特許拒絶査定不服審判
2024-009613
呼気弁を備える折り畳み可能なフェイスピース呼吸マスク
- 審判番号
- 2024-009613
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-010555外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年06月10日
- 審決日
- 2025年06月24日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
- 【請求人代理人】藤井 憲
- 【請求人代理人】野村 和歌子
- 【請求人代理人】佃 誠玄
- 【請求人代理人】浅村 敬一
- 分類
- P18 .121-Z (A41D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 10555「呼気弁を備える折り畳み可能なフェイスピース呼吸マスク」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 3月30日出願公開、特開2022- 50697〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)9月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年9月30日 (RU)ロシア連邦)を国際出願日とする特願2018-516848号の一部を令和4年1月27日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和4年 1月27日 上申書・手続補正書
12月27日付け 拒絶理由通知書
令和5年 2月 1日 意見書・手続補正書
5月30日付け 拒絶理由通知書(最後)
11月30日 意見書・手続補正書
令和6年 3月 7日付け 補正の却下の決定・拒絶査定
6月10日 審判請求書
以下では、令和6年3月7日付け拒絶査定を「原査定」という。
第2 本願発明
令和5年11月30日付け手続補正書でした補正は、令和6年3月7日付け補正の却下の決定により却下されているので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年2月1日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される以下のとおりのものであると認める。
「 【請求項1】
マスク本体を備える折り畳み可能な濾過フェイスピース呼吸マスクであって、前記マスク本体は、前記マスク本体を第1の部分と第2の部分とに分離する境界線を有し、前記呼吸マスクは、前記境界線上かつ前記マスク本体の中央領域に配置されることで使用中に着用者の口の上に本質的に配置される呼気弁を更に有し、前記境界線が前記弁の場所で不連続であり、前記境界線によって、前記マスク本体の前記第1の部分及び前記第2の部分の少なくとも一部を前記境界線に沿って折り畳むことが可能であり、
前記境界線の延長線上において前記マスク本体に固定されたハーネスを備える、折り畳み可能な濾過フェイスピース呼吸マスク。」
第3 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1~5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.中国実用新案第204191652号明細書
2.特開2010-187901号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平3-173580号公報(周知技術を示す文献)
4.実願昭61-178928号(実開昭63-84253号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
5.特表2013-533024号公報
第4 引用文献の記載事項、引用発明及び周知技術
1 引用文献1及び引用発明
(1)原査定で引用された中国実用新案第204191652号明細書(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は強調のため当審にて付した。
ア 「
[図:0001428740000001.jpg]
」
(当審訳:
技術分野
[0001] 本実用新案は、個人の衛生防疫、大気中の粒子防護用品の分野に関するもので、具体的には、多層構造を持ち、単方向呼気弁を備えた空気粒子防護マスクに関するものである。)
イ 「
[図:0001428740000002.jpg]
」
(当審訳:
[0007] 本実用新案の利点は、ポリプロピレン熔噴繊維静電気フィルタ材料をフィルタ層として選択し、優れた防護性能を持ち、物理的な粒子エアロゾルのフィルタリング効率が99%に達し、単方向呼気弁を設置することで、吸気抵抗が120Pa未満、呼気抵抗が40Pa未満であり、標準規定の250Paをはるかに下回る。その総合的な防護性能は、中国の国家標準GB2626-2006 KN95等級の要求を超えている。鼻梁クリップとスポンジストリップの設置は、マスク着用後の顔へのフィット感を高め、優れた防護効果を発揮する。また、マスクは折り畳み式のデザインを採用しており、包装や携帯に便利である。)
ウ 「
[図:0001428740000003.jpg]
」
(当審訳:
[0009] 図2カップ型マスクの概略図である;)
エ 「
[図:0001428740000004.jpg]
」
(当審訳:
[0019] 実施例2
[0020] 図2に示すように、本実用新案は単方向呼気弁を備えたカップ型の空気粒子防護マスクで、主体と耳掛け6を含む。主体は、外層のスパンボンドまたはニードルパンチ不織布1、ポリプロピレンメルトブローン繊維静電気フィルタ材料の中間フィルタ層2、およびスパンレース不織布の内層3で構成され、マスク主体の環状の縁に沿って設けられた溶接圧着線4によって外層1、中間フィルタ層2、内層3が一体に溶接圧着されている。主体の上縁中央には鼻梁クリップ5が設けられ、内層と鼻梁クリップに対応する位置にはシールストリップが設置されており、マスクが着用者によりよくフィットするのを助け、良好な防護効果を発揮する。主体の中央には呼気弁7があり、呼吸抵抗を効果的に低下させる。耳掛け6には調整バックル8と9が付いており、耳掛けの長さを短くすることができ、異なる顔型の人が使用しやすくなっている。
[0021] 本実用新案は、ポリプロピレン熔噴繊維静電気フィルタ材料で作られた静電気空気粒子防護マスクであり、そのフィルタリング効率は99%以上、気流抵抗は120Pa未満であり、中国の国家標準GB2626-2006のKN95防護レベルの技術要件を満たしている。)
オ 「
[図:0001428740000005.jpg]
[図:0001428740000006.jpg]
」
(当審訳:
図2)
(2)引用発明
前記(1)オの図2より、実施例2の単方向呼気弁を備えたカップ型の空気粒子防護マスクは、マスクの主体の中央にある呼気弁7から左右に延びる線が形成され、その線によりマスクの主体が上部と下部に二分されていることが看取できる。
そうすると、前記(1)より、特に実施例2に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「単方向呼気弁を備えたカップ型の空気粒子防護マスクであって、
主体と耳掛け6を含み、
主体は、外層のスパンボンドまたはニードルパンチ不織布1、ポリプロピレンメルトブローン繊維静電気フィルタ材料の中間フィルタ層2、およびスパンレース不織布の内層3で構成され、マスク主体の環状の縁に沿って設けられた溶接圧着線4によって外層1、中間フィルタ層2、内層3が一体に溶接圧着され、
主体の上縁中央には鼻梁クリップ5が設けられ、内層と鼻梁クリップに対応する位置にはシールストリップが設置されており、
主体の中央には呼気弁7があり、
耳掛け6には調整バックル8と9が付いており、
マスクの主体の中央にある呼気弁7から左右に延びる線が形成され、その線によりマスクの主体が上部と下部に二分されている
空気粒子防護マスク」
2 引用文献2
原査定で引用された特開2010-187901号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0025】
【図1】図1A~図1Eは本発明の実施例1にかかるマスクを弾性部材を伸張させた状態で示しており、図1Aは同マスクを出荷時の状態で示す平面図、図1Bは同マスクのB-B線断面図、図1Cは同マスクのC-C線断面図、図1Dは同マスクのD-D線断面図、図1Eは使用時のマスクの背面図である。
・・・(後略)・・・」
「【0028】
図1に示すように、本実施例1の使い捨てマスク1は、不織布などで構成されており、着用者の口を覆うマスク部12と、前記マスク部12の両端に配置され着用者の耳に掛けられる一対の耳掛け部11とを備える。本マスク1は左右が対称で、かつ、マスクを開いた図1Eのように、上下が対称に形成されている。
【0029】
本実施例の場合、図1Bのマスク1を折り畳んだ状態において、マスク部12は互いに対面する上部12aおよび下部12bを備える。図1A~図1Cに示すように、前記上部12aおよび下部12bの前端12e同士は互いに連なっている。一方、図1Eのように、前記上部12aおよび下部12bにおける顔面に接触する側の上縁部12cおよび下縁部12dは、互いに開くようになっている。」
「【図1】
[図:0001428740000007.jpg]
」
上記記載で、マスク1の「上部12a」と「下部12b」の「前端12e」同士が互いに連なっているものであるから、当該「前端12e」は「上部12a」と「下部12b」との境界線である。
そして、図1Bは「マスク1を折り畳んだ状態」(【0029】)で、図1AのB-B線断面図(【0025】)であるから、図1Aは、マスクを折り畳んだ状態である。
そうすると、マスクを折り畳んだ状態である図1Aと使用時のマスクの背面図である図1Eとより、マスクを折り畳んだ状態は、「前端12e」で折り畳まれていることが看て取れる。
よって、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「折り畳み可能なマスクにおいて、マスクの上部と下部との境界線で上部と下部を折り畳むこと」
3 引用文献3
原査定で引用された特開平3-173580号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「 第1図乃至第5図は本発明の第1実施例の簡易マスクを示し、上面シート1と下面シート2とを積層(後方側を互に接着M)して一体化し前方側を開口してマスク本体Nを構成する。両シート1・2は前方側を折曲げて二層前端縁部11・21を形成し、後方側は中央部分では大で左右両側方部分では小とする奥行寸法とする適宜形状の切断端縁Pとし該切断端縁Pに沿った二層後端縁部12・22で接着Mする。」(第1ページ右下欄第20行~第2ページ左上欄第8行)
「4.図面の簡単な説明
第1図乃至第5図は本発明の第1実施例の簡易マスクを示し、第1図は平面図、・・・(中略)・・・第5図は立体形状における斜視図である。」(第2ページ右下欄第11行~17行)
「
[図:0001428740000008.jpg]
」
「
[図:0001428740000009.jpg]
」
上記記載において、「二層後端縁部12・22」は接着Mされるから、「二層後端縁部12・22」は上面シート1と下面シート2との境界線ということができる。
また、第1図は、簡易マスクを折り畳んだ状態ということができ、「二層後端縁部12・22」で折り畳まれていることが看て取れる。
そうすると、引用文献3には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「折り畳み可能なマスクにおいて、マスクの上面シートと下面シートとの境界線で上面シートと下面シートを折り畳むこと」
4 引用文献4
原査定で引用された実願昭61-178928号(実開昭63-84253号)のマイクロフィルム(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「 次ぎに本考案に係るマスクの実施例を図面第1図乃至第6図に基づいて説明する。
図中1及び2は病菌や塵埃の通過を阻止し得る材質からなる一対の構成片で、複数枚に重ねた不織布を使用し一方の構成片1は基板より平面略楕円形に裁断し、且つ他方の構成片2も前記構成片1と略同型の平面略楕円形で被接合部側の側端に、使用時口下の顎部に馴染む様に弧状の凹部3を形成してある。
4は両構成片1、2の接合部で、重ね合わせた一対の構成片1、2の一側端をホットメルト又はウエルダー等により熱溶着して形成し、この接合部4を基に構成片1、2を重ね合わせてシート状で扁平なマスク体a、又は両構成片1、2を拡開して展開可能としたマスク体a’を形成する。
・・・(中略)・・・
6及び7は形成したマスク体aの左右両端寄りに設けた止め部材で、ウレタン製の紐体を使用し夫々両端を構成片1、2の端部寄りへ一体に熱溶着して、マスクAを装着したとき耳に掛けてマスクAを止める。
尚この止め部材6、7は耳へ掛ける構成を示したが、これを頭部へ掛ける構成としても良い。
以上この実施例に基づくマスクAを使用する場合は、互いに重なり合ってシート状となっているマスク体aの構成片1、2を図面第6図に示すように開いて、そのままマスク体a’を顔に当てこれによって口と鼻を覆った後、マスク体aの両端に設けた止め部材6、7を耳に掛けてマスクAを止めると共に、ノーズクランプ5を山形状に曲げてこれを鼻の外形に合わせながら顔へ馴染ませて使用するものである。
又このマスクAを包装したり保管する場合は、接合部4を基にして両構成片1、2を互いに重ね合わせて全体をシート状に形成してから、包装用袋等に収容してマスクAを包装或いは保管しておくものである。」(明細書第4ページ第16行~同第7ページ第4行)
「4.図面の簡単な説明
・・・(前略)・・・、第2図は仝上底面図、第3図は構成片を重ねた状態の正面図・・・(中略)・・・、第6図は使用状態の側面図・・・(中略)・・・
尚図中1及び2は構成片、4は接合部、aはマスク体、6、7は止め部材である。」(明細書第9ページ第2行~第11行)
「
[図:0001428740000010.jpg]
」
「
[図:0001428740000011.jpg]
」
「
[図:0001428740000012.jpg]
」
上記記載において、マスクAは一対の構成片1及び2からなり、接合部4で構成片1、2は接合されているから、接合部4は、構成片1と構成片2との境界線ということができる。
また、マスクAを包装或いは保管する場合、接合部4を基にして両構成片1、2を互いに重ね合わせて全体をシート状に形成するから、折り畳み可能なマスクということができ、接合部4で折り畳んでいるということができる。
そうすると、引用文献4には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「折り畳み可能なマスクにおいて、マスクの構成片1と構成片2との境界線で構成片1と構成片2を折り畳むこと」
5 引用文献5
原査定で引用された特表2013-533024号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
「【0023】
「ハーネス」は、マスク本体を着用者の顔面上で支持する助けとなる構造体又は部品の組み合わせを意味する。」
「【0041】
【図1】本発明による、鼻領域32を断面で示した、平坦折り畳み式濾過フェイスピースレスピレータ10の部分切開斜視背面図。
【図2】図1に示すレスピレータ10の部分切開左側面図。
【図3】折り重なった状態のレスピレータ10の部分切開底面図。
・・・(後略)・・・」
「【0042】
図1及び2は、着用者の顔に装着するために開いた状態の平坦折り畳み式濾過フェイスピースレスピレータ10の例を示す。このレスピレータ10を使用して、呼吸するための清浄な空気を着用者に提供することができる。図示するように、濾過フェイスピースレスピレータ10は、マスク本体12及びハーネス14を含む。マスク本体12は、吸気が着用者の呼吸器系に入る前に通過する必要がある濾過構造体16を有する。濾過構造体16は、着用者が清浄な空気を吸い込むことができるように、周囲環境から汚染物質を取り除く。マスク本体12は、頂部18及び底部20を含む。頂部18及び底部20は、マスク本体12の中央部分を横切って長さ方向に延びる境界線22によって分けられる。境界線は、折り畳み線、接着線、溶着線、シーム線、又はこれらの線の組み合わせによって形成されてもよい。マスク本体12は、上部セグメント24a及び下部セグメント24bを含む周辺部23も含む。ハーネス14は、タブ28a及び28bに固定されるストラップ26を有する。ノーズクリップ30は、マスク本体12上の頂部18上の、その外側表面上又はカバーウェブの下に配置されてよい。ノーズクリップ30は、周辺部23の上部セグメント24aに沿って鼻領域32に配置される。図の切開断面図に示すように、濾過構造体16は、マスク本体12の鼻領域32でそれ自体の上に折り重ねられている。折り重なった濾過構造体16は、0.5mmを超えるたわみを有し、折り重なった状態のときに少なくとも40%の回復性を有する。より典型的には、たわみは0.8mmより大きく、回復率は少なくとも50%である。より好ましい実施形態では、たわみは0.9mmより大きく、回復率は少なくとも約55%である。折り重なったマスク本体のたわみ及び回復率は、以下の実施例の項に記載のたわみ及び回復性試験に従って測定され得る。」
「【図1】
[図:0001428740000013.jpg]
」
「【図2】
[図:0001428740000014.jpg]
」
「【図3】
[図:0001428740000015.jpg]
」
左側面図である図2より、境界線22とタブ28aは、マスクの上下方向において重なった位置にあることが理解できる。また、折り重なった状態の底面図である図3から、タブ28a、28bは、マスク本体12の左右方向において両側にはみ出していることが理解できる。
そうすると、マスクを正面から見た場合、タブ28a、28bは、境界線の延長線上にあることになり、ハーネス14は、タブ28a及び28bに固定されるストラップ26を有するから、上記記載より、ハーネス14は、マスクの正面からみた場合、境界線22の延長線上においてマスク本体12と固定されていると認められる。
よって、引用文献5には、次の技術事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「マスクにおいて、正面からみて、境界線の延長線上においてマスク本体に固定された、マスク本体を着用者の顔面上で支持する助けとなる構造体であるハーネスを備えること」
6 周知技術
前記2~4より、「折り畳み可能なマスクにおいて、マスクの第1の部分と第2の部分の境界線において第1の部分と第2の部分を折り畳むこと」は、当業者にとって周知な技術(以下「周知技術」という。)である。
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「空気粒子防護マスク」が含む「主体」は、本願発明の「マスク本体」に相当する。
(2)引用発明は、「マスクの主体の中央にある呼気弁7から左右に延びる線」により「マスクの主体が上部と下部に二分されている」から、当該「線」は、マスクの主体の「上部」と「下部」とを分ける境界線ということができる。
そして、「上部」及び「下部」を、それぞれ「第1の部分」及び「第2の部分」と称することは任意である。
よって、引用発明の「マスクの主体の中央にある呼気弁7から左右に延びる」「線」は、本願発明の「前記マスク本体を第1の部分と第2の部分とに分離する境界線」に相当する。
(3)引用発明の「呼気弁7」は、「マスクの主体の中央にあ」るから、使用中は着用者の口の上に呼気弁7が配置されるものであることは明らかである。
また、「線」は、「呼気弁7から左右に延びる」から、「呼気弁7」は、線上に配置されている。
よって、前記(2)を踏まえれば、本願発明と引用発明とは、「前記境界線上かつ前記マスク本体の中央領域に配置されることで使用中に着用者の口の上に本質的に配置される呼気弁を更に有」する点で一致する。
(4)引用発明の「線」は、「呼気弁7から左右に延びる」ものであるから、呼気弁7の場所には存在していない。
よって、本願発明と引用発明とは、「前記境界線が前記弁の場所で不連続であ」る点で一致する。
(5)本願の明細書【0016】には、「「ハーネス」は、マスク本体が着用者の顔面上で支持されるように補助する構造体又は部品の組み合わせを意味する。」と記載されていることから、当該記載を参酌すると、本願発明の「ハーネス」は、「マスク本体が着用者の顔面上で支持されるように補助する構造体」であると解される。
そして、引用発明の「耳掛け6」は、耳に掛けることで、空気粒子防護マスクを着用者の顔面上で支持するための構造体であることは明らかであるから、本願発明と引用発明とは、「着用者の顔面上で支持するための構造体を備える」点で共通する。
(6)引用発明の「空気粒子防護マスク」は、マスクの「主体」が「外層のスパンボンドまたはニードルパンチ不織布1、ポリプロピレンメルトブローン繊維静電気フィルタ材料の中間フィルタ層2、およびスパンレース不織布の内層3で構成され、マスク主体の環状の縁に沿って設けられた溶接圧着線4によって外層1、中間フィルタ層2、内層3が一体に溶接圧着され」たものであり、「ポリプロピレン熔噴繊維静電気フィルタ材料の中間フィルタ層3」を含むものであるから、濾過により防護するマスクである。
よって、引用発明の「空気粒子防護マスク」は、本願発明の「濾過フェイスピース呼吸マスク」に対応する。
(7)一致点及び相違点
前記(1)~(6)によれば、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。
〈一致点〉
「マスク本体を備える濾過フェイスピース呼吸マスクであって、前記マスク本体は、前記マスク本体を第1の部分と第2の部分とに分離する境界線を有し、前記呼吸マスクは、前記境界線上かつ前記マスク本体の中央領域に配置されることで使用中に着用者の口の上に本質的に配置される呼気弁を更に有し、前記境界線が前記弁の場所で不連続であり、
着用者の顔面上で支持するための構造体を備える
濾過フェイスピース呼吸マスク。」
〈相違点〉
相違点1
本願発明は、「折り畳み可能」であり、「前記境界線によって、前記マスク本体の前記第1の部分及び前記第2の部分の少なくとも一部を前記境界線に沿って折り畳むことが可能であ」るのに対して、引用発明は、当該事項を特定していない点
相違点2
「着用者の顔面上で支持するための構造体」について、本願発明は「前記境界線の延長線上において前記マスク本体に固定されたハーネス」であるのに対して、引用発明は「耳掛け6」である点
2 判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用文献1には、「マスクは折り畳み式のデザインを採用しており、包装や携帯に便利である。」([0007])と記載されており、引用発明のマスクは、折り畳み可能とすることの示唆がある。
また、マスクの第1の部分と第2の部分の境界線において第1の部分と第2の部分を折り畳むことは、周知技術(前記第4の6)である。
そうすると、引用発明は、マスクを折り畳み可能とすることの動機付けがあり、上記周知技術を踏まえ、引用発明における「線」を折り畳むための「線」とすることで、相違点1に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項である。
(2)相違点2について
引用文献5記載事項は、次のとおりである。
「マスクにおいて、正面からみて、境界線の延長線上においてマスク本体に固定された、マスク本体を着用者の顔面上で支持する助けとなる構造体であるハーネスを備えること」
引用発明と引用文献5記載事項は、いずれもマスクに係るものであり、その技術分野を共通にするものである。
そして、引用発明の「耳掛け6」は、耳に掛けることでマスクを着用者の顔面上で支持するためのものであり、引用文献5記載事項の「ハーネス」も、マスクを着用者の顔面上で支持するためのものであるから、引用発明の「耳掛け6」を同様の目的を果たす引用文献5記載事項の「ハーネス」とすることは、当業者が容易に想到し得た事項であり、また、引用発明に引用文献5記載事項を適用する際に、阻害要因は見当たらない。
よって、引用発明において、引用文献5記載事項を適用して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
3 効果についての判断
本願発明が奏する効果は、引用発明、引用文献5記載事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
4 請求人の主張についての判断
請求人は、審判請求書において、「引用文献5において、ハーネス14は、境界線22の延長線より外側の位置でタブ28a,28bに固定されております。従いまして、使用時には、ハーネス14に加わる力が境界線22の延長線上から外側方向にずれた位置で印加されることになります。
また、他の引用文献1~4にも、本願発明のように、例えば、『前記境界線の延長線上において前記マスク本体に固定されたハーネスを備える』ことは何ら開示も示唆もされておりません。」旨主張する(審判請求書3頁)。
(1)「境界線の延長線上」の意味について
本願の明細書には、「境界線の延長線上」との記載はされていない。
そして、本願の明細書及び図面には「ハーネス」について、以下の記載がある。
「【0016】
用語集
・・・(中略)・・・
「ハーネス」は、マスク本体が着用者の顔面上で支持されるように補助する構造体又は部品の組み合わせを意味する。
・・・(後略)・・・」
「【0029】
図1は、着用者の顔の上で開かれた状態の、折り畳み可能な濾過フェイスピース呼吸マスク10の一例を示す。呼吸マスク10は、着用者が呼吸するための濾過空気を提供するために、本開示に従って使用されてもよい。図示するように、濾過フェイスピース呼吸マスク10は、マスク本体12及び任意選択的なハーネス14を含む。ハーネス14は、フランジ28aに取り付けられた(ここでは、ステープル留めされた)ストラップ26を有する。フランジは、例えば、PCT特許出願国際公開第2010/080201号に記載されているようなものである。
【0030】
マスク本体12は、吸気が着用者の呼吸器系に入る前に通過しなければならない濾過構 造体16を有する。濾過構造体16は周囲環境から汚染物質を取り除き、着用者が濾過空 気を吸い込むようにさせる。マスク本体12は、(ここでは頂部として示されている)第 1の部分18と(ここでは下部として示されている)第2の部分20とにマスク本体を分 離する、境界線22を含む。図1に示す境界線22は、マスク本体12の中央領域19を 横切って横方向に延びている。マスク本体12の中央領域19の境界線22上に呼気弁1 00が配置される。境界線22は、空気が内部気体空間から弁を介して外部に通ることが できるように、弁100の場所で中断されている、又は十分に不連続である。マスク本体 12は、上部セグメント24a及び下部セグメント24bを含む外周23も含む。」
そして、図1は次のとおりである。
「【図1】
[図:0001428740000016.jpg]
」
また、「図1に示した呼吸マスク10の概略正面図である」(【0017】)図2、及び「折り畳まれた状態における図1のフェイスピース呼吸マスク10の概略正面図である」(【0017】)図3は、それぞれ、次のとおりである。
「【図2】
[図:0001428740000017.jpg]
」
「【図3】
[図:0001428740000018.jpg]
」
「図1に示した呼吸マスク10の概略正面図である」図2には、ストラップ26は、マスク本体12の両側からはみ出した部分に取り付けられていることが看て取れ、「折り畳まれた状態における図1のフェイスピース呼吸マスク10の概略正面図である」図3を合わせてみると、上記「マスク本体12の両側からはみ出した部分」は、「フランジ28a」であることが理解できるものであり、当該理解は「ハーネス14は、フランジ28aに取り付けられた(ここでは、ステープル留めされた)ストラップ26を有する。」との記載(【0029】)とも整合する。
そして、「概略正面図である」図3は、「フランジ28a」が境界線22の延長線上にあるといえるものであるから、「フランジ28aに取り付けられた(ここでは、ステープル留めされた)ストラップ26を有する」「ハーネス14」は、濾過フェイスピース呼吸マスク10の正面からみた場合、境界線22の延長線上においてマスク本体12に取り付けられていると解される。
そうすると、本願発明の「境界線の延長線上」とは、濾過フェイスピース呼吸マスク10の正面からみた場合に、境界線の延長線上であることを含むと理解される。
(2)審判請求書の主張について
前記(1)のとおり、本願発明の「境界線の延長線上」は、「濾過フェイスピース呼吸マスク10の正面からみた場合に、境界線の延長線上であることを含む」ものであり、引用文献5記載事項は、「マスクにおいて、正面からみて、境界線の延長線上においてマスク本体に固定された」「ハーネスを備えること」であるから、請求人が主張する構成は、引用文献5に記載された事項である。
そして、請求人の「引用文献5において、ハーネス14は、境界線22の延長線より外側の位置でタブ28a,28bに固定されております。従いまして、使用時には、ハーネス14に加わる力が境界線22の延長線上から外側方向にずれた位置で印加されることになります。」との主張については、
引用文献5は、タブ28a、28bが、境界線の延長線上にあり、タブ28a及び28bにストラップ26が固定されるものである(前記第4の5)から、当該主張は採用できない。
よって、請求人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献5記載事項及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-009613