発明を適用した場合の実施例を説明する。 【0033】 この方法では図7のようにアンテナを2つ対向し、その間に試料を置いて電磁波を入射させる。 測定したSパラメータから試料の誘電率を算出する時にアンテナ間のレンズアンテナによる多重反射を除去するのに時間領域解析が利用できる。」 「【図7】 [図:0001438765000009.jpg] 」 (2) 引用文献3の記載から読み取れる事項の認定 ア 認定事項1 引用文献3の段落【0002】の「電磁波遮蔽材・吸収材の開発に必要な誘電率評価のための測定方法として反射伝送法が用いられている。」との記載から、引用文献3においては、「電磁波遮蔽材・吸収材」を試料として想定しており、その誘電率評価をしているものと認められる。 そして、「電磁波遮蔽材・吸収材」を試料として誘電率評価を行うには、 【図7】の「試料2」に示されるように、試料を所定の高さ、横幅を有する平坦な面と厚みを有するものにした上で測定を行うものであると認められる(認定事項1)。 イ 認定事項2 引用文献3の段落【0033】及び図7の開示からみて、送信アンテナと受信アンテナを対向するように配置し、送信アンテナと受信アンテナとの間に試料を配置した装置が記載されているものと認められる(認定事項2)。 (3) 引用発明の認定 前記(2)において認定した事項及び前記(1)に摘記した引用文献3の記載事項を総合すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「 反射伝送法による誘電率評価のためのものであって、(【0001】) 試料としては、電磁波遮蔽材・吸収材が想定され、試料を所定の高さ、横幅を有する平坦な面と厚みを有するものとし、(認定事項1) Sパラメータを測定し、測定されたSパラメータを式(1)から(3)に代入し、誘電率について解くことで、試料の誘電率を求めるためのものであって、(【0011】) [図:0001438765000010.jpg] 送信アンテナと受信アンテナを対向するように配置し、送信アンテナと受信アンテナとの間に試料を配置し、(認定事項2) 試料に電磁波を入射し、測定したSパラメータから試料の誘電率を算出する、(【0033】) 装置。(認定事項2)」 3 引用文献4~7、10~14の記載事項及び技術常識1~6の認定 (1) 引用文献4~7、10~14の記載事項 ア 引用文献4に記載された事項 令和6年4月25日付けで通知された拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である国際公開第2016/025569号(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。なお、括弧内に当合議体が作成した日本語訳を示した。また、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。 (ア) [0002] 「[0002] The invention generally relates to microwave sensors for detecting moisture content in agricultural materials.」 ([0002] 本発明は一般的に、農産物中の水分含有量を検出するためのマイクロ波センサーに関する。) (イ) [0005] 「[0005] Research on sensing moisture content in grain by microwave measurements has indicated two important advantages for microwave frequencies. The inconsistency of moisture measurements by instruments operating in the low frequency range may be due, in part, to the influence of ionic conduction on the measured dielectric properties at high moisture levels. At microwave frequencies, the influence of ionic conduction is negligible, and better correlations between permittivity and moisture content can be expected.」 ([0005] 穀物中の水分含有量をマイクロ波測定によって検出する研究は、マイクロ波周波数には二つの重要な利点があることを示してきた。低周波数帯で動作する機器による水分測定の不一致は、高い水分レベルにおいて測定された誘電特性に対するイオン伝導の影響によるところが、少なくとも一部はあるかもしれない。マイクロ波周波数では、イオン伝導の影響は無視でき、誘電率と水分含有量との間により良い相関が期待できる。) (ウ) [0006]、Fig.1 「[0006] In U.S Patent 8,629,681,Trabelsi et al provide a method that appeared to solve some of the problems associated with the measurement of density and moisture content of bulk materials. Fig. 1 shows part of the basic concept of the microwave measurement system 10 proposed by Trabelsi et al, which includes a rectangular sample holder 20 that is placed between two directional antennas. One antenna acts as a transmit (Tx) antenna 30 and the other acts as a receive (Rx) antenna 40. The phase and attenuation of the microwave beam as it traverses sample holder 20 is measured with and without peanuts in sample holder20. Trabelsi et al appear to teach that a relative change in the phase and attenuation of the microwave beam that traverses sample holder 20 is used to estimate the moisture content of the peanuts. A correction is then applied to correct for the temperature of the peanut sample.」 ([0006] 米国特許第8,629,681号において、Trabelsiらは、バルク材料の密度及び水分量の測定に関連するいくつかの問題を解決するであろう方法を提供する。図1はTrabelsiらによって提案されたマイクロ波測定システム10の基本的な概念の一部を示しており、これは、2本の指向性アンテナの間に配置される矩形のサンプルホルダー20が含まれる。一方のアンテナは送信(Tx)アンテナ30として機能し、他方は受信(Rx)アンテナ40として作用する。マイクロ波ビームがサンプルホルダー20を通過する際のマイクロ波ビームの位相及び減衰は、サンプルホルダー20にピーナッツが入っている場合とそうでない場合の両方で測定される。Trabelsiらは、サンプルホルダー20を通過するマイクロ波ビームの位相及び減衰の相対的変化がピーナッツの水分含有量を推定するために使用されると教示しているように思われる。その後、ピーナッツサンプルの温度を補正するためも補正が適用される。) 「Fig.1 [図:0001438765000011.jpg] 」 イ 引用文献5に記載された事項 令和6年4月25日付けで通知された拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である米国特許第8629681号明細書(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。 (ア) 1欄9~16行 「 This invention relates to a microwave sensor operating at a single frequency for instantaneous and non destructive determination of bulk density and moisture content in any granular or particulate material, especially in peanuts, grain and other seed. A microwave circuit and a novel phase-correction algorithm for the computation of dielectric properties from measurement of the attenuation and phase shift of a microwave signal are also disclosed.」 (本発明は、単一周波数で動作するマイクロ波センサーに関し、任意の粒状又は粒子状材料、特にピーナッツ、穀物及び他の種子におけるバルク密度及び水分含有量の即時かつ非破壊的な測定に用いられる。マイクロ波信号の減衰及び位相シフトの測定から誘電特性を計算するためのマイクロ波回路及び新規の位相補正アルゴリズムも開示されている。) (イ) 6欄1~13行、Figure1 「FIG.1 shows the diagram of the microwave sensor which is composed of the following elements: 1―Microwave source 2―Isolator 3―Power splitter 4―Transmitting antenna 5―Receiving antenna 6―Temperature measurement device 7―Mixer 8―Analog-to-digital converter 9―Data acquisition and computing unit 10―Sensor display 11―Sample」 (図1は、以下の要素から構成されるマイクロ波センサーの図を示している: 1 ― マイクロ波源 2 ― アイソレータ 3 ― パワースプリッタ 4 ― 送信アンテナ 5 ― 受信アンテナ 6 ― 温度測定装置 7 ― ミキサ 8 ― アナログ‐デジタル変換器 9 ― データ取得及び計算ユニット 10 ― センサー表示部 11 ― サンプル) 「Figure1 [図:0001438765000012.jpg] 」 (ウ) 6欄下から7行~7欄8行 「Accuracy of attenuation measurements is affected by diffraction at the edges of the sample 11, multiple reflections, and scattering by the granules or particles. Diffraction at the edges of the sample can be minimized by selecting the transverse dimensions of the sample about three times the E-plane 3 dB beamwidth of the antenna(Chen et al., 2004. Microwave electronics. Wiley, West Sussex, England, 537 pp). Multiple reflections occur inside the sample, between the sample interfaces and the antennas and between the antennas through the sample. Effect of multiple reflections can be minimized by selecting a sample thickness (d) that ensures a minimum of 8 to 10 dB one-way attenuation and selecting the best matching condition between the two antennas 4 and 5. It was also observed that a minimum of a one-wavelength distance between each antenna 4 and 5 and the sample 11 is required.」 (減衰測定の精度は、サンプル11の端部における回折、多重反射、そして粒又は粒子による散乱の影響を受ける。サンプルの端部での回折は、サンプルの横方向寸法をアンテナのE面3 dBビーム幅のおよそ3倍に選択することで最小化できる(Chen et al., 2004. Microwave electronics. Wiley, West Sussex, England, 537 pp)。多重反射は、サンプル内部、サンプル界面とアンテナとの間、及びサンプルを介したアンテナ間で発生する。多重反射の影響は、一方向で最低 8~10 dB の減衰を確保するサンプル厚さ (d) を選択し、さらに二つのアンテナ4及び5の間で最良の整合条件を選択することで最小化できる。また、各アンテナ4及び5とサンプル11との間には、最低でも一波長の距離が必要であることも観察された。) (エ) 10欄11~30行、Figure7、8 「The microwave sensor 20 of the present is housed in an aluminum cabinet of rectangular cross-section composed of two parts, a base cabinet and a cabinet cover. The base cabinet, which is a closed rectangular box about 18 inches wide, 12 inches deep, and 5 inches high, houses the microwave circuit components, fused power switch, power supply, cooling fan, and analog-to-digital interface, and serves as a mounting platform for the transmitting and receiving antennas, which face each other in alignment with L-shaped mounting brackets spaced 11 1/2 inches apart above the base cabinet (FIG. 7).」 (本発明のマイクロ波センサー20は、二つの部分、すなわちベースキャビネットとキャビネットカバーから成る矩形断面のアルミニウム製キャビネット内に収容されている。ベースキャビネットは、幅約18インチ、奥行12インチ、高さ5インチの閉じた矩形ボックスであり、マイクロ波回路部品、ヒューズ付き電源スイッチ、電源、冷却ファン、及びアナログ‐デジタルインターフェースを収納し、送信アンテナ及び受信アンテナを取り付けるためのプラットフォームとしても機能する。これらのアンテナは、ベースキャビネットの上方でL字型取り付けブラケットによって11 1/2インチの間隔を保って互いに向き合うように配置されている(図7)。) 「Figure7 [図:0001438765000013.jpg] 」 「The cabinet cover consists of a four-sided rectangular aluminum box, 18 inches wide, 12 inches deep and 10 inches high with an open bottom, which rests on the base cabinet with end plates overlapping the base cabinet to facilitate mechanical attachment. The top of the cabinet cover consists of a 1/2-inch polyvinylchloride (PVC) plate with a 5 1/4 by 8 3/4 inch opening to accept a sample holding bucket, which is lowered into the chamber between the two antennas to place the sample in position between the antennas for the measurement (FIG. 8).」 (キャビネットカバーは、底が開いた幅18インチ、奥行12インチ、高さ10インチの四面の矩形アルミニウムボックスで構成され、端板がベースキャビネットにかぶさる形でベースキャビネット上に載せられ、機械的な取り付けを容易にしている。キャビネットカバーの上面は、5 1/4× 8 3/4インチの開口部を有する1/2インチ厚の塩化ビニル(PVC)板で構成されており、この開口部にはサンプル保持用バケットが挿入される。このバケットは、二つのアンテナの間のチャンバー内に下ろされ、測定のためにサンプルをアンテナ間の位置に配置する(図8)。」 「Figure8 [図:0001438765000014.jpg] 」 ウ 引用文献6に記載された事項 令和6年4月25日付けで通知された拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である韓国公開特許第10-2014-0082376号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。 (ア) [0089]、図3 「 [図:0001438765000015.jpg] 」 ([0089] 図3は、本発明による穀物の含水率測定のために使用されたマイクロ波送受信測定装置の構成図である。) 「 [図:0001438765000016.jpg] 」 (図中のハングル「マイクロ波送受信装置の構成図」) (イ) [0090]~[0092] 「 [図:0001438765000017.jpg] 」 ([0090] 本発明では、Xバンドの10.5 GHz と Sバンドの2.38 GHz 周波数を利用して穀物(grain)の含水量をより簡単に測定し、予測可能な含水率測定のためのマイクロ波送受信測定装置を設計、製作した。 [0091] 穀物の含水率測定に使用されたマイクロ波送受信測定装置(水分測定装置)は、発振器(oscillator)(10)、アイソレータ(isolator)(20)、パッチアレイアンテナ(patch array antenna)(30a, 30b)、サンプルホルダー(sample holder)(40)、検波器(detector)(50)及びデジタル電圧測定器(voltmeter)(54)で構成される。 [0092] 二つの周波数を使用してマイクロ波減衰を利用した穀物の含水率測定のためのマイクロ波送受信装置は、Sバンドの 2.38 GHz と Xバンドの 10.5 GHz の二つの周波数を使用して発振・オシレーションし、送信パッチアレイアンテナを通して穀物が満たされたサンプルホルダーを透過させてRF信号を送信する送信部;マイクロ波送受信パッチアレイアンテナの間に当該穀物試料が満たされるサンプルホルダー;受信パッチアレイアンテナを通して入力されたRF信号をDC信号に検波し、減衰される信号を検出してデジタル電圧を測定する受信部を含み、当該サンプルホルダー内の同一の穀物試料が、同一の含水率であってもバルク密度によってマイクロ波の減衰が異なって現れるため、マイクロ波透過特性を利用した含水率測定装置において、当該受信部の出力電圧と含水率の関係から推定し、穀物(grain)の含水率を決定して水分を測定することを特徴とする。) (ウ) [0100]~[0101] 「 [図:0001438765000018.jpg] 」 ([0100] サンプルホルダー(40)の材料は、厚さが 0.4 cm のアクリルを使用し、幅は電波が透過する際に発生するパッチアンテナの漏洩を最小化するために、パッチアンテナの横サイズの2倍以上とし、実験測定を行った。サンプルホルダー(40)の大きさは 4.5 × 12.4 × 15.2 cm として製作した。 [0101] アンテナ(30a, 30b)は、従来のホーンアンテナ(horn antenna)の大きさと体積を減少させたパッチアンテナを使用して、穀物の含水率を測定することが可能であった。) (エ) [0158]~[0159] 「 [図:0001438765000019.jpg] 」 ([0158] 本発明では、S-band の 2.38 GHz と X-band の 10.5 GHz の二つの周波数帯を利用した水分測定装置システムを設計、製作し、穀物の水分含有量を測定可能とした。S-band の 2.38 GHz と X-band の 10.5 GHz で水分含有量を測定し、二つの周波数帯でシステムの構成は同一であり、違いは、S-band の 2.38 GHz では VCO に増幅素子を追加して出力電力を高くしたのに対し、X-band の 10.5 GHz では誘電体共振発振器(10)を使用して測定した点であり、また、S-band の 2.38 GHz ではアンテナを単一で製作したのに対し、X-band の 10.5 GHz ではパッチアレイアンテナ(30a, 30b)を製作して測定した。アイソレータ(isolator)(20)は、アイソレーションが 20 dB で最大 VSWR が 1.25 の RADITEK 社のアイソレータモジュールを使用し、送信アンテナは周辺信号の影響を最小化するために 10~11 dB の利得を持つパッチアンテナを使用した。サンプルホルダー(40)の材料は厚さ 0.4 cm のアクリルを使用し、幅は電波が透過するときに発生するパッチアンテナの漏洩を最小化するためにパッチアンテナの横サイズの2倍以上として実験測定を行った。 [0159] X-band におけるアンテナ間距離を 6.2 cm とし、S-band におけるアンテナ間距離を 7 cm に固定し、出力電圧を 0.6 V に固定して水分測定実験を行った。サンプルホルダー(sample holder)(40)の大きさは 4.5 × 12.4 × 15.2 cm で製作した。) エ 引用文献7に記載された事項 令和6年4月25日付けで通知された拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2000-28550号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。 (ア) 【0003】 「【0003】スラッシュ水素のような極低温流体の密度を計測するやり方として、その極低温流体中にマイクロ波をアンテナから導入し、極低温流体を通過したマイクロ波を他のアンテナで受け、その間におけるマイクロ波の位相変化からその極低温流体の誘電率を測定し、得られた誘電率から密度を求める方法がある。」 (イ) 【0006】~【0010】、図6 「【0006】マイクロ波を極低温流体中に導入したり、極低温流体中を通過したマイクロ波を受けるのに従来は図6に示すような導波管の先にホーンアンテナを付けたものが使われていた。マイクロ波は、導波管の内面のマイクロ波反射面の間を通って導かれ、ホーンアンテナから出て極低温流体中を通ったのち、他のホーンアンテナから入って導波管の内面のマイクロ波反射面の間を通って、測定器具へと導かれる。」 「【図6】 [図:0001438765000020.jpg] 」 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】このように、導波管に付けたホーンアンテナを使ってマイクロ波を極低温流体中に導き、その密度を計測する従来の装置では、導波管が比較的細い管であるため、極低温流体が含有している固体のために流動性が悪い場合、極低温流体が細い導波管中に充分に入って行かない場合が生じた。このように導波管中への極低温流体の入り込みにむらがあると、先に示した数式中のマイクロ波光路長Lが変化し、これが原因で測定された誘電率に誤差を生ずるという問題があった。 【0008】そこで本発明は、スラッシュ水素等極低温流体内にマイクロ波を導入して同極低温流体の誘電率を測定し、得られた誘電率を基に同極低温流体の密度を計測する密度計測装置において、極低温流体内にマイクロ波を導入するアンテナにおける光路長の変化により計測結果に誤差が生ずるのを防止可能にした極低温流体の密度計測装置を提供することを課題としている。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決するため、誘電率計測用のマイクロ波を同軸ケーブル及び前記極低温流体中に浸漬された平板アンテナ(パッチアンテナ)を介して前記極低温流体中に導入するように構成した極低温流体の密度計測装置を提供する。 【0010】本発明の計測装置によれば、極低温流体中にマイクロ波を導入するのに同軸ケーブルと平板アンテナを使用しているので、極低温流体の流動状態が悪い場合もマイクロ波光路長は平板アンテナ間の間隔で常に一定しており、従来の導波管とホーンアンテナを用いたもののように極低温流体の流動状態によってマイクロ波光路長が変化するような不具合が生じない。」 (ウ) 【0018】~【0020】、図1 「【0018】(第1実施形態)まず図1に示す第1実施形態による装置について説明する。図1において、1はスラッシュ水素3中に浸漬された一対のパッチアンテナ(平板アンテナ)で、2はパッチアンテナ1へマイクロ波を導く同軸ケーブルである。」 「【図1】 [図:0001438765000021.jpg] 」 「【0019】一方の同軸ケーブル2によって導かれたマイクロ波は、一方のパッチアンテナ1からスラッシュ水素3を介して他方のパッチアンテナ1へ伝えられ、他方の同軸ケーブル2を介して図示していないネットワークアナライザ等の計測器に導かれて、一対のパッチアンテナ1の間のスラッシュ水素3中を伝わる間に生じた位相変化が測定される。計測されたマイクロ波の位相差から前記したようにスラッシュ水素の誘電率が得られ、その誘電率から密度が知られる。 【0020】このように構成したパッチアンテナ1と同軸ケーブル2を用いてマイクロ波をスラッシュ水素中を通すようにすると、スラッシュ水素の流動状態が悪い場合もスラッシュ水素はパッチアンテナ1の間に常に存在しうるので、従来のホーンアンテナを用いた装置のように、マイクロ波光路長に変化を生じて誤差の原因となるような事がない。」 オ 引用文献10に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2019-97147号公報(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。 (ア) 【0001】~【0008】、図27(a)~(c) 「【0001】 本発明は、デジタル変調機器の測定に好適なアンテナ装置、アンテナシステム、及び計測システムに関する。 【背景技術】 【0002】 近年、携帯電話機やスマートフォン等の移動体端末として、デジタル変調機器が普及しており、これらの被測定物に対して接近又は密着して、電波の送信又は受信を行い、被測定物の高周波に対する諸特性を測定するためにカプラアンテナが利用されている。 このよう用途のカプラアンテナにあっては、測定対象となる周波数帯に対応するために、平板状の誘電体基板の一面にエレメントのパターンを複数形成したパッチアンテナを採用していた。 【0003】 例えば、このような従来のパッチアンテナの前面にホーンを取り付けたホーンアンテナが知られている。このようなホーンアンテナに対して、3種類の測定を行った結果を図27(a)~(c)に示す。 図27(a)はホーンアンテナを自由空間に配置した際の反射減衰量特性(リターンロス)を示すグラフ図である。 図27(b)は1対のホーンアンテナ同士を対向させ、結合距離0mmで結合した場合に測定された、カプラ結合特性(通過振幅特性)を示すグラフ図である。 カプラ結合特性(通過振幅特性)を測定した場合、目的とする周波数帯(23GHz~29GHz)において、急峻な波形の乱れとして、例えば- 30db以上のレベル変動が不規則に発生している。」 「【図27】 [図:0001438765000022.jpg] 」 「…(中略)… 【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、帯域内での通過振幅特性の乱れや、全反射による帯域内での反射減衰量特性の乱れの発生を抑制することができ、且つ遮断性能を向上することができ、さらに良好なEVM値も得ることができる。」 (イ) 【0016】、図1~4 「【0016】 <コネクタ> 図1乃至図4に示すように、コネクタ50は、コネクタ装着穴22に内部空間8から外側に向けて装着され、内端部56aが内部空間8内に突出しない状態で露出配置された導電性のコネクタ本体51と、該コネクタ本体の中心部をy軸方向に貫通して配置され、先端部60aをコネクタ本体の内端部56aから内部空間8内に所定長Lだけ突出させた中心導体60と、内部空間8内に突出した中心導体の先端部60aから構成され、該先端部の突出長L(図4)を特定の周波数帯に適合させることにより内部空間8内に中心導体からの電波を輻射する輻射器54bと、を備えている。コネクタ本体51の一端外周には雄螺子が形成されている。コネクタ本体と中心導体との関係は、絶縁材料を介して一体化されている。 なお、上述したように輻射器54bが電波を輻射することとして説明したが、これは送信時の作用であり、受信時には輻射器54bが電波を吸収(受電)することとする。」 「【図1】 [図:0001438765000023.jpg] 」 「【図2】 [図:0001438765000024.jpg] 」 「【図3】 [図:0001438765000025.jpg] 」 「【図4】 [図:0001438765000026.jpg] 」 (ウ) 【0030】~【0032】、図12(a)、(b) 「【0030】 <アンテナシステム、及び計測システム> 図12(a)は本発明の一実施形態に係るアンテナ装置を用いたアンテナシステム、及び計測システムを示すブロック図、図12(b)は当該計測システムの校正に用いるキャリブレーションキットを示す斜視図である。 図12(a)に示すアンテナシステム300は、アンテナ装置として、直線偏波カプラ1A、円偏波カプラ1B、直線偏波高利得高アイソレーションカプラ1C、円偏波高利得高アイソレーションカプラ1Dの何れか1つを1対備え、各アンテナ装置を第1アンテナ装置301及び第2アンテナ装置303とし、第1アンテナ装置301から放射された電波を、第1アンテナ装置301の放射方向に対向して配置された第2アンテナ装置303により受信する。」 「【図12】 [図:0001438765000027.jpg] 」 「【0031】 計測システム310は、ネットワークアナライザ305、モニタ313を備えており、ネットワークアナライザ305の端子P1と第1アンテナ装置301のコネクタとの間に同軸ケーブル307を接続し、端子P2と第2アンテナ装置303のコネクタとの間に同軸ケーブル309を接続している。 さらに、ネットワークアナライザ305のモニタ端子305mとモニタ313の端子313mとの間にモニタケーブル311を接続している。なお、ネットワークアナライザ305には、例えばアンリツ株式会社製のMS46322Bを用いている。 アンテナ装置は、被測定物に対して近接(密着)して配置しておき、例えば被測定物から放射される電波を測定するために用いる。被測定物としては、携帯電話器、モバイル端末等の電磁波を発生するものを対象としており、例えば、23GHz~29GHzの周波数帯を利用する次世代携帯電話(5G)を対象としている。 計測システム310は、アンテナシステム300に備えられた第1アンテナ装置301と第2アンテナ装置303との間の結合特性、反射減衰量特性を測定することに適している。 【0032】 このように、アンテナ装置1は被測定物に対して所望の位置に配置、または密接配置され、被測定物から放射される電波を受信する。帯域内での通過振幅特性の乱れや、全反射による帯域内での反射減衰量特性の乱れの発生を抑制されていることから、良好なEVM値を得ることができる。 また、アンテナ装置1は、被測定物に対して所望の位置に配置、または密接して使用され、被測定物に電波を放射する。帯域内での通過振幅特性の乱れや、全反射による帯域内での反射減衰量特性の乱れの発生を抑制せれていることから、被測定物に良好な電波を放射することができる。 また、第1アンテナ装置301から放射された電波を、第1アンテナ装置301の放射方向に対向して配置された第2アンテナ装置303により受信することで、帯域内での通過振幅特性の乱れや、全反射による帯域内での反射減衰量特性の乱れの発生を抑制することができ、良好なEVM値も得ることができる。 さらに、第1アンテナ装置301と第2アンテナ装置303との間に、被測定物を配置することで、被測定物から放射される電波、又は、被測定物で受信された場合に、被測定物による影響度合いを測定することができる。」 カ 引用文献11に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願日前にウェイバックマシンに保存されたウェブサイトのサブページである「ミリ波帯高速無線通信の拡大を牽引する材料計測技術を開発」、プレスリリース、産業技術総合研究所ホームページ(https://web.archive.org/web/20190527122929/https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2019/pr20190117/pr20190117.html/参照、2019年5月27日にウェイバックマシンに保存。以下「引用文献11」という。)には、次の記載がある。 「ミリ波帯高速無線通信の拡大を牽引する材料計測技術を開発 -170 GHzまでの超広帯域で高精度な誘電率測定を実現- ポイント ・エレクトロニクス材料の誘電率を10 GHz~170 GHzの超広帯域にわたって測定する技術を実現 ・極細同軸線路で給電する共振器と誘電率を厳密に決定できる電磁界解析アルゴリズムを開発 ・ミリ波帯利用による次世代無線通信や車載レーダーなどの先端技術開発へ貢献 概要 国立研究開発法人産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)物理計測標準研究部門【研究部門長 藤間一郎】電磁気計測研究グループ 加藤 悠人 研究員、堀部 雅弘 研究グループ長は、高周波回路の実装用基板などに用いる低損失のエレクトロニクス材料の誘電率を170 GHzまでの超広帯域にわたって高精度に測定する技術を開発した。 近年、データ通信量の増大にともない、高速大容量の無線通信を可能にする30 GHz超のミリ波帯電磁波の利用が急速に拡大している。ミリ波帯車載レーダーなど通信以外の分野にも利用が拡大する一方で、動作周波数のさらなる高周波化が進められており、4K/8K非圧縮映像の放送素材伝送システムなどでは、大容量通信への要求から100 GHz以上の周波数帯の利用も検討されている。 電磁波の伝搬損失が低い低損失材料は高周波回路の実装用基板として利用されており、その誘電率は回路設計に不可欠なパラメーターである。しかしながらこれまで、100 GHz以上の周波数帯で低損失材料の誘電率を高精度に計測する技術は確立されていなかった。今回、170 GHzまでの信号を給電できる極細線の同軸励振構造と、誘電率を厳密に決定できる電磁界解析アルゴリズムを開発し、これまで難しかった110 GHzから170 GHz帯を含む超広帯域での低損失材料の誘電率の、平衡型円板共振器法による高精度計測技術を実現した。この技術により、高速無線通信などでのミリ波帯のさらなる利用が促進されると期待される。この技術の詳細は、2019年1月11日(米国東部標準時間)にIEEE Transactions on Instrumentation and Measurementに掲載された。」 キ 引用文献12に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願日前にウェイバックマシンに保存されたウェブサイトのサブページである「5Gアンテナカプラ」の製品紹介ページ、森田テック株式会社ホームページ(http://web.archive.org/web/20201031193429/https://morita-tech.co.jp/5g_solution/fa/参照、2020年10月31日にウェイバックマシンに保存。以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。 「24GHz - 43.5GHzアンテナカプラ(FA-290/FA-291、FA-430/FA-431) 測定物にカプラを密接して使われることに重点をおいた、スタンダードサイズの第5世代移動通信システム用ミリ波高性能アンテナカプラです。結合特性の平坦化と全反射時のVSWRの乱れを吸収することにより、EVM(RMS)値を改善し、OTA測定に威力を発揮します。」 ク 引用文献13に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願日前に発行された文献であるBen Davis等,Complex Permittivity of Planar Building Materials Measured With an Ultra-Wideband Free-Field Antenna Measurement System, Journal of Research of the National Institute of Standards and Technology, 2007, Vol.112, No.1, p.67-73(以下「引用文献13」という。)には、次の記載がある。 「2. The Measurement System Figure 1 is a diagram of the laboratory-based measurement system. It consists of an aluminum ground plane, two TEM half-horn antennas (ground-plane mounted), several material samples, two precision microwave interconnecting cables, and a two-port Vector Network Analyzer (VNA). Four S-parameters (S11, S21, S12, S22) are measured at 1601 stepped frequency points in the range of 30 MHz to 6 GHz. For measurements of plywood, gypsum, and cross-linked polystyrene, the 7.3 m × 7.3 m aluminum ground-plane system of the NIST cone and ground-plane time-domain range was used. Measurements of the concrete slab were made on a smaller 3.66 m × 3.66 m aluminum ground-plane. Sample thicknesses were measured with precision calipers at various points around the sample and are accurate to within ±0.1 cm.」 (2. 測定システム 図1は、実験室ベースの測定システムの図である。それは、アルミニウム製グラウンドプレーン、2つのTEMハーフホーンアンテナ(グラウンドプレーン上に取り付けられた)、複数の材料サンプル、2本の高精度マイクロ波接続ケーブル、そして2ポートベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)から構成されている。4つのSパラメータ(S11, S21, S12, S22)が、30 MHz から 6 GHz の範囲において 1601 のステップ化された周波数点で測定される。合板、石膏ボード、及び架橋ポリスチレンの測定には、NIST コーン & グラウンドプレーン時間領域レンジの 7.3 m × 7.3 m アルミニウム・グラウンドプレーン・システムが使用された。コンクリートスラブの測定は、より小さい 3.66 m × 3.66 m アルミニウム・グラウンドプレーン上で行われた。サンプル厚さは、サンプルの周囲のさまざまな場所で精密ノギスによって測定され、±0.1 cm の精度を有する。) 「 [図:0001438765000028.jpg] 」 ケ 引用文献14に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である国際公開第2020/031364号(以下「引用文献14」という。)には、次の記載がある。 (ア) [0001]~[0006] 「技術分野 [0001] 本発明は、アンテナ装置に関し、特に第5世代移動体通信にて使用される周波数600MHz~6GHz(通称サブ6)において、他の無線装置と相互に通信し、他の無線装置に関する通信試験を実施することが可能なアンテナ装置に関する。 背景技術 [0002] 近年、携帯電話機やスマートフォン等の移動体通信端末においては、電波の送受信周波数が複数の帯域に及んでいる。これらの移動体通信端末の通信試験を実施する際には、特定の測定対象となる周波数帯毎にその周波数帯に整合されているアンテナを用意し、周波数帯毎にアンテナを切り替える必要があった。 …(中略)… 発明の効果 [0006] 本発明によれば、1つのアンテナ装置で600MHz~6GHzの周波数帯域全体に連続的に整合させることにより、アンテナ装置を切り替えることなく、使用周波数帯域が異なる複数種類の通信装置との通信を可能とするアンテナ装置を提供することができる。」 (イ) [0009]、図1(a)、(b) 「[0009]〔第一の実施形態:ノーマルモデル〕 図1(a)、(b)は、本発明の第一の実施形態に係るアンテナ装置の外観を示した斜視図である。…(以下略)…」 「【図1】 [図:0001438765000029.jpg] 」 (ウ) [0030] 「[0030]<電気の流れ> アンテナ装置1が受信状態にある場合、外部から到来した電波は、アンテナエレメント30で拾われ、信号入力部材61を通じてコネクタ部71へと誘導される。 一方、アンテナ装置1が送信状態にある場合、コネクタ部71へ供給された電波は、信号入力部材61を通じてアンテナエレメント30に供給され、空間に電波が放射される。」 (2) 技術常識1~6の認定 ア 技術常識1の認定 前記(1)ア~エに摘記した引用文献4~7の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」及び「技術常識1-1」という。特に、試料の大きさについては、前記(1)ウに摘記した引用文献6((ウ)の[0100])、(エ)の[0158]及び(ア)の図3)の記載事項を参照されたい。)。 <技術常識1> 「一対のアンテナのそれぞれの平坦な面を互いに対向するように平行に配置し、それぞれの平坦な面と被試験試料の平坦な面とを互いに対向するように平行に配置し、マイクロ波を利用して当該試料の誘電率を測定すること。」 <技術常識1-1> 「技術常識1のような構成を採用した際に、マイクロ波の漏洩を最小限とするために、試料のサイズをアンテナよりも大きくすること。」 イ 技術常識2の認定 前記(1)ウ~オ、キに摘記した引用文献6((エ)の[0159])、引用文献7(被測定物であるスラッシュ水素はパッチアンテナと密着している。)、引用文献10((ア)の【0002】及び【0003】)、引用文献12の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識2」という。) <技術常識2> 「マイクロ波を利用して試料を測定する際に、アンテナと試料とは密接した位置に配置できること。」 (当審注:「密接」との用語は、後記7(3)アで検討したのと同様の意味で使用している。) ウ 技術常識3の認定 前記(1)カに摘記した引用文献11の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識3」という。) <技術常識3> 「誘電率の測定にあたり、超広帯域での高精度な測定が求められること。」 エ 技術常識4の認定 前記(1)オ及びキに摘記した引用文献10((ウ)の【0032】)及び引用文献12の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識4」という。) <技術常識4> 「アンテナを対向配置して被測定物を測定するにあたり、測定に用いられる電磁波の帯域内において、電磁波の透過振幅特性として乱れのない平坦なものが求められること。」 オ 技術常識5の認定 前記(1)オ、ク及びケに摘記した引用文献10((イ)の【0016】)、引用文献13、引用文献14((ウ)の[0030])の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識5」という。) <技術常識5> 「電磁波を送信及び受信できるアンテナが存在すること。」 カ 技術常識6の認定 前記(1)クに摘記した引用文献13の図1に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識6」という。) <技術常識6> 「Sパラメータについては、次のように定義されることが一般的であること。 S11:ポート1に入った信号が、ポート1に反射して戻ってくる割合 S21:ポート1に入った信号が、ポート2へ透過する割合 S12:ポート2に入った信号が、ポート1へ透過する割合 S22:ポート2に入った信号が、ポート2に反射して戻ってくる割合」 [図:0001438765000030.jpg] 4 本願発明と引用発明の対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Aの観点 (ア) 構成Aは、「第1高さ及び第1横幅を有する平坦な出射面を有し、600MHz~110GHz、又は600MHz~145GHzの超広帯域特性を有する第1アンテナと、前記第1高さ及び前記第1横幅を有する平坦な出射面を有し、前記第1アンテナとほぼ同一の超広帯域特性を有する第2アンテナ」を備えることである。 (イ) 引用発明における「送信アンテナ」及び「受信アンテナ」は、それぞれ本願発明の「第1のアンテナ」及び「第2のアンテナ」に相当する。 (ウ) 引用発明における「送信アンテナ」及び「受信アンテナ」は、文言からみれば、前者が電磁波を「送信」するものであり、後者が電磁波を「受信」するものであると認められる。 他方で、引用発明においては、「送信アンテナと受信アンテナを対向するように配置し、送信アンテナと受信アンテナとの間に試料を配置し」「試料に電磁波を入射し、測定したSパラメータから試料の誘電率を算出する」ところ、前記技術常識6を踏まえると、Sパラメータのうち、S11及びS22が反射波の割合を示すパラメータであり、S21=S12が透過波の割合を示すパラメータであるから、引用発明の「S11」は、「送信アンテナ」から「試料」及び「受信アンテナ」に向かって所定の周波数範囲の電磁波が出射された場合に、「送信アンテナ」側に戻る反射波の割合を示しており、引用発明の「送信アンテナ」は当該反射波を受信できる機能を有していると認められる。 同様に、引用発明の「S12」は、「受信アンテナ」から「試料」及び「送信アンテナ」に向かって所定の周波数範囲の電磁波が出射された場合に、「送信アンテナ」側へ進む透過波の割合を示しており、引用発明の「受信アンテナ」は電磁波を送信できる機能を有していると認められる。 このことは、前記技術常識5(電磁波を送信及び受信できるアンテナが存在すること)からも裏付けることができる(そもそもアンテナにはいわゆる相反性(Reciprocity)があり、送信アンテナは受信アンテナとしても、また受信アンテナは送信アンテナとしても用いることができるものである。) そうすると、引用発明における「送信アンテナ」及び「受信アンテナ」は、いずれも電磁波を出射する出射面を有していると認められるから、本願発明の「第1アンテナ」及び「第2アンテナ」と、「出射面を有する第1アンテナ」及び「出射面を有する第2アンテナ」である点において共通する。 しかしながら、その出射面が平坦であることまでは特定されていないから、両アンテナが「第1高さ及び第1横幅を有する平坦な出射面」を有するものとはいえない。 (エ) 引用発明においては、透過波の割合を示すパラメータとして「S21=S12」が成立しており、対称性の観点を踏まえると、引用発明における「送信アンテナ」及び「受信アンテナ」の帯域特性は「ほぼ同一」のものであると認められる。 しかしながら、引用発明においては、「600MHz~110GHz、又は600MHz~145GHz超広帯域特性を有する」ものであることまでは特定されていない。 (オ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Aの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 一致点 出射面を有する第1アンテナと、出射面を有し、前記第1アンテナとほぼ同一の帯域特性を有する第2アンテナとを備える点。 b 相違点 「第1アンテナ」及び「第2アンテナ」について、 (a) 相違点A-1 本願発明においては、両アンテナがそれぞれ「第1高さ及び第1横幅を有する平坦な出射面を有[する]」のに対し、 引用発明においては、平坦な面を有するものであるのか不明である点。 (b) 相違点A-2 本願発明においては、両アンテナが「600MHz~110GHz、又は600MHz~145GHzの超広帯域特性を有する」のに対し、 引用発明においては、このような特性を有するものであるのか不明である点。 イ 構成B1、B2及びB3の観点 (ア) 構成B1は「第2高さ及び第2横幅を有する平坦な面と所定の厚みを有する被試験試料」を備える点であり、 構成B2は「前記第1アンテナと前記第2アンテナのそれぞれの平坦な出射面を互いに対向するように平行に配置し、かつ前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間に前記被試験試料を配置し、前記第1アンテナと前記第2アンテナとのそれぞれの平坦な出射面と前記被試験試料の平坦な面とを互いに対向するように平行に配置する配置手段」を備える点であり、 構成B3は「前記配置手段は、前記第1アンテナと前記被試験試料とを密接させ、かつ前記第2アンテナと前記被試験試料とを密接させ、前記第1高さよりも前記第2高さが大きく、かつ前記第1横幅よりも前記第2横幅が大きくなるという条件を満足させ[る]」点である。 (イ) 引用発明における「試料」は本願発明における「被試験試料」に相当し、また、引用発明の「試料」としては、「電磁波遮蔽材・吸収材が想定され、試料を所定の高さ、横幅を有する平坦な面と厚みを有するもの」としているから、両者は、「第2高さ及び第2横幅を有する平坦な面と所定の厚みを有する被試験試料」を備える点で一致しているものといえる。 また、引用発明においては「送信アンテナ」と「受信アンテナ」との間に「試料」を配置するのであるから、引用発明においても、そのような配置を可能とする配置手段を有していることは明らかである。そうすると、本願発明と引用発明とは「前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間に前記被試験材料を配置[する]配置手段」を備える点で一致するものといえる。 (ウ) 前記ア(ウ)で検討したように、引用発明の「送信アンテナ」及び「受信アンテナ」においては、出射面が平坦であることは特定されていないから、平坦な出射面の「第1高さ」、「第1横幅」がそもそも定義できないものと認められる。 (エ) 引用発明においては、「試料」と「送信アンテナ」及び「受信アンテナ」とが「密接」させられることは特定されていない。 (オ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Bの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 一致点 「第2高さ及び第2横幅を有する平坦な面と所定の厚みを有する被試験試料」を備え、「前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間に前記被試験材料を配置[する]配置手段」を備える点 b 相違点(相違点B) 配置手段及び被試験試料について、 本願発明においては、「前記第1アンテナと前記第2アンテナのそれぞれの平坦な出射面を互いに対向するように平行に配置し、かつ」「前記第1アンテナと前記第2アンテナとのそれぞれの平坦な出射面と前記被試験試料の平坦な面とを互いに対向するように平行に配置」し、 「前記第1アンテナと前記被試験試料とを密接させ、かつ前記第2アンテナと前記被試験試料とを密接させ、前記第1高さよりも前記第2高さが大きく、かつ前記第1横幅よりも前記第2横幅が大きくなるという条件を満足させ[る]」のに対し、 引用発明においては、そのような特定はされていない点。 ウ 構成C1~C4の観点 (ア) 構成C1は、「前記第1アンテナから前記被試験試料及び前記第2アンテナに向かって、所定の周波数範囲の電磁波を出射し、前記第1アンテナからの反射波、前記第2アンテナからの透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成する測定手段」を備えることであり、 構成C2は、「前記測定手段により生成されたSパラメータを取得するSパラメータ取得手段」を備えることであり、 構成C3は、「前記Sパラメータに基づいて、当該被試験試料の誘電率特性を評価する評価手段」を備えることであり、 構成C4は、「前記測定手段は、平坦化した透過波特性を有する前記第1アンテナおよび第2アンテナからの反射波、透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成すること」である。 (イ) 引用発明においては、「送信アンテナと受信アンテナを対向するように配置し、送信アンテナと受信アンテナとの間に試料を配置し」「試料に電磁波を入射し、測定したSパラメータから試料の誘電率を算出する」ところ、前記技術常識6を踏まえると、Sパラメータのうち、S11及びS22が反射波を示すパラメータであり、S21=S12が透過波の割合を示すパラメータであるから、引用発明の「S11」は、「送信アンテナ」から「試料」及び「受信アンテナ」に向かって所定の周波数範囲の電磁波が出射された場合に、「送信アンテナ」側に戻る反射波の割合を示しており、本願発明の「前記第1アンテナからの反射波」の割合に相当する。 同様に、引用発明の「S12」は、「受信アンテナ」から「試料」及び「送信アンテナ」に向かって所定の周波数範囲の電磁波が出射された場合に、「送信アンテナ」側へ進む透過波の割合を示しているから、本願発明の「前記第2アンテナからの透過波」の割合に相当する。 そして、引用発明においては、「Sパラメータ」である「S11」及び「S12」を「測定」しているから、「送信アンテナ」側に戻る反射波、「送信アンテナ」側へ進む透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び透過波に基づいて、その割合としてのSパラメータを生成・取得する手段を有していることは明らかである。 さらに、当該Sパラメータに基づいて、試料の誘電率特性を評価する評価手段を有することもまた、明らかである。 (ウ) そうすると、本願発明と引用発明とは、 「前記第1アンテナから前記被試験試料及び前記第2アンテナに向かって、所定の周波数範囲の電磁波を出射し、前記第1アンテナからの反射波、前記第2アンテナからの透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成する測定手段」(構成C1)と、 「前記測定手段により生成されたSパラメータを取得するSパラメータ取得手段」(構成C2)と、 「前記Sパラメータに基づいて、当該被試験試料の誘電率特性を評価する評価手段」(構成C3)と、を備える点で一致する。 (エ) 一方で、引用発明においては、「送信アンテナ」及び「受信アンテナ」からの反射波、透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び透過波に基づいてSパラメータを生成しているものの、測定手段を構成する「送信アンテナ」及び「受信アンテナ」について、「平坦化した透過波特性を有する」ことは特定されていない。 (オ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Cの観点にける一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 一致点 「前記第1アンテナから前記被試験試料及び前記第2アンテナに向かって、所定の周波数範囲の電磁波を出射し、前記第1アンテナからの反射波、前記第2アンテナからの透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成する測定手段と、 前記測定手段により生成されたSパラメータを取得するSパラメータ取得手段と 前記Sパラメータに基づいて、当該被試験試料の誘電率特性を評価する評価手段と、を備え、 前記測定手段は前記第1アンテナおよび第2アンテナからの反射波、透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成する」点 b 相違点(相違点C) 「第1アンテナおよび第2アンテナ」について、 本願発明は「平坦化した透過波特性を有する」のに対し、 引用発明は、そのような特定を有しない点。 エ 構成Xの観点 引用発明の「装置」は試料の誘電率を算出するためのものであるから、引用発明の「装置」は、本願発明における「誘電率測定装置」に相当するものと認められる。すなわち、本願発明と引用発明とは、「誘電率測定装置」の発明である点において一致するものといえる。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。 ア 一致点 「 出射面を有する第1アンテナと、 出射面を有し、前記第1アンテナとほぼ同一の帯域特性を有する第2アンテナと、 第2高さ及び第2横幅を有する平坦な面と所定の厚みを有する被試験試料と、 前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間に前記被試験試料を配置する配置手段と、 前記第1アンテナから前記被試験試料及び前記第2アンテナに向かって、所定の周波数範囲の電磁波を出射し、前記第1アンテナからの反射波、前記第2アンテナからの透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成する測定手段と、 前記測定手段により生成されたSパラメータを取得するSパラメータ取得手段と、 前記Sパラメータに基づいて、当該被試験試料の誘電率特性を評価する評価手段と、を備え、 前記測定手段は、前記第1アンテナおよび第2アンテナからの反射波、透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成する、 誘電率測定装置」 である点。 イ 相違点 (ア) 相違点1(相違点A-2:アンテナの超広帯域化) 「第1アンテナ」及び「第2アンテナ」について、 本願発明においては、両アンテナが「600MHz~110GHz、又は600MHz~145GHzの超広帯域特性を有する」のに対し、 引用発明においては、このような特性を有するものであるのか不明である点。 (イ) 相違点2(相違点A-1:アンテナの平坦な面) 「第1アンテナ」及び「第2アンテナ」について、 本願発明においては、両アンテナがそれぞれ「第1高さ及び第1横幅を有する平坦な出射面を有[する]」のに対し、 引用発明においては、平坦な面を有するものであるのか不明である点。 (ウ) 相違点3(相違点B:測定の基本構成) 配置手段及び被試験試料について、以下の点で相違する。 a 相違点3-1(平行に配置) 本願発明においては、「前記第1アンテナと前記第2アンテナのそれぞれの平坦な出射面を互いに対向するように平行に配置し、かつ前記第1アンテナと前記第2アンテナとのそれぞれの平坦な出射面と前記被試験試料の平坦な面とを互いに対向するように平行に配置」するのに対し、 引用発明においては、そのような特定はされていない点。 b 相違点3-2(密接配置) 本願発明においては、「前記第1アンテナと前記被試験試料とを密接させ、かつ前記第2アンテナと前記被試験試料とを密接させ[る]」のに対し、 引用発明においては、そのような特定はされていない点。 c 相違点3-3(被試験試料のサイズ) 本願発明においては、「前記第1高さよりも前記第2高さが大きく、かつ前記第1横幅よりも前記第2横幅が大きくなるという条件を満足させ[る]」のに対し、 引用発明においては、そのような特定はされていない点。 (エ) 相違点4(相違点C:透過波特性) 「第1アンテナおよび第2アンテナ」について、 本願発明は「平坦化した透過波特性を有する」のに対し、 引用発明は、そのような特定を有しない点。 5 判断 (1) 相違点1について(アンテナの超広帯域化) 前記3(2)ウにおいて技術常識3として認定したとおり、「誘電率の測定にあたり、超広帯域での高精度な測定が求められること。」は技術常識である。また、「第1アンテナ」及び「第2アンテナ」がこのような超広帯域特性を有することによって生じる効果は、段落【0071】の開示によれば「この周波数範囲において、1回の測定により被試験試料16の誘電率を測定することが可能になる。」というものであって、当該構成を採用すれば当然に奏する自明の効果にすぎない。このような前提を踏まえると、相違点1に係る本願発明の構成は、単に「誘電率測定装置」として望ましい仕様を述べただけ、又は、願望を述べただけにすぎないものと評価せざるを得ず、かかる限定をもって、技術思想としての進歩性を認めることはできない(なお同旨の裁判例として、東京高等裁判所平成15年11月27日判決(平成12年(行ケ)第429号)、東京高等裁判所昭和37年6月26日判決(昭和34年(行ナ)第6号、審決取決訴訟判決集昭和36・37年269頁)がある。)。 (2) 相違点2、3について(アンテナの平坦な面、測定の基本構成) ア 相違点2、3-1について(アンテナの平坦な面、平行に配置) 相違点2に係る本願発明の構成は、「第1アンテナ」及び「第2アンテナ」が「第1高さ及び第1横幅を有する平坦な」「面を有[する]」ことであり、相違点3-1に係る本願発明の構成は、「前記第1アンテナと前記第2アンテナのそれぞれの平坦な出射面を互いに対向するように平行に配置し、かつ前記第1アンテナと前記第2アンテナとのそれぞれの平坦な出射面と前記被試験試料の平坦な面とを互いに対向するように平行に配置」することであるが、前記3(2)アにおいて技術常識1として認定したように、「一対のアンテナのそれぞれの平坦な面を互いに対向するように平行に配置し、それぞれの平坦な面と被試験試料の平坦な面とを互いに対向するように平行に配置し、マイクロ波を利用して当該試料の誘電率を測定すること。」は技術常識である。 してみれば、引用発明においても、このような構成を採用することとして、相違点2及び相違点3-1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことと認められる。 イ 相違点3-3について(被試験試料のサイズ) 前記3(2)アにおいて技術常識1-1として認定したように、「マイクロ波の漏洩を最小限とするために、試料のサイズをアンテナよりも大きくすること。」は技術常識であるといえるから(そのようにしなければ、Sパラメータを正しく測定できないことはいうまでもない。)、引用発明に技術常識1を適用するにあたり「前記第1高さよりも前記第2高さが大きく、かつ前記第1横幅よりも前記第2横幅が大きくなるという条件を満足させ[る]」ようにして、相違点3-3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことと認められる。 ウ 相違点3-2について(密接配置) (ア) 「密接」について 相違点3に係る本願発明における、「前記第1アンテナと前記被試験試料とを密接させ」「前記第2アンテナと前記被試験試料とを密接させ」との発明特定事項における「密接」との用語の意味について検討する。当該「密接」との表現は、本願明細書の段落【0027】においてのみ現れるものであって、その記載は以下のとおりである。 「【0027】 <アンテナ> 第1アンテナ12と第2アンテナ14は、それぞれ同一仕様の超広帯域アンテナであり、測定物にカプラを密接して使われることに重点をおき、密接時の帯域内結合特性の平坦化と全反射時の反射減衰特性の乱れを改善した、第5世代移動通信システムに好適な超広帯域のアンテナである。…(中略)…1対のアンテナは、マイクロ波、ミリ波帯における近距離送受信デバイスとして用いアンテナであり、1対のアンテナのそれぞれの平坦な出射面を互いに対向するように並行に密着(0cm)から数cmの距離を開けて配置することで、アンテナ同士の間に挟まれた被試験試料の誘電率測定を可能とする。」 当該記載から明らかなように、本願明細書においては「密着(0cm)」と「密接」とはその用語が使い分けられており、また前記段落【0027】の開示内容からみて、「密接」とは「1対のアンテナのそれぞれの平坦な出射面を互いに対向するように並行に密着(0cm)から数cmの距離を開けて配置すること」を指すもの、すなわち、密着(0cm)のみを意味するのではなく、数cm程度に近接配置するものも含む概念であると認められる。またこのことは、平成6年6月5日提出の手続補正書による補正によって請求項1に「前記第1アンテナと前記被試験試料とを第1間隔まで密接させることで第1近傍界領域を形成し、かつ前記第2アンテナと前記被試験試料とを第2間隔まで密接させることで第2近傍界領域を形成し」との文言を加えたこと、すなわち、少なくとも出願人(請求人)が「密接」という用語の意味として密着(0cm)のみを意図していないことからも裏付けられる。 したがって、本願発明における「密接」との用語は「密着(0cm)から数cmの距離を開けて配置すること」を意味するものとして、以下検討を行う。 (イ) 相違点3-2に係る本願発明の構成に至ることについて 前記3(2)イにおいて技術常識2として認定したように、「マイクロ波を利用して試料を測定する際に、アンテナと試料とは密接した位置に配置できること。」は技術常識である。 してみれば、引用発明において技術常識1を適用した際に、技術常識2も考慮してアンテナと試料を密接した位置に配置することとして、相違点3-2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 (3) 相違点4について(透過波特性) ア 透過波特性について 相違点4に係る本願発明の構成である「平坦化した透過波特性を有する」との点について検討するに、本願明細書の発明の詳細な説明及び図面の全記載を参酌しても、「透過波特性」という言葉は現れないところ、「平坦化した透過波特性」とはどのような特性なのかについて検討する。 請求人が平成6年6月5日に提出した手続補正書による補正によって当該「平坦化した透過波特性を有する」との構成を請求項1に加えるにあたり、同日提出の意見書において、補正の根拠を本願明細書の段落【0027】に求めているから、当該段落の記載を参酌する。 「【0027】 <アンテナ> 図2(a)は、本発明の一実施形態に係わるアンテナの外観を示す外観図である。なお、図2はx方向、y方向、z方向を有する立面図である。 第1アンテナ12と第2アンテナ14は、所定の高さH1、横幅W1、厚みD1を有する。 第1アンテナ12と第2アンテナ14は、それぞれ同一仕様の超広帯域アンテナであり、測定物にカプラを密接して使われることに重点をおき、密接時の帯域内結合特性の平坦化と全反射時の反射減衰特性の乱れを改善した、第5世代移動通信システムに好適な超広帯域のアンテナである。アンテナは、特性の平坦化と全反射時のVSWRの乱れを吸収することにより、EVM(RMS)値が劇的に改善される。 1対のアンテナは、マイクロ波、ミリ波帯における近距離送受信デバイスとして用いアンテナであり、1対のアンテナのそれぞれの平坦な出射面を互いに対向するように並行に密着(0cm)から数cmの距離を開けて配置することで、アンテナ同士の間に挟まれた被試験試料の誘電率測定を可能とする。」 このような段落【0027】の開示からみて、相違点5に係る「平坦化した透過波特性」とは、概略、「密接時の帯域内結合特性の平坦化」を意味するものと解されるから、以下、そのように解して検討を行う。 イ 前記3(2)のエにおいて技術常識4として認定したように、「アンテナを対向配置して被測定物を測定するにあたり、測定に用いられる電磁波の帯域内において、電磁波の透過振幅特性として乱れのない平坦なものが求められること。」は技術常識であり、このような「通過振幅特性」は、本願発明の「密接時の帯域内結合特性」、すなわち「透過波特性」に相当する概念であると認められる。 すなわち、「平坦化した透過波特性」が求められることは当業者にとって技術常識であるといえるから、このような仕様あるいは願望を請求項において述べることに、進歩性を認めることはできない。 (4) 総合評価 前記(1)~(3)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び技術常識1~6に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、相違点1~4を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識1~6に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 請求人の主張について (1) 請求人の主張1 ア 請求人の主張1の内容 引用発明は、「前記配置手段は、前記第1アンテナと前記被試験試料とを密接させ、かつ前記第2アンテナと前記被試験試料とを密接させ、前記第1高さよりも前記第2高さが大きく、かつ前記第1横幅よりも前記第2横幅が大きくなるという条件を満足させ」るという点について開示も示唆もない。 そして、本願発明はこの構成を有することによって、「前記配置手段は、前記第1アンテナと前記被試験試料とを密接させ、かつ前記第2アンテナと前記被試験試料とを密接させ、前記第1高さよりも前記第2高さが大きく、かつ前記第1横幅よりも前記第2横幅が大きくなるという条件を満足させることができる」という格別の効果を奏する。 イ 請求人の主張1についての検討 引用発明に当該構成が開示されていないことは請求人が主張するとおりであるものの、前記5(2)ウにおいて検討したとおり、引用発明及び技術常識1に基づいて当該相違点に係る本願発明の構成に至ることは、当業者が適宜なし得たことと認められる。 また、請求人が主張する「格別の効果」は、その効果を奏する「構成」と全く同じとなっているから、当該構成に至ることが当業者にとって容易に想到できるのであれば、当該効果も当然に当業者が容易に予測できるものである。 したがって、前記請求人の主張1は採用することができない。 (2) 請求人の主張2 ア 請求人の主張2の内容 引用発明は、「前記測定手段は、平坦化した透過波特性を有する前記第1アンテナおよび第2アンテナからの反射波、透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成する」という点について開示も示唆もない。 そして本願発明はこの構成を有することによって、「前記測定手段は、平坦化した透過波特性を有する前記第1アンテナおよび第2アンテナからの反射波、透過波をそれぞれ測定して、前記反射波及び前記透過波に基づいてSパラメータを生成することができる」という格別の効果を奏する。この結果、1対のアンテナを用いて1回の測定により広帯域で被試験試料の誘電率を測定することが可能になる。 イ 請求人の主張2についての検討 引用発明において、「送信アンテナ」及び「受信アンテナ」が「平坦化した透過波特性」を有することが開示されていないことは、請求人が主張するとおりであるものの、前記5(3)において検討したとおり、引用発明及び技術常識4に基づいて当該相違点に係る本願発明の構成に至ることは、当業者が適宜なし得たことと認められる。 また、請求人が主張する「格別の効果」は、その効果を奏する「構成」と全く同じとなっているから、当該構成に至ることが当業者にとって容易に想到できるのであれば、当該効果も当然に、当業者が容易に予測できるものである。また、その結果として得られる「1対のアンテナを用いて1回の測定により広帯域で被試験試料の誘電率を測定することが可能になる」との効果も、当該構成から当然に予想される効果であって、格別顕著な効果であるということはできない。 したがって、前記請求人の主張2は採用することができない。 7 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-016447

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