特許拒絶査定不服審判
2023-010737
流体を分配するためのデバイス、デバイス用のカートリッジ、製造方法、および始動方法
- 審判番号
- 2023-010737
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-572452
- 請求日
- 2023年06月28日
- 審決日
- 2025年07月22日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ジェーベー デヴェロップメント
- 【請求人代理人】板谷 康夫
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 長清 吉範
- 審判官 木原 裕二
- 分類
- P18 .121-Z (B65D) / P18 .57 -Z (B65D) / P18 .575-Z (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-572452「流体を分配するためのデバイス、デバイス用のカートリッジ、製造方法、および始動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月3日国際公開、WO2019/002517、令和2年8月27日国内公表、特表2020-525366〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、2018年(平成30年)6月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年(平成29年)6月28日、2018年(平成30年)1月8日、(FR)フランス国)を国際出願日とする特許出願であって、令和2年5月25日及び令和3年6月22日に手続補正がなされ、令和4年5月17日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月24日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和5年2月20日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して同年6月28日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和5年6月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和5年6月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の全文を補正するものであって、その補正内容は、特許請求の範囲について、【請求項1】を
「【請求項1】
流体を分配するためのデバイス(101,102,103)であって、
- 前記流体を収容するように構成された内部容積を有するポケット(2)、
- 圧力の影響下で変形可能な壁(22)を変形させることにより前記ポケットの前記内部容積を減少させるように構成された押圧面(25)、
- 分配空洞(8)を備えている分配部品(23)、
- 出口(24)、
- 前記ポケットを前記分配空洞(8)に接続する分配口(108)、および、
- 分配座(105)に押し付けられた可動部分(12)またはロッド(58)を備えた分配弁(5)、を備えており、
前記分配弁(5)は、
開状態において、前記ポケット(2)の内部から前記出口(24)へ、前記分配口(108)と前記分配空洞(8)を経由する、流体の通過を許容し、
閉状態において、前記ポケット(2)の内部から前記出口(24)へ、前記分配口(108)と前記分配空洞(8)を経由する、流体の通過を許容せず、
前記分配部品(23)は、キャップ(70)を備え、前記分配空洞(8)は、前記キャップ(70)の内側にあり、前記キャップ(70)は、前記変形可能な壁(22)に重ねて取り付けられ、
前記変形可能な壁(22)と前記キャップ(70)は、
- 不連続性のない同じ材料の単一の部品にグループ化されるか、または
- オーバーモールドまたは二重射出によって単一部品として作られている。」(以下「補正前請求項1」という。)から
「【請求項1】
流体を分配するためのデバイス(101,102,103)であって、
- 前記流体を収容するように構成された内部容積を有するポケット(2)、
- 圧力の影響下で前記ポケット(2)の前記内部容積を減少させるように構成された押圧面(25)、
- 分配空洞(8)を備えている分配部品(23)、
- 出口(24)、
- 前記ポケット(2)を前記分配空洞(8)に接続する分配口(108)、および、
- 分配座(105)に押し付けられた可動部分(12)または、可動壁(59)を有するガスポケット(92)に接続されて分配座に押し付けられたロッド(58)を備え、前記分配空洞(8)に保持された分配弁(5)、を備えており、
前記分配弁(5)は、
開状態において、前記ポケット(2)の内部から前記出口(24)へ、前記分配口(108)と前記分配空洞(8)を経由する、流体の通過を許容し、
閉状態において、前記ポケット(2)の内部から前記出口(24)へ、前記分配口(108)と前記分配空洞(8)を経由する、流体の通過を許容せず、
前記分配部品(23)は、キャップ(70)を備え、前記キャップ(70)は、変形可能な壁(22)に重ねて取り付けられている。」(下線部は補正箇所を示す。)
と補正するものを含むものである。
2 本件補正の目的について
(1)本件補正のうち、請求項1についての補正は、前記1より以下の補正1の補正項目を含むものである。
(補正1)「前記変形可能な壁(22)と前記キャップ(70)は、
- 不連続性のない同じ材料の単一の部品にグループ化されるか、または
- オーバーモールドまたは二重射出によって単一部品として作られている。」を削除する。
(2)前記「補正1」については、補正前請求項1に係る発明を特定する「前記変形可能な壁(22)と前記キャップ(70)は、-不連続性のない同じ材料の単一の部品にグループ化されるか、または-オーバーモールドまたは二重射出によって単一部品として作られている。」という技術事項を削除するという、直列的に記載された発明特定事項の一部を削除する補正であることから、当該「補正1」の補正項目を含む本件補正は、補正前請求項1に係る発明を減縮する補正に該当しない。
(3)前記(2)で検討した当該「補正1」の補正項目を含む本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明を目的とする補正とも認められない。
(4)以上のことから、前記「補正1」の補正項目を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項の何れかを目的とするものであるとは認められず、同条同項の規定に違反する補正、いわゆる目的外補正であると認められる。
(5)よって、前記請求項1についての補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3 補正後請求項1が独立特許要件違反であるかどうかについて
前記2で説示したとおり、本件補正は、目的外補正であると認められるが、「分配弁(5)」に関し、限定的減縮を目的とする補正を含むことから、補正後請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、念のため検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1に摘記した、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)引用発明及び周知技術の認定
ア 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された、本願の優先日前に発行された実願昭63-010684号(実開平1-116188号)のマイクロフィルムには、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
a 実用新案登録請求の範囲
「2.実用新案登録請求の範囲
(1) 容器内と容器外とに圧力差を生じせしめるポンプ機構1を有する容器に設けられる弁機構2であって、
前記弁機構2は、合成樹脂製基台3に孔部4を形成するとともに、この孔部4を上面から覆う弁板7を合成樹脂製基台3と一体に形成し、そして、この弁板7は、合成樹脂製基台3の上面で前記孔部4から離れた位置に第1ヒンジ5及び第2ヒンジ6を介して一体に設け、さらに、前記第1ヒンジ5及び第2ヒンジ6の間に連結部8を形成し、この連結部8に一方の係合部9を形成するとともに、基台3側に、前記連結部8を基台3側に密接させた状態で前記係合部9に係合し得る他方の係合部10を形成して構成したことを特徴とする注出容器用弁。」
b 第5頁第9行目~第8頁第4行目
「〔実施例〕
本考案の実施例を第1図ないし第4図に基づいて説明する。
筒状に形成した容器本体Aには口筒部A1が形成され、一方、下端側には底蓋A3が設けられている。容器本体A内には移動可能な中底A2が設けられ、この中底A2から口筒部A1にかけて内容物が充填(合議体注:土へんに眞で構成される字を「填」として表記する。)されている。
前記口筒部A1にはポンプ機構1と弁機構2とが嵌合されている。
このポンプ機構1は軟性合成樹脂で形成されており、基部から半ドーム状の屈曲部B1を延出し、その屈曲部B1の頂部に注出ノズルB2を形成してある。そしてこの注出ノズルB2の吐出口B3には栓B4を嵌合してある。また、前記吐出口B3の奥部には逆止弁B5が設けられている。
そしてこのポンプ機構1にはキャップCか冠着されている。
前記弁機構2は、第2図に示すように合成樹脂製の基台3に孔部4を形成し、基台3の上面には孔部4を中心とした円に溝を延出した形状の凹部3aを形成し、そして前記溝の奥部に、第1ヒンジ5及び第2ヒンジ6を介して弁板7を立設したものである。
前記第1ヒンジ5と第2ヒンジ6の間には連結部8が形成されており、これら第1ヒンジ5、連結部8、及び第2ヒンジ6は帯状に形成されている。前記連結部8の両側縁には一方の係合部9としての突起が夫々突設されている一方、この連結部8が嵌合される前記溝の両内側壁には一方の係合部9が係合する他方の係合部10が設けられている。組み立てに際しては第1ヒンジ5を折り曲げつつ、一方の係合部9を他方の係合部10に嵌合させる。この状態では第1ヒンジ5は連結部8とともに屈曲状態で固定され、弁板7は孔部4を覆う位置に保持される。弁板7は第2ヒンジ6を中心として作動する。
以下動作例を説明する。
注出ノズルB2を押し下げると屈曲部B1が撓むが、この場合、逆止弁B5は開状態、弁機構2は閉状態にある。
ここで注出ノズルB2を離すと、ポンプ機構1内が負圧となり、逆止弁B5は閉状態、弁機構2は開状態となる。すると内容物がポンプ機構1内に吸引され上昇する。そして再度注出ノズルB2を押し下げると、逆止弁B5は開状態となって内容物が吐出口B3から注出される。弁機構2は閉状態にあるため内容物が戻ることはない。
このように、順次内容物が排出され中底A2がそれにつれて上方に移動する。
第3図は他の実施例を示し、前記一方の係合部9を前記連結部8の下面に設けた突起とするとともに、他方の係合部10として溝の底面にこの一方の係合部9が嵌合する嵌合凹部を形成したものである。動作については前記実施例と同様のため省略する。」
c 第1図、第2図、第3図、第4図
「
[図:0001430384000001.jpg]
」
「
[図:0001430384000002.jpg]
」
「
[図:0001430384000003.jpg]
」
「
[図:0001430384000004.jpg]
」
(イ)引用文献1の記載からの認定事項
a 前記(ア)bに摘記されている「注出ノズルB2」と「屈曲部B1」に関して、「このポンプ機構1は軟性合成樹脂で形成されており、基部から半ドーム状の屈曲部B1を延出し、その屈曲部B1の頂部に注出ノズルB2を形成してある。」と記載されるとともに、第1図(全体の分解斜視図)と第4図(全体の断面図)において屈曲部B1と注出ノズルB2は一体の部材として記載されているから、注出ノズルB2と屈曲部B1は軟性合成樹脂で一体に形成されていることが看取される。
b 前記(ア)bの「前記吐出口B3の奥部には逆止弁B5が設けられている。」という記載、「注出ノズルB2を押し下げると屈曲部B1が撓むが、この場合、逆止弁B5は開状態、弁機構2は閉状態にある。ここで注出ノズルB2を離すと、ポンプ機構1内が負圧となり、逆止弁B5は閉状態、弁機構2は開状態となる。すると内容物がポンプ機構1内に吸引され上昇する。そして再度注出ノズルB2を押し下げると、逆止弁B5は開状態となって内容物が吐出口B3から注出される。弁機構2は閉状態にあるため内容物が戻ることはない。」という記載及び第4図から、注出ノズルB2は内容物が通過する空間を有していること、及び、逆止弁B5は当該空間に設けられていることが分かる。
(ウ)引用発明の認定
前記(ア)及び(イ)を総合的に勘案すると、引用文献1には、第1図~第4図に示された実施例に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「容器本体Aの口筒部A1にはポンプ機構1と弁機構2とが嵌合されており、
前記ポンプ機構1は軟性合成樹脂で形成されており、基部から半ドーム状の屈曲部B1を延出し、その屈曲部B1の頂部に注出ノズルB2を形成し、この注出ノズルB2の吐出口B3には栓B4を嵌合し、前記吐出口B3の奥部には逆止弁B5が設けられ、注出ノズルB2と屈曲部B1は軟性合成樹脂で一体に形成されており、
注出ノズルB2は内容物が通過する空間を有しており、
逆止弁B5は当該空間に設けられており、
前記弁機構2は、合成樹脂製の基台3に孔部4を形成し、基台3の上面には孔部4を中心とした円に溝を延出した形状の凹部3aを形成し、前記溝の奥部に、第1ヒンジ5及び第2ヒンジ6を介して弁板7を立設したものであり、前記第1ヒンジ5と前記第2ヒンジ6の間には連結部8が形成されており、前記第1ヒンジ5、前記連結部8、及び前記第2ヒンジ6は帯状に形成されており、注出ノズルB2を押し下げると屈曲部B1が撓み、逆止弁B5は開状態、弁機構2は閉状態にあり、注出ノズルB2を離すと、ポンプ機構1内が負圧となり、逆止弁B5は閉状態、弁機構2は開状態となり、内容物がポンプ機構1内に吸引され上昇し、再度注出ノズルB2を押し下げると、逆止弁B5は開状態となって内容物が吐出口B3から注出される部材。」
イ 引用文献1に記載された事項と周知技術の認定
(ア)引用文献1に記載された事項
前記引用文献1には、従来の技術として、次の記載がある(なお、下線は合議体が付したもので、「・・・」は省略を示し、以下同様である。)。
a 従来の技術
「〔従来の技術〕
一般に、容器内と容器外とに圧力差を生じせしめることによって内容物を注出する容器には弁機構が設えられている。・・・
これらは第5図及び第6図に夫々示すように、流通孔が設けられた基台に弁板7を別部材で取り付けたものである。
一方、・・・第7図に示すように、基台部の流通孔内に弁板7を一体成型し、弁板7が流通口部の側面にくさび状に当接することによって逆流を防止するように構成されたものが示されている。」
b 第5図、第6図、第7図
「
[図:0001430384000005.jpg]
」
「
[図:0001430384000006.jpg]
」
「
[図:0001430384000007.jpg]
」
(イ)引用文献1の記載からの認定事項
a 第5図と第6図をみるに、内容物の逆流を防止するために、弁体7は、閉じられた状態において、弁座に押し付けられることは、構造上明らかである。
b 前記(ア)aの「弁板7が流通口部の側面にくさび状に当接することによって逆流を防止するように構成された」という記載及び第7図から、内容物の逆流を防止するために、弁体7は、閉じられた状態において、弁座に当接して押し付けられているといえる。
(ウ)周知技術の認定
前記(ア)及び(イ)を総合的に勘案すると、引用文献1の従来の技術に例示されているように、次の技術事項は、本願の出願前に当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術」という。)。
<周知技術>
「流路(分配空洞)に設けられた部材(分配部品)の空洞部分に保持され、少なくとも閉じられた状態において弁座(分配座)に押し付けられた部材(可動部分)で弁体を構成すること。」
(3)本件補正発明と引用発明の対比、判断
ア 本件補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「吐出口B3」、「屈曲部B1」は、それぞれ、本件補正発明の「出口(24)」、「変形可能な壁(22)」に相当する。
引用発明の「弁機構2」と「屈曲部B1」とで囲まれた空間は、内容物を収容できることから、本件補正発明の「前記流体を収容するように構成された内部容積を有するポケット(2)」に相当する。
引用発明の「注出ノズルB2」に関し、「注出ノズルB2を押し下げると屈曲部B1が撓み、逆止弁B5は開状態、弁機構2は閉状態にあり、注出ノズルB2を離すと、ポンプ機構1内が負圧となり、逆止弁B5は閉状態、弁機構2は開状態となり、内容物がポンプ機構1内に吸引され上昇し、再度注出ノズルB2を押し下げると、逆止弁B5は開状態となって内容物が吐出口B3から注出される」ことを踏まえると、引用発明の「注出ノズルB2」の上面は、本件補正発明の「圧力の影響下で前記ポケット(2)の前記内部容積を減少させるように構成された押圧面(25)」に相当する。
また、引用発明の「注出ノズルB2」は、「内容物が通過する空間を有して」いるから、本件補正発明の「分配空洞(8)を備えている分配部品(23)」に相当し、「前記分配部品(23)は、キャップ(70)を備え」ることを満たしている。
さらに、引用発明の「注出ノズルB2」と「屈曲部B1」との関係は、本件補正発明の「前記キャップ(70)は、変形可能な壁(22)に重ねて取り付けられている」ことを満たしている。
また、引用発明の「注出ノズルB2」の「屈曲部B1」に対する境界部分の開口部は、本件補正発明の「前記ポケット(2)を前記分配空洞(8)に接続する分配口(108)」に相当する。
そして、引用発明の「逆止弁B5」は、「注出ノズルB2」が有する「空間」に設けられているから、本件補正発明の「分配座(105)に押し付けられた可動部分(12)または、可動壁(59)を有するガスポケット(92)に接続されて分配座に押し付けられたロッド(58)を備え、前記分配空洞(8)に保持された分配弁(5)」と、「前記分配空洞(8)に設けられた分配弁(5)」という限りにおいて一致する。
加えて、引用発明の「逆止弁B5」は、「注出ノズルB2を押し下げると屈曲部B1が撓み、逆止弁B5は開状態、弁機構2は閉状態にあり、注出ノズルB2を離すと、ポンプ機構1内が負圧となり、逆止弁B5は閉状態、弁機構2は開状態となり、内容物がポンプ機構1内に吸引され上昇し、再度注出ノズルB2を押し下げると、逆止弁B5は開状態となって内容物が吐出口B3から注出され」るものであるから、本件補正発明の「開状態において、前記ポケット(2)の内部から前記出口(24)へ、前記分配口(108)と前記分配空洞(8)を経由する、流体の通過を許容し、閉状態において、前記ポケット(2)の内部から前記出口(24)へ、前記分配口(108)と前記分配空洞(8)を経由する、流体の通過を許容せず」を満たしている。
そうすると、引用発明の「容器本体Aの口筒部A1」に取り付けられている「ポンプ機構1と弁機構2」は、本件補正発明の「流体を分配するためのデバイス(101,102,103)」に相当する。
イ 一致点及び相違点
前記アより、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア)一致点
「流体を分配するためのデバイス(101,102,103)であって、
- 前記流体を収容するように構成された内部容積を有するポケット(2)、
- 圧力の影響下で前記ポケット(2)の前記内部容積を減少させるように構成された押圧面(25)、
- 分配空洞(8)を備えている分配部品(23)、
- 出口(24)、
- 前記ポケット(2)を前記分配空洞(8)に接続する分配口(108)、および、
- 前記分配空洞(8)に設けられた分配弁(5)、を備えており、
前記分配弁(5)は、
開状態において、前記ポケット(2)の内部から前記出口(24)へ、前記分配口(108)と前記分配空洞(8)を経由する、流体の通過を許容し、
閉状態において、前記ポケット(2)の内部から前記出口(24)へ、前記分配口(108)と前記分配空洞(8)を経由する、流体の通過を許容せず、
前記分配部品(23)は、キャップ(70)を備え、前記キャップ(70)は、変形可能な壁(22)に重ねて取り付けられている。」
(イ)相違点
分配弁の構成に関して、本件補正発明においては、「分配座(105)に押し付けられた可動部分(12)または、可動壁(59)を有するガスポケット(92)に接続されて分配座に押し付けられたロッド(58)を備え、前記分配空洞(8)に保持された分配弁(5)」と特定するのに対して、引用発明の逆止弁B5は、そのような特定がない点。
ウ 判断
(ア)相違点について
前記(2)イ(ウ)のとおり、流路(空洞空洞)に設けられた部材(分配部品)の空洞部分に保持され、少なくとも閉じられた状態において弁座(分配座)に押し付けられた部材(可動部分)で弁体を構成することは周知技術であるから、引用発明において、前記周知技術を参考にして、逆止弁B5を、分配座に押し付けられた可動部分を備えたものとすることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明の逆止弁B5をどのように設けるかは適宜設計できる事項であるから、例えば、逆止弁B5を注出ノズルB2が有する空間に保持するよう構成することに格別の困難性はない。
(イ)効果の予測性について
前記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(ウ)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求人の主張について
(ア)審判請求書の主張内容
請求人は、審判請求書において、本件補正発明が、引用発明から容易に想到できるものではない理由として、概略次のa及びbの点を挙げている。
a (4-1)この引用文献1は「分配座(105)に押し付けられた可動部分(12)または、可動壁(59)を有するガスポケット(92)に接続されて分配座に押し付けられたロッド(58)を備え、前記分配空洞(8)に保持された分配弁(5)」という上記構成要件(f)に相当する内容を、何ら開示していません。
b (4-3)引用文献3の発明において、本願発明におけるロッド58に相当するものは、弁部材25(図1、0022、および図2、0043)と考えられます。この引用文献3の弁部材5は、図の下方の弁バネ29によって上方に付勢されており、また、その弁バネ29の内部が、分配される媒体の流路31となっています。
そして、この引用文献3には、本願における、「可動壁59を有するガスポケット92に接続されて分配座に押し付けられたロッド58」という、上記構成要件(f)に相当する内容を、何ら開示していません。
(イ)請求人の主張に対する当審の判断
引用文献1には、確かに、「可動壁59を有するガスポケット92に接続されて分配座に押し付けられたロッド58」という、上記構成要件(f)に相当する構成は記載されていないが、上述のとおり、「流路(分配空洞)に設けられた部材(分配部品)の空洞部分に保持され、少なくとも閉じられた状態において弁座(分配座)に押し付けられた部材(可動部分)で弁体を構成すること」は周知技術である。
そして、本件補正発明は、「分配座(105)に押し付けられた可動部分(12)」又は「可動壁(59)を有するガスポケット(92)に接続されて分配座に押し付けられたロッド(58)」の何れかを発明特定事項として有するものであり、上述のとおり、前者の「分配座(105)に押し付けられた可動部分(12)」は周知技術として開示されているから、請求人の主張は採用できない。
(4)独立特許要件についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
4 まとめ
以上、本件補正は、前記2で検討したとおり、特許法17条の2第5項各号に掲げる目的に該当しないから、本件補正は同項の規定に違反し、又は、本件補正発明は、前記3で検討したとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年6月28日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1~14に係る発明は、令和4年10月24日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1」に示した補正前請求項1である。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての拒絶の理由は、
「<理由3>この出願の請求項1に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である引用文献1に記載された発明及び引用文献3の記載に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものである。
引用文献1:実願昭63-010684号(実開平01-116188号)のマイクロフィルム
引用文献3:特開平10-72073号公報
3 引用された刊行物に記載された発明及び周知技術
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1と、本審決における引用文献1は同一である。
そして、引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記「第2 3(2)ア」に記載したとおりである。
4.対比・判断
(1)本願発明は、前記「第2 3」で検討した本件補正発明から、以下の事項の削除・追加を行ったものである。
分配弁(5)について「分配空洞(8)に保持された」という構成をさらに特定する補正事項を削除し、
ロッド(58)について「可動壁(59)を有するガスポケット(92)に接続されて分配座に押し付けられた」という構成をさらに特定する補正事項を削除し、
押圧面(25)について「変形可能な壁(22)を変形させることにより」という構成をさらに特定する補正事項を追加し、
変形可能な壁(22)と前記キャップ(70)について「前記変形可能な壁(22)と前記キャップ(70)は、
- 不連続性のない同じ材料の単一の部品にグループ化されるか、または
- オーバーモールドまたは二重射出によって単一部品として作られている。」という構成をさらに特定する補正事項を追加したものである。
(2)対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「注出ノズルB2」に関し、「注出ノズルB2を押し下げると屈曲部B1が撓み、逆止弁B5は開状態、弁機構2は閉状態にあり、注出ノズルB2を離すと、ポンプ機構1内が負圧となり、逆止弁B5は閉状態、弁機構2は開状態となり、内容物がポンプ機構1内に吸引され上昇し、再度注出ノズルB2を押し下げると、逆止弁B5は開状態となって内容物が吐出口B3から注出される」ことを踏まえると、引用発明の「注出ノズルB2」の上面は、「屈曲部B1」(「変形可能な壁(22)」に相当)を変形させることにより前記ポケットの前記内部容積を減少させるように構成されたものであるといえる。
また、引用発明の「注出ノズルB2と屈曲部B1は軟性合成樹脂で一体に形成されて」いることは、本願発明の「前記変形可能な壁(22)と前記キャップ(70)は、
- 不連続性のない同じ材料の単一の部品にグループ化されるか、または
- オーバーモールドまたは二重射出によって単一部品として作られている。」を満たすものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、前記「第2 3(3)イ(イ)」における相違点で相違し、その余の点で一致する。そして、前記相違点についての判断は、前記「第2 3(3)ウ」のとおりである。
(3)令和4年10月24日付意見書における請求人の主張について
請求人は、令和4年10月24日付意見書において、「引用文献1は「分配座(105)に押し付けられた可動部分(12)またはロッド(58)を備えた分配弁(5)」という上記構成要件(f)に相当する内容を、何ら開示していません。」、「本願請求項1の分配弁は、分配座(105)に押し付けられた可動部分(12)またはロッド(58)を備えていることから、分配弁の上流側に位置するポケットの内部が負圧でない場合であっても、ポケットを封止でき、密閉度を高く、封止力を強くすることができます。
そして、本願発明では上記構成要件(f)を備えることにより、粘度の数値が幅広く異なる種々の流体に対して、分配弁による十分な封止密閉ができる、という格別な効果が得られるのであります。
よって、引用文献1の発明は本願発明とは相違しており、また、たとえ、引用文献1の発明に基づいたとしても、本願発明のようにすることが容易に想到できるものであるとは考えられません。」、及び「引用文献3の発明において、本願発明における分配弁5に相当するものは、出口17に面した弁部材25を端部に有する、スライド24(0022、図1)と考えられます。ところが、このスライド24は「管形状のスタッド15の内部に完全に配置されるものであり、・・スタッド15に関して軸方向に変位される(0022)」ことから、全体がスライドされるものです。本願発明においては、可動部分(12)またはロッド(58)はその一部が、分配空洞の内部で固定されており、本願の分配弁は、この引用文献3の分配弁とは構成が相違します。」と主張する。
しかしながら、前記「第2 3(3)」で検討したとおり、本願発明の「分配座(105)に押し付けられた可動部分(12)またはロッド(58)を備えた分配弁(5)」のうちの前者の構成である「分配座に押し付けられた可動部分を備えた分配弁」については、引用発明としては引用文献1に明示的な記載はないものの、上述したように、流路(分配空洞)に設けられた部材(分配部品)の空洞部分に保持され、少なくとも閉じられた状態において弁座(分配座)に押し付つけられた部材(可動部分)で弁体を構成することは周知技術であるし、また、周知技術の弁体が分配弁の上流側に位置するポケットの内部が負圧でない場合であってもポケットを封止でき、密閉度を高く、封止力を強くできる効果を奏することは自明であるから、請求人の前記主張は採用できない。
(4)以上のことから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明である本願発明は、引用文献1に記載された発明である引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-010737