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特許拒絶査定不服審判

2024-020664

押出しブロー成形容器

審判番号
2024-020664
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-217828
請求日
2024年12月24日
審決日
2026年05月28日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社吉野工業所
  • 【請求人代理人】杉村 憲司
  • 【請求人代理人】杉村 光嗣
  • 【請求人代理人】片岡 憲一郎
審判長/審判官
  • 審判長 一ノ瀬 薫
  • 審判官 稲葉 大紀
  • 審判官 笹木 俊男
分類
P18 .121-Z (B65D) / P18 .575-Z (B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020-217828「押出しブロー成形容器」拒絶査定不服審判事件〔令和4年7月7日出願公開、特開2022-102845〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件出願(以下「本願」と記す。)は、令和2年12月25日に出願された特願2020-217828号であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和6年 2月 1日付け 拒絶理由通知書 令和6年 4月 4日 意見書、手続補正書の提出 令和6年 7月19日付け 拒絶理由通知書(最後) 令和6年 9月24日 意見書、手続補正書の提出 令和6年 9月27日付け 令和6年9月24日の手続補正についての補正の却下の決定 令和6年 9月27日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。) (令和6年10月 8日 原査定の謄本の送達) 令和6年12月24日 審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年12月24日の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年12月24日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1) 本件補正は、特許請求の範囲の全文を補正するものであって、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 筒状の口部と、前記口部の下端に肩部を介して一体に連なる胴部と、前記胴部の下端を閉塞する底部とが合成樹脂材料により一体に形成されたボトル形状の押出しブロー成形容器であって、 前記口部が、金型とプラグとの間に挟み込まれてパリソンの上端側部分が所定位置で食い切られることにより形成されて前記口部の上端に連なるとともに径方向外側に向けて突出する切断痕を有し、 前記胴部の肉厚が0.10~0.45mmであり、 前記口部の肉厚と前記胴部の肉厚との比が、3.0~6.5:1の範囲内であり、 前記口部が、雄ねじが設けられた部分と、前記雄ねじが設けられた部分よりも外径が小さい円筒状の先端筒部とを有し、前記切断痕が前記先端筒部に形成されており、 前記口部の内周面のパーティングラインに平行な位置における内径と前記パーティングラインに垂直な位置における内径との差が0.12mm以下であることを特徴とする押出しブロー成形容器。」(以下「本件補正発明」という。) (2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 本件補正前の、令和6年4月4日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 筒状の口部と、前記口部の下端に肩部を介して一体に連なる胴部と、前記胴部の下端を閉塞する底部とが合成樹脂材料により一体に形成されたボトル形状の押出しブロー成形容器であって、 前記口部が、金型とプラグとの間に挟み込まれてパリソンの上端側部分が所定位置で食い切られることにより形成されて前記口部の上端に連なるとともに径方向外側に向けて突出する切断痕を有し、 前記胴部の肉厚が0.10~0.45mmであり、 前記口部の肉厚と前記胴部の肉厚との比が、3.0~6.5:1の範囲内であり、 前記口部が、雄ねじが設けられた部分と、前記雄ねじが設けられた部分よりも外径が小さい円筒状の先端筒部とを有し、前記切断痕が前記先端筒部に形成されていることを特徴とする押出しブロー成形容器。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「口部」について、「内周面のパーティングラインに平行な位置における内径と前記パーティングラインに垂直な位置における内径との差が0.12mm以下である」という限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2) 引用文献の記載事項、発明 ア 引用文献1 (ア) 引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用された特開2001-113589号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審が付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 押出機から加熱溶融されて押し出されたパリソンを溶融ブロー成形することによって製造される薄肉ボトルにおいて、 前記薄肉ボトルの口部肉厚が1.0~5.0m(当審注:「mm」の明確な誤記)、胴部肉厚が0.1~1.5mmで、口部肉厚と胴部肉厚との比が3~50の範囲にあることを特徴とする薄肉ボトル。」 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】・・・ 【0005】このように、従来の技術では、口部の所定肉厚を確保しつつボトルの胴部や肩部を薄肉にすることはできず、胴部や肩部を薄肉にすると、口部も薄肉化してしまう。薄肉化した口部はキャッピングを施すときに変形が生じて密封性が不完全になる(液漏れ等の不良の原因となる)とともに、口部の径寸法や表面を加工するリーマ仕上げも困難になる。 【0006】本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、ボトルの胴部や肩部を薄肉にしても、口部については必要な肉厚を確保できるようにした薄肉ボトルとその製造方法の提供を目的とする。」 「【0015】[薄肉ボトルの実施形態]まず、本発明のボトルの一実施形態について説明する。図1は、ボトルの一実施形態の要部断面図を示す。このボトル1は、押出機からダイヘッドを介して加熱溶融されて押し出されたパリソンを溶融ブロー成形することによって製造される。そして、通常用いられている内容量300ml~2000mlのボトルでは、胴部2の肉厚W1が0.3~1.3mmであり、口部3の肉厚W2が1.0~5.0mmとなっており、両者の比は、ボトル1の胴部2の肉厚W1に対する口部3の肉厚W2の比が3.3~17の範囲となるようにしてある。 【0016】なお、ボトルの内容量が、上記したボトルの内容量よりも小さくなると口部3に対する胴部2の肉厚の比がより小さくなり、また、ボトルの内容量が大きくなると口部3に対する胴部2の肉厚の比がより大きくなるが、そのときの胴部2の肉厚W2は0.1~1.5mmとすることができ、この場合、胴部2の肉厚W1に対する口部3の肉厚W2の比は3~50の範囲とする。胴部2の肉厚W1に対する口部3の肉厚W2の比が、3よりも小さくなると胴部の強度が小さくなり、50より大きくなると胴部の肉厚が必要以上に厚くなることになる。」 「【0021】主押出機10は、熱可塑性樹脂を加熱溶融して押し出してダイヘッド20へ連続的に供給する。ダイヘッド20は、図示されていない制御部からのパリソンコントロールプログラムにもとづく指示にしたがってシェル21とコア22の間隔を調整できる構成となっており、押出機10から押し出された溶融樹脂を、ボトルの各部位に対応するパリソンの各部位の肉厚を所定の肉厚に制御して押し出している。ダイヘッド20から押し出されたパリソンは、直ちに、図示されていない公知のブロー成形機に供給され、公知のブロー成形法によってボトルに成形される。」 「 [図:0001437905000001.jpg] 」 (イ) 引用文献1に記載されていると認められる事項 ブロー成形されたボトルの下端が底部により閉塞されてなることは技術常識であることを踏まえると、段落【0015】、【0021】、図1から、次の事項を看取できる。 ・薄肉ボトルであるボトル1は、筒状の口部3と、口部3の下端に肩部4を介して一体に連なる胴部2と、胴部2の下端を閉塞する底部とが熱可塑性樹脂により一体に形成されたボトル形状であり、口部3の外周に雄ねじが設けられていること。 (ウ) 引用文献1に記載された発明 上記(ア)の特に特許請求の範囲の請求項1、段落【0021】の記載及び上記(イ)を参照すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「押出機から加熱溶融されて押し出されたパリソンを溶融ブロー成形することによって製造される薄肉ボトルにおいて、 前記薄肉ボトルの口部肉厚が1.0~5.0mm、胴部肉厚が0.1~1.5mmで、口部肉厚と胴部肉厚との比が3~50の範囲にあり、 筒状の口部3と、口部3の下端に肩部4を介して一体に連なる胴部2と、胴部2の下端を閉塞する底部とが熱可塑性樹脂により一体に形成されたボトル形状であり、口部3の外周に雄ねじが設けられており、 公知のブロー成形機で公知のブロー成形法によって成形された薄肉ボトル。」 イ 周知技術を示す文献 (ア) 引用文献2 同じく原査定に引用された特開2008-110791号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 押出しブロー成形による容器(1)の口筒部(2)であって、該口筒部(2)の上端面を、該上端面(2)の内側周部(3)に比較して外側周部(4)を段差状に僅かに下位に位置させた形状とし、ブロー成形時に、ブロー成形用の割金型(M)に挟持されるパリソン(P)の上方からプラグ(PL)を押し込んで、前記内側周部(3)の外周縁部分で、前記割金型(M)とプラグ(PL)により構成される喰切り部(C)により前記口筒部(2)の上端面上方の不要部分を切断除去したことを特徴とする合成樹脂製容器の口筒部。」 「 [図:0001437905000002.jpg] [図:0001437905000003.jpg] 」 (イ) 引用文献3 同じく原査定に引用された実公昭53-48211号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 「実用新案登録請求の範囲 ブロー成形により形成された口頂面12a外縁にエツジ12bを有する合成樹脂製容器本体の口縁部に於いて、エツジ12bに沿いその近接直下から該エツジ12bよりも更に大きく外方へと突出している環状膨出部12を設けたことを特徴とするブロー成形による合成樹脂製容器本体の口縁部に係る構造。」(第1欄第14~21行) 「本案は上記問題を解決したもので、以下、第2図、第3図により説明する。8はキヤビテイを有する金型、9はキヤビテイ内に成形された容器本体の口頸部、13はエアノヅルである。口頸部9はキヤツプ螺合用螺条10を有する大径部上端に連続してキヤツプ式栓体18を嵌合するための小径部11を上方へ突出させ、かつ該小径部の口頂面やゝ下方からは環状膨出部12を突出させてある。エアノズル13は小径部11内に挿入させる口筒部14を下部に有し、その外面上端から周外方へ容器本体の口頂面形成用張出し部15を突出させ、かつ該外端を樹脂材料喰切り用縁部16としたもので、エアノヅル13の下降により該材料喰切り用縁部16が金型8の下内方から上外方へ向つての傾斜面8aに押圧され材料17を喰切る。該喰切りによつて容器本体の口頂面12a外縁にはエツジ12bが形成されるが、環状膨出部12は該エツジに沿いその近接直下に該エツジより更に外方へ、望ましくは外端面を彎曲させて突出できるよう金型8を形成させておけばよい。」(第2欄第10~29行) 「 [図:0001437905000004.jpg] 」 (ウ) 引用文献4 同じく原査定に引用された特開2000-71321号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 「【0012】次に、型締め、吹込ノズルの打込み時における金型Aのボトル口部成形部4と吹込ノズルBの相互作用および効果について説明する。図2,3に示すように、吹込ノズルBは、円筒状のマンドレル10と、該マンドレル10より縮径され、中央に吹込空気孔11が穿孔されたノズル12とからなっており、ノズル打込み時に金型Aと共働してボトル口部を形成するようにしている。 【0013】型締め時には、金型Aのボトル口部成形部4の突出周面7が、パリソンPの表面に喰い込むとともに、パリソンPにくびれ部Paを形成させ、落下を阻止する。パリソンPの挟持にあたって、突出周面7のパーティングラインPL でパリソンPの周面が押さえられ膨出するようになるが、突出周面7には、パーティングラインPL を挟んで間隙6が設けられているので、膨出された樹脂によって縦リブが形成されることになり、バリの発生を防ぐことができるとともにパリソンの落下防止にも寄与することができる。 【0014】吹込ノズルの打込み時には、ノズル12のパリソンP内への挿入につれて、まず、始めにくびれ部Paの上部を突出周面7上部の天面部成形面5上に広げ、そのことにより、パリソンPの下方への移動を阻止する。さらにノズル12が下方に移動されると、ノズル12周面によってパリソンPのくびれ部Paを押し広げ、ノズル12周面と金型Aのボトル口部成形部4によってボトル口部がボトル口部成形部4の形状通りに成形され、そして、吹込ノズルBのマンドレル10の周端縁10aが、金型Aのボトル口部成形部4の天面部成形面5に接合して、パリソンP上部を喰い切り、上方部をモールmとしてボトル口部から切り離す。吹込ノズルBの打込みと同時に、空気が圧入され、ボトルが成形される。」 「 [図:0001437905000005.jpg] 」 (エ) 引用文献6 同じく原査定に引用された特開2016-69038号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 筒状の口部と該口部に連なる胴部とを備えた形状に形成された積層剥離容器であって、 樹脂材により形成された外層体と、 樹脂材により形成され、前記外層体の内側に該外層体に対して剥離可能に配置された内層体と、 前記外層体および前記内層体とは相違する樹脂材で形成され、前記外層体と前記内層体との間に配置された中間層とを有し、 前記外層体、前記内層体および前記中間層は、それぞれに対応する樹脂層を備えた積層パリソンをダイレクトブロー成形して形成され、 前記口部の開口端において前記中間層の端部が前記外層体と前記内層体とにより被覆されていることを特徴とする積層剥離容器。 【請求項2】 前記口部の外周面に、該口部の軸方向に対して傾斜する下向きテーパ面を有する円環状のモイルカット部が一体に設けられ、 前記中間層の端部が、前記口部において前記モイルカット部に向けて径方向外側に向けて曲げられている、請求項1に記載の積層剥離容器。」 「【図1】 [図:0001437905000006.jpg] 【図2】 [図:0001437905000007.jpg] 【図3】 [図:0001437905000008.jpg] 」 ウ 周知技術 上記イ(ア)~(エ)から、以下の事項(以下「周知技術」という。)は、本件出願前の当業者にとって周知の事項である。 「ボトル形状の押出しブロー成形容器のブロー成形方法として、口部が、金型とプラグとの間に挟み込まれてパリソンの上端側部分が所定位置で食い切られることにより前記口部の上端に連なるとともに径方向外側に向けて突出する切断痕が形成されるとともに、前記口部が、雄ねじが設けられた部分と、前記雄ねじが設けられた部分よりも外径が小さい円筒状の先端筒部とを有し、前記切断痕が前記先端筒部に形成されるように成形を行うこと。」 (3) 対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「押出機から加熱溶融されて押し出されたパリソンを溶融ブロー成形することによって製造される薄肉ボトル」は、その製造方法からみて、本件補正発明の「押出しブロー成形容器」に相当する。 引用発明の「筒状の口部3と、口部3の下端に肩部4を介して一体に連なる胴部2と、胴部2の下端を閉塞する底部とが熱可塑性樹脂により一体に形成されたボトル形状であ」る「薄肉ボトル」は、本件補正発明の「筒状の口部と、前記口部の下端に肩部を介して一体に連なる胴部と、前記胴部の下端を閉塞する底部とが合成樹脂材料により一体に形成されたボトル形状の押出しブロー成形容器」に相当する。 引用発明の「口部3の外周に雄ねじが設けられて」いることは、本件補正発明の「前記口部が、雄ねじが設けられた部分」を有することに相当する。 そうすると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「筒状の口部と、前記口部の下端に肩部を介して一体に連なる胴部と、前記胴部の下端を閉塞する底部とが合成樹脂材料により一体に形成されたボトル形状の押出しブロー成形容器であって、 前記口部が、雄ねじが設けられた部分を有する押出しブロー成形容器。」 <相違点1> 本件補正発明は、「前記胴部の肉厚が0.10~0.45mmであり、前記口部の肉厚と前記胴部の肉厚との比が、3.0~6.5:1の範囲内であり」と特定するのに対し、引用発明は、「胴部肉厚が0.1~1.5mmで、口部肉厚と胴部肉厚との比が3~50の範囲にあ」る点。 <相違点2> 本件補正発明は、「前記口部が、金型とプラグとの間に挟み込まれてパリソンの上端側部分が所定位置で食い切られることにより形成されて前記口部の上端に連なるとともに径方向外側に向けて突出する切断痕を有し、」「前記口部が、」「前記雄ねじが設けられた部分よりも外径が小さい円筒状の先端筒部とを有し、前記切断痕が前記先端筒部に形成されており」と特定するのに対し、引用発明は、「口部3」が当該構成を有するか否か不明な点。 <相違点3> 本件補正発明は、「前記口部の内周面のパーティングラインに平行な位置における内径と前記パーティングラインに垂直な位置における内径との差が0.12mm以下である」と特定するのに対し、引用発明は、この点は特定されていない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用文献1には「通常用いられている内容量300ml~2000mlのボトルでは、胴部2の肉厚W1が0.3~1.3mmであり、口部3の肉厚W2が1.0~5.0mmとなっており、両者の比は、ボトル1の胴部2の肉厚W1に対する口部3の肉厚W2の比が3.3~17の範囲となるようにしてある。」(段落【0015】)と記載されており、胴部2の肉厚W1、口部3の肉厚W2、胴部2の肉厚W1に対する口部3の肉厚W2の比のそれぞれが広い範囲を有しているのは、ボトルの内容量の大小に強く依存するためと理解される。また、ボトルに必要な強度からすれば、内容量が小さくサイズの小さなボトルの方が、胴部2の肉厚W1と口部3の肉厚W2を薄くできるといえる。 以上のことを踏まえると、引用発明において、具体的なボトルの内容量に応じて「胴部肉厚」、「口部肉厚」及び「口部肉厚と胴部肉厚との比」をそれらの数値範囲内から適宜選択し(例えば、内容量300mlのボトルの場合、それぞれ0.3mm、1.0mm、1.0mm/0.3mm=3.3)、相違点1に係る本件補正発明の数値範囲内の値とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項といえる。 イ 相違点2について 上記(2)ウのとおり、ボトル形状の押出しブロー成形容器のブロー成形方法として、口部が、金型とプラグとの間に挟み込まれてパリソンの上端側部分が所定位置で食い切られることにより前記口部の上端に連なるとともに径方向外側に向けて突出する切断痕が形成されるとともに、前記口部が、雄ねじが設けられた部分と、前記雄ねじが設けられた部分よりも外径が小さい円筒状の先端筒部とを有し、前記切断痕が前記先端筒部に形成されるように成形を行うことは周知であるから、引用発明の「公知のブロー成形法によ」る成形として、当該周知技術を採用し、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 相違点3について 密封性のために口部の真円度などの寸法精度を求めることは、当業者にとって自明な課題である。したがって、引用発明の「薄肉ボトル」において、密封性をより向上させるために口部の真円度などの寸法精度を上げることは、当業者が適宜に設計し得たことである。そして、本願明細書等全体を参酌しても、本件補正発明の「0.12mm以下」という寸法精度を示す数値範囲には、臨界的な意義は確認できないし、同じ公差であれば寸法が増すほど精度が高いといえるところ、口部の寸法が特定されていない中で特段の技術的な意味は認められないから、当該数値範囲は格別なものとはいえない。 エ 効果について 上記各相違点により奏される効果について検討しても、引用発明及び当該周知技術において奏される効果と同等であって格別なものがあるとはいえない。 (5) 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、「引用文献1、2は、何れも、補正後の請求項1に係る本願発明が有する「前記口部の内周面のパーティングラインに平行な位置における内径と前記パーティングラインに垂直な位置における内径との差が0.12mm以下である」との特徴的な構成について何ら開示も示唆もいたしません。また、引用文献3~6は、それぞれ口部の形状に関して、口部が、雄ねじが設けられた部分と、雄ねじが設けられた部分よりも外径が小さい円筒状の先端筒部とを有し、切断痕が先端筒部に形成されていることは、周知の構成であることを示すために引用されたものに過ぎず、上記した補正後の請求項1に係る本願発明が有する特徴的な構成について何ら開示も示唆もいたしません。したがいまして、補正後の請求項1に係る本願発明及び補正後の請求項1を引用する補正後の請求項2、3に係る発明は、何れも、引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された事項及び周知技術を適用して当業者が容易に想到することができたものではありません。」と主張する。 しかしながら、上記(4)ウにおいて検討したとおり、ボトルにおいて口部の寸法精度を向上させることは当業者においては当然の課題であって、また本件補正発明の「0.12mm」という寸法精度を示す数値に特段の技術的な意味は認められないから、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、引用発明に基いて当業者が適宜に設計し得たものといえる。 したがって、審判請求人の主張は採用できない。 (6) 小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和6年12月24日提出の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~3に係る発明は、令和6年4月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)に示したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての拒絶の理由は、以下の理由を含む。 本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3~6に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2001-113589号公報 2.特開2008-110791号公報 3.実公昭53-48211号公報 4.特開2000-71321号公報 5.実願平4-78515号(実開平6-37113号)のCD-ROM 6.特開2016-69038号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~4、6及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。また、原査定の拒絶の理由における「引用文献2に記載された事項」とは「口部が、金型とプラグとの間に挟み込まれてパリソンの上端側部分が所定位置で食い切られることにより形成されて前記口部の上端に連なるとともに径方向外側に向けて突出する切断痕を有する」構成であり、「引用文献3~6に例示される周知技術」とは、前記第2の[理由]2(2)のウに示した周知技術と同様である。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記口部の内周面のパーティングラインに平行な位置における内径と前記パーティングラインに垂直な位置における内径との差が0.12mm以下である」との限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、及び引用文献2に記載された事項を含む周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-020664

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