特許拒絶査定不服審判
2023-021588
キャップ付きチューブ容器
- 審判番号
- 2023-021588
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-177833
- 請求日
- 2023年12月19日
- 審決日
- 2025年10月03日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】藤枡 裕実
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 金丸 治之
- 審判官 一ノ瀬 薫
- 分類
- P18 .121-Z (B65D) / P18 .575-Z (B65D) / P18 .56 -Z (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-177833号「キャップ付きチューブ容器」拒絶査定不服審判事件〔令和3年4月8日出願公開、特開2021-54450号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年9月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 5月 1日付け:拒絶理由通知書
令和5年 7月11日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年10月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和5年10月10日 :原査定の謄本の送達)
令和5年12月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年12月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年12月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「チューブ容器とキャップを有するキャップ付きチューブ容器であって、
前記キャップは、円筒状の外筒、内筒、アウターリングを外方から順に備え、内筒の先端に内向きのフック状爪片を設けた弾性脚片を備え、外筒の先端に内方に向かって上方に傾斜した傾斜面を備えており、
前記チューブ容器は、一対の貼り合わせ端部を有する胴部と、吐出用の開口を含む口部を備えており、
前記口部の外周面は前記アウターリングに接して囲まれており、
前記口部を上側、前記胴部を下側としたときに、前記口部に連設され、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、当該第1の角度より大きい第2の角度で狭まり、前記フック状爪片により前記弾性脚片と係合する係止部を備えた首部と、
前記首部と前記胴部を結ぶように下側に向うにつれて外周が広がる肩部と、
前記口部の開口を覆うようにして、前記口部の上端である天面に接合された密封シールと、を有し、
前記係止部は、前記口部の下端から外周が最大径になるまで広がる部分である係止部上部と、外径が最大径になった部分から下側に向うにつれて外周が狭まる部分である係止部下部を備え、
前記密封シールは、前記口部の外周面で規定される密封部と、当該密封部から突出する摘み部と、を有し、
前記アウターリングの内面と、前記アウターリング内面に接する前記口部の外周面は、いずれも凹凸がないことを特徴とするキャップ付きチューブ容器。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成5年7月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「チューブ容器とキャップを有するキャップ付きチューブ容器であって、
前記キャップは、円筒状の外筒、内筒、アウターリングを外方から順に備え、内筒の先端に内向きのフック状爪片を設けた弾性脚片を備え、外筒の先端に内方に向かって上方に傾斜した傾斜面を備えており、
前記チューブ容器は、一対の貼り合わせ端部を有する胴部と、吐出用の開口を含む口部を備えており、
前記口部の外周面は前記アウターリングに接して囲まれており、
前記口部を上側、前記胴部を下側としたときに、前記口部に連設され、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、当該第1の角度より大きい第2の角度で狭まり、前記フック状爪片により前記弾性脚片と係合する係止部を備えた首部と、
前記首部と前記胴部を結ぶように下側に向うにつれて外周が広がる肩部と、
前記口部の開口を覆うようにして、前記口部の上端である天面に接合された密封シールと、を有し、
前記係止部は、前記口部の下端から外周が最大径になるまで広がる部分である係止部上部と、外径が最大径になった部分から下側に向うにつれて外周が狭まる部分である係止部下部を備えることを特徴とするキャップ付きチューブ容器。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「密封シール」及び「アウターリングの内面と、前記アウターリング内面に接する口部の外周面」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用文献である、特開平8-268449号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお下線は当審において付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。)。
「【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の一実施例を示し、図中1はチューブ容器を示す。該容器1は、容器体2と、蓋体3とを備え、更に容器体2には封緘筒4を一体に形成している。
【0010】容器体2は合成樹脂により形成されたもので、内容物充填用に下端を開口した筒状可撓性胴部5上端より口頸部6を起立して構成している。
【0011】本実施例では、薄肉に形成して可撓性を付与した円筒状周壁5a上端縁より内方へ傾斜上昇するテーパ状頂板部5bを延設してなる胴部5を有し、該胴部5上端である頂板部5b中央部に下端を開口して上方へ起立する円筒状の口頸部6を延設している。また、口頸部6外周には螺条を周設している。更に、口頸部6上端は剥ぎ取り可能なシール材7により閉塞させている。
【0012】蓋体3は、上記口頸部6外周に嵌合筒部8を嵌合させて着脱可能に装着するとともに、その頂壁により口頸部上端開口を閉塞させたもので、本実施例では、口頸部6外周に螺着させた嵌合筒部8を頂壁9下面中央より垂設するとともに、頂壁9外周縁より周壁10を垂設させて構成している。」
「【0018】図3は本発明の他の実施例を示すもので、本実施例では、上記実施例に於いて容器体口頸部6外周に周設した螺条に変えて所定位置に突条12を周設し、また、蓋体3の嵌合筒部8内周に周設した螺条に変えて所定位置に突条13を周設し、蓋体3を上方より押し下げ嵌合させることにより、口頸部6の上記突条12下面に嵌合筒部8の上記突条13が乗り越え係合する如く構成している。その他の構成は上記実施例と同様であるので、同様の符号を付しておく。」
「【図3】
[図:0001429410000001.jpg]
」
(イ)引用文献1の記載から認定できる事項
a 【0018】、図3から、「突条12」は、口頸部6上端を上側、胴部5を下側としたときに、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、第2の角度で狭まり、蓋体3の嵌合筒部8内周の所定位置に周設した突条13により嵌合筒部8と係合するものであって、当該「突条12」は、その上端を口頸部6の口部の下端とすると、口頸部6の口部の下端から外周が最大径になるまで広がる部分である上部と、外径が最大径になった部分から下側に向うにつれて外周が狭まる部分である下部を備えていると認められる。
b 【0011】、【0012】、【0018】、図3から、円筒状である口頸部6に押し下げ嵌合させる蓋体3の嵌合筒部8及び周壁10は円筒状であると認められる。
(ウ)引用発明
上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、特に図3に係る実施例に着目すると、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、カッコ内は、理解促進のため特に参酌すべき段落等である。
「容器体2と、蓋体3とを備えたチューブ容器1であって、(【0009】)
前記容器体2は、合成樹脂により形成されたもので、内容物充填用に下端を開口した筒状可撓性胴部5上端より口頸部6を起立して構成しており、(【0010】)
薄肉に形成して可撓性を付与した円筒状周壁5a上端縁より内方へ傾斜上昇するテーパ状頂板部5bを延設してなる胴部5を有し、該胴部5上端である頂板部5b中央部に下端を開口して上方へ起立する円筒状の口頸部6を延設しており、前記口頸部6の外周の所定位置に突条12を周設し、当該口頸部6上端は剥ぎ取り可能なシール材7により閉塞させており、(【0011】、【0018】)
前記蓋体3は、上記口頸部6外周に円筒状の嵌合筒部8を嵌合させて着脱可能に装着するとともに、その頂壁により前記口頸部6上端開口を閉塞させたもので、前記嵌合筒部8を前記頂壁9下面中央より垂設するとともに、前記頂壁9外周縁より円筒状の周壁10を垂設させて構成しており、前記嵌合筒部8内周の所定位置に突条13を周設し、(【0012】、【0018】、上記(イ)b)
前記突条12は、前記口頸部6上端を上側、前記胴部5を下側としたときに、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、第2の角度で狭まり、前記蓋体3の前記嵌合筒部8内周の所定位置に周設した前記突条13により前記嵌合筒部8と係合するものであって、当該突条12は、前記口頸部6の口部の下端から外周が最大径になるまで広がる部分である上部と、外径が最大径になった部分から下側に向うにつれて外周が狭まる部分である下部を備えている(上記(イ)a)
チューブ容器1。」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用文献である実願昭57-97932号(実開昭59-3850号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「従来、容器口部を密封および開封するために、容器に対して上下方向に直線的に操作するようにしたいわゆるワンタツチキヤツプを実現する方法が種々提案されているが、キヤツプを容器から取り出すときの操作性を良くすると密封性が損なわれ易いという問題があった。
この問題点を解決するための一方法として、実開昭52-4353号公報に示す技術が提案されている。この従来例は第1図ないし第3図に示すような構成を有している。すなわち、容器(ボトル)1は、口部を設ける肩部2をテーパ面に形成して中央に首部3を突設し、これの上部には外周部をフレヤー4aに形成した口部4を拡張段部5を介して連設し、口部4の先端に取り出し口6を設けたものであつて、硬質合成樹脂等で成形されている。また、キヤツプ7は、全体が可撓性を有する軟質合成樹脂で成形され、外円筒部8と内円筒部9を有する。外円筒部8は下方裾部8aの下端面を傾斜面8bに形成し、内円筒部9はこれの円周等分数個所にスリツト11を穿設して多数の弾性脚片9aを円状に列設すると共に各脚片の下端部には内向きのフツク状爪片10を設け、さらにこの爪片10の下端面は傾斜面10aに形成してあり、内円筒部中央上面には密封リング12が突設させられた構成となつている。そして、キヤツプ7を容器1に装嵌すべく口部上方から嵌合して押圧すると、弾性脚片9aの下端傾斜面10aが口部外周部のフレヤー4aに沿つて拡開されながら下降し、爪片10が拡張段部に弾発係止して嵌着される。一方、第1図の矢印のようにキヤツプの可撓性を利用して外円筒部の裾部8aを両側から指先で相対的に強くつまむようにして加圧すると、加圧された裾部分が楕円状に変形すると共にテーパ肩部2に沿つてその位置を上昇させる。これと同時に内円筒部9の各弾性脚片9aも若干その列設した円形が変形して爪片10が段部5の係止から強制的に外され、キヤツプ7は口部から離脱する。」(明細書2ページ2行~3ページ19行)
「
[図:0001429410000002.jpg]
[図:0001429410000003.jpg]
」
(イ)引用文献2の記載から認定できる事項
第1~3図から、密封リング12は円筒状であり、口部4の外周面は密封リング12に接して囲まれており、密封リング12の内面と、前記密封リング12内面に接する口部4の外周面は、いずれも凹凸がないと認められる。
第1図から、拡張段部5は、口部4を上側、容器1を下側としたときに、下側に向かうにつれて第1の角度で外周に広がるフレヤー4aに形成した部分から、当該第1の角度より大きい第2の角度で狭まることで形成されていることが認められる。
(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「容器1に対して上下方向の直線操作によりキャップ7を着脱させるようにした容器1とキャップ7との取付構造において、
前記容器1が、口部4の先端に取り出し口6を設けたものであって、
前記キャップ7は、外円筒部8と内円筒部9を有し、前記内円筒部中央上面には円筒状の密封リング12が突設させられた構成となっており、
前記口部4の外周面は前記密封リング12に接して囲まれており、前記密封リング12の内面と、前記密封リング12内面に接する口部4の外周面は、いずれも凹凸がない、
容器1とキャップ7との取付構造。」
ウ 引用文献3
(ア)引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用文献である特開2002-2739号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【0016】本発明のレトルトチューブ容器の基本的な構成は、胴部11にヘッドピース12が連設された熱可塑性樹脂製のチューブ本体10と、このチューブ本体10に装着される熱可塑性樹脂製のキャップ20とからなる。」
「【0018】胴部11は、例えば、表面側から無延伸ポリプロピレン/乳白無延伸ポリプロピレン/アルミ箔/無延伸ポリプロピレンを順次ラミネートしたようなポリオレフィン系樹脂フィルムを主体とする積層体で構成することができ、該積層体の両端同士を溶着することによって円筒体に形成される。・・・。」
「【0020】ヘッドピース12は、肩部13の上端に口頚部14が連設されてなり、口頚部14の下端付近の外周面には係合用凹部15が形成されている。また、口頚部14の頂部には、内容物(食品)を取り出すための注出口16が開口されている。
・・・
【0023】このキャップ20は、チューブ本体の口頚部14の頂部に設けられた注出口16を密閉する密閉部21と、この密閉部21の外縁上部に連設された内周壁23、この内周壁23の上部外周縁に連設された天面部24、この天面部24の外周縁から垂下する外周スカート部25からなる可撓部22とが一体的に設けられている。
【0024】密閉部21は、チューブ本体の口頚部14の上面を覆う頂壁部26と、口頚部14の側面を囲う環状部27とを有している。
・・・
【0026】環状部27の下端には前記係合用凹部15に係合する係合用凸部28が形成されている。なお、本例の環状部27は、複数の切欠部33によって分離されて係合用凸部28がそれぞれに形成された複数の係合片34を有しており、また、各係合片34の上部には、この環状部の剛性を高めるための複数の補強リブ35が形成されている。
・・・
【0028】上記のような構成のチューブ本体10とキャップ20からなる本実施形態のチューブ容器によれば、チューブ本体10にキャップ20を装着して閉蓋するときには、環状部27の内側に口頚部14が位置する状態でキャップ20を押し込むことによって、環状部27の先端に形成されている係合片34が係合用凹部15の手前で拡径されている部分によって若干外方に変形し、最終的には図3に示すように、口頚部14の係合用凹部15に係合片34の先端部分に形成されている係合用凸部28が係合されることによって閉蓋される。
【0029】一方、チューブ本体10とキャップ20の係合を解除して開蓋するときには、例えばキャップ20の外周スカート部25を両側から指で押圧して可撓部22を若干変形させ、外周スカート部25の下端部を肩部13の傾斜面に突き当てると、この時に生じる上向きの力によって係合片34が若干外方に変形し、係合用凸部28が上方に移動して最終的には係合用凹部15から外れて開蓋される。」
「
[図:0001429410000004.jpg]
」
(イ)引用文献3の記載から認定できる事項
【0020】、図1の記載から、係合用凹部15は、注出口16を上側、胴部11を下側としたときに、口頚部14の下端付近から下側に向かうにつれて第1の角度で外周が広がり、外周が最大径になるまで広がる部分である上部から、当該第1の角度より大きい第2の角度で下側に向うにつれて外周が狭まる部分として形成されていると認められる。
(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「胴部11にヘッドピース12が連設された熱可塑性樹脂製のチューブ本体10と、このチューブ本体10に装着される熱可塑性樹脂製のキャップ20とからなるレトルトチューブ容器において、
前記胴部11は、積層体の両端同士を溶着することによって円筒体に形成された、
レトルトチューブ容器」
エ 周知技術
(ア)周知技術1
上記イ(ア)、(イ)に示されるように、以下の事項は本願出願前の当業者にとって周知の技術的事項である。
「上下方向の直線操作によりキャップを着脱させるようにした容器とキャップとの取り付け構造において、前記キャップに、円筒状の外筒、内筒を外方から順に備え、前記内筒の先端に内向きのフック状爪片を設けた弾性脚片を備え、容器の首部に、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、当該第1の角度より大きい第2の角度で狭まり、フック状爪片により前記弾性脚片と係合する係止部を備え、前記外筒の先端に内方に向かって上方に傾斜した傾斜面を備えること。」(以下「周知技術1」という。)
(イ)周知技術2
上記ウ(ア)、(イ)に示されるように、以下の事項は本願出願前の当業者にとって周知の技術的事項である。
「上下方向の直線操作によりキャップを着脱させるようにした容器とキャップとの取り付け構造において、キャップに、円筒状の外筒、内筒を外方から順に備え、内筒の先端に内向きのフック状爪片を設けた弾性脚片を備え、容器の首部に、口部を上側、胴部を下側としたときに、前記口部に連設され、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、外周が最大径になるまで広がる部分である上部と、外径が最大径になった部分から当該第1の角度より大きい第2の角度で下側に向うにつれて外周が狭まる部分である下部を備え、前記フック状爪片により前記弾性脚片と係合する係止部を備えること。」(以下「周知技術2」という。)
(ウ)周知技術3
a 引用文献4に記載された事項
本願の出願前に頒布された引用文献である特許4354364号公報(平成21年10月28日発行。以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「【0012】
次に、本発明において、上記のような本発明に係るシール材をチューブ容器の口部の開口先端部に貼り合わせた本発明に係るチューブ容器についてその一例を上記の図1に示す本発明に係るシ-ル材Aを使用する場合で説明すると、図4に示すように、口部11、肩部12、および、胴部13が一体的に連接してなるチューブ容器14において、上記の口部11の開口先端部に、基材フィルム1と、ガスバリア性塗布膜2と無機酸化物の蒸着膜3とを設けた樹脂フィルム4と、ヒートシール性樹脂層5とを順次に積層した本発明に係るシール材Aを、そのヒートシール性樹脂層5の面を介して、ヒートシール等によって貼り合わせることにより、本発明に係るシール材付きチューブ容器Bを製造することができるものである。
なお、図4中、符号15は、開封用の摘まみ(タブ)を表すものである。」
「
[図:0001429410000005.jpg]
」
b 引用文献4の記載から認定できる事項
【0012】及び図4より、シール材Aは、口部11の外周面で規定される密封部と、当該密封部から突出する開封用の摘まみ(タブ)15とを有すると認められる。
c 上記a、bに示されるように、以下の事項は本願出願前の当業者にとって周知の技術的事項である。
「チューブ容器の口部の開口先端部に貼り合わせるシール材が、前記口部の外周面で規定される密封部と、当該密封部から突出する開封用の摘まみ(タブ)とを有すること。」(以下「周知技術3」という。)
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「容器体2」、「蓋体3」及び「チューブ容器1」は、それぞれ本件補正発明の「チューブ容器」、「キャップ」及び「キャップ付きチューブ容器」に一応相当する。
(イ)引用発明の「円筒状周壁5a」は、本件補正発明の「胴部」に一応相当する。引用発明の「口頸部6」は、その「上端は剥ぎ取り可能なシール材7により閉塞させて」いることから、「口頸部6上端」は開口していると認められ、「口頸部6上端」の開口が「容器体2」に充填された内容物を吐出するためのものであることは明らかであるから、引用発明の「口頸部6」は、本件補正発明の「吐出用の開口を含む口部」を含むと認められる。したがって、引用発明の「容器体2は、円筒状周壁5a上端縁より内方へ傾斜上昇するテーパ状頂板部5bを延設してなる胴部5を有し、該胴部5上端である頂板部5b中央部に下端を開口して上方へ起立する円筒状の口頸部6を延設して」いることは、本件補正発明の「チューブ容器は、一対の貼り合わせ端部を有する胴部と、吐出用の開口を含む口部を備えて」いることと、「チューブ容器は、胴部と、吐出用の開口を含む口部を備えて」いる限りで一致する。
(ウ)引用発明の「円筒状の嵌合筒部8」及び「円筒状の周壁10」は、それぞれ本件補正発明の「内筒」及び「円筒状の外筒」に一応相当し、引用発明の「嵌合筒部8内周の所定位置に突条13を周設し」ていることは、本件補正発明の「内筒の先端に内向きのフック状爪片を設けた弾性脚片を備え」ていることと、「内筒の先端に内向きの突部を設け」ている限りで一致するから、引用発明の「蓋体3は、上記口頸部6外周に円筒状の嵌合筒部8を嵌合させて着脱可能に装着するとともに、その頂壁により前記口頸部6上端開口を閉塞させたもので、前記嵌合筒部8を前記頂壁9下面中央より垂設するとともに、前記頂壁9外周縁より円筒状の周壁10を垂設させて構成しており、前記嵌合筒部8内周の所定位置に突条13を周設し」ていることは、本件補正発明の「キャップは、円筒状の外筒、内筒、アウターリングを外方から順に備え、内筒の先端に内向きのフック状爪片を設けた弾性脚片を備え、外筒の先端に内方に向かって上方に傾斜した傾斜面を備えて」いることと、「キャップは、円筒状の外筒、内筒を外方から順に備え、内筒の先端に内向きの突部を設け」ている限りで一致する。
(エ)引用発明の「シール材7」は、本件補正発明の「密封シール」に一応相当し、引用発明の「当該口頸部6上端は剥ぎ取り可能なシール材7により閉塞させて」いることは、本件補正発明の「口部の開口を覆うようにして、前記口部の上端である天面に接合された密封シールと、を有」することに相当し、引用発明の「シール材7」は、本件補正発明の「口部の外周面で規定される密封部」を有するものである。
(オ)引用発明の「突条12」を備えた「口頸部6」の下側部分は、本件補正発明の「首部」に一応相当し、引用発明の「口頸部6上端を上側、胴部5を下側としたときに、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、第2の角度で狭まり、前記蓋体3の前記嵌合筒部8内周の所定位置に周設した前記突条13により前記嵌合筒部8と係合するものであ」る「突条12」は、本件補正発明の「口部を上側、胴部を下側としたときに、前記口部に連設され、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、当該第1の角度より大きい第2の角度で狭まり、前記フック状爪片により前記弾性脚片と係合する係止部」と、「口部を上側、胴部を下側としたときに、前記口部に連設され、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、第2の角度で狭まり、突部により内筒の先端と係合」する「係止部」である限りで一致する。
(カ)引用発明の「テーパ状頂板部5b」は、「円筒状周壁5a上端縁より内方へ傾斜上昇」しており、当該「頂板部5b」中央部に「口頸部6」を延設しているものだから、本件補正発明の「首部と胴部を結ぶように下側に向うにつれて外周が広がる肩部」に相当する。
(キ)引用発明の「突条12は、口頸部6の口部の下端から外周が最大径になるまで広がる部分である上部と、外径が最大径になった部分から下側に向うにつれて外周が狭まる部分である下部を備えている」ことは、本件補正発明の「係止部は、前記口部の下端から外周が最大径になるまで広がる部分である係止部上部と、外径が最大径になった部分から下側に向うにつれて外周が狭まる部分である係止部下部を備え」ることに相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「チューブ容器とキャップを有するキャップ付きチューブ容器であって、
前記キャップは、円筒状の外筒、内筒を外方から順に備え、内筒の先端に内向きの突部を設けており、
前記チューブ容器は、胴部と、吐出用の開口を含む口部を備えており、
前記口部を上側、前記胴部を下側としたときに、前記口部に連設され、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、第2の角度で狭まり、前記突部により前記内筒の先端と係合する係止部を備えた首部と、
前記首部と前記胴部を結ぶように下側に向うにつれて外周が広がる肩部と、
前記口部の開口を覆うようにして、前記口部の上端である天面に接合された密封シールと、を有し、
前記係止部は、前記口部の下端から外周が最大径になるまで広がる部分である係止部上部と、外径が最大径になった部分から下側に向うにつれて外周が狭まる部分である係止部下部を備え、
前記密封シールは、前記口部の外周面で規定される密封部を有する、
キャップ付きチューブ容器。」
[相違点1]
本件補正発明では、キャップは、円筒状の外筒、内筒、アウターリングを外方から順に備え、前記アウターリングの内面と、前記アウターリング内面に接する前記口部の外周面は、いずれも凹凸がないのに対し、引用発明では、当該アウターリングを備えない点。
[相違点2]
本件補正発明では、胴部が一対の貼り合わせ端部を有するのに対し、引用発明では、円筒状周壁5aが一対の貼り合わせ端部を有することを規定していない点。
[相違点3]
本件補正発明では、内筒の先端に内向きのフック状爪片を設けた弾性脚片を備え、外筒の先端に内方に向かって上方に傾斜した傾斜面を備え、係止部は、口部を上側、胴部を下側としたときに、前記口部に連設され、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、当該第1の角度より大きい第2の角度で狭まるのに対し、
引用発明では、嵌合筒部8内周の所定位置に突条13を周設し、周壁10の先端に内方に向かって上方に傾斜した傾斜面を備えておらず、突条12は、口頸部6上端を上側、胴部5を下側としたときに、下側に向うにつれて第1の角度で外周が広がり、第2の角度で狭まるが、当該第1の角度と第2の角度の関係について規定されていない点。
[相違点4]
本件補正発明では、密封シールは、密封部から突出する摘み部を有するのに対し、引用発明では、シール材7が当該摘み部を有しない点。
(4)判断
以下、各相違点について検討する。
ア 相違点1について
上記2(2)イ(ウ)に示したとおり、引用文献2記載事項として「キャップ7は、外円筒部8と内円筒部9を有し、内円筒部中央上面には円筒状の密封リング12が突設させられた構成となっており、前記口部4の外周面は前記密封リング12に接して囲まれており、前記密封リング12の内面と、前記密封リング12内面に接する前記口部4の外周面は、いずれも凹凸がない」ことが示されている。
ここで、引用文献2記載事項の「外円筒部8」、「内円筒部9」は、それぞれ本件補正発明の表現に倣えば「外筒」、「内筒」といえ、引用文献2記載事項の「密封リング12」は、「内円筒部9」の内方にあり、「口部4の外周面」に「接して囲」むものであるから、「アウターリング」といえる。
引用発明と引用文献2記載事項の技術分野は、いずれもキャップ付き容器に関するものである点で共通している。また、引用発明と引用文献2記載事項は、容器口部を密封および開封するために、蓋体を容器口部に対して上下方向に直線的に操作する点で作用・機能が共通している。そうすると、引用発明における「蓋体3」に、引用文献2記載事項の「密封リング12」を採用する動機付けがある。
そうすると、引用発明における「蓋体3」に、引用文献2記載事項の「密封リング12」を設け、本件補正発明と同様の「「密封リング12」の内面と前記「密封リング12」の内面に接する「口頸部6」の外周面は、いずれも凹凸がない」構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
イ 相違点2について
上記2(2)ウ(ウ)に示したとおり、引用文献3記載事項として「胴部11は、積層体の両端同士を溶着することによって円筒体に形成され」ることが示されている。
ここで、引用文献3記載事項の「胴部11」は、本件補正発明の「胴部」に相当する。
引用発明と引用文献3記載事項の技術分野は、いずれもチューブ容器に関するものである点で共通している。また、引用発明と引用文献3記載事項は、胴部を合成樹脂より構成し、筒状に形成するという課題が共通している。
そうすると、引用発明の「円筒状周壁5a」を、引用文献3記載事項の「胴部11は、積層体の両端同士を溶着することによって円筒体に形成され」ることに倣って、一対の貼り合わせ端部を有する構成とすることは、当業者にとって容易である。
ウ 相違点3について
上下方向の直線操作によりキャップを着脱させるようにした容器とキャップとの取り付け構造において、前記キャップの内筒の先端に内向きのフック状爪片を設けた弾性脚片を備え、前記キャップの外筒の先端に内方に向かって上方に傾斜した傾斜面を備えることは、上記(2)エ(ア)で周知技術1として示したとおり、周知の技術的事項であるし、首部に備える係止部を、下側に向かうにつれて第1の角度で外周が広がり、当該第1の角度より大きい第2の角度で狭まる形状とすることも、上記(2)エ(イ)で周知技術2として示したとおり、一般的に行われていることである。
引用発明の「蓋体3」の「嵌合筒部8」の先端及び「周壁10」の先端並びに「口頸部6」に周設した「突条12」を、上記周知技術1、2に倣って、上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。
エ 相違点4について
上記(2)エ(ウ)で周知技術3として示したとおり、密封シールに、密封部から突出する摘み部を設けることは、本願出願前に周知の技術的事項である。
引用発明の「シール材7」を、密封部から突出する摘み部を有する構成とすることは、当業者にとって容易である。
オ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、及び周知技術1~3の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
カ 請求人の主張について
請求人は、「本件補正発明はとりわけ主要な構成として(a)密封シールは、口部の外周面で規定される密封部と、当該密封部から突出する摘み部と、を有すること、(b)アウターリングの内面と、前記アウターリング内面に接する前記口部の外周面は、いずれも凹凸がないことを特徴としており、本件補正発明は、キャップ60のアウターリング2の内側と外周面47のいずれにもネジ山のような凹凸がないため、摘み部20Bが破損する惧れが極めて低い効果を奏する」旨主張している。
しかし、上記(a)については前記2(4)エ、上記(b)については前記2(4)アのとおりであり、上記(a)及び(b)を備えることによる効果については前記2(4)オのとおりである。
キ 小括
以上によれば、本件補正発明は、引用発明、引用文献2技術事項、引用文献3記載事項及び周知技術1~3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年12月19日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~5に係る発明は、令和5年7月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願の出願前に頒布された下記の引用文献1~3に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開平8-268449号公報
引用文献2:実願昭57-97932号(実開昭59-3850号)のマイクロフィルム
引用文献3:特開2002-2739号公報
ここで、本願発明に対する原査定の拒絶の理由で示された周知技術とは、以下の技術である。
「キャップ付きチューブ容器において、係止部の形状を、口部の下端から外周が最大径になるまで第1の角度で外周が広がる部分である係止部上部と、外径が最大径になった部分から下側に向うにつれて第1の角度より大きい第2の角度で外周が狭まる部分である係止部下部を備えており、フック状爪片により弾性脚片と係合するようにしたものとすること。」
3 引用文献の記載事項
本願発明に対する原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~3の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
また、本願発明に対する原査定の拒絶の理由で示された上記周知技術は、前記第2の[理由]2(2)エ(イ)に記載した周知技術2である。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「密封シール」及び「アウターリングの内面と、前記アウターリング内面に接する口部の外周面」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明は、上記第2[理由]2(3)イに記載した一致点で一致し、相違点2、3で相違する。
しかしながら、相違点2、3は上記第2[理由]2(4)イ、ウと同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易になし得たものである。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び周知技術1~2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-021588