特許拒絶査定不服審判
2024-010782
電気掃除機
- 審判番号
- 2024-010782
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-190985外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年07月01日
- 審決日
- 2025年09月17日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東芝ライフスタイル株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人東京国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A47L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-190985「電気掃除機」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月27日出願公開、特開2022- 80041〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、令和2年11月17日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年12月25日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 3月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 6年 3月29日付け:拒絶査定
令和 6年 7月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年7月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年7月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「本体ケースと、
前記本体ケースに収容されて吸込負圧を生じさせる電動送風機と、
前記本体ケースに収容されて前記電動送風機で消費される電力を蓄える二次電池と、
前記本体ケースに収容されて前記二次電池へ充電電力を供給する無線充電部と、
前記本体ケースとは別体で設けられ、外部から供給される電力を前記充電電力として前記無線充電部へ無線電力伝送する無線充電台座と、を備え、
前記本体ケースは、前記無線充電台座と対向し、且つ、前記無線充電台座によって保持される設置部を有し、
前記電動送風機は、前記本体ケース内において前記無線充電部の鉛直方向に配置され、
前記二次電池は、前記本体ケースの重心を低くするように、前記電動送風機よりも前記無線充電部に近接して配置され、
前記無線充電台座への設置状態における前記本体ケース内において、前記無線充電部は、前記電動送風機および前記二次電池よりも前記設置部に近接して配置され、
前記電動送風機と前記無線充電部との間には、前記無線充電台座から前記無線充電部への前記無線電力伝送を妨げる前記電動送風機からの妨害を遮断または減衰する防護空間が設けられる、電気掃除機。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和6年3月5日に手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「本体ケースと、
前記本体ケースに収容されて吸込負圧を生じさせる電動送風機と、
前記本体ケースに収容されて前記電動送風機で消費される電力を蓄える二次電池と、
前記本体ケースに収容されて前記二次電池へ充電電力を供給する無線充電部と、
前記本体ケースとは別体で設けられ、外部から供給される電力を前記充電電力として前記無線充電部へ無線電力伝送する無線充電台座と、を備え、
前記本体ケースは、前記無線充電台座と対向し、且つ、前記無線充電台座によって保持される設置部を有し、
前記無線充電台座への設置状態における前記本体ケース内において、前記無線充電部は、前記電動送風機および前記二次電池よりも前記設置部側に配置され、
前記電動送風機と前記無線充電部との間には、前記無線充電台座から前記無線充電部への前記無線電力伝送を妨げる前記電動送風機からの妨害を遮断または減衰する防護空間が設けられる、電気掃除機。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「電動送風機」について、「前記電動送風機は、前記本体ケース内において前記無線充電部の鉛直方向に配置され」るものであることを限定し、同じく「二次電池」について、「前記二次電池は、前記本体ケースの重心を低くするように、前記電動送風機よりも前記無線充電部に近接して配置され」るものであることを限定するとともに、無線充電部の配置について、「前記電動送風機および前記二次電池よりも前記設置部側に」とされていたものを、「前記電動送風機および前記二次電池よりも前記設置部に近接して」とすることにより、無線充電部が「設置部側」のうち、「設置部に近接」する位置に配置されることを限定するものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載及び引用発明
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2018-518214号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付与した。以下、同様である。)。
a 「【0039】
図1は、電気掃除機システム(1)を示す。電気掃除機システム(1)は、電気掃除機(10)、例えばロボット型電気掃除機、手持ち式電気掃除機、スティック型電気掃除機、直立型電気掃除機またはキャニスタ型電気掃除機と、充電器(20)とを含む。電気掃除機(10)は、第1ハウジング(11)を含む。第1ハウジング(11)は、空気入口(12)と、空気出口(13)と、空気入口(11)(当審注:空気入口(12)の誤記と認められる。)から空気出口(12)(当審注:空気出口(13)の誤記と認められる。)への空気流(F)を生成するためのモータファンユニット(14)とを含む。モータファンユニット(14)によって生成された空気流(F)は、空気入口(12)から塵分離ユニット(18)に塵およびごみくずを運ぶ。塵分離ユニット(18)では、塵およびごみくずが空気流(F)から分離され、空気流(F)はモータファンユニット(14)を通って空気出口(13)まで続く。塵分離ユニット(18)は、空気透過性の塵バッグ、フィルタまたは1つもしくはいくつかのサイクロンの形態であり得る。
【0040】
第1ハウジング(11)はまた、モータファンユニット(14)に電力を供給するための、1つまたはいくつかのバッテリまたはバッテリパックを含むバッテリ(15)を含む。第1ハウジングはまた、バッテリ(15)に接続されたワイヤレス電力伝送用の第1ユニット(16)を含む。第1ユニット(16)は、バッテリ(15)を充電するために接続される。第1ユニット(16)は、バッテリの状態を制御するための第1制御ユニット(17)を含む。第1ユニット(16)は第1コイル(19)を含み、バッテリ(15)に接続されている。
【0041】
充電器(20)は、第1ユニット(16)へのワイヤレス電力伝送のための第2ユニット(26)を含む第2ハウジング(21)を含む。ワイヤレス電力伝送は、電気掃除機(10)のバッテリー(15)を充電するためのものである。第2ユニット(26)は第2コイル(29)を含み、外部電源(22)、例えば幹線電力に接続されるように適合されている。第2ユニット(26)は、バッテリ(15)の充電および/またはバッテリ(15)の状態を制御するための第2制御ユニット(27)を含む。第2制御ユニット(27)は、充電器(20)内のまたは充電器(20)に近い充電位置における電気掃除機の存在を制御するための手段(28)を有する。充電器は、充電器を外部電源(22)に接続するためのコネクタ(23)を含む。コネクタ(23)は第2ユニット(26)に接続され、それによって第2コイル(29)にも接続される。
【0042】
第2制御ユニット(27)は、電気掃除機(10)が充電位置にあるときに第1制御ユニット(17)からバッテリ(15)の状態に関する情報を受信する。
【0043】
第2制御ユニット(27)は、バッテリ(15)の充電が開始されるべきときに、および/またはバッテリ(15)の充電が終了されるべきときに第1制御ユニット(17)から情報を受信する。
【0044】
第1制御ユニット(17)は、電気掃除機(10)が充電位置にあるときにワイヤレス通信、好ましくはNFC(近距離通信)または無線通信によって第2制御ユニット(27)に情報を送信する。
【0045】
第2制御ユニット(27)は、電気掃除機(10)が充電位置にあるときにワイヤレス通信、好ましくはNFC(近距離通信)または無線通信によって第1制御ユニット(17)に情報を送信する。
【0046】
図1において、充電器(20)は、床上に位置付けられるか、壁に取り付けられるか、棚、テーブル、ベンチもしくはそれらに類するものの上に置かれるか、電気掃除機用のスタンド内に取り付けられるか、または他の適切な方法で配置されるように配置可能である。」
b 「【0047】
図2a~図2cには、ポータブル型手持ち式電気掃除機を備えた電気掃除機システム、特に手持ち式の湿式および乾式電気掃除機が示されている。
【0048】
この電気掃除機システムは、図1に示すものと同じ部品を有する。
【0049】
電気掃除機システム(1)は、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)、特に湿式および乾式電気掃除機を含む。湿式および乾式電気掃除機では、塵分離ユニット(18)は空気から液体も分離するように構成される。塵分離ユニット(18)は、空気流(図示せず)から分離された汚れた空気のための容器も含む。
【0050】
電気掃除機(10)を直立した格納位置で支持するように構成された底部(31)を含む第1ハウジング(11)である。第1ユニット(16)の少なくとも一部は、前記底部(31)内またはその近傍に配置される。第1ユニット(16)は第1コイル(19)を含む。第1コイル(19)は、前記底部(31)内またはその近傍に配置される。
【0051】
充電器(20)は、第2ハウジング(21)を含む。第2ハウジング(21)は、充電位置において電気掃除機の底部(31)を支持するための支持面(32)を含む。
【0052】
第2ユニット(26)の少なくとも一部は、前記支持面(32)内またはその近傍に配置される。第2ユニットは、第2コイル(29)を含む。第2コイル(29)は、前記支持面(32)内またはその近傍に配置される。
【0053】
支持面(32)は水平であり、電気掃除機の底部(31)は平坦である。
【0054】
あるいは、図2bに見られるように、支持面(32)は、水平であり、1つまたは複数の突起(36)を備え、および電気掃除機の底部は、充電位置において突起(36)に適合する1つまたは複数の開口(35)を含む。
【0055】
あるいは、図2cに見られるように、支持面(32)は、水平であり、1つまたは複数の開口(33)を備え、および電気掃除機の底部(31)は、充電位置において開口(33)に嵌合する1つまたは複数の突起(34)を含む。この場合、電気掃除機の突起は、電気掃除機が転倒することなく平坦な表面上に立つことができるような数のものであり、かつそのように立つことができるように配置されることが好ましい。」
c 図1、図2aとして、次の事項が図示されている。
【図1】
[図:0001429643000001.jpg]
【図2a】
[図:0001429643000002.jpg]
(イ)引用文献1の記載から把握できる事項
a 前記(ア)bによると、引用文献1には、図2aに係る実施形態として、ポータブル型手持ち式電気掃除機を備えた電気掃除機システム(段落【0047】)が記載され、その構成が電気掃除機システム(1)として、段落【0049】~【0053】に記載されている他、段落【0048】によると、図2aに係る実施形態においても、図1に係る実施形態と同じ部品を有することが把握できる。
b したがって、図1に係る実施形態について記載された前記(ア)aを踏まえて、前記(ア)bの図2aに係る実施形態についての記載をみると、図2aに係る電気掃除機システム(1)は、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)と充電器(20)とを含むことが把握でき、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)は、第1ハウジング(11)を含むことが把握できる。
c 同じく前記(ア)a(特に段落【0039】)を踏まえると、図2aに係る電気掃除機システム(1)における第1ハウジング(11)も、空気入口(12)から空気出口(13)への空気流(F)を生成し、該生成された空気流(F)が空気入口(12)から塵分離ユニット(18)に塵およびごみくずを運ぶモータファンユニット(14)を含むことが把握できる。
d 同じく前記(ア)a(特に段落【0040】)を踏まえると、図2aに係る電気掃除機システム(1)における第1ハウジング(11)も、モータファンユニット(14)に電力を供給するためのバッテリ(15)を含むことが把握できる。
e 同じく前記(ア)a(特に段落【0040】)を踏まえると、図2aに係る電気掃除機システム(1)における第1ハウジング(11)も、バッテリ(15)を充電するためにバッテリ(15)に接続されたワイヤレス電力伝送用の第1ユニット(16)であって、バッテリの状態を制御するための第1制御ユニット(17)及び第1コイル(19)を含む第1ユニット(16)を含むことが把握できる。
なお、図2aには、第1ユニット(16)に対応する符号16は示されていないが、符号17が付された四角形部分(第1制御ユニット(17))及び符号19が付された四角形部分(第1コイル(19))を囲む、符号の付されていない四角形部分が示されており、この符号の付されていない四角形部分が、図1と同様に第1ユニット(16)を示していることは明らかである。
f 同じく前記(ア)a(特に段落【0041】)を踏まえると、図2aに係る電気掃除機システム(1)の充電器(20)も、第1ユニット(16)へのワイヤレス電力伝送のための第2ユニット(26)を含む第2ハウジング(21)を含み、該第2ユニット(26)が、第2コイル(29)と、バッテリ(15)の充電および/またはバッテリ(15)の状態を制御するための第2制御ユニット(27)とを含み、外部電源(22)に接続されることが把握できる。
g 前記(ア)b(特に段落【0050】、【0051】、【0053】)によると、図2aに係る電気掃除機システム(1)における第1ハウジング(11)は、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)を直立した格納位置で支持するように構成された、平坦な底部(31)であって、充電位置において、第2ハウジング(21)の水平な支持面(32)に支持される底部(31)を含むことが把握できる。
h 前記(ア)b(特に段落【0050】)によると、図2aに係る電気掃除機システム(1)において、第1ユニット(16)の第1コイル(19)は、底部(31)内またはその近傍に配置されることが把握できる。
(ウ)引用発明
前記(ア)及び(イ)によると、引用文献1には、図2aに係る実施形態として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)に含まれる、第1ハウジング(11)と、
前記第1ハウジング(11)に含まれ、空気入口(12)から空気出口(13)への空気流(F)を生成し、該生成された空気流(F)が空気入口(12)から塵分離ユニット(18)に塵およびごみくずを運ぶモータファンユニット(14)と、
前記第1ハウジング(11)に含まれ、前記モータファンユニット(14)に電力を供給するためのバッテリ(15)と、
前記第1ハウジング(11)に含まれ、前記バッテリ(15)を充電するために前記バッテリ(15)に接続されたワイヤレス電力伝送用の第1ユニット(16)であって、バッテリの状態を制御するための第1制御ユニット(17)及び第1コイル(19)を含む第1ユニット(16)と、
前記第1ユニット(16)へのワイヤレス電力伝送のための第2ユニット(26)を含む第2ハウジング(21)を含み、該第2ユニット(26)が、第2コイル(29)と、前記バッテリ(15)の充電および/または前記バッテリ(15)の状態を制御するための第2制御ユニット(27)とを含み、外部電源(22)に接続される、充電器(20)と、を含み、
前記第1ハウジング(11)は、前記ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)を直立した格納位置で支持するように構成された、平坦な底部(31)であって、充電位置において、前記第2ハウジング(21)の水平な支持面(32)に支持される底部(31)を含み、
前記第1ユニット(16)の前記第1コイル(19)は、前記底部(31)内またはその近傍に配置される、電気掃除機システム(1)。」
(3)対比
以下、本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「第1ハウジング(11)」は、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)に含まれるものであり、電気掃除機システム(1)のうち、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)側、つまり本体側のハウジングといえるから、本件補正発明の「本体ケース」に相当する。
イ 引用発明の「モータファンユニット(14)」は、本件補正発明の「電動送風機」に相当し、引用発明の「モータファンユニット(14)」が、「前記第1ハウジング(11)に含まれ」ることは、引用文献1の図2aの図示内容も考慮すると、本件補正発明の「電動送風機」が「前記本体ケースに収容され」ることに相当する。また、引用発明の「モータファンユニット(14)」が「空気入口(12)から空気出口(13)への空気流(F)を生成し、該生成された空気流(F)が空気入口(12)から塵分離ユニット(18)に塵およびごみくずを運ぶ」ことは、モータファンユニット(14)が、塵およびごみくずを運ぶ空気流(F)を吸引することにより、生じているものと解されるから、本件補正発明の「電動送風機」が「吸込負圧を生じさせる」ことに相当する。
ウ 引用発明の「バッテリ(15)」は、本件補正発明の「二次電池」に相当し、引用発明の「バッテリ(15)」が、「前記第1ハウジング(11)に含まれ」ることは、引用文献1の図2aの図示内容も考慮すると、本件補正発明の「二次電池」が「前記本体ケースに収容され」ることに相当する。また、引用発明の「バッテリ(15)」が「前記モータファンユニット(14)に電力を供給するための」ものであることは、バッテリ(15)がモータファンユニット(14)で消費される電力を蓄えているといえるから、本件補正発明の「二次電池」が「前記電動送風機で消費される電力を蓄える」ものであることに相当する。
エ 引用発明の「第1ユニット(16)」は、バッテリ(15)を充電するために前記バッテリ(15)に接続されたワイヤレス電力伝送用のものであるから、本件補正発明の「無線充電部」に相当し、引用発明の「第1ユニット(16)」が、「前記第1ハウジング(11)に含まれ」ることは、引用文献1の図2aの図示内容も考慮すると、本件補正発明の「無線充電部」が「前記本体ケースに収容され」ることに相当する。また、引用発明の「第1ユニット(16)」が「前記バッテリ(15)を充電するために前記バッテリ(15)に接続されたワイヤレス電力伝送用の」ものであることは、第1ユニット(16)がバッテリ(15)へ充電するための電力を供給しているといえるから、本件補正発明の「無線充電部」が「前記二次電池へ充電電力を供給する」ものであることに相当する。
オ 引用発明の「充電器(20)」は、第1ユニット(16)へのワイヤレス電力伝送のための第2ユニット(26)を含む第2ハウジング(21)を含み、該第2ハウジング(21)の支持面(32)で、第1ハウジング(11)の底部(31)を支持するものであるから、本件補正発明の「無線充電台座」に相当する。また、引用発明の「充電器(20)」が、「前記第1ユニット(16)へのワイヤレス電力伝送のための第2ユニット(26)を含む第2ハウジング(21)を含」むことは、引用発明が、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)を直立した格納位置で支持するように、第2ハウジング(21)の支持面(32)で第1ハウジング(11)の底部(31)を支持するものであることを踏まえると、充電器(20)の第2ハウジング(21)と、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)の第1ハウジング(11)とは、別体で構成されているといえるから、本件補正発明の「無線充電台座」が、「前記本体ケースとは別体で設けられ」ることに相当する。さらに、引用発明の「充電器(20)」が「前記第1ユニット(16)へのワイヤレス電力伝送のための第2ユニット(26)を含む第2ハウジング(21)を含み、該第2ユニット(26)が、第2コイル(29)と、前記バッテリ(15)の充電および/または前記バッテリ(15)の状態を制御するための第2制御ユニット(27)とを含み、外部電源(22)に接続される」ものであることは、充電器(20)により、外部電源(22)から供給される電力を、バッテリ(15)の充電のために、第1ユニット(16)へワイヤレス電力伝送しているものと解されるから、本件補正発明の「無線充電台座」が「外部から供給される電力を前記充電電力として前記無線充電部へ無線電力伝送する」ものであることに相当する。
カ 引用発明の「底部(31)」は、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)を直立した格納位置で支持するように構成された、平坦な部分であり、充電位置において、充電器(20)の第2ハウジング(21)の水平な支持面(32)に支持されるものであるから、本件補正発明の「設置部」に相当する。また、引用発明の「底部(31)」が、「前記ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)を直立した格納位置で支持するように構成された、平坦な」部分であって、「充電位置において、前記第2ハウジング(21)の水平な支持面(32)に支持される」ことは、底部(31)が、充電器(20)の第2ハウジング(21)の支持面(32)と対向し、充電器(20)の第2ハウジング(21)によって保持されているといえるから、本件補正発明の「設置部」が、「前記無線充電台座と対向し、且つ、前記無線充電台座によって保持される」ことに相当する。すると、引用発明の「前記第1ハウジング(11)は、前記ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)を直立した格納位置で支持するように構成された、平坦な底部(31)であって、充電位置において、前記第2ハウジング(21)の水平な支持面(32)に支持される底部(31)を含」むことは、本件補正発明の「前記本体ケースは、前記無線充電台座と対向し、且つ、前記無線充電台座によって保持される設置部を有」することに相当する。
キ 引用発明の「前記第1ユニット(16)の前記第1コイル(19)は、前記底部(31)内またはその近傍に配置される」ところ、第1ハウジング(11)の平坦な底部(31)を、第2ハウジング(21)の水平な支持面(32)で支持した、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)を直立した格納位置においても、第1ユニット(16)の第1コイル(19)が、第1ハウジング(11)の底部(31)内またはその近傍に配置されるものであり、このとき、第1ユニット(16)が、第1ハウジング(11)内において、底部(31)に近接して配置されていることは明らかである。であるから、引用発明の「前記第1ユニット(16)の前記第1コイル(19)は、前記底部(31)内またはその近傍に配置される」ことは、本件補正発明の「前記無線充電台座への設置状態における前記本体ケース内において、前記無線充電部は、前記電動送風機および前記二次電池よりも前記設置部に近接して配置され」ることと、無線充電台座への設置状態における本体ケース内において、無線充電部は、設置部に近接して配置される点において共通する。
ク 引用発明の第1ハウジング(11)と、モータファンユニット(14)と、バッテリ(15)と、第1ユニット(16)と、充電器(20)と、を「含」むことは、本件補正発明の本体ケースと、電動送風機と、二次電池と、無線充電部と、無線充電台座と、を「備え」ることに相当し、引用発明のこれらを含む「電気掃除機システム(1)」は、本件補正発明のこれらを備える「電気掃除機」に相当する。
ケ そうすると、本件補正発明と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点>で相違する。
<一致点>
「本体ケースと、
前記本体ケースに収容されて吸込負圧を生じさせる電動送風機と、
前記本体ケースに収容されて前記電動送風機で消費される電力を蓄える二次電池と、
前記本体ケースに収容されて前記二次電池へ充電電力を供給する無線充電部と、
前記本体ケースとは別体で設けられ、外部から供給される電力を前記充電電力として前記無線充電部へ無線電力伝送する無線充電台座と、を備え、
前記本体ケースは、前記無線充電台座と対向し、且つ、前記無線充電台座によって保持される設置部を有し、
前記無線充電台座への設置状態における前記本体ケース内において、前記無線充電部は、前記設置部に近接して配置される、電気掃除機。」
<相違点>
本件補正発明は、「前記電動送風機は、前記本体ケース内において前記無線充電部の鉛直方向に配置され、前記二次電池は、前記本体ケースの重心を低くするように、前記電動送風機よりも前記無線充電部に近接して配置され」、前記無線充電台座への設置状態における前記本体ケース内において、前記無線充電部は、「前記電動送風機および前記二次電池よりも」前記設置部に近接して配置され、「前記電動送風機と前記無線充電部との間には、前記無線充電台座から前記無線充電部への前記無線電力伝送を妨げる前記電動送風機からの妨害を遮断または減衰する防護空間が設けられる」のに対し、引用発明は、モータファンユニット(14)及びバッテリ(15)が、前記のように配置されているか明らかでなく、そのため、第1ユニット(16)とモータファンユニット(14)及びバッテリ(15)との位置関係や、前記のような防護空間が設けられているかも明らかでない点。
(4)判断
ア 相違点について
以下、<相違点>について検討する。
(ア)まず、引用文献1に記載された図2a(前記(2)ア(ア)c参照。)をみると、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)の第1ハウジング(11)内に、塵分離ユニット(18)、モータファンユニット(14)、バッテリ(15)、並びに第1制御ユニット(17)及び第1コイル(19)を含む第1ユニット(16)が存在すること(第1ユニット(16)については、前記(2)ア(イ)e参照。)が把握できるが、これらの部品が単純な四角形状等で示されていることからみて、これらの部品の正確な配置、正確な寸法を表しているとまではいえない。
(イ)一方で、ワイヤレス電力伝送を行う装置において、送電側のコイルと受電側のコイルを近接させて配置することが、効率的なワイヤレス電力伝送を行う上で効果的かつ一般的であり、このような配置は、当業者にとって、技術常識に沿った一般的な配置といえる。実際、引用文献1の段落【0050】(前記(2)ア(ア)b参照。)には、「第1ユニット(16)の少なくとも一部は、前記底部(31)内またはその近傍に配置される。第1ユニット(16)は第1コイル(19)を含む。第1コイル(19)は、前記底部(31)内またはその近傍に配置される。」と記載されている。すると、図2aの図示内容は、前記技術常識に沿った一般的な配置及び引用文献1の前記記載と整合するものである。
(ウ)さらに、掃除機において、フィルタやサイクロン等の塵分離ユニットは、掃除機本体の吸引口から空気流とともに吸引される塵埃を、空気流から分離するものであって、掃除機本体の吸引口側に設けることが効果的かつ一般的である。また、電動送風機については、前記空気流を塵分離ユニットを通過するように吸引するものであるから、塵分離ユニットに対し、掃除機本体の吸引口とは反対側、かつ塵分離ユニットの近傍に配置することが、効果的かつ一般的である。次に、取っ手を備えた手持ち式電気掃除機における電池、蓄電池等の電源は、手持ち時の重量バランスに影響を与えるものであるから、前記したように吸引口側に設けられる塵分離ユニットや、電動送風機よりも後方(ここで、「後方」とは、掃除機本体の長手方向における吸引口が設けられた側を「前方」とし、その逆側の吸引口が設けられていない側をいう。)の取っ手に近い空間に設けられることが効果的かつ一般的である。そして、これら塵分離ユニットの配置、電動送風機の配置、電源の配置は、当業者にとって、技術常識に沿った一般的な配置といえるものであり(例えば、特開2016-30050号公報の図1におけるフィルター手段24、電動送風機8、充電式電池4、特開2014-155668号公報の図1における集塵室116、ファン114、モーター112、二次電池140、実願昭61-121339号(実開昭63-28461号)のマイクロフィルムの第1図におけるフィルター33、ファン19、モーター20、電池21、特開昭63-54140号公報の第1図における集塵フイルタ15、電動送風機16、蓄電池39、特開昭60-80421号公報の第1図におけるフィルター12、ファンモーター5、2次電池6参照。)、図2aの図示内容は、前記技術常識に沿った一般的な配置と整合するものである。
(エ)以上によると、引用文献1に記載された図2aは、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)の第1ハウジング(11)内の部品の正確な配置、正確な寸法を表しているとまではいえないものの、引用文献1の記載や、前記技術常識に沿った一般的な配置に反することなく記載されており、前記技術常識に沿った一般的な配置を知る当業者に対し、当該一般的な配置を想起させるものである。
(オ)そうすると、引用発明において、ポータブル型手持ち式電気掃除機(10)の第1ハウジング(11)内の、塵分離ユニット(18)、モータファンユニット(14)、バッテリ(15)、並びに第1制御ユニット(17)及び第1コイル(19)を含む第1ユニット(16)の配置を具体化するにあたり、前記技術常識に沿った一般的な配置を採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。具体的には、引用発明において、第2コイル(29)と第1コイル(19)を近接させて配置すべく、第1ユニット(16)の第1コイル(19)を、底部(31)内またはその近傍に配置する構成を維持しつつ、モータファンユニット(14)を、空気入口(12)側に設けた塵分離ユニット(18)に対し、空気入口(12)とは反対側、かつ塵分離ユニット(18)の近傍に配置し、バッテリ(15)を、モータファンユニット(14)より後方の空間に設けることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(カ)このとき、引用発明におけるポータブル型手持ち式電気掃除機(10)を直立した格納位置において、図2aの図示内容を踏まえると、モータファンユニット(14)は、第1ハウジング(11)内において第1ユニット(16)の上方に配置されることになるから、モータファンユニット(14)を、第1ユニット(16)の鉛直方向に配置することに格別の困難性はない。
また、このとき、バッテリ(15)は、モータファンユニット(14)よりも第1ユニット(16)に近接して配設されることになるから、バッテリ(15)は、第1ハウジング(11)の重心を低くしているといえる。
さらに、このとき、第1ユニット(16)は、モータファンユニット(14)及びバッテリ(15)よりも底部(31)に近接して配置されているといえる。
また、このとき、モータファンユニット(14)と第1ユニット(16)の間には、バッテリ(15)等が設けられる空間が存在することになり、該空間は、充電器(20)から第1ユニット(16)へのワイヤレス電力伝送を妨げるモータファンユニット(14)からの妨害を遮断または減衰するものといえる。
(キ)以上のとおりであるから、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えることは、当業者が容易に想到し得たものである。
イ 本件補正発明の作用効果について
本件補正発明の「無線充電台座4に対して掃除機本体2の重心を安定した状態で容易に配置することが可能であって、ひいては、安定した充電状態を維持し、二次電池18を確実に充電できる。」(段落【0060】)という作用効果は、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
ウ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】、「4.本願発明が特許されるべき理由」、「4-1.請求項1に係る発明について」において、「電気掃除機1の本体ケース12を低重心化すべく電動送風機13と二次電池18との位置決めを行うという技術的思想は、引用文献1の図2aから容易に想到されるものではない。」、「本願発明は、電気掃除機1の本体ケース12の低重心化による本体ケース12の無線充電台座4への設置の安定化と、電動送風機13と無線充電部19との間に防護空間20を設けることによる無線充電の効率低下の防止との相乗効果を奏するものである。」などと主張している。
しかしながら、前記アに示したように、引用発明において、前記技術常識に沿った一般的な配置を採用することにより、審判請求人が主張する技術思想を有する本件補正発明の構成と、同様の構成に想到し得るものである。また、引用発明において、前記技術常識に沿った一般的な配置を採用することにより、審判請求人が主張する効果を奏することは、当業者が予測し得るものである。
したがって、審判請求人の前記主張は採用できない。
(5)まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年7月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、令和6年3月5日に手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由2(進歩性)の概略は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特表2018-518214号公報(本審決における「引用文献1」。)
3 引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「電動送風機」及び「二次電池」について、並びに「無線充電部」の配置について、限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(4)、(5)に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-010782