特許拒絶査定不服審判
2024-008314
箱
- 審判番号
- 2024-008314
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-052639
- 請求日
- 2024年05月20日
- 審決日
- 2025年11月25日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大王製紙株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 大野 明良
- 分類
- P18 .121-Z (B65D) / P18 .575-Z (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-52639号「箱」拒絶査定不服審判事件〔令和3年9月30日出願公開、特開2021-151882号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年3月24日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年10月27日付け:拒絶理由通知
同年12月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 2月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月20日 :拒絶査定の謄本の送達)
同年 5月20日 :審判請求、手続補正書の提出
同年 7月23日 :上申書の提出
第2 令和6年5月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年5月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「側板と、
組み立て時に前記側板から内部側に折り込まれる内フラップと、
前記側板から前記内フラップの表側に折り込まれる外フラップと、
後記箱の組み立て前の状態である折り畳み体を製造する製造段階において、組み立て時に内部側を向く前記外フラップの裏面のうち、前記内フラップと重なる部分に設けられる無線モジュールと、
を備え、
前記無線モジュールは、長手方向と短手方向とを有する矩形状に形成され、
前記外フラップは、前記側板と接続して折り込まれる一辺が長手方向となる矩形状に形成され、
前記無線モジュールは、該無線モジュールの長手方向が前記外フラップの前記長手方向に対して直交する方向に沿うよう配置される、
箱。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和5年12月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「側板と、
組み立て時に前記側板から内部側に折り込まれる内フラップと、
前記側板から前記内フラップの表側に折り込まれる外フラップと、
組み立て時に内部側を向く前記外フラップの裏面のうち、前記内フラップと重なる部分 に設けられる無線モジュールと、
を備え、
前記無線モジュールは、長手方向と短手方向とを有する矩形状に形成され、
前記外フラップは、前記側板と接続して折り込まれる一辺が長手方向となる矩形状に形成され、
前記無線モジュールは、該無線モジュールの長手方向が前記外フラップの前記長手方向に対して直交する方向に沿うよう配置される、
箱。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「無線モジュール」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項等
ア 引用文献2について
(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶理由で引用された文献である米国特許出願公開第2004/0070504号明細書(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。下線は当審において付したものであり、翻訳は当審で作成し、「・・・」は省略を示す。以下同様。
「[0022] The present invention utilizes the overlapping areas 42, 44 and positions an RF transponder 12 in the overlapping areas 42, 44 so that the transponder 12 is semi-covert in nature. The transponder 12 is semi-covert in that it is visible when the container blank is not erected, but not easily visible when the container is erected and/or closed. It is desirable to position an RF transponder on a container 20 for use in such things as inventory tracking and identification. It is also desirable to position the RF transponder 12 on the container 20 so that the transponder 12 may not be easily tampered with or removed by a user.」
(翻訳:
[0022] 本発明は、重複領域42,44を利用し、RF応答機12を重複領域42,44に置き、それにより本質的に半隠蔽的である。応答機12は、容器の用紙が組み立てられていないときには見えるが、容器20が組み立てられた及び/又は閉じられたときには簡単には見えないという点で、半隠蔽的である。在庫の追跡や識別などに使用するために、容器20にRF応答機12を配置することが望ましい。また、応答機12がユーザーによって簡単に改ざんされたり取り外されたりすることがないように、RF応答機12を容器20に配置することが望ましい。)
「[0028] Referring to the figures, FIGS.1-3 show a blank 10a and a container 20a in the form of a box. FIG.1 shows the external surface 14a of the blank 10a, FIG.2 shows the internal surface 16a of the blank 10a, and FIG.3 shows the blank 10a after it has been erected into a box 20a. The blank 10a includes interconnected body panels 22, end flaps 24a, side flaps 24b, and an assembly flap 24c, which are separated from one another along score lines 28. The flaps 24a, 24b, 24c and panels 22 are foldable along the score lines 28. The end and side flaps 24a, 24b are connected to the top and bottom edges of the panels 22, while the assembly flap 24c is connected to the side edge of one of the body panels.」
(翻訳:
[0028] 図面を参照すると、図1-3は箱状をなす用紙10a及び容器20aを示す。図1は用紙10aの外面14aを示し、図2は用紙10aの内面16aを示し、図3は箱20aに組み立てられた後の用紙10aを示す。用紙10aは、相互接続された本体パネル22と、端部フラップ24aと、横フラップ24bと、組み立てフラップ24cを含み、これらは折り線28に沿って互いに分離されている。フラップ24a,24b,24c及びパネル22は折り線28に沿って折り畳み可能である。端部フラップ24a及び横フラップ24bはパネル22の上端及び下端に接続され、組み立てフラップ24cは本体パネルの一つの側面端に接続される。)
「[0029] In assembling the container blank 10a in FIGS.1 and 2 to form the box of FIG.3, the free ends of the container blank 10a are brought together and joined by the assembly flap 24c, ・・・. The joined container blank then has a three-dimensional shape and may be assembled into a finished container 20a. The finished container is assembled by folding the end flaps 24a toward each other along the score lines 28 until they form a flat surface relative to one another, and folding the side flaps 24b along the score lines 28 over the folded end flaps to form a flat surface.」
(翻訳:
[0029] 図1,2の容器の用紙10aを組み立てて図3の箱を形成する際、容器の用紙10aの自由端が運ばれ、組み立てフラップ24cに接合され、・・・。接合された容器の用紙10aは三次元形状を有し、完成した容器20aに組み立てられる。完成した容器は、端部フラップ24aを折り目線28に沿って互いに向かって折り曲げて、互いに対して平坦な面を形成し、折り曲げられた端部フラップの上に折り目線28に沿って横フラップ24bを折り曲げて、平坦な面を形成することによって組み立てられる。)
「[0030] When the blank 10a is erected, the end and side flaps 24a, 24b overlap one another to close the openings 26 in the box 20a, while the assembly flap 24c overlaps one of the panels 22. The areas 42, 44 where the flaps 24a, 24b,24c overlap one another and the panels 22 is shown by cross-hatching in FIGS.1 and 2. The overlapping areas 42 positioned around the bottom flaps 24a, 24b and on the side of the panel where the assembly flap 24c attaches are typically not visible when the top of the container 20a is open or closed.」
(翻訳:
[0030] 用紙10aが組み立てられたとき、端部フラップ24a及び横フラップ24bが、箱20aの開口部26を閉じるために互いに重なり合うと同時に、組み立てフラップ24cはパネル22の一つと重なる。フラップ24a,24b,24cが互いに又はパネルと重なる領域42,44は、図1,2にクロスハッチングで示される。底部のフラップ24a,24b及び組み立てフラップ24cが取り付けられるパネルの側面に配置された重なり合う領域42は、通常、容器20aの上部が開いているとき又は閉じているときには見えない。)
「[0033] In another embodiment, an RF transponder 12c is positioned on an internal surface 16a of one of the side flaps 24b of the blank 10a. When the container 20a is erected, the transponder 12c will be positioned in the center of the overlapped portion created between the side flap 24b and the overlying end flap 24a. For example, if the box is 12 inches wide by 18 inches long, and the bottom side flaps 24b are 6 inches wide, thetransponder’s center will be 3 inches from each of two adjacent edges of one of the 6×12 inch side flaps.」
(翻訳:
[0033] 別の実施形態では、RF応答機12cが、用紙10aの横フラップ24bの内面16aに配置される。容器20aが組み立てられたとき、応答機12cは、横フラップ24bと重なる端部フラップ24aとの間に形成される重なり部分の中央に配置される。たとえば、箱の幅が12インチ、長さが18インチで、底部の横フラップ24bの幅が6インチの場合、応答機の中心は、6×12インチの横フラップの二つの隣接する端からそれぞれ3インチの位置になる。)
「[0056] The RF transponder 12 is preferably applied to the container blank during the manufacturing process. One way for applying the transponder to a blank is by utilizing a label or other applicator, which applies the substrate 34 to either the external 14 or internal 16 surfaces of the blank 10 during the manufacturing process. The label applicator may be positioned within the machine that is utilized to form the corrugated sheet into a blank 10.」
(翻訳:
[0056] RF応答機12は、製造工程中に容器の用紙に貼り付けることが好ましい。応答機を用紙に貼り付ける一つの方法は、ラベルやその他のアプリケーターを用いて、製造工程中に用紙10の外面14又は内面16に基板34を貼り付けることである。ラベルアプリケーターは、波形シートを用紙10に成形する機械内に設置され得る。)
「[0057] With certain types of container blanks, such as those depicted in FIGS. 1-6, the Flexo-Folder-Gluer slots or cuts and scores the corrugated blank and folds and glues the assembly flap 24c to the adjoining panel, before ejecting and stacking the blanks. ・・・ In yet another embodiment, the label applicator is positioned before the feed section, before or during the print section, or before or during the slotting/cutting/scoring section. When placed in any of these locations, the transponder 12 may either be positioned on an internal or external surface of the corrugated blank.」
(翻訳:
[0057] 図1~6に示すような特定のタイプの容器の用紙の場合、フレキソフォルダーグルアーは、段ボール用紙にスロット加工または切断加工を施し、折り目を付け、組み立てフラップ24cを隣接するパネルに折り曲げて接着した後、用紙を排出して積み重ねる。・・・さらに別の実施形態では、ラベル貼付機は、供給セクションの前、印刷セクションの前またはその途中、またはスロット加工/切断/罫書きセクションの前またはその途中に配置される。これらのいずれかの位置に配置された場合、応答機12は、波形ブランクの内面または外面のいずれに配置されてもよい。)
「
[図:0001431693000001.jpg]
」
(イ)引用文献2の記載から認定できる事項
上記(ア)から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 横フラップ24cは、本体パネル22と接続して折り込まれる一辺が長手方向となる矩形状に形成されていること([0028]、Figs.1~3)。
b RF応答機12cは矩形状であること(Figs.1~2)。
c RF応答機12は、組み立てフラップ24cを隣接するパネルに折り曲げて接着した用紙を製造する製造工程中に容器の用紙に貼り付けること([0056]~[0057])
(ウ)引用文献2に記載された発明
上記(ア)及び(イ)から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「用紙10aは、相互接続された本体パネル22と、端部フラップ24aと、横フラップ24bと、を含み、これらは折り線28に沿って互いに分離され、フラップ24a,24b及びパネル22は折り線28に沿って折り畳み可能であり([0028])、
接合された容器の用紙10aは三次元形状を有し、完成した容器20aに組み立てられ、完成した容器は、端部フラップ 24aを折り目線28に沿って互いに向かって折り曲げて、互いに対して平坦な面を形成し、折り曲げられた端部フラップの上に折り目線28に沿って横フラップ24bを折り曲げて、平坦な面を形成することによって組み立てられ([0029])、
RF応答機12は、組み立てフラップ24cを隣接するパネルに折り曲げて接着した用紙を製造する製造工程中に容器の用紙に貼り付けられ(上記(イ)c)、
RF応答機12cが、用紙10aの横フラップ24bの内面16aに配置され、容器20aが組み立てられたとき、応答機12cは、横フラップ24bと重なる端部フラップ24aとの間に形成される重なり部分の中央に配置され([0033])、
RF応答機12cは矩形状であり(上記(イ)b)、
横フラップ24cは、本体パネル22と接続して折り込まれる一辺が長手方向となる矩形状に形成されている(上記(イ)a)、
箱20a([0028])」
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)各構成及び全体構成について
引用発明の「本体パネル22」、「端部フラップ24a」、「端部フラップの上」、「横フラップ24b」、「横フラップ24bの内面16a」、「組み立てフラップ24cを隣接するパネルに折り曲げて接着した用紙」、「RF応答機12c」、「箱20a」は、それぞれ、「側板」、「内フラップ」、「内フラップの表側」、「外フラップ」、「外フラップの裏面」、「箱の組み立て前の状態である折り畳み体」、「無線モジュール」、「箱」に相当する。
そうすると、引用発明の「用紙10aは、相互接続された本体パネル22と、端部フラップ24aと、横フラップ24bと、を含み、これらは折り線28に沿って互いに分離され、フラップ24a,24b及びパネル22は折り線28に沿って折り畳み可能であり、接合された容器の用紙10aは三次元形状を有し、完成した容器20aに組み立てられ、完成した容器は、端部フラップ24aを折り目線28に沿って互いに向かって折り曲げて、互いに対して平坦な面を形成し、折り曲げられた端部フラップの上に折り目線28に沿って横フラップ24bを折り曲げて、平坦な面を形成することによって組み立てられ、」「RF応答機12は、組み立てフラップ24cを隣接するパネルに折り曲げて接着した用紙を製造する製造工程中に容器の用紙に貼り付けられ、RF応答機12cが、用紙10aの横フラップ24bの内面16aに配置され、容器20aが組み立てられたとき、応答機12cは、横フラップ24bと重なる端部フラップ24aとの間に形成される重なり部分の中央に配置され、」「横フラップ24cは、本体パネル22と接続して折り込まれる一辺が長手方向となる矩形状に形成されている」ことはそれぞれ、本件補正発明の「側板と、組み立て時に前記側板から内部側に折り込まれる内フラップと、前記側板から前記内フラップの表側に折り込まれる外フラップと、」「後記箱の組み立て前の状態である折り畳み体を製造する製造段階において、組み立て時に内部側を向く前記外フラップの裏面のうち、前記内フラップと重なる部分に設けられる無線モジュールと、を備え、」「前記外フラップは、前記側板と接続して折り込まれる一辺が長手方向となる矩形状に形成され」ることに相当する。
(イ)「無線モジュール」の形状について
引用発明の「RF応答機12cは矩形状であ」ることは、本件補正発明の「前記無線モジュールは、長手方向と短手方向とを有する矩形状に形成され」ることと、「前記無線モジュールは、矩形状に形成され」る限りにおいて一致する。
イ 一致点及び相違点
上記アから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「側板と、
組み立て時に前記側板から内部側に折り込まれる内フラップと、
前記側板から前記内フラップの表側に折り込まれる外フラップと、
後記箱の組み立て前の状態である折り畳み体を製造する製造段階において、組み立て時に内部側を向く前記外フラップの裏面のうち、前記内フラップと重なる部分に設けられる無線モジュールと、を備え、前記無線モジュールは、矩形状に形成され、前記外フラップは、前記側板と接続して折り込まれる一辺が長手方向となる矩形状に形成される、箱」
[相違点]
矩形状の無線モジュールについて、本件補正発明では、「長手方向と短手方向とを有する矩形状に形成され、」「該無線モジュールの長手方向が前記外フラップの前記長手方向に対して直交する方向に沿うよう配置される」のに対し、引用発明では、そのような形状及び配置を有するか不明である点。
(4)判断
ア 相違点について
上記相違点について検討する。
矩形状のRF応答機12として、長手方向と短手方向とを有するものは一般に広く知られているものである。そして、引用発明において、RF応答機12cの矩形形状として、長手方向と短手方向とを有するものを採用することは、当業者が適宜設計し得る事項である。
また、引用文献2には、「本発明は、重複領域42,44を利用し、RF応答機12を重複領域42,44に置き、それにより本質的に半隠蔽的である。応答機12は、容器の用紙が組み立てられていないときには見えるが、容器20が組み立てられた及び/又は閉じられたときには簡単には見えないという点で、半隠蔽的である。・・・応答機12がユーザーによって簡単に改ざんされたり取り外されたりすることがないように、RF応答機12を容器20に配置することが望ましい。」([0022])と記載されており、引用発明において、容器20が組み立てられた及び/又は閉じられたときには簡単には見えない位置にRF応答機12を配置する([0027])限り、RF応答機12を配置する具体的な角度については、当業者が適宜決定し得るものである。そして、引用発明では、RF応答機12cが重なり部分の中央に配置されるものである。してみると、上述のようにRF応答機12cの形状として、長手方向と短手方向とを有する矩形状を採用した際、より確実に見えないよう、横フラップ24bの長手方向に沿ってRF応答機12cの短手方向を配置する、すなわち、RF応答機12cの長手方向を横フラップ24bの長手方向に対して直交する方向に沿うよう配置することは、当業者が適宜設計し得る事項であり、格別な困難性はない。
イ 本件補正発明の作用効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のもので、格別顕著なものということはできない。
ウ 請求人の主張について
(ア)審判請求書における主張の概要
請求人は、本件補正発明の効果について、以下のとおり主張する。
「一般的な無線モジュールの製造過程において、長手方向と短手方向とを有する矩形状に形成される無線モジュールは、短手方向に沿って複数個が並列配置されて、長尺状の台紙に貼付されたものが作製されます。
また、本願発明のように、箱1(例えば本願明細書の段ボール箱1)の組み立て時に内部側を向く外フラップ4a、4bの裏面41のうち、内フラップ5a、5bと重なる部分に無線モジュール(例えば本願明細書のRFIDラベル6)を設けるためには、一般的には、箱1が展開された状態において外フラップ4a、4bの裏面41の所定位置に無線モジュール6が貼付する工程が実施されます。
この工程では、箱1は、例えば引用文献2のFig.1やFig.2など図示されるような組み立て前の展開された状態であり、矩形状の外フラップ4a、4bのうち、側板2a、2bと接続して折り込まれる一辺の延在方向、すなわち外フラップ4a、4bの長手方向に沿って箱1が移動されます。一方、無線モジュール6は、長尺状の台紙に複数個が貼付されたものが台紙の長手方向に沿って移動され、その過程において無線モジュール6が1個ずつ外フラップ4a、4bの所定位置に貼付されます。つまり、台紙及び無線モジュール6の移動方向は、無線モジュール6の長手方向と直交する方向となります。
このような技術常識と、本願明細書の段落0021、0033、0035、0036、図1などの記載と、を参酌しますと、本願発明は、上記相違点1の構成によって、箱1の組み立て前の状態である折り畳み体1Aを製造する製造段階において無線モジュール6を箱1の外フラップ4aに付加する際に、長尺状の台紙上で複数の無線モジュール6が連なる方向(つまり上記工程において台紙及び無線モジュール6が流れる方向)と、展開状態の箱1が流れる方向とを一致させることができることは自明であるものと思料致します。これにより、本願発明は、無線モジュール6付きの箱1を連続して大量に生産する際の生産効率を向上できる、という顕著な効果を奏することも自明であるものと思料致します。」(請求書第3ページ第13行~第4ページ第10行)
(イ)主張についての検討
上記主張における「無線モジュール6付きの箱1を連続して大量に生産する際の生産効率を向上できる」効果は、無線モジュールの向きだけで奏されるものではなく、上記前提として記載されている、無線モジュールを長尺状の台紙に貼付けておく向き及び展開された状態の箱を移動する方向の全てを備える限りにおいて奏されるものであると認められる。
しかし、上記主張において前提とされている「長手方向と短手方向とを有する矩形状に形成される無線モジュール」が、「短手方向に沿って複数個が並列配置されて、長尺状の台紙に貼付されたもの」であり、かつ、「箱1は、・・・組み立て前の展開された状態であり、矩形状の外フラップ4a、4bのうち、側板2a、2bと接続して折り込まれる一辺の延在方向、すなわち外フラップ4a、4bの長手方向に沿って箱1が移動され」る態様は、本件補正発明において何ら特定されていない。
また、仮に、上記前提に記載された態様がそれぞれ技術常識であったとしても、無線モジュールを長尺状の台紙に貼付けておく向きや、展開された状態の箱を移動する方向については、当然に他の態様も存在することは明らかであって一に定まるものではない。してみると、上記前提に記載された態様とは異なる態様によって製造される箱も、本件補正発明の範囲に包含されると認められるところ、そのような場合においても上記効果が奏されるとは認められない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。
(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年5月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年12月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献2:米国特許出願公開第2004/0070504号明細書
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2に記載の発明は、上記第2の[理由]2(2)ア(ウ)に記載した引用発明のとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「無線モジュール」に係る限定事項のうち「後記箱の組み立て前の状態である折り畳み体を製造する製造段階において、」を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)~(5)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-008314